JP2004518068A - 多気筒内燃機関のクランク軸のコンロッド軸受のための潤滑油供給装置 - Google Patents

Abstract

本発明は、多気筒内燃機関のクランク軸のコンロッド軸受のための潤滑油供給装置であって、クランク軸の軸受ジャーナル（２，４，６）からクランクピン（８，９；１０，１１；１２，１３）へ複数のオイル通路が通じており、それぞれ１つの主軸受もしくは１つの軸受ジャーナル（２，４，６）から前記オイル通路（１４，１６）が、それぞれ両側に隣接するクランクピン（８，９；１０，１１；１２，１３）もしくはコンロッド軸受に通じていることによって、オイル供給がクランク軸の主軸受を介して行われる形式のものに関する。本発明による提案では、クランク軸の当該の軸受ジャーナル（２，４，６）内に、それぞれ左右に隣接するコンロッド軸受の潤滑油供給のために、互いに角度を成して延びているそれぞれ２つのオイル孔（１４，１６）が設けられており、これらの２つのオイル孔（１４，１６）が１つのオイル孔（１８）に集結せしめられて、隣接する２つのクランクピン（８，９；１０，１１；１２，１３）に通じており、かつ、これらの２つの孔（１４，１６）が、潤滑油供給のために主軸受（ＩＩ，ＩＶ，ＶＩ）内に設けられているオイル供給溝（２０，２２）と、相互に作用し合っている。
これにより、特に６気筒水平対向型エンジンのために、ガス力もしくは慣性力の受容のために必要な、クランク軸の軸受幅を維持しながらの、信頼性が高く、かつ確実な潤滑油供給が保証される。

Description

【０００１】
本発明は、請求項１の上位概念部に記載の形式による、多気筒内燃機関のクランク軸のコンロッド軸受のための潤滑油供給装置から出発する。
【０００２】
ドイツ連邦共和国特許第９６９０５５６７Ｔ２号明細書には、直列４気筒エンジンのためのクランク軸が示されており、このエンジンでは、クランク軸の軸受ジャーナルもしくは主軸受を介して、両側で主軸受に隣接するクランクピンもしくはコンロッド軸受のための潤滑油供給が、クランク軸内に形成されている複数のオイル孔を介して行われる。１つのクランク軸・主軸受を介してそれぞれ２つのコンロッド軸受に潤滑油供給を行うことによって、中間の主軸受は、オイル供給孔もしくはオイル供給溝を持たなくてよい。
【０００３】
さらに、クランク軸の主軸受シェルにガス力平面に対して旋回せしめられて配置されている複数の部分・オイル供給溝（Ｔｅｉｌ−Ｏｅｌｖｅｒｓｏｒｇｕｎｇｓｎｕｔｅｎ）を形成することが公知である（例えばフランス国特許第９７９５８６号明細書参照）。この場合、クランク軸の軸受ジャーナル内に形成されている２つのオイル孔を介して、部分・オイル供給溝を介したコンロッド軸受への持続的な潤滑油供給が保証される。それと同時に、主軸受の支持部分をガス力平面の方向において維持することができる。
【０００４】
本発明の課題は、一方では、クランク軸のコンロッド軸受の確実で、かつ信頼性の高い潤滑油供給が保証されており、他方では、特に高回転数領域においてより強い負荷をかけられる、クランク軸の主軸受が、確実にガス力および慣性力を受容することができるような、多気筒内燃機関のクランク軸のコンロッド軸受のための潤滑油供給装置を提供することである。
【０００５】
このような課題の解決は、請求項１に記載した特徴部の構成によって行われる。
【０００６】
特に１２０°の点火間隔を有する６気筒水平対向型エンジンでは、左右でクランクピンによって伝達される振動する慣性力が補償されていない構成の主軸受に作用する軸受力は、特定の回転数レベルから増大するが、このような構成の主軸受とは対照的に、主軸受に隣接するクランクピン対がクランク角１８０°互いにずらされて配置されているような構成の主軸受における軸受力は、振動する慣性力が補償されることによって、実質的に回転数に左右されることなく一定に保たれることが明らかになっている。本発明で提案される、コンロッド軸受のための潤滑油・供給装置の構成は、このような事情を顧慮している。それと同時に、異なる軸受負荷にもかかわらず、全ての主軸受に対して同じ幅を維持することができる。
【０００７】
潤滑油供給に対して責任を負っている主軸受の支持部分を維持できるようにするために、これらの主軸受に部分・オイル供給溝だけを設けることが提案され、これらの部分・オイル供給溝は、交互にそれぞれ１つのオイル孔を介して、コンロッド軸受に継続的に潤滑油を供給することが保証されるように、軸受ジャーナル内に形成されているそれぞれ２つのオイル孔と相互に作用し合っている。これらのオイル供給溝はその際、ガス力平面に対して約９０°旋回せしめられて配置されているので、主軸受の支持部分は、作用する主力の方向において減少されていない。
【０００８】
従属請求項には、クランク軸のコンロッド軸受のための、本発明による潤滑油供給装置の別の有利な構成および改良が記載されている。
【０００９】
次に本発明を図示の実施例を用いて詳細に説明する。
【００１０】
図１は、多気筒内燃機関のクランク軸、
図２は、図１のＩＩ−ＩＩ線に沿った断面図、
図３は、主軸受の領域における潤滑油供給装置の概略図である。
【００１１】
実施例の説明
図１に示されている、６気筒水平対向型エンジンのクランク軸は、７つの軸受ジャーナル１〜７を有しており、これらの軸受ジャーナルは、主軸受シェルＩ〜ＶＩＩ内に収容されている。この場合、主軸受シェルＩ〜ＶＩＩは、一般に公知のように、内燃機関のクランク軸ケーシング（図示せず）の、対応する軸受ホルダ内に収容される。クランク軸は６箇所で屈曲しており、これらの箇所でクランクピン８〜１３に、コネクティングロッド（図示せず）のコンロッド大端部が回転可能に取り付けられている。１２０°の点火間隔を有する６気筒水平対向型エンジンの場合に慣例であるように、軸受ジャーナル２，４，６に隣接するクランクピン８，９もしくは１０，１１もしくは１２，１３は、それぞれクランク角１８０°互いにずらされて配置されており、それと同時に、これらの３つのクランク対も、それぞれクランク角１２０°互いにずらされて配置されている。
【００１２】
軸受ジャーナル２，４，６内にはそれぞれ、互いに９０°の角度を成して延びている２つの孔１４および１６が配置されており、これらの２つの孔は１つの孔１８に集結せしめられて、隣接する２つのクランクピン８，９もしくは１０，１１もしくは１２，１３に通じている。
【００１３】
主軸受シェルＩＩ，ＩＶおよびＶＩは、２つの部分・オイル供給溝２０および２２を有しており、これらの部分・オイル供給溝２０および２２は、図３に示されているように、それぞれ１００°の円弧角度にわたって延びている。主軸受シェルＩＩ、ＩＶおよびＶＩの外側にはそれぞれ、４つの外溝２４が配置されており、これらの４つの外溝２４のうち２つの外溝だけが見えるように図示されており、これらの４つの外溝２４は少なくとも１つの孔を介して、内側に延びている部分・オイル供給溝２０および２２と接続している。
【００１４】
水平対向型エンジンのクランクケーシング内にクランク軸が組み込まれた状態では、オイル供給溝２０および２２は主軸受シェルＩＩ，ＩＶおよびＶＩ内それぞれ、これらのオイル供給溝２０および２２がガス力平面に対して９０°ずらされて約１００°の角度にわたって延在するように設けられている。
【００１５】
クランクピン８〜１３に取り付けられているコンロッド軸受のための潤滑油供給は、次のような形式で行われる。
【００１６】
潤滑油・供給ポンプ（図示せず）を介して、クランクケーシング内に配置されている複数のオイル孔を介して、主軸受ＩＩ，ＩＶおよびＶＩに潤滑油が供給される。そのために潤滑油は、主軸受シェルＩＩ，ＩＶおよびＶＩの外側に配置されている複数のオイル溝２４を介して、主軸受シェルの内側に設けられている部分・オイル供給溝２０および２２内に流れ込み、その際、潤滑油は交互にオイル孔１４または１６を介して、かつオイル孔１８を介して流れて、クランクピン８，９もしくは１０，１１もしくは１２，１３に到達する。クランクピン８，９もしくは１０，１１もしくは１２，１３の表面に出てくる潤滑油はその際、クランクピンに回転可能に取り付けられているコンロッド軸受に潤滑油を注油するために用いられる。部分・オイル供給溝２０および２２が１００°の角度領域にわたって延びており、かつ、２つの孔１４および１６が互いに９０°の角度を成して配置されていることによって、２つの孔１４または１６のうちの少なくともそれぞれ１つの孔を介して、クランクピンへの持続的な潤滑油供給が保証されている。他方では、気筒の軸線方向において作用していてベクトルが加算されるガス力および慣性力は、オイル供給溝を備えていない主軸受シェルセグメントによって確実に受容され、これらの主軸受シェルセグメントは、それ自身の支持幅に関して主軸受シェルＩ，ＩＩＩ，ＶおよびＶＩＩに対して減少されていない。
【００１７】
振動する慣性力によって惹起される、主軸受ＩＩ，ＩＶおよびＶＩにおける軸受負荷が、エンジン回転数に左右されることなくほぼ一定に保たれるのとは対照的に、特に、主軸受ＩＩＩおよびＶに作用する軸受力は、質量補償が行われないことに因り、エンジン回転数に比例して増大する。先述の装置によって、一方では、コンロッド軸受の、信頼性の高い潤滑油供給が保証されており、他方では、クランク軸のための均一な軸受幅が維持されるので、主軸受ＩＩＩおよびＶに作用する内側の軸受力は、ｎ＞７０００ １／ｍｉｎの回転数レベルにおいても確実に受容される。
【図面の簡単な説明】
【図１】
多気筒内燃機関のクランク軸である。
【図２】
図１のＩＩ−ＩＩ線に沿った断面図である。
【図３】
主軸受の領域における潤滑油供給装置の概略図である。

Claims (4)

1. 多気筒内燃機関のクランク軸のコンロッド軸受のための潤滑油供給装置であって、クランク軸の軸受ジャーナルからクランクピンへ複数のオイル通路が通じており、それぞれ１つの主軸受もしくは１つの軸受ジャーナルから複数のオイル通路が、それぞれ両側に隣接するクランクピンもしくはコンロッド軸受に通じていることによって、オイル供給がクランク軸の主軸受を介して行われる形式のものにおいて、
   クランク軸の当該の軸受ジャーナル（２，４，６）内に、それぞれ左右に隣接するコンロッド軸受の潤滑油供給のために、互いに角度を成して延びているそれぞれ２つのオイル孔（１４，１６）が設けられており、これらの２つのオイル孔（１４，１６）が１つのオイル孔（１８）に集結せしめられて、隣接する２つのクランクピン（８，９；１０，１１；１２，１３）に通じており、かつ、前記２つの孔（１４，１６）が、潤滑油供給のために主軸受（ＩＩ，ＩＶ，ＶＩ）内に設けられているオイル供給溝（２０，２２）と相互に作用し合っていることを特徴とする潤滑油供給装置。
2. ６気筒水平対向型エンジンのためのクランク軸が設けられており、該クランク軸では、軸受ジャーナル（２，４，６）に隣接して配置されている２つのクランクピン（８，９；１０，１１；１２，１３）が、クランク角１８０°互いにずらされて配置されている、請求項１記載の潤滑油供給装置。
3. 主軸受（ＩＩ，ＩＶ，ＶＩ）に、２つの部分・オイル供給溝（２０，２２）が設けられており、該部分・オイル供給溝（２０，２２）がガス力平面に対して９０°旋回せしめられて配置されている、請求項１または２記載の潤滑油供給装置。
4. オイル孔（１４，１６）がクランク軸の軸受ジャーナル（２，４，６）内に約９０°の角度を成して延びており、部分・オイル供給溝（２０，２２）がクランク角約１００°の領域にわたって延びている、請求項１から３までのいずれか１項記載の潤滑油供給装置。