JP2004509643A - アルキル化剤を用いた化学療法による治療に対する臨床反応を予測する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
発明の分野
本発明は、化学療法による治療の分野、具体的には、ある種の腫瘍の治療用のアルキル化剤を用いた化学療法による治療に対する臨床反応を予測する方法に関する。
【0002】
発明の背景
全身化学療法は、ある種の腫瘍および悪性疾患に利用可能な初期治療である。治療目的の化学療法の処方および対症化学療法の処方が、数種の腫瘍に対して開発されており、生存率の改善をもたらしてきた。化学療法は、治療目的であれ、対症的な目的であれ、複数の治療サイクルを通常必要とする。適切な用量で行われるあらゆる化学療法の処方は、正常な宿主組織に対してある程度の悪性副作用をもたらす。
【0003】
化学療法の有効性、すなわち化学療法のもつ、致死的な宿主毒性を引き起すことなく腫瘍細胞を根絶する能力は、薬剤の選択に依存する。抗癌剤選択の基礎は完全には理解されていない。抗癌剤の一種アルキル化剤は、DNAに結合して、DNAのらせん構造を構造的に歪め、DNAの転写および翻訳を妨げることで細胞死を誘導する。正常細胞では、アルキル化剤の損傷作用は、細胞のDNA修復酵素、具体的にはO6−メチルグアニン−DNAメチル基転移酵素(MGMT)によって修復されることがある。MGMTのレベルは腫瘍細胞によって変わり、さらには同じ種類の腫瘍であっても変わる。MGMTをコードする遺伝子には一般に変異も欠失も生じない。むしろ腫瘍細胞のMGMTのレベルが低い理由は後成的修飾による。すなわちMGMT遺伝子がメチル化されることでMGMTの発現が妨げられる。
【0004】
メチル化は、遺伝子の活性、細胞分化、腫瘍形成、X染色体不活性化、ゲノムインプリンティング、および他の主要な生物学的過程に役割を果たすことが一連の証拠から明らかにされている。真核細胞では、グアノシンの5’側に接して存在するシトシン残基のメチル化は、シトシン−グアニン(CG)が少ない領域に主に存在する。これとは対照的にCpG島は、正常細胞では非メチル化状態のままである。ただし5’側の調節領域のメチル化が転写抑制を誘導可能なX染色体不活性化中、および親に特異的なインプリンティング中は例外である。腫瘍抑制遺伝子の発現も、通常はメチル化されていないCpGのデノボのDNAメチル化により消失することがある。
【0005】
DNA修復酵素をコードする遺伝子の過剰メチル化は、ある種の癌治療法に対する臨床反応を予測するマーカーとなりうる。ある種の化学療法剤は、DNAを架橋して細胞死を誘導することで細胞増殖を抑制する。このような薬剤を用いた治療の取り組みは、DNA修復酵素が架橋構造を除去することから、阻まれることがある。多くの化学療法薬に悪性副作用があること、またある種の薬剤がさまざまな治療法に有効でないことを考えれば、化学療法剤を用いた治療法に対する臨床反応を予測することが望ましい。本発明は、このような必要性を満足させる。
【0006】
発明の概要
本発明は、DNA修復酵素をコードする遺伝子のメチル化状態が、ある種の化学療法剤を用いた治療法に対する臨床反応の予測因子となるという知見に基づく。DNA修復酵素O6−メチルグアニン−DNAメチル基転移酵素(MGMT)が過剰にメチル化されると、MGMTのレベルは低下する。DNAに損傷を及ぼす化学療法剤で処理された腫瘍細胞は、MGMTが損傷修復に利用されないために生存することができない。
【0007】
本発明の一つの態様では、治療を必要とする被験者における化学療法剤を用いた治療法に対する臨床反応を予測する方法が提供される。この方法は、被験者から単離されたDNA修復酵素をコードする核酸のメチル化状態を判定する段階を含む。DNA修復酵素は化学療法剤の活性を妨げる。治療を必要とする被験者から単離された核酸のメチル化状態を、治療を必要としない被験者に由来する同じ酵素をコードする核酸のメチル化状態と比較する。メチル化状態に差がみられれば、ある治療薬を用いた治療法に対する臨床反応の予測因子となる。
【0008】
本発明の別の態様では、被験者から単離されたDNA修復酵素をコードする核酸のメチル化状態を判定することによって治療法に対する臨床反応を予測する段階を含む、被験者の細胞増殖性疾患をアルキル化化学療法剤で治療する方法が提供される。DNA修復酵素は、化学療法剤の活性を妨げる。治療を必要としない被験者に由来する核酸のメチル化状態と比較した場合の被験者の核酸のメチル化状態は、酵素のレベル、および治療に対する反応の予測因子となる。
【0009】
本発明のさらに別の態様では、被験者における細胞増殖性疾患の化学療法による治療に対する反応を予測するためのキットが提供される。このキットは、メチル化されていないシトシンヌクレオチドを修飾する試薬、およびO6−メチルグアニン−DNAメチル基転移酵素の調節領域にCpG含有核酸を増幅するためのセンスプライマー、および少なくとも一本のアンチセンスを含む少なくとも1組のプライマー対を含む。このようなプライマーは、修飾されたメチル化核酸と非メチル化核酸を区別することができる。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、ある遺伝子の核酸、具体的には調節配列の核酸のメチル化状態が、化学療法剤を用いた治療法に対する臨床反応の予測因子になるという発見に基づく。より具体的には、CpG島内に局在するあるヌクレオチドの過剰メチル化は、CpG島に関与する遺伝子の発現に影響を及ぼすことが報告されている。すなわち通常は、このような過剰にメチル化された遺伝子は主に、転写が抑制されるために発現が低下するか、または消失する。DNA修復酵素の調節領域の過剰メチル化は、化学療法剤を用いた治療法に対する臨床反応を予測することができる。最近開発されたメチル化特異的PCR(MSP)と呼ばれる、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を元にした手法を用いることで、MGMTの過剰にメチル化した腫瘍細胞を同定することが可能なので、治療薬を用いた治療法に対する腫瘍細胞の反応を予測することができる。この方法は、個々の全内容が参照として本明細書に組み入れられる、1998年7月28日に公表された米国特許第5,786,146号;2000年1月25日に公表された米国特許第6,017,704号;2001年3月13日に公表された米国特許第6,200,756号;および2001年7月24日に公表された米国特許第6,265,171号に記載されている。
【0011】
DNA修復酵素は、変異誘発、発癌性、および遺伝毒性薬剤耐性に重要な役割を果たしている。DNA修復酵素は、DNA上の損傷を認識して修正する。変異発生率は、DNAに生じる損傷現象の数と、修正された現象の数との間のバランスを反映している。DNAに対する損傷は、DNAの通常の二重らせん構造からの逸脱である任意の変化を含む。DNA損傷には二つの主なクラスがある。一塩基変化はDNA鎖の配列に影響を及ぼすが、鎖の構造には影響しない。構造的な歪みは、複製または転写に対する物理的障害となる。例えば紫外光照射は異常なチミン二量体を生じる。またアルキル化剤は塩基にアルキル基を付け加える。
【0012】
アルキル化剤は、DNAに結合することで細胞死を誘導する反応性の高い分子である(Teicher BA. 「抗腫瘍アルキル化剤(Antitumor alkylating agents)」、DeVita VT Jr、 Hellman S、Rosenberg SA編、「癌:腫瘍学の原理と実際(Cancer:principles and practice of oncology)」、第5版、第1巻、Philadelphia:Lippincott−Raven、1997:405〜18;およびColvin M、Hilton J、「シクロホスファミドと代謝産物の薬理学(Pharmacology of cyclophosphamide and metabolites)」、Cancer Treat Rep (1981) 65:Suppl 3:89〜95)。DNA中で最も頻繁にアルキル化が生じる部位はグアニンのO6位である。この部位で生じるアルキル化は、隣接するDNA鎖の間に架橋を形成する。R1はニトロソ尿素、テトラジン、およびプロカルバジンが細胞を死滅する機構を説明する。アルキル化剤による二本鎖DNAの架橋は、細胞のもつDNA修復タンパク質O6−メチルグアニン−DNAメチル基転移酵素(MGMT)によって阻害される。DNA修復酵素O6−メチルグアニンDNAメチル基転移酵素(MGMT)をコードする遺伝子は、びまん性大B細胞リンパ腫の一部を含むヒトの複数の癌で不活性化されることがわかっている。O6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)としても知られるMGMTタンパク質(E.C.2.1.1.63)は、グアニンのO6位を標的とすることが多いアルキル化剤の毒性から細胞を守る(Ludlum DB. Mutat Res. 1990;233:117〜26;Pegg AEら、Prog. Nucleic Acid Res. Mol Biol. 1995;51:167〜223)。MGMTタンパク質は、アルキル付加物をタンパク質内のシステイン残基に移して、致死的な架橋の形成および他の変異原性作用を回避することによって、グアニンのO6位における付加物の形成を速やかに無効にする。したがって、酵素MGMTの存在および活性は、アルキル化剤などの化学療法剤の活性を抑制する。この機構により、MGMTはアルキル化剤に対する耐性を生じる。例示的なアルキル化剤には、カルムスチン、ロムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、ダカルバジン、テモゾロミド、またはプロカルバジンなどがある。
【0013】
MGMTのレベルは、腫瘍の種類によって大きく変わり、さらには同じ種類の腫瘍の間でも変わる。例えば、神経膠腫の約30パーセントはMGMTをもたない(Silber JRら、Cancer Res.(1993) 53:3416〜3420;Silber JRら、Cancer Res.(1998) 58:1068〜1073)。同酵素の欠損は、アルキル化剤に対する脳腫瘍の感受性を高める可能性がある。MGMT遺伝子には通常、変異がなく、欠失しないので、MGMTの欠損は、細胞の遺伝情報を変えない変化によって引き起される可能性がある。
【0014】
本発明の方法は、被験者から単離された一種または複数の核酸のメチル化状態を判定する段階を含む。本明細書に用いられる「核酸」または「核酸配列」という表現は、一本鎖もしくは二本鎖の場合があり、またセンス鎖もしくはアンチセンス鎖、ペプチド核酸(PNA)の場合があるオリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはこれらのいずれかの断片、ゲノム由来または合成起源のDNAもしくはRNAを意味するほか、天然もしくは合成起源の任意のDNA様もしくはRNA様の材料を意味する。当業者に理解されるように、核酸がRNAの場合、デオキシヌクレオチドA、G、C、およびTは、それぞれリボヌクレオチドA、G、C、およびUで置き換えられる。
【0015】
核酸は、異なってメチル化されたCpG島の存在を検出するのに望ましい任意の核酸の場合がある。CpG島とは、核酸配列のCpGに富む領域である。このような核酸は例えば、酵素MGMTをコードする核酸を含む。対象となる核酸は、酵素遺伝子の調節領域、ならびにタンパク質コード領域をコードする。
【0016】
精製状態または未精製状態の任意の核酸試料は、標的座位を含む核酸配列(例えばCpGを含む核酸)を含む場合、または含むことが疑われる場合に本発明で使用される。異なってメチル化されうる一つの核酸領域が、ジヌクレオチドCpGの密度が他の核酸領域に対して高い核酸配列であるCpG島である。二重のCpGは、脊椎動物のDNAに、G・C塩基対の比率から予測される頻度の約20%でしか存在しない。ある領域では、二重CpGの密度は予測値に近い。すなわち、ゲノムの他の領域に対して10倍高い。CpG島の平均G・C含量は約60%である。これに対して、バルクDNAでは平均40%である。この島は、典型的には約1〜2 kbの長さの連続したDNAの形状をとる。ヒトゲノムには約45,000か所のこのような島がある。
【0017】
多くの遺伝子では、CpG島はプロモーターのすぐ上流から始まり、転写領域の下流方向に広がる。プロモーターにおけるCpG島のメチル化は通常、その遺伝子の発現を妨げる。この島は、遺伝子のコード領域の5’側の領域、ならびにコード領域の3’側の領域の周囲に存在する場合もある。したがってCpG島は、プロモーター領域を含む調節領域におけるコード配列の上流を含む核酸配列、コード領域(例えばエキソン)、またコード領域の下流、例えばエンハンサー領域、およびイントロンの複数の領域に見出される場合がある。
【0018】
通常CpG含有核酸はDNAである。しかし本発明の方法は例えば、DNA、またはDNAとRNA(メッセンジャーRNAを含む)を含む試料を使用する場合があり(DNAまたはRNAは一本鎖の場合もあれば2本鎖の場合もある)、DNA−RNAのハイブリッドが試料に含まれる場合がある。核酸の混合物が使用される場合もある。検出対象となる特定の核酸配列は、大きな分子の一部分である場合があるほか、この特定の配列が核酸全体になるように最初は別個の分子として存在することができる。調査対象の配列が最初から純粋な状態で存在する必要は必ずしもない。このような核酸は、ヒトのDNA全体に含まれるような、複合混合物のわずかな部分である場合がある。試料に含まれる核酸のメチル化状態の決定、またはメチル化CpG島の検出に使用される核酸含有試料は、サンブルック(Sambrook)ら(参照として全体が本明細書に組み入れられる、「分子クローニング:実験マニュアル( Molecular Cloning : A Laboratory Manual )」、Cold Spring Harbor、NY、1989)に記載された手法を始めとするさまざまな手法で抽出される場合がある。
【0019】
ポリペプチドおよびタンパク質をコードする多くの核酸分子は、核酸の転写を誘導したり制御したりする情報をコードするDNAの領域である調節領域を含む。調節領域は少なくとも一つのプロモーターを含む。「プロモーター」は、転写を誘導して、細胞種特異的、組織特異的に制御されうる、または外部のシグナルまたは薬剤によって誘導されうるプロモーター依存性の遺伝子発現を可能とするために十分な最小の配列である。プロモーターは、遺伝子の5’領域または3’領域に位置する場合がある。いくつかの核酸のプロモーター領域の全体または一部を、CG島のメチル化の部位に関して調査することができる。
【0020】
被験者から単離される核酸は、被験者に由来する生物試料から得られる。核酸は、腫瘍組織、脳組織、脳脊髄液、血液、血漿、血清、リンパ液、リンパ節、脾臓、肝臓、骨髄、または他の任意の生物試料から単離することができる。腫瘍組織、血液、血漿、血清、リンパ液、脳組織、脳脊髄液、および骨髄は、当業者に周知のさまざまな医学的手順で得られる。
【0021】
本明細書に記載されている細胞増殖性疾患は新生物の場合がある。このような新生物は良性または悪性である。「新生物」という用語は、細胞の新しくて異常な成長、または正常細胞より速やかに増殖する異常な細胞の成長を意味する。新生物は、明確な構造をもたない腫瘤(腫瘍)を形成し、これは良性または悪性の場合がある。「良性」という表現は非癌性の腫瘍を意味し、例えば、その細胞は周囲組織に浸潤したり遠隔部位に転移したりしない。「悪性」という表現は、転移性で、隣接組織に浸潤したり、もはや正常な細胞成長の制御下ではない腫瘍を意味する。
【0022】
中枢神経系の組織または器官に関与する腫瘍は、本明細書では「脳腫瘍」と呼ばれる。脳腫瘍には例えば、神経膠腫、未分化星状細胞腫、多形性膠芽腫、低悪性度の星細胞腫/膠芽腫、髄芽腫、乏突起細胞腫、または神経芽腫であることができる。
【0023】
リンパ球が関与する腫瘍は、本明細書では「リンパ腫」と呼ばれる。リンパ腫は、リンパ節、脾臓、肝臓、および骨髄に主に関与するが、任意の器官または組織に浸潤したり拡散したりする場合がある。悪性リンパ腫は、Bリンパ球またはTリンパ球の細胞分化の特定の段階で停止した1個のリンパ球の悪性形質転換のクローンに由来する。新生物のリンパ球は、正常リンパ球の機能および増殖の特徴を示すことがある。例えば、低悪性度のB細胞リンパ腫の細胞は濾胞性パターンを示すこともある。より成熟したTヘルパー細胞のリンパ腫は、高γグロブリン血症を示すことがある。良好に分化したB細胞型およびT細胞型のリンパ腫は通常、正常なリンパ腫の移動性およびホーミング特性を残している。したがって低悪性度のB細胞リンパ腫は診断時に拡散しており、処置は当初、リンパ節および脾臓のB細胞依存性領域に制限されることが少なくない。中悪性度または高悪性度のリンパ腫の細胞は、正常な活性型リンパ球と似たところがある。びまん性大細胞型リンパ腫の3分の1は、診断時に臨床的に局在した疾患であり、これは正常なリンパ球の移動性の喪失を反映していると考えられる。びまん性大細胞型リンパ腫の一種で、中悪性度のリンパ腫である、びまん性大細胞型Bリンパ腫は、米国で最も一般的なリンパ腫である(Bonner、Hら、血液とリンパ組織(The Blood and the Lymphoid Organs)、「病理学(Pathology)」、第3版、E RubinおよびJ L. Farberら編、Lippincott−Raven、1999を参照)。
【0024】
本発明の方法は、結腸直腸腫瘍、結腸腫瘍、肺腫瘍(好ましくは非小細胞肺腫瘍)、および頭頚部腫瘍を対象とした、化学療法剤を用いた治療法に対する臨床反応の予測に有用である。
【0025】
本明細書で用いられる「臨床反応」という表現は、化学療法剤を用いた治療法に対する腫瘍の反応を意味する。治療法に対する反応を決定する際の基準は広く受け入れられており、別の有効な治療法との比較が可能である(SlapakおよびKufe、癌治療の原理(Principles of Cancer Therapy)、「ハリソンの内科の原理(Harrisons’s Principles of Internal Medicine)」、第13版、Isselbacherら編、McGraw−Hill, Inc. 1994を参照)。完全反応(すなわち完全寛解)とは、検出可能な悪性疾患がすべて消失することである。部分反応とは、生成物において一つまたは複数の病変の垂直方向の最大直径が約50パーセントが低下することである。任意の病変の大きさの拡大、または新しい病変の出現はない。疾患の進行とは、生成物において一つの病変の垂直方向の最大直径の少なくとも約25%の上昇、または新病変の出現を意味する。治療法に対する反応は、被験者が治療を完了した後に評価される。
【0026】
神経膠腫の治療法に対する反応に関しては、完全反応は、コンピュータ断層撮影(CT)検査、または磁気共鳴映像法(MRI)検査による腫瘍の存在を示すあらゆる証拠がないこと、例えばステロイド療法の必要がないこと、また被験者の全身状態が改善されることと定義される。CT検査で持続的に異常が認められるが、腫瘍の直径および体積の低下が50%を上回り、ステロイド療法の必要性が低く、また神経障害が安定している被験者は、部分反応を示しているとみなされる。この疾患は、腫瘍の直径および体積の両方が最初の測定値と比較して25%またはそれ以上上昇した場合に、新しい病変がCT検査またはMRI検査で明らかに認められる場合に、または被験者の神経障害が悪化してステロイド用量の増加が必要な場合に、進行しているとみなされる。
【0027】
リンパ腫であると診断された被験者に関して、完全寛解(CR)は、検出可能なあらゆる疾患が存在しないことと定義される。CT検査で持続的に異常が認められるが、初期腫瘍体積と比較して約75%を上回る退縮が認められ、活性疾患の徴候または症状がない被験者は、放射線検査による異常がその後少なくとも3か月間安定している場合に、完全に寛解しているとみなされる。部分寛解(PR)は、腫瘍体積の約50%またはそれを上回る低下と定義される。治療失敗は、PRに満たないすべての状態、疾患の進行、または治療に関連する死亡と定義される。
【0028】
本発明の一つの局面では、被験者から得られ、酵素をコードする核酸のメチル化状態は、化学療法による治療を必要としない被験者の核酸の同じ領域と比較して過剰にメチル化している。本明細書で用いられる「過剰メチル化」は、一つまたは複数の核酸中にメチル化された対立遺伝子が存在することを意味する。化学療法による治療を必要としない被験者に由来する、DNA修復酵素をコードする核酸は、同じ核酸を調べた場合に検出可能なメチル化対立遺伝子を含まない。
【0029】
核酸のメチル化状態を判定する方法は、個々の全体が参照として本明細書に組み入れられ、一部が本明細書に記載されている、米国特許第6,017,704号および米国特許第5,786,146号に記載されている。核酸のメチル化状態を判定する段階は、メチル化核酸と非メチル化核酸を区別するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて核酸を増幅する段階を含む。
【0030】
2種またはそれ以上のマーカーは1回の増幅反応で多重化して、治療薬を用いた治療に対する臨床反応を予測する低コストで信頼できる方法を作ることもできる。一種または複数の核酸について一つまたは複数のCpGに富む領域に対するDNAマーカーの組み合わせは1回の増幅反応で増幅することができる。このようなマーカーは例えば、複数の座位に対するプライマーを組み合わせることで、1回の増幅反応で多重化される。反応産物は例えば、変性ポリアクリルアミドゲルで分離され、次にフィルムを感光させるか、臭化エチジウムで染色することで画像化して解析される。一連のマーカーを解析することで、被験者における、より有用なメチル化プロファイルが得られる確率が大きくなる。
【0031】
試料が純粋でない場合(例えば、試料が対象外の組織または細胞を含む場合)、試料の体液、組織、または動物細胞膜に含まれる細胞を溶解するために、またこれらに含まれる核酸を露出するために、有効な試薬で処理してから増幅を行う場合がある。試料から核酸を精製する方法、または部分的に精製する方法は当技術分野で周知である(例えば参照として本明細書に組み入れられる、Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル( Molecular Cloning : A Laboratory Manual )」、Cold Spring Harbor Press、1989)。
【0032】
プライマーは、標的ポリヌクレオチド配列とハイブリッドを形成する。MGMTをコードするメチル化遺伝子および非メチル化遺伝子、および関連するCpG島を特に標的とする説明目的のオリゴヌクレオチドプライマーには、配列番号:1〜配列番号:4などがある。配列番号:1
および配列番号:2
はそれぞれ、非メチル化MGMTを認識する順方向プライマーおよび逆方向プライマーであり、また配列番号:3
および配列番号:4
はそれぞれ、メチル化MGMTを認識する順方向プライマーおよび逆方向プライマーである。
【0033】
メチル化の差の検出は、非メチル化核酸の切断を可能とする条件および時間において、非メチル化CpG部位のみを切断するメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを核酸試料に接触させることで達成することができる。この試料をさらに、メチル化核酸の切断を可能とする条件および時間において、メチル化CpG部位および非メチル化CpG部位の両方を切断するメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼのイソ制限酵素に接触させる。核酸試料にオリゴヌクレオチドを、制限エンドヌクレアーゼで切断された核酸とオリゴヌクレオチドの連結を可能とする条件および時間に添加し、また切断された核酸を、同オリゴヌクレオチドに相補的なプライマーを用いるPCRなどの従来の方法で増幅する。同定に続き、メチル化CpGを含む核酸を当業者に周知の方法でクローンニングすることができる(Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル( Molecular Cloning : A Laboratory Manual )」、Cold Spring Harbor Press、1989を参照)。
【0034】
本明細書で用いられる「メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ」は、認識部位の一部にCGを含み、Cがメチル化されていない場合と比較してCがメチル化された場合に変化する活性を有する制限エンドヌクレアーゼである。好ましくは、このようなメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、Cがメチル化されていると活性が阻害される(例えばSmaI)。メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼの特定の非制限的な例には、SmaI、BssHII、またはHpaII、MspI、BSTUI、およびNotIなどがある。これらの酵素は、単独で使用されるほか、組み合わせて使用される。他のメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼが当業者に周知であり、例えばSacIIおよびEagIが含まれるがこれらに限定されない。メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼの「イソ制限酵素」は、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと同じ認識部位を認識するが、メチル化CGと非メチル化CGの両方を切断する制限エンドヌクレアーゼである。当業者であれば、制限エンドヌクレアーゼが核酸を切断する適切な条件を容易に決定することができる(Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル( Molecular Cloning : A Laboratory Manual )」、Cold Spring Harbor Press、1989を参照)。
【0035】
対象となる核酸を、メチル化感受性エンドヌクレアーゼで切断する。メチル化感受性エンドヌクレアーゼで切断されると、対象核酸に十分なオーバーハングが生じる。イソ制限酵素による切断でも、切断産物には十分なオーバーハングが生じる場合がある。「オーバーハング」とは、鎖の末端において一方の鎖の数塩基がもう一方の鎖と塩基対を形成していない二本の鎖を有する核酸を意味する。「十分なオーバーハング」とは、対象オリゴヌクレオチドの特異的なハイブリダイゼーションを可能とする十分な長さのオーバーハングを意味する。十分なオーバーハングは、長さが少なくとも2塩基、または4塩基もしくはそれ以上の塩基である。対象核酸上の特定配列のオーバーハングは、対象オリゴヌクレオチドがハイブリッドを形成する際に望ましい場合がある。この場合、イソ制限酵素を用いて、対象核酸に所望の配列を有するオーバーハングを作ることができる。
【0036】
メチル化感受性エンドヌクレアーゼによる切断で、平滑末端、すなわち十分でないオーバーハングを有する対象核酸の反応産物が得られる。平滑末端とは、二本の鎖、すなわち核酸のセンス鎖およびアンチセンス鎖の平らな末端を意味する。十分なオーバーハングが対象核酸上に作製されると、オリゴヌクレオチドは、メチル化特異的制限エンドヌクレアーゼによって切断された対象核酸に連結される。「連結」は、二つの核酸配列が、実質的に相補的な配列の塩基対合によって、および/または、二つの核酸配列間における共有結合の形成によって結合されることを意味する。
【0037】
所望の配列およびオーバーハングを有するDNA末端を作る際には、アダプターを使用することができる。「アダプター」は、一方の末端または両端に十分な一本鎖オーバーハングを有する一端がある二本鎖核酸配列であり、アダプターは、メチル化感受性制限酵素もしくはメチル化感受性制限酵素のイソ制限酵素によって切断された対象核酸上の十分なオーバーハングと塩基対合により連結される。アダプターは市販品を入手することができるほか、2種のオリゴヌクレオチドを用いてアダプターとすることができる。したがって、2種のオリゴヌクレオチドを使用してアダプターを作ることができる。このようなオリゴヌクレオチドは、一本鎖のオーバーハングを形成する5’末端および/または3’末端における領域(群)を除いて配列全体が実質的に相補的である。一本鎖オーバーハングは、メチル化感受性制限酵素、またはメチル化感受性制限酵素のイソ制限酵素によって切断された核酸のオーバーハングに相補的であり、対象核酸のオーバーハングは、アダプターの3’側または5’側の一本鎖末端と適切な条件下で塩基対を形成する。このような条件は、配列の組成(GC対AT)、長さ、および核酸の種類によって変わる(Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル( Molecular Cloning : A Laboratory Manual )」、第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、NY、1998を参照)。
【0038】
オリゴヌクレオチドの連結に続き、オリゴヌクレオチドに相補的なプライマーを用いて対象核酸を増幅する。具体的には、本明細書に用いられる、「プライマー」という表現は、2種またはそれ以上の、好ましくは3種を超える、またより好ましくは8種を超える、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む配列を意味する(この配列は、アダプターまたは連結したオリゴヌクレオチドなどの核酸に実質的に相補的な、プライマー伸長産物の合成を開始することが可能である)。合成につながる環境条件には、ヌクレオシド三リン酸、およびDNAポリメラーゼなどの重合用試薬の存在、ならびに適切な温度およびpHなどがある。このようなプライマーは好ましくは、増幅に最大の効率を有する一本鎖であるが、二本鎖の場合もある。二本鎖の場合、プライマーの鎖を最初に分離する処理を行ってから、伸長産物の調製に使用する。このようなプライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドの場合がある。このようなプライマーは、重合を誘導する薬剤の存在下で伸長産物の合成を開始するために十分長くなくてはならない。プライマーの正確な長さは、温度、緩衝液、およびヌクレオチド組成を含む多くの因子によって変わる。オリゴヌクレオチドプライマーは通常12〜20ヌクレオチド、またはそれ以上の長さのヌクレオチドであるが、これより少ないヌクレオチドの場合がある。
【0039】
本発明のプライマーは、増幅されるオリゴヌクレオチドの各鎖に「実質的に」相補的になるように設計され、上述した適切なGまたはCヌクレオチドを含む。これはプライマーが、薬剤が重合を行える条件下で、その個々の鎖とハイブリッドを形成するためには十分相補的でなければならないことを意味する。言い替えると、プライマーは、5’側および3’側のオリゴヌクレオチドとハイブリッドを形成するために、また核酸配列を含むCpGの増幅を可能とするために十分な相補性をもつべきである。
【0040】
本発明のプライマーは、関与する反応段階の数に対して指数関数的な量の標的座位を作る酵素反応を利用した連鎖反応である増幅過程(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応すなわちPCR)に使用される。通常は、一本のプライマーは、座位の負(−)鎖に相補的であり(アンチセンスプライマー)、別の一本は正(+)鎖に相補的である(センスプライマー)。変性核酸とプライマーのアニーリングに続き、DNAポリメラーゼIの大断片(クレノウ)などの酵素およびヌクレオチドによる伸長により、新しく合成された、標的座位配列を含む+鎖および−鎖が得られる。新しく合成された配列は鋳型でもあるので、変性、プライマーアニーリング、および伸長の反復サイクルによって、プライマーで決められた領域(すなわち標的座位の配列)が指数関数的に作られる。連鎖反応の産物は、使用された特定のプライマーの末端に対応する末端をもつ別個の核酸二本鎖である。
【0041】
本発明の方法で使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、従来のホスホトリエステル法およびホスホジエステル法、またはこれらが自動化された態様などの任意の適切な方法で作製することができる。このような自動化の態様の一つでは、ジエチルホスホラミダイトが出発材料として使用され、ボーケージ(Beaucage)ら(Tetrahedron Letters、22:1859〜1862、1981)に記載された手順で合成される場合がある。修飾型固相支持体上でオリゴヌクレオチドを合成する一つの方法は、参照として全体が本明細書に組み入れられる米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0042】
メチル化CpGを含む核酸を検出する別の方法は、核酸を含む試料を非メチル化シトシンを修飾する薬剤に接触させる段階、試料中にCpGを含む核酸をCpG特異的オリゴヌクレオチドプライマーにより増幅する段階(オリゴヌクレオチドプライマーは修飾型メチル化核酸と非メチル化核酸を区別する)、およびメチル化核酸を検出する段階を含む。増幅段階は任意選択で行われ、望ましいが不可欠ではない。この方法は、修飾型(例えば化学的に修飾された)メチル化DNAと非メチル化DNAを区別するPCR反応そのものに依存する。
【0043】
本明細書に用いられる「修飾する」という表現は、非メチル化シトシンとメチル化シトシンを区別する方法を容易にする、非メチル化シトシンの別のヌクレオチドへの変換を意味する。好ましくは、このような薬剤は非メチル化シトシンをウラシルに修飾する。好ましくは、非メチル化シトシンの修飾に使用される薬剤は亜硫酸水素ナトリウムであるが、メチル化シトシンではなく非メチル化シトシンを同様に修飾する他の薬剤もこの方法に使用することができる。亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)は、シトシンの5,6−二重結合と容易に反応するが、メチル化シトシンとはほとんど反応しない。シトシンは亜硫酸水素イオンと反応して、脱アミノ化に感受性のあるスルホン化シトシン反応中間体を形成し、スルホン化ウラシルを生じる。スルホン基がアルカリ性条件下で除去されることでウラシルが得られる。ウラシルはTaqポリメラーゼによってチミンとして認識されるので、PCRの結果として得られる産物は、出発物質の鋳型DNA中において5−メチルシトシンが生じる位置においてのみシトシンを含む。
【0044】
試料内に含まれるCpGを含む核酸の増幅用に本発明で使用されるプライマーは、亜硫酸水素塩による修飾後に、未処理DNAすなわち未修飾DNA、メチル化DNA、および非メチル化DNAを特異的に区別する。非メチル化DNA用のMSPプライマーは好ましくは、3’側のCG対にTを有し、メチル化DNAに保持されるCと区別し、その相補物はアンチセンスプライマー用に設計される。MSPプライマーは通常、配列中に比較的小数のCまたはGを含む。これはCがセンスプライマー中に存在せず、Gがアンチセンスプライマー中に存在しないためである(Cは修飾されてU(ウラシル)となる。Uは増幅産物中でT(チミジン)として増幅される)。
【0045】
本発明のプライマーは、十分な長さのオリゴヌクレオチドおよび適切な配列を含み、多型座位中のかなりの数の核酸において重合の特異的な開始をもたらす。対象となる核酸配列が二本鎖を含む場合、増幅過程の鋳型として使用する前に核酸の鎖を分ける必要がある。鎖の分離は、別個の段階として、またはプライマー伸長産物の合成と同時に実施することができる。このような鎖の分離は、物理的、化学的、または酵素学的な手段を含む、さまざまな適切な変性条件で達成することができる。「変性する」という表現は、このような手段のすべてを含む。核酸の鎖を分離する一つの物理的方法では、核酸を加熱して変性させる。典型的な加熱変性は、約80〜105℃の温度で約1〜10分かけて行う。鎖の分離は、ヘリカーゼとして知られる酵素群の酵素により、またはヘリカーゼ活性をもつ酵素RecAにより、またDNAを変性させることが知られているリボATPの存在下で誘導することもできる。ヘリカーゼによる核酸鎖の分離に適した反応条件は、ホフマン−バーリング(Kuhn Hoffinann−Berling)(CSH−Quantitative Biology、43:63、1978)に記載されており、またRecAを使用する手法は、ラディング(C.Radding)(Ann.Rev.Genetics、16:405〜437、1982)に概説されている。
【0046】
核酸の相補鎖を分離する際は、核酸が本来二本鎖であるか一本鎖であるかにかかわらず、分離された鎖は、さらなる核酸鎖の合成用の鋳型として使用できる状態にある。このような合成は、鋳型とプライマーのハイブリダイゼーションを可能とする条件下で進む。一般に合成は、緩衝水溶液中で通常約7〜9のpHで進む。好ましくは、モル過剰(ゲノム核酸の場合はプライマー:鋳型が通常約108:1)の二本のオリゴヌクレオチドプライマーを、分離された鋳型鎖を含む緩衝液に添加する。しかし相補鎖の量は、本発明のこの過程が診断的応用に使用される場合には知られていない場合があると考えられている。このため相補鎖量に対するプライマー量を正確に決定することはできない。しかし実際問題として、付加されるプライマー量は通常、増幅対象配列が複雑な長鎖核酸鎖の混合物に含まれる場合に、相補鎖(鋳型)量に対してモル濃度過剰な状態にあるので、同過程の効率を高めるためには大過剰のモル濃度が好ましい。
【0047】
デオキシリボヌクレオシド三リン酸dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPを合成混合物に個別に、またはプライマーとともに適量を添加し、結果として得られる溶液を約90〜100℃に約1〜10分、好ましくは1〜4分かけて加熱する。加熱後に、同溶液をほぼ室温まで冷やす。こうすることでプライマーのハイブリダイゼーションが起こりやすくなる。冷えた混合物に対し、プライマー伸長反応を起こさせる適切な試薬(本明細書では「重合用試薬」と呼ぶ)を添加すると、この反応は当技術分野で周知の条件下で進む。このような重合用試薬は、熱に安定な他の試薬とともに添加することもできる。このような合成(または増幅)反応は、室温から、最大、重合用試薬が機能を失う温度までにおいて進む場合がある。したがって例えば、DNAポリメラーゼを試薬として使用する場合は、温度は一般に約40℃を越えない。最も簡便には、同反応は室温で進む。
【0048】
重合用試薬は、プライマー伸長産物の合成を達成するように機能する、酵素を含む任意の化合物または系の場合がある。この目的に適切な酵素には例えば、大腸菌のDNAポリメラーゼI、大腸菌のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、他の利用可能なDNAポリメラーゼ、ポリメラーゼのムテイン、逆転写酵素、および熱安定性の他の酵素(Taq DNAポリメラーゼなどのような、変性させるために十分高い温度におかれた状況でプライマー伸長を進める酵素)などがある。適切な酵素は、各座位の核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物を適切に生成するヌクレオチドの組み合わせを促す。一般に、このような合成は、各プライマーの3’端で開始され、鋳型鎖に沿って5’方向に進み、合成が終了するまでに、さまざまな長さの分子を作る。しかし、前述の同じ過程で合成を5’端から開始して逆方向に進む重合用試薬もある。
【0049】
好ましくは、増幅する方法は、本明細書に記載されているような、また当業者に一般に使用されているPCRである。しかし、別の増幅法が文献に記載されており、使用される場合もある。PCRの手法およびPCRの多くの変形形態が知られている。基本的なPCRの手法は、サイキ(Saiki)ら(1988 Science 239:487〜491)、および参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,800,159号に記載されている。
【0050】
PCRに通常求められる条件には、元の切断された断片(master−cut fragment)の効率のよい複製に必要な温度、塩、陽イオン、pH、および関連する条件などがある。PCRの条件には、加熱変性の反復周期(すなわち少なくとも約95℃までの加熱)、およびプライマー:アダプターのハイブリダイゼーションを可能とする温度おけるインキュベーション、および元の切断されたDNA断片の増幅酵素による複製などがある。各変性サイクル後に酵素を加える必要がないサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、またはサーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)のDNAポリメラーゼのような熱に安定な増幅用酵素が市販されている。酵素が関与する増幅活性に必要な塩、陽イオン、pH、および関連因子は、増幅用酵素の製造業者から購入することができる。
【0051】
本明細書に記載されているように、増幅用酵素は、インビトロにおける核酸増幅に、例えば上述の手順で使用可能な任意の酵素である。このような増幅用酵素には、大腸菌のDNAポリメラーゼI、大腸菌のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis))のDNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ、トリ骨芽球症ウイルスの逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルスの逆転写酵素、T4 DNAリガーゼ、大腸菌のDNAリガーゼ、またはQβレプリカーゼなどがある。好ましい増幅用酵素は、pwoポリメラーゼおよびTaqポリメラーゼである。pwo酵素は、DNAを忠実に複製するので特に好ましい。
【0052】
増幅後、核酸は、メンブレンなどの固相支持体に結合させることが可能であり、また任意の対象プローブとハイブリッドを形成させて任意の核酸配列を検出することができる。核酸配列と結合する複数のメンブレンが当業者に知られている。このようなメンブレンの特定の非制限性の例には、ニトロセルロース(NITROPURE)、またはポリ塩化ビニル、ジアゾペーパー、およびジーンスクリーン(GENESCREEN)、ゼータプローブ(ZETAPROBE)(Biorad)、およびニトラン(NYTRAN)などの他の市販のメンブレンなどの、遺伝子発現の検出に使用される他のメンブレンなどがある。このようなメンブレンに核酸を結合させる方法は当業者によく知られている。あるいはスクリーニングは液相中で実施されることがある。
【0053】
核酸ハイブリダイゼーション反応では、特定レベルのストリンジェンシーを達成するために用いられる条件は、ハイブリッドを形成する核酸の性質によって変動する。例えば、核酸のハイブリッドを形成する領域の長さ、相補性の程度、ヌクレオチド配列組成(例えばGC含量対AT含量)、および核酸の種類(例えばRNAかDNA)が、ハイブリダイゼーション条件を選択する際に考慮されることがある。他に考慮される事項は、核酸の一種が例えばフィルター上に固定化されているか否かということである。
【0054】
ストリンジェンシーを段階的に高くする条件の例を以下に示す:ほぼ室温における2×SSC/0.1% SDS(ハイブリダイゼーション条件);ほぼ室温における0.2×SSC/0.1% SDS(低ストリンジェンシー条件);約42℃における0.2×SSC/0.1% SDS(中程度のストリンジェンシー条件);および約68℃における0.1×SSC(高ストリンジェンシー条件)。洗浄は、これらの条件の一つ、例えば高ストリンジェンシー条件で実施することが可能であり、各条件は例えば各10〜15分かけて上記の順序で、記載された段階の一部またはすべてを繰り返し実施することができる。しかし上述したように、関与する特定のハイブリダイゼーション反応によって最適条件は変動するので、経験的に決定される場合がある。一般に、対象プローブのハイブリダイゼーションには高ストリンジェンシーの条件が使用される。
【0055】
対象プローブは検出目的で、例えば放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤、または酵素で標識することができる。当業者であれば、プローブに結合する他の適切な標識を理解しており、それらを常用の実験法で確認することができると思われる。
【0056】
本発明の別の態様は、被験者から単離された核酸のメチル化状態を判定することで、治療法に対する臨床反応を予測する段階を含む、アルキル化化学療法剤で被験者の癌を治療する方法を提供する。このような核酸は、アルキル化化学療法剤の活性を阻害する酵素をコードする。このような酵素をコードする核酸のメチル化状態は、治療を必要としない被験者に由来する酵素をコードする核酸のメチル化状態と比較する。メチル化状態は、このような酵素レベルの予測因子となる。
【0057】
本明細書で用いられる「〜を必要とする被験者」は、化学療法による治療を必要とする個人を意味する。このような被験者は、当業者に周知で、血液検査、x線検査、および生検を含むさまざまな方法によって、化学療法剤を用いた治療法に感受性のある疾患を有すると診断される場合がある。このような疾患には、癌を含む細胞増殖性疾患などがある。
【0058】
本発明の方法は、キットを製造するのに極めて適している。したがって本発明の別の態様では、被験者の細胞増殖性疾患の化学療法による治療に対する反応を予測するためのキットが提供される。本発明のキットは、非メチル化シトシンを修飾する試薬を含む第一の容器、およびCpGを含む核酸増幅用のプライマー(このプライマーは、修飾されたメチル化核酸と非メチル化核酸を区別する)を含む第二の容器を含む。本発明で使用されるプライマーには、配列番号:1〜配列番号:4に記載された配列を有するプライマーなどがある。このキットは、対照核酸増幅用のプライマーをさらに含む。このキットはまた、核酸増幅用の緩衝液を含む場合がある。好ましくは、非メチル化シトシンを修飾する試薬は亜硫酸水素塩である。
【0059】
本発明のキットは、DNA試料の化学的修飾およびPCR増幅を実施して、そのメチル化状態を判定するために必要な試薬を提供することが意図される。キットに含まれるプライマーセットには、化学的に修飾された非メチル化DNAにアニーリングするセット;化学的に修飾されたメチル化DNAにアニーリングするセット;および化学的修飾の効率の対照となるプライマーセットが含まれる。対照のプライマーセットは、化学的なメチル化を受けていない任意のDNA(非メチル化DNAおよびメチル化DNA)にアニーリングすべきである。不完全な化学的修飾(最大約50%)の場合、データの解釈が続行される場合がある。
【0060】
運搬手段は、バイアルやチューブなどの一つまたは複数の容器を含むことが適しており、個々の容器は、方法で使用される個別の要素の一つを含む。本発明の方法に関して本明細書で提供される記述に関して、当業者は、容器に必要な試薬の配分を容易に決定することができる。例えば、容器の一つは、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで切断される核酸を連結するためのオリゴヌクレオチドを含む容器を含むことができる。オリゴヌクレオチドに相補的なプライマーを含む一種または複数の容器も含まれうる。また、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを含む一つまたは複数の容器も含まれうる。メチル化感受性制限酵素のイソ制限酵素を含む一つまたは複数の容器も含まれうる。
【0061】
上記の開示は一般に、本発明の内容を説明している。全体的な理解は、本明細書において説明する目的でのみ提供されるものであって、本発明の範囲を制限することを意図しない、特定の実施例を参照することで得られる。
【0062】
実施例 1
メチル化の解析
DNAは、当業者に周知の標準的なプロトコルで抽出した(例えば、参照として本明細書に組み入れられるSambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル( Molecular Cloning : a Laboratory Manual )」、第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、NY、1998を参照)。MGMTのCpG島におけるメチル化パターンは、メチル化シトシンではなく非メチル化シトシンのウラシルへの化学的修飾により決定した。メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、文献に記載された、メチル化DNA、または修飾された非メチル化DNAのどちらかに特異的なプライマーを用いて行った(参照として全体が本明細書に組み入れられるEstellerら、Cancer Res 1999;59:793〜797;および参照として全体が本明細書に全体が組み入れられるHermanら、Proc Natl Acad Sci USA 1996;93:9821〜9826)。DNA(1 μg)を水酸化ナトリウムで変性させ、亜硫酸水素ナトリウムで修飾した。次にDNA試料をウィザードDNA精製樹脂(Wizard DNA purification resin)(Promega、Madison、Wis.)を用いて精製し、水酸化ナトリウムで再び処理し、エタノールで沈殿させて水に再懸濁した。非メチル化反応用のプライマー配列は、
(順方向プライマー;配列番号:1)および
(逆方向プライマー;配列番号:2)とし、メチル化反応用のプライマーは、
(順方向プライマー;配列番号:3および
(逆方向プライマー;配列番号:4)とした。アニーリング温度は59℃とした。SssIメチル基転移酵素(New England Biolabs、Beverly、Mass.)でインビトロで処理した胎盤DNAを、MGMTのメチル化対立遺伝子の正の対照として使用し、正常リンパ球に由来するDNAを負の対照として使用した。DNAを含まない対照を、各セットのメチル化特異的PCRアッセイ法に使用した。各50 μlのメチル化特異的PCR産物のうち10 μlを、非変性6%ポリアクリルアミドゲルに直接ロードし、臭化エチジウムで染色し、紫外光を照射して検討した。
【0063】
実施例 2
統計解析
連続変数は、スチューデントt検定で比較した。分割表は、フィッシャーの直説法で解析した。無病生存率および総生存率の曲線は、カプラン−マイヤー法で推定し、ログランク検定で比較した。多変量生存率解析はコックス(Cox)比例危険モデルで行い、比例危険推定は、シェーンフェルド(Schoenfeld)残差および図示法で調べた。記述的解析または層別分析を、モデルの基礎となる推定が適合することを確認するために常にパラメトリックモデリングに先行させた。結果は、信頼区間95%で両側P値で表す。解析はJMPソフトウェア(バージョン3.1、SAS Institute、Cary、N.C.)およびステイタ(Stata)ソフトウェア(バージョン6.0、Stata、College Station、Tex.)を用いて行った。
【0064】
実施例 3
脳腫瘍の被験者および試料
1993年4月〜1998年11月にナバラ大学病院(Pamplona、Spain)に紹介された被験者47人の脳腫瘍試料を調べた。すべての被験者から書面による同意を得た。全員が組織学的に腫瘍を有することが確認された。18人には未分化星状細胞腫が認められ、29人には多形性膠芽腫が認められた。被験者は38〜70歳(診断時の年齢中央値は55歳)で、男性が30人と女性17人であった。腫瘍試料は切除するか生検で採取した後に、照射および化学療法による処置を開始し、直ちに−80℃で凍結保存した。すべての被験者に、シスプラチンの動脈内投与(体表面積1m2あたり50 mg)、脳全体を対象とした放射線療法、および中央値3コースのカルムスチン(1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素、またはBCNU;100 mg/m2)の4週間隔の静脈内投与を行った。15人の被験者には、自家骨髄移植+高用量化学療法による治療(3回用量のカルムスチンの静脈内投与;300 mg/m2)/1日、および1回用量のシスプラチンの動脈内投与(100 mg)も行った。
【0065】
治療に対する反応は、被験者が治療を完了した後に評価した。完全反応は、コンピュータ断層撮影(CT)検査および磁気共鳴映像法(MRI)による検査における腫瘍のあらゆる証拠が存在しないこと、ステロイド療法の必要性がないこと、および被験者の全身状態が改善していることと定義した。CT検査における異常が持続するが、腫瘍の直径および体積の両方において50%を超えるの低下がみられること、ステロイド療法の必要性が低下していること、また神経障害が安定していることは、部分反応を示しているとみなした。腫瘍の直径と体積の両方が初期測定値の25%またはそれ以上上昇した場合、新しい病変がCT検査またはMRI検査で明らかに認められる場合、または被験者の神経障害が悪化してステロイド用量の増加が必要な場合は、疾患が進行しているとみなした。
【0066】
実施例 4
神経膠腫の臨床反応の予測
III度またはIV度の神経膠腫と新規に診断された47人(未分化星状細胞腫に分類された18人と多形性膠芽腫に分類された29人)の解析を行った。被験者の特徴は表1に示す。MGMTプロモーターのメチル化は、過去の研究(Estellar、1999、前記)で認められたものに高頻度で似ており、また他の報告(Silberら、Cancer Res 1993;53:3416〜3420;およびSilberら、Cancer Res 1998;58:1068〜1073)の結果と矛盾がない47例の腫瘍のうち19例(40%)で認められた。メチル化は、被験者の年齢、活動度(PS)のカルノフスキー(Karnofsky)スコア、または腫瘍の悪性度と関連していなかった(各比較についてP>0.3)。
【0067】
【表1】
【0068】
単変量解析では、プロモーターのメチル化は、臨床反応、ならびに総生存率および無病生存率と正に相関していた。カルムスチンに対して部分反応または完全反応を示したのは、メチル化腫瘍をもつ被験者19人中12人(63パーセント)に対して、非メチル化腫瘍をもつ被験者28人中1人(4パーセント)であった(P<0.001;表2)。メチル化が存在しないことは、かなり高い死亡リスクと関連していた(危険比、9.5;95%信頼区間、3.0〜42.7;P<0.001)(図3A)。単変量解析では、他の因子は生存率と統計学的に有意に関連していなかった。疾患の進行までの時間の中央値は、メチル化神経膠腫で21か月であり、非メチル化神経膠腫で8か月であり(P<0.001)、非メチル化と関連した危険比は10.8であった(95%信頼区間、4.4〜30.8)(図3B)。メチル化されたプロモーターを含む神経膠腫を有する被験者の死亡例は少数(4人)であったので、多変量解析は信頼できなかった。非メチル化神経膠腫に関連する危険比は変化がないか、または他の予測因子をモデルに個別に加えると上昇した。
【0069】
【表2】
【0070】
クロロエチルニトロソ尿素が投与された被験者の神経膠腫におけるMGMTの喪失は、総生存率に中程度の影響しかなく、疾患進行までの時間は、わずかに影響を受けるか、全く受けないことが報告されている(Belanichら、Cancer Res. 1996;56:783〜788;Jaeckleら、J. Clin. Oncol. 1998;16:3310〜3315;およびSilberら、Clin. Cancer Res. 1999;5:807〜814)。MGMT遺伝子状態を評価する別の方法を用いたところ、本明細書に記載されている試験では、同酵素の有無の影響がかなり強いことが認められた。腫瘍内における正常細胞(浸潤性リンパ球を含む)の蓄積は、MGMTの正確な評価を複雑にしているかもしれない。正常細胞の混合物は、腫瘍ホモジネートで測定される生化学的活性と、腫瘍細胞に含まれるMGMTを対象とした直接的な免疫組織化学的検査の結果との差を部分的に説明する可能性がある。メチル化特異的PCRの使用により、MGMTプロモーターのメチル化の評価が可能となる。メチル化状態は、神経膠腫細胞における遺伝子の転写活性、ひいてはDNA修復酵素の有無の予測因子となる。
【0071】
本明細書に記載されている試験では、MGMTプロモーターのメチル化は、カルムスチンに対する応答性、および総生存率の上昇および疾患進行時間の延長に関連していた。また、同プロモーターのメチル化状態は、腫瘍の悪性度、カルノフスキー活動度(PS)、または被験者の年齢と比較して、カルムスチン治療の結果の優れた予測因子であった。MGMTプロモーターのメチル化により、カルムスチンに対する応答性を予測することができるので、このアルキル化剤の使用は、プロモーターがメチル化されている神経膠腫に罹患した被験者を対象とすると考えられる。また、MGMT酵素を阻害する薬剤の使用により、耐性腫瘍(メチル化がない)の感受性が上昇することがありうるかもしれない。このような阻害剤の一種O6−ベンジルグアニンは、この目的で検討が進んでいる。これは、MGMT酵素を不活性化するMGMTの基質である。O6−ベンジルグアニンは、アルキルニトロソ尿素に対する反応をインビトロおよびインビボで促進することがわかっている(DolanおよびPegg、Clin. Cancer Res. 1997;3:837〜847、ならびにDolanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990;87:5368〜5372)。耐性腫瘍のみにおける、カルムスチンに対する神経膠腫の感受性を上昇させるこのような薬剤の使用は、カルムスチンに既に感受性をもつ被験者の正常組織に及ぼす、これらの薬剤の組み合わせによる毒性作用を防ぐ可能性がある。
【0072】
実施例 5
リンパ腫被験者集団と試料の入手
1986〜1997年にイタリアの3か所の施設において継続的に診断されていて治療が行われており、またそのDNAが入手できる、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(B−DLCL)が未治療の被験者84人を本研究の対象とした。臨床追跡調査は、1999年8月31日まで、または被験者が死亡するまで行った。打ち切り例の被験者の治療開始からの追跡期間の中央値は61か月であった。診断は、組織変化、細胞表面マーカーの免疫表現型解析、および免疫グロブリン遺伝子再編成の免疫遺伝子型解析を元に行われた。B−DLCLの組織病理学的な定義は、リアル(REAL)分類(Harris NLら、Blood. 1994;84:1361〜92)に拠った。ヒト免疫不全ウイルスが陽性を示した被験者は検討対象から除外した。病期分類には、全被験者を対象とした常用の血液化学検査;血液数、および白血球百分率;EKG;胸部x線;胸部、腹部、および骨盤のCT検査;ならびに両側性骨髄生検を含めた。疾患状態は、アナーバー基準(Carbone PPら、Cancer Res. 1971;31:1860〜1)で評価した。国際予後指標(IPI)は、文献に記載された手順で計算し(国際非ホジキンリンパ腫予後因子プロジェクト(The International Non−Hodgkin’s Lymphoma Prognostic Factors Project)。「攻撃性非ホジキンリンパ腫の予測モデル(A predictive model for aggressive non−Hodgikin’s lymphoma)」、N Engl J Med. 1993;329:987〜94)、被験者は、低リスク群、低−中等度リスク群、高−中等度リスク群、および高リスク群に分類した。
【0073】
治療法は、病期、診断日、施設、および予後因子で異なった。しかし全被験者は、シクロホスファミドおよびアントラサイクリンを含むレジメンで治療が行われていた。有害な予後因子がみられない限局病変の病期に分類された9人の被験者を対象に、短期化学療法、ACOPB(アドリアマイシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン)、または3コースのCHOP(シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)で治療を行った後に、局所限局的な放射線療法を36 Gyの線量で実施した。限局病変のステージにあって有害な予後因子、または進行期のステージにある被験者42人は、CHOP(29人)、またはMACOPB(メトトレキセート、アドリアマイシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン)(6人)、またはVACOPB(エトポシド、アドリアマイシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン)(7人)などの第3世代の化学療法スキームによる治療を受けた。65歳を超える高齢被験者15人は、PVEBEC(プレドニゾン、ビンブラスチン、エピルビシン、ブレオマイシン、エトポシド、シクロホスファミド)による治療を受けた。進行期にあり、有害な予後因子を示す被験者18人は、短いコースの標準化学療法(MACOPBまたはCHOP)による治療を受けた後に、末梢血幹細胞採取、および自家幹細胞移植を伴う高用量化学療法BEAM(カルムスチン、エトポシド、ARA−C、メルファラン)による強化化学療法を受けた。
【0074】
治療に対する反応は、治療プログラムの完了後に評価した。再病期決定目的の検査には、全被験者を対象に血液化学検査、および胸部、腹部、および骨盤のCT検査が含まれ、ならびに異常な診断が下された場合は骨髄生検が繰り返し実施された。完全寛解(CR)は、あらゆる検出可能な疾患の非存在と定義された。CT検査における異常が持続しているが、退縮が初期腫瘍体積の75%を上回り、活性型疾患の徴候または症状のない被験者は、放射線検査による異常がその後少なくとも3か月間安定している場合に完全寛解とみなされた。部分寛解(PR)は、腫瘍体積の50%またはそれ以上の低下と定義された。治療失敗は、PRに満たないすべての状態、疾患の進行、または治療に関連する死亡と定義した。
【0075】
実施例 6
免疫組織化学によるリンパ腫におけるMGMT発現の解析
MGMTのメチル化状態とMGMTタンパク質の発現間の相関は、26個のリンパ腫の代表的なパネルを対象に評価を行った。ホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した組織切片をキシレンで30秒かけて脱パラフィン処理し、段階的エタノールで水分を除き、250Wの電子レンジ内で30分かけてTEC(トリス−EDTA−クエン酸)溶液(pH 7.8)中で処理した。免疫組織化学はABC法で行った(ABC−Elite kit、Vector、Burlingame、California)。色素源としてジアミノベンジジンを用いた免疫ペルオキシダーゼ染色法は、自動免疫染色装置(Ventana Medical Systems, Inc、Tucson、AZ)を用いて業者のプロトコルにしたがって実施した。市販のマウス抗MGMTモノクローナル抗体(クローンMT3.1;Chemicon Intl.、Temecula、CA)を1:100で使用した(Brent TPら、Cancer Res. 1990;50:58〜61)。この抗体は、免疫組織化学に有用であること、およびMGMT活性と相関することが過去に明らかにされている(Reese JSら、Proc Natl Acad Sci USA、1996;93:14088〜93)。核染色は、試料の分子解析に関する知識をもたない著者の2人(A.G.およびA.C.)により決定された。
【0076】
実施例 7
MGMTプロモーターの過剰メチル化を、B−DLCLの被験者84人を対象に調べた(対象集団の臨床的記述については表3を参照)。MGMTの過剰メチル化は、B−DLCLの84人中30人(36%)に認められた。脳腫瘍被験者の調査と同様に、MGMTの過剰メチル化は、MGMTタンパク質の発現がないことと相関していた。これは、MGMTの過剰メチル化が認められるすべて(n=17)のリンパ腫試料で、免疫組織化学検査で検討した際にタンパク質の発現が認められなかったためである。逆に、非メチル化MGMT対立遺伝子を有するすべて(n=9)のリンパ腫試料は、免疫組織化学検査で検討したところ、MGMTタンパク質を発現していた。
【0077】
MGMTのメチル化の存在は、臨床的段階、活動度(PS)、またはLDHレベルにおける任意の差と関連していなかった(表3参照、全p値>0.15)。MGMTがメチル化されている被験者では、CRが77%、PRが13%、NRが10%(N=30)であったのに対し、メチル化されていない被験者ではPCRが63%、PRが15%、NRが22%(N=54)であった。MGMTのメチル化を含む腫瘍をもつ被験者で反応が改善する傾向は統計学的に有意ではなかった(p=0.3)が、MGMTがメチル化されているリンパ腫の感受性の上昇と一致していた。
【0078】
【表3】
【0079】
しかし、高悪性度の神経膠腫を示す被験者で観察されたように、これらのリンパ腫被験者におけるMGMTのメチル化状態は、総生存率および無進行生存率と強く相関していた。総生存率は、MGMTがメチル化されているリンパ腫被験者で有意に高く、死亡までの期間の結果に対する非メチル化の危険比は2.8であった(95% CI、1.2〜7.5、p=0.01)(図2A)。同様に、メチル化されていない被験者とメチル化されている被験者間における疾患進行の危険比は2.6であった(95% CI、1.3〜5.8、p=0.005、図2B)。
【0080】
国際リンパ腫研究グループによる分類を形成する非ホジキンリンパ腫の従来の予後マーカー、すなわち活動度(PS)、LDH、および病期は、生存率に対して弱いか、もしくは中程度の単変量の関連性があった。これとは対照的に多変量の生存率モデルでは、MGMTのメチル化状態が一貫して最も重要な予測因子であり、病期のみが統計的に有意であった。病期を二分する(病期1および病期2対、病期3および病期4)モデルでは、進行した病期に対する、死亡までの時間の危険比の結果は2.4(CI、1.1〜6.6、p=0.03)であり、また非メチル化については、単変量の結果と本質的に同一であった(HR=2.7、CI 1.2〜7.2、p=0.02)。同様の結果は、病期に対する進行するまでの時間について(HR=2.5、CI 1.2〜5.8、p=0.01)、また非メチル化状態(HR=2.5、CI 1.2〜5.5、p=0.01)について得られている。
【0081】
国際予後指標(IPI)では、これらの個々の因子(年齢、病期、骨髄病変、LDH、および活動度(PS))が有用な予後因子に統合されている。MGMTのメチル化が生存率の予測因子の地位にあるか否かを判定するために、MGMTをIPIとの関連性について調べた。過去に明らかにされているように(国際非ホジキンリンパ腫予後因子プロジェクト(The International Non−Hodgkin’s Lymphoma Prognostic Factors Project)。「攻撃性非ホジキンリンパ腫の予測モデル(A predictive model for aggressive non−Hodgikin’s lymphoma)、N. Engl. J. Med.、1999;329:987〜94)、IPIは、死亡までの時間の予測因子であり、IPIを連続変数としてコード化した場合に危険比は1.6となった(CI 1.1〜2.3、p=0.009)。MGMTは現時点でも、このような多変量解析における総生存率の予測因子であった(HR=2.3、CI 1.0〜6.2、p=0.05)。進行するまでの時間に関しては、連続変数としてのIPIも予後的に重要であった(HR=1.4、CI 1.0〜2.0、p=0.02)が、この多変量解析において、MGMTのメチル化が、進行までの時間に依存しない予測因子であることに変わりはなかった(HR 2.2、CI 1.06〜4.9、p=0.03)。
【0082】
複数の仮説で、B−DLCLの生存率の予測にMGMTが果たす予後的な役割を説明できる可能性がある。第一の仮説は、MGMTの過剰メチル化が、より好ましい結果を示すリンパ腫の特異的な病原性サブセットを同定する自然歴の予後マーカーである可能性があるというものである。この説明を完全に無視することはできないが、他に報告された予後マーカーに依存しない可能性がある。経験的に、MGMTのメチル化が正の予後因子ではなく、おそらく負の因子になるとは予測しにくい。というのは、MGMTの過剰メチル化が、いずれも負の予後マーカーであることの多いk−RASおよびp53の変異の形成と関連づけられているからである(Esteller Mら、Cancer Res. 2001;61:4689〜92)。MGMTの過剰メチル化が予後に果たす役割は、全般的なメチル化表現型を示すB−DLCLの臨床上の利益に帰することはできない。というのは、B−DLCLでメチル化されていることの多い他の遺伝子、すなわち細胞死関連タンパク質キナーゼ遺伝子のプロモーターの過剰メチル化(Katzenellenbogen RAら、Blood 1999;93:4347〜4353)は、結果と相関していないからである(発明者らの未発表の観察)。
【0083】
MGMTの過剰メチル化の予後的重要性を説明する別の仮説が、MGMTの不活性化がB−DLCL細胞を、アルキル化剤による遺伝毒性作用を受けやすい状態にするというものである。これは、神経膠腫に関して最近提案されている(Esteller Mら、N Engl J Med. 2000;343:1350〜4)。実際には、DNA修復タンパク質MGMTは、このような薬剤に対する耐性にかかわる重要な要素の一つであり、MGMTがシクロホスファミド活性の調節に少なくともインビトロで役割を果たしていることが複数の報告で示唆されている。これは肺癌(Mattern Jら、Int J Cancer、1998;77:919〜22)、髄芽腫(Friedman HSら、Cancer Chemother Pharmacol. 1999;43:80〜5)、および卵巣(CHO)細胞系列(Cai Yら、Cancer Res. 1999;59:3059〜63)で明らかにされている。したがって、MGMTはメチル化剤およびクロロエチル化剤に対する耐性と長く関連づけられてきたものの、シクロホスファミドの細胞毒性作用および変異原性作用に対する耐性に寄与する可能性もある(Gamcsik MPら、Curr Pharm Des. 1999;5:587〜605)。MGMT活性は、シクロホスファミドの代謝物の一つであるアクロレインの毒性に対する防御に重要であるが、他の代謝物ホスホラミダイトマスタードに由来する毒性はMGMTによって修飾されないと考えられている。MGMTの不活性化によってもたらされるアルキル化剤に対する感受性の上昇は、すべての形質転換細胞の除去か、そうでなければ疾患の再発を招く恐れがある。過剰メチル化を伴うB−DLCLと、過剰メチル化を伴わないB−DLCLの初期反応に統計的な差がないことは、神経膠腫被験者にみられる挙動とは異なり、B−DLCLの標準的な治療に使用される他の強力かつ有効な抗癌剤(メチル化群と非メチル化群との間における反応における大きな差をマスクしてしまう恐れがあるアドリアマイシン、ビンクリスチン、およびエトポシドなど)の存在に起因する可能性がある。
【0084】
以上の知見にかかわらず、MGMTの過剰にメチル化しているB−DLCL被験者における生存率の改善は、シクロホスファミドに対する感受性に確実に帰することはできない。このような結論は、この薬剤が単独で使用された場合に、また非治療対照を調査した場合にのみ現実のものになると思われる。しかし、このような治療法は、B−DLCLに対する多剤療法の有効性を考えれば適切ではない。MGMTの状態と、シクロホスファミドに対するB−DLCLの感受性との関連を説明するための仮想的な間接的アプローチは、MGMT阻害剤O6−ベンジルグアニン(O6−BG)の使用であると考えられる(Dolan ME、およびPegg AE. Clin Cancer Res. 1997:3:837〜47)。O6−BGはMGMTの基質であり、細胞死反応で同タンパク質に結合することでMGMTを不活性化する。この阻害剤は主に、アルキル−ニトロソ尿素に対する反応をインビトロとインビボの両方で高めるために使用されてきたが(Dolan MEら、Proc Natl Acad Sci USA. 1990;87:5368〜72)、O6−BGが、シクロホスファミド代謝物に対する感受性を高めることもわかっている(Cai Yら、Cancer Res. 2001;60:5464〜9)。O6−BGの安全性は、第I相臨床試験で使用可能であることを示している(Schilsky RLら、Clin Cancer Res. 2000;6:3025〜31)。本明細書に記載されている結果は、O6−BGが、メチル化されていないMGMT遺伝子を有するB−DLCLの治療に役割を果たすか否かを判定することを試みるための、動物モデルを対象とした前臨床試験の実施を促すものである。
【0085】
本明細書に記載されている研究から、MGMTプロモーターの過剰メチル化が、B−DLCLの生存率の予後評価に対する新しい独立マーカーとなることがわかる。MGMTプロモーターの過剰メチル化は、BCNUで治療される神経膠腫の被験者における臨床反応の改善、ならびに総生存率および無病生存率の上昇とも相関する。酵素活性ではなく、プロモーターの過剰メチル化の評価は、ヒトの癌におけるMGMTの状態を評価する、より正確な方法になる可能性がある。実際に、正常な浸潤性リンパ球を含む正常細胞の存在は、腫瘍そのものにおけるMGMT活性の判定を困難なものとする恐れがある。本明細書に記載されているPCRによるアプローチでは、浸潤性の正常細胞を除外することで、MGMTが不活性化されている腫瘍と、不活性化されていない腫瘍が、より正確に分けられる可能性がある。MGMTの過剰メチル化は、mRNAの発現の喪失と相関し、MGMT活性の喪失に関連する唯一の機構であると考えられる(Qian XCら、Cancer Res. 1997;57:3672〜7;Watts GSら、Mol Cell Biol. 1997;17:5612〜9;Danamら、Mol Carcinog. 1999;24:85〜9;およびEsteller Mら、Cancer Res. 2000;60:2368〜71)ので、プロモーターの過剰メチル化を評価することでMGMTの機能喪失を調べることができる。このようなアプローチでは、変化の影響(タンパク質発現および酵素活性の喪失)というよりも、病変そのもの(プロモーターの後成的な不活性化)を調べることになる。
【0086】
本発明は、現時点において好ましい態様に関して記載したが、本発明の精神から解離することなく、さまざまな変形形態が可能であると理解されるべきである。したがって本発明は、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは、カルムスチンを投与した、神経膠腫に罹患した被験者を対象とした、MGMTプロモーターのメチル化状態別の総生存率を示す。図1Bは、MGMTプロモーターのメチル化状態別の、疾患進行までの時間。総生存率も疾患進行までの時間も、MGMTプロモーターがメチル化されている被験者群の方が、メチル化されていない被験者群と比べて有意に大きい値を示した。このような関連は、腫瘍の種類、被験者の年齢、および活動度(PS)に関するカルノフスキースコアに依存していなかった。
【図2】シクロホスファミドが投与された、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫における、MGMTプロモーターの過剰メチル化と、それが生存率に及ぼす影響の解析を示す。図2Aは、総生存率がMGMTのメチル化状態の関数であることを示す。図2Bは、不全無しの(failure−free)生存率がMGMTのメチル化状態の関数であることを示す。2Aおよび2Bでは、生存率の有意な上昇が、MGMTのメチル化が異常な被験者で認められ、この有意性は、病期、活動度(PS)、およびLDHレベルに無関係であった。
【図3】びまん性大細胞型B細胞リンパ腫において、MGMTプロモーターのメチル化およびIPI(国際予後指標)が生存率に依存しないことを示す解析を示す。IPIにしたがって低リスク(L)、低−中等度リスク(LI)、高−中等度リスク(HI)、または高リスク(H)に分類された被験者と、視覚的明瞭さに関してはLを上回る被験者を統合した。図3Aは、総生存率が、MGMTのメチル化状態およびIPIの関数であることを示す。図3Bは、不全無しの生存率が、MGMTのメチル化状態およびIPIの関数であることを示す。統計解析はIPIを連続変数として行った。
Claims (39)
- 被験者から単離されたDNA修復酵素をコードする核酸のメチル化状態を判定する段階を含む、治療を必要とする被験者における化学療法剤を用いた治療法に対する臨床反応を予測する方法であって、
治療を必要としない被験者に由来する核酸のメチル化状態と比較して、核酸のメチル化状態が、酵素レベルの予測因子であることを示し;
核酸が、化学療法剤の活性を阻害する酵素をコードし;
このために、化学療法剤を用いた治療法に対する臨床反応を予測する方法。 - DNA修復酵素がO6−メチルグアニン−DNAメチル基転移酵素である、請求項1記載の方法。
- 核酸のメチル化状態が、核酸の調節領域内で判定される、請求項1記載の方法。
- 調節領域がプロモーター領域である、請求項3記載の方法。
- 治療を必要としない被験者に由来する核酸のメチル化状態と比較して、核酸のメチル化状態が過剰メチル化である、請求項1記載の方法。
- 被験者から単離された核酸が、腫瘍細胞に由来する、請求項1記載の方法。
- 腫瘍が脳腫瘍である、請求項6記載の方法。
- 脳腫瘍が、神経膠腫、未分化星状細胞腫、多形性膠芽腫、低悪性度の星細胞腫/膠芽腫、髄芽腫、乏突起細胞腫、または神経芽腫である、請求項7記載の方法。
- 腫瘍がリンパ腫である、請求項6記載の方法。
- リンパ腫がびまん性大細胞型リンパ腫である、請求項9記載の方法。
- びまん性大細胞型リンパ腫がBリンパ球を含む、請求項10記載の方法。
- 腫瘍が肺腫瘍、結腸腫瘍、または頭頚部腫瘍である、請求項6記載の方法。
- メチル化核酸と非メチル化核酸を区別する少なくとも一本のセンスプライマー、および少なくとも一本のアンチセンスプライマーを含むプライマー対で核酸を増幅する段階を含む、メチル化状態を判定する、請求項1記載の方法。
- プライマー対を含むプライマーが、配列番号:1および配列番号:2、または配列番号:3および配列番号:4に記載された配列を有する、請求項13記載の方法。
- 核酸にメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを接触させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
- メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼが、MspI、HpaII、BssHII、BstUI、およびNotIからなる群より選択される、請求項15記載の方法。
- 臨床反応が、腫瘍の退縮、無病生存、または生存である、請求項1記載の方法。
- 化学療法剤がアルキル化剤である、請求項1記載の方法。
- アルキル化剤が、カルムスチン、ロムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、ダカルバジン、テモゾロミド、またはプロカルバジンである、請求項18記載の方法。
- 被験者から単離された核酸のメチル化状態を判定することにより、治療法に対する臨床反応を予測する段階を含む、被験者の細胞増殖性疾患を、アルキル化化学療法剤で治療する方法であって;
核酸がアルキル化化学療法剤の活性を阻害するDNA修復酵素をコードし;
治療を必要としない被験者に由来する核酸のメチル化状態と比較した場合の核酸のメチル化状態が、酵素レベルの予測因子であることを示す方法。 - DNA修復酵素がO6−メチルグアニン−DNAメチル基転移酵素である、請求項20記載の方法。
- 核酸のメチル化状態が核酸の調節領域内で評価される、請求項21記載の方法。
- 調節領域がプロモーター領域である、請求項22記載の方法。
- 核酸のメチル化状態が、治療を必要としない被験者の核酸のメチル化状態と比較して過剰メチル化である、請求項20記載の方法。
- 被験者から単離された核酸が腫瘍細胞に由来する、請求項20記載の方法。
- 腫瘍が脳腫瘍である、請求項25記載の方法。
- 脳が神経膠腫、未分化星状細胞腫、多形性膠芽腫、低悪性度の星細胞腫/膠芽腫、髄芽腫、乏突起細胞腫、または神経芽腫である、請求項26記載の方法。
- 腫瘍がリンパ腫である、請求項25記載の方法。
- リンパ腫がびまん性大細胞型リンパ腫である、請求項28記載の方法。
- びまん性大細胞型リンパ腫がBリンパ球を含む、請求項29記載の方法。
- 腫瘍が肺腫瘍、結腸腫瘍、または頭頚部腫瘍である、請求項25記載の方法。
- メチル化核酸と非メチル化核酸を区別する、少なくとも一本のセンスプライマー、および少なくとも一本のアンチセンスプライマーを含むプライマー対により核酸を増幅する段階を含む、メチル化状態を判定する、請求項20記載の方法。
- プライマー対を含むプライマーが、配列番号:1および配列番号:2、または配列番号:3および配列番号:4に記載された配列を含む、請求項32記載の方法。
- 臨床反応が、腫瘍の退縮、無病生存、または生存である、請求項20記載の方法。
- アルキル化剤がカルムスチン、ロムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、ダカルバジン、テモゾロミド、またはプロカルバジンである、請求項20記載の方法。
- 以下を含む、被験者の細胞増殖性疾患の化学療法による治療に対する反応を予測するためのキット:
(a)非メチル化シトシンヌクレオチドを修飾する試薬;
(b)プライマー対が、メチル化核酸と非メチル化核酸を区別する、少なくとも一本のセンスプライマー、および少なくとも一本のアンチセンスプライマーを含み、またプライマー対を含むプライマーが、配列番号:1および配列番号:2、または配列番号:3および配列番号:4に記載された配列を有する、DNA修復酵素の調節領域中のCpG含有核酸を増幅するための少なくとも1組のプライマー対。 - DNA修復酵素がO6−メチルグアニン−DNAメチル基転移酵素である、請求項36記載のキット。
- 配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、または配列番号:4に記載されたヌクレオチド配列を有する、単離された核酸配列。
- プライマー対を含むプライマーが、配列番号:1および配列番号:2、または配列番号:3、および配列番号:4に記載された配列を有し、メチル化核酸と非メチル化核酸を区別する、少なくとも一本のセンスプライマー、および少なくとも一本のアンチセンスプライマーを含むプライマー対により核酸を増幅する段階を含む、O6−メチルグアニン−DNAメチル基転移酵素(MGMT)をコードする核酸のメチル化状態を決定する方法。
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