JP2004346813A - Lpg燃料エンジンおよびlpg燃料エンジンの運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制し、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することを目的とする。
【解決手段】LPG燃料エンジン1は、LPG燃料を各燃焼室2の内部で燃焼させて動力を発生するものであり、LPG燃料を貯留する燃料タンク10と、LPG燃料を噴射可能な複数のインジェクタ4と、燃料タンク10と各インジェクタ4との間に配置され、LPG燃料を圧送する低圧ポンプ11および高圧ポンプ12と、ECU20とを備え、ECU20は、燃料タンク10内のLPG燃料の性状および高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料や、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されるLPG燃料がベーパ化しないように低圧ポンプ11や高圧ポンプ12を制御する。
【選択図】 図1
【解決手段】LPG燃料エンジン1は、LPG燃料を各燃焼室2の内部で燃焼させて動力を発生するものであり、LPG燃料を貯留する燃料タンク10と、LPG燃料を噴射可能な複数のインジェクタ4と、燃料タンク10と各インジェクタ4との間に配置され、LPG燃料を圧送する低圧ポンプ11および高圧ポンプ12と、ECU20とを備え、ECU20は、燃料タンク10内のLPG燃料の性状および高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料や、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されるLPG燃料がベーパ化しないように低圧ポンプ11や高圧ポンプ12を制御する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンおよびその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンとして、液相状態にあるLPG燃料が燃焼室内に直接噴射されるものや、液相状態にあるLPG燃料が吸気ポート内に噴射されるものが知られている。一般に、この種のLPG燃料エンジンは、液相状態にあるLPG燃料を貯留する燃料タンクと、燃焼室内または吸気ポート内にLPG燃料を噴射可能なインジェクタと、燃料タンクからインジェクタにLPG燃料を供給するためのポンプとを備える。
【0003】
ここで、LPG燃料の飽和蒸気圧は、高温になればなるほど高まることから、LPG燃料エンジンの運転状態や周囲環境によっては、燃料タンクからインジェクタへと圧送される間に液相状態にあるLPG燃料の一部がベーパ化し、燃焼室内または吸気ポート内に気液混合状態のLPG燃料が噴射されてしまうことがある。このように、気液混合状態にあるLPG燃料がインジェクタから燃焼室内等に噴射されてしまうと、LPG燃料の調量精度が悪化してしまい、適正な燃料噴射量が得られなくなるので、エンジンを所望の条件で動作させることが困難となる。
【0004】
上述のような問題点を解消するための技術としては、従来から、液相状態にあるLPG燃料を燃焼室内に噴射する液相燃料噴射用インジェクタと、気相状態にあるLPG燃料を燃焼室内に噴射する気相燃料噴射用インジェクタとを備えたLPG燃料エンジンが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このLPG燃料エンジンでは、LPG燃料がベーパ化するおそれがある場合に、気相燃料噴射用インジェクタから燃料が燃焼室内に噴射され、LPG燃料がベーパ化するおそれがない場合には、液相燃料噴射用インジェクタから燃料が燃焼室内に噴射される。
【0005】
また、従来から、液相状態にあるLPG燃料を吸気ポート内に噴射する液相燃料噴射用インジェクタと、気相状態にあるLPG燃料を吸気ポートよりも上流側の吸気管内に噴射する気相燃料噴射用インジェクタとを備えたLPG燃料エンジンも知られている(例えば、特許文献2参照。)。このLPG燃料エンジンでは、LPG燃料の圧力やエンジン冷却水の温度に基づいて液相燃料噴射用インジェクタにおけるベーパの発生の程度が把握され、ベーパの発生の程度に応じて、燃料の不足分を補うように気相燃料噴射用インジェクタから気相状態にあるLPG燃料が吸気管内に噴射される。
【0006】
更に、気液混合状態にあるLPG燃料の噴射を抑制するための技術としては、特許文献3に記載のLPG燃料エンジンも知られている。このLPG燃料エンジンは、燃料タンクから液相のLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとを備える。そして、このLPG燃料エンジンでは、高圧ポンプの吸入口がバイパス管を介して燃料タンクと接続されており、バイパス管を介して、低圧ポンプと高圧ポンプとの間で発生したベーパを燃料タンクに戻すことにより、高圧ポンプの昇圧部にベーパが流入することを抑制している。
【0007】
【特許文献1】
特公平7−26596号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2001−107805号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2001−349256号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、LPG燃料の蒸気圧は相対的に低く、また、燃料性状によっても異なるものである。更に、LPG燃料エンジンの運転状態や周囲環境は大きな幅をもって変動するものである。このため、上述のような対策が施された従来のLPG燃料エンジンにおいても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に防止することができず、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することは依然として困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制し、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保可能とするLPG燃料エンジンおよびその運転方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によるLPG燃料エンジンは、LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンにおいて、LPG燃料を貯留する燃料タンクと、LPG燃料を噴射可能なインジェクタと、燃料タンクとインジェクタとの間に配置され、LPG燃料を圧送するポンプと、LPG燃料の性状およびポンプとインジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料の温度に基づいて、所定箇所にてLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、所定箇所におけるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するようにポンプを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
このLPG燃料エンジンでは、インジェクタからLPG燃料を噴射させるに際して、LPG燃料の性状と、ポンプとインジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料の温度とが取得され、取得された燃料性状および燃料温度は制御手段に与えられる。そして、制御手段は、これらの燃料性状および燃料温度に基づいて、当該所定箇所にてLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、当該所定箇所におけるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するようにポンプを制御する。
【0014】
これにより、このLPG燃料エンジンでは、ポンプとインジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料のベーパ化が確実に抑制される。従って、このLPG燃料エンジンによれば、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することができるので、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することが可能となる。
【0015】
また、ポンプには、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプとインジェクタとの間に配置されており、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとが含まれ、制御手段は、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するように低圧ポンプを制御するものであると好ましい。
【0016】
一般に、LPG燃料は、性能を十分に確保する等の観点から、液相状態で噴射されると好ましく、このため、このLPG燃料エンジンでは、ポンプとして、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、低圧ポンプからのLPG燃料を昇圧させる高圧ポンプとが用いられる。そして、このLPG燃料エンジンでは、インジェクタからLPG燃料を噴射させるに際して、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度(高圧ポンプの吸入口におけるLPG燃料の温度)とが取得され、制御手段に与えられる。
【0017】
制御手段は、取得された燃料性状と、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の圧力(高圧ポンプの吸入口におけるLPG燃料の圧力)と目標圧力とが一致するように低圧ポンプを制御する。これにより、このLPG燃料エンジンでは、高圧ポンプの昇圧部に気液混合状態のLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することができるので、高圧ポンプによるLPG燃料の昇圧不良や、高圧ポンプの焼き付きといったトラブルを確実に防止することが可能となる。
【0018】
更に、本発明によるLPG燃料エンジンは、高圧ポンプの吸入口周辺およびインジェクタの燃料入口周辺の少なくとも何れか一方と、燃料タンクとを接続する返送管を更に備えると好ましい。
【0019】
このような構成を採用すれば、仮に高圧ポンプの吸入口周辺またはインジェクタの燃料入口周辺でLPG燃料がベーパ化してしまったとしても、返送管を介してLPG燃料のベーパを燃料タンクに戻して、高圧ポンプの昇圧部やインジェクタに気液混合状態のLPG燃料が流入してしまうことを極めて確実に抑制することが可能となる。
【0020】
また、本発明によるLPG燃料エンジンは、高圧ポンプの吸入口周辺およびインジェクタの燃料入口周辺の少なくとも何れか一方と、低圧ポンプと高圧ポンプとを結ぶ低圧配管とを接続する返送管を更に備え、制御手段は、低圧配管内のLPG燃料の温度および返送管内のLPG燃料の温度のうちの高い方と、燃料タンク内のLPG燃料の性状とに基づいて目標圧力を定めるものであってもよい。
【0021】
このような構成を採用しても、高圧ポンプの昇圧部やインジェクタに気液混合状態のLPG燃料が流入してしまうことを極めて確実に抑制することが可能となる。また、この場合、仮にLPG燃料のベーパが返送管を介して低圧配管に返送されてしまったとしても、低圧配管内のLPG燃料の温度と返送管内のLPG燃料の温度のうちの高い方に基づいて目標圧力を定めることにより、高圧ポンプ(昇圧部)にベーパ化したLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することが可能となる。
【0022】
更に、制御手段は、目標圧力が低圧ポンプの最低吐出圧力を下回ることになる場合に、最低吐出圧力を目標圧力として設定するものであると好ましい。
【0023】
また、ポンプには、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプとインジェクタとの間に配置されており、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとが含まれ、制御手段は、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するように高圧ポンプを制御するものであるとよい。
【0024】
一般に、LPG燃料を圧送する低圧ポンプおよび高圧ポンプを備えたLPG燃料エンジンでは、高圧ポンプによって昇圧されたLPG燃料がベーパ化してしまうことは少ないが、エンジンが一旦停止させられた後、ごく短時間のうちに再始動される場合や、高温環境下におかれているエンジンが始動される場合のように、燃料系統内のLPG燃料が昇温している状態でエンジンが始動される場合、高圧ポンプによって昇圧されたLPG燃料がベーパ化してしまうこともあり得る。
【0025】
この点に鑑みて、このLPG燃料エンジンでは、例えばエンジン始動時に、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度(インジェクタの燃料入口におけるLPG燃料の温度)とが取得され、制御手段に与えられる。そして、制御手段は、取得された燃料性状と、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の圧力(インジェクタの燃料入口におけるLPG燃料の圧力)と目標圧力とが一致するように高圧ポンプを制御する。
【0026】
これにより、このLPG燃料エンジンでは、LPG燃料が昇温している状態で始動される高温始動時においても、高圧ポンプから吐出されてインジェクタに導入されるLPG燃料のベーパ化が確実に抑制される。従って、このLPG燃料エンジンによれば、高温始動時においても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することができるので、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することが可能となる。
【0027】
本発明によるLPG燃料エンジンの運転方法は、LPG燃料を貯留する燃料タンクと、LPG燃料を噴射可能なインジェクタと、燃料タンクとインジェクタとの間に配置されたポンプとを備え、LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンの運転方法であって、PG燃料の性状を取得すると共に、ポンプとインジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料の温度を取得し、取得した燃料性状および燃料温度に基づいて所定箇所にてLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、所定箇所におけるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するようにポンプを制御することを特徴とする。
【0028】
また、ポンプとして、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプとインジェクタとの間に配置されており、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとを用い、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するように低圧ポンプを制御すると好ましい。
【0029】
更に、目標圧力が低圧ポンプの最低吐出圧力を下回ることになる場合に、最低吐出圧力を目標圧力として設定すると好ましい。
【0030】
また、ポンプとして、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプとインジェクタとの間に配置されており、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとを用い、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するように高圧ポンプを制御すると好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明によるLPG燃料エンジンおよびその運転方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明によるLPG燃料エンジンを示す概略構成図である。同図に示されるLPG燃料エンジン1は、液化プロパンガス燃料や液化ブタンガス燃料といったLPG燃料(液化石油ガス燃料)を用いる直列4気筒エンジンとして構成されており、車両の走行駆動源として用いられると好適なものである。このLPG燃料エンジン1は、エンジンブロックに形成された複数の燃焼室2を有し、各燃焼室2の内部でLPG燃料(本実施形態では、液化プロパンガス燃料)を燃焼させてピストン3を往復移動させることにより動力を発生する。
【0033】
LPG燃料エンジン1は、図1に示されるように、それぞれ対応する燃焼室2の内部に臨むようにシリンダヘッドに配設された複数のインジェクタ4と複数の点火プラグ(図示省略)とを有する。また、LPG燃料エンジン1の各ピストン3は、いわゆる深皿頂面型に構成されており、その上面には、凹部3aが形成されている。そして、このLPG燃料エンジン1では、各燃焼室2内に空気を吸入させた状態で、各インジェクタ4から各燃焼室2内のピストン3の凹部3aに向けてLPG燃料が直接噴射される。
【0034】
これにより、LPG燃料エンジン1では、図示されない点火プラグの近傍にLPG燃料と空気との混合気の層が周囲の空気層と分離された状態で形成(成層化)される。この結果、LPG燃料エンジン1では、極めて希薄な混合気を用いて安定した成層燃焼を実行することが可能となる。なお、本実施形態のLPG燃料エンジン1は、いわゆる直噴エンジンとして説明されるが、これに限られるものではなく、本発明が吸気管(吸気ポート)噴射式のエンジンにも適用され得ることはいうまでもない。
【0035】
また、LPG燃料エンジン1のシリンダヘッドには、吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが各燃焼室2ごとに配設されている。これらの吸気弁および排気弁は、例えば可変バルブタイミング機能を有する図示されない動弁機構によって開閉させられる。そして、各燃焼室2の吸気ポートは、それぞれ吸気管(吸気マニホールド)5に接続され、吸気管5には、例えばドライブバイワイヤ式のスロットルバルブ6が設置されている。一方、各燃焼室2の排気ポートは、排気管(排気マニホールド)7にそれぞれ接続されている。
【0036】
更に、上述のような成層希薄燃焼運転が実行されると、LPG燃料エンジン1からの排気ガス中のNOx(窒素酸化物)が増加することを踏まえて、排気管7には、三元触媒を含む前段触媒装置8に加えて、NOx吸蔵還元触媒を含む後段触媒装置9が接続されている。これにより、各燃焼室2から各排気弁を介して排出される排気ガス中のNOxは、後段触媒装置9のNOx吸蔵還元触媒によって吸蔵される。NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxは、後段触媒装置9に対して所定のタイミングで実行される還元処理によって還元される。
【0037】
さて、LPG燃料エンジン1では、LPG燃料が燃料タンク10の内部に液相状態で貯留され、性能の確保に必要な空気量を十分に確保する等の観点から、LPG燃料は上述の各インジェクタ4から各燃焼室2の内部に液相状態で噴射される。そして、LPG燃料を液相状態で各燃焼室2の内部に噴射するために、LPG燃料エンジン1は、燃料タンク10に接続された低圧ポンプ11と、低圧ポンプ11と各インジェクタ4との間に配された高圧ポンプ12とを含む。
【0038】
本実施形態では、低圧ポンプ11および高圧ポンプ12として、デューティ制御可能な電動ポンプが採用される。そして、低圧ポンプ11の吐出口は、低圧配管14を介して高圧ポンプ12の吸入口に接続されている。また、高圧ポンプ12の吐出口は、デリバリ管(分配管)15に接続されており、このデリバリ管15には、各インジェクタ4の燃料入口が接続されている。これにより、液相状態のLPG燃料は、低圧ポンプ11によって燃料タンク10から吸い出されて高圧ポンプ12へと送り出され、更に、高圧ポンプ12によって昇圧されてデリバリ管15を介して各インジェクタ4へと供給されることになる。
【0039】
また、図1に示されるように、燃料タンク10には、その内部圧力(蒸気圧)を検出する圧力センサPtと、その内部温度を検出する温度センサTtとが備えられている。更に、低圧ポンプ11と高圧ポンプ12とを結ぶ低圧配管14の高圧ポンプ12の近傍には、その内部を流通するLPG燃料の圧力を検出する圧力センサPpと、その内部を流通するLPG燃料の温度を検出する温度センサTpとが備えられている。同様に、各インジェクタ4の燃料入口が接続されているデリバリ管15には、その内部に存在するLPG燃料の圧力を検出する圧力センサPdと、その内部に存在するLPG燃料の温度を検出する温度センサTdとが備えられている。
【0040】
更に、本実施形態のLPG燃料エンジン1では、高圧ポンプ12の吸入口と燃料タンク10の上部とが返送管16によって連通されている。また、返送管16の高圧ポンプ12側の端部からは、分岐部16aが分岐されており、分岐部16aの端部は、デリバリ管15に接続されている。これにより、LPG燃料エンジン1では、燃料タンク10の内部の気相領域と、高圧ポンプ12の吸入口周辺およびデリバリ管15の内部、すなわち、各インジェクタ4の燃料入口周辺とが返送管16を介して連通されることになる。
【0041】
このような返送管16をLPG燃料エンジン1に対して備えておくことにより、万が一、高圧ポンプ12の吸入口周辺や、デリバリ管15の内部、すなわち、各インジェクタ4の燃料入口周辺でLPG燃料がベーパ化してしまったとしても、返送管16を介してLPG燃料のベーパを燃料タンク10に戻すことできる。従って、LPG燃料エンジン1では、高圧ポンプ12の昇圧部や各インジェクタ4に気液混合状態のLPG燃料が流入してしまうことを極めて確実に抑制することが可能となる。
【0042】
そして、上述のように構成されるLPG燃料エンジン1は、制御手段として機能する電子制御ユニット(ECU)20を含む。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポートおよび記憶装置等を含むものである。図1に示されるように、燃料タンク10の圧力センサPtおよび温度センサTt、低圧配管14の圧力センサPpおよび温度センサTpならびにデリバリ管15の圧力センサPdおよび温度センサTdは、それぞれECU20の入出力ポートに接続されている。各圧力センサPt,PpおよびPdならびに各温度センサTt,TpおよびTdは、それぞれ検出値を示す信号をECU20に与える。
【0043】
また、ECU20の入出力ポートには、上述の低圧ポンプ11および高圧ポンプ12、更には、上述の各インジェクタ4、スロットルバルブ6、点火プラグ(イグナイタ)、動弁機構、アクセル位置センサや回転数センサといった各種センサ類等が接続される。ECU20は、記憶装置に記憶されている各種マップ等を用いると共に、各種センサの検出値等に基づいて、LPG燃料エンジン1が所望の出力を発生するように、低圧ポンプ11および高圧ポンプ12の動作、インジェクタ4の開弁タイミング、スロットルバルブ6の開度、更には、各吸気弁および各排気弁の開閉動作等を制御する。
【0044】
次に、図2〜図5を参照しながら、上述のように構成されるLPG燃料エンジン1の動作について説明する。
【0045】
まず、LPG燃料エンジン1の始動時における動作について説明すると、エンジン1を始動させるに際しては、ECU20によって図2に示される始動モードにおける処理が実行される。この場合、ECU20は、ユーザによってイグニッションスイッチが操作されると、燃料タンク10の圧力センサPtおよび温度センサTtから受け取った信号より、燃料タンク10の内部圧力および内部温度を取得する(S10)。
【0046】
更に、ECU20は、記憶装置から図3に例示されるような燃料性状特定マップを読み出す。図3に例示される燃料性状特定マップは、燃料タンク10の内部圧力(蒸気圧)および内部温度と、燃料タンク10の内部に貯留されているLPG燃料の性状(本実施形態では、プロパン比)との関係を規定するものであり、予め実験やシミュレーション等に基づいて作成されている。そして、ECU20は、読み出した燃料性状特定マップから、S10にて取得した燃料タンク10の内部圧力と内部温度とに対応する燃料性状の値(プロパン比)を求める(S12)。
【0047】
上述のようにして燃料タンク10内のLPG燃料の性状を特定すると、ECU20は、S14にて、デリバリ管15の温度センサTdから受け取った信号より、デリバリ管15内のLPG燃料の温度、すなわち、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されることになるLPG燃料の温度を取得すると共に、記憶装置から図4に例示されるようなベーパ未発生圧力特定マップを読み出す。図4に例示されるベーパ未発生圧力特定マップは、LPG燃料の性状(プロパン比)および温度と、LPG燃料がベーパ化しない圧力との関係を規定するものであり、予め実験やシミュレーション等に基づいて作成されている。そして、ECU20は、ベーパ未発生圧力特定マップから、S12にて取得した燃料性状と、デリバリ管15内のLPG燃料の温度とに対応するベーパ未発生圧力を求める(S14)。
【0048】
S14の処理を実行した後、ECU20は、記憶装置に記憶されている所定のマップから、予め定められているエンジン始動時におけるデリバリ管15の内部圧力の目標値(目標圧力)を読み出し、この目標値と、S14にて求めたベーパ未発生圧力とを比較する(S16)。
【0049】
ここで、LPG燃料を圧送する低圧ポンプ11および高圧ポンプ12を備えたLPG燃料エンジン1では、高圧ポンプ12によって昇圧されたLPG燃料がデリバリ管15の内部等においてベーパ化してしまうことは一般に少ない。しかしながら、エンジン1が一旦停止させられた後、ごく短時間のうちに再始動される場合や、高温環境下におかれているエンジン1が始動される場合のように、燃料系統内のLPG燃料が昇温している状態でエンジン1が始動される場合、高圧ポンプ12によって昇圧されたLPG燃料がデリバリ管15の内部で各インジェクタ4に導入される前にベーパ化してしまうこともあり得る。
【0050】
この点に鑑みて、ECU20は、S14にて求めたベーパ未発生圧力が、予め定められているエンジン始動時におけるデリバリ管15の内部圧力の目標値を上回っていると判断した場合(S16)、S14にて求めたベーパ未発生圧力を目標圧力として再設定する(S18)。すなわち、LPG燃料エンジン1の始動時(再始動時を含む)には、基本的に、燃料タンク10内のLPG燃料の性状と、デリバリ管15内のLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力が定められることになる。
【0051】
S18にて目標圧力を定めると、ECU20は、新たな目標圧力に応じた各インジェクタ4の開弁時間等を設定した上で、低圧ポンプ11を所定条件で作動させる。そして、ECU20は、これとほぼ同時に、デリバリ管15の圧力センサPdの検出値、すなわち、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されることになるLPG燃料の圧力と、目標圧力とが一致するように高圧ポンプ12をフィードバック制御しながら、LPG燃料エンジン1のクランキングを開始させる(S20)。
【0052】
これにより、LPG燃料エンジン1では、LPG燃料が昇温している状態で始動される高温始動時においても、高圧ポンプ12から吐出されて各インジェクタ4に導入されるLPG燃料のベーパ化が確実に抑制される。従って、LPG燃料エンジン1によれば、高温始動時においても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することができるので、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することが可能となる。
【0053】
一方、S16にて上述のベーパ未発生圧力がエンジン始動時におけるデリバリ管15の内部圧力の目標値以下であると判断した場合(S16)、ECU20は、目標圧力の再設定を実行することなく、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されることになるLPG燃料の圧力が、エンジン始動時におけるデリバリ管15の内部圧力の当初の目標値と一致するように高圧ポンプ12をフィードバック制御する(S20)。そして、上述のような図2における一連の処理は、例えば、LPG燃料エンジン1がアイドル状態にある際、ECU20により、繰り返し実行されることになる。
【0054】
また、LPG燃料エンジン1がアイドル状態にある際にユーザによりアクセルが操作されると、ECU20は、図5に示される通常運転モードにおける処理を実行する。この場合、ECU20は、図2の始動モードの場合と同様に、まず、燃料タンク10の圧力センサPtおよび温度センサTtから受け取った信号より、燃料タンク10の内部圧力および内部温度を取得する(S30)。更に、ECU20は、記憶装置から図3に例示された燃料性状特定マップを読み出し、読み出した燃料性状特定マップから、S30にて取得した燃料タンク10の内部圧力と内部温度とに対応する燃料性状の値(プロパン比)を求める(S32)。
【0055】
燃料タンク10内のLPG燃料の性状を特定すると、ECU20は、S34にて、低圧配管14の温度センサTpから受け取った信号より、低圧配管14内のLPG燃料の温度、すなわち、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料の温度を取得すると共に、記憶装置から図4に例示されたベーパ未発生圧力特定マップを読み出す。このベーパ未発生圧力特定マップから、ECU20は、S32にて取得した燃料性状と、低圧配管14内のLPG燃料の温度とに対応するベーパ未発生圧力を求める(S34)。
【0056】
S34の処理を実行した後、ECU20は、S34にて求めたベーパ未発生圧力と、低圧ポンプ11の最低吐出圧力とを比較する(S36)。そして、ECU20は、ベーパ未発生圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力を上回っている場合には、S34にて求めたベーパ未発生圧力を目標圧力として設定する(S38)。すなわち、LPG燃料エンジン1の通常運転時には、基本的に、燃料タンク10内の燃料の性状と、低圧配管14内のLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力が定められることになる。
【0057】
S38にて目標圧力を定めると、ECU20は、目標圧力に応じた各インジェクタ4の開弁時間等を設定した上で、低圧配管14の圧力センサPpの検出値、すなわち、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料の圧力と、目標圧力とが一致するように低圧ポンプ11をフィードバック制御する(S40)。また、ECU20は、低圧ポンプ11のフィードバック制御を開始するのとほぼ同時に高圧ポンプ12を所定条件で作動させる。これにより、LPG燃料エンジン1によれば、高圧ポンプ12の昇圧部に気液混合状態のLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することができるので、高圧ポンプ12によるLPG燃料の昇圧不良や、高圧ポンプ12の焼き付きといったトラブルを確実に防止することが可能となる。
【0058】
更に、上述のように高圧ポンプ12の昇圧部よりも上流側でLPG燃料がベーパ化していなければ、一般に数MPa以上になる高圧ポンプ12の昇圧部よりも下流側のデリバリ管15の内部や各インジェクタ4においてLPG燃料がベーパ化してしまうおそれは極めて少なくなる。従って、LPG燃料エンジン1では、通常運転時においても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することが可能となり、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することができる。
【0059】
一方、S36にて上述のベーパ未発生圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力以下であると判断した場合、ECU20は、低圧ポンプ11の最低吐出圧力を目標圧力として設定した後(S42)、上述のS40における処理を実行する。すなわち、LPG燃料エンジン1では、目標圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力を下回ってしまうような場合、S42にて、最低吐出圧力が目標圧力として定められることになる。これにより、低圧ポンプ11が不安定に制御されてしまうことを確実に防止可能となる。そして、上述のような図5における一連の処理は、LPG燃料エンジン1の通常運転中、ECU20により、繰り返し実行されることになる。
【0060】
以下、図6および図7を参照しながら、本発明によるLPG燃料エンジンの他の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態に関連して説明されたものと同一の要素には同一の参照符号が付され、重複する説明は省略される。
【0061】
図6に示されるLPG燃料エンジン1Aでは、高圧ポンプ12の吸入口やデリバリ管15が返送管16を介して燃料タンク10に接続される代わりに、低圧ポンプ11と高圧ポンプ12とを結ぶ低圧配管14に接続されている。この場合、返送管16には、低圧配管14からのLPG燃料の流入を規制する逆止弁(差圧弁)17が設けられており、返送管16から低圧配管14へのLPG燃料の流入は、返送管16内のLPG燃料の圧力が、低圧配管14内のLPG燃料の圧力よりも高い場合にのみ許容される。更に、返送管16には、逆止弁17よりも上流側に圧力センサPrおよび温度センサTrが備えられている。圧力センサPrは、返送管16を流通するLPG燃料の圧力を検出し、温度センサTrは、返送管16内を流通するLPG燃料の圧力を検出する。
【0062】
このように構成されるLPG燃料エンジン1Aにおいても、万が一、高圧ポンプ12の吸入口周辺や、デリバリ管15の内部、すなわち、各インジェクタ4の燃料入口周辺でLPG燃料がベーパ化してしまったとしても、返送管16を介してLPG燃料のベーパを低圧配管14に戻すことができる。従って、高圧ポンプ12の昇圧部や各インジェクタ4に気液混合状態のLPG燃料が流入してしまうことを極めて確実に抑制することが可能となる。また、LPG燃料エンジン1Aでは、デリバリ管15内で高温になったLPG燃料が燃料タンク10へと返送されることはないので、燃料タンク10内に返送された高温のLPG燃料により燃料タンク10内でのLPG燃料のベーパ化が助長されてしまうことを防止することができる。
【0063】
そして、このLPG燃料エンジン1Aでは、アイドル状態にある際にユーザによりアクセルが操作されると、ECU20により図7に示される通常運転モードにおける処理が実行される。この場合、ECU20は、まず、燃料タンク10の圧力センサPtおよび温度センサTtから受け取った信号より、燃料タンク10の内部圧力および内部温度を取得する(S30)。更に、ECU20は、記憶装置から図3に例示されたような燃料性状特定マップを読み出し、読み出した燃料性状特定マップから、S30にて取得した燃料タンク10の内部圧力と内部温度とに対応する燃料性状の値(プロパン比)を求める(S52)。
【0064】
燃料タンク10内のLPG燃料の性状を特定すると、ECU20は、S54にて、低圧配管14の温度センサTpから受け取った信号より、低圧配管14の内のLPG燃料の温度、すなわち、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料の温度を取得すると共に、返送管16の温度センサTrから受け取った信号より、返送管16内のLPG燃料の温度を取得する。そして、ECU20は、低圧配管14内のLPG燃料の温度と、返送管16内のLPG燃料の温度とを比較し、両者のうちの高い方を参照温度として定める(S56)。
【0065】
S56にて参照温度を定めると、ECU20は、記憶装置から図4に例示されたようなベーパ未発生圧力特定マップを読み出し、このベーパ未発生圧力特定マップから、S52にて取得した燃料性状と、S56にて定めた参照温度とに対応するベーパ未発生圧力を求める(S58)。更に、ECU20は、S58にて求めたベーパ未発生圧力と、低圧ポンプ11の最低吐出圧力とを比較し(S60)、ベーパ未発生圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力を上回っている場合には、S58にて求めたベーパ未発生圧力を目標圧力として設定する(S62)。
【0066】
これにより、LPG燃料エンジン1Aにおいても、燃料タンク10内の燃料の性状と、上述の参照温度とに基づいて、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力(ベーパ未発生圧力)が定められることになる。この場合、仮に高圧ポンプ12の吸入口やデリバリ管15からLPG燃料のベーパが返送管16を介して低圧配管14に返送されてしまったとしても、上述のように、低圧配管14内における燃料温度および返送管16内における燃料温度のうちの高い方の温度を参照温度としておけば、高圧ポンプ12(昇圧部)にベーパ化したLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することが可能となる。
【0067】
ECU20は、S62にて目標圧力を定めた後、目標圧力に応じた各インジェクタ4の開弁時間等を設定した上で、低圧配管14の圧力センサPpの検出値、すなわち、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料の圧力と、目標圧力とが一致するように低圧ポンプ11をフィードバック制御する(S64)。また、ECU20は、低圧ポンプ11のフィードバック制御を開始するのとほぼ同時に高圧ポンプ12を所定条件で作動させる。これにより、LPG燃料エンジン1Aにおいても、高圧ポンプ12の昇圧部に気液混合状態のLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することができるので、高圧ポンプ12によるLPG燃料の昇圧不良や、高圧ポンプ12の焼き付きといったトラブルを確実に防止することが可能となる。
【0068】
更に、上述のように高圧ポンプ12の昇圧部よりも上流側でLPG燃料がベーパ化していなければ、一般に数MPa以上になる高圧ポンプ12の昇圧部よりも下流側のデリバリ管15の内部や各インジェクタ4においてLPG燃料がベーパ化してしまうおそれは極めて少なくなる。従って、LPG燃料エンジン1Aにおいても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することが可能となり、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することができる。
【0069】
一方、S60にて上述のベーパ未発生圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力以下であると判断した場合、ECU20は、低圧ポンプ11の最低吐出圧力を目標圧力として設定した後(S66)、上述のS64における処理を実行する。そして、図5における一連の処理は、LPG燃料エンジン1Aの通常運転中、ECU20によって繰り返し実行されることになる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明されたように、本発明によれば、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制し、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるLPG燃料エンジンを示す概略構成図である。
【図2】図1に示されるLPG燃料エンジンの始動時における動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】LPG燃料の性状を特定するために用いられるマップを説明するための図表である。
【図4】ベーパ未発生圧力を特定するために用いられるマップを説明するための図表である。
【図5】図1に示されるLPG燃料エンジンの通常運転時における動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明によるLPG燃料エンジンの他の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】図6に示されるLPG燃料エンジンの通常運転時における動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1,1A LPG燃料エンジン
2 燃焼室
3 ピストン
3a 凹部
4 インジェクタ
5 吸気管
6 スロットルバルブ
7 排気管
8 前段触媒装置
9 後段触媒装置
10 燃料タンク
11 低圧ポンプ
12 高圧ポンプ
14 低圧配管
15 デリバリ管
16 返送管
17 逆止弁
20 ECU
Pd,Pp,Pr,Pt 圧力センサ
Td,Tp,Tr,Tt 温度センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンおよびその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンとして、液相状態にあるLPG燃料が燃焼室内に直接噴射されるものや、液相状態にあるLPG燃料が吸気ポート内に噴射されるものが知られている。一般に、この種のLPG燃料エンジンは、液相状態にあるLPG燃料を貯留する燃料タンクと、燃焼室内または吸気ポート内にLPG燃料を噴射可能なインジェクタと、燃料タンクからインジェクタにLPG燃料を供給するためのポンプとを備える。
【0003】
ここで、LPG燃料の飽和蒸気圧は、高温になればなるほど高まることから、LPG燃料エンジンの運転状態や周囲環境によっては、燃料タンクからインジェクタへと圧送される間に液相状態にあるLPG燃料の一部がベーパ化し、燃焼室内または吸気ポート内に気液混合状態のLPG燃料が噴射されてしまうことがある。このように、気液混合状態にあるLPG燃料がインジェクタから燃焼室内等に噴射されてしまうと、LPG燃料の調量精度が悪化してしまい、適正な燃料噴射量が得られなくなるので、エンジンを所望の条件で動作させることが困難となる。
【0004】
上述のような問題点を解消するための技術としては、従来から、液相状態にあるLPG燃料を燃焼室内に噴射する液相燃料噴射用インジェクタと、気相状態にあるLPG燃料を燃焼室内に噴射する気相燃料噴射用インジェクタとを備えたLPG燃料エンジンが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このLPG燃料エンジンでは、LPG燃料がベーパ化するおそれがある場合に、気相燃料噴射用インジェクタから燃料が燃焼室内に噴射され、LPG燃料がベーパ化するおそれがない場合には、液相燃料噴射用インジェクタから燃料が燃焼室内に噴射される。
【0005】
また、従来から、液相状態にあるLPG燃料を吸気ポート内に噴射する液相燃料噴射用インジェクタと、気相状態にあるLPG燃料を吸気ポートよりも上流側の吸気管内に噴射する気相燃料噴射用インジェクタとを備えたLPG燃料エンジンも知られている(例えば、特許文献2参照。)。このLPG燃料エンジンでは、LPG燃料の圧力やエンジン冷却水の温度に基づいて液相燃料噴射用インジェクタにおけるベーパの発生の程度が把握され、ベーパの発生の程度に応じて、燃料の不足分を補うように気相燃料噴射用インジェクタから気相状態にあるLPG燃料が吸気管内に噴射される。
【0006】
更に、気液混合状態にあるLPG燃料の噴射を抑制するための技術としては、特許文献3に記載のLPG燃料エンジンも知られている。このLPG燃料エンジンは、燃料タンクから液相のLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとを備える。そして、このLPG燃料エンジンでは、高圧ポンプの吸入口がバイパス管を介して燃料タンクと接続されており、バイパス管を介して、低圧ポンプと高圧ポンプとの間で発生したベーパを燃料タンクに戻すことにより、高圧ポンプの昇圧部にベーパが流入することを抑制している。
【0007】
【特許文献1】
特公平7−26596号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2001−107805号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2001−349256号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、LPG燃料の蒸気圧は相対的に低く、また、燃料性状によっても異なるものである。更に、LPG燃料エンジンの運転状態や周囲環境は大きな幅をもって変動するものである。このため、上述のような対策が施された従来のLPG燃料エンジンにおいても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に防止することができず、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することは依然として困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制し、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保可能とするLPG燃料エンジンおよびその運転方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によるLPG燃料エンジンは、LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンにおいて、LPG燃料を貯留する燃料タンクと、LPG燃料を噴射可能なインジェクタと、燃料タンクとインジェクタとの間に配置され、LPG燃料を圧送するポンプと、LPG燃料の性状およびポンプとインジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料の温度に基づいて、所定箇所にてLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、所定箇所におけるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するようにポンプを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
このLPG燃料エンジンでは、インジェクタからLPG燃料を噴射させるに際して、LPG燃料の性状と、ポンプとインジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料の温度とが取得され、取得された燃料性状および燃料温度は制御手段に与えられる。そして、制御手段は、これらの燃料性状および燃料温度に基づいて、当該所定箇所にてLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、当該所定箇所におけるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するようにポンプを制御する。
【0014】
これにより、このLPG燃料エンジンでは、ポンプとインジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料のベーパ化が確実に抑制される。従って、このLPG燃料エンジンによれば、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することができるので、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することが可能となる。
【0015】
また、ポンプには、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプとインジェクタとの間に配置されており、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとが含まれ、制御手段は、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するように低圧ポンプを制御するものであると好ましい。
【0016】
一般に、LPG燃料は、性能を十分に確保する等の観点から、液相状態で噴射されると好ましく、このため、このLPG燃料エンジンでは、ポンプとして、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、低圧ポンプからのLPG燃料を昇圧させる高圧ポンプとが用いられる。そして、このLPG燃料エンジンでは、インジェクタからLPG燃料を噴射させるに際して、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度(高圧ポンプの吸入口におけるLPG燃料の温度)とが取得され、制御手段に与えられる。
【0017】
制御手段は、取得された燃料性状と、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の圧力(高圧ポンプの吸入口におけるLPG燃料の圧力)と目標圧力とが一致するように低圧ポンプを制御する。これにより、このLPG燃料エンジンでは、高圧ポンプの昇圧部に気液混合状態のLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することができるので、高圧ポンプによるLPG燃料の昇圧不良や、高圧ポンプの焼き付きといったトラブルを確実に防止することが可能となる。
【0018】
更に、本発明によるLPG燃料エンジンは、高圧ポンプの吸入口周辺およびインジェクタの燃料入口周辺の少なくとも何れか一方と、燃料タンクとを接続する返送管を更に備えると好ましい。
【0019】
このような構成を採用すれば、仮に高圧ポンプの吸入口周辺またはインジェクタの燃料入口周辺でLPG燃料がベーパ化してしまったとしても、返送管を介してLPG燃料のベーパを燃料タンクに戻して、高圧ポンプの昇圧部やインジェクタに気液混合状態のLPG燃料が流入してしまうことを極めて確実に抑制することが可能となる。
【0020】
また、本発明によるLPG燃料エンジンは、高圧ポンプの吸入口周辺およびインジェクタの燃料入口周辺の少なくとも何れか一方と、低圧ポンプと高圧ポンプとを結ぶ低圧配管とを接続する返送管を更に備え、制御手段は、低圧配管内のLPG燃料の温度および返送管内のLPG燃料の温度のうちの高い方と、燃料タンク内のLPG燃料の性状とに基づいて目標圧力を定めるものであってもよい。
【0021】
このような構成を採用しても、高圧ポンプの昇圧部やインジェクタに気液混合状態のLPG燃料が流入してしまうことを極めて確実に抑制することが可能となる。また、この場合、仮にLPG燃料のベーパが返送管を介して低圧配管に返送されてしまったとしても、低圧配管内のLPG燃料の温度と返送管内のLPG燃料の温度のうちの高い方に基づいて目標圧力を定めることにより、高圧ポンプ(昇圧部)にベーパ化したLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することが可能となる。
【0022】
更に、制御手段は、目標圧力が低圧ポンプの最低吐出圧力を下回ることになる場合に、最低吐出圧力を目標圧力として設定するものであると好ましい。
【0023】
また、ポンプには、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプとインジェクタとの間に配置されており、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとが含まれ、制御手段は、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するように高圧ポンプを制御するものであるとよい。
【0024】
一般に、LPG燃料を圧送する低圧ポンプおよび高圧ポンプを備えたLPG燃料エンジンでは、高圧ポンプによって昇圧されたLPG燃料がベーパ化してしまうことは少ないが、エンジンが一旦停止させられた後、ごく短時間のうちに再始動される場合や、高温環境下におかれているエンジンが始動される場合のように、燃料系統内のLPG燃料が昇温している状態でエンジンが始動される場合、高圧ポンプによって昇圧されたLPG燃料がベーパ化してしまうこともあり得る。
【0025】
この点に鑑みて、このLPG燃料エンジンでは、例えばエンジン始動時に、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度(インジェクタの燃料入口におけるLPG燃料の温度)とが取得され、制御手段に与えられる。そして、制御手段は、取得された燃料性状と、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の圧力(インジェクタの燃料入口におけるLPG燃料の圧力)と目標圧力とが一致するように高圧ポンプを制御する。
【0026】
これにより、このLPG燃料エンジンでは、LPG燃料が昇温している状態で始動される高温始動時においても、高圧ポンプから吐出されてインジェクタに導入されるLPG燃料のベーパ化が確実に抑制される。従って、このLPG燃料エンジンによれば、高温始動時においても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することができるので、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することが可能となる。
【0027】
本発明によるLPG燃料エンジンの運転方法は、LPG燃料を貯留する燃料タンクと、LPG燃料を噴射可能なインジェクタと、燃料タンクとインジェクタとの間に配置されたポンプとを備え、LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンの運転方法であって、PG燃料の性状を取得すると共に、ポンプとインジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料の温度を取得し、取得した燃料性状および燃料温度に基づいて所定箇所にてLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、所定箇所におけるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するようにポンプを制御することを特徴とする。
【0028】
また、ポンプとして、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプとインジェクタとの間に配置されており、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとを用い、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するように低圧ポンプを制御すると好ましい。
【0029】
更に、目標圧力が低圧ポンプの最低吐出圧力を下回ることになる場合に、最低吐出圧力を目標圧力として設定すると好ましい。
【0030】
また、ポンプとして、燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプとインジェクタとの間に配置されており、低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させてインジェクタに供給する高圧ポンプとを用い、燃料タンク内のLPG燃料の性状と、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の圧力と目標圧力とが一致するように高圧ポンプを制御すると好ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明によるLPG燃料エンジンおよびその運転方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明によるLPG燃料エンジンを示す概略構成図である。同図に示されるLPG燃料エンジン1は、液化プロパンガス燃料や液化ブタンガス燃料といったLPG燃料(液化石油ガス燃料)を用いる直列4気筒エンジンとして構成されており、車両の走行駆動源として用いられると好適なものである。このLPG燃料エンジン1は、エンジンブロックに形成された複数の燃焼室2を有し、各燃焼室2の内部でLPG燃料(本実施形態では、液化プロパンガス燃料)を燃焼させてピストン3を往復移動させることにより動力を発生する。
【0033】
LPG燃料エンジン1は、図1に示されるように、それぞれ対応する燃焼室2の内部に臨むようにシリンダヘッドに配設された複数のインジェクタ4と複数の点火プラグ(図示省略)とを有する。また、LPG燃料エンジン1の各ピストン3は、いわゆる深皿頂面型に構成されており、その上面には、凹部3aが形成されている。そして、このLPG燃料エンジン1では、各燃焼室2内に空気を吸入させた状態で、各インジェクタ4から各燃焼室2内のピストン3の凹部3aに向けてLPG燃料が直接噴射される。
【0034】
これにより、LPG燃料エンジン1では、図示されない点火プラグの近傍にLPG燃料と空気との混合気の層が周囲の空気層と分離された状態で形成(成層化)される。この結果、LPG燃料エンジン1では、極めて希薄な混合気を用いて安定した成層燃焼を実行することが可能となる。なお、本実施形態のLPG燃料エンジン1は、いわゆる直噴エンジンとして説明されるが、これに限られるものではなく、本発明が吸気管(吸気ポート)噴射式のエンジンにも適用され得ることはいうまでもない。
【0035】
また、LPG燃料エンジン1のシリンダヘッドには、吸気ポートを開閉する吸気弁と、排気ポートを開閉する排気弁とが各燃焼室2ごとに配設されている。これらの吸気弁および排気弁は、例えば可変バルブタイミング機能を有する図示されない動弁機構によって開閉させられる。そして、各燃焼室2の吸気ポートは、それぞれ吸気管(吸気マニホールド)5に接続され、吸気管5には、例えばドライブバイワイヤ式のスロットルバルブ6が設置されている。一方、各燃焼室2の排気ポートは、排気管(排気マニホールド)7にそれぞれ接続されている。
【0036】
更に、上述のような成層希薄燃焼運転が実行されると、LPG燃料エンジン1からの排気ガス中のNOx(窒素酸化物)が増加することを踏まえて、排気管7には、三元触媒を含む前段触媒装置8に加えて、NOx吸蔵還元触媒を含む後段触媒装置9が接続されている。これにより、各燃焼室2から各排気弁を介して排出される排気ガス中のNOxは、後段触媒装置9のNOx吸蔵還元触媒によって吸蔵される。NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxは、後段触媒装置9に対して所定のタイミングで実行される還元処理によって還元される。
【0037】
さて、LPG燃料エンジン1では、LPG燃料が燃料タンク10の内部に液相状態で貯留され、性能の確保に必要な空気量を十分に確保する等の観点から、LPG燃料は上述の各インジェクタ4から各燃焼室2の内部に液相状態で噴射される。そして、LPG燃料を液相状態で各燃焼室2の内部に噴射するために、LPG燃料エンジン1は、燃料タンク10に接続された低圧ポンプ11と、低圧ポンプ11と各インジェクタ4との間に配された高圧ポンプ12とを含む。
【0038】
本実施形態では、低圧ポンプ11および高圧ポンプ12として、デューティ制御可能な電動ポンプが採用される。そして、低圧ポンプ11の吐出口は、低圧配管14を介して高圧ポンプ12の吸入口に接続されている。また、高圧ポンプ12の吐出口は、デリバリ管(分配管)15に接続されており、このデリバリ管15には、各インジェクタ4の燃料入口が接続されている。これにより、液相状態のLPG燃料は、低圧ポンプ11によって燃料タンク10から吸い出されて高圧ポンプ12へと送り出され、更に、高圧ポンプ12によって昇圧されてデリバリ管15を介して各インジェクタ4へと供給されることになる。
【0039】
また、図1に示されるように、燃料タンク10には、その内部圧力(蒸気圧)を検出する圧力センサPtと、その内部温度を検出する温度センサTtとが備えられている。更に、低圧ポンプ11と高圧ポンプ12とを結ぶ低圧配管14の高圧ポンプ12の近傍には、その内部を流通するLPG燃料の圧力を検出する圧力センサPpと、その内部を流通するLPG燃料の温度を検出する温度センサTpとが備えられている。同様に、各インジェクタ4の燃料入口が接続されているデリバリ管15には、その内部に存在するLPG燃料の圧力を検出する圧力センサPdと、その内部に存在するLPG燃料の温度を検出する温度センサTdとが備えられている。
【0040】
更に、本実施形態のLPG燃料エンジン1では、高圧ポンプ12の吸入口と燃料タンク10の上部とが返送管16によって連通されている。また、返送管16の高圧ポンプ12側の端部からは、分岐部16aが分岐されており、分岐部16aの端部は、デリバリ管15に接続されている。これにより、LPG燃料エンジン1では、燃料タンク10の内部の気相領域と、高圧ポンプ12の吸入口周辺およびデリバリ管15の内部、すなわち、各インジェクタ4の燃料入口周辺とが返送管16を介して連通されることになる。
【0041】
このような返送管16をLPG燃料エンジン1に対して備えておくことにより、万が一、高圧ポンプ12の吸入口周辺や、デリバリ管15の内部、すなわち、各インジェクタ4の燃料入口周辺でLPG燃料がベーパ化してしまったとしても、返送管16を介してLPG燃料のベーパを燃料タンク10に戻すことできる。従って、LPG燃料エンジン1では、高圧ポンプ12の昇圧部や各インジェクタ4に気液混合状態のLPG燃料が流入してしまうことを極めて確実に抑制することが可能となる。
【0042】
そして、上述のように構成されるLPG燃料エンジン1は、制御手段として機能する電子制御ユニット(ECU)20を含む。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポートおよび記憶装置等を含むものである。図1に示されるように、燃料タンク10の圧力センサPtおよび温度センサTt、低圧配管14の圧力センサPpおよび温度センサTpならびにデリバリ管15の圧力センサPdおよび温度センサTdは、それぞれECU20の入出力ポートに接続されている。各圧力センサPt,PpおよびPdならびに各温度センサTt,TpおよびTdは、それぞれ検出値を示す信号をECU20に与える。
【0043】
また、ECU20の入出力ポートには、上述の低圧ポンプ11および高圧ポンプ12、更には、上述の各インジェクタ4、スロットルバルブ6、点火プラグ(イグナイタ)、動弁機構、アクセル位置センサや回転数センサといった各種センサ類等が接続される。ECU20は、記憶装置に記憶されている各種マップ等を用いると共に、各種センサの検出値等に基づいて、LPG燃料エンジン1が所望の出力を発生するように、低圧ポンプ11および高圧ポンプ12の動作、インジェクタ4の開弁タイミング、スロットルバルブ6の開度、更には、各吸気弁および各排気弁の開閉動作等を制御する。
【0044】
次に、図2〜図5を参照しながら、上述のように構成されるLPG燃料エンジン1の動作について説明する。
【0045】
まず、LPG燃料エンジン1の始動時における動作について説明すると、エンジン1を始動させるに際しては、ECU20によって図2に示される始動モードにおける処理が実行される。この場合、ECU20は、ユーザによってイグニッションスイッチが操作されると、燃料タンク10の圧力センサPtおよび温度センサTtから受け取った信号より、燃料タンク10の内部圧力および内部温度を取得する(S10)。
【0046】
更に、ECU20は、記憶装置から図3に例示されるような燃料性状特定マップを読み出す。図3に例示される燃料性状特定マップは、燃料タンク10の内部圧力(蒸気圧)および内部温度と、燃料タンク10の内部に貯留されているLPG燃料の性状(本実施形態では、プロパン比)との関係を規定するものであり、予め実験やシミュレーション等に基づいて作成されている。そして、ECU20は、読み出した燃料性状特定マップから、S10にて取得した燃料タンク10の内部圧力と内部温度とに対応する燃料性状の値(プロパン比)を求める(S12)。
【0047】
上述のようにして燃料タンク10内のLPG燃料の性状を特定すると、ECU20は、S14にて、デリバリ管15の温度センサTdから受け取った信号より、デリバリ管15内のLPG燃料の温度、すなわち、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されることになるLPG燃料の温度を取得すると共に、記憶装置から図4に例示されるようなベーパ未発生圧力特定マップを読み出す。図4に例示されるベーパ未発生圧力特定マップは、LPG燃料の性状(プロパン比)および温度と、LPG燃料がベーパ化しない圧力との関係を規定するものであり、予め実験やシミュレーション等に基づいて作成されている。そして、ECU20は、ベーパ未発生圧力特定マップから、S12にて取得した燃料性状と、デリバリ管15内のLPG燃料の温度とに対応するベーパ未発生圧力を求める(S14)。
【0048】
S14の処理を実行した後、ECU20は、記憶装置に記憶されている所定のマップから、予め定められているエンジン始動時におけるデリバリ管15の内部圧力の目標値(目標圧力)を読み出し、この目標値と、S14にて求めたベーパ未発生圧力とを比較する(S16)。
【0049】
ここで、LPG燃料を圧送する低圧ポンプ11および高圧ポンプ12を備えたLPG燃料エンジン1では、高圧ポンプ12によって昇圧されたLPG燃料がデリバリ管15の内部等においてベーパ化してしまうことは一般に少ない。しかしながら、エンジン1が一旦停止させられた後、ごく短時間のうちに再始動される場合や、高温環境下におかれているエンジン1が始動される場合のように、燃料系統内のLPG燃料が昇温している状態でエンジン1が始動される場合、高圧ポンプ12によって昇圧されたLPG燃料がデリバリ管15の内部で各インジェクタ4に導入される前にベーパ化してしまうこともあり得る。
【0050】
この点に鑑みて、ECU20は、S14にて求めたベーパ未発生圧力が、予め定められているエンジン始動時におけるデリバリ管15の内部圧力の目標値を上回っていると判断した場合(S16)、S14にて求めたベーパ未発生圧力を目標圧力として再設定する(S18)。すなわち、LPG燃料エンジン1の始動時(再始動時を含む)には、基本的に、燃料タンク10内のLPG燃料の性状と、デリバリ管15内のLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力が定められることになる。
【0051】
S18にて目標圧力を定めると、ECU20は、新たな目標圧力に応じた各インジェクタ4の開弁時間等を設定した上で、低圧ポンプ11を所定条件で作動させる。そして、ECU20は、これとほぼ同時に、デリバリ管15の圧力センサPdの検出値、すなわち、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されることになるLPG燃料の圧力と、目標圧力とが一致するように高圧ポンプ12をフィードバック制御しながら、LPG燃料エンジン1のクランキングを開始させる(S20)。
【0052】
これにより、LPG燃料エンジン1では、LPG燃料が昇温している状態で始動される高温始動時においても、高圧ポンプ12から吐出されて各インジェクタ4に導入されるLPG燃料のベーパ化が確実に抑制される。従って、LPG燃料エンジン1によれば、高温始動時においても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することができるので、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することが可能となる。
【0053】
一方、S16にて上述のベーパ未発生圧力がエンジン始動時におけるデリバリ管15の内部圧力の目標値以下であると判断した場合(S16)、ECU20は、目標圧力の再設定を実行することなく、高圧ポンプ12により吐出されて各インジェクタ4に導入されることになるLPG燃料の圧力が、エンジン始動時におけるデリバリ管15の内部圧力の当初の目標値と一致するように高圧ポンプ12をフィードバック制御する(S20)。そして、上述のような図2における一連の処理は、例えば、LPG燃料エンジン1がアイドル状態にある際、ECU20により、繰り返し実行されることになる。
【0054】
また、LPG燃料エンジン1がアイドル状態にある際にユーザによりアクセルが操作されると、ECU20は、図5に示される通常運転モードにおける処理を実行する。この場合、ECU20は、図2の始動モードの場合と同様に、まず、燃料タンク10の圧力センサPtおよび温度センサTtから受け取った信号より、燃料タンク10の内部圧力および内部温度を取得する(S30)。更に、ECU20は、記憶装置から図3に例示された燃料性状特定マップを読み出し、読み出した燃料性状特定マップから、S30にて取得した燃料タンク10の内部圧力と内部温度とに対応する燃料性状の値(プロパン比)を求める(S32)。
【0055】
燃料タンク10内のLPG燃料の性状を特定すると、ECU20は、S34にて、低圧配管14の温度センサTpから受け取った信号より、低圧配管14内のLPG燃料の温度、すなわち、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料の温度を取得すると共に、記憶装置から図4に例示されたベーパ未発生圧力特定マップを読み出す。このベーパ未発生圧力特定マップから、ECU20は、S32にて取得した燃料性状と、低圧配管14内のLPG燃料の温度とに対応するベーパ未発生圧力を求める(S34)。
【0056】
S34の処理を実行した後、ECU20は、S34にて求めたベーパ未発生圧力と、低圧ポンプ11の最低吐出圧力とを比較する(S36)。そして、ECU20は、ベーパ未発生圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力を上回っている場合には、S34にて求めたベーパ未発生圧力を目標圧力として設定する(S38)。すなわち、LPG燃料エンジン1の通常運転時には、基本的に、燃料タンク10内の燃料の性状と、低圧配管14内のLPG燃料の温度とに基づいて、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力が定められることになる。
【0057】
S38にて目標圧力を定めると、ECU20は、目標圧力に応じた各インジェクタ4の開弁時間等を設定した上で、低圧配管14の圧力センサPpの検出値、すなわち、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料の圧力と、目標圧力とが一致するように低圧ポンプ11をフィードバック制御する(S40)。また、ECU20は、低圧ポンプ11のフィードバック制御を開始するのとほぼ同時に高圧ポンプ12を所定条件で作動させる。これにより、LPG燃料エンジン1によれば、高圧ポンプ12の昇圧部に気液混合状態のLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することができるので、高圧ポンプ12によるLPG燃料の昇圧不良や、高圧ポンプ12の焼き付きといったトラブルを確実に防止することが可能となる。
【0058】
更に、上述のように高圧ポンプ12の昇圧部よりも上流側でLPG燃料がベーパ化していなければ、一般に数MPa以上になる高圧ポンプ12の昇圧部よりも下流側のデリバリ管15の内部や各インジェクタ4においてLPG燃料がベーパ化してしまうおそれは極めて少なくなる。従って、LPG燃料エンジン1では、通常運転時においても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することが可能となり、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することができる。
【0059】
一方、S36にて上述のベーパ未発生圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力以下であると判断した場合、ECU20は、低圧ポンプ11の最低吐出圧力を目標圧力として設定した後(S42)、上述のS40における処理を実行する。すなわち、LPG燃料エンジン1では、目標圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力を下回ってしまうような場合、S42にて、最低吐出圧力が目標圧力として定められることになる。これにより、低圧ポンプ11が不安定に制御されてしまうことを確実に防止可能となる。そして、上述のような図5における一連の処理は、LPG燃料エンジン1の通常運転中、ECU20により、繰り返し実行されることになる。
【0060】
以下、図6および図7を参照しながら、本発明によるLPG燃料エンジンの他の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態に関連して説明されたものと同一の要素には同一の参照符号が付され、重複する説明は省略される。
【0061】
図6に示されるLPG燃料エンジン1Aでは、高圧ポンプ12の吸入口やデリバリ管15が返送管16を介して燃料タンク10に接続される代わりに、低圧ポンプ11と高圧ポンプ12とを結ぶ低圧配管14に接続されている。この場合、返送管16には、低圧配管14からのLPG燃料の流入を規制する逆止弁(差圧弁)17が設けられており、返送管16から低圧配管14へのLPG燃料の流入は、返送管16内のLPG燃料の圧力が、低圧配管14内のLPG燃料の圧力よりも高い場合にのみ許容される。更に、返送管16には、逆止弁17よりも上流側に圧力センサPrおよび温度センサTrが備えられている。圧力センサPrは、返送管16を流通するLPG燃料の圧力を検出し、温度センサTrは、返送管16内を流通するLPG燃料の圧力を検出する。
【0062】
このように構成されるLPG燃料エンジン1Aにおいても、万が一、高圧ポンプ12の吸入口周辺や、デリバリ管15の内部、すなわち、各インジェクタ4の燃料入口周辺でLPG燃料がベーパ化してしまったとしても、返送管16を介してLPG燃料のベーパを低圧配管14に戻すことができる。従って、高圧ポンプ12の昇圧部や各インジェクタ4に気液混合状態のLPG燃料が流入してしまうことを極めて確実に抑制することが可能となる。また、LPG燃料エンジン1Aでは、デリバリ管15内で高温になったLPG燃料が燃料タンク10へと返送されることはないので、燃料タンク10内に返送された高温のLPG燃料により燃料タンク10内でのLPG燃料のベーパ化が助長されてしまうことを防止することができる。
【0063】
そして、このLPG燃料エンジン1Aでは、アイドル状態にある際にユーザによりアクセルが操作されると、ECU20により図7に示される通常運転モードにおける処理が実行される。この場合、ECU20は、まず、燃料タンク10の圧力センサPtおよび温度センサTtから受け取った信号より、燃料タンク10の内部圧力および内部温度を取得する(S30)。更に、ECU20は、記憶装置から図3に例示されたような燃料性状特定マップを読み出し、読み出した燃料性状特定マップから、S30にて取得した燃料タンク10の内部圧力と内部温度とに対応する燃料性状の値(プロパン比)を求める(S52)。
【0064】
燃料タンク10内のLPG燃料の性状を特定すると、ECU20は、S54にて、低圧配管14の温度センサTpから受け取った信号より、低圧配管14の内のLPG燃料の温度、すなわち、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料の温度を取得すると共に、返送管16の温度センサTrから受け取った信号より、返送管16内のLPG燃料の温度を取得する。そして、ECU20は、低圧配管14内のLPG燃料の温度と、返送管16内のLPG燃料の温度とを比較し、両者のうちの高い方を参照温度として定める(S56)。
【0065】
S56にて参照温度を定めると、ECU20は、記憶装置から図4に例示されたようなベーパ未発生圧力特定マップを読み出し、このベーパ未発生圧力特定マップから、S52にて取得した燃料性状と、S56にて定めた参照温度とに対応するベーパ未発生圧力を求める(S58)。更に、ECU20は、S58にて求めたベーパ未発生圧力と、低圧ポンプ11の最低吐出圧力とを比較し(S60)、ベーパ未発生圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力を上回っている場合には、S58にて求めたベーパ未発生圧力を目標圧力として設定する(S62)。
【0066】
これにより、LPG燃料エンジン1Aにおいても、燃料タンク10内の燃料の性状と、上述の参照温度とに基づいて、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力(ベーパ未発生圧力)が定められることになる。この場合、仮に高圧ポンプ12の吸入口やデリバリ管15からLPG燃料のベーパが返送管16を介して低圧配管14に返送されてしまったとしても、上述のように、低圧配管14内における燃料温度および返送管16内における燃料温度のうちの高い方の温度を参照温度としておけば、高圧ポンプ12(昇圧部)にベーパ化したLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することが可能となる。
【0067】
ECU20は、S62にて目標圧力を定めた後、目標圧力に応じた各インジェクタ4の開弁時間等を設定した上で、低圧配管14の圧力センサPpの検出値、すなわち、高圧ポンプ12に吸い入れられるLPG燃料の圧力と、目標圧力とが一致するように低圧ポンプ11をフィードバック制御する(S64)。また、ECU20は、低圧ポンプ11のフィードバック制御を開始するのとほぼ同時に高圧ポンプ12を所定条件で作動させる。これにより、LPG燃料エンジン1Aにおいても、高圧ポンプ12の昇圧部に気液混合状態のLPG燃料が吸い入れられてしまうことを確実に抑制することができるので、高圧ポンプ12によるLPG燃料の昇圧不良や、高圧ポンプ12の焼き付きといったトラブルを確実に防止することが可能となる。
【0068】
更に、上述のように高圧ポンプ12の昇圧部よりも上流側でLPG燃料がベーパ化していなければ、一般に数MPa以上になる高圧ポンプ12の昇圧部よりも下流側のデリバリ管15の内部や各インジェクタ4においてLPG燃料がベーパ化してしまうおそれは極めて少なくなる。従って、LPG燃料エンジン1Aにおいても、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制することが可能となり、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することができる。
【0069】
一方、S60にて上述のベーパ未発生圧力が低圧ポンプ11の最低吐出圧力以下であると判断した場合、ECU20は、低圧ポンプ11の最低吐出圧力を目標圧力として設定した後(S66)、上述のS64における処理を実行する。そして、図5における一連の処理は、LPG燃料エンジン1Aの通常運転中、ECU20によって繰り返し実行されることになる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明されたように、本発明によれば、気液混合状態のLPG燃料の噴射を確実に抑制し、LPG燃料の調量精度を向上させて適正な燃料噴射量を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるLPG燃料エンジンを示す概略構成図である。
【図2】図1に示されるLPG燃料エンジンの始動時における動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】LPG燃料の性状を特定するために用いられるマップを説明するための図表である。
【図4】ベーパ未発生圧力を特定するために用いられるマップを説明するための図表である。
【図5】図1に示されるLPG燃料エンジンの通常運転時における動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明によるLPG燃料エンジンの他の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】図6に示されるLPG燃料エンジンの通常運転時における動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1,1A LPG燃料エンジン
2 燃焼室
3 ピストン
3a 凹部
4 インジェクタ
5 吸気管
6 スロットルバルブ
7 排気管
8 前段触媒装置
9 後段触媒装置
10 燃料タンク
11 低圧ポンプ
12 高圧ポンプ
14 低圧配管
15 デリバリ管
16 返送管
17 逆止弁
20 ECU
Pd,Pp,Pr,Pt 圧力センサ
Td,Tp,Tr,Tt 温度センサ
Claims (10)
- LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンにおいて、
LPG燃料を貯留する燃料タンクと、
LPG燃料を噴射可能なインジェクタと、
前記燃料タンクと前記インジェクタとの間に配置され、LPG燃料を圧送するポンプと、
LPG燃料の性状および前記ポンプと前記インジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料の温度に基づいて、前記所定箇所にてLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、前記所定箇所におけるLPG燃料の圧力と前記目標圧力とが一致するように前記ポンプを制御する制御手段とを備えることを特徴とするLPG燃料エンジン。 - 前記ポンプには、前記燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプと前記インジェクタとの間に配置されており、前記低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させて前記インジェクタに供給する高圧ポンプとが含まれており、前記制御手段は、前記燃料タンク内のLPG燃料の性状と、前記高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度とに基づいて、前記高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように前記目標圧力を定め、前記高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の圧力と前記目標圧力とが一致するように前記低圧ポンプを制御することを特徴とする請求項1に記載のLPG燃料エンジン。
- 前記高圧ポンプの吸入口周辺および前記インジェクタの燃料入口周辺の少なくとも何れか一方と、前記燃料タンクとを接続する返送管を更に備えることを特徴とする請求項2に記載のLPG燃料エンジン。
- 前記高圧ポンプの吸入口周辺および前記インジェクタの燃料入口周辺の少なくとも何れか一方と、前記低圧ポンプと前記高圧ポンプとを結ぶ低圧配管とを接続する返送管を更に備え、前記制御手段は、前記低圧配管内のLPG燃料の温度および前記返送管内のLPG燃料の温度のうちの高い方と、前記燃料タンク内のLPG燃料の性状とに基づいて前記目標圧力を定めることを特徴とする請求項2に記載のLPG燃料エンジン。
- 前記制御手段は、前記目標圧力が前記低圧ポンプの最低吐出圧力を下回ることになる場合に、前記最低吐出圧力を前記目標圧力として設定することを特徴とする請求項2から4の何れかに記載のLPG燃料エンジン。
- 前記ポンプには、前記燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプと前記インジェクタとの間に配置されており、前記低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させて前記インジェクタに供給する高圧ポンプとが含まれており、前記制御手段は、前記燃料タンク内のLPG燃料の性状と、前記高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度とに基づいて、前記高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料がベーパ化しないように前記目標圧力を定め、前記高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の圧力と前記目標圧力とが一致するように前記高圧ポンプを制御することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のLPG燃料エンジン。
- LPG燃料を貯留する燃料タンクと、LPG燃料を噴射可能なインジェクタと、前記燃料タンクと前記インジェクタとの間に配置されたポンプとを備え、LPG燃料を燃焼室内で燃焼させて動力を発生するLPG燃料エンジンの運転方法であって、
LPG燃料の性状を取得すると共に、前記ポンプと前記インジェクタとの間の流路上の所定箇所におけるLPG燃料の温度を取得し、取得した前記燃料性状および前記燃料温度に基づいて前記所定箇所にてLPG燃料がベーパ化しないように目標圧力を定め、前記所定箇所におけるLPG燃料の圧力と前記目標圧力とが一致するように前記ポンプを制御することを特徴とするLPG燃料エンジンの運転方法。 - 前記ポンプとして、前記燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプと前記インジェクタとの間に配置されており、前記低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させて前記インジェクタに供給する高圧ポンプとを用い、前記燃料タンク内のLPG燃料の性状と、前記高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の温度とに基づいて、前記高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料がベーパ化しないように前記目標圧力を定め、前記高圧ポンプに吸い入れられるLPG燃料の圧力と前記目標圧力とが一致するように前記低圧ポンプを制御することを特徴とする請求項7に記載のLPG燃料エンジンの運転方法。
- 前記目標圧力が前記低圧ポンプの最低吐出圧力を下回ることになる場合に、前記最低吐出圧力を前記目標圧力として設定することを特徴とする請求項8に記載のLPG燃料エンジンの運転方法。
- 前記ポンプとして、前記燃料タンクからLPG燃料を吸い出す低圧ポンプと、この低圧ポンプと前記インジェクタとの間に配置されており、前記低圧ポンプから送出されるLPG燃料を昇圧させて前記インジェクタに供給する高圧ポンプとを用い、前記燃料タンク内のLPG燃料の性状と、前記高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の温度とに基づいて、前記高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料がベーパ化しないように前記目標圧力を定め、前記高圧ポンプにより吐出されるLPG燃料の圧力と前記目標圧力とが一致するように前記高圧ポンプを制御することを特徴とする請求項7から9の何れかに記載のLPG燃料エンジンの運転方法。
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