JP2004342196A - 追記型光記録媒体とその記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】青色レーザ波長以下の領域、特に450nm以下の波長領域で高密度の記録再生を行っても、容易に記録再生でき、記録感度、変調度、ジッタといったような記録特性や、パワーマージンの改善を実現できる相変化材料を記録層に用いた追記型光記録媒体とその記録方法の提供。
【解決手段】案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有し、記録を行った際に記録マーク部の変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、0.05<H/D<1という関係を満足し、波長450nm以下のレーザの照射時間又は照射強度を2値以上に変調させることにより記録・再生を行うことができることを特徴とする追記型光記録媒体。
【選択図】 図1
【解決手段】案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有し、記録を行った際に記録マーク部の変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、0.05<H/D<1という関係を満足し、波長450nm以下のレーザの照射時間又は照射強度を2値以上に変調させることにより記録・再生を行うことができることを特徴とする追記型光記録媒体。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、青色レーザ波長領域でも高密度の記録が可能な追記型光記録媒体(WORM:Write Once Read Many)に関する。
【0002】
【従来の技術】
超高密度の記録が可能となる青色レーザの開発は急速に進んでおり、それに対応した追記型光記録媒体の開発が行われている。
従来の追記型光記録媒体では、有機材料からなる記録層にレーザ光を照射し、主に有機材料の分解・変質による屈折率変化を生じさせることで記録ピットを形成させており、記録層に用いられる有機材料の光学定数や分解挙動が、良好な記録ピットを形成させるための重要な要素となっている。
従って、記録層に用いる有機材料としては、青色レーザ波長に対する光学的性質や分解挙動の適切な材料を選択する必要がある。即ち、未記録時の反射率を高め、またレーザの照射によって有機材料が分解し大きな屈折率変化が生じるようにするため(これによって大きな変調度が得られる)、記録再生波長は大きな吸収帯の長波長側の裾に位置するように選択される。
何故ならば、有機材料における大きな吸収帯の長波長側の裾は、適度な吸収係数を有し且つ大きな屈折率が得られる波長領域となるためである。
しかしながら、青色レーザ波長に対する光学的性質が従来並みの値を有する有機材料は未だ見出されていない。これは、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料を得るためには、分子骨格を小さくするか又は共役系を短くする必要があるが、そうすると吸収係数の低下、即ち屈折率の低下を招くためである。
つまり、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料は多数存在し、吸収係数を制御することは可能となるが、大きな屈折率を持たないため、大きな変調度を得ることができなくなる。
【0003】
特許文献1には、基板上に反射層と記録層の機能を有する複合機能層、保護層を順次形成した層構成で、基板と複合機能層がバンプを形成することで記録を行う技術が開示されている。なお、複合機能層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。
特許文献2には、基板上に金属薄膜層、変形可能な緩衝層、反射層、保護層を順次形成した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚を薄くさせることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。また、緩衝層としては、変形し易く適当な流動性を持つ樹脂が用いられ、変形を促進させるために色素を含有させても良いとの記載がある。
特許文献3には、基板上に金属薄膜層、緩衝層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、緩衝層は色素と有機高分子の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
【0004】
特許文献4には、基板上に金属記録層、バッファ層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属記録層を変形させ、同時にこの変形部でのバッファ層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属記録層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、バッファ層は色素と樹脂の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
しかし、これら金属薄膜層を用いた文献には、光源として400〜850nmの波長のレーザを用いることができるという記載はあるものの、実際に実施例で用いているのはCD−R用の780nmのレーザのみであって、CD−R程度の低記録密度の場合しか効果が確認されていない。しかも、評価項目はCNRであり、3Tのみ(記述無し)のシングルパターンでの評価である。周知のように、2値記録ではランダムパターンでの記録においてジッタ評価を行わなければ実用上意味がない。従ってこれらの文献に高密度の2値記録を実現できる技術が記載されているとは言えない。
【0005】
特許文献5には、相変化材料などからなる記録層を、ZnS・SiO2などの保護層材料に代えてTeO層で挟み、記録層との接着性を改善し、ZnS・SiO2等のようにSが記録膜の中に拡散し特性が劣化するのを防止する発明が開示されているが、信頼性の向上のために本願発明とは全く異なる範囲の酸化度を有するTeOを用いており、該発明の効果も本願発明とは全く異なるものである。また、相変化記録材料としては、GeTe、GeTeSe、GeTeS、GeSeS、GeSeSb、GeAsSe、InTe、SeTe、SeAs、GeTe(Sn,Au,Pd)、GeTeSeSb、GeTeSb、AgInSbTe等がある。特に、AgInSbTeは、高感度であり、アモルファスマーク部分の輪郭が明確であるという特徴を有し、マークエッジ記録用の記録層として開発されている(特許文献6〜11等参照)。
この他にも相変化材料を用いた発明は数多く存在するが、それらの多くは書き換え型媒体についてのものであり、信頼性の高い相変化材料を追記型光記録媒体として用い、データの改ざんが出来ないように工夫した発明は、本発明者の知る限り見当らない。
【0006】
以上のように、上記従来技術は青色レーザ波長領域での光記録媒体の実現を狙ったものではなく青色レーザ波長領域で有効となる層構成や記録方法ではない。
特に、現在実用化されている青色半導体レーザの発振波長の中心である405nm近傍においては、従来の追記型光記録媒体の記録層に要求される光学定数と同程度の光学定数を有する有機化合物が殆ど存在しない。
また、405nm近傍で記録条件を明確にし、DVDよりも高記録密度で記録された例はない。
追記型光記録媒体において重ね書きが出来ないという特性は、文書の改ざんを防止するという点で重要である。しかし、従来の相変化材料を記録層に用いて追記型光記録媒体を作成しようとすると、相変化材料の多くは可逆性を有するため書換えが可能となってしまう。従って、一般的に相変化材料を追記型光記録媒体の記録層に用いることはない。
しかし、これまで相変化材料について多くの研究がなされ商品化されてきており、非常に完成度の高い材料が多くあるので、これらの材料を用いれば、新規で有用な改ざんを防止出来る追記型光記録媒体を提供できる。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−265660号公報
【特許文献2】
特開平10−134415号公報
【特許文献3】
特開平11−306591号公報
【特許文献4】
特開平10−124926号公報
【特許文献5】
特開2002−298436号公報
【特許文献6】
特開平3−231889号公報
【特許文献7】
特開平4−191089号公報
【特許文献8】
特開平4−232779号公報
【特許文献9】
特開平4−267192号公報
【特許文献10】
特開平5−345478号公報
【特許文献11】
特開平6−166266号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解決し、青色レーザ波長以下の領域、特に450nm以下の波長領域で高密度の記録再生を行っても、容易に記録再生でき、記録感度、変調度、ジッタといったような記録特性や、パワーマージンの改善を実現できる相変化材料を記録層に用いた追記型光記録媒体とその記録方法の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の1)〜9)の発明(以下、本発明1〜9という)によって解決される。
1) 案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有し、記録を行った際に記録マーク部の変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、0.05<H/D<1という関係を満足し、波長450nm以下のレーザの照射時間又は照射強度を2値以上に変調させることにより記録・再生を行うことができることを特徴とする追記型光記録媒体。
2) 案内溝のトラックピッチが0.25〜0.5μm、深さが10〜150nm、溝底幅が0.10〜0.25μmであり、初期化を除く未記録状態の反射率が2〜50%であることを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
3) ビ−ム径以上の長さを有する記録マ−ク部の前端エッジと後端エッジの変調度差が±20%以内となる再生信号を発生することを特徴とする1)又は2)記載の追記型光記録媒体。但し、上記変調度差は、後端エッジの変調度をT、前端エッジの変調度をLとして、下記式で定義されるものである。
変調度差(%)=(T−L)×100/T
4) 基板と相変化記録層の間に無機材料からなる記録補助層を有することを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
5) 記録補助層の主成分がTe又はTe酸化物であることを特徴とする4)記載の追記型光記録媒体。
6) 記録補助層の材料中の酸素割合が0〜60原子%であることを特徴とする4)又は5)記載の追記型光記録媒体。
7) 記録補助層の膜厚が1〜100Åであることを特徴とする4)〜6)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
8) 照射時間と照射パワーの少なくとも一方が3段階以上に設定されたレーザにより、グルーブに沿った記録再生用レーザの進行方向における任意の単位長さ及びこれと直行する方向の任意の単位幅となる仮想記録セルに、3種類以上の大きさの異なる記録マークが形成されることにより、光反射率が変調され、情報を多値記録できることを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
9) 記録マーク部の変形の最大高さHと案内溝の深さDとの関係が0.05<H/D<1という関係を満足し、ビ−ム径以上の長さを有する記録マ−ク部の前端エッジと後端エッジの変調度差が±20%以内となる再生信号を発生する記録部を形成できるような記録パワー又は記録ストラテジで2値以上に変調させて記録を行うことを特徴とする3)〜8)の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。但し、上記変調度差は、後端エッジの変調度をT、前端エッジの変調度をLとして、下記式で定義されるものである。
変調度差(%)=(T−L)×100/T
【0010】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明者は、記録を行った際の記録マーク部の変形の最大高さHが、基板の案内溝の深さDよりも小さい(H/D<1)記録部を形成させることにより、クロストークを低減しジッタを下げ、パワーマージンの広い媒体が実現できることを見出した。特に連続書き(重ね波)の際に顕著な効果を奏し、2値レベル以上の高密度記録に効果を発揮する。
更に、相変化材料を記録層として用いるが、0.05<H/Dという要件を満足する基板変形を起こさせることにより、重ね書きなどのデータの改ざんができない追記型光記録媒体が得られる。即ち、本発明では、これまで開発されてきた信頼性及び特性の高い相変化材料を追記型光記録媒体の記録層として用いることに成功した。
H/Dが1以上では、クロストークが増大し、ジッタ、パワーマージンが悪化するし、H/Dが0.05以下では、相変化材料の可逆性によりデータが改ざんされる恐れのある媒体となる可能性がある。より好ましい範囲は0.1<H/D<0.9である。
【0011】
また、案内溝のトラックピッチが0.25〜0.5μm、深さが10〜150nm、溝底幅が0.10〜0.25μmである基板を用い、未記録状態の反射率が2〜50%であるようにすれば、更にクロストーク、パワーマージン、ジッタを向上させることができる。
特に、通常の書き換え型相変化記録媒体では基板変形は起こらないものであるが、本発明では追記型光記録媒体として相変化記録材料を用いるため基板変形が必要となる。その基板変形を誘発するため、本発明では通常の書き換え型相変化記録媒体の場合よりも強い記録パワーで記録を行う。この方法に代えて、例えばストラテジを改良するなど、他の方法も用いることも出来る。
また、本発明3のように、変調度差が±20%以内となる再生信号を発生させるように設計すれば、更に顕著な記録再生特性の向上を図ることができる。
なお、変調度差(%)の定義中の前端エッジ、後端エッジは、図23に概念的に示した記録部の前後端部のことである。
【0012】
また、基板と記録層の間に無機材料からなる記録補助層を挿入すれば、基板の変形を本発明の最適な変形量に抑制するなどの機能により、更にクロストークを低減し、ジッタを下げ、パワーマージンの広い媒体を実現することができる。
ここで記録補助層とは、記録層の記録原理を補助しその記録特性を向上させる層を意味し、基板の変形を抑制する機能だけに限定されない。
記録補助層の材料としては、SiC、B4C、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイアモンド等の炭素系の非酸化物等に代表されるセラミックス;Ni、Cr、Ti、Ta等の純粋金属;Cu/Al、Ni/Feなどの合金;Si等の半金属;Ge、Te等の半導体等が挙げられる。これらの材料は基板の変形を本発明の最適な変形量に抑制することを特徴とし、記録層に用いた相変化材料の光学定数の変化との相乗効果をもたらす。
【0013】
特にTe又はTe酸化物が好適であり、本発明の媒体特性において大きな効果を示す。Te系材料は酸化により劣化が起り易く、Teを用いた媒体の製品化を妨げてきたが、記録補助層の材料中の酸素割合を0〜60原子%とすることにより保存特性は飛躍的に向上する。また、記録補助層の主成分をTe又はTe酸化物とし、記録補助層の材料中の酸素割合を0〜60原子%とするか、記録補助層の膜厚を1〜100Åとするかの少なくとも一方を満たせば、相変化材料の光学定数変化と記録補助層の変形との相乗効果により、記録感度、パワーマージンが一層向上する。TeOが変形を抑制しながら更に変調度を上げることができる理由はTeOの相変化が考えられる。また、ここで主成分とは、記録補助層としての機能を果すのに十分な量のTe又はTe酸化物を用いることを意味するが、通常は、Te又はTe酸化物のみを用いる。また、酸素の割合が60原子%を越えるとTeが不安定になることがある。また、膜厚が1Å未満では記録補助層としての機能を果さないし、100Åを越えるとジッタが悪くなることがある。
記録補助層は記録に用いる波長における吸光度が0.5以下となるように材料や膜厚を選択する。吸光度が0.5より高いと、光が吸収されてしまって反射率が低くなり良好な記録ができない。また融点が700℃以下、熱伝導率が1W/cm・K以下の材料が好ましい。
【0014】
本発明が目的とするところの高密度記録を行うためには記録マークを小さくする必要がある。記録マークを小さくするためには、記録層の相変化に要するレーザビームの照射時間を短くする必要がある。従って、記録層の結晶化速度が速いことが必要とされる。このような要件を満たす記録層用の相変化材料としては、GeTe、GeTeSe、GeTeS、GeSeS、GeSeSb、GeAsSe、InTe、SeTe、SeAs、GeTe(Sn,Au,Pd)、GeTeSeSb、GeTeSb、AgInSbTe、GeInSbTe等が挙げられる。特に、AgInSbTeは、高感度でありアモルファスマーク部分の輪郭が明確であるという特徴を有し、マークエッジ記録用の記録層として開発されている。
【0015】
従来の光記録媒体のような再生信号の長さを多段階に変えることによってデータを記録する方法に対して、再生信号の深さを多段階に切りかえることにより、同じ長さの各信号に複数のデータを記憶する方法に関する研究が数多くなされている。
この光記録方法によれば、単にピットの有無による2値のデータを記録した場合と比較して、深さ方向に複数のデータを記録できるため、一定の長さに割り当てられる信号の量を増やすことができ、従って、線記録密度を向上させることが可能となる。なお、ここでは反射信号の変調度が互いに異なる3種類以上の記録データを記録することを多値記録と呼ぶ。
本発明者は、本発明の追記型光記録媒体において、照射時間と照射パワーの少なくとも一方が3段階以上に設定されたレーザにより、グルーブに沿った記録再生用レーザの進行方向における任意の単位長さ及びこれと直行する方向の任意の単位幅となる仮想記録セルに、3種類以上の大きさの異なる記録マークが形成されることにより、光反射率が変調され、情報を多値記録でき、良好な信号を得られることを確認した。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の層構成例を、図1及び図2に示す。図1は、基板側からレーザを入射して記録再生を行う例の要部拡大断面図である。この光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、下部耐熱保護層3、記録層4、上部耐熱保護層5、反射層6、保護層7がこの順に積層された層構成を有する。
図2の光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、記録補助層2、下部耐熱保護層3、記録層4、上部耐熱保護層5、反射層6、保護層7がこの順に積層された層構成を有する。
【0017】
基板としては、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン、エポキシ樹脂、ポリエステル、非晶質ポリオレフィンなどの透明樹脂材料(好ましくはガラス転移温度Tgが100〜200℃)を所望の形状に成形し、その片面に所望のプリフォーマットパターンを転写したものや、所望の形状に形成されたガラス等の透明セラミックス板の片面に所望のプリフォーマットパターンが転写された透明樹脂層を密着したものなど、公知に属する任意の透明基板を用いることができる。
また、ディスク状光記録媒体(光ディスク)を構成する基板の場合には、中心部にセンタ孔を有する円盤状に形成する。
なお、基板の作製は、公知の方法で行うことができる。
【0018】
プリフォーマットパターンは、少なくとも記録・再生用レーザビームを記録トラックに追従させるためのビーム案内部を含んで構成される。例えば、ビーム案内部を、センタ孔と同心の渦巻状又は同心円状に形成された案内溝をもって構成し、当該案内溝に沿ってアドレスピットやクロックピット等のプリピットを形成することができる。
プリピットを案内溝上に重ねて形成する場合には、両者を光学的に識別できるようにするため、案内溝とプリピットとをそれぞれ異なる深さに形成する。プリピットを相隣接する案内溝の間に形成する場合には、両者を同じ深さにすることもできる。
なお、ビーム案内部としては、案内溝に代えて、ウォブルピットを記録トラックに沿って形成することもできる。また、プリピットを省略し、案内溝のみで形成しても良い。
【0019】
下部耐熱保護層、及び、上部耐熱保護層の材料としては、SiO、SiO2、ZnO・SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2などの金属酸化物;Si2N4、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物;ZnS、In2S3、TaS4などの硫化物;SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物;ダイヤモンド状カーボン;或いはそれらの混合物が挙げられる。これらの材料は単体で用いても、お互いの混合物として用いてもよい。また、必要に応じて不純物を含んでいてもよい。但し、耐熱保護層の融点は記録層の融点よりも高いことが必要であり、更に、熱伝導率が高く、熱膨張係数が小さく、密着性が良いことも要求される。また、必要に応じて耐熱保護層を多層化することもできる。
下部耐熱保護層の膜厚は20〜300nm、好適には35〜200nmとするのがよい。20nmよりも薄くなると、特に耐熱保護層としての機能が失われ、また、300nmよりも厚くなると基板変形が全く起こらなくなる。
上部耐熱保護層の膜厚は、5〜100nm程度とするのがよい。5nmより薄いと基本的に層間のバリアとしての効果が低下し、好ましくない。100nmを越えると基板変形を必要以上に抑制してしまう。
【0020】
記録層には、前述のように種々の相変化材料を用いることが出来るが、Geと、Al、Ga及びInの中から選ばれた少なくとも一つの元素と、Sbと、Teからなる材料が好ましい。膜厚は、5〜50nm、好ましくは、10〜30nmである。5nmより薄いと吸収能が低下し記録層としての機能を果たさなくなる。50nmより厚いと、記録感度が低下し、膜剥離やクラックが生じ易くなったり、基板変形が起こらなくなる。
【0021】
また、本発明では必要に応じて光反射機能を有する層(反射層)を設けることができる。光反射機能を有する層には、再生光の波長で反射率の十分高い材料、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Cr、Pdから選ばれる金属を単独で或いは合金にして用いることができる。中でもAu、Al、Agは、反射率が高く反射層の材料として適している。
また、上記の材料を主成分とし、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属を含む材料でもよい。
中でもAgを主成分とする材料は、コストが安いこと、高反射率が出易いことから特に好ましい。
金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
反射層の膜厚は、50〜100nm程度が好ましい。
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0022】
保護層は、例えばSiO、SiN、AlN等の無機材料や、光硬化性樹脂などの有機材料を用いて形成することができる。
無機保護層は、真空成膜法によって形成することができ、有機保護層は、反射層上に光硬化性樹脂膜(例えば、大日本インキ化学工業社製のSD1700、SD318、SD301)をスピンコートした後、樹脂硬化光を照射することによって形成できる。
また、高密度化を図るため高NAのレンズを用いる場合には、保護層を光透過性とする必要がある。
更に、高NA化する場合には、再生光が透過する部分の厚さを薄くする必要がある。これは、高NA化に伴い、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差の許容量が小さくなるためであり、このチルト角が基板の厚さによる収差の影響を受け易いためである。
従って、基板の厚さを薄くしてチルト角に対する収差の影響をなるべく小さくするようにする必要がある。
【0023】
そこで、例えば基板上に凹凸を形成して記録層とし、その上に反射層を設け、更にその上に光を透過する薄膜である光透過性のカバー層を設けるようにする。基板上に反射層を設け、その上に耐熱保護層、記録層、耐熱保護層、更にその上に光透過性を有するカバー層を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体も提案されている。このようにすれば、カバー層を薄型化していくことで対物レンズの高NA化に対応可能である。つまり、薄いカバー層を設け、このカバー層側から記録再生することで、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このようなカバー層は、ポリカーボネートシートや紫外線硬化型樹脂により形成する方法、又は、厚さ70μmのシート(カバー基板)を厚さ30μmの接着剤で固定する方法が一般的である。接着剤で固定する場合の保護層と接着層の合計厚みは0.1mm程度が好適である。
【0024】
ディスク形態の場合には、反射層を内側に挟む形で2枚の基板を貼り合わせた構造としてもよいし、2枚の基板を貼り合せないで、いわゆる単板の構造としてもよい。更に、必要に応じて接着層や保護層を設けた2枚の基板を貼り合わせた構造としてもよい。これらの2枚の基板は、それぞれが記録層を有しており、光ビームをどちらか一方の基板から照射することによって、それぞれの記録層に情報の記録を行い、光ビームを照射する側の記録層構成が上記光ビームのうち40%以上を透過する構成とする。
また、ディスク形態として、1枚の基板上に記録層を2層以上設けることも可能である。このとき、光ビームを基板側から照射することによって、それぞれの記録層に情報の記録を行ってもよいし、光ビームを基板と反対側から照射することによって、それぞれの記録層に情報の記録を行ってもよい。
【0025】
上記のように、光ビームをある一方向から照射して複数の記録層に情報の記録を行うような場合、光ビーム入射側の記録層と、その反対側の記録層とが異なる膜厚を有していてもよい。
また、光ビーム入射側の層の主成分となる材料と、その反対側の層の主成分となる材料とは、同一でも異なっていてもよい。
追記型光記録媒体のアドレス情報等をプリフォーマット信号として基板に予め形成させることができる。そのための形態としては、凹又は凸形状のエンボスピット方式、或いは、情報に応じてグルーブ部やランド部の幅を変調するウォーブル方式が可能である。ウォーブル方式としては、グルーブ部の内周側と外周側の何れか一方又は両方の側面を蛇行させる方式を採用することができる。
【0026】
本発明では片面に2層の記録再生可能な層を有する媒体とすることもできる。その構成は、2枚の基板にそれぞれ記録層及び記録補助層を形成し、両者を透明な材料で貼り合わせ、どちらか一方の基板側からレーザ光を入射し、両方の記録層に対して情報の記録及び再生を行うものである。貼り合わせ材料としては、紫外線硬化樹脂、両面テープなど平坦性の良好なものを用いる。
また本発明では、1枚の基板上に2層の記録再生可能な層を形成した媒体とすることもできる。その構成は、1枚の基板に2層の記録層及び記録補助層を形成し、基板側或いは基板と反対側からレーザ光を入射し、両方の記録層に対して情報の記録及び再生を行うものである。
これらの場合において、記録再生用のレーザ光が入射する側の基板に形成された記録層及び記録補助層を第一層、反対側の層を第二層とすると、第二層に情報を記録したり、第二層の情報を再生するためには、第一層は記録再生用レーザ光の少なくとも一部を透過しなければならない。
【0027】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0028】
実施例1〜6
トラックピッチ0.43μm、溝底幅0.14μm、溝深さ20nmの案内溝を有するポリカーボネート基板上に、スパッタにより下部耐熱保護層、記録層、上部耐熱保護層、反射層を順次成膜した。下部耐熱保護層、上部耐熱保護層にはZnS・SiO2誘電体を用い、それぞれ厚さ70nm、10nmとした。記録層には、表1に示す組成の材料を用い厚さ20nmとした。反射層にはAgを用い厚さ140nmとした。更に、反射層上にアクリル系紫外線硬化樹脂をスピナーによって厚さ5〜10μm塗布し紫外線硬化させて保護層とした。
その上に更に、直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネートディスクを接着シートにより貼り合わせて実施例1〜6の光記録媒体を得た。
これらの光記録媒体に対し、初期化装置を用い、半導体レーザにより記録層を初期結晶化した後、その信号特性と保存特性を評価した。初期化条件は初期化パワー850mW、ヘッド送り54μm/rであり、初期化線速は表1に示した通りである。
記録再生には、パルステック工業社製の光ディスク評価装置DDU−1000を用い、波長405nm、NA0.65のピックアップを用いた。記録の変調方式はEFM+変調方式で2値ランダムパターンによる記録を行った。記録パワーは10.5mW、再生パワーは0.5mWとした。特に記録は通常の相変化材料に対する記録パワー8.5mWよりも強い照射を行ない、その基板の変形を誘発させた。線密度は0.092μm/bitとした。ジッタは、data to clock(データ・トゥ・クロック)で測定した。記録線速は6m/sとした。
図11に、2値記録によりランダムパターンを記録した際の、実施例1、実施例7、比較例1の光記録媒体のパワーマージンを示す。記録条件は次の通りである。
<記録条件>
この図から、実施例1の光記録媒体は比較的広いパワーマージンを有し、ジッタも7.5%と良好な値を示すことが分る。実施例7と比較例1については後述する。
図11(2値記録におけるランダム記録)の最適記録パワー(ジッタ最低値)での基板の最大変形高さは、実施例1:5nm、実施例7:3nm、比較例1:23nmである(基板溝深さ:20nm)。
同じく、実施例2〜6の基板の最大変形高さは、実施例2:5nm、実施例3:5nm、実施例4:4nm、実施例5:4nm、実施例6:4nmである。
【0029】
【表1】
【0030】
<多値(8値)変調記録条件>
また、実施例1の光記録媒体に対して多値記録を行った。記録条件は以下の通りである。
・波形(ストラテジ)について
レベル 1 2 3 4 5 6 7 8
信号 0T 2T 4T 5T 6T 7T 8T 10T
・孤立波の記録プログラム(図6に対応する)
11211311411511611711811
即ち、2つのレベル1(スペース)を挟んで各レベルの孤立多値信号を記録した。(図6中の突出した波形部分が、レベル2〜8に対応する)
・重ね・孤立波の記録プログラム(図3に対応する)
888811811777711711666611611555511511444411411333311311222211211
即ち、2つのレベル1(スペース)を挟んで4つの連続した重ね波と1つの孤立波を記録した。(図3中の突出した波形部分が、レベル8〜2に対応する)
・記録速度:6m/s
・周波数:65.4MHz
・記録パワー:10.5mW
・未記録部の反射率:12%
図3に示すように4つの連続した重ね波と孤立波の波形の高さが均一に揃っている。なお、レベル8の変調度は63%であった。
【0031】
次に、記録後の光記録媒体の銀反射膜側を、テープを用いて基板と下部耐熱保護層との界面において剥がし、基板表面のAFM観察を行った。結果を図4、図5に示す。
なお、図3のレーザ進行方向は左→右であるが、図4、図5のAFM観察像のレーザ進行方向は逆であって、左←右なので注意が必要である。また、この関係は、後述する全ての波形を示す図とAFM観察像を示す図の組合せにおいても同様である。
図4、図5に示すAFM像から、最も大きな信号(レベル8)4つの連続書き(重ね波)においても、その形状はほぼ均一であり、波形が安定していることが分る。
孤立波を記録した図6に対応する光記録媒体についても上記と同様の処理をしてAFM観察を行った。結果を図7に示す。
図8は、この孤立波のAFM断面から、それぞれのレベルのマーク部基板変形高さを測定した結果のデータである。図中には後述する実施例7と比較例1の結果も同時に示した。この図から分るように、実施例1のマーク部基板変形最大高さは全ての記録レベルでH/D<1となっており、このことが重ね波の均一な信号の重要な因子となっている。また、0.05<H/Dの範囲とすることにより書き換えを防止することが可能となった。0.05以下の場合は書き換えができてしまい、追記型光記録媒体とは言えなくなってしまった。
【0032】
次に、図9を用いて、本実施例の多値記録において、本発明の範囲以上の基板変形が起こるような記録を行った際に生じる変調度差という不良信号を説明する。この図から、重ね・孤立波において、その記録エネルギー投入量が大きくなり、基板の溝深さ以上、即ち、1≦H/Dの変形が生じると、4つの連続重ね波のうち、4つ目の変調度差が特に大きくなってしまうことが分る(詳細は比較例1で説明)。これを変調度差と呼ぶ。
なお、本実施例では多値(8値)記録における重ね・孤立波を示したが、2値記録におけるビ−ム径以上の長さを有する長い記録マ−ク部の前端エッジと後端エッジの変調度差(図23参照)についても同様の現象は起り、2値記録における変調度差に対しても本発明の効果は同じである。
次に、上記多値記録における変調度差の大きさ(図9)と基板変形高さとの関係を調べたところ、図10に示すようにH/D=1を境に変調度差が急激に大きくなり、変調度差が±20%を超えると多値記録におけるエラーが大きくなり過ぎ、読み出しが不可能となった。これは、溝深さ以上の基板変形高さとすることにより連続記録ができ難くなり、変調度差が±20%を超えると読み出しが不可能となることを意味する。即ち、基板変形高さを基板の溝深さよりも低くすることにより、隣接する信号に影響を及ぼさず高密度で高信頼性を有する追記型光記録媒体を得ることができる。
【0033】
実施例7
トラックピッチ0.43μm、溝底幅0.14μm、溝深さ20nmの案内溝を有するポリカーボネート基板上に、Teターゲットを用いてスパッタにより膜厚15Åの記録補助層を設けた。製膜はアルゴン+酸素混合ガス雰囲気下(5×10−3torr)で行った。酸素の混合割合は10原子%とした。
次いで、実施例1と同様にしてスパッタにより下部耐熱保護層、記録層、上部耐熱保護層、反射層を順次成膜し、保護層を設けて本実施例の光記録媒体を得た。
この光記録媒体について、記録パワーを10.2mWに変えた点以外は実施例1と同様にして記録を行い評価した。なお、未記録部の反射率は15%であった。
図12に重ね・孤立波の波形を示す。なお、変調度は67%であり、TeOを記録補助層とすることにより変調度は更に向上した。
また、基板表面のAFM観察像を図13、図14に示す。
図14のAFM観察像から、最も大きな信号(レベル8)4つの連続書き(重ね波)においてもその形状はほぼ均一であり、波形が安定していることが分る。
また、実施例1と比較してその変調度が大きくなっているにも拘らず、変形量は顕著に小さくなっていることが分る。これが記録補助層TeOの変形抑制効果である。
図15に孤立波の波形を示す。また、図16に孤立波を記録したときのAFM観察像を示す。
次に、上記多値記録における変調度差の大きさ(図9)と基板変形高さとの関係を調べたところ、図17に示すようにH/D=1を境に変調度差が急激に大きくなり、変調度差が20%を超えると多値記録におけるエラーが大きくなり過ぎ、読み出しが不可能となった。これは、溝深さ以上の基板変形高さとすることにより連続記録ができ難くなり、変調度差が20%を超えると読み出しが不可能となることを意味する。即ち、基板変形高さを基板の溝深さよりも低くすることにより、隣接する信号に影響を及ぼさず高密度で高信頼性を有する追記型光記録媒体を得ることができる。
また、図12では図3よりも変調度が向上したにも拘らず、図8に示すように実施例1に比べて実施例7の各記録レベルの基板変形高さは非常に小さくなっており、記録補助層が変形抑制層として働いていることが分る。これにより図11で示すように2値記録におけるパワーマージン特性が更に向上した。
【0034】
実施例8〜14
記録補助層Teの酸化度、膜厚、記録層の種類などを変化させた点以外は実施例7と同様にして光記録媒体を作成し、実施例7と同様にして評価した結果を表2に示す。但し、実施例8の光記録媒体については、酸素を含まないアルゴン雰囲気下(5×10−3torr)でスパッタした。
また、蛍光X線で測定した記録補助層の材料中の酸素割合を表2に示した。
また、各光記録媒体の未記録部の反射率は全て10〜17%の範囲内であった。
表2から分るように、実施例8〜14についても変調度、ジッタ、パワーマージン共に良好な結果を示した。
【0035】
実施例15〜16
実施例15の基板の溝深さを10nm、実施例16の基板の溝深さを150nmとした点以外は実施例7と同様にして光記録媒体を作成し評価した結果を表2に示す。また、蛍光X線で測定した記録補助層の材料中の酸素割合を表2に示した。
表2から分るように、実施例15〜16についても変調度、ジッタ、パワーマージン共に良好な結果を示した。
【0036】
【表2】
また、上記表2に示した各実施例の光記録媒体に対し、2値レベルのランダムパターン記録を行ったところ、基板変形は全て、0.05<H/D<1という要件を満足した。
【0037】
比較例1
実施例1と同じ光記録媒体に対し、マルチレベル(多値)記録のストラテジのマルチパルスの幅を変更してその変調度を上げるようにした点以外は実施例1と同様にして記録を行い評価した。
図18に重ね・孤立波の波形を示す。変調度は71%である。
変調度は実施例1と比較して高いが、4つの重ね波の内、始めの3つが小さな波形として観測されている。これではマルチレベル記録媒体としては利用できないことが分る。この状態のAFM観察像を図19、図20に示す。
図20から分るように、孤立波の部分(左側の部分)を断面から観察すると中央部が窪んでいる。これにより変調度が大きくなることがシミュレーションから計算されているが、重ね波の部分(右側の部分)になると前半の3つのマークは中央部が凸状になっている。これは隣接して大きな信号が記録された場合、その直前のマークが凸状に変形することを表している。マークが凸状になると変調度は小さくなることもシミュレーションから計算されている。
即ち、隣接して記録された3つのマークは凸状に基板変形して変調度が低下し、最後の4つ目だけ、本来の窪んだ形状になっていることがAFM観察により判明した。
図21に孤立波の波形を示す。また、図22に孤立波を記録したときのAFM観察像を示す。このAFM観察像から各マルチレベル記録のマークの基板変形高さを測定したところ、図8に示すように最大変形量はH/D=1.4に近い値であった。これは基板の溝深さを大きく超える基板変形量を意味する。実施例1は最大でも基板の溝深さ未満の基板変形量であり、これ以上記録パワーを投入すると4つめの波形の変調度だけが大きくなるという現象が出てきた。これらのことから、基板変形の大きさが基板の溝深さよりも小さいか否かで記録特性の良否が別れることが分る。
即ち、基板変形の最大高さがその基板の溝深さよりも大きくなってしまうことにより上記のような欠点を有することが分り、本発明者は基板変形の最大高さをその基板の溝深さよりも小さくすることによりマルチレベル記録特性を格段に改良できることを見出した。このことは2値レベル記録での基板評価においても同様である。
図11において、比較例1の2値レベル記録におけるジッタとパワーマージンは実施例1と比較してジッタが劣化し、パワーマージンも狭くなっていることが分る。これは変形量が大きく、隣の溝やマークに影響を及ぼすことが原因と考えられる。
【0038】
なお、上記実施例においては、ディスク状光記録媒体を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばカード状、スティック状、テープ状などの、他の形態の追記型光記録媒体にも応用できることは勿論である。
また、上記実施例においては、高い反射率を得るために反射層を設けたが、反射率の制限が無い場合は反射層を省略することもできる。その場合には反射層の代りに保護層を積層する。
以上の実施例から、本発明の追記型光記録媒体の層構成と記録原理が、青色レーザ波長対応の、追記型光記録媒体、更には高変調度が確保できる追記型光記録媒体の実現に非常に有効であることが確認できた。
【0039】
【発明の効果】
本発明1によれば、これまで開発されてきた信頼性及び特性の高い相変化材料を記録層に用いた、重ね書きなどのデータの改ざんができない追記型光記録媒体を実現できる。また、クロストークが低減され、ジッタが小さく、パワーマージンが広い追記型光記録媒体を実現できる。特に連続書き(重ね波)の際に顕著な効果を奏し、2値レベル以上の高密度記録に効果を発揮する。
本発明2〜3によれば、更に、溝形状と記録原理との相乗効果により、クロストーク、ジッタ、パワーマージンを向上させることができる。
本発明4〜7によれば、基板の変形を本発明の最適な変形量に抑制するなどの機能により、更にクロストークを低減し、ジッタを下げ、パワーマージンの広い媒体を実現できる。
本発明8によれば、3段階以上の多値記録において安定な信号を得ることができる、高密度記録可能な媒体を実現できる。
本発明9によれば、本発明4〜8に適した記録方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の追記型光記録媒体の層構成の一例を示す要部拡大断面図。
【図2】本発明の追記型光記録媒体の層構成の他の例を示す要部拡大断面図。
【図3】実施例1の重ね・孤立波の波形を示す図。
【図4】レベル8信号の重ね・孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図5】図4のX−X断面図。
【図6】実施例1の孤立波の波形を示す図。
【図7】孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図8】各記録レベルとマーク部基板変形高さの測定結果を示す図。
【図9】実施例1の媒体に本発明の範囲以上の基板変形をもたらすようにマルチレベル記録したときに発生する変調度差の説明図。
【図10】基板変形高さと変調度差の関係を示す図。
【図11】2値レベル記録によりランダムパターンを記録した際のパワーマージンを示す図。
【図12】実施例7の重ね・孤立波の波形を示す図。
【図13】実施例7にレベル8信号の重ね・孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図14】図13のX−X断面図。
【図15】実施例7の孤立波の波形を示す図。
【図16】実施例7の孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図17】実施例7の媒体にマルチレベル記録したときの変調度差と基板変形高さとの関係を示す図。
【図18】比較例1の重ね・孤立波の波形を示す図。
【図19】レベル8信号の重ね・孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図20】図19のX−X断面図。
【図21】比較例1の孤立波の波形を示す図。
【図22】孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図23】前端エッジ、後端エッジを説明するための図。
【符号の説明】
1 基板
2 記録補助層
3 下部耐熱保護層
4 記録層
5 上部耐熱保護層
6 反射層
7 保護層
L 前端エッジの変調度
T 後端エッジの変調度
【発明の属する技術分野】
本発明は、青色レーザ波長領域でも高密度の記録が可能な追記型光記録媒体(WORM:Write Once Read Many)に関する。
【0002】
【従来の技術】
超高密度の記録が可能となる青色レーザの開発は急速に進んでおり、それに対応した追記型光記録媒体の開発が行われている。
従来の追記型光記録媒体では、有機材料からなる記録層にレーザ光を照射し、主に有機材料の分解・変質による屈折率変化を生じさせることで記録ピットを形成させており、記録層に用いられる有機材料の光学定数や分解挙動が、良好な記録ピットを形成させるための重要な要素となっている。
従って、記録層に用いる有機材料としては、青色レーザ波長に対する光学的性質や分解挙動の適切な材料を選択する必要がある。即ち、未記録時の反射率を高め、またレーザの照射によって有機材料が分解し大きな屈折率変化が生じるようにするため(これによって大きな変調度が得られる)、記録再生波長は大きな吸収帯の長波長側の裾に位置するように選択される。
何故ならば、有機材料における大きな吸収帯の長波長側の裾は、適度な吸収係数を有し且つ大きな屈折率が得られる波長領域となるためである。
しかしながら、青色レーザ波長に対する光学的性質が従来並みの値を有する有機材料は未だ見出されていない。これは、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料を得るためには、分子骨格を小さくするか又は共役系を短くする必要があるが、そうすると吸収係数の低下、即ち屈折率の低下を招くためである。
つまり、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料は多数存在し、吸収係数を制御することは可能となるが、大きな屈折率を持たないため、大きな変調度を得ることができなくなる。
【0003】
特許文献1には、基板上に反射層と記録層の機能を有する複合機能層、保護層を順次形成した層構成で、基板と複合機能層がバンプを形成することで記録を行う技術が開示されている。なお、複合機能層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。
特許文献2には、基板上に金属薄膜層、変形可能な緩衝層、反射層、保護層を順次形成した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚を薄くさせることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。また、緩衝層としては、変形し易く適当な流動性を持つ樹脂が用いられ、変形を促進させるために色素を含有させても良いとの記載がある。
特許文献3には、基板上に金属薄膜層、緩衝層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、緩衝層は色素と有機高分子の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
【0004】
特許文献4には、基板上に金属記録層、バッファ層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属記録層を変形させ、同時にこの変形部でのバッファ層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属記録層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、バッファ層は色素と樹脂の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
しかし、これら金属薄膜層を用いた文献には、光源として400〜850nmの波長のレーザを用いることができるという記載はあるものの、実際に実施例で用いているのはCD−R用の780nmのレーザのみであって、CD−R程度の低記録密度の場合しか効果が確認されていない。しかも、評価項目はCNRであり、3Tのみ(記述無し)のシングルパターンでの評価である。周知のように、2値記録ではランダムパターンでの記録においてジッタ評価を行わなければ実用上意味がない。従ってこれらの文献に高密度の2値記録を実現できる技術が記載されているとは言えない。
【0005】
特許文献5には、相変化材料などからなる記録層を、ZnS・SiO2などの保護層材料に代えてTeO層で挟み、記録層との接着性を改善し、ZnS・SiO2等のようにSが記録膜の中に拡散し特性が劣化するのを防止する発明が開示されているが、信頼性の向上のために本願発明とは全く異なる範囲の酸化度を有するTeOを用いており、該発明の効果も本願発明とは全く異なるものである。また、相変化記録材料としては、GeTe、GeTeSe、GeTeS、GeSeS、GeSeSb、GeAsSe、InTe、SeTe、SeAs、GeTe(Sn,Au,Pd)、GeTeSeSb、GeTeSb、AgInSbTe等がある。特に、AgInSbTeは、高感度であり、アモルファスマーク部分の輪郭が明確であるという特徴を有し、マークエッジ記録用の記録層として開発されている(特許文献6〜11等参照)。
この他にも相変化材料を用いた発明は数多く存在するが、それらの多くは書き換え型媒体についてのものであり、信頼性の高い相変化材料を追記型光記録媒体として用い、データの改ざんが出来ないように工夫した発明は、本発明者の知る限り見当らない。
【0006】
以上のように、上記従来技術は青色レーザ波長領域での光記録媒体の実現を狙ったものではなく青色レーザ波長領域で有効となる層構成や記録方法ではない。
特に、現在実用化されている青色半導体レーザの発振波長の中心である405nm近傍においては、従来の追記型光記録媒体の記録層に要求される光学定数と同程度の光学定数を有する有機化合物が殆ど存在しない。
また、405nm近傍で記録条件を明確にし、DVDよりも高記録密度で記録された例はない。
追記型光記録媒体において重ね書きが出来ないという特性は、文書の改ざんを防止するという点で重要である。しかし、従来の相変化材料を記録層に用いて追記型光記録媒体を作成しようとすると、相変化材料の多くは可逆性を有するため書換えが可能となってしまう。従って、一般的に相変化材料を追記型光記録媒体の記録層に用いることはない。
しかし、これまで相変化材料について多くの研究がなされ商品化されてきており、非常に完成度の高い材料が多くあるので、これらの材料を用いれば、新規で有用な改ざんを防止出来る追記型光記録媒体を提供できる。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−265660号公報
【特許文献2】
特開平10−134415号公報
【特許文献3】
特開平11−306591号公報
【特許文献4】
特開平10−124926号公報
【特許文献5】
特開2002−298436号公報
【特許文献6】
特開平3−231889号公報
【特許文献7】
特開平4−191089号公報
【特許文献8】
特開平4−232779号公報
【特許文献9】
特開平4−267192号公報
【特許文献10】
特開平5−345478号公報
【特許文献11】
特開平6−166266号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記問題点を解決し、青色レーザ波長以下の領域、特に450nm以下の波長領域で高密度の記録再生を行っても、容易に記録再生でき、記録感度、変調度、ジッタといったような記録特性や、パワーマージンの改善を実現できる相変化材料を記録層に用いた追記型光記録媒体とその記録方法の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の1)〜9)の発明(以下、本発明1〜9という)によって解決される。
1) 案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有し、記録を行った際に記録マーク部の変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、0.05<H/D<1という関係を満足し、波長450nm以下のレーザの照射時間又は照射強度を2値以上に変調させることにより記録・再生を行うことができることを特徴とする追記型光記録媒体。
2) 案内溝のトラックピッチが0.25〜0.5μm、深さが10〜150nm、溝底幅が0.10〜0.25μmであり、初期化を除く未記録状態の反射率が2〜50%であることを特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
3) ビ−ム径以上の長さを有する記録マ−ク部の前端エッジと後端エッジの変調度差が±20%以内となる再生信号を発生することを特徴とする1)又は2)記載の追記型光記録媒体。但し、上記変調度差は、後端エッジの変調度をT、前端エッジの変調度をLとして、下記式で定義されるものである。
変調度差(%)=(T−L)×100/T
4) 基板と相変化記録層の間に無機材料からなる記録補助層を有することを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
5) 記録補助層の主成分がTe又はTe酸化物であることを特徴とする4)記載の追記型光記録媒体。
6) 記録補助層の材料中の酸素割合が0〜60原子%であることを特徴とする4)又は5)記載の追記型光記録媒体。
7) 記録補助層の膜厚が1〜100Åであることを特徴とする4)〜6)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
8) 照射時間と照射パワーの少なくとも一方が3段階以上に設定されたレーザにより、グルーブに沿った記録再生用レーザの進行方向における任意の単位長さ及びこれと直行する方向の任意の単位幅となる仮想記録セルに、3種類以上の大きさの異なる記録マークが形成されることにより、光反射率が変調され、情報を多値記録できることを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
9) 記録マーク部の変形の最大高さHと案内溝の深さDとの関係が0.05<H/D<1という関係を満足し、ビ−ム径以上の長さを有する記録マ−ク部の前端エッジと後端エッジの変調度差が±20%以内となる再生信号を発生する記録部を形成できるような記録パワー又は記録ストラテジで2値以上に変調させて記録を行うことを特徴とする3)〜8)の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。但し、上記変調度差は、後端エッジの変調度をT、前端エッジの変調度をLとして、下記式で定義されるものである。
変調度差(%)=(T−L)×100/T
【0010】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明者は、記録を行った際の記録マーク部の変形の最大高さHが、基板の案内溝の深さDよりも小さい(H/D<1)記録部を形成させることにより、クロストークを低減しジッタを下げ、パワーマージンの広い媒体が実現できることを見出した。特に連続書き(重ね波)の際に顕著な効果を奏し、2値レベル以上の高密度記録に効果を発揮する。
更に、相変化材料を記録層として用いるが、0.05<H/Dという要件を満足する基板変形を起こさせることにより、重ね書きなどのデータの改ざんができない追記型光記録媒体が得られる。即ち、本発明では、これまで開発されてきた信頼性及び特性の高い相変化材料を追記型光記録媒体の記録層として用いることに成功した。
H/Dが1以上では、クロストークが増大し、ジッタ、パワーマージンが悪化するし、H/Dが0.05以下では、相変化材料の可逆性によりデータが改ざんされる恐れのある媒体となる可能性がある。より好ましい範囲は0.1<H/D<0.9である。
【0011】
また、案内溝のトラックピッチが0.25〜0.5μm、深さが10〜150nm、溝底幅が0.10〜0.25μmである基板を用い、未記録状態の反射率が2〜50%であるようにすれば、更にクロストーク、パワーマージン、ジッタを向上させることができる。
特に、通常の書き換え型相変化記録媒体では基板変形は起こらないものであるが、本発明では追記型光記録媒体として相変化記録材料を用いるため基板変形が必要となる。その基板変形を誘発するため、本発明では通常の書き換え型相変化記録媒体の場合よりも強い記録パワーで記録を行う。この方法に代えて、例えばストラテジを改良するなど、他の方法も用いることも出来る。
また、本発明3のように、変調度差が±20%以内となる再生信号を発生させるように設計すれば、更に顕著な記録再生特性の向上を図ることができる。
なお、変調度差(%)の定義中の前端エッジ、後端エッジは、図23に概念的に示した記録部の前後端部のことである。
【0012】
また、基板と記録層の間に無機材料からなる記録補助層を挿入すれば、基板の変形を本発明の最適な変形量に抑制するなどの機能により、更にクロストークを低減し、ジッタを下げ、パワーマージンの広い媒体を実現することができる。
ここで記録補助層とは、記録層の記録原理を補助しその記録特性を向上させる層を意味し、基板の変形を抑制する機能だけに限定されない。
記録補助層の材料としては、SiC、B4C、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイアモンド等の炭素系の非酸化物等に代表されるセラミックス;Ni、Cr、Ti、Ta等の純粋金属;Cu/Al、Ni/Feなどの合金;Si等の半金属;Ge、Te等の半導体等が挙げられる。これらの材料は基板の変形を本発明の最適な変形量に抑制することを特徴とし、記録層に用いた相変化材料の光学定数の変化との相乗効果をもたらす。
【0013】
特にTe又はTe酸化物が好適であり、本発明の媒体特性において大きな効果を示す。Te系材料は酸化により劣化が起り易く、Teを用いた媒体の製品化を妨げてきたが、記録補助層の材料中の酸素割合を0〜60原子%とすることにより保存特性は飛躍的に向上する。また、記録補助層の主成分をTe又はTe酸化物とし、記録補助層の材料中の酸素割合を0〜60原子%とするか、記録補助層の膜厚を1〜100Åとするかの少なくとも一方を満たせば、相変化材料の光学定数変化と記録補助層の変形との相乗効果により、記録感度、パワーマージンが一層向上する。TeOが変形を抑制しながら更に変調度を上げることができる理由はTeOの相変化が考えられる。また、ここで主成分とは、記録補助層としての機能を果すのに十分な量のTe又はTe酸化物を用いることを意味するが、通常は、Te又はTe酸化物のみを用いる。また、酸素の割合が60原子%を越えるとTeが不安定になることがある。また、膜厚が1Å未満では記録補助層としての機能を果さないし、100Åを越えるとジッタが悪くなることがある。
記録補助層は記録に用いる波長における吸光度が0.5以下となるように材料や膜厚を選択する。吸光度が0.5より高いと、光が吸収されてしまって反射率が低くなり良好な記録ができない。また融点が700℃以下、熱伝導率が1W/cm・K以下の材料が好ましい。
【0014】
本発明が目的とするところの高密度記録を行うためには記録マークを小さくする必要がある。記録マークを小さくするためには、記録層の相変化に要するレーザビームの照射時間を短くする必要がある。従って、記録層の結晶化速度が速いことが必要とされる。このような要件を満たす記録層用の相変化材料としては、GeTe、GeTeSe、GeTeS、GeSeS、GeSeSb、GeAsSe、InTe、SeTe、SeAs、GeTe(Sn,Au,Pd)、GeTeSeSb、GeTeSb、AgInSbTe、GeInSbTe等が挙げられる。特に、AgInSbTeは、高感度でありアモルファスマーク部分の輪郭が明確であるという特徴を有し、マークエッジ記録用の記録層として開発されている。
【0015】
従来の光記録媒体のような再生信号の長さを多段階に変えることによってデータを記録する方法に対して、再生信号の深さを多段階に切りかえることにより、同じ長さの各信号に複数のデータを記憶する方法に関する研究が数多くなされている。
この光記録方法によれば、単にピットの有無による2値のデータを記録した場合と比較して、深さ方向に複数のデータを記録できるため、一定の長さに割り当てられる信号の量を増やすことができ、従って、線記録密度を向上させることが可能となる。なお、ここでは反射信号の変調度が互いに異なる3種類以上の記録データを記録することを多値記録と呼ぶ。
本発明者は、本発明の追記型光記録媒体において、照射時間と照射パワーの少なくとも一方が3段階以上に設定されたレーザにより、グルーブに沿った記録再生用レーザの進行方向における任意の単位長さ及びこれと直行する方向の任意の単位幅となる仮想記録セルに、3種類以上の大きさの異なる記録マークが形成されることにより、光反射率が変調され、情報を多値記録でき、良好な信号を得られることを確認した。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の層構成例を、図1及び図2に示す。図1は、基板側からレーザを入射して記録再生を行う例の要部拡大断面図である。この光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、下部耐熱保護層3、記録層4、上部耐熱保護層5、反射層6、保護層7がこの順に積層された層構成を有する。
図2の光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン(図示せず)を有する基板1、記録補助層2、下部耐熱保護層3、記録層4、上部耐熱保護層5、反射層6、保護層7がこの順に積層された層構成を有する。
【0017】
基板としては、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン、エポキシ樹脂、ポリエステル、非晶質ポリオレフィンなどの透明樹脂材料(好ましくはガラス転移温度Tgが100〜200℃)を所望の形状に成形し、その片面に所望のプリフォーマットパターンを転写したものや、所望の形状に形成されたガラス等の透明セラミックス板の片面に所望のプリフォーマットパターンが転写された透明樹脂層を密着したものなど、公知に属する任意の透明基板を用いることができる。
また、ディスク状光記録媒体(光ディスク)を構成する基板の場合には、中心部にセンタ孔を有する円盤状に形成する。
なお、基板の作製は、公知の方法で行うことができる。
【0018】
プリフォーマットパターンは、少なくとも記録・再生用レーザビームを記録トラックに追従させるためのビーム案内部を含んで構成される。例えば、ビーム案内部を、センタ孔と同心の渦巻状又は同心円状に形成された案内溝をもって構成し、当該案内溝に沿ってアドレスピットやクロックピット等のプリピットを形成することができる。
プリピットを案内溝上に重ねて形成する場合には、両者を光学的に識別できるようにするため、案内溝とプリピットとをそれぞれ異なる深さに形成する。プリピットを相隣接する案内溝の間に形成する場合には、両者を同じ深さにすることもできる。
なお、ビーム案内部としては、案内溝に代えて、ウォブルピットを記録トラックに沿って形成することもできる。また、プリピットを省略し、案内溝のみで形成しても良い。
【0019】
下部耐熱保護層、及び、上部耐熱保護層の材料としては、SiO、SiO2、ZnO・SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2などの金属酸化物;Si2N4、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物;ZnS、In2S3、TaS4などの硫化物;SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物;ダイヤモンド状カーボン;或いはそれらの混合物が挙げられる。これらの材料は単体で用いても、お互いの混合物として用いてもよい。また、必要に応じて不純物を含んでいてもよい。但し、耐熱保護層の融点は記録層の融点よりも高いことが必要であり、更に、熱伝導率が高く、熱膨張係数が小さく、密着性が良いことも要求される。また、必要に応じて耐熱保護層を多層化することもできる。
下部耐熱保護層の膜厚は20〜300nm、好適には35〜200nmとするのがよい。20nmよりも薄くなると、特に耐熱保護層としての機能が失われ、また、300nmよりも厚くなると基板変形が全く起こらなくなる。
上部耐熱保護層の膜厚は、5〜100nm程度とするのがよい。5nmより薄いと基本的に層間のバリアとしての効果が低下し、好ましくない。100nmを越えると基板変形を必要以上に抑制してしまう。
【0020】
記録層には、前述のように種々の相変化材料を用いることが出来るが、Geと、Al、Ga及びInの中から選ばれた少なくとも一つの元素と、Sbと、Teからなる材料が好ましい。膜厚は、5〜50nm、好ましくは、10〜30nmである。5nmより薄いと吸収能が低下し記録層としての機能を果たさなくなる。50nmより厚いと、記録感度が低下し、膜剥離やクラックが生じ易くなったり、基板変形が起こらなくなる。
【0021】
また、本発明では必要に応じて光反射機能を有する層(反射層)を設けることができる。光反射機能を有する層には、再生光の波長で反射率の十分高い材料、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Cr、Pdから選ばれる金属を単独で或いは合金にして用いることができる。中でもAu、Al、Agは、反射率が高く反射層の材料として適している。
また、上記の材料を主成分とし、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属を含む材料でもよい。
中でもAgを主成分とする材料は、コストが安いこと、高反射率が出易いことから特に好ましい。
金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
反射層の膜厚は、50〜100nm程度が好ましい。
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0022】
保護層は、例えばSiO、SiN、AlN等の無機材料や、光硬化性樹脂などの有機材料を用いて形成することができる。
無機保護層は、真空成膜法によって形成することができ、有機保護層は、反射層上に光硬化性樹脂膜(例えば、大日本インキ化学工業社製のSD1700、SD318、SD301)をスピンコートした後、樹脂硬化光を照射することによって形成できる。
また、高密度化を図るため高NAのレンズを用いる場合には、保護層を光透過性とする必要がある。
更に、高NA化する場合には、再生光が透過する部分の厚さを薄くする必要がある。これは、高NA化に伴い、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差の許容量が小さくなるためであり、このチルト角が基板の厚さによる収差の影響を受け易いためである。
従って、基板の厚さを薄くしてチルト角に対する収差の影響をなるべく小さくするようにする必要がある。
【0023】
そこで、例えば基板上に凹凸を形成して記録層とし、その上に反射層を設け、更にその上に光を透過する薄膜である光透過性のカバー層を設けるようにする。基板上に反射層を設け、その上に耐熱保護層、記録層、耐熱保護層、更にその上に光透過性を有するカバー層を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体も提案されている。このようにすれば、カバー層を薄型化していくことで対物レンズの高NA化に対応可能である。つまり、薄いカバー層を設け、このカバー層側から記録再生することで、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このようなカバー層は、ポリカーボネートシートや紫外線硬化型樹脂により形成する方法、又は、厚さ70μmのシート(カバー基板)を厚さ30μmの接着剤で固定する方法が一般的である。接着剤で固定する場合の保護層と接着層の合計厚みは0.1mm程度が好適である。
【0024】
ディスク形態の場合には、反射層を内側に挟む形で2枚の基板を貼り合わせた構造としてもよいし、2枚の基板を貼り合せないで、いわゆる単板の構造としてもよい。更に、必要に応じて接着層や保護層を設けた2枚の基板を貼り合わせた構造としてもよい。これらの2枚の基板は、それぞれが記録層を有しており、光ビームをどちらか一方の基板から照射することによって、それぞれの記録層に情報の記録を行い、光ビームを照射する側の記録層構成が上記光ビームのうち40%以上を透過する構成とする。
また、ディスク形態として、1枚の基板上に記録層を2層以上設けることも可能である。このとき、光ビームを基板側から照射することによって、それぞれの記録層に情報の記録を行ってもよいし、光ビームを基板と反対側から照射することによって、それぞれの記録層に情報の記録を行ってもよい。
【0025】
上記のように、光ビームをある一方向から照射して複数の記録層に情報の記録を行うような場合、光ビーム入射側の記録層と、その反対側の記録層とが異なる膜厚を有していてもよい。
また、光ビーム入射側の層の主成分となる材料と、その反対側の層の主成分となる材料とは、同一でも異なっていてもよい。
追記型光記録媒体のアドレス情報等をプリフォーマット信号として基板に予め形成させることができる。そのための形態としては、凹又は凸形状のエンボスピット方式、或いは、情報に応じてグルーブ部やランド部の幅を変調するウォーブル方式が可能である。ウォーブル方式としては、グルーブ部の内周側と外周側の何れか一方又は両方の側面を蛇行させる方式を採用することができる。
【0026】
本発明では片面に2層の記録再生可能な層を有する媒体とすることもできる。その構成は、2枚の基板にそれぞれ記録層及び記録補助層を形成し、両者を透明な材料で貼り合わせ、どちらか一方の基板側からレーザ光を入射し、両方の記録層に対して情報の記録及び再生を行うものである。貼り合わせ材料としては、紫外線硬化樹脂、両面テープなど平坦性の良好なものを用いる。
また本発明では、1枚の基板上に2層の記録再生可能な層を形成した媒体とすることもできる。その構成は、1枚の基板に2層の記録層及び記録補助層を形成し、基板側或いは基板と反対側からレーザ光を入射し、両方の記録層に対して情報の記録及び再生を行うものである。
これらの場合において、記録再生用のレーザ光が入射する側の基板に形成された記録層及び記録補助層を第一層、反対側の層を第二層とすると、第二層に情報を記録したり、第二層の情報を再生するためには、第一層は記録再生用レーザ光の少なくとも一部を透過しなければならない。
【0027】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0028】
実施例1〜6
トラックピッチ0.43μm、溝底幅0.14μm、溝深さ20nmの案内溝を有するポリカーボネート基板上に、スパッタにより下部耐熱保護層、記録層、上部耐熱保護層、反射層を順次成膜した。下部耐熱保護層、上部耐熱保護層にはZnS・SiO2誘電体を用い、それぞれ厚さ70nm、10nmとした。記録層には、表1に示す組成の材料を用い厚さ20nmとした。反射層にはAgを用い厚さ140nmとした。更に、反射層上にアクリル系紫外線硬化樹脂をスピナーによって厚さ5〜10μm塗布し紫外線硬化させて保護層とした。
その上に更に、直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネートディスクを接着シートにより貼り合わせて実施例1〜6の光記録媒体を得た。
これらの光記録媒体に対し、初期化装置を用い、半導体レーザにより記録層を初期結晶化した後、その信号特性と保存特性を評価した。初期化条件は初期化パワー850mW、ヘッド送り54μm/rであり、初期化線速は表1に示した通りである。
記録再生には、パルステック工業社製の光ディスク評価装置DDU−1000を用い、波長405nm、NA0.65のピックアップを用いた。記録の変調方式はEFM+変調方式で2値ランダムパターンによる記録を行った。記録パワーは10.5mW、再生パワーは0.5mWとした。特に記録は通常の相変化材料に対する記録パワー8.5mWよりも強い照射を行ない、その基板の変形を誘発させた。線密度は0.092μm/bitとした。ジッタは、data to clock(データ・トゥ・クロック)で測定した。記録線速は6m/sとした。
図11に、2値記録によりランダムパターンを記録した際の、実施例1、実施例7、比較例1の光記録媒体のパワーマージンを示す。記録条件は次の通りである。
<記録条件>
この図から、実施例1の光記録媒体は比較的広いパワーマージンを有し、ジッタも7.5%と良好な値を示すことが分る。実施例7と比較例1については後述する。
図11(2値記録におけるランダム記録)の最適記録パワー(ジッタ最低値)での基板の最大変形高さは、実施例1:5nm、実施例7:3nm、比較例1:23nmである(基板溝深さ:20nm)。
同じく、実施例2〜6の基板の最大変形高さは、実施例2:5nm、実施例3:5nm、実施例4:4nm、実施例5:4nm、実施例6:4nmである。
【0029】
【表1】
【0030】
<多値(8値)変調記録条件>
また、実施例1の光記録媒体に対して多値記録を行った。記録条件は以下の通りである。
・波形(ストラテジ)について
レベル 1 2 3 4 5 6 7 8
信号 0T 2T 4T 5T 6T 7T 8T 10T
・孤立波の記録プログラム(図6に対応する)
11211311411511611711811
即ち、2つのレベル1(スペース)を挟んで各レベルの孤立多値信号を記録した。(図6中の突出した波形部分が、レベル2〜8に対応する)
・重ね・孤立波の記録プログラム(図3に対応する)
888811811777711711666611611555511511444411411333311311222211211
即ち、2つのレベル1(スペース)を挟んで4つの連続した重ね波と1つの孤立波を記録した。(図3中の突出した波形部分が、レベル8〜2に対応する)
・記録速度:6m/s
・周波数:65.4MHz
・記録パワー:10.5mW
・未記録部の反射率:12%
図3に示すように4つの連続した重ね波と孤立波の波形の高さが均一に揃っている。なお、レベル8の変調度は63%であった。
【0031】
次に、記録後の光記録媒体の銀反射膜側を、テープを用いて基板と下部耐熱保護層との界面において剥がし、基板表面のAFM観察を行った。結果を図4、図5に示す。
なお、図3のレーザ進行方向は左→右であるが、図4、図5のAFM観察像のレーザ進行方向は逆であって、左←右なので注意が必要である。また、この関係は、後述する全ての波形を示す図とAFM観察像を示す図の組合せにおいても同様である。
図4、図5に示すAFM像から、最も大きな信号(レベル8)4つの連続書き(重ね波)においても、その形状はほぼ均一であり、波形が安定していることが分る。
孤立波を記録した図6に対応する光記録媒体についても上記と同様の処理をしてAFM観察を行った。結果を図7に示す。
図8は、この孤立波のAFM断面から、それぞれのレベルのマーク部基板変形高さを測定した結果のデータである。図中には後述する実施例7と比較例1の結果も同時に示した。この図から分るように、実施例1のマーク部基板変形最大高さは全ての記録レベルでH/D<1となっており、このことが重ね波の均一な信号の重要な因子となっている。また、0.05<H/Dの範囲とすることにより書き換えを防止することが可能となった。0.05以下の場合は書き換えができてしまい、追記型光記録媒体とは言えなくなってしまった。
【0032】
次に、図9を用いて、本実施例の多値記録において、本発明の範囲以上の基板変形が起こるような記録を行った際に生じる変調度差という不良信号を説明する。この図から、重ね・孤立波において、その記録エネルギー投入量が大きくなり、基板の溝深さ以上、即ち、1≦H/Dの変形が生じると、4つの連続重ね波のうち、4つ目の変調度差が特に大きくなってしまうことが分る(詳細は比較例1で説明)。これを変調度差と呼ぶ。
なお、本実施例では多値(8値)記録における重ね・孤立波を示したが、2値記録におけるビ−ム径以上の長さを有する長い記録マ−ク部の前端エッジと後端エッジの変調度差(図23参照)についても同様の現象は起り、2値記録における変調度差に対しても本発明の効果は同じである。
次に、上記多値記録における変調度差の大きさ(図9)と基板変形高さとの関係を調べたところ、図10に示すようにH/D=1を境に変調度差が急激に大きくなり、変調度差が±20%を超えると多値記録におけるエラーが大きくなり過ぎ、読み出しが不可能となった。これは、溝深さ以上の基板変形高さとすることにより連続記録ができ難くなり、変調度差が±20%を超えると読み出しが不可能となることを意味する。即ち、基板変形高さを基板の溝深さよりも低くすることにより、隣接する信号に影響を及ぼさず高密度で高信頼性を有する追記型光記録媒体を得ることができる。
【0033】
実施例7
トラックピッチ0.43μm、溝底幅0.14μm、溝深さ20nmの案内溝を有するポリカーボネート基板上に、Teターゲットを用いてスパッタにより膜厚15Åの記録補助層を設けた。製膜はアルゴン+酸素混合ガス雰囲気下(5×10−3torr)で行った。酸素の混合割合は10原子%とした。
次いで、実施例1と同様にしてスパッタにより下部耐熱保護層、記録層、上部耐熱保護層、反射層を順次成膜し、保護層を設けて本実施例の光記録媒体を得た。
この光記録媒体について、記録パワーを10.2mWに変えた点以外は実施例1と同様にして記録を行い評価した。なお、未記録部の反射率は15%であった。
図12に重ね・孤立波の波形を示す。なお、変調度は67%であり、TeOを記録補助層とすることにより変調度は更に向上した。
また、基板表面のAFM観察像を図13、図14に示す。
図14のAFM観察像から、最も大きな信号(レベル8)4つの連続書き(重ね波)においてもその形状はほぼ均一であり、波形が安定していることが分る。
また、実施例1と比較してその変調度が大きくなっているにも拘らず、変形量は顕著に小さくなっていることが分る。これが記録補助層TeOの変形抑制効果である。
図15に孤立波の波形を示す。また、図16に孤立波を記録したときのAFM観察像を示す。
次に、上記多値記録における変調度差の大きさ(図9)と基板変形高さとの関係を調べたところ、図17に示すようにH/D=1を境に変調度差が急激に大きくなり、変調度差が20%を超えると多値記録におけるエラーが大きくなり過ぎ、読み出しが不可能となった。これは、溝深さ以上の基板変形高さとすることにより連続記録ができ難くなり、変調度差が20%を超えると読み出しが不可能となることを意味する。即ち、基板変形高さを基板の溝深さよりも低くすることにより、隣接する信号に影響を及ぼさず高密度で高信頼性を有する追記型光記録媒体を得ることができる。
また、図12では図3よりも変調度が向上したにも拘らず、図8に示すように実施例1に比べて実施例7の各記録レベルの基板変形高さは非常に小さくなっており、記録補助層が変形抑制層として働いていることが分る。これにより図11で示すように2値記録におけるパワーマージン特性が更に向上した。
【0034】
実施例8〜14
記録補助層Teの酸化度、膜厚、記録層の種類などを変化させた点以外は実施例7と同様にして光記録媒体を作成し、実施例7と同様にして評価した結果を表2に示す。但し、実施例8の光記録媒体については、酸素を含まないアルゴン雰囲気下(5×10−3torr)でスパッタした。
また、蛍光X線で測定した記録補助層の材料中の酸素割合を表2に示した。
また、各光記録媒体の未記録部の反射率は全て10〜17%の範囲内であった。
表2から分るように、実施例8〜14についても変調度、ジッタ、パワーマージン共に良好な結果を示した。
【0035】
実施例15〜16
実施例15の基板の溝深さを10nm、実施例16の基板の溝深さを150nmとした点以外は実施例7と同様にして光記録媒体を作成し評価した結果を表2に示す。また、蛍光X線で測定した記録補助層の材料中の酸素割合を表2に示した。
表2から分るように、実施例15〜16についても変調度、ジッタ、パワーマージン共に良好な結果を示した。
【0036】
【表2】
また、上記表2に示した各実施例の光記録媒体に対し、2値レベルのランダムパターン記録を行ったところ、基板変形は全て、0.05<H/D<1という要件を満足した。
【0037】
比較例1
実施例1と同じ光記録媒体に対し、マルチレベル(多値)記録のストラテジのマルチパルスの幅を変更してその変調度を上げるようにした点以外は実施例1と同様にして記録を行い評価した。
図18に重ね・孤立波の波形を示す。変調度は71%である。
変調度は実施例1と比較して高いが、4つの重ね波の内、始めの3つが小さな波形として観測されている。これではマルチレベル記録媒体としては利用できないことが分る。この状態のAFM観察像を図19、図20に示す。
図20から分るように、孤立波の部分(左側の部分)を断面から観察すると中央部が窪んでいる。これにより変調度が大きくなることがシミュレーションから計算されているが、重ね波の部分(右側の部分)になると前半の3つのマークは中央部が凸状になっている。これは隣接して大きな信号が記録された場合、その直前のマークが凸状に変形することを表している。マークが凸状になると変調度は小さくなることもシミュレーションから計算されている。
即ち、隣接して記録された3つのマークは凸状に基板変形して変調度が低下し、最後の4つ目だけ、本来の窪んだ形状になっていることがAFM観察により判明した。
図21に孤立波の波形を示す。また、図22に孤立波を記録したときのAFM観察像を示す。このAFM観察像から各マルチレベル記録のマークの基板変形高さを測定したところ、図8に示すように最大変形量はH/D=1.4に近い値であった。これは基板の溝深さを大きく超える基板変形量を意味する。実施例1は最大でも基板の溝深さ未満の基板変形量であり、これ以上記録パワーを投入すると4つめの波形の変調度だけが大きくなるという現象が出てきた。これらのことから、基板変形の大きさが基板の溝深さよりも小さいか否かで記録特性の良否が別れることが分る。
即ち、基板変形の最大高さがその基板の溝深さよりも大きくなってしまうことにより上記のような欠点を有することが分り、本発明者は基板変形の最大高さをその基板の溝深さよりも小さくすることによりマルチレベル記録特性を格段に改良できることを見出した。このことは2値レベル記録での基板評価においても同様である。
図11において、比較例1の2値レベル記録におけるジッタとパワーマージンは実施例1と比較してジッタが劣化し、パワーマージンも狭くなっていることが分る。これは変形量が大きく、隣の溝やマークに影響を及ぼすことが原因と考えられる。
【0038】
なお、上記実施例においては、ディスク状光記録媒体を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばカード状、スティック状、テープ状などの、他の形態の追記型光記録媒体にも応用できることは勿論である。
また、上記実施例においては、高い反射率を得るために反射層を設けたが、反射率の制限が無い場合は反射層を省略することもできる。その場合には反射層の代りに保護層を積層する。
以上の実施例から、本発明の追記型光記録媒体の層構成と記録原理が、青色レーザ波長対応の、追記型光記録媒体、更には高変調度が確保できる追記型光記録媒体の実現に非常に有効であることが確認できた。
【0039】
【発明の効果】
本発明1によれば、これまで開発されてきた信頼性及び特性の高い相変化材料を記録層に用いた、重ね書きなどのデータの改ざんができない追記型光記録媒体を実現できる。また、クロストークが低減され、ジッタが小さく、パワーマージンが広い追記型光記録媒体を実現できる。特に連続書き(重ね波)の際に顕著な効果を奏し、2値レベル以上の高密度記録に効果を発揮する。
本発明2〜3によれば、更に、溝形状と記録原理との相乗効果により、クロストーク、ジッタ、パワーマージンを向上させることができる。
本発明4〜7によれば、基板の変形を本発明の最適な変形量に抑制するなどの機能により、更にクロストークを低減し、ジッタを下げ、パワーマージンの広い媒体を実現できる。
本発明8によれば、3段階以上の多値記録において安定な信号を得ることができる、高密度記録可能な媒体を実現できる。
本発明9によれば、本発明4〜8に適した記録方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の追記型光記録媒体の層構成の一例を示す要部拡大断面図。
【図2】本発明の追記型光記録媒体の層構成の他の例を示す要部拡大断面図。
【図3】実施例1の重ね・孤立波の波形を示す図。
【図4】レベル8信号の重ね・孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図5】図4のX−X断面図。
【図6】実施例1の孤立波の波形を示す図。
【図7】孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図8】各記録レベルとマーク部基板変形高さの測定結果を示す図。
【図9】実施例1の媒体に本発明の範囲以上の基板変形をもたらすようにマルチレベル記録したときに発生する変調度差の説明図。
【図10】基板変形高さと変調度差の関係を示す図。
【図11】2値レベル記録によりランダムパターンを記録した際のパワーマージンを示す図。
【図12】実施例7の重ね・孤立波の波形を示す図。
【図13】実施例7にレベル8信号の重ね・孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図14】図13のX−X断面図。
【図15】実施例7の孤立波の波形を示す図。
【図16】実施例7の孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図17】実施例7の媒体にマルチレベル記録したときの変調度差と基板変形高さとの関係を示す図。
【図18】比較例1の重ね・孤立波の波形を示す図。
【図19】レベル8信号の重ね・孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図20】図19のX−X断面図。
【図21】比較例1の孤立波の波形を示す図。
【図22】孤立波を記録したときのAFM観察データを示す図。
【図23】前端エッジ、後端エッジを説明するための図。
【符号の説明】
1 基板
2 記録補助層
3 下部耐熱保護層
4 記録層
5 上部耐熱保護層
6 反射層
7 保護層
L 前端エッジの変調度
T 後端エッジの変調度
Claims (9)
- 案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有し、記録を行った際に記録マーク部の変形の最大高さHと案内溝の深さDとが、0.05<H/D<1という関係を満足し、波長450nm以下のレーザの照射時間又は照射強度を2値以上に変調させることにより記録・再生を行うことができることを特徴とする追記型光記録媒体。
- 案内溝のトラックピッチが0.25〜0.5μm、深さが10〜150nm、溝底幅が0.10〜0.25μmであり、初期化を除く未記録状態の反射率が2〜50%であることを特徴とする請求項1記載の追記型光記録媒体。
- ビ−ム径以上の長さを有する記録マ−ク部の前端エッジと後端エッジの変調度差が±20%以内となる再生信号を発生することを特徴とする請求項1又は2記載の追記型光記録媒体。但し、上記変調度差は、後端エッジの変調度をT、前端エッジの変調度をLとして、下記式で定義されるものである。
変調度差(%)=(T−L)×100/T - 基板と相変化記録層の間に無機材料からなる記録補助層を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 記録補助層の主成分がTe又はTe酸化物であることを特徴とする請求項4記載の追記型光記録媒体。
- 記録補助層の材料中の酸素割合が0〜60原子%であることを特徴とする請求項4又は5記載の追記型光記録媒体。
- 記録補助層の膜厚が1〜100Åであることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 照射時間と照射パワーの少なくとも一方が3段階以上に設定されたレーザにより、グルーブに沿った記録再生用レーザの進行方向における任意の単位長さ及びこれと直行する方向の任意の単位幅となる仮想記録セルに、3種類以上の大きさの異なる記録マークが形成されることにより、光反射率が変調され、情報を多値記録できることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の追記型光記録媒体。
- 記録マーク部の変形の最大高さHと案内溝の深さDとの関係が0.05<H/D<1という関係を満足し、ビ−ム径以上の長さを有する記録マ−ク部の前端エッジと後端エッジの変調度差が±20%以内となる再生信号を発生する記録部を形成できるような記録パワー又は記録ストラテジで2値以上に変調させて記録を行うことを特徴とする請求項3〜8の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。但し、上記変調度差は、後端エッジの変調度をT、前端エッジの変調度をLとして、下記式で定義されるものである。
変調度差(%)=(T−L)×100/T
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JP2003136113A JP2004342196A (ja) | 2003-05-14 | 2003-05-14 | 追記型光記録媒体とその記録方法 |
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Cited By (1)
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JP2011081203A (ja) * | 2009-10-07 | 2011-04-21 | Toppan Printing Co Ltd | 照合素子、粘着ラベル、転写箔及びラベル付き物品 |
-
2003
- 2003-05-14 JP JP2003136113A patent/JP2004342196A/ja active Pending
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