JP2004340878A - エンジンの出力同定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成によりエンジンの出力を同定するようにして、コストを低減することができるエンジンの出力同定装置を提供する。
【解決手段】ねじり振動計測手段11がクランク軸の一端側のねじり振動角変位を計測し、筒内圧計測手段12がエンジンの気筒の筒内圧を計測し、計測された筒内圧に基づき、クランク軸の各スルーの励振トルクを算出し、設計値入力手段14によって入力された設計値により、ねじり振動計算モデルに係る慣性モーメントおよびねじり剛性を算出し、減衰成分計測手段15により、エンジンの減衰成分を計測する。以上の計測値、算出値であるクランク軸の一端側のねじり振動角変位、各スルーの励振トルク、慣性モーメント、ねじり剛性および、減衰成分をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、クランク軸の他端側の励振トルクを算出し、エンジンの正味出力を同定するようにした。
【選択図】図1
【解決手段】ねじり振動計測手段11がクランク軸の一端側のねじり振動角変位を計測し、筒内圧計測手段12がエンジンの気筒の筒内圧を計測し、計測された筒内圧に基づき、クランク軸の各スルーの励振トルクを算出し、設計値入力手段14によって入力された設計値により、ねじり振動計算モデルに係る慣性モーメントおよびねじり剛性を算出し、減衰成分計測手段15により、エンジンの減衰成分を計測する。以上の計測値、算出値であるクランク軸の一端側のねじり振動角変位、各スルーの励振トルク、慣性モーメント、ねじり剛性および、減衰成分をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、クランク軸の他端側の励振トルクを算出し、エンジンの正味出力を同定するようにした。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの各所および運転状態を計測し、該計測した値に基づいてエンジンの正味出力を同定するようにしたエンジンの出力同定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジンを診断するための装置としては、エンジンの回転数または角速度を連続測定する測定ユニットと、このユニットの角測定結果を配分するためのシリンダ識別用ユニットと、トリガーマーク発生器と、油温センサ、水温センサ、排気温度センサ、内燃制御器を調整する距離検出器を備え、こららのユニットの信号を用いて、エンジンを直接駆動する平均出力が近似的に測定できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−332886号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術では、エンジンの出力を近似的に測定するために、数多くのセンサや検出器が必要になることから、装置の構成が複雑になり、コストが嵩む要因になるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、簡易な構成によりエンジンの出力を同定するようにして、コストを低減することができるエンジンの出力同定装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]エンジンの各所および運転状態を計測し、該計測した値に基づいてエンジンの正味出力を同定するようにしたエンジンの出力同定装置であって、
前記エンジンをねじり振動計算モデルであるとして、該ねじり振動計算モデルの運動方程式を用いた演算をする演算手段(10)と、前記クランク軸の一端側のねじり振動角変位を計測するためのねじり振動計測手段(11)と、エンジンの気筒の筒内圧を計測することでクランク軸の各スルーの励振トルクを算出可能にした筒内圧計測手段(12)と、前記エンジンの設計値を入力することで、前記ねじり振動計算モデルに係る慣性モーメントおよびねじり剛性を算出可能にした設計値入力手段(14)と、エンジンの減衰成分を計測するための減衰成分計測手段(15)とを備え、
前記演算手段(10)は、前記ねじり振動角変位、前記励振トルク、前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分の各値を前記ねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、前記クランク軸の他端側の励振トルクを算出して、エンジンの正味出力を同定するようにした
ことを特徴とするエンジンの出力同定装置。
【0007】
[2]前記各気筒の点火タイミングに係る信号を発生するエンジン制御器(16)を備え、
前記演算手段(10)は、前記エンジン制御器(16)からの信号に基づく点火タイミングで前記各スルーに同等の励振トルクが発生するものとして、エンジンの正味出力を同定するようにした
ことを特徴とする[1]に記載のエンジンの出力同定装置。
【0008】
[3]前記エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、前記エンジン回転数と前記軸トルクとの相関関係を示す情報であるN−T線図を作成可能なエンジン計測器(13)を備え、
前記演算手段(10)は、前記N−T線図の情報に基づいて、前記クランク軸の他端側の励振トルクを補正するようにした
ことを特徴とする[1]または[2]に記載のエンジンの出力同定装置。
【0009】
[4]前記クランク軸の他端側のねじり振動角変位を計測するための第2ねじり振動計測手段(24)と、前記クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計(21)とを備えた
ことを特徴とする[1]、[2]または[3]に記載のエンジンの出力同定装置。
【0010】
[5]前記クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計(21)を備え、
前記演算手段(10)は、前記軸トルク計(21)が計測した前記クランク軸の他端側の軸トルクに基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分を算出するとともに、
前記設計値に基づき算出された前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分の各算出値に基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分を算出し、両者の前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分を比較できるようにした
ことを特徴とする[1]〜[4]の何れかに記載のエンジンの出力同定装置。
【0011】
[6]前記クランク軸の他端側に接続されたダイナモ(22)と、該ダイナモ(22)を制御して前記クランク軸の他端側に所定の運転パターンの負荷を与えるようにしたダイナモ制御器(23)とを備えた
ことを特徴とする[1]〜[5]の何れかに記載のエンジンの出力同定装置。
【0012】
以下のように、エンジンの出力が同定される。
エンジンの各所および運転状態を計測する。このとき、計測する順番は特に限定されない。ねじり振動計測手段(11)は、クランク軸の一端側のねじり振動角変位を計測する。計測されたねじり振動角変位は例えばメモリに保存しておく。また、筒内圧計測手段(12)は、エンジンの気筒の筒内圧を計測する。計測された筒内圧に基づき、クランク軸の各スルーの励振トルクが算出可能になる。算出された励振トルクは同じくメモリに保存しておく。
【0013】
さらに、設計値入力手段(14)により、エンジンの設計値を入力する。入力された設計値により、ねじり振動計算モデルに係る慣性モーメントおよびねじり剛性を算出可能になる。算出された慣性モーメントおよびねじり剛性は同じくメモリに保存しておく。さらに、減衰成分計測手段(15)により、エンジンの減衰成分を計測する。計測された減衰成分は同じくメモリに保存しておく。
【0014】
以上のメモリに保存しておいた、クランク軸の一端側のねじり振動角変位、各スルーの励振トルク、慣性モーメント、ねじり剛性および、減衰成分の各値をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、演算手段(10)がクランク軸の他端側の励振トルクを算出することができる。算出されたクランク軸の他端側の励振トルクによって、エンジンの正味出力を同定することができる。
【0015】
次に、各気筒の点火タイミングに係る信号を発生するエンジン制御器(16)を備え、エンジン制御器(16)からの信号に基づく点火タイミングで各スルーに同等の励振トルクが発生するようにしたものでは、気筒数の多少に関わらず、エンジンの出力を同定する場合に、1つの筒内圧計測手段(12)を備えておけばよい。すなわち、1つの筒内圧計測手段(12)によって、複数の気筒の中の1つの筒内圧だけを計測し、その気筒に係る励振トルクを算出しておけば、各気筒の点火タイミングに基づいて他の気筒に係る励振トルクが算出できるようになる。例えば、エンジンの気筒数に応じて筒内圧計測手段(12)を増やす必要がない。仮に、気筒数の多いエンジンの出力を同定する場合においても、1つの筒内圧計測手段(12)を備えればよく、その分だけ、装置の構成が簡易になり、コストを低減することができる。
【0016】
次に、エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、エンジン回転数と軸トルクとの相関関係を示す情報であるN−T線図を作成可能なエンジン計測器(13)を備えたものでは、以下のようにエンジンの出力を同定すればよい。すなわち、エンジン計測器(13)の計測値により作成されたN−T線図を例えばメモリに保存しておく。前述したように、演算手段(10)がクランク軸の他端側の励振トルクを算出したとき、その励振トルクの算出値とN−T線図とを比較することができる。そして、励振トルクの算出値が許容範囲を超えた場合には、励振トルクの算出値を補正し、補正された励振トルクの算出値に基づいて、エンジンの正味出力を算出することができる。
【0017】
次に、クランク軸の他端側のねじり振動角変位を計測するための第2ねじり振動計測手段(24)と、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計(21)とを備えたものでは、以下のように、演算手段(10)が算出した算出値と実測値とを比較することができる。
【0018】
すなわち、前述したように、クランク軸の一端側のねじり振動角変位、各スルーの励振トルク、慣性モーメント、ねじり剛性および、減衰成分の各値をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、演算手段(10)がクランク軸の他端側の励振トルクを算出することができる。また、演算手段(10)は、運動方程式を解く段階で、クランク軸の他端側のねじり振動角変位を算出する。
【0019】
したがって、演算手段(10)が算出したクランク軸の他端側のねじり振動角変位と、第2ねじり振動計測手段(24)によって計測されたねじり振動角変位とを比較することができる。また、演算手段(10)が算出したクランク軸の他端側の励振トルクと、軸トルクが計測した励振トルクとを比較することもできる。比較した結果、演算手段(10)が算出した値が許容範囲内であれば、エンジンの試験が継続して行われる。一方、演算手段(10)が算出した値が許容範囲を超えていれば、ねじり振動計算モデルの運動方程式に代入される各値の見直しが行われ、エンジンの出力を正確に同定することができる。
【0020】
次に、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計(21)を備えたものでは、以下のように、1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出することができる。すなわち、演算手段(10)は、軸トルク計(21)が計測したクランク軸の他端側の軸トルクに基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出することができる。
【0021】
一方、ねじり振動計算モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分に基づき、演算手段(10)は、1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出することもできる。それにより、演算手段(10)がそれぞれ算出した慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を比較することができる。
【0022】
次に、クランク軸の他端側に接続されたダイナモ(22)と、ダイナモ(22)を制御してクランク軸の他端側に所定の運転パターンの負荷を与えるようにしたダイナモ制御器(23)とを備えたものでは、車両走行中の抵抗成分である空気抵抗、路面抵抗、加速抵抗、登坂抵抗およびバンク抵抗に相当する負荷をダイナモ(22)からクランク軸の他端側にかけることで、運転パターンの負荷をシミュレートすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。図1〜図7は本発明の一実施の形態を示している。本実施の形態に係るエンジンの出力同定装置は、エンジンの各所および運転状態を計測し、計測した値に基づいてエンジンの正味出力を同定するようにしたものである。
【0024】
図1に示すように、本出力同定装置は、エンジンをねじり振動計算モデルであるとして、ねじり振動計算モデルの運動方程式を用いた演算をする演算手段10と、クランク軸の一端側のねじり振動角変位を計測するためのねじり振動計測手段11と、エンジンの気筒の筒内圧を計測することでクランク軸の各スルーの励振トルクを算出可能にした筒内圧計測手段12と、エンジンの設計値を入力することで、ねじり振動計算モデルに係る慣性モーメントおよびねじり剛性を算出可能にした設計値入力手段14と、エンジンの減衰成分を計測するための減衰成分計測手段15とを備えている。
【0025】
図7は、被試験エンジンをねじり振動計算モデルとして概念的に表した図である。また、このねじり振動計算モデルの運動方程式を以下に示す。
【0026】
【外1】
図7において、JP、J1、J2、J3、J4,Jfは、クランク軸系の慣性モーメントである。具体的には、JPは、クランク軸の第1ジャーナルセンタとクランク軸の一端(クランクプーリ側のフロントエンド)間の慣性モーメントであり、J1〜J4は、ピストンと連接棒の等価回転部質量およびクランク軸の第nジャーナルセンタと第n+1ジャーナルセンタとの間の慣性モーメントであり、Jfは、クラッチ、フライホイールおよびクランク軸の第5ジャーナルセンタとクランク軸の他端(エンジンフライホイール出力軸側のリヤエンド)との間の慣性モーメントである。
【0027】
また、K1、K2、K3、K4、K5は、クランク軸のねじり剛性である。具体的には、K1は、クランク軸の第1ピンセンタとクランク軸の一端(フロントエンド)との間のねじり剛性であり、K2〜K4は、クランク軸の第n−1ピンセンタと第nピンセンタとの間のねじり剛性であり、K5は、クランク軸の第4ピンセンタとクランク軸の他端(リヤエンド)との間のねじり剛性である。
【0028】
C1、C2、C3、C4は機関減衰としての減衰成分であり、本実施の形態では、例えば、C1=C2=C3=C4とする。C1〜C4を各々計測することで、各計測値に基づいて算出されたC1〜C4を用いるようにしてもよい。さらに、θP、θ1、θ2、θ3、θ4、θfは、ねじり振動角変位である。さらに、T1、T2、T3、T4は、クランク軸の各スローに発生する励振トルクである。
【0029】
演算手段10は、ねじり振動角変位(θP)、励振トルク(T1〜T4)、慣性モーメント(JP〜Jf)、ねじり剛性(K1〜K5)および減衰成分(C1〜C4)の各値を前記運動方程式に代入することで、クランク軸の他端(リヤエンド)側の励振トルクT5を算出して、エンジンの正味出力を同定するものである。
【0030】
ねじり振動計測手段11は、クランク軸の一端側であるクランクプーリに取り付けた回転角度センサであり、回転角度センサの信号の分解能は、720P/R(1回転当たりのパルス数)または、360P/Rの中から選択可能になっている。これに限らず、選択可能な分解能としては、1440P/Rその他のものであってもよい。ねじり振動計測手段11によって計測されたデータは、図2に示すように、「回転変動」として表すことができる。また、クランク軸の一端側(フロントエンド)とクランク軸の他端側(リヤエンド)間のねじれを計測することで、被試験エンジンをセッティングするときの初期位相ずれを補正可能になっている。
【0031】
本実施の形態において、正味出力が同定される被試験エンジンは4気筒エンジンであり、燃焼解析装置である筒内圧計測手段12は、4気筒の中の1つの気筒の筒内圧を計測する。図2において、「点火1気筒」〜「点火4気筒」で表しているように、被試験エンジンでは、クランク軸の一端側(クランクプーリ)に近い方の気筒から「1」、「4」、「3」、「2」の順に点火される。進角計測気筒よりの角度は、点火順番「1」、「4」、「3」、「2」に対して0°、540°、360°、180°にそれぞれ設定されている。本実施の形態では、点火順番「1」の気筒の筒内圧が筒内圧計測手段12によって計測される。
【0032】
本出力同定装置は、各気筒の点火タイミングに係る信号を発生するECU(electrical control unit)であるエンジン制御器16を備えている。演算手段10は、エンジン制御器16からの角度信号に基づく点火タイミングで各スルーに同等の励振トルクT1が発生するものとして、クランク軸の他端側の励振トルクT2〜T4を算出する。ただし、1サイクル遅れの励振トルクが入力され、メモリに保存される。図2においては、励振トルクT1を「起振力」として表している。仮に、例えば、演算手段10の演算速度が上がれば、励振トルクをリアルタイムで入力するようにしてもよい。
【0033】
設計値入力手段14は、エンジンのCADの設計値を入力可能なものである。また、操作者がエンジンの設計値を入力するためのキーボートあるいはマウスであってもよい。入力される設計値としては、クランクプーリ、1気筒、2気筒、3気筒、4気筒、エンジンフライホイールにそれぞれ関連する設計値であり、当該設計値に基づいて、前述した慣性モーメント(JP〜Jf)およびねじり剛性(K1〜K5)が算出される。
【0034】
減衰成分計測手段15は、油温センサおよび油面センサである。油温センサは、回転数(例えば、アイドル、800、1200、1600、2000、…5600,6000、定格)毎に、潤滑油ギャラリー温が計測される。また、油温センサおよび油面センサの計測結果に基づき、図3に示すように、回転数(アイドル、800…定格)毎に潤滑油ギャラリー温と粘性抵抗との相関関係を示す図が作成される。この粘性抵抗がエンジンの減衰成分となる。但し、本実施の形態では、粘性抵抗である減衰成分をC1=C2=C3=C4とする。前述したように、C1〜C4を各々計測することで、各計測値に基づいて算出されたC1〜C4を用いるようにしてもよい。
【0035】
さらに、本出力同定装置は、エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、エンジン回転数と軸トルクとの相関関係を示す情報である図4に示すN−T線図を作成可能なエンジン計測器13を備えている。演算手段10は、算出したクランク軸の他端(リヤエンド)側の励振トルクT5をN−T線図の情報に基づいて、補正することができる。
【0036】
さらに、本出力同定装置は、クランク軸の他端(リヤエンド)側のねじり振動角変位T5を計測するための第2ねじり振動計測手段24と、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計21とを備えている。また、クランク軸の他端側にはダイナモ22が接続されている。
【0037】
さらに、ダイナモ22を制御してクランク軸の他端側に所定の運転パターンの負荷を与えるようにしたダイナモ制御器23を備えている。また、ダイナモ制御器23は、運転パターン発生器30サイドからの指令値信号が入力されると、ダイナモ22を制御するためのダイナモ制御信号を生成するものである。スロットル制御器32は、運転パターン発生器30サイドからの設定回転数に対する被試験エンジンの運転時の実回転数の偏差が入力信号として入力されるものである。スロットルアクチュエータ31は、スロットル制御器32から設定回転数に対する被試験エンジンの運転時の実回転数の偏差が零になるような指令スロットル開度が入力信号として入力されるものである。
【0038】
本実施の形態に係るエンジンの出力同定装置によって、以下のように被試験エンジンの出力が同定される。図5は、被試験エンジンの各所および運転状態を計測し、計測した値を保存するときのフロー図である。被試験エンジンの各所等を計測するときの順番は図5に示すステップに限定されるものではない。
【0039】
図5に示すように、ねじり振動計測手段11は、クランク軸の一端(フロントエンド)側のねじり振動角変位θPを計測する。計測されたねじり振動角変位は例えばメモリに保存しておく(ステップS501)。また、筒内圧計測手段12は、図2に示す点火順番「1」であるフロントエンド側の気筒の筒内圧を計測する。計測された筒内圧に基づき、フロンエンド側のスルーの励振トルクT1が算出され、算出された励振トルクT1は同じくメモリに保存しておく(ステップS502)。
【0040】
さらに、設計値入力手段14により、エンジンの設計値を入力する。入力された設計値により、ねじり振動計算モデルに係る各慣性モーメントJ1〜Jfおよびねじり剛性K1〜K5が算出され、算出された慣性モーメントJ1〜Jfおよびねじり剛性K1〜K5は同じくメモリに保存しておく(ステップS503)。さらに、減衰成分計測手段15により、エンジンの減衰成分を計測する。計測された減衰成分は同じくメモリに保存しておく。保存された各減衰成分は等しいものとする(C1=C2=C3=C4)(ステップS504)。C1=C2=C3=C4に限らないことは、前述した通りである。
【0041】
次に、エンジン制御器16が発する各気筒の点火タイミングに係る信号に基づいて、他の気筒に係るスルーの励振トルクT2、T3、T4を算出し、メモリに保存しておく(ステップS505)。このとき、他の気筒には、計測したフロントエンド側の気筒と同等の励振トルクが発生しているものとする。
【0042】
このように、被試験エンジンの気筒数の多少に関わらず、エンジンの出力を同定する場合に、1つの筒内圧計測手段12により、複数の気筒の中の1つの筒内圧だけを計測し、その気筒に係る励振トルクT1を算出しておけば、エンジン制御器16からの情報(各気筒の点火タイミング)に基づいて他の気筒に係る励振トルクT2、T3、T4…が算出できるので、エンジンの気筒数に応じて筒内圧計測手段12を増やす必要がない。
【0043】
次に、エンジン計測器13によって、エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、エンジン回転数と軸トルクとの相関関係を示す情報であるN−T線図を作成し、メモリに保存しておく(ステップS506)。
【0044】
図6は、演算手段が被試験エンジンの正味出力を算出するときのフロー図である。図6に示すように、以上のメモリに保存しておいた、クランク軸の一端(フロントエンド)側のねじり振動角変位θP、各スルーの励振トルクT1〜T4、慣性モーメントJP〜Jf、ねじり剛性K1〜K5および、減衰成分の各値(C1=C2=C3=C4)をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入する(ステップS601)。
【0045】
それにより、演算手段10がクランク軸の他端(リヤエンド)側の励振トルクT5を算出する(ステップS602)。次に、メモリに保存しておいてN−T線図と、演算手段10が算出したクランク軸の他端側の励振トルクT5とを比較することで、算出された励振トルクT5を評価することができる。評価の結果、励振トルクT5の算出値が許容範囲内であれば、算出値である励振トルクT5をそのまま用いることで、エンジンの正味出力を算出することができ(ステップS604)、被試験エンジンの正味出力と、別途用意された被試験エンジンの実測データとを比較して、エンジン出力を検証することができる(ステップS605)。
【0046】
一方、評価の結果、励振トルクT5の算出値が許容範囲を超え、補正する場合には(ステップS603:Y)には、励振トルクT5の算出値を補正し、補正された励振トルクT5の算出値に基づいて、エンジンの正味出力を算出し(ステップS604)、被試験エンジンの正味出力と、別途用意された被試験エンジンの実測データとを比較して、エンジン出力を検証することができる(ステップS605)。
【0047】
次に、クランク軸の他端(リヤエンド)側のねじり振動角変位θfを計測するための第2ねじり振動計測手段24と、クランク軸の他端側の軸トルクである励振トルクT5を計測するための軸トルク計21とを備えたことで、第2ねじり振動計測手段24および軸トルク計21が実測した値と、演算手段10が算出した算出値と比較する場合を説明する。
【0048】
すなわち、前述したように、クランク軸の一端(フロントエンド)側のねじり振動角変位θP、各スルーの励振トルクT1〜T4、慣性モーメントJP〜Jf、ねじり剛性K1〜K5および、減衰成分C1〜C4(但しC1=C2=C3=C4)の各値をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、演算手段10がクランク軸の他端(リヤエンド)側のねじり振動角変位θfおよび励振トルクT5をそれぞれ算出することができる。
【0049】
このように、演算手段10が算出したクランク軸の他端(リヤエンド)側のねじり振動角変位θfと、第2ねじり振動計測手段24によって実測されたねじり振動角変位θfとを比較することができる。同様に、演算手段10が算出したクランク軸の他端側の励振トルクT5と、軸トルク計21が実測した励振トルクT5とを比較することができ、比較することで、演算手段10が算出したねじり振動角変位θfおよび励振トルクT5を評価することができる。その結果、算出されたねじり振動角変位θfおよび励振トルクT5が実測値に近い値を示していれば、エンジンの試験が継続して行われることになる。一方、算出されたねじり振動角変位θfおよび励振トルクT5が実測値に近い値でなければ、ねじり振動計算モデルの運動方程式に代入される各値の見直しが行われ、各値の見直し後に、再び、算出手段10による算出値と第2ねじり振動計測手段24による実測値とを比較する。
【0050】
このようにして、1または複数回の見直しをすることによって、エンジンの出力を正確に同定することができる。また、エンジンの出力が正確に同定することができた後には、軸トルク計21、第2ねじり振動計測手段24を取り外すことができる。
【0051】
次に、試験中のエンジンがどのように制御されるかについて説明する。運転パターン発生器30サイドからの指令値信号がダイナモ制御器23に入力されると、ダイナモ制御器23がダイナモ制御信号を生成して、ダイナモ22に出力する。それにより、ダイナモ22が接続したクランク軸の他端(リヤエンド)側に、車両走行中の抵抗成分である空気抵抗、路面抵抗、加速抵抗、登坂抵抗およびバンク抵抗に相当する負荷がかかり、所定の運転パターンの負荷をシミュレートすることができる。
【0052】
同じように、運転パターン発生器30サイドからの設定回転数に対する被試験エンジンの運転時の実回転数の偏差が入力信号としてスロットル制御器32に入力されると、スロットル制御器32は、設定回転数に対する被試験エンジンの運転時の実回転数の偏差が零になるような指令スロットル開度を入力信号としてスロットルアクチュエータ31に入力する。それにより、所定の運転パターンの回転数で被試験エンジンが運転されることになる。
【0053】
なお、前記実施の形態においては、ねじり振動計算モデルとしてのエンジンの慣性モーメントJP〜Jf、ねじり剛性K1〜K5、減衰成分C1〜C4を算出するものを示したが、クランク軸の他端(リヤエンド)側の軸トルクを軸トルク計21で実測することで、軸トルク計21が実測した軸トルクに基づき、演算手段10が1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出し、さらに、前記算出された慣性モーメントJP〜Jf、ねじり剛性K1〜K5および減衰成分C1〜C4の各値に基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出すれば、実測値に基づく慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分と、算出値に基づく慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分とを比較することができる。
【0054】
また、実施の形態では、1つの気筒の筒内圧をねじり振動計測手段11で計測することで、当該気筒に係る励振トルクT1を算出し、他の気筒に係る励振トルクT2〜T4を点火タイミングの信号に基づいて算出するものを示したが、各気筒の筒内圧を各ねじり振動計測手段11で計測するようにしてもよい。
【0055】
さらに、実施の形態では、演算手段10によって算出された励振トルクT5の算出値をN−T線図で補正するステップS603、S606を示したが、例えば、エンジンの出力が正確に同定された後には、補正するステップS603、S606を経ることなく、励振トルクT5が算出された後に(ステップS602)、被試験エンジンの正味出力を算出する(ステップS604)ようにしてもよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係るエンジンの出力同定装置によれば、ねじり振動計測手段等の計測手段によって計測された各値をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、演算手段がクランク軸の他端側の励振トルクを算出するようにしたので、少ない計測手段により、エンジンの正味出力を同定することができ、コストを低減することができる。また、各気筒の点火タイミングに係る信号を発生するエンジン制御器を備え、エンジン制御器からの信号に基づく点火タイミングで各スルーに同等の励振トルクが発生するようにしたので、1つの筒内圧計測手段によって、複数の気筒の中の1つの筒内圧だけを計測し、その気筒に係る励振トルクを算出しておけば、各気筒の点火タイミングに基づいて他の気筒に係る励振トルクが算出でき、エンジンの気筒数に応じて筒内圧計測手段を増やす必要がなく、この点からもコストを低減することができる。
【0057】
さらに、エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、エンジン回転数と軸トルクとの相関関係を示す情報であるN−T線図を作成可能なエンジン計測器を備えたので、演算手段がクランク軸の他端側の励振トルクを算出したとき、その励振トルクの算出値とN−T線図とを比較することができ、必要に応じて、励振トルクの算出値を補正し、補正された励振トルクの算出値に基づいて、エンジンの正味出力を同定することができる。さらに、クランク軸の他端側のねじり振動角変位を計測するための第2ねじり振動計測手段と、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計とを備えたので、演算手段がねじり振動計算モデルの運動方程式を解くことで算出したクランク軸の他端側のねじり振動角変位と第2ねじり振動計測手段によって計測されたねじり振動角変位とを比較することができ、また、同じく演算手段が算出したクランク軸の他端側の励振トルクと軸トルクが計測した励振トルクとを比較することもでき、ねじり振動計算モデルの運動方程式に代入される各値の見直しが可能になり、エンジンの出力を同定するときの精度を上げることができる。
【0058】
さらに、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計を備えたので、軸トルク計によって計測されたクランク軸の他端側の軸トルクに基づき演算手段が算出した1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分と、ねじり振動計算モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分に基づき演算手段が算出した1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分とを比較することができる。さらに、クランク軸の他端側に接続されたダイナモと、ダイナモを制御してクランク軸の他端側に所定の運転パターンの負荷を与えるようにしたダイナモ制御器とを備えたので、車両走行中の抵抗成分である空気抵抗、路面抵抗、加速抵抗、登坂抵抗およびバンク抵抗に相当する負荷をダイナモからクランク軸の他端側にかけることで、運転パターンの負荷をシミュレートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るエンジンの出力同定装置のブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンの点火タイミングなどを表したタイミングチャートである。
【図3】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンの潤滑油のギャラリー温度と粘性抵抗との相関関係を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンの回転数と軸トルクとの相関関係を示すN−T線図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンの各所および運転状態を計測し、計測した値を保存するときのフロー図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るエンジンの出力同定装置において、演算手段が被試験エンジンの正味出力を算出するときのフロー図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンをねじり振動計算モデルとして概念的に表した図である。
【符号の説明】
10…演算手段
11…ねじり振動計測手段
12…筒内圧計測手段
13…エンジン計測器
14…設計値入力手段
15…減衰成分計測手段
16…エンジン制御器
21…軸トルク計
22…ダイナモ
23…ダイナモ制御器
24…第2ねじり振動計測手段
30…運転パターン発生器
31…スロットルアクチュエータ
32…スロットル制御器
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの各所および運転状態を計測し、該計測した値に基づいてエンジンの正味出力を同定するようにしたエンジンの出力同定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジンを診断するための装置としては、エンジンの回転数または角速度を連続測定する測定ユニットと、このユニットの角測定結果を配分するためのシリンダ識別用ユニットと、トリガーマーク発生器と、油温センサ、水温センサ、排気温度センサ、内燃制御器を調整する距離検出器を備え、こららのユニットの信号を用いて、エンジンを直接駆動する平均出力が近似的に測定できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−332886号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術では、エンジンの出力を近似的に測定するために、数多くのセンサや検出器が必要になることから、装置の構成が複雑になり、コストが嵩む要因になるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、簡易な構成によりエンジンの出力を同定するようにして、コストを低減することができるエンジンの出力同定装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]エンジンの各所および運転状態を計測し、該計測した値に基づいてエンジンの正味出力を同定するようにしたエンジンの出力同定装置であって、
前記エンジンをねじり振動計算モデルであるとして、該ねじり振動計算モデルの運動方程式を用いた演算をする演算手段(10)と、前記クランク軸の一端側のねじり振動角変位を計測するためのねじり振動計測手段(11)と、エンジンの気筒の筒内圧を計測することでクランク軸の各スルーの励振トルクを算出可能にした筒内圧計測手段(12)と、前記エンジンの設計値を入力することで、前記ねじり振動計算モデルに係る慣性モーメントおよびねじり剛性を算出可能にした設計値入力手段(14)と、エンジンの減衰成分を計測するための減衰成分計測手段(15)とを備え、
前記演算手段(10)は、前記ねじり振動角変位、前記励振トルク、前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分の各値を前記ねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、前記クランク軸の他端側の励振トルクを算出して、エンジンの正味出力を同定するようにした
ことを特徴とするエンジンの出力同定装置。
【0007】
[2]前記各気筒の点火タイミングに係る信号を発生するエンジン制御器(16)を備え、
前記演算手段(10)は、前記エンジン制御器(16)からの信号に基づく点火タイミングで前記各スルーに同等の励振トルクが発生するものとして、エンジンの正味出力を同定するようにした
ことを特徴とする[1]に記載のエンジンの出力同定装置。
【0008】
[3]前記エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、前記エンジン回転数と前記軸トルクとの相関関係を示す情報であるN−T線図を作成可能なエンジン計測器(13)を備え、
前記演算手段(10)は、前記N−T線図の情報に基づいて、前記クランク軸の他端側の励振トルクを補正するようにした
ことを特徴とする[1]または[2]に記載のエンジンの出力同定装置。
【0009】
[4]前記クランク軸の他端側のねじり振動角変位を計測するための第2ねじり振動計測手段(24)と、前記クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計(21)とを備えた
ことを特徴とする[1]、[2]または[3]に記載のエンジンの出力同定装置。
【0010】
[5]前記クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計(21)を備え、
前記演算手段(10)は、前記軸トルク計(21)が計測した前記クランク軸の他端側の軸トルクに基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分を算出するとともに、
前記設計値に基づき算出された前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分の各算出値に基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分を算出し、両者の前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分を比較できるようにした
ことを特徴とする[1]〜[4]の何れかに記載のエンジンの出力同定装置。
【0011】
[6]前記クランク軸の他端側に接続されたダイナモ(22)と、該ダイナモ(22)を制御して前記クランク軸の他端側に所定の運転パターンの負荷を与えるようにしたダイナモ制御器(23)とを備えた
ことを特徴とする[1]〜[5]の何れかに記載のエンジンの出力同定装置。
【0012】
以下のように、エンジンの出力が同定される。
エンジンの各所および運転状態を計測する。このとき、計測する順番は特に限定されない。ねじり振動計測手段(11)は、クランク軸の一端側のねじり振動角変位を計測する。計測されたねじり振動角変位は例えばメモリに保存しておく。また、筒内圧計測手段(12)は、エンジンの気筒の筒内圧を計測する。計測された筒内圧に基づき、クランク軸の各スルーの励振トルクが算出可能になる。算出された励振トルクは同じくメモリに保存しておく。
【0013】
さらに、設計値入力手段(14)により、エンジンの設計値を入力する。入力された設計値により、ねじり振動計算モデルに係る慣性モーメントおよびねじり剛性を算出可能になる。算出された慣性モーメントおよびねじり剛性は同じくメモリに保存しておく。さらに、減衰成分計測手段(15)により、エンジンの減衰成分を計測する。計測された減衰成分は同じくメモリに保存しておく。
【0014】
以上のメモリに保存しておいた、クランク軸の一端側のねじり振動角変位、各スルーの励振トルク、慣性モーメント、ねじり剛性および、減衰成分の各値をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、演算手段(10)がクランク軸の他端側の励振トルクを算出することができる。算出されたクランク軸の他端側の励振トルクによって、エンジンの正味出力を同定することができる。
【0015】
次に、各気筒の点火タイミングに係る信号を発生するエンジン制御器(16)を備え、エンジン制御器(16)からの信号に基づく点火タイミングで各スルーに同等の励振トルクが発生するようにしたものでは、気筒数の多少に関わらず、エンジンの出力を同定する場合に、1つの筒内圧計測手段(12)を備えておけばよい。すなわち、1つの筒内圧計測手段(12)によって、複数の気筒の中の1つの筒内圧だけを計測し、その気筒に係る励振トルクを算出しておけば、各気筒の点火タイミングに基づいて他の気筒に係る励振トルクが算出できるようになる。例えば、エンジンの気筒数に応じて筒内圧計測手段(12)を増やす必要がない。仮に、気筒数の多いエンジンの出力を同定する場合においても、1つの筒内圧計測手段(12)を備えればよく、その分だけ、装置の構成が簡易になり、コストを低減することができる。
【0016】
次に、エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、エンジン回転数と軸トルクとの相関関係を示す情報であるN−T線図を作成可能なエンジン計測器(13)を備えたものでは、以下のようにエンジンの出力を同定すればよい。すなわち、エンジン計測器(13)の計測値により作成されたN−T線図を例えばメモリに保存しておく。前述したように、演算手段(10)がクランク軸の他端側の励振トルクを算出したとき、その励振トルクの算出値とN−T線図とを比較することができる。そして、励振トルクの算出値が許容範囲を超えた場合には、励振トルクの算出値を補正し、補正された励振トルクの算出値に基づいて、エンジンの正味出力を算出することができる。
【0017】
次に、クランク軸の他端側のねじり振動角変位を計測するための第2ねじり振動計測手段(24)と、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計(21)とを備えたものでは、以下のように、演算手段(10)が算出した算出値と実測値とを比較することができる。
【0018】
すなわち、前述したように、クランク軸の一端側のねじり振動角変位、各スルーの励振トルク、慣性モーメント、ねじり剛性および、減衰成分の各値をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、演算手段(10)がクランク軸の他端側の励振トルクを算出することができる。また、演算手段(10)は、運動方程式を解く段階で、クランク軸の他端側のねじり振動角変位を算出する。
【0019】
したがって、演算手段(10)が算出したクランク軸の他端側のねじり振動角変位と、第2ねじり振動計測手段(24)によって計測されたねじり振動角変位とを比較することができる。また、演算手段(10)が算出したクランク軸の他端側の励振トルクと、軸トルクが計測した励振トルクとを比較することもできる。比較した結果、演算手段(10)が算出した値が許容範囲内であれば、エンジンの試験が継続して行われる。一方、演算手段(10)が算出した値が許容範囲を超えていれば、ねじり振動計算モデルの運動方程式に代入される各値の見直しが行われ、エンジンの出力を正確に同定することができる。
【0020】
次に、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計(21)を備えたものでは、以下のように、1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出することができる。すなわち、演算手段(10)は、軸トルク計(21)が計測したクランク軸の他端側の軸トルクに基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出することができる。
【0021】
一方、ねじり振動計算モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分に基づき、演算手段(10)は、1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出することもできる。それにより、演算手段(10)がそれぞれ算出した慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を比較することができる。
【0022】
次に、クランク軸の他端側に接続されたダイナモ(22)と、ダイナモ(22)を制御してクランク軸の他端側に所定の運転パターンの負荷を与えるようにしたダイナモ制御器(23)とを備えたものでは、車両走行中の抵抗成分である空気抵抗、路面抵抗、加速抵抗、登坂抵抗およびバンク抵抗に相当する負荷をダイナモ(22)からクランク軸の他端側にかけることで、運転パターンの負荷をシミュレートすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。図1〜図7は本発明の一実施の形態を示している。本実施の形態に係るエンジンの出力同定装置は、エンジンの各所および運転状態を計測し、計測した値に基づいてエンジンの正味出力を同定するようにしたものである。
【0024】
図1に示すように、本出力同定装置は、エンジンをねじり振動計算モデルであるとして、ねじり振動計算モデルの運動方程式を用いた演算をする演算手段10と、クランク軸の一端側のねじり振動角変位を計測するためのねじり振動計測手段11と、エンジンの気筒の筒内圧を計測することでクランク軸の各スルーの励振トルクを算出可能にした筒内圧計測手段12と、エンジンの設計値を入力することで、ねじり振動計算モデルに係る慣性モーメントおよびねじり剛性を算出可能にした設計値入力手段14と、エンジンの減衰成分を計測するための減衰成分計測手段15とを備えている。
【0025】
図7は、被試験エンジンをねじり振動計算モデルとして概念的に表した図である。また、このねじり振動計算モデルの運動方程式を以下に示す。
【0026】
【外1】
図7において、JP、J1、J2、J3、J4,Jfは、クランク軸系の慣性モーメントである。具体的には、JPは、クランク軸の第1ジャーナルセンタとクランク軸の一端(クランクプーリ側のフロントエンド)間の慣性モーメントであり、J1〜J4は、ピストンと連接棒の等価回転部質量およびクランク軸の第nジャーナルセンタと第n+1ジャーナルセンタとの間の慣性モーメントであり、Jfは、クラッチ、フライホイールおよびクランク軸の第5ジャーナルセンタとクランク軸の他端(エンジンフライホイール出力軸側のリヤエンド)との間の慣性モーメントである。
【0027】
また、K1、K2、K3、K4、K5は、クランク軸のねじり剛性である。具体的には、K1は、クランク軸の第1ピンセンタとクランク軸の一端(フロントエンド)との間のねじり剛性であり、K2〜K4は、クランク軸の第n−1ピンセンタと第nピンセンタとの間のねじり剛性であり、K5は、クランク軸の第4ピンセンタとクランク軸の他端(リヤエンド)との間のねじり剛性である。
【0028】
C1、C2、C3、C4は機関減衰としての減衰成分であり、本実施の形態では、例えば、C1=C2=C3=C4とする。C1〜C4を各々計測することで、各計測値に基づいて算出されたC1〜C4を用いるようにしてもよい。さらに、θP、θ1、θ2、θ3、θ4、θfは、ねじり振動角変位である。さらに、T1、T2、T3、T4は、クランク軸の各スローに発生する励振トルクである。
【0029】
演算手段10は、ねじり振動角変位(θP)、励振トルク(T1〜T4)、慣性モーメント(JP〜Jf)、ねじり剛性(K1〜K5)および減衰成分(C1〜C4)の各値を前記運動方程式に代入することで、クランク軸の他端(リヤエンド)側の励振トルクT5を算出して、エンジンの正味出力を同定するものである。
【0030】
ねじり振動計測手段11は、クランク軸の一端側であるクランクプーリに取り付けた回転角度センサであり、回転角度センサの信号の分解能は、720P/R(1回転当たりのパルス数)または、360P/Rの中から選択可能になっている。これに限らず、選択可能な分解能としては、1440P/Rその他のものであってもよい。ねじり振動計測手段11によって計測されたデータは、図2に示すように、「回転変動」として表すことができる。また、クランク軸の一端側(フロントエンド)とクランク軸の他端側(リヤエンド)間のねじれを計測することで、被試験エンジンをセッティングするときの初期位相ずれを補正可能になっている。
【0031】
本実施の形態において、正味出力が同定される被試験エンジンは4気筒エンジンであり、燃焼解析装置である筒内圧計測手段12は、4気筒の中の1つの気筒の筒内圧を計測する。図2において、「点火1気筒」〜「点火4気筒」で表しているように、被試験エンジンでは、クランク軸の一端側(クランクプーリ)に近い方の気筒から「1」、「4」、「3」、「2」の順に点火される。進角計測気筒よりの角度は、点火順番「1」、「4」、「3」、「2」に対して0°、540°、360°、180°にそれぞれ設定されている。本実施の形態では、点火順番「1」の気筒の筒内圧が筒内圧計測手段12によって計測される。
【0032】
本出力同定装置は、各気筒の点火タイミングに係る信号を発生するECU(electrical control unit)であるエンジン制御器16を備えている。演算手段10は、エンジン制御器16からの角度信号に基づく点火タイミングで各スルーに同等の励振トルクT1が発生するものとして、クランク軸の他端側の励振トルクT2〜T4を算出する。ただし、1サイクル遅れの励振トルクが入力され、メモリに保存される。図2においては、励振トルクT1を「起振力」として表している。仮に、例えば、演算手段10の演算速度が上がれば、励振トルクをリアルタイムで入力するようにしてもよい。
【0033】
設計値入力手段14は、エンジンのCADの設計値を入力可能なものである。また、操作者がエンジンの設計値を入力するためのキーボートあるいはマウスであってもよい。入力される設計値としては、クランクプーリ、1気筒、2気筒、3気筒、4気筒、エンジンフライホイールにそれぞれ関連する設計値であり、当該設計値に基づいて、前述した慣性モーメント(JP〜Jf)およびねじり剛性(K1〜K5)が算出される。
【0034】
減衰成分計測手段15は、油温センサおよび油面センサである。油温センサは、回転数(例えば、アイドル、800、1200、1600、2000、…5600,6000、定格)毎に、潤滑油ギャラリー温が計測される。また、油温センサおよび油面センサの計測結果に基づき、図3に示すように、回転数(アイドル、800…定格)毎に潤滑油ギャラリー温と粘性抵抗との相関関係を示す図が作成される。この粘性抵抗がエンジンの減衰成分となる。但し、本実施の形態では、粘性抵抗である減衰成分をC1=C2=C3=C4とする。前述したように、C1〜C4を各々計測することで、各計測値に基づいて算出されたC1〜C4を用いるようにしてもよい。
【0035】
さらに、本出力同定装置は、エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、エンジン回転数と軸トルクとの相関関係を示す情報である図4に示すN−T線図を作成可能なエンジン計測器13を備えている。演算手段10は、算出したクランク軸の他端(リヤエンド)側の励振トルクT5をN−T線図の情報に基づいて、補正することができる。
【0036】
さらに、本出力同定装置は、クランク軸の他端(リヤエンド)側のねじり振動角変位T5を計測するための第2ねじり振動計測手段24と、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計21とを備えている。また、クランク軸の他端側にはダイナモ22が接続されている。
【0037】
さらに、ダイナモ22を制御してクランク軸の他端側に所定の運転パターンの負荷を与えるようにしたダイナモ制御器23を備えている。また、ダイナモ制御器23は、運転パターン発生器30サイドからの指令値信号が入力されると、ダイナモ22を制御するためのダイナモ制御信号を生成するものである。スロットル制御器32は、運転パターン発生器30サイドからの設定回転数に対する被試験エンジンの運転時の実回転数の偏差が入力信号として入力されるものである。スロットルアクチュエータ31は、スロットル制御器32から設定回転数に対する被試験エンジンの運転時の実回転数の偏差が零になるような指令スロットル開度が入力信号として入力されるものである。
【0038】
本実施の形態に係るエンジンの出力同定装置によって、以下のように被試験エンジンの出力が同定される。図5は、被試験エンジンの各所および運転状態を計測し、計測した値を保存するときのフロー図である。被試験エンジンの各所等を計測するときの順番は図5に示すステップに限定されるものではない。
【0039】
図5に示すように、ねじり振動計測手段11は、クランク軸の一端(フロントエンド)側のねじり振動角変位θPを計測する。計測されたねじり振動角変位は例えばメモリに保存しておく(ステップS501)。また、筒内圧計測手段12は、図2に示す点火順番「1」であるフロントエンド側の気筒の筒内圧を計測する。計測された筒内圧に基づき、フロンエンド側のスルーの励振トルクT1が算出され、算出された励振トルクT1は同じくメモリに保存しておく(ステップS502)。
【0040】
さらに、設計値入力手段14により、エンジンの設計値を入力する。入力された設計値により、ねじり振動計算モデルに係る各慣性モーメントJ1〜Jfおよびねじり剛性K1〜K5が算出され、算出された慣性モーメントJ1〜Jfおよびねじり剛性K1〜K5は同じくメモリに保存しておく(ステップS503)。さらに、減衰成分計測手段15により、エンジンの減衰成分を計測する。計測された減衰成分は同じくメモリに保存しておく。保存された各減衰成分は等しいものとする(C1=C2=C3=C4)(ステップS504)。C1=C2=C3=C4に限らないことは、前述した通りである。
【0041】
次に、エンジン制御器16が発する各気筒の点火タイミングに係る信号に基づいて、他の気筒に係るスルーの励振トルクT2、T3、T4を算出し、メモリに保存しておく(ステップS505)。このとき、他の気筒には、計測したフロントエンド側の気筒と同等の励振トルクが発生しているものとする。
【0042】
このように、被試験エンジンの気筒数の多少に関わらず、エンジンの出力を同定する場合に、1つの筒内圧計測手段12により、複数の気筒の中の1つの筒内圧だけを計測し、その気筒に係る励振トルクT1を算出しておけば、エンジン制御器16からの情報(各気筒の点火タイミング)に基づいて他の気筒に係る励振トルクT2、T3、T4…が算出できるので、エンジンの気筒数に応じて筒内圧計測手段12を増やす必要がない。
【0043】
次に、エンジン計測器13によって、エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、エンジン回転数と軸トルクとの相関関係を示す情報であるN−T線図を作成し、メモリに保存しておく(ステップS506)。
【0044】
図6は、演算手段が被試験エンジンの正味出力を算出するときのフロー図である。図6に示すように、以上のメモリに保存しておいた、クランク軸の一端(フロントエンド)側のねじり振動角変位θP、各スルーの励振トルクT1〜T4、慣性モーメントJP〜Jf、ねじり剛性K1〜K5および、減衰成分の各値(C1=C2=C3=C4)をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入する(ステップS601)。
【0045】
それにより、演算手段10がクランク軸の他端(リヤエンド)側の励振トルクT5を算出する(ステップS602)。次に、メモリに保存しておいてN−T線図と、演算手段10が算出したクランク軸の他端側の励振トルクT5とを比較することで、算出された励振トルクT5を評価することができる。評価の結果、励振トルクT5の算出値が許容範囲内であれば、算出値である励振トルクT5をそのまま用いることで、エンジンの正味出力を算出することができ(ステップS604)、被試験エンジンの正味出力と、別途用意された被試験エンジンの実測データとを比較して、エンジン出力を検証することができる(ステップS605)。
【0046】
一方、評価の結果、励振トルクT5の算出値が許容範囲を超え、補正する場合には(ステップS603:Y)には、励振トルクT5の算出値を補正し、補正された励振トルクT5の算出値に基づいて、エンジンの正味出力を算出し(ステップS604)、被試験エンジンの正味出力と、別途用意された被試験エンジンの実測データとを比較して、エンジン出力を検証することができる(ステップS605)。
【0047】
次に、クランク軸の他端(リヤエンド)側のねじり振動角変位θfを計測するための第2ねじり振動計測手段24と、クランク軸の他端側の軸トルクである励振トルクT5を計測するための軸トルク計21とを備えたことで、第2ねじり振動計測手段24および軸トルク計21が実測した値と、演算手段10が算出した算出値と比較する場合を説明する。
【0048】
すなわち、前述したように、クランク軸の一端(フロントエンド)側のねじり振動角変位θP、各スルーの励振トルクT1〜T4、慣性モーメントJP〜Jf、ねじり剛性K1〜K5および、減衰成分C1〜C4(但しC1=C2=C3=C4)の各値をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、演算手段10がクランク軸の他端(リヤエンド)側のねじり振動角変位θfおよび励振トルクT5をそれぞれ算出することができる。
【0049】
このように、演算手段10が算出したクランク軸の他端(リヤエンド)側のねじり振動角変位θfと、第2ねじり振動計測手段24によって実測されたねじり振動角変位θfとを比較することができる。同様に、演算手段10が算出したクランク軸の他端側の励振トルクT5と、軸トルク計21が実測した励振トルクT5とを比較することができ、比較することで、演算手段10が算出したねじり振動角変位θfおよび励振トルクT5を評価することができる。その結果、算出されたねじり振動角変位θfおよび励振トルクT5が実測値に近い値を示していれば、エンジンの試験が継続して行われることになる。一方、算出されたねじり振動角変位θfおよび励振トルクT5が実測値に近い値でなければ、ねじり振動計算モデルの運動方程式に代入される各値の見直しが行われ、各値の見直し後に、再び、算出手段10による算出値と第2ねじり振動計測手段24による実測値とを比較する。
【0050】
このようにして、1または複数回の見直しをすることによって、エンジンの出力を正確に同定することができる。また、エンジンの出力が正確に同定することができた後には、軸トルク計21、第2ねじり振動計測手段24を取り外すことができる。
【0051】
次に、試験中のエンジンがどのように制御されるかについて説明する。運転パターン発生器30サイドからの指令値信号がダイナモ制御器23に入力されると、ダイナモ制御器23がダイナモ制御信号を生成して、ダイナモ22に出力する。それにより、ダイナモ22が接続したクランク軸の他端(リヤエンド)側に、車両走行中の抵抗成分である空気抵抗、路面抵抗、加速抵抗、登坂抵抗およびバンク抵抗に相当する負荷がかかり、所定の運転パターンの負荷をシミュレートすることができる。
【0052】
同じように、運転パターン発生器30サイドからの設定回転数に対する被試験エンジンの運転時の実回転数の偏差が入力信号としてスロットル制御器32に入力されると、スロットル制御器32は、設定回転数に対する被試験エンジンの運転時の実回転数の偏差が零になるような指令スロットル開度を入力信号としてスロットルアクチュエータ31に入力する。それにより、所定の運転パターンの回転数で被試験エンジンが運転されることになる。
【0053】
なお、前記実施の形態においては、ねじり振動計算モデルとしてのエンジンの慣性モーメントJP〜Jf、ねじり剛性K1〜K5、減衰成分C1〜C4を算出するものを示したが、クランク軸の他端(リヤエンド)側の軸トルクを軸トルク計21で実測することで、軸トルク計21が実測した軸トルクに基づき、演算手段10が1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出し、さらに、前記算出された慣性モーメントJP〜Jf、ねじり剛性K1〜K5および減衰成分C1〜C4の各値に基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分を算出すれば、実測値に基づく慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分と、算出値に基づく慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分とを比較することができる。
【0054】
また、実施の形態では、1つの気筒の筒内圧をねじり振動計測手段11で計測することで、当該気筒に係る励振トルクT1を算出し、他の気筒に係る励振トルクT2〜T4を点火タイミングの信号に基づいて算出するものを示したが、各気筒の筒内圧を各ねじり振動計測手段11で計測するようにしてもよい。
【0055】
さらに、実施の形態では、演算手段10によって算出された励振トルクT5の算出値をN−T線図で補正するステップS603、S606を示したが、例えば、エンジンの出力が正確に同定された後には、補正するステップS603、S606を経ることなく、励振トルクT5が算出された後に(ステップS602)、被試験エンジンの正味出力を算出する(ステップS604)ようにしてもよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明に係るエンジンの出力同定装置によれば、ねじり振動計測手段等の計測手段によって計測された各値をねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、演算手段がクランク軸の他端側の励振トルクを算出するようにしたので、少ない計測手段により、エンジンの正味出力を同定することができ、コストを低減することができる。また、各気筒の点火タイミングに係る信号を発生するエンジン制御器を備え、エンジン制御器からの信号に基づく点火タイミングで各スルーに同等の励振トルクが発生するようにしたので、1つの筒内圧計測手段によって、複数の気筒の中の1つの筒内圧だけを計測し、その気筒に係る励振トルクを算出しておけば、各気筒の点火タイミングに基づいて他の気筒に係る励振トルクが算出でき、エンジンの気筒数に応じて筒内圧計測手段を増やす必要がなく、この点からもコストを低減することができる。
【0057】
さらに、エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、エンジン回転数と軸トルクとの相関関係を示す情報であるN−T線図を作成可能なエンジン計測器を備えたので、演算手段がクランク軸の他端側の励振トルクを算出したとき、その励振トルクの算出値とN−T線図とを比較することができ、必要に応じて、励振トルクの算出値を補正し、補正された励振トルクの算出値に基づいて、エンジンの正味出力を同定することができる。さらに、クランク軸の他端側のねじり振動角変位を計測するための第2ねじり振動計測手段と、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計とを備えたので、演算手段がねじり振動計算モデルの運動方程式を解くことで算出したクランク軸の他端側のねじり振動角変位と第2ねじり振動計測手段によって計測されたねじり振動角変位とを比較することができ、また、同じく演算手段が算出したクランク軸の他端側の励振トルクと軸トルクが計測した励振トルクとを比較することもでき、ねじり振動計算モデルの運動方程式に代入される各値の見直しが可能になり、エンジンの出力を同定するときの精度を上げることができる。
【0058】
さらに、クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計を備えたので、軸トルク計によって計測されたクランク軸の他端側の軸トルクに基づき演算手段が算出した1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分と、ねじり振動計算モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分に基づき演算手段が算出した1次振動モデルとしてのエンジンの慣性モーメント、ねじり剛性および減衰成分とを比較することができる。さらに、クランク軸の他端側に接続されたダイナモと、ダイナモを制御してクランク軸の他端側に所定の運転パターンの負荷を与えるようにしたダイナモ制御器とを備えたので、車両走行中の抵抗成分である空気抵抗、路面抵抗、加速抵抗、登坂抵抗およびバンク抵抗に相当する負荷をダイナモからクランク軸の他端側にかけることで、運転パターンの負荷をシミュレートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るエンジンの出力同定装置のブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンの点火タイミングなどを表したタイミングチャートである。
【図3】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンの潤滑油のギャラリー温度と粘性抵抗との相関関係を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンの回転数と軸トルクとの相関関係を示すN−T線図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンの各所および運転状態を計測し、計測した値を保存するときのフロー図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るエンジンの出力同定装置において、演算手段が被試験エンジンの正味出力を算出するときのフロー図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る被試験エンジンをねじり振動計算モデルとして概念的に表した図である。
【符号の説明】
10…演算手段
11…ねじり振動計測手段
12…筒内圧計測手段
13…エンジン計測器
14…設計値入力手段
15…減衰成分計測手段
16…エンジン制御器
21…軸トルク計
22…ダイナモ
23…ダイナモ制御器
24…第2ねじり振動計測手段
30…運転パターン発生器
31…スロットルアクチュエータ
32…スロットル制御器
Claims (6)
- エンジンの各所および運転状態を計測し、該計測した値に基づいてエンジンの正味出力を同定するようにしたエンジンの出力同定装置であって、
前記エンジンをねじり振動計算モデルであるとして、該ねじり振動計算モデルの運動方程式を用いた演算をする演算手段と、前記クランク軸の一端側のねじり振動角変位を計測するためのねじり振動計測手段と、エンジンの気筒の筒内圧を計測することでクランク軸の各スルーの励振トルクを算出可能にした筒内圧計測手段と、前記エンジンの設計値を入力することで、前記ねじり振動計算モデルに係る慣性モーメントおよびねじり剛性を算出可能にした設計値入力手段と、エンジンの減衰成分を計測するための減衰成分計測手段とを備え、
前記演算手段は、前記ねじり振動角変位、前記励振トルク、前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分の各値を前記ねじり振動計算モデルの運動方程式に代入することで、前記クランク軸の他端側の励振トルクを算出して、エンジンの正味出力を同定するようにした
ことを特徴とするエンジンの出力同定装置。 - 前記各気筒の点火タイミングに係る信号を発生するエンジン制御器を備え、
前記演算手段は、前記エンジン制御器からの信号に基づく点火タイミングで前記各スルーに同等の励振トルクが発生するものとして、エンジンの正味出力を同定するようにした
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの出力同定装置。 - 前記エンジン回転数に対する軸トルクを計測することで、前記エンジン回転数と前記軸トルクとの相関関係を示す情報であるN−T線図を作成可能なエンジン計測器を備え、
前記演算手段は、前記N−T線図の情報に基づいて、前記クランク軸の他端側の励振トルクを補正するようにした
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの出力同定装置。 - 前記クランク軸の他端側のねじり振動角変位を計測するための第2ねじり振動計測手段と、前記クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計とを備えた
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のエンジンの出力同定装置。 - 前記クランク軸の他端側の軸トルクを計測するための軸トルク計を備え、
前記演算手段は、前記軸トルク計が計測した前記クランク軸の他端側の軸トルクに基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分を算出するとともに、
前記設計値に基づき算出された前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分の各算出値に基づき、1次振動モデルとしてのエンジンの前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分を算出し、両者の前記慣性モーメント、前記ねじり剛性および前記減衰成分を比較できるようにした
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエンジンの出力同定装置。 - 前記クランク軸の他端側に接続されたダイナモと、該ダイナモを制御して前記クランク軸の他端側に所定の運転パターンの負荷を与えるようにしたダイナモ制御器とを備えた
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエンジンの出力同定装置。
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