JP2004338114A - 耐摩耗性,耐汚染性,塗膜密着性に優れた光触媒塗装金属板及びその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性,耐汚染性,塗膜密着性に優れた光触媒塗装金属板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【目的】分子集合体の分子量,構造が適正管理されたシリカ系バインダを用いてプライマ層,トップ層を形成することにより、耐摩耗性,耐汚染性,塗膜密着性に優れた光触媒塗装金属板を製造する。
【構成】無機顔料を含むプライマ層,光触媒及び無機顔料を含むトップ層が基材表面に順次形成されており、プライマ層及びトップ層がスチレン換算分子量:300以上の分子集合体からなるシリカ系バインダを含み、式(1)で算出される吸光度ピークの高さの比率Aが1.05〜1.25の範囲となるようにトップ層の表層部が構造制御されている。シリカ系バインダ,無機顔料分散トナーを含むプライマ塗料からプライマ層を形成した後、シリカ系バインダ,シラン処理した光触媒粉末,無機顔料分散トナーを含むトップ塗料からトップ層が成膜される。
高さの比率A=(1020cm−1ピーク高さ/1090cm−1ピーク高さ)・・・・・・(1)
【選択図】 なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、雨水や紫外線照射に曝される屋外環境下においても長期間にわたって清浄表面を維持する塗装金属板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
TiOを始めとする光触媒は、紫外線照射で活性化し、有機物,NOx,SOx等を分解する作用を呈する。光触媒の光触媒作用を活用し、たとえばアナターゼ型チタニア粉末を配合した塗膜を基材・金属板の表面に設けることにより、セルフクリーニング作用を付与することが検討されている。
この種の塗装金属板でベースとなる塗膜に有機物を使用すると、光触媒反応で生成したO ,OHラジカル等の活性酸素によって有機塗膜が分解される。有機塗膜の分解は、チョーキング現象となって塗膜剥離に至る。光触媒反応による塗膜の分解は、無機物をベース樹脂に使用することにより解消される(特開平7−113272号公報,特開平8−164334号公報,WO96/29375等参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
TiO添加で光触媒活性を付与した無機塗膜は、耐候性に優れているものの、無機塗膜を基材表面に形成する過程でクラックが発生し塗膜剥離に至るケースや、塗装金属板を屋外に設置した後の熱変化に伴う歪みで塗膜剥離が生じるケースが多い。
塗膜剥離の防止対策としては、基材・金属板と無機塗膜の間にエポキシ等の有機プライマ層を介在させる方法,無機塗膜に有機物を配合する方法等が採用されている。しかし、3コート方式は、製造コストを上昇させるばかりでなく、トップ層に含まれている光触媒が有機プライマ層を分解する虞がある。無機塗膜に有機物を配合する方法では、依然としてチョーキング現象が避けられず,塗膜の耐候性が低下しやすい。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、無機塗膜を形成するシリカ系バインダの分子量,塗膜構造を適正管理することにより、塗膜剥離の原因となる応力を緩和し、基材・金属板に無機塗膜を直接形成する2コート仕様においても塗膜剥離を抑制し、しかも優れた耐摩耗性,光触媒活性が付与された光触媒塗装金属板を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の光触媒塗装金属板は、無機顔料を含むプライマ層,光触媒及び無機顔料を含むトップ層が基材表面に順次形成されており、プライマ層及びトップ層がスチレン換算分子量:300以上の分子集合体からなるシリカ系バインダを含み、式(1)で算出される吸光度ピークの高さの比率Aが1.05〜1.25の範囲となるようにトップ層の表層部が構造制御されていることを特徴とする。
高さの比率A=(1020cm−1ピーク高さ/1090cm−1ピーク高さ)・・・・・・(1)
トップ層表層部は、固体29Si−NMRの測定でケミカルシフト−46ppmが0〜2%以下,−56ppmが20〜25%,−64ppmが35〜45%,−94ppmが0〜5%,−110ppmが5〜10%,残りが−110ppmに構造制御されている。
【0006】
この光触媒塗装金属板は、スチレン換算分子量:300以上のシリカ系バインダ及び無機顔料分散トナーを含むプライマ塗料を塗装原板に塗布してプライマ層を形成した後、スチレン換算分子量:300以上のシリカ系バインダ,シラン処理した光触媒粉末及び無機顔料分散トナーを含むトップ塗料を塗布し、150〜400℃で5〜30分間焼き付けることにより製造される。
【0007】
シリカ系バインダとしては、固形分比率40〜70質量%のシリカ及び30〜70質量%のオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物を水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶液に分散・溶解させ、液体29Si−NMRの測定でケミカルシフト−47ppmが3%以下,−56ppmが15〜25%,−65ppmが15〜25%,残りが−110ppmとなるように調製されている。
【0008】
【作用】
チタニア等の光触媒を紫外線照射すると、有機物,SOx,NOx等を分解する反応が生じる。分解反応は,紫外線照射によって光触媒の価電子帯にある電子がエネルギーを吸収して伝導体に励起され、価電子帯に正孔が生じ、正孔の強力な酸化力で有機物,NOx,SOx等が酸化分解するものと考えられている。塗膜剥離を防止するために有機物を導入した無機塗膜であっても、光触媒活性によって塗膜中の有機物が分解されるので、塗膜の耐久性,耐剥離性を両立させることが困難である。
【0009】
本発明者等は、光触媒活性による有機物分解を避け、チョーキングがなく耐剥離性に優れ、且つ光触媒活性が低下しない塗膜を形成する方法を検討する過程で、スチレン換算分子量:300以上の分子集合体を含むシリカ系バインダをプライマ層,トップ層に使用すると、塗膜の応力緩和に有効な微細クラックが発生し、厚膜の無機塗膜でも塗膜剥離が生じがたく、優れた光触媒活性を呈することを見出した(特願2002−376640号)。
【0010】
塗膜剥離の抑制に微細クラックが有効であるものの発生量によっては耐摩耗性に劣る場合があるので、光触媒活性を低下させることなく耐塗膜剥離性,耐摩耗性の両立が必要になる。かかる膜性状を備えた塗膜の開発過程で、塗膜構造をも制御するとき光触媒活性の低下なく耐塗膜剥離性,耐摩耗性の双方が高位に安定することを見出した。耐塗膜剥離性,耐摩耗性に及ぼす塗膜構造の影響は、次のように推察される。
【0011】
無機塗膜は塗膜自体に伸びがないため、厚膜化した塗膜や屋外での使用中に熱変化した塗膜では大きなクラックが発生し、基材・金属板から剥離しやすい。塗膜形成時の塗膜剥離は、塗料を焼成する際に基材・金属板と塗膜との間で異なる熱膨張係数に起因する熱応力によるものと考えられる。屋外での使用中における塗膜剥離も、同様に熱変化で生じた応力が原因と考えられる。
【0012】
熱応力が塗膜剥離の原因であるとの前提で、熱応力を局部集中することなく塗膜に均一分散させるとき、応力が基材・金属板/塗膜界面の密着力を下回り、塗膜剥離に至らないと推察される。たとえば、塗膜の応力緩和に有効な微細クラックを塗膜形成時に発生させると、厚膜形成時や屋外での使用中に生じる熱変化に起因する大きなクラックの発生に伴う塗膜剥離を防止できる。しかし、塗膜形成時の微細クラックは塗膜の耐摩耗性にとって好ましくないので、塗膜形成時に発生する微細クラックを極力少なくし、しかも屋外使用中での硬化反応の更なる進行を抑えることにより応力の増加を防止することが望まれる。
【0013】
そこで、本発明者等は、微細クラックの抑制,使用時の硬化反応の抑制に有効な塗膜構造について検討を加えた結果、塗膜を赤外吸収スペクトル回折して得られる式(1)で表される吸光度ピークの高さの比率Aを1.05〜1.25の範囲に制御した塗膜構造が有効であることを解明した。
高さの比率A=(1020cm−1ピーク高さ/1090cm−1ピーク高さ)・・・・・・(1)
また、固体29Si−NMRの測定でケミカルシフト−46ppmが0〜2%,−56ppmが20〜25%,−64ppmが35〜45%,−94ppmが0〜5%,−110ppmが5〜10%,残りが−110ppmにトップ層表層部を調質するとき、耐塗膜剥離性,耐摩耗性の双方が更に改善されることが判った。
【0014】
赤外吸収スペクトルの1020cm−1に現れるピークはSi−O−Si,Si−OHに相当し、1090cm−1に現れるピークはSi−O−Siに相当すると考えられる。塗膜形成時の硬化反応がSi−OHの脱水縮合反応であることを考慮すると、Si−OHが少ないことは反応点が少なく結合力が弱いことを意味し、Si−OHが多いことは反応点が多く結合力は強いものの経時的な反応が更に進行することを意味する。
【0015】
式(1)で表される高さの比率Aが1.05未満の場合、Si−OHが少なく微細クラックが形成される結果、塗膜の応力は小さくなるものの耐摩耗性が低下する。逆に、高さの比率Aが1.25を超える場合、Si−OHが多く、塗膜形成時にクラックが発生しないが、屋外使用中に硬化反応が進行して塗膜剥離に至る大きなクラックが発生しやすい。
【0016】
高さの比率Aとクラック発生,耐塗膜剥離性,耐摩耗性との関係は、固体29Si−NMRの測定結果からも支持される。ケミカルシフト−46ppmのピークはオルガノアルコキシシラン由来のSiに二つのアルコキシ基又はOH基が結合した構造に相当し、−56ppmのピークはオルガノアルコキシシラン由来のSiに一つのアルコキシ基又はOH基が結合した構造に相当する。そこで、−46ppm及び−56ppmのピークを量規制することにより、耐塗膜剥離性,耐摩耗性の両立が可能になる。具体的には、−56ppmのピークの量が少なすぎると耐摩耗性に劣り、−46ppm及び−56ppmのピークの量が多すぎると耐塗膜剥離性に劣るので、−46ppm,−56ppmそれぞれのピークの量を0〜2%,20〜25%の範囲に調整する。
【0017】
【実施の形態】
本発明の光触媒塗装金属板は、基材・金属板の上にプライマ層,トップ層を順次積層している。
〔基材・金属板〕
基材・金属板に使用される塗装原板には、普通鋼板,めっき鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム板,アルミニウム合金板,銅板,銅合金板等がある。塗装原板には、必要に応じてアルカリ脱脂,クロメート処理,リン酸塩処理等の塗装前処理が施される。
【0018】
〔プライマ層〕
液体29Si−NMRの測定でケミカルシフト−47ppmが3%以下,−56ppmが15〜25%,−65ppmが15〜25%,残りが−110ppmとなるように調製されたスチレン換算分子量:300以上のシリカ系バインダを無機顔料分散トナーと配合したプライマ塗料を基材・金属板に塗布し焼き付けると、応力緩和され耐摩耗性に優れたプライマ層が形成される。
【0019】
シリカ系バインダは、シリカとオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物からなる固形分を水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶媒に分散させることにより、液体29Si−NMRの測定でケミカルシフト−47ppmが3%以下,−56ppmが15〜25%,−65ppmが15〜25%,残りが−110ppmとなるように調製される。具体的には、シリカ:40〜70質量%、オルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物:30〜60質量%からなる固形分を水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶媒に分散させる。必要に応じ、アンモニア水,トリエタノールアミン,ジメチルアミノエーテル等の有機アミン類等によってシリカ系バインダのpH値を3〜6.5(好ましくは、4〜5)に調製するとき、シリカ系バインダの保存安定性が向上する。
【0020】
オルガノヒドロキシシランは、たとえば一般式RSi(OH)〔Rは炭素数1〜3のアルキル基,ビニル基,3,4−エポキシシクロヘキシル基,γ−グリシドキシプロピル基,γ−メルカプトプロピル基又はクロロプロピル基〕で表される化合物である。オルガノヒドロキシシランの部分縮合物としては、一般式RSi(OH)のオルガノヒドロキシシランを部分縮合することによって得られるオリゴマー等がある。
【0021】
シリカ系バインダ中の固形分は、コロイダルシリカを核としてオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物が脱水縮合で結合した分子集合体になっている。分子集合体の分子量や構造は、脱水縮合時のpH値,反応時間,反応温度等で制御できる。分子集合体を、スチレン換算分子量:300以上,液体29Si−NMRの測定でケミカルシフト−47ppmが3%以下,−56ppmが15〜25%,−65ppmが15〜25%,残りが−110ppmとなるように調整するとき、応力が緩和され耐摩耗性にも優れた塗膜が形成される。反応可能なOH基が少なすぎると、多数の微細クラックが形成され塗膜の応力は小さくなるものの耐摩耗性が低下する。逆に、多すぎるOH基では、塗膜形成時にクラックが発生せず、屋外使用中に硬化反応が進行して塗膜剥離に至る大きなクラックが発生する。そこで、OH基をもつ構造を適正に量規制することにより、耐塗膜剥離性,耐摩耗性の両立が可能になる。
【0022】
プライマ塗料には、固形分として10〜80質量%(好ましくは、20〜75質量%)の無機顔料が配合される。無機顔料には、SiO,Al又はZrO処理したルチル型チタニア,(Co1/2,Ni,Zn1/2)TiO,CoAl,Cu(Cr,Mn),TiO−NiO−Sb等がある。十分な隠蔽性を得る上では10質量%以上の無機顔料が必要であるが、80質量%を超える過剰量の無機顔料を配合すると基材・金属板に対するプライマ層の密着性が低下する。
【0023】
プライマ塗料は、塗装前処理した基材・金属板に塗布した後、60〜350℃の温度範囲で乾燥・焼き付けられる。60℃未満の乾燥温度では、プライマ層の乾燥が不十分となり、プライマ層の上に形成されるトップ層にムラが発生しやすくなる。逆に350℃を超える加熱温度では、プライマ層に大きなクラックが発生し、基材・金属板からプライマ層が剥離しやすくなる。
【0024】
〔トップ層〕
プライマ層に塗布したトップ塗料を焼成することにより、耐汚染性,塗膜密着性に優れたトップ層が形成される。トップ塗料は、プライマ塗料と同様なシリカ系バインダにシラン処理した光触媒粉末,無機顔料分散トナーを配合することにより調製される。シリカ系バインダには、固形分として単独配合量で5質量%以上,無機顔料との合計配合量で10〜80質量%(好ましくは,20〜50質量%)の光触媒粉末が配合される。十分な光触媒活性を得る上で5質量%以上の光触媒粉末を必要とするが、合計配合量が80質量%を超える過剰量の光触媒粉末を配合するとトップ層の密着性が低下する。
【0025】
光触媒粉末には、TiO,ZnO,WO,FeTiO,SrTiOから選ばれた1種又は2種以上が使用される。なかでも、化学的に安定で活性度が高く安価な微粒子が得られることからアナターゼ型チタニア粉末が好ましい。
塗布されたトップ塗料は、プライマ層形成時の加熱温度より高い150〜400℃の温度範囲で焼成される。塗膜の十分な縮重合に150℃以上の加熱温度が必要であるが、400℃を超える高温に加熱すると塗膜剥離に至るクラックが入りやすい。好適には、塗膜の乾燥を促進させるためプライマ層形成時の加熱温度を80〜250℃に、トップ層形成時の加熱温度を150〜400℃に設定する。
【0026】
トップ層形成時の温度設定により、プライマ層とトップ層との間に強固な結合が得られ、トップ層形成時の熱処理でプライマ層に対するトップ層の密着性が向上する。その結果、基材・金属板に対する密着性が良好で、塗膜剥離に至ることなく応力緩和された塗膜が形成される。150℃未満の焼成温度では焼成不足となり、耐摩耗性が極端に低下する。焼成温度が400℃を超えると、冷却過程で基材と塗膜の収縮率が極端に変わるため塗膜剥離が発生しやすくなる。
塗膜構造の制御は、トップ層に適度の微細クラックを発生させて光触媒活性を増大させる効果,多数の微細クラック発生による耐摩耗性の低下を防止する効果の両立を可能にする。このようにして得られた光触媒塗装金属板は、優れた耐汚染性及び大気浄化能を活用し、長期間にわたって紫外線照射や雨水に曝される外装建材,外置き式家電機器筐体等に使用される。
【0027】
【実施例】
〔塗装金属板の製造例1:本発明例〕
板厚1.0mmのSUS304ステンレス鋼板を塗装原板に使用し、アルカリ脱脂,酸洗,水洗,乾燥した。
プライマ塗料は、ジルコニアで表面処理されたルチル型酸化チタン(白色顔料)を水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶媒に分散させた無機顔料分散トナーとシリカ系バインダとを配合することにより調製した。プライマ塗料を塗装原板に塗布し、140℃で20分焼成することにより乾燥膜厚25μmのプライマ層を形成した。
【0028】
トップ塗料は、プライマ塗料と同じシリカ系バインダ,無機顔料分散トナーに粒径20nmのアナターゼ型チタニア粉末を水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶媒に分散させることにより用意した。トップ塗料をプライマ層上に塗布し、200℃で20分焼成することにより、乾燥膜厚10μmのトップ層を形成した。シリカ系バインダは、液体29Si−NMRの測定によるとき、各構造の含有率は、ケミカルシフト−47ppmが2.0%,−56ppmが17.7%,−65ppmが17.3%,−110ppmが63.1%であった。
【0029】
〔塗装金属板の製造例2:本発明例〕
板厚2.5mmのアルミニウム板を塗装原板とし、粒径7nmのアナターゼ型チタニア粉末を使用する以外は製造例1と同じ条件下でプライマ層,トップ層を形成した。
【0030】
〔塗装金属板の製造例3:比較例〕
反応温度80℃で1時間脱水縮合させることによりスチレン換算分子量200〜380の分子集合体を含み、液体29Si−NMRの測定による各構造の含有率をケミカルシフト−47ppmが6.3%,−56ppmが21.3%,−65ppmが8.5%,−110ppmが64.0%となるように調整したシリカ系バインダを使用する以外、製造例1と同じ条件下でプライマ層,トップ層を形成した。
【0031】
〔塗装金属板の製造例4:比較例〕
pH3.0,反応温度80℃で72時間脱水縮合させることにより、スチレン換算分子量300以上の分子集合体を含み、液体29Si−NMRの測定による各構造の含有率をケミカルシフト−47ppmが0%(含まず),−56ppmが15%未満となるように構造制御したシリカ系バインダを使用する以外、製造例1と同じ条件下でプライマ層,トップ層を形成した。
使用したプライマ塗料を表1に、トップ塗料を表2にそれぞれ示す。
【0032】
Figure 2004338114
【0033】
Figure 2004338114
【0034】
得られた各塗装金属板から試験片を切り出し、耐汚染性試験,NOx分解試験,耐久性試験,耐摩耗性試験に供した。
耐汚染性試験では、塗装金属板に雨筋が垂れるように波板を取り付けた塗装金属板を地面から直角に起立させて取り付け、塗装金属板の明度を取付け直後及び三ヶ月経過後に測定した。そして、明度差ΔLが±1以内に収まっている塗装金属板を○,±1を超える明度差ΔLが生じた塗装金属板を×として耐汚染性を評価した。
【0035】
NOx分解試験では、幅50mm,長さ100mmの試験片2枚をガラス製容器に入れ、ブラックライト(UV強度:1.0mW/cm)で照射しながら、濃度1ppmのNOガスを含み湿度50%RHに調節した高純度空気を流量3.0リットル/分でガラス製容器に連続的に送り込んだ。ガラス製容器のガス出側に配置したNOxメータで、ガラス製容器から排出されるガスのNO濃度,NO濃度を測定した。測定値を次式に代入してNOx除去率を算出した。
NOx除去率(%)=[1−(A+B)/A]×100
ただし、A:初期NO濃度
:分解後のNO濃度
:分解後のNO濃度
【0036】
耐久性試験では、63℃のサンシャインウェザー試験を採用し、試験開始から3000時間経過した後で基材・金属板に対する塗膜の密着状態を調査し、剥離が生じていない塗膜を○,剥離が発生した塗膜を×として耐久性を評価した。
耐摩耗性試験では、イソプロパノールを滲み込ませて500gの荷重をかけたフェルトを塗膜表面に乗せ、繰返し摩耗試験機によりフェルトで塗膜表面を10回摩擦した後、塗膜表面の60度光沢変化を測定した。試験後の光沢が試験前塗膜の光沢に比較して200%以下に収まっている塗膜を○,200%を超える光沢を示した塗膜を×として耐摩耗性を評価した。
【0037】
表3の調査結果にみられるように、分子集合体の分子量,構造を適正管理したシリカ系バインダを用いてプライマ層,トップ層を形成した塗装金属板では、厚塗り塗装しても塗膜剥離せず、優れた光触媒活性,耐摩耗性を呈する塗膜が得られた。
形成された塗膜表面を分析したところ、スチレン換算分子量:300以上の分子集合体を含み、液体29Si−NMRの測定による各構造の含有率をケミカルシフト−47ppmが2.0%,−56ppmが17.7%,−65ppmが17.3%,−110ppmが63.0%となるように調整したシリカ系バインダを使用すると、IR分析で式(1)の高さ比率Aが1.05〜1.25の範囲にあり、固体29Si−NMRの測定で構造解析するとケミカルシフト−46ppmが0〜2%,−56ppmが20〜25%,−64ppmが35〜45%,−94ppmが0〜5%,−101ppmが5〜10%,残りが−110ppmの光触媒塗膜が形成された。得られた光触媒塗装金属板は、サンシャインウェザー試験による耐久性評価で塗膜剥離が検出されず、耐摩耗性も良好であった。
【0038】
他方、スチレン換算分子量300未満の分子集合体をも含み、ケミカルシフト−47ppm,−56ppmの含有率が高いバインダを使用して形成された塗膜では、サンシャインウェザー試験で塗膜剥離が発生した。分子集合体の分子量が300以上であっても−56ppmの含有率が低いシリカ系バインダを用いた塗膜では、塗膜剥離を抑制できるものの耐摩耗性が低下した。
この対比から明らかなように、分子集合体の分子量,構造を適正管理したシリカ系バインダを用いてプライマ層,トップ層を形成するとき、塗膜剥離に至らず応力緩和に有効な塗膜となり、塗料焼成時や使用時の熱履歴によって導入される熱応力で引き起こされる塗膜剥離が抑制されることが確認される。しかも、硬化反応に作用するOH基が調整されているので、緻密で耐摩耗性にも優れた塗膜が得られる。
【0039】
Figure 2004338114
【0040】
更に、プライマ層:25μm,トップ層:10μmの二層塗膜について、塗膜の構造が耐塗膜剥離性,耐摩耗性に及ぼす影響を調査した。
表4の調査結果から明らかなように、式(1)で表される高さの比率Aが1.05〜1.25の範囲にあり、固体29Si−NMRの測定でケミカルシフト−46ppmが0〜2%,−56ppmが20〜25%,−64ppmが35〜45%,−94ppmが0〜5%,−101ppmが5〜10%,残りが−110ppmとなるように制御することによって、応力分散により塗膜剥離が抑制され、耐摩耗性に優れた緻密な塗膜になることが確認された。
【0041】
Figure 2004338114
【0042】
【発明の効果】
以上に説明したように、プライマ塗料,トップ塗料に配合するシリカ系バインダの分子量,構造を適正管理することにより,応力緩和で塗膜剥離が防止され、耐摩耗性,緻密化共に優れた光触媒塗膜が形成される。そのため、塗装原板に無機塗膜を直接形成する2コート仕様においても、優れた耐剥離性,耐塗膜剥離性が維持される。得られた光触媒塗装金属板は、長期にわたって清浄表面を維持するセルフクリーニング作用に併せ、紫外線照射や雨水に曝される環境下でも優れた耐剥離性,耐久性を呈するので、長寿命が要求される外装建材,外置き式家電機器筐体等に使用される。

Claims (4)

  1. 無機顔料を含むプライマ層,光触媒及び無機顔料を含むトップ層が基材表面に順次形成されており、プライマ層及びトップ層がスチレン換算分子量:300以上の分子集合体からなるシリカ系バインダを含み、式(1)で算出される吸光度ピークの高さの比率Aが1.05〜1.25の範囲となるようにトップ層の表層部が構造制御されていることを特徴とする耐摩耗性,耐汚染性,塗膜密着性に優れた光触媒塗装金属板。
    高さの比率A=(1020cm−1ピーク高さ/1090cm−1ピーク高さ)・・・・・・(1)
  2. トップ層表層部の固体29Si−NMR測定で、ケミカルシフト−46ppmが0〜2%,−56ppmが20〜25%,−64ppmが35〜45%,−94ppmが0〜5%,−101ppmが5〜10%,残りが−110ppmである請求項1記載の光触媒塗装金属板。
  3. 液体29Si−NMRの測定でケミカルシフト−47ppmが3%以下,−56ppmが15〜25%,−65ppmが15〜25%,残りが−110ppmに調質されたスチレン換算分子量:300以上の分子集合体を含むシリカ系バインダ及び無機顔料分散トナーを含むプライマ塗料を塗装原板に塗布してプライマ層を形成した後、液体29Si−NMRでケミカルシフト−47ppmが3%以下,−56ppmが15〜25%,−65ppmが15〜25%,残りが−110ppmに調質されたスチレン換算分子量:300以上の分子集合体を含むシリカ系バインダ,シラン処理した光触媒粉末及び無機顔料分散トナーを含むトップ塗料を塗布し、150〜400℃で5〜30分焼き付けることを特徴とする耐摩耗性,耐汚染性,塗膜密着性に優れた光触媒塗装金属板の製造方法。
  4. 固形分比率40〜70質量%のシリカ及び30〜70質量%のオルガノヒドロキシシラン及びオルガノヒドロキシシランの部分縮合物を水/イソプロパノール/エチレングリコールモノブチルエーテルの混合溶液に分散・溶解させたシリカ系バインダを使用する請求項3記載の製造方法。
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