JP2004333833A - 母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び基材 - Google Patents
母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び基材 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】エッチング処理されることで所定の回折構造が形成されて光学素子を成形するための金型の母型となる基材に対して、予め、オーバーエッチングやサイドエッチングを低減させる形状を付与しておくことで、エッチング処理後には、歪みのない所定の形状を得ることができる母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び基材を提供する。
【解決手段】母型の素材110の母光学面110aを、曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを断面二次曲線にて滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acを有して形成する。これらは1つの連続面を構成するため、エッチング処理の際には、その表面において誘導電界が一様に生じて、均一にエッチングされることとなる。従って、オーバーエッチングやサイドエッチングが低減されて、所定の形状を得ることができる。
【選択図】 図5
【解決手段】母型の素材110の母光学面110aを、曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを断面二次曲線にて滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acを有して形成する。これらは1つの連続面を構成するため、エッチング処理の際には、その表面において誘導電界が一様に生じて、均一にエッチングされることとなる。従って、オーバーエッチングやサイドエッチングが低減されて、所定の形状を得ることができる。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学素子を成形するための金型の母型を製造する技術に関するものであって、特に、エッチング処理されることで所定の構造が形成されて光学素子を成形するための金型の母型となる基材に対して、予め、オーバーエッチングやサイドエッチングを低減させる形状を付与しておくことで、エッチング処理後には、歪みのない所定の形状を得ることができるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、情報記録媒体としてCD、DVDなどが広く利用されており、これらの記録媒体から情報を読み取る読取装置などの精密機器には、多くの光学素子が使用されている。
【0003】
近年においては、これらの光学素子に要求されるスペックや性能が向上してきており、特に、DVDなどの記録媒体におけるピックアップレンズでは、記録密度の増加に対して、より微細で且つ精度の高い回折構造を形成することが要求されている。具体的には、光の波長より小さいレベル、例えばnmレベルでの加工が求められている。また、次世代対応のピックアップレンズにおいては、光の波長に対して1/200程度の加工精度を実現することが求められている。
【0004】
ところで、これらのピックアップレンズ、即ち、光学レンズは、低コスト化並びに小型化の観点から、ガラス製の製品よりも樹脂製の製品が広く利用されている。このような樹脂製の光学レンズは、一般に射出成形によって製造される。従って、その成形型には、予め、回折構造を付与するための面を形成しておく必要がある。
【0005】
これまで、このような面の形成加工は、切削バイトを用いた一般的な加工技術によって行われてきたが、近年において要求される微細な回折構造を形成しようとした場合には、加工精度が劣るとともに、バイトの強度や寿命の点で限界があり、サブミクロンオーダー、或いは、それ以下のレベルでの精密な加工を行うことは困難であるという問題が生じることとなった。
【0006】
そこで、最近においては、成形型の母型となる基材に対して、レジスト膜を形成して、そのレジスト膜にそのような微細な回折構造の原形となる形状を描画して、これを現像処理することで、その形状を得て、さらに、その形状をエッチング処理することで、所定の回折構造が形成された母型を得ることが試みられている(例えば、特許文献1参照)。さらに、このようにして得られた母型を用いて電鋳処理を行うことで、そのような微細な回折構造が転写形成された成形型を得て、この成形型によって光学レンズが成形される。
【0007】
【特許文献1】
特開2002‐333722号公報(段落〔0161〕‐〔0170〕、第13図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような成形型の母型となる基材には、通常、光学レンズの光学機能面となる曲面部と、この曲面部の周囲に亘る周囲面部とが形成されており、これらの境界部分は、所定の角度を持って不連続に繋げられている。即ち、当該境界部分は、光学レンズの光学機能面、即ち、所定の回折構造が形成される曲面部の光学機能面部からは外れた部分であるため、特別な考慮は図られず、単純に繋げられるに留まっている。
【0009】
しかしながら、このように曲面部と周囲面部との境界部分が不連続であると、当該基材をエッチングした場合には、この境界部分にオーバーエッチングやサイドエッチングが生じて、所定の回折構造が形成される曲面部の光学機能面部までもが歪みを生じて、その形状が乱されるという問題が生じる。具体的には、境界部分に位置する周囲面部において、エッチングが過度に進行してしまうオーバーエッチングが生じ、境界部分に位置する曲面部の傾斜面において、水平方向にエッチングが進行してしまうサイドエッチングが生じる。また、この境界部分においては、局所的にエッチング量が増加することから、破損が生じ易くなるという問題が生じる。
【0010】
また一方で、このように曲面部と周囲面部との境界部分が不連続であると、当該基材にレジストを塗布して、レジスト膜を形成する場合には、この境界部分において、レジストが溜まり易くなり、厚いレジスト膜が形成されることから、当該基材をエッチングした場合には、この境界部分において、その形状が大きく乱されるという問題が生じる。これは、レジスト膜のエッチング速度と基材のエッチング速度とが異なることに起因する。
【0011】
従って、このようなことから、当該基材に形成された回折構造を転写形成して製造された金型を用いて光学素子を成形した場合には、その形状の乱れから、所定の光学的性能を有する光学素子を得ることが出来なくなるという問題が生じる。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エッチング処理されることで所定の回折構造が形成されて光学素子を成形するための金型の母型となる基材に対して、予め、オーバーエッチングやサイドエッチングを低減させる形状を付与しておくことで、エッチング処理後には、歪みのない所定の形状を得ることができる母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び基材を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、所定の構造を有する光学素子を成形するための金型の母型を製造する母型の製造方法であって、前記母型となる基材に対して、少なくとも一面に、前記所定の構造が形成される曲面部と、前記曲面部の周囲に亘る周囲面部と、前記曲面部と前記周囲面部とを滑らかに繋ぐ周囲曲面部と、を成形する成形工程と、前記曲面部上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記形成されたレジスト膜に対して所定のパターン形状を描画する描画工程と、前記描画されたレジスト膜に現像処理を施すことで、前記所定のパターン形状を形成する現像工程と、前記所定のパターン形状が形成されたレジスト膜にエッチング処理を施すことで、前記曲面部上に前記所定の構造が形成された母型を得るエッチング工程を含むことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の母型の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項7記載の発明は、請求項6記載の母型を用いて、前記母型の形状が転写された金型を得る電鋳処理を行うことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために、請求項8記載の発明は、請求項7記載の金型の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために、請求項9記載の発明は、請求項8記載の金型によって成形されたことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために、請求項10記載の発明は、エッチング処理されることで所定の構造が形成されて、前記所定の構造を有する光学素子を成形するための金型の母型となる基材であって、少なくとも一面に、前記所定の構造が形成される曲面部と、前記曲面部の周囲に亘る周囲面部と、前記曲面部と前記周囲面部とを滑らかに繋ぐ周囲曲面部と、を設けたことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び基材の好適な実施の形態の一例について、母型の製造方法及び金型の製造方法の流れに沿って、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
[母型の製造方法]
まず、母型の製造方法について、図1及び図2に示すフローチャートの流れに沿って、図3を参照しつつ説明する。
【0021】
<切削加工工程>
図1に示すように、SiO2、ポリシリコン又はポリオレフィン等の樹脂材料からなる略半球型の形状を有する母型の素材110を、金属など導電性の素材からなる円盤状の基材111の中央開口111pに埋め込み、接着剤にて相対回転不能に固定して(図3(a)参照)、部材Eを得る(ステップS01)。尚、母型の素材110は、本発明の「基材」に対応する。次に、治具(以下、ヤトイと呼ぶ)150の中央孔151を介して貫通させ、基材111のネジ孔111gに螺合させたボルト152により、基材111に対してヤトイ150を取り付けると共に、基材111に合マークMXとID番号NXを付与する(ステップS02)。図4に示すように、このID番号NXは、取り付けたヤトイ150の個々に付された番号であり、それを特定するための情報として機能する。尚、本例では、基材111の外周面を接線方向に細い平面で切り取った溝111h内に、レーザー描画でID番号NXを刻設するようにしたが、印刷であっても良い。また、溝は、同一深さの全周溝であっても良い。また、基材111との位相を合わせるための合マークMXも、レーザー加工で刻設することができる。
【0022】
次に、不図示のコンピュータ内に構築されたプロセス管理データベース内に、この部材Eに対応づける形で、ヤトイのID番号NX、取付面(方向)、締め付けトルク、作業環境温度(雰囲気温度)等を記憶する(ステップS03)。その後、後述する超精密旋盤(SPDT加工機)のチャックに、ヤトイ150を介して部材Eを取り付ける(ステップS04)。さらに、部材Eを回転させなから、ダイヤモンド工具により、基材111の外周面111fを切削加工することで、超精密旋盤、例えば、SPDT(Single Point Diamond Turning)加工機の回転軸に対して、これを精度良く形成し、又、母型の素材110の上面を、図3(b)に示すように切削加工し、後述する母光学面110aを形成し、且つ、基材111の上面に周溝111a(第1のマーク)を切削加工する(ステップS05)。この際、温度コントロールを実施しながら、送り量及び切込量を制御して、曲面の表面祖さ50nm乃至20nmを得る。また、このとき、母光学面110aの光軸の位置は、その外形から確認することはできないが、同時に加工されることから母光学面110aと周溝111aとは、精度良く同軸に形成されることとなり、又、円筒面に形成された基材111の外周面111fも、光軸と精度良く同軸に形成される。ここで、周溝111aは、例えば、暗視野部(凹部に相当)と明視野部(凸部に相当)とからなる複数の溝から形成されてよく、暗視野部、明視野部を各々複数個有するとさらに好ましい(これは、ダイヤモンド工具の先端が凹凸を有するものであれば、容易に形成できる)。また、周溝111aの凹凸形状により、後述するごとく塗布されるレジスト飛散防止の堤防としても機能させることができる。
【0023】
[基材の形状]
ここで、本発明の特徴部分である基材、即ち、上述した母型の素材110の母光学面110aの形状について、図5を参照しながら説明する。
【0024】
上述したように、母型の素材110の上面には、SPDT加工機の切削加工により母光学面110aが形成されるが、当該母光学面110aは、図5に示すように、曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acと、を有して形成される。より詳細には、曲面部110aaは、所定の回折構造が形成される光学機能面部(レンズ有効径内の領域部分)と、この光学機能面部の周囲に亘る光学機能周囲面部(レンズ有効径外の領域部分)とから成り、この光学機能周囲面部と周囲面部110abとが、周囲曲面部110acによって滑らかに繋がれる。尚、此処に言う“滑らか”とは、その繋ぎ目において、角や溝が生じていないことを指し、上述した光学機能周囲面部と周囲面部110abとにおいては、周囲曲面部110acを介して、1つの連続的な面を形成しているということである。因みに、本実施形態においては、これを実現する手法として、周囲曲面部110acを、断面2次曲線を成す形状にて構成することとするが、周囲曲面部110acは、連続面を成す形状であれば良く、これに限定されるものではない。また、図5においては、周囲面部110abは水平面としているが、周囲面部110abは、傾斜面であっても良い。また、周囲面部110abの表面は平坦でなく、滑らかな起伏を有するものであっても良い。因みに、同図に示す点線の形状は、従来における曲面部と周囲面部との境界領域における形状を示している。
【0025】
これにより、後述するエッチング工程においては、この曲面部110aaと周囲面部110abとの境界領域において、オーバーエッチングやサイドエッチングが生じることを抑えることができる。尚、この詳細については、後述する(エッチング形状の形成原理)の処で説明する。
【0026】
(SPDT加工機の構成)
ここで、上述した部材Eの切削加工に用いるSPDT加工機の概略構成について、図6(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0027】
SPDT加工機300は、図6(a)に示すように、部材Eなどのワーク301を固定するための回転保持部材である固定部302と、ワーク301に対して加工を施すための切削バイトの刃先であるダイヤモンド工具303と、固定部302をZ軸方向に移動させるZ軸スライドテーブル304と、ダイヤモンド工具303を保持しつつX軸方向(或いは、加えてY軸方向)に移動させるX軸スライドテーブル305と、Z軸スライドテーブル304及びX軸スライドテーブル305を移動自在に保持する定盤306を含んで構成されている。尚、固定部302若しくはダイヤモンド工具303の何れか一方、又は、双方を回転駆動するための不図示の回転駆動手段が設けられ、後述する制御手段307に電気的に接続されている。
【0028】
また、図6(a)に示すように、Z軸スライドテーブル304の駆動を制御するZ方向駆動手段308と、X軸スライドテーブル305のX軸方向での駆動(或いは、加えてY軸方向での駆動)を制御するX方向駆動手段309及びY方向駆動手段310と、これらにより切削バイトの送り量を制御する送り量制御手段311と、切込量を制御する切込量制御手段312と、温度を制御する温度制御手段313と、各種制御条件や制御テーブル乃至は処理プログラムを記憶した記憶手段314と、これら各部の制御を司る制御手段307と、を含んで構成されている。
【0029】
ダイヤモンド工具303は、図6(b)に示すように、本体部分を構成するダイヤモンドチップ303aと、この先端部に構成された頂角αから成るすくい面303bと、側面部を構成する第1逃げ面303c、第2逃げ面303dから構成されている。このすくい面303bに含まれる刃先には、予め、乃至は、摩耗による複数の凹凸部303e(上述したダイヤモンド工具先端の凹凸部)が形成されている。
【0030】
(切削加工処理)
このような構成を有するSPDT加工機300によって、概略、以下のように切削加工が行われる。
【0031】
制御手段307は、記憶手段314に記憶された各種制御条件や制御テーブル乃至は処理プログラムに従って、Z方向駆動手段308、X方向駆動手段309及びY方向駆動手段310を制御することにより、Z軸スライドテーブル304及びX軸スライドテーブル305を移動させる。これにより、固定部302にセットされた部材Eであるワーク301に対して、ダイヤモンド工具303が相対移動して、ワーク301に対する切削加工が行われる。因みに、ダイヤモンド工具303は、刃先がRバイト(バイト先端が曲線部を有する)の構成を有していることから、刃先の当たるポイントが順次変化し、摩耗に対して強くなっている。
【0032】
尚、この際、温度制御手段313が温度コントロールを実施し、送り量制御手段311がダイヤモンド工具303の送り量を制御し、切込量制御手段312がダイヤモンド工具303による切込量を制御することで、部材Eの母型の素材110の上面が切削加工されて、母光学面110aが形成されることになる。
【0033】
図1に戻って、さらに、不図示のコンピュータに構築したプロセス管理データベースに、部材Eの切削加工時の作業環境温度を記憶し、且つ、部材EをSPDT加工機から取り外し(ステップS06)、ボルト152を緩めて部材Eからヤトイ150を取り外す(ステップS07)。そして、目視で虹色に見えるダイヤモンド工具による加工痕(ツールマーク)を研磨して、虹色が見えなくなるまで研磨する。さらに、部材Eを、不図示のFIB(Focused Ion Beam)加工機のステージ上にセットする(ステップS08)。次に、FIB加工機のステージ上の部材Eにおける周溝111aを読み取り、例えば、その内側エッジから母型の素材110の光軸の位置を決定し(ステップS09)、決定した光軸から等距離で3つ(4つ以上でも良い)の第2のマーク111bを、基材111上に描画する(図3(b)及び図7参照)(ステップS10)。ダイヤモンド工具により加工形成した周溝111aの幅は比較的広いため、これを用いて加工の基準とすることは、加工精度を低下させる恐れがあるが、FIB加工機は、幅が20nm程度の精度の高い線を形成できるため、例えば十字線を形成すると、20nm×20nmの微細なマークを形成することができ、それを加工の基準とすることで、より高精度な加工が可能となる。次に、部材EをFIB加工機のステージから取り外す(ステップS11)。
【0034】
<形状測定工程>
続いて、部材Eを後述する形状測定器(画像認識手段と記憶手段とを有する)にセットし(ステップS12)、形状測定器の画像認識手段を用いて、第2のマーク111bを検出する(ステップS13)。さらに、測定により得られた、若しくは、超精密旋盤に用いた母型の素材110の母光学面110aの3次元座標を、第2のマーク111bに基づく3次元座標に変換して、さらに、この第2のマーク111bに基づく3次元座標から、母型の素材110の母光学面110aの高さ位置に関する規定値、即ち、設計値からの誤差分布データを作成し、これらを記憶手段に記憶する(ステップS14)。このように、母光学面110aを新たな3次元座標で記憶し直すのは、後述する描画工程で電子ビーム描画を行う際に、母光学面110aの被描画面に対して電子ビームの焦点深度を合わせるために、電子銃と部材Eとの相対位置を調整する必要などがあるからである。尚、第2のマーク111bは、測定の際、測定データにかかる座標の基準点がどこなのかを作業者が視認するための位置認識のためのマークとして利用できる。その後、部材Eを形状測定器から取り外す(ステップS15)。
【0035】
(形状測定器の構成)
ここで、上述した母型の素材110の母光学面110aの形状を測定する際に用いられる形状測定器の概略構成について、図8を参照しながら説明する。
【0036】
図8に示すように、測定器200は、第1のレーザー測長器201、第2のレーザー測長器202、ピンホール205、ピンホール206、第1の受光部203及び第2の受光部204などを有し、さらに、これらの測定結果を算出するための不図示の測定算出部、測定結果を記憶する記憶部、各種制御系を備えた不図示の制御手段などを含み構成される。
【0037】
(形状測定処理)
このような構成において、第1のレーザー測長器201から部材Eに対して第1の光ビームS1を照射し、母型の素材110の平坦部110bで反射される第1の光ビームS1をピンホール205を介して第1の受光部203により受光して、第1の光強度分布を検出する。
【0038】
この際に、第1の光ビームS1は、母型の素材110の平坦部110bにて反射されるため、第1の強度分布に基づき、母型の素材110の平坦部110b上の(高さ)位置が測定算出されることになる。
【0039】
さらに第2のレーザー測長器202から第1の光ビームS1と異なる方向から部材Eに対して第2の光ビームS2を照射し、母型の素材110の母光学面110aを透過する第2の光ビームS2をピンホール206を介して第2の受光部204により受光して、第2の光強度分布を検出する。
【0040】
この場合、第2の光ビームS2は、母型の素材110の母光学面110a上を透過することとなるので、第2の強度分布に基づき、母型の素材110の平坦部より突出する母光学面110a上の(高さ)位置が測定算出されることになる。尚、この母型の素材110の母光学面110a上の(高さ)位置の測定算出の原理については、後述する電子ビーム描画装置の(測定器)の処で説明する。
【0041】
<レジスト膜形成工程>
図1に戻って、次に、第2のマーク111b上に保護テープ113を貼り付ける(図3(c)参照)(ステップS16)。この保護テープ113は、後加工で母型の素材110上に塗布されるレジストLが、第2のマーク111bに付着しないようにするためのものである。これは、レジストLが第2のマーク111bに付着すると、加工の基準として読み取りが不適切になるためである。尚、保護テープによる保護は、図3(c)で示され、1つの第2のマーク111bのみ保護する場合を示しているが、他の第2のマーク111bについても同様である。さらに、部材Eを不図示のスピンコータにセットし(ステップS17)、レジストLを母型の素材110上に流下させながら被レジスト塗布基材を回転するプレスピンを実施し(ステップS18)、その後、レジストLの流下を停止して被レジスト塗布基材を回転させる本スピンを実施し、レジストLの被膜を行う(図3(d)参照)(ステップS19)。プレスピンと本スピンとを分けることにより、複雑な曲面である母光学面110aに、均一な膜厚のレジストLを被膜させることが可能となる。ここで、レジストLは、加熱又は紫外線等によって硬化する高分子の樹脂材料が用いられており、電子ビームによって与えられたエネルギー量に応じて分子間の結合が切れ分解される特性を有している(分解された部分は後述する現像液によって除去される)。
【0042】
ところで、上述したように、母型の素材110の母光学面110aは、曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abとが周囲曲面部110acによって滑らかに繋がれているため(図5参照)、従来のように、曲面部110aaと周囲面部110abとの境界領域においてレジストが溜まることもなく、均一な厚さのレジスト膜を得ることができる。
【0043】
これにより、後述するエッチング工程においては、母型の素材110の母光学面110aは、一様にエッチングされて、歪みの無い所定の形状を得ることができる。尚、この詳細については、後述する(エッチング形状の形成原理)の処で説明する。
【0044】
図1に戻って、その後、部材Eをスピンコータから取り外し(ステップS20)、部材Eに対してベーキング(加熱)処理を施すことで、レジストLの被膜を安定させる(ステップS21)。この際の温度は、ほぼ170℃で、ほぼ20分間加熱する。さらに、保護テープ113を剥がす(ステップS22)。係る状態の部材Eが、図3(d)に示されている。
【0045】
<膜厚測定工程>
続いて、図2に示すように、部材Eを不図示の膜厚測定器(画像認識手段と記憶手段とを有する)にセットし(ステップS23)、膜厚測定器の画像認識手段を用いて、第2のマーク111bを検出する(ステップS24)。さらに、母型の素材110の母光学面110aに塗布されたレジストLの膜厚分布を、第2のマーク1011bに基づく膜厚分布に変換して、さらに、この第2のマーク111bに基づく膜厚分布から、規定値、即ち、得ようとする膜厚値からの誤差分布データを作成し、これらを記憶手段に記憶する(ステップS25)。このように、第2のマーク111bに基づくレジストLの膜厚の規定値からの誤差分布データを作成することで、これを、上述した形状測定器での母型の素材110の母光学面110aの高さ位置の設計値からの誤差分布データと対応付けることができる。その後、部材Eを膜厚測定器から取り外す(ステップS26)。
【0046】
<描画調整工程>
さらに、部材Eを、後述する電子ビーム描画装置の3次元ステージにセットし(ステップS27)、測定器(走査型電子顕微鏡(SEM):電子ビーム描画装置に付属していると好ましい)を介して部材Eの第2のマーク111bを検出し(ステップS28)、その検出結果と、入力部より入力される形状測定器200及び膜厚測定器からの測定情報、具体的には、部材Eの形状データ、即ち、母光学面110aの3次元座標と、母光学面110aに塗布されたレジストLの膜厚分布とから求められる母光学面110aの被描画面(レジストLの膜表面)の形状とから、母光学面110aの被描画面に描画する所定の描画パターンに関する形状データを作成する(ステップS29)。因みに、母光学面110aの被描画面の形状は、部材Eの第2のマーク111bの検出と共に、測定器により測定しても良い。
【0047】
さらに、所定の描画パターンを構成する、例えば回折輪帯を描画する際の電子ビームの照射量、即ち、ドーズ量を調整する。具体的には、入力部より入力される形状測定器200及び膜厚測定器からの測定情報、より詳細には、部材Eの形状データ、即ち、母光学面110aの3次元座標と、母光学面110aに塗布されたレジストLの膜厚分布とから母光学面110aの被描画面の形状を求め、さらに、各々の誤差分布データ(母光学面110aの高さ位置の設計値からの誤差分布データ、母光学面110aに塗布されたレジストLの膜厚の規定値からの誤差分布データ)に基づいて、所定の形状が得られるようにドーズ量を調整する(ステップS30)。
【0048】
<描画工程>
さらに、母光学面110aの被描画面に所定の描画パターンを描画するべく、被描画面に電子ビームの焦点が合うように3次元ステージを移動させて、電子ビーム(図3(d)参照)を所定のドーズ量(補正された後のドーズ量)になるよう照射して、母光学面110a上のレジストLの膜に所定の描画パターン、例えば回折輪帯を描画する(ステップS31)。
【0049】
(電子ビーム描画装置の構成)
ここで、上述した描画処理に用いられる電子ビーム描画装置の概略構成について、図9を参照しながら説明する。尚、以下においては、母型の素材110の母光学面110a上にレジストLの膜が形成された部材Eは、基材100に対応するものとする。
【0050】
図9に示すように、電子ビーム描画装置1は、大電流で高解像度の電子線プローブを形成して高速に描画対象の基材100上を走査するものであり、高解像度の電子線プローブを形成し、電子ビームを生成してターゲットに対してビーム照射を行う電子銃2と、この電子銃2からの電子ビームを通過させるスリット3と、スリット3を通過する電子ビームの基材100に対する焦点位置を制御するための電子レンズ4と、電子ビームが出射される経路上に配設されたアパーチャー5と、電子ビームを偏向させることでターゲットである基材100上の走査位置等を制御する偏向器6と、偏向を補正する補正用コイル7と、を含み構成される。これらの各部は、鏡筒8内に配設されて電子ビーム出射時には真空状態に維持される。
【0051】
さらに、電子ビーム描画装置1は、描画対象となる基材100を載置するための載置台であるXYZステージ9と、このXYZステージ9上の載置位置に基材100を搬送するための搬送手段であるローダ10と、XYZステージ9上の基材100の表面の基準点を測定するための測定手段である測定装置11と、XYZステージ9を駆動するための駆動手段であるステージ駆動装置12と、ローダを駆動するためのローダ駆動装置13と、鏡筒8内及びXYZステージ9を含む筐体14内を真空となるように排気を行う真空排気装置15と、これらの制御を司る制御手段である制御回路20と、を含み構成される。
【0052】
尚、電子レンズ4は、高さ方向に沿って複数箇所に離間して設置される各コイル4a、4b、4cの各々の電流値によって電子的なレンズが複数生成されることで各々制御され、電子ビームの焦点位置が制御される。
【0053】
測定装置11は、基材100に対してレーザーを照射することで基材100を測定するレーザー測長器11aと、レーザー測長器11aにて発光されたレーザー光が基材100を反射し当該反射光を受光する受光部11bと、を含み構成される。尚、この詳細については、後述する(測定装置の構成)の処で説明する。
【0054】
ステージ駆動装置12は、XYZステージ9をX方向に駆動するX方向駆動機構と、Y方向に駆動するY方向駆動機構と、Z方向(電子ビームの進行方向)に駆動するZ方向駆動機構と、θ方向に駆動するθ方向駆動機構と、を含み構成される。これにより、XYZステージ9を3次元的に動作させたり、アライメントを行うことができる。
【0055】
制御回路20は、電子銃2に電源を供給するための電子銃電源部21と、この電子銃電源部21での電流、電圧などを調整制御する電子銃制御部22と、電子レンズ4(複数の各電子的なレンズを各々)を動作させるためのレンズ電源部23と、このレンズ電源部23での各電子レンズに対応する各電流を調整制御するレンズ制御部24と、を含み構成される。
【0056】
さらに、制御回路20は、補正用コイル7を制御するためのコイル制御部25と、偏向器6にて成形方向の偏向を行うと共に、主走査方向及び副走査方向の偏向を行うための偏向部26と、偏向部26を制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御するD/A変換器27と、を含み構成される。
【0057】
さらに、制御回路20は、偏向器6における位置誤差を補正する、即ち、位置誤差補正信号などをD/A変換器27に対して供給して位置誤差補正を促す、或いは、コイル制御部25に対して当該信号を供給することで、補正用コイル7にて位置誤差補正を行う位置誤差補正回路28と、これら位置誤差補正回路28並びにD/A変換器27を制御して電子ビームの電界を制御する電界制御手段である電界制御回路29と、描画パターンなどを基材100に対応して生成するためのパターン発生回路30と、を含み構成される。
【0058】
さらに、制御回路20は、レーザー測長器11aを上下左右に移動させることによるレーザー照射位置の移動及びレーザー照射角の角度等の駆動制御を行うレーザー駆動制御回路31と、レーザー測長器11aでのレーザー照射光の出力(レーザーの光強度)を調整制御するためのレーザー出力制御回路32と、受光部11bでの受光結果に基づき、測定結果を算出するための測定算出部33と、を含み構成される。
【0059】
さらに、制御回路20は、ステージ駆動装置12を制御するためのステージ制御回路34と、ローダ駆動装置13を制御するローダ制御回路35と、上述のレーザー駆動回路31、レーザー出力制御回路32、測定算出部33、ステージ制御回路34、ローダ制御回路35を制御する機構制御回路36と、真空排気装置15の真空排気を制御する真空排気制御回路37と、上述した形状測定装置や膜厚測定装置からの測定情報を入力するための測定情報入力部38と、入力された測定情報やその他の情報を記憶するための記憶手段であるメモリ39と、各種制御を行うための制御プログラムを記憶したプログラムメモリ40と、これらの各部の制御を司る例えばCPUなどにより構成された制御部41と、を含み構成される。
【0060】
(描画処理)
このような構成を有する電子ビーム描画装置1において、ローダ10によって搬送された基材100がXYZステージ9上に載置されると、真空排気装置15によって鏡筒8及び筐体14内の空気やダストなどを排気した後、電子銃2から電子ビームが照射される。
【0061】
電子銃2から照射された電子ビームは、電子レンズ4を介して偏向器6により偏向され、偏向された電子ビームB(以下、この電子レンズ4を通過後の偏向制御された電子ビームに関してのみ「電子ビームB」と符号を付与することがある)は、XYZステージ9上の基材100の表面、例えば曲面部100上の描画位置に対して照射されることで描画が行われる。
【0062】
この際に、測定装置11によって、基材100上の描画位置(描画位置のうち少なくとも高さ位置)、若しくは、後述するような基準点の位置が測定され、制御回路20は、当該測定結果に基づき、電子レンズ4のコイル4a、4b、4cなどに流れる各電流値などを調整制御して、電子ビームBの焦点位置を制御し、当該焦点位置が前記描画位置となるように移動制御される。
【0063】
尚、図10に示すように、電子ビームは、深い焦点深度FZを有しているが、電子レンズ4の幅Dに対して絞り込まれた電子ビームBは、ほぼ一定の太さのビームウエストBWを形成し、このビームウエストBWの範囲の電子ビーム進行方向における長さが、ここでいう焦点深度FZに相当する。焦点位置は、このビームウエストBWの電子ビーム進行方向における位置であり、ここではビームウエストBWの電子ビーム進行方向における中央位置とする。
【0064】
或いは、測定結果に基づき、制御回路20は、ステージ駆動装置12を制御することにより、電子ビームBの焦点位置が描画位置となるようにXYZステージ9を移動させる。
【0065】
基材100と電子ビームBの焦点位置の相対的な移動制御は、電子ビームBの焦点位置の制御、XYZステージ9の制御の何れか一方の制御によって行っても、双方を利用して行ってもよいが、電子ビームBの制御において電子レンズ4の調整を行う場合は、電子ビームBの偏向の変化による誤差を補正する必要があるため、XYZステージ9の移動制御により行うことが好ましい。
【0066】
(測定装置の構成)
ここで、測定装置11の概略構成について、図11を参照しながら説明する。図11に示すように、測定装置11は、より詳細には、レーザー測長器11aを構成する第1のレーザー測長器11aa及び第2のレーザー測長器11abと、受光部11bを構成する第1の受光部11ba及び第2の受光部11bbなどを有している。
【0067】
このような構成において、第1のレーザー測長器11aaにより電子ビームと交差する方向から基材100に対して第1の光ビームS1を照射し、基材100の平坦部100bで反射される第1の光ビームS1の受光によって、第1の光強度分布が検出される。
【0068】
この際に、第1の光ビームS1は、基材100の平坦部100bにて反射されるため、第1の強度分布に基づき、基材100の平坦部100b上の(高さ)位置が測定算出されることになる。尚、ここで高さ位置とは、Z方向、即ち電子ビームBの進行方向における位置を示す。
【0069】
さらに第2のレーザー測長器11abによって、第1の光ビームS1と異なる電子ビームとほぼ直交する方向から基材100に対して第2の光ビームS2を照射し、基材100を透過する第2の光ビームS2が第2の受光部11bbに含まれるピンホール11cを介して受光されることによって、第2の光強度分布が検出される。
【0070】
この場合、図12(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2は、基材100の曲面部100a上を透過することとなるので、第2の強度分布に基づき、基材100の平坦部100bより突出する曲面部100a上の(高さ)位置が測定算出されることになる。
【0071】
より詳細には、図12(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2がXY基準座標系における曲面部100a上のある位置(x、y)の特定の高さを透過すると、この位置(x、y)において、第2の光ビームS2が曲面部100aの曲面にて当たることにより散乱光SS1、SS2が生じ、この散乱光分の光強度が弱まることとなる。このようにして、第2の受光部11bbにて検出された第2の光強度分布に基づき、曲面部100a上の(高さ)位置が測定算出される。
【0072】
この算出の際には、第2の受光部11bbの信号出力は、図13に示す特性図のような、信号出力Opと基材100の高さとの相関関係を有するので、制御回路20のメモリ39などにこの特性、即ち、相関関係を示した相関テーブルを予め格納しておくことにより、第2の受光部11bbでの信号出力Opに基づき、基材の高さ位置を算出することができる。
【0073】
そして、この基材100の高さ位置を、例えば描画位置として、電子ビームの焦点位置の調整が行われ描画が行われることとなる。
【0074】
(描画位置算出の原理)
次に、当該電子ビーム描画装置1における描画位置算出の原理について説明する。
【0075】
基材100は、図14(A)、(B)に示すように、平坦部100bと、この平坦部100bより突出形成された曲面を成す曲面部100aと、を含み構成される。この曲面部100aの曲面は、球面に限らず、非球面などの他のあらゆる高さ方向に変化を有する自由曲面であって良いが、当該曲面部100aと平坦部100bとは、滑らかな曲面部分により繋がれている。
【0076】
上述したように、基材100においては、XYZステージ9上に載置される前に、形状測定器200により第2のマーク111b、例えば3個の基準点P00、P01、P02の位置を測定しておく。これにより、例えば、基準点P00とP01によりX軸、基準点P00とP02によりY軸が定義され、3次元座標系における第1の基準座標系が算出される。ここで、第1の基準座標系における高さ位置をHo(x、y)(第1の高さ位置)とする。これにより、基材2の高さ位置分布、及び、その設計値からの誤差分布の算出を行うことができる。
【0077】
一方、基材100をXYZステージ9上に載置した後にも、同様の測定を行う。即ち、図14(A)に示すように、基材100上の第2のマーク111b、例えば3個の基準点P10、P11、P12を決定して、測定装置11を用いて、この位置を測定しておく。これによって、例えば、基準点P10とP11によりX軸、基準点P10とP12によりY軸が定義され、3次元座標系における第2の基準座標系が算出される。
【0078】
さらに、これら基準点P00、P01、P02と、P10、P11、P12により、第1の基準座標系を第2の基準座標系に変換するための座標変換行列を算出して、この座標変換行列を利用して、第2の基準座標系における前記Ho(x、y)に対応する高さ位置Hp(x、y)(第2の高さ位置)を算出して、この位置を最適フォーカス位置、即ち、描画位置として電子ビームの焦点位置が制御される。
【0079】
具体的には、図14(C)に示すように、電子ビームの焦点深度FZ(ビームウエストBW=ビーム径の最も細い所)の焦点位置を、3次元基準座標系における単位空間の1フィールド(m=1)内の描画位置に調整制御する。
【0080】
そして、図14(C)に示すように、例えば1フィールド内をY方向にシフトしつつ順次X方向に走査することにより、1フィールド内の描画が行われることとなる。さらに、1フィールド内において、描画されていない領域があれば、当該領域についても、上述の焦点位置の制御を行いつつZ方向に移動し、同様の走査による描画処理を行うこととなる。
【0081】
次に、1フィールド内の描画が行われた後、他のフィールド、例えばm=2のフィールド、m=3のフィールドにおいても、上述同様に、測定や描画位置の算出を行いつつ描画処理がリアルタイムで行われることとなる。このようにして、描画されるべき描画領域について全ての描画が終了すると、基材2の表面における描画処理が終了することとなる。
【0082】
尚、上述したように、以上に説明した各種演算処理、測定処理及び制御処理などを行う処理プログラムは、予め、プログラムメモリ40に制御プログラムとして格納されており、制御部41は、この制御プログラムに従って、各部の制御を行うこととする。
【0083】
<現像工程>
図2に戻って、さらに、不図示の現像装置によって、部材Eの現像処理を行って、輪帯形状のレジストを得る(ステップS33)。尚、同一点における電子ビームの照射時間を長くすれば、それだけレジストの除去量は増大するため、上述した描画工程においては、電子ビームの照射位置と照射時間(ドーズ量)を調整することで、母光学面110a上のレジストLの膜に所定の描画パターン、例えば回折輪帯の形状となるようにレジストを残すことができる。
【0084】
<エッチング工程>
さらに、詳細は後述するエッチング装置によって、部材Eのエッチング処理を行って、母型の素材110の母光学面110aの表面を彫り込んで、例えばブレーズ状の輪帯110b(実際より誇張されて描かれている)を形成する(図3(e)参照)(ステップS34)。以上の工程により、部材Eは母型として完成される。
【0085】
(エッチング装置の構成)
ここで、上述した部材Eのエッチング処理を行う際に用いられるエッチング装置、具体的には、プラズマエッチング装置の概略構成について、図15を参照しながら説明する。但し、以下においては、高密度プラズマを発生できる誘導結合プラズマ処理装置を例に挙げる。尚、以下においては、母型の素材110の母光学面110a上にレジストLの膜が形成された部材Eは、基材100に対応するものとする。
【0086】
図15に示すように、プラズマエッチング装置410は、導電性材料、例えばアルミニウム製の筐体から分解可能に組立てられた気密な容器420を有している。この容器420は、接地線421によって接地され、壁面から汚染物が発生しないように、内壁面は陽極酸化によってアルマイト処理されている。尚、この容器420内は、上側に位置するアンテナ室424と処理室426とに気密に区画されることが好ましい。区画に際し仕切られる仕切り構造は、石英等から成るセグメントを組み合わせて成る誘電体壁432を含む支持部434により形成される。また、この支持部434の下面は、水平面上で実質的に整一した状態に形成される。この支持部434の下面は、平滑な下面を有する石英等から成る誘電体カバーにより被覆されることが好ましく、一方、誘電体壁432の上側には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等から成る樹脂板が配設されることが好ましい。
【0087】
また、アンテナ室424にはヒータ461が配設され、このヒータ461は、電源462に接続されている。このヒータ461によって支持部434を介して誘電体壁432を含む仕切り構造が加熱され、これにより、処理室426に露出する仕切り構造の下面に副生成物が付着するのが防止される。
【0088】
支持部434は、導電性材料、望ましくは金属、例えばアルミニウム製の筐体からされた中空の部材からなり、シャワーヘッドを構成するためのシャワー筐体として兼用される。支持部434を構成する筐体の内外表面は、壁面から汚染物が発生しないように、陽極酸化によりアルマイト処理されている。支持部兼シャワー筐体434には、ガス流路が内部に形成されると共に、ガス流路に連通し、且つ、後述する載置台470、より詳細には、サセプタ471に対して開口する複数のガス供給孔が下面に形成されている。
【0089】
支持部434の中央に接続された管状の管部435内には、支持部434内のガス流路に連通するガス供給管451が配設される。ガス供給管451は、容器420の天井を貫通し、容器420外に配設された処理ガス供給源450に接続される。即ち、プラズマ処理中、処理ガスが、処理ガス供給源450からガス供給管451を介して、支持部兼シャワー筐体434内に供給され、その下面のガス供給孔から処理室426内に放出される。
【0090】
アンテナ室424内には、誘電体壁432に面するように、仕切り構造上に配設された高周波(RF)のアンテナ431が配設される。
【0091】
アンテナ431は、仕切り構造上の部分が、例えば渦巻き状を成す平面型のコイルアンテナから成る。アンテナ431は、一端部が容器420の天井の略中央から導出され、整合器441を介して高周波電源442に接続される。一方、他端部は容器420に接続され、これにより接地される。
【0092】
プラズマ処理中、高周波電源442からは、誘導電界形成用の高周波電力がアンテナ431へ供給される。アンテナ431により、処理室426内に誘導電界が形成され、この誘導電界により、支持部兼シャワー筐体434から供給された処理ガスがプラズマに転化される。このため、高周波電源442は、プラズマを発生させるのに十分な出力で高周波電力を供給できるように設定される。
【0093】
誘電体壁432を挟んで高周波のアンテナ431と対向するように、処理室426内には基材100を載置するための載置台であるサセプタ471が配設される。サセプタ471は、導電性材料、例えばアルミニウム製の部材から成り、その表面は、汚染物が発生しないように、陽極酸化によりアルマイト処理されている。サセプタ471の周囲には、基材100を固定するための保持部材473が配設される。
【0094】
サセプタ471は、絶縁体枠472内に収納され、さらに、中空の支柱上に支持される。支柱は、容器420の底部を気密に貫通し、容器420外に配設された駆動部474に支持される。即ち、サセプタ471は、基材100のロード/アンロード時に、この駆動部474により、例えば上下方向に駆動される。
【0095】
サセプタ471は、中空の支柱内に配置された給電棒により、整合器481を介して高周波電源482に接続される。プラズマ処理中、高周波電源482からは、バイアス用の高周波電力がサセプタ471に印加される。このバイアス用の高周波電力は、処理室426内で励起されたプラズマ中のイオンを効果的に基材100に引込むために使用される。
【0096】
さらに、サセプタ471内には、基材100の温度を制御するため、ヒータ等の加熱手段や冷媒流路等から成る温度調整部475や温度センサが配設され、温度調整部475を制御する温度制御部476に接続される。これらの機構や部材に対する配管や配線は、いずれも中空の支柱を通して容器420外に導出される。
【0097】
処理室426の底部には、排気管477を介して、真空ポンプなどを含む真空排気機構が接続される。真空排気機構により、処理室426内が排気されると共に、プラズマ処理中、処理室426内が真空雰囲気、所定の圧力雰囲気に設定及び維持される。
【0098】
また、バイアス用電力を出力するバイアス用の高周波電源482には、バイアス用電力の供給を制御する制御部494が接続されている。
【0099】
一方、上述のバイアス用電力よりも周波数が相対的に高いプラズマ生成用電力を出力するプラズマ生成用の高周波電源442にも、制御部494が接続されており、この制御部494によってプラズマ生成用電力の供給が制御される。この制御部494には、さらに、種々の設定入力値等を表示するための表示部493、操作入力を行うための操作入力部492、各種テーブルや種々の制御プログラム、設定情報等を記憶した記憶部491が接続される。
【0100】
(エッチング処理)
このような構成において、エッチング処理を施す場合には、まず、ゲートバルブ422を通して搬送手段により基材100をサセプタ471の載置面にロードした後、保持部材473により基材100をサセプタ471に固定する。
【0101】
次に、処理室426内に処理ガス供給源450からエッチングガス(例えばSF6とO2による例えば混合比8:7の混合ガス)を含む処理ガスを吐出させると共に、排気管477を介して処理室426内を真空引きすることにより、処理室426内を所定の圧力雰囲気に維持する。
【0102】
次に、高周波電源442から所定の高周波電力をアンテナ431に印加することにより、仕切り壁構造を介して処理室426内に均一な誘導電界を形成する。係る誘導電界により、処理室426内で処理ガスがプラズマに転化され、高密度の誘導結合プラズマが生成される。
【0103】
このようにして生成されたプラズマ中のイオンは、高周波電源482からサセプタ471に対して印加される所定の高周波電力によって、基材100に効果的に引込まれ、基材100にパターン形状100cを形成するべくエッチング処理を施す。
【0104】
この際、制御部494の制御により、プラズマ生成用の高周波電源442から所定の第1の周波数の第1の電力の高周波電力を印加すると共に、バイアス用の高周波電源482から整合器481を介して、上記プラズマ生成用の第1の電力よりも相対的に低い第2の周波数である第2の電力の高周波電力を印加する。
【0105】
ここで、バイアス用電力の制御は、サセプタ471に載置される基材100の各部に対応して、バイアス用電力を印加する際の電圧値を調整することで行われることが好ましい。これにより、例えば、基材100の各部におけるエッチング選択比(基材のエッチング速度/レジスト層のエッチング速度)を調整して、基材100の各部におけるエッチング量を制御することができる。
【0106】
(エッチング形状の形成原理)
ここで、本発明の特徴部分であるエッチング形状の形成原理について、図16乃至図21を参照しながら説明する。
【0107】
上述したように、母型の素材110の母光学面110aは、光学機能面となる曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを断面二次曲線にて滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acと、を有して形成されており、これにより、上述した<エッチング工程>においては、曲面部110aaと周囲面部110abとの境界領域において、オーバーエッチングやサイドエッチングが生じることが抑えられて、エッチング処理後には所定の形状を得ることができる旨を記載した。以下、その根拠について説明する。
【0108】
例えば、図16(A)に示すように、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面が形成されている場合には、その頂点領域においては誘導電界が集中して、プラズマエッチングなどを施した場合には、頂点部分は他の部分より多くエッチング(オーバーエッチング)されて、深い溝形状に加工されることとなる。これに伴い、この頂点部分においては、破損が生じ易くなる問題が生じる。一方、図16(B)に示すように、基材の表面に上述した不連続面を滑らかに繋いだ連続面が形成されている場合には、その頂点領域においては、誘電電界は一様となり、プラズマエッチングなどを施した場合には、均一にエッチングされて、所定の形状に加工されることとなる。
【0109】
即ち、本実施形態のように、母型の素材110の母光学面110aを、光学機能面となる曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを断面二次曲線にて滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acとで形成することで、これらは1つの連続面を構成することになるため、これらの表面においては、誘電電界は一様となり、プラズマエッチングなどを施すと、均一にエッチングされて、所定の形状に加工することができる。
【0110】
ここで、種々の実施例を挙げて、エッチング形状の形成原理の詳細について説明する。尚、以下に説明するイオンが基材の表面に帯電した負の電位により受ける力は、イオンが上述した誘電電界の電位により受ける力に対応する。
【0111】
“実施例1:不連続面の起伏が両側にある場合”
例えば、図17(A)に示すように、基材の表面が平坦である場合には、誘電電界は一様となり、即ち、シース(上述したプラズマエッチング装置410の容器420に相当する)内部に存在するイオンは、基材の表面に帯電した負の電位により力F1を受けて、基材100の表面に対して垂直方向に加速されて、基材の表面に入射する。これにより、基材の表面は均一にエッチングされる。一方、図17(B)に示すように、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面の起伏が両側に形成されている場合には、その頂点領域においては誘導電界が集中して、即ち、イオンは、両側に起伏した不連続面に帯電した負の電位により力F2(=F1)、F3(=F1)を受けて、その合力F4(>F1)により、より大きく加速され、基材の表面に入射する。即ち、頂点部分においては、他の部分よりも多くエッチング(オーバーエッチング)されて、図に示す点線のように、深い溝状に加工されることになる。ところで、図17(C)に示すように、基材の表面に鋭角に繋がる不連続面の起伏が両側に形成されている場合には、イオンが受ける力は、両側に起伏した不連続面に対して分散されることとなり、イオンは、両側の不連続面に帯電した負の電位により力F2(=F1)、F3(=F1)を受けて、その合力F5(<F1)により、より小さく加速され、基材の表面に入射する。即ち、頂点部分においては、他の部分よりも少なくエッチングされて、図に示す点線のように、浅い溝状に加工されることになる。
【0112】
ここで、図18に、上述のように不連続面の起伏が両側に形成される場合におけるイオンの入射エネルギー量の計算モデルを示す。図18に示すグラフによれば、不連続面の繋ぎ角度が鈍角である範囲では、シース幅を1cmとした場合、例えば不連続面の起伏が1mmであると、平坦な基材をエッチングする場合と比して、最大27μm程度の加工誤差が生じることが分かる(不連続面の繋ぎ角度が132度付近に対応する)。尚、此処に言う“シース幅”とは、バイアス高周波によって基材の近傍に発生するイオンリッチな領域の高さのことであり、基材はこのイオンリッチな領域内に置かれてエッチング処理される。ところで、上述したように光学レンズを作成する場合には、将来的な加工誤差は設計値の0.5%以下になることが望まれており、これを図18に示すグラフに当てはめると、シース幅を1cmとした場合、不連続面の起伏の高さが凡そシース幅の50分の1である200μm以上である場合に、最大0.5%程度の誤差が生じていることから、200μm以上の起伏の高さを有する不連続面が基材の表面に存在する場合には、その不連続面を滑らかに繋ぐ必要があることとなる。
【0113】
即ち、例えば、上述した母型の素材の母光学面が、従来の通りに、光学機能面となる曲面部と、この曲面部の周囲に亘る周囲面部とを有して形成されており、これらが鈍角にて不連続に繋がれていて、さらに、この周囲面部が水平面ではなく傾斜面であるような場合には、周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さが200μm以上であると、要求される加工精度を満たさなくなるので、予め、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部を形成しておく必要が生じる。
【0114】
因みに、曲面部の光学機能面部に形成される回折構造、例えばブレーズ形状等は、通常、数μmから数十μmといったオーダーであるため、その不連続面を滑らかに繋ぐ必要はない。
【0115】
尚、図18に示すグラフによれば、不連続面の繋ぎ角度が鈍角である範囲においては、イオンの垂直入射エネルギー量は増加する方向になるので、エッチング形状を制御するためには、イオンの垂直入射エネルギー量が増えることを考慮して、予め基材の表面を浅く形成しておくということが考えられる。これは、図17(B)に示したように、不連続面の繋ぎ角度が鈍角である場合には、両側の不連続面の負の電位からの影響を受けて、イオンの垂直入射エネルギー量が増加して、頂点部分においては、オーバーエッチングが生じて、図に示す点線のような深い溝状に加工されてしまうからである。一方、図18に示すグラフによれば、不連続面の繋ぎ角度が鋭角である範囲においては、イオンの垂直入射エネルギー量は減少する方向になるので、エッチング形状を制御するためには、イオンの垂直入射エネルギー量が減ることを考慮して、予め基材の表面を深く形成しておくことが考えられる。これは、図17(C)に示したように、不連続面の繋ぎ角度が鋭角である場合には、両側の不連続面の負の電位からの影響を受けて、イオンの垂直入射エネルギー量が減少して、頂点部分においては、イオンが到達せずに、図に示す点線のような浅い溝状に加工されてしまうからである。
【0116】
このように、母型の素材の母光学面が、光学機能面となる曲面部と、この曲面部の周囲に亘る周囲面部とを有して形成されており、これらが鈍角にて不連続に繋がれていて、さらに、この周囲面部が水平面ではなく傾斜面であるような場合には、周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さが200μm以上であると、要求される加工精度を満たさなくなるので、予め、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部を形成しておく必要が生じるが、以下、この周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さの上限について説明する。
【0117】
図19に、バイアス電源出力と電子温度との関係を表すグラフを示す。図19に示すグラフによれば、シース領域内における高さZが10mmの位置において、ラングミュアプローブを用いてプラズマ測定を行うと、そのときの電子温度は、バイアス電源出力が10Wを越えた時点で測定不可能になった。ここで、ラングミュアプローブは、シース内の領域においては、原理的に、その測定を行うことが不可能になることから、このときのシース幅は、凡そ10mmと推測することができる。同様に、シース領域内における高さZが15mmの位置において、ラングミュアプローブを用いてプラズマ測定を行うと、そのときの電子温度は、バイアス電源出力が70Wを越えた時点においても測定可能であった。このことから、このときのシース幅は、15mmを越えない範囲であると判断することができる。ところで、プラズマエッチング装置においては、バイアス電源出力の制御運転使用上限は、実際上50W程度であり、このバイアス電源出力の制御運転使用上限である50Wでのシース幅は、上述したバイアス電源出力が70Wであったときのシース幅を鑑みるに、15mm以下とすることができる。一方、上述した母型の素材においては、母光学面がこのシース幅の領域内に収まれば良いので、周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さは、この15mmを上限とすることができる。
【0118】
“実施例2:不連続面の起伏が片側のみにある場合”
また、例えば、図20に示すように、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面の起伏が片側のみに形成されている場合には、その頂点領域においては誘導電界が集中して、即ち、イオンは、水平な不連続面と、起伏した不連続面に帯電した負の電位により力F2(=F1)、F3(=F1)を受けて、その合力F6(>F1)により、より大きく加速され、基材の表面に入射する。但し、イオンは、起伏した不連続面に帯電した負の電位によって水平方向の力を受けるので、起伏した不連続面においては、サイドエッチングが生じることとなる。また、頂点部分においては、イオンの垂直入射エネルギー量が小さくなるためにエッチング量が減少することとなる。従って、結果として、図に示す点線のように歪んだ形状に加工されることとなる。
【0119】
ここで、図21及び図22に、上述のように不連続面の起伏が片側に形成される場合におけるイオンの入射エネルギー量の計算モデルを示す。図21及び図22に示すグラフによれば、起伏した不連続面の高さが50μm以上であると、上述した光学レンズを作成する場合に望まれる将来的な加工誤差である設計値の0.5%以下という条件を満たさなくなる可能性があることが分かる。従って、起伏した不連続面の高さが50μm以上である場合には、これらの不連続面を滑らかに繋ぐ必要があることとなる。
【0120】
即ち、例えば、上述した母型の素材の母光学面が、従来の通りに、光学機能面となる曲面部と、この曲面部の周囲に亘る周囲面部とを有して形成されており、これらが鈍角にて不連続に繋がれていて、さらに、この周囲面部が水平面であるような場合には、周囲面部から曲面部の頂部までの高さが50μm以上であると、要求される加工精度を満たさなくなるので、予め、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部を形成しておく必要が生じる。尚、本実施例は、まさに、これまで述べてきた母型の素材110の母光学面110a、即ち、光学機能面となる曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acとに対応するものであって、周囲面部110abから曲面部110aaの頂部までの高さが50μm以上である場合に適用されることで、その効果を得ることができるものである。因みに、上述したように、曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abとを滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acを形成することで、これらの表面においては、誘電電界は一様となるので、プラズマエッチングなどを施すと、均一にエッチングされて、所定の形状を得ることができる。
【0121】
因みに、上述したように、曲面部の光学機能面部に形成される回折構造、例えばブレーズ形状等は、通常、数μmから数十μmといったオーダーであるため、その不連続面を滑らかに繋ぐ必要はない。
【0122】
尚、図21及び図22に示すグラフによれば、起伏した不連続面を垂直(90度)にすることで、0.5%以上の加工誤差が生じることを低減させることが考えられる。また、例えば起伏した不連続面の高さが100μm程度の場合には、不連続面の繋ぎ角度を150度以上に設計することで、0.5%以上の加工誤差が生じることを低減させることが考えられる。同様に、起伏した不連続面の高さが200μm程度の場合には、凡そ165度以上、500μm程度の場合には、凡そ174度以上、1mm程度の場合には、凡そ171度以上に設計することで、0.5%以上の加工誤差が生じることを低減させることができる。但し、図21及び図22のグラフにおいては、化学的エッチング(等方性エッチング)による起伏した不連続面のエッチング量は考慮しておらず、これを考慮した場合には、エッチング量はさらに多くなると考えられるので、これらの条件を満たす場合であっても、繋ぎ角度は、できるだけ大きく設計することが好ましい。
【0123】
また、上述したように、プラズマエッチング装置においては、バイアス電源出力の制御運転使用上限は、実際上50W程度であり、このバイアス電源出力の制御運転使用上限である50Wでのシース幅は、15mm以下とすることができ、一方、上述した母型の素材においては、母光学面がこのシース幅の領域内に収まれば良いので、周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さは、この15mmを上限とすることができる。
【0124】
以上に説明した内容を根拠として、本実施形態においては、母型の素材110の母光学面110aを、光学機能面となる曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを断面二次曲線にて滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acと、を有して形成しているので、これらは1つの連続面を構成して、上述した<エッチング工程>においては、オーバーエッチングやサイドエッチングが生じることが抑えられて、一様な形状を得ることができる。即ち、エッチング処理後には、所定の形状が形成された所定の光学的性能を有する光学素子を成形するための金型の母型を得ることができる。
【0125】
[金型の製造方法]
続いて、金型の製造方法について、図2に示すフローチャートの流れに沿って、図3を参照しつつ説明する。
【0126】
<電鋳工程>
図2に戻って、さらに、スルファミン酸ニッケル浴中に、表面を活性処理した母型、即ち、部材Eを浸して、基材111と外部の電極114との間に電流を流すことで、電鋳120を成長させる(図3(f)参照)(ステップS35)。このとき、基材111の外周面111fに絶縁剤を塗布することで、絶縁剤が塗布された部分の電鋳形成を抑制できる。電鋳120は、その成長の過程で、母光学面110aに精度良く対応した光学面転写面120aと、輪帯110bに精度良く対応した輪帯転写面120bとを形成する。
【0127】
その後、不図示のコンピュータに構築されているデータベースを、処理中の部材Eに対応するヤトイ150のID番号NXに基づいて検索し、得られた(即ち、切削加工工程で使用された)ヤトイ150を、所定の取り付け条件で部材E(基材111)に取り付ける(ステップS36)。この所定の取り付け条件とは、第1の工程の取り付け条件であり、具体的には、合マークMXを合致させ基材111とヤトイ150との位相を合わせること、読み出した締め付け時作業環境温度(第1の工程時の作業環境温度)に対して±1.0度の作業環境温度とすること、読み出した締め付けトルク(切削加工工程時の締め付けトルク)で締め付けを行うこと、同じボルト152を用いて取り付けることをいう。
【0128】
さらに、不図示のコンピュータに構築されているデータベースに記憶された、処理中の部材Eの切削時作業環境温度にした上で、基材111の外周面111fを基準として、部材Eと電鋳120とヤトイ150とを一体で、SPDT加工機の回転軸と部材Eの光軸とを一致させるようにしてチャックに取り付け、電鋳120の外周面120cを切削加工する(図3(g)参照)(ステップS37)。
【0129】
加えて、図3(g)に示すように、電鋳120に、裏打ち部材との位置決め部としてのピン孔120d(中央)及びネジ孔120eを加工する。尚、ピン孔120dの代わりに円筒軸を形成しても良い。加工後に、部材Eと電鋳120とヤトイ150とを一体で、SPDT加工機から取り外す。
【0130】
さらに、電鋳120を、以下に述べるように裏打ち部材と一体化することで、可動コア130を形成する(ステップS38)。
【0131】
図23は、部材Eを取り付けた状態で示す可動コア130の断面図である。図23において、可動コア130は、先端(図における右側)に配置した電鋳120と、後端(図における左側)に配置した押圧部136と、その間に配置された摺動部材135とから構成される。摺動部材135及び押圧部136が裏打ち部材となる。
【0132】
電鋳120は、そのピン孔120dに、円筒状の摺動部材135の端面中央から突出したピン部135aを係合させることで、摺動部材135と所定の関係で位置決めされ、さらに、摺動部材135を軸線に平行に貫通する2つのボルト孔135bに挿通したボルト137を、ネジ孔120eに螺合させることで、電鋳120は摺動部材135に取り付けられる。
【0133】
摺動部材135は、ピン部135aの設けられた端面(図における右端)に対向する端面(図における左端)の中央に突出して形成されたネジ軸135cを、略円筒状の押圧部136の端部に形成されたネジ孔136aに螺合させることで、押圧部136に対して所定の位置関係で取り付けられる。図23において、摺動部材135の外周面135eは、電鋳120及び押圧部136のフランジ部136b以外の部分の外周面よりも大径となっている。裏打ち部材としての摺動部材135及び押圧部136を取り付けた後、SPDT加工機のチャックにヤトイ150を取り付けるようにする(ステップS39)。
【0134】
さらに、不図示のコンピュータに構築されているデータベースから、処理中の部材Eの切削時作業環境温度にした上で、基材111の外周面111fを基準として、摺動部材135と押圧部136の外周面を仕上げる(ステップS40)。このため、ヤトイ150を基材111より一旦取り外したにもかかわらず、母型110の同心円パターン(輪帯110b)中心と、金型摺動部外形中心との同軸度を1μm以内に収めることができる。さらに、押圧部136の端面を切削加工し、全長を規定値に収める(ステップS41)。
【0135】
その後、図23の矢印Xで示す位置でカットすることにより、摺動部材135及び押圧部136に取り付けられた電鋳120から、部材Eとヤトイ150を脱型する(ステップS42)。さらに、電鋳120と基材210を脱型後、可動コア130の先端の電鋳120を仕上げて、光学素子成形用金型を得る(ステップS43)。ここまでの工程により、所定の光学的性能を有する光学素子を成形することができる金型を製作することができる。
【0136】
[光学素子の成形]
図24は、このようにして形成された可動コア130を用いて光学素子を成形する状態を示す図である。図24において、光学面転写面141aを有する光学素子成形用金型141を保持する保持部142は、可動側キャビティ143に固定されている。可動側キャビティ143は、小開口143aと、それに同軸な大開口143bとを有している。可動側キャビティ143内に可動コア130を挿入したときに、摺動部材135の外周面135eが、小開口143aの内周面と摺動し、押圧部136のフランジ部136bの外周面136dが、大開口143bの内周面と摺動する。かかる2つの摺動部によって案内されることで、可動側キャビティ143に対して、大きく傾くことなく可動コア130は軸線方向に移動可能となる。
【0137】
光学素子成形用金型141、電鋳120の間に溶融した樹脂を射出し、可動コア130を矢印方向に加圧することで、光学素子OEが成形される。本実施の形態によれば、母型の素材110から精度良く転写形成された光学素子成形用金型としての電鋳120を用いることで、光学素子OEの光学面には、電鋳120の光学面転写面120aが転写形成され、且つ、輪帯転写面120bに対応した回折輪帯が光軸に同心的に精度よく形成されることとなる。ここまでの工程により、所定の光学的性能を有する光学素子を成形することができる。
【0138】
尚、以上のようにして光学素子成形用金型を加工する場合、電鋳120に、第2のマーク111bに対応する突起(不図示)が転写形成されているため、これを加工の基準として用いることで、その外周面等の精度の良い加工を行うこともできる。
【0139】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び基材によれば、エッチング処理されることで所定の回折構造が形成されて光学素子を成形するための金型の母型となる基材に対して、予め、オーバーエッチングやサイドエッチングを低減させる形状を付与しておくことで、エッチング処理後には、歪みのない所定の形状を得ることができる。即ち、所定の光学的性能を有する光学素子を成形するための金型の母型を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態における母型の製造方法を構成する工程を示すフローチャートである。
【図2】本実施形態における母型の製造方法及び金型の製造方法を構成する工程を示すフローチャートである。
【図3】図1及び図2に示す主要な工程において、処理される母型の素材と電極部材の組立体、即ち、部材Eを示す断面図である。
【図4】ヤトイを取り付けた部材Eの斜視図である。
【図5】図4に示す部材Eの母型の素材の母光学面の形状を示す断面図である。
【図6】SPDT加工機の概略構成を示す説明図である。
【図7】図4に示す部材Eの上面図である。
【図8】形状測定器の概略構成を示す説明図である。
【図9】電子ビーム描画装置の概略構成を示す説明図である。
【図10】電子ビームのビームウエストを説明するための説明図である。
【図11】測定装置の概略構成を説明するための説明図である。
【図12】測定装置の測定原理を説明するための説明図である。
【図13】信号出力と基材の高さとの関係を示す特性図である。
【図14】同図(A)(B)は、電子ビーム描画装置により描画される基材を示す説明図であり、同図(C)は、電子ビーム描画装置の描画原理を説明するための説明図である。
【図15】プラズマエッチング装置の概略構成を示す説明図である。
【図16】同図(A)は、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面が形成されている場合の誘導電界の様子を示す説明図であり、同図(B)は、基材の表面に不連続面を滑らかに繋いだ連続面が形成されている場合の誘導電界の様子を示す説明図である。
【図17】同図(A)は、基材の表面が平坦である場合にイオンが受ける力の様子を示す説明図であり、同図(B)は、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面の起伏が両側に形成されている場合にイオンが受ける力の様子を示す説明図であり、同図(C)は、基材の表面に鋭角に繋がる不連続面の起伏が両側に形成されている場合にイオンが受ける力の様子を示す説明図である。
【図18】基材の表面に不連続面の起伏が両側に形成される場合のイオンの入射エネルギー量の計算モデルを示す説明図である。
【図19】シース領域内の各高さ位置におけるバイアス電源出力と電子温度との関係を示す説明図である。
【図20】基材の表面に鈍角に繋がる不連続面の起伏が片側のみに形成されている場合にイオンが受ける力の様子を示す説明図である。
【図21】基材の表面に不連続面の起伏が片側のみに形成される場合の、イオンの水平である不連続面に対する入射エネルギー量の計算モデルを示す説明図である。
【図22】基材の表面に不連続面の起伏が片側のみに形成される場合の、イオンの起伏する不連続面に対する入射エネルギー量の計算モデルを示す説明図である。
【図23】可動コアの断面図である。
【図24】可動コアを用いて光学素子を成形する状態を示す図である。
【符号の説明】
110 母型の素材
110a 母光学面
110aa 曲面部
110ab 周囲面部
110ac 周囲曲面部
111 基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学素子を成形するための金型の母型を製造する技術に関するものであって、特に、エッチング処理されることで所定の構造が形成されて光学素子を成形するための金型の母型となる基材に対して、予め、オーバーエッチングやサイドエッチングを低減させる形状を付与しておくことで、エッチング処理後には、歪みのない所定の形状を得ることができるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、情報記録媒体としてCD、DVDなどが広く利用されており、これらの記録媒体から情報を読み取る読取装置などの精密機器には、多くの光学素子が使用されている。
【0003】
近年においては、これらの光学素子に要求されるスペックや性能が向上してきており、特に、DVDなどの記録媒体におけるピックアップレンズでは、記録密度の増加に対して、より微細で且つ精度の高い回折構造を形成することが要求されている。具体的には、光の波長より小さいレベル、例えばnmレベルでの加工が求められている。また、次世代対応のピックアップレンズにおいては、光の波長に対して1/200程度の加工精度を実現することが求められている。
【0004】
ところで、これらのピックアップレンズ、即ち、光学レンズは、低コスト化並びに小型化の観点から、ガラス製の製品よりも樹脂製の製品が広く利用されている。このような樹脂製の光学レンズは、一般に射出成形によって製造される。従って、その成形型には、予め、回折構造を付与するための面を形成しておく必要がある。
【0005】
これまで、このような面の形成加工は、切削バイトを用いた一般的な加工技術によって行われてきたが、近年において要求される微細な回折構造を形成しようとした場合には、加工精度が劣るとともに、バイトの強度や寿命の点で限界があり、サブミクロンオーダー、或いは、それ以下のレベルでの精密な加工を行うことは困難であるという問題が生じることとなった。
【0006】
そこで、最近においては、成形型の母型となる基材に対して、レジスト膜を形成して、そのレジスト膜にそのような微細な回折構造の原形となる形状を描画して、これを現像処理することで、その形状を得て、さらに、その形状をエッチング処理することで、所定の回折構造が形成された母型を得ることが試みられている(例えば、特許文献1参照)。さらに、このようにして得られた母型を用いて電鋳処理を行うことで、そのような微細な回折構造が転写形成された成形型を得て、この成形型によって光学レンズが成形される。
【0007】
【特許文献1】
特開2002‐333722号公報(段落〔0161〕‐〔0170〕、第13図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような成形型の母型となる基材には、通常、光学レンズの光学機能面となる曲面部と、この曲面部の周囲に亘る周囲面部とが形成されており、これらの境界部分は、所定の角度を持って不連続に繋げられている。即ち、当該境界部分は、光学レンズの光学機能面、即ち、所定の回折構造が形成される曲面部の光学機能面部からは外れた部分であるため、特別な考慮は図られず、単純に繋げられるに留まっている。
【0009】
しかしながら、このように曲面部と周囲面部との境界部分が不連続であると、当該基材をエッチングした場合には、この境界部分にオーバーエッチングやサイドエッチングが生じて、所定の回折構造が形成される曲面部の光学機能面部までもが歪みを生じて、その形状が乱されるという問題が生じる。具体的には、境界部分に位置する周囲面部において、エッチングが過度に進行してしまうオーバーエッチングが生じ、境界部分に位置する曲面部の傾斜面において、水平方向にエッチングが進行してしまうサイドエッチングが生じる。また、この境界部分においては、局所的にエッチング量が増加することから、破損が生じ易くなるという問題が生じる。
【0010】
また一方で、このように曲面部と周囲面部との境界部分が不連続であると、当該基材にレジストを塗布して、レジスト膜を形成する場合には、この境界部分において、レジストが溜まり易くなり、厚いレジスト膜が形成されることから、当該基材をエッチングした場合には、この境界部分において、その形状が大きく乱されるという問題が生じる。これは、レジスト膜のエッチング速度と基材のエッチング速度とが異なることに起因する。
【0011】
従って、このようなことから、当該基材に形成された回折構造を転写形成して製造された金型を用いて光学素子を成形した場合には、その形状の乱れから、所定の光学的性能を有する光学素子を得ることが出来なくなるという問題が生じる。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エッチング処理されることで所定の回折構造が形成されて光学素子を成形するための金型の母型となる基材に対して、予め、オーバーエッチングやサイドエッチングを低減させる形状を付与しておくことで、エッチング処理後には、歪みのない所定の形状を得ることができる母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び基材を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、所定の構造を有する光学素子を成形するための金型の母型を製造する母型の製造方法であって、前記母型となる基材に対して、少なくとも一面に、前記所定の構造が形成される曲面部と、前記曲面部の周囲に亘る周囲面部と、前記曲面部と前記周囲面部とを滑らかに繋ぐ周囲曲面部と、を成形する成形工程と、前記曲面部上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記形成されたレジスト膜に対して所定のパターン形状を描画する描画工程と、前記描画されたレジスト膜に現像処理を施すことで、前記所定のパターン形状を形成する現像工程と、前記所定のパターン形状が形成されたレジスト膜にエッチング処理を施すことで、前記曲面部上に前記所定の構造が形成された母型を得るエッチング工程を含むことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の母型の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項7記載の発明は、請求項6記載の母型を用いて、前記母型の形状が転写された金型を得る電鋳処理を行うことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために、請求項8記載の発明は、請求項7記載の金型の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために、請求項9記載の発明は、請求項8記載の金型によって成形されたことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために、請求項10記載の発明は、エッチング処理されることで所定の構造が形成されて、前記所定の構造を有する光学素子を成形するための金型の母型となる基材であって、少なくとも一面に、前記所定の構造が形成される曲面部と、前記曲面部の周囲に亘る周囲面部と、前記曲面部と前記周囲面部とを滑らかに繋ぐ周囲曲面部と、を設けたことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び基材の好適な実施の形態の一例について、母型の製造方法及び金型の製造方法の流れに沿って、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
[母型の製造方法]
まず、母型の製造方法について、図1及び図2に示すフローチャートの流れに沿って、図3を参照しつつ説明する。
【0021】
<切削加工工程>
図1に示すように、SiO2、ポリシリコン又はポリオレフィン等の樹脂材料からなる略半球型の形状を有する母型の素材110を、金属など導電性の素材からなる円盤状の基材111の中央開口111pに埋め込み、接着剤にて相対回転不能に固定して(図3(a)参照)、部材Eを得る(ステップS01)。尚、母型の素材110は、本発明の「基材」に対応する。次に、治具(以下、ヤトイと呼ぶ)150の中央孔151を介して貫通させ、基材111のネジ孔111gに螺合させたボルト152により、基材111に対してヤトイ150を取り付けると共に、基材111に合マークMXとID番号NXを付与する(ステップS02)。図4に示すように、このID番号NXは、取り付けたヤトイ150の個々に付された番号であり、それを特定するための情報として機能する。尚、本例では、基材111の外周面を接線方向に細い平面で切り取った溝111h内に、レーザー描画でID番号NXを刻設するようにしたが、印刷であっても良い。また、溝は、同一深さの全周溝であっても良い。また、基材111との位相を合わせるための合マークMXも、レーザー加工で刻設することができる。
【0022】
次に、不図示のコンピュータ内に構築されたプロセス管理データベース内に、この部材Eに対応づける形で、ヤトイのID番号NX、取付面(方向)、締め付けトルク、作業環境温度(雰囲気温度)等を記憶する(ステップS03)。その後、後述する超精密旋盤(SPDT加工機)のチャックに、ヤトイ150を介して部材Eを取り付ける(ステップS04)。さらに、部材Eを回転させなから、ダイヤモンド工具により、基材111の外周面111fを切削加工することで、超精密旋盤、例えば、SPDT(Single Point Diamond Turning)加工機の回転軸に対して、これを精度良く形成し、又、母型の素材110の上面を、図3(b)に示すように切削加工し、後述する母光学面110aを形成し、且つ、基材111の上面に周溝111a(第1のマーク)を切削加工する(ステップS05)。この際、温度コントロールを実施しながら、送り量及び切込量を制御して、曲面の表面祖さ50nm乃至20nmを得る。また、このとき、母光学面110aの光軸の位置は、その外形から確認することはできないが、同時に加工されることから母光学面110aと周溝111aとは、精度良く同軸に形成されることとなり、又、円筒面に形成された基材111の外周面111fも、光軸と精度良く同軸に形成される。ここで、周溝111aは、例えば、暗視野部(凹部に相当)と明視野部(凸部に相当)とからなる複数の溝から形成されてよく、暗視野部、明視野部を各々複数個有するとさらに好ましい(これは、ダイヤモンド工具の先端が凹凸を有するものであれば、容易に形成できる)。また、周溝111aの凹凸形状により、後述するごとく塗布されるレジスト飛散防止の堤防としても機能させることができる。
【0023】
[基材の形状]
ここで、本発明の特徴部分である基材、即ち、上述した母型の素材110の母光学面110aの形状について、図5を参照しながら説明する。
【0024】
上述したように、母型の素材110の上面には、SPDT加工機の切削加工により母光学面110aが形成されるが、当該母光学面110aは、図5に示すように、曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acと、を有して形成される。より詳細には、曲面部110aaは、所定の回折構造が形成される光学機能面部(レンズ有効径内の領域部分)と、この光学機能面部の周囲に亘る光学機能周囲面部(レンズ有効径外の領域部分)とから成り、この光学機能周囲面部と周囲面部110abとが、周囲曲面部110acによって滑らかに繋がれる。尚、此処に言う“滑らか”とは、その繋ぎ目において、角や溝が生じていないことを指し、上述した光学機能周囲面部と周囲面部110abとにおいては、周囲曲面部110acを介して、1つの連続的な面を形成しているということである。因みに、本実施形態においては、これを実現する手法として、周囲曲面部110acを、断面2次曲線を成す形状にて構成することとするが、周囲曲面部110acは、連続面を成す形状であれば良く、これに限定されるものではない。また、図5においては、周囲面部110abは水平面としているが、周囲面部110abは、傾斜面であっても良い。また、周囲面部110abの表面は平坦でなく、滑らかな起伏を有するものであっても良い。因みに、同図に示す点線の形状は、従来における曲面部と周囲面部との境界領域における形状を示している。
【0025】
これにより、後述するエッチング工程においては、この曲面部110aaと周囲面部110abとの境界領域において、オーバーエッチングやサイドエッチングが生じることを抑えることができる。尚、この詳細については、後述する(エッチング形状の形成原理)の処で説明する。
【0026】
(SPDT加工機の構成)
ここで、上述した部材Eの切削加工に用いるSPDT加工機の概略構成について、図6(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0027】
SPDT加工機300は、図6(a)に示すように、部材Eなどのワーク301を固定するための回転保持部材である固定部302と、ワーク301に対して加工を施すための切削バイトの刃先であるダイヤモンド工具303と、固定部302をZ軸方向に移動させるZ軸スライドテーブル304と、ダイヤモンド工具303を保持しつつX軸方向(或いは、加えてY軸方向)に移動させるX軸スライドテーブル305と、Z軸スライドテーブル304及びX軸スライドテーブル305を移動自在に保持する定盤306を含んで構成されている。尚、固定部302若しくはダイヤモンド工具303の何れか一方、又は、双方を回転駆動するための不図示の回転駆動手段が設けられ、後述する制御手段307に電気的に接続されている。
【0028】
また、図6(a)に示すように、Z軸スライドテーブル304の駆動を制御するZ方向駆動手段308と、X軸スライドテーブル305のX軸方向での駆動(或いは、加えてY軸方向での駆動)を制御するX方向駆動手段309及びY方向駆動手段310と、これらにより切削バイトの送り量を制御する送り量制御手段311と、切込量を制御する切込量制御手段312と、温度を制御する温度制御手段313と、各種制御条件や制御テーブル乃至は処理プログラムを記憶した記憶手段314と、これら各部の制御を司る制御手段307と、を含んで構成されている。
【0029】
ダイヤモンド工具303は、図6(b)に示すように、本体部分を構成するダイヤモンドチップ303aと、この先端部に構成された頂角αから成るすくい面303bと、側面部を構成する第1逃げ面303c、第2逃げ面303dから構成されている。このすくい面303bに含まれる刃先には、予め、乃至は、摩耗による複数の凹凸部303e(上述したダイヤモンド工具先端の凹凸部)が形成されている。
【0030】
(切削加工処理)
このような構成を有するSPDT加工機300によって、概略、以下のように切削加工が行われる。
【0031】
制御手段307は、記憶手段314に記憶された各種制御条件や制御テーブル乃至は処理プログラムに従って、Z方向駆動手段308、X方向駆動手段309及びY方向駆動手段310を制御することにより、Z軸スライドテーブル304及びX軸スライドテーブル305を移動させる。これにより、固定部302にセットされた部材Eであるワーク301に対して、ダイヤモンド工具303が相対移動して、ワーク301に対する切削加工が行われる。因みに、ダイヤモンド工具303は、刃先がRバイト(バイト先端が曲線部を有する)の構成を有していることから、刃先の当たるポイントが順次変化し、摩耗に対して強くなっている。
【0032】
尚、この際、温度制御手段313が温度コントロールを実施し、送り量制御手段311がダイヤモンド工具303の送り量を制御し、切込量制御手段312がダイヤモンド工具303による切込量を制御することで、部材Eの母型の素材110の上面が切削加工されて、母光学面110aが形成されることになる。
【0033】
図1に戻って、さらに、不図示のコンピュータに構築したプロセス管理データベースに、部材Eの切削加工時の作業環境温度を記憶し、且つ、部材EをSPDT加工機から取り外し(ステップS06)、ボルト152を緩めて部材Eからヤトイ150を取り外す(ステップS07)。そして、目視で虹色に見えるダイヤモンド工具による加工痕(ツールマーク)を研磨して、虹色が見えなくなるまで研磨する。さらに、部材Eを、不図示のFIB(Focused Ion Beam)加工機のステージ上にセットする(ステップS08)。次に、FIB加工機のステージ上の部材Eにおける周溝111aを読み取り、例えば、その内側エッジから母型の素材110の光軸の位置を決定し(ステップS09)、決定した光軸から等距離で3つ(4つ以上でも良い)の第2のマーク111bを、基材111上に描画する(図3(b)及び図7参照)(ステップS10)。ダイヤモンド工具により加工形成した周溝111aの幅は比較的広いため、これを用いて加工の基準とすることは、加工精度を低下させる恐れがあるが、FIB加工機は、幅が20nm程度の精度の高い線を形成できるため、例えば十字線を形成すると、20nm×20nmの微細なマークを形成することができ、それを加工の基準とすることで、より高精度な加工が可能となる。次に、部材EをFIB加工機のステージから取り外す(ステップS11)。
【0034】
<形状測定工程>
続いて、部材Eを後述する形状測定器(画像認識手段と記憶手段とを有する)にセットし(ステップS12)、形状測定器の画像認識手段を用いて、第2のマーク111bを検出する(ステップS13)。さらに、測定により得られた、若しくは、超精密旋盤に用いた母型の素材110の母光学面110aの3次元座標を、第2のマーク111bに基づく3次元座標に変換して、さらに、この第2のマーク111bに基づく3次元座標から、母型の素材110の母光学面110aの高さ位置に関する規定値、即ち、設計値からの誤差分布データを作成し、これらを記憶手段に記憶する(ステップS14)。このように、母光学面110aを新たな3次元座標で記憶し直すのは、後述する描画工程で電子ビーム描画を行う際に、母光学面110aの被描画面に対して電子ビームの焦点深度を合わせるために、電子銃と部材Eとの相対位置を調整する必要などがあるからである。尚、第2のマーク111bは、測定の際、測定データにかかる座標の基準点がどこなのかを作業者が視認するための位置認識のためのマークとして利用できる。その後、部材Eを形状測定器から取り外す(ステップS15)。
【0035】
(形状測定器の構成)
ここで、上述した母型の素材110の母光学面110aの形状を測定する際に用いられる形状測定器の概略構成について、図8を参照しながら説明する。
【0036】
図8に示すように、測定器200は、第1のレーザー測長器201、第2のレーザー測長器202、ピンホール205、ピンホール206、第1の受光部203及び第2の受光部204などを有し、さらに、これらの測定結果を算出するための不図示の測定算出部、測定結果を記憶する記憶部、各種制御系を備えた不図示の制御手段などを含み構成される。
【0037】
(形状測定処理)
このような構成において、第1のレーザー測長器201から部材Eに対して第1の光ビームS1を照射し、母型の素材110の平坦部110bで反射される第1の光ビームS1をピンホール205を介して第1の受光部203により受光して、第1の光強度分布を検出する。
【0038】
この際に、第1の光ビームS1は、母型の素材110の平坦部110bにて反射されるため、第1の強度分布に基づき、母型の素材110の平坦部110b上の(高さ)位置が測定算出されることになる。
【0039】
さらに第2のレーザー測長器202から第1の光ビームS1と異なる方向から部材Eに対して第2の光ビームS2を照射し、母型の素材110の母光学面110aを透過する第2の光ビームS2をピンホール206を介して第2の受光部204により受光して、第2の光強度分布を検出する。
【0040】
この場合、第2の光ビームS2は、母型の素材110の母光学面110a上を透過することとなるので、第2の強度分布に基づき、母型の素材110の平坦部より突出する母光学面110a上の(高さ)位置が測定算出されることになる。尚、この母型の素材110の母光学面110a上の(高さ)位置の測定算出の原理については、後述する電子ビーム描画装置の(測定器)の処で説明する。
【0041】
<レジスト膜形成工程>
図1に戻って、次に、第2のマーク111b上に保護テープ113を貼り付ける(図3(c)参照)(ステップS16)。この保護テープ113は、後加工で母型の素材110上に塗布されるレジストLが、第2のマーク111bに付着しないようにするためのものである。これは、レジストLが第2のマーク111bに付着すると、加工の基準として読み取りが不適切になるためである。尚、保護テープによる保護は、図3(c)で示され、1つの第2のマーク111bのみ保護する場合を示しているが、他の第2のマーク111bについても同様である。さらに、部材Eを不図示のスピンコータにセットし(ステップS17)、レジストLを母型の素材110上に流下させながら被レジスト塗布基材を回転するプレスピンを実施し(ステップS18)、その後、レジストLの流下を停止して被レジスト塗布基材を回転させる本スピンを実施し、レジストLの被膜を行う(図3(d)参照)(ステップS19)。プレスピンと本スピンとを分けることにより、複雑な曲面である母光学面110aに、均一な膜厚のレジストLを被膜させることが可能となる。ここで、レジストLは、加熱又は紫外線等によって硬化する高分子の樹脂材料が用いられており、電子ビームによって与えられたエネルギー量に応じて分子間の結合が切れ分解される特性を有している(分解された部分は後述する現像液によって除去される)。
【0042】
ところで、上述したように、母型の素材110の母光学面110aは、曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abとが周囲曲面部110acによって滑らかに繋がれているため(図5参照)、従来のように、曲面部110aaと周囲面部110abとの境界領域においてレジストが溜まることもなく、均一な厚さのレジスト膜を得ることができる。
【0043】
これにより、後述するエッチング工程においては、母型の素材110の母光学面110aは、一様にエッチングされて、歪みの無い所定の形状を得ることができる。尚、この詳細については、後述する(エッチング形状の形成原理)の処で説明する。
【0044】
図1に戻って、その後、部材Eをスピンコータから取り外し(ステップS20)、部材Eに対してベーキング(加熱)処理を施すことで、レジストLの被膜を安定させる(ステップS21)。この際の温度は、ほぼ170℃で、ほぼ20分間加熱する。さらに、保護テープ113を剥がす(ステップS22)。係る状態の部材Eが、図3(d)に示されている。
【0045】
<膜厚測定工程>
続いて、図2に示すように、部材Eを不図示の膜厚測定器(画像認識手段と記憶手段とを有する)にセットし(ステップS23)、膜厚測定器の画像認識手段を用いて、第2のマーク111bを検出する(ステップS24)。さらに、母型の素材110の母光学面110aに塗布されたレジストLの膜厚分布を、第2のマーク1011bに基づく膜厚分布に変換して、さらに、この第2のマーク111bに基づく膜厚分布から、規定値、即ち、得ようとする膜厚値からの誤差分布データを作成し、これらを記憶手段に記憶する(ステップS25)。このように、第2のマーク111bに基づくレジストLの膜厚の規定値からの誤差分布データを作成することで、これを、上述した形状測定器での母型の素材110の母光学面110aの高さ位置の設計値からの誤差分布データと対応付けることができる。その後、部材Eを膜厚測定器から取り外す(ステップS26)。
【0046】
<描画調整工程>
さらに、部材Eを、後述する電子ビーム描画装置の3次元ステージにセットし(ステップS27)、測定器(走査型電子顕微鏡(SEM):電子ビーム描画装置に付属していると好ましい)を介して部材Eの第2のマーク111bを検出し(ステップS28)、その検出結果と、入力部より入力される形状測定器200及び膜厚測定器からの測定情報、具体的には、部材Eの形状データ、即ち、母光学面110aの3次元座標と、母光学面110aに塗布されたレジストLの膜厚分布とから求められる母光学面110aの被描画面(レジストLの膜表面)の形状とから、母光学面110aの被描画面に描画する所定の描画パターンに関する形状データを作成する(ステップS29)。因みに、母光学面110aの被描画面の形状は、部材Eの第2のマーク111bの検出と共に、測定器により測定しても良い。
【0047】
さらに、所定の描画パターンを構成する、例えば回折輪帯を描画する際の電子ビームの照射量、即ち、ドーズ量を調整する。具体的には、入力部より入力される形状測定器200及び膜厚測定器からの測定情報、より詳細には、部材Eの形状データ、即ち、母光学面110aの3次元座標と、母光学面110aに塗布されたレジストLの膜厚分布とから母光学面110aの被描画面の形状を求め、さらに、各々の誤差分布データ(母光学面110aの高さ位置の設計値からの誤差分布データ、母光学面110aに塗布されたレジストLの膜厚の規定値からの誤差分布データ)に基づいて、所定の形状が得られるようにドーズ量を調整する(ステップS30)。
【0048】
<描画工程>
さらに、母光学面110aの被描画面に所定の描画パターンを描画するべく、被描画面に電子ビームの焦点が合うように3次元ステージを移動させて、電子ビーム(図3(d)参照)を所定のドーズ量(補正された後のドーズ量)になるよう照射して、母光学面110a上のレジストLの膜に所定の描画パターン、例えば回折輪帯を描画する(ステップS31)。
【0049】
(電子ビーム描画装置の構成)
ここで、上述した描画処理に用いられる電子ビーム描画装置の概略構成について、図9を参照しながら説明する。尚、以下においては、母型の素材110の母光学面110a上にレジストLの膜が形成された部材Eは、基材100に対応するものとする。
【0050】
図9に示すように、電子ビーム描画装置1は、大電流で高解像度の電子線プローブを形成して高速に描画対象の基材100上を走査するものであり、高解像度の電子線プローブを形成し、電子ビームを生成してターゲットに対してビーム照射を行う電子銃2と、この電子銃2からの電子ビームを通過させるスリット3と、スリット3を通過する電子ビームの基材100に対する焦点位置を制御するための電子レンズ4と、電子ビームが出射される経路上に配設されたアパーチャー5と、電子ビームを偏向させることでターゲットである基材100上の走査位置等を制御する偏向器6と、偏向を補正する補正用コイル7と、を含み構成される。これらの各部は、鏡筒8内に配設されて電子ビーム出射時には真空状態に維持される。
【0051】
さらに、電子ビーム描画装置1は、描画対象となる基材100を載置するための載置台であるXYZステージ9と、このXYZステージ9上の載置位置に基材100を搬送するための搬送手段であるローダ10と、XYZステージ9上の基材100の表面の基準点を測定するための測定手段である測定装置11と、XYZステージ9を駆動するための駆動手段であるステージ駆動装置12と、ローダを駆動するためのローダ駆動装置13と、鏡筒8内及びXYZステージ9を含む筐体14内を真空となるように排気を行う真空排気装置15と、これらの制御を司る制御手段である制御回路20と、を含み構成される。
【0052】
尚、電子レンズ4は、高さ方向に沿って複数箇所に離間して設置される各コイル4a、4b、4cの各々の電流値によって電子的なレンズが複数生成されることで各々制御され、電子ビームの焦点位置が制御される。
【0053】
測定装置11は、基材100に対してレーザーを照射することで基材100を測定するレーザー測長器11aと、レーザー測長器11aにて発光されたレーザー光が基材100を反射し当該反射光を受光する受光部11bと、を含み構成される。尚、この詳細については、後述する(測定装置の構成)の処で説明する。
【0054】
ステージ駆動装置12は、XYZステージ9をX方向に駆動するX方向駆動機構と、Y方向に駆動するY方向駆動機構と、Z方向(電子ビームの進行方向)に駆動するZ方向駆動機構と、θ方向に駆動するθ方向駆動機構と、を含み構成される。これにより、XYZステージ9を3次元的に動作させたり、アライメントを行うことができる。
【0055】
制御回路20は、電子銃2に電源を供給するための電子銃電源部21と、この電子銃電源部21での電流、電圧などを調整制御する電子銃制御部22と、電子レンズ4(複数の各電子的なレンズを各々)を動作させるためのレンズ電源部23と、このレンズ電源部23での各電子レンズに対応する各電流を調整制御するレンズ制御部24と、を含み構成される。
【0056】
さらに、制御回路20は、補正用コイル7を制御するためのコイル制御部25と、偏向器6にて成形方向の偏向を行うと共に、主走査方向及び副走査方向の偏向を行うための偏向部26と、偏向部26を制御するためにデジタル信号をアナログ信号に変換制御するD/A変換器27と、を含み構成される。
【0057】
さらに、制御回路20は、偏向器6における位置誤差を補正する、即ち、位置誤差補正信号などをD/A変換器27に対して供給して位置誤差補正を促す、或いは、コイル制御部25に対して当該信号を供給することで、補正用コイル7にて位置誤差補正を行う位置誤差補正回路28と、これら位置誤差補正回路28並びにD/A変換器27を制御して電子ビームの電界を制御する電界制御手段である電界制御回路29と、描画パターンなどを基材100に対応して生成するためのパターン発生回路30と、を含み構成される。
【0058】
さらに、制御回路20は、レーザー測長器11aを上下左右に移動させることによるレーザー照射位置の移動及びレーザー照射角の角度等の駆動制御を行うレーザー駆動制御回路31と、レーザー測長器11aでのレーザー照射光の出力(レーザーの光強度)を調整制御するためのレーザー出力制御回路32と、受光部11bでの受光結果に基づき、測定結果を算出するための測定算出部33と、を含み構成される。
【0059】
さらに、制御回路20は、ステージ駆動装置12を制御するためのステージ制御回路34と、ローダ駆動装置13を制御するローダ制御回路35と、上述のレーザー駆動回路31、レーザー出力制御回路32、測定算出部33、ステージ制御回路34、ローダ制御回路35を制御する機構制御回路36と、真空排気装置15の真空排気を制御する真空排気制御回路37と、上述した形状測定装置や膜厚測定装置からの測定情報を入力するための測定情報入力部38と、入力された測定情報やその他の情報を記憶するための記憶手段であるメモリ39と、各種制御を行うための制御プログラムを記憶したプログラムメモリ40と、これらの各部の制御を司る例えばCPUなどにより構成された制御部41と、を含み構成される。
【0060】
(描画処理)
このような構成を有する電子ビーム描画装置1において、ローダ10によって搬送された基材100がXYZステージ9上に載置されると、真空排気装置15によって鏡筒8及び筐体14内の空気やダストなどを排気した後、電子銃2から電子ビームが照射される。
【0061】
電子銃2から照射された電子ビームは、電子レンズ4を介して偏向器6により偏向され、偏向された電子ビームB(以下、この電子レンズ4を通過後の偏向制御された電子ビームに関してのみ「電子ビームB」と符号を付与することがある)は、XYZステージ9上の基材100の表面、例えば曲面部100上の描画位置に対して照射されることで描画が行われる。
【0062】
この際に、測定装置11によって、基材100上の描画位置(描画位置のうち少なくとも高さ位置)、若しくは、後述するような基準点の位置が測定され、制御回路20は、当該測定結果に基づき、電子レンズ4のコイル4a、4b、4cなどに流れる各電流値などを調整制御して、電子ビームBの焦点位置を制御し、当該焦点位置が前記描画位置となるように移動制御される。
【0063】
尚、図10に示すように、電子ビームは、深い焦点深度FZを有しているが、電子レンズ4の幅Dに対して絞り込まれた電子ビームBは、ほぼ一定の太さのビームウエストBWを形成し、このビームウエストBWの範囲の電子ビーム進行方向における長さが、ここでいう焦点深度FZに相当する。焦点位置は、このビームウエストBWの電子ビーム進行方向における位置であり、ここではビームウエストBWの電子ビーム進行方向における中央位置とする。
【0064】
或いは、測定結果に基づき、制御回路20は、ステージ駆動装置12を制御することにより、電子ビームBの焦点位置が描画位置となるようにXYZステージ9を移動させる。
【0065】
基材100と電子ビームBの焦点位置の相対的な移動制御は、電子ビームBの焦点位置の制御、XYZステージ9の制御の何れか一方の制御によって行っても、双方を利用して行ってもよいが、電子ビームBの制御において電子レンズ4の調整を行う場合は、電子ビームBの偏向の変化による誤差を補正する必要があるため、XYZステージ9の移動制御により行うことが好ましい。
【0066】
(測定装置の構成)
ここで、測定装置11の概略構成について、図11を参照しながら説明する。図11に示すように、測定装置11は、より詳細には、レーザー測長器11aを構成する第1のレーザー測長器11aa及び第2のレーザー測長器11abと、受光部11bを構成する第1の受光部11ba及び第2の受光部11bbなどを有している。
【0067】
このような構成において、第1のレーザー測長器11aaにより電子ビームと交差する方向から基材100に対して第1の光ビームS1を照射し、基材100の平坦部100bで反射される第1の光ビームS1の受光によって、第1の光強度分布が検出される。
【0068】
この際に、第1の光ビームS1は、基材100の平坦部100bにて反射されるため、第1の強度分布に基づき、基材100の平坦部100b上の(高さ)位置が測定算出されることになる。尚、ここで高さ位置とは、Z方向、即ち電子ビームBの進行方向における位置を示す。
【0069】
さらに第2のレーザー測長器11abによって、第1の光ビームS1と異なる電子ビームとほぼ直交する方向から基材100に対して第2の光ビームS2を照射し、基材100を透過する第2の光ビームS2が第2の受光部11bbに含まれるピンホール11cを介して受光されることによって、第2の光強度分布が検出される。
【0070】
この場合、図12(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2は、基材100の曲面部100a上を透過することとなるので、第2の強度分布に基づき、基材100の平坦部100bより突出する曲面部100a上の(高さ)位置が測定算出されることになる。
【0071】
より詳細には、図12(A)〜(C)に示すように、第2の光ビームS2がXY基準座標系における曲面部100a上のある位置(x、y)の特定の高さを透過すると、この位置(x、y)において、第2の光ビームS2が曲面部100aの曲面にて当たることにより散乱光SS1、SS2が生じ、この散乱光分の光強度が弱まることとなる。このようにして、第2の受光部11bbにて検出された第2の光強度分布に基づき、曲面部100a上の(高さ)位置が測定算出される。
【0072】
この算出の際には、第2の受光部11bbの信号出力は、図13に示す特性図のような、信号出力Opと基材100の高さとの相関関係を有するので、制御回路20のメモリ39などにこの特性、即ち、相関関係を示した相関テーブルを予め格納しておくことにより、第2の受光部11bbでの信号出力Opに基づき、基材の高さ位置を算出することができる。
【0073】
そして、この基材100の高さ位置を、例えば描画位置として、電子ビームの焦点位置の調整が行われ描画が行われることとなる。
【0074】
(描画位置算出の原理)
次に、当該電子ビーム描画装置1における描画位置算出の原理について説明する。
【0075】
基材100は、図14(A)、(B)に示すように、平坦部100bと、この平坦部100bより突出形成された曲面を成す曲面部100aと、を含み構成される。この曲面部100aの曲面は、球面に限らず、非球面などの他のあらゆる高さ方向に変化を有する自由曲面であって良いが、当該曲面部100aと平坦部100bとは、滑らかな曲面部分により繋がれている。
【0076】
上述したように、基材100においては、XYZステージ9上に載置される前に、形状測定器200により第2のマーク111b、例えば3個の基準点P00、P01、P02の位置を測定しておく。これにより、例えば、基準点P00とP01によりX軸、基準点P00とP02によりY軸が定義され、3次元座標系における第1の基準座標系が算出される。ここで、第1の基準座標系における高さ位置をHo(x、y)(第1の高さ位置)とする。これにより、基材2の高さ位置分布、及び、その設計値からの誤差分布の算出を行うことができる。
【0077】
一方、基材100をXYZステージ9上に載置した後にも、同様の測定を行う。即ち、図14(A)に示すように、基材100上の第2のマーク111b、例えば3個の基準点P10、P11、P12を決定して、測定装置11を用いて、この位置を測定しておく。これによって、例えば、基準点P10とP11によりX軸、基準点P10とP12によりY軸が定義され、3次元座標系における第2の基準座標系が算出される。
【0078】
さらに、これら基準点P00、P01、P02と、P10、P11、P12により、第1の基準座標系を第2の基準座標系に変換するための座標変換行列を算出して、この座標変換行列を利用して、第2の基準座標系における前記Ho(x、y)に対応する高さ位置Hp(x、y)(第2の高さ位置)を算出して、この位置を最適フォーカス位置、即ち、描画位置として電子ビームの焦点位置が制御される。
【0079】
具体的には、図14(C)に示すように、電子ビームの焦点深度FZ(ビームウエストBW=ビーム径の最も細い所)の焦点位置を、3次元基準座標系における単位空間の1フィールド(m=1)内の描画位置に調整制御する。
【0080】
そして、図14(C)に示すように、例えば1フィールド内をY方向にシフトしつつ順次X方向に走査することにより、1フィールド内の描画が行われることとなる。さらに、1フィールド内において、描画されていない領域があれば、当該領域についても、上述の焦点位置の制御を行いつつZ方向に移動し、同様の走査による描画処理を行うこととなる。
【0081】
次に、1フィールド内の描画が行われた後、他のフィールド、例えばm=2のフィールド、m=3のフィールドにおいても、上述同様に、測定や描画位置の算出を行いつつ描画処理がリアルタイムで行われることとなる。このようにして、描画されるべき描画領域について全ての描画が終了すると、基材2の表面における描画処理が終了することとなる。
【0082】
尚、上述したように、以上に説明した各種演算処理、測定処理及び制御処理などを行う処理プログラムは、予め、プログラムメモリ40に制御プログラムとして格納されており、制御部41は、この制御プログラムに従って、各部の制御を行うこととする。
【0083】
<現像工程>
図2に戻って、さらに、不図示の現像装置によって、部材Eの現像処理を行って、輪帯形状のレジストを得る(ステップS33)。尚、同一点における電子ビームの照射時間を長くすれば、それだけレジストの除去量は増大するため、上述した描画工程においては、電子ビームの照射位置と照射時間(ドーズ量)を調整することで、母光学面110a上のレジストLの膜に所定の描画パターン、例えば回折輪帯の形状となるようにレジストを残すことができる。
【0084】
<エッチング工程>
さらに、詳細は後述するエッチング装置によって、部材Eのエッチング処理を行って、母型の素材110の母光学面110aの表面を彫り込んで、例えばブレーズ状の輪帯110b(実際より誇張されて描かれている)を形成する(図3(e)参照)(ステップS34)。以上の工程により、部材Eは母型として完成される。
【0085】
(エッチング装置の構成)
ここで、上述した部材Eのエッチング処理を行う際に用いられるエッチング装置、具体的には、プラズマエッチング装置の概略構成について、図15を参照しながら説明する。但し、以下においては、高密度プラズマを発生できる誘導結合プラズマ処理装置を例に挙げる。尚、以下においては、母型の素材110の母光学面110a上にレジストLの膜が形成された部材Eは、基材100に対応するものとする。
【0086】
図15に示すように、プラズマエッチング装置410は、導電性材料、例えばアルミニウム製の筐体から分解可能に組立てられた気密な容器420を有している。この容器420は、接地線421によって接地され、壁面から汚染物が発生しないように、内壁面は陽極酸化によってアルマイト処理されている。尚、この容器420内は、上側に位置するアンテナ室424と処理室426とに気密に区画されることが好ましい。区画に際し仕切られる仕切り構造は、石英等から成るセグメントを組み合わせて成る誘電体壁432を含む支持部434により形成される。また、この支持部434の下面は、水平面上で実質的に整一した状態に形成される。この支持部434の下面は、平滑な下面を有する石英等から成る誘電体カバーにより被覆されることが好ましく、一方、誘電体壁432の上側には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等から成る樹脂板が配設されることが好ましい。
【0087】
また、アンテナ室424にはヒータ461が配設され、このヒータ461は、電源462に接続されている。このヒータ461によって支持部434を介して誘電体壁432を含む仕切り構造が加熱され、これにより、処理室426に露出する仕切り構造の下面に副生成物が付着するのが防止される。
【0088】
支持部434は、導電性材料、望ましくは金属、例えばアルミニウム製の筐体からされた中空の部材からなり、シャワーヘッドを構成するためのシャワー筐体として兼用される。支持部434を構成する筐体の内外表面は、壁面から汚染物が発生しないように、陽極酸化によりアルマイト処理されている。支持部兼シャワー筐体434には、ガス流路が内部に形成されると共に、ガス流路に連通し、且つ、後述する載置台470、より詳細には、サセプタ471に対して開口する複数のガス供給孔が下面に形成されている。
【0089】
支持部434の中央に接続された管状の管部435内には、支持部434内のガス流路に連通するガス供給管451が配設される。ガス供給管451は、容器420の天井を貫通し、容器420外に配設された処理ガス供給源450に接続される。即ち、プラズマ処理中、処理ガスが、処理ガス供給源450からガス供給管451を介して、支持部兼シャワー筐体434内に供給され、その下面のガス供給孔から処理室426内に放出される。
【0090】
アンテナ室424内には、誘電体壁432に面するように、仕切り構造上に配設された高周波(RF)のアンテナ431が配設される。
【0091】
アンテナ431は、仕切り構造上の部分が、例えば渦巻き状を成す平面型のコイルアンテナから成る。アンテナ431は、一端部が容器420の天井の略中央から導出され、整合器441を介して高周波電源442に接続される。一方、他端部は容器420に接続され、これにより接地される。
【0092】
プラズマ処理中、高周波電源442からは、誘導電界形成用の高周波電力がアンテナ431へ供給される。アンテナ431により、処理室426内に誘導電界が形成され、この誘導電界により、支持部兼シャワー筐体434から供給された処理ガスがプラズマに転化される。このため、高周波電源442は、プラズマを発生させるのに十分な出力で高周波電力を供給できるように設定される。
【0093】
誘電体壁432を挟んで高周波のアンテナ431と対向するように、処理室426内には基材100を載置するための載置台であるサセプタ471が配設される。サセプタ471は、導電性材料、例えばアルミニウム製の部材から成り、その表面は、汚染物が発生しないように、陽極酸化によりアルマイト処理されている。サセプタ471の周囲には、基材100を固定するための保持部材473が配設される。
【0094】
サセプタ471は、絶縁体枠472内に収納され、さらに、中空の支柱上に支持される。支柱は、容器420の底部を気密に貫通し、容器420外に配設された駆動部474に支持される。即ち、サセプタ471は、基材100のロード/アンロード時に、この駆動部474により、例えば上下方向に駆動される。
【0095】
サセプタ471は、中空の支柱内に配置された給電棒により、整合器481を介して高周波電源482に接続される。プラズマ処理中、高周波電源482からは、バイアス用の高周波電力がサセプタ471に印加される。このバイアス用の高周波電力は、処理室426内で励起されたプラズマ中のイオンを効果的に基材100に引込むために使用される。
【0096】
さらに、サセプタ471内には、基材100の温度を制御するため、ヒータ等の加熱手段や冷媒流路等から成る温度調整部475や温度センサが配設され、温度調整部475を制御する温度制御部476に接続される。これらの機構や部材に対する配管や配線は、いずれも中空の支柱を通して容器420外に導出される。
【0097】
処理室426の底部には、排気管477を介して、真空ポンプなどを含む真空排気機構が接続される。真空排気機構により、処理室426内が排気されると共に、プラズマ処理中、処理室426内が真空雰囲気、所定の圧力雰囲気に設定及び維持される。
【0098】
また、バイアス用電力を出力するバイアス用の高周波電源482には、バイアス用電力の供給を制御する制御部494が接続されている。
【0099】
一方、上述のバイアス用電力よりも周波数が相対的に高いプラズマ生成用電力を出力するプラズマ生成用の高周波電源442にも、制御部494が接続されており、この制御部494によってプラズマ生成用電力の供給が制御される。この制御部494には、さらに、種々の設定入力値等を表示するための表示部493、操作入力を行うための操作入力部492、各種テーブルや種々の制御プログラム、設定情報等を記憶した記憶部491が接続される。
【0100】
(エッチング処理)
このような構成において、エッチング処理を施す場合には、まず、ゲートバルブ422を通して搬送手段により基材100をサセプタ471の載置面にロードした後、保持部材473により基材100をサセプタ471に固定する。
【0101】
次に、処理室426内に処理ガス供給源450からエッチングガス(例えばSF6とO2による例えば混合比8:7の混合ガス)を含む処理ガスを吐出させると共に、排気管477を介して処理室426内を真空引きすることにより、処理室426内を所定の圧力雰囲気に維持する。
【0102】
次に、高周波電源442から所定の高周波電力をアンテナ431に印加することにより、仕切り壁構造を介して処理室426内に均一な誘導電界を形成する。係る誘導電界により、処理室426内で処理ガスがプラズマに転化され、高密度の誘導結合プラズマが生成される。
【0103】
このようにして生成されたプラズマ中のイオンは、高周波電源482からサセプタ471に対して印加される所定の高周波電力によって、基材100に効果的に引込まれ、基材100にパターン形状100cを形成するべくエッチング処理を施す。
【0104】
この際、制御部494の制御により、プラズマ生成用の高周波電源442から所定の第1の周波数の第1の電力の高周波電力を印加すると共に、バイアス用の高周波電源482から整合器481を介して、上記プラズマ生成用の第1の電力よりも相対的に低い第2の周波数である第2の電力の高周波電力を印加する。
【0105】
ここで、バイアス用電力の制御は、サセプタ471に載置される基材100の各部に対応して、バイアス用電力を印加する際の電圧値を調整することで行われることが好ましい。これにより、例えば、基材100の各部におけるエッチング選択比(基材のエッチング速度/レジスト層のエッチング速度)を調整して、基材100の各部におけるエッチング量を制御することができる。
【0106】
(エッチング形状の形成原理)
ここで、本発明の特徴部分であるエッチング形状の形成原理について、図16乃至図21を参照しながら説明する。
【0107】
上述したように、母型の素材110の母光学面110aは、光学機能面となる曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを断面二次曲線にて滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acと、を有して形成されており、これにより、上述した<エッチング工程>においては、曲面部110aaと周囲面部110abとの境界領域において、オーバーエッチングやサイドエッチングが生じることが抑えられて、エッチング処理後には所定の形状を得ることができる旨を記載した。以下、その根拠について説明する。
【0108】
例えば、図16(A)に示すように、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面が形成されている場合には、その頂点領域においては誘導電界が集中して、プラズマエッチングなどを施した場合には、頂点部分は他の部分より多くエッチング(オーバーエッチング)されて、深い溝形状に加工されることとなる。これに伴い、この頂点部分においては、破損が生じ易くなる問題が生じる。一方、図16(B)に示すように、基材の表面に上述した不連続面を滑らかに繋いだ連続面が形成されている場合には、その頂点領域においては、誘電電界は一様となり、プラズマエッチングなどを施した場合には、均一にエッチングされて、所定の形状に加工されることとなる。
【0109】
即ち、本実施形態のように、母型の素材110の母光学面110aを、光学機能面となる曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを断面二次曲線にて滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acとで形成することで、これらは1つの連続面を構成することになるため、これらの表面においては、誘電電界は一様となり、プラズマエッチングなどを施すと、均一にエッチングされて、所定の形状に加工することができる。
【0110】
ここで、種々の実施例を挙げて、エッチング形状の形成原理の詳細について説明する。尚、以下に説明するイオンが基材の表面に帯電した負の電位により受ける力は、イオンが上述した誘電電界の電位により受ける力に対応する。
【0111】
“実施例1:不連続面の起伏が両側にある場合”
例えば、図17(A)に示すように、基材の表面が平坦である場合には、誘電電界は一様となり、即ち、シース(上述したプラズマエッチング装置410の容器420に相当する)内部に存在するイオンは、基材の表面に帯電した負の電位により力F1を受けて、基材100の表面に対して垂直方向に加速されて、基材の表面に入射する。これにより、基材の表面は均一にエッチングされる。一方、図17(B)に示すように、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面の起伏が両側に形成されている場合には、その頂点領域においては誘導電界が集中して、即ち、イオンは、両側に起伏した不連続面に帯電した負の電位により力F2(=F1)、F3(=F1)を受けて、その合力F4(>F1)により、より大きく加速され、基材の表面に入射する。即ち、頂点部分においては、他の部分よりも多くエッチング(オーバーエッチング)されて、図に示す点線のように、深い溝状に加工されることになる。ところで、図17(C)に示すように、基材の表面に鋭角に繋がる不連続面の起伏が両側に形成されている場合には、イオンが受ける力は、両側に起伏した不連続面に対して分散されることとなり、イオンは、両側の不連続面に帯電した負の電位により力F2(=F1)、F3(=F1)を受けて、その合力F5(<F1)により、より小さく加速され、基材の表面に入射する。即ち、頂点部分においては、他の部分よりも少なくエッチングされて、図に示す点線のように、浅い溝状に加工されることになる。
【0112】
ここで、図18に、上述のように不連続面の起伏が両側に形成される場合におけるイオンの入射エネルギー量の計算モデルを示す。図18に示すグラフによれば、不連続面の繋ぎ角度が鈍角である範囲では、シース幅を1cmとした場合、例えば不連続面の起伏が1mmであると、平坦な基材をエッチングする場合と比して、最大27μm程度の加工誤差が生じることが分かる(不連続面の繋ぎ角度が132度付近に対応する)。尚、此処に言う“シース幅”とは、バイアス高周波によって基材の近傍に発生するイオンリッチな領域の高さのことであり、基材はこのイオンリッチな領域内に置かれてエッチング処理される。ところで、上述したように光学レンズを作成する場合には、将来的な加工誤差は設計値の0.5%以下になることが望まれており、これを図18に示すグラフに当てはめると、シース幅を1cmとした場合、不連続面の起伏の高さが凡そシース幅の50分の1である200μm以上である場合に、最大0.5%程度の誤差が生じていることから、200μm以上の起伏の高さを有する不連続面が基材の表面に存在する場合には、その不連続面を滑らかに繋ぐ必要があることとなる。
【0113】
即ち、例えば、上述した母型の素材の母光学面が、従来の通りに、光学機能面となる曲面部と、この曲面部の周囲に亘る周囲面部とを有して形成されており、これらが鈍角にて不連続に繋がれていて、さらに、この周囲面部が水平面ではなく傾斜面であるような場合には、周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さが200μm以上であると、要求される加工精度を満たさなくなるので、予め、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部を形成しておく必要が生じる。
【0114】
因みに、曲面部の光学機能面部に形成される回折構造、例えばブレーズ形状等は、通常、数μmから数十μmといったオーダーであるため、その不連続面を滑らかに繋ぐ必要はない。
【0115】
尚、図18に示すグラフによれば、不連続面の繋ぎ角度が鈍角である範囲においては、イオンの垂直入射エネルギー量は増加する方向になるので、エッチング形状を制御するためには、イオンの垂直入射エネルギー量が増えることを考慮して、予め基材の表面を浅く形成しておくということが考えられる。これは、図17(B)に示したように、不連続面の繋ぎ角度が鈍角である場合には、両側の不連続面の負の電位からの影響を受けて、イオンの垂直入射エネルギー量が増加して、頂点部分においては、オーバーエッチングが生じて、図に示す点線のような深い溝状に加工されてしまうからである。一方、図18に示すグラフによれば、不連続面の繋ぎ角度が鋭角である範囲においては、イオンの垂直入射エネルギー量は減少する方向になるので、エッチング形状を制御するためには、イオンの垂直入射エネルギー量が減ることを考慮して、予め基材の表面を深く形成しておくことが考えられる。これは、図17(C)に示したように、不連続面の繋ぎ角度が鋭角である場合には、両側の不連続面の負の電位からの影響を受けて、イオンの垂直入射エネルギー量が減少して、頂点部分においては、イオンが到達せずに、図に示す点線のような浅い溝状に加工されてしまうからである。
【0116】
このように、母型の素材の母光学面が、光学機能面となる曲面部と、この曲面部の周囲に亘る周囲面部とを有して形成されており、これらが鈍角にて不連続に繋がれていて、さらに、この周囲面部が水平面ではなく傾斜面であるような場合には、周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さが200μm以上であると、要求される加工精度を満たさなくなるので、予め、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部を形成しておく必要が生じるが、以下、この周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さの上限について説明する。
【0117】
図19に、バイアス電源出力と電子温度との関係を表すグラフを示す。図19に示すグラフによれば、シース領域内における高さZが10mmの位置において、ラングミュアプローブを用いてプラズマ測定を行うと、そのときの電子温度は、バイアス電源出力が10Wを越えた時点で測定不可能になった。ここで、ラングミュアプローブは、シース内の領域においては、原理的に、その測定を行うことが不可能になることから、このときのシース幅は、凡そ10mmと推測することができる。同様に、シース領域内における高さZが15mmの位置において、ラングミュアプローブを用いてプラズマ測定を行うと、そのときの電子温度は、バイアス電源出力が70Wを越えた時点においても測定可能であった。このことから、このときのシース幅は、15mmを越えない範囲であると判断することができる。ところで、プラズマエッチング装置においては、バイアス電源出力の制御運転使用上限は、実際上50W程度であり、このバイアス電源出力の制御運転使用上限である50Wでのシース幅は、上述したバイアス電源出力が70Wであったときのシース幅を鑑みるに、15mm以下とすることができる。一方、上述した母型の素材においては、母光学面がこのシース幅の領域内に収まれば良いので、周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さは、この15mmを上限とすることができる。
【0118】
“実施例2:不連続面の起伏が片側のみにある場合”
また、例えば、図20に示すように、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面の起伏が片側のみに形成されている場合には、その頂点領域においては誘導電界が集中して、即ち、イオンは、水平な不連続面と、起伏した不連続面に帯電した負の電位により力F2(=F1)、F3(=F1)を受けて、その合力F6(>F1)により、より大きく加速され、基材の表面に入射する。但し、イオンは、起伏した不連続面に帯電した負の電位によって水平方向の力を受けるので、起伏した不連続面においては、サイドエッチングが生じることとなる。また、頂点部分においては、イオンの垂直入射エネルギー量が小さくなるためにエッチング量が減少することとなる。従って、結果として、図に示す点線のように歪んだ形状に加工されることとなる。
【0119】
ここで、図21及び図22に、上述のように不連続面の起伏が片側に形成される場合におけるイオンの入射エネルギー量の計算モデルを示す。図21及び図22に示すグラフによれば、起伏した不連続面の高さが50μm以上であると、上述した光学レンズを作成する場合に望まれる将来的な加工誤差である設計値の0.5%以下という条件を満たさなくなる可能性があることが分かる。従って、起伏した不連続面の高さが50μm以上である場合には、これらの不連続面を滑らかに繋ぐ必要があることとなる。
【0120】
即ち、例えば、上述した母型の素材の母光学面が、従来の通りに、光学機能面となる曲面部と、この曲面部の周囲に亘る周囲面部とを有して形成されており、これらが鈍角にて不連続に繋がれていて、さらに、この周囲面部が水平面であるような場合には、周囲面部から曲面部の頂部までの高さが50μm以上であると、要求される加工精度を満たさなくなるので、予め、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部を形成しておく必要が生じる。尚、本実施例は、まさに、これまで述べてきた母型の素材110の母光学面110a、即ち、光学機能面となる曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acとに対応するものであって、周囲面部110abから曲面部110aaの頂部までの高さが50μm以上である場合に適用されることで、その効果を得ることができるものである。因みに、上述したように、曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abとを滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acを形成することで、これらの表面においては、誘電電界は一様となるので、プラズマエッチングなどを施すと、均一にエッチングされて、所定の形状を得ることができる。
【0121】
因みに、上述したように、曲面部の光学機能面部に形成される回折構造、例えばブレーズ形状等は、通常、数μmから数十μmといったオーダーであるため、その不連続面を滑らかに繋ぐ必要はない。
【0122】
尚、図21及び図22に示すグラフによれば、起伏した不連続面を垂直(90度)にすることで、0.5%以上の加工誤差が生じることを低減させることが考えられる。また、例えば起伏した不連続面の高さが100μm程度の場合には、不連続面の繋ぎ角度を150度以上に設計することで、0.5%以上の加工誤差が生じることを低減させることが考えられる。同様に、起伏した不連続面の高さが200μm程度の場合には、凡そ165度以上、500μm程度の場合には、凡そ174度以上、1mm程度の場合には、凡そ171度以上に設計することで、0.5%以上の加工誤差が生じることを低減させることができる。但し、図21及び図22のグラフにおいては、化学的エッチング(等方性エッチング)による起伏した不連続面のエッチング量は考慮しておらず、これを考慮した場合には、エッチング量はさらに多くなると考えられるので、これらの条件を満たす場合であっても、繋ぎ角度は、できるだけ大きく設計することが好ましい。
【0123】
また、上述したように、プラズマエッチング装置においては、バイアス電源出力の制御運転使用上限は、実際上50W程度であり、このバイアス電源出力の制御運転使用上限である50Wでのシース幅は、15mm以下とすることができ、一方、上述した母型の素材においては、母光学面がこのシース幅の領域内に収まれば良いので、周囲面部と曲面部の繋ぎ位置から曲面部の頂部までの高さは、この15mmを上限とすることができる。
【0124】
以上に説明した内容を根拠として、本実施形態においては、母型の素材110の母光学面110aを、光学機能面となる曲面部110aaと、この曲面部110aaの周囲に亘る周囲面部110abと、これらを断面二次曲線にて滑らかに繋ぐ周囲曲面部110acと、を有して形成しているので、これらは1つの連続面を構成して、上述した<エッチング工程>においては、オーバーエッチングやサイドエッチングが生じることが抑えられて、一様な形状を得ることができる。即ち、エッチング処理後には、所定の形状が形成された所定の光学的性能を有する光学素子を成形するための金型の母型を得ることができる。
【0125】
[金型の製造方法]
続いて、金型の製造方法について、図2に示すフローチャートの流れに沿って、図3を参照しつつ説明する。
【0126】
<電鋳工程>
図2に戻って、さらに、スルファミン酸ニッケル浴中に、表面を活性処理した母型、即ち、部材Eを浸して、基材111と外部の電極114との間に電流を流すことで、電鋳120を成長させる(図3(f)参照)(ステップS35)。このとき、基材111の外周面111fに絶縁剤を塗布することで、絶縁剤が塗布された部分の電鋳形成を抑制できる。電鋳120は、その成長の過程で、母光学面110aに精度良く対応した光学面転写面120aと、輪帯110bに精度良く対応した輪帯転写面120bとを形成する。
【0127】
その後、不図示のコンピュータに構築されているデータベースを、処理中の部材Eに対応するヤトイ150のID番号NXに基づいて検索し、得られた(即ち、切削加工工程で使用された)ヤトイ150を、所定の取り付け条件で部材E(基材111)に取り付ける(ステップS36)。この所定の取り付け条件とは、第1の工程の取り付け条件であり、具体的には、合マークMXを合致させ基材111とヤトイ150との位相を合わせること、読み出した締め付け時作業環境温度(第1の工程時の作業環境温度)に対して±1.0度の作業環境温度とすること、読み出した締め付けトルク(切削加工工程時の締め付けトルク)で締め付けを行うこと、同じボルト152を用いて取り付けることをいう。
【0128】
さらに、不図示のコンピュータに構築されているデータベースに記憶された、処理中の部材Eの切削時作業環境温度にした上で、基材111の外周面111fを基準として、部材Eと電鋳120とヤトイ150とを一体で、SPDT加工機の回転軸と部材Eの光軸とを一致させるようにしてチャックに取り付け、電鋳120の外周面120cを切削加工する(図3(g)参照)(ステップS37)。
【0129】
加えて、図3(g)に示すように、電鋳120に、裏打ち部材との位置決め部としてのピン孔120d(中央)及びネジ孔120eを加工する。尚、ピン孔120dの代わりに円筒軸を形成しても良い。加工後に、部材Eと電鋳120とヤトイ150とを一体で、SPDT加工機から取り外す。
【0130】
さらに、電鋳120を、以下に述べるように裏打ち部材と一体化することで、可動コア130を形成する(ステップS38)。
【0131】
図23は、部材Eを取り付けた状態で示す可動コア130の断面図である。図23において、可動コア130は、先端(図における右側)に配置した電鋳120と、後端(図における左側)に配置した押圧部136と、その間に配置された摺動部材135とから構成される。摺動部材135及び押圧部136が裏打ち部材となる。
【0132】
電鋳120は、そのピン孔120dに、円筒状の摺動部材135の端面中央から突出したピン部135aを係合させることで、摺動部材135と所定の関係で位置決めされ、さらに、摺動部材135を軸線に平行に貫通する2つのボルト孔135bに挿通したボルト137を、ネジ孔120eに螺合させることで、電鋳120は摺動部材135に取り付けられる。
【0133】
摺動部材135は、ピン部135aの設けられた端面(図における右端)に対向する端面(図における左端)の中央に突出して形成されたネジ軸135cを、略円筒状の押圧部136の端部に形成されたネジ孔136aに螺合させることで、押圧部136に対して所定の位置関係で取り付けられる。図23において、摺動部材135の外周面135eは、電鋳120及び押圧部136のフランジ部136b以外の部分の外周面よりも大径となっている。裏打ち部材としての摺動部材135及び押圧部136を取り付けた後、SPDT加工機のチャックにヤトイ150を取り付けるようにする(ステップS39)。
【0134】
さらに、不図示のコンピュータに構築されているデータベースから、処理中の部材Eの切削時作業環境温度にした上で、基材111の外周面111fを基準として、摺動部材135と押圧部136の外周面を仕上げる(ステップS40)。このため、ヤトイ150を基材111より一旦取り外したにもかかわらず、母型110の同心円パターン(輪帯110b)中心と、金型摺動部外形中心との同軸度を1μm以内に収めることができる。さらに、押圧部136の端面を切削加工し、全長を規定値に収める(ステップS41)。
【0135】
その後、図23の矢印Xで示す位置でカットすることにより、摺動部材135及び押圧部136に取り付けられた電鋳120から、部材Eとヤトイ150を脱型する(ステップS42)。さらに、電鋳120と基材210を脱型後、可動コア130の先端の電鋳120を仕上げて、光学素子成形用金型を得る(ステップS43)。ここまでの工程により、所定の光学的性能を有する光学素子を成形することができる金型を製作することができる。
【0136】
[光学素子の成形]
図24は、このようにして形成された可動コア130を用いて光学素子を成形する状態を示す図である。図24において、光学面転写面141aを有する光学素子成形用金型141を保持する保持部142は、可動側キャビティ143に固定されている。可動側キャビティ143は、小開口143aと、それに同軸な大開口143bとを有している。可動側キャビティ143内に可動コア130を挿入したときに、摺動部材135の外周面135eが、小開口143aの内周面と摺動し、押圧部136のフランジ部136bの外周面136dが、大開口143bの内周面と摺動する。かかる2つの摺動部によって案内されることで、可動側キャビティ143に対して、大きく傾くことなく可動コア130は軸線方向に移動可能となる。
【0137】
光学素子成形用金型141、電鋳120の間に溶融した樹脂を射出し、可動コア130を矢印方向に加圧することで、光学素子OEが成形される。本実施の形態によれば、母型の素材110から精度良く転写形成された光学素子成形用金型としての電鋳120を用いることで、光学素子OEの光学面には、電鋳120の光学面転写面120aが転写形成され、且つ、輪帯転写面120bに対応した回折輪帯が光軸に同心的に精度よく形成されることとなる。ここまでの工程により、所定の光学的性能を有する光学素子を成形することができる。
【0138】
尚、以上のようにして光学素子成形用金型を加工する場合、電鋳120に、第2のマーク111bに対応する突起(不図示)が転写形成されているため、これを加工の基準として用いることで、その外周面等の精度の良い加工を行うこともできる。
【0139】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る母型の製造方法、母型、金型の製造方法、金型、光学素子及び基材によれば、エッチング処理されることで所定の回折構造が形成されて光学素子を成形するための金型の母型となる基材に対して、予め、オーバーエッチングやサイドエッチングを低減させる形状を付与しておくことで、エッチング処理後には、歪みのない所定の形状を得ることができる。即ち、所定の光学的性能を有する光学素子を成形するための金型の母型を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態における母型の製造方法を構成する工程を示すフローチャートである。
【図2】本実施形態における母型の製造方法及び金型の製造方法を構成する工程を示すフローチャートである。
【図3】図1及び図2に示す主要な工程において、処理される母型の素材と電極部材の組立体、即ち、部材Eを示す断面図である。
【図4】ヤトイを取り付けた部材Eの斜視図である。
【図5】図4に示す部材Eの母型の素材の母光学面の形状を示す断面図である。
【図6】SPDT加工機の概略構成を示す説明図である。
【図7】図4に示す部材Eの上面図である。
【図8】形状測定器の概略構成を示す説明図である。
【図9】電子ビーム描画装置の概略構成を示す説明図である。
【図10】電子ビームのビームウエストを説明するための説明図である。
【図11】測定装置の概略構成を説明するための説明図である。
【図12】測定装置の測定原理を説明するための説明図である。
【図13】信号出力と基材の高さとの関係を示す特性図である。
【図14】同図(A)(B)は、電子ビーム描画装置により描画される基材を示す説明図であり、同図(C)は、電子ビーム描画装置の描画原理を説明するための説明図である。
【図15】プラズマエッチング装置の概略構成を示す説明図である。
【図16】同図(A)は、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面が形成されている場合の誘導電界の様子を示す説明図であり、同図(B)は、基材の表面に不連続面を滑らかに繋いだ連続面が形成されている場合の誘導電界の様子を示す説明図である。
【図17】同図(A)は、基材の表面が平坦である場合にイオンが受ける力の様子を示す説明図であり、同図(B)は、基材の表面に鈍角に繋がる不連続面の起伏が両側に形成されている場合にイオンが受ける力の様子を示す説明図であり、同図(C)は、基材の表面に鋭角に繋がる不連続面の起伏が両側に形成されている場合にイオンが受ける力の様子を示す説明図である。
【図18】基材の表面に不連続面の起伏が両側に形成される場合のイオンの入射エネルギー量の計算モデルを示す説明図である。
【図19】シース領域内の各高さ位置におけるバイアス電源出力と電子温度との関係を示す説明図である。
【図20】基材の表面に鈍角に繋がる不連続面の起伏が片側のみに形成されている場合にイオンが受ける力の様子を示す説明図である。
【図21】基材の表面に不連続面の起伏が片側のみに形成される場合の、イオンの水平である不連続面に対する入射エネルギー量の計算モデルを示す説明図である。
【図22】基材の表面に不連続面の起伏が片側のみに形成される場合の、イオンの起伏する不連続面に対する入射エネルギー量の計算モデルを示す説明図である。
【図23】可動コアの断面図である。
【図24】可動コアを用いて光学素子を成形する状態を示す図である。
【符号の説明】
110 母型の素材
110a 母光学面
110aa 曲面部
110ab 周囲面部
110ac 周囲曲面部
111 基材
Claims (14)
- 所定の構造を有する光学素子を成形するための金型の母型を製造する母型の製造方法であって、
前記母型となる基材に対して、少なくとも一面に、前記所定の構造が形成される曲面部と、前記曲面部の周囲に亘る周囲面部と、前記曲面部と前記周囲面部とを滑らかに繋ぐ周囲曲面部と、を成形する成形工程と、
前記曲面部上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記形成されたレジスト膜に対して所定のパターン形状を描画する描画工程と、
前記描画されたレジスト膜に現像処理を施すことで、前記所定のパターン形状を形成する現像工程と、
前記所定のパターン形状が形成されたレジスト膜にエッチング処理を施すことで、前記曲面部上に前記所定の構造が形成された母型を得るエッチング工程を含むことを特徴とする母型の製造方法。 - 前記周囲面部は水平面であり、前記周囲面部から前記曲面部の頂部までの高さは、50μm以上、15mm以下であることを特徴とする請求項1記載の母型の製造方法。
- 前記周囲面部は傾斜面であり、前記周囲面部と前記曲面部の繋ぎ位置から前記曲面部の頂部までの高さは、200μm以上、15mm以下であることを特徴とする請求項1記載の母型の製造方法。
- 前記曲面部は、前記所定の構造が形成される光学機能面部と、前記光学機能面の周囲に亘る光学機能周囲面部と、を有し、
前記周囲曲面部は、前記光学機能周囲面部と前記周囲面部とを滑らかに繋ぐことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の母型の製造方法。 - 前記所定の構造は、回折構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の母型の製造方法。
- 請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の母型の製造方法によって製造されたことを特徴とする母型。
- 請求項6記載の母型を用いて、前記母型の形状が転写された金型を得る電鋳処理を行うことを特徴とする金型の製造方法。
- 請求項7記載の金型の製造方法によって製造されたことを特徴とする金型。
- 請求項8記載の金型によって成形されたことを特徴とする光学素子。
- エッチング処理されることで所定の構造が形成されて、前記所定の構造を有する光学素子を成形するための金型の母型となる基材であって、
少なくとも一面に、前記所定の構造が形成される曲面部と、前記曲面部の周囲に亘る周囲面部と、前記曲面部と前記周囲面部とを滑らかに繋ぐ周囲曲面部と、を設けたことを特徴とする基材。 - 前記周囲面部は水平面であり、前記周囲面部から前記曲面部の頂部までの高さは、50μm以上、15mm以下であることを特徴とする請求項10記載の基材。
- 前記周囲面部は傾斜面であり、前記周囲面部と前記曲面部の繋ぎ位置から前記曲面部の頂部までの高さは、200μm以上、15mm以下であることを特徴とする請求項10記載の基材。
- 前記曲面部は、前記所定の構造が形成される光学機能面部と、前記光学機能面の周囲に亘る光学機能周囲面部と、を有し、
前記周囲曲面部は、前記光学機能周囲面部と前記周囲面部とを滑らかに繋ぐことを特徴とする請求項10乃至請求項12の何れか一項に記載の基材。 - 前記所定の構造は、回折構造であることを特徴とする請求項10乃至請求項13の何れか一項に記載の基材。
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-
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