JP2004330969A - 空調用熱交換器および車両用空調装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱源流体が流れるチューブ本数を変更して吹出空気温度を制御できる空調用熱交換器において、空気ガイド等の特別の冷温風混合手段を必要とせずに、冷温風の混合性を向上する。
【解決手段】熱源流体が並列に流れる多数本のチューブ44に対して熱源流体を分配、集合するタンク部材41を有し、タンク部材41内部に、多数本のチューブ44に対する熱源流体の流れを許容する開口部51aを有する膜状部材51を移動可能に配置し、膜状部材51を多数本のチューブ44の端部上で移動させることにより開口部51aと多数本のチューブ44の端部との重合関係が変化して、熱源流体が流れるチューブ本数を変更する。
【選択図】 図3
【解決手段】熱源流体が並列に流れる多数本のチューブ44に対して熱源流体を分配、集合するタンク部材41を有し、タンク部材41内部に、多数本のチューブ44に対する熱源流体の流れを許容する開口部51aを有する膜状部材51を移動可能に配置し、膜状部材51を多数本のチューブ44の端部上で移動させることにより開口部51aと多数本のチューブ44の端部との重合関係が変化して、熱源流体が流れるチューブ本数を変更する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱源流体が流れるチューブ本数と熱源流体が流れないチューブ本数との比率を変更して、吹出空気温度を調整する空調用熱交換器およびそれを用いた車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置の吹出空気の温度調整方式として、暖房用熱交換器をバイパスする冷風と暖房用熱交換器を通過する温風との風量割合をエアミックスドアにより調整して、吹出空気温度を調整するエアミックス方式が知られている。
【0003】
このエアミックス方式は、冷風と温風との風量割合を調整して吹出空気温度を調整するので、エアミックスドアの全開度範囲において吹出空気温度を応答よく変化させることができ、吹出空気の温度調整特性が良好である。
【0004】
また、別方式として、暖房用熱交換器に供給される温水の流量または温度を調整して、吹出空気温度を調整する温水調整方式が知られている。
【0005】
しかし、前者のエアミックス方式においては、暖房用熱交換器の搭載スペースの他に、エアミックスドアの作動空間、あるいは冷風と温風を混合するための混合空間等を必要とするので、その分、空調装置の体格(容積)が大型化するという不具合がある。
【0006】
これに反し、後者の温水調整方式では、エアミックス方式における混合空間、ドア作動空間等が不要となるので、空調装置の体格(容積)を小型化できる利点がある。しかし、後者の温水調整方式においては、暖房用熱交換器の熱容量が大きいので、温水の流量または温度を調整しても温度調整の応答性が悪い。
【0007】
また、この後者の温水調整方式のうち、温水流量調整方式においては、暖房用熱交換器の放熱特性が、温水弁の開弁後、小流量域で温水流量が増加するときに吹出温度が急激に立ち上がって、その後、温水流量の増加に対して吹出温度の上昇割合が緩慢となる特性になっている。そのため、車室内への吹出温度を低温域から高温域にわたって連続的に調整することが困難となる。
【0008】
この問題を解決するには、温水弁の操作ストロークに対して温水流量を小流量域で微細に調整できるように温水弁を構成する必要があり、温水弁がコスト高となる。また、車両エンジン駆動の温水ポンプにより暖房用熱交換器に温水が供給されるので、温水流量調整方式においてはエンジン回転数の変動が外乱となって吹出温度の変動を起こしやすい。また、暖房用熱交換器に送風される空気の風量の変動も外乱となって吹出温度の変動を起こしやすい。
【0009】
また、温水調整方式のうち、温水温度調整方式においては、温水温度の調整のために、高温温水と低温温水との混合が必要となる。そのため、低温温水の循環用ポンプ等を温水回路に新たに追加する必要が生じる。また、高温温水と低温温水とを混合する特殊な弁等も必要となり、コストアップが避けられない。
【0010】
そこで、本出願人においては、先に特願2002−203985号において、空気を加熱する暖房用熱交換器に、熱源流体が流れるチューブ本数と熱源流体が流れないチューブ本数との比率を変更する流体流れ制御手段を内蔵して、熱源流体通過領域と熱源流体非通過領域との比率を変更することにより、車室内への吹出空気温度を調整できる車両用空調装置を提案している。
【0011】
上記先願によると、暖房用熱交換器の熱源流体通過領域では、空気が温水等の熱源流体により加熱されて温風となり、一方、暖房用熱交換器の熱源流体非通過領域では空気が加熱されることなくそのまま通過する。つまり、熱源流体非通過領域では冷風が通過する。従って、熱源流体通過領域と熱源流体非通過領域との比率を流体流れ制御手段により変更することにより冷温風の風量割合を調整できる。
【0012】
よって、エアミックス方式による吹出空気の温度調整機能を確保できる。しかも、流体流れ制御手段は温水等の熱源流体の流れを制御するものであるから、空気通路側ではなく、暖房用熱交換器内部に内蔵できる。従って、従来のエアミックス方式のように、暖房用熱交換器の外部にエアミックスドアの作動空間を設定する必要がなく、空調装置の体格(容積)を大幅に小型化できるという効果を発揮できる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記先願のものを実際に実験検討してみると、冷風と温風の混合性が悪いので、車室内吹出空気の温度バラツキが大きいという問題が生じることが判明した。
【0014】
すなわち、上記先願では、流体流れ制御手段を具体的には、暖房用熱交換器のタンク部内を多数本のチューブの配列方向に直線的に移動する流れ制御部材により構成している。また、別の例として、暖房用熱交換器のタンク部内に螺旋状の切り欠き部を有する中空形状の流れ制御部材を回転可能に配置している。これらの流体流れ制御部材は、タンク部内を直線的に移動したり、タンク部内で回転する部材であるので、その構造的制約から熱源流体の流路の切替数が自ずと限定されてしまう。そのため、上記先願によると、温風領域と冷風領域を2〜4層程度の比較的少ない数にしか設定できない。この結果、冷風と温風の混合性が悪化して車室内吹出空気の温度バラツキが大きいという問題が生じる。
【0015】
そこで、暖房用熱交換器の空気流れ下流側に、冷風と温風を衝突させて冷温風の混合性を向上させる空気ガイドを配置する等の対策が考えられるが、この対策は空気ガイドの配置スペースによるユニット体格の大型化、空気ガイドによる圧損増大等の不具合が発生するので、実用的と言えない。
【0016】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、熱源流体が流れるチューブ本数を変更して吹出空気温度を制御できる空調用熱交換器において、空気ガイド等の特別の冷温風混合手段を必要とせずに、冷温風の混合性を向上することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空気と熱交換する熱源流体が並列に流れる多数本のチューブ(44)と、多数本のチューブ(44)に対して熱源流体を分配、集合するタンク部材(41、42)と、タンク部材(41、42)内部に移動可能に配置され、多数本のチューブ(44)に対する熱源流体の流れを許容する開口部(51a、51c)を有する膜状部材(51)とを備え、
膜状部材(51)を多数本のチューブ(44)の端部上で移動させることにより開口部(51a、51c)と多数本のチューブ(44)の端部との重合関係が変化して、多数本のチューブ(44)のうち、熱源流体が流れるチューブ本数を変更することを特徴とする。
【0018】
これによると、膜状部材(51)の移動によって、空調用熱交換器における熱源流体通過領域と熱源流体非通過領域との比率を変更して吹出空気温度を制御できる。従って、先願と同様に、エアミックス方式による吹出空気の温度調整機能を確保できる。しかも、従来のエアミックス方式のように、熱交換器外部にエアミックスドアの作動空間を設定する必要がなく、空調装置の体格(容積)を大幅に小型化できる。
【0019】
更に、膜状部材(51)は薄板状の部材であり、穴開け加工は極めて簡単に行うことができるので、膜状部材(51)に形成する開口部(51a、51c)の開口パターンは後述の図4〜図6に例示するように自由に設定できる。そのため、空調用熱交換器における熱源流体通過領域と熱源流体非通過領域とを交互に多数設定することも容易である。
【0020】
これにより、熱交換器吹出側において多数の冷風流れと温風流れとを交互に接触させて、冷温風の混合性を向上できる。従って、熱交換器吹出側に空気ガイド等の特別の冷温風混合手段を設置する必要はなく、実用上、極めて有利である。
【0021】
なお、本発明において、熱源流体は、請求項6に記載の発明のように、空気を加熱する高温の熱源流体であっても、また、空気を冷却する低温の熱源流体であってもよい。前者の高温の熱源流体が流れる場合は、熱源流体通過領域において空気が加熱されて温風となり、熱源流体非通過領域では空気が加熱されないので、相対的に低温空気、すなわち、冷風が流れる。
【0022】
これに対し、後者の低温の熱源流体が流れる場合は、熱源流体通過領域において空気が冷却されて冷風となり、熱源流体非通過領域では空気が冷却されないので、相対的に高温空気、すなわち、温風が流れる。このように高温、低温のいずれの熱源流体が流れる場合においても、エアミックス方式による吹出空気の温度調整機能を発揮できるから、本発明を適用できる。
【0023】
請求項2に記載の発明では、請求項1において、タンク部材(41、42)内部に、膜状部材(51)の両端部を結合した第1巻き取り軸(52)および第2巻き取り軸(53)を回転可能に配置し、第1巻き取り軸(52)および第2巻き取り軸(53)を連動して回転駆動する操作機構(50、54)を備え、第1巻き取り軸(52)および第2巻き取り軸(53)の回転により膜状部材(51)が第1巻き取り軸(52)および第2巻き取り軸(53)に対して巻き取り、巻き戻しされることにより膜状部材(51)がタンク部材(41、42)内部で移動することを特徴とする。
【0024】
これによると、膜状部材(51)を第1、第2巻き取り軸(52)(53)に対して巻き取ったり、巻き戻すことにより膜状部材(51)がタンク部材(41、42)内部で移動するから、第1、第2巻き取り軸(52)(53)間の間隔に比較して十分に長い膜状部材(51)を用いることができる。そして、膜状部材(51)の長さを長くすることにより、開口部(51a、51c)の開口パターンを多段階にきめ細かく設定することが容易である。
【0025】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2において、膜状部材(51)は多数本のチューブ(44)の配列方向と直交する方向に移動するようになっており、
開口部(51a、51c)は、多数本のチューブ(44)の配列方向に複数個設けられた開口部(51a)を含んでおり、この複数個の開口部(51a)は多数本のチューブ(44)のうち所定本数ごとのチューブ(44)に熱源流体が流れるように配置されており、
更に、複数個の開口部(51a)からなる開口部群を膜状部材(51)の移動方向に沿って複数個形成するとともに、この複数個の開口部群を膜状部材(51)の移動方向に沿って熱源流体が流れるチューブ本数が順次増減するように形成したことを特徴とする
これにより、膜状部材(51)の移動に伴って熱源流体が流れるチューブ本数をきめ細かく増減して、熱交換器吹出空気温度をきめ細かく調整できる。
【0026】
請求項4に記載の発明のように、請求項3において、前記多数本のチューブ(44)の配列方向に複数個の開口部(51a)を等間隔にて配置すれば、多数本のチューブ(44)の配列方向の全域において冷温風を均一に混合して、多数本のチューブ(44)の配列方向における吹出空気温度差が小さい温度制御特性を得ることができる。
【0027】
請求項5に記載の発明のように、請求項3において、多数本のチューブ(44)の配列方向の一端側に偏って複数個の開口部(51a)を配置すれば、多数本のチューブ(44)の配列方向における吹出空気温度差を意図的に拡大した温度制御特性を得ることができる。
【0028】
請求項6に記載の発明では、前述のように熱源流体として空気を加熱する高温の熱源流体が流れることを特徴としている。
【0029】
そして、請求項7に記載の発明では、請求項6において、膜状部材(51)のうち移動方向の一端側に多数本のチューブ(44)の全部を閉塞する最大冷房用の膜部(51b)を形成し、膜状部材(51)のうち移動方向の他端側に多数本のチューブ(44)の全部に熱源流体が流れることを許容する最大暖房用の開口部(51c)を開口部の1つとして形成したことを特徴とする。
【0030】
これにより、膜状部材(51)の最大冷房用の膜部(51b)が多数本のチューブ(44)の端部上に重合する位置に膜状部材(51)を移動させることにより、全チューブ(44)への高温熱源流体の流入を遮断して最大冷房機能を良好に発揮できる。そして、最大暖房用の開口部(51c)が多数本のチューブ(44)の端部上に重合する位置に膜状部材(51)を移動させることにより、全チューブ(44)に高温熱源流体を流入させて最大暖房機能を良好に発揮できる。
【0031】
請求項8に記載の発明では、車室内へ向かって空気が流れる空気通路を構成する空調ケース(1a)と、空調ケース(1a)内に配置され、空気を加熱する暖房用熱交換器(4)とを備え、暖房用熱交換器(4)を請求項6または7に記載の空調用熱交換器により構成した車両用空調装置を特徴としている。
【0032】
これにより、車両用空調装置において上記各請求項による作用効果を有効に発揮できる。
【0033】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の車両用空調装置において、空調熱負荷条件に応じて膜状部材(51)の位置を自動制御する制御手段(56)を備えることを特徴とする。
【0034】
これにより、膜状部材(51)の位置制御により車室内吹出温度を空調熱負荷条件に応じて自動制御できる。
【0035】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0036】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1〜図4は本発明の第1実施形態を示すものであり、本実施形態における車両用空調装置の空調ユニット部1は車両の車室内前部に位置する計器盤内側の左右(幅)方向の略中央部に配置され、かつ車両の前後、上下方向に対して図1の矢印に示すように配置される。
【0037】
空調ユニット部1は、車室内へ向かって空気が流れる空気通路を構成する樹脂製の空調ケース1aを有している。この空調ケース1aは本例では車両左右方向に分割されており、図1はその片側(具体的には左側)のケースを取り外して、他の片側(具体的には右側)のケースの組付嵌合面を示している。
【0038】
空調ケース1a内部の最も車両前方側部位に空気流入空間2が形成され、この空気流入空間2には車室内計器盤内側の助手席側に配置される送風ユニット(図示せず)から送風空気が流入する。なお、送風ユニットは内気又は外気を切替導入して送風するようになっている。
【0039】
空調ケース1a内には、その空気上流側から順に蒸発器3、ヒータコア4が配置されている。ここで、蒸発器3とヒータコア4はともに上下方向に延びるように平行に配置され、且つ、蒸発器3とヒータコア4とを30mm程度の微小間隔Cを介して近接配置している。
【0040】
蒸発器3は冷房用熱交換器であり、周知の冷凍サイクルに設けられ、空調ケース1a内への送風空気から吸熱して冷媒が蒸発することにより送風空気を冷却する。また、ヒータコア4は暖房用熱交換器であり、内部を流れる温水(エンジン冷却水)を熱源として空調ケース1a内の空気を加熱する。
【0041】
また、蒸発器3とヒータコア4はともにその配置部位において空調ケース1a内側の空気通路の全断面積を横断するように配置されているので、空気流入空間2に流入した空気の全量が蒸発器3とヒータコア4を通過するようになっている。
【0042】
空調ケース1aのうち、ヒータコア4の空気下流側部位(車両後方側部位)には複数の吹出開口部5、6、7が形成されている。このうち、デフロスタ開口部5は空調ケース1aの上面部に配置され、図示しないデフロスタダクトが接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口から空調空気を車両フロントガラスの内面に向けて吹き出す。
【0043】
また、フェイス開口部6は空調ケース1aの車両後方側の面の上部に配置され、図示しないフェイスダクトが接続され、このフェイスダクト先端部のフェイス吹出口から空調空気を乗員の上半身に向けて吹き出す。更に、フット開口部7は空調ケース1aの車両後方側の左右両側面に配置され、運転席および助手席の乗員の足元部に向けて空調空気を吹き出す。
【0044】
なお、デフロスタ開口部5とフェイス開口部6は図示しないデフ・フェイス用の共通の吹出モードドアにより開閉されるようになっている。本例では、このデフ・フェイス用吹出モードドアを薄膜状の樹脂フィルムドアにより構成して、空調ケース1aの体格、特に車両前後方向の体格を小型化できるようにしている。また、左右のフット開口部7は、デフ・フェイス用吹出モードドアとは別体のフット専用の吹出モードドア(図示せず)により開閉されるようになっている。このフット用の吹出モードドアは、例えば、周知の板ドアにより構成できる。
【0045】
デフ・フェイス用吹出モードドアとフット用の吹出モードドアは図示しないリンク機構を介してサーボモータを用いたアクチュエータに連結され、このアクチュエータにより複数の吹出開口部5、6、7の開閉を行うようになっている。
【0046】
次に、図2はヒータコア4部分の具体例を示すもので、タンク部を断面図示した正面図であり、本例のヒータコア4は、車両左右方向の一方側に温水入口側タンク41を配置するとともに、車両左右方向の他方側に温水出口側タンク42を配置している。この両タンク41、42は上下方向に延びるように配置されている。そして、この両タンク41、42の間に熱交換コア部43を構成している。
【0047】
この熱交換コア部43は周知のごとく断面偏平状(断面長円状)に成形してなる偏平チューブ44を水平方向に延びるように配置している。この偏平チューブ44はコルゲートフィン45を介在して上下方向に多数本並列配置している。ここで、多数本の偏平チューブ44は図3に示すようにその断面偏平状の長辺方向が水平方向に向くようにして配置されている。
【0048】
この多数本の偏平チューブ44の一端部を入口側タンク41に、他端部を出口側タンク42にそれぞれ連通させる。そして、多数本の偏平チューブ44の両端部と両タンク41、42との間および偏平チューブ44とコルゲートフィン45との間はそれぞれ一体に接合する。
【0049】
ヒータコア4において温水入口側タンク41の下端部に温水入口46を設け、温水出口側タンク42の上端部に温水出口47を設けている。従って、温水入口46からの流入温水は温水入口側タンク41により熱交換コア部43の多数本の偏平チューブ44に分配され、この偏平チューブ44を並列に通過する。そして、偏平チューブ44からの温水は温水出口側タンク42内に流入して集合される。よって、本例のヒータコア4は、温水入口側タンク41から温水出口側タンク42へ向かって温水が一方向に流れる一方向流れタイプ(全パスタイプ)として構成されている。
【0050】
ヒータコア4の温水入口46には図1に示す入口温水配管48を、また、温水出口47には図1に示す出口温水配管49をそれぞれ接続し、この両温水配管48、49はさらに車両エンジンの温水回路に接続される。なお、車両エンジン温水回路には車両エンジンにより駆動される機械式温水ポンプ(図示せず)が備えられており、この機械式温水ポンプにより車両エンジンの温水(冷却水)がヒータコア4に循環する。
【0051】
温水入口側タンク41のうち、温水入口46と反対側の端部、すなわち、上端部にはアクチュエータ50が組付られている。このアクチュエータ50は電気信号により回転量(作動角)が制御可能なサーボモータを用いて構成されている。
【0052】
そして、温水入口側タンク41の内部に、温水流れ制御用の膜状部材51、第1巻取軸52および第2巻取軸53が配置されている。第1巻取軸52および第2巻取軸53は樹脂製または金属製の部材であり、膜状部材51の一端部が第1巻取軸52に結合され、膜状部材51の他端部は第2巻取軸53に結合されている。膜状部材51の両端部は、第1、第2巻取軸52、53に巻き取られたり、第1、第2巻取軸52、53から巻き戻される(送り出される)ようになっている。
【0053】
第1巻取軸52および第2巻取軸53の軸方向の一端部(上端部)付近は温水入口側タンク41の上端部壁面に回転自在に支持されて温水入口側タンク41の上方側へ突き出している。第1巻取軸52および第2巻取軸53の他端部(下端部)付近は図示しない支持部材を介して温水入口側タンク41の下端部付近に回転自在に支持される。
【0054】
第1巻取軸52は駆動側の軸であり、操作機構をなすアクチュエータ50内部のモータ出力軸(図示せず)に減速ギヤ(図示せず)を介して連結され、アクチュエータ50により第1巻取軸52を回転させる構成になっている。そして、従動側の軸をなす第2巻取軸53と第1巻取軸52との間にベルト、ギヤ等の動力伝達機構54を設けて、第1巻取軸52の回転が動力伝達機構54を介して第2巻取軸53に伝達されるようになっている。従って、アクチュエータ50により第1巻取軸52および第2巻取軸53を連動して回転させることができる。
【0055】
膜状部材51は可撓性を有する樹脂フィルム材から構成されるものであり、図2、図3における細かい点を付した領域は膜状部材51の範囲を示す。この膜状部材51は図4に示すように、偏平チューブ44の端部を開口する多数の開口部51aを有している。この開口部51aの開口パターンは後述する。
【0056】
第1、第2巻取軸52、53は、温水入口側タンク41の内部に、このタンク41の長手方向、換言すると多数本の偏平チューブ44の配列方向(車両上下方向)の全長にわたって延びるように配置されている。ここで、第1、第2巻取軸52、53は、図3に示すように偏平チューブ44の断面偏平状の長辺方向の寸法L1よりも大きい間隔L2を隔てて温水入口側タンク41の内部に平行に配置されている。
【0057】
膜状部材51の開口部51aの幅寸法L3は、上記寸法L1とL2の中間の大きさ、すなわち、L1<L3<L2の関係に設定してある。従って、開口部51aが偏平チューブ44の端部上に重合すると、その重合した偏平チューブ44は、膜状部材51の開口部51aを通して全開状態にて温水入口側タンク41の内部に連通する。
【0058】
最大冷房時には、膜状部材51の一端側の膜部51b(図4)により多数本の偏平チューブ44のすべてを閉塞し、且つ、最大暖房時には、膜状部材51の他端側の最大の開口部51cにより多数本の偏平チューブ44のすべてを全開するため、膜状部材51の幅寸法(高さ寸法)L4を熱交換用コア部43の偏平チューブ44配列方向(車両上下方向)の全長寸法より大きくしてある(図2、3参照)。
【0059】
温水入口側タンク41のうち、偏平チューブ44の端部が接合される壁面41a、すなわち、図2の左側の壁面41aは上下方向に延びる平面形状になっている。この平面形状の壁面41aにはチューブ挿入穴(図示せず)を開けて、このチューブ挿入穴に偏平チューブ44の端部を挿入し、偏平チューブ44の端部を微小量だけ壁面41aの内側、すなわち、温水入口側タンク41の内部に突出させる。この状態にて偏平チューブ44の端部は壁面41aのチューブ挿入穴部に接合される。
【0060】
そして、平面形状の壁面41aの内側面にシール部材55(図2)を設けている。より具体的には、このシール部材55はゴム系の弾性材により平面形状の壁面41aに沿った平板状に形成される。このシール部材55には偏平チューブ44と同数のチューブ挿入穴(図示せず)を開けて、このチューブ挿入穴を偏平チューブ44の端部に嵌合してシール部材55を平面形状の壁面41aの内側面に押し付けて接着等により固定する。
【0061】
ここで、シール部材55の板厚は偏平チューブ44の端部がシール部材55上に突出しないように設定してあるから、膜状部材51が偏平チューブ44の端部と接触することを回避でき、膜状部材51はシール部材55の表面上を摺動しながら第1、第2巻取軸52、53間を移動するようになっている。
【0062】
このため、シール部材55は、偏平チューブ44の配列方向(車両上下方向)には、全部の偏平チューブ44の端部周辺を被覆できる寸法(すなわち、寸法L4と近似した寸法)を有し、且つ、膜状部材51の移動方向(図3の左右方向)には、第1、第2巻取軸52、53間の間隔L2と同等の寸法を有する矩形状になっている。
【0063】
なお、ヒータコア4の構成部品(41、42、44、45、46、47)は、通常アルミニュウム製として、一体ろう付けにて組み付けられるが、本実施形態では、ろう付け温度(600℃付近)に耐えられない部品、すなわち、樹脂フィルム材により構成される膜状部材51およびゴム系の弾性材により構成されるシール部材55を温水入口側タンク41に内蔵するため、温水入口側タンク41の全体を他の構成部品と一体ろう付けすることはできない。
【0064】
そこで、本実施形態では、温水入口側タンク41を、偏平チューブ44の端部を接合する壁面41a側のタンク部材と、壁面41aに対向する壁面41b側のタンク部材とに分割し、壁面41a側のタンク部材および温水入口46のみをヒータコア4の他の構成部品と一体ろう付けし、この一体ろう付け終了後に、膜状部材51、シール部材55等の組み付けを行う。
【0065】
具体的には、偏平チューブ44と一体ろう付けされた壁面41a側のタンク部材において、壁面41aの平面形状部に上記した要領にてシール部材55を接着等により固定する。次に、この壁面41a側のタンク部材に第1、第2巻取軸52、53および膜状部材51を組み付け、その後に、壁面41a側のタンク部材に壁面41b側のタンク部材をシール材を介してシール固定する。
【0066】
なお、図2において、41c、41dは壁面41a側のタンク部材と壁面41b側のタンク部材との接続部位を示す。また、第1、第2巻取軸52、53の上端部は温水入口側タンク41(壁面41a側のタンク部材)の上端部壁面から外部に突き出すので、第1、第2巻取軸52、53と温水入口側タンク41の上端部壁面の支持部との間にもシール材(図示せず)を配置して、水漏れを防止するようになっている。
【0067】
次に、図4により膜状部材51の開口パターンについて具体的に説明する。図4は第1、第2巻取軸52、53から膜状部材51の全長を巻き戻した展開状態を示しており、膜状部材51の長さ方向(図4の左右方向)の一端部(左端部)を第1巻取軸52に結合するとともに、膜状部材51のうち、第1巻取軸52に隣接する部分に最大冷房領域を構成する膜部51bを設けている。
【0068】
また、膜状部材51の長さ方向(図4の左右方向)の他端部(右端部)を第2巻取軸53に結合するとともに、膜状部材51のうち、第2巻取軸53に隣接する部分に最大暖房領域を構成する最大の矩形開口部51cを設けている。
【0069】
そして、最大冷房用の膜部51bと最大暖房用の矩形開口部51cとの間は温度制御領域であり、この温度制御領域では菱形の開口部51aを開けるとともに、この菱形の開口部51aの開口数を最大暖房領域側から最大冷房領域側へ向かって順次減少させている。具体的には、温度制御領域のうち、最大暖房領域に隣接する部位(1)では開口部51aの開口数を例えば偏平チューブ44の本数の1/2として、開口部51aが多数本の偏平チューブ44に対して1本置きに重合するようにしてある。以下、次の部位(2)から部位(5)へ向かって開口部51aの開口数を順次減少させている。これにより、温水が流れる偏平チューブ44の本数を最大暖房領域側から最大冷房領域側へ向かって順次減少させることができる。すなわち、図4の部位(1)から部位(5)では、それぞれ開口部数が順次減少する開口部群を構成する。
【0070】
また、図4では、温度制御領域における菱形の開口部51aを膜状部材51の幅方向(L4方向)、換言すると、車両上下方向(チューブ配列方向)に対して等間隔で均等配置している。また、図4において、L2は図3に示す温水入口側タンク41内部での第1、第2巻取軸52、53の配置間隔であり、温度制御用の菱形の開口部51aおよび最大暖房用の矩形開口部51cの幅寸法L3はいずれも軸間隔L2より若干量小さくしてある。なお、最大冷房用の膜部51bの幅寸法は軸間隔L2と同等に設定してある。
【0071】
次に、アクチュエータ50の電気制御部の概要を図2により説明すると、アクチュエータ50の回転方向および回転量は空調用制御装置56の出力信号により制御される。この空調用制御装置56はマイクロコンピュータおよびその周辺回路から構成され、予め設定されたプログラムにより所定の演算を行って、空調機器の作動を制御する。
【0072】
空調用制御装置56には内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、温水温度Tw、蒸発器3の吹出温度Te等を検出する周知のセンサ群57から検出信号が入力される。
【0073】
また、空調用制御装置56には、車室内計器盤近傍に設置される空調制御パネル58の操作スイッチ群59の操作信号も入力される。この操作スイッチ群59として、具体的には、温度設定信号Tsetを発生する温度設定スイッチ、風量切替信号を発生する風量スイッチ、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ、内外気切替信号を発生する内外気切替スイッチ、空調用圧縮機のオンオフ信号を発生するエアコンスイッチ、空調制御のオート状態を設定するオートスイッチ等が設けらる。
【0074】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。周知のごとく空調用制御装置56では、空調の自動制御のための基本制御値として目標吹出空気温度TAOを算出する。この目標吹出空気温度TAOは、空調の熱負荷変動があっても車室内を空調制御パネル58の温度設定スイッチの設定温度Tsetに維持するために必要な吹出温度であり、下記数式1に基づいて算出される。
【0075】
【数1】
TAO=Kset ×Tset −Kr ×Tr −Kam×Tam−Ks ×Ts +C
但し、Tr:センサ群57の内気センサにより検出される内気温
Tam:センサ群57の外気センサにより検出される外気温
Ts:センサ群57の日射センサにより検出される日射量
Kset、Kr、Kam、Ks:制御ゲイン
C:補正用の定数
そして、膜状部材51の目標移動位置SWを、上記TAO、蒸発器吹出温度Te、及び温水温度Twに基づいて下記の数式2に基づいて算出する。
【0076】
【数2】
SW={(TAO−Te)/(Tw−Te)}×100(%)
ここで、数式2によると、膜状部材51の目標移動位置SWは、膜状部材51の最大冷房位置を0%とし、膜状部材51の最大暖房位置を100%とする百分率で表される。膜状部材51の最大冷房位置とは、膜状部材51の最大冷房用の膜部51bが全部の偏平チューブ44の端部上に重合する位置である。これに反し、膜状部材51の最大暖房位置とは、膜状部材51の最大暖房用の矩形開口部51cが全部の偏平チューブ44の端部上に重合する位置である。
【0077】
いま、空調用制御装置56において膜状部材51の目標移動位置SW=0%(最大冷房位置)が算出されると、空調用制御装置56の出力信号によりアクチュエータ50(すなわち、第1巻取軸52)の回転方向および回転量が決定され、第1巻取軸52の回転に連動して第2巻取軸53も回転し、これにより、膜状部材51の最大冷房用の膜部51bが偏平チューブ44の端部上に重合する位置に膜状部材51が移動する。
【0078】
この結果、膜状部材51のうち最大冷房用の膜部51bがシール部材55に圧接して、全部の偏平チューブ44を閉塞する。従って、ヒータコア4の全部の偏平チューブ44への温水流入が遮断されるので、熱交換コア部43の空気通路(偏平チューブ44とコルゲートフィン45との空隙部)の全域が温水と熱交換しない通路となる。つまり、熱交換コア部43の空気通路全域が、蒸発器3で冷却された冷風を加熱せずにそのまま通過させる冷風通路として作用する。
【0079】
次に、空調用制御装置56において膜状部材51の目標移動位置SWとして、0%(最大冷房位置)と100%(最大暖房位置)との間の中間位置の値が算出されると、空調用制御装置56の出力信号によりアクチュエータ50(すなわち、第1巻取軸52)の回転方向および回転量が決定され、第1、第2巻取軸52、53の回転により膜状部材51の温度制御領域の部位が偏平チューブ44の端部上に重合する位置に膜状部材51が移動する。図2、図3はこの具体例を示しており、膜状部材51の温度制御領域の部位(3)(図4参照)が偏平チューブ44の端部上に重合する場合を示している。
【0080】
これにより、膜状部材51の温度制御領域の部位(3)に位置する5個の菱形開口部51aが5本の偏平チューブ44の端部上に重合するので、この5本の偏平チューブ44の端部が膜状部材51の菱形開口部51aを通して温水入口側タンク41の内部空間に開口する。そのため、図示しない車両エンジンの温水ポンプにより圧送される温水が、温水入口配管48→温水入口46→ヒータコア4の温水入口側タンク41→上記の5本の偏平チューブ44→温水出口側タンク42→温水出口47→温水出口配管49の経路にて流れる。なお、図2では温水が流れる5本の偏平チューブ44のみに斜線を付している。
【0081】
従って、ヒータコア4の熱交換コア部43の空気通路のうち、上記の5本の偏平チューブ44の周辺の通路は温水との熱交換により空気が加熱され温風が流れる温風通路となる。これに対し、上記の5本の偏平チューブ44相互の中間部位では、偏平チューブ44に温水が流れないので、冷風が加熱されることなくそのまま通過する冷風通路として作用する。
【0082】
このため、図2に示すように5層の温風通路域と6層の冷風通路域とを偏平チューブ配列方向(車両上下方向)に交互に形成できる。そして、空調用制御装置56の出力信号により膜状部材51の移動位置を制御することにより、温水が流れるチューブ本数を変更して、温風通路域と冷風通路領域との比率を変更できる。これにより、温風風量と冷風風量の割合を制御して車室内への吹出空気温度を目標吹出温度TAOとなるように制御できる。
【0083】
以上により、冷温風の風量割合を制御するエアミックス方式による温度調整機能を発揮できる。しかも、温水入口側タンク41内に内蔵される膜状部材51の位置制御によって温度調整機能を発揮できるから、従来技術のようにエアミックスドアをヒータコア4の外部に設ける必要がない。
【0084】
そのため、図1に示すように蒸発器3の下流側に、ヒータコア4を平行に、且つ、近接配置でき、空調ユニット1部の体格(本実施形態では車両前後方向の体格)を大幅に小型化できる。
【0085】
しかも、本実施形態によると、冷風をヒータコア4内に通過させることができるから、ヒータコア4の外側に冷風バイパス通路を形成する必要がない。そのため、エアミックス方式でありながら、ヒータコア4の大きさを蒸発器3と同等の大きさに拡大できる。その結果、ヒータコア4の外側に冷風バイパス通路を形成する通常のエアミックス方式に比較して暖房時の圧損を大幅に低減でき、暖房時の風量を大幅に増加できる。
【0086】
更に、本実施形態では、膜状部材51に設ける開口パターンによりヒータコア4の熱交換コア部43の空気通路における温風通路と冷風通路の設定数を容易に増加できるので、冷温風の混合性向上にとって格段と有利である。
【0087】
すなわち、膜状部材51は、可撓性を有する薄板状(例えば、板厚=0.2mm程度)の樹脂フィルム材にて構成できるから、種々の開口パターンを容易に設定できる。このため、1本の偏平チューブ44に対応した微小な開口部51aも容易に設定できるので、図2に例示するように温度制御領域において5層の温風通路と6層の冷風通路とを交互に形成できる。
【0088】
このように温度制御領域において温風通路と冷風通路の設定数を増加すると、温風と冷風の接触面積が大幅に増加して冷温風の混合性を格段と向上できる。
【0089】
なお、温度制御領域において、最大冷房領域に隣接する部位(5)(図4参照)では、1個の温風通路と2個の冷風通路しか形成されないが、この最大冷房領域に隣接する部位(5)は、夏期の冷房熱負荷の高い条件下において冷房始動直後に一時的に使用されるだけであるから、部位(5)において冷温風の混合性が低下しても実用上支障はない。
【0090】
一方、膜状部材51の温度制御領域において、年間を通じて使用頻度の高い領域は図4の部位(2)〜部位(4)であるから、この使用頻度の高い領域(図4の部位(2)〜(4))において冷温風の混合性を格段と向上できるという点で、実用上極めて有効である。
【0091】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態では、図4に示すように、温度制御領域における開口部51aを膜状部材51の幅方向(L4方向)、換言すると、車両上下方向(チューブ配列方向)に対して等間隔にて均等配置している。そのため、ヒータコア4の吹出空気温度、すなわち、車室内吹出空気温度の車両上下方向に対する温度差(上下吹出温度差)を小さい値に制御できる。これに対し、第2実施形態は、車室内吹出空気の上下吹出温度差を第1実施形態に比較して意図的に拡大しようとするものである。
【0092】
このため、第2実施形態では、図5に示すように、温度制御領域における開口部51aを膜状部材51の幅方向(L4方向)、換言すると、車両上下方向(チューブ配列方向)に対して、車両下方側に偏って配置している。これにより、膜状部材51の温度制御領域において、車両上方側に開口部を開けていない膜部を車両上方側に偏って形成できる。
【0093】
従って、ヒータコア4の熱交換コア部43の空気通路において下方側により多くの温風通路を偏って形成でき、上方側により多くの冷風通路を偏って形成できる。その結果、ヒータコア4の上方側の吹出空気温度を下方側の吹出空気温度より低くすることができる。
【0094】
従って、フェイス開口部6とフット開口部7を同時に開口するバイレベルモード時に、フェイス吹出温度をフット吹出温度より低くして、頭寒足熱形の温度分布でもって車室内を快適に空調できる。また、デフロスタ開口部5とフット開口部7を同時に開口するフットデフロスタモード時には、デフロスタ吹出温度をフット吹出温度より低くして、やはり頭寒足熱形の温度分布でもって車室内を快適に空調できる。
【0095】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態による膜状部材51の開口パターンを示すものであり、上記の第1、第2実施形態に比較して膜状部材51の長さを長くして、温度制御領域における開口部51aの配置部位の数を第1、第2実施形態より多くしている。具体的には、第1、第2実施形態では、温度制御領域における開口部51aの配置部位を(1)〜(5)の5箇所としているが、第3実施形態では、温度制御領域における開口部51aの配置部位を(1)〜(12)の12箇所に増やしている。これにより、膜状部材51の移動に対して、温水の流れる偏平チューブ44の本数の変化割合を大幅に減少できる。従って、膜状部材51の移動に対して車室内吹出空気温度をきめ細かく制御できる。
【0096】
第3実施形態では第1、第2実施形態に比較して膜状部材51の長さを長くしているが、第1、第2巻取軸52、53に対する膜状部材51の巻き取り量が増加するだけで、第1、第2巻取軸52、53間の間隔L2は第1、第2実施形態と同じでよい。従って、第3実施形態においても温水入口側タンク41の体格を第1、第2実施形態と略同等でよい。
【0097】
なお、第1、第2実施形態では温度制御領域における開口部51aを菱形の形状にしているが、第3実施形態では温度制御領域における開口部51aを矩形状の形状にしている。これとは逆に、第3実施形態の温度制御領域における開口部51aを菱形の形状にし、第1、第2実施形態の温度制御領域における開口部51aを矩形状の形状にしてもよい。
【0098】
(他の実施形態)
なお、第1実施形態では、第1巻取軸52と第2巻取軸53を連動して回転させるための動力伝達機構54をヒータコア4の温水入口側タンク41の外部に配置しているが、動力伝達機構54をヒータコア4の温水入口側タンク41の内部に配置してもよい。
【0099】
また、第1実施形態では、暖房用熱交換器をなすヒータコア4に、熱源流体として温水が流れる場合について説明したが、例えば、エンジンオイル、油圧機械の作動オイル等のオイルを熱源流体としてヒータコア4に循環させ、空気を加熱する車両用空調装置に本発明を適用してもよい。
【0100】
また、第1実施形態では、ヒータコア4の温水入口側タンク41に膜状部材51を内蔵しているが、温水出口側タンク42に膜状部材51を内蔵してもよい。また、必要に応じて、温水入口側タンク41と1と温水出口側タンク42の両方に膜状部材51を内蔵してもよい。
【0101】
また、ヒータコア4と同様に多数本のチューブを並列配置した熱交換器構成を冷房用熱交換器に採用し、この冷房用熱交換器に熱源流体として低温の冷水が流れるようにした空調装置に本発明を適用してもよい。すなわち、膜状部材51の移動により冷水の流れるチューブ本数と、冷水の流れないチューブ本数との割合を変化させ、それにより、冷水の流れるチューブ周辺で冷却される冷風風量と、冷水の流れないチューブ周辺を通過する非冷却空気(温風)の風量との割合を変化させて、冷房用熱交換器の吹出空気温度を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の空調ユニットを示すもので、空調ケースの片側を取り外した状態の側面図である。
【図2】第1実施形態のヒータコアを示す正面図である。
【図3】第1実施形態のヒータコアの温水入口側タンク部の側面断面図である。
【図4】第1実施形態における膜状部材の開口パターンを示す展開図である。
【図5】第2実施形態における膜状部材の開口パターンを示す展開図である。
【図6】第3実施形態における膜状部材の開口パターンを示す展開図である。
【符号の説明】
1a…空調ケース、4…ヒータコア(暖房用熱交換器)、44…チューブ、41…入口側タンク、42…出口側タンク、51…膜状部材、51a、51c…開口部、51b…最大冷房用膜部、52、53…第1、第2巻き取り軸。
【発明の属する技術分野】
本発明は熱源流体が流れるチューブ本数と熱源流体が流れないチューブ本数との比率を変更して、吹出空気温度を調整する空調用熱交換器およびそれを用いた車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置の吹出空気の温度調整方式として、暖房用熱交換器をバイパスする冷風と暖房用熱交換器を通過する温風との風量割合をエアミックスドアにより調整して、吹出空気温度を調整するエアミックス方式が知られている。
【0003】
このエアミックス方式は、冷風と温風との風量割合を調整して吹出空気温度を調整するので、エアミックスドアの全開度範囲において吹出空気温度を応答よく変化させることができ、吹出空気の温度調整特性が良好である。
【0004】
また、別方式として、暖房用熱交換器に供給される温水の流量または温度を調整して、吹出空気温度を調整する温水調整方式が知られている。
【0005】
しかし、前者のエアミックス方式においては、暖房用熱交換器の搭載スペースの他に、エアミックスドアの作動空間、あるいは冷風と温風を混合するための混合空間等を必要とするので、その分、空調装置の体格(容積)が大型化するという不具合がある。
【0006】
これに反し、後者の温水調整方式では、エアミックス方式における混合空間、ドア作動空間等が不要となるので、空調装置の体格(容積)を小型化できる利点がある。しかし、後者の温水調整方式においては、暖房用熱交換器の熱容量が大きいので、温水の流量または温度を調整しても温度調整の応答性が悪い。
【0007】
また、この後者の温水調整方式のうち、温水流量調整方式においては、暖房用熱交換器の放熱特性が、温水弁の開弁後、小流量域で温水流量が増加するときに吹出温度が急激に立ち上がって、その後、温水流量の増加に対して吹出温度の上昇割合が緩慢となる特性になっている。そのため、車室内への吹出温度を低温域から高温域にわたって連続的に調整することが困難となる。
【0008】
この問題を解決するには、温水弁の操作ストロークに対して温水流量を小流量域で微細に調整できるように温水弁を構成する必要があり、温水弁がコスト高となる。また、車両エンジン駆動の温水ポンプにより暖房用熱交換器に温水が供給されるので、温水流量調整方式においてはエンジン回転数の変動が外乱となって吹出温度の変動を起こしやすい。また、暖房用熱交換器に送風される空気の風量の変動も外乱となって吹出温度の変動を起こしやすい。
【0009】
また、温水調整方式のうち、温水温度調整方式においては、温水温度の調整のために、高温温水と低温温水との混合が必要となる。そのため、低温温水の循環用ポンプ等を温水回路に新たに追加する必要が生じる。また、高温温水と低温温水とを混合する特殊な弁等も必要となり、コストアップが避けられない。
【0010】
そこで、本出願人においては、先に特願2002−203985号において、空気を加熱する暖房用熱交換器に、熱源流体が流れるチューブ本数と熱源流体が流れないチューブ本数との比率を変更する流体流れ制御手段を内蔵して、熱源流体通過領域と熱源流体非通過領域との比率を変更することにより、車室内への吹出空気温度を調整できる車両用空調装置を提案している。
【0011】
上記先願によると、暖房用熱交換器の熱源流体通過領域では、空気が温水等の熱源流体により加熱されて温風となり、一方、暖房用熱交換器の熱源流体非通過領域では空気が加熱されることなくそのまま通過する。つまり、熱源流体非通過領域では冷風が通過する。従って、熱源流体通過領域と熱源流体非通過領域との比率を流体流れ制御手段により変更することにより冷温風の風量割合を調整できる。
【0012】
よって、エアミックス方式による吹出空気の温度調整機能を確保できる。しかも、流体流れ制御手段は温水等の熱源流体の流れを制御するものであるから、空気通路側ではなく、暖房用熱交換器内部に内蔵できる。従って、従来のエアミックス方式のように、暖房用熱交換器の外部にエアミックスドアの作動空間を設定する必要がなく、空調装置の体格(容積)を大幅に小型化できるという効果を発揮できる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記先願のものを実際に実験検討してみると、冷風と温風の混合性が悪いので、車室内吹出空気の温度バラツキが大きいという問題が生じることが判明した。
【0014】
すなわち、上記先願では、流体流れ制御手段を具体的には、暖房用熱交換器のタンク部内を多数本のチューブの配列方向に直線的に移動する流れ制御部材により構成している。また、別の例として、暖房用熱交換器のタンク部内に螺旋状の切り欠き部を有する中空形状の流れ制御部材を回転可能に配置している。これらの流体流れ制御部材は、タンク部内を直線的に移動したり、タンク部内で回転する部材であるので、その構造的制約から熱源流体の流路の切替数が自ずと限定されてしまう。そのため、上記先願によると、温風領域と冷風領域を2〜4層程度の比較的少ない数にしか設定できない。この結果、冷風と温風の混合性が悪化して車室内吹出空気の温度バラツキが大きいという問題が生じる。
【0015】
そこで、暖房用熱交換器の空気流れ下流側に、冷風と温風を衝突させて冷温風の混合性を向上させる空気ガイドを配置する等の対策が考えられるが、この対策は空気ガイドの配置スペースによるユニット体格の大型化、空気ガイドによる圧損増大等の不具合が発生するので、実用的と言えない。
【0016】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、熱源流体が流れるチューブ本数を変更して吹出空気温度を制御できる空調用熱交換器において、空気ガイド等の特別の冷温風混合手段を必要とせずに、冷温風の混合性を向上することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空気と熱交換する熱源流体が並列に流れる多数本のチューブ(44)と、多数本のチューブ(44)に対して熱源流体を分配、集合するタンク部材(41、42)と、タンク部材(41、42)内部に移動可能に配置され、多数本のチューブ(44)に対する熱源流体の流れを許容する開口部(51a、51c)を有する膜状部材(51)とを備え、
膜状部材(51)を多数本のチューブ(44)の端部上で移動させることにより開口部(51a、51c)と多数本のチューブ(44)の端部との重合関係が変化して、多数本のチューブ(44)のうち、熱源流体が流れるチューブ本数を変更することを特徴とする。
【0018】
これによると、膜状部材(51)の移動によって、空調用熱交換器における熱源流体通過領域と熱源流体非通過領域との比率を変更して吹出空気温度を制御できる。従って、先願と同様に、エアミックス方式による吹出空気の温度調整機能を確保できる。しかも、従来のエアミックス方式のように、熱交換器外部にエアミックスドアの作動空間を設定する必要がなく、空調装置の体格(容積)を大幅に小型化できる。
【0019】
更に、膜状部材(51)は薄板状の部材であり、穴開け加工は極めて簡単に行うことができるので、膜状部材(51)に形成する開口部(51a、51c)の開口パターンは後述の図4〜図6に例示するように自由に設定できる。そのため、空調用熱交換器における熱源流体通過領域と熱源流体非通過領域とを交互に多数設定することも容易である。
【0020】
これにより、熱交換器吹出側において多数の冷風流れと温風流れとを交互に接触させて、冷温風の混合性を向上できる。従って、熱交換器吹出側に空気ガイド等の特別の冷温風混合手段を設置する必要はなく、実用上、極めて有利である。
【0021】
なお、本発明において、熱源流体は、請求項6に記載の発明のように、空気を加熱する高温の熱源流体であっても、また、空気を冷却する低温の熱源流体であってもよい。前者の高温の熱源流体が流れる場合は、熱源流体通過領域において空気が加熱されて温風となり、熱源流体非通過領域では空気が加熱されないので、相対的に低温空気、すなわち、冷風が流れる。
【0022】
これに対し、後者の低温の熱源流体が流れる場合は、熱源流体通過領域において空気が冷却されて冷風となり、熱源流体非通過領域では空気が冷却されないので、相対的に高温空気、すなわち、温風が流れる。このように高温、低温のいずれの熱源流体が流れる場合においても、エアミックス方式による吹出空気の温度調整機能を発揮できるから、本発明を適用できる。
【0023】
請求項2に記載の発明では、請求項1において、タンク部材(41、42)内部に、膜状部材(51)の両端部を結合した第1巻き取り軸(52)および第2巻き取り軸(53)を回転可能に配置し、第1巻き取り軸(52)および第2巻き取り軸(53)を連動して回転駆動する操作機構(50、54)を備え、第1巻き取り軸(52)および第2巻き取り軸(53)の回転により膜状部材(51)が第1巻き取り軸(52)および第2巻き取り軸(53)に対して巻き取り、巻き戻しされることにより膜状部材(51)がタンク部材(41、42)内部で移動することを特徴とする。
【0024】
これによると、膜状部材(51)を第1、第2巻き取り軸(52)(53)に対して巻き取ったり、巻き戻すことにより膜状部材(51)がタンク部材(41、42)内部で移動するから、第1、第2巻き取り軸(52)(53)間の間隔に比較して十分に長い膜状部材(51)を用いることができる。そして、膜状部材(51)の長さを長くすることにより、開口部(51a、51c)の開口パターンを多段階にきめ細かく設定することが容易である。
【0025】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2において、膜状部材(51)は多数本のチューブ(44)の配列方向と直交する方向に移動するようになっており、
開口部(51a、51c)は、多数本のチューブ(44)の配列方向に複数個設けられた開口部(51a)を含んでおり、この複数個の開口部(51a)は多数本のチューブ(44)のうち所定本数ごとのチューブ(44)に熱源流体が流れるように配置されており、
更に、複数個の開口部(51a)からなる開口部群を膜状部材(51)の移動方向に沿って複数個形成するとともに、この複数個の開口部群を膜状部材(51)の移動方向に沿って熱源流体が流れるチューブ本数が順次増減するように形成したことを特徴とする
これにより、膜状部材(51)の移動に伴って熱源流体が流れるチューブ本数をきめ細かく増減して、熱交換器吹出空気温度をきめ細かく調整できる。
【0026】
請求項4に記載の発明のように、請求項3において、前記多数本のチューブ(44)の配列方向に複数個の開口部(51a)を等間隔にて配置すれば、多数本のチューブ(44)の配列方向の全域において冷温風を均一に混合して、多数本のチューブ(44)の配列方向における吹出空気温度差が小さい温度制御特性を得ることができる。
【0027】
請求項5に記載の発明のように、請求項3において、多数本のチューブ(44)の配列方向の一端側に偏って複数個の開口部(51a)を配置すれば、多数本のチューブ(44)の配列方向における吹出空気温度差を意図的に拡大した温度制御特性を得ることができる。
【0028】
請求項6に記載の発明では、前述のように熱源流体として空気を加熱する高温の熱源流体が流れることを特徴としている。
【0029】
そして、請求項7に記載の発明では、請求項6において、膜状部材(51)のうち移動方向の一端側に多数本のチューブ(44)の全部を閉塞する最大冷房用の膜部(51b)を形成し、膜状部材(51)のうち移動方向の他端側に多数本のチューブ(44)の全部に熱源流体が流れることを許容する最大暖房用の開口部(51c)を開口部の1つとして形成したことを特徴とする。
【0030】
これにより、膜状部材(51)の最大冷房用の膜部(51b)が多数本のチューブ(44)の端部上に重合する位置に膜状部材(51)を移動させることにより、全チューブ(44)への高温熱源流体の流入を遮断して最大冷房機能を良好に発揮できる。そして、最大暖房用の開口部(51c)が多数本のチューブ(44)の端部上に重合する位置に膜状部材(51)を移動させることにより、全チューブ(44)に高温熱源流体を流入させて最大暖房機能を良好に発揮できる。
【0031】
請求項8に記載の発明では、車室内へ向かって空気が流れる空気通路を構成する空調ケース(1a)と、空調ケース(1a)内に配置され、空気を加熱する暖房用熱交換器(4)とを備え、暖房用熱交換器(4)を請求項6または7に記載の空調用熱交換器により構成した車両用空調装置を特徴としている。
【0032】
これにより、車両用空調装置において上記各請求項による作用効果を有効に発揮できる。
【0033】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の車両用空調装置において、空調熱負荷条件に応じて膜状部材(51)の位置を自動制御する制御手段(56)を備えることを特徴とする。
【0034】
これにより、膜状部材(51)の位置制御により車室内吹出温度を空調熱負荷条件に応じて自動制御できる。
【0035】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0036】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1〜図4は本発明の第1実施形態を示すものであり、本実施形態における車両用空調装置の空調ユニット部1は車両の車室内前部に位置する計器盤内側の左右(幅)方向の略中央部に配置され、かつ車両の前後、上下方向に対して図1の矢印に示すように配置される。
【0037】
空調ユニット部1は、車室内へ向かって空気が流れる空気通路を構成する樹脂製の空調ケース1aを有している。この空調ケース1aは本例では車両左右方向に分割されており、図1はその片側(具体的には左側)のケースを取り外して、他の片側(具体的には右側)のケースの組付嵌合面を示している。
【0038】
空調ケース1a内部の最も車両前方側部位に空気流入空間2が形成され、この空気流入空間2には車室内計器盤内側の助手席側に配置される送風ユニット(図示せず)から送風空気が流入する。なお、送風ユニットは内気又は外気を切替導入して送風するようになっている。
【0039】
空調ケース1a内には、その空気上流側から順に蒸発器3、ヒータコア4が配置されている。ここで、蒸発器3とヒータコア4はともに上下方向に延びるように平行に配置され、且つ、蒸発器3とヒータコア4とを30mm程度の微小間隔Cを介して近接配置している。
【0040】
蒸発器3は冷房用熱交換器であり、周知の冷凍サイクルに設けられ、空調ケース1a内への送風空気から吸熱して冷媒が蒸発することにより送風空気を冷却する。また、ヒータコア4は暖房用熱交換器であり、内部を流れる温水(エンジン冷却水)を熱源として空調ケース1a内の空気を加熱する。
【0041】
また、蒸発器3とヒータコア4はともにその配置部位において空調ケース1a内側の空気通路の全断面積を横断するように配置されているので、空気流入空間2に流入した空気の全量が蒸発器3とヒータコア4を通過するようになっている。
【0042】
空調ケース1aのうち、ヒータコア4の空気下流側部位(車両後方側部位)には複数の吹出開口部5、6、7が形成されている。このうち、デフロスタ開口部5は空調ケース1aの上面部に配置され、図示しないデフロスタダクトが接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口から空調空気を車両フロントガラスの内面に向けて吹き出す。
【0043】
また、フェイス開口部6は空調ケース1aの車両後方側の面の上部に配置され、図示しないフェイスダクトが接続され、このフェイスダクト先端部のフェイス吹出口から空調空気を乗員の上半身に向けて吹き出す。更に、フット開口部7は空調ケース1aの車両後方側の左右両側面に配置され、運転席および助手席の乗員の足元部に向けて空調空気を吹き出す。
【0044】
なお、デフロスタ開口部5とフェイス開口部6は図示しないデフ・フェイス用の共通の吹出モードドアにより開閉されるようになっている。本例では、このデフ・フェイス用吹出モードドアを薄膜状の樹脂フィルムドアにより構成して、空調ケース1aの体格、特に車両前後方向の体格を小型化できるようにしている。また、左右のフット開口部7は、デフ・フェイス用吹出モードドアとは別体のフット専用の吹出モードドア(図示せず)により開閉されるようになっている。このフット用の吹出モードドアは、例えば、周知の板ドアにより構成できる。
【0045】
デフ・フェイス用吹出モードドアとフット用の吹出モードドアは図示しないリンク機構を介してサーボモータを用いたアクチュエータに連結され、このアクチュエータにより複数の吹出開口部5、6、7の開閉を行うようになっている。
【0046】
次に、図2はヒータコア4部分の具体例を示すもので、タンク部を断面図示した正面図であり、本例のヒータコア4は、車両左右方向の一方側に温水入口側タンク41を配置するとともに、車両左右方向の他方側に温水出口側タンク42を配置している。この両タンク41、42は上下方向に延びるように配置されている。そして、この両タンク41、42の間に熱交換コア部43を構成している。
【0047】
この熱交換コア部43は周知のごとく断面偏平状(断面長円状)に成形してなる偏平チューブ44を水平方向に延びるように配置している。この偏平チューブ44はコルゲートフィン45を介在して上下方向に多数本並列配置している。ここで、多数本の偏平チューブ44は図3に示すようにその断面偏平状の長辺方向が水平方向に向くようにして配置されている。
【0048】
この多数本の偏平チューブ44の一端部を入口側タンク41に、他端部を出口側タンク42にそれぞれ連通させる。そして、多数本の偏平チューブ44の両端部と両タンク41、42との間および偏平チューブ44とコルゲートフィン45との間はそれぞれ一体に接合する。
【0049】
ヒータコア4において温水入口側タンク41の下端部に温水入口46を設け、温水出口側タンク42の上端部に温水出口47を設けている。従って、温水入口46からの流入温水は温水入口側タンク41により熱交換コア部43の多数本の偏平チューブ44に分配され、この偏平チューブ44を並列に通過する。そして、偏平チューブ44からの温水は温水出口側タンク42内に流入して集合される。よって、本例のヒータコア4は、温水入口側タンク41から温水出口側タンク42へ向かって温水が一方向に流れる一方向流れタイプ(全パスタイプ)として構成されている。
【0050】
ヒータコア4の温水入口46には図1に示す入口温水配管48を、また、温水出口47には図1に示す出口温水配管49をそれぞれ接続し、この両温水配管48、49はさらに車両エンジンの温水回路に接続される。なお、車両エンジン温水回路には車両エンジンにより駆動される機械式温水ポンプ(図示せず)が備えられており、この機械式温水ポンプにより車両エンジンの温水(冷却水)がヒータコア4に循環する。
【0051】
温水入口側タンク41のうち、温水入口46と反対側の端部、すなわち、上端部にはアクチュエータ50が組付られている。このアクチュエータ50は電気信号により回転量(作動角)が制御可能なサーボモータを用いて構成されている。
【0052】
そして、温水入口側タンク41の内部に、温水流れ制御用の膜状部材51、第1巻取軸52および第2巻取軸53が配置されている。第1巻取軸52および第2巻取軸53は樹脂製または金属製の部材であり、膜状部材51の一端部が第1巻取軸52に結合され、膜状部材51の他端部は第2巻取軸53に結合されている。膜状部材51の両端部は、第1、第2巻取軸52、53に巻き取られたり、第1、第2巻取軸52、53から巻き戻される(送り出される)ようになっている。
【0053】
第1巻取軸52および第2巻取軸53の軸方向の一端部(上端部)付近は温水入口側タンク41の上端部壁面に回転自在に支持されて温水入口側タンク41の上方側へ突き出している。第1巻取軸52および第2巻取軸53の他端部(下端部)付近は図示しない支持部材を介して温水入口側タンク41の下端部付近に回転自在に支持される。
【0054】
第1巻取軸52は駆動側の軸であり、操作機構をなすアクチュエータ50内部のモータ出力軸(図示せず)に減速ギヤ(図示せず)を介して連結され、アクチュエータ50により第1巻取軸52を回転させる構成になっている。そして、従動側の軸をなす第2巻取軸53と第1巻取軸52との間にベルト、ギヤ等の動力伝達機構54を設けて、第1巻取軸52の回転が動力伝達機構54を介して第2巻取軸53に伝達されるようになっている。従って、アクチュエータ50により第1巻取軸52および第2巻取軸53を連動して回転させることができる。
【0055】
膜状部材51は可撓性を有する樹脂フィルム材から構成されるものであり、図2、図3における細かい点を付した領域は膜状部材51の範囲を示す。この膜状部材51は図4に示すように、偏平チューブ44の端部を開口する多数の開口部51aを有している。この開口部51aの開口パターンは後述する。
【0056】
第1、第2巻取軸52、53は、温水入口側タンク41の内部に、このタンク41の長手方向、換言すると多数本の偏平チューブ44の配列方向(車両上下方向)の全長にわたって延びるように配置されている。ここで、第1、第2巻取軸52、53は、図3に示すように偏平チューブ44の断面偏平状の長辺方向の寸法L1よりも大きい間隔L2を隔てて温水入口側タンク41の内部に平行に配置されている。
【0057】
膜状部材51の開口部51aの幅寸法L3は、上記寸法L1とL2の中間の大きさ、すなわち、L1<L3<L2の関係に設定してある。従って、開口部51aが偏平チューブ44の端部上に重合すると、その重合した偏平チューブ44は、膜状部材51の開口部51aを通して全開状態にて温水入口側タンク41の内部に連通する。
【0058】
最大冷房時には、膜状部材51の一端側の膜部51b(図4)により多数本の偏平チューブ44のすべてを閉塞し、且つ、最大暖房時には、膜状部材51の他端側の最大の開口部51cにより多数本の偏平チューブ44のすべてを全開するため、膜状部材51の幅寸法(高さ寸法)L4を熱交換用コア部43の偏平チューブ44配列方向(車両上下方向)の全長寸法より大きくしてある(図2、3参照)。
【0059】
温水入口側タンク41のうち、偏平チューブ44の端部が接合される壁面41a、すなわち、図2の左側の壁面41aは上下方向に延びる平面形状になっている。この平面形状の壁面41aにはチューブ挿入穴(図示せず)を開けて、このチューブ挿入穴に偏平チューブ44の端部を挿入し、偏平チューブ44の端部を微小量だけ壁面41aの内側、すなわち、温水入口側タンク41の内部に突出させる。この状態にて偏平チューブ44の端部は壁面41aのチューブ挿入穴部に接合される。
【0060】
そして、平面形状の壁面41aの内側面にシール部材55(図2)を設けている。より具体的には、このシール部材55はゴム系の弾性材により平面形状の壁面41aに沿った平板状に形成される。このシール部材55には偏平チューブ44と同数のチューブ挿入穴(図示せず)を開けて、このチューブ挿入穴を偏平チューブ44の端部に嵌合してシール部材55を平面形状の壁面41aの内側面に押し付けて接着等により固定する。
【0061】
ここで、シール部材55の板厚は偏平チューブ44の端部がシール部材55上に突出しないように設定してあるから、膜状部材51が偏平チューブ44の端部と接触することを回避でき、膜状部材51はシール部材55の表面上を摺動しながら第1、第2巻取軸52、53間を移動するようになっている。
【0062】
このため、シール部材55は、偏平チューブ44の配列方向(車両上下方向)には、全部の偏平チューブ44の端部周辺を被覆できる寸法(すなわち、寸法L4と近似した寸法)を有し、且つ、膜状部材51の移動方向(図3の左右方向)には、第1、第2巻取軸52、53間の間隔L2と同等の寸法を有する矩形状になっている。
【0063】
なお、ヒータコア4の構成部品(41、42、44、45、46、47)は、通常アルミニュウム製として、一体ろう付けにて組み付けられるが、本実施形態では、ろう付け温度(600℃付近)に耐えられない部品、すなわち、樹脂フィルム材により構成される膜状部材51およびゴム系の弾性材により構成されるシール部材55を温水入口側タンク41に内蔵するため、温水入口側タンク41の全体を他の構成部品と一体ろう付けすることはできない。
【0064】
そこで、本実施形態では、温水入口側タンク41を、偏平チューブ44の端部を接合する壁面41a側のタンク部材と、壁面41aに対向する壁面41b側のタンク部材とに分割し、壁面41a側のタンク部材および温水入口46のみをヒータコア4の他の構成部品と一体ろう付けし、この一体ろう付け終了後に、膜状部材51、シール部材55等の組み付けを行う。
【0065】
具体的には、偏平チューブ44と一体ろう付けされた壁面41a側のタンク部材において、壁面41aの平面形状部に上記した要領にてシール部材55を接着等により固定する。次に、この壁面41a側のタンク部材に第1、第2巻取軸52、53および膜状部材51を組み付け、その後に、壁面41a側のタンク部材に壁面41b側のタンク部材をシール材を介してシール固定する。
【0066】
なお、図2において、41c、41dは壁面41a側のタンク部材と壁面41b側のタンク部材との接続部位を示す。また、第1、第2巻取軸52、53の上端部は温水入口側タンク41(壁面41a側のタンク部材)の上端部壁面から外部に突き出すので、第1、第2巻取軸52、53と温水入口側タンク41の上端部壁面の支持部との間にもシール材(図示せず)を配置して、水漏れを防止するようになっている。
【0067】
次に、図4により膜状部材51の開口パターンについて具体的に説明する。図4は第1、第2巻取軸52、53から膜状部材51の全長を巻き戻した展開状態を示しており、膜状部材51の長さ方向(図4の左右方向)の一端部(左端部)を第1巻取軸52に結合するとともに、膜状部材51のうち、第1巻取軸52に隣接する部分に最大冷房領域を構成する膜部51bを設けている。
【0068】
また、膜状部材51の長さ方向(図4の左右方向)の他端部(右端部)を第2巻取軸53に結合するとともに、膜状部材51のうち、第2巻取軸53に隣接する部分に最大暖房領域を構成する最大の矩形開口部51cを設けている。
【0069】
そして、最大冷房用の膜部51bと最大暖房用の矩形開口部51cとの間は温度制御領域であり、この温度制御領域では菱形の開口部51aを開けるとともに、この菱形の開口部51aの開口数を最大暖房領域側から最大冷房領域側へ向かって順次減少させている。具体的には、温度制御領域のうち、最大暖房領域に隣接する部位(1)では開口部51aの開口数を例えば偏平チューブ44の本数の1/2として、開口部51aが多数本の偏平チューブ44に対して1本置きに重合するようにしてある。以下、次の部位(2)から部位(5)へ向かって開口部51aの開口数を順次減少させている。これにより、温水が流れる偏平チューブ44の本数を最大暖房領域側から最大冷房領域側へ向かって順次減少させることができる。すなわち、図4の部位(1)から部位(5)では、それぞれ開口部数が順次減少する開口部群を構成する。
【0070】
また、図4では、温度制御領域における菱形の開口部51aを膜状部材51の幅方向(L4方向)、換言すると、車両上下方向(チューブ配列方向)に対して等間隔で均等配置している。また、図4において、L2は図3に示す温水入口側タンク41内部での第1、第2巻取軸52、53の配置間隔であり、温度制御用の菱形の開口部51aおよび最大暖房用の矩形開口部51cの幅寸法L3はいずれも軸間隔L2より若干量小さくしてある。なお、最大冷房用の膜部51bの幅寸法は軸間隔L2と同等に設定してある。
【0071】
次に、アクチュエータ50の電気制御部の概要を図2により説明すると、アクチュエータ50の回転方向および回転量は空調用制御装置56の出力信号により制御される。この空調用制御装置56はマイクロコンピュータおよびその周辺回路から構成され、予め設定されたプログラムにより所定の演算を行って、空調機器の作動を制御する。
【0072】
空調用制御装置56には内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、温水温度Tw、蒸発器3の吹出温度Te等を検出する周知のセンサ群57から検出信号が入力される。
【0073】
また、空調用制御装置56には、車室内計器盤近傍に設置される空調制御パネル58の操作スイッチ群59の操作信号も入力される。この操作スイッチ群59として、具体的には、温度設定信号Tsetを発生する温度設定スイッチ、風量切替信号を発生する風量スイッチ、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ、内外気切替信号を発生する内外気切替スイッチ、空調用圧縮機のオンオフ信号を発生するエアコンスイッチ、空調制御のオート状態を設定するオートスイッチ等が設けらる。
【0074】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。周知のごとく空調用制御装置56では、空調の自動制御のための基本制御値として目標吹出空気温度TAOを算出する。この目標吹出空気温度TAOは、空調の熱負荷変動があっても車室内を空調制御パネル58の温度設定スイッチの設定温度Tsetに維持するために必要な吹出温度であり、下記数式1に基づいて算出される。
【0075】
【数1】
TAO=Kset ×Tset −Kr ×Tr −Kam×Tam−Ks ×Ts +C
但し、Tr:センサ群57の内気センサにより検出される内気温
Tam:センサ群57の外気センサにより検出される外気温
Ts:センサ群57の日射センサにより検出される日射量
Kset、Kr、Kam、Ks:制御ゲイン
C:補正用の定数
そして、膜状部材51の目標移動位置SWを、上記TAO、蒸発器吹出温度Te、及び温水温度Twに基づいて下記の数式2に基づいて算出する。
【0076】
【数2】
SW={(TAO−Te)/(Tw−Te)}×100(%)
ここで、数式2によると、膜状部材51の目標移動位置SWは、膜状部材51の最大冷房位置を0%とし、膜状部材51の最大暖房位置を100%とする百分率で表される。膜状部材51の最大冷房位置とは、膜状部材51の最大冷房用の膜部51bが全部の偏平チューブ44の端部上に重合する位置である。これに反し、膜状部材51の最大暖房位置とは、膜状部材51の最大暖房用の矩形開口部51cが全部の偏平チューブ44の端部上に重合する位置である。
【0077】
いま、空調用制御装置56において膜状部材51の目標移動位置SW=0%(最大冷房位置)が算出されると、空調用制御装置56の出力信号によりアクチュエータ50(すなわち、第1巻取軸52)の回転方向および回転量が決定され、第1巻取軸52の回転に連動して第2巻取軸53も回転し、これにより、膜状部材51の最大冷房用の膜部51bが偏平チューブ44の端部上に重合する位置に膜状部材51が移動する。
【0078】
この結果、膜状部材51のうち最大冷房用の膜部51bがシール部材55に圧接して、全部の偏平チューブ44を閉塞する。従って、ヒータコア4の全部の偏平チューブ44への温水流入が遮断されるので、熱交換コア部43の空気通路(偏平チューブ44とコルゲートフィン45との空隙部)の全域が温水と熱交換しない通路となる。つまり、熱交換コア部43の空気通路全域が、蒸発器3で冷却された冷風を加熱せずにそのまま通過させる冷風通路として作用する。
【0079】
次に、空調用制御装置56において膜状部材51の目標移動位置SWとして、0%(最大冷房位置)と100%(最大暖房位置)との間の中間位置の値が算出されると、空調用制御装置56の出力信号によりアクチュエータ50(すなわち、第1巻取軸52)の回転方向および回転量が決定され、第1、第2巻取軸52、53の回転により膜状部材51の温度制御領域の部位が偏平チューブ44の端部上に重合する位置に膜状部材51が移動する。図2、図3はこの具体例を示しており、膜状部材51の温度制御領域の部位(3)(図4参照)が偏平チューブ44の端部上に重合する場合を示している。
【0080】
これにより、膜状部材51の温度制御領域の部位(3)に位置する5個の菱形開口部51aが5本の偏平チューブ44の端部上に重合するので、この5本の偏平チューブ44の端部が膜状部材51の菱形開口部51aを通して温水入口側タンク41の内部空間に開口する。そのため、図示しない車両エンジンの温水ポンプにより圧送される温水が、温水入口配管48→温水入口46→ヒータコア4の温水入口側タンク41→上記の5本の偏平チューブ44→温水出口側タンク42→温水出口47→温水出口配管49の経路にて流れる。なお、図2では温水が流れる5本の偏平チューブ44のみに斜線を付している。
【0081】
従って、ヒータコア4の熱交換コア部43の空気通路のうち、上記の5本の偏平チューブ44の周辺の通路は温水との熱交換により空気が加熱され温風が流れる温風通路となる。これに対し、上記の5本の偏平チューブ44相互の中間部位では、偏平チューブ44に温水が流れないので、冷風が加熱されることなくそのまま通過する冷風通路として作用する。
【0082】
このため、図2に示すように5層の温風通路域と6層の冷風通路域とを偏平チューブ配列方向(車両上下方向)に交互に形成できる。そして、空調用制御装置56の出力信号により膜状部材51の移動位置を制御することにより、温水が流れるチューブ本数を変更して、温風通路域と冷風通路領域との比率を変更できる。これにより、温風風量と冷風風量の割合を制御して車室内への吹出空気温度を目標吹出温度TAOとなるように制御できる。
【0083】
以上により、冷温風の風量割合を制御するエアミックス方式による温度調整機能を発揮できる。しかも、温水入口側タンク41内に内蔵される膜状部材51の位置制御によって温度調整機能を発揮できるから、従来技術のようにエアミックスドアをヒータコア4の外部に設ける必要がない。
【0084】
そのため、図1に示すように蒸発器3の下流側に、ヒータコア4を平行に、且つ、近接配置でき、空調ユニット1部の体格(本実施形態では車両前後方向の体格)を大幅に小型化できる。
【0085】
しかも、本実施形態によると、冷風をヒータコア4内に通過させることができるから、ヒータコア4の外側に冷風バイパス通路を形成する必要がない。そのため、エアミックス方式でありながら、ヒータコア4の大きさを蒸発器3と同等の大きさに拡大できる。その結果、ヒータコア4の外側に冷風バイパス通路を形成する通常のエアミックス方式に比較して暖房時の圧損を大幅に低減でき、暖房時の風量を大幅に増加できる。
【0086】
更に、本実施形態では、膜状部材51に設ける開口パターンによりヒータコア4の熱交換コア部43の空気通路における温風通路と冷風通路の設定数を容易に増加できるので、冷温風の混合性向上にとって格段と有利である。
【0087】
すなわち、膜状部材51は、可撓性を有する薄板状(例えば、板厚=0.2mm程度)の樹脂フィルム材にて構成できるから、種々の開口パターンを容易に設定できる。このため、1本の偏平チューブ44に対応した微小な開口部51aも容易に設定できるので、図2に例示するように温度制御領域において5層の温風通路と6層の冷風通路とを交互に形成できる。
【0088】
このように温度制御領域において温風通路と冷風通路の設定数を増加すると、温風と冷風の接触面積が大幅に増加して冷温風の混合性を格段と向上できる。
【0089】
なお、温度制御領域において、最大冷房領域に隣接する部位(5)(図4参照)では、1個の温風通路と2個の冷風通路しか形成されないが、この最大冷房領域に隣接する部位(5)は、夏期の冷房熱負荷の高い条件下において冷房始動直後に一時的に使用されるだけであるから、部位(5)において冷温風の混合性が低下しても実用上支障はない。
【0090】
一方、膜状部材51の温度制御領域において、年間を通じて使用頻度の高い領域は図4の部位(2)〜部位(4)であるから、この使用頻度の高い領域(図4の部位(2)〜(4))において冷温風の混合性を格段と向上できるという点で、実用上極めて有効である。
【0091】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態では、図4に示すように、温度制御領域における開口部51aを膜状部材51の幅方向(L4方向)、換言すると、車両上下方向(チューブ配列方向)に対して等間隔にて均等配置している。そのため、ヒータコア4の吹出空気温度、すなわち、車室内吹出空気温度の車両上下方向に対する温度差(上下吹出温度差)を小さい値に制御できる。これに対し、第2実施形態は、車室内吹出空気の上下吹出温度差を第1実施形態に比較して意図的に拡大しようとするものである。
【0092】
このため、第2実施形態では、図5に示すように、温度制御領域における開口部51aを膜状部材51の幅方向(L4方向)、換言すると、車両上下方向(チューブ配列方向)に対して、車両下方側に偏って配置している。これにより、膜状部材51の温度制御領域において、車両上方側に開口部を開けていない膜部を車両上方側に偏って形成できる。
【0093】
従って、ヒータコア4の熱交換コア部43の空気通路において下方側により多くの温風通路を偏って形成でき、上方側により多くの冷風通路を偏って形成できる。その結果、ヒータコア4の上方側の吹出空気温度を下方側の吹出空気温度より低くすることができる。
【0094】
従って、フェイス開口部6とフット開口部7を同時に開口するバイレベルモード時に、フェイス吹出温度をフット吹出温度より低くして、頭寒足熱形の温度分布でもって車室内を快適に空調できる。また、デフロスタ開口部5とフット開口部7を同時に開口するフットデフロスタモード時には、デフロスタ吹出温度をフット吹出温度より低くして、やはり頭寒足熱形の温度分布でもって車室内を快適に空調できる。
【0095】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態による膜状部材51の開口パターンを示すものであり、上記の第1、第2実施形態に比較して膜状部材51の長さを長くして、温度制御領域における開口部51aの配置部位の数を第1、第2実施形態より多くしている。具体的には、第1、第2実施形態では、温度制御領域における開口部51aの配置部位を(1)〜(5)の5箇所としているが、第3実施形態では、温度制御領域における開口部51aの配置部位を(1)〜(12)の12箇所に増やしている。これにより、膜状部材51の移動に対して、温水の流れる偏平チューブ44の本数の変化割合を大幅に減少できる。従って、膜状部材51の移動に対して車室内吹出空気温度をきめ細かく制御できる。
【0096】
第3実施形態では第1、第2実施形態に比較して膜状部材51の長さを長くしているが、第1、第2巻取軸52、53に対する膜状部材51の巻き取り量が増加するだけで、第1、第2巻取軸52、53間の間隔L2は第1、第2実施形態と同じでよい。従って、第3実施形態においても温水入口側タンク41の体格を第1、第2実施形態と略同等でよい。
【0097】
なお、第1、第2実施形態では温度制御領域における開口部51aを菱形の形状にしているが、第3実施形態では温度制御領域における開口部51aを矩形状の形状にしている。これとは逆に、第3実施形態の温度制御領域における開口部51aを菱形の形状にし、第1、第2実施形態の温度制御領域における開口部51aを矩形状の形状にしてもよい。
【0098】
(他の実施形態)
なお、第1実施形態では、第1巻取軸52と第2巻取軸53を連動して回転させるための動力伝達機構54をヒータコア4の温水入口側タンク41の外部に配置しているが、動力伝達機構54をヒータコア4の温水入口側タンク41の内部に配置してもよい。
【0099】
また、第1実施形態では、暖房用熱交換器をなすヒータコア4に、熱源流体として温水が流れる場合について説明したが、例えば、エンジンオイル、油圧機械の作動オイル等のオイルを熱源流体としてヒータコア4に循環させ、空気を加熱する車両用空調装置に本発明を適用してもよい。
【0100】
また、第1実施形態では、ヒータコア4の温水入口側タンク41に膜状部材51を内蔵しているが、温水出口側タンク42に膜状部材51を内蔵してもよい。また、必要に応じて、温水入口側タンク41と1と温水出口側タンク42の両方に膜状部材51を内蔵してもよい。
【0101】
また、ヒータコア4と同様に多数本のチューブを並列配置した熱交換器構成を冷房用熱交換器に採用し、この冷房用熱交換器に熱源流体として低温の冷水が流れるようにした空調装置に本発明を適用してもよい。すなわち、膜状部材51の移動により冷水の流れるチューブ本数と、冷水の流れないチューブ本数との割合を変化させ、それにより、冷水の流れるチューブ周辺で冷却される冷風風量と、冷水の流れないチューブ周辺を通過する非冷却空気(温風)の風量との割合を変化させて、冷房用熱交換器の吹出空気温度を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の空調ユニットを示すもので、空調ケースの片側を取り外した状態の側面図である。
【図2】第1実施形態のヒータコアを示す正面図である。
【図3】第1実施形態のヒータコアの温水入口側タンク部の側面断面図である。
【図4】第1実施形態における膜状部材の開口パターンを示す展開図である。
【図5】第2実施形態における膜状部材の開口パターンを示す展開図である。
【図6】第3実施形態における膜状部材の開口パターンを示す展開図である。
【符号の説明】
1a…空調ケース、4…ヒータコア(暖房用熱交換器)、44…チューブ、41…入口側タンク、42…出口側タンク、51…膜状部材、51a、51c…開口部、51b…最大冷房用膜部、52、53…第1、第2巻き取り軸。
Claims (9)
- 空気と熱交換する熱源流体が並列に流れる多数本のチューブ(44)と、
前記多数本のチューブ(44)に対して前記熱源流体を分配、集合するタンク部材(41、42)と、
前記タンク部材(41、42)内部に移動可能に配置され、前記多数本のチューブ(44)に対する前記熱源流体の流れを許容する開口部(51a、51c)を有する膜状部材(51)とを備え、
前記膜状部材(51)を前記多数本のチューブ(44)の端部上で移動させることにより前記開口部(51a、51c)と前記多数本のチューブ(44)の端部との重合関係が変化して、前記多数本のチューブ(44)のうち、前記熱源流体が流れるチューブ本数を変更することを特徴とする空調用熱交換器。 - 前記タンク部材(41、42)内部に、前記膜状部材(51)の両端部を結合した第1巻き取り軸(52)および第2巻き取り軸(53)を回転可能に配置し、
前記第1巻き取り軸(52)および前記第2巻き取り軸(53)を連動して回転駆動する操作機構(50、54)を備え、
前記第1巻き取り軸(52)および前記第2巻き取り軸(53)の回転により前記膜状部材(51)が前記第1巻き取り軸(52)および前記第2巻き取り軸(53)に対して巻き取り、巻き戻しされることにより前記膜状部材(51)が前記タンク部材(41、42)内部で移動することを特徴とする請求項1に記載の空調用熱交換器。 - 前記膜状部材(51)は前記多数本のチューブ(44)の配列方向と直交する方向に移動するようになっており、
前記開口部(51a、51c)は、前記多数本のチューブ(44)の配列方向に複数個設けられた開口部(51a)を含んでおり、
前記複数個の開口部(51a)は前記多数本のチューブ(44)のうち所定本数ごとのチューブ(44)に前記熱源流体が流れるように配置されており、
更に、前記複数個の開口部(51a)からなる開口部群を前記膜状部材(51)の移動方向に沿って複数個形成するとともに、前記複数個の開口部群を前記膜状部材(51)の移動方向に沿って前記熱源流体が流れるチューブ本数が順次増減するように形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の空調用熱交換器。 - 前記多数本のチューブ(44)の配列方向に前記複数個の開口部(51a)を等間隔で配置することを特徴とする請求項3に記載の空調用熱交換器。
- 前記多数本のチューブ(44)の配列方向の一端側に偏って前記複数個の開口部(51a)を配置することを特徴とする請求項3に記載の空調用熱交換器。
- 前記熱源流体として空気を加熱する高温の熱源流体が流れることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の空調用熱交換器。
- 前記膜状部材(51)のうち前記移動方向の一端側に前記多数本のチューブ(44)の全部を閉塞する最大冷房用の膜部(51b)を形成し、
前記膜状部材(51)のうち前記移動方向の他端側に前記多数本のチューブ(44)の全部に前記熱源流体が流れることを許容する最大暖房用の開口部(51c)を前記開口部の1つとして形成したことを特徴とする請求項6に記載の空調用熱交換器。 - 車室内へ向かって空気が流れる空気通路を構成する空調ケース(1a)と、
前記空調ケース(1a)内に配置され、前記空気を加熱する暖房用熱交換器(4)とを備え、
前記暖房用熱交換器(4)を請求項6または7に記載の空調用熱交換器により構成したことを特徴とする車両用空調装置。 - 空調熱負荷条件に応じて前記膜状部材(51)の位置を自動制御する制御手段(56)を備えることを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003131902A JP2004330969A (ja) | 2003-05-09 | 2003-05-09 | 空調用熱交換器および車両用空調装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003131902A JP2004330969A (ja) | 2003-05-09 | 2003-05-09 | 空調用熱交換器および車両用空調装置 |
Publications (1)
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JP2004330969A true JP2004330969A (ja) | 2004-11-25 |
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Family Applications (1)
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JP2003131902A Withdrawn JP2004330969A (ja) | 2003-05-09 | 2003-05-09 | 空調用熱交換器および車両用空調装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004330969A (ja) |
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2003
- 2003-05-09 JP JP2003131902A patent/JP2004330969A/ja not_active Withdrawn
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