JP2004323927A - 溶鋼の真空脱ガス処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課 題】真空脱ガス処理を行なうにあたって、簡便な手段で取鍋内の溶鋼の均一攪拌を促進するとともに、溶鋼浴面の変動を抑制し、真空脱ガス処理に要する時間の短縮および均一な品質の溶鋼の溶製を図れる方法を提供する。
【解決手段】真空脱ガス槽の上昇側浸漬管と下降側浸漬管とを取鍋内の溶鋼に浸漬させ、溶鋼を環流することにより真空脱ガス処理を行なう真空脱ガス処理方法において、真空脱ガス処理中に取鍋の上方から上吹きランスを溶鋼に浸漬し、下降側浸漬管の側部の溶鋼にガスを噴射する。
【選択図】 図1
【解決手段】真空脱ガス槽の上昇側浸漬管と下降側浸漬管とを取鍋内の溶鋼に浸漬させ、溶鋼を環流することにより真空脱ガス処理を行なう真空脱ガス処理方法において、真空脱ガス処理中に取鍋の上方から上吹きランスを溶鋼に浸漬し、下降側浸漬管の側部の溶鋼にガスを噴射する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、取鍋内の溶鋼を均一に攪拌し、真空脱ガス処理に要する時間の短縮および均一な品質の溶鋼の溶製を可能とする真空脱ガス処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼材の高品質化のニーズが高まるにつれて、溶鋼の高清浄度化,高純度化が要求されている。そこで、転炉で脱炭処理を施した溶鋼を取鍋に出鋼し、さらに真空脱ガス槽を用いて真空脱ガス処理を施し、溶鋼の高清浄度化,高純度化を図る方法が広く採用されている。
【0003】
真空脱ガス処理を行なう際の取鍋と真空脱ガス槽の配置を、断面図として図3に模式的に示す。ただし図3では、取鍋1と真空脱ガス槽3に内張りされた耐火物は図示を省略する。
真空脱ガス槽3の下部には上昇側浸漬管5と下降側浸漬管6が配設されており、その上昇側浸漬管5と下降側浸漬管6を取鍋1内の溶鋼2に浸漬する。次いで、真空脱ガス槽3の上部に設けられる排気ダクト4から真空脱ガス槽3内のガスを吸引して、真空脱ガス槽3内を減圧する。
【0004】
真空脱ガス槽3内が減圧されることによって、取鍋1内の溶鋼2が真空脱ガス槽3内に吸い上げられる。上昇側浸漬管5には不活性ガス7の吹込みノズルが設けられており、上昇側浸漬管5の溶鋼2に不活性ガス7が吹込まれる。不活性ガス7は気泡となって溶鋼2内を浮上する。その結果、上昇側浸漬管5内の溶鋼2の比重が相対的に減少し、下降側浸漬管6内の溶鋼2の比重は上昇側浸漬管5側に比べて大きくなる。
【0005】
溶鋼2に比重差を付与することによって、取鍋1内の溶鋼2が上昇側浸漬管5を通って真空脱ガス槽3内に上昇し、さらに真空脱ガス槽3内の溶鋼2は下降側浸漬管6を通って取鍋1に下降する。このようにして溶鋼2が取鍋1から真空脱ガス槽3を経て再び取鍋1へ環流する間に、真空脱ガス槽3内で溶鋼2の真空脱ガス処理(すなわち不純物の除去)を行なう。
【0006】
ところが取鍋1内の溶鋼2は均一に流動せず、下降側浸漬管6の側部(とりわけ下降側浸漬管6側面と取鍋1内面との間)には溶鋼2が滞留する領域(以下、溶鋼滞留域という)が存在する。そこで真空脱ガス処理を行なう際に、取鍋1内の溶鋼2を均一に攪拌する技術が種々提案されている。
たとえば特許文献1には、取鍋底にガス吹き込み口を設けてガスを吹き込むことによって、溶鋼を攪拌する技術が提案されている。この技術は、取鍋底からガスを吹き込むので大きな攪拌力を得ることが可能である。しかしながら攪拌力が大きい故に、溶鋼浴面の変動が大きくなり、上昇側浸漬管や下降側浸漬管を取り付けている水冷フランジが溶鋼と接触し、その結果、水蒸気爆発を起こす危険性が高いという問題があった。
【0007】
また特許文献2には、取鍋を搭載した台車を回転させて、取鍋を連続的あるいは間欠的に回転させることによって、溶鋼を攪拌する技術が提案されている。しかしながら溶鋼を収容した取鍋の総重量は約500tonであり、それを搭載して回転させる台車は極めて大規模な設備となってしまう。その結果、設備の製作費や維持費が増大するという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭63−238946 号公報
【特許文献2】
特開平5−247521号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題を解消し、真空脱ガス処理を行なうにあたって、簡便な手段で取鍋内の溶鋼を均一に攪拌するとともに、溶鋼浴面の変動を抑制し、真空脱ガス処理に要する時間の短縮および均一な品質の溶鋼の溶製を図れる方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、真空脱ガス槽の上昇側浸漬管と下降側浸漬管とを取鍋内の溶鋼に浸漬させ、溶鋼を環流することにより真空脱ガス処理を行なう真空脱ガス処理方法において、真空脱ガス処理中に取鍋の上方から上吹きランスを溶鋼に浸漬し、下降側浸漬管の側部の溶鋼にガスを噴射する真空脱ガス処理方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用する装置の例を示す側面図であり、真空脱ガス槽3の上昇側浸漬管5(隠れているため非図示)と下降側浸漬管6を取鍋1内の溶鋼2に浸漬させていない状態を示す。ただし図1では、取鍋1は断面図で示す。
取鍋1内の溶鋼2には上吹きランス9の先端部が浸漬され、シリンダー10を駆動させることによって、上吹きランス9の先端部の深さを調整したり、あるいは必要に応じて上吹きランス9を退避させる。浸漬は溶鋼表層部とし、上吹きランス9の先端の浸漬深さは最大で1000mm程度とするなど、適宜に決定して良いが、これに限るものではなく、もっと深くても良い。
【0012】
真空脱ガス処理を行なう際には、上昇側浸漬管5と下降側浸漬管6を取鍋1内の溶鋼2に浸漬して、溶鋼2を取鍋1から真空脱ガス槽3に上昇させ、再び取鍋1へ環流させる。真空脱ガス槽3の上昇側浸漬管5と下降側浸漬管6を取鍋1内の溶鋼2に浸漬したときの、溶鋼2浴面近傍の断面図を図2に示す。ただし図2では、上吹きランス9は平面図で示す。
【0013】
真空脱ガス処理を行なうにあたって、溶鋼2を環流させると、下降側浸漬管6の側部、とりわけ下降側浸漬管6側面と取鍋1に内張りされた耐火物8との間に溶鋼滞留域11が生じる。そこで上吹きランス9からガス12を溶鋼2に噴射して、気泡による攪拌(いわゆるガスバブリング)を行なうことで、溶鋼滞留域11まで攪拌が及ぶようにし、溶鋼滞留域11を消滅させ、あるいは無害化させてしまう。このとき上吹きランス9の先端は、下降側浸漬管6下端に比べて深い位置に浸漬させる。ガス12を噴射する箇所は溶鋼滞留域11であっても良いし、その他の箇所であっても効果的に攪拌が及ぶため、これに限るものではない。
【0014】
本発明のガスバブリングは、ガス12の気泡が上昇する作用によって溶鋼滞留域11の溶鋼2を流動させるものであるから、ガス12に過剰な流量を設定する必要はない。したがって溶鋼2浴面の変動を抑制しながら、溶鋼2を攪拌することが可能となる。
なおガス12は、溶鋼2と反応しないガス(たとえばN2 ガス,Arガス等の不活性ガス)を用いるのが好ましく、上昇側浸漬管5内の溶鋼2に吹込む不活性ガス7との供給源を共通化することも可能であり、小規模な改造で既存の設備を利用できる。
【0015】
このようにして真空脱ガス処理を行なう際に本発明を適用すると、簡便な手段で取鍋内の溶鋼を安全かつ均一に攪拌することが可能であり、しかも溶鋼浴面の変動を抑制して脱ガス処理に要する時間を短縮し、均一な品質の溶鋼を効率良く溶製できる。
【0016】
【実施例】
図1に示す装置を用いて溶鋼2の真空脱ガス処理を行なった。その際、図4に示した上吹きランス浸漬位置GBから溶鋼2に上吹きランス9を浸漬し、上吹きランス9の先端が下降側浸漬管6下端から 500mm下方に位置するようにシリンダー10を操作した。さらに上吹きランス9からArガスを流速300N−liter/分で溶鋼滞留域11に噴射した。
【0017】
真空脱ガス処理を開始して 340秒経過後、溶鋼2のC濃度の分布を調査した。その結果、図4にS1で示すサンプリング位置(浴面からの深さ500mm )で測定した平均C濃度は 100質量ppm であった。一方、溶鋼滞留域11に相当するS2で示すサンプリング位置(浴面からの深さ300mm )で測定した平均C濃度は 130質量ppm であった。
【0018】
次に、図4に示したトレーサー投入位置TRにトレーサー(すなわちNi)を投入して、上記と同じ条件で真空脱ガス処理を行なった。その際、サンプリング位置S1,S2でNi濃度を測定した。これを発明例とする。
一方、 比較例として、上吹きランス9を使用せず、Arガスを噴射しない状態で真空脱ガス処理を行なった。その他の条件は発明例と同じであるから説明を省略する。
【0019】
発明例のNi濃度の推移を図5に示し、比較例のNi濃度の推移を図6に示す。図5,6において、サンプリング位置S1のNi濃度とサンプリング位置S2のNi濃度とが一致したときに、取鍋1内の溶鋼2が均一に攪拌されたことを意味する。
図5,6から明らかなように、発明例では真空脱ガス処理を開始して1分50秒後に溶鋼2が均一に攪拌されたのに対して、比較例では4分50秒後に溶鋼2が均一に攪拌された。
【0020】
つまり本発明によれば、真空脱ガス処理を行なうにあたって、取鍋1内の溶鋼2を短時間で均一に攪拌できることが確かめられた。
さらに、真空脱ガス処理の後工程の連続鋳造においても、従来は偏析に起因する不具合が1回/月程度の頻度で発生していたが、真空脱ガス処理に本発明を適用すると、連続鋳造における偏析に起因する不具合は皆無となった。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、真空脱ガス処理を行なうにあたって、簡便な手段で取鍋内の溶鋼を均一に攪拌するとともに、溶鋼浴面の変動を抑制し、真空脱ガス処理に要する時間を短縮するとともに、均一な品質の溶鋼を溶製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する装置の例を示す側面図であり、取鍋は断面図で示す。
【図2】本発明を適用する装置の例を示す浴面近傍の断面図であり、上吹きランスは平面図で示す。
【図3】真空脱ガス処理を行なう際の取鍋と真空脱ガス槽の配置を模式的に示す断面図である。
【図4】C濃度測定位置と上吹きランス浸漬位置を模式的に示す平面図である。
【図5】発明例のNi濃度の推移を示すグラフである。
【図6】比較例のNi濃度の推移を示すグラフである。
【符号の説明】
1 取鍋
2 溶鋼
3 真空脱ガス槽
4 排気ダクト
5 上昇側浸漬管
6 下降側浸漬管
7 不活性ガス
8 耐火物
9 上吹きランス
10 シリンダー
11 溶鋼滞留域
12 バブリングガス
S1 C濃度測定位置
S2 C濃度測定位置
CL1 取鍋中心線
CL2 真空脱ガス槽中心線
GB 上吹きランス浸漬位置
TR トレーサー投入位置
【発明の属する技術分野】
本発明は、取鍋内の溶鋼を均一に攪拌し、真空脱ガス処理に要する時間の短縮および均一な品質の溶鋼の溶製を可能とする真空脱ガス処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼材の高品質化のニーズが高まるにつれて、溶鋼の高清浄度化,高純度化が要求されている。そこで、転炉で脱炭処理を施した溶鋼を取鍋に出鋼し、さらに真空脱ガス槽を用いて真空脱ガス処理を施し、溶鋼の高清浄度化,高純度化を図る方法が広く採用されている。
【0003】
真空脱ガス処理を行なう際の取鍋と真空脱ガス槽の配置を、断面図として図3に模式的に示す。ただし図3では、取鍋1と真空脱ガス槽3に内張りされた耐火物は図示を省略する。
真空脱ガス槽3の下部には上昇側浸漬管5と下降側浸漬管6が配設されており、その上昇側浸漬管5と下降側浸漬管6を取鍋1内の溶鋼2に浸漬する。次いで、真空脱ガス槽3の上部に設けられる排気ダクト4から真空脱ガス槽3内のガスを吸引して、真空脱ガス槽3内を減圧する。
【0004】
真空脱ガス槽3内が減圧されることによって、取鍋1内の溶鋼2が真空脱ガス槽3内に吸い上げられる。上昇側浸漬管5には不活性ガス7の吹込みノズルが設けられており、上昇側浸漬管5の溶鋼2に不活性ガス7が吹込まれる。不活性ガス7は気泡となって溶鋼2内を浮上する。その結果、上昇側浸漬管5内の溶鋼2の比重が相対的に減少し、下降側浸漬管6内の溶鋼2の比重は上昇側浸漬管5側に比べて大きくなる。
【0005】
溶鋼2に比重差を付与することによって、取鍋1内の溶鋼2が上昇側浸漬管5を通って真空脱ガス槽3内に上昇し、さらに真空脱ガス槽3内の溶鋼2は下降側浸漬管6を通って取鍋1に下降する。このようにして溶鋼2が取鍋1から真空脱ガス槽3を経て再び取鍋1へ環流する間に、真空脱ガス槽3内で溶鋼2の真空脱ガス処理(すなわち不純物の除去)を行なう。
【0006】
ところが取鍋1内の溶鋼2は均一に流動せず、下降側浸漬管6の側部(とりわけ下降側浸漬管6側面と取鍋1内面との間)には溶鋼2が滞留する領域(以下、溶鋼滞留域という)が存在する。そこで真空脱ガス処理を行なう際に、取鍋1内の溶鋼2を均一に攪拌する技術が種々提案されている。
たとえば特許文献1には、取鍋底にガス吹き込み口を設けてガスを吹き込むことによって、溶鋼を攪拌する技術が提案されている。この技術は、取鍋底からガスを吹き込むので大きな攪拌力を得ることが可能である。しかしながら攪拌力が大きい故に、溶鋼浴面の変動が大きくなり、上昇側浸漬管や下降側浸漬管を取り付けている水冷フランジが溶鋼と接触し、その結果、水蒸気爆発を起こす危険性が高いという問題があった。
【0007】
また特許文献2には、取鍋を搭載した台車を回転させて、取鍋を連続的あるいは間欠的に回転させることによって、溶鋼を攪拌する技術が提案されている。しかしながら溶鋼を収容した取鍋の総重量は約500tonであり、それを搭載して回転させる台車は極めて大規模な設備となってしまう。その結果、設備の製作費や維持費が増大するという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開昭63−238946 号公報
【特許文献2】
特開平5−247521号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題を解消し、真空脱ガス処理を行なうにあたって、簡便な手段で取鍋内の溶鋼を均一に攪拌するとともに、溶鋼浴面の変動を抑制し、真空脱ガス処理に要する時間の短縮および均一な品質の溶鋼の溶製を図れる方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、真空脱ガス槽の上昇側浸漬管と下降側浸漬管とを取鍋内の溶鋼に浸漬させ、溶鋼を環流することにより真空脱ガス処理を行なう真空脱ガス処理方法において、真空脱ガス処理中に取鍋の上方から上吹きランスを溶鋼に浸漬し、下降側浸漬管の側部の溶鋼にガスを噴射する真空脱ガス処理方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用する装置の例を示す側面図であり、真空脱ガス槽3の上昇側浸漬管5(隠れているため非図示)と下降側浸漬管6を取鍋1内の溶鋼2に浸漬させていない状態を示す。ただし図1では、取鍋1は断面図で示す。
取鍋1内の溶鋼2には上吹きランス9の先端部が浸漬され、シリンダー10を駆動させることによって、上吹きランス9の先端部の深さを調整したり、あるいは必要に応じて上吹きランス9を退避させる。浸漬は溶鋼表層部とし、上吹きランス9の先端の浸漬深さは最大で1000mm程度とするなど、適宜に決定して良いが、これに限るものではなく、もっと深くても良い。
【0012】
真空脱ガス処理を行なう際には、上昇側浸漬管5と下降側浸漬管6を取鍋1内の溶鋼2に浸漬して、溶鋼2を取鍋1から真空脱ガス槽3に上昇させ、再び取鍋1へ環流させる。真空脱ガス槽3の上昇側浸漬管5と下降側浸漬管6を取鍋1内の溶鋼2に浸漬したときの、溶鋼2浴面近傍の断面図を図2に示す。ただし図2では、上吹きランス9は平面図で示す。
【0013】
真空脱ガス処理を行なうにあたって、溶鋼2を環流させると、下降側浸漬管6の側部、とりわけ下降側浸漬管6側面と取鍋1に内張りされた耐火物8との間に溶鋼滞留域11が生じる。そこで上吹きランス9からガス12を溶鋼2に噴射して、気泡による攪拌(いわゆるガスバブリング)を行なうことで、溶鋼滞留域11まで攪拌が及ぶようにし、溶鋼滞留域11を消滅させ、あるいは無害化させてしまう。このとき上吹きランス9の先端は、下降側浸漬管6下端に比べて深い位置に浸漬させる。ガス12を噴射する箇所は溶鋼滞留域11であっても良いし、その他の箇所であっても効果的に攪拌が及ぶため、これに限るものではない。
【0014】
本発明のガスバブリングは、ガス12の気泡が上昇する作用によって溶鋼滞留域11の溶鋼2を流動させるものであるから、ガス12に過剰な流量を設定する必要はない。したがって溶鋼2浴面の変動を抑制しながら、溶鋼2を攪拌することが可能となる。
なおガス12は、溶鋼2と反応しないガス(たとえばN2 ガス,Arガス等の不活性ガス)を用いるのが好ましく、上昇側浸漬管5内の溶鋼2に吹込む不活性ガス7との供給源を共通化することも可能であり、小規模な改造で既存の設備を利用できる。
【0015】
このようにして真空脱ガス処理を行なう際に本発明を適用すると、簡便な手段で取鍋内の溶鋼を安全かつ均一に攪拌することが可能であり、しかも溶鋼浴面の変動を抑制して脱ガス処理に要する時間を短縮し、均一な品質の溶鋼を効率良く溶製できる。
【0016】
【実施例】
図1に示す装置を用いて溶鋼2の真空脱ガス処理を行なった。その際、図4に示した上吹きランス浸漬位置GBから溶鋼2に上吹きランス9を浸漬し、上吹きランス9の先端が下降側浸漬管6下端から 500mm下方に位置するようにシリンダー10を操作した。さらに上吹きランス9からArガスを流速300N−liter/分で溶鋼滞留域11に噴射した。
【0017】
真空脱ガス処理を開始して 340秒経過後、溶鋼2のC濃度の分布を調査した。その結果、図4にS1で示すサンプリング位置(浴面からの深さ500mm )で測定した平均C濃度は 100質量ppm であった。一方、溶鋼滞留域11に相当するS2で示すサンプリング位置(浴面からの深さ300mm )で測定した平均C濃度は 130質量ppm であった。
【0018】
次に、図4に示したトレーサー投入位置TRにトレーサー(すなわちNi)を投入して、上記と同じ条件で真空脱ガス処理を行なった。その際、サンプリング位置S1,S2でNi濃度を測定した。これを発明例とする。
一方、 比較例として、上吹きランス9を使用せず、Arガスを噴射しない状態で真空脱ガス処理を行なった。その他の条件は発明例と同じであるから説明を省略する。
【0019】
発明例のNi濃度の推移を図5に示し、比較例のNi濃度の推移を図6に示す。図5,6において、サンプリング位置S1のNi濃度とサンプリング位置S2のNi濃度とが一致したときに、取鍋1内の溶鋼2が均一に攪拌されたことを意味する。
図5,6から明らかなように、発明例では真空脱ガス処理を開始して1分50秒後に溶鋼2が均一に攪拌されたのに対して、比較例では4分50秒後に溶鋼2が均一に攪拌された。
【0020】
つまり本発明によれば、真空脱ガス処理を行なうにあたって、取鍋1内の溶鋼2を短時間で均一に攪拌できることが確かめられた。
さらに、真空脱ガス処理の後工程の連続鋳造においても、従来は偏析に起因する不具合が1回/月程度の頻度で発生していたが、真空脱ガス処理に本発明を適用すると、連続鋳造における偏析に起因する不具合は皆無となった。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、真空脱ガス処理を行なうにあたって、簡便な手段で取鍋内の溶鋼を均一に攪拌するとともに、溶鋼浴面の変動を抑制し、真空脱ガス処理に要する時間を短縮するとともに、均一な品質の溶鋼を溶製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する装置の例を示す側面図であり、取鍋は断面図で示す。
【図2】本発明を適用する装置の例を示す浴面近傍の断面図であり、上吹きランスは平面図で示す。
【図3】真空脱ガス処理を行なう際の取鍋と真空脱ガス槽の配置を模式的に示す断面図である。
【図4】C濃度測定位置と上吹きランス浸漬位置を模式的に示す平面図である。
【図5】発明例のNi濃度の推移を示すグラフである。
【図6】比較例のNi濃度の推移を示すグラフである。
【符号の説明】
1 取鍋
2 溶鋼
3 真空脱ガス槽
4 排気ダクト
5 上昇側浸漬管
6 下降側浸漬管
7 不活性ガス
8 耐火物
9 上吹きランス
10 シリンダー
11 溶鋼滞留域
12 バブリングガス
S1 C濃度測定位置
S2 C濃度測定位置
CL1 取鍋中心線
CL2 真空脱ガス槽中心線
GB 上吹きランス浸漬位置
TR トレーサー投入位置
Claims (1)
- 真空脱ガス槽の上昇側浸漬管と下降側浸漬管とを取鍋内の溶鋼に浸漬させ、前記溶鋼を環流することにより真空脱ガス処理を行なう真空脱ガス処理方法において、前記真空脱ガス処理中に前記取鍋の上方から上吹きランスを前記溶鋼に浸漬し、前記下降側浸漬管の側部の溶鋼にガスを噴射することを特徴とする真空脱ガス処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003121498A JP2004323927A (ja) | 2003-04-25 | 2003-04-25 | 溶鋼の真空脱ガス処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003121498A JP2004323927A (ja) | 2003-04-25 | 2003-04-25 | 溶鋼の真空脱ガス処理方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004323927A true JP2004323927A (ja) | 2004-11-18 |
Family
ID=33500050
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003121498A Pending JP2004323927A (ja) | 2003-04-25 | 2003-04-25 | 溶鋼の真空脱ガス処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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2003
- 2003-04-25 JP JP2003121498A patent/JP2004323927A/ja active Pending
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