JP2004314459A - 液滴吐出装置及びヘッド異常の予測及び回復方法 - Google Patents

液滴吐出装置及びヘッド異常の予測及び回復方法 Download PDF

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Abstract

【課題】液滴吐出ヘッドの吐出異常の有無を検出し、その履歴データを作成し、履歴データに基づいてヘッド異常の発生を予測推定し、それに応じて回復処理を実行可能な液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】本発明の液滴吐出装置は、振動板と、アクチュエータと、キャビティとを有する複数の液滴吐出ヘッドからなるヘッドユニット35と、振動板の残留振動を検出し、残留振動の振動パターンに基づいて、液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出するヘッド異常検出手段10と、この振動パターンに基づいて、液体の粘度を検出する粘度検出手段30と、残留振動波形の履歴データを作成する履歴データ作成手段40と、履歴データに基づいてヘッド異常の発生を予測推定する異常予測推定手段50と、ヘッド異常を解消させる回復処理を実行し、予測推定結果に応じて、予防的に回復処理を実行する回復手段24とを備える。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液滴吐出装置及び液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液滴吐出装置の一つであるインクジェットプリンタは、複数のノズルからインク滴(液滴)を吐出して所定の用紙上に画像形成を行っている。インクジェットプリンタの印刷ヘッド(インクジェットヘッド)には、多数のノズルが設けられているが、インクの粘度の増加や、気泡の混入、塵や紙粉の付着等の原因によって、いくつかのノズルが目詰まりしてインク滴を吐出できない場合がある。ノズルが目詰まりするとプリントされた画像内にドット抜けが生じ、画質を劣化させる原因となっている。
【0003】
従来、このようなインク滴の吐出異常(以下、「ドット抜け」ともいう)を検出する方法として、インクジェットヘッドのノズルからインク滴が吐出されない状態(インク滴吐出異常状態)をインクジェットヘッドのノズル毎に光学的に検出する方法が開示されている(例えば、特許文献1など)。この方法により、ドット抜け(吐出異常)を発生しているノズルを特定することが可能となっている。
【0004】
しかしながら、上述の光学式のドット抜け(液滴吐出異常)検出方法では、光源及び光学センサを含む検出器が液滴吐出装置(例えば、インクジェットプリンタ)に取付けられている。この検出方法では、一般に、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)のノズルから吐出する液滴が光源と光学センサの間を通過し、光源と光学センサの間の光を遮断するように、光源及び光学センサを精密な精度で(高精度に)設定(設置)しなければならないという問題がある。また、このような検出器は通常高価であり、インクジェットプリンタの製造コストが増大してしまうという問題もある。さらに、ノズルからのインクミストや印刷用紙等の紙粉によって、光源の出力部や光学センサの検出部が汚れてしまい、検出器の信頼性が問題となる可能性もある。
【0005】
さらに、従来の光学式のドット抜け検出方法では、検出されたノズルのドット抜け(インク滴の吐出異常)を記録し、それに基づいて履歴データなどを作成することをしないため、吐出異常(ヘッド異常)の発生を予測推定することができず、結局吐出異常が発生して初めてそのノズルが吐出異常であることを検出できるのみである。これでは、インクジェットプリンタ(液滴吐出装置)のスループットを低下あるいは悪化させてしまう。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−309963号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液滴吐出ヘッドの吐出異常(ヘッド異常)の発生の有無を検出するとともに、その履歴データを作成し、履歴データに基づいてヘッド異常の発生を予測推定し、それに応じて適切な回復処理を実行することができる液滴吐出装置及び液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態において、本発明の液滴吐出装置は、
振動板と、前記振動板を変位させるアクチュエータと、内部に液体が充填され、前記振動板の変位により、該内部の圧力が増減されるキャビティと、前記キャビティに連通し、前記キャビティ内の圧力の増減により前記液体を液滴として吐出するノズルとを有する複数の液滴吐出ヘッドと、
前記アクチュエータを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路によって前記アクチュエータが駆動された後、前記アクチュエータにより変位された前記振動板の残留振動を検出する残留振動検出手段を有し、前記残留振動検出手段によって検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記各液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出するヘッド異常検出手段と、
前記残留振動の振動パターンに基づいて、前記残留振動波形の履歴データを作成する履歴データ作成手段と、
前記履歴データ作成手段によって作成された履歴データに基づいて、前記ヘッド異常の発生を予測推定する異常予測推定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、駆動回路によるアクチュエータの駆動(液滴を吐出しない程度のアクチュエータの駆動を含む)により、液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出することができるので、精度よくヘッド異常を検出することができるとともに、残留振動波形の履歴データにより、ヘッド異常の発生の時期を精度よく予測することができる。また、液滴を吐出しない程度にアクチュエータを駆動する場合には、検出のためだけに液滴を吐出しないので、無駄な液滴(排液滴)の発生を防止することができる。また、例えば、光学式の検出装置では、検出の信頼性を確保するために、検出装置のセンサ部への液滴付着や液滴の吐出方向などに注意(意識)をしなければならないが、本発明ではこのようなことがないので、検出の信頼性が高い。
なお、「振動板の残留振動」とは、前記アクチュエータが前記駆動回路の駆動信号(電圧信号)により液滴吐出動作や吐出しない程度の動作を行った後、次の駆動信号が入力されて再び液滴吐出動作を実行するまでの間に、この液滴吐出動作により前記振動板が減衰しながら振動を続けている状態をいう。
【0010】
好ましくは、本発明の液滴吐出装置は、前記残留振動の振動パターンに基づいて、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の粘度を検出する粘度検出手段を更に備える。これにより、液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の粘度を検出することができる。この場合、好ましくは、前記残留振動の振動パターンは、前記残留振動の振幅を含み、前記粘度検出手段は、該残留振動の振幅に基づいて、前記キャビティ内の液体の粘度を検出してもよい。
【0011】
ここで、好ましくは、前記ヘッド異常検出手段は、前記残留振動の振動パターンに基づいて、前記ヘッド異常の発生の有無とともに、ヘッド異常が発生していた際、その原因を判定する。この場合、好ましくは、前記振動板の残留振動の振動パターンは、前記残留振動の周期を含み、前記ヘッド異常検出手段は、前記振動板の残留振動の周期が所定の範囲の周期よりも短いときには、前記キャビティ内に気泡が混入したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が所定の閾値よりも長いときには、前記キャビティ内の液体が乾燥により増粘したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が前記所定の範囲の周期よりも長く、前記所定の閾値よりも短いときには、前記ノズルの出口付近に紙粉が付着したものと判定してもよい。これにより、光学式検出装置など従来のドット抜け検出を行うことができる液滴吐出装置では判定不可能である液滴の吐出異常の原因を判定することができ、それによって、必要に応じ、その原因に対し適切な回復処理を上記のように選択し、実行することができる。なお、本発明において、「紙粉」とは、単に記録用紙などから発生した紙粉のみに限らず、例えば、紙送りローラ(給紙ローラ)などのゴムの切れ端や、空気中に浮遊するごみなどを含むノズル付近に付着して液滴吐出の妨げとなるすべてのものをいう。
【0012】
また、好ましくは、本発明の液滴吐出装置は、前記ヘッド異常検出手段によってヘッド異常が検出された場合、あるいは、前記粘度検出手段によって検出された前記液体の粘度が所定値よりも高いと検出された場合には、該検出されたヘッド異常又は粘度増加を解消させる回復処理を実行する回復手段を更に備える。これにより、ヘッド異常や液体の粘度の増粘が発生した場合に、適切に回復することができる。ここで、好ましくは、前記回復手段は、前記異常予測推定手段による予測推定結果に基づいて、予防的に前記回復処理を実行する。回復手段が予防的に回復処理を実行することにより、ヘッド異常などの発生を未然に防ぐことができる。
【0013】
好ましくは、前記回復手段は、前記液滴吐出ヘッドのノズルが配列されるノズル面をワイパによりワイピング処理するワイピング手段と、前記アクチュエータを駆動してノズルから液滴を予備的に吐出するフラッシング処理を実行するフラッシング手段と、前記液滴吐出ヘッドのノズル面を覆うキャップに接続するポンプによりポンプ吸引処理をするポンピング手段とを含んでいる。
【0014】
また、ヘッド異常の原因が判定(特定)されている場合には、本発明の液滴吐出装置は、前記ヘッド異常検出手段によって判定されたヘッド異常の原因に応じて、前記ヘッド異常の原因を解消させる回復処理を実行する回復手段を更に備え、前記回復手段は、前記液滴吐出ヘッドのノズルが配列されるノズル面をワイパによりワイピング処理するワイピング手段と、前記アクチュエータを駆動してノズルから液滴を予備的に吐出するフラッシング処理を実行するフラッシング手段と、前記液滴吐出ヘッドのノズル面を覆うキャップに接続するポンプによりポンプ吸引処理をするポンピング手段とを含んでもよい。
【0015】
この場合、好ましくは、前記回復手段は、前記ヘッド異常検出手段により判定されたヘッド異常の原因が気泡混入の場合には前記ポンピング手段によるポンプ吸引処理を実行し、乾燥増粘の場合には前記フラッシング手段によるフラッシング処理又は前記ポンピング手段によるポンプ吸引処理を実行し、紙粉付着の場合には少なくとも前記ワイピング手段によるワイピング処理を実行する。
【0016】
また、好ましくは、前記ヘッド異常検出手段は、前記駆動回路によりアクチュエータが吐出動作を行っている吐出動作時、あるいは、前記駆動回路によりアクチュエータが吐出動作を行わない非吐出動作時に、前記各液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出する。この場合、前記ヘッド異常検出手段は、前記非吐出動作時には、前記駆動回路により液滴を吐出しない程度に前記アクチュエータを駆動して、前記各液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出するのが好ましい。これにより、ヘッド異常の検出動作による排インクの発生を防止することができる。
【0017】
ここで、好ましくは、前記異常予測推定手段は、前記液滴吐出ヘッドから正常に液滴が吐出されたときの残留振動の基準データと、前記残留振動検出手段によって検出された残留振動の検出データとに基づいて、偏差演算を実行し、該検出データの偏差に基づいて、前記ヘッド異常の発生を予測推定する。この場合、前記異常予測推定手段は、前記検出データの偏差が増加している場合には、前記ヘッド異常が発生したと推定してもよく、あるいは、前記検出データの偏差が前記ヘッド異常時の残留振動の基準データと一致している場合には、前記ヘッド異常が発生したと推定してもよい。
【0018】
さらに、好ましくは、本発明の液滴吐出装置は、前記液滴吐出ヘッドの前記アクチュエータによる吐出動作後の経過時間を計測する計時手段を更に備え、前記異常予測推定手段は、前記検出データの偏差が増加している場合には、前記ヘッド異常が発生する可能性があると推定し、前記計時手段によって前記偏差が所定の許容値に到達するまでの時間を計測することにより、該到達した時間に前記ヘッド異常が発生したと推定してもよい。この場合、好ましくは、本発明の液滴吐出装置は、前記ヘッド異常検出手段によってヘッド異常が検出された場合、該検出されたヘッド異常を解消させる回復処理を実行する回復手段を更に備え、前記回復手段は、前記所定の許容値に到達するまでの時間に応じて、前記回復処理を実行するよう構成されてもよい。
【0019】
また、好ましくは、前記ヘッド異常検出手段によって検出されたヘッド異常が前記キャビティ内の液体の乾燥による増粘である場合、前記回復手段は、前記所定の許容値に到達するまでの時間に応じて、前記アクチュエータを駆動してノズルから液滴を予備的に吐出するフラッシング処理を実行するよう構成されてもよい。
ここで、好ましくは、本発明の液滴吐出装置は、前記複数の液滴吐出ヘッドの周辺温度を計測する温度センサを更に備えている。この場合、前記残留振動の基準データ及び前記残留振動の検出データは、前記温度センサによって計測された周辺温度に基づいて補正されるよう構成されてもよい。
【0020】
さらに、好ましくは、前記ヘッド異常検出手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する静電容量成分あるいは前記アクチュエータの静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振するよう構成される。また、好ましくは、前記粘度検出手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する静電容量成分あるいは前記アクチュエータの静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振するよう構成される。
【0021】
ここで、好ましくは、前記発振回路は、前記静電容量成分と、前記静電容量成分を有するコンデンサに接続される抵抗素子の抵抗成分とによるCR発振回路を構成する。この場合、前記粘度検出手段及び/又は前記ヘッド異常検出手段は、前記発振回路の出力信号における発振周波数の変化に基づいて生成される所定の信号群により、前記振動板の残留振動の電圧波形を生成するF/V変換回路を含んでもよい。そして、前記粘度検出手段及び/又は前記ヘッド異常検出手段は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形を所定の波形に整形する波形整形回路を含んでもよい。
【0022】
また、好ましくは、前記ヘッド異常検出手段の前記波形整形回路は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形から直流成分を除去するDC成分除去手段と、このDC成分除去手段によって直流成分を除去された電圧波形と所定の電圧値とを比較する比較器とを含み、該比較器は、該電圧比較に基づいて、矩形波を生成して出力する。そして、好ましくは、前記ヘッド異常検出手段は、前記矩形波から前記振動板の残留振動の周期を計測する計測手段を含んでもよい。ここで、好ましくは、前記計測手段は、カウンタを有し、該カウンタが基準信号のパルスをカウントすることによって、前記矩形波の立ち上がりエッジ間あるいは立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの間の時間を計測する。
【0023】
また、好ましくは、前記粘度検出手段の前記波形整形回路は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形から直流成分を除去するDC成分除去手段を含む。この場合、好ましくは、前記粘度検出手段は、前記DC成分除去手段によって直流成分を除去された電圧波形のピーク値である前記減衰振動の波高値を検出するピーク検出手段を含み、前記ピーク検出手段によって検出された前記残留振動の波高値と所定の基準波高値との差に基づいて、前記液体の粘度を判定してもよい。
なお、好ましくは、本発明の液滴吐出装置は、前記ヘッド異常検出手段によってヘッド異常が検出された場合、その旨を報知する報知手段を更に備えるよう構成されてもよい。
【0024】
好ましくは、本発明の液滴吐出装置は、前記アクチュエータの駆動による前記振動板の変位動作後、前記アクチュエータとの接続を前記駆動回路から前記ヘッド異常検出手段に切り替える切替手段を更に備える。その代わりに、本発明の液滴吐出装置は、前記アクチュエータの駆動による前記振動板の変位動作後、前記アクチュエータとの接続を前記駆動回路から前記ヘッド異常検出手段及び前記粘度検出手段に切り替える切替手段を更に備えてもよい。この場合、本発明の液滴吐出装置は、前記ヘッド異常検出手段及び前記切替手段をそれぞれ複数備え、前記アクチュエータの駆動動作を行った前記液滴吐出ヘッドに対応する前記切替手段が前記アクチュエータとの接続を前記駆動回路から対応する前記ヘッド異常検出手段に切り替え、該切り替えられたヘッド異常検出手段は、対応する前記液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出するよう構成されてもよい。
【0025】
また、それらの代わりに、本発明の液滴吐出装置は、前記複数の液滴吐出ヘッドにそれぞれ対応する複数の切替手段と、前記ヘッド異常検出手段が前記複数の液滴吐出ヘッドのいずれのノズルに対して前記ヘッド異常を検出するかを決定する検出決定手段とを更に備え、
好ましくは、前記検出決定手段によって決定された前記液滴吐出ヘッドのノズルに対応する前記アクチュエータの駆動による前記振動板の変位動作後、対応する前記切替手段は、前記アクチュエータとの接続を前記駆動回路から前記ヘッド異常検出手段に切り替えるよう構成されてもよい。
【0026】
なお、前記アクチュエータは、静電式アクチュエータであってもよく、圧電素子のピエゾ効果を利用した圧電アクチュエータであってもよく、前記キャビティ内に充填された液体を加熱する発熱体であってもよい。また、好ましくは、本発明の液滴吐出装置は、前記ヘッド異常検出手段によって検出された前記ヘッド異常の原因を検出対象のノズルと関連付けて記憶する記憶手段を更に備えてもよい。さらに、好ましくは、本発明の液滴吐出装置は、インクジェットプリンタを含む。
【0027】
また、本発明の別の態様において、本発明の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法は、駆動回路によりアクチュエータを駆動し、振動板を変位させることにより、キャビティ内の液体をノズルから液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッドからなるヘッドユニットを有する液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法であって、
前記駆動回路によって前記アクチュエータが駆動された後、前記アクチュエータにより変位された前記振動板の残留振動を検出し、該検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記各液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出するとともに、前記残留振動波形の履歴データを作成し、該履歴データに基づいて、前記ヘッド異常の発生を予測推定することを特徴とする。
【0028】
ここで、好ましくは、前記残留振動の振動パターンは、前記残留振動の振幅を含み、該残留振動の振幅に基づいて、前記キャビティ内の液体の粘度を検出するよう構成されてもよい。また、好ましくは、前記振動板の残留振動の振動パターンは、前記残留振動の周期を含み、前記振動板の残留振動の周期が所定の範囲の周期よりも短いときには、前記キャビティ内に気泡が混入したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が所定の閾値よりも長いときには、前記キャビティ内の液体が乾燥により増粘したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が前記所定の範囲の周期よりも長く、前記所定の閾値よりも短いときには、前記ノズルの出口付近に紙粉が付着したものと判定するよう構成されてもよい。
【0029】
好ましくは、前記ヘッド異常が検出された場合、あるいは、前記液体の粘度が所定値よりも高いと検出された場合には、該検出されたヘッド異常又は粘度増加を解消させる回復処理を実行するよう構成される。また、本発明の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法は、前記履歴データに基づく前記ヘッド異常の発生の予測推定結果に応じて、予防的に前記回復処理を実行するよう構成されてもよい。
【0030】
さらに、好ましくは、本発明の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法は、前記液滴吐出ヘッドから正常に液滴が吐出されたときの残留振動の基準データと、前記検出された残留振動の検出データとに基づいて、偏差演算を実行し、該検出データの偏差に基づいて、前記ヘッド異常の発生を予測推定するよう構成されてもよい。ここで、前記検出データの偏差が増加している場合には、前記ヘッド異常が発生したと推定してもよく、前記検出データの偏差が前記ヘッド異常時の残留振動の基準データと一致している場合には、前記ヘッド異常が発生したと推定してもよい。
【0031】
その代わりに、前記検出データの偏差が増加している場合には、前記ヘッド異常が発生する可能性があると推定し、前記偏差が所定の許容値に到達するまでの時間を計測することにより、該到達した時間に前記ヘッド異常が発生したと推定してもよい。この場合、前記所定の許容値に到達するまでの時間に応じて、前記回復処理を実行するよう構成されてもよい。
また、好ましくは、本発明の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法は、前記検出されたヘッド異常の原因を検出対象のノズルと関連付けて記憶してもよい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図77を参照して本発明の液滴吐出装置及び液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態は例示として挙げるものであり、これにより本発明の内容を限定的に解釈すべきではない。なお、以下、本実施形態では、本発明の液滴吐出装置の一例として、インク(液体、液状材料)を吐出して記録用紙(液滴受容物)に画像をプリントするインクジェットプリンタを用いて説明する。
【0033】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における液滴吐出装置の一種であるインクジェットプリンタ1の構成を示す概略図である。なお、以下の説明では、図1中、上側を「上部」、下側を「下部」という。まず、このインクジェットプリンタ1の構成について説明する。
【0034】
図1に示すインクジェットプリンタ1は、装置本体2を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ21と、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口22と、上部面に操作パネル7とが設けられている。
操作パネル7は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。この操作パネル7の表示部は、後述するヘッド異常検出処理においてヘッド異常が検出された際にその旨を報知し、あるいは、インクが増粘し、インクの粘度が大きいときにその旨を報知する報知手段としても機能する。
【0035】
また、装置本体2の内部には、主に、往復動する印字手段(移動体)3を備える印刷装置(印刷手段)4と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置4に供給・排出する給紙装置(搬送手段)5と、印刷装置4及び給紙装置5を制御する制御部(制御手段)6とを有している。
制御部6の制御により、給紙装置5は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、印字手段3の下部近傍を通過する。このとき、印字手段3が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向(主走査方向)に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、印字手段3の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査及び副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
【0036】
印刷装置4は、印字手段3と、印字手段3を主走査方向に移動させる駆動源となるキャリッジモータ41と、キャリッジモータ41の回転を受けて、印字手段3を往復動させる往復動機構42とを備えている。なお、キャリッジモータ41及び往復動機構42でヘッド移動手段を構成する。
印字手段3は、その下部に、多数のノズル110を備えるインクの種類に対応した複数のヘッドユニット35と、各ヘッドユニット35にインクを供給する複数のインクカートリッジ(I/C)31と、各ヘッドユニット35及びインクカートリッジ31を搭載したキャリッジ32とを有している。
【0037】
また、ヘッドユニット35は、図3において後述するように、それぞれ一つの、ノズル110と、振動板121と、静電アクチュエータ120と、キャビティ141と、インク供給口142等で構成されたインクジェット式記録ヘッド(インクジェットヘッドあるいは液滴吐出ヘッド)100を多数備えている。なお、ヘッドユニット35は、図1ではインクカートリッジ31を含んだ構成を示しているが、このような構成に限定されない。例えば、インクカートリッジ31を別に固定し、チューブなどによってヘッドユニット35に供給されるようなものでもよい。したがって、以下において、印字手段3とは別に、それぞれ一つの、ノズル110と、振動板121と、静電アクチュエータ120と、キャビティ141と、インク供給口142等で構成されたインクジェットヘッド100を複数設けたものをヘッドユニット35と称するものとする。
【0038】
なお、インクカートリッジ31として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、印字手段3には、各色にそれぞれ対応したヘッドユニット35が設けられることになる。ここで、図1では、4色のインクに対応した4つのインクカートリッジ31を示しているが、印字手段3は、その他の色、例えば、ライトシアン、ライトマゼンダ、ダークイエローなどのインクカートリッジ31をさらに備えるように構成されてもよい。
【0039】
往復動機構42は、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸422と、キャリッジガイド軸422と平行に延在するタイミングベルト421とを有している。
キャリッジ32は、往復動機構42のキャリッジガイド軸422に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト421の一部に固定されている。
【0040】
キャリッジモータ41の作動により、プーリを介してタイミングベルト421を正逆走行させると、キャリッジガイド軸422に案内されて、印字手段3が往復動する。そして、この往復動の際に、印刷されるイメージデータ(印刷データ)に対応して、ヘッドユニット35内の複数のインクジェットヘッド100のノズル110から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0041】
給紙装置(搬送手段)5は、その駆動源となる給紙モータ51と、給紙モータ51の作動により回転する給紙ローラ52とを有している。
給紙ローラ52は、記録用紙Pの搬送経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ52aと駆動ローラ52bとで構成され、駆動ローラ52bは給紙モータ51に連結されている。これにより、給紙ローラ52は、トレイ21に設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置4に向かって1枚ずつ搬送し、印刷装置4から1枚ずつ排出するようになっている。なお、トレイ21に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
【0042】
制御部6は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)やディジタルカメラ(DC)等のホストコンピュータ8から入力された印刷データ(印字データ)に基づいて、印刷装置4や給紙装置5等を制御することにより記録用紙Pに印刷処理(描画処理)を行うものである。また、制御部6は、操作パネル7の表示部にエラーメッセージ等を表示させ、あるいはLEDランプ等を点灯/点滅させるとともに、操作部から入力された各種スイッチの押下信号に基づいて、対応する処理を各部に実行させるものである。
【0043】
図2は、本発明のインクジェットプリンタの主要部を概略的に示すブロック図である。この図2において、本発明のインクジェットプリンタ1は、ホストコンピュータ8から入力された印刷データなどを受け取るインターフェース部(IF:Interface)9と、制御部6と、キャリッジモータ41と、キャリッジモータ41を駆動制御するキャリッジモータドライバ43と、給紙モータ51と、給紙モータ51を駆動制御する給紙モータドライバ53と、ヘッドユニット35と、ヘッドユニット35を駆動制御するヘッドドライバ33と、操作パネル7と、ヘッド異常検出手段10と、粘度検出手段30と、履歴データ作成手段40と、異常予測推定手段50と、回復手段24と、計時手段25と、温度センサ37とを備える。なお、ヘッド異常検出手段10、粘度検出手段30、回復手段24、履歴データ作成手段40、異常予測推定手段50及びヘッドドライバ33については、詳細を後述する。
【0044】
この図2において、制御部6は、印刷処理や吐出異常検出処理(ヘッド異常検出処理を含む)、インク粘度検出処理、異常予測処理などの各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)61と、ホストコンピュータ8からIF9を介して入力される印刷データを図示しないデータ格納領域に格納する不揮発性半導体メモリの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)(記憶手段)62と、後述するヘッド異常検出処理などを実行する際に各種データを一時的に格納し、あるいは印刷処理などのアプリケーションプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)63と、各部を制御する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリの一種であるPROM64とを備えている。なお、制御部6の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0045】
上述のように、印字手段3は、各色のインクに対応した複数のヘッドユニット35から構成され、この各ヘッドユニット35は、複数のノズル110と、これらの各ノズル110に対応する静電アクチュエータ120と(複数のインクジェットヘッド100)を備える。すなわち、ヘッドユニット35は、1組のノズル110及び静電アクチュエータ120を有してなるインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100を複数個備えた構成になっている。そして、ヘッドドライバ33は、各インクジェットヘッドの静電アクチュエータ120を駆動して、インクの吐出タイミングを制御する駆動回路18と、切替手段23とから構成される(図16参照)。なお、インクジェットヘッド100及び静電アクチュエータ120の構成については後述する。
【0046】
また、制御部6には、図示しないが、例えば、インクカートリッジ31のインク残量、印字手段3の位置を検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。また、制御部6には、計時手段25や、温度センサ37などもそれぞれ電気的に接続されている。ここで、計時手段25は、インクジェットヘッド100の吐出動作後の経過時間や、主電源オフ後の経過時間や所定の設定時間などを計測するとともに、後述する偏差の許容値までの時間を計測するものであり、温度センサ37は、インクジェットヘッド100(ノズル110)の周辺温度を計測するためのものである。
【0047】
制御部6は、IF9を介して、ホストコンピュータ8から印刷データを入手すると、その印刷データをEEPROM62に格納する。そして、CPU61は、この印刷データに所定の処理を実行して、この処理データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ33、43、53に駆動信号を出力する。各ドライバ33、43、53を介してこれらの駆動信号が入力されると、ヘッドユニット35の複数のインクジェットヘッド100に対応する静電アクチュエータ120、印刷装置4のキャリッジモータ41及び給紙装置5がそれぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷処理が実行される。
【0048】
次に、各ヘッドユニット35内の各インクジェットヘッド100の構造を説明する。図3は、図2に示すヘッドユニット35内の1つのインクジェットヘッド100の概略的な断面図(インクカートリッジ31などの共通部分を含む)であり、図4は、1色のインクに対応するヘッドユニット35の概略的な構成を示す分解斜視図であり、図5は、図3に示すインクジェットヘッド100を複数適用したヘッドユニット35のノズル面の一例を示す平面図である。なお、図3及び図4は、通常使用される状態とは上下逆に示されており、図5は、図3に示すインクジェットヘッド100を図中上方から見たときの平面図である。
【0049】
図3に示すように、ヘッドユニット35は、インク取り入れ口131、ダンパ室130及びインク供給チューブ311を介して、インクカートリッジ31に接続されている。ここで、ダンパ室130は、ゴムからなるダンパ132を備えている。このダンパ室130により、キャリッジ32が往復走行する際のインクの揺れ及びインク圧の変化を吸収することができ、これにより、ヘッドユニット35の各インクジェットヘッド100に所定量のインクを安定的に供給することができる。
【0050】
また、ヘッドユニット35は、シリコン基板140を挟んで、上側に同じくシリコン製のノズルプレート150と、下側にシリコンと熱膨張率が近いホウ珪酸ガラス基板(ガラス基板)160とがそれぞれ積層された3層構造をなしている。中央のシリコン基板140には、独立した複数のキャビティ(圧力室)141(図4では、7つのキャビティを示す)と、1つのリザーバ(共通インク室)143と、このリザーバ143を各キャビティ141に連通させるインク供給口(オリフィス)142としてそれぞれ機能する溝が形成されている。各溝は、例えば、シリコン基板140の表面からエッチング処理を施すことにより形成することができる。このノズルプレート150と、シリコン基板140と、ガラス基板160とがこの順序で接合され、各キャビティ141、リザーバ143、各インク供給口142が区画形成されている。
【0051】
これらのキャビティ141は、それぞれ短冊状(直方体状)に形成されており、後述する振動板121の振動(変位)によりその容積が可変であり、この容積変化によりノズル(インクノズル)110からインク(液状材料)をインク滴(液滴)として吐出するよう構成されている。ノズルプレート150には、各キャビティ141の先端側の部分に対応する位置に、ノズル110が形成されており、これらが各キャビティ141に連通している。また、リザーバ143が位置しているガラス基板160の部分には、リザーバ143に連通するインク取入れ口131が形成されている。インクは、インクカートリッジ31からインク供給チューブ311、ダンパ室130を経てインク取入れ口131を通り、リザーバ143に供給される。リザーバ143に供給されたインクは、各インク供給口142を通って、独立した各キャビティ141に供給される。なお、各キャビティ141は、ノズルプレート150と、側壁(隔壁)144と、底壁121とによって、区画形成されている。
【0052】
独立した各キャビティ141は、その底壁121が薄肉に形成されており、底壁121は、その面外方向(厚さ方向)、すなわち、図3において上下方向に弾性変形(弾性変位)可能な振動板(ダイヤフラム)として機能するように構成されている。したがって、この底壁121の部分を、以後の説明の都合上、振動板121と称して説明することもある(すなわち、以下、「底壁」と「振動板」のいずれにも符号121を用いる)。
【0053】
ガラス基板160のシリコン基板140側の表面には、シリコン基板140の各キャビティ141に対応した位置に、それぞれ、浅い凹部161が形成されている。したがって、各キャビティ141の底壁121は、凹部161が形成されたガラス基板160の対向壁162の表面に、所定の間隙を介して対峙している。すなわち、キャビティ141の底壁121と後述するセグメント電極122の間には、所定の厚さ(例えば、0.2ミクロン程度)の空隙が存在する。なお、前記凹部161は、例えば、エッチングなどで形成することができる。
【0054】
ここで、各キャビティ141の底壁(振動板)121は、ヘッドドライバ33から供給される駆動信号によってそれぞれ電荷を蓄えるための各キャビティ141側の共通電極124の一部を構成している。すなわち、各キャビティ141の振動板121は、それぞれ、後述する対応する静電アクチュエータ120の対向電極(コンデンサの対向電極)の一方を兼ねている。そして、ガラス基板160の凹部161の表面には、各キャビティ141の底壁121に対峙するように、それぞれ、共通電極124に対向する電極であるセグメント電極122が形成されている。また、図3に示すように、各キャビティ141の底壁121の表面は、シリコンの酸化膜(SiO)からなる絶縁層123により覆われている。このように、各キャビティ141の底壁121、すなわち、振動板121と、それに対応する各セグメント電極122とは、キャビティ141の底壁121の図3中下側の表面に形成された絶縁層123と凹部161内の空隙とを介し、対向電極(コンデンサの対向電極)を形成
(構成)している。したがって、振動板121と、セグメント電極122と、これらの間の絶縁層123及び空隙とにより、静電アクチュエータ120の主要部が構成される。
【0055】
図3に示すように、これらの対向電極の間に駆動電圧を印加するための駆動回路18を含むヘッドドライバ33は、制御部6から入力される印字信号(印字データ)に応じて、これらの対向電極間の充放電を行う。ヘッドドライバ(電圧印加手段)33の一方の出力端子は、個々のセグメント電極122に接続され、他方の出力端子は、シリコン基板140に形成された共通電極124の入力端子124aに接続されている。なお、シリコン基板140には不純物が注入されており、それ自体が導電性をもつために、この共通電極124の入力端子124aから底壁121の共通電極124に電圧を供給することができる。また、例えば、シリコン基板140の一方の面に金や銅などの導電性材料の薄膜を形成してもよい。これにより、低い電気抵抗で(効率良く)共通電極124に電圧(電荷)を供給することができる。この薄膜は、例えば、蒸着あるいはスパッタリング等によって形成すればよい。ここで、本実施形態では、例えば、シリコン基板140とガラス基板160とを陽極接合によって結合(接合)させるので、その陽極結合において電極として用いる導電膜をシリコン基板140の流路形成面側(図3に示すシリコン基板140の上部側)に形成している。そして、この導電膜をそのまま共通電極124の入力端子124aとして用いている。なお、本発明では、例えば、共通電極124の入力端子124aを省略してもよく、また、シリコン基板140とガラス基板160との接合方法は、陽極接合に限定されない。
【0056】
図4に示すように、ヘッドユニット35は、複数のインクジェットヘッド100に対応する複数のノズル110が形成されたノズルプレート150と、複数のキャビティ141、複数のインク供給口142、1つ(共通)のリザーバ143が形成されたシリコン基板(インク室基板)140と、絶縁層123とを備え、これらがガラス基板160を含む基体170に収納されている。基体170は、例えば、各種樹脂材料、各種金属材料等で構成されており、この基体170にシリコン基板140が固定、支持されている。
【0057】
なお、ノズルプレート150に形成された複数のノズル110は、図4では簡潔に示すためにリザーバ143に対して略並行に直線的に配列されているが、ノズル110の配列パターンはこの構成に限らず、通常は、例えば、図5に示すノズル配置パターンのように、段をずらして配置されてもよい。また、このノズル110間のピッチは、印刷解像度(dpi:dot per inch)に応じて適宜設定され得るものである。なお、図5では、4色のインク(インクカートリッジ31)を適用した場合におけるノズル110の配置パターンを示している。
【0058】
図6は、図3のIII−III断面の駆動信号入力時の各状態を示す。ヘッドドライバ33から対向電極間に駆動電圧が印加されると、対向電極間にクーロン力が発生し、底壁(振動板)121は、初期状態(図6(a))に対して、セグメント電極122側へ撓み、キャビティ141の容積が拡大する(図6(b))。この状態において、ヘッドドライバ33の制御により、対向電極間の電荷を急激に放電させると、振動板121は、その弾性復元力によって図中上方に復元し、初期状態における振動板121の位置を越えて上部に移動し、キャビティ141の容積が急激に収縮する(図6(c))。このときキャビティ141内に発生する圧縮圧力により、キャビティ141を満たすインク(液状材料)の一部が、このキャビティ141に連通しているインクノズル110からインク滴として吐出される。
【0059】
各キャビティ141の振動板121は、この一連の動作(ヘッドドライバ33の駆動信号によるインク吐出動作)により、次の駆動信号(駆動電圧)が入力されて再びインク滴を吐出するまでの間、減衰振動をしている。以下、この減衰振動を残留振動とも称する。振動板121の残留振動は、ノズル110やインク供給口142の形状、あるいはインク粘度等による音響抵抗rと、流路内のインク重量によるイナータンスmと、振動板121のコンプライアンスCmとによって決定される固有振動周波数を有するものと想定される。
【0060】
上記想定に基づく振動板121の残留振動の計算モデルについて説明する。図7は、振動板121の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す回路図である。このように、振動板121の残留振動の計算モデルは、音圧Pと、上述のイナータンスm、コンプライアンスCm及び音響抵抗rとで表せる。そして、図7の回路に音圧Pを与えた時のステップ応答を体積速度uについて計算すると、次式が得られる。
【0061】
【数1】
Figure 2004314459
【0062】
この式から得られた計算結果と、別途行ったインク吐出後の振動板121の残留振動の実験における実験結果とを比較する。図8は、振動板121の残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。この図8に示すグラフからも分かるように、実験値と計算値の2つの波形は、概ね一致している。
【0063】
さて、インクジェットヘッド100では、前述したような吐出動作を行ったにもかかわらずノズル110からインク滴が正常に吐出されない現象、すなわち液滴の吐出異常現象が発生する場合がある。この吐出異常が発生する原因としては、後述するように、▲1▼キャビティ141内への気泡の混入、▲2▼ノズル110付近でのインクの乾燥・増粘(固着)、▲3▼ノズル110出口付近への紙粉付着、等が挙げられる。
【0064】
この吐出異常が発生すると、その結果としては、典型的にはノズル110から液滴が吐出されないこと、すなわち液滴の不吐出現象が生じ、その場合、記録用紙Pに印刷(描画)した画像における画素のドット抜けを生じる。また、吐出異常(ヘッド異常)の場合には、ノズル110から液滴が吐出されたとしても、液滴の量が過少であったり、その液滴の飛行方向(弾道)がずれたりして適正に着弾しないので、やはり画素のドット抜けとなって現れる。このようなことから、以下の説明では、液滴の吐出異常のことを単に「ドット抜け」という場合もある。
【0065】
また、以下において、液滴吐出装置(インクジェットプリンタ1)のアクチュエータ(静電アクチュエータ120)が吐出駆動動作をしたにもかかわらずノズル110からインク滴が吐出しない状態を検出した場合、この異常を「吐出異常」といい、アクチュエータ(静電アクチュエータ120)が液滴を吐出しない程度の駆動をしたときに異常を検出した場合、上記「吐出異常」と合わせて、これらの異常を「ヘッド異常」というが、液滴を吐出しない程度の駆動によって検出した異常も単に「吐出異常」という場合もある。
【0066】
以下において、図8に示す比較結果に基づいて、インクジェットヘッド100のノズル110に発生する印刷処理時のドット抜け(吐出異常)現象(インク不吐出現象)の原因別に、振動板121の残留振動の計算値と実験値がマッチ(概ね一致)するように、音響抵抗r及び/又はイナータンスmの値を調整する。なお、ここでは、気泡混入、乾燥増粘及び紙粉付着の3種類について検討する。
【0067】
まず、ドット抜けの1つの原因であるキャビティ141内への気泡の混入について検討する。図9は、図3のキャビティ141内に気泡Bが混入した場合のノズル110付近の概念図である。この図9に示すように、発生した気泡Bは、キャビティ141の壁面に発生付着しているものと想定される(図9では、気泡Bの付着位置の一例として、気泡Bがノズル110付近に付着している場合を示す)。
【0068】
このように、キャビティ141内に気泡Bが混入した場合には、キャビティ141内を満たすインクの総重量が減り、イナータンスmが低下するものと考えられる。また、気泡Bは、キャビティ141の壁面に付着しているので、その径の大きさだけノズル110の径が大きくなったような状態となり、音響抵抗rが低下するものと考えられる。
【0069】
したがって、インクが正常に吐出された図8の場合に対して、音響抵抗r、イナータンスmを共に小さく設定して、気泡混入時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図10のような結果(グラフ)が得られた。図8及び図10のグラフから分かるように、キャビティ141内に気泡が混入した場合には、正常吐出時に比べて周波数が高くなる特徴的な残留振動波形が得られる。なお、音響抵抗rの低下などにより、残留振動の振幅の減衰率も小さくなり、残留振動は、その振幅をゆっくりと下げていることも確認することができる。
【0070】
図60は、キャビティ141内に気泡が混入した場合において、その気泡量が多い場合と、少ない場合とにおける振動板121の残留振動(残留振動波形)を示すグラフである。
キャビティ141内の気泡量が増加すると、インクの総重量がさらに減少し、イナータンスmが減少する。また、ノズル110の径がさらに大きくなった状態となり、音響抵抗rが減少する。この結果、図60に示すように、キャビティ141内の気泡量の増加に伴い、振動板121の残留振動の周波数は増大する(すわなち、振動板121の残留振動波形の周期は短くなる)。
【0071】
このキャビティ141内に混入した気泡の量(気泡量)と、振動板121の残留振動の周波数や残留振動波形の周期(振動パターン)との関係を示す、例えば、テーブルや演算式等の検量線は、実験的に求めることができる。そして、このテーブルなどを利用することにより、キャビティ141内の気泡量の増加の割合(程度)を検出することが可能である。
【0072】
次に、ドット抜けのもう1つの原因であるノズル110付近でのインクの乾燥(固着、増粘)について検討する。図11は、図3のノズル110付近のインクが乾燥により固着した場合のノズル110付近の概念図である。この図11に示すように、ノズル110付近のインクが乾燥して固着した場合、キャビティ141内のインクは、キャビティ141内に閉じこめられたような状況となる。このように、ノズル110付近のインクが乾燥、増粘した場合には、音響抵抗rが増加するものと考えられる。
【0073】
したがって、インクが正常に吐出された図8の場合に対して、音響抵抗rを大きく設定して、ノズル110付近のインク乾燥固着(増粘)時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図12のような結果(グラフ)が得られた。なお、図12に示す実験値は、数日間図示しないキャップ310(図36参照)を装着しない状態でヘッドユニット35を放置し、キャビティ141内のノズル110付近のインクが乾燥、増粘したことによりインクを吐出することができなくなった(インクが固着した)状態における振動板121の残留振動を測定したものである。図8及び図12のグラフから分かるように、ノズル110付近のインクが乾燥により固着した場合には、正常吐出時に比べて周波数が極めて低くなるとともに、残留振動が過減衰となる特徴的な残留振動波形が得られる。これは、インク滴を吐出するために振動板121が図3中下方に引き寄せられることによって、キャビティ141内にリザーバ143からインクが流入した後に、振動板121が図3中上方に移動するときに、キャビティ141内のインクの逃げ道がないために、振動板121が急激に振動できなくなるため(過減衰となるため)である。
【0074】
図61は、キャビティ141内のインクが増粘した場合において、その粘度が高い場合と、低い場合とにおける振動板121の残留振動(残留振動波形)を示すグラフである。
インク粘度が増加するに伴い、音響抵抗rが増加する。この結果、図61に示すように、インク粘度の増加に伴い、振動板121の残留振動波形の振幅は減少する。
【0075】
このインク粘度と、振動板121の残留振動波形の振幅(振動パターン)との関係を示す、例えば、テーブルや演算式等の検量線は、実験的に求めることができる。そして、このテーブルなどを利用することにより、キャビティ141内のインク粘度の増加の割合(程度)を検出することが可能である。なお、インク粘度は温度による影響を受けるので、周辺温度によって補正が必要であるが、粘度検出については詳細を後述する。
【0076】
次に、ドット抜けのさらにもう1つの原因であるノズル110出口付近への紙粉付着について検討する。図13は、図3のノズル110出口付近に紙粉が付着した場合のノズル110付近の概念図である。この図13に示すように、ノズル110の出口付近に紙粉が付着した場合、キャビティ141内から紙粉を介してインクが染み出してしまうとともに、ノズル110からインクを吐出することができなくなる。このように、ノズル110の出口付近に紙粉が付着し、ノズル110からインクが染み出している場合には、振動板121からみてキャビティ141内及び染み出し分のインクが正常時よりも増えることにより、イナータンスmが増加するものと考えられる。また、ノズル110の出口付近に付着した紙粉の繊維によって音響抵抗rが増大するものと考えられる。
【0077】
したがって、インクが正常に吐出された図8の場合に対して、イナータンスm、音響抵抗rを共に大きく設定して、ノズル110の出口付近への紙粉付着時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図14のような結果(グラフ)が得られた。図8及び図14のグラフから分かるように、ノズル110の出口付近に紙粉が付着した場合には、正常吐出時に比べて周波数が低くなる特徴的な残留振動波形が得られる(ここで、紙粉付着の場合、インクの乾燥の場合よりは、残留振動の周波数が高いことも、図12及び図14のグラフから分かる。)。なお、図15は、この紙粉付着前後におけるノズル110の状態を示す写真である。ノズル110の出口付近に紙粉が付着すると、紙粉に沿ってインクがにじみ出している状態を、図15(b)から見出すことができる。
【0078】
ここで、ノズル110付近のインクが乾燥して増粘した場合と、ノズル110の出口付近に紙粉が付着した場合とでは、いずれも正常にインク滴が吐出された場合に比べて減衰振動の周波数が低くなっている。これら2つのドット抜け(インク不吐出:吐出異常)の原因を振動板121の残留振動の波形から特定するために、例えば、減衰振動の周波数や周期、位相において所定のしきい値を持って比較するか、あるいは、残留振動(減衰振動)の周期変化や振幅変化の減衰率から特定することができる。
【0079】
図62は、ノズル110の出口付近に紙粉が付着した場合において、その紙粉付着量(紙粉量ともいう)が多い場合と、少ない場合との振動板121の残留振動(残留振動波形)を示すグラフである。
紙粉付着量が増加すると、ノズル110からにじみ出るインクが増え振動板121から見たインクの重量が増大し、イナータンスmが増加する。また、ノズル110に付着する紙紛の繊維の量が増えた状態となり、音響抵抗rが増加する。この結果、図62に示すように、紙粉付着量の増加に伴い、振動板121の残留振動の周波数は減少する(すわなち、振動板121の残留振動波形の周期は長くなる)。
【0080】
この紙粉付着量と、振動板121の残留振動の周波数や周期(振動パターン)との関係を示す、例えば、テーブルや演算式等の検量線は、実験的に求めることができる。そして、このテーブルなどを利用することにより、ノズル110出口付近の紙粉の付着の割合(程度)を検出することが可能である。
【0081】
このようにして、各インクジェットヘッド100におけるノズル110からのインク滴が吐出されたときの振動板121の残留振動の変化、特に、その周波数の変化によって、各インクジェットヘッド100の吐出異常を検出することができる。また、その場合の残留振動の周波数を正常吐出時の残留振動の周波数と比較することにより、吐出異常やヘッド異常の原因を特定することもできる。
【0082】
また、ヘッドドライバ33の駆動回路18によって、インク滴(液滴)を吐出しない程度の駆動信号(電圧信号)を入力した場合においても、振幅が小さくなるが、同様の振動板の残留振動波形が得られる。そのため、残留振動の振幅を示すグラフの縦軸方向を拡大することによって、それぞれの吐出異常(ヘッド異常)の原因に対応する図10、図12及び図14のグラフと同様の計算値及び実験値が得られる。したがって、インク滴を吐出しない程度に静電アクチュエータ120を駆動して、そのときの振動板121の残留振動を検出することにより、インクジェットヘッド100の吐出異常を検出することもできる。以下、液滴を吐出せずに検出できるインクジェットヘッド100の異常であるので、このように検出した場合の異常をヘッド異常と称する。
【0083】
次に、本発明のヘッド異常検出手段10について説明する。図16は、図2に示すヘッド異常検出手段10の概略的なブロック図である。この図16に示すように、本発明のヘッド異常検出手段10は、発振回路11と、F/V変換回路12と、波形整形回路15とから構成される残留振動検出手段16と、この残留振動検出手段16によって検出された残留振動波形データから周期や振幅などを計測する計測手段17と、この計測手段17によって計測された周期などに基づいてインクジェットヘッド100の吐出異常及びヘッド異常を判定する判定手段20とを備えている。
【0084】
ヘッド異常検出手段10では、残留振動検出手段16は、静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動に基づいて、発振回路11が発振し、その発振周波数からF/V変換回路12及び波形整形回路15において振動波形を形成して、振動板121の残留振動波形を検出する。そして、計測手段17は、検出された振動波形に基づいて残留振動の周期(振動周波数)などを計測し、判定手段20は、計測された残留振動の周期などに基づいて、ヘッドユニット35内のそれぞれのインクジェットヘッド100の吐出異常及びヘッド異常を検出、判定する。そして、判定手段20によって判定された判定結果は、制御部6の記憶手段62の所定の保存領域に格納される。なお、後述するように、駆動回路18を駆動するための信号及び切替手段23の切替動作のための信号は、制御部6から入力される。以下、ヘッド異常検出手段10の各構成要素について説明する。
【0085】
まず、静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動の周波数(振動数)を検出するために、発振回路11を用いる方法を説明する。図17は、図3の静電アクチュエータ120を平行平板コンデンサとした場合の概念図であり、図18は、図3の静電アクチュエータ120から構成されるコンデンサを含む発振回路11の回路図である。なお、図18に示す発振回路11は、シュミットトリガのヒステリシス特性を利用するCR発振回路であるが、本発明はこのようなCR発振回路に限定されず、アクチュエータ(振動板を含む)の静電容量成分(コンデンサC)を用いる発振回路であればどのような発振回路でもよい。すなわち、発振回路11は、例えば、LC発振回路を利用した構成としてもよい。また、本実施形態では、シュミットトリガインバータ111を用いた例を示して説明しているが、例えば、インバータを3段用いたCR発振回路を構成してもよい。
【0086】
図3に示すインクジェットヘッド100では、上述のように、振動板121と非常にわずかな間隔(空隙)を隔てたセグメント電極122とが対向電極を形成する静電アクチュエータ120を構成している。この静電アクチュエータ120は、図17に示すような平行平板コンデンサと考えることができる。このコンデンサの静電容量をC、振動板121及びセグメント電極122のそれぞれの表面積をS、2つの電極121、122の距離(ギャップ長)をg、両電極に挟まれた空間(空隙)の誘電率をε(真空の誘電率をε、空隙の比誘電率をεとすると、ε=ε・ε)とすると、図17に示すコンデンサ(静電アクチュエータ120)の静電容量C(x)は、次式で表される。
【0087】
【数2】
Figure 2004314459
なお、式(4)のxは、図17に示すように、振動板121の残留振動によって生じる振動板121の基準位置からの変位量を示している。
【0088】
この式(4)から分かるように、ギャップ長g(ギャップ長g−変位量x)が小さくなれば、静電容量C(x)は大きくなり、逆にギャップ長g(ギャップ長g−変位量x)が大きくなれば、静電容量C(x)は小さくなる。このように、静電容量C(x)は、(ギャップ長g−変位量x)(xが0の場合は、ギャップ長g)に反比例している。なお、図3に示す静電アクチュエータ120では、空隙は空気で満たされているので、比誘電率ε=1である。
【0089】
また、一般に、液滴吐出装置(本実施形態では、インクジェットプリンタ1)の解像度が高まるにつれて、吐出されるインク滴(インクドット)が微小化されるので、この静電アクチュエータ120は、高密度化、小型化される。それによって、インクジェットヘッド100の振動板121の表面積Sが小さくなり、小さな静電アクチュエータ120が構成される。さらに、インク滴吐出による残留振動によって変化する静電アクチュエータ120のギャップ長gは、初期ギャップgの1割程度となるため、式(4)から分かるように、静電アクチュエータ120の静電容量の変化量は非常に小さな値となる。
【0090】
この静電アクチュエータ120の静電容量の変化量(残留振動の振動パターンにより異なる)を検出するために、以下のような方法、すなわち、静電アクチュエータ120の静電容量に基づいた図18のような発振回路を構成し、発振された信号に基づいて残留振動の周波数(周期)を解析する方法を用いる。図18に示す発振回路11は、静電アクチュエータ120から構成されるコンデンサ(C)と、シュミットトリガインバータ111と、抵抗素子(R)112とから構成される。
【0091】
シュミットトリガインバータ111の出力信号がHighレベルの場合、抵抗素子112を介してコンデンサCを充電する。コンデンサCの充電電圧(振動板121とセグメント電極122との間の電位差)が、シュミットトリガインバータ111の入力スレッショルド電圧V+に達すると、シュミットトリガインバータ111の出力信号がLowレベルに反転する。そして、シュミットトリガインバータ111の出力信号がLowレベルとなると、抵抗素子112を介してコンデンサCに充電されていた電荷が放電される。この放電によりコンデンサCの電圧がシュミットトリガインバータ111の入力スレッショルド電圧V−に達すると、シュミットトリガインバータ111の出力信号が再びHighレベルに反転する。以降、この発振動作が繰り返される。
【0092】
ここで、上述のそれぞれの現象(気泡混入、乾燥、紙粉付着、及び正常吐出)におけるコンデンサCの静電容量の時間変化を検出するためには、この発振回路11による発振周波数は、残留振動の周波数が最も高い気泡混入時(図10参照)の周波数を検出することができる発振周波数に設定される必要がある。そのため、発振回路11の発振周波数は、例えば、検出する残留振動の周波数の数倍から数十倍以上、すなわち、気泡混入時の周波数よりおよそ1桁以上高い周波数となるようにしなければならない。この場合、好ましくは、気泡混入時の残留振動の周波数が正常吐出の場合と比較して高い周波数を示すため、気泡混入時の残留振動周波数が検知可能な発振周波数に設定するとよい。そうしなければ、吐出異常及びヘッド異常の現象に対して正確な残留振動の周波数を検出することができない。そのため、本実施形態では、発振周波数に応じて、発振回路11のCRの時定数を設定している。このように、発振回路11の発振周波数を高く設定することにより、この発振周波数の微小変化に基づいて、より正確な残留振動波形を検出することができる。
【0093】
なお、発振回路11から出力される発振信号の発振周波数の周期(パルス)毎に、測定用のカウントパルス(カウンタ)を用いてそのパルスをカウントし、初期ギャップgにおけるコンデンサCの静電容量で発振させた場合の発振周波数のパルスのカウント量を測定したカウント量から減算することにより、残留振動波形について発振周波数毎のデジタル情報が得られる。これらのデジタル情報に基づいて、デジタル/アナログ(D/A)変換を行うことにより、概略的な残留振動波形が生成され得る。このような方法を用いてもよいが、測定用のカウントパルス(カウンタ)には、発振周波数の微小変化を測定することができる高い周波数(高解像度)のものが必要となる。このようなカウントパルス(カウンタ)は、コストをアップさせるため、本発明のヘッド異常検出手段10では、図19に示すF/V変換回路12を用いている。
【0094】
図19は、図16に示すヘッド異常検出手段10のF/V変換回路12の回路図である。この図19に示すように、F/V変換回路12は、3つのスイッチSW1、SW2、SW3と、2つのコンデンサC1、C2と、抵抗素子R1と、定電流Isを出力する定電流源13と、バッファ14とから構成される。このF/V変換回路12の動作を図20のタイミングチャート及び図21のグラフを用いて説明する。
【0095】
まず、図20のタイミングチャートに示す充電信号、ホールド信号及びクリア信号の生成方法について説明する。充電信号は、発振回路11の発振パルスの立ち上がりエッジから固定時間trを設定し、その固定時間trの間Highレベルとなるようにして生成される。ホールド信号は、充電信号の立ち上がりエッジに同期して立ち上がり、所定の固定時間だけHighレベルに保持され、Lowレベルに立ち下がるようにして生成される。クリア信号は、ホールド信号の立ち下がりエッジに同期して立ち上がり、所定の固定時間だけHighレベルに保持され、Lowレベルに立ち下がるようにして生成される。なお、後述するように、コンデンサC1からコンデンサC2への電荷の移動及びコンデンサC1の放電は瞬時に行われるので、ホールド信号及びクリア信号のパルスは、発振回路11の出力信号の次の立ち上がりエッジまでにそれぞれ1つのパルスが含まれればよく、上記のような立ち上がりエッジ、立ち下がりエッジに限定されない。
【0096】
きれいな残留振動の波形(電圧波形)を得るために、図21を参照して、固定時間tr及びt1の設定方法を説明する。固定時間trは、静電アクチュエータ120が初期ギャップ長gのときにおける静電容量Cで発振した発振パルスの周期から調整され、充電時間t1による充電電位がC1の充電範囲のおよそ1/2付近となるように設定される。また、ギャップ長gが最大(Max)の位置における充電時間t2から最小(Min)の位置における充電時間t3の間で、コンデンサC1の充電範囲を超えないように充電電位の傾きが設定される。すなわち、充電電位の傾きは、dV/dt=Is/C1によって決定されるため、定電流源13の出力定電流Isを適当な値に設定すればよい。この定電流源13の出力定電流Isをその範囲内でできるだけ高く設定することによって、静電アクチュエータ120によって構成されるコンデンサの微小な静電容量の変化を高感度で検出することができ、静電アクチュエータ120の振動板121の微小な変化を検出することが可能となる。
【0097】
次いで、図22を参照して、図16に示す波形整形回路15の構成を説明する。図22は、図16の波形整形回路15の回路構成を示す回路図である。この波形整形回路15は、残留振動波形を矩形波として判定手段20に出力するものである。この図22に示すように、波形整形回路15は、2つのコンデンサC3(DC成分除去手段)、C4と、2つの抵抗素子R2、R3と、2つの直流電圧源Vref1、Vref2と、増幅器(オペアンプ)151と、比較器(コンパレータ)152とから構成される。なお、残留振動波形の波形整形処理において、検出される波高値をそのまま出力して、残留振動波形の振幅を計測するように構成してもよい。
【0098】
F/V変換回路12のバッファ14の出力には、静電アクチュエータ120の初期ギャップgに基づくDC成分(直流成分)の静電容量成分が含まれている。この直流成分は各インクジェットヘッド100によりばらつきがあるため、コンデンサC3は、この静電容量の直流成分を除去するものである。そして、コンデンサC3は、バッファ14の出力信号におけるDC成分を除去し、残留振動のAC成分のみをオペアンプ151の反転入力端子に出力する。
【0099】
オペアンプ151は、直流成分が除去されたF/V変換回路12のバッファ14の出力信号を反転増幅するとともに、その出力信号の高域を除去するためのローパスフィルタを構成している。なお、このオペアンプ151は、単電源回路を想定している。オペアンプ151は、2つの抵抗素子R2、R3による反転増幅器を構成し、入力された残留振動(交流成分)は、−R3/R2倍に振幅される。
【0100】
また、オペアンプ151の単電源動作のために、その非反転入力端子に接続された直流電圧源Vref1によって設定された電位を中心に振動する、増幅された振動板121の残留振動波形が出力される。ここで、直流電圧源Vref1は、オペアンプ151が単電源で動作可能な電圧範囲の1/2程度に設定されている。さらに、このオペアンプ151は、2つのコンデンサC3、C4により、カットオフ周波数1/(2π×C4×R3)となるローパスフィルタを構成している。そして、直流成分を除去された後に増幅された振動板121の残留振動波形は、図20のタイミングチャートに示すように、次段の比較器(コンパレータ)152でもう一つの直流電圧源Vref2の電位と比較され、その比較結果が矩形波として波形整形回路15から出力される。なお、直流電圧源Vref2は、もう一つの直流電圧源Vref1を共用してもよい。
【0101】
次に、図20に示すタイミングチャートを参照して、図19のF/V変換回路12及び波形整形回路15の動作を説明する。上述のように生成された充電信号、クリア信号及びホールド信号に基づいて、図19に示すF/V変換回路12は動作する。図20のタイミングチャートにおいて、静電アクチュエータ120の駆動信号がヘッドドライバ33を介してヘッドユニット35のインクジェットヘッド100に入力されると、図6(b)に示すように、静電アクチュエータ120の振動板121がセグメント電極122側に引きつけられ、この駆動信号の立ち下がりエッジに同期して、図6中上方に向けて急激に収縮する(図6(c)参照)。
【0102】
なお、図20のタイミングチャートにおける駆動信号には、液滴吐出異常を検出するためのインク滴吐出動作時の駆動信号(波線)と、ヘッド異常を検出するためのインク滴を吐出しない程度の駆動信号(実線)とが示される。いずれの駆動信号が静電アクチュエータ120に入力されたとしても、同様のタイミングチャートとなるため、以下では、インク滴吐出動作時の駆動信号(波線)に基づいて説明する。なお、図20のタイミングチャート中1点鎖線は、静電アクチュエータ120の駆動限界を示す。このように、駆動回路18は、駆動信号の出力をインク滴を吐出しない程度の低出力と吐出駆動のための高出力とに少なくとも設定することができる。
【0103】
この駆動信号の立ち下がりエッジに同期して、駆動回路18とヘッド異常検出手段10とを切り替える駆動/検出切替信号がHighレベルとなる。この駆動/検出切替信号は、対応するインクジェットヘッド100の駆動休止期間中、Highレベルに保持され、次の駆動信号が入力される前に、Lowレベルになる。この駆動/検出切替信号がHighレベルの間、図18の発振回路11は、静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動に対応して発振周波数を変えながら発振している。
【0104】
上述のように、駆動信号の立ち下がりエッジ、すなわち、発振回路11の出力信号の立ち上がりエッジから、残留振動の波形がコンデンサC1に充電可能な範囲を超えないように予め設定された固定時間trだけ経過するまで、充電信号は、Highレベルに保持される。なお、充電信号がHighレベルである間、スイッチSW1はオフの状態である。
【0105】
固定時間trが経過し、充電信号がLowレベルになると、その充電信号の立ち下がりエッジに同期して、スイッチSW1がオンされる(図19参照)。そして、定電流源13とコンデンサC1とが接続され、コンデンサC1は、上述のように、傾きIs/C1で充電される。充電信号がLowレベルである期間、すなわち、発振回路11の出力信号の次のパルスの立ち上がりエッジに同期してHighレベルになるまでの間、コンデンサC1は充電される。
【0106】
充電信号がHighレベルになると、スイッチSW1はオフ(オープン)となり、定電流源13とコンデンサC1は切り離される。このとき、コンデンサC1には、充電信号がLowレベルの期間t1の間に充電された電位(すなわち、理想的にはIs×t1/C1(V))が保存されている。この状態で、ホールド信号がHighレベルになると、スイッチSW2がオンされ(図19参照)、コンデンサC1とコンデンサC2が、抵抗素子R1を介して接続される。スイッチSW2の接続後、2つのコンデンサC1、C2の充電電位差によって互いに充放電が行われ、2つのコンデンサC1、C2の電位差が概ね等しくなるように、コンデンサC1からコンデンサC2に電荷が移動する。
【0107】
ここで、コンデンサC1の静電容量に対してコンデンサC2の静電容量は、約1/10以下程度に設定されている。そのため、2つのコンデンサC1、C2間の電位差によって生じる充放電で移動する(使用される)電荷量は、コンデンサC1に充電されている電荷の1/10以下となる。したがって、コンデンサC1からコンデンサC2へ電荷が移動した後においても、コンデンサC1の電位差は、それほど変化しない(それほど下がらない)。なお、図19のF/V変換回路12では、コンデンサC2に充電されるときF/V変換回路12の配線のインダクタンス等により充電電位が急激に跳ね上がらないようにするために、抵抗素子R1とコンデンサC2により一次のローパスフィルタを構成している。
【0108】
コンデンサC2にコンデンサC1の充電電位と概ね等しい充電電位が保持された後、ホールド信号がLowレベルとなり、コンデンサC1はコンデンサC2から切り離される。さらに、クリア信号がHighレベルとなり、スイッチSW3がオンすることにより、コンデンサC1がグラウンドGNDに接続され、コンデンサC1に充電されていた電荷が0となるように放電動作が行なわれる。コンデンサC1の放電後、クリア信号はLowレベルとなり、スイッチSW3がオフすることにより、コンデンサC1の図19中上部の電極がグラウンドGNDから切り離され、次の充電信号が入力されるまで、すなわち、充電信号がLowレベルになるまで待機している。
【0109】
コンデンサC2に保持されている電位は、充電信号の立ち上がりのタイミング毎、すなわち、コンデンサC2への充電完了のタイミング毎に更新され、バッファ14を介して振動板121の残留振動波形として図22の波形整形回路15に出力される。したがって、発振回路11の発振周波数が高くなるように静電アクチュエータ120の静電容量(この場合、残留振動による静電容量の変動幅も考慮しなければならない)と抵抗素子112の抵抗値を設定すれば、図20のタイミングチャートに示すコンデンサC2の電位(バッファ14の出力)の各ステップ(段差)がより詳細になるので、振動板121の残留振動による静電容量の時間的な変化をより詳細に検出することが可能となる。
【0110】
以下同様に、充電信号がLowレベル→Highレベル→Lowレベル・・・と繰り返し、上記所定のタイミングでコンデンサC2に保持されている電位がバッファ14を介して波形整形回路15に出力される。波形整形回路15では、バッファ14から入力された電圧信号(図20のタイミングチャートにおいて、コンデンサC2の電位)の直流成分がコンデンサC3によって除去され、抵抗素子R2を介してオペアンプ151の反転入力端子に入力される。入力された残留振動の交流(AC)成分は、このオペアンプ151によって反転増幅され、コンパレータ152の一方の入力端子に出力される。コンパレータ152は、予め直流電圧源Vref2によって設定されている電位(基準電圧)と、残留振動波形(交流成分)の電位とを比較し、矩形波を出力する(図20のタイミングチャートにおける比較回路の出力)。
【0111】
次に、インクジェットヘッド100のインク滴吐出動作(駆動)と吐出異常検出動作(駆動休止)との切り替えタイミングについて説明する。なお、インク滴を吐出しないでヘッド異常を検出する場合には、空駆動(インク滴を吐出しない程度の駆動)動作とヘッド異常検出動作との切替タイミングとなる。図23は、駆動回路18とヘッド異常検出手段10との切替手段23の概略を示すブロック図である。なお、この図23では、図16に示すヘッドドライバ33内の駆動回路18をインクジェットヘッド100の駆動回路として説明する。
【0112】
図20のタイミングチャートでも示したように、本発明の吐出異常(ヘッド異常)検出処理は、インクジェットヘッド100の駆動信号と駆動信号の間、すなわち、駆動休止期間に実行されている。また、本発明のヘッド異常検出処理は、インク滴の吐出動作を行っていない非吐出動作時に実行される。この非吐出動作時には、例えば、液滴吐出装置への電源投入後の初期確認(イニシャライズ)時間、外部装置から吐出データを受信するまでの待機時間、吐出データを受信してから、実際に吐出動作(印刷処理)を開始するまでの待ち時間(データ処理時間)、吐出データを受信して、給紙装置(搬送手段)5により紙送りをしている時間、吐出データを受信して、キャリッジモータ41によりキャリッジ32が加速又は減速している時間、吐出データに応じて、各ノズル110がインク滴を吐出してから次のインク滴吐出動作までの時間、キャリッジ32が主走査方向に移動して減速した後、給紙装置5が紙送り動作をしている時間、キャリッジ32の一方の主走査方向のみ記録ヘッドが記録動作をする場合には、キャリッジ32が戻りの主走査方向に移動している時間、1ページ(1つのワーク)の印刷処理が終了し、次のページ(ワーク)の印刷処理までの時間、インクジェットプリンタ1(液滴吐出装置)のユーザの誤動作などにより印刷処理が中止した時間、給紙装置5が紙送りをミスフィードした時における回復のための時間、電源OFFする際に図示しないタイマにより液滴吐出装置の実際の電源OFFを遅らせた場合の所定の時間、インクカートリッジ31を初期装着した後、インクカートリッジ31を交換した後、インクジェットヘッド100を交換する方式の場合には、インクジェットヘッド100を初期装着した後、インクジェットヘッド100を交換する方式の場合に、インクジェットヘッド100を交換した後などがある。
【0113】
図23において、静電アクチュエータ120を駆動するために、切替手段23は、最初は駆動回路18側に接続されている。上述のように、駆動回路18から駆動信号(電圧信号)が振動板121に入力されると、静電アクチュエータ120が駆動し、振動板121は、セグメント電極122側に引きつけられ、印加電圧が0になるとセグメント電極122から離れる方向に急激に変位して振動(残留振動)を開始する。このとき、インクジェットヘッド100のノズル110からインク滴が吐出される。
【0114】
駆動信号のパルスが立ち下がると、その立ち下がりエッジに同期して駆動/検出切替信号(図20のタイミングチャート参照)が切替手段23に入力され、切替手段23は、駆動回路18からヘッド異常検出手段(検出回路)10側に切り替えられ、静電アクチュエータ120(発振回路11のコンデンサとして利用)はヘッド異常検出手段10と接続される。
【0115】
そして、ヘッド異常検出手段10は、上述のような吐出異常及びヘッド異常(ドット抜け)の検出処理を実行し、波形整形回路15の比較器152から出力される振動板121の残留振動波形データ(ここでは、矩形波データであるが、これに限らない)を計測手段17によって残留振動波形の周期や振幅などに数値化する。本実施形態では、計測手段17は、残留振動波形データから特定の振動周期を測定し、その計測結果(数値)を判定手段20に出力する。
【0116】
具体的には、計測手段17は、比較器152の出力信号の波形(矩形波)の最初の立ち上がりエッジから次の立ち上がりエッジまでの時間(残留振動の周期)を計測するために、図示しないカウンタを用いて基準信号(所定の周波数)のパルスをカウントし、そのカウント値から残留振動の周期(特定の振動周期)を計測する。なお、計測手段17は、最初の立ち上がりエッジから次の立ち下がりエッジまでの時間を計測し、その計測された時間の2倍の時間を残留振動の周期として判定手段20に出力してもよい。以下、このようにして得られた残留振動の周期をTwとする。
【0117】
判定手段20は、計測手段17によって計測された残留振動波形の特定の振動周期など(計測結果)に基づいて、ノズルの吐出異常及びヘッド異常の有無、吐出異常及びヘッド異常の原因、比較偏差量などを判定し、その判定結果を制御部6に出力する。制御部6は、EEPROM(記憶手段)62の所定の格納領域にこの判定結果を保存する。そして、駆動回路18からの次の駆動信号が入力されるタイミングで、駆動/検出切替信号が切替手段23に再び入力され、駆動回路18と静電アクチュエータ120とを接続する。駆動回路18は、一旦駆動電圧を印加するとグラウンド(GND)レベルを維持するので、切替手段23によって上記のような切り替えを行っている(図20のタイミングチャート参照)。これにより、駆動回路18からの外乱などに影響されることなく、静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動波形を正確に検出することができる。
【0118】
なお、本発明では、残留振動波形データは、比較器152により矩形波化したものに限定されない。例えば、オペアンプ151から出力された残留振動振幅データは、比較器152により比較処理を行うことなく、A/D変換を行う計測手段17によって随時数値化され、その数値化されたデータに基づいて、判定手段20により吐出異常及びヘッド異常の有無などを判定し、この判定結果を記憶手段62に記憶するように構成してもよい。なお、本実施形態では、オペアンプ151の出力は、後述する粘度検出手段30のピーク検出手段27(図41参照)に入力される。
【0119】
また、ノズル110のメニスカス(ノズル110内インクが大気と接する面)は、振動板121の残留振動に同期して振動するため、インクジェットヘッド100は、インク滴の吐出動作後、このメニスカスの残留振動が音響抵抗rによって概ね決まった時間で減衰するのを待ってから(所定の時間待機して)、次の吐出動作を行っている。静電アクチュエータ120の吐出動作後の吐出異常検出処理では、この待機時間を有効に利用して振動板121の残留振動を検出し、吐出しない程度の駆動後のヘッド異常検出処理では、上述のように非吐出動作時に振動板121の残留振動を検出しているので、インクジェットヘッド100の駆動に影響しない吐出異常検出を行うことができる。すなわち、インクジェットプリンタ1(液滴吐出装置)のスループットを低下させることなく、インクジェットヘッド100のノズル110の吐出異常及びヘッド異常検出処理を実行することができる。
【0120】
上述のように、インクジェットヘッド100のキャビティ141内に気泡が混入した場合には、正常吐出時の振動板121の残留振動波形に比べて、周波数が高くなるので、その周期は逆に正常吐出時の残留振動の周期よりも短くなる。また、ノズル110付近のインクが乾燥により増粘、固着した場合には、残留振動が過減衰となり、正常吐出時の残留振動波形に比べて、周波数が相当低くなるので、その周期は正常吐出時の残留振動の周期よりもかなり長くなる。また、ノズル110の出口付近に紙粉が付着した場合には、残留振動の周波数は、正常吐出時の残留振動の周波数よりも低く、しかし、インクの乾燥時の残留振動の周波数よりも高くなるので、その周期は、正常吐出時の残留振動の周期よりも長く、インク乾燥時の残留振動の周期よりも短くなる。
【0121】
したがって、正常吐出時の残留振動の周期として、所定の範囲Trを設け、また、ノズル110出口に紙粉が付着した場合における残留振動の周期と、ノズル110の出口付近でインクが乾燥した場合における残留振動の周期とを区別するために、所定のしきい値(所定の閾値)T1を設定することにより、このようなインクジェットヘッド100の吐出異常及びヘッド異常の原因を決定することができる。判定手段20は、上記吐出異常及びヘッド異常検出処理によって検出された残留振動波形の周期Twが所定の範囲の周期であるか否か、また、所定のしきい値よりも長いか否かを判定し、それによって、吐出異常及びヘッド異常の原因を判定する。
【0122】
次に、本発明の液滴吐出装置の動作を、上述のインクジェットプリンタ1の構成に基づいて説明する。まず、1つのインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100のノズル110に対するヘッド異常検出処理(駆動/検出切替処理を含む)について説明する。図24は、本発明のヘッド異常(吐出異常)検出・判定処理を示すフローチャートである。印刷される印字データ(フラッシング動作における吐出データ又は吐出しない程度の駆動時における吐出データでもよい)がホストコンピュータ8からインターフェース(IF)9を介して制御部6に入力されると、所定のタイミングでこのヘッド異常検出処理が実行される。なお、説明の都合上、この図24に示すフローチャートでは、1つのインクジェットヘッド100、すなわち、1つのノズル110の吐出動作に対応するヘッド異常(吐出異常)検出処理を示す。
【0123】
まず、印字データ(吐出データ)に対応する駆動信号がヘッドドライバ33の駆動回路18から入力され、それにより、図20のタイミングチャートに示すような駆動信号のタイミングに基づいて、静電アクチュエータ120の両電極間に駆動信号(電圧信号)が印加される(ステップS101)。そして、制御部6は、駆動/検出切替信号に基づいて、吐出したインクジェットヘッド100が駆動休止期間であるか否かを判断する(ステップS102)。ここで、駆動/検出切替信号は、駆動信号の立ち下がりエッジに同期してHighレベルとなり(図20参照)、制御部6から切替手段23に入力される。
【0124】
駆動/検出切替信号が切替手段23に入力されると、切替手段23によって、静電アクチュエータ120、すなわち、発振回路11を構成するコンデンサは、駆動回路18から切り離され、ヘッド異常検出手段10(検出回路)側、すなわち、残留振動検出手段16の発振回路11に接続される(ステップS103)。そして、後述する残留振動検出処理を実行し(ステップS104)、計測手段17は、この残留振動検出処理において検出された残留振動波形データから所定の数値を計測する(ステップS105)。ここでは、上述のように、計測手段17は、残留振動波形データからその残留振動の周期を計測する。
【0125】
次いで、判定手段20によって、計測手段の計測結果に基づいて、後述する吐出異常(ヘッド異常)判定処理が実行され(ステップS106)、その判定結果を制御部6のEEPROM(記憶手段)62の所定の格納領域に保存する(ステップS107)。そして、ステップS108においてインクジェットヘッド100が駆動期間であるか否かが判断される。すなわち、駆動休止期間が終了して、次の駆動信号が入力されたか否かが判断され、次の駆動信号が入力されるまで、このステップS108で待機している。
【0126】
次の駆動信号のパルスが入力されるタイミングで、駆動信号の立ち上がりエッジに同期して駆動/検出切替信号がLowレベルになると(ステップS108で「yes」)、切替手段23は、静電アクチュエータ120との接続を、ヘッド異常検出手段(検出回路)10から駆動回路18に切り替えて(ステップS109)、このヘッド異常検出処理を終了する。
【0127】
なお、図24に示すフローチャートでは、計測手段17が残留振動検出処理(残留振動検出手段16により実行)によって検出された残留振動波形から周期を計測する場合について示したが、本発明はこのような場合に限定されず、例えば、計測手段17は、残留振動検出処理において検出された残留振動波形データから、残留振動波形の位相差や振幅などの計測を行ってもよい。
【0128】
次に、図24に示すフローチャートのステップS104における残留振動検出処理(サブルーチン)について説明する。図25は、本発明の残留振動検出処理を示すフローチャートである。上述のように、切替手段23によって、静電アクチュエータ120と発振回路11とを接続すると(図24のステップS103)、発振回路11は、CR発振回路を構成し、静電アクチュエータ120の静電容量の変化(静電アクチュエータ120の振動板121の残留振動)に基づいて、発振する(ステップS201)。
【0129】
上述のタイミングチャートなどに示すように、発振回路11の出力信号(パルス信号)に基づいて、F/V変換回路12において、充電信号、ホールド信号及びクリア信号が生成され、これらの信号に基づいてF/V変換回路12によって発振回路11の出力信号の周波数から電圧に変換するF/V変換処理が行われ(ステップS202)、F/V変換回路12から振動板121の残留振動波形データが出力される。F/V変換回路12から出力された残留振動波形データは、波形整形回路15のコンデンサC3により、DC成分(直流成分)が除去され(ステップS203)、オペアンプ151により、DC成分が除去された残留振動波形(AC成分)が増幅される(ステップS204)。
【0130】
増幅後の残留振動波形データは、所定の処理により波形整形され、パルス化される(ステップS205)。すなわち、本実施形態では、比較器152において、直流電圧源Vref2によって設定された電圧値(所定の電圧値)とオペアンプ151の出力電圧とが比較される。比較器152は、この比較結果に基づいて、2値化された波形(矩形波)を出力する。この比較器152の出力信号は、残留振動検出手段16の出力信号であり、吐出異常及びヘッド異常判定処理を行うために、計測手段17に出力され、この残留振動検出処理が終了する。
【0131】
次に、図24に示すフローチャートのステップS106における吐出異常及びヘッド異常判定処理(サブルーチン)について説明する。図26は、本発明の制御部6及び判定手段20によって実行される吐出異常及びヘッド異常判定処理を示すフローチャートである。判定手段20は、上述の計測手段17によって計測された周期などの計測データ(計測結果)に基づいて、該当するインクジェットヘッド100からインク滴が正常に吐出したか否か(ヘッド異常が発生しているか否か)、正常に吐出していない場合(ヘッド異常が発生している場合)、すなわち、吐出異常又はヘッド異常の場合にはその原因が何かを判定する。
【0132】
まず、制御部6は、EEPROM62に保存されている残留振動の周期の所定の範囲Tr及び残留振動の周期の所定のしきい値T1を判定手段20に出力する。残留振動の周期の所定の範囲Trは、正常吐出時(ヘッド異常が発生していないとき)の残留振動の周期に対して、正常と判定できる許容範囲を持たせたものである。これらのデータは、判定手段20の図示しないメモリに格納され、以下の処理が実行される。
【0133】
図24のステップS105において計測手段17によって計測された計測結果が判定手段20に入力される(ステップS301)。ここで、本実施形態では、計測結果は、振動板121の残留振動の周期Twである。
ステップS202において、判定手段20は、残留振動の周期Twが存在するか否か、すなわち、ヘッド異常検出手段10によって残留振動波形データが得られなかったか否かを判定する。残留振動の周期Twが存在しないと判定された場合には、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のノズル110は吐出異常検出処理又はヘッド異常検出処理においてインク滴を吐出していない(駆動信号が入力されていない)未吐出ノズルであると判定する(ステップS306)。また、残留振動波形データが存在すると判定された場合には、続いて、ステップS303において、判定手段20は、その周期Twが正常吐出時の周期と認められる所定の範囲Tr内にあるか否かを判定する。
【0134】
残留振動の周期Twが所定の範囲Tr内にあると判定された場合には、対応するインクジェットヘッド100からインク滴が正常に吐出されたこと又はインクジェットヘッド100にヘッド異常が発生していないことを意味し、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のノズル110は正常にインク滴と吐出した(正常吐出)又はヘッド正常と判定する(ステップS307)。また、残留振動の周期Twが所定の範囲Tr内にないと判定された場合には、続いて、ステップS304において、判定手段20は、残留振動の周期Twが所定の範囲Trよりも短いか否かを判定する。
【0135】
残留振動の周期Twが所定の範囲Trよりも短いと判定された場合には、残留振動の周波数が高いことを意味し、上述のように、インクジェットヘッド100のキャビティ141内に気泡が混入しているものと考えられ、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のキャビティ141に気泡が混入しているもの(気泡混入)と判定する(ステップS308)。
【0136】
また、残留振動の周期Twが所定の範囲Trよりも長いと判定された場合には、続いて、判定手段20は、残留振動の周期Twが所定のしきい値T1よりも長いか否かを判定する(ステップS305)。残留振動の周期Twが所定のしきい値T1よりも長いと判定された場合には、残留振動が過減衰であると考えられ、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のノズル110付近のインクが乾燥により増粘しているもの(乾燥)と判定する(ステップS309)。
【0137】
そして、ステップS305において、残留振動の周期Twが所定のしきい値T1よりも短いと判定された場合には、この残留振動の周期Twは、Tr<Tw<T1を満たす範囲の値であり、上述のように、乾燥よりも周波数が高いノズル110の出口付近への紙粉付着であると考えられ、判定手段20は、そのインクジェットヘッド100のノズル110出口付近に紙粉が付着しているもの(紙粉付着)と判定する(ステップS310)。
【0138】
このように、判定手段20によって、対象となるインクジェットヘッド100の正常吐出(ヘッド正常)あるいは吐出異常(ヘッド異常)の原因などが判定されると(ステップS306〜S310)、その判定結果は、制御部6に出力され、この吐出異常判定処理を終了する。
【0139】
次に、複数のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100、すなわち、複数のノズル110を有するヘッドユニット35を備えるインクジェットプリンタ1を想定し(本実施形態では、ヘッドユニット35は、5つのインクジェットヘッド100a〜100e(すなわち、5つのノズル110)を備えているが、印字手段3が備えるヘッドユニット35の数量や、各ヘッドユニット35が備えるインクジェットヘッド100(ノズル110)の数量は、これに限定されず、いくつであってもよい)、そのインクジェットプリンタ1における各色のインクに対応する複数の吐出選択手段(ノズルセレクタ)182と、各インクジェットヘッド100の吐出異常検出・判定のタイミングについて説明する。図27〜図30は、複数の吐出選択手段182を備えるインクジェットプリンタ1における吐出異常検出・判定タイミングのいくつかの例を示すブロック図である。以下、各図の構成例を順次説明する。
【0140】
図27は、複数のインクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常検出のタイミングの一例(ヘッド異常検出手段10が1つの場合)である。この図27に示すように、複数のインクジェットヘッド100a〜100eを有するインクジェットプリンタ1は、駆動波形を生成する駆動波形生成手段181と、いずれのノズル110からインク滴を吐出するかを選択することができる吐出選択手段182と、この吐出選択手段182によって選択され、駆動波形生成手段181によって駆動される複数のインクジェットヘッド100a〜100eとを備えている。なお、図27の構成では、上記以外の構成は図2、図16及び図23に示したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0141】
なお、本実施形態では、駆動波形生成手段181及び吐出選択手段182は、ヘッドドライバ33の駆動回路18に含まれるものとして説明するが(図27では、切替手段23を介して2つのブロックとして示しているが、一般的には、いずれもヘッドドライバ33内に構成される)、本発明はこの構成に限定されず、例えば、駆動波形生成手段181は、ヘッドドライバ33とは独立した構成としてもよい。
【0142】
この図27に示すように、吐出選択手段182は、シフトレジスタ182aと、ラッチ回路182bと、ドライバ182cとを備えている。シフトレジスタ182aには、図2に示すホストコンピュータ8から出力され、制御部6において所定の処理をされた印字データ(吐出データ)と、クロック信号(CLK)が順次入力される。この印字データは、クロック信号(CLK)の入力パルスに応じて(クロック信号の入力の度に)シフトレジスタ182aの初段から順次後段側にシフトして入力され、各インクジェットヘッド100a〜100eに対応する印字データとしてラッチ回路182bに出力される。なお、後述するヘッド異常検出処理では、印字データではなくフラッシング(予備吐出)時の吐出データが入力されるが、この吐出データとは、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eに対する印字データを意味している。なお、フラッシング時は、ラッチ回路182bのすべての出力が吐出となる値に設定されるようにハード的に処理をしてもよい。
【0143】
ラッチ回路182bは、ヘッドユニット35のノズル110の数、すなわち、インクジェットヘッド100の数に対応する印字データがシフトレジスタ182aに格納された後、入力されるラッチ信号によってシフトレジスタ182aの各出力信号をラッチする。ここで、CLEAR信号が入力された場合には、ラッチ状態が解除され、ラッチされていたシフトレジスタ182aの出力信号は0(ラッチの出力停止)となり、印字動作は停止される。CLEAR信号が入力されていない場合には、ラッチされたシフトレジスタ182aの印字データがドライバ182cに出力される。シフトレジスタ182aから出力される印字データがラッチ回路182bによってラッチされた後、次の印字データをシフトレジスタ182aに入力し、印字タイミングに合わせてラッチ回路182bのラッチ信号を順次更新している。
【0144】
ドライバ182cは、駆動波形生成手段181と各インクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120とを接続するものであり、ラッチ回路182bから出力されるラッチ信号で指定(特定)された各静電アクチュエータ120(インクジェットヘッド100a〜100eのいずれかあるいはすべての静電アクチュエータ120)に駆動波形生成手段181の出力信号(駆動信号)を入力し、それによって、その駆動信号(電圧信号)が静電アクチュエータ120の両電極間に印加される。
【0145】
この図27に示すインクジェットプリンタ1は、複数のインクジェットヘッド100a〜100eを駆動する1つの駆動波形生成手段181と、各インクジェットヘッド100a〜100eのいずれかのインクジェットヘッド100に対して吐出異常(インク滴不吐出)又はヘッド異常を検出するヘッド異常検出手段10と、このヘッド異常検出手段10によって得られた吐出異常又はヘッド異常の原因などの判定結果を保存(格納)する記憶手段62と、駆動波形生成手段181とヘッド異常検出手段10とを切り替える1つの切替手段23とを備えている。したがって、このインクジェットプリンタ1は、駆動波形生成手段181から入力される駆動信号に基づいて、ドライバ182cによって選択された1つ又は複数のインクジェットヘッド100を駆動し、駆動/検出切替信号が吐出駆動動作後に切替手段23に入力されることによって、切替手段23が駆動波形生成手段181からヘッド異常検出手段10にインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120との接続を切り替えた後、振動板121の残留振動波形に基づいて、ヘッド異常検出手段10によって、そのインクジェットヘッド100のノズル110における吐出異常又はヘッド異常を検出し、吐出異常又はヘッド異常の場合にはその原因を判定するものである。
【0146】
そして、このインクジェットプリンタ1は、1つのインクジェットヘッド100のノズル110について吐出異常又はヘッド異常を検出・判定すると、次に駆動波形生成手段181から入力される駆動信号に基づいて、次に指定されたインクジェットヘッド100のノズル110について吐出異常又はヘッド異常を検出・判定し、以下同様に、駆動波形生成手段181の出力信号によって駆動されるインクジェットヘッド100のノズル110についての吐出異常又はヘッド異常を順次検出・判定する。そして、上述のように、残留振動検出手段16が振動板121の残留振動波形を検出すると、計測手段17がその波形データに基づいて残留振動波形の周期などを計測し、判定手段20が、計測手段17の計測結果に基づいて、正常吐出か吐出異常(ヘッド異常)か、及び、吐出異常(ヘッド異常)の場合には吐出異常(ヘッド異常)の原因を判定して、記憶手段62にその判定結果を出力する。
【0147】
このように、この図27に示すインクジェットプリンタ1では、複数のインクジェットヘッド100a〜100eの各ノズル110についてインク滴吐出駆動動作の際に順次吐出異常又はヘッド異常を検出・判定する構成としているので、ヘッド異常検出手段10と切替手段23とを1つずつ備えるだけでよく、吐出異常又はヘッド異常を検出・判定可能なインクジェットプリンタ1の回路構成をスケールダウンできるとともに、その製造コストの増加を防止することができる。
【0148】
図28は、複数のインクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常検出のタイミングの一例(ヘッド異常検出手段10の数がインクジェットヘッド100の数と同じ場合)である。この図28に示すインクジェットプリンタ1は、1つの吐出選択手段182と、5つのヘッド異常検出手段10a〜10eと、5つの切替手段23a〜23eと、5つのインクジェットヘッド100a〜100eに共通の1つの駆動波形生成手段181と、1つの記憶手段62とを備えている。なお、各構成要素は、図27の説明において既に上述しているので、その説明を省略し、これらの接続について説明する。
【0149】
図27に示す場合と同様に、吐出選択手段182は、ホストコンピュータ8から入力される印字データ(吐出データ)とクロック信号CLKに基づいて、各インクジェットヘッド100a〜100eに対応する印字データをラッチ回路182bにラッチし、駆動波形生成手段181からドライバ182cに入力される駆動信号(電圧信号)に応じて、印字データに対応するインクジェットヘッド100a〜100eの静電アクチュエータ120を駆動させる。駆動/検出切替信号は、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eに対応する切替手段23a〜23eにそれぞれ入力され、切替手段23a〜23eは、対応する印字データ(吐出データ)の有無にかかわらず、駆動/検出切替信号に基づいて、インクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120に駆動信号を入力後、駆動波形生成手段181からヘッド異常検出手段10a〜10eにインクジェットヘッド100との接続を切り替える。
【0150】
すべてのヘッド異常検出手段10a〜10eにより、それぞれのインクジェットヘッド100a〜100eの吐出異常又はヘッド異常を検出・判定した後、その検出処理で得られたすべてのインクジェットヘッド100a〜100eの判定結果が、記憶手段62に出力され、記憶手段62は、各インクジェットヘッド100a〜100eの吐出異常又はヘッド異常の有無及び吐出異常又はヘッド異常の原因を所定の保存領域に格納する。
【0151】
このように、この図28に示すインクジェットプリンタ1では、複数のインクジェットヘッド100a〜100eの各ノズル110に対応して複数のヘッド異常検出手段10a〜10eを設け、それらに対応する複数の切替手段23a〜23eによって切替動作を行って、吐出異常又はヘッド異常検出及びその原因判定を行っているので、一度にすべてのノズル110について短時間に吐出異常又はヘッド異常検出及びその原因判定を行うことができる。
【0152】
図29は、複数のインクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常検出のタイミングの一例(ヘッド異常検出手段10の数がインクジェットヘッド100の数と同じであり、印字データがあるときに吐出異常検出を行う場合)である。この図29に示すインクジェットプリンタ1は、図28に示すインクジェットプリンタ1の構成に、切替制御手段19を追加(付加)したものである。本実施形態では、この切替制御手段19は、複数のAND回路(論理積回路)ANDa〜ANDeから構成され、各インクジェットヘッド100a〜100eに入力される印字データと、駆動/検出切替信号とが入力されると、対応する切替手段23a〜23eにHighレベルの出力信号を出力するものである。なお、切替制御手段19はAND回路(論理積回路)に限定されず、駆動するインクジェットヘッド100が選択されるラッチ回路182bの出力に一致した切替手段23が選択されるように構成されればよい。
【0153】
各切替手段23a〜23eは、切替制御手段19のそれぞれ対応するAND回路ANDa〜ANDeの出力信号に基づいて、駆動波形生成手段181からそれぞれ対応するヘッド異常検出手段10a〜10eへ、対応するインクジェットヘッド100a〜100eの静電アクチュエータ120との接続を切り替える。具体的には、対応するAND回路ANDa〜ANDeの出力信号がHighレベルであるとき、すなわち、駆動/検出切替信号がHighレベルの状態で対応するインクジェットヘッド100a〜100eに入力される印字データがラッチ回路182bからドライバ182cに出力されている場合には、そのAND回路に対応する切替手段23a〜23eは、対応するインクジェットヘッド100a〜100eへの接続を、駆動波形生成手段181からヘッド異常検出手段10a〜10eに切り替える。
【0154】
印字データが入力されたインクジェットヘッド100に対応するヘッド異常検出手段10a〜10eにより、インクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常の有無及び吐出異常又はヘッド異常の場合にはその原因を検出した後、そのヘッド異常検出手段10は、その検出処理で得られた判定結果を記憶手段62に出力する。記憶手段62は、このように入力された(得られた)1又は複数の判定結果を所定の保存領域に格納する。
【0155】
このように、この図29に示すインクジェットプリンタ1では、複数のインクジェットヘッド100a〜100eの各ノズル110に対応して複数のヘッド異常検出手段10a〜10eを設け、それぞれのインクジェットヘッド100a〜100eに対応する印字データがホストコンピュータ8から制御部6を介して吐出選択手段182に入力されたときに、切替制御手段19によって指定された切替手段23a〜23eのみが所定の切替動作を行って、インクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常検出及びその原因判定を行っているので、吐出駆動動作をしていないインクジェットヘッド100についてはこの検出・判定処理を行わない。したがって、このインクジェットプリンタ1によって、無駄な検出及び判定処理を回避することができる。
【0156】
図30は、複数のインクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常検出のタイミングの一例(ヘッド異常検出手段10の数がインクジェットヘッド100の数と同じであり、各インクジェットヘッド100を巡回して吐出異常検出を行う場合)である。この図30に示すインクジェットプリンタ1は、図29に示すインクジェットプリンタ1の構成においてヘッド異常検出手段10を1つとし、駆動/検出切替信号を走査する(検出・判定処理を実行するインクジェットヘッド100を1つずつ特定する)切替選択手段19aを追加したものである。
【0157】
この切替選択手段19aは、図29に示す切替制御手段19に接続されるものであり、制御部6から入力される走査信号(選択信号)に基づいて、複数のインクジェットヘッド100a〜100eに対応するAND回路ANDa〜ANDeへの駆動/検出切替信号の入力を走査する(選択して切り替える)セレクタである。この切替選択手段19aの走査(選択)順は、シフトレジスタ182aに入力される印字データの順、すなわち、複数のインクジェットヘッド100の吐出順であってもよいが、単純に複数のインクジェットヘッド100a〜100eの順であってもよい。なお、図30に示す構成では、この切替選択手段19aと切替制御手段19とが、吐出異常検出手段10が複数のインクジェットヘッド100a〜100eのノズル110のいずれのノズル110に対して吐出異常を検出するかを決定する検出決定手段を構成する。
【0158】
走査順がシフトレジスタ182aに入力される印字データの順である場合、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに印字データが入力されると、その印字データはラッチ回路182bにラッチされ、ラッチ信号の入力によりドライバ182cに出力される。印字データのシフトレジスタ182aへの入力、あるいはラッチ信号のラッチ回路182bへの入力に同期して、印字データに対応するインクジェットヘッド100を特定するための走査信号が切替選択手段19aに入力され、対応するAND回路に駆動/検出切替信号が出力される。なお、切替選択手段19aの出力端子は、非選択時にはLowレベルを出力する。
【0159】
その対応するAND回路(切替制御手段19)は、ラッチ回路182bから入力された印字データと、切替選択手段19aから入力された駆動/検出切替信号とを論理積演算することにより、Highレベルの出力信号を対応する切替手段23に出力する。そして、切替制御手段19からHighレベルの出力信号が入力された切替手段23は、対応するインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120への接続を、駆動波形生成手段181からヘッド異常検出手段10に切り替える。
【0160】
ヘッド異常検出手段10は、印字データが入力されたインクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常を検出し、吐出異常又はヘッド異常がある場合にはその原因を判定した後、その判定結果を記憶手段62に出力する。そして、記憶手段62は、このように入力された(得られた)判定結果を所定の保存領域に格納する。
【0161】
また、走査順が単純なインクジェットヘッド100a〜100eの順である場合、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに印字データが入力されると、その印字データはラッチ回路182bにラッチされ、ラッチ信号の入力によりドライバ182cに出力される。印字データのシフトレジスタ182aへの入力、あるいはラッチ信号のラッチ回路182bへの入力に同期して、印字データに対応するインクジェットヘッド100を特定するための走査(選択)信号が切替選択手段19aに入力され、切替制御手段19の対応するAND回路に駆動/検出切替信号が出力される。
【0162】
ここで、切替選択手段19aに入力された走査信号により定められたインクジェットヘッド100に対する印字データがシフトレジスタ182aに入力されたときには、それに対応するAND回路(切替制御手段19)の出力信号がHighレベルとなり、切替手段23は、対応するインクジェットヘッド100への接続を、駆動波形生成手段181からヘッド異常検出手段10に切り替える。しかしながら、上記印字データがシフトレジスタ182aに入力されないときには、AND回路の出力信号はLowレベルであり、対応する切替手段23は、所定の切替動作を実行しない。したがって、切替選択手段19aの選択結果と切替制御手段19によって指定された結果との論理積に基づいて、インクジェットヘッド100の吐出異常検出処理が行われる。
【0163】
切替手段23によって切替動作が行われた場合には、上記と同様に、ヘッド異常検出手段10は、印字データが入力されたインクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常を検出し、吐出異常又はヘッド異常がある場合にはその原因を判定した後、その判定結果を記憶手段62に出力する。そして、記憶手段62は、このように入力された(得られた)判定結果を所定の保存領域に格納する。
【0164】
なお、切替選択手段19aで特定されたインクジェットヘッド100に対する印字データがないときには、上述のように、対応する切替手段23が切替動作を実行しないので、ヘッド異常検出手段10によるヘッド異常検出処理を実行する必要はないが、そのような処理が実行されてもよい。切替動作が行われずにヘッド異常検出処理が実行された場合、ヘッド異常検出手段10の判定手段20は、図26のフローチャートに示すように、対応するインクジェットヘッド100のノズル110を未吐出ノズルであると判定し(ステップS306)、その判定結果を記憶手段62の所定の保存領域に格納する。
【0165】
このように、この図30に示すインクジェットプリンタ1では、図28又は図29に示すインクジェットプリンタ1とは異なり、複数のインクジェットヘッド100a〜100eの各ノズル110に対して1つのヘッド異常検出手段10のみを設け、それぞれのインクジェットヘッド100a〜100eに対応する印字データがホストコンピュータ8から制御部6を介して吐出選択手段182に入力され、それと同時に走査(選択)信号により特定されて、その印字データに応じて吐出駆動動作をするインクジェットヘッド100に対応する切替手段23のみが切替動作を行って、対応するインクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常検出及びその原因判定を行っているので、一度に大量の検出結果を処理することがなく制御部6のCPU61への負担を軽減することができる。また、ヘッド異常検出手段10が吐出動作とは別にノズルの状態を巡回しているため、駆動印字中でも1ノズル毎に吐出異常又はヘッド異常を把握することができ、ヘッドユニット35全体のノズル110の状態を知ることができる。これにより、例えば、定期的に吐出異常又はヘッド異常の検出を行っているために、印刷停止中に1ノズル毎に吐出異常又はヘッド異常を検出する工程を少なくすることができる。以上から、効率的にインクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常検出及びその原因判定を行うことができる。
【0166】
また、図28又は図29に示すインクジェットプリンタ1とは異なり、図30に示すインクジェットプリンタ1は、ヘッド異常検出手段10を1つのみ備えていればよいので、図28及び図29に示すインクジェットプリンタ1に比べ、インクジェットプリンタ1の回路構成をスケールダウンすることができるとともに、その製造コストの増加を防止することができる。
【0167】
次に、図27〜図30に示すプリンタ1の動作、すなわち、複数のインクジェットヘッド100を備えるインクジェットプリンタ1におけるヘッド異常検出処理(主に、検出タイミング)について説明する。本発明の吐出異常又はヘッド異常検出・判定処理(多ノズルにおける処理)は、各インクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120がインク滴吐出動作を行ったときの振動板121の残留振動を検出し、その残留振動の周期に基づいて、該当するインクジェットヘッド100に対し吐出異常(ドット抜け、インク滴不吐出)又はヘッド異常が生じているか否か、吐出異常又はヘッド異常が生じた場合には、その原因が何であるかを判定している。このように、本発明では、インクジェットヘッド100によるインク滴(液滴)の吐出動作(吐出しない程度の静電アクチュエータ120の駆動も含む)が行われれば、これらの検出・判定処理を実行できるが、インクジェットヘッド100がインク滴を吐出するのは、実際に記録用紙Pに印刷(プリント)している場合だけでなく、フラッシング動作(予備吐出あるいは予備的吐出)をしている場合もある。以下、この2つの場合について、本発明のヘッド異常検出・判定処理(多ノズル)を説明する。
【0168】
ここで、フラッシング(予備吐出)処理とは、図1では図示していないキャップの装着時や、記録用紙P(メディア)にインク滴(液滴)がかからない場所において、ヘッドユニット35のすべてのあるいは対象となるインクジェットヘッド100のノズル110からインク滴を吐出するヘッドクリーニング動作である。このフラッシング処理(フラッシング動作)は、例えば、ノズル110内のインク粘度を適正範囲の値に保持するために、定期的にキャビティ141内のインクを排出する際に実施したり、あるいは、インク増粘時の回復動作としても実施したりされる。さらに、フラッシング処理は、インクカートリッジ31を印字手段3に装着した後に、インクを各キャビティ141に初期充填する場合にも実施される。
【0169】
また、ノズルプレート(ノズル面)150をクリーニングするためにワイピング処理(ヘッドユニット35のヘッド面に付着している付着物(紙粉やごみなど)を、図1では図示していないワイパで拭き取る処置)を行う場合があるが、このときノズル110内が負圧になって、他の色のインク(他の種類の液滴)を引込んでしまう可能性がある。そのため、ワイピング処理後に、ヘッドユニット35のすべてのノズル110から一定量のインク滴を吐出させるためにもフラッシング処理が実施される。さらに、フラッシング処理は、ノズル110のメニスカスの状態を正常に保持して良好な印字を確保するためにも適時に実施され得る。
【0170】
まず、図31〜図33に示すフローチャートを参照して、フラッシング処理時における吐出異常検出・判定処理について説明する。なお、これらのフローチャートは、図27〜図30のブロック図を参照しながら説明する(以下、印字動作時においても同様)。図31は、図27に示すインクジェットプリンタ1のフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【0171】
所定のタイミングにおいて、インクジェットプリンタ1のフラッシング処理が実行されるとき、この図31に示す吐出異常検出・判定処理が実行される。制御部6は、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに1ノズル分の吐出データを入力し(ステップS401)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS402)、この吐出データがラッチされる。そのとき、切替手段23は、その吐出データの対象であるインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120と駆動波形生成手段181とを接続する(ステップS403)。
【0172】
そして、ヘッド異常検出手段10によって、インク吐出動作を行ったインクジェットヘッド100に対して、図24のフローチャートに示すヘッド異常検出・判定処理が実行される(ステップS404)。ステップS405において、制御部6は、吐出選択手段182に出力した吐出データに基づいて、図27に示すインクジェットプリンタ1のすべてのインクジェットヘッド100a〜100eのノズル110についてヘッド異常検出・判定処理が終了したか否かを判断する。そして、すべてのノズル110についてこれらの処理が終わっていないと判断されるときには、制御部6は、シフトレジスタ182aに次のインクジェットヘッド100のノズル110に対応する吐出データを入力し(ステップS406)、ステップS402に移行して同様の処理を繰り返す。
【0173】
また、ステップS405において、すべてのノズル110について上述のヘッド異常検出及び判定処理が終わったと判断される場合には、制御部6は、ラッチ回路182bにCLEAR信号を入力し、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図27に示すインクジェットプリンタ1における吐出異常検出・判定処理を終了する。
【0174】
上述のように、この図27に示すインクジェットプリンタ1におけるヘッド異常検出・判定処理では、1つのヘッド異常検出手段10と1つの切替手段23とから検出回路が構成されているので、ヘッド異常検出処理及び判定処理は、インクジェットヘッド100の数だけ繰り返されるが、ヘッド異常検出手段10を構成する回路はそれほど大きくならないという効果を有する。
【0175】
次いで、図32は、図28及び図29に示すインクジェットプリンタ1のフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。図28に示すインクジェットプリンタ1と図29に示すインクジェットプリンタ1とは回路構成が若干異なるが、ヘッド異常検出手段10及び切替手段23の数が、インクジェットヘッド100の数に対応する(同じである)点で一致している。そのため、フラッシング動作時における吐出異常検出・判定処理は、同様のステップから構成される。
【0176】
所定のタイミングにおいて、インクジェットプリンタ1のフラッシング処理が実行されるとき、制御部6は、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに全ノズル分の吐出データを入力し(ステップS501)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS502)、この吐出データがラッチされる。そのとき、切替手段23a〜23eは、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eと駆動波形生成手段181とをそれぞれ接続する(ステップS503)。
【0177】
そして、それぞれのインクジェットヘッド100a〜100eに対応するヘッド異常検出手段10a〜10eによって、インク吐出動作を行ったすべてのインクジェットヘッド100に対して、図24のフローチャートに示すヘッド異常検出・判定処理が並列的に実行される(ステップS504)。この場合、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eに対応する判定結果が、処理対象となるインクジェットヘッド100と関連付けられて、記憶手段62の所定の格納領域に保存される(図24のステップS107)。
【0178】
そして、吐出選択手段182のラッチ回路182bにラッチされている吐出データをクリアするために、制御部6は、CLEAR信号をラッチ回路182bに入力して(ステップS505)、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図28及び図29に示すインクジェットプリンタ1におけるヘッド異常検出処理及び判定処理を終了する。
【0179】
上述のように、この図28及び図29に示すプリンタ1における処理では、インクジェットヘッド100a〜100eに対応する複数(この実施形態では5つ)のヘッド異常検出手段10と複数の切替手段23とから検出及び判定回路が構成されているので、吐出異常検出・判定処理は、一度にすべてのノズル110について短時間に実行され得るという効果を有する。
【0180】
次いで、図33は、図30に示すインクジェットプリンタ1のフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。以下同様に、図30に示すインクジェットプリンタ1の回路構成を用いて、フラッシング動作時におけるヘッド異常検出処理及び原因判定処理について説明する。
所定のタイミングにおいて、インクジェットプリンタ1のフラッシング処理が実行されるとき、まず、制御部6は、走査信号を切替選択手段(セレクタ)19aに出力し、この切替選択手段19a及び切替制御手段19により、最初の切替手段23a及びインクジェットヘッド100aを設定(特定)する(ステップS601)。そして、吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに全ノズル分の吐出データを入力し(ステップS602)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS603)、この吐出データがラッチされる。そのとき、切替手段23aは、インクジェットヘッド100aの静電アクチュエータ120と駆動波形生成手段181とを接続している(ステップS604)。
【0181】
そして、インク吐出動作を行ったインクジェットヘッド100aに対して、図24のフローチャートに示すヘッド異常検出・判定処理が実行される(ステップS605)。この場合、図24のステップS103において切替選択手段19aの出力信号である駆動/検出切替信号と、ラッチ回路182bから出力された吐出データとがAND回路ANDaに入力され、AND回路ANDaの出力信号がHighレベルとなることにより、切替手段23aは、インクジェットヘッド100aの静電アクチュエータ120とヘッド異常検出手段10とを接続する。そして、図24のステップS106において実行されるヘッド異常判定処理の判定結果が、処理対象となるインクジェットヘッド100(ここでは、100a)と関連付けられて、記憶手段62の所定の格納領域に保存される(図24のステップS107)。
【0182】
ステップS606において、制御部6は、ヘッド異常検出・判定処理がすべてのノズル110に対して終了したか否かを判断する。そして、まだすべてのノズル110についてヘッド異常検出・判定処理が終了していないと判断された場合には、制御部6は、走査信号を切替選択手段(セレクタ)19aに出力し、この切替選択手段19a及び切替制御手段19により、次の切替手段23b及びインクジェットヘッド100bを設定(特定)し(ステップS607)、ステップS603に移行して、同様の処理を繰り返す。以下、すべてのインクジェットヘッド100についてヘッド異常検出・判定処理が終了するまでこのループを繰り返す。
【0183】
また、ステップS606において、すべてのノズル110についてヘッド異常検出処理及び判定処理が終了したと判断される場合には、吐出選択手段182のラッチ回路182bにラッチされている吐出データをクリアするために、制御部6は、CLEAR信号をラッチ回路182bに入力して(ステップS609)、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図30に示すインクジェットプリンタ1におけるヘッド異常検出処理及び判定処理を終了する。
【0184】
上述のように、図30に示すインクジェットプリンタ1における処理では、複数の切替手段23と1つのヘッド異常検出手段10から検出回路が構成され、切替選択手段(セレクタ)19aの走査信号により特定され、吐出データに応じて吐出駆動をするインクジェットヘッド100に対応する切替手段23のみが切替動作を行って、対応するインクジェットヘッド100の吐出異常検出及び原因判定を行っているので、より効率的にインクジェットヘッド100の吐出異常又はヘッド異常検出及び原因判定を行うことができる。
【0185】
なお、このフローチャートのステップS602では、シフトレジスタ182aにすべてのノズル110に対応する吐出データを入力しているが、図31に示すフローチャートのように、切替選択手段19aによるインクジェットヘッド100の走査順に合わせて、シフトレジスタ182aに入力する吐出データを対応する1つのインクジェットヘッド100に入力し、1ノズル110ずつ吐出異常又はヘッド異常検出・判定処理を行ってもよい。
【0186】
次に、図34及び図35に示すフローチャートを参照して、印字動作時におけるインクジェットプリンタ1の吐出異常検出・判定処理について説明する。図27に示すインクジェットプリンタ1においては、主に、フラッシング動作時におけるヘッド異常検出処理及び判定処理に適しているので、印字動作時のフローチャート及びその動作説明を省略するが、この図27に示すインクジェットプリンタ1においても印字動作時に吐出異常検出・判定処理が行われてもよい。
【0187】
図34は、図28及び図29に示すインクジェットプリンタ1の印字動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。ホストコンピュータ8からの印刷(印字)指示により、このフローチャートの処理が実行(開始)される。制御部6を介してホストコンピュータ8から印字データが吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに入力されると(ステップS701)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS702)、その印字データがラッチされる。このとき、切替手段23a〜23eは、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eと駆動波形生成手段181とを接続している(ステップS703)。
【0188】
そして、インク吐出動作を行ったインクジェットヘッド100に対応するヘッド異常検出手段10は、図24のフローチャートに示すヘッド異常検出・判定処理を実行する(ステップS704)。この場合、各インクジェットヘッド100に対応するそれぞれの判定結果が、処理対象となるインクジェットヘッド100と関連付けられて、記憶手段62の所定の格納領域に保存される。
【0189】
ここで、図28に示すインクジェットプリンタ1の場合には、切替手段23a〜23eは、制御部6から出力される駆動/検出切替信号に基づいて、インクジェットヘッド100a〜100eをヘッド異常検出手段10a〜10eに接続する(図24のステップS103)。そのため、印字データの存在しないインクジェットヘッド100では、静電アクチュエータ120が駆動していないので、ヘッド異常検出手段10の残留振動検出手段16は、振動板121の残留振動波形を検出しない。一方、図29に示すインクジェットプリンタ1の場合には、切替手段23a〜23eは、制御部6から出力される駆動/検出切替信号と、ラッチ回路182bから出力される印字データとが入力されるAND回路の出力信号に基づいて、印字データの存在するインクジェットヘッド100をヘッド異常検出手段10に接続する(図24のステップS103)。
【0190】
ステップS705において、制御部6は、インクジェットプリンタ1の印字動作が終了したか否かを判断する。そして、印字動作が終わっていないと判断されるときには、制御部6は、ステップS701に移行して、次の印字データをシフトレジスタ182aに入力し、同様の処理を繰り返す。また、印字動作が終了したと判断されるときには、吐出選択手段182のラッチ回路182bにラッチされている吐出データをクリアするために、制御部6は、CLEAR信号をラッチ回路182bに入力して(ステップS707)、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図28及び図29に示すインクジェットプリンタ1におけるヘッド異常検出処理及び判定処理を終了する。
【0191】
上述のように、図28及び図29に示すインクジェットプリンタ1は、複数の切替手段23a〜23eと、複数のヘッド異常検出手段10a〜10eとを備え、一度にすべてのインクジェットヘッド100に対して吐出異常検出・判定処理を行っているので、これらの処理を短時間に行うことができる。また、図29に示すインクジェットプリンタ1は、切替制御手段19、すなわち、駆動/検出切替信号と印字データとを論理積演算するAND回路ANDa〜ANDeをさらに備え、印字動作を行うインクジェットヘッド100のみに対して切替手段23による切替動作を行っているので、無駄な検出を行うことなく、ヘッド異常検出処理及び判定処理を行うことができる。
【0192】
次いで、図35は、図30に示すインクジェットプリンタ1の印字動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。ホストコンピュータ8からの印刷指示により、図30に示すインクジェットプリンタ1においてこのフローチャートの処理が実行される。まず、切替選択手段19aは、最初の切替手段23a及びインクジェットヘッド100aを予め設定(特定)しておく(ステップS801)。
【0193】
制御部6を介してホストコンピュータ8から印字データが吐出選択手段182のシフトレジスタ182aに入力されると(ステップS802)、ラッチ回路182bにラッチ信号が入力されて(ステップS803)、その印字データがラッチされる。ここで、切替手段23a〜23eは、この段階では、すべてのインクジェットヘッド100a〜100eと駆動波形生成手段181(吐出選択手段182のドライバ182c)とを接続している(ステップS804)。
【0194】
そして、制御部6は、インクジェットヘッド100aに印字データがある場合には、切替選択手段19aによって吐出動作後静電アクチュエータ120がヘッド異常検出手段10に接続され(図24のステップS103)、図24(図25)のフローチャートに示すヘッド異常検出・判定処理を実行する(ステップS805)。そして、図24のステップS106において実行される吐出異常判定処理の判定結果が、処理対象となるインクジェットヘッド100(ここでは、100a)と関連付けられて、記憶手段62の所定の格納領域に保存される(図24のステップS107)。
【0195】
ステップS806において、制御部6は、すべてのノズル110(すべてのインクジェットヘッド100)について上述の吐出異常又はヘッド異常検出・判定処理を終了したか否かを判断する。そして、すべてのノズル110について上記処理が終了したと判断される場合には、制御部6は、走査信号に基づいて、また最初のノズル110に対応する切替手段23aを設定し(ステップS808)、すべてのノズル110について上記処理が終了していないと判断される場合には、次のノズル110に対応する切替手段23bを設定する(ステップS807)。
【0196】
ステップS809において、制御部6は、ホストコンピュータ8から指示された所定の印字動作が終了したか否かを判断する。そして、まだ印字動作が終了していないと判断された場合には、次の印字データがシフトレジスタ182aに入力され(ステップS802)、同様の処理を繰り返す。印字動作が終了したと判断された場合には、吐出選択手段182のラッチ回路182bにラッチされている吐出データをクリアするために、制御部6は、CLEAR信号をラッチ回路182bに入力して(ステップS811)、ラッチ回路182bのラッチ状態を解除して、図30に示すインクジェットプリンタ1における吐出異常検出・判定処理を終了する。
【0197】
以上のように、本発明の液滴吐出装置(インクジェットプリンタ1)は、振動板121と、振動板121を変位させる複数の静電アクチュエータ120と、内部に液体が充填され、振動板121の変位により、該内部の圧力が増減されるキャビティ141と、キャビティ141に連通し、キャビティ141内の圧力の増減により液体を液滴として吐出するノズル110とを有する複数のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100と、これらの静電アクチュエータ120を駆動する駆動波形生成手段181と、複数のノズル110のうちいずれのノズル110から液滴を吐出するかを選択する吐出選択手段182と、振動板121の残留振動を検出し、この検出された振動板121の残留振動に基づいて、液滴の吐出の異常を検出する1つ又は複数のヘッド異常検出手段10と、静電アクチュエータ120の駆動による液滴の吐出動作後、駆動/検出切替信号や印字データ、あるいは走査信号に基づいて、静電アクチュエータ120を駆動波形生成手段181からヘッド異常検出手段10に切り替える1つ又は複数の切替手段23とを備え、一度(並列的)にあるいは順次に複数のノズル110の吐出異常又はヘッド異常を検出することとした。
【0198】
したがって、本発明の液滴吐出装置によって、ヘッド異常検出及びその原因判定を短時間に行うことができるとともに、ヘッド異常検出手段10を含む検出回路の回路構成をスケールダウンすることができ、液滴吐出装置の製造コストの増加を防止することができる。また、静電アクチュエータ120の駆動後、ヘッド異常検出手段10に切り替えてヘッド異常検出及び原因判定を行っているので、アクチュエータの駆動に影響を与えることがなく、それによって、本発明の液滴吐出装置のスループットを低下又は悪化させることがない。また、所定の構成要素を備えている既存の液滴吐出装置(インクジェットプリンタ)に、本発明のヘッド異常検出手段10を装備することも可能である。
【0199】
また、本発明の液滴吐出装置は、上記構成と異なり、複数の切替手段23と、切替制御手段19と、1つあるいはノズル110の数量と対応する複数のヘッド異常検出手段10とを備え、駆動/検出切替信号及び吐出データ(印字データ)、あるいは、走査信号、駆動/検出切替信号及び吐出データ(印字データ)に基づいて、対応する静電アクチュエータ120を駆動波形生成手段181又は吐出選択手段182からヘッド異常検出手段10に切り替えて、ヘッド異常検出及び原因判定を行うこととした。
【0200】
したがって、本発明の液滴吐出装置によって、吐出データ(印字データ)が入力されていない、すなわち、吐出駆動動作をしていない静電アクチュエータ120に対応する切替手段は切替動作を行わないので、無駄な検出・判定処理を回避することができる。また、切替選択手段19aを利用する場合には、液滴吐出装置は、1つのヘッド異常検出手段10のみを備えていればよいので、液滴吐出装置の回路構成をスケールダウンすることができるとともに、液滴吐出装置の製造コストの増加を防止することができる。
【0201】
なお、この第1実施形態では、吐出異常検出のタイミングを説明するための図27〜図30に示すインクジェットプリンタ1は、説明の便宜上、ヘッドユニット35に5つのインクジェットヘッド100(ノズル110)を備える構成を示すとともに、その構成について説明していたが、本発明の液滴吐出装置では、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100の数量は5つに限らず、実際に搭載されている数量のノズル110を対象に吐出異常又はヘッド異常の検出・判定を行うことができる。例えば、図5に示すノズルプレート150の構成のように、各色(各種類)のインクに対して14個のノズル110及び静電アクチュエータ120が搭載されているインクジェットプリンタ1(インクジェットヘッド100)に、本発明のヘッド異常検出手段10を適用することができる。
【0202】
次に、本発明の液滴吐出装置におけるインクジェットヘッド100のヘッド異常(吐出異常)の原因を解消させる回復処理を実行する構成(回復手段24)について説明する。図36は、図1に示すインクジェットプリンタ1の上部から見た概略的な構造(一部省略)を示す図である。この図36に示すインクジェットプリンタ1は、図1の斜視図で示した構成以外に、本発明のインク滴不吐出(ヘッド異常)の回復処理を実行するためのワイパ300とキャップ310とを備える。
【0203】
本発明の回復手段24が実行する回復処理としては、各インクジェットヘッド100のノズルから液滴を予備的に吐出するフラッシング処理と、後述するワイパ300(図37参照)によるワイピング処理と、後述するチューブポンプ320によるポンピング処理(ポンプ吸引処理)が含まれる。すなわち、回復手段24は、チューブポンプ320及びそれを駆動するパルスモータ(図示せず)と、ワイパ300及びワイパ300の上下動駆動機構(図示せず)と、キャップ310の上下動駆動機構(図示せず)とを備え、フラッシング処理においてはヘッドドライバ33及びヘッドユニット35などが、また、ワイピング処理においてはキャリッジモータ41などが回復手段24の一部として機能する。フラッシング処理については上述しているので、以降、ワイピング処理及びポンピング処理について説明する。
【0204】
ここで、ワイピング処理とは、ヘッドユニット35のノズルプレート150(ノズル面)に付着した紙粉などの異物をワイパ300により拭き取る処理のことをいう。また、ポンピング処理(ポンプ吸引処理)とは、後述するチューブポンプ320を駆動して、ヘッドユニット35の各ノズル110から、キャビティ141内のインクを吸引して排出する処理をいう。このように、ワイピング処理は、上述のようなインクジェットヘッド100の液滴の吐出異常の原因の1つである紙粉付着の状態における回復処理として適切な処理である。また、ポンプ吸引処理は、前述のフラッシング処理では取り除けないキャビティ141内の気泡を除去し、あるいは、ノズル110付近のインクが乾燥により又はキャビティ141内のインクが経年劣化により増粘した場合に、増粘したインクを除去する回復処理として適切な処理である。なお、それほど増粘が進んでおらず粘度がそれほど大きくない場合には、上述のフラッシング処理による回復処理も行われ得る。この場合、排出するインク量が少ないので、スループットやランニングコストを低下させずに適切な回復処理を行うことができる。
【0205】
複数のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100を有するヘッドユニット35は、キャリッジ32に搭載され、2本のキャリッジガイド軸422にガイドされてキャリッジモータ41により、図中その上端に備えられた連結部34を介してタイミングベルト421に連結して移動する。キャリッジ32に搭載されたヘッドユニット35は、キャリッジモータ41の駆動により移動するタイミングベルト421を介して(タイミングベルト421に連動して)主走査方向に移動可能である。なお、キャリッジモータ41は、タイミングベルト421を連続的に回転させるためのプーリの役割を果たし、他端側にも同様にプーリ44が備えられている。
【0206】
また、キャップ310は、ヘッドユニット35のノズルプレート150(図5参照)のキャッピングを行うためのものである。キャップ310には、その底部側面に孔が形成され、後述するように、チューブポンプ320の構成要素である可撓性のチューブ321が接続されている。なお、チューブポンプ320については、図39において後述する。
【0207】
記録(印字)動作時には、所定のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)100の静電アクチュエータ120を駆動しながら、記録用紙Pは副走査方向、すなわち、図36中下方に移動し、印字手段3は、主走査方向、すわなち、図36中左右に移動することにより、インクジェットヘッド(液滴吐出装置)1は、ホストコンピュータ8から入力された印刷データ(印字データ)に基づいて所定の画像などを記録用紙Pに印刷(記録)する。
【0208】
図37は、図36に示すワイパ300と印字手段3との位置関係を示す図である。この図37において、印字手段3のヘッドユニット35とワイパ300は、図36に示すインクジェットプリンタ1の図中下側から上側を見た場合の側面図の一部として示される。ワイパ300は、図37(a)に示すように、ヘッドユニット35のノズル面、すなわち、インクジェットヘッド100のノズルプレート150と当接可能なように、上下移動可能に配置される。
【0209】
ここで、ワイパ300を利用する回復処理であるワイピング処理について説明する。ワイピング処理を行う際、図37(a)に示すように、ノズル面(ノズルプレート150)よりもワイパ300の先端が上側に位置するように図示しない駆動装置によってワイパ300は上方に移動される。この場合において、キャリッジモータ41を駆動して図中左方向(矢印の方向)に印字手段3のヘッドユニット35を移動させると、ワイピング部材301がノズルプレート150(ノズル面)に当接することになる。
【0210】
なお、ワイピング部材301は可撓性のゴム部材等から構成されるので、図37(b)に示すように、ワイピング部材301のノズルプレート150と当接する先端部分は撓み、その先端部によってノズルプレート150(ノズル面)の表面をクリーニング(拭き掃除)する。これにより、ノズルプレート150(ノズル面)に付着した紙粉などの異物(例えば、紙粉、空気中に浮遊するごみ、ゴムの切れ端など)を除去することができる。また、このような異物の付着状態に応じて(異物が多く付着している場合には)、印字手段3のヘッドユニット35にワイパ300の上方を往復移動させることによって、ワイピング処理を複数回実施することもできる。
【0211】
図38は、ポンプ吸引処理時における、ヘッドユニット35と、キャップ310及びポンプ320との関係を示す図である。チューブ321は、ポンピング処理(ポンプ吸引処理)におけるインク排出路を形成するものであり、その一端は、上述のように、キャップ310の底部に接続され、他端は、チューブポンプ320を介して排インクカートリッジ340に接続されている。
【0212】
キャップ310の内部底面には、インク吸収体330が配置されている。このインク吸収体330は、ポンプ吸引処理やフラッシング処理においてインクジェットヘッド100のノズル110から吐出されるインクを吸収して、一時貯蔵する。なお、インク吸収体330によって、キャップ310内へのフラッシング動作時に、吐出された液滴が跳ね返ってノズルプレート150を汚すことを防止することができる。
【0213】
図39は、図38に示すチューブポンプ320の構成を示す概略図である。この図38(b)に示すように、チューブポンプ320は、回転式ポンプであり、回転体322と、その回転体322の円周部に配置された4つのローラ323と、ガイド部材350とを備えている。なお、ローラ323は、回転体322により支持されており、ガイド部材350のガイド351に沿って円弧状に載置された可撓性のチューブ321を加圧するものである。
【0214】
このチューブポンプ320は、軸322aを中心にして回転体322を図39に示す矢印X方向に回転させることにより、チューブ321に当接している1つ又は2つのローラ323が、Y方向に回転しながら、ガイド部材350の円弧状のガイド351に載置されたチューブ321を順次加圧する。これにより、チューブ321が変形し、このチューブ321内に発生した負圧により、各インクジェットヘッド100のキャビティ141内のインク(液状材料)がキャップ310を介して吸引され、気泡が混入し、あるいは乾燥により増粘した不要なインクがノズル110を介して、インク吸収体330に排出され、このインク吸収体330に吸収された排インクがチューブポンプ320を介して排インクカートリッジ340(図38参照)に排出される。
【0215】
なお、このチューブポンプ320は、図示しないパルスモータなどのモータにより駆動される。パルスモータは、制御部6により制御される。チューブポンプ320の回転制御に対する駆動情報、例えば、回転速度、回転数が記述されたルックアップテーブル、シーケンス制御が記述された制御プログラムなどは、制御部6のPROM64などに格納されており、これらの駆動情報に基づいて、制御部6のCPU61によってチューブポンプ320の制御が行われている。
【0216】
次に、本発明の回復手段24の動作(吐出異常回復処理)を説明する。図40は、本発明のインクジェットプリンタ1(液滴吐出装置)における吐出異常回復処理を示すフローチャートである。上述の吐出異常検出・判定処理(図24のフローチャート参照)において吐出異常のノズル110が検出され、その原因が判定されると、印刷動作(印字動作)などを行っていない所定のタイミングで、印字手段3が所定の待機領域(例えば、図36においてヘッドユニット35のノズルプレート150をキャップ310で覆う位置、あるいは、ワイパ300によるワイピング処理を実施可能な位置)まで移動されて、本発明の吐出異常回復処理が実行される。
【0217】
まず、制御部6は、図24のステップS107において制御部6のEEPROM62に保存された各ノズル110に対応する判定結果を読み出す(ステップS901)。ステップS902において、制御部6は、この読み出した判定結果に吐出異常のノズル110があるか否かを判定する。そして、吐出異常のノズル110がないと判定された場合、すなわち、すべてのノズル110から正常に液滴が吐出された場合には、そのまま、この吐出異常回復処理を終了する。
【0218】
一方、いずれかのノズル110が吐出異常であったと判定された場合には、ステップS903において、制御部6は、その吐出異常と判定されたノズル110が紙粉付着であるか否かを判定する。そして、そのノズル110の出口付近に紙粉が付着していないと判定された場合には、ステップS905に移行し、紙粉が付着していると判定された場合には、上述のワイパ300によるノズルプレート150へのワイピング処理を実行する(ステップS904)。
【0219】
ステップS905において、続いて、制御部6は、上記吐出異常と判定されたノズル110が気泡混入であるか否かを判定する。そして、気泡混入であると判定された場合には、制御部6は、すべてのノズル110に対してチューブポンプ320によるポンプ吸引処理を実行し(ステップS906)、この吐出異常回復処理を終了する。一方、気泡混入でないと判定された場合には、制御部6は、上記計測手段17によって計測された振動板121の残留振動の周期の長短に基づいて、チューブポンプ320によるポンプ吸引処理又は吐出異常と判定されたノズル110のみもしくはすべてのノズル110に対するフラッシング処理を実行し(ステップS907)、この吐出異常回復処理を終了する。
【0220】
以上のように、本発明の第1実施形態における液滴吐出装置(インクジェットプリンタ1)では、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド100)に対する吐出の異常及びその原因を検出するヘッド異常検出手段10と、液滴吐出ヘッド100のノズル110から液滴の吐出動作が行われた際に、このヘッド異常検出手段10によりこのノズル110に対して吐出の異常が検出された場合には、その吐出異常の原因に応じて、回復処理を実行する回復手段(例えば、ポンプ吸引処理におけるチューブポンプ320、ワイピング処理におけるワイパ300など)とを備えることとした。
【0221】
したがって、本発明の液滴吐出装置によって、吐出異常の原因に対応する適切な回復処理(フラッシング処理、ポンプ吸引処理及びワイピング処理のいずれか又は2つ)を実行することができるので、従来の液滴吐出装置におけるシーケンシャルな回復処理とは異なり、回復処理を行った際に発生する無駄な排インクを減らすことができ、それによって、液滴吐出装置全体のスループットの低下又は悪化を防止することができる。
【0222】
また、本発明の液滴吐出装置(インクジェットプリンタ1)は、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド100)に静電アクチュエータ120の駆動により変位される振動板121を設け、ヘッド異常検出手段10は、液滴吐出動作時におけるこの振動板121の残留振動の振動パターン(例えば、残留振動の周期)に基づいて、液滴の吐出異常を検出する構成としている。
【0223】
したがって、本発明によって、従来の吐出異常を検出可能な液滴吐出装置に比べ、他の部品(例えば、光学式のドット抜け検出装置など)を必要としないので、液滴吐出ヘッドのサイズを大きくすることなく液滴の吐出異常を検出することができるとともに、吐出異常(ドット抜け)検出を行うことができる液滴吐出装置の製造コストを低く抑えることができる。また、本発明の液滴吐出装置では、液滴吐出動作後の振動板の残留振動を用いて液滴の吐出異常を検出しているので、印字動作の途中でも液滴の吐出異常を検出することができる。
【0224】
なお、本発明の液滴吐出装置及び液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法では、吐出異常とその原因を検出する手段及び方法は、上述のような振動板121の残留振動の振動パターンを検出して解析する方法に限定されず、どのような検出方法を用いたとしても、吐出異常の原因が特定されていれば、適切な回復処理を選択することができる。吐出異常(ドット抜け)の検出方法としては、例えば、レーザ等の光学センサを直接ノズル内のインクメニスカスに照射反射させ受光素子によってメニスカスの振動状態を検知し、振動状態から目詰まりの原因を特定する方法や、一般的な光学式のドット抜け検出装置(飛翔液滴がセンサの検知範囲に入ったか否かを検出する)と、吐出動作後の時間経過の計測結果から、液滴の有無を検出すると共にドット抜けが生じた場合のインクジェットヘッドの時間経過データを基に乾燥時間内で発生した現象については乾燥と推定し、乾燥時間外に発生した現象については紙粉、あるいは気泡と推定する方法や、上記の構成に振動センサを追加し、ドット抜けが発生する前に気泡が混入し得る振動が加わったかどうかを判定し、加わっていた場合は気泡混入と推定する方法(この場合、ドット抜けの検出手段は光学式に限定される必要はなく、例えば、インク吐出を受けて熱感知部の温度変化を検知する熱感知式や、インク滴を帯電させて吐出し着弾した検出電極の電荷量の変化を検出する方法や、インク滴が電極間を通過する事によって変化する静電容量式の検出を用いてもよい)や、紙粉付着の検出方法として、ヘッド面の状態をカメラ等により画像情報として検出、あるいはレーザ等の光学センサをヘッド面付近で走査し紙粉付着の有無を検出する方法などが考えられる。
【0225】
また、回復手段24が実行する回復処理の一つであるポンプ吸引回復処理は、乾燥などにより増粘が進んだ場合と気泡混入の場合に対して有効な処理であり、いずれの原因においても同様の回復処理が取られ得るため、ヘッドユニット3内にポンプ吸引処理が必要な気泡混入と乾燥増粘のインクジェットヘッド100を検出した場合には、図40のフローチャートのステップS905〜S907のように個別に処理を決定せず、気泡混入のインクジェットヘッド100と乾燥増粘のインクジェットヘッド100に対して一度にポンプ吸引処理を実行してもよい。すなわち、ノズル110付近に紙粉が付着しているか否かを判断した後は、気泡混入か乾燥増粘かの判断をせず、ポンプ吸引処理を実行してもよい。また、ポンプ吸引処理は、吐出異常が発生したインクジェットヘッド100を含む所定の領域に対して行ってもよく、吐出異常が発生したインクジェットヘッド100を含むヘッドユニット35すべて又はインクの種類別に対して行ってもよい。
【0226】
次に、本発明の粘度検出手段30について説明する。図41は、図2に示す粘度検出手段30の概略的なブロック図である。なお、図16のブロック図に示された構成要素と同様の構成については、同一の符号を付するとともに、その説明を省略する。ここで、図16及び図41のブロック図と図23のブロック図を比較すると分かるように、残留振動検出手段16と判定手段20とは、ヘッド異常検出手段10と粘度検出手段30とで共用されてもよく、また、別々に設けられてもよい。
【0227】
図23の説明でも示したように、波形整形回路15のオペアンプ151の出力信号は、ピーク検出手段27に入力される。ピーク検出手段27は、例えば、図43の回路図(ピークホールド回路)に示すような回路構成を有し、上述した振動板121の残留振動波形の振幅のピーク値(波高値)をホールド(保持)するためのものである。
【0228】
図43に示すピークホールド回路について説明する。オペアンプAp1は、非反転増幅器であり、残留振動波形(減衰振動波形)の電圧値により、ダイオードDp2、抵抗素子Rp2を介してコンデンサCp1を充電する。オペアンプAp2は、バッファとして動作し、コンデンサCp1に充電された電圧値を出力する。このコンデンサCp1の充電電圧は、抵抗素子Rp2を介して、オペアンプAp1の反転入力端子に接続されている。オペアンプ(バッファ)Ap2の出力電圧は、ダイオードDp2の順方向電圧分だけ充電電圧が低下しているために、入力信号の残留振動波形の電圧と電位差が発生し、その電位差分を補うようにコンデンサCp1が充電される。したがって、このピークホールド回路は、ダイオードDp2の順方向電圧分をキャンセルするような構成となっている。
【0229】
一方、残留振動波形の電圧がほぼ0となった場合にバッファ電圧との電位差が最大となり、ダイオードDp2に大きな逆バイアスがかかるため、このピークホールド回路は、バッファAp2の出力電圧>残留振動波形の電圧値の状態で、ダイオードDp1の順方向電圧以上となったときにダイオードDp1が導通し、オペアンプAp1の入力端子間の電位をダイオードDp1の順方向電圧に保持している。したがって、ダイオードDp2は、バッファ電圧+ダイオードDp1の順方向電圧の逆バイアスに抑えるように構成されている。なお、バッファAp2の出力電圧は、A/D変換器によってデジタルデータに変換され、このデジタルに数値化された残留振動のピーク電圧を判定手段20に出力するように構成されてもよい。
【0230】
判定手段20は、ピーク検出手段27によって検出された残留振動波形のピーク値(波高値)に基づいて、インクジェットヘッド100のキャビティ141内のインク粘度を判定するものである。この判定手段20は、粘度検出手段30の構成とともに、図42のブロック図を用いて説明する。図42は、図41に示す粘度検出手段30内の判定手段20の概略的なブロック図である。この判定手段20は、減算器28と、粘度判定手段29とから構成される。また、ピーク検出手段27及び減算器28は、その検出タイミングを調整するタイミング生成手段36に接続される。以下、各構成要素について説明する。
【0231】
上述のヘッド異常の検出処理における駆動回路18とヘッド異常検出手段10とを切り替える駆動/検出切替信号が、ヘッド異常を検出するのと同じタイミングでタイミング生成手段36に入力される。タイミング生成手段36は、駆動回路18が出力する駆動信号に基づいて、Reset信号と、CLR信号と、Ls信号とを生成する。すなわち、駆動信号の検出動作をした次のパルスの入力のタイミングで、所定の時間だけHighレベルとなるLs信号を生成し、このLs信号の立ち下がりエッジに同期してReset信号が生成される。また、CLR信号は、駆動信号の立ち下がりエッジに同期して、駆動休止期間中Highレベルとなり、駆動信号の次の入力パルスの立ち上がりエッジに同期して、Lowレベルとなる。
【0232】
上述のように、ピーク検出手段27は、残留振動波形の最大波高値を保持して検出するものであり、Reset信号が入力されるとその検出結果はクリアされる。このピーク検出手段27の出力信号は、減算器28に入力される。減算器28は、上記CLR信号がHighレベルの間は作動せず、CLR信号がLowレベルとなると、減算動作が許可され、このタイミングにおいて、記憶手段62に記憶されている基準波高値からピーク検出手段27によって検出された波高値を減算し、その減算結果を粘度判定手段29に出力する。ここで、基準波高値とは、例えば、温度センサ37によって計測されたインクジェットヘッド100の周辺温度(環境温度)が25℃のときの残留振動の最大波高値を数値化したものである。
【0233】
粘度判定手段29は、この減算器28の減算結果と、記憶手段62に記憶されている比較基準値を比較して、インクジェットヘッド100(インクカートリッジ31)内のインク粘度を判定する。この比較基準値とは、基準波高値に到達した場合における減算値(=0:理想値)に、インク粘度の使用可能な範囲(液滴吐出装置の動作可能範囲)を見込んだ許容範囲を持つ値(範囲)である。本実施形態では、比較基準値は、例えば、環境温度が10℃から40℃までの範囲におけるインク粘度の範囲である(図45参照)。
【0234】
記憶手段62は、上述のように、減算器28に基準波高値データを出力するとともに、粘度判定手段29に比較基準値データを出力する。そして、記憶手段62は、Ls信号の入力のタイミングで、粘度判定手段29において判定された判定結果を保持し、所定の保存領域に記憶する。上述のヘッド異常検出・判定処理においていずれかのインクジェットヘッド100にヘッド異常が発生していると判定され、記憶手段62にインク粘度データが記憶されているとき、回復手段24による回復処理がチューブポンプ320によるポンプ吸引処理の場合、粘度検出手段30によって検出されたインク粘度に応じて、このチューブポンプ320の吸引時間又は出力が設定されてもよく、回復処理がフラッシング処理の場合、粘度検出手段30によって検出されたインク粘度に応じて、インクを予備的に吐出する回数が設定されてもよい。
【0235】
図44は、タイミング生成手段36によって生成される信号のタイミングを示すタイミングチャートである。このタイミングチャートを参照して、図42に示す各構成要素の動作を説明する。駆動回路18から切替手段23を介して静電アクチュエータ120に駆動信号が入力されると、その駆動パルスの立ち下がりエッジに同期して、切替手段は、駆動/検出切替信号に応じて、静電アクチュエータ120との接続を、駆動回路18から発振回路11に切り替える。
【0236】
駆動/検出切替信号がHighレベルになると、振動板121の残留振動に基づいて、発振回路11が発振し、残留振動検出手段16の波形整形回路15から残留振動波形が出力される。そして、ピーク検出手段27は、その残留振動波形のピーク値(最大波高値)を保持する。保持したピーク値は、減算器28に出力され、CLR信号(駆動/波形切替信号と同様の波形)がLowレベルになるとき、減算器28は、基準波高値からこのピーク値を減算し、粘度判定手段29に出力する。粘度判定手段29は、減算器28の減算結果と比較基準値とを比較し、その比較結果(判定結果)を記憶手段62に出力する。
【0237】
次の駆動パルスの立ち上がりエッジに同期して、Ls信号がHighレベルとなり、そのLs信号が記憶手段62に入力されると、記憶手段62は、粘度判定手段29の判定結果を記憶する。そして、Ls信号の立ち下がりエッジに同期して、Reset信号がHighレベルになると、そのReset信号がピーク検出手段27に入力され、ピーク検出手段27は、保持していたピーク値(最大波高値)をリセット(クリア)する。なお、比較基準値は、最大基準値と最小基準値とで定義され、減算器28の減算結果がこの範囲内にあるとき、粘度判定手段29は、インク粘度が正常である(インクジェットプリンタ1の動作可能範囲内である)と判定する。
【0238】
図45及び図46は、この動作可能範囲と残留振動の振幅量及び減算結果の偏差εとの関係を示すグラフである。図45は、インクジェットヘッド100の周辺温度とインク粘度との関係を示すグラフである。このグラフからも分かるように、周辺温度が上昇すると、インク粘度は小さくなる。また、図46は、減算結果の偏差εとインク粘度との関係を示すグラフである。この偏差εが大きくなるにつれて、インク粘度は大きくなっており、図45のグラフと概ね線対称となるグラフとなっている。
【0239】
インクジェットヘッド100の周辺温度の変化に対する残留振動波形の振幅量の変化を図47に示す。この図47から分かるように、振動板121の残留振動波形は、周辺温度が上昇するにつれて、その振幅量が大きくなる。したがって、図45のグラフと図47のグラフから、インク粘度が上昇するにつれて、残留振動波形の振幅量が小さくなることが分かる。本発明の粘度検出手段30は、この点を利用して、例えば、基準振幅量と検出された振幅量との差を用い、記憶手段62に予め記憶されているルックアップテーブル(LUT)を参照して、インク粘度を検出している。
【0240】
また、上述したヘッド異常時における残留振動波形を比較する。図48は、ヘッド異常が発生したときと正常なときの残留振動波形を示す図である。上述のように、ヘッド異常の原因が気泡混入の場合、残留振動の周期が短くなり、乾燥増粘の場合、残留振動の周期が非常に長くなるとともに、残留振動波形が過減衰となり、紙粉付着の場合、残留振動の周期が長くなる。このように、本発明のヘッド異常検出手段10は、残留振動波形の周期に基づいて、ヘッド異常の有無とその原因を特定している。
【0241】
ここで、残留振動の周期は、静電アクチュエータ120の静電容量成分の変化によって変化するのであるが、残留振動の振幅量は、この静電容量成分の変化、すなわち、ヘッド異常の原因によってそれほど変化しないことが実験から分かっている。そのため、同じ周辺温度の場合には、振幅量の大小により、インク粘度を検出することができる。
【0242】
しかしながら、この残留振動波形の周期の検出(推定)には1つの例外がある。すなわち、インク温度が低い場合、すなわち、インク粘度が高い場合の残留振動波形の周期と、インク温度が高いがノズル110出口付近に紙粉が大量に付着した場合の残留振動波形の周期とは、ほぼ同じような実験結果が得られた。一例では、周辺温度が40℃で紙粉付着が多い場合と、周辺温度が20℃の場合とにおける残留振動波形の周期である。そこで、このような場合には、温度センサ37などを用いて、インクジェットヘッド100の周辺温度と残留振動波形の振幅量及び周期の組み合わせに基づいて、ヘッド異常の原因を判定することができる。
【0243】
ここでは、3つの判定方法を示す。まず、第1の判定方法では、▲1▼温度センサ37を用いてインクジェットヘッド100の周辺温度を測定し、その測定温度と基準温度(例えば、25℃)との差を用いて、記憶手段62に予め記憶されているLUTを参照し、残留振動波形の振幅量と、周期の正常範囲(インク粘度推測可能範囲)を求める。そして、▲2▼検出された残留振動波形の周期が記憶手段62に記憶されている変化量(所定の変位量)の範囲内にある場合には、検出対象となったノズル110は正常である(ヘッド異常がない)と判断し、残留振動波形の振幅量に基づいて、インク粘度を検出する。あるいは、残留振動波形の振幅量が所定の変化量の範囲内(正常範囲内)にある場合、検出対象となったノズル110は正常であると判断し、残留振動波形の振幅量に基づいて、インク粘度を推測する。あるいは、残留振動波形の振幅量及び動周期が正常範囲内にある場合は、検出対象となったノズル110は正常であると判断し、残留振動波形の振幅量に基づいて、インク粘度を推測する。▲3▼また、残留振動波形の振幅量及び/又は振幅周期が正常範囲外にある場合には、上述の例外を考慮して、残留振動波形の周期に基づいて、ヘッド異常の原因を特定し、その原因に応じた回復動作を実行する。
【0244】
次に、第2の判定方法では、▲1▼温度センサ37を用いることなく、ヘッド異常又はインク粘度の検出は、基準温度(例えば、25℃)における残留振動波形の振幅量及び/又は周期からの変化量から求める。以下、▲2▼、▲3▼は第1の判定方法と同様である。
最後に、第3の判定方法では、第2の判定方法と同様に、温度センサ37を用いずに、定期的にインク粘度を検出し、その検出結果を記憶手段62に記憶させる。そして、インク粘度のサンプリング数を増やすことにより、残留振動波形の振幅量、周期の正常範囲を判断(推測)する。以下、▲2▼、▲3▼は第1の判定方法と同様である。
【0245】
なお、周期の正常範囲とは、例えば、正常にインクを吐出している状態における周辺温度10℃のときの周期から40℃のときの周期までの範囲や、上述のように、気泡混入又は乾燥増粘と判定しないTrの範囲をいう。また、振幅の変化量の正常範囲とは、例えば、正常にインクを吐出している状態における周辺温度10℃のときの振幅量から40℃のときの振幅量までの範囲などをいう。
【0246】
このような第1〜第3の判定方法を利用することにより、ヘッド異常の原因を特定することができるとともに、正確なインク粘度の検出を行うことができる。また、温度センサ37を用いて、残留振動波形の周期とインクジェットヘッド100の周辺温度とを比較することにより、ヘッド異常として判定することが困難であった周辺温度が高いときの紙粉付着と周辺温度が低いときの増粘(粘度増加)とを区別することができるので、より適切な回復処理を実行することができる。
【0247】
次に、ヘッド異常が発生していないときに、インク粘度に応じて実行する印刷(印字)処理について説明する。図49は、インク粘度とインクジェットヘッド100の使用時間(放置時間)との関係を示すグラフである。このグラフにおいて、斜線部分はインクジェットプリンタ1の駆動制御が不可能な(好ましくない)領域であり、放置時間をしきい値(縦軸と平行な太線)を過ぎている場合には、報知手段は、インクカートリッジ31の交換をインクジェットプリンタ1のユーザに促すように構成されてもよい。また、インク粘度のしきい値(横軸と平行な太線)を超えてインク粘度が増加している場合には、回復手段24による適切な回復処理(この場合、ポンプ吸引処理)が実行され得る。さらに、規定値を超えた場合には、インクジェットプリンタ1の印刷処理(インクジェットヘッド100の吐出駆動動作)を停止するように構成されてもよい。
【0248】
ここで、インク粘度及び放置時間がインクジェットプリンタ1の駆動制御領域にいる場合でも、インク粘度は経時変化をしているので、好ましくは、そのインク粘度に応じて、適切な補正処理を実行すべきである。この補正方法としては、インクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120の駆動波形を補正制御する方法と、印刷データ(印字データ)を補正する方法とがある。駆動波形の補正制御方法は、図49に示すインク粘度の経時変化に応じて、駆動回路18の駆動波形生成手段181が生成する駆動波形(電圧波形)の電圧値を変更することにより実行することができる。
【0249】
また、印字データを補正する方法は、図50のような印字データ補正手段を利用することにより実行できる。図50は、インク粘度の経時変化に応じて、印字データを補正して印字処理を実行するための構成を示すブロック図であり、図51は、印字データ補正処理で使用する入出力データの関係を示すグラフである。以下、図50に示す構成について説明する。
【0250】
上述したように、インクジェットプリンタ1は、ホストコンピュータ8からIF9を介して印刷データを受信すると、制御部6は、その印刷データ(印字データ)をEEPROM(記憶手段)62に格納し、所定の変換処理をした後に、印字データ修正手段38に出力する。また、粘度検出手段30は、インクジェットヘッド100の振動板121の残留振動波形からインク粘度を検出し、その検出したインク粘度を同様に印字データ修正手段38に出力する。印字データ修正手段38は、粘度検出手段30から入力されたインク粘度に基づいて、印字データを補正(修正)して、その修正された印字データを吐出選択手段182に出力する。吐出選択手段182は、上述のように、入力された印字データに基づいて、いずれのインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120を駆動するか選択し、その選択に基づいて、複数のインクジェットヘッド100は、インク滴の吐出動作を行う。
【0251】
ここで、印字データ修正手段38は、図51に示す印字データの補正のためのルックアップテーブルの入出力関係を達成するように印字データを修正する。なお、このルックアップテーブルは、入出力データが256階調であることを前提としているが、印字データ修正手段38の入出力データは256階調に限らず、どのようなデータでもよい。インク粘度が増加すると、1回の吐出動作によって吐出されるインク滴の量が減少するので、この印字データ修正手段38は、入力された吐出回数(入力データ)をそのままインクジェットヘッド100に吐出させず、入力よりも多い吐出回数となるように印字データを補正してその補正された吐出回数だけ吐出するように印字データを修正する。
【0252】
次に、ヘッド異常検出手段10及び粘度検出手段30の各動作を説明する。まず、温度センサ37の検出結果を利用しない場合におけるヘッド異常及び粘度の検出処理を説明する。図52及び図53は、本発明の一実施形態におけるヘッド異常検出・判定及び粘度検出処理を示すフローチャートである。印字データ(吐出データ)に対応する駆動信号がヘッドドライバ33の駆動回路18から入力され、それにより、図20及び図44のタイミングチャートに示すような駆動信号のタイミングに基づいて、静電アクチュエータ120の両電極間に駆動信号(電圧信号)が印加される(ステップS1001)。そして、制御部6は、駆動/検出切替信号に基づいて、吐出動作(吐出しない程度の静電アクチュエータの駆動を含む。以下同じ。)を行ったインクジェットヘッド100が駆動休止期間であるか否かを判断する(ステップS1002)。
【0253】
駆動/検出切替信号が切替手段23に入力されると、切替手段23によって、静電アクチュエータ120、すなわち、発振回路11を構成するコンデンサは、駆動回路18から切り離され、ヘッド異常検出手段10(検出回路)側、すなわち、残留振動検出手段16の発振回路11に接続される(ステップS1003)。そして、残留振動検出手段16は、前述した残留振動検出処理を実行し(ステップS1004)、計測手段17は、この残留振動検出処理において検出された残留振動波形データから所定の数値を計測する(ステップS1005)。ここでは、上述のように、計測手段17は、残留振動波形データからその残留振動の周期を計測する。
【0254】
次いで、判定手段20によって、計測手段の計測結果に基づいて、前述した吐出異常判定処理が実行され(ステップS1006)、その判定結果を制御部6のEEPROM(記憶手段)62の所定の格納領域に保存する(ステップS1007)。ここで、吐出異常判定処理と並行して、判定手段20は、正常に吐出した場合の基準周期と、上記で検出された周期を比較し(ステップS1010)、検出された周期Twが正常範囲にあるか否かを判断する(ステップS1011)。正常範囲にないと判定された場合は、ヘッド異常(吐出異常)が発生していると考えられるので、インク粘度を検出することなく図53に示す処理を終え、ステップS1007に移行する。
【0255】
残留振動の周期Twが正常範囲にあると判定された場合には、ピーク検出手段27は、残留振動波形の最大波高値を検出し(ステップS1012)、減算器28は、その最大波高値の値を記憶手段62に予め設定されている基準波高値から減算する(ステップS1013)。そして、タイミング生成手段36によってLs信号が発生したか否かが判定され、発生されると、粘度判定手段29は、検出された振幅量(最大波高値)からインク粘度を検出(判定)する(ステップS1015)。記憶手段62は、その検出されたインク粘度を所定の保存領域に保存する(ステップS1007)。
【0256】
そして、ステップS1008において、対象のインクジェットヘッド100が駆動期間であるか否かが判断される。すなわち、駆動休止期間が終了して、次の駆動信号が入力されたか否かが判断され、次の駆動信号が入力されるまで、このステップS1008で待機している。
次の駆動信号のパルスが入力されるタイミングで、駆動信号の立ち上がりエッジに同期して駆動/検出切替信号がLowレベルになると(ステップS1008で「yes」)、切替手段23は、静電アクチュエータ120との接続を、ヘッド異常検出手段(検出回路)10から駆動回路18に切り替えて(ステップS1009)、このヘッド異常検出及び粘度検出処理を終了する。
【0257】
次に、温度センサ37の検出結果を利用する場合におけるヘッド異常及び粘度の検出処理を説明する。図54及び図55は、本発明の別の実施形態におけるヘッド異常検出・判定及び粘度検出処理を示すフローチャートである。上述の場合と同様に、印字データ(吐出データ)に対応する駆動信号がヘッドドライバ33の駆動回路18から入力され、それにより、図20及び図44のタイミングチャートに示すような駆動信号のタイミングに基づいて、静電アクチュエータ120の両電極間に駆動信号(電圧信号)が印加される(ステップS1101)。そして、制御部6は、駆動/検出切替信号に基づいて、吐出動作を行ったインクジェットヘッド100が駆動休止期間であるか否かを判断する(ステップS1102)。
【0258】
駆動/検出切替信号が切替手段23に入力されると、切替手段23によって、静電アクチュエータ120、すなわち、発振回路11を構成するコンデンサは、駆動回路18から切り離され、ヘッド異常検出手段10(検出回路)側、すなわち、残留振動検出手段16の発振回路11に接続される(ステップS1103)。そして、残留振動検出手段16は、前述した残留振動検出処理を実行し(ステップS1104)、ピーク検出手段27は、残留振動波形の最大波高値を検出し(ステップS1105)、粘度判定手段29は、このように検出された最大波高値と、基準波高値とを比較する(ステップS1106)。これにより、最大波高値と基準波高値の差が偏差εとして得られる。
【0259】
ステップS1107において、タイミング生成手段36によりLs信号が発生されたか否かが判断され、このLs信号が発生するまでこのステップS1107で待機する。Ls信号が発生すると、ステップS1108において、上記のように得られた偏差εが正常範囲にあるか否かが判定される(図46参照)。偏差εが正常範囲にない場合には、ヘッド異常(吐出異常を含む)が発生しているものと考えられ、吐出異常判定処理(図26参照)を実行する(ステップS1112)。また、偏差εが正常範囲にある場合には、粘度検出手段30は、検出された振幅量からインク粘度を検出し(ステップS1109)、温度センサ37によって検出されたインクジェットヘッド100の周辺温度が制御部6により読み込まれる(ステップS1110)。
【0260】
ステップS1111において、制御部6は、このように読み込まれた周辺温度と、検出されたインク粘度との組み合わせが正しいか否かが判断される。上述したような例外がある場合、すなわち、これらの組み合わせが正しくない場合には、図26に示す吐出異常検出処理が実行される(ステップS1112)。そして、ヘッド異常(吐出異常)の判定結果とともに、インク粘度の検出結果が、記憶手段62に保存される(ステップS1113)。
【0261】
そして、ステップS1114において、対象のインクジェットヘッド100が駆動期間であるか否かが判断される。すなわち、駆動休止期間が終了して、次の駆動信号が入力されたか否かが判断され、次の駆動信号が入力されるまで、このステップS1114で待機している。
次の駆動信号のパルスが入力されるタイミングで、駆動信号の立ち上がりエッジに同期して駆動/検出切替信号がLowレベルになると(ステップS1114で「yes」)、切替手段23は、静電アクチュエータ120との接続を、ヘッド異常検出手段(検出回路)10から駆動回路18に切り替えて(ステップS1115)、このヘッド異常検出及び粘度検出処理を終了する。
【0262】
なお、このフローチャートでは、計測手段17による残留振動の周期の計測処理についてはステップを示していないが、吐出異常判定処理(ステップS1112)を実行するためには必要となるので、残留振動検出処理(ステップS1104)後、適当なタイミングで残留振動の周期が計測される。このように、この処理では、温度センサ37により、検出されたインク粘度が周辺温度に対して適切であるかを判断することができるので、より正確なヘッド異常の原因を特定できるとともに、回復手段24は、特定されたヘッド異常の原因に応じて、適切な回復処理を実行することができる。
【0263】
次に、ヘッド異常が発生していない場合におけるインクジェットプリンタ1の印字処理について説明する。上述のように、ヘッド異常が発生していない場合には、検出されたインク粘度に応じて、駆動回路18から出力される駆動波形を補正するか、あるいは、印字データを修正することによって、本発明の液滴吐出装置(インクジェットプリンタ1)は、よりきれいな(正確な)印刷処理を実行することができる。
【0264】
まず、駆動波形を補正する場合について説明する。図56は、インクジェットプリンタ1の印字処理における駆動波形の補正処理を示すフローチャートである。制御部6は、ホストコンピュータ8からIF9を介して印刷処理のための印字データを取得すると(ステップS1201)、RGBの256階調データからCMYKの256階調データへの色変換処理を実行し(ステップS1202)、ハーフトーン処理を実行してCMYKの2階調データへと変換する(ステップS1203)。そして、このように変換された印字データを取得すると(ステップS1204)、制御部6は、インク粘度が検出されているか否かを判断し(ステップS1205)、検出されている場合には、その検出されたインク粘度(検出結果)を記憶手段62から読み出す(ステップS1206)。
【0265】
駆動回路18の駆動波形生成手段181は、このように読み出されたインク粘度に基づいて、インクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120を駆動するための駆動波形を補正する(ステップS1207)。すなわち、例えば、図46のグラフに示しているように、動作可能範囲であってもインク粘度にはある程度の幅があるので、駆動波形生成手段181は、検出されたインク粘度が大きい場合には、駆動波形の電圧値を大きくし、逆に小さい場合には、駆動波形の電圧値を小さくするように、インクジェットヘッド100の駆動信号を生成する。
【0266】
そして、生成された駆動波形(駆動信号)が切替手段23を介してインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120に入力されると(ステップS1208)、この駆動信号に応じて、インクジェットヘッド100は、インク吐出動作を実行する(ステップS1209)。このように、検出されたインク粘度に応じて、インクジェットヘッド100の駆動波形を補正することにより、より正確な印刷処理を実行することができる。
【0267】
次いで、印字データを補正する場合について説明する。図57は、インクジェットプリンタ1の印字処理における印字データの修正処理を示すフローチャートである。制御部6は、ホストコンピュータ8からIF9を介して印刷処理のための印字データを取得すると(ステップS1301)、まず、インク粘度が検出されているか否かを判断し(ステップS1302)、検出されていない場合には、ステップS1306に移行して、通常の印字処理を行う。
【0268】
一方、予めインク粘度が検出されていた場合には、制御部6は、その検出されたインク粘度(検出結果)を記憶手段62から読み出し(ステップS1303)、図51に示すようなルックアップテーブルを読み出す(ステップS1304)。そして、制御部6は、このルックアップテーブルから色変換テーブルを読み出し(ステップS1305)、RGBの256階調データからCMYKの256階調データへの色変換処理を実行し(ステップS1306)、ハーフトーン処理を実行してCMYKの2階調データへと変換する(ステップS1307)。そして、このように変換された印字データを取得すると(ステップS1308)、駆動波形(駆動信号)を切替手段23を介してインクジェットヘッド100の静電アクチュエータ120に入力し(ステップS1309)、インクジェットヘッド100は、この入力された駆動波形に基づいて、インク吐出動作を実行する(ステップS1310)。このように、印字データを修正することにより、上記駆動波形を補正する場合と同様に、より正確な印刷処理を実行することができる。
【0269】
次に、インク粘度を検出したときのヘッド異常の原因を解消させる回復処理について説明する。図58及び図59は、インク粘度を検出したときにヘッド異常が発生していた場合において実行される回復処理のフローチャートである。制御部6は、記憶手段62に保存されているヘッド異常の判定結果を読み出して(ステップS1401)、吐出異常(ヘッド異常)のノズル110(インクジェットヘッド100)があるか否かを判断する(ステップS1402)。そして、ヘッド異常のノズル110がない場合には、そのままこの回復処理を終了する。
【0270】
一方、ヘッド異常のノズル110があると判断された場合には、続いて、そのヘッド異常の原因が紙粉付着であるか否かが判断される(ステップS1403)。紙粉付着のノズル110がない場合には、ステップS1407に移行する。紙粉付着のノズル110がある場合には、制御部6は、記憶手段62に保存されているインク粘度を読み込んで(ステップS1404)、そのインク粘度に応じて、回復手段24の動作量を設定変更し(ステップS1405)、ワイピング処理を実施する(ステップS1406)。ここで、この場合、回復手段24の動作量は、ヘッドユニット35のノズル面を拭き取るワイピング処理の実施回数である。
【0271】
ステップS1407において、ヘッド異常の原因が気泡混入であるか否かが判断される。気泡混入のノズル110がある場合には、制御部6は、記憶手段62に保存されているインク粘度を読み込んで(ステップS1408)、そのインク粘度に応じて、回復手段24の動作量を設定変更し(ステップS1409)、ポンプ吸引処理を実施する(ステップS1410)。ここで、この場合、回復手段24の動作量は、ポンプ吸引処理におけるチューブポンプ320の吸引時間又はチューブポンプ320の出力(電力)である。したがって、検出されたインク粘度が高ければ、チューブポンプ320による吸引時間を長くしたり、チューブポンプ320の吸引圧力を高くしたりすることにより、確実に回復処理を実行することができる。
【0272】
一方、気泡が混入しているノズル110がない場合には、制御部6は、インクジェットプリンタ1の待機時間を計時手段25から読み込み(ステップS1411)、この待機時間が予め設定されている閾値を超えているか否かを判断する(ステップS1412)。待機時間が所定の閾値を超えている場合には、制御部6は、記憶手段62からインク粘度を読み出し(ステップS1413)、そのインク粘度に応じて、回復手段24の動作量を設定変更し(ステップS1414)、ポンプ吸引処理を実施する(ステップS1415)。回復手段24の動作量は、上述の場合と同様である。
【0273】
また、待機時間が所定の閾値を超えていない場合にも、同様に、制御部6は、記憶手段62からインク粘度を読み出し(ステップS1416)、そのインク粘度に応じて、回復手段24の動作量を設定変更し(ステップS1417)、フラッシング処理を実施する(ステップS1418)。ここで、この場合、回復手段24の動作量は、フラッシング処理(予備的吐出処理)における吐出回数であり、読み出されたインク粘度が高い場合には、フラッシング(吐出)の回数が多くなるように構成される。したがって、検出されたインク粘度を利用することにより、より適切な回復処理を実行することができる。
【0274】
次に、図2に示す履歴データ作成手段40及び異常予測推定手段50について説明する。履歴データ作成手段40は、上述のヘッド異常検出・判定処理において記憶手段62に保存されている振動板121の残留振動波形の周期Tw及び振幅Awと、インクジェットヘッド100の特性に応じて予め記憶手段62に保存されている周期及び振幅の基準データTc、Acとの差分、すなわち周期偏差ΔTと振幅偏差ΔAとを求め、それらを記憶手段62に保存する。そして、図63に示すような、ヘッド異常検出処理毎の経過時間と各偏差との関係における履歴データ(残留振動波形の履歴データ)を作成する。なお、図63に示す偏差の処理許容値とは、気泡の混入量、粘度、紙粉の付着量などのヘッド異常が発生したと判定され得る限界値を意味し、それを超えた場合には、インクジェットヘッド100は、これらのヘッド異常によってインク滴を吐出できないような状態になることを意味する。
【0275】
履歴データ作成手段40は、作成した残留振動の履歴データに基づいて、残留振動波形の周期又は振幅の偏差がこの処理許容値に到達するであろう経過時間T1を特定することができる。そして、異常予測推定手段50は、履歴データに基づいて特定された前のヘッド異常検出・判定処理からの経過時間T1を計時手段25が計測することにより、ヘッド異常の発生し得る時期を予測推定する。本発明では、異常予測推定手段50によってヘッド異常が発生し得ると予測推定されると、回復手段24は、その発生したと予測推定されたヘッド異常の原因に応じて、適切な回復処理を予防的に実行する。
【0276】
ここで、回復手段24は、異常予測推定手段50によって予測推定されたヘッド異常と、ヘッド異常検出手段10によって検出されたヘッド異常とを区別して、上述のいずれかの回復処理を実行するのが好ましい。すなわち、このように予測推定されたヘッド異常では、実際にはインクジェットヘッド100がヘッド異常を発生していない場合も考えられるので、回復手段24は、最低限の回復処理(ここでは、フラッシング処理)を実行するのみで十分である。これにより、無駄な排インクを発生(生じ)させることなく、予防的な回復処理を実行することができる。なお、本発明では、このようなフラッシング処理に限定されず、予測推定されたヘッド異常の原因に応じて、回復手段24は、適切な回復処理を実行してもよい。
【0277】
次に、本発明の液滴吐出装置の動作であるヘッド異常の予測及び回復処理(ヘッド異常の予測及び回復方法)を説明する。図64は、本発明の異常予測処理を示すフローチャートである。本発明のインクジェットプリンタ1は、所定のタイミング(本実施形態では、例えば、インクジェットプリンタ1への電源投入時など)でこの異常予測処理を実行する。まず、制御部6は、ヘッド異常(吐出異常)の予測をするための測定回数を設定し(ステップS1501)、計時手段25による計時をスタートさせる(ステップS1502)。
【0278】
なお、測定回数の設定は、記憶手段62に予め格納されている測定回数データ(インクジェットプリンタ1のユーザにより設定変更可能に構成されてもよい)を制御部6のCPU61が読み出してRAM63に設定してもよく、あるいは、電源投入時などの所定のタイミングで、測定回数入力画面を操作パネル7の表示部もしくはホストコンピュータ8に表示して、ユーザに測定回数の入力を促してもよい。
【0279】
ステップS1503において、制御部6は、ホストコンピュータ8などの外部装置からIF9を介して印刷指示が入力されたか否か(印刷指示があるか否か)を判断する。そして、印刷指示がないと判断された場合には、制御部6は、計時手段25が予め設定された所定の時間(計時手段25又は記憶手段62に設定されている)を計測し終えるまで(タイムアップする(ステップS1504)まで)この状態で待機する。
【0280】
ステップS1504において所定時間を経過する(タイムアップする)と、ヘッド異常検出手段10は、インク滴を吐出しない程度に静電アクチュエータ120を駆動して振動板121の残留振動を検出することによるヘッド異常検出処理(インク滴不吐出における検出処理、例えば、図52及び図53あるいは図54及び図55に示すヘッド異常検出・判定及び粘度検出処理)を実行する(ステップS1505)。
【0281】
ステップS1506において、判定手段20は、複数のインクジェットヘッド100のいずれかにヘッド異常が発生しているか、すなわち、ヘッド異常を発生しているインクジェットヘッド100があるか否かを判断する。ヘッド異常の発生があると判断された場合には、回復手段24は、後述する回復処理を実行し(ステップS1507)、計時手段25のタイムをクリアし(ステップS1508)、ステップS1501に移行して同様の処理を繰り返す。
【0282】
一方、ヘッド異常の発生がないと判断された場合には、ステップS1511に移行し、異常予測推定手段50は、後述する異常予測処理を実行する。ステップS1512において、制御部6は、異常予測推定手段50による異常予測処理が終了したか否かを判断する。異常予測処理が終了していないと判断された場合には、続いて、制御部6は、EEPROM(記憶手段)62に印字データが保存されているか否かを判断する(ステップS1515)。印字データがない場合には、計時手段25のタイマをクリアし(ステップS1508)、ステップS1501に移行して同様の処理を繰り返す。
【0283】
ステップS1512において異常予測処理が終了していると判断された場合には、続いて、制御部6は、その異常予測結果に基づいて、回復処理が必要であるか否かを判断する(ステップS1513)。回復処理が必要であると判断された場合には、ステップS1507に移行して回復処理を実行し、計時手段25のタイマをクリアし(ステップS1508)、ステップS1501に移行して同様の処理を繰り返す。回復処理が必要でないと判断された場合には、設定された異常予測のためのヘッド異常の測定(検出)回数が終了しているので、ステップS1501と同様に測定回数を再度設定し(ステップS1514)、ステップS1515以降の処理を繰り返す。
【0284】
一方、ステップS1503において印刷指示があると判断された場合には、制御部6は、上述の図34に示したような印字動作時(印刷処理時)におけるヘッド異常(吐出異常)検出処理を実行する(ステップS1509)。そして、ステップS1510において、制御部6は、このように検出処理をした複数のインクジェットヘッド100のいずれかにヘッド異常が発生しているか否かを判断し、ヘッド異常が発生していると判断された場合には、上述の回復処理を実行する(ステップS1507)。また、ヘッド異常が発生していないと判断された場合には、異常予測推定手段50は、後述する異常予測処理を実行し(ステップS1511)、ステップS1512以降の処理を繰り返す。
【0285】
なお、ステップS1515において印刷指示された印刷処理の印字データがあるか否かが判断され、印字データがある間は、ステップS1509に移行して、印刷処理時におけるヘッド異常検出処理以降の処理(ステップS1509〜S1515)を繰り返す。
ここで、図52及び図53、あるいは、図54及び図55のフローチャートには示されていないが、異常予測処理(ステップS1511)を実行するために、振動板121の残留振動の周期(例えば、図52のステップS1005)及び振幅量(例えば、図53のステップS1013)を計測後、履歴データ作成手段40は、残留振動の周期の偏差ΔT(=Tc−Tw)と、この残留振動の振幅の偏差ΔA(=Ac−Aw)とを演算し、制御部6は、ヘッド異常判定処理の判定結果とともにそれらを記憶手段62に保存するよう構成される。
【0286】
次に、図64のフローチャートのステップS1505におけるヘッド異常検出処理の別の例について、図65を用いて説明する。まず、残留振動検出手段16は、図25に示すような残留振動検出処理を実行し(ステップS1601)、計測手段17は、残留振動検出処理によって検出された残留振動波形の周期Twを計測するとともに(ステップS1602)、この検出された残留振動波形の最大波高値、すなわち、振幅Awを検出(計測)する(ステップS1603)。
【0287】
次いで、上述のように、履歴データ作成手段40は、残留振動の周期の偏差ΔT(=Tc−Tw)を演算するとともに(ステップS1604)、この残留振動の振幅の偏差ΔA(=Ac−Aw)を演算する(ステップS1605)。そして、判定手段20及び/又は粘度判定手段29は、図26に示すような吐出異常判定処理(ヘッド異常判定処理)を実行し(ステップS1606)、制御部6は、ΔT、ΔA及び判定結果を記憶手段62に保存して(ステップS1607)、このヘッド異常検出処理を終了する。
【0288】
次に、図64のフローチャートのステップS1511における異常予測処理(異常予測推定処理)について説明する。本実施形態では、3つの異常予測処理のパターンについて説明する。図66は、本発明の第1パターンの異常予測処理を示すフローチャートである。本発明の異常予測処理は、ヘッド異常の発生の有無を判定し(ステップS1506、S1510)、ヘッド異常がない場合に実行される(以下においても同様)。なお、本実施形態では、特に、残留振動の振幅量の履歴データに基づく、インクの増粘によるヘッド異常の予測推定について説明する。
【0289】
まず、履歴データ作成手段40は、上述のように演算された振幅量の偏差ΔAの履歴データを作成し、制御部6は、この履歴データを記憶手段62に保存する(ステップS1701)。ステップS1702において、制御部6は、図64のフローチャートのステップS1501又はステップS1514において設定されたヘッド異常の測定回数だけ測定処理が行われたか否か、すなわち、設定された測定回数分の測定が終了したか否かを判断する。
【0290】
設定された測定回数分の測定処理が終了していないと判断された場合には、正確な異常予測処理(異常予測推定処理)を実行することができないので、実際の異常予測処理を実行せずにそのままこの異常予測処理を終了する。一方、設定された測定回数分の測定処理が終了していると判断された場合には、履歴データ作成手段40又は制御部6は、続いて、上記のように演算された振幅量の履歴データにおいて、振幅量の偏差ΔAが増加しているか否かを判断する(ステップS1703)。
【0291】
そして、振幅量の偏差ΔAが増加していると判断された場合には、判定手段20は、対応するインクジェットヘッド100のノズル110にヘッド異常が発生していると判断(判定)し(ステップS1704)、振幅量の偏差ΔAが増加していないと判断された場合には、判定手段20は、対応するインクジェットヘッド100のノズル110は正常であると判断(判定)する(ステップS1705)。このように、異常予測処理においてヘッド異常の有無が判定されると、その判定結果を記憶手段62に保存するとともに、ステップS1501あるいはステップS1514において設定された測定回数をクリアして(ステップS1706)、この第1パターンの異常予測処理を終了する。
【0292】
次いで、第2パターンの異常予測処理を説明する。図67は、本発明の第2パターンの異常予測処理を示すフローチャートである。まず、直近のヘッド異常(吐出異常)検出処理を実施した時点での時間データ(経過時間データ)を計時手段25に基づいて特定(検出)する(ステップS1801)。次いで、図63に示したような経過時間と偏差の関係を示すグラフから上記時間データに対応する比較データArを読み出す(ステップS1802)。
【0293】
ステップS1803において、制御部6は、振幅量の偏差ΔA及びその値における誤差許容値αを記憶手段62から読み出し、このΔAが所定の範囲内にあるか否か、すなわち、Ar−α<ΔA<Ar+αであるか否かを判断する。制御部6は、この範囲内にあると判断された場合には、振幅量の偏差ΔAが異常予測範囲内にある(すなわち、ヘッド異常の可能性がある)ことを記憶手段62に保存し(ステップS1804)、この範囲内にないと判断される場合には、振幅量の偏差ΔAが正常であることを記憶手段62に保存する(ステップS1805)。
【0294】
そして、ステップS1806において、異常予測推定手段50は、設定された測定回数の測定(検出処理)が終了したか否かを判断する。設定された測定回数の測定が終了していないと判断された場合には、そのままこの異常予測処理を終了する。一方、設定された測定回数の測定が終了したと判断された場合には、ステップS1807において、異常予測推定手段50は、このように測定され、判定されたデータのうち上記ステップS1803の判断において異常であると判断された数(異常データ数)が所定の閾値を超えているか否か、すなわち、異常データ数≧測定回数/2であるか否かを判断する。なお、この所定の閾値は、測定回数/2に限られず、どのような値であってもよい。また、所定の閾値は、インクジェットプリンタ1の記憶手段62に予め設定されていてもよく、インクジェットプリンタ1のユーザによって設定され得る構成としてもよい。
【0295】
そして、判定手段20は、異常データ数が所定の閾値を超えていると判断された場合には、対応するインクジェットヘッド100のノズル110は異常であると判断(判定)し(ステップS1808)、異常データ数が所定の閾値を超えていないと判断された場合には、対応するインクジェットヘッド100のノズル110は正常であると判断(判定)する(ステップS1809)。
このように、異常予測処理においてヘッド異常の有無が判定(判断)されると、その判定結果を記憶手段62に保存するとともに、ステップS1501あるいはステップS1514において設定された測定回数をクリアして(ステップS1810)、この第2パターンの異常予測処理を終了する。
【0296】
次いで、第3パターンの異常予測処理を説明する。図68は、本発明の第3パターンの異常予測処理を示すフローチャートである。まず、直近のヘッド異常(吐出異常)検出処理を実施した時点での時間データ(経過時間データ)を計時手段25に基づいて特定(検出)する(ステップS1901)。次いで、図63に示したような経過時間と偏差の関係を示すグラフから上記時間データに対応する比較データArを読み出す(ステップS1902)。
【0297】
ステップS1903において、制御部6は、振幅量の偏差ΔA及びその値における誤差許容値αを記憶手段62から読み出し、このΔAが所定の範囲内にあるか否か、すなわち、Ar−α<ΔA<Ar+αであるか否かを判断する。制御部6は、この範囲内にあると判断された場合には、振幅量の偏差ΔAが異常予測範囲内にある(すなわち、ヘッド異常の可能性がある)ことを記憶手段62に保存し(ステップS1904)、この範囲内にないと判断される場合には、振幅量の偏差ΔAが正常であることを記憶手段62に保存する(ステップS1905)。
【0298】
そして、ステップS1906において、異常予測推定手段50は、設定された測定回数の測定(検出処理)が終了したか否かを判断する。設定された測定回数の測定が終了していないと判断された場合には、そのままこの異常予測処理を終了する。一方、設定された測定回数の測定が終了したと判断された場合には、ステップS1907において、異常予測推定手段50は、このように測定され、判定されたデータのうち上記ステップS1903の判断において異常であると判断された数(異常データ数)が所定の閾値を超えているか否か、すなわち、異常データ数≧測定回数/2であるか否かを判断する。なお、上記第2パターンの異常予測処理と同様に、この所定の閾値は、測定回数/2に限られず、どのような値であってもよい。また、所定の閾値は、インクジェットプリンタ1の記憶手段62に予め設定されていてもよく、インクジェットプリンタ1のユーザによって設定され得る構成としてもよい。
【0299】
そして、異常データ数が所定の閾値を超えていると判断された場合には、判定手段20は、対応するインクジェットヘッド100のノズル110は異常であると判断(判定)し(ステップS1908)、所定許容値になるまでの経過時間T1(図63参照)を算出(抽出)する(ステップS1909)。また、異常データ数が所定の閾値を超えていないと判断された場合には、判定手段20は、対応するインクジェットヘッド100のノズル110は正常であると判断(判定)する(ステップS1910)。
このように、異常予測処理においてヘッド異常の有無が判定(判断)されると、その判定結果及び経過時間T1を記憶手段62に保存するとともに、ステップS1501あるいはステップS1514において設定された測定回数をクリアして(ステップS1911)、この第3パターンの異常予測処理を終了する。
【0300】
次に、このように異常予測処理が実行された場合に対応する回復手段24の回復処理(図64のフローチャートにおけるステップS1507に対応)について説明する。図69は、本発明の回復手段による回復処理の一例を示すフローチャートである。まず、制御部6は、ステップS1506、ステップS1510又はステップS1513においてヘッド異常があるかヘッド異常の発生の可能性があると判断されたヘッド異常がステップS1513における予測結果(異常予測結果)に基づくヘッド異常の発生の可能性であるか否かを判断する(ステップS2001)。
【0301】
そして、異常予測結果によるヘッド異常と判断された場合には、ヘッド異常が発生する可能性が高いので、上述のフラッシング手段によるフラッシング処理(予備的吐出処理)を実行し(ステップS2002)、この回復処理を終了する。一方、異常予測結果によるヘッド異常でない、すなわち、ヘッド異常検出手段10によって実際にヘッド異常が発生していると検出され、制御部6が実際のヘッド異常と判断した場合には、制御部6は、報知手段(操作パネル7あるいはホストコンピュータ8など)に吐出異常(ヘッド異常)が発生しているインクジェットヘッド100が検出されたことを表示させ(ステップS2003)、回復手段24は、判定手段20による判定結果(検出されたヘッド異常)に基づく回復処理(図40参照)を実行する(ステップS2004)。
【0302】
そして、回復処理の実行後、制御部6は、報知手段による表示を取り消させ(ステップS2005)、この回復処理を終了する。なお、ステップS2004における回復処理の実施後、上述のヘッド異常検出処理(吐出しない程度の静電アクチュエータ120の駆動でも、吐出駆動でもよい)を実行し、検出(判定)されたヘッド異常の原因が解消していることを確認してから、制御部6は、報知手段による表示を取り消させてもよい。
【0303】
次に、このように異常予測処理が実行された場合に対応する回復手段24の回復処理(図64のフローチャートにおけるステップS1507に対応)の別の例について説明する。図70は、本発明の回復手段による回復処理の別の一例を示すフローチャートである。まず、制御部6は、ステップS1506、ステップS1510又はステップS1513においてヘッド異常があるかヘッド異常の発生の可能性があると判断されたヘッド異常がステップS1513における予測結果(異常予測結果)に基づくヘッド異常の発生の可能性であるか否かを判断する(ステップS2101)。
【0304】
異常予測結果によるヘッド異常でない、すなわち、ヘッド異常検出手段10によって実際にヘッド異常が発生していると検出され、制御部6が実際のヘッド異常と判断した場合には、制御部6は、報知手段(操作パネル7あるいはホストコンピュータ8など)に吐出異常(ヘッド異常)が発生しているインクジェットヘッド100が検出されたことを表示させ(ステップS2102)、回復手段24は、判定手段20による判定結果(検出されたヘッド異常)に基づく回復処理(図40参照)を実行する(ステップS2103)。
【0305】
そして、回復処理の実行後、制御部6は、報知手段による表示を取り消させ(ステップS2103)、この回復処理を終了する。なお、ステップS2103における回復処理の実施後、上述のヘッド異常検出処理(吐出しない程度の静電アクチュエータ120の駆動でも、吐出駆動でもよい)を実行し、検出(判定)されたヘッド異常の原因が解消していることを確認してから、制御部6は、報知手段による表示を取り消させてもよい。
【0306】
一方、ステップS2101において異常予測結果によるヘッド異常と判断された場合には、ステップS2105において、制御部6は、記憶手段62に格納されている印字データがあるか否かを判断する。印字データがあると判断された場合には、上述のフラッシング手段によるフラッシング処理(予備的吐出処理)を実行し(ステップS2107)、この回復処理を終了する。また、印字データがないと判断された場合には、続いて、制御部6は、計時手段25の計測結果に基づいて、前回の吐出動作時からの経過時間がT1を超えているか否かを判断し、経過時間がT1よりも超えている場合には、ヘッド異常(例えば、インク増粘)の発生の可能性があるので、回復手段24は、フラッシング処理を実行し(ステップS2107)、この回復処理を終了する。
前回の吐出動作時からの経過時間がT1を超えていないと判断された場合には、制御部6は、割り込み処理を実行するためのカウントタイマ(図示せず)のカウント時間をT1に設定して以下に示す割り込み処理を開始(スタート)して(ステップS2108)、この回復処理を終了する。
【0307】
次に、図70のフローチャートのステップS2108において設定されたカウント時間T1に基づく割り込み処理を説明する。図71は、本発明の割り込み処理(割り込み回復処理)を示すフローチャートである。図70に示すフローチャートのステップS2108に移行すると、割り込み処理を実行するためのカウントタイマが計時をスタートする(ステップS2201)。なお、このカウントタイマは、上述の計時手段25に含まれてもよく、計時手段25のタイマと併用されてもよく、あるいは、独立して構成されてもよい。
【0308】
ステップS2202において、カウントタイマがタイムアップしたか否か、すなわち、時間T1が経過したか否かが判断される。そして、時間T1が経過するまでこのステップS2202において待機する。時間T1が経過したと判断された場合には、制御部6は、印刷処理中であればその印刷処理を中止(停止)して、所定の領域(回復処理領域)に移動し(ステップS2203)、フラッシング手段によるフラッシング処理を実行する(ステップS2204)。
【0309】
そして、図70に示すフローチャートのステップS2108において設定されたカウントタイマのカウント時間T1及びカウントタイマのカウント値をクリアして(ステップS2205)、この割り込み回復処理を終了する。なお、本発明では、ステップS2204において実行されたフラッシング処理により、ヘッド異常発生の可能性が解消されたか否かを判断するために、カウントタイマのカウント値などをクリアする前に、再度ヘッド異常検出処理を実行してもよい。この割り込み回復処理により、ヘッド異常の発生を未然に防止するとともに、インクジェットヘッド100が回復したことを正確に確認することができる。
【0310】
以上のように、本発明の液滴吐出装置(インクジェットプリンタ1)は、液滴吐出ヘッドに振動板を備え、アクチュエータの駆動による振動板の残留振動を残留振動検出手段によって検出し、その振動パターンに基づいて、ヘッド異常の有無(発生の有無)及びヘッド異常の原因をヘッド異常検出手段によって検出(判定)するとともに、残留振動の振動パターンに基づいて履歴データ作成手段によって履歴データを作成し、この履歴データを利用することにより、異常予測推定手段によってヘッド異常の発生を予測推定することとした。また、ヘッド異常検出手段又は異常予測推定手段によってヘッド異常が検出され、あるいは、ヘッド異常の発生する可能性が予測推定された場合には、回復手段によりその原因を解消するための回復処理を実行することとした。さらに、粘度検出手段により液滴吐出ヘッドのキャビティ内の粘度あるいはノズル近傍の粘度を検出し、粘度が高い場合(増粘の場合)には、回復手段はそれを解消するための回復処理を実行することとした。また、本発明の液滴吐出装置は、温度センサや計時手段を設け、検出された残留振動の基準データや検出データ、液状材料の粘度又は前回吐出時からの経過時間などを必要に応じて補正又は修正することとした。
【0311】
したがって、本発明の液滴吐出装置によって、ヘッド異常の発生又は発生の可能性を容易に推定できるとともに、残留振動を検出することにより、この推定を精度よく実行することができる。また、推定されたヘッド異常の原因により適切な回復処理を実行できるので、無駄な排インクの増加を防止することができる。そして、各種検出センサ(光学センサなど)が不要なので、液滴吐出装置の製造コストを低減することができる。
【0312】
また、このような残留振動の検出に必要なのはヘッド異常検出手段(検出回路)のみであるので、液滴吐出装置の構造を複雑にすることがなく、液滴吐出装置(特に、液滴吐出ヘッド)を小型化することができる。そして、液滴吐出ヘッドの周辺温度(周囲温度)により各種検出データなどを補正することができるので、確実な検出制度を確保することができる。
【0313】
さらに、ヘッド異常の発生時期を許容値に達するまでの時間として予測することができるので、不要な回復処理を減少することができるとともに、無駄な排インクの量を減少することができる。また、印刷処理動作中においてもヘッド異常検出処理(残留振動検出処理)を実行することができるので、液滴吐出装置のスループットを低下あるいは悪化させることがなく、逆にそれを向上することができる。
【0314】
なお、本実施形態では、ヘッド異常検出手段10の残留振動検出手段16と、粘度検出手段30の残留振動検出手段16とは、同一の符号を付して説明したが、この残留振動検出手段16は、ヘッド異常検出手段10と粘度検出手段30で共用されてもよく、また、別々に設けられてもよい。また、判定手段20と粘度判定手段29も同様に、別途設けられてもよく、共用されてもよい。
【0315】
<第2実施形態>
次に、本発明におけるインクジェットヘッド(ヘッドユニット)の他の構成例について説明する。図72〜図75は、それぞれ、インクジェットヘッド100の他の構成例の概略を示す断面図である。以下、これらの図に基づいて説明するが、前述した実施形態と相違する点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0316】
図72に示すインクジェットヘッド100Aは、圧電素子200の駆動により振動板212が振動し、キャビティ208内のインク(液体)がノズル203から吐出するものである。ノズル(孔)203が形成されたステンレス鋼製のノズルプレート202には、ステンレス鋼製の金属プレート204が接着フィルム205を介して接合されており、さらにその上に同様のステンレス鋼製の金属プレート204が接着フィルム205を介して接合されている。そして、その上には、連通口形成プレート206及びキャビティプレート207が順次接合されている。
【0317】
ノズルプレート202、金属プレート204、接着フィルム205、連通口形成プレート206及びキャビティプレート207は、それぞれ所定の形状(凹部が形成されるような形状)に成形され、これらを重ねることにより、キャビティ208及びリザーバ209が形成される。キャビティ208とリザーバ209とは、インク供給口210を介して連通している。また、リザーバ209は、インク取り入れ口211に連通している。
【0318】
キャビティプレート207の上面開口部には、振動板212が設置され、この振動板212には、下部電極213を介して圧電素子(ピエゾ素子)200が接合されている。また、圧電素子200の下部電極213と反対側には、上部電極214が接合されている。ヘッドドライバ215は、駆動電圧波形を生成する駆動回路を備え、上部電極214と下部電極213との間に駆動電圧波形を印加(供給)することにより、圧電素子200が振動し、それに接合された振動板212が振動する。この振動板212の振動によりキャビティ208の容積(キャビティ内の圧力)が変化し、キャビティ208内に充填されたインク(液体)がノズル203より液滴として吐出する。
液滴の吐出によりキャビティ208内で減少した液量は、リザーバ209からインクが供給されて補給される。また、リザーバ209へは、インク取り入れ口211からインクが供給される。
【0319】
図73に示すインクジェットヘッド100Bも前記と同様に、圧電素子200の駆動によりキャビティ221内のインク(液体)がノズルから吐出するものである。このインクジェットヘッド100Bは、一対の対向する基板220を有し、両基板220間に、複数の圧電素子200が所定間隔をおいて間欠的に設置されている。
【0320】
隣接する圧電素子200同士の間には、キャビティ221が形成されている。キャビティ221の図73中前方にはプレート(図示せず)、後方にはノズルプレート222が設置され、ノズルプレート222の各キャビティ221に対応する位置には、ノズル(孔)223が形成されている。
各圧電素子200の一方の面及び他方の面には、それぞれ、一対の電極224が設置されている。すなわち、1つの圧電素子200に対し、4つの電極224が接合されている。これらの電極224のうち所定の電極間に所定の駆動電圧波形を印加することにより、圧電素子200がシェアモード変形して振動し(図73において矢印で示す)、この振動によりキャビティ221の容積(キャビティ内の圧力)が変化し、キャビティ221内に充填されたインク(液体)がノズル223より液滴として吐出する。すなわち、インクジェットヘッド100Bでは、圧電素子200自体が振動板として機能する。
【0321】
図74に示すインクジェットヘッド100Cも前記と同様に、圧電素子200の駆動によりキャビティ233内のインク(液体)がノズル231から吐出するものである。このインクジェットヘッド100Cは、ノズル231が形成されたノズルプレート230と、スペーサ232と、圧電素子200とを備えている。圧電素子200は、ノズルプレート230に対しスペーサ232を介して所定距離離間して設置されており、ノズルプレート230と圧電素子200とスペーサ232とで囲まれる空間にキャビティ233が形成されている。
【0322】
圧電素子200の図74中上面には、複数の電極が接合されている。すなわち、圧電素子200のほぼ中央部には、第1電極234が接合され、その両側部には、それぞれ第2電極235が接合されている。第1電極234と第2電極235との間に所定の駆動電圧波形を印加することにより、圧電素子200がシェアモード変形して振動し(図74において矢印で示す)、この振動によりキャビティ233の容積(キャビティ内の圧力)が変化し、キャビティ233内に充填されたインク(液体)がノズル231より液滴として吐出する。すなわち、インクジェットヘッド100Cでは、圧電素子200自体が振動板として機能する。
【0323】
図75に示すインクジェットヘッド100Dも前記と同様に、圧電素子200の駆動によりキャビティ245内のインク(液体)がノズル241から吐出するものである。このインクジェットヘッド100Dは、ノズル241が形成されたノズルプレート240と、キャビティプレート242と、振動板243と、複数の圧電素子200を積層してなる積層圧電素子201とを備えている。
【0324】
キャビティプレート242は、所定の形状(凹部が形成されるような形状)に成形され、これにより、キャビティ245及びリザーバ246が形成される。キャビティ245とリザーバ246とは、インク供給口247を介して連通している。また、リザーバ246は、インク供給チューブ311を介してインクカートリッジ31と連通している。
【0325】
積層圧電素子201の図75中下端は、中間層244を介して振動板243と接合されている。積層圧電素子201には、複数の外部電極248及び内部電極249が接合されている。すなわち、積層圧電素子201の外表面には、外部電極248が接合され、積層圧電素子201を構成する各圧電素子200同士の間(又は各圧電素子の内部)には、内部電極249が設置されている。この場合、外部電極248と内部電極249の一部が、交互に、圧電素子200の厚さ方向に重なるように配置される。
【0326】
そして、外部電極248と内部電極249との間にヘッドドライバ33より駆動電圧波形を印加することにより、積層圧電素子201が図75中の矢印で示すように変形して(図75中上下方向に伸縮して)振動し、この振動により振動板243が振動する。この振動板243の振動によりキャビティ245の容積(キャビティ内の圧力)が変化し、キャビティ245内に充填されたインク(液体)がノズル241より液滴として吐出する。
液滴の吐出によりキャビティ245内で減少した液量は、リザーバ246からインクが供給されて補給される。また、リザーバ246へは、インクカートリッジ31からインク供給チューブ311を介してインクが供給される。
【0327】
以上のような圧電素子200を備えるインクジェットヘッド100A〜100Dにおいても、前述した静電容量方式のインクジェットヘッド100と同様にして、振動板又は振動板として機能する圧電素子の残留振動に基づき、液滴吐出の異常を検出しあるいはその異常の原因を特定することができる。なお、インクジェットヘッド100B及び100Cにおいては、キャビティに面した位置にセンサとしての振動板(残留振動検出用の振動板)を設け、この振動板の残留振動を検出するような構成とすることもできる。
【0328】
<第3実施形態>
次に、本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例について説明する。図76は、ヘッドユニット100Hの構成を示す斜視図、図77は、図76に示すヘッドユニット100Hの1色のインク(1つのキャビティ)に対応する概略的な断面図である。以下、これらの図に基づいて説明するが、前述した第1実施形態と相違する点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0329】
これらの図に示すヘッドユニット100Hは、いわゆる膜沸騰インクジェット方式(サーマルジェット方式)によるもので、支持板410と、基板420と、外壁430及び隔壁431と、天板440とが、図76及び図77中下側からこの順に接合された構成のものである。
基板420と天板440とは、外壁430及び等間隔で平行に配置された複数(図示の例では6枚)の隔壁431を介して所定の間隔をおいて設置されている。そして、基板420と天板440との間には、隔壁431によって区画された複数(図示の例では5個)のキャビティ(圧力室:インク室)432が形成されている。各キャビティ432は、短冊状(直方体状)をなしている。
【0330】
また、図76及び図77に示すように、各キャビティ432の図77中左側端部(図76中上端)は、ノズルプレート(前板)433により覆われている。このノズルプレート433には、各キャビティ432に連通するノズル(孔)434が形成されており、このノズル434からインク(液状材料)が吐出する。
図76では、ノズルプレート433に対しノズル434が直線的に、すなわち列状に配置されているが、ノズルの配置パターンはこれに限定されないことは言うまでもない。列状に配置されたこのノズル434のピッチは、印刷解像度(dpi)等に応じて適宜設定することができる。
【0331】
なお、ノズルプレート433を設けず、各キャビティ432の図76中上端(図77中左端)が開放しており、この開放した開口がノズルとなるような構成のものでもよい。
また、天板440には、インク取り入れ口441が形成され、該インク取り入れ口には、インク供給チューブ311を介して、インクカートリッジ31に接続されている。なお、図示されていないが、インク取り入れ口441とインクカートリッジ31との間に、ダンパ室(ゴムからなるダンパを備え、その変形により室内の容積が変化する)を設けることもできる。これにより、キャリッジ32が往復走行する際のインクの揺れやインク圧の変化をダンパ室が吸収し、ヘッドユニット100Hに所定量のインクを安定的に供給することができる。
【0332】
支持板410、外壁430、隔壁431、天板440及びノズルプレート433は、それぞれ、例えばステンレス鋼等の各種金属材料や各種樹脂材料、各種セラミックス等で構成されている。また、基板420は、例えば、シリコン等で構成されている。
基板420の各キャビティ432に対応する箇所には、それぞれ、発熱体450が設置(埋設)されている。各発熱体450は、ヘッドドライバ(通電手段)452により、それぞれ別個に通電され、発熱する。ヘッドドライバ452は、制御部6から入力される印字信号(印字データ)に応じ、発熱体450の駆動信号として例えばパルス状の信号を出力する。
【0333】
また、発熱体450のキャビティ432側の面は、保護膜(耐キャビテーション膜)451で覆われている。この保護膜451は、発熱体450がキャビティ432内のインクと直接接触するのを防止するために設けられたものである。この保護膜451を設けることにより、発熱体450がインクと接触することによる変質、劣化等を防止することができる。
【0334】
基板420の各発熱体450の近傍であって、各キャビティ432に対応する箇所には、それぞれ、凹部460が形成されている。この凹部460は、例えばエッチング、打ち抜き等の方法により形成することができる。
凹部460のキャビティ432側を遮蔽するように振動板461が設置されている。この振動板461は、キャビティ432内の圧力(液圧)の変化に追従して図77中の上下方向に弾性変形(弾性変位)する。
振動板461の構成材料や厚さは、特に限定されず、適宜設定される。
【0335】
一方、凹部460の他方の側は、支持板410により覆われており、該支持板410の図77中上面の各振動板461に対応する箇所には、それぞれ、セグメント電極462が設置されている。
振動板461とセグメント電極462とは、所定の間隙距離をおいてほぼ平行に配置されている。振動板461とセグメント電極462との間の間隙距離(ギャップ長g)は、特に限定されず、適宜設定される。わずかな間隔距離を隔てて振動板461とセグメント電極462とを配置することにより、平行平板コンデンサを形成することができる。そして、前述したように、振動板461がキャビティ432内の圧力に追従して図77中の上下方向に弾性変形すると、それに応じて振動板461とセグメント電極462と間隙距離が変化し、前記平行平板コンデンサの静電容量Cが変化する。この静電容量Cの変化は、振動板461とセグメント電極462とにそれぞれ導通する共通電極470と外部セグメント電極471との電圧差の変化として現れるので、前述したように、これを検出することにより、振動板461の残留振動(減衰振動)を知ることができる。
【0336】
基板420のキャビティ432外には、共通電極470が形成されている。また、支持板410のキャビティ432外には、外部セグメント電極471が形成されている。
セグメント電極462、共通電極470及び外部セグメント電極471の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、金、胴、又はこれらを含む合金等が挙げられる。また、セグメント電極462、共通電極470及び外部セグメント電極471は、それぞれ、例えば金属箔の接合、メッキ、蒸着、スパッタリング等の方法により形成することができる。
【0337】
各振動板461と共通電極470とは、導体475により電気的に接続され、各セグメント電極462と各外部セグメント電極471とは、導体476により電気的に接続されている。
導体475、476としては、それぞれ、▲1▼金属線等の導線を配設したもの、▲2▼基板420又は支持板410の表面に例えば金、銅等の導電性材料よりなる薄膜を形成したもの、あるいは、▲3▼基板420等の導体形成部位にイオンドーピング等を施して導電性を付与したもの等が挙げられる。
【0338】
以上のようなヘッドユニット100Hは、図77中の上下方向に複数重ねて(他段に)配置することができる。第1実施形態において示した図5では、4色のインク(インクカートリッジ31)を適用した場合におけるノズル434の配置の例を示すが、この場合、複数のヘッドユニット100Hを例えば主走査方向に重ねて配置し、それらの前面に1枚のノズルプレート433を接合した構成とすることができる。
ノズルプレート433上におけるノズル434の配置パターンは、特に限定されないが、例えば、第1実施形態の図5に示すように、隣り合うノズル列において、ノズル434が半ピッチずれたように配置することができる。
【0339】
次に、ヘッドユニット100Hの作用(作動原理)について説明する。
ヘッドドライバ33から駆動信号(パルス信号)が出力されて発熱体450に通電されると、発熱体450は、瞬時に300℃以上の温度に発熱する。これにより、保護膜451上に膜沸騰による気泡(後述する不吐出の原因となるキャビティ内に混入、発生する気泡とは異なる)480が発生し、該気泡480は瞬時に膨張する。これにより、キャビティ432内に満たされたインク(液状材料)の液圧が増大し、インクの一部がノズル434から液滴として吐出される。
【0340】
インクの液滴が吐出された直後、気泡480は急激に収縮し、元の状態に戻る。このときのキャビティ432内の圧力変化により振動板461が弾性変形して、次の駆動信号が入力され再びインク滴が吐出されるまでの間、減衰振動(残留振動)を生じる。
振動板461が減衰振動を生じると、それに応じて、振動板461と、これと対向するセグメント電極462との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化は、共通電極470と外部セグメント電極471との電圧差の変化として現れるが、これを読み取ることにより、インク滴の不吐出又はその原因を検出、特定することができる。すなわち、ノズル434からインク滴が正常に吐出されたときの共通電極470と外部セグメント電極471との電圧差の変化(静電容量の変化)の様子(パターン)と比較することにより、インク滴が正常に吐出されたか否かを判定することができ、また、インク滴の不吐出の原因毎の様子(パターン)とそれぞれ比較し、特定することにより、インク滴の不吐出の原因を判定することができる。
インク滴の吐出によりキャビティ432内で減少した液量は、インク取り入れ口441から新たなインクがキャビティ432内に供給されて補給される。このインクは、インクカートリッジ31からインク供給チューブ311内を通って供給される。
【0341】
このように、本発明の第3実施形態に示すようなサーマルジェット式のインクジェットヘッドを用いても、インクジェットヘッドのヘッド異常を検出し、その原因を特定することができるとともに、適切な回復処理を実行することができる。また、インク粘度を検出することもできる。なお、この第3実施形態に示すインクジェットヘッドでは、振動板はセンサとして利用される。
なお、液滴を吐出しない程度の駆動方法については、駆動電圧を通常より小さくする方法以外にも、本実施形態の液滴吐出装置のような沸騰膜を利用したサーマルジェット方式の液滴吐出ヘッドの場合には駆動電流を小さくするなどの方法もあり、吐出しない程度の駆動の方法を限定するものではない。
【0342】
以上のように、本発明の液滴吐出装置(インクジェットプリンタ1)及び液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法は、振動板と、振動板を変位させるアクチュエータと、内部に液体(インク)が充填され、振動板の変位により、内部の圧力が増減されるキャビティと、キャビティに連通し、キャビティ内の圧力の増減により液体を液滴として吐出するノズルとを有する複数の液滴吐出ヘッドと、アクチュエータを駆動する駆動回路と、駆動回路によってアクチュエータが駆動された後(吐出駆動後あるいは吐出しない程度の駆動後)、アクチュエータにより変位された振動板の残留振動を検出する残留振動検出手段を有し、残留振動検出手段によって検出された振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、各液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出するヘッド異常検出手段と、残留振動の振動パターンに基づいて、残留振動波形の履歴データを作成する履歴データ作成手段と、履歴データ作成手段によって作成された履歴データに基づいて、ヘッド異常の発生を予測推定する異常予測推定手段とを備えることとした。また、必要に応じて、ヘッド異常の原因を解消させる回復処理を実行する回復手段を更に備えることとした。
【0343】
したがって、本発明の液滴吐出装置及び液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法によって、ヘッド異常の発生を予測推定することができるとともに、それに応じた回復処理を実行することができるために、不要な回復処理を実行せずに済むとともに、液滴吐出装置のスループットが向上し、排インクの量も減少させることができる。
【0344】
以上、本発明の液滴吐出装置及び液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法を図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、液滴吐出ヘッドあるいは液滴吐出装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、本発明の液滴吐出ヘッドあるいは液滴吐出装置に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0345】
なお、本発明の液滴吐出装置の液滴吐出ヘッド(上述の実施形態では、インクジェットヘッド100)から吐出する吐出対象液(液状材料)としては、特に限定されず、例えば以下のような各種の材料を含む液体(サスペンション、エマルション等の分散液を含む)とすることができる。すなわち、カラーフィルタのフィルタ材料を含むインク、有機EL(Electro Luminescence)装置におけるEL発光層を形成するための発光材料、電子放出装置における電極上に蛍光体を形成するための蛍光材料、PDP(Plasma Display Panel)装置における蛍光体を形成するための蛍光材料、電気泳動表示装置における泳動体を形成する泳動体材料、基板Wの表面にバンクを形成するためのバンク材料、各種コーティング材料、電極を形成するための液状電極材料、2枚の基板間に微小なセルギャップを構成するためのスペーサを構成する粒子材料、金属配線を形成するための液状金属材料、マイクロレンズを形成するためのレンズ材料、レジスト材料、光拡散体を形成するための光拡散材料などである。
また、本発明では、液滴を吐出する対象となる液滴受容物は、記録用紙のような紙に限らず、フィルム、織布、不織布等の他のメディアや、ガラス基板、シリコン基板等の各種基板のようなワークであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液滴吐出装置の一種であるインクジェットプリンタの構成を示す概略図である。
【図2】本発明のインクジェットプリンタの主要部を概略的に示すブロック図である。
【図3】図2に示すヘッドユニット内の1つのインクジェットヘッドの概略的な断面図である。
【図4】1色のインクに対応するヘッドユニットの概略的な構成を示す分解斜視図である。
【図5】4色インクを用いるヘッドユニットのノズルプレートのノズル配置パターンの一例である。
【図6】図3のIII−III断面の駆動信号入力時の各状態を示す状態図である。
【図7】図3の振動板の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す回路図である。
【図8】図3の振動板の残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。
【図9】図3のキャビティ内に気泡が混入した場合のノズル付近の概念図である。
【図10】キャビティへの気泡混入によりインク滴が吐出しなくなった状態における残留振動の計算値及び実験値を示すグラフである。
【図11】図3のノズル付近のインクが乾燥により固着した場合のノズル付近の概念図である。
【図12】ノズル付近のインクの乾燥増粘状態における残留振動の計算値及び実験値を示すグラフである。
【図13】図3のノズル出口付近に紙粉が付着した場合のノズル付近の概念図である。
【図14】ノズル出口に紙粉が付着した状態における残留振動の計算値及び実験値を示すグラフである。
【図15】ノズル付近に紙粉が付着した前後におけるノズルの状態を示す写真である。
【図16】図2に示すヘッド異常検出手段の概略的なブロック図である。
【図17】図3の静電アクチュエータを平行平板コンデンサとした場合の概念図である。
【図18】図3の静電アクチュエータから構成されるコンデンサを含む発振回路の回路図である。
【図19】図16に示すヘッド異常検出手段のF/V変換回路の回路図である。
【図20】図18の発振回路から出力する発振周波数に基づく各部の出力信号などのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図21】固定時間tr及びt1の設定方法を説明するための図である。
【図22】図16の波形整形回路の回路構成を示す回路図である。
【図23】駆動回路と検出回路との切替手段の概略を示すブロック図である。
【図24】本発明のヘッド異常検出・判定処理を示すフローチャートである。
【図25】本発明の残留振動検出処理を示すフローチャートである。
【図26】本発明のヘッド異常判定処理を示すフローチャートである。
【図27】複数のインクジェットヘッドの吐出異常検出のタイミングの一例(ヘッド異常検出手段が1つの場合)である。
【図28】複数のインクジェットヘッドの吐出異常検出のタイミングの一例(ヘッド異常検出手段の数がインクジェットヘッドの数と同じ場合)である。
【図29】複数のインクジェットヘッドの吐出異常検出のタイミングの一例(ヘッド異常検出手段の数がインクジェットヘッドの数と同じであり、印字データがあるときに吐出異常検出を行う場合)である。
【図30】複数のインクジェットヘッドの吐出異常検出のタイミングの一例(ヘッド異常検出手段の数がインクジェットヘッドの数と同じであり、各インクジェットヘッドを巡回して吐出異常検出を行う場合)である。
【図31】図27に示すインクジェットプリンタのフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図32】図28及び図29に示すインクジェットプリンタのフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図33】図30に示すインクジェットプリンタのフラッシング動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図34】図28及び図29に示すインクジェットプリンタの印字動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図35】図30に示すインクジェットプリンタの印字動作時における吐出異常検出のタイミングを示すフローチャートである。
【図36】図1に示すインクジェットプリンタの上部から見た概略的な構造(一部省略)を示す図である。
【図37】図36に示すワイパとヘッドユニットとの位置関係を示す図である。
【図38】ポンプ吸引処理時における、インクジェットヘッドと、キャップ及びポンプとの関係を示す図である。
【図39】図38に示すチューブポンプの構成を示す概略図である。
【図40】本発明のインクジェットプリンタにおける吐出異常回復処理を示すフローチャートである。
【図41】図2に示す粘度検出手段の概略的なブロック図である。
【図42】図41に示す粘度検出手段内の判定手段の概略的なブロック図である。
【図43】ピーク検出手段(ピークホールド回路)の一例を示す回路図である。
【図44】タイミング生成手段によって生成される信号のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図45】インク粘度が正常であるインクジェットプリンタの動作可能範囲と残留振動波形の振幅量との関係を示すグラフである。
【図46】インク粘度が正常であるインクジェットプリンタの動作可能範囲と減算結果の偏差との関係を示すグラフである。
【図47】インクジェットヘッドの周辺温度の変化に対する残留振動波形の振幅量の変化を示す図である。
【図48】ヘッド異常が発生したときと正常なときの残留振動波形を示す図である。
【図49】インク粘度とインクジェットヘッドの使用時間(放置時間)との関係を示すグラフである。
【図50】インク粘度の経時変化に応じて、印字データを補正して印字処理を実行するための構成を示すブロック図である。
【図51】印字データ補正処理で使用する入出力データの関係を示すグラフである。
【図52】本発明の一実施形態におけるヘッド異常検出・判定及び粘度検出処理を示すフローチャートである。
【図53】本発明の一実施形態におけるヘッド異常検出・判定及び粘度検出処理を示すフローチャートである。
【図54】本発明の別の実施形態におけるヘッド異常検出・判定及び粘度検出処理を示すフローチャートである。
【図55】本発明の別の実施形態におけるヘッド異常検出・判定及び粘度検出処理を示すフローチャートである。
【図56】印字処理における駆動波形の補正処理を示すフローチャートである。
【図57】印字処理における印字データの修正処理を示すフローチャートである。
【図58】インク粘度を検出したときにヘッド異常が発生していた場合において実行される回復処理のフローチャートである。
【図59】インク粘度を検出したときにヘッド異常が発生していた場合において実行される回復処理のフローチャートである。
【図60】気泡量が多い場合と、少ない場合とにおける振動板の残留振動(残留振動波形)を示すグラフである。
【図61】インク粘度が高い場合と、低い場合とにおける振動板の残留振動(残留振動波形)を示すグラフである。
【図62】紙粉付着量(紙粉量ともいう)が多い場合と、少ない場合との振動板の残留振動(残留振動波形)を示すグラフである。
【図63】ヘッド異常検出処理毎の経過時間と各偏差との関係における履歴データ(残留振動波形の履歴データ)を示すグラフである。
【図64】本発明の異常予測処理を示すフローチャートである。
【図65】本発明のヘッド異常検出処理を示すフローチャートである。
【図66】本発明の第1パターンの異常予測処理を示すフローチャートである。
【図67】本発明の第2パターンの異常予測処理を示すフローチャートである。
【図68】本発明の第3パターンの異常予測処理を示すフローチャートである。
【図69】本発明の回復手段による回復処理の一例を示すフローチャートである。
【図70】本発明の回復手段による回復処理の別の例を示すフローチャートである。
【図71】本発明の割り込み処理(割り込み回復処理)を示すフローチャートである。
【図72】本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例の概略を示す断面図である。
【図73】本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例の概略を示す断面図である。
【図74】本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例の概略を示す断面図である。
【図75】本発明におけるインクジェットヘッドの他の構成例の概略を示す断面図である。
【図76】本発明におけるヘッドユニットの他の構成例を示す斜視図である。
【図77】図64に示すヘッドユニットの概略的な断面図である。
【符号の説明】
1……インクジェットプリンタ 2……装置本体 21……トレイ 22……排紙口 3……印字手段(移動体) 31……インクカートリッジ 311……インク供給チューブ 32……キャリッジ 33……ヘッドドライバ 34……連結部 35……ヘッドユニット 4……印刷装置 41……キャリッジモータ42……往復動機構 421……タイミングベルト 422……キャリッジガイド軸 43……キャリッジモータドライバ 44……プーリ 5……給紙装置51……給紙モータ 52……給紙ローラ 52a……従動ローラ 52b……駆動ローラ 53……給紙モータドライバ 6……制御部 61……CPU 62……EEPROM(記憶手段) 63……RAM 64……PROM 7……操作パネル 8……ホストコンピュータ 9……IF 10、10a〜10e……ヘッド異常検出手段 11……発振回路 111……シュミットトリガインバータ 112……抵抗素子 12……F/V変換回路 13……定電流源 14……バッファ 15……波形整形回路 151……増幅器(オペアンプ) 152……比較器(コンパレータ) 16……残留振動検出手段 17……計測手段 18……駆動回路 181……駆動波形生成手段 182……吐出選択手段182a……シフトレジスタ 182b……ラッチ回路 182c……ドライバ 19……切替制御手段 19a……切替選択手段(セレクタ) 20……判定手段 23、23a〜23e……切替手段 24……回復手段 25……計時手段 27……ピーク検出手段 28……減算器 29……粘度判定手段 30……粘度検出手段 36……タイミング生成手段 37……温度センサ 38……印字データ修正手段 40……履歴データ作成手段 50……異常予測推定手段 100、100a〜100e……インクジェットヘッド 110……ノズル120……静電アクチュエータ 121……振動板(底壁) 122……セグメント電極 123……絶縁層 124……共通電極 124a……入力端子 130……ダンパ室 131……インク取入れ口 132……ダンパ 140……シリコン基板 141……キャビティ 142……インク供給口 143……リザーバ 144……側壁 150……ノズルプレート 160……ガラス基板161……凹部 162……対向壁 170……基体 200……圧電素子 201……積層圧電素子 202、222、230、240……ノズルプレート203、223、231、241……ノズル 204……金属プレート 205……接着フィルム 206……連通口形成プレート 207、242……キャビティプレート 208、221、233、245……キャビティ 209、246……リザーバ 210、247……インク供給口 211……インク取り入れ口 212、243……振動板 213……下部電極 214……上部電極 215……ヘッドドライバ 220……基板 224……電極 232……スペーサ 234……第1電極 235……第2電極 244……中間層 248……外部電極 249……内部電極 300……ワイパ 301……ワイピング部材 310……キャップ 320……チューブポンプ(回転式ポンプ) 321……(可撓性)チューブ 322……回転体 322a……軸 323……ローラ 330……インク吸収体 340……排インクカートリッジ 350……ガイド部材 351……ガイド 410……支持板 420……基板 430……外壁 431……隔壁 432……キャビティ 433……ノズルプレート(前板) 434……ノズル 440……天板 441……インク取り入れ口 450……発熱体 451……保護膜(キャビテーション膜) 452……ヘッドドライバ 460……凹部 461……振動板 462……セグメント電極 470……共通電極 471……外部セグメント電極 475……導体 476……導体 480……気泡 P……記録用紙 S101〜S109、S201〜S205、S301〜S310、S401〜S407、S501〜S505、S601〜S608、S701〜S706、S801〜S810、S901〜S907、S1001〜S1015、S1101〜S1115、S1201〜S1209、S1301〜S1310、S1401〜S1418、S1501〜S1515、S1601〜S1607、S1701〜S1706、S1801〜S1810、S1901〜S1911、S2001〜S2005、S2101〜S2108、S2201〜S2205……ステップ

Claims (53)

  1. 振動板と、前記振動板を変位させるアクチュエータと、内部に液体が充填され、前記振動板の変位により、該内部の圧力が増減されるキャビティと、前記キャビティに連通し、前記キャビティ内の圧力の増減により前記液体を液滴として吐出するノズルとを有する複数の液滴吐出ヘッドと、
    前記アクチュエータを駆動する駆動回路と、
    前記駆動回路によって前記アクチュエータが駆動された後、前記アクチュエータにより変位された前記振動板の残留振動を検出する残留振動検出手段を有し、前記残留振動検出手段によって検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記各液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出するヘッド異常検出手段と、
    前記残留振動の振動パターンに基づいて、前記残留振動波形の履歴データを作成する履歴データ作成手段と、
    前記履歴データ作成手段によって作成された履歴データに基づいて、前記ヘッド異常の発生を予測推定する異常予測推定手段と、
    を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
  2. 前記残留振動の振動パターンに基づいて、前記液滴吐出ヘッドのキャビティ内の液体の粘度を検出する粘度検出手段を更に備える請求項1に記載の液滴吐出装置。
  3. 前記残留振動の振動パターンは、前記残留振動の振幅を含み、前記粘度検出手段は、該残留振動の振幅に基づいて、前記キャビティ内の液体の粘度を検出する請求項2に記載の液滴吐出装置。
  4. 前記ヘッド異常検出手段は、前記残留振動の振動パターンに基づいて、前記ヘッド異常の発生の有無とともに、ヘッド異常が発生していた際、その原因を判定する請求項1乃至3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  5. 前記振動板の残留振動の振動パターンは、前記残留振動の周期を含み、
    前記ヘッド異常検出手段は、前記振動板の残留振動の周期が所定の範囲の周期よりも短いときには、前記キャビティ内に気泡が混入したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が所定の閾値よりも長いときには、前記キャビティ内の液体が乾燥により増粘したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が前記所定の範囲の周期よりも長く、前記所定の閾値よりも短いときには、前記ノズルの出口付近に紙粉が付着したものと判定する請求項1乃至4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  6. 前記ヘッド異常検出手段によってヘッド異常が検出された場合、あるいは、前記粘度検出手段によって検出された前記液体の粘度が所定値よりも高いと検出された場合には、該検出されたヘッド異常又は粘度増加を解消させる回復処理を実行する回復手段を更に備える請求項1乃至5のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  7. 前記回復手段は、前記異常予測推定手段による予測推定結果に基づいて、予防的に前記回復処理を実行する請求項6に記載の液滴吐出装置。
  8. 前記回復手段は、前記液滴吐出ヘッドのノズルが配列されるノズル面をワイパによりワイピング処理するワイピング手段と、前記アクチュエータを駆動してノズルから液滴を予備的に吐出するフラッシング処理を実行するフラッシング手段と、前記液滴吐出ヘッドのノズル面を覆うキャップに接続するポンプによりポンプ吸引処理をするポンピング手段とを含む請求項6又は7に記載の液滴吐出装置。
  9. 前記ヘッド異常検出手段によって判定されたヘッド異常の原因に応じて、前記ヘッド異常の原因を解消させる回復処理を実行する回復手段を更に備え、
    前記回復手段は、前記液滴吐出ヘッドのノズルが配列されるノズル面をワイパによりワイピング処理するワイピング手段と、前記アクチュエータを駆動してノズルから液滴を予備的に吐出するフラッシング処理を実行するフラッシング手段と、前記液滴吐出ヘッドのノズル面を覆うキャップに接続するポンプによりポンプ吸引処理をするポンピング手段とを含む請求項5に記載の液滴吐出装置。
  10. 前記回復手段は、前記ヘッド異常検出手段により判定されたヘッド異常の原因が気泡混入の場合には前記ポンピング手段によるポンプ吸引処理を実行し、乾燥増粘の場合には前記フラッシング手段によるフラッシング処理又は前記ポンピング手段によるポンプ吸引処理を実行し、紙粉付着の場合には少なくとも前記ワイピング手段によるワイピング処理を実行する請求項9に記載の液滴吐出装置。
  11. 前記ヘッド異常検出手段は、前記駆動回路によりアクチュエータが吐出動作を行っている吐出動作時、あるいは、前記駆動回路によりアクチュエータが吐出動作を行わない非吐出動作時に、前記各液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出する請求項1乃至10のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  12. 前記ヘッド異常検出手段は、前記非吐出動作時には、前記駆動回路により液滴を吐出しない程度に前記アクチュエータを駆動して、前記各液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出する請求項11に記載の液滴吐出装置。
  13. 前記異常予測推定手段は、前記液滴吐出ヘッドから正常に液滴が吐出されたときの残留振動の基準データと、前記残留振動検出手段によって検出された残留振動の検出データとに基づいて、偏差演算を実行し、該検出データの偏差に基づいて、前記ヘッド異常の発生を予測推定する請求項1乃至12のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  14. 前記異常予測推定手段は、前記検出データの偏差が増加している場合には、前記ヘッド異常が発生したと推定する請求項13に記載の液滴吐出装置。
  15. 前記異常予測推定手段は、前記検出データの偏差が前記ヘッド異常時の残留振動の基準データと一致している場合には、前記ヘッド異常が発生したと推定する請求項13に記載の液滴吐出装置。
  16. 前記液滴吐出ヘッドの前記アクチュエータによる吐出動作後の経過時間を計測する計時手段を更に備え、
    前記異常予測推定手段は、前記検出データの偏差が増加している場合には、前記ヘッド異常が発生する可能性があると推定し、前記計時手段によって前記偏差が所定の許容値に到達するまでの時間を計測することにより、該到達した時間に前記ヘッド異常が発生したと推定する請求項13に記載の液滴吐出装置。
  17. 前記ヘッド異常検出手段によってヘッド異常が検出された場合、該検出されたヘッド異常を解消させる回復処理を実行する回復手段を更に備え、
    前記回復手段は、前記所定の許容値に到達するまでの時間に応じて、前記回復処理を実行する請求項16に記載の液滴吐出装置。
  18. 前記ヘッド異常検出手段によって検出されたヘッド異常が前記キャビティ内の液体の乾燥による増粘である場合、前記回復手段は、前記所定の許容値に到達するまでの時間に応じて、前記アクチュエータを駆動してノズルから液滴を予備的に吐出するフラッシング処理を実行する請求項17に記載の液滴吐出装置。
  19. 前記複数の液滴吐出ヘッドの周辺温度を計測する温度センサを更に備える請求項1乃至18のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  20. 前記残留振動の基準データ及び前記残留振動の検出データは、前記温度センサによって計測された周辺温度に基づいて補正される請求項19に記載の液滴吐出装置。
  21. 前記ヘッド異常検出手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振する請求項1乃至20のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  22. 前記ヘッド異常検出手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する前記アクチュエータの静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振する請求項1乃至20のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  23. 前記粘度検出手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振する請求項2乃至22のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  24. 前記粘度検出手段は、発振回路を備え、前記振動板の残留振動によって変化する前記アクチュエータの静電容量成分に基づいて、該発振回路が発振する請求項2乃至22のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  25. 前記発振回路は、前記静電容量成分と、前記静電容量成分を有するコンデンサに接続される抵抗素子の抵抗成分とによるCR発振回路を構成する請求項21乃至24のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  26. 前記粘度検出手段及び/又は前記ヘッド異常検出手段は、前記発振回路の出力信号における発振周波数の変化に基づいて生成される所定の信号群により、前記振動板の残留振動の電圧波形を生成するF/V変換回路を含む請求項21乃至25のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  27. 前記粘度検出手段及び/又は前記ヘッド異常検出手段は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形を所定の波形に整形する波形整形回路を含む請求項26に記載の液滴吐出装置。
  28. 前記ヘッド異常検出手段の前記波形整形回路は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形から直流成分を除去するDC成分除去手段と、このDC成分除去手段によって直流成分を除去された電圧波形と所定の電圧値とを比較する比較器とを含み、該比較器は、該電圧比較に基づいて、矩形波を生成して出力する請求項27に記載の液滴吐出装置。
  29. 前記ヘッド異常検出手段は、前記矩形波から前記振動板の残留振動の周期を計測する計測手段を含む請求項28に記載の液滴吐出装置。
  30. 前記計測手段は、カウンタを有し、該カウンタが基準信号のパルスをカウントすることによって、前記矩形波の立ち上がりエッジ間あるいは立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの間の時間を計測する請求項29に記載の液滴吐出装置。
  31. 前記粘度検出手段の前記波形整形回路は、前記F/V変換回路によって生成された前記振動板の残留振動の電圧波形から直流成分を除去するDC成分除去手段を含む請求項27乃至30のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  32. 前記粘度検出手段は、前記DC成分除去手段によって直流成分を除去された電圧波形のピーク値である前記減衰振動の波高値を検出するピーク検出手段を含み、前記ピーク検出手段によって検出された前記残留振動の波高値と所定の基準波高値との差に基づいて、前記液体の粘度を判定する請求項31に記載の液滴吐出装置。
  33. 前記ヘッド異常検出手段によってヘッド異常が検出された場合、その旨を報知する報知手段を更に備える請求項1乃至32のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  34. 前記アクチュエータの駆動による前記振動板の変位動作後、前記アクチュエータとの接続を前記駆動回路から前記ヘッド異常検出手段に切り替える切替手段を更に備える請求項1乃至33のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  35. 前記アクチュエータの駆動による前記振動板の変位動作後、前記アクチュエータとの接続を前記駆動回路から前記ヘッド異常検出手段及び前記粘度検出手段に切り替える切替手段を更に備える請求項2乃至33のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  36. 前記液滴吐出装置は、前記ヘッド異常検出手段及び前記切替手段をそれぞれ複数備え、
    前記アクチュエータの駆動動作を行った前記液滴吐出ヘッドに対応する前記切替手段が前記アクチュエータとの接続を前記駆動回路から対応する前記ヘッド異常検出手段に切り替え、該切り替えられたヘッド異常検出手段は、対応する前記液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出する請求項34に記載の液滴吐出装置。
  37. 前記複数の液滴吐出ヘッドにそれぞれ対応する複数の切替手段と、
    前記ヘッド異常検出手段が前記複数の液滴吐出ヘッドのいずれのノズルに対して前記ヘッド異常を検出するかを決定する検出決定手段とを更に備え、
    前記検出決定手段によって決定された前記液滴吐出ヘッドのノズルに対応する前記アクチュエータの駆動による前記振動板の変位動作後、対応する前記切替手段は、前記アクチュエータとの接続を前記駆動回路から前記ヘッド異常検出手段に切り替える請求項1乃至33のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  38. 前記アクチュエータは、静電式アクチュエータである請求項1乃至37のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  39. 前記アクチュエータは、圧電素子のピエゾ効果を利用した圧電アクチュエータである請求項1乃至37のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  40. 前記アクチュエータは、前記キャビティ内に充填された液体を加熱する発熱体である請求項1乃至37のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  41. 前記ヘッド異常検出手段によって検出された前記ヘッド異常の原因を検出対象のノズルと関連付けて記憶する記憶手段を更に備える請求項1乃至40のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  42. 前記液滴吐出装置は、インクジェットプリンタを含む請求項1乃至41のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  43. 駆動回路によりアクチュエータを駆動し、振動板を変位させることにより、キャビティ内の液体をノズルから液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッドからなるヘッドユニットを有する液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法であって、
    前記駆動回路によって前記アクチュエータが駆動された後、前記アクチュエータにより変位された前記振動板の残留振動を検出し、該検出された前記振動板の残留振動の振動パターンに基づいて、前記各液滴吐出ヘッドのヘッド異常を検出するとともに、前記残留振動波形の履歴データを作成し、該履歴データに基づいて、前記ヘッド異常の発生を予測推定することを特徴とする液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  44. 前記残留振動の振動パターンは、前記残留振動の振幅を含み、該残留振動の振幅に基づいて、前記キャビティ内の液体の粘度を検出する請求項43に記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  45. 前記振動板の残留振動の振動パターンは、前記残留振動の周期を含み、前記振動板の残留振動の周期が所定の範囲の周期よりも短いときには、前記キャビティ内に気泡が混入したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が所定の閾値よりも長いときには、前記キャビティ内の液体が乾燥により増粘したものと判定し、前記振動板の残留振動の周期が前記所定の範囲の周期よりも長く、前記所定の閾値よりも短いときには、前記ノズルの出口付近に紙粉が付着したものと判定する請求項43又は44に記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  46. 前記ヘッド異常が検出された場合、あるいは、前記液体の粘度が所定値よりも高いと検出された場合には、該検出されたヘッド異常又は粘度増加を解消させる回復処理を実行する請求項43乃至45のいずれかに記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  47. 前記履歴データに基づく前記ヘッド異常の発生の予測推定結果に応じて、予防的に前記回復処理を実行する請求項43乃至46のいずれかに記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  48. 前記液滴吐出ヘッドから正常に液滴が吐出されたときの残留振動の基準データと、前記検出された残留振動の検出データとに基づいて、偏差演算を実行し、該検出データの偏差に基づいて、前記ヘッド異常の発生を予測推定する請求項43乃至47のいずれかに記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  49. 前記検出データの偏差が増加している場合には、前記ヘッド異常が発生したと推定する請求項48に記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  50. 前記検出データの偏差が前記ヘッド異常時の残留振動の基準データと一致している場合には、前記ヘッド異常が発生したと推定する請求項48に記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  51. 前記検出データの偏差が増加している場合には、前記ヘッド異常が発生する可能性があると推定し、前記偏差が所定の許容値に到達するまでの時間を計測することにより、該到達した時間に前記ヘッド異常が発生したと推定する請求項48に記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  52. 前記所定の許容値に到達するまでの時間に応じて、前記回復処理を実行する請求項51に記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
  53. 前記検出されたヘッド異常の原因を検出対象のノズルと関連付けて記憶する請求項43乃至52のいずれかに記載の液滴吐出装置のヘッド異常の予測及び回復方法。
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