JP2004314192A - ワークの研磨装置及び研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ワークを研磨する定盤の作業面の形状を、簡単な手段によって凸方向と凹方向の両方向に変形させることができるようにする。
【解決手段】同軸状に位置する円環形の上定盤11と下定盤12とでワークWを研磨する研磨装置において、上記下定盤12に、該下定盤12の底部に取り付けられて熱で該定盤の径方向に伸縮するベース部材22と、このベース部材22の温度を制御する温度制御装置25とからなる形状制御機構24を設け、上記ベース部材22を伸縮させて下定盤12の底部側の定盤幅Yを変化させることにより、下定盤12の上面側にある作業面12aを凸形と凹形とに変形させる。
【選択図】 図1
【解決手段】同軸状に位置する円環形の上定盤11と下定盤12とでワークWを研磨する研磨装置において、上記下定盤12に、該下定盤12の底部に取り付けられて熱で該定盤の径方向に伸縮するベース部材22と、このベース部材22の温度を制御する温度制御装置25とからなる形状制御機構24を設け、上記ベース部材22を伸縮させて下定盤12の底部側の定盤幅Yを変化させることにより、下定盤12の上面側にある作業面12aを凸形と凹形とに変形させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハやガラス基板あるいは磁気ディスク基板のような板状のワークを定盤の作業面に押し付けて研磨加工するための技術に関するものであり、更に詳しくは、上記定盤の作業面の形状をコントロールする手段を備えたワークの研磨技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ワークの表面を研磨加工して平坦化する研磨装置として、従来より、ワークの両面を研磨する両面研磨装置と、ワークの片面を研磨する片面研磨装置とが知られている。このうち両面研磨装置は、図7に示すように、同軸状に位置する円環状の上定盤1と下定盤2とを有していて、これらの定盤1,2を中心軸線Lの回りに通常は互いに逆方向に回転させながら、遊星運動するキャリヤ3に保持されたワーク4を上記両定盤1,2の作業面1a,2aの間に挟持させて研磨するものである。また、片面研磨装置は、一つの円形の定盤を有していて、回転する該定盤の作業面に、加圧プレートに保持されたワークを押し付けて研磨するものである。
【0003】
これらの研磨装置においては、始めは平坦であった定盤の作業面がワークの研磨とともに摩耗し、その平坦度が低下するため、ワークの研磨精度も低下するという問題がある。即ち、両面研磨装置の場合を例にして説明すると、図7に示すように、上下の定盤1,2の作業面1a,2aは最初は平坦であるが、ワーク4の研磨加工を行うと、加工回数、両定盤の回転比、ワークの形状といった各種加工条件に応じて第8図(A)又は(B)あるいは(C)のように凹形に変形し、加工精度が悪化していく。また、加工条件によって作業面が凸形に変形する場合もある。このため従来では、研磨されたワークの平坦度が一定限度まで低下すると、修正キャリヤで上記作業面1a,2aを修正して平坦化するのが一般的であった。
【0004】
ところが、このような修正キャリヤを使用する方法は、該修正キャリヤを両定盤1,2間に介在させて装置を運転することにより、該修正キャリヤで両定盤の作業面を研磨して平坦化するものであるため、作業に時間がかかるだけでなく、重たい修正キャリヤを取り扱うことによる危険性も伴う。
【0005】
また、最近の研究から、上下の定盤1,2の作業面1a,2aは、必ずしも図7に示すように全体が互いに平行な平面である必要はなく、図9(A)に示すように、上定盤1の作業面1aが全体的に凹で下定盤2の作業面2aが全体的に凸であるか、あるいは同図(B)に示すように、上定盤1の作業面1aが全体的に凸で下定盤2の作業面側が全体的に凹であるといったように、相互にマッチングする形状をしていれば、ワークを精度良く研磨できることが確かめられている。また、作業面1a,2aの相対する部分が互いに平行でなくても、例えば図10(A),(B)に示すように、相互にマッチングする凸と凹の関係にあれば良い場合が多いことも分かっている。
【0006】
従って、研磨加工で摩耗した両定盤1,2の作業面1a,2aの形状をこのようにマッチングする形にコントロールすることができれば、修正キャリヤによる修正を行う必要がなくなる。さらに、研磨するワークの形状等によっては、定盤の作業面が凸形又は凹形をしている方が良い場合もあり、このような場合には、作業面をそのような形状に変形させる必要が生じる。
なお、各図における作業面の凹凸の度合いは、分かり易くするため誇張されて表示されているが、実際の凹凸の度合いはμm単位で非常に微少である。このことは、後述する本発明の実施例の説明においても同様である。
【0007】
ここで、特許文献1及び2には、定盤の内部に圧力流体を供給することにより該定盤を変形させ、それによって作業面の形状をコントロールする技術が開示されている。即ち、特許文献1には、片面研磨装置において、定盤とこの定盤を支持する定盤受けとの間の流路に冷却水を流通させ、この冷却水の圧力を調整することにより定盤を変形させて作業面を凸形に変形させるか、あるいは凹形の度合いを小さくする技術について開示されている。また、特許文献2には、同じく片面研磨装置において、定盤の上面と研磨布との間にダイアフラムを介在させ、このダイアフラムに空気圧を導入することにより研磨布の表面形状を凸形や凹形に変形させる技術が開示されている。
【0008】
しかしながらこれらの方法は、何れも、流体圧力を定盤の内部に加えることによって該定盤又は研磨布を外向きに変形させる方式であるため、該定盤又は研磨布を凸方向に変形させることはできるが、凸と凹の両方向に変形させることは実質的に不可能に近い。特許文献2には、研磨布を凹状にも変形させることが述べられているが、空気圧を低下させることによってダイヤフラムを収縮させ、それによって該ダイヤフラムの表面を窪ませるやりかたであるため、実際に安定した凹形状を得るのは困難である。
しかも、流体を使用しているため圧力変動による影響を受け易く、定盤形状が微妙に変化して研磨精度を維持することが非常に難しい。特に後者の方法は、空気圧を利用しているため、空気の圧縮性による影響をも受けて形状安定性が非常に悪く、研磨精度の維持が更に困難である。
【0009】
また、特許文献3には、定盤表面を機械的に変形させることによって作業面の形状を変化させるようにしたものが開示されている。これは、円形の定盤の下面中央部と中間部と外周部とを高さの異なる環状の支持部に支持させて、該定盤を中央の支持部と外周の支持部とにボルトで固定することにより、該定盤を上に凸の形に湾曲させたもので、上述した従来例と違って流体圧力を使用していないため、形状安定性に勝れている。しかし、定盤形状の調整を多数のボルトのねじ込み量を調整することによって行わなければならないため、調整作業が非常に面倒である。しかも、定盤形状を凸形にしか変形させることができず、凸形と凹形の両方に変形させることはできない。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−326155号公報
【特許文献2】
特開2000−202767号公報
【特許文献3】
特開平10−94957号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主要な技術的課題は、ワークを研磨する定盤の作業面の形状を、簡単な手段によって凸方向と凹方向の両方向に変形させることができるようにすることにある。
【0012】
本発明の他の技術的課題は、上記作業面を変化させたあとの形状安定性を高めることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明によれば、研磨のための作業面を上面に備えた円形又は円環形の定盤を中心軸線の回りに回転させながら、上記作業面でワークを研磨する研磨装置において、上記定盤が、底部側の定盤径を変化させることによって上記作業面を変形させる形状制御機構を有することを特徴とするワークの研磨装置が提供される。
【0014】
上記構成を有する本発明において、形状制御機構によって定盤の底部側の定盤径を中間状態より広げた場合には、該定盤の上端部側に、該上端部を下向きに窪ませる力が作用し、この力によって作業面は凹方向に変形し、上記定盤径を中間状態より狭めた場合には、定盤の上端部側に、該上端部を上向きに膨出させる力が作用し、この力によって上記作業面は凸方向に変形する。従って、上記作業面を凹又は凸の両方向に簡単に変形させることができる。
【0015】
本発明の具体的な構成態様によれば、上記研磨装置が、同軸状に位置する円環形の上定盤と下定盤とを有していて、これら両定盤のうち少なくとも下定盤に上記形状制御機構が設けられている。
【0016】
本発明において、上記形状制御機構は、定盤の底部に取り付けられて熱で該定盤の径方向に伸縮するベース部材と、このベース部材の温度を制御する温度制御装置とを有していて、上記ベース部材が、上記定盤より熱膨張係数の大きい素材で形成されている。
【0017】
このように、ベース部材の熱変形を利用して上記定盤径又は定盤幅を変化させることにより、流体圧力を利用する従来例のように圧力変動や空気の圧縮性などの影響を受けることがないので、作業面の形状を変化させた後の形状維持精度を著しく高めることができる。
【0018】
上記温度制御装置は、熱流体又は電熱ヒーターの何れかを熱媒体として上記ベース部材を温度制御する構成であることが望ましい。
【0019】
本発明の好ましい構成態様によれば、上記定盤が、冷却媒体を流すための冷却室を内部に有していて、この冷却媒体で研磨に伴う熱変形を防止するように構成されており、この冷却装置とは別に上記形状制御機構が設けられている。
【0020】
また、本発明によれば、研磨のための作業面を上面に備えた円形又は円環形の定盤を中心軸線の回りに回転させながら、上記作業面でワークを研磨するに当たり、研磨が終了したワークの平坦度に応じて上記定盤の底部側の定盤径を変化させることにより上記作業面を変形させ、そのあと上記研磨を行うことを特徴とするワークの研磨方法が提供される。
【0021】
本発明の方法の具体例では、同軸状に位置する円環形の上定盤と下定盤とを有していて、下定盤の底部側の定盤幅を変化させることによって該下定盤の作業面を上定盤の作業面に合わせて変形させるようにする。
【0022】
また、本発明において好ましくは、上記定盤の底部に該定盤より熱膨張係数の大きいベース部材を取り付け、このベース部材を温度制御して定盤の径方向に伸縮させることにより上記作業面を変形させるようにすることである。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る研磨装置の第1実施例を概略的に示すもので、この第1実施例は、ワークWの両面を研磨加工する両面研磨装置である。この研磨装置10Aは、同軸状に位置する円環状の上定盤11及び下定盤12と、これら両定盤11,12の中心部に位置する太陽歯車13と、両定盤11,12の外周を取り囲むように位置する内歯歯車14と、これらの太陽歯車13と内歯歯車14とに噛合する複数のキャリヤ15とを有している。これらの定盤11,12及び歯車13,14は、図示しない駆動機構に接続され、この駆動機構で、設定された方向に設定された回転数で駆動回転されるようになっている。
【0024】
そして、ワークWの研磨時には、該ワークWを上記キャリヤ15のワーク保持孔内に嵌合させることで該キャリヤ15に保持させ、上記両歯車13,14を回転させることによって該キャリヤ15を遊星運動させながら、上記ワークWを回転する上下の定盤11,12で両側から挟持して研磨するものである。これらの定盤11,12の表面には研磨パッド16が貼られていて、この研磨パッド16の表面が定盤11,12の作業面11a,12aを形成しており、この研磨パッド16でワークWが研磨される。従って、この研磨装置はポリッシング装置である。しかし研磨装置は、上述したような研磨パッドを持たないラッピング装置であってもよい。
【0025】
なお、この研磨装置10Aにおける上記以外の構成については、以下に説明する点を除いて公知の研磨装置と実質的に同じであって、本発明の要旨とも直接関係がないので、これ以上の具体的な説明は省略する。
【0026】
上記研磨装置10Aにおける上下の定盤11,12は、熱膨張係数の小さい低熱膨張鋳物により形成されていて、これらの定盤11,12の内部には、冷却室18がそれぞれ形成されている。この冷却室18は、各定盤11,12の内部に形成した凹部19を、該定盤11,12の底部に固定した円環状のベース部材21,22で塞ぐことにより形成されるもので、ワークWの研磨加工時にこの冷却室18内に一定温度の冷却水を流すことにより、ワークWとの摩擦による発熱で定盤が熱変形するのを防止している。このときの冷却水の温度は、一般的に20±3℃程度が好ましいが、研磨条件によって異なる場合がある。また、上記定盤の熱膨張係数は、例えば1.5×10−6/K(20〜100℃)程度である。
【0027】
なお、この説明では、定盤11,12の作業面11a,12a側を「上端部」側又は「上面」側と表現し、ベース部材21,22を取り付けた側を「底部」側と表現することとする。これは上定盤11と下定盤12とに共通である。
【0028】
上記下定盤12には、作業面12aの形状を凹方向と凸方向の両方向に変形させるための形状制御機構24が設けられている。この形状制御機構24は、下定盤12の底部に取り付けられて熱で定盤の径方向に伸縮する円環状をした上記ベース部材22と、このベース部材22の温度を制御する温度制御装置25とを有していて、上記ベース部材22が、例えばSUS(ステンレス鋼)のような、高剛性で上記定盤11,12よりも熱膨張係数の大きい素材によって形成されている。
【0029】
なお、上定盤11にはこのような形状制御機構24が設けられていないため、上記ベース部材21としては、該上定盤11と同様に熱膨張係数の小さい素材で形成したものが使用されている。
【0030】
上記温度制御装置25は、図4からも分かるように、ベース部材22に螺旋状又は同心円状に取り付けられた温調パイプ26と、この温調パイプ26内に熱媒体として温水や蒸気などの熱流体を供給する供給装置27とを有している。上記温調パイプ26は、図示したようにベース部材22の外面に取り付けても、内部に埋め込んでも構わない。また、上記温調パイプ26の断面形状は円形であっても、矩形であっても、それ以外の形状であっても良い。そして、この供給装置27で上記熱流体を一定の温度範囲、例えば10〜40℃の範囲内で温度調節することにより、上記ベース部材22をその温度に応じた量だけ下定盤12の径方向に伸縮させてその部材幅Xを大小に変化させ、それによって下定盤12の底部側の定盤幅Yを大小に変化させるようにしている。
【0031】
この場合、作業面12aの形状をコントロールする必要のない初期状態では、上記温調パイプ26内に中間温度(例えば25℃)の熱流体を常時流しておくことで、上記ベース部材22を中間温度に加熱して中間伸長状態に保持し、下定盤12の底部側の定盤幅Yを実質的に伸縮が零かそれに近い中間状態に保つことにより、上記作業面12aを一定の初期形状に保持しておき、該作業面12aの形状をコントロールする必要が生じた場合に、上記熱流体の温度を上述した中間温度から必要な大きさだけ上昇させるか、又は低下させることにより、上記ベース部材22を上述した中間伸長状態から更に温度に応じた量だけ伸長させるか、又は縮小させるように制御するのが望ましい。
【0032】
そして、熱流体の温度を下げて上記ベース部材22を中間伸長状態から縮小させた場合には、図2に示すように、下定盤12の底部側の定盤幅Yが中間状態から狭まるため、該下定盤12の上端部側には、該上端部の中央部分を上向きに膨出させる力が作用し、この力によって該上端部従って作業面12aは凸方向に変形する。この場合の変形量は、熱流体の温度を調節することによって調節することができる。作業面をこのように凸方向に変形させることにより、平坦であった作業面を凸形に変えたり、凸形をした作業面の変形度を大きくしたり、更には、凹形をした作業面の変形度を小さくしたり平坦や凸形に変えるなどのコントロールを行うことができる。
【0033】
それとは逆に、熱流体の温度を上げて上記ベース部材22を中間伸長状態から更に伸長させた場合には、図3に示すように、下定盤12の底部側の定盤幅Yが上記中間状態から広がるため、該下定盤12の上端部側には、該上端部の中央部分を下向きに窪ませる力が作用し、この力によって該上端部従って作業面12aは凹方向に変形する。この場合の変形量は、熱流体の温度を調節することによって調節することができる。作業面をこのように凹方向に変形させることにより、平坦であった作業面を凹形に変えたり、凹形をした作業面の変形度を大きくしたり、更には、凸形をした作業面の変形度を小さくしたり平坦や凹形に変えるなどのコントロールを行うことができる。
【0034】
また、図2及び図3には、下定盤12の底部を内外両方向にほぼ均等に変形させる場合が示されているが、内側方向への変形を規制し、外側方向だけに伸縮するように構成することもでき、この場合には、下定盤12の上面即ち作業面12aを、定盤全体として凸形又は凹形をなすように変形させることができる。
【0035】
かくして、熱媒体を介して上記ベース部材22を温度制御することにより、下定盤12の作業面12aを凹又は凸の両方向に必要量だけ簡単に変形させることができる。しかも、ベース部材22を熱変形させて上定盤11の底部側の定盤幅Yを大小に変化させることで作業面12aを変形させる方式であるため、流体圧力を利用する従来例のように圧力変動や空気の圧縮性などの影響を受けることがなく、作業面の形状を変化させた後の形状維持精度も勝れている。
【0036】
上記構成を有する研磨装置10AでワークWを研磨加工する場合、上下の定盤11,12の作業面11a,12aは、初期段階では図1に示すように平坦であっても、ワークWの研磨と共に次第に摩耗していき、加工回数や両定盤11,12の回転比、あるいはワークWの形状といった各種加工条件に応じて凸形や凹形に変形し、加工精度が悪化していく。そこで、研磨が終了したワークWの平坦度あるいは両面の平行度が一定限度まで低下したところで、上記形状制御機構24により下定盤12の作業面12aの形状を、上定盤11の作業面11aの形状に合わせてコントロールする。
【0037】
即ち、上定盤11の作業面11aが凹形をしているときは、下定盤12の作業面12aをこれに合わせて凸形に変形させるが、この場合には、図2に示すように、熱流体の温度を低下させることによって上記ベース部材22の部材幅Xを縮小させ、下定盤12の底部側の定盤幅Yを縮小させて上記作業面12aを凸形に変形させる。また、上定盤11の作業面11aが凸形をしているときは、下定盤12の作業面12aをこれに合わせて凹形に変形させるが、この場合には、図3に示すように、上記熱流体の温度を上昇させることによって上記ベース部材22の部材幅Xを伸長させ、下定盤12の底部側の定盤幅Yを広げて上記作業面12aを凹形に変形させる。
【0038】
かくして、下定盤12の作業面12aの形状を上定盤11の作業面11aの形状に合わせてコントロールすることにより、上下両定盤11,12の作業面11a,12aの形状を簡単にマッチングさせることができ、それによって研磨精度を維持することができる。また、研磨すべきワークによっては、上述したように下定盤12の作業面12aの形状を上定盤11に合わせるのではなく、該上定盤の作業面が平坦である初期段階から、下定盤の作業面を凸形又は凹形に変形させて研磨を行うこともできる。
なお、上記形状制御機構24は、必要に応じて上定盤11側に設けることもでき、あるいは、上定盤11と下定盤12の両方に設け、両方の定盤の作業面の形状をコントロールするように構成することもできる。
【0039】
また、上述した実施例では、下序盤12のベース部材22を温度調節する熱媒体として、熱流体を使用しているが、この熱流体の代わりに電熱ヒーターを用いることもできる。この場合、この電熱ヒーターを上記ベース部材の内部に螺旋状に埋め込むか、あるいは該ベース部材の外面に取り付け、温度制御装置でヒーター温度を制御するように構成される。
【0040】
図5は本発明の第2実施例を示すもので、この第2実施例の研磨装置10Bが上記第1実施例の研磨装置10Aと相違する点は、形状調整機構24が、流体圧シリンダー30等のアクチュエーターで下定盤12の底部側の定盤幅Yを変化させるように構成されている点である。即ち、図6からも分かるように、上記下定盤12の底部には、複数の流体圧シリンダー30が放射状に配設され、これらのシリンダー30を同期的に駆動することによって底部側の定盤幅Yを伸縮させるように構成されている。従って、この底部に取り付けられたベース部材22は、若干の伸縮性を有することが必要である。
【0041】
なお、図示した例では、上記シリンダー30として、シリンダボディ31の両側からロッド32が突出する両ロッドタイプのものが使用されているが、片側だけからロッドが突出する片ロッドタイプであっても良い。
【0042】
この第2実施例の上記以外の構成及び作用は実質的に第1実施例と同じであるから、第1実施例と同一の構成部分に第1実施例と同じ符号を付してその説明は省略する。
【0043】
なお、上記実施例では、本発明を両面研磨装置に適用した場合について説明したが、本発明は片面研磨装置にも適用することができる。この片面研磨装置は、一つの定盤を有していて、回転する該定盤の作業面に、加圧プレートに保持させたワークを押し付けて研磨するものであって、上記定盤が円環状をしている場合には、この定盤が、上記第1実施例又は第2実施例の下定盤12のように構成される。また、上記定盤が円形をしている場合には、該定盤の底部に、円形のベース部材と温度制御装置とからなる形状制御機構が取り付けられるか、あるいは、アクチュエーターからなる形状制御機構が取り付けられ、これらの形状制御機構で定盤の底部側を径方向に伸縮させることにより、該定盤の上面の作業面が、全体として凸形かあるいは凹形に変形させられる。
【0044】
【発明の効果】
このように本発明によれば、ワークを研磨する定盤の作業面の形状を、簡単な手段によって凸方向と凹方向の両方向に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る研磨装置の第1実施例を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の研磨装置の下定盤の作業面を凸形に変形させた場合の断面図である。
【図3】図1の研磨装置の下定盤の作業面を凹形に変形させた場合の断面図である。
【図4】図1の研磨装置の下定盤の下面図である。
【図5】本発明に係る研磨装置の第2実施例を概略的に示す断面図である。
【図6】図5の研磨装置の下定盤の下面図である。
【図7】従来の研磨装置を概略的に示す断面図である。
【図8】(A)〜(C)は、図7の研磨装置の定盤の異なる摩耗状態を示す断面図である。
【図9】(A)、(B)は、上下の定盤の作業面の形状がマッチングしている状態を示す断面図である。
【図10】(A)、(B)は、上下の定盤の作業面の形状がマッチングしている他の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
10A,10B 研磨装置
11 上定盤
12 下定盤
11a,12a 作業面
18 冷却室
21,22 ベース部材
24 形状制御装置
25 温度制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハやガラス基板あるいは磁気ディスク基板のような板状のワークを定盤の作業面に押し付けて研磨加工するための技術に関するものであり、更に詳しくは、上記定盤の作業面の形状をコントロールする手段を備えたワークの研磨技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ワークの表面を研磨加工して平坦化する研磨装置として、従来より、ワークの両面を研磨する両面研磨装置と、ワークの片面を研磨する片面研磨装置とが知られている。このうち両面研磨装置は、図7に示すように、同軸状に位置する円環状の上定盤1と下定盤2とを有していて、これらの定盤1,2を中心軸線Lの回りに通常は互いに逆方向に回転させながら、遊星運動するキャリヤ3に保持されたワーク4を上記両定盤1,2の作業面1a,2aの間に挟持させて研磨するものである。また、片面研磨装置は、一つの円形の定盤を有していて、回転する該定盤の作業面に、加圧プレートに保持されたワークを押し付けて研磨するものである。
【0003】
これらの研磨装置においては、始めは平坦であった定盤の作業面がワークの研磨とともに摩耗し、その平坦度が低下するため、ワークの研磨精度も低下するという問題がある。即ち、両面研磨装置の場合を例にして説明すると、図7に示すように、上下の定盤1,2の作業面1a,2aは最初は平坦であるが、ワーク4の研磨加工を行うと、加工回数、両定盤の回転比、ワークの形状といった各種加工条件に応じて第8図(A)又は(B)あるいは(C)のように凹形に変形し、加工精度が悪化していく。また、加工条件によって作業面が凸形に変形する場合もある。このため従来では、研磨されたワークの平坦度が一定限度まで低下すると、修正キャリヤで上記作業面1a,2aを修正して平坦化するのが一般的であった。
【0004】
ところが、このような修正キャリヤを使用する方法は、該修正キャリヤを両定盤1,2間に介在させて装置を運転することにより、該修正キャリヤで両定盤の作業面を研磨して平坦化するものであるため、作業に時間がかかるだけでなく、重たい修正キャリヤを取り扱うことによる危険性も伴う。
【0005】
また、最近の研究から、上下の定盤1,2の作業面1a,2aは、必ずしも図7に示すように全体が互いに平行な平面である必要はなく、図9(A)に示すように、上定盤1の作業面1aが全体的に凹で下定盤2の作業面2aが全体的に凸であるか、あるいは同図(B)に示すように、上定盤1の作業面1aが全体的に凸で下定盤2の作業面側が全体的に凹であるといったように、相互にマッチングする形状をしていれば、ワークを精度良く研磨できることが確かめられている。また、作業面1a,2aの相対する部分が互いに平行でなくても、例えば図10(A),(B)に示すように、相互にマッチングする凸と凹の関係にあれば良い場合が多いことも分かっている。
【0006】
従って、研磨加工で摩耗した両定盤1,2の作業面1a,2aの形状をこのようにマッチングする形にコントロールすることができれば、修正キャリヤによる修正を行う必要がなくなる。さらに、研磨するワークの形状等によっては、定盤の作業面が凸形又は凹形をしている方が良い場合もあり、このような場合には、作業面をそのような形状に変形させる必要が生じる。
なお、各図における作業面の凹凸の度合いは、分かり易くするため誇張されて表示されているが、実際の凹凸の度合いはμm単位で非常に微少である。このことは、後述する本発明の実施例の説明においても同様である。
【0007】
ここで、特許文献1及び2には、定盤の内部に圧力流体を供給することにより該定盤を変形させ、それによって作業面の形状をコントロールする技術が開示されている。即ち、特許文献1には、片面研磨装置において、定盤とこの定盤を支持する定盤受けとの間の流路に冷却水を流通させ、この冷却水の圧力を調整することにより定盤を変形させて作業面を凸形に変形させるか、あるいは凹形の度合いを小さくする技術について開示されている。また、特許文献2には、同じく片面研磨装置において、定盤の上面と研磨布との間にダイアフラムを介在させ、このダイアフラムに空気圧を導入することにより研磨布の表面形状を凸形や凹形に変形させる技術が開示されている。
【0008】
しかしながらこれらの方法は、何れも、流体圧力を定盤の内部に加えることによって該定盤又は研磨布を外向きに変形させる方式であるため、該定盤又は研磨布を凸方向に変形させることはできるが、凸と凹の両方向に変形させることは実質的に不可能に近い。特許文献2には、研磨布を凹状にも変形させることが述べられているが、空気圧を低下させることによってダイヤフラムを収縮させ、それによって該ダイヤフラムの表面を窪ませるやりかたであるため、実際に安定した凹形状を得るのは困難である。
しかも、流体を使用しているため圧力変動による影響を受け易く、定盤形状が微妙に変化して研磨精度を維持することが非常に難しい。特に後者の方法は、空気圧を利用しているため、空気の圧縮性による影響をも受けて形状安定性が非常に悪く、研磨精度の維持が更に困難である。
【0009】
また、特許文献3には、定盤表面を機械的に変形させることによって作業面の形状を変化させるようにしたものが開示されている。これは、円形の定盤の下面中央部と中間部と外周部とを高さの異なる環状の支持部に支持させて、該定盤を中央の支持部と外周の支持部とにボルトで固定することにより、該定盤を上に凸の形に湾曲させたもので、上述した従来例と違って流体圧力を使用していないため、形状安定性に勝れている。しかし、定盤形状の調整を多数のボルトのねじ込み量を調整することによって行わなければならないため、調整作業が非常に面倒である。しかも、定盤形状を凸形にしか変形させることができず、凸形と凹形の両方に変形させることはできない。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−326155号公報
【特許文献2】
特開2000−202767号公報
【特許文献3】
特開平10−94957号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主要な技術的課題は、ワークを研磨する定盤の作業面の形状を、簡単な手段によって凸方向と凹方向の両方向に変形させることができるようにすることにある。
【0012】
本発明の他の技術的課題は、上記作業面を変化させたあとの形状安定性を高めることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明によれば、研磨のための作業面を上面に備えた円形又は円環形の定盤を中心軸線の回りに回転させながら、上記作業面でワークを研磨する研磨装置において、上記定盤が、底部側の定盤径を変化させることによって上記作業面を変形させる形状制御機構を有することを特徴とするワークの研磨装置が提供される。
【0014】
上記構成を有する本発明において、形状制御機構によって定盤の底部側の定盤径を中間状態より広げた場合には、該定盤の上端部側に、該上端部を下向きに窪ませる力が作用し、この力によって作業面は凹方向に変形し、上記定盤径を中間状態より狭めた場合には、定盤の上端部側に、該上端部を上向きに膨出させる力が作用し、この力によって上記作業面は凸方向に変形する。従って、上記作業面を凹又は凸の両方向に簡単に変形させることができる。
【0015】
本発明の具体的な構成態様によれば、上記研磨装置が、同軸状に位置する円環形の上定盤と下定盤とを有していて、これら両定盤のうち少なくとも下定盤に上記形状制御機構が設けられている。
【0016】
本発明において、上記形状制御機構は、定盤の底部に取り付けられて熱で該定盤の径方向に伸縮するベース部材と、このベース部材の温度を制御する温度制御装置とを有していて、上記ベース部材が、上記定盤より熱膨張係数の大きい素材で形成されている。
【0017】
このように、ベース部材の熱変形を利用して上記定盤径又は定盤幅を変化させることにより、流体圧力を利用する従来例のように圧力変動や空気の圧縮性などの影響を受けることがないので、作業面の形状を変化させた後の形状維持精度を著しく高めることができる。
【0018】
上記温度制御装置は、熱流体又は電熱ヒーターの何れかを熱媒体として上記ベース部材を温度制御する構成であることが望ましい。
【0019】
本発明の好ましい構成態様によれば、上記定盤が、冷却媒体を流すための冷却室を内部に有していて、この冷却媒体で研磨に伴う熱変形を防止するように構成されており、この冷却装置とは別に上記形状制御機構が設けられている。
【0020】
また、本発明によれば、研磨のための作業面を上面に備えた円形又は円環形の定盤を中心軸線の回りに回転させながら、上記作業面でワークを研磨するに当たり、研磨が終了したワークの平坦度に応じて上記定盤の底部側の定盤径を変化させることにより上記作業面を変形させ、そのあと上記研磨を行うことを特徴とするワークの研磨方法が提供される。
【0021】
本発明の方法の具体例では、同軸状に位置する円環形の上定盤と下定盤とを有していて、下定盤の底部側の定盤幅を変化させることによって該下定盤の作業面を上定盤の作業面に合わせて変形させるようにする。
【0022】
また、本発明において好ましくは、上記定盤の底部に該定盤より熱膨張係数の大きいベース部材を取り付け、このベース部材を温度制御して定盤の径方向に伸縮させることにより上記作業面を変形させるようにすることである。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る研磨装置の第1実施例を概略的に示すもので、この第1実施例は、ワークWの両面を研磨加工する両面研磨装置である。この研磨装置10Aは、同軸状に位置する円環状の上定盤11及び下定盤12と、これら両定盤11,12の中心部に位置する太陽歯車13と、両定盤11,12の外周を取り囲むように位置する内歯歯車14と、これらの太陽歯車13と内歯歯車14とに噛合する複数のキャリヤ15とを有している。これらの定盤11,12及び歯車13,14は、図示しない駆動機構に接続され、この駆動機構で、設定された方向に設定された回転数で駆動回転されるようになっている。
【0024】
そして、ワークWの研磨時には、該ワークWを上記キャリヤ15のワーク保持孔内に嵌合させることで該キャリヤ15に保持させ、上記両歯車13,14を回転させることによって該キャリヤ15を遊星運動させながら、上記ワークWを回転する上下の定盤11,12で両側から挟持して研磨するものである。これらの定盤11,12の表面には研磨パッド16が貼られていて、この研磨パッド16の表面が定盤11,12の作業面11a,12aを形成しており、この研磨パッド16でワークWが研磨される。従って、この研磨装置はポリッシング装置である。しかし研磨装置は、上述したような研磨パッドを持たないラッピング装置であってもよい。
【0025】
なお、この研磨装置10Aにおける上記以外の構成については、以下に説明する点を除いて公知の研磨装置と実質的に同じであって、本発明の要旨とも直接関係がないので、これ以上の具体的な説明は省略する。
【0026】
上記研磨装置10Aにおける上下の定盤11,12は、熱膨張係数の小さい低熱膨張鋳物により形成されていて、これらの定盤11,12の内部には、冷却室18がそれぞれ形成されている。この冷却室18は、各定盤11,12の内部に形成した凹部19を、該定盤11,12の底部に固定した円環状のベース部材21,22で塞ぐことにより形成されるもので、ワークWの研磨加工時にこの冷却室18内に一定温度の冷却水を流すことにより、ワークWとの摩擦による発熱で定盤が熱変形するのを防止している。このときの冷却水の温度は、一般的に20±3℃程度が好ましいが、研磨条件によって異なる場合がある。また、上記定盤の熱膨張係数は、例えば1.5×10−6/K(20〜100℃)程度である。
【0027】
なお、この説明では、定盤11,12の作業面11a,12a側を「上端部」側又は「上面」側と表現し、ベース部材21,22を取り付けた側を「底部」側と表現することとする。これは上定盤11と下定盤12とに共通である。
【0028】
上記下定盤12には、作業面12aの形状を凹方向と凸方向の両方向に変形させるための形状制御機構24が設けられている。この形状制御機構24は、下定盤12の底部に取り付けられて熱で定盤の径方向に伸縮する円環状をした上記ベース部材22と、このベース部材22の温度を制御する温度制御装置25とを有していて、上記ベース部材22が、例えばSUS(ステンレス鋼)のような、高剛性で上記定盤11,12よりも熱膨張係数の大きい素材によって形成されている。
【0029】
なお、上定盤11にはこのような形状制御機構24が設けられていないため、上記ベース部材21としては、該上定盤11と同様に熱膨張係数の小さい素材で形成したものが使用されている。
【0030】
上記温度制御装置25は、図4からも分かるように、ベース部材22に螺旋状又は同心円状に取り付けられた温調パイプ26と、この温調パイプ26内に熱媒体として温水や蒸気などの熱流体を供給する供給装置27とを有している。上記温調パイプ26は、図示したようにベース部材22の外面に取り付けても、内部に埋め込んでも構わない。また、上記温調パイプ26の断面形状は円形であっても、矩形であっても、それ以外の形状であっても良い。そして、この供給装置27で上記熱流体を一定の温度範囲、例えば10〜40℃の範囲内で温度調節することにより、上記ベース部材22をその温度に応じた量だけ下定盤12の径方向に伸縮させてその部材幅Xを大小に変化させ、それによって下定盤12の底部側の定盤幅Yを大小に変化させるようにしている。
【0031】
この場合、作業面12aの形状をコントロールする必要のない初期状態では、上記温調パイプ26内に中間温度(例えば25℃)の熱流体を常時流しておくことで、上記ベース部材22を中間温度に加熱して中間伸長状態に保持し、下定盤12の底部側の定盤幅Yを実質的に伸縮が零かそれに近い中間状態に保つことにより、上記作業面12aを一定の初期形状に保持しておき、該作業面12aの形状をコントロールする必要が生じた場合に、上記熱流体の温度を上述した中間温度から必要な大きさだけ上昇させるか、又は低下させることにより、上記ベース部材22を上述した中間伸長状態から更に温度に応じた量だけ伸長させるか、又は縮小させるように制御するのが望ましい。
【0032】
そして、熱流体の温度を下げて上記ベース部材22を中間伸長状態から縮小させた場合には、図2に示すように、下定盤12の底部側の定盤幅Yが中間状態から狭まるため、該下定盤12の上端部側には、該上端部の中央部分を上向きに膨出させる力が作用し、この力によって該上端部従って作業面12aは凸方向に変形する。この場合の変形量は、熱流体の温度を調節することによって調節することができる。作業面をこのように凸方向に変形させることにより、平坦であった作業面を凸形に変えたり、凸形をした作業面の変形度を大きくしたり、更には、凹形をした作業面の変形度を小さくしたり平坦や凸形に変えるなどのコントロールを行うことができる。
【0033】
それとは逆に、熱流体の温度を上げて上記ベース部材22を中間伸長状態から更に伸長させた場合には、図3に示すように、下定盤12の底部側の定盤幅Yが上記中間状態から広がるため、該下定盤12の上端部側には、該上端部の中央部分を下向きに窪ませる力が作用し、この力によって該上端部従って作業面12aは凹方向に変形する。この場合の変形量は、熱流体の温度を調節することによって調節することができる。作業面をこのように凹方向に変形させることにより、平坦であった作業面を凹形に変えたり、凹形をした作業面の変形度を大きくしたり、更には、凸形をした作業面の変形度を小さくしたり平坦や凹形に変えるなどのコントロールを行うことができる。
【0034】
また、図2及び図3には、下定盤12の底部を内外両方向にほぼ均等に変形させる場合が示されているが、内側方向への変形を規制し、外側方向だけに伸縮するように構成することもでき、この場合には、下定盤12の上面即ち作業面12aを、定盤全体として凸形又は凹形をなすように変形させることができる。
【0035】
かくして、熱媒体を介して上記ベース部材22を温度制御することにより、下定盤12の作業面12aを凹又は凸の両方向に必要量だけ簡単に変形させることができる。しかも、ベース部材22を熱変形させて上定盤11の底部側の定盤幅Yを大小に変化させることで作業面12aを変形させる方式であるため、流体圧力を利用する従来例のように圧力変動や空気の圧縮性などの影響を受けることがなく、作業面の形状を変化させた後の形状維持精度も勝れている。
【0036】
上記構成を有する研磨装置10AでワークWを研磨加工する場合、上下の定盤11,12の作業面11a,12aは、初期段階では図1に示すように平坦であっても、ワークWの研磨と共に次第に摩耗していき、加工回数や両定盤11,12の回転比、あるいはワークWの形状といった各種加工条件に応じて凸形や凹形に変形し、加工精度が悪化していく。そこで、研磨が終了したワークWの平坦度あるいは両面の平行度が一定限度まで低下したところで、上記形状制御機構24により下定盤12の作業面12aの形状を、上定盤11の作業面11aの形状に合わせてコントロールする。
【0037】
即ち、上定盤11の作業面11aが凹形をしているときは、下定盤12の作業面12aをこれに合わせて凸形に変形させるが、この場合には、図2に示すように、熱流体の温度を低下させることによって上記ベース部材22の部材幅Xを縮小させ、下定盤12の底部側の定盤幅Yを縮小させて上記作業面12aを凸形に変形させる。また、上定盤11の作業面11aが凸形をしているときは、下定盤12の作業面12aをこれに合わせて凹形に変形させるが、この場合には、図3に示すように、上記熱流体の温度を上昇させることによって上記ベース部材22の部材幅Xを伸長させ、下定盤12の底部側の定盤幅Yを広げて上記作業面12aを凹形に変形させる。
【0038】
かくして、下定盤12の作業面12aの形状を上定盤11の作業面11aの形状に合わせてコントロールすることにより、上下両定盤11,12の作業面11a,12aの形状を簡単にマッチングさせることができ、それによって研磨精度を維持することができる。また、研磨すべきワークによっては、上述したように下定盤12の作業面12aの形状を上定盤11に合わせるのではなく、該上定盤の作業面が平坦である初期段階から、下定盤の作業面を凸形又は凹形に変形させて研磨を行うこともできる。
なお、上記形状制御機構24は、必要に応じて上定盤11側に設けることもでき、あるいは、上定盤11と下定盤12の両方に設け、両方の定盤の作業面の形状をコントロールするように構成することもできる。
【0039】
また、上述した実施例では、下序盤12のベース部材22を温度調節する熱媒体として、熱流体を使用しているが、この熱流体の代わりに電熱ヒーターを用いることもできる。この場合、この電熱ヒーターを上記ベース部材の内部に螺旋状に埋め込むか、あるいは該ベース部材の外面に取り付け、温度制御装置でヒーター温度を制御するように構成される。
【0040】
図5は本発明の第2実施例を示すもので、この第2実施例の研磨装置10Bが上記第1実施例の研磨装置10Aと相違する点は、形状調整機構24が、流体圧シリンダー30等のアクチュエーターで下定盤12の底部側の定盤幅Yを変化させるように構成されている点である。即ち、図6からも分かるように、上記下定盤12の底部には、複数の流体圧シリンダー30が放射状に配設され、これらのシリンダー30を同期的に駆動することによって底部側の定盤幅Yを伸縮させるように構成されている。従って、この底部に取り付けられたベース部材22は、若干の伸縮性を有することが必要である。
【0041】
なお、図示した例では、上記シリンダー30として、シリンダボディ31の両側からロッド32が突出する両ロッドタイプのものが使用されているが、片側だけからロッドが突出する片ロッドタイプであっても良い。
【0042】
この第2実施例の上記以外の構成及び作用は実質的に第1実施例と同じであるから、第1実施例と同一の構成部分に第1実施例と同じ符号を付してその説明は省略する。
【0043】
なお、上記実施例では、本発明を両面研磨装置に適用した場合について説明したが、本発明は片面研磨装置にも適用することができる。この片面研磨装置は、一つの定盤を有していて、回転する該定盤の作業面に、加圧プレートに保持させたワークを押し付けて研磨するものであって、上記定盤が円環状をしている場合には、この定盤が、上記第1実施例又は第2実施例の下定盤12のように構成される。また、上記定盤が円形をしている場合には、該定盤の底部に、円形のベース部材と温度制御装置とからなる形状制御機構が取り付けられるか、あるいは、アクチュエーターからなる形状制御機構が取り付けられ、これらの形状制御機構で定盤の底部側を径方向に伸縮させることにより、該定盤の上面の作業面が、全体として凸形かあるいは凹形に変形させられる。
【0044】
【発明の効果】
このように本発明によれば、ワークを研磨する定盤の作業面の形状を、簡単な手段によって凸方向と凹方向の両方向に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る研磨装置の第1実施例を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の研磨装置の下定盤の作業面を凸形に変形させた場合の断面図である。
【図3】図1の研磨装置の下定盤の作業面を凹形に変形させた場合の断面図である。
【図4】図1の研磨装置の下定盤の下面図である。
【図5】本発明に係る研磨装置の第2実施例を概略的に示す断面図である。
【図6】図5の研磨装置の下定盤の下面図である。
【図7】従来の研磨装置を概略的に示す断面図である。
【図8】(A)〜(C)は、図7の研磨装置の定盤の異なる摩耗状態を示す断面図である。
【図9】(A)、(B)は、上下の定盤の作業面の形状がマッチングしている状態を示す断面図である。
【図10】(A)、(B)は、上下の定盤の作業面の形状がマッチングしている他の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
10A,10B 研磨装置
11 上定盤
12 下定盤
11a,12a 作業面
18 冷却室
21,22 ベース部材
24 形状制御装置
25 温度制御装置
Claims (8)
- 研磨のための作業面を上面に備えた円形又は円環形の定盤を中心軸線の回りに回転させながら、上記作業面でワークを研磨する研磨装置において、
上記定盤が、底部側の定盤径を変化させることによって上記作業面を変形させる形状制御機構を有することを特徴とするワークの研磨装置。 - 同軸状に位置する円環形の上定盤と下定盤とを有し、これら両定盤のうち少なくとも下定盤に上記形状制御機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
- 上記形状制御機構が、定盤の底部に取り付けられて熱で該定盤の径方向に伸縮するベース部材と、このベース部材の温度を制御する温度制御装置とを有していて、上記ベース部材が、上記定盤より熱膨張係数の大きい素材で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨装置。
- 上記温度制御装置が、熱流体又は電熱ヒーターの何れかを熱媒体として上記ベース部材を温度制御するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の研磨装置。
- 上記定盤が、冷却媒体を流すための冷却室を内部に有し、この冷却媒体で研磨に伴う熱変形を防止するように構成されていることを特徴とする請求項1から4までの何れかに記載の研磨装置。
- 研磨のための作業面を上面に備えた円形又は円環形の定盤を中心軸線の回りに回転させながら、上記作業面でワークを研磨するに当たり、研磨が終了したワークの平坦度に応じて上記定盤の底部側の定盤径を変化させることにより上記作業面を変形させ、そのあと上記研磨を行うことを特徴とするワークの研磨方法。
- 同軸状に位置する円環形の上定盤と下定盤とを有していて、下定盤の底部側の定盤幅を変化させることによって該下定盤の作業面を上定盤の作業面に合わせて変形させることを特徴とする請求項6に記載の研磨方法。
- 上記定盤の底部に該定盤より熱膨張係数の大きいベース部材を取り付け、このベース部材を温度制御して定盤の径方向に伸縮させることにより上記作業面を変形させることを特徴とする請求項6又は7に記載の研磨方法。
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