JP2004307578A - 発泡成形品及び発泡成形方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂99.9〜80重量%、(B)常温(23℃)〜成形温度の温度範囲でゾル−ゲル転移を生じる化合物0.1〜20重量%を含む樹脂組成物を発泡成形してなる成形品。この成形品は、樹脂組成物100重量部に、化学発泡剤又は物理発泡剤0.01〜10重量部を配合し、樹脂組成物を溶融し、減圧かつ冷却させて製造することができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡成形品及び発泡成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリプロピレンやポリスチレンに代表される熱可塑性樹脂組成物は、押出成形性や射出成形性に優れることから、食品包材や構造部材など最も広範な用途に使用されており、製品の軽量化によるコストダウンや断熱性の付与を目的として、発泡成形に供される場合も多い。
一方、発泡成形において、製品の外観改良や断熱性の向上を目的として、発泡核剤を添加することで、発泡セル径の微細化及び発泡セル数の増大を図ることが知られている。(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−175249号公報
【特許文献2】
特表平8−508764号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に記載された発泡核剤、例えば、粒径5μm以下のタルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、無水シリカでは、非常に微細な発泡セルができ易い、超臨界状ガスを発泡剤として用いた発泡成形においても、セル径の微細化が難しく、さらに外観要求が厳しい分野にも用いることができる発泡成形品を得ることは難しいという問題点があった。
また、化学発泡剤を用いた発泡成形においては、前述の発泡核剤を用いても、発泡セルは小さくなるものの、依然として発泡セル径が数百μmレベルの粗大な発泡セルしか得られていなかった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、微細な発泡セルを持つ発泡成形品及び発泡成形方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂に、常温(23℃)〜成形温度の温度範囲でゾル−ゲル転移を生じる化合物を発泡核剤として配合することで、発泡セルが微細で、外観に優れた発泡成形品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の第一の態様によれば、(A)熱可塑性樹脂99.9〜80重量%、(B)常温(23℃)〜成形温度の温度範囲でゾル−ゲル転移を生じる化合物0.1〜20重量%を含む樹脂組成物を発泡成形してなる成形品が提供される。
【0008】
本発明の第二の態様によれば、(A)熱可塑性樹脂99.9〜80重量%、(B)常温(23℃)〜成形温度の温度範囲でゾル−ゲル転移を生じる化合物0.1〜20重量%を含む樹脂組成物100重量部に、化学発泡剤又は物理発泡剤0.01〜10重量部を配合し、樹脂組成物を溶融し、減圧かつ冷却させることを含む発泡成形方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の発泡成形品について説明する。
本発明の発泡成形品は、(A)熱可塑性樹脂99.9〜80重量%、(B)常温(23℃)〜成形温度の温度範囲でゾル−ゲル転移を生じる化合物(以下、化合物(B)という)0.1〜20重量%を含む樹脂組成物を発泡成形したものである。
【0010】
熱可塑性樹脂(A)としては、発泡成形に適用できる物であれば特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアリーレンスルフィド、ポリエステル等を用いることができる。
本発明では、その中でも、後述する化合物(B)が発泡セル径を抑制する効果が大きい点で、結晶性樹脂が好ましく、その中でもポリオレフィンが好ましい。
熱可塑性樹脂(A)の流動性は、樹脂種の標準的なメルトフローレート(MFR)測定条件(例えば、JIS−K7210)で、0.1〜80g/10minであることが好ましい。
MFRを上記範囲に調節するためには、例えば、熱可塑性樹脂の製造時において、重合時に水素濃度を調節するなどして分子量を調整する、過酸化物で分解する、又はメルトインデックスの異なる樹脂をブレンド又は混練すればよい。
【0011】
化合物(B)としては、常温(23℃)〜成形温度の温度範囲でゾル−ゲル転移を生じる化合物であれば特に制限されない。
ここで、「成形温度」とは、樹脂組成物を発泡させる時の樹脂温度のことであり、例えば、射出発泡成形では、ノズル先端近傍での樹脂温度、押出発泡成形では、ダイリップ近傍の樹脂温度のことを意味する。樹脂温度は、好ましくは400℃以下である。尚、これらの樹脂温度は、温度計で実測することができる。
本発明では、上記温度範囲でゾル−ゲル転移を生じない化合物を、熱可塑性樹脂(A)に配合しても、十分な発泡セルの微細化効果が発現しない上、外観も向上しない。
【0012】
本発明では、化合物(B)として、好ましくは、ジベンジリデンソルビトール系化合物を用いる。ジベンジリデンソルビトール系化合物の具体例としては、例えば、1,3:2,4−ビス(O−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(O−2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(O−4−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(O−4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(O−4−クロロベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ジメチルベンジリデンソルビトール等が挙げられる。
【0013】
化合物(B)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)及び化合物(B)の総和を100重量%としたとき、0.1〜20重量、好ましくは0.3〜10重量%である。配合量が0.1重量%より少ないと、発泡セルの微細化効果が期待できず、20重量%より多いと、発泡成形品の機械的物性を損なう恐れがある。
【0014】
樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常配合することができるその他の添加剤を配合してもよい。
【0015】
本発明の発泡成形品は、上述した樹脂組成物100重量部に、化学発泡剤又は物理発泡剤0.01〜10重量部を配合し、樹脂組成物を溶融し、減圧かつ冷却させることにより製造することができる。
本発明の製造方法では、ダイリップ間を通して空気中に押出したり、金型内にショートショットで充填したり、金型に充填し、完全に樹脂組成物が冷却固化する前に、金型容積を拡大する等して減圧させることができる。また、押出された冷却ロール間に発泡シートを通したり、樹脂組成物が充填される金型の温度を低くする等して冷却させることができる。
本発明では、これらの工程を含む限り、押出発泡成形方法、射出発泡成形方法、プレス発泡成形方法等のいずれの成形方法も用いることができる。
【0016】
本発明で用いる発泡剤は特に制限されず、公知のものを用いることができる。化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、ベンゼンスルホンヒドラジド、4,4−オキシベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、アジドカルボン酸バリウム、N,N’−ジメチル−ジニトロソテレフタルアミド及びトヒドラジノトリアジン等が挙げられる。また、物理発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水、空気、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、炭素数1〜4の、完全に又は部分的にハロゲン化された脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0017】
本発明では、熱可塑性樹脂組成物に対して不活性な流体、例えば、大概の樹脂に対して不活性な二酸化炭素、窒素等を超臨界状にした超臨界状流体を、物理発泡剤として用いることが好ましい。このような超臨界状流体を用いると、より微細な発泡セルを持つ発泡成形品を得ることができる。
このような超得臨界状流体を用いた発泡方法は、例えば、米国特許5158986号公報、特開平10−175249号公報、特開平10−24436号公報等に記載された方法を適用することができる。
【0018】
発泡剤の使用量は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは0.01〜10重量部である。発泡剤の使用量が0.01重量部未満では、殆ど発泡せず、10重量部を超えると、発泡セルが粗大になる上、得られる発泡成形品の外観が悪く成り易い。
【0019】
このようにして得られる本発明の成形品は、発泡セルのセル径が、好ましくは1〜50μmであり、セル数が、好ましくは106〜1015個/cm3である。
【0020】
本発明では、発泡核剤として、特定の化合物(B)を用いているため、微細な発泡セルを持つ発泡成形品を得ることができる。従って、とりわけ、従来の発泡用樹脂材料では、微細なセルを持つ発泡成形品を得るために、わざわざ発泡剤に超臨界状流体を用いるにもかかわらず、セル径制御が難しく、比較的粗大な発泡セルができ易い条件、例えば、超臨界状流体を発泡剤に用いる射出発泡成形法においても、本発明の発泡成形品は、充分に微細な発泡セルを持つことができる。
また、本発明では、熱可塑性樹脂として、固化温度前後で急激な粘度変化を起こし、発泡成形ではセル形態の制御(微細化)が難しい結晶性樹脂を用いた場合であっても、化合物(B)の添加効果によって、発泡セルを微細化することができる。
尚、化合物(B)を用いると、微細な発泡セルが得られる理由については、以下のように推測される。
即ち、化合物(B)は、発泡成形時において、特定温度、例えば、成形温度では、ほぼ均一に樹脂中に溶解しているが、その後の冷却過程においてゲル化し、樹脂中に微細なネットワーク構造を形成する。このようなネットワーク構造が形成されると、樹脂全体の溶融粘度が急激に増大し、その結果、ネットワーク構造内に発生した発泡セルは肥大化し難くなり、微細な状態に止まると考えられる。
【0021】
本発明の発泡成形品は、食品包材や構造部材等の用途に好適に用いることができる。
【0022】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
尚、発泡成形品の評価方法は、以下の通りである。
(1)平均セル径
走査型電子顕微鏡により撮影した写真を用いて、1平方ミリメートル四方の中にある発泡セルの直径の平均値を、平均セル径とした。 平均セル径が50μm以下を○、それ以外を×とした。
(2)発泡セル数
走査型電子顕微鏡により撮影した写真を用いて、1平方ミリメートル四方の中にある発泡セルの数から1平方センチメートル当たりのセル数を算出し、さらに2分の3乗して、1立方センチメートル当たりの発泡セル数を求めた。発泡セル数が106[個/cm3]以上を○、それ以外を×とした。
【0023】
実施例1
(A)ポリプロピレン(出光石油化学(株)製、F−300SP(商品名))99.0重量%、(B)ゾル−ゲル転移を生じる化合物(新日本理化(株)製、ゲルオールMD(商品名))1.0重量%をヘンシェルミキサーにて混合攪拌した後、230℃の温度下で押出機により溶融混練し、ストランドカットにてペレットを得た。
このペレットを、(株)JSW製、180t−MuCell射出成形機を使用し、窒素ガスを用いて、発泡成形温度を230℃、金型温度を40℃で、170×20×4mmのダンベル形状に射出発泡成形した。この発泡方法は、超臨界状の窒素を含んだ樹脂組成物を、金型内に射出充填することで、減圧、かつ冷却させて発泡させる方法であった。
発泡セル形態は、ダンベル中央部のTD断面を走査型電子顕微鏡で観察して確認した。
発泡セル径=12[μm]:判定○
発泡セル数=1×108[個/cm3]:判定○
【0024】
実施例2
実施例1において、ポリプロピレンをポリスチレン(出光石油化学(株)製、HH3101(商品名))に変えた以外は、実施例1と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=26[μm]:判定○
発泡セル数=1×107[個/cm3]:判定○
【0025】
実施例3
実施例1において、ポリプロピレンを高密度ポリエチレン(出光石油化学(株)製、110J(商品名))に変えた以外は、実施例1と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=18[μm]:判定○
発泡セル数=3×107[個/cm3]:判定○
【0026】
実施例4
実施例1において、ポリプロピレンをポリカーボネート(出光石油化学(株)製、FN1500(商品名))に変え、成形温度を230℃から290℃に変えた以外は、実施例1と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=15[μm]:判定○
発泡セル数=6×107[個/cm3]:判定○
【0027】
比較例1
実施例1において、ゲルオールMDを用いなかった以外は、実施例1と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=150[μm]:判定×
発泡セル数=6×104[個/cm3]:判定×
【0028】
比較例2
実施例2において、ゲルオールMDを用いなかった以外は、実施例2と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=120[μm]:判定×
発泡セル数=1×105[個/cm3]:判定×
【0029】
比較例3
実施例3において、ゲルオールMDを用いなかった以外は、実施例3と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=220[μm]:判定×
発泡セル数=2×104[個/cm3]:判定×
【0030】
比較例4
実施例4において、ゲルオールMDを用いなかった以外は、実施例4と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=160[μm]:判定×
発泡セル数=5×104[個/cm3]:判定×
【0031】
比較例5
実施例1において、ゲルオールMDを、常温〜発泡成形温度(230℃)でゾル−ゲル転移を生じない核剤(アデカ・アーガス化学(株)製、NA11(商品名))に変えた以外は、実施例1と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=140[μm]:判定×
発泡セル数=7×104[個/cm3]:判定×
【0032】
比較例6
実施例1において、ゲルオールMDを、常温〜発泡成形温度(230℃)でゾル−ゲル転移を生じない核剤(理研ビタミン(株)製、リケマールS100A(商品名))に変えた以外は、実施例1と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=160[μm]:判定×
発泡セル数=4×104[個/cm3]:判定×
【0033】
比較例7
実施例1において、ゲルオールMDを、常温〜発泡成形温度(230℃)でゾル−ゲル転移を生じない核剤(浅田製粉(株)製、タルクMMR(商品名))に変えた以外は、実施例1と同様に射出発泡成形し、成形品を評価した。
発泡セル径=150[μm]:判定×
発泡セル数=7×104[個/cm3]:判定×
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、微細な発泡セルを持つ発泡成形品及び発泡成形方法を提供することができる。
Claims (7)
- (A)熱可塑性樹脂99.9〜80重量%、(B)常温(23℃)〜成形温度の温度範囲でゾル−ゲル転移を生じる化合物0.1〜20重量%を含む樹脂組成物を発泡成形してなる成形品。
- 前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィンである請求項1に記載の発泡成形品。
- 前記化合物(B)が、ジベンジリデンソルビトール系化合物である請求項1又は2に記載の発泡成形品。
- (A)熱可塑性樹脂99.9〜80重量%、(B)常温(23℃)〜成形温度の温度範囲でゾル−ゲル転移を生じる化合物0.1〜20重量%を含む樹脂組成物100重量部に、化学発泡剤又は物理発泡剤0.01〜10重量部を配合し、前記樹脂組成物を溶融し、減圧かつ冷却させることを含む発泡成形方法。
- 前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィンである請求項4に記載の発泡成形方法。
- 前記化合物(B)が、ジベンジリデンソルビトール系化合物である請求項4又は5に記載の発泡成形方法。
- 前記物理発泡剤が、超臨界状流体である請求項4〜6のいずれか一項に記載の発泡成形方法。
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