JP2004306799A - 車両用シートの支持構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】前列シート後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部を形成し、この凹設部後端を車室外に開放すると共に、凹設部を形成する車室側壁部にリヤサイドフレームを設け、リヤサイドフレームと対応した車室側壁部に後列シートを取付け支持することにより、車両の前後長のコンパクト化と後列シート(特に3列目シート)の配設とが両立でき、車両の前後長さを短く設定しても凹設部の形成により上下寸法を確保することができ、しかも、シートの支持剛性と側突時の安全性確保との両立を図ることができる車両用シートの支持構造の提供を目的とする。
【解決手段】複数列のシート13,14,15がフロアパネル4上に前後に配設された車両において、前列シートの後方のリヤフロアパネル5を下方に凹設して凹設部6が形成され、上記凹設部6の後端が車室外方向に開放されると共に、上記凹設部6を形成する車室側壁部9には、車両の前後方向に延びる一対のリヤサイドフレーム11が設けられ、上記リヤサイドフレーム11と対応した車室側壁部9に後列シート15を取付け支持したことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】複数列のシート13,14,15がフロアパネル4上に前後に配設された車両において、前列シートの後方のリヤフロアパネル5を下方に凹設して凹設部6が形成され、上記凹設部6の後端が車室外方向に開放されると共に、上記凹設部6を形成する車室側壁部9には、車両の前後方向に延びる一対のリヤサイドフレーム11が設けられ、上記リヤサイドフレーム11と対応した車室側壁部9に後列シート15を取付け支持したことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数列のシートがフロアパネル上部に前後方向に配設されたような車両用シートの支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数列のシートをフロアパネル上に前後に配設した車両としては次のような構造のものがある。
すなわち、フロアパネル上部に1列目シートと2列目シートと3列目シートとを前後方向に離間配設すると共に、3列目シートのシートクッション後端部と対応する位置からリヤ側に向けてシート格納凹部を凹設し、3列目シートのシートバックを一旦、シートクッション上に折り畳んだ後に、シートバックおよびシートクッションを一体的に後方へ反転させて上述のシート格納凹部に格納すべく構成したものである(特許文献1参照)。
【0003】
この従来構造においては、乗員の乗り心地を考慮して前後列のシートの前後寸法を確保して各シートを配設すると共に、3列目シートの格納のために上述のシート格納凹部が形成されているので、車両の前後長が必然的に長くなり、車両の前後長のコンパクト化を図ることが困難であった。
【0004】
また次のような構成の車両も知られている。つまり、車体フロアの後部にフロア基準面より一段低く凹設された荷室フロアパン(いわゆる低床タイプのリヤフロア)を形成し、荷室フロアパン上の荷室をリヤハッチバックドアとテールゲートとで開閉すべく構成すると共に、テールゲートを開放して、このテールゲートにより荷室と路面とを掛け渡した時、開放状態のテールゲート上面がスロープ部材となって、このスロープ部材から上述の荷室に車椅子を乗り込ませるように構成したものである(特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−198697号公報
【特許文献2】
特開2001−47927号公報。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来構造においては、荷室フロアパン上の荷室が車椅子専用のスペースに設定されているので、荷室の充分な活用が困難で、汎用性が低い問題点があった。
【0007】
何れにしても、車両の全長が限られている寸法の条件下において、乗員の乗り心地を確保しつつ、複数列シート、特に3列のシートを効率的に配設することが難しい問題点があった。
【0008】
そこで、この発明は、前列シート後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部を形成し、この凹設部後端を車室外に開放すると共に、凹設部を形成する車室側壁部にリヤサイドフレームを設け、リヤサイドフレームと対応した車室側壁部に後列シートを取付け支持することにより、車両の前後長のコンパクト化と後列シート(特に3列目シート)の配設とが両立でき、車両の前後長さを短く設定しても凹設部の形成により上下寸法を確保することができ、しかも、シートの支持剛性と側突時の安全性確保との両立を図ることができる車両用シートの支持構造の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明による車両用シートの支持構造は、複数列のシートがフロアパネル上に前後に配設された車両において、前列シートの後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部が形成され、上記凹設部の後端が車室外方向に開放されると共に、上記凹設部を形成する車室側壁部には、車両の前後方向に延びる一対のリヤサイドフレームが設けられ、上記リヤサイドフレームと対応した車室側壁部に後列シートを取付け支持したものである。
【0010】
上記構成の複数列は3列に設定してもよく、後列シートは3列目シートに設定してもよい。
上記構成によれば、前列シートの後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部を形成し、この凹設部を形成する車室側壁部に後列シートを取付け支持したので、車両の前後長のコンパクト化と後列シートの配設とが両立でき、車両の前後長さを短く設定しても上記凹設部の形成により上下寸法が確保できるので、後列シートの乗員の乗り心地を確保することができる。
【0011】
しかも、車体剛性部材としてのリヤサイドフレームと対応する車室側壁部に後列シートを取付け支持したので、後列シートの支持剛性の確保と側突時の安全性確保との両立を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記リヤサイドフレームはフロアパネルに沿って車両の前後方向に延びると共に、上記凹設部より後方で上方にキックアップしたキックアップ部を備え、該キックアップ部に上記後列シートを取付け支持したものである。
【0013】
上記構成によれば、上述のキックアップ部は剛性が高いので、後列シートの支持剛性がさらに向上し、また後列シートを補強するための専用のレインフォースメントを別途設ける必要がなく、適切な位置に存在するキックアップ部を有効利用して、後列シートを取付け支持することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記後列シートは凹設部の上部空間に引出される使用状態と、上記車室側壁部に格納される格納状態とを択一的に選択すべく構成されたものである。
【0015】
上記構成によれば、後列シートを凹設部の上部空間に引出した時には、該後列シートを座席として使用することができ、この後列シートを車室側壁部に格納した時には、凹設部および上部空間を荷室として使用することができ、この結果、ニーズに応じて座席と荷室との使い分けができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記後列シートは車室側壁部に片持ち構造にて支持されたものである。
上記構成の後列シートは、凹設部の車室側壁部の左右両側に一対設けて、これら左右一対の各シートを車室側壁部から片持ち支持で互いに支持させてもよい。
上記構成によれば、後列シートを車室側壁部に片持ち支持させるので、後列シートのコンパクト化を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記後列シートの使用状態時に該後列シートの凹設部の上部空間に引出された側を支持する支持部材を備えたものである。
上記構成の支持部材はシートステーにより構成してもよい。
上記構成によれば、片持ち支持により後列シートのコンパクト化を図りつつ、支持部材で後列シートの引出された側を支持するので、該後列シートの使用時の支持剛性を確保することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記車室側壁部には後列シートを格納するため車外方向に凹設された段部が形成され、上記段部の下方に上記キックアップ部が近接して車両前後方向に配設されたものである。
【0019】
上記構成によれば、キックアップ部により段部の剛性向上および後列シートの支持剛性向上を図りつつ、後列シートは上述の凹設された段部に格納されるので、この後列シートの格納時において凹設部および上部空間には広い荷室スペースが形成され、この荷室スペースを有効利用することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記後列シートはシートクッションとシートバックとを備え、上記シートクッションが車室側壁部に支持されたものである。
上記構成によれば、後列シートの支持の簡素化を図りつつ、シートバックにより乗員着座時の乗り心地の向上を図ることができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記リヤサイドフレームのキックアップ部は、後列シートの使用時におけるシートクッション位置高さにおいて車両の前後方向に延設されたものである。
【0022】
上記構成によれば、後列シート使用時のシートクッション位置高さに延設されたキックアップ部で側突に対する剛性向上を図ることができ、この結果、側突時の乗員安全性をさらに向上させることができる。。
【0023】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用シートの支持構造を示すが、まず図1、図2、図3を参照して車体構造について説明する。
【0024】
エンジンルーム1と車室2とを前後に仕切るダッシュロアパネル3を設け、このダッシュロアパネル3の下端には後方に延びるフロアパネル4を接続している。
このフロアパネル4はキックアップ部4aと、このキックアップ部4aから後方に延びるリヤフロアパネル5とを含み、このリヤフロアパネル5が下方に凹設されて凹設部6を形成している。
【0025】
一方、上述のダッシュロアパネル3の前方にはエンジンルーム1内の左右を前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム7を設け、このフロントサイドフレーム7をダッシュロアパネル3に沿って下方かつ後方に延設すると共に、このフロントサイドフレーム7の後端部にはフロアフレーム8を接続している。
【0026】
上述の凹設部6は図3に示すように左右の車室側壁部9,9により形成され、こらの車室側壁部9,9には後述する3列目シートを格納するために車外方向に凹設された段部10,10が形成されている。
【0027】
上述の凹設部6を形成する車室側壁部9において段部10の下端水平部10a外面には車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム11,11が設けられ、断面略逆ハット形状のリヤサイドフレーム11と車室側壁部9および段部10との間には同方向に延びる閉断面が形成されている。
【0028】
これらのリヤサイドフレーム11,11はリヤフロアパネル5に沿って車両の前後方向に延び、その前端部はフロアフレーム8に接続されている。
また上述のリヤサイドフレーム11は図1に示すように凹設部6の前部より後方で上方にキックアップしたキックアップ部12を備え、このキックアップ部12が図1、図3に示すように段部10の下方に近接して車両の前後方向に配設されている。
【0029】
ところで、上述のフロアパネル4およびリヤフロアパネル5の上部には図1、図2に示すように、複数列のシートつまり1列目シート13と2列目シート14と3列目シート15とが前後方向に離間して配設されている。
【0030】
これらの各シート13,14,14はバケット・シート(bucket seat)に設定されているが、2列目シート14についてはベンチ・シートを採用することができる。
【0031】
1列目シート13はシートクッション13Cと、シートバック13Bと、ヘッドレスト13Hとを備え、この実施例では右側の1列目シートがドライバーズシートに左側の1列目シートがパッセンジャーズシートにそれぞれ設定されている。
【0032】
2列目シート14はシートクッション14Cと、シートバック14Bと、ヘッドレスト14Hとを備え、この2列目シート14はキックアップ部4a後方のフロアパネル4よりも一段高い部分に配設されている。
【0033】
左右一対の各3列目シート15,15はそれぞれシートクッション15Cと、シートバック15Bと、ヘッドレスト15Hとを備え、上述の凹設部6の上部空間16においてリヤサイドフレーム11のキックアップ部12と対応した車室側壁部9における段部10の下端水平部10aに取付けられ、この下端水平部10aにそれぞれ片持ち支持されている。
【0034】
ここで、上述の凹設部6は前列シート(1列目シート13参照)の取付け面より下方に凹設されたものであって、この凹設部6の内部には図1に示すように3列目シート15の乗員の足置きスペース17が形成されている。
【0035】
図3に示すように、凹設部6の車外側にはサイレンサ18およびテールパイプ19等の排気管が配設され、この排気管と凹設部6との間には断熱部材としてのインシュレータ20が設けられている。
【0036】
この実施例では上述のインシュレータ20の断面構造を略Z字状に形成し、インシュレータ20の上端折曲げ部をリヤサイドフレーム11におけるキックアップ部12下面にボルト、ナットまたはビス等の取付け部材を用いて接続し、インシュレータ20の下端折曲げ部を凹設部6の下面コーナ部にボルト、ナットまたはビス等の取付け部材を用いて接続し、凹設部6の車外側面つまり車室側壁部9の外面と、インシュレータ20との間には所定の空間部21を形成し、足置きスペース17の熱害を防止すべく構成している。
【0037】
図3、図4、図5に示すように凹設部6の後方にはリヤエンドパネルを設けることなく、該凹設部6の後方がルーフ部22まで車室外方向に一体的に開放された開口部23を形成している。
【0038】
そして、この開口部23を開閉可能に覆うリヤゲートを設けるが、図3、図4、図5の実施例においては、このリヤゲートは凹設部6を覆って上下方向に回動する下部リヤゲート24と、凹設部6の上方の開口部23a(図3参照)を覆って左右方向に開閉する単一の上部リヤゲート25とを備えている。
【0039】
下部リヤゲート24は車室側壁部9の外面下部に固定されたブラケット26の支点部27に開閉可能に枢支されると共に、図5に示すように該下部リヤゲート24の車幅方向両端部にはロック部材28,28を設けている。
【0040】
これらのロック部材28,28はリヤバンパ29の対応部に設けられたストライカ30により係合されるものである。
この下部リヤゲーム24を後方かつ下方へ回動して、該リヤゲート24で凹設部6と路面とを掛け渡した時、開放状態の下部リヤゲート24上面がスロープ部材31に設定される。すなわち、スロープ部材31を兼ねる下部リヤゲート24が凹設部6の後端に設けられ、この下部リヤゲート24は車両側に折り畳み可能に設けられたものである。
【0041】
図1に示すように、この下部リヤゲート24で凹設部6を覆った状態下において、該下部リヤゲート24の前面には下部リヤゲート24の前面上部を支点として回動可能なランプ(ramp)部材32が設けられており、図1に仮想線で示すように、下部リヤゲート24で凹設部6と路面とを掛け渡した時、上述のランプ部材32を後方に反転回動させ、このランプ部材32の遊端を路面に接地して、路面と凹設部6との間に形成される傾斜角度を緩斜角に設定すべく構成している。
【0042】
一方、上部リヤゲート25は車体後面に上下一対のヒンジ部材33,33(図面では概略的に示したが、ボディ側ヒンジブラケットと、ゲート側ヒンジブラケットと、ヒンジピンとを備えたヒンジ部材)を介して開閉可能に枢支されており、この上部リヤゲート25の遊端側中間部にはロック部材34が設けられている。
【0043】
このロック部材34は開口部23の対応位置に設けられたボディ側のストライカ(図示せず)により係合されるものであって、上部リヤゲート25のアウタパネルおよびインナパネルにはロック部材34のロック状態を車体側および車内側から解除するためのアウタハンドル35(図4参照)およびインナハンドル36(図5参照)を設けている。
【0044】
図6は図4のA−A線矢視断面図であって、下部リヤゲート24と上部リヤゲート25との対向部分には内外2重構造のシール部材37,38,39,40が設けられおり、これら上下のリヤゲート25,24で開口部23を覆った時、適切なシール性を確保すべく構成している。
【0045】
要するに、図3〜図6のリヤゲートは、凹設部6を覆う部分(下部リヤゲート24参照)と、その上方の開口部23a(図3参照)を覆う部分(上部リヤゲート25参照)とに上下に分割され、各リヤゲート24,25がそれぞれ独立して開閉可能に構成されたものであり、下部リヤゲート24のみの開閉と、上部リヤゲート25のみの開閉と、両リヤゲート24,25の開閉ができるように構成している。
【0046】
また、図7に示すように、下部リヤゲート24のリヤ側面にはプロテクタ24Pを接合して、この下部リヤゲート24が直接路面に接地するのを防止し、プロテクタ24Pで下部リヤゲート24を保護すべく構成してもよい。
【0047】
リヤゲートの構造は図3〜図7の構成に代えて、図8〜図10に示す構造または図11、図12に示す構造を採用してもよい。
図8〜図10に示すリヤゲートは、凹設部6を覆って上下方向に回動する下部リヤゲート24と、凹設部6の上方の開口部23a(図3参照)を覆う左右一対の観音開き構造の上部リヤゲート41,42とを備えたものである。
【0048】
左右一対の観音開き構造の上部リヤゲート41,42は図9に示すように車体後面に上下一対のヒンジ部材33,33を介して開閉可能に枢支され、これらの各上部リヤゲート41,42の遊端側上下にはロック部材43,44がそれぞれ設けられている。
【0049】
上側のロック部材43はルーフ部22の後端部対応位置に設けられたボディ側のストライカ45により係合され、下側のロック部材44は下部リヤゲート24の対応位置に設けられたストライカ46により係合される。
【0050】
図10は図8のB−B線矢視断面図であって、左側の上部リヤゲート41と右側の上部リヤゲート42との対向部分には内外2重構造のシール部材47,48,49,50が設けられており、これら左右の上部リヤゲート41,42で開口部23を覆った時、適切なシール性を確保すべく構成している。
【0051】
また左右一対の観音開き構造の上部リヤゲート41,42の少なくとも車外側にはロックを解除するためのアウタハンドル51,52(図8参照)が設けられている。
なお、下部リヤゲート24についてはストライカ46が設けられた構成以外は図3〜図6で示した下部リヤゲート24と同様に構成されている。
【0052】
要するに、図8〜図10のリヤゲートは、凹設部6を覆う部分(下部リヤゲート24参照)と、その上方の開口部23a(図3参照)を覆う部分(上部リヤゲート41,42参照)とに上下に分割され、各リヤゲート24,41,42がそれぞれ独立して開閉可能に構成されたものであり、下部リヤゲート24のみにの開閉と、左側の上部リヤゲート41のみの開閉と、右側の上部リヤゲート42のみの開閉と、何れか2つのリヤゲートのみの開閉と、全リヤゲート24,41,42の開閉ができるように構成している。
なお、図8〜図10において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0053】
図11、図12に示すリヤゲートは、凹設部6と、この凹設部6の上方の開口部23a(図3参照)とを一体的に覆う左右一対の観音開き構造の左右のリヤゲート53,54を備えたものである。
【0054】
左右一対の観音開き構造の左右のリヤゲート53,54は図12に示すように車体後面に上下一対のヒンジ部材33,33を介して開閉可能に枢支され、これらの各リヤゲート53,54の遊端側上下にはロック部材43,44がそれぞれ設けられている。
【0055】
上側のロック部材43はルーフ部22の後端部対応位置に設けられたボディ側のストライカ45により係合され、下側のロック部材44は凹設部6の後端部対応位置に設けられたボディ側のストライカ55により係合される。
また左右一対の観音開き構造のリヤゲート53,54の少なくとも車外側にはロックを解除するためのアウタハンドル56,57(図11参照)が設けられている。
【0056】
要するに、図11、図12のリヤゲートは、複数に分割され、分割された各リヤゲート53,54がそれぞれ独立して開閉可能に構成されたものであり、左側のリヤゲート53のみの開閉と、右側のリヤゲート54のみの開閉と、両リヤゲート53,54の開閉ができるように構成している。
なお、図11、図12において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0057】
ところで、図1、図2、図3で示した後列シートとしての3列目シート15は図1、図3に示すように凹設部6の上部空間16に引出される使用状態と、図13、図14に示すように、車室側壁部9におけるリヤサイドフレーム11上部の段部10に格納される格納状態とに択一的に選択すべく構成されている。
【0058】
しかも、左右の3列目シート15,15は左右独立して使用状態と格納状態とが選択できるもので、一方の3列目シート15のみを使用状態と格納状態とに設定することもでき、左右両方の3列目シート15,15を共に使用状態と格納状態とに設定することもできる。
【0059】
図13、図14に示すように左右双方の3列目シート15を上述の段部10に格納した場合には、格納状態の3列目シート15と車室側壁部9とがほぼフラットまたは3列目シート15が車室側壁部9より若干車外側に位置する状態となって、凹設部6の上部に広い荷室スペースが形成されるので、上部空間16に荷物を搭載することができ、また図13、図14に示すように凹設部6には車椅子100を乗り込ませることもできる。一方、図3に示すように、左右一対の3列目シート15,15の両方を使用状態に設定すると、これら使用状態の両シート15,15により凹設部6の上方を車幅方向に仕切るように延設され、左右のシートクッション15C,15Cにて左右方向に連続したクッション面が形成されるように構成している。
【0060】
次に図15、図16を参照して3列目シート15の支持構造について説明する。但し、左右の3列目シート15の支持構造は左右ほぼ対称に構成されているので、ここでは右側の3列目シート15の支持構造について説明する。
【0061】
上述の3列目シート15は方形枠状のシートクッションフレーム60と、このシートクッションフレーム60にリクライニングナックル61を介して前倒可能に設けられた方形枠状のシートバックフレーム62と、シートクッションフレーム60の車内側片内方に接合された突片63,63に対して起伏可能に枢支された凹状のシートステー64とを備えている。ここで、上述の各フレーム60,62およびシートステー64は金属製パイプ部材にて構成されている。
【0062】
上述のシートクッションフレーム60の前後両片外面には可動側のブラケット65,65を接合固定する一方、前述の段部10における下端水平部10aには固定側のブラケット66,66をボルトアップしている。
【0063】
そして、前後一対の固定側のブラケット66,66における立上り片に支軸67,67を介して前後一対の可動側のブラケット65,65を枢支させている。つまり、シートクッションフレーム60を車室側壁部9の段部10における下端水平部10aに片持ち構造にて支持したものである。
【0064】
またシートクッションフレーム60の車外側片下方に接合された突片68と、凹状のシートステー64に設けられた横棧64aとの間にリターンスプリング69を張架している。
【0065】
さらにシートバックフレーム62の下片における車内側背面にはストライカ70を突設する一方、上述のシートステー64の下片下面には前後一対のストライカ71,71を突設している。
【0066】
上述のストライカ70はシート格納時において段部10側に設けられたロック部材72でロックされ、シートステー64側のストライカ71,71はシート使用時において凹設部6側に設けられたロック部材73,73でロックされる。
【0067】
また段部10の上端水平部10bにはロック部材72によるロックを解除するロック解除レバー74を設けると共に、段部10の所定部にはロック部材73,73によるロックを同時に解除するロック解除レバー75を設けている。
【0068】
図15に示す使用状態の3列目シート15を図16に示すように格納する場合には、まずロック解除レバー75を操作してロック部材73,73によるストライカ71,71のロックを解除すると共に、シートステー64およびシートバックフレーム62をシートクッションフレーム60側へ折り畳む。
【0069】
その後、支軸67を支点として各要素60,62,64を一体的に段部10側へ上方回動し、シートバックフレーム62側のストライカ70をロック部材72でロックさせると、3列目シート15は図16に示すように格納される。
【0070】
逆に図16に示す格納状態の3列目シート15を図15に示すように使用状態と成す場合には、まずロック解除レバー74を操作してロック部材72によるストライカ70のロックを解除した後に、支軸67を支点として各要素60,62,64を一体的に段部10から凹設部6の上部空間16に引出す。
【0071】
次に、リターンスプリング69の付勢力に抗してシートステー64を下方へ引き起こし、その下部のストライカ71,71を凹設部6側のロック部材73,73にてロックし、このシートステー64によるシート支持と、ロック部材73によるロック構造とで、シート支持剛性の向上を図る。
【0072】
次に、リクライニングナックル61を介してシートバックフレーム62を着座状態に引き起こすと、3列目シート15は図15に示すように使用状態となり、この3列目シート15の使用状態時において、シートクッション15C、シートクッションフレーム60は図3、図15に示すように、リヤサイドフレーム11のキックアップ部12とほぼ同等の高さ位置となる。
【0073】
換言すれば、リヤサイドフレーム11のキックアップ部12は3列目シート15の使用時におけるシートクッション15C、シートクッションフレーム60の高さ位置とほぼ同等の高さ位置において車両の前後方向に延設された車体剛性部材である。
【0074】
なお、図中、76はステアリングホイール、77は前輪、78は後輪、79,80は凹設部6下部において車幅方向に延びるクロスメンバ、81はトーションビーム式のリヤサスペンションである。また図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示すものである。
【0075】
このように上記実施例の車両用シートの支持構造は、複数列のシート13,14,15がフロアパネル4上部に前後方向に配設された車両において、前列シートの後方のリヤフロアパネル5を下方に凹設して凹設部6が形成され、上記凹設部6の後端が車室外方向に開放されると共に、上記凹設部6を形成する車室側壁部9には、車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム11,11が設けられ、上記リヤサイドフレーム11,11と対応した車室側壁部9に後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持したものである。
【0076】
この構成によれば、前列シートの後方のリヤフロアパネル5を下方に凹設して凹設部6を形成し、この凹設部6を形成する車室側壁部9に後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持したので、車両の前後長のコンパクト化と後列シート(3列目シート15参照)の配設とが両立でき、車両の前後長さを短く設定しても上記凹設部6の形成により上下寸法が確保できるので、後列シート(3列目シート15参照)の乗員の乗り心地を確保することができる。
【0077】
しかも、車体剛性部材としてのリヤサイドフレーム11と対応する車室側壁部9に後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持したので、後列シート(3列目シート15参照)の支持剛性の確保と側突時の安全性確保との両立を図ることができる。
【0078】
また、上記リヤサイドフレーム11はフロアパネル4に沿って車両の前後方向に延びると共に、上記凹設部6より後方で上方にキックアップしたキックアップ部12を備え、該キックアップ部12に上記後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持したものである。
【0079】
この構成によれば、上述のキックアップ部12は剛性が高いので、後列シート(3列目シート15参照)の支持剛性がさらに向上し、また後列シート(3列目シート15参照)を補強するための専用のレインフォースメントを別途設ける必要がなく、適切な位置に存在するキックアップ部12を有効利用して、後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持することができる。
【0080】
さらに、上記後列シート(3列目シート15参照)は凹設部6の上部空間16に引出される使用状態(図3参照)と、上記車室側壁部9に格納される格納状態(図14参照)とを択一的に選択すべく構成されたものである。
【0081】
この構成によれば、後列シート(3列目シート15参照)を凹設部6の上部空間16に引出した時には、該後列シート(3列目シート15参照)を座席として使用することができ、この後列シート(3列目シート15参照)を車室側壁部9に格納した時には、凹設部6および上部空間16を荷室として使用することができ、この結果、ニーズに応じて座席と荷室との使い分けができる。
【0082】
加えて、上記後列シート(3列目シート15参照)は車室側壁部9に片持ち構造にて支持されたものである。
詳しくは、この後列シート(3列目シート15参照)は、凹設部6の車室側壁部9の左右両側に一対設けられており、これら左右一対の各シート15,15を車室側壁部9から片持ち支持で互いに支持させたものである。
この構成によれば、後列シート(3列目シート15参照)を車室側壁部9に片持ち支持させるので、後列シート(3列目シート15参照)のコンパクト化を図ることができる。
【0083】
また、上記後列シート(3列目シート15参照)の使用状態時に該後列シートの凹設部6の上部空間16に引出された側を支持する支持部材(シートステー64参照)を備えたものである。
【0084】
この構成によれば、片持ち支持により後列シート(3列目シート15参照)のコンパクト化を図りつつ、支持部材(シートステー64参照)で後列シート(3列目シート15参照)の引出された側を支持するので、該後列シートの使用時の支持剛性を確保することができる。
【0085】
さらに、上記車室側壁部9には後列シート(3列目シート15参照)を格納するため車外方向に凹設された段部10が形成され、上記段部10の下方に上記キックアップ部12が近接して車両前後方向に配設されたものである。
【0086】
この構成によれば、キックアップ部12により段部10の剛性向上および後列シート(3列目シート15参照)の支持剛性向上を図りつつ、後列シート(3列目シート15参照)は上述の凹設された段部10に格納されるので、この後列シート(3列目シート15参照)の格納時において凹設部6および上部空間16には広い荷室スペースが形成され、この荷室スペースを有効利用することができる。
【0087】
加えて、上記後列シート(3列目シート15参照)はシートクッション15Cとシートバック15Bとを備え、上記シートクッション15Cが車室側壁部9に支持されたものである。
この構成によれば、後列シート(3列目シート15参照)の支持の簡素化を図りつつ、シートバック15Bにより乗員着座時の乗り心地の向上を図ることができる。
【0088】
さらに、上記リヤサイドフレーム11のキックアップ部12は、後列シート(3列目シート15参照)の使用時におけるシートクッション15C位置高さにおいて車両の前後方向に延設されたものである。
【0089】
この構成によれば、後列シート(3列目シート15参照)使用時のシートクッション15C位置高さに延設された剛性が高いキックアップ部12で側突に対する剛性向上を図ることができ、この結果、側突時の乗員安全性をさらに向上させることができる。。
【0090】
図17、図18は車両用シートの支持構造の他の実施例を示し、図15、図16で示した実施例においては、3列目シート15をその格納時に、段部10に格納すべく構成したが、図17、図18に示すこの実施例においては、3列目シート15をその格納時に凹設部6を構成する車室側壁部9に沿って格納すべく構成したものである。
【0091】
図17、図18に示すこの実施例では、固定側のブラケット66,66における立上り片に支軸67,67を介して直接シートクッションフレーム60の基端側を枢支すると共に、このシートクッションフレーム60の後片にストライカ70を取付け、このストライカ70を車室側壁部9の対応位置に設けたロック部材72でロックすべく構成している。
【0092】
図17に示す使用状態の3列目シート15を図18に示すように格納する場合には、まずロック解除レバー75を操作してロック部材73,73によるストライカ71,71のロックを解除すると共に、シートステー64およびシートバックフレーム62をシートクッションフレーム60側へ折り畳む。
【0093】
その後、支軸67を支点として各要素60,62,64を一体的に車室側壁部9側へ下方回動し、シートクッションフレーム60側のストライカ70をロック部材72でロックさせると、3列目シート15は図18に示すように格納される。
【0094】
逆に図18に示す格納状態の3列目シート15を図17に示すように使用状態と成す場合には、まずロック解除レバー74を操作してロック部材72によるストライカ70のロックを解除した後に、支軸67を支点として各要素60,62,64を一体的に車室側壁部9から凹設部6の上部空間16に引出す。
【0095】
次に、シートステー64を下方へ引き起こし、その下部のストライカ71,71を凹設部6側のロック部材73,73にてロックし、このシートステー64によるシート支持と、ロック部材73によるロック構造とで、シート支持剛性の向上を図る。
【0096】
次に、リクライニングナックル61を介してシートバックフレーム62を着座状態に引き起こすと、3列目シート15は図17に示すように使用状態となり、この3列目シート15の使用状態時において、シートクッション15C、シートクッションフレーム60は図3、図17に示すように、リヤサイドフレーム11のキックアップ部12とほぼ同等の高さ位置となる。
【0097】
図17、図18に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図17、図18において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0098】
図19、図20は車両用シートの支持構造のさらに他の実施例を示し、この実施例においてはシートクッションフレーム60の後片にロック部材72を設ける一方、車室側壁部9の対応位置にストライカ70を設け、ロック解除レバー(図示せず)は3列目シート15側(望ましくはロック部材72の近傍位置)に設けるように構成したものである。
【0099】
このように構成すると、ロック解除レバー(図示せず)とロック部材72との間に設けられる操作ワイヤの全長が短くなり、ワイヤ配設構造の簡略化を図ることができる。
【0100】
図19、図20に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については図17、図18で示した先の実施例とほぼ同様であるから、図19、図20において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0101】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の後列シートは、実施例の3列目シート15に対応し、
以下同様に、
支持部材は、シートステー64に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0102】
【発明の効果】
この発明によれば、前列シート後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部を形成し、この凹設部後端を車室外に開放すると共に、凹設部を形成する車室側壁部にリヤサイドフレームを設け、リヤサイドフレームと対応した車室側壁部に後列シートを取付け支持したので、車両の前後長のコンパクト化と後列シート(特に3列目シート)の配設とが両立でき、車両の前後長さを短く設定しても凹設部の形成により上下寸法を確保することができ、しかも、シートの支持剛性と側突時の安全性確保との両立を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両用シートの支持構造を備えた車両の側面図。
【図2】シートの配設構造を示す平面図。
【図3】リヤゲートを除去した状態で示す車両の背面図。
【図4】リヤゲート構造を示す斜視図。
【図5】リヤゲート開放時の斜視図。
【図6】図4のA−A線矢視断面図。
【図7】下部リヤゲートの他の実施例を示す断面図。
【図8】リヤゲート構造の他の実施例を示す斜視図。
【図9】リヤゲート開放時の斜視図。
【図10】図8のB−B線矢視断面図。
【図11】リヤゲート構造のさらに他の実施例を示す斜視図。
【図12】リヤゲート開放時の斜視図。
【図13】車椅子搭載時の側面図。
【図14】車椅子搭載時の背面図。
【図15】後列シートの使用状態を示す斜視図。
【図16】後列シートの格納状態を示す斜視図。
【図17】後列シート支持構造の他の実施例を示す斜視図。
【図18】後列シートの格納状態を示す斜視図。
【図19】後列シート支持構造のさらに他の実施例を示す斜視図。
【図20】後列シートの格納状態を示す斜視図。
【符号の説明】
4…フロアパネル
5…リヤフロアパネル
6…凹設部
9…車室側壁部
10…段部
11…リヤサイドフレーム
12…キックアップ部
13,14…シート
15…3列目シート(後列シート)
15B…シートバック
15C…シートクッション
16…上部空間
64…シートステー(支持部材)
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数列のシートがフロアパネル上部に前後方向に配設されたような車両用シートの支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数列のシートをフロアパネル上に前後に配設した車両としては次のような構造のものがある。
すなわち、フロアパネル上部に1列目シートと2列目シートと3列目シートとを前後方向に離間配設すると共に、3列目シートのシートクッション後端部と対応する位置からリヤ側に向けてシート格納凹部を凹設し、3列目シートのシートバックを一旦、シートクッション上に折り畳んだ後に、シートバックおよびシートクッションを一体的に後方へ反転させて上述のシート格納凹部に格納すべく構成したものである(特許文献1参照)。
【0003】
この従来構造においては、乗員の乗り心地を考慮して前後列のシートの前後寸法を確保して各シートを配設すると共に、3列目シートの格納のために上述のシート格納凹部が形成されているので、車両の前後長が必然的に長くなり、車両の前後長のコンパクト化を図ることが困難であった。
【0004】
また次のような構成の車両も知られている。つまり、車体フロアの後部にフロア基準面より一段低く凹設された荷室フロアパン(いわゆる低床タイプのリヤフロア)を形成し、荷室フロアパン上の荷室をリヤハッチバックドアとテールゲートとで開閉すべく構成すると共に、テールゲートを開放して、このテールゲートにより荷室と路面とを掛け渡した時、開放状態のテールゲート上面がスロープ部材となって、このスロープ部材から上述の荷室に車椅子を乗り込ませるように構成したものである(特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−198697号公報
【特許文献2】
特開2001−47927号公報。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来構造においては、荷室フロアパン上の荷室が車椅子専用のスペースに設定されているので、荷室の充分な活用が困難で、汎用性が低い問題点があった。
【0007】
何れにしても、車両の全長が限られている寸法の条件下において、乗員の乗り心地を確保しつつ、複数列シート、特に3列のシートを効率的に配設することが難しい問題点があった。
【0008】
そこで、この発明は、前列シート後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部を形成し、この凹設部後端を車室外に開放すると共に、凹設部を形成する車室側壁部にリヤサイドフレームを設け、リヤサイドフレームと対応した車室側壁部に後列シートを取付け支持することにより、車両の前後長のコンパクト化と後列シート(特に3列目シート)の配設とが両立でき、車両の前後長さを短く設定しても凹設部の形成により上下寸法を確保することができ、しかも、シートの支持剛性と側突時の安全性確保との両立を図ることができる車両用シートの支持構造の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明による車両用シートの支持構造は、複数列のシートがフロアパネル上に前後に配設された車両において、前列シートの後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部が形成され、上記凹設部の後端が車室外方向に開放されると共に、上記凹設部を形成する車室側壁部には、車両の前後方向に延びる一対のリヤサイドフレームが設けられ、上記リヤサイドフレームと対応した車室側壁部に後列シートを取付け支持したものである。
【0010】
上記構成の複数列は3列に設定してもよく、後列シートは3列目シートに設定してもよい。
上記構成によれば、前列シートの後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部を形成し、この凹設部を形成する車室側壁部に後列シートを取付け支持したので、車両の前後長のコンパクト化と後列シートの配設とが両立でき、車両の前後長さを短く設定しても上記凹設部の形成により上下寸法が確保できるので、後列シートの乗員の乗り心地を確保することができる。
【0011】
しかも、車体剛性部材としてのリヤサイドフレームと対応する車室側壁部に後列シートを取付け支持したので、後列シートの支持剛性の確保と側突時の安全性確保との両立を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記リヤサイドフレームはフロアパネルに沿って車両の前後方向に延びると共に、上記凹設部より後方で上方にキックアップしたキックアップ部を備え、該キックアップ部に上記後列シートを取付け支持したものである。
【0013】
上記構成によれば、上述のキックアップ部は剛性が高いので、後列シートの支持剛性がさらに向上し、また後列シートを補強するための専用のレインフォースメントを別途設ける必要がなく、適切な位置に存在するキックアップ部を有効利用して、後列シートを取付け支持することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記後列シートは凹設部の上部空間に引出される使用状態と、上記車室側壁部に格納される格納状態とを択一的に選択すべく構成されたものである。
【0015】
上記構成によれば、後列シートを凹設部の上部空間に引出した時には、該後列シートを座席として使用することができ、この後列シートを車室側壁部に格納した時には、凹設部および上部空間を荷室として使用することができ、この結果、ニーズに応じて座席と荷室との使い分けができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記後列シートは車室側壁部に片持ち構造にて支持されたものである。
上記構成の後列シートは、凹設部の車室側壁部の左右両側に一対設けて、これら左右一対の各シートを車室側壁部から片持ち支持で互いに支持させてもよい。
上記構成によれば、後列シートを車室側壁部に片持ち支持させるので、後列シートのコンパクト化を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記後列シートの使用状態時に該後列シートの凹設部の上部空間に引出された側を支持する支持部材を備えたものである。
上記構成の支持部材はシートステーにより構成してもよい。
上記構成によれば、片持ち支持により後列シートのコンパクト化を図りつつ、支持部材で後列シートの引出された側を支持するので、該後列シートの使用時の支持剛性を確保することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記車室側壁部には後列シートを格納するため車外方向に凹設された段部が形成され、上記段部の下方に上記キックアップ部が近接して車両前後方向に配設されたものである。
【0019】
上記構成によれば、キックアップ部により段部の剛性向上および後列シートの支持剛性向上を図りつつ、後列シートは上述の凹設された段部に格納されるので、この後列シートの格納時において凹設部および上部空間には広い荷室スペースが形成され、この荷室スペースを有効利用することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記後列シートはシートクッションとシートバックとを備え、上記シートクッションが車室側壁部に支持されたものである。
上記構成によれば、後列シートの支持の簡素化を図りつつ、シートバックにより乗員着座時の乗り心地の向上を図ることができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記リヤサイドフレームのキックアップ部は、後列シートの使用時におけるシートクッション位置高さにおいて車両の前後方向に延設されたものである。
【0022】
上記構成によれば、後列シート使用時のシートクッション位置高さに延設されたキックアップ部で側突に対する剛性向上を図ることができ、この結果、側突時の乗員安全性をさらに向上させることができる。。
【0023】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用シートの支持構造を示すが、まず図1、図2、図3を参照して車体構造について説明する。
【0024】
エンジンルーム1と車室2とを前後に仕切るダッシュロアパネル3を設け、このダッシュロアパネル3の下端には後方に延びるフロアパネル4を接続している。
このフロアパネル4はキックアップ部4aと、このキックアップ部4aから後方に延びるリヤフロアパネル5とを含み、このリヤフロアパネル5が下方に凹設されて凹設部6を形成している。
【0025】
一方、上述のダッシュロアパネル3の前方にはエンジンルーム1内の左右を前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム7を設け、このフロントサイドフレーム7をダッシュロアパネル3に沿って下方かつ後方に延設すると共に、このフロントサイドフレーム7の後端部にはフロアフレーム8を接続している。
【0026】
上述の凹設部6は図3に示すように左右の車室側壁部9,9により形成され、こらの車室側壁部9,9には後述する3列目シートを格納するために車外方向に凹設された段部10,10が形成されている。
【0027】
上述の凹設部6を形成する車室側壁部9において段部10の下端水平部10a外面には車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム11,11が設けられ、断面略逆ハット形状のリヤサイドフレーム11と車室側壁部9および段部10との間には同方向に延びる閉断面が形成されている。
【0028】
これらのリヤサイドフレーム11,11はリヤフロアパネル5に沿って車両の前後方向に延び、その前端部はフロアフレーム8に接続されている。
また上述のリヤサイドフレーム11は図1に示すように凹設部6の前部より後方で上方にキックアップしたキックアップ部12を備え、このキックアップ部12が図1、図3に示すように段部10の下方に近接して車両の前後方向に配設されている。
【0029】
ところで、上述のフロアパネル4およびリヤフロアパネル5の上部には図1、図2に示すように、複数列のシートつまり1列目シート13と2列目シート14と3列目シート15とが前後方向に離間して配設されている。
【0030】
これらの各シート13,14,14はバケット・シート(bucket seat)に設定されているが、2列目シート14についてはベンチ・シートを採用することができる。
【0031】
1列目シート13はシートクッション13Cと、シートバック13Bと、ヘッドレスト13Hとを備え、この実施例では右側の1列目シートがドライバーズシートに左側の1列目シートがパッセンジャーズシートにそれぞれ設定されている。
【0032】
2列目シート14はシートクッション14Cと、シートバック14Bと、ヘッドレスト14Hとを備え、この2列目シート14はキックアップ部4a後方のフロアパネル4よりも一段高い部分に配設されている。
【0033】
左右一対の各3列目シート15,15はそれぞれシートクッション15Cと、シートバック15Bと、ヘッドレスト15Hとを備え、上述の凹設部6の上部空間16においてリヤサイドフレーム11のキックアップ部12と対応した車室側壁部9における段部10の下端水平部10aに取付けられ、この下端水平部10aにそれぞれ片持ち支持されている。
【0034】
ここで、上述の凹設部6は前列シート(1列目シート13参照)の取付け面より下方に凹設されたものであって、この凹設部6の内部には図1に示すように3列目シート15の乗員の足置きスペース17が形成されている。
【0035】
図3に示すように、凹設部6の車外側にはサイレンサ18およびテールパイプ19等の排気管が配設され、この排気管と凹設部6との間には断熱部材としてのインシュレータ20が設けられている。
【0036】
この実施例では上述のインシュレータ20の断面構造を略Z字状に形成し、インシュレータ20の上端折曲げ部をリヤサイドフレーム11におけるキックアップ部12下面にボルト、ナットまたはビス等の取付け部材を用いて接続し、インシュレータ20の下端折曲げ部を凹設部6の下面コーナ部にボルト、ナットまたはビス等の取付け部材を用いて接続し、凹設部6の車外側面つまり車室側壁部9の外面と、インシュレータ20との間には所定の空間部21を形成し、足置きスペース17の熱害を防止すべく構成している。
【0037】
図3、図4、図5に示すように凹設部6の後方にはリヤエンドパネルを設けることなく、該凹設部6の後方がルーフ部22まで車室外方向に一体的に開放された開口部23を形成している。
【0038】
そして、この開口部23を開閉可能に覆うリヤゲートを設けるが、図3、図4、図5の実施例においては、このリヤゲートは凹設部6を覆って上下方向に回動する下部リヤゲート24と、凹設部6の上方の開口部23a(図3参照)を覆って左右方向に開閉する単一の上部リヤゲート25とを備えている。
【0039】
下部リヤゲート24は車室側壁部9の外面下部に固定されたブラケット26の支点部27に開閉可能に枢支されると共に、図5に示すように該下部リヤゲート24の車幅方向両端部にはロック部材28,28を設けている。
【0040】
これらのロック部材28,28はリヤバンパ29の対応部に設けられたストライカ30により係合されるものである。
この下部リヤゲーム24を後方かつ下方へ回動して、該リヤゲート24で凹設部6と路面とを掛け渡した時、開放状態の下部リヤゲート24上面がスロープ部材31に設定される。すなわち、スロープ部材31を兼ねる下部リヤゲート24が凹設部6の後端に設けられ、この下部リヤゲート24は車両側に折り畳み可能に設けられたものである。
【0041】
図1に示すように、この下部リヤゲート24で凹設部6を覆った状態下において、該下部リヤゲート24の前面には下部リヤゲート24の前面上部を支点として回動可能なランプ(ramp)部材32が設けられており、図1に仮想線で示すように、下部リヤゲート24で凹設部6と路面とを掛け渡した時、上述のランプ部材32を後方に反転回動させ、このランプ部材32の遊端を路面に接地して、路面と凹設部6との間に形成される傾斜角度を緩斜角に設定すべく構成している。
【0042】
一方、上部リヤゲート25は車体後面に上下一対のヒンジ部材33,33(図面では概略的に示したが、ボディ側ヒンジブラケットと、ゲート側ヒンジブラケットと、ヒンジピンとを備えたヒンジ部材)を介して開閉可能に枢支されており、この上部リヤゲート25の遊端側中間部にはロック部材34が設けられている。
【0043】
このロック部材34は開口部23の対応位置に設けられたボディ側のストライカ(図示せず)により係合されるものであって、上部リヤゲート25のアウタパネルおよびインナパネルにはロック部材34のロック状態を車体側および車内側から解除するためのアウタハンドル35(図4参照)およびインナハンドル36(図5参照)を設けている。
【0044】
図6は図4のA−A線矢視断面図であって、下部リヤゲート24と上部リヤゲート25との対向部分には内外2重構造のシール部材37,38,39,40が設けられおり、これら上下のリヤゲート25,24で開口部23を覆った時、適切なシール性を確保すべく構成している。
【0045】
要するに、図3〜図6のリヤゲートは、凹設部6を覆う部分(下部リヤゲート24参照)と、その上方の開口部23a(図3参照)を覆う部分(上部リヤゲート25参照)とに上下に分割され、各リヤゲート24,25がそれぞれ独立して開閉可能に構成されたものであり、下部リヤゲート24のみの開閉と、上部リヤゲート25のみの開閉と、両リヤゲート24,25の開閉ができるように構成している。
【0046】
また、図7に示すように、下部リヤゲート24のリヤ側面にはプロテクタ24Pを接合して、この下部リヤゲート24が直接路面に接地するのを防止し、プロテクタ24Pで下部リヤゲート24を保護すべく構成してもよい。
【0047】
リヤゲートの構造は図3〜図7の構成に代えて、図8〜図10に示す構造または図11、図12に示す構造を採用してもよい。
図8〜図10に示すリヤゲートは、凹設部6を覆って上下方向に回動する下部リヤゲート24と、凹設部6の上方の開口部23a(図3参照)を覆う左右一対の観音開き構造の上部リヤゲート41,42とを備えたものである。
【0048】
左右一対の観音開き構造の上部リヤゲート41,42は図9に示すように車体後面に上下一対のヒンジ部材33,33を介して開閉可能に枢支され、これらの各上部リヤゲート41,42の遊端側上下にはロック部材43,44がそれぞれ設けられている。
【0049】
上側のロック部材43はルーフ部22の後端部対応位置に設けられたボディ側のストライカ45により係合され、下側のロック部材44は下部リヤゲート24の対応位置に設けられたストライカ46により係合される。
【0050】
図10は図8のB−B線矢視断面図であって、左側の上部リヤゲート41と右側の上部リヤゲート42との対向部分には内外2重構造のシール部材47,48,49,50が設けられており、これら左右の上部リヤゲート41,42で開口部23を覆った時、適切なシール性を確保すべく構成している。
【0051】
また左右一対の観音開き構造の上部リヤゲート41,42の少なくとも車外側にはロックを解除するためのアウタハンドル51,52(図8参照)が設けられている。
なお、下部リヤゲート24についてはストライカ46が設けられた構成以外は図3〜図6で示した下部リヤゲート24と同様に構成されている。
【0052】
要するに、図8〜図10のリヤゲートは、凹設部6を覆う部分(下部リヤゲート24参照)と、その上方の開口部23a(図3参照)を覆う部分(上部リヤゲート41,42参照)とに上下に分割され、各リヤゲート24,41,42がそれぞれ独立して開閉可能に構成されたものであり、下部リヤゲート24のみにの開閉と、左側の上部リヤゲート41のみの開閉と、右側の上部リヤゲート42のみの開閉と、何れか2つのリヤゲートのみの開閉と、全リヤゲート24,41,42の開閉ができるように構成している。
なお、図8〜図10において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0053】
図11、図12に示すリヤゲートは、凹設部6と、この凹設部6の上方の開口部23a(図3参照)とを一体的に覆う左右一対の観音開き構造の左右のリヤゲート53,54を備えたものである。
【0054】
左右一対の観音開き構造の左右のリヤゲート53,54は図12に示すように車体後面に上下一対のヒンジ部材33,33を介して開閉可能に枢支され、これらの各リヤゲート53,54の遊端側上下にはロック部材43,44がそれぞれ設けられている。
【0055】
上側のロック部材43はルーフ部22の後端部対応位置に設けられたボディ側のストライカ45により係合され、下側のロック部材44は凹設部6の後端部対応位置に設けられたボディ側のストライカ55により係合される。
また左右一対の観音開き構造のリヤゲート53,54の少なくとも車外側にはロックを解除するためのアウタハンドル56,57(図11参照)が設けられている。
【0056】
要するに、図11、図12のリヤゲートは、複数に分割され、分割された各リヤゲート53,54がそれぞれ独立して開閉可能に構成されたものであり、左側のリヤゲート53のみの開閉と、右側のリヤゲート54のみの開閉と、両リヤゲート53,54の開閉ができるように構成している。
なお、図11、図12において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0057】
ところで、図1、図2、図3で示した後列シートとしての3列目シート15は図1、図3に示すように凹設部6の上部空間16に引出される使用状態と、図13、図14に示すように、車室側壁部9におけるリヤサイドフレーム11上部の段部10に格納される格納状態とに択一的に選択すべく構成されている。
【0058】
しかも、左右の3列目シート15,15は左右独立して使用状態と格納状態とが選択できるもので、一方の3列目シート15のみを使用状態と格納状態とに設定することもでき、左右両方の3列目シート15,15を共に使用状態と格納状態とに設定することもできる。
【0059】
図13、図14に示すように左右双方の3列目シート15を上述の段部10に格納した場合には、格納状態の3列目シート15と車室側壁部9とがほぼフラットまたは3列目シート15が車室側壁部9より若干車外側に位置する状態となって、凹設部6の上部に広い荷室スペースが形成されるので、上部空間16に荷物を搭載することができ、また図13、図14に示すように凹設部6には車椅子100を乗り込ませることもできる。一方、図3に示すように、左右一対の3列目シート15,15の両方を使用状態に設定すると、これら使用状態の両シート15,15により凹設部6の上方を車幅方向に仕切るように延設され、左右のシートクッション15C,15Cにて左右方向に連続したクッション面が形成されるように構成している。
【0060】
次に図15、図16を参照して3列目シート15の支持構造について説明する。但し、左右の3列目シート15の支持構造は左右ほぼ対称に構成されているので、ここでは右側の3列目シート15の支持構造について説明する。
【0061】
上述の3列目シート15は方形枠状のシートクッションフレーム60と、このシートクッションフレーム60にリクライニングナックル61を介して前倒可能に設けられた方形枠状のシートバックフレーム62と、シートクッションフレーム60の車内側片内方に接合された突片63,63に対して起伏可能に枢支された凹状のシートステー64とを備えている。ここで、上述の各フレーム60,62およびシートステー64は金属製パイプ部材にて構成されている。
【0062】
上述のシートクッションフレーム60の前後両片外面には可動側のブラケット65,65を接合固定する一方、前述の段部10における下端水平部10aには固定側のブラケット66,66をボルトアップしている。
【0063】
そして、前後一対の固定側のブラケット66,66における立上り片に支軸67,67を介して前後一対の可動側のブラケット65,65を枢支させている。つまり、シートクッションフレーム60を車室側壁部9の段部10における下端水平部10aに片持ち構造にて支持したものである。
【0064】
またシートクッションフレーム60の車外側片下方に接合された突片68と、凹状のシートステー64に設けられた横棧64aとの間にリターンスプリング69を張架している。
【0065】
さらにシートバックフレーム62の下片における車内側背面にはストライカ70を突設する一方、上述のシートステー64の下片下面には前後一対のストライカ71,71を突設している。
【0066】
上述のストライカ70はシート格納時において段部10側に設けられたロック部材72でロックされ、シートステー64側のストライカ71,71はシート使用時において凹設部6側に設けられたロック部材73,73でロックされる。
【0067】
また段部10の上端水平部10bにはロック部材72によるロックを解除するロック解除レバー74を設けると共に、段部10の所定部にはロック部材73,73によるロックを同時に解除するロック解除レバー75を設けている。
【0068】
図15に示す使用状態の3列目シート15を図16に示すように格納する場合には、まずロック解除レバー75を操作してロック部材73,73によるストライカ71,71のロックを解除すると共に、シートステー64およびシートバックフレーム62をシートクッションフレーム60側へ折り畳む。
【0069】
その後、支軸67を支点として各要素60,62,64を一体的に段部10側へ上方回動し、シートバックフレーム62側のストライカ70をロック部材72でロックさせると、3列目シート15は図16に示すように格納される。
【0070】
逆に図16に示す格納状態の3列目シート15を図15に示すように使用状態と成す場合には、まずロック解除レバー74を操作してロック部材72によるストライカ70のロックを解除した後に、支軸67を支点として各要素60,62,64を一体的に段部10から凹設部6の上部空間16に引出す。
【0071】
次に、リターンスプリング69の付勢力に抗してシートステー64を下方へ引き起こし、その下部のストライカ71,71を凹設部6側のロック部材73,73にてロックし、このシートステー64によるシート支持と、ロック部材73によるロック構造とで、シート支持剛性の向上を図る。
【0072】
次に、リクライニングナックル61を介してシートバックフレーム62を着座状態に引き起こすと、3列目シート15は図15に示すように使用状態となり、この3列目シート15の使用状態時において、シートクッション15C、シートクッションフレーム60は図3、図15に示すように、リヤサイドフレーム11のキックアップ部12とほぼ同等の高さ位置となる。
【0073】
換言すれば、リヤサイドフレーム11のキックアップ部12は3列目シート15の使用時におけるシートクッション15C、シートクッションフレーム60の高さ位置とほぼ同等の高さ位置において車両の前後方向に延設された車体剛性部材である。
【0074】
なお、図中、76はステアリングホイール、77は前輪、78は後輪、79,80は凹設部6下部において車幅方向に延びるクロスメンバ、81はトーションビーム式のリヤサスペンションである。また図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示すものである。
【0075】
このように上記実施例の車両用シートの支持構造は、複数列のシート13,14,15がフロアパネル4上部に前後方向に配設された車両において、前列シートの後方のリヤフロアパネル5を下方に凹設して凹設部6が形成され、上記凹設部6の後端が車室外方向に開放されると共に、上記凹設部6を形成する車室側壁部9には、車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム11,11が設けられ、上記リヤサイドフレーム11,11と対応した車室側壁部9に後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持したものである。
【0076】
この構成によれば、前列シートの後方のリヤフロアパネル5を下方に凹設して凹設部6を形成し、この凹設部6を形成する車室側壁部9に後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持したので、車両の前後長のコンパクト化と後列シート(3列目シート15参照)の配設とが両立でき、車両の前後長さを短く設定しても上記凹設部6の形成により上下寸法が確保できるので、後列シート(3列目シート15参照)の乗員の乗り心地を確保することができる。
【0077】
しかも、車体剛性部材としてのリヤサイドフレーム11と対応する車室側壁部9に後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持したので、後列シート(3列目シート15参照)の支持剛性の確保と側突時の安全性確保との両立を図ることができる。
【0078】
また、上記リヤサイドフレーム11はフロアパネル4に沿って車両の前後方向に延びると共に、上記凹設部6より後方で上方にキックアップしたキックアップ部12を備え、該キックアップ部12に上記後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持したものである。
【0079】
この構成によれば、上述のキックアップ部12は剛性が高いので、後列シート(3列目シート15参照)の支持剛性がさらに向上し、また後列シート(3列目シート15参照)を補強するための専用のレインフォースメントを別途設ける必要がなく、適切な位置に存在するキックアップ部12を有効利用して、後列シート(3列目シート15参照)を取付け支持することができる。
【0080】
さらに、上記後列シート(3列目シート15参照)は凹設部6の上部空間16に引出される使用状態(図3参照)と、上記車室側壁部9に格納される格納状態(図14参照)とを択一的に選択すべく構成されたものである。
【0081】
この構成によれば、後列シート(3列目シート15参照)を凹設部6の上部空間16に引出した時には、該後列シート(3列目シート15参照)を座席として使用することができ、この後列シート(3列目シート15参照)を車室側壁部9に格納した時には、凹設部6および上部空間16を荷室として使用することができ、この結果、ニーズに応じて座席と荷室との使い分けができる。
【0082】
加えて、上記後列シート(3列目シート15参照)は車室側壁部9に片持ち構造にて支持されたものである。
詳しくは、この後列シート(3列目シート15参照)は、凹設部6の車室側壁部9の左右両側に一対設けられており、これら左右一対の各シート15,15を車室側壁部9から片持ち支持で互いに支持させたものである。
この構成によれば、後列シート(3列目シート15参照)を車室側壁部9に片持ち支持させるので、後列シート(3列目シート15参照)のコンパクト化を図ることができる。
【0083】
また、上記後列シート(3列目シート15参照)の使用状態時に該後列シートの凹設部6の上部空間16に引出された側を支持する支持部材(シートステー64参照)を備えたものである。
【0084】
この構成によれば、片持ち支持により後列シート(3列目シート15参照)のコンパクト化を図りつつ、支持部材(シートステー64参照)で後列シート(3列目シート15参照)の引出された側を支持するので、該後列シートの使用時の支持剛性を確保することができる。
【0085】
さらに、上記車室側壁部9には後列シート(3列目シート15参照)を格納するため車外方向に凹設された段部10が形成され、上記段部10の下方に上記キックアップ部12が近接して車両前後方向に配設されたものである。
【0086】
この構成によれば、キックアップ部12により段部10の剛性向上および後列シート(3列目シート15参照)の支持剛性向上を図りつつ、後列シート(3列目シート15参照)は上述の凹設された段部10に格納されるので、この後列シート(3列目シート15参照)の格納時において凹設部6および上部空間16には広い荷室スペースが形成され、この荷室スペースを有効利用することができる。
【0087】
加えて、上記後列シート(3列目シート15参照)はシートクッション15Cとシートバック15Bとを備え、上記シートクッション15Cが車室側壁部9に支持されたものである。
この構成によれば、後列シート(3列目シート15参照)の支持の簡素化を図りつつ、シートバック15Bにより乗員着座時の乗り心地の向上を図ることができる。
【0088】
さらに、上記リヤサイドフレーム11のキックアップ部12は、後列シート(3列目シート15参照)の使用時におけるシートクッション15C位置高さにおいて車両の前後方向に延設されたものである。
【0089】
この構成によれば、後列シート(3列目シート15参照)使用時のシートクッション15C位置高さに延設された剛性が高いキックアップ部12で側突に対する剛性向上を図ることができ、この結果、側突時の乗員安全性をさらに向上させることができる。。
【0090】
図17、図18は車両用シートの支持構造の他の実施例を示し、図15、図16で示した実施例においては、3列目シート15をその格納時に、段部10に格納すべく構成したが、図17、図18に示すこの実施例においては、3列目シート15をその格納時に凹設部6を構成する車室側壁部9に沿って格納すべく構成したものである。
【0091】
図17、図18に示すこの実施例では、固定側のブラケット66,66における立上り片に支軸67,67を介して直接シートクッションフレーム60の基端側を枢支すると共に、このシートクッションフレーム60の後片にストライカ70を取付け、このストライカ70を車室側壁部9の対応位置に設けたロック部材72でロックすべく構成している。
【0092】
図17に示す使用状態の3列目シート15を図18に示すように格納する場合には、まずロック解除レバー75を操作してロック部材73,73によるストライカ71,71のロックを解除すると共に、シートステー64およびシートバックフレーム62をシートクッションフレーム60側へ折り畳む。
【0093】
その後、支軸67を支点として各要素60,62,64を一体的に車室側壁部9側へ下方回動し、シートクッションフレーム60側のストライカ70をロック部材72でロックさせると、3列目シート15は図18に示すように格納される。
【0094】
逆に図18に示す格納状態の3列目シート15を図17に示すように使用状態と成す場合には、まずロック解除レバー74を操作してロック部材72によるストライカ70のロックを解除した後に、支軸67を支点として各要素60,62,64を一体的に車室側壁部9から凹設部6の上部空間16に引出す。
【0095】
次に、シートステー64を下方へ引き起こし、その下部のストライカ71,71を凹設部6側のロック部材73,73にてロックし、このシートステー64によるシート支持と、ロック部材73によるロック構造とで、シート支持剛性の向上を図る。
【0096】
次に、リクライニングナックル61を介してシートバックフレーム62を着座状態に引き起こすと、3列目シート15は図17に示すように使用状態となり、この3列目シート15の使用状態時において、シートクッション15C、シートクッションフレーム60は図3、図17に示すように、リヤサイドフレーム11のキックアップ部12とほぼ同等の高さ位置となる。
【0097】
図17、図18に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図17、図18において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0098】
図19、図20は車両用シートの支持構造のさらに他の実施例を示し、この実施例においてはシートクッションフレーム60の後片にロック部材72を設ける一方、車室側壁部9の対応位置にストライカ70を設け、ロック解除レバー(図示せず)は3列目シート15側(望ましくはロック部材72の近傍位置)に設けるように構成したものである。
【0099】
このように構成すると、ロック解除レバー(図示せず)とロック部材72との間に設けられる操作ワイヤの全長が短くなり、ワイヤ配設構造の簡略化を図ることができる。
【0100】
図19、図20に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については図17、図18で示した先の実施例とほぼ同様であるから、図19、図20において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0101】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の後列シートは、実施例の3列目シート15に対応し、
以下同様に、
支持部材は、シートステー64に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0102】
【発明の効果】
この発明によれば、前列シート後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部を形成し、この凹設部後端を車室外に開放すると共に、凹設部を形成する車室側壁部にリヤサイドフレームを設け、リヤサイドフレームと対応した車室側壁部に後列シートを取付け支持したので、車両の前後長のコンパクト化と後列シート(特に3列目シート)の配設とが両立でき、車両の前後長さを短く設定しても凹設部の形成により上下寸法を確保することができ、しかも、シートの支持剛性と側突時の安全性確保との両立を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両用シートの支持構造を備えた車両の側面図。
【図2】シートの配設構造を示す平面図。
【図3】リヤゲートを除去した状態で示す車両の背面図。
【図4】リヤゲート構造を示す斜視図。
【図5】リヤゲート開放時の斜視図。
【図6】図4のA−A線矢視断面図。
【図7】下部リヤゲートの他の実施例を示す断面図。
【図8】リヤゲート構造の他の実施例を示す斜視図。
【図9】リヤゲート開放時の斜視図。
【図10】図8のB−B線矢視断面図。
【図11】リヤゲート構造のさらに他の実施例を示す斜視図。
【図12】リヤゲート開放時の斜視図。
【図13】車椅子搭載時の側面図。
【図14】車椅子搭載時の背面図。
【図15】後列シートの使用状態を示す斜視図。
【図16】後列シートの格納状態を示す斜視図。
【図17】後列シート支持構造の他の実施例を示す斜視図。
【図18】後列シートの格納状態を示す斜視図。
【図19】後列シート支持構造のさらに他の実施例を示す斜視図。
【図20】後列シートの格納状態を示す斜視図。
【符号の説明】
4…フロアパネル
5…リヤフロアパネル
6…凹設部
9…車室側壁部
10…段部
11…リヤサイドフレーム
12…キックアップ部
13,14…シート
15…3列目シート(後列シート)
15B…シートバック
15C…シートクッション
16…上部空間
64…シートステー(支持部材)
Claims (8)
- 複数列のシートがフロアパネル上に前後に配設された車両において、
前列シートの後方のリヤフロアパネルを下方に凹設して凹設部が形成され、
上記凹設部の後端が車室外方向に開放されると共に、
上記凹設部を形成する車室側壁部には、車両の前後方向に延びる一対のリヤサイドフレームが設けられ、
上記リヤサイドフレームと対応した車室側壁部に後列シートを取付け支持した
車両用シートの支持構造。 - 上記リヤサイドフレームはフロアパネルに沿って車両の前後方向に延びると共に、
上記凹設部より後方で上方にキックアップしたキックアップ部を備え、
該キックアップ部に上記後列シートを取付け支持した
請求項1記載の車両用シートの支持構造。 - 上記後列シートは凹設部の上部空間に引出される使用状態と、上記車室側壁部に格納される格納状態とを択一的に選択すべく構成された
請求項1または2記載の車両用シートの支持構造。 - 上記後列シートは車室側壁部に片持ち構造にて支持された
請求項3記載の車両用シートの支持構造。 - 上記後列シートの使用状態時に該後列シートの凹設部の上部空間に引出された側を支持する支持部材を備えた
請求項4記載の車両用シートの支持構造。 - 上記車室側壁部には後列シートを格納するため車外方向に凹設された段部が形成され、
上記段部の下方に上記キックアップ部が近接して車両前後方向に配設された
請求項1〜5の何れか1に記載の車両用シートの支持構造。 - 上記後列シートはシートクッションとシートバックとを備え、
上記シートクッションが車室側壁部に支持された
請求項1〜6の何れか1に記載の車両用シートの支持構造。 - 上記リヤサイドフレームのキックアップ部は、後列シートの使用時におけるシートクッション位置高さにおいて車両の前後方向に延設された
請求項7記載の車両用シートの支持構造。
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