JP2004306081A - 低圧鋳造装置および低圧鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】型開きにおける油圧回路中のサージ圧の発生による油圧の脈動を少なくして、金型や低圧鋳造装置が振動するのを防止し、密閉室内の加圧解除後のキュアリングする時間を短くして鋳造時間を短縮できる低圧鋳造装置と、この低圧鋳造装置により意匠面に凹凸を出さずに意匠性が確保できるアルミホイールを得る。
【解決手段】油圧アクチュエータに連結した型開きを行うための加圧配管と、型閉めを行うための加圧配管を備えた低圧鋳造装置を用い、型閉めを行うための加圧配管にこの内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設け、型開きを行うための加圧配管内に油圧を加圧するタイミングまでにこの型閉めを行うための加圧配管内の油圧を実質的に0MPaにしておく。
【選択図】 図1
【解決手段】油圧アクチュエータに連結した型開きを行うための加圧配管と、型閉めを行うための加圧配管を備えた低圧鋳造装置を用い、型閉めを行うための加圧配管にこの内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設け、型開きを行うための加圧配管内に油圧を加圧するタイミングまでにこの型閉めを行うための加圧配管内の油圧を実質的に0MPaにしておく。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミホイールなどの低圧鋳造装置および低圧鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用のホイールには、高い意匠性を有するアルミホイールが普及している。図4は、アルミホイール20の一例を示し、(a)はその断面図、(b)はその正面図である。図4で、アルミホイール20は、(JIS)AC4CHなどのアルミニウム合金からなり、ボルトとナットにより自動車の車軸に取付けられるディスク部21と、意匠面22(二点鎖線の範囲で示す)を有するスポーク部23と、タイヤが装着されるフランジ部24、リム部25などで構成されている。そして、フランジ部24やリム部25の全面、およびディスク部21の一部は機械加工が施され、意匠面22は鋳造のままの鋳肌面、または鋳肌面にプライマ処理や塗装処理が施されている。
【0003】
図4に示すようなアルミホイール20は、一般に低圧鋳造装置により鋳造されている。図5は低圧鋳造装置の一例の一部を断面した正面図であり、図6は従来の油圧制御回路図である。
図5に示す低圧鋳造装置30は、密閉室31内で溶湯Mを収容する保持炉32と、一端を保持炉32内の溶湯Mに浸漬すると共に、他端を下金型33、上金型34、横金型35で画成されるキャビティ36の下方の湯口36aに連通するストーク37と、上金型34に連結するプラテン38を介して上金型3の型閉めおよび型開きを行う油圧シリンダ39ほかを備えている。
【0004】
また、図6に示す従来の油圧制御回路図は、油圧の給油路2が、減圧弁8を介して4ポート3位置切換の電磁パイロット切換弁9のPポートに、また排油路3は、電磁パイロット切換弁9のRポートに、それぞれ接続している。また、電磁パイロット切換弁9のAポートからの配管4は、プラテン38にロッド39cを連結した油圧シリンダ39のヘッド側39aにヘッド側39aからのカウンターバランス弁10を介して接続している。また、配管4には、リリーフ弁10を跨いだ配管6にチェック弁11を接続している。一方、電磁パイロット切換弁9のBポートからの配管5には、油圧シリンダ39のロッド側39bにロッド側39bからのチェック弁12を介して接続している。
【0005】
図6で、待機状態から、型閉めの指令(C)が出されると、電磁パイロット切換弁9のソレノイドに電流が流れて、油圧の流路をPポートとBポート、およびRポートとAポートが連通するように切り換えられる。この操作により、油圧シリンダ39のロッド側39bに給油され、一方、電磁パイロット切換弁9を切り換えたときのヘッド側39aからの排油路の急激な圧力上昇をカウンターバランス弁10で抑えて、プラテン38に連結した上金型34を下降させる。そして、上金型34を下金型34に型閉めし、さらに横金型35も型閉めし、この型閉めを継続する。
【0006】
次に、図5での密閉室31内に気体Nを供給して保持炉32内の溶湯Mの表面を加圧し、溶湯Mをキャビティ36内に充填する。充填された溶湯Mはキャビティ36の上端付近から凝固を始め、次第に降下して湯口36aの外殻近くが凝固し始める。このとき、密閉室31内の加圧を解除してキャビティ36内の未凝固の溶湯Mを保持炉32に戻す。
【0007】
そして、密閉室31内の加圧を解除後、アルミホイール20が完全に凝固するまで型閉めを継続、いわゆるキュアリングされる。キュアリング後、型開きの指令(O)が出されると、電磁パイロット切換弁9のソレノイドに電流が流れて、油圧の流路をPポートとAポート、およびRポートとBポートが連通するように切り換える。この操作により、油圧シリンダ39のヘッド側39aに給油され、ロッド39cに連結したプラテン38、および図5での上金型34を上昇させる。そして、上金型34を上昇端まで上昇させて、再び待機状態に戻る。
この図6に示すような従来の油圧制御回路によれば、高速で型閉めおよび型開きを行うことができる。
【0008】
一方、図9に示す金型鋳造機用油圧制御回路40の開示がある(例えば、特許第2887399号公報参照)。すなわち、図9に示すように、給油路41には直流比例制御弁43を設けて、この直流比例制御弁43の直流ソレノイドに油圧シリンダ44の作動状態に応じて出される指令により異なった電流値の電流を流してスプールの開度を調整し、かつ流路切換を行うコントローラ48を電気的に接続している。そして、キャビティに溶湯を供給し凝固した後、コントローラ48に型開きおよび高速作動の指令を出して直流比例制御弁43のソレノイドに大きな電流を流して、油圧を大きな流量で流すようにスプールの開度を調整すると共に、流路をPポートとBポート、RポートとAポートが連通するように切り換えている。これにより、油圧シリンダ44のロッド側に大きな流量で油圧を供給し、一方、ヘッド側の油圧をAポートからRポートを経て排油路42に戻している。そして、油圧シリンダ44を上昇端近くまで高速で上昇させ、その後、リミットスイッチなどでコントローラ48に一時停止や低速上昇の指令を出して、直流比例制御弁43を制御している。なお、45,46は配管、47は圧力チェック減圧弁、49はパイロット式チェック弁、50,51はチェック弁、52は第1バイパス管、53は第2バイパス管、54はスロットルチェック弁、55は2位置切換弁としている。
そして、図9に示す金型鋳造機用油圧制御回路40によれば、金型を吊り下げる油圧シリンダ44を種々の作動速度にコントロールできるため、型閉め、型閉め後の保持、および型開きなどの作動を衝撃をなくして迅速かつ確実に行えるとしている。
【0009】
また、10MPa程度で型閉めしていた油圧シリンダ39のロッド側の油圧が、型開き直前において約0.15秒の短時間に実質0(ゼロ)MPaにまで降下するので、低圧鋳造装置30にかかる応力も一度に開放され、油圧回路中にサージ圧が発生して油圧が脈動することがある。このようなことがあると、上金型34さらには低圧鋳造装置30が振動する。これを図7に鋳造時間と型閉め圧力との関係線図として示す。なお、サージ圧による油圧の脈動はごく短時間であるが、わかりやすくするため、ほかの時間より引き伸ばして示す。
【0010】
軽合金ホイールを鋳造する際、油圧回路中にサージ圧が発生して油圧が脈動している状態で型開きをすると、意匠面と下型の表面が擦れて鋳肌に傷が付くことがある。抜け勾配が5℃未満の軽合金ホイールであるとその不具合が起き易い。よってこのような振動が起きないような工夫として、特開2002−114001号公報の図8に記載されているように、油圧の減圧に必要な時間はそのままに油圧の脈動をなくすことも採用されている。
【0011】
【特許文献1】
特許第2887399号公報(第1頁第1欄第2行〜第2頁第3欄第5行、第3頁第6欄第8〜14行、第4頁第1図)
【特許文献2】
特開2002−114001号公報(第7頁第1図)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
図4に示すようなアルミホイール20においては、意匠面22の意匠性を確保すると共に、鋳造時間を短縮して前後の工程との時間差を無くすことが要求されている。この鋳造時間を短縮するためには、図5の低圧鋳造装置30で、密閉室31内の加圧を解除後、アルミホイール20が完全に凝固するまで型閉めを継続する時間、いわゆるキュアリングする時間を短かくして型開きすることが考えられる。
【0013】
キュアリングする時間を短くして型開き(図7中の点線)すると、特開2002−114001号に記載されたようなスムーズな油圧の減圧を行っても若干の振動が低圧鋳造機に発生する。これは型閉め力が0.15秒程度で10MPaから0MPaになるため、応力ひずみを起していたプラテンなどが一気に開放されることによる。このためにまだ半凝固状態の溶湯M中のSi粒子が意匠面22から突出して、凝固後にアルミホイール20の意匠面22が凹凸になってしまう。図8に、Si粒子(図中、黒色粒状の部分)が意匠面22に突出して凹凸になった顕微鏡組織写真(×50)を示す。図8に示すように、意匠面22にSi粒子の突出による凹凸があると、前記したようにプライマー処理や塗装処理などを行っても、光の反射によって意匠性が悪くなり外観が損なわれる。このため、図7中の太い実線で示すように、密閉室31内の加圧解除後のキュアリングする時間を例えば60秒として凝固が完全に終了した後に型閉め力を抜く必要があり、鋳造時間も長くならざるを得ない。これは鋳肌がそのまま意匠性を左右する嗜好品の軽合金ホイールならではの問題である。
【0014】
特許文献1に開示される図9の金型鋳造機用油圧制御回路によっても、型開きにおいて油圧シリンダ44の排油路の油圧が短時間に実質0(ゼロ)MPaにまで降下するので、油圧回路中にサージ圧が発生して油圧が脈動し、金型や鋳造機が振動すると思われる。油圧シリンダに接続された型開き用の配管46にはスロットルチェック弁54や2位置切換弁55が備えられてはいるが、これは特許文献1中に記載あるように型閉め時の上型と下型との衝突を抑制するためのものである。それに対して型閉め用の配管45にはさした工夫はされておらず、型閉め力10MPaが開放される時の油圧調整は直流比例制御弁のみである。前記したようにキュアリングする時間を短くして型開きすると、まだ半凝固状態の溶湯M中のSi粒子が意匠面から突出して、凝固後にアルミホイールの意匠面が凹凸になることがある。
【0015】
本発明の課題は、型開きにおける油圧回路中のサージ圧の発生による油圧の脈動を少なくして、金型や低圧鋳造装置が振動するのを防止し、密閉室内の加圧解除後のキュアリングする時間を短くして鋳造時間を短縮できる低圧鋳造装置と、この低圧鋳造装置により意匠面に凹凸を出さずに意匠性が確保できるアルミホイールを得ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題について鋭意研究した。その結果、型閉めを行うための加圧配管側に内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設けたことで、上記課題が解決できるとの知見を得、本発明に想到した。
【0017】
すなわち、本発明の低圧鋳造装置は、金型と、前記金型の開閉を行う油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに連結した型開きを行うための加圧配管(以後、型開き配管)と、型閉めを行うための加圧配管(以後、型閉め配管)を備えた低圧鋳造装置において、前記型閉めを行うための加圧配管にこの内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設けたことを特徴とする。好ましくは5MPa/秒以下、さらには2MPa秒以下で減圧可能な弁が望ましい。但し0.5MPa/秒以下であると減圧に時間がかかりすぎ、型開きに時間が必要以上にかかるので好ましくない。
型閉め配管に所定の弁を接続することで、型開きにおいて、油圧アクチュエータの上側の油圧を次第に降下させる。これにより、1秒以上、好ましくは2秒以上、さらには5秒以上の時間で型閉き配管内の圧力を0とでき、金型や低圧鋳造装置が振動するのを防止する。そして、金型や低圧鋳造装置の振動が防止されるので、キュアリング中から型閉め配管の圧力を減圧し始めても半凝固状態の溶湯中のSi粒子が意匠面から突出することがないままに、溶湯の凝固終了と型閉め力を実質的にゼロにできるため、速やかな型開きが可能で鋳造時間が短縮される。
【0018】
また本発明の低圧鋳造方法は、軽合金ホイール用の低圧鋳造方法として特に有用であり、型閉め配管にこの内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設け、型開き配管内に油圧を加圧するタイミングまでに型閉め配管内の油圧を実質的に0MPaにしておくことを特徴とする。型開き配管と型閉め配管内の油圧差により鋳造機に設けられた油圧ピストンは上下するが、型閉め配管内に油圧が残ったまま型開きを始めると若干ではあるものの半凝固状態の鋳物の中のSi粒子が鋳肌に突出するには充分な不可避の金型の振動が発生してしまう。よって発明の製造方法を適用することで、型閉め配管内の油圧を抜く時のサージ圧による脈動を抑えるだけでなく、型開きの瞬間の不可避の金型振動までも完全に抑制できる。
また、この鋳造方法において、鋳造装置を金型内に溶湯を加圧する為の密閉室を備えたものを用い、この密閉室からの溶湯の加圧を終了するタイミングに対し20秒以内の間に弁を開き始めるものが好ましい。従来では型開きのタイミングは型閉め力を一気に開放した直後であったものに対し、数秒から数十秒早い時点から徐々に型閉め力を低減することができる。
キュアリングタイムは40秒以内、好ましくは30秒以内、更には20秒以内の鋳造機に適用することが鋳造時間の短縮の効果から好ましい。
【0019】
上記本発明の低圧鋳造装置においては、弁はリリーフ弁または比例式の制御弁であることが好ましい。リリーフ弁は段階的に時間をおいて油圧を低減していけるものが好ましい。また、比例式の制御弁で比例的に型開きを行うと、油圧回路中のサージ圧の発生による油圧の脈動をさらに少なくし、金型や低圧鋳造装置の振動をより防止するができ、より好ましい。
【0020】
これらの鋳造手段により作られるアルミホイールは、少なくとも意匠面の鋳肌表面からのSi粒子の突出量が垂直方向で10μm以下である。意匠面の鋳肌表面からのSi粒子の突出量を10μm以下であれば、プライマー処理や塗装処理などを行っても、光の反射によって意匠性を損ねることがない。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施の形態の一例を詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の油圧制御回路図であり、図3は、キュアリングする時間を20秒と短くして型開きしたときの、鋳造時間経過ごとの型閉め圧力の変化を示す図である。なお、図1において、図6に示す従来の油圧制御回路と同じ構成のものは同符号で示し、また、これらの説明を省略する。図1の油圧制御回路では、特に、電磁パイロット切換弁9のBポートからの配管5での、油圧シリンダ39のロッド側39bとチェック弁12間にリリーフ弁1を接続している。リリーフ弁1は3秒おきに6段階で配管5内の油圧約9MPaを実質的に0MPaにするものを適用した。
【0022】
図1のように構成された油圧制御回路での、待機状態からの型閉めは、前述した図6に示す従来の油圧制御回路と同様にして行われる。次に、型閉めした状態で、図5での密閉室31内に気体Nを供給して保持炉32内の溶湯Mの表面を加圧し、溶湯Mをキャビティ36内に充填する。充填された溶湯Mはキャビティ36の上端付近から凝固を始め、次第に降下して湯口36aの外殻近くが凝固し始める。そして、密閉室31内の加圧を解除してキャビティ36内の未凝固の溶湯Mを保持炉32に戻す。
【0023】
密閉室31内の加圧の解除から25秒間キュアリングして、型開きの指令(O)が出されると、電磁パイロット切換弁9のソレノイドに電流が流れて、油圧の流路をPポートとAポート、およびRポートとBポートが連通するように切り換える。ただしこの時点において、図3の実施の形態1(リリーフ弁)(点線)で示すように、型開き開始後、型閉め圧力を次第に減少させているので、ロッド側39bの油圧は実質的に0MPaであり、型閉め圧力は金型の自重による状態である。油圧の流路を切り替えることで、油圧シリンダ39のヘッド側39aに給油され、かつ、油圧シリンダ39のロッド39cに連結したプラテン38、および図5での上金型34を上昇させる。そして、上金型34を上昇端まで上昇させて、再び待機状態に戻る。
【0024】
このため、キュアリングする時間を25秒と短縮し、キュアリング終了直後に型開きしても、油圧シリンダの型閉め側の油圧が0MPaのため、型開き配管内の油圧が邪魔されることなくスムーズに油圧シリンダの駆動力に変換され、鋳造後のアルミホイール20の意匠面22にSi粒子の突出させることなく、鋳造時間を短縮して製造することができる。
【0025】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2の油圧制御回路図である。なお、図2において、図6に示す従来の油圧制御回路と同じ構成のものは同符号で示し、また、これらの説明を省略する。図2の油圧制御回路では、特に、電磁パイロット切換弁9のBポートからの配管5での、油圧シリンダ39のロッド側39bとチェック弁12間に比例電磁式リリーフ弁1Aを接続している。
【0026】
図2のように構成された油圧制御回路で、待機状態からの型閉めは、前述した図6に示す従来の油圧制御回路と同様にして行われる。次に、型閉めした状態で、図5での密閉室31内に気体Nを供給して保持炉32内の溶湯Mの表面を加圧し、溶湯Mをキャビティ36内に充填する。充填された溶湯Mはキャビティ36の上端付近から凝固を始め、次第に降下して湯口36aの外殻近くが凝固し始める。そして、密閉室31内の加圧を解除してキャビティ36内の未凝固の溶湯Mを保持炉32に戻す。
【0027】
密閉室31内の加圧の解除から20秒間キュアリングして、型開きの指令(O)が出されると、電磁パイロット切換弁9のソレノイドに電流が流れて、油圧の流路をPポートとAポート、およびRポートとBポートが連通するように切り換える。ただしこの時点において、図3の実施の形態2(比例電磁式リリーフ弁)(太い実線)で示すように、型開き開始後、型閉め圧力を次第に減少させているので、ロッド側39bの油圧は実質的に0MPaであり、型閉め圧力は金型の自重による状態である。油圧の流路を切り替えることで、油圧シリンダ39のヘッド側39aに給油され、かつ、油圧シリンダ39のロッド39cに連結したプラテン38、および図5での上金型34を上昇させる。そして、上金型34を上昇端まで上昇させて、再び待機状態に戻る。
【0028】
このため、キュアリングする時間を20秒と短縮し、キュアリング終了直後に型開きしても、油圧シリンダの型閉め側の油圧が0MPaのため、型開き側の油圧が邪魔されることなくスムーズに油圧シリンダの駆動力に変換され、鋳造後のアルミホイール20の意匠面22にSi粒子の突出させることなく、鋳造時間を短縮して製造することができる。
【0029】
次に、図5を用いて説明する。
図2の油圧制御回路を有する図5の低圧鋳造装置で、図4の(JIS)AC4CHのアルミニウム合金組成となるアルミホイール20を、以下のようにして鋳造した。先ず、待機状態から、スタート釦を押して上金型34を下降させ、横金型35と共に下金型33と型閉めしてアルミホイールのキャビティ36を画成した。なお、下金型33、上金型34、および横金型は350〜450℃となるように型温を制御し、またキャビティは保温と離型性を確保するため塗型を施した。次に、密閉室31内に窒素ガスNを0.02〜0.05MPaで供給して保持炉32内の約700℃のアルミニウム合金溶湯Mの表面を加圧し、キャビティ36に充填した。約2〜3分後、密閉室31内の加圧を解除し、ストーク37内の未凝固の溶湯Mを保持炉32に戻した。この10秒後、比例制御弁により油圧シリンダのロッド側の油を徐々に排出し、9秒間で0MPaまで油圧を低減した。また、密閉室31内の加圧の解除から20秒間キュアリングして、上金型34、横金型35の型開きを行い、さらに押出ピンでアルミホイール20を離型した。型開きのとき、油圧回路にサージ圧の発生による油圧の脈動はなく、上金型34の振動もなかった。キュアリングする時間は、従来のアルミホイールが完全に凝固完了してから型開きを開始した60秒から20秒となり、従来に比較して鋳造時間を40秒短縮することができた。
【0030】
次に、鋳造後のアルミホイール20の意匠面22を観察した。意匠面22から共晶Si粒子が突出しておらず、意匠面22に凹凸がなかった。この意匠面22の凹凸が10μm以下のアルミホイール20を機械加工後、意匠面22に粉体プライマー層、ベースコート層、トップコート層を被覆したところ意匠性が確保された外観性の良好なアルミホイールが得られた。
【0031】
【発明の効果】
以上、詳細に説明のとおり、本発明の低圧鋳造装置によれば、型開きにおける油圧回路中のサージ圧の発生による油圧の脈動を少なくして、金型や低圧鋳造装置が振動するのを防止し、密閉室内の加圧解除後のキュアリングする時間を短かくして、鋳造時間を短縮できる。また本発明の低圧鋳造装置により意匠面にSi粒子の凹凸を出さずに意匠性が確保できるアルミホイールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の油圧制御回路図である。
【図2】実施の形態2の油圧制御回路図である。
【図3】図1または図2の油圧制御回路で、キュアリングする時間を短くして型開きしたときの、鋳造時間経過ごとの型閉め圧力の変化を示す図である。
【図4】アルミホイール20の一例を示し、(a)はその断面図、(b)はその正面図である。
【図5】低圧鋳造装置の一例の、一部を断面した正面図である。
【図6】従来の油圧制御回路図である。
【図7】従来の油圧制御回路図での、鋳造時間と型閉め圧力との関係線図である。
【図8】Si粒子が意匠面22に突出して凹凸になった顕微鏡組織写真(×50)である。
【図9】特許第2887399号公報に開示される金型鋳造機用油圧制御回路図である。
【符号の説明】
1:リリーフ弁
1A:比例電磁式リリーフ弁
2:給油路
3:排油路
4,5,6,7:配管
8:減圧弁
9:電磁パイロット切換弁
10:カウンターバランス弁
11:チェック弁
12:チェック弁
13:リリーフ弁
20:アルミホイール
21:ディスク部
22:意匠面
23:スポーク部
24:フランジ部
25:リム部
30:低圧鋳造装置
31:密閉室
32:保持炉
33:下金型
34:上金型
35:横金型
36:キャビティ
37:ストーク
38:プラテン
39:油圧シリンダ(アクチュエータ)
39a:ヘッド側
39b:ロッド側
41:給油路
42:排油路
43:直流比例制御弁
44:油圧シリンダ
45:配管
46:配管
47:減圧弁
49:パイロット式チェック弁
50:チェック弁
51:チェック弁
52:第1バイパス管
53:第2バイパス管
54:スロットルチェック弁
55:2位置切換弁
C:型閉めの指令
M:溶湯
N:気体(窒素ガス)
O:型開きの指令
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミホイールなどの低圧鋳造装置および低圧鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用のホイールには、高い意匠性を有するアルミホイールが普及している。図4は、アルミホイール20の一例を示し、(a)はその断面図、(b)はその正面図である。図4で、アルミホイール20は、(JIS)AC4CHなどのアルミニウム合金からなり、ボルトとナットにより自動車の車軸に取付けられるディスク部21と、意匠面22(二点鎖線の範囲で示す)を有するスポーク部23と、タイヤが装着されるフランジ部24、リム部25などで構成されている。そして、フランジ部24やリム部25の全面、およびディスク部21の一部は機械加工が施され、意匠面22は鋳造のままの鋳肌面、または鋳肌面にプライマ処理や塗装処理が施されている。
【0003】
図4に示すようなアルミホイール20は、一般に低圧鋳造装置により鋳造されている。図5は低圧鋳造装置の一例の一部を断面した正面図であり、図6は従来の油圧制御回路図である。
図5に示す低圧鋳造装置30は、密閉室31内で溶湯Mを収容する保持炉32と、一端を保持炉32内の溶湯Mに浸漬すると共に、他端を下金型33、上金型34、横金型35で画成されるキャビティ36の下方の湯口36aに連通するストーク37と、上金型34に連結するプラテン38を介して上金型3の型閉めおよび型開きを行う油圧シリンダ39ほかを備えている。
【0004】
また、図6に示す従来の油圧制御回路図は、油圧の給油路2が、減圧弁8を介して4ポート3位置切換の電磁パイロット切換弁9のPポートに、また排油路3は、電磁パイロット切換弁9のRポートに、それぞれ接続している。また、電磁パイロット切換弁9のAポートからの配管4は、プラテン38にロッド39cを連結した油圧シリンダ39のヘッド側39aにヘッド側39aからのカウンターバランス弁10を介して接続している。また、配管4には、リリーフ弁10を跨いだ配管6にチェック弁11を接続している。一方、電磁パイロット切換弁9のBポートからの配管5には、油圧シリンダ39のロッド側39bにロッド側39bからのチェック弁12を介して接続している。
【0005】
図6で、待機状態から、型閉めの指令(C)が出されると、電磁パイロット切換弁9のソレノイドに電流が流れて、油圧の流路をPポートとBポート、およびRポートとAポートが連通するように切り換えられる。この操作により、油圧シリンダ39のロッド側39bに給油され、一方、電磁パイロット切換弁9を切り換えたときのヘッド側39aからの排油路の急激な圧力上昇をカウンターバランス弁10で抑えて、プラテン38に連結した上金型34を下降させる。そして、上金型34を下金型34に型閉めし、さらに横金型35も型閉めし、この型閉めを継続する。
【0006】
次に、図5での密閉室31内に気体Nを供給して保持炉32内の溶湯Mの表面を加圧し、溶湯Mをキャビティ36内に充填する。充填された溶湯Mはキャビティ36の上端付近から凝固を始め、次第に降下して湯口36aの外殻近くが凝固し始める。このとき、密閉室31内の加圧を解除してキャビティ36内の未凝固の溶湯Mを保持炉32に戻す。
【0007】
そして、密閉室31内の加圧を解除後、アルミホイール20が完全に凝固するまで型閉めを継続、いわゆるキュアリングされる。キュアリング後、型開きの指令(O)が出されると、電磁パイロット切換弁9のソレノイドに電流が流れて、油圧の流路をPポートとAポート、およびRポートとBポートが連通するように切り換える。この操作により、油圧シリンダ39のヘッド側39aに給油され、ロッド39cに連結したプラテン38、および図5での上金型34を上昇させる。そして、上金型34を上昇端まで上昇させて、再び待機状態に戻る。
この図6に示すような従来の油圧制御回路によれば、高速で型閉めおよび型開きを行うことができる。
【0008】
一方、図9に示す金型鋳造機用油圧制御回路40の開示がある(例えば、特許第2887399号公報参照)。すなわち、図9に示すように、給油路41には直流比例制御弁43を設けて、この直流比例制御弁43の直流ソレノイドに油圧シリンダ44の作動状態に応じて出される指令により異なった電流値の電流を流してスプールの開度を調整し、かつ流路切換を行うコントローラ48を電気的に接続している。そして、キャビティに溶湯を供給し凝固した後、コントローラ48に型開きおよび高速作動の指令を出して直流比例制御弁43のソレノイドに大きな電流を流して、油圧を大きな流量で流すようにスプールの開度を調整すると共に、流路をPポートとBポート、RポートとAポートが連通するように切り換えている。これにより、油圧シリンダ44のロッド側に大きな流量で油圧を供給し、一方、ヘッド側の油圧をAポートからRポートを経て排油路42に戻している。そして、油圧シリンダ44を上昇端近くまで高速で上昇させ、その後、リミットスイッチなどでコントローラ48に一時停止や低速上昇の指令を出して、直流比例制御弁43を制御している。なお、45,46は配管、47は圧力チェック減圧弁、49はパイロット式チェック弁、50,51はチェック弁、52は第1バイパス管、53は第2バイパス管、54はスロットルチェック弁、55は2位置切換弁としている。
そして、図9に示す金型鋳造機用油圧制御回路40によれば、金型を吊り下げる油圧シリンダ44を種々の作動速度にコントロールできるため、型閉め、型閉め後の保持、および型開きなどの作動を衝撃をなくして迅速かつ確実に行えるとしている。
【0009】
また、10MPa程度で型閉めしていた油圧シリンダ39のロッド側の油圧が、型開き直前において約0.15秒の短時間に実質0(ゼロ)MPaにまで降下するので、低圧鋳造装置30にかかる応力も一度に開放され、油圧回路中にサージ圧が発生して油圧が脈動することがある。このようなことがあると、上金型34さらには低圧鋳造装置30が振動する。これを図7に鋳造時間と型閉め圧力との関係線図として示す。なお、サージ圧による油圧の脈動はごく短時間であるが、わかりやすくするため、ほかの時間より引き伸ばして示す。
【0010】
軽合金ホイールを鋳造する際、油圧回路中にサージ圧が発生して油圧が脈動している状態で型開きをすると、意匠面と下型の表面が擦れて鋳肌に傷が付くことがある。抜け勾配が5℃未満の軽合金ホイールであるとその不具合が起き易い。よってこのような振動が起きないような工夫として、特開2002−114001号公報の図8に記載されているように、油圧の減圧に必要な時間はそのままに油圧の脈動をなくすことも採用されている。
【0011】
【特許文献1】
特許第2887399号公報(第1頁第1欄第2行〜第2頁第3欄第5行、第3頁第6欄第8〜14行、第4頁第1図)
【特許文献2】
特開2002−114001号公報(第7頁第1図)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
図4に示すようなアルミホイール20においては、意匠面22の意匠性を確保すると共に、鋳造時間を短縮して前後の工程との時間差を無くすことが要求されている。この鋳造時間を短縮するためには、図5の低圧鋳造装置30で、密閉室31内の加圧を解除後、アルミホイール20が完全に凝固するまで型閉めを継続する時間、いわゆるキュアリングする時間を短かくして型開きすることが考えられる。
【0013】
キュアリングする時間を短くして型開き(図7中の点線)すると、特開2002−114001号に記載されたようなスムーズな油圧の減圧を行っても若干の振動が低圧鋳造機に発生する。これは型閉め力が0.15秒程度で10MPaから0MPaになるため、応力ひずみを起していたプラテンなどが一気に開放されることによる。このためにまだ半凝固状態の溶湯M中のSi粒子が意匠面22から突出して、凝固後にアルミホイール20の意匠面22が凹凸になってしまう。図8に、Si粒子(図中、黒色粒状の部分)が意匠面22に突出して凹凸になった顕微鏡組織写真(×50)を示す。図8に示すように、意匠面22にSi粒子の突出による凹凸があると、前記したようにプライマー処理や塗装処理などを行っても、光の反射によって意匠性が悪くなり外観が損なわれる。このため、図7中の太い実線で示すように、密閉室31内の加圧解除後のキュアリングする時間を例えば60秒として凝固が完全に終了した後に型閉め力を抜く必要があり、鋳造時間も長くならざるを得ない。これは鋳肌がそのまま意匠性を左右する嗜好品の軽合金ホイールならではの問題である。
【0014】
特許文献1に開示される図9の金型鋳造機用油圧制御回路によっても、型開きにおいて油圧シリンダ44の排油路の油圧が短時間に実質0(ゼロ)MPaにまで降下するので、油圧回路中にサージ圧が発生して油圧が脈動し、金型や鋳造機が振動すると思われる。油圧シリンダに接続された型開き用の配管46にはスロットルチェック弁54や2位置切換弁55が備えられてはいるが、これは特許文献1中に記載あるように型閉め時の上型と下型との衝突を抑制するためのものである。それに対して型閉め用の配管45にはさした工夫はされておらず、型閉め力10MPaが開放される時の油圧調整は直流比例制御弁のみである。前記したようにキュアリングする時間を短くして型開きすると、まだ半凝固状態の溶湯M中のSi粒子が意匠面から突出して、凝固後にアルミホイールの意匠面が凹凸になることがある。
【0015】
本発明の課題は、型開きにおける油圧回路中のサージ圧の発生による油圧の脈動を少なくして、金型や低圧鋳造装置が振動するのを防止し、密閉室内の加圧解除後のキュアリングする時間を短くして鋳造時間を短縮できる低圧鋳造装置と、この低圧鋳造装置により意匠面に凹凸を出さずに意匠性が確保できるアルミホイールを得ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題について鋭意研究した。その結果、型閉めを行うための加圧配管側に内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設けたことで、上記課題が解決できるとの知見を得、本発明に想到した。
【0017】
すなわち、本発明の低圧鋳造装置は、金型と、前記金型の開閉を行う油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに連結した型開きを行うための加圧配管(以後、型開き配管)と、型閉めを行うための加圧配管(以後、型閉め配管)を備えた低圧鋳造装置において、前記型閉めを行うための加圧配管にこの内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設けたことを特徴とする。好ましくは5MPa/秒以下、さらには2MPa秒以下で減圧可能な弁が望ましい。但し0.5MPa/秒以下であると減圧に時間がかかりすぎ、型開きに時間が必要以上にかかるので好ましくない。
型閉め配管に所定の弁を接続することで、型開きにおいて、油圧アクチュエータの上側の油圧を次第に降下させる。これにより、1秒以上、好ましくは2秒以上、さらには5秒以上の時間で型閉き配管内の圧力を0とでき、金型や低圧鋳造装置が振動するのを防止する。そして、金型や低圧鋳造装置の振動が防止されるので、キュアリング中から型閉め配管の圧力を減圧し始めても半凝固状態の溶湯中のSi粒子が意匠面から突出することがないままに、溶湯の凝固終了と型閉め力を実質的にゼロにできるため、速やかな型開きが可能で鋳造時間が短縮される。
【0018】
また本発明の低圧鋳造方法は、軽合金ホイール用の低圧鋳造方法として特に有用であり、型閉め配管にこの内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設け、型開き配管内に油圧を加圧するタイミングまでに型閉め配管内の油圧を実質的に0MPaにしておくことを特徴とする。型開き配管と型閉め配管内の油圧差により鋳造機に設けられた油圧ピストンは上下するが、型閉め配管内に油圧が残ったまま型開きを始めると若干ではあるものの半凝固状態の鋳物の中のSi粒子が鋳肌に突出するには充分な不可避の金型の振動が発生してしまう。よって発明の製造方法を適用することで、型閉め配管内の油圧を抜く時のサージ圧による脈動を抑えるだけでなく、型開きの瞬間の不可避の金型振動までも完全に抑制できる。
また、この鋳造方法において、鋳造装置を金型内に溶湯を加圧する為の密閉室を備えたものを用い、この密閉室からの溶湯の加圧を終了するタイミングに対し20秒以内の間に弁を開き始めるものが好ましい。従来では型開きのタイミングは型閉め力を一気に開放した直後であったものに対し、数秒から数十秒早い時点から徐々に型閉め力を低減することができる。
キュアリングタイムは40秒以内、好ましくは30秒以内、更には20秒以内の鋳造機に適用することが鋳造時間の短縮の効果から好ましい。
【0019】
上記本発明の低圧鋳造装置においては、弁はリリーフ弁または比例式の制御弁であることが好ましい。リリーフ弁は段階的に時間をおいて油圧を低減していけるものが好ましい。また、比例式の制御弁で比例的に型開きを行うと、油圧回路中のサージ圧の発生による油圧の脈動をさらに少なくし、金型や低圧鋳造装置の振動をより防止するができ、より好ましい。
【0020】
これらの鋳造手段により作られるアルミホイールは、少なくとも意匠面の鋳肌表面からのSi粒子の突出量が垂直方向で10μm以下である。意匠面の鋳肌表面からのSi粒子の突出量を10μm以下であれば、プライマー処理や塗装処理などを行っても、光の反射によって意匠性を損ねることがない。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施の形態の一例を詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の油圧制御回路図であり、図3は、キュアリングする時間を20秒と短くして型開きしたときの、鋳造時間経過ごとの型閉め圧力の変化を示す図である。なお、図1において、図6に示す従来の油圧制御回路と同じ構成のものは同符号で示し、また、これらの説明を省略する。図1の油圧制御回路では、特に、電磁パイロット切換弁9のBポートからの配管5での、油圧シリンダ39のロッド側39bとチェック弁12間にリリーフ弁1を接続している。リリーフ弁1は3秒おきに6段階で配管5内の油圧約9MPaを実質的に0MPaにするものを適用した。
【0022】
図1のように構成された油圧制御回路での、待機状態からの型閉めは、前述した図6に示す従来の油圧制御回路と同様にして行われる。次に、型閉めした状態で、図5での密閉室31内に気体Nを供給して保持炉32内の溶湯Mの表面を加圧し、溶湯Mをキャビティ36内に充填する。充填された溶湯Mはキャビティ36の上端付近から凝固を始め、次第に降下して湯口36aの外殻近くが凝固し始める。そして、密閉室31内の加圧を解除してキャビティ36内の未凝固の溶湯Mを保持炉32に戻す。
【0023】
密閉室31内の加圧の解除から25秒間キュアリングして、型開きの指令(O)が出されると、電磁パイロット切換弁9のソレノイドに電流が流れて、油圧の流路をPポートとAポート、およびRポートとBポートが連通するように切り換える。ただしこの時点において、図3の実施の形態1(リリーフ弁)(点線)で示すように、型開き開始後、型閉め圧力を次第に減少させているので、ロッド側39bの油圧は実質的に0MPaであり、型閉め圧力は金型の自重による状態である。油圧の流路を切り替えることで、油圧シリンダ39のヘッド側39aに給油され、かつ、油圧シリンダ39のロッド39cに連結したプラテン38、および図5での上金型34を上昇させる。そして、上金型34を上昇端まで上昇させて、再び待機状態に戻る。
【0024】
このため、キュアリングする時間を25秒と短縮し、キュアリング終了直後に型開きしても、油圧シリンダの型閉め側の油圧が0MPaのため、型開き配管内の油圧が邪魔されることなくスムーズに油圧シリンダの駆動力に変換され、鋳造後のアルミホイール20の意匠面22にSi粒子の突出させることなく、鋳造時間を短縮して製造することができる。
【0025】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2の油圧制御回路図である。なお、図2において、図6に示す従来の油圧制御回路と同じ構成のものは同符号で示し、また、これらの説明を省略する。図2の油圧制御回路では、特に、電磁パイロット切換弁9のBポートからの配管5での、油圧シリンダ39のロッド側39bとチェック弁12間に比例電磁式リリーフ弁1Aを接続している。
【0026】
図2のように構成された油圧制御回路で、待機状態からの型閉めは、前述した図6に示す従来の油圧制御回路と同様にして行われる。次に、型閉めした状態で、図5での密閉室31内に気体Nを供給して保持炉32内の溶湯Mの表面を加圧し、溶湯Mをキャビティ36内に充填する。充填された溶湯Mはキャビティ36の上端付近から凝固を始め、次第に降下して湯口36aの外殻近くが凝固し始める。そして、密閉室31内の加圧を解除してキャビティ36内の未凝固の溶湯Mを保持炉32に戻す。
【0027】
密閉室31内の加圧の解除から20秒間キュアリングして、型開きの指令(O)が出されると、電磁パイロット切換弁9のソレノイドに電流が流れて、油圧の流路をPポートとAポート、およびRポートとBポートが連通するように切り換える。ただしこの時点において、図3の実施の形態2(比例電磁式リリーフ弁)(太い実線)で示すように、型開き開始後、型閉め圧力を次第に減少させているので、ロッド側39bの油圧は実質的に0MPaであり、型閉め圧力は金型の自重による状態である。油圧の流路を切り替えることで、油圧シリンダ39のヘッド側39aに給油され、かつ、油圧シリンダ39のロッド39cに連結したプラテン38、および図5での上金型34を上昇させる。そして、上金型34を上昇端まで上昇させて、再び待機状態に戻る。
【0028】
このため、キュアリングする時間を20秒と短縮し、キュアリング終了直後に型開きしても、油圧シリンダの型閉め側の油圧が0MPaのため、型開き側の油圧が邪魔されることなくスムーズに油圧シリンダの駆動力に変換され、鋳造後のアルミホイール20の意匠面22にSi粒子の突出させることなく、鋳造時間を短縮して製造することができる。
【0029】
次に、図5を用いて説明する。
図2の油圧制御回路を有する図5の低圧鋳造装置で、図4の(JIS)AC4CHのアルミニウム合金組成となるアルミホイール20を、以下のようにして鋳造した。先ず、待機状態から、スタート釦を押して上金型34を下降させ、横金型35と共に下金型33と型閉めしてアルミホイールのキャビティ36を画成した。なお、下金型33、上金型34、および横金型は350〜450℃となるように型温を制御し、またキャビティは保温と離型性を確保するため塗型を施した。次に、密閉室31内に窒素ガスNを0.02〜0.05MPaで供給して保持炉32内の約700℃のアルミニウム合金溶湯Mの表面を加圧し、キャビティ36に充填した。約2〜3分後、密閉室31内の加圧を解除し、ストーク37内の未凝固の溶湯Mを保持炉32に戻した。この10秒後、比例制御弁により油圧シリンダのロッド側の油を徐々に排出し、9秒間で0MPaまで油圧を低減した。また、密閉室31内の加圧の解除から20秒間キュアリングして、上金型34、横金型35の型開きを行い、さらに押出ピンでアルミホイール20を離型した。型開きのとき、油圧回路にサージ圧の発生による油圧の脈動はなく、上金型34の振動もなかった。キュアリングする時間は、従来のアルミホイールが完全に凝固完了してから型開きを開始した60秒から20秒となり、従来に比較して鋳造時間を40秒短縮することができた。
【0030】
次に、鋳造後のアルミホイール20の意匠面22を観察した。意匠面22から共晶Si粒子が突出しておらず、意匠面22に凹凸がなかった。この意匠面22の凹凸が10μm以下のアルミホイール20を機械加工後、意匠面22に粉体プライマー層、ベースコート層、トップコート層を被覆したところ意匠性が確保された外観性の良好なアルミホイールが得られた。
【0031】
【発明の効果】
以上、詳細に説明のとおり、本発明の低圧鋳造装置によれば、型開きにおける油圧回路中のサージ圧の発生による油圧の脈動を少なくして、金型や低圧鋳造装置が振動するのを防止し、密閉室内の加圧解除後のキュアリングする時間を短かくして、鋳造時間を短縮できる。また本発明の低圧鋳造装置により意匠面にSi粒子の凹凸を出さずに意匠性が確保できるアルミホイールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の油圧制御回路図である。
【図2】実施の形態2の油圧制御回路図である。
【図3】図1または図2の油圧制御回路で、キュアリングする時間を短くして型開きしたときの、鋳造時間経過ごとの型閉め圧力の変化を示す図である。
【図4】アルミホイール20の一例を示し、(a)はその断面図、(b)はその正面図である。
【図5】低圧鋳造装置の一例の、一部を断面した正面図である。
【図6】従来の油圧制御回路図である。
【図7】従来の油圧制御回路図での、鋳造時間と型閉め圧力との関係線図である。
【図8】Si粒子が意匠面22に突出して凹凸になった顕微鏡組織写真(×50)である。
【図9】特許第2887399号公報に開示される金型鋳造機用油圧制御回路図である。
【符号の説明】
1:リリーフ弁
1A:比例電磁式リリーフ弁
2:給油路
3:排油路
4,5,6,7:配管
8:減圧弁
9:電磁パイロット切換弁
10:カウンターバランス弁
11:チェック弁
12:チェック弁
13:リリーフ弁
20:アルミホイール
21:ディスク部
22:意匠面
23:スポーク部
24:フランジ部
25:リム部
30:低圧鋳造装置
31:密閉室
32:保持炉
33:下金型
34:上金型
35:横金型
36:キャビティ
37:ストーク
38:プラテン
39:油圧シリンダ(アクチュエータ)
39a:ヘッド側
39b:ロッド側
41:給油路
42:排油路
43:直流比例制御弁
44:油圧シリンダ
45:配管
46:配管
47:減圧弁
49:パイロット式チェック弁
50:チェック弁
51:チェック弁
52:第1バイパス管
53:第2バイパス管
54:スロットルチェック弁
55:2位置切換弁
C:型閉めの指令
M:溶湯
N:気体(窒素ガス)
O:型開きの指令
Claims (4)
- 金型と、前記金型の開閉を行う油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに連結した型開きを行うための加圧配管と、型閉めを行うための加圧配管を備えた低圧鋳造装置において、前記型閉めを行うための加圧配管にこの内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設けたことを特徴とする低圧鋳造装置。
- 金型と、前記金型の開閉を行う油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに連結した型開きを行うための加圧配管と、型閉めを行うための加圧配管を備えた低圧鋳造装置において、前記型閉めを行うための加圧配管にリリーフ弁または比例式の制御弁を設けたことを特徴とする低圧鋳造装置。
- 軽合金ホイール用の金型と、前記金型の開閉を行う油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに連結した型開きを行うための加圧配管と、型閉めを行うための加圧配管を備えた低圧鋳造装置を用い、
前記型閉めを行うための加圧配管にこの内部の油圧を10MPa/秒以下の速度で減圧可能な弁を設け、前記型開きを行うための加圧配管内に油圧を加圧するタイミングまでに前記型閉めを行うための加圧配管内の油圧を実質的に0MPaにしておくことを特徴とする低圧鋳造方法。 - 請求項3に記載の低圧鋳造方法であって、前記低圧鋳造装置は前記金型内に溶湯を加圧する為の密閉室を備え、前記密閉室からの溶湯の加圧を終了するタイミングから前記型開きを行うための加圧配管内に油圧を加圧するタイミングの間(キュアリングタイム)が40秒以内であることを特徴とする低圧鋳造方法。
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