JP2004301273A - 減速機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】減速機G1は、僅少の歯数差を有する外歯歯車130、132および内歯歯車140を備えた内接噛合遊星歯車構造の前段減速部100と、同じく僅少の歯数差を有する外歯歯車230、232および内歯歯車240を備え、前記前段減速部100の出力を受ける内接噛合遊星歯車構造の後段減速部200と、の2段の減速部を有し、後段減速部200のバックラッシを、前記前段減速部100のバックラッシの1/20〜1/30のレベルに小さく維持する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、減速機、特に、例えば産業用ロボットの関節駆動装置や精密工作機械のような精密機械を駆動・制御するために用いられる減速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、産業用ロボットの関節駆動装置や精密工作機械には、僅少の歯数差を有する外歯歯車および内歯歯車を備えた内接噛合遊星歯車構造の減速機が広く利用されている。
【0003】
この減速機は、外歯歯車又は内歯歯車の一方の歯車の自転を拘束した状態でいずれかの歯車を相手側の歯車に対して偏心揺動させ、この偏心揺動の際に自転の拘束されていない側の歯車に発生する当該自転成分を出力として取り出すもので、1段で大きな減速比が得られる。
【0004】
ところで、ロボットのアームのように、正逆回転が繰り返され、且つ所定の位置に確実に位置決めすることが要求されるような用途においては、各歯車のバックラッシの存在が問題となる。即ち、歯車の噛合には、不可避的にバックラッシが存在するが、このバックラッシが大きすぎると位置決め精度の低下や運動軌跡の狂いが生じるという問題が発生する。そのため、この種の精密機械を駆動・制御する減速機においては、このバックラッシの低減が大きな課題となっている。
【0005】
内接噛合遊星歯車構造におけるこのようなバックラッシをなくす工夫として、従来、例えば外歯歯車、内歯歯車等を正転用と逆転用とに2分割したり、あるいは正転用や逆転用に役割分担させたりする技術が提案されている。又、出願人は、外ピンと外ピン孔に関する隙間に着目した技術を提案している(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特公平5−86506号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来技術は、それぞれに相応の効果は得られるものの、伝達容量が半減したり製造コストが上昇したりするなどのデメリットも併せて有しており、必ずしも最良の結果が得られるものではなかった。
【0008】
また、近年では、駆動源としてのサーボモータの回転速度の上限が従来の数倍程度にまで高くなっているという事情があることから、減速機により高い減速比が求められるようになってきている。しかしながら、高減速比になればなるほど、歯形のモジュールが小さくなって行くため伝達容量は小さくなり、また、管理されたバックラッシに納まるように正確に歯形を形成し精度よく組付けるのがそれだけ困難となる傾向が生じる。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、高い減速比が実現可能でありながら、製造・組みつけが容易で低コストであり、且つ、バックラッシを小さく維持することのできる減速機を提供することをその課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、僅少の歯数差を有する外歯歯車および内歯歯車を備えた内接噛合遊星歯車構造の前段減速部と、僅少の歯数差を有する外歯歯車および内歯歯車を備え、前記前段減速部の出力を受けて更に減速する内接噛合遊星歯車構造の後段減速部と、の2段の減速部を有すると共に、前記前段減速部と後段減速部とを、バックラッシに関して同等の加工精度の管理下で製造した場合に、後段減速部のバックラッシが、前記前段減速部のバックラッシより、小さくなる比率をαとしたときに、該後段減速部のバックラッシが、(前段減速部のバックラッシ×α)よりも更に小さく設定された構成により、上記課題を解決したものである。
【0011】
なお、ここにおいて、「僅少の歯数差」とは、1〜6程度の歯数差をいう。
【0012】
本発明は、バックラッシが小さく且つ低コストで高減速比の得られる減速機を得るために、前段減速部及び後段減速部の双方とも内接噛合遊星歯車構造の2段の減速部を備えるようにし、その上で、該後段減速部のバックラッシを前段減速部のバックラッシよりも意図的に小さく設定した。
【0013】
これにより、高い減速比が実現可能でありながら、減速機全体としての製造・組みつけが容易で低コストであり、且つ、バックラッシの小さな減速機を得ることができる。
【0014】
この理由等の詳細は後に詳述する。
【0015】
なお、前記比率αは、現実的には、1/2〜1/3程度である。そのため、後段減速部のバックラッシが前段減速部のバックラッシの1/10より更に小さく設定されていれば、本発明の意図する効果を十分享受することができる。
【0016】
また、前段減速部の外歯歯車と内歯歯車との歯数差は2以上に設定するとよい。これにより本減速機において得ようとする総減速比を実現するのに要求される前段減速部の減速比、特に1/6〜1/30程度の領域の減速比を容易に得ることができるようになる。
【0017】
また、前記後段減速部における外歯歯車と内歯歯車との相対揺動成分を吸収するための機構が、揺動する歯車に形成した孔内において該外歯歯車と内歯歯車との偏心量相当分の軸心のずれを吸収可能な内ピンを備えた構造とされ、且つ、該内ピンが、自身の外周に偏心量に対応する偏心突起部を有し、前記孔の内周との間に偏心量相当の空間を有しない偏心内ピンとされていると、後段減速部のバックラッシを効果的に低減をすることができる。
【0018】
更に、前記前段減速部と前記後段減速部が分割可能とされていると、設計の自由度を一層増大させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の例を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る減速機の主要部分を示す断面図、図2、図3はそれぞれ図1のII−II線、III−III線に沿う断面図、図4はこの減速機を産業用ロボットの関節駆動に適用した例を示す断面図である。
【0021】
この減速機G1はモータ(サーボモータ)Mと連結され、いわゆるギヤドモータの一部として用いられるもので、図4に示されるような態様で、産業用ロボット10の第1アーム12に対して第2アーム14を回転させるために取り付けられる。
【0022】
減速機G1は、内接噛合遊星歯車構造の前段減速部100及び該前段減速部100の出力を受ける内接噛合遊星歯車構造の後段減速部200を備える。
【0023】
以下、前段減速部100、後段減速部200の順により詳細に説明する。
【0024】
図1において、前段減速部100は前段ケーシング102内に収容されている。前段ケーシング102は、本体ケーシング104、及びその軸方向両側に連結された第1、第2サイドカバー106、108からなる。前段減側部100の入力軸110の一端には連結部112が一体的に延在されている。該連結部112には挿入穴114が形成されており、該挿入穴114にモータMのモータ軸30が挿入・連結される。
【0025】
入力軸110は一対の軸受120、122を介して前段ケーシング102の第1サイドカバー106及び後述する前段出力軸170(=後段入力軸210)のフランジ体172によって支持されている。この一対の軸受120、122の間には偏心体124が組み込まれている。偏心体124の外周にはころ軸受126、128を介して2枚の外歯歯車130、132が揺動回転可能に装着されている。外歯歯車130、132は前段ケーシング102のケーシング本体104と一体化された内歯歯車140に内接噛合している。内歯歯車140の内歯はローラ状のピン(外ピン)142によって形成されている。
【0026】
2枚の外歯歯車130、132にはそれぞれ内ピン孔150、152が貫通形成され、内ピン160が挿入されている。内ピン160にはパイプ状の内ローラ162が回転自在に装着されている。内ピン160は前段出力軸170と一体的に形成されたフランジ体172に固定され、該フランジ体172から片持状態で支持されている。
【0027】
前段出力軸170は、そのまま後段減速部200の後段入力軸210となっている。
【0028】
後段減速部200は、後段ケーシング202内に収容されている。
【0029】
後段入力軸210は一対のテーパーローラベアリング222、220を介して後述する第1、第2出力フランジ266、268によって支持されると共に、フランジ体172の部分については、ボールベアリング190を介して前段ケーシング102の第2サイドカバー108によっても支持されている。該一対のテーパーローラベアリング220、222の間には偏心体224が組み込まれている。偏心体224の外周にはころ軸受226、228を介して2枚の外歯歯車230、232が装着されている。外歯歯車230、232は後段ケーシング202と一体化された内歯歯車240に内接噛合している。内歯歯車240の内歯はローラ状のピン(外ピン)242によって形成されている。
【0030】
2枚の外歯歯車230、232にはそれぞれ内ピン孔250、252が貫通形成され、高精度な偏心内ピン260が挿入されている。この偏心内ピン260は、前段減速部100の内ピン160と異なり、その外周にころ軸受262、263を介して内ピン孔250、252の全内周と摺動可能な(偏心量に対応する)偏心突起部264、265を備え、内ピン孔250、252の内周との間に偏心量相当の空間を有しない。
【0031】
この偏心内ピン260は、外歯歯車230、232の両サイドに配置された円板状の一対の第1、第2出力フランジ266、268にテーパーローラベアリング270、272を介して両持ち支持されている。
【0032】
第1、第2出力フランジ266、268は、それぞれテーパーローラベアリング274、276を介して後段ケーシング202に回転可能に支持されている。
【0033】
後段入力軸210、偏心内ピン260及び第1、第2出力フランジ266、268がテーパーローラベアリング220、222、270、272、274、276によって支持されているのは、本実施形態に係る減速機が産業用ロボット10の第1アーム12と第2アーム14の関節駆動の用途に用いられるものであるため、該第1、第2アーム12、14のいずれか側からスラスト方向の荷重が入力される可能性があるためである。
【0034】
ここで、図4を参照して、各部材の連結態様等について説明する。
【0035】
後段減速部200の第1、第2出力フランジ266、268はキャリヤピン280によって強固に固定されている。第1出力フランジ266とキャリヤピン280の固定は、ボルト282によって行われる。一方、第2出力フランジ268とキャリヤピン280の固定は、第2アーム14を貫通して挿入・螺合されるボルト286によって行われる。
【0036】
モータMのケーシング32と前段減速部100の第1サイドカバー106はインロー50を介してボルト52によって連結・分離可能とされている。また、前段減速部100の第2サイドカバー108と後段減速部200の後段ケーシング202も、インロー54を介してボルト55によって連結・分割可能とされている。更に、この第2サイドカバー108及び後段ケーシング202の当該ボルト位置P1が産業用ロボット10の第1アーム12の取り付け孔位置P2と一致しており、第2サイドカバー108及び後段ケーシング202の連結、更にこれらのカバー108及びケーシング202の第1アーム12への取り付けが、ボルト55によって同時に行われる構成とされている。
【0037】
なお、前段減速部100の外径は前記後段減速部200の外径より小さく設定され、これによって確保される空間S1に、エンコーダ(図示略)等の付属品が収容可能とされている。
【0038】
図2から明らかなように、前段減速部100の外歯歯車130、132の歯数は「12」、内歯歯車140の歯数は「14」、歯数差は「2」であり、減速比は、2/12=1/6である。また、図3から明らかなように、後段減速部200の外歯歯車230、232の歯数は「78」、内歯歯車240の歯数(外ピン242の数)は「80」、歯数差は「2」であり、減速比は、2/78=1/39である。なお、後段減速部200は、バックラッシの管理を含め、精密に制作する必要があるため、その減速比は1/50以下に設定するのが望ましい。
【0039】
ここで、バックラッシに関して詳細に説明する。
【0040】
「バックラッシ」とは、当該減速部の入力軸を止めた状態で、出力軸が動く(回転する)範囲のことであり、単位は「度」又は「分」である。
【0041】
一般に、同一レベルの製造管理の下で減速部を製造した場合、減速比が高くなるほど、また、枠番(大きさ、或いは容量の概念)が大きくなるほど、バックラッシは小さくできる傾向にある。例えば、減速比1/39の後段減速部200のバックラッシA2は、加工精度と枠番が同等であれば、減速比1/6の前段減速部100のバックラッシA1の1/2〜1/3程度に小さくなる。これが、この減速比及び枠番の組み合わせにおける「前段減速部と後段減速部とを、バックラッシに関して同等の加工精度の管理下で製造した場合に、後段減速部のバックラッシが、前段減速部のバックラッシより、小さくなる比率α」に相当する(α=1/2〜1/3)。
【0042】
本実施形態では、後段バックラッシA2を、この比率αの更に1/10程度にまで、意図的に小さくしたバックラッシとしている。すなわち、結果として、後段バックラッシA2は、前段バックラッシA1の1/20〜1/30となるようにしている。
【0043】
なお、バックラッシを小さくするための製造技術自体については、公知のバックラッシ低減手法を採用できる。例えば、最も単純には、寸法の僅かに異なる外歯歯車を何種類か用意しておき、実際に組み込んで該外歯歯車と内歯歯車との組におけるバックラッシの発生状態及び回転の円滑性を確認しながら、最適な外歯歯車を選択するという方法であってもよい。或いは、前述したように、例えば外歯歯車、内歯歯車等を正転用と逆転用とに軸方向に2分割したりするものであっても良い。
【0044】
次に、この実施形態に係る減速機G1の作用を説明する。
【0045】
モータMの回転によって前段減速部100の入力軸110が回転すると、該入力軸110と一体化された偏心体124も回転する。偏心体124が回転すると、外歯歯車130、132は入力軸110の周りで揺動回転を行おうとするが、内歯歯車140によってその自転が抑制されるため、外歯歯車130、132はこの内歯歯車140に内接しながら殆ど揺動のみを行うことになる。しかしながら、外歯歯車130、132の歯数は12、内歯歯車140の歯数は14に設定されているため、入力軸110の一回転毎に外歯歯車130、132は内歯歯車140に対してその歯数差「2」だけずれる(自転する)ことになる。これは、入力軸110の一回転が外歯歯車130、132の−2/12の回転、即ち、減速比−1/6の回転に減速されたことを意味する。なお、マイナスの符号は、外歯歯車130、132の回転方向が入力軸110の回転方向と逆になることを示している。この外歯歯車130、132の回転は内ピン孔150、152及び内ローラ162の隙間によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが内ピン160を介して前段出力軸170(後段入力軸210)へと伝達される。
【0046】
後段減速部200においても、前段減速部100と全く同様の減速作用が行われる。即ち、後段入力軸210の一回転毎に外歯歯車230、232は内歯歯車240に対してその歯数差「2」だけずれる(自転する)。但し、後段減速部200の外歯歯車230、232の歯数は78、内歯歯車240の歯数は80に設定されているため、結局、後段入力軸210の1回転は外歯歯車の−2/78の回転、即ち、減速比−1/39の回転に減速されることになる。なお、回転方向は、前段減速部100において一度逆転方向となるが、後段減速部200において再び逆転するため、結局、後段減速部200の外歯歯車230、232は、モータMの回転と同一方向に回転することになる。
【0047】
外歯歯車230、232の回転は偏心内ピン260の偏心突起部264、265の存在によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが該偏心内ピン260を介して外歯歯車230、232の両サイドに配置された第1、第2出力フランジ266、268に伝達される。偏心内ピン260は内ピン孔250、252の内周との間に偏心量相当の空間を有しないため、ここでのバックラッシの増大が防止される。第1、第2出力フランジ266、268はキャリヤピン280を介して強固に連結されているため、両出力フランジ266、268は一体的に回転し、その回転を相手機械である産業用ロボット10の第2アーム14に、ボルト286及び図示しない第2アーム14と出力フランジ266とを連結するボルトを介して伝達する(図4参照)。
【0048】
この結果として前段減速部100との掛け合わせで(−1/6)x(−1/39)=1/234の減速比に相当する減速が実現される。
【0049】
ここでこの実施形態でのバックラッシに関する作用をより詳細に説明する。
【0050】
後段減速部200は、産業用ロボット10の第2アーム14と一体化されており、そのバックラッシの大小はそのまま産業用ロボット10の制御性能の高低に直接的に影響する。前述したように、本実施形態においては、偏心内ピン260を採用するなど、後段減速部200の方にバックラッシに関してより厳しい条件を付した上で製造し、結果として比率αを大きく下回るレベル、即ち前段減速部100のバックラッシA1の1/20〜1/30程度が確保されるようにしているため、良好なバックラッシ特性を享受できる。
【0051】
また、このことは、視点を変えて観察すると、前段減速部100の方はバックラッシA1に関して厳しさの要求されない設計・製造でよいということになり、低コスト化が実現できることを意味する。用途にもよるが、場合によっては汎用の減速部をそのまま流用できることもある。
【0052】
具体例で言うならば、例えば、後段減速部200のバックラッシA1が0.3分であったとき、前段減速部のバックラッシA1は、その20倍から30倍、ということになるため、6分〜9分でよいことになる。このレベルならば、前段減速部100を後段減速部200よりはるかに低コストでの製造ができる。また、この前段減速部100でのバックラッシA1は、後段減速部200を経る段階で、後段減速部200の減速比(の分母)分の1に圧縮されることを考慮し、最終的な第1、第2出力フランジ266、268におけるトータルのバックラッシに大きな影響は及ぼさないように設定されている。
【0053】
なお、上記実施形態では、比率αを大きく下回るレベルにまで前段減速部100に比して後段減速部200のバックラッシA2を低減していたが、本発明では、両バックラッシA1、A2に関し、必ずしもここまで差を付ける必要はない。前述したように、同等の加工精度の場合、定性的には、減速比が高くなればなるほど、また、枠番が大きくなればなるほど、比率αは小さくなる傾向にある。しかし、比率αと減速比や枠番との関係は、必ずしもリニアではない。減速比に関して言うならば、1/20以上に高くなると、以降はそれ程小さくはならない。枠番についても同様である。
【0054】
結果的にみるならば、こうした減速比や枠番の影響(比率αのばらつく範囲)は、最大でも1/5程度までである。従って、後段バックラッシA2に関し、この比率αを明確に下回るレベル、つまり後段減速部200のバックラッシA2が前段減速部100のバックラッシA1の1/10以下(より好ましくは1/15以下)のレベルにまで「意図的に小さく」確保されるようにするならば、本発明所定の効果を相応に享受できるようになる。
【0055】
実施形態の作用の説明を続ける。
【0056】
前段減速部100は、動力伝達経路における上流側に位置しているため、入力軸110をはじめ、各部材が高速で回転、あるいは揺動をしている。しかしながら、そのバックラッシA1が相対的に大きく設定されているため、各部材間(特に外歯歯車130、132と内歯歯車140の歯面間)に豊富な潤滑オイルを確保することができ、潤滑性及び耐久性を向上させることができる。
【0057】
また、この実施形態では、2段の内接噛合遊星歯車構造の減速部100、200を有するようにしたため、高い減速比を容易に実現することができる。即ち、本実施形態では、減速部の構造として、単体ではより低コストの平行軸歯車構造を敢えて採用せず、両減速部100、200とも内接噛合遊星歯車構造を採用した。この構成によって次のような作用が得られる。
【0058】
即ち、駆動源として用いられるモータ(サーボモータ)Mは、以前は1000rpm〜2000rpm程度の回転速度で回転するのが一般的であったが、近年は数千rpmから高いものでは10000rpmに近いサーボモータも出現している。そのため、減速機において求められる総減速比もより高くなり、具体的には150〜400程度の総減速比が求められるようになってきている。しかしながら、平行軸歯車構造の減速部の場合、実用的には1段では1/5程度の減速比しか得られないため、前段減速部の構造として平行軸歯車構造を採用した場合、後段減速部は、単純計算で1/30〜1/80程度の高い減速比が要求されることになる。
【0059】
後段減速部が内接噛合遊星歯車構造の場合、この領域の減速比の実現は十分可能であるが、最も作りやすい減速比の領域は1/30〜1/40の範囲であってそれ程広くはない。前述したように、減速比が1/20以上に高くなると、それより高くてもバックラッシはあまり小さくはならない。むしろ、製造の容易性、あるいは伝達容量の確保、何よりもバックラッシの小さい精密な部品の加工・組み立てという面で、このような高減速比の設定は好ましいとは言えない。この意味で、総減速比180以上を得たい場合には前段減速部の減速比は、これを1/6以上に設定するのか好ましいが、平行軸歯車構造で1/6以上を実現しようとすると、前段ケーシングの外周が大きくなったり、前段減速部を2段にせざるを得なくなったりするという不具合の発生が避けられない。
【0060】
本実施形態では、前段減速部100の構造が内接噛合遊星歯車構造であるため、1/6以上の減速比を容易に実現できる。前段ケーシング102の外周を小さくできるので、空いたスペースにエンコーダ等の制御機器を配置することも可能となる。
【0061】
この結果、両減速部100、200とも、製造し易い領域の減速比の減速部とすることができ、とりわけ製造条件の厳しい後段減速部200の設計・製造が容易となる。なお、1/30以下の減速比は、外歯歯車と内歯歯車との歯数差が1の設計でも製造自体は可能であるが、本実施形態では該歯数差を2以上に設定したため、バックラッシの小さいものに関して一層容易に実現できる。
【0062】
更に、内接噛合遊星歯車構造の減速部は、平行軸歯車構造の減速部に比べて噛み合い率が高いために、経時的な摩耗が少ない。産業用ロボットの関節駆動装置用の減速機をはじめ、この種の精密機械駆動用の減速機は、連続運転されることが多く、一般に稼働時間が長い。経時的な摩耗はバックラッシ増大の原因となる。本実施形態では、両減速部100、200ともその構造が内接噛合遊星歯車構造であるため、良好なバックラッシ特性を長期に亘って得ることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、前段減速部100と後段減速部200、及び、前段減速部100とモータMが、それぞれ分割可能とされているため、モータMと後段減速部100との間に存在する前段減速部100のみを変更あるいは入れ替え可能である。そのため、高精度であるが故に高コストとなりやすい後段減速部200を1種類のみの設計とし、既に豊富な種類が存在する汎用の内接噛合遊星歯車構造の減速装置のいずれかを前段減速部100として適宜に用意し、これをモータMと後段減速部200との間に組み込むことにより、さまざまな減速比を有するバックラッシの小さな減速機を容易に得ることができ、設計の自由度を増大させることができる。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、高い減速比が実現可能でありながら、製造・組みつけが容易で低コストであり、且つ、バックラッシの小さな減速機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る減速機の主要部分を示す断面図
【図2】図1のII−II線に沿う断面図
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図
【図4】上記減速機を産業用ロボットの関節部分に適用した例を示す断面図
【符号の説明】
10…産業用ロボット
12…第1アーム
14…第2アーム
100…前段減速部
102…前段ケーシング
106…第1サイドカバー
108…第2サイドカバー
110…入力軸
124…偏心体
130、132…外歯歯車
140…内歯歯車
160…内ピン
170…前段出力軸
200…後段減速部
202…後段ケーシング
210…後段入力軸
230、232…外歯歯車
240…内歯歯車
260…偏心内ピン
262、264…第1、第2出力フランジ
Claims (6)
- 僅少の歯数差を有する外歯歯車および内歯歯車を備えた内接噛合遊星歯車構造の前段減速部と、僅少の歯数差を有する外歯歯車および内歯歯車を備え、前記前段減速部の出力を受ける内接噛合遊星歯車構造の後段減速部と、の2段の減速部を有すると共に、
前記前段減速部と後段減速部とを、バックラッシに関して同等の加工精度の管理下で製造した場合に、後段減速部のバックラッシが、前記前段減速部のバックラッシより、小さくなる比率をαとしたときに、該後段減速部のバックラッシが、(前段減速部のバックラッシ×α)よりも更に小さく設定された
ことを特徴とする減速機。 - 請求項1において、
前記後段減速部のバックラッシが、前記前段減速部のバックラッシの1/10より更に小さく設定されている
ことを特徴とする減速機。 - 請求項1または2において、
前記前段減速部の外歯歯車と内歯歯車との歯数差が2以上に設定されていることを特徴とする減速機。 - 請求項1〜3において、
前記前段減速部の減速比が1/6以上に設定されている
ことを特徴とする減速機。 - 請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記後段減速部における外歯歯車と内歯歯車との相対揺動成分を吸収するための機構が、揺動する歯車に形成した孔内において該外歯歯車と内歯歯車との偏心量相当分の軸心のずれを吸収可能な内ピンを備えた構造とされ、且つ、
該内ピンが、自身の外周に偏心量に対応する偏心突起部を有し、前記孔の内周との間に偏心量相当の空間を有しない偏心内ピンとされている
ことを特徴とする減速機。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記前段減速部と前記後段減速部が分割可能とされている
ことを特徴とする減速機。
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JP2003096394A JP2004301273A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 減速機 |
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