JP2004300598A - 繊維構造物 - Google Patents

繊維構造物 Download PDF

Info

Publication number
JP2004300598A
JP2004300598A JP2003093485A JP2003093485A JP2004300598A JP 2004300598 A JP2004300598 A JP 2004300598A JP 2003093485 A JP2003093485 A JP 2003093485A JP 2003093485 A JP2003093485 A JP 2003093485A JP 2004300598 A JP2004300598 A JP 2004300598A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
heat
moisture absorption
fiber
fiber structure
hollow microcapsules
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003093485A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Irisa
剛 入佐
Hiroe Yokoi
宏恵 横井
Takaharu Okamoto
敬治 岡本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2003093485A priority Critical patent/JP2004300598A/ja
Publication of JP2004300598A publication Critical patent/JP2004300598A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Gloves (AREA)
  • Undergarments, Swaddling Clothes, Handkerchiefs Or Underwear Materials (AREA)
  • Chemical Or Physical Treatment Of Fibers (AREA)
  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)
  • Professional, Industrial, Or Sporting Protective Garments (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、衣服等の着用時において、特に冬場、衣服内の温度を高め、さらに安静時においても優れた保温性を有する繊維構造物を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の保温性繊維構造物は、吸湿率差(ΔMR)が2%以上30%以下で吸放湿性を有する素材で構成された繊維構造物であり、かつ該繊維構造物の繊維表面に中空マイクロカプセルを固着してなることを特徴とするものである。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿発熱性を有し、かつ中空マイクロカプセルによる断熱保温効果を兼ね備え、安静時においても優れた保温性を有する繊維構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
保温性が必要とされる繊維製品としては、特に冬場に用いられる、肌着、インナー、スポーツウェア等の衣料や、ソックス、手袋、タイツ、ストッキング、サポーター等が挙げられる。
【0003】
従来の保温性繊維製品については、中綿素材のように含気率を上げた素材を用い不動空気層を作ることにより断熱性を向上させ、または、アルミニウム箔膜等を利用して輻射熱を反射させ断熱性を向上させることにより、保温性の向上が図られていた。また、不動空気層形成による断熱性向上に関しては、中空状粒子を布帛に固着させる方法(特許文献1参照)が提案されている。さらに、合成繊維にセラミックスを練り込み、セラミックスの遠赤外線効果を利用しようとする方法(特許文献2、3参照)が提案されている。
【0004】
しかしながら、上述の含気率を上げた素材を用いた場合はカサ高になり、着用時の運動性が阻害される。また、輻射熱を反射させる素材はアルミニウム箔膜等の金属の色が付き、色展開に制限がある。布帛に中空状粒子を固着させる方法では、中空状粒子の固着量に制限があるため、実際着用に適した付着量では中空状粒子だけによる断熱効果は低く、保温性向上効果は低い。さらに、無機材料であるセラミックスの遠赤外線効果を利用しようとする方法では常温では衣服内温度を快適に保つ程の発熱量がでない、などの問題があり不十分である。
【0005】
これらの課題を解決するものとして、吸放湿吸水発熱繊維を用いた衣料(特許文献4参照)が提案されている。また、繊維に吸放湿性を付与する方法としては、原糸面からは、紡糸前に特定のシュウ酸塩を配合し、紡糸後の工程で一部溶出させ、毛細凝縮孔を形成させたり(特許文献5参照)、金属スルホネート化合物を含むポリエステル繊維をアルカリ処理することによって毛細凝縮孔を形成させたり(特許文献6参照)して吸湿性を付与する方法が提案されている。さらに、合成繊維原料に吸放湿性を有する無機系微粒子として特定のシリカ粒子を配合して紡糸することにより、シリカ粒子そのものを合成繊維に練り込む方法(特許文献7参照)も提案されている。本発明者らも、繊維表面に吸放湿性を有する高分子化合物を付着させる方法(特許文献8参照)、原糸製造工程以降の工程で吸放湿性を有する無機微粒子を付与する方法(特許文献9参照)を先に提案した。
【0006】
保温衣服に吸放湿性を付与する目的は、たとえば、吸放湿性を有する繊維は、水分子を吸着して発熱すること(吸湿発熱)が古くから知られており(非特許文献1参照)、この吸着熱を利用し積極的に発熱する保温衣料を提供することであり、発熱、保温効果も高い。しかしながら、この方法による発熱効果は繊維等に吸着する水分量に依存しているため、衣服として使用した場合、発汗等による水分発生量が少ない安静時では必然的に発熱量が小さくなり、保温効果としては低いものとなってしまう。多くの水分発生が期待できる運動時では人体は既に暖まっており保温性は余り必要ない。このように吸湿発熱だけによる保温衣料も実際に必要とされる安静時の保温衣料としては未だ不十分である。
【0007】
【特許文献1】特開平11−217770号公報
【0008】
【特許文献2】特開昭63−105105号公報
【0009】
【特許文献3】特開平01−314715号公報
【0010】
【特許文献4】特公平7−59762号公報
【0011】
【特許文献5】特公昭62−7285号公報
【0012】
【特許文献6】特開昭60−155770号公報
【0013】
【特許文献7】特開平09−241925号公報
【0014】
【特許文献8】特開平14−212880号公報
【0015】
【特許文献9】特開平14−180375号公報
【0016】
【非特許文献1】繊維便覧−原料編−(発行:丸善(株))第245頁
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、衣服等の着用時において、特に冬場、衣服内の温度を高め、さらに安静時においても優れた保温性を有する繊維構造物を提供せんとするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の保温性繊維構造物は、吸湿率差(ΔMR)が2%以上30%以下で吸放湿性を有する素材で構成された繊維構造物であり、かつ該繊維構造物の繊維表面に中空マイクロカプセルを固着してなることを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記課題、つまり安静時においても優れた保温性を有する保温性繊維構造物について鋭意検討し、吸放湿性を有する素材で構成された繊維構造物に中空マイクロカプセルを固着してみたところ、吸湿発熱による発熱効果と中空マイクロカプセルによる断熱保温効果との相乗効果により、安静時においても優れた保温性繊維構造物を提供することができることを究明したものである。
【0020】
本発明でいう吸湿率差(以下、ΔMRと記載)とは、下記式で表される数値を指す。
【0021】
ΔMR(%)=MR2−MR1
ここで、MR1とは絶乾状態から摂氏20℃×湿度65%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(重量%も、本発明では単に%という)をいい、例えば、衣服であれば、洋服ダンスの中に入っている状態、すなわち着用前の環境に相当する。またMR2とは絶乾状態から摂氏30℃×湿度90%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(%)をいい、例えば、衣服であれば、衣服着用時における衣服内の環境にほぼ相当する。ここで、吸湿率はJIS L1096「水分率」に基づいて測定した。
【0022】
ΔMRは、MR2からMR1の値を差し引いた値で表されるものであり、例えば、衣服であれば、衣服を着用したときに、不感蒸泄や運動時の発汗等による衣服内の湿気をどれだけ吸収するかに相当し、ΔMR値が高いほど快適といえる。一般に、ポリエステル繊維のΔMRは0%、ナイロン繊維で2%、木綿で4%、ウールで6%程度である。ΔMRが2%以上30%以下の範囲において、吸湿発熱による保温効果が高く、快適な保温性が得られる。2%より小さい場合は、吸湿発熱性が低すぎるため、十分な保温効果が得られず、30%より大きい場合は、逆に吸湿発熱による温度上昇が高くなりすぎるため、暑くなりすぎ、快適な保温性が得られない。
【0023】
本発明でいう吸放湿性を有する繊維素材としては、吸湿率差(ΔMR)が2%以上30%以下である、例えば、繊維便覧−原料編−(発行:丸善(株))の245ページに記載の素材のように、吸放湿性を有するどのような繊維を用いたものでも使用することができる。すなわち、吸湿率差(ΔMR)が2%以上30%以下であれば、前記木綿、ウールなどの天然繊維、ナイロンのような合成繊維の他に改質変性合成繊維を、かかる吸放湿性を有する繊維素材として使用することができる。
【0024】
かかる改質合成繊維としては、たとえば合成繊維に吸湿ポリマー等を分散して練り込むことにより、吸放湿性を向上させた繊維を使用することができる。例えば、ナイロンにポリビニルピロリドン等の吸放湿ポリマーを錬り込み紡糸して得られた吸湿性向上ナイロン糸等や、後加工等により吸放湿性のあるポリマーおよび/または吸湿性のある微粒子を繊維表面に固着させることにより、吸放湿性を増加させ吸放湿性を向上した改質繊維素材を用いることができる。例えば、ナイロンに吸湿ポリマーであるポリビニルピロリドンを5重量%練り込むことにより吸湿率差(ΔMR)が4%程度の改質繊維素材が得られ、ポリエステル100%素材にアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸とPEG#1000ジメタクリレートの共重合物を10重量%程度付着させることにより吸湿率差(ΔMR)が3%程度の改質繊維素材が得られる。さらに、合成繊維に吸湿ポリマー等を分散して練り込むことにより、吸湿性を向上させた繊維に、後加工等により吸湿性のあるポリマーおよび/または吸湿性のある微粒子を繊維表面に固着させることにより吸放湿性をさらに増加させた改質繊維素材を用いてもよい。本発明においては、上記の方法にとらわれず、いかなる方法でもポリエステル繊維やポリアミド繊維、アクリル繊維の如き合成繊維に、親水基を1つ以上含む単量体をグラフト共重合や架橋反応により付与させ吸放湿性を付与した改質繊維素材を用いることができる。
【0025】
さらに、ナイロンにポリビニルピロリドン等の吸放湿ポリマーを錬り込み紡糸して得られた吸湿性向上ナイロン糸とポリエチレンテレフタレート繊維との混紡品や、天然セルロース繊維とアクリル系繊維の混織素材のように、吸湿率差(ΔMR)の高い素材と低い素材を混用してもよく、いかなる方法を用いてでも吸湿率差(ΔMR)が2%以上30%以下の範囲とした素材を用いればよい。
【0026】
上記のように、本発明においては吸湿率差(ΔMR)が2%以上30%以下である繊維素材を用いることが重要であり、そのような素材で構成した繊維構造物であれば、繊維の形態として、フィラメント、ステープルまたは紐等の糸条物、あるいは織編物や不織布等の布帛などいかなる形態であってもよい。また、繊維構造/組織としては、混繊、混紡、混織、交織、交編した混用素材も含まれる。
【0027】
ここで、従来の技術の項に記したように、吸湿発熱だけによる発熱保温効果は繊維等に吸着する水分量に依存しているため、衣服として使用した場合、発汗等による水分発生量が少ない安静時では必然的に発熱量が小さくなり、保温効果としては低いものとなってしまう。しかし、発熱量は小さいが熱を産むという点では、吸湿発熱効果は非常に魅力であり、本発明者らは少ない発熱を如何に逃がさず、安静時の保温性向上に利用するかについて検討し、中空マイクロカプセルによる断熱保温効果との組み合わせによる保温性の相乗効果が生まれることを究明した。
【0028】
吸湿による吸湿発熱効果と中空マイクロカプセルによる断熱保温効果との組み合わせで生じる保温性の相乗効果については、以下のように考える。まず、人間が絶えず行っている不感蒸泄等による水分を繊維構造物が吸着することにより吸湿発熱する。従来のような吸湿発熱効果だけを用いた場合では、発熱量が小さいため、皮膚温が上昇する前に繊維構造物を通して熱が逃げてしまい、安静時では暖かさを実感できない。本発明の繊維構造物は中空マイクロカプセルにより断熱効果を向上させているため、熱を逃がさずその熱により皮膚表面温度が若干ではあるが上昇する。次いで、皮膚温上昇により発汗等が促され、吸湿発熱が起こる。この繰り返しにより、相乗的に保温性が増すと考えられる。
【0029】
吸放湿性を有する繊維は、気相および液相の水分を吸着して発熱すること(吸湿発熱)が古くから知られており、本発明ではこの吸湿発熱を保温の第1の手段として用いている。
【0030】
また、本発明の中空マイクロカプセルは、マイクロカプセル内に炭化水素類や低沸点溶剤を封入した熱膨張性マイクロカプセルが好ましい。このマイクロカプセルは、80〜200℃の比較的低温度で短時間の加熱により、直径が約4〜5倍、体積が50〜100倍に膨張する平均粒径2〜30μmのマイクロカプセルが好ましく使用される。
【0031】
前記炭化水素類としては、ブタン,テトラメチルメタン,イソペンタン,ノルマルペンタン,トリメチルエチルメタン,ジメチルイソプロピルメタン,ジメチルプロピルメタン,メチルジエチルメタン,ノルマルヘキサン,2,2−ジメチルペンタン,2,4−ジメチルペンタン,2,2,3−トリメチルブタン,3,3−ジメチルペンタン,2,3−ジメチルペンタン,2−メチルヘキサン,3−メチルヘキサン,3−エチルペンタン,ノルマルヘプタン,ノルマルオクタンやその異性体等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
また、前記低沸点溶剤としては、イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシラン等の揮発性有機溶剤(膨張剤)等を使用することができる。
【0033】
かかるマイクロカプセルの殻壁としては、塩化ビニリデン,アクリロニトリル,アクリロニトリルと塩化ビニリデンとの共重合物,アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系樹脂とメチルメタクリレートやエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルとの共重合物,ニトリル系樹脂とメチルアクリレートやエチルアクリレート等のアクリル酸エステルとの共重合物等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
かかるマイクロカプセルが、その殻壁の軟化点以上に加熱されると、該殻壁が軟化しはじめ、同時に封入されている膨張剤の蒸気圧が上昇し、該殻壁が押し広げられ、その結果、該マイクロカプセルが膨張する。かかる熱膨張性マイクロカプセルは、比較的低温、短時間で膨張して、独立気泡を形成することができるので、比較的扱い易く、本発明には好ましく用いられる。これら中空マイクロカプセルの市販品としては、マツモトマイクロスフェアーF−30D、F−30GS、F−20D、F−50D、F−80D(松本油脂製薬(株)製)などが知られているが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0035】
本発明において、膨張後の中空マイクロカプセルの平均粒径は5μm以上200μm以下であるものが好ましく、10μm以上150μm以下であるものがさらに好ましい。
【0036】
かかる中空マイクロカプセルの平均粒径が大きすぎると、繊維構造物に固着させた場合、風合いが硬くなる傾向がある上に、加工を施した繊維構造物上で白く浮き出た状態に見え(白ボケ現象という)る傾向があるし、さらに、かかる中空マイクロカプセルを含む加工液を調製するとき、中空マイクロカプセルの分散性が悪くなる傾向があり、繊維構造物に対して均一に加工を施しにくくなる傾向がある。逆に、該中空マイクロカプセルの平均粒径が小さすぎると、該中空マイクロカプセルが、繊維表面に固着していても、断熱効果が低くなってしまう傾向が出てくる。
【0037】
かかる中空マイクロカプセルの繊維構造物に対する固着量は、繊維構造物に対して1〜30重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、1〜10重量%がさらに好ましい。すなわち、中空マイクロカプセルの固着量が低すぎると、中空マイクロカプセルによる断熱効果が低くなってしまう傾向があり、固着量が高すぎると、加工を施した繊維構造物上で白く浮き出た状態に見える傾向が出てくる。
【0038】
ここで、本発明における繊維構造物に対する中空マイクロカプセルの固着量は、次の式により求められる値をいう。
【0039】
中空マイクロカプセル固着量(重量%)=[(A−B)/B]×100
(Aは加工後の繊維構造物の重量、Bは加工前の繊維構造物と、中空マイクロカプセル以外の重量との合計重量を示す。)
また、Aの加工後の繊維構造物の重量としては、中空マイクロカプセルを固着する繊維構造体の重量のみを意味し、例えば、ブルゾンの裏地として本発明の繊維構造物が用いられた場合には、裏地の加工後の繊維構造物の重量をAとするのであり、その他の表地や、中綿等は含まない。
【0040】
本発明においては、中空マイクロカプセルを繊維構造物に固着させるためにバインダーが用いられる。かかるバインダーとしては、風合い、接着強度、洗濯耐久性の点で、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびメラミン系樹脂から選ばれた少なくとも1種のバインダーが好ましく用いられる。
【0041】
かかるシリコーン系樹脂は、一般的に耐熱性、耐光性および耐薬品性に優れているので、本発明には好ましく使用される樹脂である。かかるシリコーン系樹脂の具体例としては、シリコーンレジンもしくはシリコーンワニスという分類に属する縮合架橋型樹脂がより好ましく使用される。かかる縮合架橋型樹脂は、テトラエトキシシランやメチルトリメトキシシランなどの縮合架橋型樹脂を、単独または数種の配合物を縮合して得ることができるものが含まれる。これら縮合架橋型樹脂は、3次元構造の樹脂を形成し、シリコーン系樹脂の中でも、最も耐熱性や耐薬品性に優れたものであり、特に好ましく使用される。
【0042】
また、前記ウレタン系樹脂としては、イソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られる共重合体を使用することができ、かかるイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートの単独またはこれらの混合物を用いることができる。また、ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどを用いることができる。
【0043】
また、前記アクリル系樹脂としては、メタアクリル酸、メタアクリレート、n−ブチルメタアクリレートなどメタアクリレート系モノマーの1種もしくは2種以上の重合体、もしくはこれらとメタアクリル系モノマーと他の共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が好ましく使用される。
【0044】
さらに、前記メラミン系樹脂としては、トリアジン環を含有し、かつ少なくとも2個の重合性官能基を有する化合物が好ましく使用される。かかる重合性官能基としては、アミノ基が好ましく、アミド基がより好ましく使用される。また、このようなメラミン系樹脂の中でも、アミノ基およびアミド基の各窒素に結合している水素がメチロール基、エチロール基およびN−メチロールアミド基のいずれかで置換された化合物がさらに好ましく使用される。なお、かかる重合性官能基以外の基については、水素、水酸基、フェニル基、アルキル基、アルキルエステル基など、どのような基であってもよい。
【0045】
本発明においては、バインダー自体またはバインダーが付与されてなる繊維構造物全体に、吸水性を付与することもできる。かかる吸水性を付与する方法としては、親水性を有する水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)およびアミド基(−CONH)から選ばれた少なくとも1種をもつ吸水性シリコーン系樹脂や、エチレングリコールを多数付加した吸水性シリコーン系樹脂や、ポリエチレンオキサイド基含有化合物や、セルロース系化合物などの親水化加工剤を、バインダーに混合したり、あるいは繊維構造物全体に後加工で付与する手段などを採用することができる。
【0046】
後者の親水化加工剤の中では、好ましくはポリアルキレングリコール−ポリエステルブロック共重合体を主成分とする親水性ポリエステル樹脂が、本発明には好ましく使用される。また、前者の吸水性シリコーン系樹脂は、それ単独をバインダーとして使用することができる。
【0047】
本発明でいう発熱エネルギー係数とは、吸放湿性を有する素材が吸湿した際に発生する熱(吸湿発熱)量の大きさを示す指標であり、ほとんど吸放湿性を有さないポリエステル素材の吸湿発熱量を1としたときに何倍の熱量を発生するかを示したものである。
【0048】
具体的には、幅約3.5cmの試料3gを、温度計あるいは熱電対の測定部に巻き、摂氏30度×湿度30%RHの環境下に12時間以上放置後の温度を測定する。次に、摂氏30度×湿度90%RHの環境まで、湿度3%/分の速度で変化させ、この間1分毎に4時間後まで温度を測定する。測定後、上昇温度を積分したものを発熱エネルギー量として求め、次の式によって表す。
【0049】
発熱エネルギー係数=
試料の発熱エネルギー量/ポリエステルタフタ(JIS標準布)の発熱エネルギー量
かかる発熱エネルギー係数が、5以上30以下の範囲において、吸湿発熱による保温効果が高く、快適な保温性が得られる。かかる発熱エネルギー係数が、5より小さい場合は、吸湿発熱による発熱エネルギーが低すぎるため、十分な保温効果が得られず、逆に30より大きい場合は、吸湿発熱による温度上昇が高くなりすぎるため、暑くなりすぎ、快適な保温性が得られない。
【0050】
この発熱エネルギー係数を5以上にする手段としては、例えば、ナイロンにポリビニルピロリドンを5重量%練り込む手段によれば、発熱エネルギー係数13程度の繊維構造物が得られるし、また、ポリエステル100%素材にアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸とPEG#1000ジメタクリレートの共重合物を10重量%程度付着させる手段によれば、発熱エネルギー係数15程度の繊維構造物が得られる。さらに他の手段としては、吸放湿性微粒子をバインダーで繊維構造物に固着したり、合成繊維に親水基を有する単量体をグラフト共重合や架橋反応させた改質繊維でも、発熱エネルギー係数を5以上にすることができる。本発明は、これらの手法にとらわれるものではなく、いかなる方法でも発熱エネルギー指数を5以上にすればよい。
【0051】
本発明の保温性繊維構造物の製造方法においては、吸放湿性を有する繊維構造物に中空マイクロカプセルをバインダーにより固着させてもよいし、繊維構造物に中空マイクロカプセルをバインダーにより固着させてから吸放湿性を付与する加工を行ってもよいし、繊維構造物に吸放湿性を付与する加工と中空マイクロカプセルをバインダーによる固着を同時に行ってもよい。
【0052】
かかる吸放湿性を付与する加工薬剤と中空マイクロカプセルをバインダーと共に繊維構造物に付与する手段としては、一般公知の各種の手段が採用することが可能であり、具体的には、パッド−ドライ法、スプレー法およびコーティング法等が使用されるが、繊維材料に対してより均一に付与させるために、パッド−ドライ法が好ましく使用される。
【0053】
かくして、かかる加工薬剤と中空マイクロカプセルをバインダーを介して付与された繊維構造物は、熱処理されて固着処理される。このときの固着熱処理手段は、一般公知の各種の手段でよく、熱処理温度としては80〜220℃の範囲の条件が好ましく採用される。
【0054】
本発明の保温性繊維構造物は、安静時においても優れた保温効果を有しているので、特に冬場の保温素材として、非常に有用であり、保温素材が好ましく用いられる用途として、例えば、肌着、インナー、ユニフォーム、スポーツウェアなどの衣料や、ソックス、手袋、タイツ、ストッキング、サポーター、靴のインソールなどに最適に使用されるものである。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【0056】
また、実施例中での品質評価は次の方法を用いた。
<中空マイクロカプセル固着量>
中空マイクロカプセル固着量(重量%)=[(A−B)/B]×100
ここで、A:加工後の繊維構造物の重量
B:加工前の繊維構造物と、中空マイクロカプセル以外の重量との合計重量
ただし、ここでいう重量とは、摂氏20℃×湿度65%RH雰囲気下に24時間放置したときの重量をいう。
<吸湿率差(ΔMR)>
吸湿率差(ΔMR)(%)=MR2−MR1
ただし、MR1:絶乾状態から摂氏20℃×湿度65%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(%)。
【0057】
MR2:絶乾状態から摂氏30℃×湿度90%RH雰囲気下に24時間放置したときの吸湿率(%)。
<発熱エネルギー係数>
発熱エネルギー係数=試料の発熱エネルギー量/ポリエステルタフタ(JIS標準布)の発熱エネルギー量
ここで、発熱エネルギー量とは、まず幅約3.5cmの試料3gを温度計あるいは熱電対の測定部に巻き、摂氏30℃×湿度30%RHの環境下に12時間以上放置後の温度を測定する。次に、摂氏30℃×湿度90%RHの環境まで湿度約3%/分の速度で変化させ、この間1分ごとに4時間後まで温度を測定する。測定後、上昇温度を積分したものを発熱エネルギー量とする。
<皮膚温変化差>
測定装置:サーモグラフィー「サーモトレーサー TH3102」
(NEC三栄(株)製)
「感度:0.01℃ 範囲:−10〜100℃」
サンプル:本発明の加工布、未加工布を用い各々サポーター状物を作製して使用した。
【0058】
測定室内条件: 室温21.5±0.5℃、湿度65±1%。
【0059】
測定方法:被験者を、測定室内で上半身裸で1時間の間椅子に腰掛けさせて室内環境に順化させる。その後、被験者の腕にサポーター状物を着用させ、30分間腰掛けて安静状態を保たせ、30分経過後サポーター状物を脱がせ、同じように安静状態にした。
【0060】
サポーター状物着用直前とサポーター状物脱衣後について、サーモグラフィで腕の3個所の部分の皮膚温度を測定した。この時の被験者は5人とした。
【0061】
評価:各々計測点3個所の平均温度を計算し、加工布、未加工布における着用前後における温度差を出した。
<保温率>
カトーテック(株)製のサーモラボ2型測定器を用い、室温20℃、湿度65%RHの環境下で、40℃のBT−BOX(熱板)の上に、室温20℃、湿度65%RHの環境下で24時間調湿したサンプルをのせ、熱板を同一温度に保つ時の消費電力から繊維構造物の保温率を測定した。
【0062】
保温率(%)=100×(W0−W)/W0
ここで、W0:繊維構造物をのせていない時の消費電力
W :繊維構造物をのせた時の消費電力
<平均粒子径>
熱膨張後の中空マイクロカプセルの平均粒子径は、加工により得られた繊維構造物を電子顕微鏡によって観察し、10個のマイクロカプセルの粒子径を平均し求めた。
<温冷感>
室温20℃、湿度65%RHの環境下で、10人のモニターに、タテ20cm、ヨコ20cmの繊維構造物を10分間手のひらに載せ、その間どのように感じたかを下記の5段階で評価してもらい、その平均値を示した。
【0063】
1:冷たく感じた。
【0064】
2:どちらかといえば冷たく感じた。
【0065】
3:どちらでもない(温度変化を感じない、快適である)。
【0066】
4:どちらかといえば暑く感じた。
【0067】
5:暑く感じた。
【0068】
(実施例1)
加工する繊維構造物として、45番手のナイロン45%、アクリル55%の混紡糸からなる目付210g/mの肌着用編地を用いた。
【0069】
ここで用いた素材は、それ自体の吸湿率差(ΔMR)が1%程度と低いため、吸湿率差(ΔMR)を向上させるため、吸湿モノマーを繊維表面で重合させ、吸湿ポリマーを繊維表面に固着させた。
【0070】
すなわち、前記肌着用編地を下記組成の処理水溶液に浸し、マングルロールでピックアップ率100重量%で絞り、100℃で2分間予備乾燥した後、直ちに、105℃の加熱スチーマーで10分間処理し、湯水洗、乾燥した。次いで、140℃で1分間熱処理して、中空マイクロカプセルを熱膨張させ、目的の繊維構造物を得た。
【0071】
AMPS(吸湿モノマー:2−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸) 20g/l
PEG#1000ジメタクリレート(商品名 グラセットT303 共栄社化学(株)製)40g/l
過硫酸アンモニウム 2g/l
中空マイクロカプセル(商品名 マツモトマイクロスフェアーF−30D 松本油脂製薬(株)製)30g/l
得られた繊維構造物について、中空マイクロカプセル固着量、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。この繊維構造物に固着した中空マイクロカプセルの平均粒子径は100.5μmであった。
【0072】
(実施例2)
加工する繊維構造物として、マーセライズを行なった45番手のポリエステル繊維45%、綿55%の混紡糸からなる目付112g/mのユニフォーム用ブロード織物を用いた。
【0073】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が2%程度であり、本発明の吸湿率差(ΔMR)の要件を満たしているため、吸湿率差(ΔMR)を向上させる必要はなく、そのまま中空マイクロカプセルのみを、繊維表面に固着させた。
【0074】
すなわち、前記ユニフォーム用ブロード織物を下記組成の処理水溶液に浸漬し、マングルロールでピックアップ率100重量%で絞り、100℃で2分間予備乾燥した後、140℃で1分間熱処理し、中空マイクロカプセルを熱膨張させ、目的の繊維構造物を得た。
【0075】
中空マイクロカプセル(商品名 マツモトマイクロスフェアーF−30D 松本油脂製薬(株)製)10g/l
シリコーン系樹脂(商品名 KT7014(固形分40%)高松油脂(株)製)25g/l
得られた繊維構造物について、中空マイクロカプセル固着量、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。この繊維構造物に固着した中空マイクロカプセルの平均粒子径は110.8μmであった。
【0076】
(実施例3)
加工する繊維構造物として、45番手綿100%糸からなる目付180g/mのゴルフポロシャツ用編地を用いた。
【0077】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が4%程度であり、本発明の吸湿率差(ΔMR)の要件を満たしているため、吸湿率差(ΔMR)を向上させる必要はなく、そのまま中空マイクロカプセルのみを繊維表面に固着させた。
【0078】
すなわち、前記ゴルフ用ブロードポロシャツ地を下記組成の処理水溶液に浸漬し、マングルロールでピックアップ率100重量%で絞り、100℃で2分間予備乾燥したの後、140℃で1分間熱処理し、中空マイクロカプセルを熱膨張させ、目的の繊維構造物を得た。
【0079】
中空マイクロカプセル(商品名 マツモトマイクロスフェアーF−30D 松本油脂製薬(株)製)20g/l
アクリル系樹脂(商品名 リケンゾールA−263(固形分40%)三木理研工業(株)製)25g/l
得られた繊維構造物について、中空マイクロカプセル固着量、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。この繊維構造物に固着した中空マイクロカプセルの平均粒子径は105.9μmであった。
【0080】
(実施例4)
加工する繊維構造物として、経糸が84デシテックス−24フィラメントのポリエチレンテレフタレート延伸糸、緯糸が84デシテックス−36フィラメントのポリエチレンテレフタレート加工糸からなるツイル綾織りで、目付86g/mの裏地用織物を用いた。
【0081】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)がお。1%程度と低いため、吸湿率差(ΔMR)を向上させるため、吸放湿性を有するシリカ粒子を繊維表面に固着させた。
【0082】
すなわち、前記裏地用織物を下記組成の処理水溶液に浸漬し、マングルロールでピックアップ率100重量%で絞り、100℃で2分間予備乾燥した。その後、140℃で1分間熱処理し、中空マイクロカプセルを熱膨張させ、目的の繊維構造物を得た。
【0083】
シリカ微粒子(商品名サイリシア550 富士シリシア化学(株)製) 30g/l
中空マイクロカプセル(商品名 マツモトマイクロスフェアーF−30D 松本油脂製薬(株)製)20g/l
ウレタン系樹脂(商品名 ボンディック1610NSC(固形分50%)、大日本インキ化学工業(株) 製) 20g/l
得られた繊維構造物について、中空マイクロカプセル固着量、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。この繊維構造物に固着した中空マイクロカプセルの平均粒子径は112.5μmであった。
【0084】
(実施例5)
加工する繊維構造物として、50デシテックス−72フィラメントのポリエチレンテレフタレート糸からなる編地を裏起毛した目付220g/mの手袋用裏起毛編地を用いた。
【0085】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が0.1%程度と低いため、吸湿率差(ΔMR)を向上させるため、吸放湿性を有するシリカ粒子を繊維表面に固着させた。
【0086】
すなわち、前記手袋用裏起毛編地を下記組成の処理水溶液に浸漬し、マングルロールでピックアップ率100重量%で絞り、100℃で2分間予備乾燥した。その後、140℃で1分間熱処理し、中空マイクロカプセルを熱膨張させ、目的の繊維構造物を得た。
【0087】
シリカ微粒子(商品名サイリシア550 富士シリシア化学(株)製) 60g/l
中空マイクロカプセル(商品名 マツモトマイクロスフェアーF−30D 松本油脂製薬(株)製)20g/l
メラミン系樹脂(商品名 スミテックスレジンM−3(固形分80%)住友化学工業(株)製)12g/l
過硫酸アンモニウム 3g/l
得られた繊維構造物について、中空マイクロカプセル固着量、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。この繊維構造物に固着した中空マイクロカプセルの平均粒子径は107.5μmであった。
【0088】
(実施例6)
加工する繊維構造物として、表および裏が52番手アクリル100%、中地が56デシテックス−36フィラメントのポリエチレンテレフタレート糸の双糸からなる3層構造の目付280g/mのサポーター用編地を用いた。
【0089】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が0.2%程度と低いため、吸湿率差(ΔMR)を向上させるため、吸湿モノマーを繊維表面で重合させ、吸湿ポリマーを繊維表面に固着させた。
【0090】
すなわち、前記サポーター用編地を下記組成の処理水溶液に浸し、マングルロールでピックアップ率100重量%で絞り、100℃で2分間予備乾燥した後、直ちに、105℃の加熱スチーマーで10分間処理し、湯水洗、乾燥した。次いで、140℃で1分間熱処理し、中空マイクロカプセルを熱膨張させ、目的の繊維構造物を得た。
【0091】
AMPS(吸湿モノマー:2−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)
40g/l
PEG#1000ジメタクリレート(商品名 グラセットT303 共栄社化学(株)製)80g/l
過硫酸アンモニウム 4g/l
中空マイクロカプセル(商品名 マツモトマイクロスフェアーF−30D 松本油脂製薬(株)製)10g/l
得られた繊維構造物について、中空マイクロカプセル固着量、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。この繊維構造物に固着した中空マイクロカプセルの平均粒子径は111.5μmであった。
【0092】
(比較例1)
実施例1で用いた肌着用編地を下記組成の処理水溶液に浸す以外は実施例3と同様の条件で加工し、目的の繊維構造物を得た。
【0093】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が1%程度であり、本願の吸湿率差(ΔMR)の要件を満たしていない。
【0094】
アクリル系樹脂(商品名 リケンゾールA−263(固形分40%)三木理研工業(株)製)25g/l
中空マイクロカプセル(商品名 マツモトマイクロスフェアーF−30D 松本油脂製薬(株)製)30g/l
得られた繊維構造物について、中空マイクロカプセル固着量、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。この繊維構造物に固着した中空マイクロカプセルの平均粒子径は106.2μmであった。
【0095】
(比較例2)
実施例2で用いたユニフォーム用ブロード織物の未加工品について、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。
【0096】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が2%程度であり、本願の吸湿率差(ΔMR)の要件を満たしているが、中空マイクロカプセルを用いていない。
【0097】
(比較例3)
実施例3で用いたゴルフポロシャツ用編地の未加工品について、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。
【0098】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が4%程度であり、本願の吸湿率差(ΔMR)の要件を満たしているが、中空マイクロカプセルを用いていない。
【0099】
(比較例4)
実施例4で用いた裏地用織物を下記組成の処理水溶液に浸す以外は実施例4と同様の条件で加工し、目的の繊維構造物を得た。
【0100】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が0.1%程度であり、本願の吸湿率差(ΔMR)の要件を満たしていない。
【0101】
中空マイクロカプセル(商品名 マツモトマイクロスフェアーF−30D 松本油脂製薬(株)製)10g/l
ウレタン系樹脂(商品名 ボンディック1610NSC(固形分50%)、大日本インキ化学工業(株) 製) 20g/l
得られた繊維構造物について、中空マイクロカプセル固着量、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。この繊維構造物に固着した中空マイクロカプセルの平均粒子径は118.5μmであった。
【0102】
(比較例5)
実施例5で用いた手袋用裏起毛編地を下記組成の処理水溶液に浸す以外は実施例4と同様の条件で加工し、目的の繊維構造物を得た。
【0103】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が0.1%程度と低いため、吸湿率差(ΔMR)を向上させるため、吸放湿性を有するシリカ粒子を繊維表面に固着したが、中空マイクロカプセルを用いていない。
【0104】
シリカ微粒子(商品名サイリシア550 富士シリシア化学(株)製) 60g/l
メラミン系樹脂(商品名 スミテックスレジンM−3(固形分80%)住友化学工業(株)製)12g/l
過硫酸アンモニウム 3g/l
得られた繊維構造物について、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。
【0105】
(比較例6)
実施例6で用いたサポーター用編地の未加工品について、ΔMR、発熱エネルギー係数、皮膚温変化差、保温率、温冷感の評価をして、結果を表1に示した。
【0106】
ここで用いた素材はそれ自体の吸湿率差(ΔMR)が0.2%程度であり、本願の吸湿率差(ΔMR)の要件を満たしておらず、中空マイクロカプセルも用いていない。
【0107】
【表1】
Figure 2004300598
【0108】
表1から明らかなように、実施例1〜6の吸湿発熱性を有し、かつ中空マイクロカプセルの断熱効果を兼ね備えている繊維構造物は、各々の相乗効果により安静時においても暖かく保っている。比較例1、4のように中空マイクロカプセルによる断熱効果だけのもの、比較例2、3、5のように吸湿発熱効果だけのものは安静時においての保温性は高いものではない。
【0109】
【発明の効果】
本発明によれば、安静時においても優れた保温効果を有しているので、特に冬場の保温素材として、非常に有用であり、保温素材が好ましく用いられる用途として、例えば、肌着、インナー、スポーツウェアなどの衣料や、ソックス、手袋、タイツ、ストッキング、サポーター、靴のインソールなどに最適である。

Claims (10)

  1. 吸湿率差(ΔMR)が2%以上30%以下で吸放湿性を有する素材で構成された繊維構造物であり、かつ、該繊維構造物の繊維表面に中空マイクロカプセルを固着してなることを特徴とする繊維構造物。
  2. 該中空マイクロカプセルの平均粒子径が5μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の繊維構造物。
  3. 該中空マイクロカプセルが、繊維構造物に対し、1〜30重量%の割合で固着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維構造物。
  4. 該中空マイクロカプセルが、バインダーを介して、繊維表面に固着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
  5. 該バインダーが、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびメラミン系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の繊維構造物。
  6. 該素材が、本文で定義する吸湿による発熱エネルギー係数が5以上30以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造物。
  7. 該吸放湿性を有する素材が、天然繊維、合成繊維および改質合成繊維から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造物。
  8. 該吸放湿性を有する素材が、ナイロン、木綿およびウールから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の繊維構造物。
  9. 該吸放湿性を有する素材が、繊維表面に吸湿性ポリマーを固着させてなる素材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の繊維構造物。
  10. 該繊維構造物が、衣料用、肌着用、ユニフォーム用、スポーツ衣料用、手袋用およびサポーター用のいずれかに用いられるものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の繊維構造物。
JP2003093485A 2003-03-31 2003-03-31 繊維構造物 Pending JP2004300598A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003093485A JP2004300598A (ja) 2003-03-31 2003-03-31 繊維構造物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003093485A JP2004300598A (ja) 2003-03-31 2003-03-31 繊維構造物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004300598A true JP2004300598A (ja) 2004-10-28

Family

ID=33406271

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003093485A Pending JP2004300598A (ja) 2003-03-31 2003-03-31 繊維構造物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004300598A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007026395A1 (ja) * 2005-08-30 2007-03-08 Tomizo Yamamoto 水中スーツ用素材及びそれを使用した水中スーツ
JP2007321304A (ja) * 2006-06-01 2007-12-13 Toyobo Co Ltd 保温性に優れた織編物
JP2013083036A (ja) * 2012-12-03 2013-05-09 Tomizo Yamamoto 水中スーツ用素材及びそれを使用した水中スーツ
JP2014005583A (ja) * 2012-06-26 2014-01-16 Daiwa Kagaku Kogyo Kk 繊維用残香性保持増強剤

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007026395A1 (ja) * 2005-08-30 2007-03-08 Tomizo Yamamoto 水中スーツ用素材及びそれを使用した水中スーツ
JP5324097B2 (ja) * 2005-08-30 2013-10-23 富造 山本 水中スーツ用素材及びそれを使用した水中スーツ
JP2007321304A (ja) * 2006-06-01 2007-12-13 Toyobo Co Ltd 保温性に優れた織編物
JP2014005583A (ja) * 2012-06-26 2014-01-16 Daiwa Kagaku Kogyo Kk 繊維用残香性保持増強剤
JP2013083036A (ja) * 2012-12-03 2013-05-09 Tomizo Yamamoto 水中スーツ用素材及びそれを使用した水中スーツ

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100821281B1 (ko) 보온성 섬유구조체
JP2004324023A (ja) 繊維構造物
Chung et al. Thermal properties and physiological responses of vapor-permeable water-repellent fabrics treated with microcapsule-containing PCMs
US20130067629A1 (en) Fast drying cellulosic fabric and process to produce same
JP2003193371A (ja) 寝具又はインテリア用繊維製品
JP2004300598A (ja) 繊維構造物
JP4258259B2 (ja) 繊維構造物
JP3925178B2 (ja) ウインドブレーカー
JP2002180308A (ja) 保温衣料
Guru et al. Functional textile for active wear clothing
JP3657253B2 (ja) 吸放湿性繊維とその製造方法およびこれを用いた繊維製品
JP2008202187A (ja) 繊維構造物
JP2000096443A (ja) 繊維布帛およびその製造方法
JP4023170B2 (ja) 運動着
JP2004169240A (ja) 繊維構造物
JP2003193310A (ja) 裏 地
JP2002235278A (ja) 接触冷感性繊維及び繊維製品並びにこれらの製造方法
JPS609974A (ja) 吸湿性布帛
JP3900894B2 (ja) 高吸湿保温性繊維構造物
JP2003227043A (ja) 紡績糸
Suzuki et al. Moisture and water control man-made fibers
JP2003013313A (ja) 保温手袋
JP2002180375A (ja) 吸放湿性繊維構造物
JP2010001584A (ja) 保温性布帛
JP2002220718A (ja) 裏 地