JP2004277585A - 有機顔料分散体製造方法および有機顔料分散体、水性着色液ならびにインクジェット記録用液 - Google Patents
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Abstract
【課題】長時間の分散装置による処理を必要とせず、原料となる顔料の一次粒子の大きさに依存しない、サイズの均一性を持つ微細な顔料分散体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程にて、有機顔料分散体を得る有機顔料分散体製造方法によって、上記課題が解決されることを見出した。
(1)有機顔料と分散剤を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させた後、水と混合することにより有機顔料を析出させて有機顔料分散体を作成する第一工程。
(2)前記第一工程で得られた有機顔料分散体をアルカリで凝集させて、有機顔料分散体を溶媒から分離する第二工程。
(3)前記第二工程で分離された有機顔料分散体を酸で処理する第三工程。
【選択図】 なし
【解決手段】下記工程にて、有機顔料分散体を得る有機顔料分散体製造方法によって、上記課題が解決されることを見出した。
(1)有機顔料と分散剤を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させた後、水と混合することにより有機顔料を析出させて有機顔料分散体を作成する第一工程。
(2)前記第一工程で得られた有機顔料分散体をアルカリで凝集させて、有機顔料分散体を溶媒から分離する第二工程。
(3)前記第二工程で分離された有機顔料分散体を酸で処理する第三工程。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットプリンタ等の記録液、この記録液に好適な水性着色液、この記録液に使用する有機顔料分散体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々のインク吐出方式により、インク小滴(droplet)を形成し、それらの一部若しくは全部を紙、加工紙、プラスチックフィルム、織布等の被記録材に付着させて記録を行うものである。従来から、インクジェット用記録液は主に染料と水溶性の添加剤からなる水性の記録液が用いられており、インクとしての保存安定性には優れるが、これを用いて印字されたものは耐水性や耐光性などにおいてさらなる改善が進められている。そこで色材を染料インクから顔料インクに換えることで耐水性や耐光性を改善しようという試みがなされている。しかし、染料と比較して顔料はインクジェットヘッドのノズルからの吐出性が劣る場合が多く、また顔料は染料のような単独の色素分子ではなく粒子であるために散乱光や反射光が混入し、染料に比べて吸収スペクトルがブロードになり一般に発色性が低い。これらを解決する方法の一つとして顔料を微細化するという方法があり、光散乱の影響が少なく、染料並の透過性を示すような100ナノメートル以下に顔料を微粒子化することが望まれている。通常、顔料の微粒子化はサンドミルやロールミル、ボールミルと言った分散機を用いて機械的な力によって行うが、この方法では顔料を一次粒子付近の100ナノメートル程度まで微細化するのが限界であり、さらなる微粒子化が要求される場合に対応するのは難しい(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、粒子径を小さくしようとすればするほど分散に長時間を要し、多大なコストがかかるばかりか、均一な品質のものを得るのも困難になる。さらにこの方法では顔料を一次粒子より微細化することは非常に困難であるので、100ナノメートル以下の顔料粒子を得るためには、原料として一次粒子が大きい顔料を用いることが出来ない。一方、顔料を一度溶解させた後に再び析出させて顔料の微粒子を作るという方法が提案されている。
【0004】
特許文献2では硫酸を用いて一度有機顔料を溶解させるアシッドペースティング法による微粒子化が提案されているが、100ナノメートル以下の顔料を得るには至っていない。また、特許文献3、特許文献4にはアルカリ存在下の非プロトン性極性溶剤に有機顔料を溶解した後、酸で中和して微細な顔料粒子を得る方法が記載されているが、顔料の微細化と分散安定化処理を同時に行っていないため、始め微細であった顔料粒子も分散時には既に凝集を起こしており、実質ナノメートルオーダーの顔料分散体を得ることは困難である。
【0005】
特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8ではアルカリ存在下で非プロトン性極性溶剤に有機顔料と界面活性剤や樹脂などの分散剤を一緒に溶解させた後、酸で中和して顔料を析出させて分散性の高い微細な顔料粒子を得ている。しかし、顔料の溶液(水が20%以下)に酸を滴下して顔料を析出させる手法であるため、水系での安定化が計られておらず、そのまま水分散体として使えるものではない。また中和再沈による溶剤との分離も同時に行われるため、顔料粒子の会合を十分に妨げることは出来ず、その後にボールミルなどで分散処理を行ってもサイズの整ったナノメートルオーダーの顔料を安定して得るには至らない。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−110111号公報
【特許文献2】
特開平9−221616号公報
【特許文献3】
特公平4−29707号公報
【特許文献4】
特公平6−4776号公報
【特許文献5】
特公平5−27664号公報
【特許文献6】
特公平6−33353号公報
【特許文献7】
特公平6−96679号公報
【特許文献8】
特開平11−130974号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は上記、従来の顔料分散体作成法の課題を解決し、長時間の分散装置による処理を必要とせず、原料となる顔料の一次粒子の大きさに依存しない、サイズの均一性を持つ微細な顔料分散体およびその製造方法を提供することにある。また、耐水性や耐光性に優れ、かつ発色性や光透過性にも優れた水性着色液、特にはインクジェット用記録液を提供することも目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討した結果、下記工程にて、有機顔料分散体を得る有機顔料分散体作成方法によって、上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
(1)有機顔料と分散剤を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させた後、水と混合することにより有機顔料を析出させて有機顔料分散体を作成する第一工程。
【0010】
(2)前記第一工程で得られた有機顔料分散体をアルカリで凝集させて、有機顔料分散体を溶媒から分離する第二工程。
【0011】
(3)前記第二工程で分離された有機顔料分散体を酸で処理する第三工程。
【0012】
これにより、長時間の分散装置による処理を必要とせず、原料となる顔料の一次粒子の大きさに依存しない、サイズの均一性を持つ微細な顔料分散体が提供される。
【0013】
この方法において、前記第一工程の有機溶剤の水に対する溶解度が5%以上であることが好ましい。
【0014】
また、前記第一工程の分散剤が、カチオン性窒素原子、水酸基およびアルキレンオキサイドから選ばれる1種類以上を分子中に有する高分子化合物もしくは界面活性剤であることも好ましい。
【0015】
前記第一工程の酸が有機プロトン酸であることも好ましい。
【0016】
前記有機プロトン酸が、アルキルスルホン酸、アルキルカルボン酸、ハロゲン化アルキルスルホン酸、ハロゲン化アルキルカルボン酸、芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸から選ばれるいずれか1種類以上であることも好ましい。
【0017】
前記第一工程の酸が無機プロトン酸であることも好ましい。
【0018】
前記無機プロトン酸が、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、塩化水素酸、過塩素酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸およびクロロスルホン酸から選ばれる1種類以上であることも好ましい。
【0019】
前記第一工程の酸がルイス酸であることも好ましい。
【0020】
前記ルイス酸が、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ジルコニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タンタルおよびタングステンから選ばれる1種類以上のハロゲン化物であることも好ましい。
【0021】
本発明は、上記の方法で作成された有機顔料分散体を包含する。
【0022】
本発明はまた、この有機顔料分散体を含有する水性着色液も包含する。
【0023】
本発明はさらに、この有機顔料分散体を含有するインクジェット用記録液をも包含する。
【0024】
なお、さらに詳細に説明すれば、本発明は下記の構成によって前記課題を解決できた。
【0025】
(1)下記工程にて、有機顔料分散体を得る有機顔料分散体製造方法。
1)有機顔料と分散剤を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させた後、水と混合することにより有機顔料を析出させて有機顔料分散体を作成する第一工程。
2)前記第一工程で得られた有機顔料分散体をアルカリで凝集させて、有機顔料分散体を溶媒から分離する第二工程。
3)前記第二工程で分離された有機顔料分散体を酸で処理する第三工程。
【0026】
(2)前記第一工程の有機溶剤の水に対する溶解度が5%以上であることを特徴とする前記(1)記載の有機顔料分散体製造方法。
【0027】
(3)前記第一工程の分散剤が、カチオン性窒素原子、水酸基およびアルキレンオキサイドから選ばれる1種類以上を分子中に有する高分子化合物もしくは界面活性剤であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の有機顔料分散体製造方法。
【0028】
(4)前記第一工程の酸が有機プロトン酸であることを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0029】
(5)前記有機プロトン酸が、アルキルスルホン酸、アルキルカルボン酸、ハロゲン化アルキルスルホン酸、ハロゲン化アルキルカルボン酸、芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸から選ばれるいずれか1種類以上であることを特徴とする前記(1)ないし(4)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0030】
(6)前記第一工程の酸が無機プロトン酸であることを特徴とする前記(1)ないし(5)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0031】
(7)前記無機プロトン酸が、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、塩化水素酸、過塩素酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸およびクロロスルホン酸から選ばれる1種類以上であることを特徴とする前記(1)ないし(6)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0032】
(8)前記第一工程の酸がルイス酸であることを特徴とする前記(1)ないし(7)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0033】
(9)前記ルイス酸が、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ジルコニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タンタルおよびタングステンから選ばれる1種類以上のハロゲン化物であることを特徴とする前記(1)ないし(8)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0034】
(10)前記(1)ないし(9)のいずれか一項記載の方法で製造されたことを特徴とする有機顔料分散体。
【0035】
(11)前記(10)記載の有機顔料分散体を含有することを特徴とする水性着色液。
【0036】
(12)前記(10)記載の有機顔料分散体を含有することを特徴とするインクジェット用記録液。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に、より具体的な構成例について記載するが、本発明は下記方法に限定されるものではない。
【0038】
本発明の第一工程は、有機顔料を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させた後、粒子径の整った有機顔料の水分散体として再生する工程である。
【0039】
本発明で使用する有機顔料は、分散剤と共に酸に溶解するもの、あるいは酸と有機溶剤の混合液に溶解するものであればいかなる物でも使用できる。さらに好ましくはこの条件下で反応性を示さず、安定な物がよい。
【0040】
具体的には、印刷インキおよび塗料等に用いられている有機顔料を用いることができ、例えば、アゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリジン系、アンサンスロン系、チオインジゴ系、ナフトール系、ベンゾイミダゾロン系、ピランスロン系、フタロシアニン系、フラバンスロン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、インダンスロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、キノフタロン系、ペリノン系およびペリレン系の顔料、建染染料系顔料、金属錯体顔料、塩基性染料系顔料、蛍光顔料、昼光蛍光顔料がある。
【0041】
例としてはC.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同17、同42、同55、同62、同73、同74、同81、同83、同93、同95、同97、同108、同109、同110、同128、同130、同151、同155、同158、同139、同147、同154、同168、同173、同180、同184、同191、同199、C.I.Pigment Red 2、同4、同5、同22、同23、同31、同48、同53、同57、同88、同112、同122、同144、同146、同150、同166、同171、同175、同176、同177、同181、同183、同184、同185、同202、同206、同207、同208、同209、同213、同214、同220、同254、同255、同264、同272、C.I.Pigment Blue 16、同25、同26、同56、同57、同60、同61、同66、C.I.Pigment Violet 19、同23、同29、同37、同38、同42、同43、同44、C.I.Pigment Orange 16、同34、同35、同36、同61、同64、同66、同71、同73、C.I.Pigment Brown 23、同38がある。また、これらの有機顔料は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
【0042】
分散剤としては、酸単独または酸と有機溶剤との混合液に溶解するものであって、かつ水にも可溶であり分散剤の水溶液中において有機顔料に対して分散効果があるものを適宜使用可能である。好ましくは、界面活性剤もしくは高分子化合物であって、カチオン性窒素原子、水酸基およびアルキレンオキサイドから選ばれる1種類以上を分子中に有するものである。さらに好ましくは酸単独、または酸存在下の有機溶剤に有機顔料と共に安定に溶解するものがよい。分散剤の親水性部分がカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基など上記以外のものから選ばれるもののみで構成されている場合は酸を含む有機顔料の分散体において分散安定性が相対的に低くなるという点で不利である。また本発明は、従来の顔料分散法と異なり、分散剤の顔料表面への接触操作が不要なため広範な分散剤を使用することができる。
【0043】
具体的に界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、また、この他にもアルキルベタインやアミドベタインなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などを含めて、従来公知である界面活性剤およびその誘導体から適宜選ぶことができる。
【0044】
分散剤として使用できる高分子化合物としては、具体的にはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、アルケニルスルホン酸、ビニルアミン、アリルアミン、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルホスホン酸、ビニルピロリドン、アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドおよびその誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つはカチオン性窒素原子、水酸基およびアルキレンオキサイドのいずれかになる官能基を有する単量体)から構成されるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの変性物、およびこれらの塩等が挙げられる。カチオン性窒素原子を分子中に有するモノマーとしてさらに好ましい例として、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート〔CH2=C(CH3)−COO−C2H4N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート〔CH2=CH−COO−C2H4N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート〔CH2=C(CH3)−COO−C3H6N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート〔CH2=CH−COO−C3H6N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアクリルアミド〔CH2=CH−CON(CH3)2〕、N,N−ジメチルメタクリルアミド〔CH2=C(CH3)−CON(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド〔CH2=CH−CONHC2H4N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド〔CH2=C(CH3)−CONHC2H4N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド〔CH2=CH−CONH−C3H6N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド〔CH2=C(CH3)−CONH−C3H6N(CH3)2〕等が挙げられる。
【0045】
また、アルブミン、ゼラチン、ロジン、シェラック、デンプン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然高分子、およびこれらの変性物も分散剤として好ましく使用することが出来る。また、これらの分散剤は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。上記分散剤の使用割合は特に限定されるものではないが、有機顔料1質量部に対して0.05〜5質量部以上の範囲で用いるのが好ましい。分散剤が有機顔料1質量部に対して0.05質量部より少ない場合は、分散効果が低下する傾向があるという点で不利である。また、分散剤を有機顔料1重量部に対して5重量部より多く加えても分散工化の向上が見られない傾向がありコストにおいて不利である。また高分子化合物の好ましい分子量範囲については特に限定されるものではないが、200〜100000質量部、さらには2000〜60000質量部の範囲で用いるのが好ましい。高分子化合物の分子量が200より小さい場合は分散効果が低下する傾向があるという点で不利であり、100000より大きい場合は溶媒に溶解しにくくなる傾向があるという点で不利である。
【0046】
有機溶剤としては、酸の存在下で有機顔料と分散剤を溶解させるものであればアルカリ存在下で有機顔料を溶解させるものであればいかなるものでも使用可能であるが、水に対する溶解度が5%以上であるものが好ましく利用され、さらには水に対して自由に混合するものが好ましい。水に対する溶解度が5%より小さい溶剤を用いて顔料を可溶化した場合は、水と混合する際に有機顔料が析出しにくく、粗大な粒子になり易い点で不利である。また、得られる顔料分散体の分散安定性に対して悪影響を及ぼす傾向があるという点でも不利である。
【0047】
具体的にはジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい溶剤として挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトンまたはアセトニトリルが好ましい。また、これらは1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
【0048】
酸としては、酸単独または有機溶剤中で有機顔料を可溶化するものであればいかなるものでも使用可能であるが、有機プロトン酸、無機プロトン酸、及びルイス酸が好ましい。
【0049】
具体的には、有機プロトン酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸;これらがハロゲンで置換されたトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のハロゲン化アルキルスルホン酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等のアルキルカルボン酸;これらがハロゲンで置換されたトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、クロロカプロン酸、ブロモカプロン酸、クロロウンデカン酸等のハロゲン化アルキルカルボン酸;安息香酸、テトラフルオロ安息香酸等の芳香族カルボン酸;ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸を好ましく利用することができる。無機プロトン酸としては、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、塩化水素酸、過塩素酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、クロロスルホン酸を好ましく利用できる。
【0050】
この他に、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、過ヨウ素酸、発煙硫酸、発煙硝酸、マンガン酸、過マンガン酸、クロム酸、重クロム酸、その他各種固体酸等も使用できる。ルイス酸としては、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ジルコニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タンタルおよびタングステンから選ばれる一種類以上の物質のハロゲン化物を好ましく使用できる。
【0051】
例えば、三塩化ガリウム、四塩化スズ、三塩化ホウ素、四塩化ゲルマニウム、五塩化アンチモン、三塩化鉄、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、三塩化インジウム、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、二塩化亜鉛、四塩化亜鉛、五フッ化アンチモン、五塩化アンチモン、五塩化タンタル、六フッ化ヒ素、五フッ化ヒ素、四塩化ジルコニウム、四塩化バナジウム、二塩化スズ、二塩化銅もしくは四塩化チタン等である。
【0052】
以上述べた中でも有機顔料の可溶化能力の高さと取り扱いの点から、硫酸、硝酸、トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウムが好ましく使用される。また、これらの酸は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。上記酸の使用割合は特に限定されるものではないが、有機顔料1質量部に対して0.01〜500質量部の範囲で用いるのが好ましい。酸が有機顔料1質量部に対して0.01質量部より少ない場合は分散剤と共に有機顔料を完全に溶解させることが難しくなる傾向があるという点で不利である。また、酸が有機顔料に対して500質量部より多い場合は着色力の観点から見て、得られる有機顔料分散体の濃度が薄く、濃縮を行ったとしても生産性に劣る点で不利である。
【0053】
酸と有機溶剤を混合して用いる際に、酸を完全に溶解させるために、若干の水や低級アルコールおよびグリセリンなどの酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶剤に添加することが出来る。これにより酸の溶解度が低い有機溶剤であっても酸の溶解性が増し、有機顔料の溶解が容易になる。しかしその添加率が全溶媒量に対して50%以上になると有機顔料の溶解性が低下する点で不利となるため、通常0.5〜30%程度の添加率が最も効果的である。具体的には水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、グリセリンなどを添加することができる。
【0054】
有機顔料を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させる際、有機顔料と分散剤に加えて、有機溶剤には結晶成長防止剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、樹脂添加物などを必要に応じて添加することができる。結晶成長防止剤としては、当該技術分野においてよく知られているフタロシアニン誘導体やキナクリドン誘導体が挙げられ、例えばフタロシアニンのフタルイミドメチル誘導体、フタロシアニンのスルホン酸誘導体、フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体、キナクリドンのフタルイミドメチル誘導体、キナクリドンのスルホン酸誘導体、キナクリドンのN−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、キナクリドンのN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体等が挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤としては、金属酸化物、アミノベンゾエート系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シンナメート系紫外線吸収剤、ニッケルキレート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸系紫外線吸収剤およびビタミン系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0056】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、チオアルカン酸エステル化合物、有機リン化合物、芳香族アミン等が挙げられる。
【0057】
樹脂添加物としては、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ポリエステル、ポリアリルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メラミン樹脂あるいはこれらの変性物等の合成樹脂などが挙げられる。これらの結晶成長防止剤や紫外線吸収剤、樹脂添加物はいずれも1種類単独でまたは2種類以上を併用して使用することができる。
【0058】
第一工程において、有機顔料と分散剤が酸または酸と有機溶剤の混合溶媒で溶解しているもの(以下、「顔料溶液」と略記する)を水と混合して有機顔料を析出させる際に使用される水の割合は、顔料溶液1重量部に対して0.1〜1000重量部、さらには1〜500重量部が好ましい。水が顔料溶液1重量部に対して0.1重量部以下の場合は、析出した有機顔料の分散安定性が低くなる傾向がある点で不利であり、1000部以上の場合は着色力の観点から見て、得られる有機顔料分散体の濃度が薄く、濃縮を行ったとしても生産性に劣るという傾向がある点で不利である。
【0059】
また、顔料溶液と水とを混合する際にこれらの温度は−50℃〜100℃の範囲、さらには−20℃〜50℃の範囲に調節するのが好ましい。混合する際の溶液の温度は析出する有機顔料のサイズに大きく影響するため、ナノメートルオーダーの有機顔料分散体を得るには溶液の温度を−50℃〜100℃の範囲にするのが好ましい。また、顔料溶液と水との混合の際に溶液の流動性を確保するために混合する水に、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、グリセリン等の公知の凝固点降下剤を加えておくことができる。
【0060】
さらに、サイズの均一性を持つナノメートルオーダーの顔料分散体を得るには、顔料溶液と水との混合を可能な限り速やかに行うのが好ましく、超音波振動子やフルゾーン撹拌羽、内部循環型撹拌装置、外部循環型撹拌装置、流量およびイオン濃度制御装置等の従来公知の撹拌、混合、分散、晶析に使用される装置をいずれも使用することができる。また、連続して流れる水の中に混合してもよい。顔料溶液の水中への投入法としては、従来公知の液体注入法をいずれも利用できるが、シリンジやニードル、チューブなどのノズルからの噴射流として水中、もしくは水上から投入するのが好ましい。なお、短時間で投入するために複数のノズルから投入することも出来る。さらに、有機顔料分散体を安定して作成するために、顔料溶液と混合する水に対しても酸及び分散剤を初めとする添加剤を加えておくことができる。
【0061】
この第一工程により、有機溶剤に溶解した顔料は、水との混合によって急速な結晶成長またはアモルファス様の凝集体を形成し、同時に顔料溶液に含まれる分散剤によって分散安定化が行われると考えられる。また必要に応じて、第一工程中および直後に、分散安定性を損なわない範囲で加熱処理を行い有機顔料分散体の結晶系および凝集状態の調整を行うことができる。
【0062】
本発明の第二工程は、第一工程で得られた有機顔料の水分散体をアルカリで凝集させて溶剤と分離し、濃縮、脱溶剤および脱塩(脱アルカリ)を行う工程である。系をアルカリ性にすることでアルカリ性の親水性部分による静電反発力を低下させ、有機顔料分散体を凝集させる。従来の顔料分散体においてはアルカリで凝集させた場合、その後に酸処理を行ったとしても、完全に再分散されることはなく粒子径の増大があった。しかし、本発明の第一工程で作成された有機顔料分散体を用いることで、アルカリで凝集させた場合でも再分散後に粒子径の増大がほとんどないことを見出した。
【0063】
発明の第二工程で用いるアルカリとしては、沈殿し難い微粒子となっている有機顔料分散体を凝集させてスラリー、ペースト、粉状、粒状、ケーキ状(塊状)、シート状、短繊維状、フレーク状などにして従来公知の分離法によって効率よく溶剤と分離できる状態にするものであればいかなるものでも使用できる。さらに好ましくは、第一工程において用いた酸を溶剤と同時に分離するために、第一工程で用いた酸と水溶性の塩を形成する酸を利用するのがよく、アルカリ自体も水への溶解度が高いものが好ましい。また脱塩を効率よく行うために、加えるアルカリの量は有機顔料分散体が凝集する範囲でできるだけ少ない方がよい。
【0064】
具体的にはアミノメチルプロパノール、ジメチルアミノプロパノール、ジメチルエタノールアミン、ジエチルトリアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニアが挙げられる。アルカリによって容易に分離可能な状態にされた有機顔料分散体は従来公知の遠心分離装置や濾過装置またはスラリー固液分離装置などで容易に分離することが出来る。この際、希釈水の添加、またはデカンテーションおよび水洗の回数を増やすことで脱塩、脱溶剤の程度を調節することができる。
【0065】
第二工程で濃縮された有機顔料分散体は、含水率の高いペーストやスラリーのままで用いることもできるが、必要に応じてスプレードライ法、遠心分離乾燥法、濾過乾燥法または凍結乾燥法などのような、従来公知の乾燥法により、微粉末として用いることも出来る。
【0066】
本発明の第三工程は、第二工程で凝集した有機顔料分散体を酸で中和し、第一工程で得られた有機顔料分散体に近い粒子径で水に再分散させる工程である。第二工程においてすでに脱塩および脱溶剤が行われているため、不順物の少ない有機顔料分散体のコンクベースを得ることが出来る。第三工程で使用する酸は、アルカリ性の親水性部分を持つ分散剤の中和剤として働き、水への溶解性が高まるものであればいかなるものでも使用できる。具体的には塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸などが挙げられるが、塩酸、酢酸および硫酸が特に好ましい。上記の酸を使用する量は凝集した有機顔料分散体を水に安定に再分散できる範囲であれば特に限定されるものではないが、印刷インキやインクジェットプリンタ用インクなどの用途に用いる場合は各種部材の腐食の原因になる場合があるため、pHが2〜11、さらに好ましくは3〜9の範囲になる量を使用するのがよい。
【0067】
また、凝集した有機顔料分散体を再分散する際に、水溶性の有機溶剤を添加して分散性を上げることができる。
【0068】
具体的に使用できる有機溶剤としては特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等の脂肪族ケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0069】
凝集した有機顔料分散体に水、上記酸および水溶性の有機溶剤を加える際には、必要に応じて従来公知の撹拌、混合、分散装置を用いることができる。特に含水率の高い有機顔料のペースト、スラリーを用いる際は水を加えなくてもよい。さらに、再分散の効率を高める目的、および不用となった水溶性有機溶剤または過剰な酸等を除去する目的で加熱、冷却、または蒸留などを行うことができる。
【0070】
本発明で作成された有機顔料分散体はインクジェット用記録液の着色剤として好ましく使用することができる。この際、インクジェット記録液中の有機顔料分散体濃度はインクジェット記録液100重量部に対して顔料分が2.0〜10.0重量部になるように調整するのが着色力の点から好ましい。本発明のインクジェット用記録液にはノズル部分での乾燥、記録液の固化、および粘度調節を目的として、水溶性有機用剤を添加できる。水溶性有機溶剤としては、例えば炭素数1から4のアルキルアルコール類(例えばメタノール、エタノール、n―プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n―ブチルアルコール、sec―ブチルアルコール、tert―ブチルアルコール等)、ケトンまたはケトアルコール類(例えばアセトン、ジアセトンアルコール等)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ポリアルキレングリコール類(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、アルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6―ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等)、多価アルコール等のアルキルエーテル類(例えばエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、トリエチレンモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等)さらにはN―メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等があげられる。インク中での水溶性有機溶剤のトータルの量としては、インク全量に対して2〜60重量部、さらに好適な範囲としては、5〜25重量部である。
【0071】
また本発明のインクジェット用記録液には紙への浸透性を調節、および有機顔料分散体の分散安定性を向上させる目的で界面活性剤を添加できる。界面活性剤としてはノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤など従来公知の界面活性剤をいずれも好ましく利用できる。インク中での界面活性剤の量としては、インク全量にたいして0.05〜10重量部、さらに好適な範囲としては、0.1〜5重量部である。本発明のインクジェット用記録液には、上記した有機顔料分散体、水溶性有機溶剤、界面活性剤の他にも防黴剤、酸化防止剤、pH調整剤などの添加剤を適宜配合してもかまわない。
【0072】
また本発明で作成された有機顔料分散体は、インクジェット用記録液、印刷インキ、トナー、塗料、筆記用インキ、フィルム用コーティング材、強誘電体プリンタ、液体現像剤、電子写真用材料、プラスチック用着色剤、ゴム用着色剤、繊維用着色剤など広範囲の水性着色剤として用いることができる。
【0073】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。尚、文中「部」および「%」とあるのは特に示さない限り重量基準とする。また、各分散粒子径はイオン交換水で希釈した後、0.45μmメンブレンフィルターで濾過して、DLS−7000(大塚電子社製)を用いて測定を行っている。
【0074】
〔実施例1〕
分散剤としてスチレン/アリルアミンの共重合体(塩基価250、分子量5000)の10部を用い、顔料としてC.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部を用い、これら分散剤および顔料を98%硫酸80部に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、平均粒子径30.4nmのキナクリドン顔料の水性分散体を得た。次いでこの水性顔料分散体に5%水酸化カリウム水溶液を滴下してpHを12.0に調節し、キナクリドン顔料の水性分散体を凝集させた。その後、この凝集物をメンブレンフィルター(保留粒子径が0.45μm)を用いて減圧濾過し、500mlのイオン交換水で3回水洗いして、脱塩および脱溶剤されたキナクリドン顔料の水性分散体のペーストを得た。次に、このペーストに20%塩酸8.0gを加えた後、総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った。この後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節し顔料分10%のキナクリドン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は29.8nmであり高い透明性を有していた。
【0075】
〔実施例2〕
有機顔料をC.I.Pigment Red 122からC.I.Pigment Blue 15に変更する以外は実施例1と同様にしてC.I.Pigment Blue 15のフタロシアニン顔料の水性分散体を作成した。この顔料分散体の平均粒子系は凝集前:42.3nm、再分散後:45.0nmであり高い透明性を有していた。
【0076】
〔実施例3〕
有機顔料をC.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部からC.I.Pigment Yellow 110のイソインドリノン顔料3部とC.I.Pigment Yellow 109のイソインドリノン顔料7部に変更する以外は実施例1と同様にしてC.I.Pigment Yellow 110とC.I.Pigment Yellow 109のイソインドリノン固溶体顔料の水性分散体を作成した。この顔料分散体の平均粒子系は凝集前:26.8nm、再分散後:26.6nmであり高い透明性を有していた。
【0077】
〔実施例4〕
C.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部をC.I.Pigment Red 202のジケトピロロピロール顔料5部とC.I.Pigment Violet 19のキナクリドン顔料5部に変更し、98%硫酸をトリフルオロ酢酸に変更した以外は実施例1と同様にしてジケトピロロピロール/キナクリドン固溶体顔料の水性分散体を作成した。この顔料分散体の平均粒子径は凝集前:29.8nm、再分散後:26.7nmであり高い透明性を有していた。
【0078】
〔実施例5〕
分散剤としてスチレン/アリルアミンの共重合体(塩基価250、分子量5000)の17部とポリオキシエチレンラウリルエーテル(PEG−30)の3部を用い、顔料としてC.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部を用い、これら分散剤および顔料を98%硫酸80部に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、平均粒子径33.1nmのキナクリドン顔料の水性分散体を得た。次いでこの水性顔料分散体に5%水酸化カリウム水溶液を滴下してpHを12.0に調節し、キナクリドン顔料の水性分散体を凝集させた。その後、この凝集物をメンブレンフィルター(保留粒子径が0.45μm)を用いて減圧濾過し、500mlのイオン交換水で3回水洗いして、脱塩および脱溶剤されたキナクリドン顔料の水性分散体のペーストを得た。次に、このペーストに20%塩酸8.0gを加えた後、総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った。この後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節し顔料分10%のキナクリドン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は31.5nmであり高い透明性を有していた。
【0079】
〔実施例6〕
分散剤としてスチレン/アリルアミンの共重合体(塩基価250、分子量5000)の10部を用い、顔料としてC.I.Pigment Blue 15のフタロシアニン顔料10部を用い、これら分散剤および顔料を三塩化アルミニウム15部とジメチルスルホキシド65部の混合溶媒に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、平均粒子径42.5nmのフタロシアニン顔料の水性分散体を得た。
【0080】
次いでこの水性顔料分散体に5%水酸化カリウム水溶液を滴下してpHを12.0に調節し、フタロシアニン顔料の水性分散体を凝集させた。その後、この凝集物をメンブレンフィルター(保留粒子径が0.45μm)を用いて減圧濾過し、500mlのイオン交換水で3回水洗いして、脱塩および脱溶剤されたフタロシアニン顔料の水性分散体のペーストを得た。次に、このペーストに20%塩酸8.0gを加えた後、総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った。この後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節し顔料分10%のフタロシアニン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は44.6nmであり高い透明性を有していた。
【0081】
〔比較例1〕
C.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部を98%硫酸80部に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したスチレン−アリルアミンの共重合体(酸価250、分子量5000)の10部と塩酸2.5部を含むイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、平均粒子径139.8nmのキナクリドン顔料の水性分散体を得た。
【0082】
次いでこの水性顔料分散体に5%水酸化カリウム水溶液を滴下してpHを12.0に調節し、キナクリドン顔料の水性分散体を凝集させた。その後、この凝集物をメンブレンフィルター(保留粒子径が0.45μm)を用いて減圧濾過し、500mlのイオン交換水で3回水洗いして、脱塩および脱溶剤されたキナクリドン顔料の水性分散体のペーストを得た。
【0083】
次に、このペーストに20%塩酸8.0gを加えた後、総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った。この後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節し顔料分10%のキナクリドン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は144.2nmであり粒度分布が広く、透明性に劣るものであった。
【0084】
〔比較例2〕
C.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部を98%硫酸80部に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、のキナクリドン顔料のペーストを得た。
【0085】
次に、キナクリドン顔料のペーストを500mlのイオン交換水で3回水洗いした後、スチレン−アリルアミンの共重合体(塩基価250、分子量5000)の10部と塩酸2.5部を含むイオン交換水に混合し、超音波処理を行った後、サンドミル(安川製作所製)を用いて分散を行い、キナクリドン顔料の水分散体を得た。これに総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節して顔料分10%のキナクリドン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は125.6nmであり粒度分布が広く、透明性に劣るものであった。
【0086】
上記実施例および比較例で得られた有機顔料分散体の平均粒子径(直径)の測定結果をまとめて表1に示す。実施例で得られた有機顔料分散体は分散粒子径が小さく、単分散でかつ粒径分布が狭いものであったが、比較例で得られた有機顔料分散体は分散粒子径が大きく、多分散でかつ粒径分布が広いものでしかなかった。
【0087】
【表1】
次に、得られた各水性分散体を下記のものと混合した後、保留粒子径が1.0μmの濾紙にて加圧濾過してインクジェットプリンタ用記録液を得た。なお、「アセチレノールEH」は川研ファインケミカル社製の、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物の商品名である。
【0088】
有機顔料分散体(顔料分10%) 50部
ジエチレングリコール 7.5部
グリセリン 5部
トリメチロールプロパン 5部
アセチレノールEH 0.2部
イオン交換水 32.3部
上記記録液を用いて市販のインクジェットプリンタ(商品名:BJF 900、キヤノン社製)を用いてカラーの記録画像をOHPシート及びコピー用紙に記録を行った。OHPシートのヘイズ値より画像の透明性を、コピー用紙のベタ印字部分のOD値より画像の色濃度を以下の基準に基づいて評価した結果を表2に示す。
【0089】
透明性評価(OHPシート)
市販のOHPシート(商品名:CF−301、キヤノン社製)に上記記録液を用いてベタパッチ画像を印字し、ヘイズメーター(商品名:直読ヘイズメーター;東洋精機製)によって印字部のヘイズ値を測定し、以下の評価基準とした。
【0090】
○:ヘイズ値が10未満、
△:ヘイズ値が10以上20未満、
×:ヘイズ値が20以上
色濃度評価(OD値)
市販のコピー用紙(商品名:PB用紙、キヤノン製)に、上記記録液を用いてベタパッチ画像を印字し、1時間放置後、記録濃度をマクベスRD915(商品名:マクベス社製)にて測定し、以下の評価基準とした。
【0091】
○:濃度が1.25以上であった。
【0092】
△:各色の濃度が1.15〜1.25であった。
【0093】
×:各色の濃度が1.15以下であった。
【0094】
【表2】
実施例の顔料分散体を用いた記録液では、OHPの投影図は明るく鮮やかなものであったが、比較例の顔料分散体を用いた記録液では、OHPの投影図は暗く沈んだものであった。また普通紙印字物の色濃度においても実施例の顔料分散体を用いた記録液では高いOD値を示していたが、比較例の顔料分散体を用いた記録液では低いOD値を示していた。
【0095】
【発明の効果】
本発明により、長時間の分散装置による処理を必要とせず、原料となる顔料の一次粒子の大きさに依存しない、サイズの均一性を持つ微細な顔料分散体およびその製造方法が得られる。また、耐水性や耐光性に優れ、かつ発色性や光透過性にも優れた水性着色液、特にはインクジェット用記録液を提供された。
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットプリンタ等の記録液、この記録液に好適な水性着色液、この記録液に使用する有機顔料分散体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々のインク吐出方式により、インク小滴(droplet)を形成し、それらの一部若しくは全部を紙、加工紙、プラスチックフィルム、織布等の被記録材に付着させて記録を行うものである。従来から、インクジェット用記録液は主に染料と水溶性の添加剤からなる水性の記録液が用いられており、インクとしての保存安定性には優れるが、これを用いて印字されたものは耐水性や耐光性などにおいてさらなる改善が進められている。そこで色材を染料インクから顔料インクに換えることで耐水性や耐光性を改善しようという試みがなされている。しかし、染料と比較して顔料はインクジェットヘッドのノズルからの吐出性が劣る場合が多く、また顔料は染料のような単独の色素分子ではなく粒子であるために散乱光や反射光が混入し、染料に比べて吸収スペクトルがブロードになり一般に発色性が低い。これらを解決する方法の一つとして顔料を微細化するという方法があり、光散乱の影響が少なく、染料並の透過性を示すような100ナノメートル以下に顔料を微粒子化することが望まれている。通常、顔料の微粒子化はサンドミルやロールミル、ボールミルと言った分散機を用いて機械的な力によって行うが、この方法では顔料を一次粒子付近の100ナノメートル程度まで微細化するのが限界であり、さらなる微粒子化が要求される場合に対応するのは難しい(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、粒子径を小さくしようとすればするほど分散に長時間を要し、多大なコストがかかるばかりか、均一な品質のものを得るのも困難になる。さらにこの方法では顔料を一次粒子より微細化することは非常に困難であるので、100ナノメートル以下の顔料粒子を得るためには、原料として一次粒子が大きい顔料を用いることが出来ない。一方、顔料を一度溶解させた後に再び析出させて顔料の微粒子を作るという方法が提案されている。
【0004】
特許文献2では硫酸を用いて一度有機顔料を溶解させるアシッドペースティング法による微粒子化が提案されているが、100ナノメートル以下の顔料を得るには至っていない。また、特許文献3、特許文献4にはアルカリ存在下の非プロトン性極性溶剤に有機顔料を溶解した後、酸で中和して微細な顔料粒子を得る方法が記載されているが、顔料の微細化と分散安定化処理を同時に行っていないため、始め微細であった顔料粒子も分散時には既に凝集を起こしており、実質ナノメートルオーダーの顔料分散体を得ることは困難である。
【0005】
特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8ではアルカリ存在下で非プロトン性極性溶剤に有機顔料と界面活性剤や樹脂などの分散剤を一緒に溶解させた後、酸で中和して顔料を析出させて分散性の高い微細な顔料粒子を得ている。しかし、顔料の溶液(水が20%以下)に酸を滴下して顔料を析出させる手法であるため、水系での安定化が計られておらず、そのまま水分散体として使えるものではない。また中和再沈による溶剤との分離も同時に行われるため、顔料粒子の会合を十分に妨げることは出来ず、その後にボールミルなどで分散処理を行ってもサイズの整ったナノメートルオーダーの顔料を安定して得るには至らない。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−110111号公報
【特許文献2】
特開平9−221616号公報
【特許文献3】
特公平4−29707号公報
【特許文献4】
特公平6−4776号公報
【特許文献5】
特公平5−27664号公報
【特許文献6】
特公平6−33353号公報
【特許文献7】
特公平6−96679号公報
【特許文献8】
特開平11−130974号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は上記、従来の顔料分散体作成法の課題を解決し、長時間の分散装置による処理を必要とせず、原料となる顔料の一次粒子の大きさに依存しない、サイズの均一性を持つ微細な顔料分散体およびその製造方法を提供することにある。また、耐水性や耐光性に優れ、かつ発色性や光透過性にも優れた水性着色液、特にはインクジェット用記録液を提供することも目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討した結果、下記工程にて、有機顔料分散体を得る有機顔料分散体作成方法によって、上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
(1)有機顔料と分散剤を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させた後、水と混合することにより有機顔料を析出させて有機顔料分散体を作成する第一工程。
【0010】
(2)前記第一工程で得られた有機顔料分散体をアルカリで凝集させて、有機顔料分散体を溶媒から分離する第二工程。
【0011】
(3)前記第二工程で分離された有機顔料分散体を酸で処理する第三工程。
【0012】
これにより、長時間の分散装置による処理を必要とせず、原料となる顔料の一次粒子の大きさに依存しない、サイズの均一性を持つ微細な顔料分散体が提供される。
【0013】
この方法において、前記第一工程の有機溶剤の水に対する溶解度が5%以上であることが好ましい。
【0014】
また、前記第一工程の分散剤が、カチオン性窒素原子、水酸基およびアルキレンオキサイドから選ばれる1種類以上を分子中に有する高分子化合物もしくは界面活性剤であることも好ましい。
【0015】
前記第一工程の酸が有機プロトン酸であることも好ましい。
【0016】
前記有機プロトン酸が、アルキルスルホン酸、アルキルカルボン酸、ハロゲン化アルキルスルホン酸、ハロゲン化アルキルカルボン酸、芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸から選ばれるいずれか1種類以上であることも好ましい。
【0017】
前記第一工程の酸が無機プロトン酸であることも好ましい。
【0018】
前記無機プロトン酸が、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、塩化水素酸、過塩素酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸およびクロロスルホン酸から選ばれる1種類以上であることも好ましい。
【0019】
前記第一工程の酸がルイス酸であることも好ましい。
【0020】
前記ルイス酸が、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ジルコニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タンタルおよびタングステンから選ばれる1種類以上のハロゲン化物であることも好ましい。
【0021】
本発明は、上記の方法で作成された有機顔料分散体を包含する。
【0022】
本発明はまた、この有機顔料分散体を含有する水性着色液も包含する。
【0023】
本発明はさらに、この有機顔料分散体を含有するインクジェット用記録液をも包含する。
【0024】
なお、さらに詳細に説明すれば、本発明は下記の構成によって前記課題を解決できた。
【0025】
(1)下記工程にて、有機顔料分散体を得る有機顔料分散体製造方法。
1)有機顔料と分散剤を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させた後、水と混合することにより有機顔料を析出させて有機顔料分散体を作成する第一工程。
2)前記第一工程で得られた有機顔料分散体をアルカリで凝集させて、有機顔料分散体を溶媒から分離する第二工程。
3)前記第二工程で分離された有機顔料分散体を酸で処理する第三工程。
【0026】
(2)前記第一工程の有機溶剤の水に対する溶解度が5%以上であることを特徴とする前記(1)記載の有機顔料分散体製造方法。
【0027】
(3)前記第一工程の分散剤が、カチオン性窒素原子、水酸基およびアルキレンオキサイドから選ばれる1種類以上を分子中に有する高分子化合物もしくは界面活性剤であることを特徴とする前記(1)または(2)記載の有機顔料分散体製造方法。
【0028】
(4)前記第一工程の酸が有機プロトン酸であることを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0029】
(5)前記有機プロトン酸が、アルキルスルホン酸、アルキルカルボン酸、ハロゲン化アルキルスルホン酸、ハロゲン化アルキルカルボン酸、芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸から選ばれるいずれか1種類以上であることを特徴とする前記(1)ないし(4)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0030】
(6)前記第一工程の酸が無機プロトン酸であることを特徴とする前記(1)ないし(5)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0031】
(7)前記無機プロトン酸が、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、塩化水素酸、過塩素酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸およびクロロスルホン酸から選ばれる1種類以上であることを特徴とする前記(1)ないし(6)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0032】
(8)前記第一工程の酸がルイス酸であることを特徴とする前記(1)ないし(7)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0033】
(9)前記ルイス酸が、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ジルコニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タンタルおよびタングステンから選ばれる1種類以上のハロゲン化物であることを特徴とする前記(1)ないし(8)いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
【0034】
(10)前記(1)ないし(9)のいずれか一項記載の方法で製造されたことを特徴とする有機顔料分散体。
【0035】
(11)前記(10)記載の有機顔料分散体を含有することを特徴とする水性着色液。
【0036】
(12)前記(10)記載の有機顔料分散体を含有することを特徴とするインクジェット用記録液。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に、より具体的な構成例について記載するが、本発明は下記方法に限定されるものではない。
【0038】
本発明の第一工程は、有機顔料を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させた後、粒子径の整った有機顔料の水分散体として再生する工程である。
【0039】
本発明で使用する有機顔料は、分散剤と共に酸に溶解するもの、あるいは酸と有機溶剤の混合液に溶解するものであればいかなる物でも使用できる。さらに好ましくはこの条件下で反応性を示さず、安定な物がよい。
【0040】
具体的には、印刷インキおよび塗料等に用いられている有機顔料を用いることができ、例えば、アゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリジン系、アンサンスロン系、チオインジゴ系、ナフトール系、ベンゾイミダゾロン系、ピランスロン系、フタロシアニン系、フラバンスロン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、インダンスロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、キノフタロン系、ペリノン系およびペリレン系の顔料、建染染料系顔料、金属錯体顔料、塩基性染料系顔料、蛍光顔料、昼光蛍光顔料がある。
【0041】
例としてはC.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同17、同42、同55、同62、同73、同74、同81、同83、同93、同95、同97、同108、同109、同110、同128、同130、同151、同155、同158、同139、同147、同154、同168、同173、同180、同184、同191、同199、C.I.Pigment Red 2、同4、同5、同22、同23、同31、同48、同53、同57、同88、同112、同122、同144、同146、同150、同166、同171、同175、同176、同177、同181、同183、同184、同185、同202、同206、同207、同208、同209、同213、同214、同220、同254、同255、同264、同272、C.I.Pigment Blue 16、同25、同26、同56、同57、同60、同61、同66、C.I.Pigment Violet 19、同23、同29、同37、同38、同42、同43、同44、C.I.Pigment Orange 16、同34、同35、同36、同61、同64、同66、同71、同73、C.I.Pigment Brown 23、同38がある。また、これらの有機顔料は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
【0042】
分散剤としては、酸単独または酸と有機溶剤との混合液に溶解するものであって、かつ水にも可溶であり分散剤の水溶液中において有機顔料に対して分散効果があるものを適宜使用可能である。好ましくは、界面活性剤もしくは高分子化合物であって、カチオン性窒素原子、水酸基およびアルキレンオキサイドから選ばれる1種類以上を分子中に有するものである。さらに好ましくは酸単独、または酸存在下の有機溶剤に有機顔料と共に安定に溶解するものがよい。分散剤の親水性部分がカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基など上記以外のものから選ばれるもののみで構成されている場合は酸を含む有機顔料の分散体において分散安定性が相対的に低くなるという点で不利である。また本発明は、従来の顔料分散法と異なり、分散剤の顔料表面への接触操作が不要なため広範な分散剤を使用することができる。
【0043】
具体的に界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等のカチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤、また、この他にもアルキルベタインやアミドベタインなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤などを含めて、従来公知である界面活性剤およびその誘導体から適宜選ぶことができる。
【0044】
分散剤として使用できる高分子化合物としては、具体的にはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、アルケニルスルホン酸、ビニルアミン、アリルアミン、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルホスホン酸、ビニルピロリドン、アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドおよびその誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つはカチオン性窒素原子、水酸基およびアルキレンオキサイドのいずれかになる官能基を有する単量体)から構成されるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの変性物、およびこれらの塩等が挙げられる。カチオン性窒素原子を分子中に有するモノマーとしてさらに好ましい例として、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート〔CH2=C(CH3)−COO−C2H4N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート〔CH2=CH−COO−C2H4N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート〔CH2=C(CH3)−COO−C3H6N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート〔CH2=CH−COO−C3H6N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアクリルアミド〔CH2=CH−CON(CH3)2〕、N,N−ジメチルメタクリルアミド〔CH2=C(CH3)−CON(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド〔CH2=CH−CONHC2H4N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド〔CH2=C(CH3)−CONHC2H4N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド〔CH2=CH−CONH−C3H6N(CH3)2〕、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド〔CH2=C(CH3)−CONH−C3H6N(CH3)2〕等が挙げられる。
【0045】
また、アルブミン、ゼラチン、ロジン、シェラック、デンプン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然高分子、およびこれらの変性物も分散剤として好ましく使用することが出来る。また、これらの分散剤は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。上記分散剤の使用割合は特に限定されるものではないが、有機顔料1質量部に対して0.05〜5質量部以上の範囲で用いるのが好ましい。分散剤が有機顔料1質量部に対して0.05質量部より少ない場合は、分散効果が低下する傾向があるという点で不利である。また、分散剤を有機顔料1重量部に対して5重量部より多く加えても分散工化の向上が見られない傾向がありコストにおいて不利である。また高分子化合物の好ましい分子量範囲については特に限定されるものではないが、200〜100000質量部、さらには2000〜60000質量部の範囲で用いるのが好ましい。高分子化合物の分子量が200より小さい場合は分散効果が低下する傾向があるという点で不利であり、100000より大きい場合は溶媒に溶解しにくくなる傾向があるという点で不利である。
【0046】
有機溶剤としては、酸の存在下で有機顔料と分散剤を溶解させるものであればアルカリ存在下で有機顔料を溶解させるものであればいかなるものでも使用可能であるが、水に対する溶解度が5%以上であるものが好ましく利用され、さらには水に対して自由に混合するものが好ましい。水に対する溶解度が5%より小さい溶剤を用いて顔料を可溶化した場合は、水と混合する際に有機顔料が析出しにくく、粗大な粒子になり易い点で不利である。また、得られる顔料分散体の分散安定性に対して悪影響を及ぼす傾向があるという点でも不利である。
【0047】
具体的にはジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン、プロピオニトリル、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい溶剤として挙げられ、中でもジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、スルホラン、アセトンまたはアセトニトリルが好ましい。また、これらは1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
【0048】
酸としては、酸単独または有機溶剤中で有機顔料を可溶化するものであればいかなるものでも使用可能であるが、有機プロトン酸、無機プロトン酸、及びルイス酸が好ましい。
【0049】
具体的には、有機プロトン酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸;これらがハロゲンで置換されたトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のハロゲン化アルキルスルホン酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等のアルキルカルボン酸;これらがハロゲンで置換されたトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、クロロカプロン酸、ブロモカプロン酸、クロロウンデカン酸等のハロゲン化アルキルカルボン酸;安息香酸、テトラフルオロ安息香酸等の芳香族カルボン酸;ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸を好ましく利用することができる。無機プロトン酸としては、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、塩化水素酸、過塩素酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、クロロスルホン酸を好ましく利用できる。
【0050】
この他に、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、過ヨウ素酸、発煙硫酸、発煙硝酸、マンガン酸、過マンガン酸、クロム酸、重クロム酸、その他各種固体酸等も使用できる。ルイス酸としては、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ジルコニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タンタルおよびタングステンから選ばれる一種類以上の物質のハロゲン化物を好ましく使用できる。
【0051】
例えば、三塩化ガリウム、四塩化スズ、三塩化ホウ素、四塩化ゲルマニウム、五塩化アンチモン、三塩化鉄、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、三塩化インジウム、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、二塩化亜鉛、四塩化亜鉛、五フッ化アンチモン、五塩化アンチモン、五塩化タンタル、六フッ化ヒ素、五フッ化ヒ素、四塩化ジルコニウム、四塩化バナジウム、二塩化スズ、二塩化銅もしくは四塩化チタン等である。
【0052】
以上述べた中でも有機顔料の可溶化能力の高さと取り扱いの点から、硫酸、硝酸、トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウムが好ましく使用される。また、これらの酸は、1種類単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。上記酸の使用割合は特に限定されるものではないが、有機顔料1質量部に対して0.01〜500質量部の範囲で用いるのが好ましい。酸が有機顔料1質量部に対して0.01質量部より少ない場合は分散剤と共に有機顔料を完全に溶解させることが難しくなる傾向があるという点で不利である。また、酸が有機顔料に対して500質量部より多い場合は着色力の観点から見て、得られる有機顔料分散体の濃度が薄く、濃縮を行ったとしても生産性に劣る点で不利である。
【0053】
酸と有機溶剤を混合して用いる際に、酸を完全に溶解させるために、若干の水や低級アルコールおよびグリセリンなどの酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶剤に添加することが出来る。これにより酸の溶解度が低い有機溶剤であっても酸の溶解性が増し、有機顔料の溶解が容易になる。しかしその添加率が全溶媒量に対して50%以上になると有機顔料の溶解性が低下する点で不利となるため、通常0.5〜30%程度の添加率が最も効果的である。具体的には水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、グリセリンなどを添加することができる。
【0054】
有機顔料を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させる際、有機顔料と分散剤に加えて、有機溶剤には結晶成長防止剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、樹脂添加物などを必要に応じて添加することができる。結晶成長防止剤としては、当該技術分野においてよく知られているフタロシアニン誘導体やキナクリドン誘導体が挙げられ、例えばフタロシアニンのフタルイミドメチル誘導体、フタロシアニンのスルホン酸誘導体、フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体、キナクリドンのフタルイミドメチル誘導体、キナクリドンのスルホン酸誘導体、キナクリドンのN−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、キナクリドンのN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体等が挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤としては、金属酸化物、アミノベンゾエート系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シンナメート系紫外線吸収剤、ニッケルキレート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸系紫外線吸収剤およびビタミン系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0056】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、チオアルカン酸エステル化合物、有機リン化合物、芳香族アミン等が挙げられる。
【0057】
樹脂添加物としては、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ポリエステル、ポリアリルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メラミン樹脂あるいはこれらの変性物等の合成樹脂などが挙げられる。これらの結晶成長防止剤や紫外線吸収剤、樹脂添加物はいずれも1種類単独でまたは2種類以上を併用して使用することができる。
【0058】
第一工程において、有機顔料と分散剤が酸または酸と有機溶剤の混合溶媒で溶解しているもの(以下、「顔料溶液」と略記する)を水と混合して有機顔料を析出させる際に使用される水の割合は、顔料溶液1重量部に対して0.1〜1000重量部、さらには1〜500重量部が好ましい。水が顔料溶液1重量部に対して0.1重量部以下の場合は、析出した有機顔料の分散安定性が低くなる傾向がある点で不利であり、1000部以上の場合は着色力の観点から見て、得られる有機顔料分散体の濃度が薄く、濃縮を行ったとしても生産性に劣るという傾向がある点で不利である。
【0059】
また、顔料溶液と水とを混合する際にこれらの温度は−50℃〜100℃の範囲、さらには−20℃〜50℃の範囲に調節するのが好ましい。混合する際の溶液の温度は析出する有機顔料のサイズに大きく影響するため、ナノメートルオーダーの有機顔料分散体を得るには溶液の温度を−50℃〜100℃の範囲にするのが好ましい。また、顔料溶液と水との混合の際に溶液の流動性を確保するために混合する水に、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、グリセリン等の公知の凝固点降下剤を加えておくことができる。
【0060】
さらに、サイズの均一性を持つナノメートルオーダーの顔料分散体を得るには、顔料溶液と水との混合を可能な限り速やかに行うのが好ましく、超音波振動子やフルゾーン撹拌羽、内部循環型撹拌装置、外部循環型撹拌装置、流量およびイオン濃度制御装置等の従来公知の撹拌、混合、分散、晶析に使用される装置をいずれも使用することができる。また、連続して流れる水の中に混合してもよい。顔料溶液の水中への投入法としては、従来公知の液体注入法をいずれも利用できるが、シリンジやニードル、チューブなどのノズルからの噴射流として水中、もしくは水上から投入するのが好ましい。なお、短時間で投入するために複数のノズルから投入することも出来る。さらに、有機顔料分散体を安定して作成するために、顔料溶液と混合する水に対しても酸及び分散剤を初めとする添加剤を加えておくことができる。
【0061】
この第一工程により、有機溶剤に溶解した顔料は、水との混合によって急速な結晶成長またはアモルファス様の凝集体を形成し、同時に顔料溶液に含まれる分散剤によって分散安定化が行われると考えられる。また必要に応じて、第一工程中および直後に、分散安定性を損なわない範囲で加熱処理を行い有機顔料分散体の結晶系および凝集状態の調整を行うことができる。
【0062】
本発明の第二工程は、第一工程で得られた有機顔料の水分散体をアルカリで凝集させて溶剤と分離し、濃縮、脱溶剤および脱塩(脱アルカリ)を行う工程である。系をアルカリ性にすることでアルカリ性の親水性部分による静電反発力を低下させ、有機顔料分散体を凝集させる。従来の顔料分散体においてはアルカリで凝集させた場合、その後に酸処理を行ったとしても、完全に再分散されることはなく粒子径の増大があった。しかし、本発明の第一工程で作成された有機顔料分散体を用いることで、アルカリで凝集させた場合でも再分散後に粒子径の増大がほとんどないことを見出した。
【0063】
発明の第二工程で用いるアルカリとしては、沈殿し難い微粒子となっている有機顔料分散体を凝集させてスラリー、ペースト、粉状、粒状、ケーキ状(塊状)、シート状、短繊維状、フレーク状などにして従来公知の分離法によって効率よく溶剤と分離できる状態にするものであればいかなるものでも使用できる。さらに好ましくは、第一工程において用いた酸を溶剤と同時に分離するために、第一工程で用いた酸と水溶性の塩を形成する酸を利用するのがよく、アルカリ自体も水への溶解度が高いものが好ましい。また脱塩を効率よく行うために、加えるアルカリの量は有機顔料分散体が凝集する範囲でできるだけ少ない方がよい。
【0064】
具体的にはアミノメチルプロパノール、ジメチルアミノプロパノール、ジメチルエタノールアミン、ジエチルトリアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニアが挙げられる。アルカリによって容易に分離可能な状態にされた有機顔料分散体は従来公知の遠心分離装置や濾過装置またはスラリー固液分離装置などで容易に分離することが出来る。この際、希釈水の添加、またはデカンテーションおよび水洗の回数を増やすことで脱塩、脱溶剤の程度を調節することができる。
【0065】
第二工程で濃縮された有機顔料分散体は、含水率の高いペーストやスラリーのままで用いることもできるが、必要に応じてスプレードライ法、遠心分離乾燥法、濾過乾燥法または凍結乾燥法などのような、従来公知の乾燥法により、微粉末として用いることも出来る。
【0066】
本発明の第三工程は、第二工程で凝集した有機顔料分散体を酸で中和し、第一工程で得られた有機顔料分散体に近い粒子径で水に再分散させる工程である。第二工程においてすでに脱塩および脱溶剤が行われているため、不順物の少ない有機顔料分散体のコンクベースを得ることが出来る。第三工程で使用する酸は、アルカリ性の親水性部分を持つ分散剤の中和剤として働き、水への溶解性が高まるものであればいかなるものでも使用できる。具体的には塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸などが挙げられるが、塩酸、酢酸および硫酸が特に好ましい。上記の酸を使用する量は凝集した有機顔料分散体を水に安定に再分散できる範囲であれば特に限定されるものではないが、印刷インキやインクジェットプリンタ用インクなどの用途に用いる場合は各種部材の腐食の原因になる場合があるため、pHが2〜11、さらに好ましくは3〜9の範囲になる量を使用するのがよい。
【0067】
また、凝集した有機顔料分散体を再分散する際に、水溶性の有機溶剤を添加して分散性を上げることができる。
【0068】
具体的に使用できる有機溶剤としては特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等の脂肪族ケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0069】
凝集した有機顔料分散体に水、上記酸および水溶性の有機溶剤を加える際には、必要に応じて従来公知の撹拌、混合、分散装置を用いることができる。特に含水率の高い有機顔料のペースト、スラリーを用いる際は水を加えなくてもよい。さらに、再分散の効率を高める目的、および不用となった水溶性有機溶剤または過剰な酸等を除去する目的で加熱、冷却、または蒸留などを行うことができる。
【0070】
本発明で作成された有機顔料分散体はインクジェット用記録液の着色剤として好ましく使用することができる。この際、インクジェット記録液中の有機顔料分散体濃度はインクジェット記録液100重量部に対して顔料分が2.0〜10.0重量部になるように調整するのが着色力の点から好ましい。本発明のインクジェット用記録液にはノズル部分での乾燥、記録液の固化、および粘度調節を目的として、水溶性有機用剤を添加できる。水溶性有機溶剤としては、例えば炭素数1から4のアルキルアルコール類(例えばメタノール、エタノール、n―プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n―ブチルアルコール、sec―ブチルアルコール、tert―ブチルアルコール等)、ケトンまたはケトアルコール類(例えばアセトン、ジアセトンアルコール等)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ポリアルキレングリコール類(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、アルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6―ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等)、多価アルコール等のアルキルエーテル類(例えばエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、トリエチレンモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等)さらにはN―メチルピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等があげられる。インク中での水溶性有機溶剤のトータルの量としては、インク全量に対して2〜60重量部、さらに好適な範囲としては、5〜25重量部である。
【0071】
また本発明のインクジェット用記録液には紙への浸透性を調節、および有機顔料分散体の分散安定性を向上させる目的で界面活性剤を添加できる。界面活性剤としてはノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤など従来公知の界面活性剤をいずれも好ましく利用できる。インク中での界面活性剤の量としては、インク全量にたいして0.05〜10重量部、さらに好適な範囲としては、0.1〜5重量部である。本発明のインクジェット用記録液には、上記した有機顔料分散体、水溶性有機溶剤、界面活性剤の他にも防黴剤、酸化防止剤、pH調整剤などの添加剤を適宜配合してもかまわない。
【0072】
また本発明で作成された有機顔料分散体は、インクジェット用記録液、印刷インキ、トナー、塗料、筆記用インキ、フィルム用コーティング材、強誘電体プリンタ、液体現像剤、電子写真用材料、プラスチック用着色剤、ゴム用着色剤、繊維用着色剤など広範囲の水性着色剤として用いることができる。
【0073】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。尚、文中「部」および「%」とあるのは特に示さない限り重量基準とする。また、各分散粒子径はイオン交換水で希釈した後、0.45μmメンブレンフィルターで濾過して、DLS−7000(大塚電子社製)を用いて測定を行っている。
【0074】
〔実施例1〕
分散剤としてスチレン/アリルアミンの共重合体(塩基価250、分子量5000)の10部を用い、顔料としてC.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部を用い、これら分散剤および顔料を98%硫酸80部に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、平均粒子径30.4nmのキナクリドン顔料の水性分散体を得た。次いでこの水性顔料分散体に5%水酸化カリウム水溶液を滴下してpHを12.0に調節し、キナクリドン顔料の水性分散体を凝集させた。その後、この凝集物をメンブレンフィルター(保留粒子径が0.45μm)を用いて減圧濾過し、500mlのイオン交換水で3回水洗いして、脱塩および脱溶剤されたキナクリドン顔料の水性分散体のペーストを得た。次に、このペーストに20%塩酸8.0gを加えた後、総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った。この後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節し顔料分10%のキナクリドン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は29.8nmであり高い透明性を有していた。
【0075】
〔実施例2〕
有機顔料をC.I.Pigment Red 122からC.I.Pigment Blue 15に変更する以外は実施例1と同様にしてC.I.Pigment Blue 15のフタロシアニン顔料の水性分散体を作成した。この顔料分散体の平均粒子系は凝集前:42.3nm、再分散後:45.0nmであり高い透明性を有していた。
【0076】
〔実施例3〕
有機顔料をC.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部からC.I.Pigment Yellow 110のイソインドリノン顔料3部とC.I.Pigment Yellow 109のイソインドリノン顔料7部に変更する以外は実施例1と同様にしてC.I.Pigment Yellow 110とC.I.Pigment Yellow 109のイソインドリノン固溶体顔料の水性分散体を作成した。この顔料分散体の平均粒子系は凝集前:26.8nm、再分散後:26.6nmであり高い透明性を有していた。
【0077】
〔実施例4〕
C.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部をC.I.Pigment Red 202のジケトピロロピロール顔料5部とC.I.Pigment Violet 19のキナクリドン顔料5部に変更し、98%硫酸をトリフルオロ酢酸に変更した以外は実施例1と同様にしてジケトピロロピロール/キナクリドン固溶体顔料の水性分散体を作成した。この顔料分散体の平均粒子径は凝集前:29.8nm、再分散後:26.7nmであり高い透明性を有していた。
【0078】
〔実施例5〕
分散剤としてスチレン/アリルアミンの共重合体(塩基価250、分子量5000)の17部とポリオキシエチレンラウリルエーテル(PEG−30)の3部を用い、顔料としてC.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部を用い、これら分散剤および顔料を98%硫酸80部に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、平均粒子径33.1nmのキナクリドン顔料の水性分散体を得た。次いでこの水性顔料分散体に5%水酸化カリウム水溶液を滴下してpHを12.0に調節し、キナクリドン顔料の水性分散体を凝集させた。その後、この凝集物をメンブレンフィルター(保留粒子径が0.45μm)を用いて減圧濾過し、500mlのイオン交換水で3回水洗いして、脱塩および脱溶剤されたキナクリドン顔料の水性分散体のペーストを得た。次に、このペーストに20%塩酸8.0gを加えた後、総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った。この後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節し顔料分10%のキナクリドン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は31.5nmであり高い透明性を有していた。
【0079】
〔実施例6〕
分散剤としてスチレン/アリルアミンの共重合体(塩基価250、分子量5000)の10部を用い、顔料としてC.I.Pigment Blue 15のフタロシアニン顔料10部を用い、これら分散剤および顔料を三塩化アルミニウム15部とジメチルスルホキシド65部の混合溶媒に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、平均粒子径42.5nmのフタロシアニン顔料の水性分散体を得た。
【0080】
次いでこの水性顔料分散体に5%水酸化カリウム水溶液を滴下してpHを12.0に調節し、フタロシアニン顔料の水性分散体を凝集させた。その後、この凝集物をメンブレンフィルター(保留粒子径が0.45μm)を用いて減圧濾過し、500mlのイオン交換水で3回水洗いして、脱塩および脱溶剤されたフタロシアニン顔料の水性分散体のペーストを得た。次に、このペーストに20%塩酸8.0gを加えた後、総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った。この後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節し顔料分10%のフタロシアニン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は44.6nmであり高い透明性を有していた。
【0081】
〔比較例1〕
C.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部を98%硫酸80部に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したスチレン−アリルアミンの共重合体(酸価250、分子量5000)の10部と塩酸2.5部を含むイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、平均粒子径139.8nmのキナクリドン顔料の水性分散体を得た。
【0082】
次いでこの水性顔料分散体に5%水酸化カリウム水溶液を滴下してpHを12.0に調節し、キナクリドン顔料の水性分散体を凝集させた。その後、この凝集物をメンブレンフィルター(保留粒子径が0.45μm)を用いて減圧濾過し、500mlのイオン交換水で3回水洗いして、脱塩および脱溶剤されたキナクリドン顔料の水性分散体のペーストを得た。
【0083】
次に、このペーストに20%塩酸8.0gを加えた後、総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った。この後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節し顔料分10%のキナクリドン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は144.2nmであり粒度分布が広く、透明性に劣るものであった。
【0084】
〔比較例2〕
C.I.Pigment Red 122のキナクリドン顔料10部を98%硫酸80部に溶かし、フラスコ中で空気雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。この溶液を3時間撹拌した後、インペラー式撹拌羽(800rpm)で撹拌している冷却保温したイオン交換水400部(0℃)にシステムディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ニードル内径:0.57mm、吐出圧:4.0kgf、シリンジ内部テフロン(R)加工)2基を用いて速やかに投入し、のキナクリドン顔料のペーストを得た。
【0085】
次に、キナクリドン顔料のペーストを500mlのイオン交換水で3回水洗いした後、スチレン−アリルアミンの共重合体(塩基価250、分子量5000)の10部と塩酸2.5部を含むイオン交換水に混合し、超音波処理を行った後、サンドミル(安川製作所製)を用いて分散を行い、キナクリドン顔料の水分散体を得た。これに総重量が100gになるようにイオン交換水を加えて1時間撹拌を行った後、20%塩酸を加えてpHを6.5に調節して顔料分10%のキナクリドン顔料の水性分散体を得た。この顔料分散体の平均粒子径は125.6nmであり粒度分布が広く、透明性に劣るものであった。
【0086】
上記実施例および比較例で得られた有機顔料分散体の平均粒子径(直径)の測定結果をまとめて表1に示す。実施例で得られた有機顔料分散体は分散粒子径が小さく、単分散でかつ粒径分布が狭いものであったが、比較例で得られた有機顔料分散体は分散粒子径が大きく、多分散でかつ粒径分布が広いものでしかなかった。
【0087】
【表1】
次に、得られた各水性分散体を下記のものと混合した後、保留粒子径が1.0μmの濾紙にて加圧濾過してインクジェットプリンタ用記録液を得た。なお、「アセチレノールEH」は川研ファインケミカル社製の、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物の商品名である。
【0088】
有機顔料分散体(顔料分10%) 50部
ジエチレングリコール 7.5部
グリセリン 5部
トリメチロールプロパン 5部
アセチレノールEH 0.2部
イオン交換水 32.3部
上記記録液を用いて市販のインクジェットプリンタ(商品名:BJF 900、キヤノン社製)を用いてカラーの記録画像をOHPシート及びコピー用紙に記録を行った。OHPシートのヘイズ値より画像の透明性を、コピー用紙のベタ印字部分のOD値より画像の色濃度を以下の基準に基づいて評価した結果を表2に示す。
【0089】
透明性評価(OHPシート)
市販のOHPシート(商品名:CF−301、キヤノン社製)に上記記録液を用いてベタパッチ画像を印字し、ヘイズメーター(商品名:直読ヘイズメーター;東洋精機製)によって印字部のヘイズ値を測定し、以下の評価基準とした。
【0090】
○:ヘイズ値が10未満、
△:ヘイズ値が10以上20未満、
×:ヘイズ値が20以上
色濃度評価(OD値)
市販のコピー用紙(商品名:PB用紙、キヤノン製)に、上記記録液を用いてベタパッチ画像を印字し、1時間放置後、記録濃度をマクベスRD915(商品名:マクベス社製)にて測定し、以下の評価基準とした。
【0091】
○:濃度が1.25以上であった。
【0092】
△:各色の濃度が1.15〜1.25であった。
【0093】
×:各色の濃度が1.15以下であった。
【0094】
【表2】
実施例の顔料分散体を用いた記録液では、OHPの投影図は明るく鮮やかなものであったが、比較例の顔料分散体を用いた記録液では、OHPの投影図は暗く沈んだものであった。また普通紙印字物の色濃度においても実施例の顔料分散体を用いた記録液では高いOD値を示していたが、比較例の顔料分散体を用いた記録液では低いOD値を示していた。
【0095】
【発明の効果】
本発明により、長時間の分散装置による処理を必要とせず、原料となる顔料の一次粒子の大きさに依存しない、サイズの均一性を持つ微細な顔料分散体およびその製造方法が得られる。また、耐水性や耐光性に優れ、かつ発色性や光透過性にも優れた水性着色液、特にはインクジェット用記録液を提供された。
Claims (12)
- 下記工程にて、有機顔料分散体を得る有機顔料分散体製造方法。
(1)有機顔料と分散剤を酸または酸と有機溶剤の混合溶媒に溶解させた後、水と混合することにより有機顔料を析出させて有機顔料分散体を作成する第一工程。
(2)前記第一工程で得られた有機顔料分散体をアルカリで凝集させて、有機顔料分散体を溶媒から分離する第二工程。
(3)前記第二工程で分離された有機顔料分散体を酸で処理する第三工程。 - 前記第一工程の有機溶剤の水に対する溶解度が5%以上であることを特徴とする請求項1記載の有機顔料分散体製造方法。
- 前記第一工程の分散剤が、カチオン性窒素原子、水酸基およびアルキレンオキサイドから選ばれる1種類以上を分子中に有する高分子化合物もしくは界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2記載の有機顔料分散体製造方法。
- 前記第一工程の酸が有機プロトン酸であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
- 前記有機プロトン酸が、アルキルスルホン酸、アルキルカルボン酸、ハロゲン化アルキルスルホン酸、ハロゲン化アルキルカルボン酸、芳香族カルボン酸および芳香族スルホン酸から選ばれるいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
- 前記第一工程の酸が無機プロトン酸であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
- 前記無機プロトン酸が、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、塩化水素酸、過塩素酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸およびクロロスルホン酸から選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
- 前記第一工程の酸がルイス酸であることを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
- 前記ルイス酸が、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ジルコニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タンタルおよびタングステンから選ばれる1種類以上のハロゲン化物であることを特徴とする請求項1ないし8いずれか記載の有機顔料分散体製造方法。
- 請求項1ないし9のいずれか一項記載の方法で製造されたことを特徴とする有機顔料分散体。
- 請求項10記載の有機顔料分散体を含有することを特徴とする水性着色液。
- 請求項10記載の有機顔料分散体を含有することを特徴とするインクジェット用記録液。
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