JP2004268817A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】段差陸部の最適化を図ることにより、定常走行条件下における耐偏摩耗性及び非定常走行条件下における耐摩耗性の双方を向上させ、いずれ条件下でも摩耗寿命の長いタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤは、トレッド部1に、タイヤ周方向に沿って延びる少なくとも2本の主溝2を配設することによって、トレッド部1を複数の陸部に区画してなる。タイヤ幅方向断面にて、陸部は、主陸部3と、主陸部3よりも陸部高さが低く、かつタイヤ負荷転動時にすべり接触可能な段差陸部4とからなり、主陸部3の上面の幅の総和をW1、段差陸部4の上面の幅の総和をW2、全陸部の上面の幅の総和をW=W1+W2としたとき、0.2<W2/W<0.5の範囲にあり、タイヤの荷重時撓みをΔH、主陸部の高さをh1とするとき、段差陸部の高さh2は、h2=h1−ΔH×α (但し、0.2≦α<1.2とする。)を満たす。
【選択図】 図1
【解決手段】空気入りタイヤは、トレッド部1に、タイヤ周方向に沿って延びる少なくとも2本の主溝2を配設することによって、トレッド部1を複数の陸部に区画してなる。タイヤ幅方向断面にて、陸部は、主陸部3と、主陸部3よりも陸部高さが低く、かつタイヤ負荷転動時にすべり接触可能な段差陸部4とからなり、主陸部3の上面の幅の総和をW1、段差陸部4の上面の幅の総和をW2、全陸部の上面の幅の総和をW=W1+W2としたとき、0.2<W2/W<0.5の範囲にあり、タイヤの荷重時撓みをΔH、主陸部の高さをh1とするとき、段差陸部の高さh2は、h2=h1−ΔH×α (但し、0.2≦α<1.2とする。)を満たす。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、空気入りタイヤ、より詳細には、小型トラック、トラック及びバス用等の重荷重用タイヤのフロント軸に装着されるタイヤに関し、特に、かかるタイヤのトレッド部の摩耗寿命の向上を図る。
【0002】
【従来の技術】
小型トラック、トラック、バス等の、いわゆる重荷重車両に使用される空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」という。)は、トレッド部の踏面に、タイヤ周方向に沿って延在する周方向溝を具えるのが一般的であり、このタイヤの使用条件を大別すれば、例えば、高速道路等での使用が多く、よって直進走行の割合が高いインターシティトラックや高速バス等の定常走行条件と、例えば、配送トラックや路線バスなどのように一般路での使用が多く、直進走行の割合はそれほど高くなく、旋回走行の割合が多い、いわば非定常走行条件とに分けられる。この定常走行条件では、周方向溝縁に沿って、リバーウエアと呼ばれる、ブレーキングフォースによる偏摩耗が発生し、この偏摩耗が進展して互いに隣り合う周方向主溝相互間にわたり、トレッド陸部にリブパンチと呼ばれる偏摩耗欠損部を生じる場合がある。これらの偏摩耗は、トレッド陸部の摩耗寿命を大幅に短くするばかりか、車両の操縦安定性や振動乗心地性を著しく損なう。一方、非定常走行条件では、ブレーキングフォースの発生は少なく、旋回走行時のサイドフォースによるトレッド踏面全体の摩耗が支配的となる。
【0003】
かかる偏摩耗を改善するため、タイヤ周方向に延在する周方向細溝でトレッド陸部を分断することで、ブレーキングフォースを分断したトレッド陸部に集中させることが知られているが、その効果はトレッド部の両側領域に限定される上、細溝からクラックが発生する等の問題があった。
【0004】
また、周方向主溝内にタイヤ負荷転動下ですべり接触する小陸部を設け、この小陸部にブレーキングフォースを集中させることも知られているが、その効果は部分的であり、タイヤ全体の耐偏摩耗性を向上させるには至っていない。
【0005】
特許文献1には、トレッド部の両側領域に段差陸部を設け、中央領域にこれよりも高さの低い段差陸部を設け、これら段差陸部を偏摩耗犠牲部として作用させることで、定常走行条件での耐偏摩耗性を向上させたタイヤが記載されている。しかし、かかるタイヤは、非定常走行条件における耐摩耗性は考慮されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−238508号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、この発明は、段差陸部の最適化を図ることにより、定常走行条件下における耐偏摩耗性及び非定常走行条件下における耐摩耗性の双方を向上させ、いずれ条件下でも摩耗寿命の長いタイヤを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明は、トレッド部に、タイヤ周方向に沿って延びる少なくとも2本の主溝を配設することによって、トレッド部を複数の陸部に区画してなる空気入りタイヤにおいて、タイヤ幅方向断面にて、前記陸部は、主陸部と、主陸部よりも陸部高さが低く、かつタイヤ負荷転動時にすべり接触可能な段差陸部とからなり、主陸部の上面の幅の総和をW1、段差陸部の上面の幅の総和をW2、全陸部の上面の幅の総和をW=W1+W2としたとき、0.2<W2/W<0.5の範囲にあり、タイヤの荷重時撓みをΔH、主陸部の高さをh1とするとき、段差陸部の高さh2は、h2=h1−ΔH×α(但し、0.2≦α<1.2とする。)を満たすことを特徴とする空気入りタイヤである。
【0009】
なお、ここでいう「荷重時撓み」とは、JATMAに定める最大負荷能力及びこれに対応する空気圧を適用した時の主陸部の高さの変化量のことをいう。
【0010】
さらに、タイヤ幅方向両外側に位置する2つの陸部であるショルダー陸部が主陸部であることが好ましい。
【0011】
さらにまた、両ショルダー陸部間に位置する陸部のうち、少なくとも1つの陸部が段差陸部であることが好ましい。
【0012】
加えて、両ショルダー陸部間に位置する陸部の全てが段差陸部であることが好ましい。
【0013】
また、両ショルダー陸部間に位置する陸部は、n個(nは正の整数)の主陸部と、n+1個の段差陸部とからなり、全陸部にて主陸部と段差陸部が交互に配置してなることが好ましい。
【0014】
さらに、各陸部は、それぞれの陸部高さの70%以上の深さの、タイヤ周方向と交差して延在するサイプをさらに具えることが好ましい。
【0015】
さらにまた、段差陸部がタイヤ周方向に沿って延在する第1細溝をさらに具えることが好ましい。
【0016】
加えて、ショルダー陸部に、タイヤ周方向に沿って延在する第2細溝をさらに具えることが好ましい。
【0017】
加えてまた、トレッド部の側壁部であるバットレス部にタイヤ周方向に沿って延在する第3細溝をさらに具えることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、この発明の形態を説明する。図1は、この発明に従う代表的なタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図であり、図2は、図1に示すトレッド部の一部の平面図であり、図3及び図4は、それぞれこの発明に従う他のタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図である。
【0019】
図1に示すタイヤは、トレッド部1に、タイヤ周方向に沿って延びる少なくとも2本の主溝、図1では4本の主溝2を配設することによって、トレッド部1を複数の陸部、図1では5つの陸部3〜5に区画してなる。
【0020】
そして、この発明の構成上の主な特徴は、陸部は、主陸部3と、タイヤ接地時に接地できる範囲で主陸部3よりも陸部高さの低い段差陸部4とからなり、主陸部3の上面の幅、図1ではw1、w3、w5の総和をW1、段差陸部4の上面の幅、図1ではw2、w4の総和をW2、全陸部の上面の幅の総和をW=W1+W2としたとき、0.2<W2/W<0.5の範囲にあり、タイヤの荷重時撓みをΔH、主陸部3の高さをh1とするとき、段差陸部4の高さh2は、
h2=h1−ΔH×α (但し、0.2≦α<1.2とする。)
を満たすことである。
【0021】
以下、この発明が上記構成を採用するに至った経緯を作用と共に説明する。
重荷重車両用においては、定常走行条件ではブレーキング時に発生するブレーキングフォースによる偏摩耗が、非定常走行条件ではコーナリング時に発生するサイドフォースによる摩耗が、それぞれ摩耗寿命を決定する主要因となっている。さらに、定常走行条件での偏摩耗を抑制するには、段差陸部を配設することが有効であるが、段差陸部の段差を著しく大きく設定すると、主陸部の接地圧が高くなる結果、耐摩耗性が低下し、非定常走行条件で使用された場合の摩耗寿命が短くなり、一方、段差陸部の段差を著しく小さく設定すると、耐摩耗性は確保されるが、段差陸部を配設した効果が十分に発揮されない結果、偏摩耗を十分に抑制することができず、定常走行条件で使用された場合の摩耗寿命が短くなる。そこで、発明者は、定常走行条件と非定常走行条件の双方での摩耗寿命をバランスよく確保できるような主陸部と段差陸部のそれぞれの上面の幅の比について検討を行ったところ、段差陸部の上面の幅の総和をW2、全陸部の上面の幅の総和をWとしたとき、0.2<W2/W<0.5の範囲とすることによって、定常走行条件では、段差陸部にブレーキングフォースが集中し、主陸部に作用するブレーキングフォースが大幅に減少する結果、偏摩耗が抑制され、トレッド部の摩耗寿命が向上し、一方、非定常走行条件では、摩耗初期において、サイドフォースの作用により主陸部が選択的に摩耗し、段差陸部との高さの差が無くなる結果、これ以降は、主陸部及び段差陸部の双方にサイドフォースが分散され、トレッド部の摩耗寿命が向上することを見出した。さらに、段差陸部4の高さh2をh2=h1−ΔH×αとし、係数αを0.2≦α<1.2の範囲とすれば、段差陸部4が偏摩耗犠牲部として機能し、偏摩耗を抑制することができることを見出し、この発明を完成させるに至ったのである。
【0022】
また、全陸部のうち、タイヤ幅方向最外側に位置する陸部であるショルダー陸部5に挟まれる陸部のうち、少なくとも1つの陸部が段差陸部4であることが好ましい。トレッド部1の接地圧は、中央領域が最も高く、両側領域に向かって減少し、ショルダー陸部で最も低くなるため、ショルダー陸部5に挟まれる陸部のいずれかを段差陸部4とすれば、有効に偏摩耗を抑制できるからである。
【0023】
さらに、ショルダー陸部5が主陸部3であることが好ましい。ショルダー陸部5は、タイヤ接地時にサイドウォールから押される力や、コーナリング時に発生するサイドフォースを多く受けるため、高い剛性が要求されるからである。
【0024】
この場合には、ショルダー陸部5に挟まれる陸部のうち、主陸部3は、その少なくとも一方の端部が段差陸部4と隣接しており、段差陸部4は、その少なくとも一方の端部が主陸部3と隣接していることがさらに好ましく、ショルダー陸部5に挟まれる陸部のうち、主陸部3は、その両端部が段差陸部4と隣接しており、段差陸部4は、その両端部が主陸部3と隣接していることが一層好ましい。このように、主陸部3と段差陸部4とを隣接して配置すれば、段差陸部4の偏摩耗犠牲部としての効果がより一層高まるからである。
【0025】
さらにまた、図2に示すように、各陸部は、それぞれの陸部高さの70%以上の深さの、タイヤ周方向と交差して延在するサイプをさらに具えることが好ましい。このサイプにより、サイドフォースを受けた際の各陸部が均一に変形して、接地圧の均一化が可能となり、耐摩耗性が増大するからである。
【0026】
加えて、図3に示すように、段差陸部4がタイヤ周方向に沿って延在する第1細溝7をさらに具えることが好ましい。段差陸部4の剛性が下がり、ブレーキングフォースが均一となるからである。
【0027】
また、図3に示すように、ショルダー陸部5に、タイヤ周方向に沿って延在する第2細溝8をさらに具えることが好ましい。かかる細溝8を配設することによって、ショルダー陸部5に作用する応力を緩和して、偏摩耗の発生を防止できるからである。
【0028】
さらに、図4に示すように、トレッド部1の側壁部であるバットレス部9にタイヤ周方向に沿って延在する第3細溝10をさらに具えることが好ましい。かかる細溝10を配設することによって、ショルダー陸部5に作用する接地圧を緩和して、偏摩耗を抑制できるからである。
【0029】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の代表例を示したにすぎず、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0030】
【実施例】
次に、この発明に従う空気入りタイヤを試作し、性能評価を行ったので、以下に説明する。
【0031】
実施例1〜5のタイヤは、それぞれ図1、図3、図4、図1及び図1に示すトレッド部を有するトラック・バス用ラジアルタイヤであり、表1に示す諸元を有する。なお、実施例1及び3のタイヤの各陸部には、深さ10mmのサイプを設けた。
【0032】
比較のため、段差陸部を設けないという点を除いて実施例1と同じであり、表1に示す諸元を有するタイヤ(比較例1)、全陸部の上面の幅の総和に対する段差陸部の上面の幅の総和がこの発明の範囲外であることを除いて実施例1と同じであり、表1に示す諸元を有するタイヤ(比較例2及び3)についても併せて試作した。
【0033】
(試験方法)
前記各供試タイヤを米国タイヤリム協会(TRA)に定める標準リム(表1に示す)に取り付けてタイヤ車輪とし、36tトラックの前輪に装着し、表1に示すタイヤ内圧及びタイヤ荷重を適用し、定常走行条件(トレッド摩耗速度=32000km/mm)及び非定常走行条件(トレッド摩耗速度=8000km/mm)のそれぞれで一般路を走行し、トレッド溝が完全に摩耗するまでの走行距離(摩耗寿命)を測定した。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示す結果から、実施例1〜5のタイヤはいずれも、比較例1〜3のタイヤに比べて、定常走行条件下における耐偏摩耗性及び非定常走行条件下における耐摩耗性の双方が優れていることが分かる。
【0036】
【発明の効果】
この発明により、定常走行条件下における耐偏摩耗性及び非定常走行条件下における耐摩耗性の双方を向上させ、いずれの条件下でも摩耗寿命の長いタイヤを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に従う代表的なタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図である。
【図2】図1に示すタイヤのトレッド部の一部の平面図である。
【図3】この発明に従う他のタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図である。
【図4】この発明に従う他のタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 主溝
3 主陸部
4 段差陸部
5 ショルダー陸部
6 サイプ
7 第1細溝
8 第2細溝
9 バットレス部
10 第3細溝
【発明の属する技術分野】
この発明は、空気入りタイヤ、より詳細には、小型トラック、トラック及びバス用等の重荷重用タイヤのフロント軸に装着されるタイヤに関し、特に、かかるタイヤのトレッド部の摩耗寿命の向上を図る。
【0002】
【従来の技術】
小型トラック、トラック、バス等の、いわゆる重荷重車両に使用される空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」という。)は、トレッド部の踏面に、タイヤ周方向に沿って延在する周方向溝を具えるのが一般的であり、このタイヤの使用条件を大別すれば、例えば、高速道路等での使用が多く、よって直進走行の割合が高いインターシティトラックや高速バス等の定常走行条件と、例えば、配送トラックや路線バスなどのように一般路での使用が多く、直進走行の割合はそれほど高くなく、旋回走行の割合が多い、いわば非定常走行条件とに分けられる。この定常走行条件では、周方向溝縁に沿って、リバーウエアと呼ばれる、ブレーキングフォースによる偏摩耗が発生し、この偏摩耗が進展して互いに隣り合う周方向主溝相互間にわたり、トレッド陸部にリブパンチと呼ばれる偏摩耗欠損部を生じる場合がある。これらの偏摩耗は、トレッド陸部の摩耗寿命を大幅に短くするばかりか、車両の操縦安定性や振動乗心地性を著しく損なう。一方、非定常走行条件では、ブレーキングフォースの発生は少なく、旋回走行時のサイドフォースによるトレッド踏面全体の摩耗が支配的となる。
【0003】
かかる偏摩耗を改善するため、タイヤ周方向に延在する周方向細溝でトレッド陸部を分断することで、ブレーキングフォースを分断したトレッド陸部に集中させることが知られているが、その効果はトレッド部の両側領域に限定される上、細溝からクラックが発生する等の問題があった。
【0004】
また、周方向主溝内にタイヤ負荷転動下ですべり接触する小陸部を設け、この小陸部にブレーキングフォースを集中させることも知られているが、その効果は部分的であり、タイヤ全体の耐偏摩耗性を向上させるには至っていない。
【0005】
特許文献1には、トレッド部の両側領域に段差陸部を設け、中央領域にこれよりも高さの低い段差陸部を設け、これら段差陸部を偏摩耗犠牲部として作用させることで、定常走行条件での耐偏摩耗性を向上させたタイヤが記載されている。しかし、かかるタイヤは、非定常走行条件における耐摩耗性は考慮されていない。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−238508号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、この発明は、段差陸部の最適化を図ることにより、定常走行条件下における耐偏摩耗性及び非定常走行条件下における耐摩耗性の双方を向上させ、いずれ条件下でも摩耗寿命の長いタイヤを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明は、トレッド部に、タイヤ周方向に沿って延びる少なくとも2本の主溝を配設することによって、トレッド部を複数の陸部に区画してなる空気入りタイヤにおいて、タイヤ幅方向断面にて、前記陸部は、主陸部と、主陸部よりも陸部高さが低く、かつタイヤ負荷転動時にすべり接触可能な段差陸部とからなり、主陸部の上面の幅の総和をW1、段差陸部の上面の幅の総和をW2、全陸部の上面の幅の総和をW=W1+W2としたとき、0.2<W2/W<0.5の範囲にあり、タイヤの荷重時撓みをΔH、主陸部の高さをh1とするとき、段差陸部の高さh2は、h2=h1−ΔH×α(但し、0.2≦α<1.2とする。)を満たすことを特徴とする空気入りタイヤである。
【0009】
なお、ここでいう「荷重時撓み」とは、JATMAに定める最大負荷能力及びこれに対応する空気圧を適用した時の主陸部の高さの変化量のことをいう。
【0010】
さらに、タイヤ幅方向両外側に位置する2つの陸部であるショルダー陸部が主陸部であることが好ましい。
【0011】
さらにまた、両ショルダー陸部間に位置する陸部のうち、少なくとも1つの陸部が段差陸部であることが好ましい。
【0012】
加えて、両ショルダー陸部間に位置する陸部の全てが段差陸部であることが好ましい。
【0013】
また、両ショルダー陸部間に位置する陸部は、n個(nは正の整数)の主陸部と、n+1個の段差陸部とからなり、全陸部にて主陸部と段差陸部が交互に配置してなることが好ましい。
【0014】
さらに、各陸部は、それぞれの陸部高さの70%以上の深さの、タイヤ周方向と交差して延在するサイプをさらに具えることが好ましい。
【0015】
さらにまた、段差陸部がタイヤ周方向に沿って延在する第1細溝をさらに具えることが好ましい。
【0016】
加えて、ショルダー陸部に、タイヤ周方向に沿って延在する第2細溝をさらに具えることが好ましい。
【0017】
加えてまた、トレッド部の側壁部であるバットレス部にタイヤ周方向に沿って延在する第3細溝をさらに具えることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、この発明の形態を説明する。図1は、この発明に従う代表的なタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図であり、図2は、図1に示すトレッド部の一部の平面図であり、図3及び図4は、それぞれこの発明に従う他のタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図である。
【0019】
図1に示すタイヤは、トレッド部1に、タイヤ周方向に沿って延びる少なくとも2本の主溝、図1では4本の主溝2を配設することによって、トレッド部1を複数の陸部、図1では5つの陸部3〜5に区画してなる。
【0020】
そして、この発明の構成上の主な特徴は、陸部は、主陸部3と、タイヤ接地時に接地できる範囲で主陸部3よりも陸部高さの低い段差陸部4とからなり、主陸部3の上面の幅、図1ではw1、w3、w5の総和をW1、段差陸部4の上面の幅、図1ではw2、w4の総和をW2、全陸部の上面の幅の総和をW=W1+W2としたとき、0.2<W2/W<0.5の範囲にあり、タイヤの荷重時撓みをΔH、主陸部3の高さをh1とするとき、段差陸部4の高さh2は、
h2=h1−ΔH×α (但し、0.2≦α<1.2とする。)
を満たすことである。
【0021】
以下、この発明が上記構成を採用するに至った経緯を作用と共に説明する。
重荷重車両用においては、定常走行条件ではブレーキング時に発生するブレーキングフォースによる偏摩耗が、非定常走行条件ではコーナリング時に発生するサイドフォースによる摩耗が、それぞれ摩耗寿命を決定する主要因となっている。さらに、定常走行条件での偏摩耗を抑制するには、段差陸部を配設することが有効であるが、段差陸部の段差を著しく大きく設定すると、主陸部の接地圧が高くなる結果、耐摩耗性が低下し、非定常走行条件で使用された場合の摩耗寿命が短くなり、一方、段差陸部の段差を著しく小さく設定すると、耐摩耗性は確保されるが、段差陸部を配設した効果が十分に発揮されない結果、偏摩耗を十分に抑制することができず、定常走行条件で使用された場合の摩耗寿命が短くなる。そこで、発明者は、定常走行条件と非定常走行条件の双方での摩耗寿命をバランスよく確保できるような主陸部と段差陸部のそれぞれの上面の幅の比について検討を行ったところ、段差陸部の上面の幅の総和をW2、全陸部の上面の幅の総和をWとしたとき、0.2<W2/W<0.5の範囲とすることによって、定常走行条件では、段差陸部にブレーキングフォースが集中し、主陸部に作用するブレーキングフォースが大幅に減少する結果、偏摩耗が抑制され、トレッド部の摩耗寿命が向上し、一方、非定常走行条件では、摩耗初期において、サイドフォースの作用により主陸部が選択的に摩耗し、段差陸部との高さの差が無くなる結果、これ以降は、主陸部及び段差陸部の双方にサイドフォースが分散され、トレッド部の摩耗寿命が向上することを見出した。さらに、段差陸部4の高さh2をh2=h1−ΔH×αとし、係数αを0.2≦α<1.2の範囲とすれば、段差陸部4が偏摩耗犠牲部として機能し、偏摩耗を抑制することができることを見出し、この発明を完成させるに至ったのである。
【0022】
また、全陸部のうち、タイヤ幅方向最外側に位置する陸部であるショルダー陸部5に挟まれる陸部のうち、少なくとも1つの陸部が段差陸部4であることが好ましい。トレッド部1の接地圧は、中央領域が最も高く、両側領域に向かって減少し、ショルダー陸部で最も低くなるため、ショルダー陸部5に挟まれる陸部のいずれかを段差陸部4とすれば、有効に偏摩耗を抑制できるからである。
【0023】
さらに、ショルダー陸部5が主陸部3であることが好ましい。ショルダー陸部5は、タイヤ接地時にサイドウォールから押される力や、コーナリング時に発生するサイドフォースを多く受けるため、高い剛性が要求されるからである。
【0024】
この場合には、ショルダー陸部5に挟まれる陸部のうち、主陸部3は、その少なくとも一方の端部が段差陸部4と隣接しており、段差陸部4は、その少なくとも一方の端部が主陸部3と隣接していることがさらに好ましく、ショルダー陸部5に挟まれる陸部のうち、主陸部3は、その両端部が段差陸部4と隣接しており、段差陸部4は、その両端部が主陸部3と隣接していることが一層好ましい。このように、主陸部3と段差陸部4とを隣接して配置すれば、段差陸部4の偏摩耗犠牲部としての効果がより一層高まるからである。
【0025】
さらにまた、図2に示すように、各陸部は、それぞれの陸部高さの70%以上の深さの、タイヤ周方向と交差して延在するサイプをさらに具えることが好ましい。このサイプにより、サイドフォースを受けた際の各陸部が均一に変形して、接地圧の均一化が可能となり、耐摩耗性が増大するからである。
【0026】
加えて、図3に示すように、段差陸部4がタイヤ周方向に沿って延在する第1細溝7をさらに具えることが好ましい。段差陸部4の剛性が下がり、ブレーキングフォースが均一となるからである。
【0027】
また、図3に示すように、ショルダー陸部5に、タイヤ周方向に沿って延在する第2細溝8をさらに具えることが好ましい。かかる細溝8を配設することによって、ショルダー陸部5に作用する応力を緩和して、偏摩耗の発生を防止できるからである。
【0028】
さらに、図4に示すように、トレッド部1の側壁部であるバットレス部9にタイヤ周方向に沿って延在する第3細溝10をさらに具えることが好ましい。かかる細溝10を配設することによって、ショルダー陸部5に作用する接地圧を緩和して、偏摩耗を抑制できるからである。
【0029】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の代表例を示したにすぎず、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0030】
【実施例】
次に、この発明に従う空気入りタイヤを試作し、性能評価を行ったので、以下に説明する。
【0031】
実施例1〜5のタイヤは、それぞれ図1、図3、図4、図1及び図1に示すトレッド部を有するトラック・バス用ラジアルタイヤであり、表1に示す諸元を有する。なお、実施例1及び3のタイヤの各陸部には、深さ10mmのサイプを設けた。
【0032】
比較のため、段差陸部を設けないという点を除いて実施例1と同じであり、表1に示す諸元を有するタイヤ(比較例1)、全陸部の上面の幅の総和に対する段差陸部の上面の幅の総和がこの発明の範囲外であることを除いて実施例1と同じであり、表1に示す諸元を有するタイヤ(比較例2及び3)についても併せて試作した。
【0033】
(試験方法)
前記各供試タイヤを米国タイヤリム協会(TRA)に定める標準リム(表1に示す)に取り付けてタイヤ車輪とし、36tトラックの前輪に装着し、表1に示すタイヤ内圧及びタイヤ荷重を適用し、定常走行条件(トレッド摩耗速度=32000km/mm)及び非定常走行条件(トレッド摩耗速度=8000km/mm)のそれぞれで一般路を走行し、トレッド溝が完全に摩耗するまでの走行距離(摩耗寿命)を測定した。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示す結果から、実施例1〜5のタイヤはいずれも、比較例1〜3のタイヤに比べて、定常走行条件下における耐偏摩耗性及び非定常走行条件下における耐摩耗性の双方が優れていることが分かる。
【0036】
【発明の効果】
この発明により、定常走行条件下における耐偏摩耗性及び非定常走行条件下における耐摩耗性の双方を向上させ、いずれの条件下でも摩耗寿命の長いタイヤを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に従う代表的なタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図である。
【図2】図1に示すタイヤのトレッド部の一部の平面図である。
【図3】この発明に従う他のタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図である。
【図4】この発明に従う他のタイヤのトレッド部のタイヤ幅方向断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
2 主溝
3 主陸部
4 段差陸部
5 ショルダー陸部
6 サイプ
7 第1細溝
8 第2細溝
9 バットレス部
10 第3細溝
Claims (9)
- トレッド部に、タイヤ周方向に沿って延びる少なくとも2本の主溝を配設することによって、トレッド部を複数の陸部に区画してなる空気入りタイヤにおいて、
タイヤ幅方向断面にて、前記陸部は、主陸部と、主陸部よりも陸部高さが低く、かつタイヤ負荷転動時にすべり接触可能な段差陸部とからなり、
主陸部の上面の幅の総和をW1、段差陸部の上面の幅の総和をW2、全陸部の上面の幅の総和をW=W1+W2としたとき、0.2<W2/W<0.5の範囲にあり、
タイヤの荷重時撓みをΔH、主陸部の高さをh1とするとき、段差陸部の高さh2は、
h2=h1−ΔH×α (但し、0.2≦α<1.2とする。)
を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。 - タイヤ幅方向両外側に位置する2つの陸部であるショルダー陸部が主陸部である請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 両ショルダー陸部間に位置する陸部のうち、少なくとも1つの陸部が段差陸部である請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
- 両ショルダー陸部間に位置する陸部の全てが段差陸部である請求項1〜3のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- 両ショルダー陸部間に位置する陸部は、n個(nは正の整数)の主陸部と、n+1個の段差陸部とからなり、全陸部にて主陸部と段差陸部が交互に配置してなる請求項1〜4のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- 各陸部は、それぞれの陸部高さの70%以上の深さの、タイヤ周方向と交差して延在するサイプをさらに具える請求項1〜5のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- 段差陸部がタイヤ周方向に沿って延在する第1細溝をさらに具える請求項1〜6のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- ショルダー陸部に、タイヤ周方向に沿って延在する第2細溝をさらに具える請求項1〜7のいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
- トレッド部の側壁部であるバットレス部にタイヤ周方向に沿って延在する第3細溝をさらに具える請求項1〜8いずれか一項記載の空気入りタイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003064623A JP2004268817A (ja) | 2003-03-11 | 2003-03-11 | 空気入りタイヤ |
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Country | Link |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107020892A (zh) * | 2017-06-21 | 2017-08-08 | 吉林大学 | 一种具有仿生防滑花纹的充气轮胎结构 |
US10647158B2 (en) | 2014-10-27 | 2020-05-12 | Bridgestone Corporation | Pneumatic tire |
-
2003
- 2003-03-11 JP JP2003064623A patent/JP2004268817A/ja active Pending
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US10647158B2 (en) | 2014-10-27 | 2020-05-12 | Bridgestone Corporation | Pneumatic tire |
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