JP2004258024A - 皮膚糸状菌の検出方法、検出用試薬および抗原性賦活化方法 - Google Patents

皮膚糸状菌の検出方法、検出用試薬および抗原性賦活化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は皮膚糸状菌の検出方法および抗原賦活化方法に関するもの
で、本方法を用い皮膚糸状菌の新規な診断・同定手段を提供することができる。
【解決手段】 以下に示す皮膚糸状菌3種以上と反応性を有する抗体を使用する
ことを特徴とする皮膚糸状菌の検出方法。
Trichophyton rubrum
Trichophyton mentagrophytes
Microsporum canis
Epidermophyton floccosum

Description

本発明は皮膚糸状菌の検出方法および抗原賦活化方法に関するもので、本方法を用い皮膚糸状菌の新規な診断・同定手段を提供することができる。
水虫は白癬菌と総称される皮膚糸状菌の皮膚角化層における感染・増殖による疾患である。皮膚糸状菌は主にトリコフィトン属の総称である。例えばTrichophyton rubrum(トリコフィトン ルブルム 以下T.rubrum)、Trichophyton mentagrophytes(トリコフィトン メンタグロファイテス 以下T.mentagrophytes)の2種で外来水虫患者の約99%を占めているとの報告がある(例えば、非特許文献1参照。)。また現在日本で水虫の原因となる皮膚糸状菌の種類は約10種類といわれており、T.rubrum、T.mentagrophytes以外にもMicrosporum canis(ミクロスポルム カニス 以下M.canis)、Epidermophyton floccosum(エピデルモフィトン フロコースム 以下E.floccosum)などトリコフィトン属以外の皮膚糸状菌も含まれている。またネコ、ハムスターなど愛玩動物を介したM.canis、T.mentagrophytes感染より白癬になるケースも近年増えつつある。
水虫は感染部に、炎症と激しい掻痒感を引き起こす。皮膚科外来の約10%が水虫の患者で占められている。菌の感染部は主に足の趾間であるが、陰部や体部などにも感染し、陰部白癬や体部白癬と呼ばれている。頻度は、足が全体の80%を占める。
水虫の診断は、従来、10乃至20%水酸化カリウム溶液により患者皮膚より採取した角化層を溶解させ、顕微鏡下で菌糸を確認する方法により行われる。さらに同定する場合は適切な培地、例えばクロラムフェニコール加サブローブドウ糖寒天培地上で2〜3週間室温または30℃で培養の後、形態観察を行う。
検査の分野では、抗体の抗原特異的に結合する性質を応用し多くの検査方法・検査手段・濃縮方法が考案・利用されている。例えば(1)ホルマリンなどで固定した組織切片に抗原特異抗体を作用させ、結合した該抗体を検出し組織中の抗原局在を調べる方法(免疫組織染色)(例えば、非特許文献2、非特許文献5参照。)(2)血球やラテックス粒子に特異抗体を固定化し試料中の抗原存在有無を凝集有無により判別するもの(凝集法)(例えば、非特許文献6)や、(3)特異抗体を固定化した不溶性担体と抗原を含む液体試料とを一定時間反応させB/F分離し、さらに別の標識化抗体と一定時間反応させ形成した標識化抗体−抗原−固定化抗体複合体を検出するもの(サンドイッチイムノアッセイ)(例えば、非特許文献3参照。)(4)移動展開可能な多孔性担体上で標識化抗体と反応させた測定対象物―標識化抗体複合体を該多孔性担体移動展開層途中に設けられた固定化抗体層にて捕捉させ形成する標識化抗体−抗原−固定化抗体複合体を検出するもの(イムノクロマト法)(例えば、特許文献1参照。)(5)被検試料と特異抗体固定化粒子担体とを反応させて抗体と結合する菌を粒子担体上の一部位に濃縮捕捉するもの(例えば、特許文献2参照。)(6)被検試料と特異抗体固定化粒子担体とを反応させて抗体と結合する菌を粒子担体上の一部位に濃縮捕捉後、不溶性固相担体を液相から分離した後、該不溶性固相担体に捕捉された病原微生物から遺伝子を単離させ、該遺伝子を増幅させ、次いで増幅された遺伝子を検出する病原性真菌の検出方法(例えば、特許文献7参照。)などが知られている。
またそれら分析に使用するカンジダやアスペルギルス、サッカロマイセスなど真菌に対する抗体も種々作製されている(例えば、特許文献3〜5など参照。)。またカンジダやアスペルギルスの真菌細胞壁上に発現している(1→3)−β−D−グルカンを特異的に認識する抗体も作製されている(例えば、特許文献6参照。)。
皮膚糸状菌に関するモノクローナル抗体が開示されている(例えば、非特許文献3参照。)。それによるとTrichophyton tonsuransアレルゲンIを抗原としてモノクローナル抗体を作成し、阻害イムノアッセイや2種の異なるモノクローナル抗体を使ったサンドイッチイムノアッセイを検討し、Trichophyton tonsurans(以下T.tonsurans)のみならずT.rubrumやT.mentagrophytesとの交差反応を認めたとの記載がある。また同様にT.tonsurans抽出物から精製されたProteinIVを抗原としてモノクローナル抗体を作製し、T.tonsuransのみならずT.rubrumやT.mentagrophytesの培地ろ過物中に反応するproteinIV成分を認められたことが開示されているが、その他Candida albicans、Aspergillus mixなどの皮膚テスト用抽出物中には認められなかったと開示されている(例えば、非特許文献4参照。)。
特開2000−35429号公報 米国特許第5695946号明細書 特開昭59−186925号公報 特開59−186926号公報 特開平07−250676号公報 特再平08−806858号公報 特開平11−142409号公報 日本医真菌学会疫学調査委員会,「1992年次皮膚真菌症疫学調査成績」,日本医真菌学会雑誌,1995年,第36巻,p.87−95 福井三郎編,「モノクローナル抗体」(1986年3月10日第1刷発行),講談社サイエンティフィック,p.78 Deuellら,「J.Immunol.」,1991年,第147巻,p.96−101 Woodfolkら,「J.Immunol.」,1996年,第156巻,p.1695−1701 名倉宏ら編、「改定四版 渡辺・中根 酵素抗体法」、(2002年2月18日 発行)、学際企画 内川誠、「2.凝集反応(1)赤血球凝集反応,受身(間接)凝集反応」,検査と技術、1994年,第22巻(5)1994年増刊号、p38−41
足の趾間の掻痒感と水泡形成などで患者自身の判断で水虫と判断して、市販の薬を使用することも多いと思われる。しかし、足の趾間にこのような掻痒感や炎症をきたす疾患は水虫だけではない。例えばアトピー性皮膚炎も水虫と似たような症状を引き起こす。重要な点はこのような疾患の治療は、水虫の治療とは全く異なっていることである。このため間違った自己診断に基づく治療により炎症がながびき、なかなか治らないケースも多い。
簡易に水虫かそれ以外の疾患かを区別できる方法が望まれるが、白癬は上述のように皮膚科領域で非常に患者の多い病気にも関わらず、白癬原因菌の簡易検出によい方法はない。従来から行われている水酸化カリウム溶液により患者皮膚より採取した角化層を溶解させ、顕微鏡下で菌糸を確認する方法は顕微鏡と加熱用アルコールランプが備えた施設であれば検査できる方法であるが、熟練を必要とし、時として菌糸と塵との鑑別を見誤ると鏡検で菌を見逃すこともある。また培養検査法は見逃しの少ない方法であるが結果が得られるまで1週間乃至4週間かかるのが難点である。水虫の検出法として特開2001−187750に硫酸銅溶液を用い水虫菌感染部位検知方法が記載されているが、我々が検討した範囲では爪白癬では健常者と有意差は認められなかった。
本発明の課題は、短時間、高感度、簡易な皮膚糸状菌の検出手段を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、トリコフィトンルブルムアレルゲンを抗原としてマウスを免疫し、脾臓細胞をマウスミエローマ細胞株と融合させてハイブリドーマを作製し、その中から免疫原に反応しかつ各種皮膚糸状菌に反応する抗体をスクリーニングしたところ、T.rubrum、T.mentagrophytesのみならず、M.canis、E.floccosumにも反応性を有するモノクローナル抗体が得られ、その存在を初めて見い出した。さらに驚くべきことに該モノクローナル抗体は免疫染色法のみならず、1種類だけでもサンドイッチイムノアッセイに適用可能で、短時間高感度に皮膚糸状菌を検出できることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、以下の(1)から(11)に関する。
(1)以下に示す皮膚糸状菌3種以上と反応性を有する抗体を使用することを特徴とする皮膚糸状菌の検出方法。
Trichophyton rubrum
Trichophyton mentagrophytes
Microsporum canis
Epidermophyton floccosum
(2)以下に示す皮膚糸状菌4種と反応性を有する抗体を使用することを特徴とする皮膚糸状菌の検出方法。
Trichophyton rubrum
Trichophyton mentagrophytes
Microsporum canis
Epidermophyton floccosum
(3)使用する抗体が1種類の抗皮膚糸状菌モノクローナル抗体あるいは同一の抗原認識部位を有する2種類以上の抗皮膚糸状菌モノクローナル抗体の組み合わせであることを特徴とする上記(1)または(2)記載の皮膚糸状菌の検出方法。
(4)抗体が受託番号FERM P−19057として寄託されたハイブリドーマが産生する抗体であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膚糸状菌の検出方法。
(5)以下に示す皮膚糸状菌3種以上と反応性を有する抗体を使用することを特徴とする皮膚糸状菌の検出用試薬。
Trichophyton rubrum
Trichophyton mentagrophytes
Microsporum canis
Epidermophyton floccosum
(6)以下に示す皮膚糸状菌4種と反応性を有する抗体を使用することを特徴とする上記(5)記載の皮膚糸状菌の検出用試薬。
Trichophyton rubrum
Trichophyton mentagrophytes
Microsporum canis
Epidermophyton floccosum
(7)使用する抗体が1種類の抗皮膚糸状菌モノクローナル抗体あるいは同一の抗原認識部位を有する2種類以上の抗皮膚糸状菌モノクローナル抗体の組み合わせであることを特徴とする上記(5)または(6)記載の皮膚糸状菌の検出用試薬。
(8)抗体が受託番号FERM P−19057として寄託されたハイブリドーマが産生する抗体であることを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれかに記載の皮膚糸状菌の検出用試薬。
(9)抗体を用いた皮膚糸状菌検出において予め試料を酵素処理あるいは加熱処理することを特徴とする抗原性の賦活化方法。
(10)抗体が受託番号FERM P−19057として寄託されたハイブリドーマが産生する抗体であることを特徴とする上記(9)記載の抗原性の賦活化方法。
(11)皮膚糸状菌検出方法が免疫染色法であることを特徴とする上記(9)または(10)のいずれかに記載の抗原性の賦活化方法。
本発明記載の皮膚糸状菌の検出方法は、種々皮膚糸状菌に反応する新規な抗体を使用する。既存の白癬菌培養分離では数週間という時間を要したが、本発明の分離方法により試料中白癬起因菌の特異的な濃縮が可能となる。該濃縮手段と各検出法を組み合わせることでより高感度な検出が可能である。
また本発明の皮膚糸状菌の検出方法は多種に渡る白癬起因菌に広く特異性を有するため、抗体に結合する物質の有無を検出するだけで菌検出が可能となる。形態確認のためコロニー形成まで数週間かかっていた分離培養検査に比べ、短時間な検出が可能となる。
さらに本発明の皮膚糸状菌の検出方法は菌特異的な可視化検出を可能とする。また本発明の抗原性賦活化方法は、より明瞭なシグナルとして菌の存在を増強して検出することを可能とする。白癬起因菌の皮膚への感染過程や感染予防法の研究、ヒトのみならず動物の白癬診断や居住環境や衣料品中の皮膚糸状菌検出に有用な方法を提供する。
本発明で記載した皮膚糸状菌は白癬の起因菌を示す。菌の形態はいかなる形態であってもよく、胞子、菌糸、分生子など一部の菌断片やさらに菌由来の蛋白質、多糖、水溶性縣濁物も含む。菌種は例えばTrichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytes、Trichophyton verrucosum、Trichophyton tonsurans、Trichophyton violaceum、Trichophyton equinum、Trichophyton glabrum、Trichophyton shoenleinii、Microsporum canis、Microsporum gypseum、Epidermophyton floccosum、Arthroderma vanbreuseghemii、Arthroderma simii、Arthroderma benhamiaeなどが挙げられる。
本発明で記載した皮膚糸状菌T.rubrum、T.mentagrophytes、M.canis、E.floccosumは、患者や生活環境などから分離同定されたものでも、公的機関から入手したものでもよい。公的機関としてはたとえばアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)や独立行政法人製品評価技術基盤機構・生物遺伝資源センターが挙げられる。これら菌を増やすには適当な培地で培養する。培養に使用する培地は皮膚糸状菌で一般的に使用されているサブロー・ブドウ糖寒天培地を用いてもよいし、公的機関で公開されている該菌培養方法記載の培地に従ってもよい。培養温度は10乃至40℃好ましくは20乃至30℃であり、好気環境下静置して培養することが望ましい。菌の種類の同定は公知の分離同定方法、例えば カビの分離・培養と同定 宇田川俊一・室井哲夫/訳 1983年 医歯薬出版、真菌症遺伝子診断 槙村浩一/編 メジカルセンス 1997年、戸田新細菌学 天児和暢・南嶋洋一/編 南山堂 1997年、Journal of ClinicalMicrobiology 36巻9号 p2629−2633 槙村浩一ら 1998年 などに記載された方法により分離同定することができる。
本発明に記載された抗体はポリクローナル抗体やモノクローナル抗体でもよいが、ロット差等が生じにくい点でモノクローナル抗体を使用することが好ましい。モノクローナル抗体として例えば独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM P−19057として寄託されているハイブリドーマ0014の産生する抗体が使用できる。
抗体作製に使用する免疫用抗原およびスクリーニング用抗原は、上記菌株を培養して得られた菌体で水性縣濁液を調製することにより得られる。縣濁に使用する液は特に限定しないがpH5〜9の範囲の緩衝液が好ましい。縣濁前か縣濁後に、安定化剤として例えばグリセロールやフェノールなどを適量添加してもよい。縣濁は菌体を適当な試験管中で物理的に十分振とうさせて分散させてもよいが、ホモジナイザーを使った方法や超音波破砕やビーズ破砕など従来から知られる方法により菌体を強制破砕してもよい。得られた縣濁液はそのまま免疫に供してもよいし、適当なメッシュのフィルターでろ過、あるいは遠心分離により調製したものを使用してもよい。また同様の調製方法で得られた上記菌の水性縣濁液であれば市販品、例えばT.rubrumアレルゲンやT.Mentagrophytesアレルゲンを抗原として利用してもよい。
本発明の検出・分離方法に使用する抗体は、公知の抗体作成方法で調製することができる。モノクローナル抗体であれば公知のモノクローナル抗体作成法 例えば、単クローン抗体実験マニュアル 富田朔ニ・安東民衛/編 講談社サイエンティフィク 1987年、免疫研究法ハンドブック 藤原大美・淀井淳司/編 中外医学社 1996年、組織培養の技術[第3版]応用編 日本組織培養学会/編 朝倉書店 1999年記載の方法に従って作成することができ、より詳しくは以下のような方法・手順で作製することができる。
動物の免疫に使用する被免疫動物としては、公知のハイブリドーマ作製法に用いられる哺乳動物を使用することができる。具体的には、例えばマウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマなどである。ただし摘出した抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞の入手容易性などの観点からは、マウスおよびラットを被免疫動物とするのが好ましい。また、実際に使用するマウスおよびラットの系統は特に制限はなく、マウスの場合には、例えば各系統A,AKR,BALB/c、BDP、BA、CE、C3H、57BL,C57BR、C57L、DBA、FL、HTH、HT−1、LP、NZB、NZW、RF、RIII、SJL、SWR、WB、129等が、またラットの場合には、たとえば、Low、Lewis、Spraque、Daweley、ACI、BN、Fischerなどを用いることができる。このうち、後述のミエローマ細胞との融合適用性を勘案すれば、マウスではBALB/c系統が、ラットではlow系統が被免疫動物として特に望ましい。なお、これらマウスまたはラットの免疫時の週令は5〜12週令が好ましい。
動物の免疫は、免疫原である上記菌縣濁液を動物の皮内、腹腔内またはに投与することによって行うことができる(生体内免疫)。投与スケジュールは被免疫動物の種類、個体差により異なるが、一般には、抗原投与回数2〜6回、投与間隔1〜2週間が好ましい。また抗原の投与量は動物の種類、個体差等により異なる。一般には10―100μg/匹・回程度といわれているが、投与量を変えて免疫を実施し血清中や血漿中抗体価の最も高い被免疫動物を選択することもできる。投与する際はアジュバントとよばれる免疫活性化物質と共に投与してもよい。たとえばアジュバントとして、フロイント完全アジュバンド、フロイント不完全アジュバント、CpG DNA,ムラミルジペプジド、リポポリサッカライドなどが挙げられる。また動物の免疫法として上述の方法の代わりに生体外免疫法と呼ばれる方法、具体的にはあらかじめ脾臓細胞またはリンパ細胞を無菌的に取りだした後、アジュバンド物質、免疫原とともに動物培養用培地中炭酸ガス存在下で2〜7日間培養することで実施してもよい。
細胞融合に際して、生体内免疫の場合では上記の抗原投与スケジュールの最終免疫日から1〜5日後に被免疫動物から抗体産生細胞を含む脾臓細胞またはリンパ細胞を無菌的に取り出す。これらの脾臓細胞またはリンパ細胞からの抗体産生細胞の分離は、公知の方法に従って行うことができる。生体外免疫の場合は免疫原と共に培養した細胞を引き続き用いることができる。
細胞融合には上記の抗体産生細胞とミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞には特段の制限はなく、公知の細胞株から適宜に選択して用いることができる。ただし、融合細胞からハイブリドーマを選択する際の利便性を考慮して、その選択手続きが確立しているHGPRT(Hypoxanthine−guanine phosphoribosyl transferase)欠損株を用いるのが好ましい。すなわち、マウス由来のX63−Ag8(X63),NS1−Ag4/1(NS−1),P3X63−Ag8.U1(P3U1),X63−Ag8.653(X63.653),SP2/0−Ag14(SP2/0),MPC11−45.6TG1.7(45.6TG),F0,S149/5XX0,BU.1等、ラット由来の210.RSY3.Ag.1.2.3(Y3)等、ヒト由来のU266AR(SK0−007),GM1500・GTG−A12(GM1500),UC729−6,LICR−LOW−Hmy2(Hmy2),8226AR/NIP4−1(NP41)などである。
抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合は、公知の方法に従い、細胞の生存率を極度に低下させない程度の条件で適宜実施することができる。そのような方法は、例えば、ポリエチレングリコールなどの高濃度ポリマー溶液中で抗体産生細胞とミエローマ細胞とを混合する化学的方法、電気的刺激を利用する物理的方法などを用いることができる。
融合細胞と非融合細胞の選択は、例えば、公知のHAT(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン)選択法により行うのが好ましい。この方法は、アミノプテリン存在下で生存し得ないHGPRT欠損株のミエローマ細胞を用いて融合細胞を得る場合に有効である。すなわち、未融合細胞および融合細胞をHAT培地で培養することにより、アミノプテリンに対する耐性を持ち合わせた融合細胞のみを選択的に残存させ、かつ増殖させることができる。HAT培地や後述のクローニングなど細胞培養に使用する培地は、公知のものを使用すればよく、例えばRPMI1640、DMEM、eRDF、IMDMなどが使用できる。同時に動物血清や増殖因子、コンディションドメディウム、抗生物質等、蛋白質などを添加してもよいが、限界希釈などでクローニングを行う場合はこれらを組み合わせて添加することが好ましい。動物血清であれば例えばウシ胎児血清を1乃至20%添加してもよいし、増殖因子であれば例えばIL−6、インシュリン、エタノールアミン、セレン、2メルカプトエタノール、ピルビン酸、非必須アミノ酸類を添加してもよいし、コンデションメディウムであれば例えば胸腺細胞培養後の培養上清5%乃至20%を添加してもよいし、抗生物質であれば例えばゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ペニシリンを添加してもよいし、蛋白であれば例えばウシ血清アルブミン、カゼイン、トランスフェリンを添加してもよい。細胞を培養する温度は細胞が増殖する温度であればよいが例えば37℃でおこなうことができる。培地中に炭酸水素ナトリウムを加える場合には炭酸ガス存在下例えば培地中のpHが中性となる炭酸ガス5%乃至10%で培養するのが好ましい。
目的とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞のスクリーニングは、公知の酵素免疫検定法(EIA:Enzyme Immunoassay)、放射線免疫検定法(RIA:Radio Immunoassay)、蛍光抗体法、免疫染色法などにより行うことができる。
EIAやRIAでスクリーニングを実施する場合、スクリーニングに使用する抗原は免疫原として使用した菌水性縣濁液あるいはアレルゲン溶液を使用することができる。固相への抗原の固定化は公知の方法に従い、例えばダルベッコのリン酸生理緩衝液(PBS(−))や0.05M 炭酸緩衝液にて希釈した菌縣濁液を2〜40℃の範囲で30分ないし一晩固相と接触させてもよいし、グルタルアルデヒドやカルボジイミドといった架橋試薬を使用し共有結合的に固相表面の官能基と結合させてもよい。固相の材質は公知のものを使用することができ、例えばポリスチレン、ガラス、シリカ、セルロース、ポリビニル、ナイロン、ニトロセルロース、PVDFなどが挙げられる。抗原を結合後、非特異的な蛋白吸着を抑える目的で他の蛋白・界面活性剤やポリマー・血清などの含む溶液を固相に接触させるブロッキング工程を実施することが好ましい。ブロッキングに使用する蛋白質として、例えば牛血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、オボアルブミンが挙げられ、0.1乃至10%溶液を調製し使用することができる。ブロッキングに使用する界面活性剤やポリマーとして、例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN20)、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、0.01乃至0.5%溶液を調製し使用することができる。ブロッキングに使用する血清として、例えば牛胎児血清、新生牛血清、ウマ血清、ヤギ血清、ウサギ血清、ラット血清、モルモット血清、ブタ血清、マウス血清が挙げられ、0.5%乃至100%溶液を使用することができる。血清や蛋白をブロッキングに使用する場合は免疫動物とスクリーニングに使用する特異抗体検出用ニ次抗体の交差特異性を考慮して選択使用することが好ましく、たとえばマウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングする場合には牛血清アルブミン溶液などマウス由来でない蛋白含有溶液でブロッキングを実施し、ウシ抗体に交差反応性を示さないか、もしくはほとんど示さない2次抗体を使い検出することが好ましい。ブロッキングは例えば2℃乃至40℃の範囲で行うことができる。時間は例えば30分乃至1日間行うことができるが、ブロッキングに使用する溶液に適切な防腐剤、例えば0.05%アジ化ナトリウムを添加しておき、ブロッキング後にそのまま保存することもできる。
蛍光抗体法や免疫染色法でスクリーニングに使用する標本は、あらかじめ菌を塗沫し、固定し、水洗後さらに必要に応じてブロッキングと洗浄を行ったスライドグラスを使用できる。また菌を塗布することなく培養菌塊をホリマリン固定パラフィン包埋し、公知の方法で組織標本切片を調製することもできる。
複数種の菌に対する反応性を有する抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングは、確認したい各菌それぞれに反応する抗体産生の有無を検知して実施できる。
例えばRIAやEIAでスクリーニングを行うのであればT.rubrum、T.mentagrophytes、M.canis、E.floccosumの各種菌抗原をそれぞれ単独で固相化した固相を用意し、適度に希釈した同一ハイブリドーマ培養上清試料を同固相と反応させ、B/F分離後さらに標識ニ次抗体を反応させ、さらにB/F分離後固相に残った標識二次抗体を検出し、各抗原間の反応性を比較し3種以上の菌と反応性が確認できたものを候補として選抜してもよい。また例えばT.rubrum、T.mentagrophytes、M.canis、E.floccosumのうち1種または2種以上の菌種抗原を固相化した抗原を用意し、適度に希釈した同一ハイブリドーマ培養上清試料を同固相と反応させ、B/F分離後さらに標識ニ次抗体を反応させ、さらにB/F分離後固相に残った標識二次抗体を検出し、反応性が確認できたものを第一スクリーニング候補として選抜し、その後選抜された集団の培養上清を試料としてEIA,RIA,蛍光抗体法、免疫染色法などの方法でT.rubrum、T.mentagrophytes、M.canis、E.floccosumとの反応性を検討し、二次スクリーニング選抜を行ってもよい。一次スクリーニングと二次スクリーニングは引き続き実施してもよいし、一次スクリーニングの後にクローニングを実施し、細胞として単一集団とした後に二次スクリーニングを実施してもよい。
また例えば免疫染色法にてスクリーニングを行うのであればT.rubrum、T.mentagrophytes、M.canis、E.floccosumの各種菌をそれぞれ単独で固相化した標本を用意し、適度に希釈した同一ハイブリドーマ培養上清試料を同標本と一定時間反応させ、洗浄後さらに酵素標識ニ次抗体を反応させ、さらに洗浄後標本上に残った標識二次抗体の有無を色原体である酵素基質を標本上に接触させて標本上の染色性を各種菌に対する標本間で比較し3種類以上の菌で反応性が確認できたものを候補として選抜してもよい。
スクリーニングにより選択されたハイブリドーマ細胞は、メチルセルロース法、軟アガロース法、限界希釈法などの公知の方法によりクローニングし、抗体産生に用いる。
以上の通りの方法によって得たハイブリドーマ細胞は、液体窒素中または−80℃以下の冷凍庫中に凍結状態で保存することができる。細胞凍結時の細胞濃度は1x106/ml乃至1x107/mlの範囲が好ましく、凍結時安定化剤として培地に5乃至10%(v/v)ジメチルスルホキシドを添加してもよい。
本発明の検出・分離方法に使用する抗体は上記の方法で作製したハイブリドーマ細胞を公知の方法で培養することによって所望のモノクローナル抗体を得ることができる。例えばマウスに免疫して作成したハイブリドーマであれば、あらかじめプリスタン等の鉱物油を投与したマウスの腹腔に該細胞を移植すると1乃至3週間でモノクローナル抗体を含んだ腹水が得られる。また例えばハイブリドーマを培地中で培養するとハイブリドーマからモノクローナル抗体が分泌され、該抗体を含んだ培養上清が得られる。必要に応じて該抗体を含んだ腹水や培養上清は公知の抗体精製手法でより純度の高いモノクローナル抗体を得ることができる。
また本発明の検出・分離方法に使用する抗体は上述のハイブリドーマで発現している抗体をコードする遺伝子あるいは遺伝子断片を公知の技術で取得し、公知の遺伝子組換え技術により発現ベクターを組み込んだ形質転換体を培養することにより所望のモノクローナル抗体を得ることができる。抗体生産により抗体が形質転換体内に蓄積される場合は公知の方法により形質転換体を回収し破砕することにより抗体を含んだ破砕液が得られる。抗体生産により形質転換体を培養した培地中に抗体が分泌される場合には形質転換体培養により該抗体を含んだ培養上清が得られる。必要に応じて該抗体を含んだ破砕液や培養上清は公知の抗体精製方法でより純度の高いモノクローナル抗体を得ることができる。
また検出・分離方法に使用する抗体は上述のハイブリドーマで発現している抗体をコードする遺伝子あるいは遺伝子断片を公知の技術で取得し、該抗体遺伝子あるいは遺伝子断片から結合活性を有する蛋白部分をコードするメッセンジャーRNAを公知の方法で合成し公知の無細胞蛋白合成方法により抗体生産することもできる。抗体生産により該抗体を含んだ蛋白合成反応液が得られる。必要に応じて該抗体を含んだ蛋白合成反応液は公知の抗体精製方法でより純度の高いモノクローナル抗体を得ることができる。
抗体精製方法として例えば、硫安塩析、カラムクロマトが挙げられる。カラムクロマトに使用できる樹脂担体として例えば陰イオン交換樹脂やプロテインAやプロテインG、ProteinLなどのアフィニティクロマト樹脂、ハイドロキシアパタイト樹脂、疎水クロマト樹脂などの抗体吸着性のあるものや、架橋デキストラン樹脂やアガロース樹脂など分子量で樹脂内移動度の異なることを利用したゲルろ過担体が挙げられる。これら精製操作を行う前にモノクローナル抗体のサブタイプを調べておき適切な精製手段を選択することが望ましい。精製後の抗体は透析などの方法でpH中性の緩衝液にバッファー交換を行うことが好ましく、pH中性の緩衝液として例えば生理的食塩濃度のリン酸緩衝液(PBS(−))や生理的食塩濃度のトリス緩衝液(TBS)を用いることができる。本緩衝液のpHは5.5〜8.5の間が好ましい。
このようにして得られたモノクローナル抗体は溶液状態や凍結状態で保存することができる。液状で保存する場合は防腐剤を添加したり、0.22μmメッシュの滅菌フィルターなどで無菌ろ過後滅菌容器中に保存することが好ましい。防腐剤として例えば0.05%アジ化ナトリウムを添加することができる。容器の滅菌方法は公知の方法で実施すればよく、例えばγ線照射滅菌、UV照射滅菌、オートクレーブ滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌などが挙げられる。保存容器は保存中抗体と反応しない不活性な素材を使用したものが使用でき、例えば、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレンである。抗体の結合活性を損なわない方法であれば保存容器表面に吸着しないよう表面加工を行った容器を使用してもよい。液状での保存温度は凍結しない温度であればよいが、蛋白変性を抑えるためできるだけ低温であることが好ましく、より好ましくは2乃至10℃である。また凍結を防止することのできる濃度で凍結防止剤を添加するとさらに低温で保存することもでき、例えば終濃度50%のグリセロールを添加すると−20℃でも凍結することなく液状で保存することができる。凍結状態で保存する場合は−20℃以下、より好ましくは−30℃以下で保存することが好ましい。保存時の抗体濃度は沈殿を生じない濃度で設定することができるが、好ましくは0.1乃至5mg/mlである。また安定化剤として蛋白質、水溶性ポリマー高分子、界面活性剤、糖類、糖アルコールを添加することもできる。安定化蛋白質の例としてウシ血清アルブミンやゼラチンなどが挙げられ、保存中沈殿が生じない濃度で添加することができる。濃度範囲としてより好ましくは0.1乃至5mg/mlである。
本発明で使用するモノクローナル抗体は何らかの修飾を施されて使用してもよいし、修飾を行わずに使用してもよい。修飾とはモノクローナル抗体分子に別の物質を結合させることを示す。該結合は共有結合、イオン結合、物理結合、配位結合、水素結合の場合が挙げられる。結合させる物質は公知の標識物質を使用することができ、公知の方法で結合させることができる。抗体に新たに官能基や活性基を導入し、次いで修飾を行うこともできる。結合させる物質として例えば蛍光物質、発光物質、蛋白質、化合物などが挙げられる。蛍光物質は例えばフルオロセイン−4−イソチオシアネート(CAS No.3326−32−7)が挙げられる。発光物質は例えばアクリジニウムエステル類が挙げられる。蛋白質は例えばアビジン、ストレプトアビジン、抗マウスイムノグロブリンG抗体、プロテインA、プロテインG、プロテインL、西洋わさびペルオキダーゼ、アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼ、アミラーゼ、ルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、グリーンフルオロエッセント蛋白質(GFP)、オワンクラゲ由来発光蛋白(イクオリン)などが挙げられる。化合物は例えばN−ハイドロキシスクシイミドエステル化合物(NHSエステル化合物:例えばビオチン−NHSエステル(CAS No.35013−72−0)、ビオチン−スルフォスクシイミドエステル(CAS No.105248−43−9)、5(6)カルボキシフルオロセイン−NHSエステル、ジゴキシゲニン−3−O−メチルカルボニル−ε−アミノカプロン酸−NHSエステル)が挙げられる。抗体に官能基を導入するには例えばスルフヒドリル基を導入する場合には2−イミノチオランを抗体上のアミノ基と反応させ導入することができる。抗体に活性基を導入する場合には2価性架橋剤を用いることができ、例えばマレイミド基を導入する場合にはN−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スクシイミド(CAS No.55750−63−5)、N−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スルフォスクシイミド(CAS No.103848−61−9)を用いることができる。修飾を行わずに使用する場合には公知組成の緩衝液中で適切な濃度に調整し使用してもよいし、上述の保存液の状態でそのまま使用することもできる。
また本発明で使用するモノクローナル抗体は担体に結合された形態で使用することができる。担体は公知の素材が使用でき、例えばポリスチレン、ガラス、シリカ、セルロース、ポリビニル、ナイロン、ニトロセルロース、PVDF、マグネタイト、金、白金、水晶、脂質、蛋白質、ラテックスなどが挙げられる。抗体の固定化は公知の方法に従い、例えばダルベッコのリン酸生理緩衝液(PBS(−))や0.05M 炭酸緩衝液にて希釈した抗体液を2〜40℃の範囲で30分ないし一晩固相と接触させてもよいし、グルタルアルデヒドやカルボジイミドといった架橋試薬を使用し共有結合的に固相表面の官能基と結合させてもよい。担体形状は公知の形状が使用でき、例えば96穴ELISAプレート、シリカビーズ、ポリスチレンビーズ、イムノクロマトストリップ用膜、ガラス繊維、多孔性膜、磁性ビーズ、ラテックス粒子、デキストラン粒子、アガロース粒子、金コロイド、血球、細胞、ウイルス、リポソーム、水晶振動子、金薄膜などが挙げられる。これらの担体は必要により着色されていてもよい。
これら担体に抗体を結合させた後非特異的な蛋白吸着を抑える目的で他の蛋白・界面活性剤やポリマー・血清などの含む溶液を固相に接触させるブロッキング工程を実施してもよい。ブロッキングに使用する蛋白質として、例えば牛血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、オボアルブミンが挙げられ、0.1乃至10%溶液を調製し使用することができる。ブロッキングに使用する界面活性剤やポリマーとして、例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN20)、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、0.01乃至0.5%溶液を調製し使用することができる。ブロッキングに使用する血清として、例えば牛胎児血清、新生牛血清、ウマ血清、ヤギ血清、ウサギ血清、ラット血清、モルモット血清、ブタ血清、マウス血清が挙げられ、0.5%乃至100%溶液を使用することができる。
本発明の皮膚糸状菌の検出は、Trichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytes、Microsporum canis、Epidermophyton floccosumすべてと反応性を有する抗体を使用し、公知の方法と組み合わせて実施することができる。
本発明記載の皮膚糸状菌検出方法に用いる試料は、使用する抗体活性を著しく阻害しない限り固体試料でも液体試料でも適用することができる。例えば液体試料とは50%(V/V)以上の水を含有する20℃で液体形状を示す試料であり、50%未満の試料は適切な希釈液で希釈後し用いることができる。水含量が50%(V/V)未満の場合でも検出に使用できる場合もあるが一般に抗体の活性が保持されないことが多く、好ましくない。一方固体試料とは常温20℃で固体形状を示す試料である。固体試料の場合は直接抗体を作用させることもできるが、液体に浸漬あるいは縣濁するか、または液体塗布後該液体を回収し菌を液体中に抽出浮遊させると液体試料として用いることができる。また別の固体を被検試料に接触させたのち抗体と菌の結合を著しく低下させない方法であれば、試料を変性・分解する処理を施すことができる。変性・分解する処理とは例えば、ガラスビーズ・ホモジナイザーなどを用いた物理的破砕、超音波による破砕、凍結粉砕、熱処理、細胞壁溶解酵素処理、蛋白質分解酵素処理、界面活性剤処理、有機溶剤処理などの方法があり、又、いくつかを組み合わせて用いることができる。また試料を分離培地に添加し、公知の条件で一定時間培養を行ったのち液体培地あるいは寒天培地を被検試料として用いてもよい。固体試料として例えば爪、皮膚片、鱗屑、頭皮、フケ、毛髪、体毛、動物の爪・体毛・皮膚、食品、塵、埃、靴、靴中敷、スリッパ、サンダル、下駄、長靴、ガーゼ、包帯、ピンセット、くし、はさみ、足拭きマット、タオル、ハンカチ、帽子、靴下、足袋、下着、手袋、ストッキング、布団、座布団、クッション、シーツ、毛布、雑巾、スノコ、床、畳、カーペット、掃除機で捕集した塵、衣類洗濯機洗濯槽、衣類乾燥機ドラムフィルター屑、風呂桶、洗面器、エアサンプラで空中浮遊物を捕捉した多孔性膜、ウォーターサンプラで液体中浮遊物を捕捉した多孔性膜、試料ろ過後のフィルターなどが挙げられる。液体試料として例えば汗や血液などの体液、頭皮洗浄後のシャンプー洗浄液、風呂水、洗濯水、雑巾掃除後の雑巾洗浄液、足洗浄後の洗浄液などが挙げられる。また固体試料あるいは液体試料を予め抗体を結合しない担体に接触させ、試料成分の一部あるいはすべてを保持させた後、該担体を試料することもできる。該担体として例えば寒天培地上で増殖させた菌をスライドグラス上に塗沫したスライド標本、ホリマリン固定パラフィン包埋試料を薄切後スライドグラス上に固定したスライド標本、液体試料をニトロセルロース膜やガラス繊維など多孔性膜を通過させ菌を保持させた多孔性膜、蛋白等を吸着させていない未使用のELISAプレートウエル上に液状試料を分注・吸着させたウエル、白癬患部と接触した靴下、白癬患部を拭ったガーゼなどが挙げられる。
本発明に記載した皮膚糸状菌の検出方法の一実施形態は、Trichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytes、Microsporum canis、Epidermophyton floccosumすべてと反応性を有する抗体で被検試料中の皮膚糸状菌を結合させたのち被検試料から分離する工程を含む。被検試料と抗体と接触させるときは液体中で反応させる。液体中のpHは抗体と菌との反応を著しく妨げないpHであればよく、より好ましくはpH5〜9の範囲である。液体中の温度は抗体と菌の反応を著しく妨げない温度であればよく、好ましくは4〜45℃である。分離に使用する抗体は予め担体に結合された状態で液体試料と接触させてもよい。例えば特開2001−208756に記載された免疫イムノクロマトデバイスと同等な構成のデバイスが使用でき、少なくとも試料導入部と皮膚糸状菌捕捉部とを有する試料泳動体と検出対象である皮膚糸状菌に特異的に結合できる抗体とを構成要素として含むものであれば使用できる。また例えば磁性ビーズに皮膚糸状菌に特異的に結合する抗体を結合させたビーズも使用でき、十分時間液体試料と接触させたのち磁石を使って磁性ビーズを捕集し、液体試料と菌を分離することができる。また例えば皮膚糸状菌に特異的に結合する抗体を結合させたポリスチレン製96穴ELISAプレートウエルも使用でき、十分時間液体試料と接触させた後、担体と結合した菌は液体試料を担体から回収あるいは除去して分離することができる。また分離に使用する抗体は試料と抗体を十分な時間接触させた後に担体に結合させてもよく、この場合担体には抗体と親和性を有するものを使用する。例えば皮膚糸状菌に対するマウスモノクローナル抗体(サブタイプIgG1)を使用する場合には抗マウスIgG抗体が結合した担体を使用することができる。また例えばビオチンが結合した皮膚糸状菌に対するマウスモノクローナル抗体を使用する場合にはビオチンが結合できる蛋白質(たとえばアビジン、ストレプトアビジン、抗ビオチン抗体)が結合した担体を使用することができる。これらの方法を使用する場合には使用する抗皮膚糸状菌モノクローナル抗体と担体量の比や捕捉時間、反応温度を実験等により予備検討し、使用する抗皮膚糸状菌モノクローナル抗体の少なくとも50%、より好ましくは90%以上担体と結合するよう反応条件設定することが望ましい。
分離後に引き続く検出は公知の検出方法を用いることができ、例えば培養試験、イムノアッセイ、菌核酸検出、菌核酸の増幅および配列決定による同定が挙げられる。検出手段として例えば公知の分離培地培養方法にて培養し、形成する菌コロニーの存在・形態あるいは菌の代謝産物を検知することにより試料中の皮膚糸状菌存在を検出することができる。菌の存在や形態を観察する方法として例えば目視や顕微鏡観察により判定することができる。あるいはCCDカメラなどデジタル画像採取装置により培養像を採取し、公知の数値処理により判定することもできる。検出手段としてまた例えば特開平11−142409に記載されている方法が使用できる。分離された菌を直接あるいは該分離菌を公知の培養方法で培養増菌した試料から核酸抽出を用い、該核酸抽出試料中に公知の皮膚糸状菌核酸配列を有する核酸部分を公知の核酸増幅法により増幅し、有無を検出あるいは増幅した核酸断片の核酸配列を解析し公知のデータベースと照合して核酸配列の相同性から皮膚糸状菌を同定検出することもできる。これら分離培養に使用する培地は培養中に試料由来皮膚糸状菌以外の菌が増殖することがないことが望まれ、例えば予め公知の滅菌あるいは無菌処理を行った後培地を使用することが望ましい。さらに好ましくは分離培養に使用する培地に分離に適切な、より具体的には皮膚糸状菌の増殖には影響しないが細菌の生育は阻害することが知られている、公知の抗生物質・抗菌剤を適切な濃度で添加した培地を用いる。抗生物質は例えばクロラムフェニコール、シクロヘキシミド、クロルテトラサイクリン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、ペニシリンなどが挙げられる。抗菌剤は例えばイソチアゾリン化合物が挙げられる。抗生物質・抗菌剤は必要に応じ1種類あるいは2種類以上培地に添加することができる。添加量は公知のバクテリア最小生育阻止濃度を参考に設定することができ、最小阻止濃度の1/5乃至10倍の範囲で薬剤溶解性や薬剤安定性を考慮し設定することが好ましい。またこれら分離に使用する抗体固定化担体や分離後の担体洗浄に使用する緩衝液、抗体は滅菌処理または無菌処理を行ったものを使用することが望ましい。滅菌方法は抗体や担体を変性劣化あるいはその量を減少させない方法であれば公知の方法が使用できる。担体であればγ線滅菌、電子線滅菌などが好ましい。緩衝液であればフィルターろ過かオートクレーブにより微生物を除去後使用することが好ましい。
また本発明に記載した皮膚糸状菌の検出方法の一実施形態は、Trichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytes、Microsporum canis、Epidermophyton floccosumすべてと反応性を有する抗体を被検試料中の皮膚糸状菌に作用させ、菌と結合した抗体の有無を検出する工程を含む。
被検試料と抗体と接触させるときは液体中で反応させる。液体中のpHは抗体と菌との結合反応を著しく妨げないpHであればよく、より好ましくはpH5〜9の範囲である。反応温度は抗体と菌の結合反応を著しく妨げない温度であればよく、好ましくは4〜45℃である。反応時間は用いる方法・目的とする検出感度に応じて予備検討し設定することが望ましく、作業性を考慮し1分乃至1500分の範囲内で検討反応時間帯を設定し検討してもよい。検出ごとで繰り返し再現性のよい結果を得るにはこれら反応液pH、反応温度、反応時間を同一になるよう制御した環境下で実施することが望ましい。被検試料と抗体を接触させた後、菌と結合しなかった抗体と結合した抗体は必要に応じて分離を行うことができる。菌と結合した抗体の有無を検出する方法は公知のイムノアッセイ法を使用することができ、例えば免疫染色法、蛍光抗体法、フローサイトメータ法、カウンティングイムノアッセイ法、サンドイッチイムノアッセイ法、競合法、イムノクロマト法、凝集法、水晶振動子マイクロバランス法、表面プラズモン共鳴法などが挙げられる。
液体試料中の菌の存在をサンドイッチ2抗体法で検出する場合は、公知のサンドイッチ2抗体法測定法により実施することができ、例えば第一の抗体を担体に固定化し、液体試料を担体と接触させて皮膚糸状菌を分離し、未反応の試料を洗浄により除去し、さらに第二の抗体として標識物質を結合させた抗体を担体と一定時間接触させ、次いで未反応の第二の抗体を洗浄により除去し、生成した担体−抗体−菌−標識抗体複合体量に相当する標識物質の量を直接あるいは間接的に検出し、最終的に菌の有無を判別すればよい。例えば標識物質が蛍光物質であれば励起光により生じた蛍光強度を測定し、標識物質が発光物質であれば発光強度を測定し、標識物質が放射性ヨウ素であれば放射活性を測定すればよい。また標識物質が酵素であれば酵素基質を作用させて得られた生成物量を検出すればよい。また標識物質がそれ自体ではシグナルを有しないものであれば、該標識物質特異的に結合しうる物質にシグナル生成できる他の標識物質を結合させた第2の標識物質を用いて担体−抗体−菌−標識抗体−第2の標識物質複合体を生成させ、第2の標識物質のシグナルを検出すればよい。本発明記載の検出法においてサンドイッチ2抗体法で使用する担体側抗体と標識側抗体は、異なる抗原認識部位を有する2種類以上の抗皮膚糸状菌抗体の組み合わせでも、同一の抗皮膚糸状菌抗体あるいは同一の抗原認識部位を有する2種類以上の抗皮膚糸状菌抗体の組み合わせでもよい。同一の抗原認識部位を有する2種類以上の抗体とは、抗原物質に対して同時にこれら抗体を作用させた際に一方の抗体が他方の抗体の結合を妨げる抗体一次構造の異なる抗体の組み合わせのことであり、例えば異なるハイブリドーマクローンから産生される抗体で同一の抗原部位を認識する抗体の組み合わせが該当する。競合法で検出する場合は公知の競合法測定法で実施でき、例えば第一の抗体を担体に固定化し、試料中の菌抗原と標識物質の結合した抗原を同時にあるいは順次抗体結合担体と接触させ、次いで未結合の試料あるいは標識物質の結合した抗原を洗浄により除去し、生成した担体−抗体−標識抗原複合体量に相当する標識物質の量を直接あるいは間接的に測定し、最終的に菌の有無を判別することができる。
例えば皮膚鱗屑組織など固体上あるいは固体内の菌検出は、被検固体をそのまま、あるいは固体を公知の分離培地培養方法で培養増菌後、Trichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytes、Microsporum canis、Epidermophyton floccosumすべてと反応性を有する抗体を使用し公知の免疫染色法により検出することができる。試料に応じてホルマリン処理など抗体と菌との結合に影響を及ぼさない公知の固定化方法で固定後に免疫染色することができる。試料賦活化処理は免疫染色前に実施すると染色結果が明瞭になるため、実施することが好ましい。
また例えば皮膚鱗屑組織など固体上あるいは固体内の菌検出は、固体を変性あるいは分解する処理を施すと同時あるいはその後に該試料から液体中に菌を抽出し、該液体をTrichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytes、Microsporum canis、Epidermophyton floccosumすべてと反応性を有する抗体を使用したイムノアッセイ法で検出することができる。固体を変性・分解する処理とは例えば皮膚であれば組織を破壊するがその後の抗体と菌の結合を著しく低下させない方法であれば公知の方法を適用することができ、ガラスビーズ・ホモジナイザーなどを用いた物理的破砕、超音波による破砕、フレンチプレス処理、凍結粉砕、熱処理、細胞壁溶解酵素処理、蛋白質分解酵素処理、界面活性剤処理、有機溶剤処理、浸透圧変化を使った破砕処理など方法があり、又、いくつかを組み合わせて用いることができる。試料は予め公知の分離培地培養方法にて培養増菌後、検出に使用してもよい。
本発明の抗体を用いた皮膚糸状菌の検出方法を用いることより、皮膚糸状菌を検出する検出用試薬を製造することができ、このような検出用試薬もまた、本発明の一つである。このような検出用試薬として、例えば、本発明の検出方法で使用するモノクローナル抗体を結合させたゼラチン粒子やラテックス粒子などを含有させた凝集検出用試薬は、通常の公知の方法により製造することができる。また同様にして、酵素免疫測定法(EIA)試薬、ELISA試薬、放射免疫測定法(RIA)試薬を、固相として、例えば、ポリスチレンなどのポリマー、ガラスビーズ、磁性粒子、マイクロプレート、イムノクロマトグラフィー用濾紙、グラスフィルターなどを用いることにより、通常の公知の方法により製造することができる。
本発明の抗体を用いた皮膚糸状菌検出における抗原性の賦活化方法は、予め試料を酵素処理あるいは加熱処理を行う。酵素処理に使用する酵素は蛋白分解酵素、糸状菌細胞壁溶解酵素であり、例えばプロナーゼTM、トリプシン、プロティナーゼK、ヤタラーゼTM(キチナーゼとキトビアーゼ活性を有する糸状菌溶解酵素)が挙げられる。酵素処理時間は使用する酵素濃度と反応液pHと反応温度により条件を変えて実施する。免疫染色法で例えば爪試料を染色する場合、トリプシンであれば0.1%(W/V)トリプシン濃度 0.05M トリス塩酸緩衝液pH7.6 37℃ で30分、ヤタラーゼであれば2%(W/V)ヤタラーゼ濃度 0.05M マレイン酸緩衝液pH5.5 37℃ で30分処理を行うことで染色像を未処理に比べ明瞭にすることができる。酵素処理に使用する緩衝液は上記の条件に限定されず、PBS(−)やTBSでも実施することができる。加熱処理は公知の加熱装置が使用でき、例えば電子レンジ(マイクロウエーブ照射)、オートクレーブ、圧力鍋、ウオーターバス、蒸し器、ホットプレートなどが挙げられる。加熱時は試料が乾燥しないよう緩衝液中で処理を行うことが好ましく、例えば0.01Mクエン酸緩衝液pH6.0、0.01Mクエン酸緩衝液pH7.0など公知の緩衝液を用いることができる。電子レンジでマイクロウェーブ照射する場合は試料が乾燥しないよう途中で緩衝液を足しながら実施し、例えば500W出力で5分おきに緩衝液を追加しながら計10分間照射することができる。
以下に実施例を示してこの発明を詳細かつ具体的に説明するが、この発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:免疫染色法による皮膚糸状菌の検出
(1)皮膚糸状菌の培養:財団法人発酵研究所より分与された皮膚糸状菌Trichophyton rubrum(IFO番号9185、32409)、Trichophyton mentagrophytes(IFO番号6202、32410)、Microsporum canis(IFO番号32463)、Epidermophyton floccosum(IFO番号32461)は所定の方法でアンプルから復元し、サブローデキストロース寒天スラント(ベクトンディキンソン社)に接種し、室温で1週間培養した。
(2)抗原溶液の調製:Trichophyton rubrumアレルゲン(20000PNU/ml:1PNU(PROTEIN NITROGEN UNIT)は1.0x10−6gのリンタングステン酸沈殿物を生ずるタンパク性窒素を示す。GREER LABORATORIES,INC社)をリン酸緩衝生理食塩水(以下 PBS(−))にて希釈し、10000PNU/ml抗原液(以下抗原液H)とと1000PNU/ml抗原液(以下抗原液L)を2種調製した。
(3)マウスの免疫:フロインド完全アジュバンド500μLに上記2種の抗原液それぞれで500μLを混合・エマルジョンとし、各エマルジョンを200μL/匹でBALB/cA ♀5週令2匹づつ計4匹腹腔に注射した。(この日を0日目とする。)14日目、21日目、28日目に上述と同様に各抗原液400μLとフロイント不完全アジュバンド400μLを混合・エマルジョンとし、そのうちの100μLをマウス腹腔に注射した。
(4)マウス血清の取得:32日目に生存していたマウス(抗原液Hで調製したエマルジョンを腹腔注射したマウス個体1匹(H−#1)、抗原液Lから調製したエマルジョンを腹腔注射したマウス個体2匹(L−#1、L−#2))から尾より血液を採取した。血液は室温30分放置後、凝固した血餅を3000RPM10分の遠心操作により分離し、血清を取得した。
(5)ELISAによる血清抗体価の確認:採取した血清はPBS(−)で1000倍希釈から128000倍希釈まで希釈を行い、試料として用いた。Trichophyton rubrumアレルゲンをPBS(−)で200PNU/mlとなるよう希釈し、96穴ELISAプレート(#9018 コーニング社)の各ウエルにに50μLづつ分注、室温1時間放置し、プレートに抗原を固相化した。ウエル内の液体を除去後、次いで蒸留水で4倍に希釈したブロックエース(雪印乳業)を300μLづつ各ウェルに分注し、室温1時間放置し、ブロッキングを行った。ウエル内の液体を除去し、次いで0.05%(w/v)TWEEN20含有PBS(以下 洗浄液)300μL分注・廃棄を3回繰り返して各ウエルを洗浄後、試料を50μLづつウェルに分注し固相抗原と1時間室温で反応させた。ウエル内の液体を除去し、次いで洗浄液300μL分注・廃棄を3回繰り返して各ウエルを洗浄後、蒸留水で10倍に希釈したブロックエースで2000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン ウサギ抗体(DAKO社)を50μLづつウェルに分注し室温1時間反応させた。ウエル内の液体を除去し、次いで洗浄液300μL分注・廃棄を3回繰り返して各ウエルを洗浄後、3,3‘−5,5’−テトラメチルベンジジン(以下TMB)を含む西洋わさびペルオキシダーゼ基質液TMB+(DAKO社)を各ウエル50μLづつ分注し、室温遮光下反応させた。反応10分後1N硫酸を各ウエル50μLづつ分注し、酵素反応を止め、主波長450nm副波長650nmで各ウエルの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定を行った。対照として抗原を固相化していないプレートでも、ブロッキング以下同様の操作を実施した。測定した吸光度を表1に示す。
2000PNU−1000PNU/回注射した個体H−#1でL−#1,L−#2に比して著しく高い抗体価が見とめられ、マウス個体H−#1を使って細胞融合することとした。41日目、55日目、56日目、57日目にPBS(−)で2倍希釈したTrichophyton rubrumアレルゲン100μLを腹腔内に注射し、細胞融合に備えた。
(6)細胞融合:骨髄腫細胞Sp2/0−Ag14を10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地(極東製薬)で37℃5%炭酸ガス濃度下で培養、継代した。58日目に個体H−#1から無菌的に脾臓を摘出し、e−RDF培地中で臓器をよく洗浄した。20mlのe−RDF培地を入れた10cmφシャーレ中に脾臓を入れ,クリーンベンチ内で滅菌ピンセットで脾臓に端を固定したまま22ゲージ注射針先端で切りこみを入れ、さらにしごくように脾臓から脾臓細胞を無菌的に押しだし、さらにピペット操作により細胞塊をよくほぐした。セルストレイナーを上部に装着した50ml遠心管に細胞縣濁液を移し、引き続いて200xg 10分遠心分離を行い、上清を廃棄した。20ml e−RDF培地を添加しピペット操作により沈降した細胞を縣濁させ、さらにもう1回遠心分離、上清廃棄、培地での細胞縣濁を実施した。血球計算盤にて細胞数をカウントしたところ、1.1x108個であった。得られた脾臓細胞の1/10量にあたる1.1x107個の骨髄腫細胞Sp2/0−Ag14を添加するため、e−RDF培地で細胞を洗浄した。すなわち10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地(極東製薬)で培養した7x105/mlのSp2/0−Ag14細胞培養液20mlを150xg 5分遠心分離により細胞のみを分離し、上清を廃棄し、e−RDF培地20mlを加え、ピペット操作で細胞を縣濁し、さらに遠心分離、上清廃棄、培地での細胞縣濁の操作を2回繰り返し、最終的にe−RDF培地に縣濁されたSp2/0−Ag14を得た。1.1x107個のSp2/0−Ag14を脾臓細胞の入った50mlの遠心管に添加しピペット操作でよく混合した後、200xg 10分遠心分離を行った。上清廃棄後チューブごとタッピングして細胞塊をほぐした後、37℃環境下で50%ポリエチレングリコール1500液(ロシュ社)を1ml添加し細胞と混合、次いでe−RDF培地を1ml、3ml、10mlの順に添加した。150xg 5分遠心分離後、そのまま37℃で5分間放置し、その後上清を廃棄した。パスツールピペットを使って選択培養培地(100xHATサプリメント(GIBCO社)1/100容とCondimedH1(ロシュ社)1/10容、牛胎児血清1/10容を含むe−RDF培地)192mlに細胞全量を縣濁し、ふたつき96穴浮遊細胞培養用プレート(住友ベークライト社製)10枚に200μLづつ各ウェルに無菌的に分注した。37℃5%炭酸ガス条件下で9日間HAT選択培養を行った。
(7)抗体産生ハイブリドーマのELISAによる一次スクリーニング:選択培養後の各ウェル培養上清50μLをPBS(−)200μLで希釈し、試料として用いた。Trichophyton rubrumアレルゲンをPBS(−)で200PNU/mlとなるよう希釈し、96穴ELISAプレート(#9018 コーニング社)の各ウエルにに50μLづつ分注、室温1時間放置し、プレートに抗原を固相化した。またTrichiphyton mentagrophytesアレルゲン(20000PNU/ml :GREER LABORATORIES,INC社)についてもPBS(−)で200PNU/mlとなるよう希釈し、96穴ELISAプレート(#9018 コーニング社)の各ウエルにに50μLづつ分注、室温1時間放置し、プレートに抗原を固相化した。ウェル内の液体を除去後、次いで蒸留水で4倍に希釈したブロックエース(雪印乳業)を300μLづつ各ウェルに分注し、室温1時間放置し、ブロッキングを行った。ウエル内の液体を除去し、次いで洗浄液300μL分注・廃棄を3回繰り返して各ウエルを洗浄後、試料を50μLづつウェルに分注し固相抗原と1時間室温で反応させた。ウエル内の液体を除去し、次いで洗浄液 300μL分注・廃棄を3回繰り返して各ウエルを洗浄後、蒸留水で10倍に希釈したブロックエースで2000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン ウサギ抗体(DAKO社)を50μLづつウェルに分注し室温1時間反応させた。ウエル内の液体を除去し、次いで洗浄液 300μL分注・廃棄を3回繰り返して各ウエルを洗浄後、TMBを含む西洋わさびペルオキシダーゼ基質液TMB+(DAKO社)を各ウエル50μLづつ分注し、室温遮光下反応させた。反応10分後1N硫酸を各ウエル50μLづつ分注し、酵素反応を止め、主波長450nm副波長650nmで各ウエルの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定を行った。対照として抗原を固相化していないプレートでも、ブロッキング以下同様の操作を実施した。960ウェルの培養上清希釈液を測定し、5ウェルで抗原固相との反応性が認められた。表2にELISAでの吸光度を示す。
ウェル番号0011、0014でT.rubrum抗原、T.Mentagrophytes抗原ともに反応性が認められた。1次スクリーニングとして本2ウェルを選抜し、引き続きクローニングを実施した。
ハイブリドーマのクローニング:限界希釈法によりクローニングを実施した。すなわちスクリーニングで選抜した各選択培養ウェルの細胞を100個となるよう無菌的にサンプリングし、それぞれクローニング培地(CondimedH1(ロシュ社)1/10容、牛胎児血清1/10容を含むe−RDF培地)20mlに対し、最終5個/mlになるよう縣濁し、ふたつき96穴浮遊細胞培養用プレート(住友ベークライト社製)各1枚96ウェルに200μLづつ無菌的に分注した。37℃5%炭酸ガス条件下で10日間培養を行った。各ウェルのクローニング培養後上清50μLをサンプリングし、PBS(−)200μLで希釈しELISA試料とし、1次スクリーニングと同様にTrichophyton rubrumアレルゲン、Trichiphyton mentagrophytesアレルゲン、固相抗原なしの3種の固相を用い、ELISAを実施し、T.rubrum抗原、T.Mentagrophytes抗原ともに反応性が認められた培養上清をサンプリングしたウェルから各1ウェル選抜し1次クローニング後のハイブリドーマ細胞を得た。ひきつづき同様の方法を繰り返し、二次クローニング、三次クローニングを実施し、最終的に抗体産生ハイブリドーマ0011,0014を得た。なお、ハイブリドーマ0014は独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM P−19057として寄託されている。
(8)得られたハイブリドーマは10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地中で37℃5%炭酸ガス濃度下で培養、継代し、得られた細胞は最終10%(v/v)ジメチルスルホキシドと10%(v/v)牛胎児血清を添加したe−RDF培地1mlに5x106個を無菌的に縣濁し、2mlセラムチューブ(住友ベークライト)中で、氷中5分、−20℃50分、−80℃12時間保存し、最後に液体窒素中で保存した。
(9)各ハイブリドーマ培養上清の調製:液体窒素中で凍結保存されていたハイブリドーマ0011、0014の入ったチューブは−80℃1時間保存後、37℃の温湯中ですばやく融解させた。それぞれ10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地10mlの入った遠心管中に全量入れ、ピペット操作で細胞縣濁した。150xg 5分遠心し、上清を廃棄後、5mlの10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地にピペット操作で細胞を浮遊させ、底面積25cm2浮遊細胞培養用フラスコにそれぞれ播種した。37℃5%炭酸ガス濃度下で培養し2継代した後、培地15mlで細胞浮遊させ底面積75cm2浮遊細胞培養用フラスコで7日間培養を行い抗体を培地中に十分分泌させた。培養により得られた細胞培養液を50ml遠心管に移し700xg 10分遠心分離し、ハイブリドーマ培養上清を得た。5%(w/v)アジ化ナトリウム水溶液を各培養上清の1/100容添加し、0.22μmフィルターでろ過後、γ線滅菌されたポリプロピレン製チューブに分注し、−20℃で凍結保存した。
(10)モノクローナル抗体のサブタイピング:市販のイムノクロマト法を使ったサブタイピング試薬(イソストリップ:ロシュ社)を使い、PBS(−)で10倍希釈した培養上清希釈液150μLを試料として分析した。ハイブリドーマ0011の培養上清に含まれるモノクローナル抗体のサブタイプはIgM κ、ハイブリドーマ0014の培養上清に含まれるモノクローナル抗体のサブタイプはIgG1 κであった。
(11)二次スクリーニングに使用する皮膚糸状菌ホルマリン標本・塗沫標本の調製:皮膚糸状菌ホルマリン標本は以下のように調製した。サブローデキストロース寒天スラント上に増生した各種皮膚糸状菌の菌塊をそれぞれ培地と一緒に中性緩衝10%ホルマリン溶液で1日固定後、アルコール70%、80%、90%、100%、100%、100%、100%アルコール槽へ各2時間ずつ浸漬して脱水し、次にキシレン槽3槽に各2時間で浸漬し透徹を行った。次いでパラフィン槽4槽各2時間浸漬しパラフィンを浸透させ、さらに溶解したパラフィンをいれた包埋皿に菌と培地の塊を入れてパラフィンの固化を待ち、パラフィンブロックを作製した。次いで4μmに薄切して、スライドグラス上に皮膚糸状菌ホルマリン固定パラフィン標本を作成した。
塗沫標本は以下のように調製した。滅菌生理的食塩水で少し濡らした清潔な綿棒でサブローデキストロース寒天スラント上に増生した各種皮膚糸状菌を擦り取るように採取し、スライドグラスに押しつけ、搾り出すように綿による摩擦面を転がす要領で塗沫し、すぐに95%エタノール液中で30分固定することにより作成した。
(12)免疫染色によるモノクローナル抗体の二次スクリーニング:皮膚糸状菌のホルマリン固定パラフィン標本はあらかじめ脱パラフィン操作を実施し、免疫染色を実施した。0.3%過酸化水素加メタノールに30分浸漬し、水洗した後に10%(v/v)正常ウサギ血清を添加したPBSを切片上に滴下し、室温で30分置いた。PBSで洗浄後、ハイブリドーマ培養上清0011、0014はPBSで50倍希釈し、室温湿室内で1時間反応させた。PBS洗浄後、ENVISION+(ダコ社)を標本上に滴下し、室温湿室内で1時間反応させた。PBSで洗浄後、0.02%(w/v)3,3‘−ジアミノベンジジン(以下 DAB)と0.003%(w/v)過酸化水素を含むPBS中でときどき鏡検しながらおよそ5分発色させた。水洗後、エタノールにて脱水、キシレン透徹を順に実施し、嫌水性封入剤(ビオライト)を用いて封入を行った。鏡検は10x20倍と10x40倍で観察し、茶褐色か黄褐色に染色された部位が確認できた場合を陽性、わずかに染まったものを弱陽性、染色を確認できなかった場合を陰性と判定した。表3、表4に判定結果を示す。
0011、0014いずれのハイブリドーマ培養上清も検討した全てのホルマリンおよび塗沫標本ともに弱陽性・陽性であり、これらハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体はTrichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytes、Microsporum canis、Epidermophyton floccosumの菌種すべてに反応性を有し、免疫染色法で検出可能であった。
実施例2:ELISAプレートに固定化した過ヨウ素酸処理Trichophyton rubrumアレルゲンおよびTrichiphyton mentagrophytesアレルゲンのモノクローナル抗体を用いた検出
上記実施例1(6)「抗体産生ハイブリドーマのELISAによる一次スクリーニング」で用いたものと同じTrichophyton rubrumアレルゲン吸着EIA用プレートまたはTrichiphyton mentagrophytesアレルゲン吸着EIA用プレートのウェルに、0.05Mメタ過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を50μl加え、4℃で一晩反応させ、抗原に含まれる糖を酸化した。PBSで洗浄し、蒸留水で4倍希釈したブロックエースを加え室温で1時間ブロッキングを行ったのち、前記実施例1(6)「抗体産生ハイブリドーマのELISAによる一次スクリーニング」に述べた方法と同様にして各モノクローナル抗体含有培養上清の結合性を調べた(図1、図2)。その結果、抗原未処理ではいずれのクローンでもELISAプレート固定化アレルゲンの検出が可能であったが、抗原を過ヨウ素酸処理するとモノクローナル抗体0011では、抗原を過ヨウ酸処理しても結合性が低下することは無く検出可能であったが、モノクローナル抗体 0014では結合性が低下し検出力が低下した。
実施例3:ELISAプレートに固定化したタンパク質分解酵素処理Trichophyton rubrumアレルゲンおよびTrichiphyton mentagrophytesアレルゲンのモノクローナル抗体を用いた検出
前記実施例1(6)「抗体産生ハイブリドーマのELISAによる一次スクリーニング」に述べた方法と同じTrichophyton rubrumアレルゲンまたはTrichiphyton mentagrophytesアレルゲンのウェルに100μg/mlのプロナーゼ(Pronase カルビオケム社、71000PUK/g、PBSで希釈)を50μl加え、37℃で2時間反応させ、抗原のタンパク質を分解した。PBSで洗浄し、蒸留水で4倍希釈したブロックエースを加え室温で1時間ブロッキングを行ったのち、前記実施例1(6)「抗体産生ハイブリドーマのELISAによる一次スクリーニング」に述べた方法に述べた方法と同様にして、各モノクローナル抗体含有培養上清の結合性を調べた(図3、図4)。その結果、モノクローナル抗体0011、0014ともに抗原のプロナーゼ処理によって結合性に変化はなく、ELISAプレート固定アレルゲンを検出することができた。
実施例4:サンドイッチEIA法による菌検出
(1)菌試料の調製:皮膚糸状菌Trichophyton rubrum(T.r.と略記 IFO番号9185、32409)、Trichophyton mentagrophytes(T.m.と略記 IFO番号6202、32410)、Microsporum canis(M.c.と略記 IFO番号32463)、Epidermophyton floccosum(E.f.と略記 IFO番号32461)、Candida Albicans(C.a.と略記 ATCC番号90028)所定の方法でアンプルから復元し、サブローデキストロース寒天スラント(ベクトンディキンソン社)に接種し、室温で1週間培養した。またEscherichia coli(E.c.と略記 IFO番号13500)、Streptococcus faecalis(S.f.と略記 IFO番号12968)、Bacillus subtilis(B.s.と略記 IFO番号3026)は所定の方法でL−乾燥アンプルより復元し、LB寒天培地シャーレ(ポリペプトン10g酵母エキス5g塩化ナトリウム10g寒天末15gを1Lの精製水にて溶解後高圧滅菌し、10cmφ滅菌シャーレに無菌的に分注しゲル化させたもの)上で30℃1日間培養した。
得られた菌はそれぞれ滅菌された10μLディスポーザブルループで一掻き分採取し、蒸留水で10倍希釈したブロックエース(雪印乳業)5mlに十分縣濁し、さらに本菌縣濁液をそれぞれ5、25、125、625倍希釈したものをEIA試料として用いた。またT.rubrumアレルゲンを100PNU/mlになるよう同様に希釈した5、25、125、625倍希釈した試料も併せて用いた。
(2)0014培養上清の調製:液体窒素中で凍結保存されていたハイブリドーマ0014の入ったチューブは−80℃1時間保存後、37℃の温湯中ですばやく融解させた。それぞれ10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地10mlの入った遠心管中に全量入れ、ピペット操作で細胞縣濁した。150xg 5分遠心し、上清を廃棄後、5mlの10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地にピペット操作で細胞を浮遊させ、底面積25cm2浮遊細胞培養用フラスコにそれぞれ播種し37℃5%炭酸ガス濃度下で培養した。2継代同培地で培養後、L―グルタミン1.17g/Lを含むCD−Hybridoma Medium(インビトロジェン社)に培地を代えて馴化を行い、さらに3継代同培地で培養した。その後培地15mlで細胞浮遊させ底面積75cm2浮遊細胞培養用フラスコに継代培養し、次いで培地45mlで細胞浮遊させ底面積225cm2浮遊細胞培養用フラスコに継代培養し、最終培地200mlで細胞浮遊させ底面積225cm2浮遊細胞培養用フラスコ4個で7日間培養を行い抗体を培地中に十分分泌させた。培養により得られた細胞培養液を50ml遠心管4本に移し700xg 10分遠心分離し、ハイブリドーマ培養上清200mlを得た。
(3)0014精製抗体の調製:得られた培養上清はNaCl 35gと1M ホウ酸緩衝液 pH9を10ml加えて溶解混合し、0.8μmのフィルターろ過を行った。あらかじめ3M NaClを含む50mMホウ酸緩衝液(pH9:以下 結合緩衝液)で平衡化されたrProteinAセファロースFastFlow(アマシャムバイオシステムズ社製)をカラムに1ml充填し、培養上清全量を流速1ml/分でカラムに通液した。次いで5mlの結合緩衝液でカラム洗浄後、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3)を同流速で通液してカラムより抗体を溶出させ、抗体を含む溶出液2mlを得た。ただちに1M トリス緩衝液(pH9) 0.4mlを加え、0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを含むPBS 1Lに対して透析を実施した。OD280nmの吸収により蛋白量を算出した結果、得られた0014精製抗体は7.2mgであった。
(4)精製抗体の電気泳動分析:5%SDSおよび25%(v/v)グリセロールを含む0.156Mトリス−塩酸緩衝液(pH6.8)10容に2−メルカプトエタノール1容0.1%(w/v)ブロムフェノールブルー水溶液を1容加えてサンプル電気泳動用緩衝液とした。精製抗体1μlに精製水9μLとサンプル電気泳動用緩衝液10μL加え、95℃で5分処理した後、10−20%のポリアクリルアミドグラジエンドゲル中で電気泳動した。電気泳動後のゲルはクマジー染色を行ってゲル中の蛋白を可視化した。その結果、抗体の重鎖と軽鎖に相当するバンドのみが観察され、不純物に起因する他のバンドは含んでいないことが分かった。
(5)ビオチン化0014抗体の調製:2.8mg/mlの抗体液0.5mlに1M 炭酸水素ナトリウム溶液50μLを加え混合後、次いで蒸留水にて6.7mg/100μL濃度に溶解したBiotin−XX−Sulfosuccinimidyl ester(同仁化学)を1.5μL添加し、緩やかに攪拌しながら室温で4時間反応させた。あらかじめPBSにて平衡化しておいたNAP−5カラム(アマシャムバイオサイエンス社)に全量載せ、PBS1mlで試料を溶出させ、ビオチン化0014抗体1.2mgを得た。
(6)サンドイッチEIAによる菌縣濁試料の測定:0014精製抗体は50mM 炭酸緩衝液(pH9.6)で10μg/mlになるよう希釈し、96穴ELISAプレート(#9018 コーニング社)の各ウエルにに50μLづつ分注、室温1時間放置し、プレートに抗体を固相化した。ウエル内の液体を除去後、次いで蒸留水で4倍に希釈したブロックエース(雪印乳業)を300μLづつ各ウェルに分注し、室温1時間放置し、ブロッキングを行った。ウエル内の液体を除去し、次いで洗浄液 300μL分注・廃棄を3回繰り返して各ウエルを洗浄後、試料を50μLづつウェルに分注し固相抗体と1時間室温で反応させた。ウエル内の液体を除去し、次いで洗浄液 300μL分注・廃棄を3回繰り返して各ウエルを洗浄後、蒸留水で10倍に希釈したブロックエースで1μg/ml濃度に希釈したビオチン化0014抗体を50μLづつウェルに分注し室温1時間反応させた。ウエル内の液体を除去し、次いで洗浄液 300μL分注・廃棄を3回繰り返して各ウエルを洗浄後、蒸留水で10倍に希釈したブロックエースで5000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(KPL社)を50μLづつウェルに分注し室温1時間反応させた。ウエル内の液体を除去し、次いで洗浄液 300μL分注・廃棄を4回繰り返して各ウエルを洗浄後、3,3‘−5,5’−テトラメチルベンジジン(以下TMB)を含む西洋わさびペルオキシダーゼ基質液TMB+(DAKO社)を各ウエル50μLづつ分注し、室温遮光下反応させた。反応10分後1N硫酸を各ウエル50μLづつ分注し、酵素反応を止め、主波長450nm副波長650nmで各ウエルの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定を行った。結果を表5、表6に示す。
皮膚糸状菌とT.r.アレルゲンを測定試料としたとき希釈系列でレスポンスが認められたが、他の菌では認められなかった。つまりTrichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytesのみならず、Microsporum canis、Epidermophyton floccosum4種に渡る皮膚糸状菌を1種類の抗皮膚糸状菌モノクローナル抗体を使ったイムノアッセイですべて検出できた。
実施例5:爪白癬患者爪での免疫染色
臨床所見から爪白癬と診断された患者から採取された爪はホルマリン固定後、定法に従いパラフィン包埋し、3μm薄切後スライドグラス上に爪白癬パラフイン標本を作製した。免疫染色は実施例1(11)記載の方法で、ハイブリドーマ培養上清の代わりに実施例4(3)で調製した0014精製抗体を0.1%(w/v)牛血清アルブミン、0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを含むPBS(−)で100μg/mlとなるよう調製した抗体液をPBSで5、10、25、50、100、200、500、1000倍希釈して用い、菌の染色像とそれ以外のバックグランドとの対比を行った。結果は表7に示す。染色性が認められないものは(−)、わずかに着色が認められるものは(±)、着色が認められるものは染色強度に応じ(+) < (++) < (+++)と3段階で表記した。抗体濃度1乃至20μg/mlでバックグランドと菌を識別することが可能であった。
実施例6:爪白癬患者爪を用いた抗原賦活化処理後の免疫染色
実施例5で用いた爪白癬パラフィン標本を脱パラフィン処理後、0.05M マレイン酸緩衝液pH5.5で2%(W/V)濃度で溶解したヤタラーゼTM(大関酒造)中で37℃ で30分処理を行った。PBSで洗浄後、実施例5と同様の方法で0014精製抗体を0.1%(w/v)牛血清アルブミン、0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを含むPBS(−)で100μg/mlとなるよう調製した抗体液をPBSで10、25、50、100、200、500、1000倍希釈して用い、菌の染色像とそれ以外のバックグランドとの対比を行った。結果は表8に示す。実施例5に比べと抗体濃度4乃至10μg/mlでヤタラーゼ処理を実施することで染色は明瞭となった。
実施例7:爪白癬患者爪を用いた抗原賦活化処理効果
実施例5で用いた爪白癬パラフィン標本を脱パラフィン処理後、以下の前処理を行ったのち実施例5と同様な方法で0014精製抗体を4μg/mlになるよう希釈して免疫染色を実施した。(1)前処理なし(2)1%(W/V)メタ過ヨウ素酸ナトリウム水溶液で常温10分浸した後PBSで洗浄する(過ヨウ素酸処理)(3)0.05M トリス塩酸緩衝液pH7.6で0.1%(W/V)で溶解したトリプシン(SIGMA社)を37℃30分浸した後PBSで洗浄する(トリプシン処理)(4)予め加温した0.01Mクエン酸緩衝液pH6.0に浸した状態で電子レンジ500W出力5分おきに緩衝液を追加しながら計10分照射し、その後30分室温で放置する(マイクロウエーブ処理)。
結果は表9に示す。トリプシン処理とマイクロウエーブ処理で無処理に比べ染色は明瞭となった。
実施例8:鱗屑試料を用いたサンドイッチEIAによる菌検出
臨床所見から足白癬と診断された患者より採取された鱗屑(表皮が剥けた部分のこと)と健常者足から採取された皮膚片を1.5ml用ポリプロピレン製チューブにそれぞれ1片入れ、予めPBSで溶解し2%(W/V)に調整したトリプシン溶液200μLを添加し、鱗屑に十分トリプシン溶液が接触するまで攪拌を行った後、37℃210分間放置し、酵素処理を行った。次いで該チューブを沸騰水中で15分間加熱し、同時に酵素の不活性化を行った。チューブを2000xgにて1分遠心分離して得られた上清160μLを回収し、これを鱗屑抽出液とした。一方遠心後の残渣が残っているチューブにPBSを200μL添加してよく攪拌し、次いでチューブを2000xgにて1分遠心分離して得られた上清180μLを回収し、鱗屑洗液とした。これら4種類を試料として実施例4記載のサンドイッチEIA法に従い分析作業を行った。酵素反応停止後マイクロプレートリーダーで波長450nmを測定した結果を表10に示す。足白癬患者鱗屑抽出液および鱗屑洗浄液でシグナルが認められ、一方健常者鱗屑抽出液および鱗屑洗浄液ではバックグランドと同等のシグナルしか認められなかった。従来顕微鏡を使用しなければできなかった鱗屑試料での足白癬患者と健常者の鑑別が、イムノアッセイという顕微鏡を使用しない手法で可能であった。
実施例9:足白癬患者靴下を試料としたサンドイッチEIAによる菌検出
(1)靴下洗浄液の調製
臨床所見から足白癬と診断された患者ボランティア(抗真菌剤クリーム治療開始3日目)に未使用の抗菌靴下(綿、アクリル、ナイロン、ポリウレタン素材、バイオシルTM加工(繊維製品衛生加工協議会承認番号73292)、サイズ24〜26cm)を着用させ、さらに患者が日常使用している靴を履いた状態で休憩・移動・デスクワークを含む軽作業に6時間従事させ、その後靴下を回収した。該靴下片足分を洗浄液(0.05%TWEEN20を含むPBS)100mlに浸漬し室温で10分間攪拌・洗浄した。洗浄後靴下と洗浄液を分離し、靴下洗浄液25mlを得た。一方未使用未着用の抗菌靴下も片足分を洗浄液100mlに浸漬し、装着靴下と同様な操作で未装着靴下洗浄液を調製した。
(2)抗皮膚糸状菌抗体結合磁性ビーズの調製
活性化磁性ビーズDynaBeads M−280 Tosylactivated(ダイナル社製)2x109/ml10mlをよく攪拌した後ポリプロピレン製15ml遠沈管に移し、遠沈管の蓋をした状態で磁性スタンド(MagicalTrapperTM 東洋紡績製)にセットし2分放置した。磁性ビーズが遠沈管側面に凝集したことを確認後、上清を廃棄した。次いで10ml 0.1Mリン酸緩衝液pH7.4を遠沈管に分注し、攪拌して磁性ビーズを分散させた後、0014精製抗体6mgを加え、遠沈管に蓋をしてさらに攪拌を行った。ひきつづき37℃インキュベータ内に設置した傾斜回転機にセットし遠沈管ごと低速で連続的に転倒混和させながら24時間放置し抗体をビーズに結合させた。次いで遠沈管を磁性スタンドにセットし2分放置し、磁性ビーズが遠沈管側面に凝集したことを確認後、上清を廃棄した。0.1%(W/V)牛血清アルブミンを含む0.1Mリン酸緩衝液pH7.4 10mlを遠沈管に分注し、攪拌して磁性ビーズを分散させた後、4℃5分放置し、次いで遠沈管を磁性スタンドにセット後2分放置し、磁性ビーズが遠沈管側面に凝集したことを確認後、上清を廃棄し、さらに0.1%(W/V)牛血清アルブミンを含む0.1Mリン酸緩衝液pH7.4 10mlを遠沈管に分注し、同様の操作により上清を廃棄した。0.1%(W/V)牛血清アルブミンを含む0.2Mトリス緩衝液pH8.5 10mlを分注し十分攪拌した後、37℃インキュベータ内に設置した傾斜回転機にセットし遠沈管ごと低速で連続的に転倒混和させながら4時間放置し、磁性ビーズ上の未反応のトシル基をブロックした。次いで遠沈管を磁性スタンドにセットし2分放置し、磁性ビーズが遠沈管側面に凝集したことを確認後、上清を廃棄した。最後に0.1%(W/V)牛血清アルブミン、0.05%(W/V)アジ化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液pH7.4 10mlを遠沈管に分注し、攪拌して磁性ビーズを分散させて、抗皮膚糸状菌抗体結合ビーズを得た。
(3)靴下洗浄液を試料とした皮膚糸状菌分離
15ml遠沈管に(1)で調製した靴下洗浄液10mlを分注し、次いで抗皮膚糸状菌抗体結合ビーズ2x108になるよう(2)で調製した抗体結合ビーズを添加した。遠沈管に蓋をして傾斜回転機にセットし遠沈管ごと低速で連続的に転倒混和させながら室温1時間放置した。次いで遠沈管を磁性スタンドにセットし2分放置し、磁性ビーズが遠沈管側面に凝集したことを確認後、上清を廃棄した。洗浄液1mlを遠沈管に分注し、攪拌して磁性ビーズを分散させビーズを洗浄した。得られた磁性ビーズ縣濁液は1.5mlポリプロピレン製チューブに移し、次いでチューブを磁性スタンドにセット後2分放置し、磁性ビーズがチューブ側面に凝集したことを確認後上清廃棄し、さらに洗浄液 1mlをチューブに分注し攪拌してビーズ洗浄を行った。同様の洗浄操作をさらに1回繰り返し、洗浄液 1mlに縣濁された分離処理済み抗皮膚糸状菌抗体結合ビーズを得た。また同時に未装着靴下洗浄液とPBSを試料とし、それぞれ磁性ビーズによる分離操作を実施した。
(4)ビオチン化0014抗体による菌検出
分離処理済みの抗皮膚糸状菌抗体結合ビーズ縣濁液の入ったチューブは磁性スタンドにセットして2分放置後、磁性ビーズが遠沈管側面に凝集したことを確認し、上清を廃棄した。次いで蒸留水で10倍に希釈したブロックエースで2μg/ml濃度に希釈したビオチン化0014抗体を各500μL分注し蓋をして十分攪拌して分散させた後、傾斜回転機にセットしチューブごと低速で連続的に転倒混和させながら室温30分放置した。その後洗浄操作としてチューブを磁性スタンドにセット後2分放置し、磁性ビーズがチューブ側面に凝集したことを確認後上清廃棄し、さらに洗浄液 1mlをチューブに分注し攪拌してビーズ洗浄を行った。同様の洗浄操作を2回繰り返してビーズを洗浄し、磁性スタンドを使って磁性ビーズと上清を分離廃棄後、蒸留水で10倍に希釈したブロックエースで1000倍に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(KPL社)を500μL分注し、蓋をして十分攪拌して分散させた後、傾斜回転機にセットしチューブごと低速で連続的に転倒混和させながら室温30分放置した。その後洗浄操作としてチューブを磁性スタンドにセット後2分放置し、磁性ビーズがチューブ側面に凝集したことを確認後上清廃棄し、さらに洗浄液 1mlをチューブに分注し攪拌してビーズ洗浄を行った。同様の洗浄操作を3回繰り返してビーズを洗浄し、磁性スタンドを使って磁性ビーズと上清を分離廃棄後、TMBを含む西洋わさびペルオキシダーゼ基質液TMB+(DAKO社)を各100μLづつ分注し、十分攪拌した後室温遮光下反応させた。反応10分後1N硫酸を各100μLづつ分注して酵素反応を止めた。次いでチューブを磁性スタンドにセット後2分放置し、磁性ビーズがチューブ側面に凝集したことを確認後、上清回収して未使用のポリスチレン製ELISAプレートのウェルにそれぞれ分注した。主波長450nm副波長650nmで各ウエルの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定を行った。測定した吸光度を表11に示す。対照となるPBSや未装着靴下洗浄液に比して患者靴下洗浄液2倍高い吸光度が認められ、洗浄液中の皮膚糸状菌を検出することができた。PBS試料でも吸光度が認められたのは磁性ビーズ自体のペルオキシダーゼ様活性によるものと考えられ、アルカリフォスファターゼやβガラクトシダーゼなど別の酵素検出系を用いればさらにS/N比よく検出できると考えられた。
実施例10:足白癬患者装着靴下洗浄液、未装着靴下洗浄液、洗浄液の液体培養後のELISA分析
(1)抗皮膚糸状菌抗体結合磁性ビーズ試料の調製
実施例6(3)記載の方法で足白癬患者装着靴下洗浄液・未装着靴下洗浄液10mlと磁性ビーズを接触させたのち分離し、それぞれ分離ビーズを洗浄後、100μLのPBSに縣濁し、足白癬患者装着靴下洗浄液分離ビーズ、未装着靴下洗浄液分離ビーズとした。
(2)各試料を用いた液体培地を使った培養
クリーンベンチ内で5本の培養用滅菌済み25cm2フラスコに滅菌したサブローデキストロース液体培地各2mlを分注し、次いで足白癬患者装着靴下洗浄液、未装着靴下洗浄液、PBS、足白癬患者装着靴下洗浄液分離ビーズ、未装着靴下洗浄液分離ビーズを各0.05ml添加し、25℃で6日間放置し、培養を行った。
(3)サンドイッチEIAによる分析
足白癬患者装着靴下洗浄液、未装着靴下洗浄液、液体培養後の足白癬患者装着靴下洗浄液添加培養液、未装着靴下洗浄液添加培養液、PBS添加培養液、足白癬患者装着靴下洗浄液分離ビーズ添加培養液、未装着靴下洗浄液分離ビーズ添加培養液計7種類を試料として用い、蒸留水で10倍に希釈したブロックエースで2倍希釈した後、実施例4記載のサンドイッチEIA法に従い分析作業を行った。酵素反応停止後マイクロプレートリーダーで主波長450nm副波長650nmを測定した結果を表12に示す。足白癬患者装着靴下洗浄液はそのままサンドイッチEIAで測定してもほとんど未装着と差が認められなかったが、試料を液体培地中で培養することによりシグナルが増強された。また抗皮膚糸状菌抗体結合磁性ビーズで洗浄液試料から菌分離後培養したものでは未装着試料との差がさらに大きくなり、より明瞭な差として検出された。
実施例11:苛性カリ鏡検で菌量が層別された鱗屑試料を用いたサンドイッチEIAによる菌検出
10%水酸化カリウム溶液により足白癬患者病変部より採取した鱗屑片角化層を溶解させ顕微鏡下で菌糸を確認する方法(苛性カリ鏡検)にて菌量を少、中、大に層別した患者より採取された鱗屑試料(重量としておよそ10〜30mg)を用いた。対照として苛性カリ鏡検で菌が検出されなかった皮膚病変の鱗屑を用いた。実施例8に記載された方法に準じ、鱗屑を処理し鱗屑抽出液を調製した。すなわち鱗屑はネジ口でOリングの付いた1.5ml用ポリプロピレン製チューブにそれぞれ1片入れ、予めPBSで溶解し2%(W/V)に調整したトリプシン溶液200μLを添加し、鱗屑に十分トリプシン溶液が接触するまで攪拌を行った後、37℃180分で放置して酵素処理を行った。次いで該試料チューブを沸騰水中で15分間加熱し、同時に酵素の不活性化を行った。そして該チューブを2000xgにて1分間遠心分離して得られた上清160μLを回収し、鱗屑抽出液とした。これら鱗屑抽出液を試料として実施例4記載のサンドイッチEIA法に従い、分析作業を行った。酵素反応停止後マイクロプレートリーダーで650nmを副波長、450nmを主波長として測定した結果を図8に示す。顕微鏡観察で見られた菌量に応じてOD値平均が上昇し、相関が認められた。また菌量 少、中分類で対照よりもOD低値を示す検体が認められたが、鱗屑自体 同一患者から採取されたとはいえ、苛性カリ鏡検した鱗屑とは異なるため、たまたま菌のいない鱗屑をELISAで測定した可能性も考えらた。鱗屑を複数箇所採取して数片使用して鱗屑抽出液調製を行い、同測定を行えばさらに菌検出力向上が図れると考えた。
実施例12:苛性カリ鏡検で菌量が層別された爪試料を用いたサンドイッチEIAによる菌検出
10人の爪白癬患者から得られた爪片の一部をそれぞれ10%水酸化カリウム溶液により爪片を溶解させ、顕微鏡下で菌糸を確認する方法(苛性カリ鏡検)にて爪中の菌量を少3例、中3例、大4例に患者を層別し、爪片試料として用いた。対照として苛性カリ鏡検で菌が検出されなかった健常人の爪片3例を用いた。実施例8に記載された方法に準じ、爪片を処理し爪抽出液を調製した。すなわち爪片はネジ口でOリングの付いた1.5ml用ポリプロピレン製チューブに患者ごとにそれぞれ入れ(爪重量として1サンプルあたり21mg〜125mg)、予めPBSで溶解し2%(W/V)に調整したトリプシン溶液200μLを添加し、爪片に十分トリプシン溶液が接触するまで攪拌を行った後、37℃180分で放置して酵素処理を行った。次いで該試料チューブを沸騰水中で15分間加熱し、同時にトリプシンの不活性化を行った。そして該チューブを2000xgにて1分間遠心分離して得られた上清160μLを回収し、爪抽出液とした。これら爪抽出液を試料として実施例4記載のサンドイッチEIA法に従い、分析作業を行った。酵素反応停止後マイクロプレートリーダーで650nmを副波長、450nmを主波長として測定した結果を図9に示す。対照例に比して、菌量 少、中、高分類ともに患者群のOD値平均は高く、本サンドイッチEIA法を用いることで爪試料中の菌有無も検出することができた。
実施例13:同一足白癬患者細切鱗屑を用いた各種酵素処理と加熱処理を併用した場合でのサンドイッチEIA分析比較
苛性カリ鏡検にて菌量を大に層別された患者より採取された鱗屑試料をかみそり刃で細切し、微細鱗屑を調製した。ネジ口でOリングの付いた1.5ml用ポリプロピレン製チューブにそれぞれ重量としておよそ10〜20mgになるよう微細鱗屑を入れ、鱗屑重量を記録した。酵素処理に用いた酵素液は1)PBSで2%(W/V)となるよう溶解したプロナーゼ溶液 2)組織染色用プロテナーゼK溶液(DAKO社 製 酵素濃度0.4mg/ml)の2種である。実施例8に記載された方法に準じ、各鱗屑を各種酵素処理し鱗屑抽出液を調製した。すなわちポリプロピレン製チューブに入れた鱗屑に酵素液200μLを添加し、鱗屑に十分酵素液が接触するまで攪拌を行った後、37℃180分で放置して酵素処理を行った。次いで該試料チューブを沸騰水中で15分間加熱し、同時に酵素の不活性化を行った。そして該チューブを2000xgにて1分間遠心分離して得られた上清160μLを回収し、鱗屑抽出液とした。酵素処理を行わない対照条件では酵素を含まないPBSを酵素液の代わりに添加し同様に操作を行った。これら鱗屑抽出液を試料として実施例4記載のサンドイッチEIA法に従い、分析作業を行った。酵素反応停止後マイクロプレートリーダーで450nmを主波長として測定した結果を表13に示す。サンドイッチEIAで検出する場合はかみそり刃で細切するなど物理的な破砕を行った試料であれば、酵素処理有無に関わらず加熱処理だけで感度良くサンドイッチEIAで検出可能であった。
実施例14:各種白癬菌のスライドカルチャー標本を使った抗体染色
各種白癬菌7種 Trichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytes、Trichophyton violaceum、Trichophyton tonsurans、Microsporum gypseum、Microsporum canis、Epidermophyton floccosumでスライドカルチャーを実施した。すなわち平板サブロー寒天培地を8mm画に切り、培地片を予め滅菌したスライドガラス上に載せ、各菌を培地片の四隅に接種した。滅菌したカバーガラスで覆い、加湿箱の中に静置し室温で1週間培養を行った。スライドカルチャーしたスライドグラスを99.5%エタノール固定した。また、寒天をホルマリン固定後、パラフィン包埋し薄切切片を作製した。実施例5と同様な方法で0014精製抗体を4μg/mlになるよう希釈して免疫染色を実施した。染色結果を表14に示す。用いた7種全ての白癬菌、エタノール固定ホルマリン固定どちらの固定方法でも染色性が認められ、スライドカルチャーでは認められた菌糸や分生子とも染色されていた。0014抗体は広範な白癬菌検出に有用と考えられた。
本発明の皮膚糸状菌の検出方法、検出用試薬および抗原性賦活化方法は、臨床検査の分野において、爪白癬、足白癬など皮膚科専門医が顕微鏡を用いてしか診断できなかった皮膚糸状菌症(水虫)に、特異的で新規な検出方法を提供する。該方法により水虫起因菌存在有無・量情報が得られ、より正確な病態把握・治療方法選択等を可能とする。また水虫検査薬の開発・提供が可能となり、多検体を効率良く検査を行なうことができる。
0011モノクローナル抗体含有培養上清を、過ヨウ素酸処理抗原固相化プレートおよび処理なし抗原固相化プレートと作用させたときの反応性を調べたものである。 0014モノクローナル抗体含有培養上清を、過ヨウ素酸処理抗原固相化プレートおよび処理なし抗原固相化プレートと作用させたときの反応性を調べたものである。 0011モノクローナル抗体含有培養上清を、プロナーゼ処理抗原固相化プレートおよび処理なし抗原固相化プレートと作用させたときの反応性を調べたものである。 0011モノクローナル抗体含有培養上清を、プロナーゼ処理抗原固相化プレートおよび処理なし抗原固相化プレートと作用させたときの反応性を調べたものである。 0014モノクローナル抗体含有培養上清で臨床材料から分離されたTrichophyton rubrum培養菌の塗沫標本を免疫染色し、10x40倍で観察したときの画像である。 0014モノクローナル抗体含有培養上清で爪白癬患者爪ホルマリン固定標本を抗原賦活化処理としてヤタラーゼで処理を実施後免疫染色し、20x3倍で観察したときの画像である。 0014モノクローナル抗体含有培養上清で爪白癬患者爪ホルマリン固定標本を抗原賦活化処理なしで免疫染色し、20x3倍で観察したときの画像である。 0014モノクローナル抗体を使ったサンドイッチEIA法により白癬患者あるいは非白癬患者の鱗屑試料抽出液を測定し、得られたELISA ODを鱗屑中の菌量に層別して分布と平均値をグラフ化したものである。 0014モノクローナル抗体を使ったサンドイッチEIA法により白癬患者あるいは非白癬患者の爪片抽出液を測定し、得られたELISA ODを爪片中の菌量に層別して分布と平均値をグラフ化したものである。

Claims (11)

  1. 以下に示す皮膚糸状菌3種以上と反応性を有する抗体を使用することを特徴とする皮膚糸状菌の検出方法。
    Trichophyton rubrum
    Trichophyton mentagrophytes
    Microsporum canis
    Epidermophyton floccosum
  2. 以下に示す皮膚糸状菌4種すべてと反応性を有する抗体を使用することを特徴とする請求項1に記載の皮膚糸状菌の検出方法。
    Trichophyton rubrum
    Trichophyton mentagrophytes
    Microsporum canis
    Epidermophyton floccosum
  3. 使用する抗体が1種類の抗皮膚糸状菌抗体あるいは同一の抗原認識部位を有する2種類以上の抗皮膚糸状菌モノクローナル抗体の組み合わせであることを特徴とする請求項1または2に記載の皮膚糸状菌の検出方法。
  4. 抗体が受託番号FERM P−19057として寄託されたハイブリドーマが産生する抗体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚糸状菌の検出方法。
  5. 以下に示す皮膚糸状菌3種以上と反応性を有する抗体を含有することを特徴とする皮膚糸状菌の検出用試薬。
    Trichophyton rubrum
    Trichophyton mentagrophytes
    Microsporum canis
    Epidermophyton floccosum
  6. 以下に示す皮膚糸状菌4種すべてと反応性を有する抗体を含有することを特徴とする請求項5に記載の皮膚糸状菌の検出用試薬。
    Trichophyton rubrum
    Trichophyton mentagrophytes
    Microsporum canis
    Epidermophyton floccosum
  7. 使用する抗体が1種類の抗皮膚糸状菌抗体あるいは同一の抗原認識部位を有する2種類以上の抗皮膚糸状菌モノクローナル抗体の組み合わせであることを特徴とする請求項5または6に記載の皮膚糸状菌の検出用試薬。
  8. 抗体が受託番号FERM P−19057として寄託されたハイブリドーマが産生する抗体であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の皮膚糸状菌の検出用試薬。
  9. 抗体を用いた皮膚糸状菌検出において予め試料を酵素処理あるいは加熱処理することを特徴とする抗原性の賦活化方法。
  10. 抗体が受託番号FERM P−19057として寄託されたハイブリドーマが産生する抗体であることを特徴とする請求項9に記載の抗原性の賦活化方法。
  11. 皮膚糸状菌検出方法が免疫染色法であることを特徴とする請求項9または10のいずれかに記載の抗原性の賦活化方法。
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