JP2004254612A - 起泡性乳化剤及びこれを用いた気泡含有食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】HLBが6以上であり、主構成脂肪酸が炭素数16〜22の飽和脂肪酸より1種以上選ばれたものよりなるポリグリセリン脂肪酸エステルを起泡性乳化剤として用いること、並びに該起泡性乳化剤により蛋白質、多糖類等のコロイド水溶液を構成成分とする気泡含有食品に対し優れた食感並びに新規なテクスチャーを付与する。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は広汎な加工食品に利用されうる起泡性乳化剤、およびこれを用いてなる気泡含有食品に関する。更に詳しくは、蛋白質、多糖類等のコロイド水溶液において、優れた起泡性及び泡安定性を有した起泡性乳化剤に関し、また、これを用いることで優れた食感ならびに新規なテクスチャーを付与してなる気泡含有食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品のテクスチャーは成分、加工方法など種々の要因によって変化するが、気泡を導入することで、食品の硬さを変え、物性を改変できることも知られている。特に、最近の嗜好は全体的に軟らかいものへと変化しており、軽いボディや滑らかな食感を付与した気泡含有食品が一般的に好まれる傾向にある。このため、様々な嗜好に合わせた気泡含有食品の開発が求められている。
【0003】
従来より気泡含有食品に利用される起泡剤としては、卵白、ゼラチン、ガゼイン、グルテン等の蛋白質、カラギーナン、カラヤガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム等の粘質物といった起泡性を有する食品素材がある。しかし、食品は数種類以上の食品材料や添加物を併用することが一般的であり、この場合、各成分間の相互作用に起因する物理的、化学的な消泡作用により充分に起泡できなくなるといった問題がある。
【0004】
このため、それぞれの製品の仕様に応じて、限られた範囲の配合組成でしか起泡性及び泡安定性を好ましい状態に保つことができないといった欠点があり、多種多様な用途に対して汎用性がないのが一般的である。更に、この様にして調製した気泡含有食品は製造現場における温度管理等が難しく製造工程が複雑になるといった不都合があった。
【0005】
一方、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤には起泡作用があることが広く知られている。例えば、脂肪酸エステル類と増粘性の気泡安定剤を添加して含気性食肉製品を得る方法(特許文献1参照。)、グリセリンモノ飽和脂肪酸エステル及びジグリセリンモノ飽和脂肪酸エステルの特定成分を含有することで風味良好なケーキ類を得る方法(特許文献2参照。)、特定のショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを併用して用いることで起泡した冷菓を得る方法(特許文献3参照。)などが開示されている。しかしながら、各々の食品系において起泡成分や泡安定性を有する成分等の組合わせ、配合組成について検討しているだけであって、真に起泡性及び泡安定性に優れた乳化剤についての検討はされていない。故に、従来知られていた乳化剤が持つ起泡性及び泡安定性は低い水準にあり、特定の加工食品への利用に限定されてしまい、やはり近年の多様化志向に充分な効果が得られていないのが実状である。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−207号公報
【特許文献2】
特開平10−4893号公報
【特許文献3】
特開2002−315514号公報
【0007】
また、本発明の目的に類似する技術としてトレハロース微粒子と水溶性高分子および/または可食性界面活性剤を含有する分散系組成物よりなる気泡含有食品を得る方法(特許文献4参照。)が開示されている。しかしながら、この技術はトレハロース微粒子を用いたものであり食品用乳化剤を必須成分としない点で本発明とは異なる。また、トレハロース微粒子の平均粒径を制御する技術を要するため、調製工程が限定されてしまい、広範囲の気泡含有食品の製造に適する技術とは言い難い。
【0008】
【特許文献4】
特開2000−83637号公報
【0009】
このように、従来知られていた方法では多種多様な加工食品において起泡性、泡安定性等を高度に保持することができず、食感、風味等を適度に調整した気泡含有食品を容易に製造することができないのは明らかである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、多種多様な分野の加工食品において優れた起泡性を与え、化学的、物理的要因により生じる消泡作用を抑制することで気泡の安定化を高度に実現する起泡性乳化剤、及びこれを用いて新規な食感等を付与してなる気泡含有食品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、種々の食品素材が溶解および/または分散した水溶液における起泡性、泡安定性について、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、特定の脂肪酸組成を有したポリグリセリン脂肪酸エステルによって、上記の課題を解決することができるという知見を見出した。
【0012】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、その要旨は、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが6以上であり、且つ、主構成脂肪酸が炭素数16〜22の飽和脂肪酸より1種以上選ばれてなることを特徴とする。更に、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、加工食品を構成するために重要な食品素材である蛋白質や多糖類等からなるコロイド水溶液において、肌理(キメ)の細かい起泡を与え、優れた泡安定性を示すことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の内容としては、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを主成分とする起泡性乳化剤により起泡してなる気泡含有食品を含んでいる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルはHLBが6以上であり、主構成脂肪酸が炭素数16〜22の飽和脂肪酸より1種以上選ばれたものよりなっている。構成脂肪酸中における炭素数16〜22の飽和脂肪酸の含有量としては50重量%以上が好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。50重量%以下では実質的に本発明の効果が期待できない。また、構成脂肪酸の種類、その組み合わせについては特に限定するものではない。
【0015】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルに使用するポリグリセリンは、水酸基価から算出した平均重合度が2以上であれば良いが、好ましくは2〜10の範囲である。
【0016】
本発明に使用するポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量は、コロイド水溶液に対して0.01〜5重量%、特に0.1〜3重量%が好ましい。この範囲であれば、当該食品中の気泡含有率を比較的容易に、また、大幅に変化させることができ、製品の仕様に応じて適当なテクスチャーを与えることができる。しかし、0.01重量%未満では所望の効果が得られ難く、5重量%を超えても効果が頭打ちとなり使用量の増加に伴う効果を期待し得ない。
【0017】
本発明の起泡性乳化剤には、ポリグリセリン脂肪酸エステルの他にグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤を併用することができるが、本発明の効果を阻害しない程度であることが好ましい。
【0018】
本発明の食用に適する高分子素材とは蛋白質、多糖類等であるが、これらは化学修飾等によって改良されたものであってもよく、その製造工程において物理的及び化学的に処理された分解物等も含んでいる。更に、これらは単離、単独の精製品である必要はなく、これらの混合物を用いることができ、場合によっては、後述する食品素材に含まれる形で用いるものを含んでいる。
【0019】
例えば、蛋白質としてはゼラチン、ガゼインナトリウム、卵タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質など、多糖類としては澱粉、化工澱粉類、デキストリン類、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、アラビヤガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、アラビノガラクタン、キサンタンガム、プルラン、デキストラン、カードラン、結晶セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロースなど、また、他の素材としてはポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。さらに、その製造方法としても特に限定するものではない。これらは1種又は2種以上を好適に併用することができる。
【0020】
本発明のコロイド水溶液とは、上記の蛋白質、多糖類等と水を混合し、撹拌、加熱などの任意の方法によって調製することができる。また、これに用いる蛋白質、多糖類等の配合量は、コロイド水溶液とした場合の流動特性等によっても適正量が異なるため、ここで特に限定されるものではなく、通常の使用範囲内で適宜選択できる。
【0021】
更に、該コロイド水溶液に調味料、甘味料等の副原料を添加することができ、後述する食品素材から選ばれた1種または2種以上を好適に併存させておくことが可能である。食品素材としては、例えば、鶏卵類、牛乳・乳製品類、油脂類、いも類、豆類、穀物類、海草類、茸類、野菜類、肉類、魚介類、果実・果汁類、アルコール類などが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらはなま物、半なま物、乾燥物等であっても良く、固体、液体、粉粒体、すり身、ジュース等の形態がいずれも使用できる。
【0022】
これらの食品素材の配合時期も特に制限されるものではなく、起泡中であっても、その前後であってもよい。これらの食品素材は比較的粗い形状であっても、調製工程の混合、撹拌などの操作により破砕されるため、事前に粉砕は必ずしも必要ではないと言えるが、固体や半固体のものを起泡以前に添加する場合には、起泡の妨げとならない様に、切断、粉砕、圧搾等の操作を加えて分割したものを用いるのが好ましい。
【0023】
本発明に係るコロイド水溶液の起泡を行う方法としては、各種ミキサー、ホイッパーで混合、撹拌する方法、スプレー方式で気泡を混入させる方法などがあるが、通常行う方法であれば良く、特に制限なく行うことができる。また、起泡操作は調製工程のいずれの段階で行っても良く、起泡を含有させた後に冷却、加熱、乾燥など既知の操作を行うことができる。
【0024】
本発明の気泡含有食品としては、商品性が付与された最終製品だけでなく加工食品に利用されうる中間製品や起泡処理を施した食品素材等を含み、例えば、フラワーペースト、トッピング材、フィリング材、スプレッド材等に用いられるカスタードクリーム及びホイップドクリーム類、スポンジケーキ、バターケーキ、エンゼルケーキ、シュークリーム、マフィン、ワッフル、バウムクーヘン、ドーナツ、ホットケーキ、カステラ、パン、蒸しパン、餅、煎餅、ビスケット、クッキー、クラッカー、スナック、メレンゲ、マカロン、マシュマロ、泡雪、ヌガー、ブラマンジェ、キャンディー、飴、キャラメル、モナカ、団子、饅頭、大福、くず餅、きんつば、ようかん等の菓子類、ババロア、ムース、プリン、ヨーグルト、アイスクリーム、ソフトクリーム、シャーベット、シェーク等のデザート及び冷菓類、ピューレー、ドレッシング、フルーツソース、ジャム等のソース及びケチャップ類、はんぺん、かまぼこ、ちくわ、薩摩揚げ、つみれ、ミートボール、メンチカツ、中華饅頭、点心、ハンバーグ、ソーセージ、餃子、焼売、飲茶等の挽肉及びすり身からなる畜水産加工食品類、ポテトサラダ、マッシュポテト、ところてん、コンニャク、おろし山芋、クリームチーズ、卵焼、伊達巻、麩、珍味等のその他食品類などが挙げられるが実質的に蛋白質、多糖類を含有する食品であればこれに限定するものではなく、本発明の技術的思想により得られる他の加工食品を含んでいる。
【0025】
次に、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、例示は単に説明用のもので、本発明の適用範囲等を、これらの例によって何ら限定するものではない。実施例及び比較例のポリグリセリン脂肪酸エステルは表1に示したものを用い、試験例1〜2により起泡性及び泡安定性について評価した。
【0026】
【表1】
【0027】試験例1
寒天の1.0%試料水溶液100mlと表1記載の乳化剤をビーカーに取り、ハンドミキサーで3分間泡立てた。起泡直後の比重を求めると共に、泡の肌理を顕微鏡により調べた。また、このものを5℃の恒温槽で1時間放置した後、同様に比重及び泡の肌理を調べた。調製時に充分に起泡しなかったもの、放置後の泡安定性が低かったものについては泡の肌理は調べなかった。泡の肌理は下記の通り4段階に分け評価した。結果を表2に示す。尚、乳化剤を添加しない場合、泡沫と試料水溶液が2層に分離し、充分に起泡しなかった。
◎:極めて良好
○:かなり良好
△:良好
×:不良
【0028】
【表2】
【0029】試験例2
試験例1の寒天試料水溶液の代わりに、大豆蛋白質の10%試料水溶液を用い、更に、泡安定性の試験温度を80℃とした以外は全て試験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
【発明の効果】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを主成分とする起泡性乳化剤を用いることによって、蛋白質、多糖類等のコロイド水溶液からなる多種多様な分野の加工食品を肌理細かく起泡させることができる。また、このものは化学的、物理的要因により生じる消泡作用を受け難く、気泡含有食品の気泡の安定化を実現する。更に、これに付随して得られる効果として作業時間の短縮、調製工程の簡略化が達成できるなど、作業性の改善に結びつくものである。
【0032】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いてなる気泡含有食品は、優れた食感ならびに新規なテクスチャーを有し、近年の嗜好の多様化に充分に貢献できるものである。
Claims (3)
- 食用に適する高分子素材として蛋白質、多糖類等が溶解および/または分散したコロイド水溶液において、優れた起泡性及び泡安定性を有したポリグリセリン脂肪酸エステルを主成分とすることを特徴とする起泡性乳化剤。
- HLBが6以上であり、且つ、主構成脂肪酸が炭素数16〜22の飽和脂肪酸より1種以上選ばれてなることを特徴とする請求項1記載のポリグリセリン脂肪酸エステル。
- 請求項1および2記載のポリグリセリン脂肪酸エステルを主成分とした起泡性乳化剤により起泡してなる気泡含有食品。
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- 2003-02-26 JP JP2003049774A patent/JP2004254612A/ja active Pending
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