JP2004254545A - 酵母エキスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】濃縮の際の褐変や着色を極力防止した酵母エキスの工業的生産に適した製造方法の提供。
【解決手段】酵母の自己消化物または酵素分解物から酵母エキスを製造するに際し、酵母エキスの濃縮を循環式液膜流下型真空濃縮法で行なうことを特徴とする酵母エキスの製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】酵母の自己消化物または酵素分解物から酵母エキスを製造するに際し、酵母エキスの濃縮を循環式液膜流下型真空濃縮法で行なうことを特徴とする酵母エキスの製造方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵母エキスの工業的規模の製造において、液状の酵母エキスを濃縮する際の褐変や着色を極力防止した、風味、外観の良好な酵母エキスを提供する酵母エキスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵母エキスは、酵母の自己消化物や様々な酵素分解物中のエキスと酵母等の不溶物を分離して製造される。不溶物を分離して得られた酵母エキス中の固形分は通常2〜10%(重量%、以下、特に断らない限り同様)程度であり、この状態では保存性や運搬経費等から市販に供するには適当でなく、通常、得られた酵母エキスを濃縮し、この濃縮物をそのまま、あるいは、さらに濃縮後、噴霧乾燥等で乾燥させ、粉末化して市販に供している。
一方、酵母エキスは、原料となる酵母から由来する特有の色調を有している。また、酵母中の旨味成分(遊離アミノ酸、核酸等)を有効に抽出するためのタンパク分解酵素や多糖類分解酵素、核酸生成酵素等を作用させる反応条件によって得られる酵母エキスに着色が伴う。また、得られたエキスを濃縮する際にも、濃縮方法、濃縮条件等によって褐変や着色が起こる。
食品の褐変、着色等には種々の要因があるが、酵母エキスの場合、遊離アミノ酸とブドウ糖、果糖等の還元糖を含んでいることから、遊離アミノ酸と還元糖類との反応、すなわち、アミノカルボニル反応による影響が大きく関与している。一般に、アミノカルボニル反応での褐変や着色は、遊離アミノ酸量とブドウ糖、果糖のような還元糖量およびその比率、空気(酸素)量、温度、時間が大きく影響すると言われており、特に、酵母エキス製造における濃縮は、酵母エキスの褐変や着色に及ぼす影響が大きい。
例えば、冷凍真空濃縮法であれば、温度、空気(酸素)の影響を抑制した方法であるから着色性が最も少なく風味的にも優れた製品ができるが、工業生産的には時間当たりの生産性、製造エネルギーコストが高い。
近年、常温で行う膜濃縮法が開発され活用されているが、膜濃縮は濃縮の進行につれ浸透圧や粘度の増加が生ずるため、蒸発法に比べ濃縮率を高くできない。さらに、常温操作に伴う雑菌汚染を防止し、膜やモジュールの衛生管理に細心の注意を払う必要性があり、洗浄に時間と経費を要する等の問題がある。
このような事情から、一般には熱を加えて水を除くという蒸発濃縮が最も簡便な濃縮法として古くから採用されている。例えば、釜やタンク内に蒸気管を通して加熱する方法、外側に蒸気等のジャケットから加熱しながら撹拌機を備え、撹拌しながら常圧加熱する方法や釜やタンクに真空装置を備え、減圧加熱濃縮等を行い濃縮する方法が多く用いられている。
しかし、例えば、酵素反応直後の固形分3%の酵母エキスを固形分60%にするには、20倍量の水を、6%のものを固形分60%にするには10倍量の水を除去する必要がある。したがって、少量であれば、短時間で濃縮は可能であるが、工業生産的には相当の時間を要し、酵母エキス中のアミノ酸や糖類量や加熱温度、時間にもよるが、これらの方法で酵母エキスを大量濃縮する場合、加熱部と内容物の接触部が絶えず接触されており、着色性が大きい。そのため、製造の過程において空気の存在を少なくしたり、濃縮や殺菌の加熱温度を低くしたり、加熱時間を短くしたり、脱色用活性炭で脱色したり等の種々の対策が行われているが、十分とは言い得ない。
それにもかかわらず、酵母エキスの製造工程における褐変または着色を検討した先行技術としては、加熱してアミノカルボニル反応を積極的に進行させた後、イオン交換樹脂により着色物質を除去する方法(特許文献1)が提案されている程度である。
【0003】
【特許文献1】
国際公開第98/46089号パンフレット
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、濃縮の際の褐変や着色を極力防止した酵母エキスの工業的生産に適した製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため、工業的生産レベルにおける褐変や、着色に最も関与すると考えられる濃縮工程に注目し、濃縮の方法に着目し濃縮酵母エキスの着色性について鋭意検討した。その結果、薄膜減圧濃縮法の1方法である液膜流下型真空濃縮法、特にある条件下での液膜流下型真空濃縮法が、その目的に適していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)酵母の自己消化物または酵素分解物から酵母エキスを製造するに際し、酵母エキスの濃縮を循環式液膜流下型真空濃縮法で行うことを特徴とする酵母エキスの製造方法、
(2)自己消化物または酵素分解物から抽出された酵母エキスを循環式液膜流下型真空濃縮法で一次濃縮し、ついで精製工程に付した後、さらに、循環式液膜流下型真空濃縮法で二次濃縮する上記(1)記載の製造方法、
(3)循環式液膜流下型真空濃縮法による濃縮を、濃縮温度30〜80℃、真空度30〜200トール、濃縮する酵母エキスの粘度1000cps/20℃以下の条件で行う上記(2)記載の製造方法、
(4)一次濃縮を固形分濃度15〜35重量%まで行う上記(2)記載の製造方法、
(5)精製工程が、殺菌、おり下げ、ついで脱臭を行う工程である上記(2)記載の製造方法等を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
用いる酵母の自己消化物、酵素分解物または水抽出物は特に限定するものではなく、自体公知の方法により食用酵母より得られるものいずれでもよい。
食用酵母も特に限定するものではなく、生酵母、自体公知の方法で適宜乾燥した乾燥酵母いずれでもよく、例えば、ワイン酵母、パン酵母、清酒酵母、ビール酵母等が使用できる。
酵母は、前処理なしにそのまま使用してもよく、また、前処理を行なった後に使用してもよい。例えば、水洗後に使用しても、酸、アルカリ、低級アルコール等での洗浄後、水洗して使用してもよい。さらに、例えば、800kg/cm2〜5000kg/cm2の高圧ホモジナイザーで処理した後に使用してもよい。
【0008】
本発明における循環式液膜流下型真空濃縮法は、薄膜減圧濃縮法の一種で、減圧下、加温ないしは加熱しつつ、濃縮すべき液体の、適宜な壁面を伝わる薄膜状の流下と、気液分離を循環的に行う濃縮法であり、例えば、図1に模式的に示す循環式液膜流下型真空濃縮装置を使用して行うことができる。
図1に示すごとく、この装置は、加熱缶1と、蒸発缶2と、循環ポンプ3と、それらに付属する配管部分等から構成されており、加熱缶1はその底部で蒸発缶2と連結している。加熱缶1内は、縦方向に伸長する複数の中空細管4が設けられており、加熱缶1の底部には酵母エキス供給口5、頂部には循環エキス供給口6が設けられている。また、加熱缶1の上部には、蒸気インゼクター7に連結した加熱用の蒸気供給口8、下部には蒸気エゼクター(図示せず)に連結した減圧用の吸引口9と、蒸気ドレイン排水口10が設けられている。蒸発缶の頂部11は上記の蒸気インジェクター7と、また、気液分離器12を介して蒸気ブースター13と連結しており、また、下部は気液分離された液相を溜める液相溜14となっており、液相溜14は循環ポンプ3を介して、循環エキス供給口6と接続されている。また、循環ポンプ3と循環エキス供給口6との間には、濃縮エキス取出パイプ15が接続されている。
この装置を用いて酵母エキスを濃縮するには、酵母エキスを供給口5から、蒸発量に見合う量で、装置内に定量的に供給する。装置内は、蒸気供給口8から供給される蒸気、および吸引口9からの排気により、所定の温度、減圧に維持されている。供給された酵母エキスは、蒸発缶2内の液相溜14、循環ポンプ3および循環エキス供給口6を経て、加熱缶1の頂部に達し、そこから各細管4に分配され、細管4の内壁を伝わって薄膜状で流下する。この管に酵母エキスは加熱され、水分の蒸発が起こり、気相と液相の混合物が生成する。加熱缶1の底部に達した気相と液相の混合物は、ついで、蒸発缶2内に移行し、気液分離が起こり、分離した気相は蒸発缶2の頂部11へ上昇し、液相は液相溜14に集められる。気相は気液分離器(ドレイン分離器)12、蒸気ブースターを経て装置外へ排出される。一方、集められた液相は、循環ポンプ3、循環エキス供給口6介を経て加熱缶1の頂部に達する。このようにして、液相が装置内を循環し、濃縮される。所定の濃度になった濃縮液は濃縮エキス取出パイプ15から取り出される。
【0009】
濃縮条件は、濃縮すべき酵母エキスの処理量等に応じて、加熱温度や真空度を適宜調節して、良好な生産効率で、褐変や着色が極力防止できる範囲から選択する。例えば、酵母エキス5〜15トンを処理する場合、図1に示すごとき装置を使用し、通常、温度40〜80℃、好ましくは45〜60℃、真空度30〜200トール、好ましくは、30〜150トール、濃縮する酵母エキスの粘度1000cps/20℃以下、好ましくは800cps/20℃以下の条件で行うことにより、良好な生産効率で、褐変や着色を極力防止した濃縮が可能となる。温度が40℃以下であれば着色は少ないが、真空度等の条件によっては、水分蒸発が遅れ、濃縮に長時間を要し、逆に80℃以上であれば、濃縮時間は短縮されるが、減圧下でも着色が進行するので適当ではない。真空度は、生産レベルで長期に渡り30トール以下にすることは困難であり、また、200トール以上では、着色度が進行し、好ましくない。また、酵母エキスの成分組成や加熱温度により異なるが、濃縮するにつれて粘度が増加し、固形分濃度が60%で温度が40℃以下では極端に高粘性となり、循環ポンプ能力にもよるが、細管の内壁面を流下するエキスの速度が非常に遅くなり、効率面でも適性でなくなるので、粘度は約1000cps以下好ましくは800cps以下で濃縮を行うことが好ましい。
【0010】
本発明は、限定するものではないが、原料酵母から放線菌産生酵素類と担子菌産生酵素類を用いて得られた酵母の酵素分解物に好適に適用できる。この際、まず、放線菌産生酵素類で分解し、ついで担子菌産生酵素類で分解することが好ましい。さらに詳しくは、原料酵母を、まず、放線菌産生酵素類と接触させ、反応温度およびpHを変化させた2段階で反応させたることにより、5’−ヌクレオチド類の生成量を高めた後、さらに担子菌産生酵素類を反応させると、風味や匂いの良好な酵母エキスが得られる。以下、このようにして得られる酵素分解物を用いる場合を例として、本発明の酵母エキスの製造方法を説明するが、他の酵素分解物や、自己消化物、水抽出物(含熱水抽出物)を使用する場合も同様に実施できる。
原料酵母は、工業的生産性を考慮し、例えば、乾燥酵母の場合、通常、5〜30重量%、好ましくは、10〜25重量%の濃度で、水(例えば、イオン交換水等)に懸濁し、酵素類と接触させる。懸濁液の濃度が低すぎる場合は生産性の低下を招き、また、濃度が高すぎる場合は、粘度が高くなりすぎ、撹拌等が困難となる。
用いる放線菌産生酵素類としては、例えば、ストレプトミセス属に属する菌株を自体公知の方法により培養し、5’−リン酸生成型ヌクレアーゼ、デアミナーゼおよびプロテアーゼを含有する培養物をそのまま、または培養濾液、菌体、菌体破砕物、これらの抽出液、その乾燥物等を使用することができ、あるいは自体公知の方法により5’−リン酸生成型ヌクレアーゼ、デアミナーゼおよびプロテアーゼを必須構成酵素とする酵素類を採取し、粗製のまま、または精製酵素として用いることができる。
培養液は、工業的生産に適した乾燥酵素(水分10%以下)、特に、酵素力価を落とさず粉末化した酵素として用いることが望ましい。乾燥方法としては、自体公知の方法が挙げられるが、酵素を失活させない方法として、例えば、凍結乾燥方法等がある。
放線菌産生酵素類として、例えば、培養液の水溶性部分を乾燥した乾燥物を使用する場合、通常、酵母に対して、0.3〜1.5重量%程度使用する。この乾燥物換算の力価を基準として、培養液の水溶性部分を乾燥したものを適宜、水で記載して使用することもでき、また、培養液そのものとして使用する場合は、通常、酵母に対して7.5〜37.5重量%程度の割合で使用できる。
また、例えば、力価の異なる2種以上の培養物や精製酵素を混合したり、水等での希釈や、要すれば、商業的に入手しうる酵素類を使用して力価を調整することもできる。
【0011】
担子菌産生酵素類としては、例えば、ホウロクタケ属に属する担子菌、好ましくはヒイロタケを自体公知の方法により培養し、プロテアーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼ含有する培養濾液、その抽出物等を使用することができ、あるいは自体公知の方法により、プロテアーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼを必須構成酵素とする酵素類を採取し、粗製のまま、または精製酵素として用いることができる。
放線菌産生酵素類と同様、担子菌産生酵素類も酵素力価を落とさず粉末化して使用することが望ましい。
担子菌産生酵素類として、例えば、培養液の水溶性部分を乾燥した乾燥物を使用する場合、通常、酵母に対して、0.3〜1.5重量%程度使用する。この乾燥物換算の力価を基準として、培養液の水溶性部分を乾燥したものを適宜、水で記載して使用することもでき、また、培養液そのものとして使用する場合は、通常、酵母に対して7.5〜37.5重量%程度の割合で使用できる。
また、例えば、力価の異なる2種以上の培養物や精製酵素を混合したり、水等での希釈や、要すれば、商業的に入手しうる酵素類を使用して力価を調整することもできる。
【0012】
本発明の製造方法を実施するには、例えば、食用乾燥酵母(ワイン酵母、パン酵母、清酒酵母、ビール酵母等)の5〜25重量%水懸濁(pH6.5〜8.0)に放線菌産生酵素類の乾燥物を40℃〜60℃で0.3〜1.5重量%(対固形分)の割合で3〜8時間接触させ、ついで同液を62〜68℃で2〜6時間保持した後、pHを2.0〜5.5に調整する。これに担子菌産生酵素類の乾燥物を45〜55℃で0.3〜1.5重量%(対固形分)の割合で8〜15時間接触させる。
pHの調整は、常法に従い、必要に応じて酸(例、塩酸等)またはアルカリ(例、水酸化ナトリウム等)を用いて行う。
得られた酵母の酵素分解物のスラリーを平均孔径0.05〜0.5μmのセラミック膜を通過させて精密濾過して酵母等の不溶物と酵母エキス部とを分離する。精密濾過は、自体公知の方法に従って行なうことができ、かかるアルミナセラミック膜は、例えば、日本ガイシ(株)や、ノリタケカンパニーリミテドから商業的に入手できる。また、濾過温度は特に限定するものではない。
【0013】
ついで、上記した循環式液膜流下型真空濃縮装置を用いて、酵母エキス部の固形分濃度を10〜50重量%、好ましくは15〜35重量%に一次濃縮する。
この一次濃縮の濃縮条件は、特に限定するものではないが、上記した条件から適宜選択できる。
【0014】
本発明においては、得られた濃縮液を、さらに、精製工程に付した後、二次濃縮を行うことが好ましい。
精製工程は酵母エキス製造において通常採用される精製工程でよく、例えば、殺菌、おり下げ、ついで脱臭工程が挙げられる。
殺菌は、限定するものではないが、加熱殺菌が採用でき、例えば、90℃まで急速に加熱した後、5〜15分保持することにより行える。ついで、60℃以下に急冷することにより、おり下げし、活性炭処理に付して脱臭する。活性炭処理は、濃縮液の固形分に対して0.5〜10.0重量%、好ましくは1.0〜5.0重量%の活性炭を濃縮液に添加、分散した後、自体公知の方法により濾過する。濾過温度は特に限定するものではない。
活性炭として、木材炭化品を原料とし、水蒸気賦活法にて950〜1100℃で賦活した、細孔容積0.2〜0.6ml/g、細孔直径1〜30mmのものを、固形分に対して1〜5重量%添加して、使用することが好ましい。
二次濃縮は、上記した循環式液膜流下型真空濃縮装置を用い、上記した濃縮条件下で、酵母エキス部の固形分濃度が50重量%以上、好ましくは60重量%以上になるまで行うことが望ましい。
【0015】
本発明の製造方法で得られた酵母エキスは、公知の酵母エキスと同様に使用することができ、例えば、得られた酵母エキスを農産加工食品(野菜、果実、穀物等の加工品を含む)、水産加工食品(魚介類、海藻等の加工品を含む)畜産加工食品(卵・乳製品等の加工品を含む)、だし・つゆ・ソース・醤油・みそ、合わせ調味料等に使用することができる。
特に、ホワイトソースやクリームスープなど白色度を重視する加工食品に最適である。
【0016】
【実施例】
以下の参考例および実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
参考例1
放線菌産生酵素類の調製
(1)ストレプトミセス・アウレウス(Streptomyces aureus IFO 3175)の胞子懸濁液(107個/ml以上)1白金耳を種培地(可溶性コーンスターチ30g/l、コーン・スティープ・リカー30g/l、硫酸アンモニウム1g/l、硫酸マグネシウム0.5g/l、炭酸カルシウム3g/l、pH7.0)20mlに接種し、28℃、200rpmで24時間培養し、種培養終了液を得た。
(2)得られた種培養終了液1mlを主培地(可溶性コーンスターチ30g/l、コーン・スティープ・リカー15g/l、硫酸アンモニウム1g/l、硫酸マグネシウム0.5g/l、炭酸カルシウム3g/l、pH7.0)20mlに移植し、28℃、200rpmで40時間培養し、主培養終了液を得た。
(3)得られた主培養終了液20mlを28℃、200rpmで3時間撹拌し、ついでイソブタノール1.2mlを加え、さらに28℃、200rpmで3時間撹拌して溶菌し、酵素処理液を得た。これを品温が80℃以下で乾燥し、放線菌産生酵素類の乾燥粉末を得た。
【0018】
ヒイロタケ産生酵素類の調製
(1)ヒイロタケ(Trametes sanguinea)の胞子懸濁液(107個/ml以上)2mlを種培地(塩化カルシウム1g/l、硫酸マグネシウム1g/l、硫酸アンモニウム2g/ml、リン酸一カリウム2g/l、ショ糖50g/l、コーン・スティープ・リカー30g/l、pH7.0)20mlに接種し、28℃、200rpmで48時間培養し、種培養終了液を得た。
(2)得られた種培養終了液2mlを主培地(塩化カルシウム1g/l、硫酸マグネシウム1g/l、硫酸アンモニウム2g/l、リン酸一カリウム2g/l、ショ糖80g/l、脱脂大豆粉35g/l、pH6.0)20mlに移植し、28℃、200rpmで96時間培養し、主培養終了液を得た。
主培養終了液を、濾紙で濾過し、得られた酵素液を真空乾燥してヒイロタケ産生酵素類の乾燥粉末を得た。
【0019】
実施例1
ビール酵母を純水に懸濁して11%懸濁液を調製し、30%水酸化ナトリウム溶液でpH7.7に調整した。これに、酵母固形分に対して0.62%の割合で、上記で得られた放線菌産生酵素類液を加え、40〜60℃で5時間、ついで65℃で3時間保持した。このときのpHは6.7〜6.8であった。
ついで、50℃に冷却し、35%塩酸でpH4.0に調整し、酵母固形分に対して0.6%の割合で、上記で得られた担子菌産生酵素を加え、50℃で12時間反応させた。
反応終了後、90℃で10分間加熱殺菌し、60℃に冷却した。反応液を0.1〜0.2μmの平均孔径を有するセラミック膜で濾過した。このときの上澄液のエキス濃度はBx11.5であった。残渣を約3倍量の純水と共に撹拌し、再度濾過して、濾液を上記の濾液と合した。この液のpHは4.0、エキス濃度はBx5〜6であった。
このエキスを(1)常圧加熱濃縮法、すなわち、50℃恒温水槽内常圧下で開放下に撹拌(20rpm)しながらの濃縮(仕込量:10リットル)、(2)バッチ式真空濃縮法、すなわち、温度50℃で減圧(100トール)、撹拌(20rpm)下に、(株)ヤエス半球型真空式サンニーダーでの濃縮(仕込量:300リットル)または(3)循環式液膜流下型真空濃縮法、すなわち、図1に示す構造を有する日南機械(株)製循環式液膜流下型真空濃縮装置で、温度50℃、真空度100トール、仕込量1000リットルでの濃縮に付した。いずれの濃縮方法においても固形分濃度(Bx)62まで濃縮した。
得られた濃縮エキス液の着色度(褐変度合)を測定した。すなわち、濃縮エキス液を測定可能範囲まで適宜純水で希釈して試料を調製し、分光光度計(日立製作所製)でこの試料の440μmの吸光値を測定し、固形分1%換算した数値を着色度とした。
結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
実施例2
実施例1の循環式液膜流下型真空濃縮法と同様にしてエキスの濃縮を行なった。すなわち、図1に示す構造を有する日南機械(株)製循環式液膜流下型真空濃縮装置を使用し、固形分濃度Bx5.5のエキスを、温度30〜70℃、真空度100〜500トールの範囲で、仕込量1000リットルにて濃縮した。いずれの濃縮においても、固形分濃度(Bx)が62まで濃縮し、実施例1と同様にして着色度を測定した。
結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
実施例3
市販酵母エキス濃縮品と、実施例1の循環式液膜流下型真空濃縮法で得られた酵母エキス濃縮品の着色度を実施例1の測定法に従って測定し、比較した。
結果を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
以上の結果、表1(実施例1)から明らかなごとく、温度50℃、144時間の常圧加熱濃縮では固形分Bx60に至るまでに腐敗を生じ、バッチ式真空濃縮法、すなわち、温度50℃で減圧(100トール)、撹拌(20rpm)の条件下では、循環式液膜流下型真空濃縮法の3倍の濃縮時間を要し、かつ着色度が高かった。
また、表2(実施例2)に示すごとく、循環式液膜流下型真空濃縮法で濃縮温度を変え、着色度合を測定した結果、温度が低いほど着色は少なかった。
さらに、着色は糖分と遊離アミノ酸量に大きく影響されることがよく知られているが、表3(実施例3)に示すごとく、本発明品は市販品と同等またはそれ以上の糖分および遊離アミノ酸が存在するにもかかわらず、いずれの市販濃縮品よりも着色度が低かった。
【0026】
【発明の効果】
以上記載したごとく、本発明によれば、濃縮の際の褐変や着色を極力防止した酵母エキスの工業的生産に適した製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる循環式液膜流下型真空濃縮装置の概略を示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・加熱缶、2・・・蒸発缶、3・・・循環ポンプ、
4・・・中空細管、5・・・酵母エキス供給口、
6・・・循環エキス供給口、7・・・蒸気インゼクター、
8・・・蒸気供給口、9・・・吸引口、10・・・蒸気ドレイン排水口、
11・・・蒸発缶の頂部、12・・・気液分離器(ドレイン分離器)、
13・・・蒸気ブースター、14・・・液相溜、
15・・・濃縮エキス取出パイプ
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵母エキスの工業的規模の製造において、液状の酵母エキスを濃縮する際の褐変や着色を極力防止した、風味、外観の良好な酵母エキスを提供する酵母エキスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵母エキスは、酵母の自己消化物や様々な酵素分解物中のエキスと酵母等の不溶物を分離して製造される。不溶物を分離して得られた酵母エキス中の固形分は通常2〜10%(重量%、以下、特に断らない限り同様)程度であり、この状態では保存性や運搬経費等から市販に供するには適当でなく、通常、得られた酵母エキスを濃縮し、この濃縮物をそのまま、あるいは、さらに濃縮後、噴霧乾燥等で乾燥させ、粉末化して市販に供している。
一方、酵母エキスは、原料となる酵母から由来する特有の色調を有している。また、酵母中の旨味成分(遊離アミノ酸、核酸等)を有効に抽出するためのタンパク分解酵素や多糖類分解酵素、核酸生成酵素等を作用させる反応条件によって得られる酵母エキスに着色が伴う。また、得られたエキスを濃縮する際にも、濃縮方法、濃縮条件等によって褐変や着色が起こる。
食品の褐変、着色等には種々の要因があるが、酵母エキスの場合、遊離アミノ酸とブドウ糖、果糖等の還元糖を含んでいることから、遊離アミノ酸と還元糖類との反応、すなわち、アミノカルボニル反応による影響が大きく関与している。一般に、アミノカルボニル反応での褐変や着色は、遊離アミノ酸量とブドウ糖、果糖のような還元糖量およびその比率、空気(酸素)量、温度、時間が大きく影響すると言われており、特に、酵母エキス製造における濃縮は、酵母エキスの褐変や着色に及ぼす影響が大きい。
例えば、冷凍真空濃縮法であれば、温度、空気(酸素)の影響を抑制した方法であるから着色性が最も少なく風味的にも優れた製品ができるが、工業生産的には時間当たりの生産性、製造エネルギーコストが高い。
近年、常温で行う膜濃縮法が開発され活用されているが、膜濃縮は濃縮の進行につれ浸透圧や粘度の増加が生ずるため、蒸発法に比べ濃縮率を高くできない。さらに、常温操作に伴う雑菌汚染を防止し、膜やモジュールの衛生管理に細心の注意を払う必要性があり、洗浄に時間と経費を要する等の問題がある。
このような事情から、一般には熱を加えて水を除くという蒸発濃縮が最も簡便な濃縮法として古くから採用されている。例えば、釜やタンク内に蒸気管を通して加熱する方法、外側に蒸気等のジャケットから加熱しながら撹拌機を備え、撹拌しながら常圧加熱する方法や釜やタンクに真空装置を備え、減圧加熱濃縮等を行い濃縮する方法が多く用いられている。
しかし、例えば、酵素反応直後の固形分3%の酵母エキスを固形分60%にするには、20倍量の水を、6%のものを固形分60%にするには10倍量の水を除去する必要がある。したがって、少量であれば、短時間で濃縮は可能であるが、工業生産的には相当の時間を要し、酵母エキス中のアミノ酸や糖類量や加熱温度、時間にもよるが、これらの方法で酵母エキスを大量濃縮する場合、加熱部と内容物の接触部が絶えず接触されており、着色性が大きい。そのため、製造の過程において空気の存在を少なくしたり、濃縮や殺菌の加熱温度を低くしたり、加熱時間を短くしたり、脱色用活性炭で脱色したり等の種々の対策が行われているが、十分とは言い得ない。
それにもかかわらず、酵母エキスの製造工程における褐変または着色を検討した先行技術としては、加熱してアミノカルボニル反応を積極的に進行させた後、イオン交換樹脂により着色物質を除去する方法(特許文献1)が提案されている程度である。
【0003】
【特許文献1】
国際公開第98/46089号パンフレット
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、濃縮の際の褐変や着色を極力防止した酵母エキスの工業的生産に適した製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため、工業的生産レベルにおける褐変や、着色に最も関与すると考えられる濃縮工程に注目し、濃縮の方法に着目し濃縮酵母エキスの着色性について鋭意検討した。その結果、薄膜減圧濃縮法の1方法である液膜流下型真空濃縮法、特にある条件下での液膜流下型真空濃縮法が、その目的に適していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)酵母の自己消化物または酵素分解物から酵母エキスを製造するに際し、酵母エキスの濃縮を循環式液膜流下型真空濃縮法で行うことを特徴とする酵母エキスの製造方法、
(2)自己消化物または酵素分解物から抽出された酵母エキスを循環式液膜流下型真空濃縮法で一次濃縮し、ついで精製工程に付した後、さらに、循環式液膜流下型真空濃縮法で二次濃縮する上記(1)記載の製造方法、
(3)循環式液膜流下型真空濃縮法による濃縮を、濃縮温度30〜80℃、真空度30〜200トール、濃縮する酵母エキスの粘度1000cps/20℃以下の条件で行う上記(2)記載の製造方法、
(4)一次濃縮を固形分濃度15〜35重量%まで行う上記(2)記載の製造方法、
(5)精製工程が、殺菌、おり下げ、ついで脱臭を行う工程である上記(2)記載の製造方法等を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
用いる酵母の自己消化物、酵素分解物または水抽出物は特に限定するものではなく、自体公知の方法により食用酵母より得られるものいずれでもよい。
食用酵母も特に限定するものではなく、生酵母、自体公知の方法で適宜乾燥した乾燥酵母いずれでもよく、例えば、ワイン酵母、パン酵母、清酒酵母、ビール酵母等が使用できる。
酵母は、前処理なしにそのまま使用してもよく、また、前処理を行なった後に使用してもよい。例えば、水洗後に使用しても、酸、アルカリ、低級アルコール等での洗浄後、水洗して使用してもよい。さらに、例えば、800kg/cm2〜5000kg/cm2の高圧ホモジナイザーで処理した後に使用してもよい。
【0008】
本発明における循環式液膜流下型真空濃縮法は、薄膜減圧濃縮法の一種で、減圧下、加温ないしは加熱しつつ、濃縮すべき液体の、適宜な壁面を伝わる薄膜状の流下と、気液分離を循環的に行う濃縮法であり、例えば、図1に模式的に示す循環式液膜流下型真空濃縮装置を使用して行うことができる。
図1に示すごとく、この装置は、加熱缶1と、蒸発缶2と、循環ポンプ3と、それらに付属する配管部分等から構成されており、加熱缶1はその底部で蒸発缶2と連結している。加熱缶1内は、縦方向に伸長する複数の中空細管4が設けられており、加熱缶1の底部には酵母エキス供給口5、頂部には循環エキス供給口6が設けられている。また、加熱缶1の上部には、蒸気インゼクター7に連結した加熱用の蒸気供給口8、下部には蒸気エゼクター(図示せず)に連結した減圧用の吸引口9と、蒸気ドレイン排水口10が設けられている。蒸発缶の頂部11は上記の蒸気インジェクター7と、また、気液分離器12を介して蒸気ブースター13と連結しており、また、下部は気液分離された液相を溜める液相溜14となっており、液相溜14は循環ポンプ3を介して、循環エキス供給口6と接続されている。また、循環ポンプ3と循環エキス供給口6との間には、濃縮エキス取出パイプ15が接続されている。
この装置を用いて酵母エキスを濃縮するには、酵母エキスを供給口5から、蒸発量に見合う量で、装置内に定量的に供給する。装置内は、蒸気供給口8から供給される蒸気、および吸引口9からの排気により、所定の温度、減圧に維持されている。供給された酵母エキスは、蒸発缶2内の液相溜14、循環ポンプ3および循環エキス供給口6を経て、加熱缶1の頂部に達し、そこから各細管4に分配され、細管4の内壁を伝わって薄膜状で流下する。この管に酵母エキスは加熱され、水分の蒸発が起こり、気相と液相の混合物が生成する。加熱缶1の底部に達した気相と液相の混合物は、ついで、蒸発缶2内に移行し、気液分離が起こり、分離した気相は蒸発缶2の頂部11へ上昇し、液相は液相溜14に集められる。気相は気液分離器(ドレイン分離器)12、蒸気ブースターを経て装置外へ排出される。一方、集められた液相は、循環ポンプ3、循環エキス供給口6介を経て加熱缶1の頂部に達する。このようにして、液相が装置内を循環し、濃縮される。所定の濃度になった濃縮液は濃縮エキス取出パイプ15から取り出される。
【0009】
濃縮条件は、濃縮すべき酵母エキスの処理量等に応じて、加熱温度や真空度を適宜調節して、良好な生産効率で、褐変や着色が極力防止できる範囲から選択する。例えば、酵母エキス5〜15トンを処理する場合、図1に示すごとき装置を使用し、通常、温度40〜80℃、好ましくは45〜60℃、真空度30〜200トール、好ましくは、30〜150トール、濃縮する酵母エキスの粘度1000cps/20℃以下、好ましくは800cps/20℃以下の条件で行うことにより、良好な生産効率で、褐変や着色を極力防止した濃縮が可能となる。温度が40℃以下であれば着色は少ないが、真空度等の条件によっては、水分蒸発が遅れ、濃縮に長時間を要し、逆に80℃以上であれば、濃縮時間は短縮されるが、減圧下でも着色が進行するので適当ではない。真空度は、生産レベルで長期に渡り30トール以下にすることは困難であり、また、200トール以上では、着色度が進行し、好ましくない。また、酵母エキスの成分組成や加熱温度により異なるが、濃縮するにつれて粘度が増加し、固形分濃度が60%で温度が40℃以下では極端に高粘性となり、循環ポンプ能力にもよるが、細管の内壁面を流下するエキスの速度が非常に遅くなり、効率面でも適性でなくなるので、粘度は約1000cps以下好ましくは800cps以下で濃縮を行うことが好ましい。
【0010】
本発明は、限定するものではないが、原料酵母から放線菌産生酵素類と担子菌産生酵素類を用いて得られた酵母の酵素分解物に好適に適用できる。この際、まず、放線菌産生酵素類で分解し、ついで担子菌産生酵素類で分解することが好ましい。さらに詳しくは、原料酵母を、まず、放線菌産生酵素類と接触させ、反応温度およびpHを変化させた2段階で反応させたることにより、5’−ヌクレオチド類の生成量を高めた後、さらに担子菌産生酵素類を反応させると、風味や匂いの良好な酵母エキスが得られる。以下、このようにして得られる酵素分解物を用いる場合を例として、本発明の酵母エキスの製造方法を説明するが、他の酵素分解物や、自己消化物、水抽出物(含熱水抽出物)を使用する場合も同様に実施できる。
原料酵母は、工業的生産性を考慮し、例えば、乾燥酵母の場合、通常、5〜30重量%、好ましくは、10〜25重量%の濃度で、水(例えば、イオン交換水等)に懸濁し、酵素類と接触させる。懸濁液の濃度が低すぎる場合は生産性の低下を招き、また、濃度が高すぎる場合は、粘度が高くなりすぎ、撹拌等が困難となる。
用いる放線菌産生酵素類としては、例えば、ストレプトミセス属に属する菌株を自体公知の方法により培養し、5’−リン酸生成型ヌクレアーゼ、デアミナーゼおよびプロテアーゼを含有する培養物をそのまま、または培養濾液、菌体、菌体破砕物、これらの抽出液、その乾燥物等を使用することができ、あるいは自体公知の方法により5’−リン酸生成型ヌクレアーゼ、デアミナーゼおよびプロテアーゼを必須構成酵素とする酵素類を採取し、粗製のまま、または精製酵素として用いることができる。
培養液は、工業的生産に適した乾燥酵素(水分10%以下)、特に、酵素力価を落とさず粉末化した酵素として用いることが望ましい。乾燥方法としては、自体公知の方法が挙げられるが、酵素を失活させない方法として、例えば、凍結乾燥方法等がある。
放線菌産生酵素類として、例えば、培養液の水溶性部分を乾燥した乾燥物を使用する場合、通常、酵母に対して、0.3〜1.5重量%程度使用する。この乾燥物換算の力価を基準として、培養液の水溶性部分を乾燥したものを適宜、水で記載して使用することもでき、また、培養液そのものとして使用する場合は、通常、酵母に対して7.5〜37.5重量%程度の割合で使用できる。
また、例えば、力価の異なる2種以上の培養物や精製酵素を混合したり、水等での希釈や、要すれば、商業的に入手しうる酵素類を使用して力価を調整することもできる。
【0011】
担子菌産生酵素類としては、例えば、ホウロクタケ属に属する担子菌、好ましくはヒイロタケを自体公知の方法により培養し、プロテアーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼ含有する培養濾液、その抽出物等を使用することができ、あるいは自体公知の方法により、プロテアーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼを必須構成酵素とする酵素類を採取し、粗製のまま、または精製酵素として用いることができる。
放線菌産生酵素類と同様、担子菌産生酵素類も酵素力価を落とさず粉末化して使用することが望ましい。
担子菌産生酵素類として、例えば、培養液の水溶性部分を乾燥した乾燥物を使用する場合、通常、酵母に対して、0.3〜1.5重量%程度使用する。この乾燥物換算の力価を基準として、培養液の水溶性部分を乾燥したものを適宜、水で記載して使用することもでき、また、培養液そのものとして使用する場合は、通常、酵母に対して7.5〜37.5重量%程度の割合で使用できる。
また、例えば、力価の異なる2種以上の培養物や精製酵素を混合したり、水等での希釈や、要すれば、商業的に入手しうる酵素類を使用して力価を調整することもできる。
【0012】
本発明の製造方法を実施するには、例えば、食用乾燥酵母(ワイン酵母、パン酵母、清酒酵母、ビール酵母等)の5〜25重量%水懸濁(pH6.5〜8.0)に放線菌産生酵素類の乾燥物を40℃〜60℃で0.3〜1.5重量%(対固形分)の割合で3〜8時間接触させ、ついで同液を62〜68℃で2〜6時間保持した後、pHを2.0〜5.5に調整する。これに担子菌産生酵素類の乾燥物を45〜55℃で0.3〜1.5重量%(対固形分)の割合で8〜15時間接触させる。
pHの調整は、常法に従い、必要に応じて酸(例、塩酸等)またはアルカリ(例、水酸化ナトリウム等)を用いて行う。
得られた酵母の酵素分解物のスラリーを平均孔径0.05〜0.5μmのセラミック膜を通過させて精密濾過して酵母等の不溶物と酵母エキス部とを分離する。精密濾過は、自体公知の方法に従って行なうことができ、かかるアルミナセラミック膜は、例えば、日本ガイシ(株)や、ノリタケカンパニーリミテドから商業的に入手できる。また、濾過温度は特に限定するものではない。
【0013】
ついで、上記した循環式液膜流下型真空濃縮装置を用いて、酵母エキス部の固形分濃度を10〜50重量%、好ましくは15〜35重量%に一次濃縮する。
この一次濃縮の濃縮条件は、特に限定するものではないが、上記した条件から適宜選択できる。
【0014】
本発明においては、得られた濃縮液を、さらに、精製工程に付した後、二次濃縮を行うことが好ましい。
精製工程は酵母エキス製造において通常採用される精製工程でよく、例えば、殺菌、おり下げ、ついで脱臭工程が挙げられる。
殺菌は、限定するものではないが、加熱殺菌が採用でき、例えば、90℃まで急速に加熱した後、5〜15分保持することにより行える。ついで、60℃以下に急冷することにより、おり下げし、活性炭処理に付して脱臭する。活性炭処理は、濃縮液の固形分に対して0.5〜10.0重量%、好ましくは1.0〜5.0重量%の活性炭を濃縮液に添加、分散した後、自体公知の方法により濾過する。濾過温度は特に限定するものではない。
活性炭として、木材炭化品を原料とし、水蒸気賦活法にて950〜1100℃で賦活した、細孔容積0.2〜0.6ml/g、細孔直径1〜30mmのものを、固形分に対して1〜5重量%添加して、使用することが好ましい。
二次濃縮は、上記した循環式液膜流下型真空濃縮装置を用い、上記した濃縮条件下で、酵母エキス部の固形分濃度が50重量%以上、好ましくは60重量%以上になるまで行うことが望ましい。
【0015】
本発明の製造方法で得られた酵母エキスは、公知の酵母エキスと同様に使用することができ、例えば、得られた酵母エキスを農産加工食品(野菜、果実、穀物等の加工品を含む)、水産加工食品(魚介類、海藻等の加工品を含む)畜産加工食品(卵・乳製品等の加工品を含む)、だし・つゆ・ソース・醤油・みそ、合わせ調味料等に使用することができる。
特に、ホワイトソースやクリームスープなど白色度を重視する加工食品に最適である。
【0016】
【実施例】
以下の参考例および実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
参考例1
放線菌産生酵素類の調製
(1)ストレプトミセス・アウレウス(Streptomyces aureus IFO 3175)の胞子懸濁液(107個/ml以上)1白金耳を種培地(可溶性コーンスターチ30g/l、コーン・スティープ・リカー30g/l、硫酸アンモニウム1g/l、硫酸マグネシウム0.5g/l、炭酸カルシウム3g/l、pH7.0)20mlに接種し、28℃、200rpmで24時間培養し、種培養終了液を得た。
(2)得られた種培養終了液1mlを主培地(可溶性コーンスターチ30g/l、コーン・スティープ・リカー15g/l、硫酸アンモニウム1g/l、硫酸マグネシウム0.5g/l、炭酸カルシウム3g/l、pH7.0)20mlに移植し、28℃、200rpmで40時間培養し、主培養終了液を得た。
(3)得られた主培養終了液20mlを28℃、200rpmで3時間撹拌し、ついでイソブタノール1.2mlを加え、さらに28℃、200rpmで3時間撹拌して溶菌し、酵素処理液を得た。これを品温が80℃以下で乾燥し、放線菌産生酵素類の乾燥粉末を得た。
【0018】
ヒイロタケ産生酵素類の調製
(1)ヒイロタケ(Trametes sanguinea)の胞子懸濁液(107個/ml以上)2mlを種培地(塩化カルシウム1g/l、硫酸マグネシウム1g/l、硫酸アンモニウム2g/ml、リン酸一カリウム2g/l、ショ糖50g/l、コーン・スティープ・リカー30g/l、pH7.0)20mlに接種し、28℃、200rpmで48時間培養し、種培養終了液を得た。
(2)得られた種培養終了液2mlを主培地(塩化カルシウム1g/l、硫酸マグネシウム1g/l、硫酸アンモニウム2g/l、リン酸一カリウム2g/l、ショ糖80g/l、脱脂大豆粉35g/l、pH6.0)20mlに移植し、28℃、200rpmで96時間培養し、主培養終了液を得た。
主培養終了液を、濾紙で濾過し、得られた酵素液を真空乾燥してヒイロタケ産生酵素類の乾燥粉末を得た。
【0019】
実施例1
ビール酵母を純水に懸濁して11%懸濁液を調製し、30%水酸化ナトリウム溶液でpH7.7に調整した。これに、酵母固形分に対して0.62%の割合で、上記で得られた放線菌産生酵素類液を加え、40〜60℃で5時間、ついで65℃で3時間保持した。このときのpHは6.7〜6.8であった。
ついで、50℃に冷却し、35%塩酸でpH4.0に調整し、酵母固形分に対して0.6%の割合で、上記で得られた担子菌産生酵素を加え、50℃で12時間反応させた。
反応終了後、90℃で10分間加熱殺菌し、60℃に冷却した。反応液を0.1〜0.2μmの平均孔径を有するセラミック膜で濾過した。このときの上澄液のエキス濃度はBx11.5であった。残渣を約3倍量の純水と共に撹拌し、再度濾過して、濾液を上記の濾液と合した。この液のpHは4.0、エキス濃度はBx5〜6であった。
このエキスを(1)常圧加熱濃縮法、すなわち、50℃恒温水槽内常圧下で開放下に撹拌(20rpm)しながらの濃縮(仕込量:10リットル)、(2)バッチ式真空濃縮法、すなわち、温度50℃で減圧(100トール)、撹拌(20rpm)下に、(株)ヤエス半球型真空式サンニーダーでの濃縮(仕込量:300リットル)または(3)循環式液膜流下型真空濃縮法、すなわち、図1に示す構造を有する日南機械(株)製循環式液膜流下型真空濃縮装置で、温度50℃、真空度100トール、仕込量1000リットルでの濃縮に付した。いずれの濃縮方法においても固形分濃度(Bx)62まで濃縮した。
得られた濃縮エキス液の着色度(褐変度合)を測定した。すなわち、濃縮エキス液を測定可能範囲まで適宜純水で希釈して試料を調製し、分光光度計(日立製作所製)でこの試料の440μmの吸光値を測定し、固形分1%換算した数値を着色度とした。
結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
実施例2
実施例1の循環式液膜流下型真空濃縮法と同様にしてエキスの濃縮を行なった。すなわち、図1に示す構造を有する日南機械(株)製循環式液膜流下型真空濃縮装置を使用し、固形分濃度Bx5.5のエキスを、温度30〜70℃、真空度100〜500トールの範囲で、仕込量1000リットルにて濃縮した。いずれの濃縮においても、固形分濃度(Bx)が62まで濃縮し、実施例1と同様にして着色度を測定した。
結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
実施例3
市販酵母エキス濃縮品と、実施例1の循環式液膜流下型真空濃縮法で得られた酵母エキス濃縮品の着色度を実施例1の測定法に従って測定し、比較した。
結果を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
以上の結果、表1(実施例1)から明らかなごとく、温度50℃、144時間の常圧加熱濃縮では固形分Bx60に至るまでに腐敗を生じ、バッチ式真空濃縮法、すなわち、温度50℃で減圧(100トール)、撹拌(20rpm)の条件下では、循環式液膜流下型真空濃縮法の3倍の濃縮時間を要し、かつ着色度が高かった。
また、表2(実施例2)に示すごとく、循環式液膜流下型真空濃縮法で濃縮温度を変え、着色度合を測定した結果、温度が低いほど着色は少なかった。
さらに、着色は糖分と遊離アミノ酸量に大きく影響されることがよく知られているが、表3(実施例3)に示すごとく、本発明品は市販品と同等またはそれ以上の糖分および遊離アミノ酸が存在するにもかかわらず、いずれの市販濃縮品よりも着色度が低かった。
【0026】
【発明の効果】
以上記載したごとく、本発明によれば、濃縮の際の褐変や着色を極力防止した酵母エキスの工業的生産に適した製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる循環式液膜流下型真空濃縮装置の概略を示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・加熱缶、2・・・蒸発缶、3・・・循環ポンプ、
4・・・中空細管、5・・・酵母エキス供給口、
6・・・循環エキス供給口、7・・・蒸気インゼクター、
8・・・蒸気供給口、9・・・吸引口、10・・・蒸気ドレイン排水口、
11・・・蒸発缶の頂部、12・・・気液分離器(ドレイン分離器)、
13・・・蒸気ブースター、14・・・液相溜、
15・・・濃縮エキス取出パイプ
Claims (5)
- 酵母の自己消化物または酵素分解物から酵母エキスを製造するに際し、酵母エキスの濃縮を循環式液膜流下型真空濃縮法で行うことを特徴とする酵母エキスの製造方法。
- 自己消化物または酵素分解物から抽出された酵母エキスを循環式液膜流下型真空濃縮法で一次濃縮し、ついで精製工程に付した後、さらに、循環式液膜流下型真空濃縮法で二次濃縮する請求項1記載の製造方法。
- 循環式液膜流下型真空濃縮法による濃縮を、濃縮温度30〜80℃、真空度30〜200トール、濃縮する酵母エキスの粘度1000cps/20℃以下の条件で行う請求項2記載の製造方法。
- 一次濃縮を固形分濃度15〜35重量%まで行う請求項2記載の製造方法。
- 精製工程が、殺菌、おり下げ、ついで脱臭を行う工程である請求項2記載の製造方法。
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