JP2004245972A - カラーフィルタおよびカラーフィルタの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、透明基材と、前記透明基材上に形成された逆テーパー状の遮光部と、前記透明基材および前記遮光部を覆うように形成され、かつエネルギー照射により濡れ性が変化する濡れ性変化層と、前記濡れ性変化層上に形成され、かつ前記濡れ性変化層の濡れ性が変化したパターンに沿って形成された着色層とを有することを特徴とするカラーフィルタを提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラー液晶ディスプレイに好適なカラーフィルタおよびそのカラーフィルタの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴い、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。しかしながら、このカラー液晶ディスプレイが高価であることから、コストダウンの要求が高まっており、特にコスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。
【0003】
このようなカラーフィルタにおいては、通常赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備え、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われるものである。
【0004】
従来から行われているカラーフィルタの製造方法としては、例えば染色法が挙げられる。この染色法は、まずガラス基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料を形成し、これをフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬して着色されたパターンを得る。これを3回繰り返すことによりR、G、およびBの着色層を形成する。
【0005】
また、他の方法としては顔料分散法がある。この方法は、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、およびBの着色層を形成する。
【0006】
さらに他の方法としては、電着法や、熱硬化樹脂に顔料を分散させてR、G、およびBの3回印刷を行った後、樹脂を熱硬化させる方法等を挙げることができる。
【0007】
しかしながら、いずれの方法においても、R、G、およびBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題があった。
【0008】
これらの問題を解決するカラーフィルタの製造方法として、インクジェット方式で着色インクを吹き付けして着色層を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。ここでは、ガラス基板に対し濡れ性の良いインクを用いる場合には、インクに対して濡れ性の悪い物質で予め境界となる凸部を印刷しておく方法や、ガラスに対して濡れ性の悪いインクを使う場合には、インクとの濡れ性の良い材料で予めパターンを形成しておき、インクが定着するのを助ける方法が開示されている。
【0009】
また、インクジェット方式で着色インクを吐出して着色層を形成し、カラーフィルタを製造する別の方法として、凹部を親液処理剤で処理する方法も報告されている(特許文献2参照)。この方法は、予め基板上に凸部を形成し、この凸部を撥インク性とした後に、基板全体を親液処理剤により表面処理するものである。
【0010】
さらに、インクジェット方式で着色インクを吐出して着色層を形成し、カラーフィルタを製造する別の方法としては、本発明者等により、光触媒反応を利用した濡れ性変化層を用いる方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法は、遮光部が形成された透明基板上に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する。続いてこの濡れ性変化層を露光することにより濡れ性パターンを形成し、着色層を濡れ性の変化した部位に付与するものである。この方法においては、ガラス基板側(裏面)から露光することにより遮光部がマスク代わりとなり、高価なフォトマスクやプロキシミティータイプの露光機を使用することなく、安価に濡れ性パターンを形成できる。
【0011】
しかしながら、上記のどのインクジェット方式を用いて着色層を形成した場合においても白ぬけという問題があった。この白ぬけとは、図3に示すように、着色層4と遮光部2とが接している部位付近が、着色層4中央部より膜厚が薄くなり色が薄くなる現象である。これは、インクジェットのノズルから吐出された着色インクが、遮光部側面に濡れ広がらないことによるものである。また、上述した光触媒反応を利用した濡れ性変化層による方法においては、遮光部がテーパー状である場合に、裏面露光にて濡れ性パターンを形成すると、顕著に起こる現象であった。
【0012】
例えば、図4(a)に示すように、透明基材1表面と、その透明基材1上に形成された遮光部2の側面との角度(θ)が、90°以上のテーパー状である場合、図4(b)に示すように、透明基板1側からエネルギー5を照射して、濡れ性の変化したパターンを形成する際、遮光部2側面が露光されないことから、濡れ性変化層3の濡れ性が変化しない(図4(c))。
【0013】
これにより、着色層をインクジェット法により塗布する際、着色層が遮光部2側面に濡れ広がらず、図4(d)に示すように、遮光部2に接している部位の着色層4の膜厚が薄くなり、白抜けが発生していた。
【0014】
【特許文献1】
特開昭59−75205号公報
【特許文献2】
特開平9−203803号公報
【特許文献3】
特開2001−74928号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
以上のことから、カラーフィルタを簡易な工程で、効率よく製造でき、かつ隣接する着色層間での混色や白抜け等のない、カラーフィルタの提供が望まれている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に記載するように、透明基材と、上記透明基材上に形成された逆テーパー状の遮光部と、上記透明基材および上記遮光部を覆うように形成され、かつエネルギー照射により濡れ性が変化する濡れ性変化層と、上記濡れ性変化層上に形成され、かつ上記濡れ性変化層の濡れ性が変化したパターンに沿って形成された着色層とを有することを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0017】
本発明によれば、上記濡れ性変化層および上記遮光部が形成されていることから、フォトマスク等を用いることなく、透明基材側から全面にエネルギー照射を行うことにより、容易に濡れ性の変化したパターンを形成することができる。これにより、この濡れ性が変化したパターンの濡れ性の差を利用して、例えばインクジェット法等により、簡易な工程で効率よく、着色層を形成することができるのである。ここで、本発明においては、上記遮光部が、逆テーパー状に形成されていることから、透明基材側からエネルギー照射を行い、濡れ性が変化したパターンを形成した場合、遮光部の側面に形成されている濡れ性変化層の濡れ性も変化させることができる。これにより、着色層を形成する際に、遮光部に近接する部分にも、着色層を形成する着色層用塗布液が濡れ広がることができ、白抜け等がなく、画素部が均一に形成されたカラーフィルタとすることができるのである。
【0018】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、上記透明基材表面と、上記遮光部の側面との角度が45°以上90°未満の範囲内であることが好ましい。上記透明基材表面と、上記遮光部の側面との角度が、上記範囲内であることにより、透明基材側からエネルギー照射を行うことによって、遮光部の側面の濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができ、さらに形成が比較的容易であり、かつ強度面でも問題の無いものとすることができるからである。
【0019】
上記請求項1または請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載するように、上記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有濡れ性変化層であってもよい。これにより、エネルギー照射に伴う光触媒含有濡れ性変化層自体に含有される光触媒の作用により、光触媒含有濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることができるからである。
【0020】
上記請求項1または請求項2に記載の発明においては、請求項4に記載するように、上記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化用層とからなる層であってもよい。これにより、エネルギーを照射することにより、光触媒処理層中の光触媒が励起され、表面に形成された濡れ性変化用層の濡れ性を変化させることができるからである。
【0021】
また、本発明は請求項5に記載するように、透明基材上に、逆テーパー状に遮光部を形成する遮光部形成工程と、
上記透明基材および上記遮光部を覆うように、エネルギー照射により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、
上記透明基材側からエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、
上記濡れ性変化パターン上に、着色層を形成する着色層形成工程と
を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0022】
本発明によれば、上記遮光部および上記濡れ性変化層が形成されることにより、濡れ性変化パターン形成工程において、透明基材側から全面にエネルギーを照射することにより、フォトマスク等を用いることなく、パターン状に濡れ性変化層の濡れ性を変化させることが可能となる。また、このエネルギー照射の際、上記遮光部が逆テーパー状に形成されていることから、上記遮光部の側面に形成された濡れ性変化層の濡れ性も変化させることが可能である。これにより、着色層形成工程において、遮光部に近接する部分にも、着色層を形成する着色層用塗布液が濡れ広がることが可能となり、白抜け等のなく、高精細な着色層が形成されたカラーフィルタとすることができるのである。
【0023】
上記請求項5に記載の発明においては、請求項6に記載するように、上記着色層形成工程が、インクジェット法を用いて着色層を形成する方法で行われることが好ましい。これにより、複数色の着色層を形成する場合に、塗り分け等が容易であり、また高精細な着色層を形成することが可能だからである。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明は、カラー液晶表示装置等に好適なカラーフィルタおよびそのカラーフィルタの製造方法に関するものである。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0025】
A.カラーフィルタ
まず、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、透明基材と、前記透明基材上に形成された逆テーパー状の遮光部と、前記透明基材および前記遮光部を覆うように形成され、かつエネルギー照射により濡れ性が変化する濡れ性変化層と、前記濡れ性変化層上に形成され、かつ前記濡れ性変化層の濡れ性が変化したパターンに沿って形成された着色層とを有することを特徴とするものである。
【0026】
本発明のカラーフィルタは、例えば図1に示すように、透明基材1と、その透明基材1上に形成された逆テーパー状の遮光部2と、透明基材1および遮光部2とを覆うように形成された濡れ性変化層3と、その濡れ性変化層上に形成された着色層4とを有するものである。
【0027】
本発明によれば、上記濡れ性変化層が形成されていることにより、エネルギー照射により、表面の濡れ性が変化した濡れ性パターンを形成することができ、この濡れ性の差を利用して、着色層を例えばインクジェット法等により、容易に形成することができるのである。また、この濡れ性変化層の濡れ性を変化させる際、上記遮光部が形成されていることから、透明基材側から全面にエネルギーを照射することにより、フォトマスク等を用いることなく、着色層を形成する位置のみの、濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができる。また、本発明においては、この遮光部が逆テーパー状に形成されていることから、透明基材側からエネルギー照射を行った場合、遮光部側面に形成された濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができ、これにより、遮光部に近接する位置や遮光部側面上にも、着色層を形成する着色層用塗布液が濡れ広がることがでる。よって、着色層と遮光部との境界部分における白抜け等の不具合を防止することができる。また、着色層の中心部と周辺部との膜厚の差を小さくすることができるので、均一な着色層を有するカラーフィルタとすることができる。
【0028】
以下、本発明のカラーフィルタの各構成について、それぞれ説明する。
【0029】
1.遮光部
まず、本発明のカラーフィルタに用いられる遮光部について説明する。本発明に用いられる遮光部は、逆テーパー状に後述する透明基材上に形成されたことを特徴とするものである。
【0030】
本発明において、逆テーパー状とは、例えば図1に示すように、遮光部2の透明基材1と接触している底面の面積が、頂面の面積より小さくなるように、横断面が逆台形状に形成されていることをいう。またこの際、透明基材1の表面と、遮光部2との側面とが形成する角度θが、45°以上90°未満の範囲内、中でも60°以上90°未満の範囲内であることが好ましい。これにより、透明基材側からエネルギー照射を行い、後述する濡れ性変化層の濡れ性を変化させた場合に、遮光部の側面に形成されている濡れ性変化層の濡れ性を効果的に変化させることが可能となるからである。また、この範囲であれば、例えばフォトリソグラフィ法により比較的容易に形成することが可能であり、かつ遮光部の強度等においても問題が生じ難いからである。
【0031】
ここで、上記のような遮光部は、本発明のカラーフィルタにおけるブラックマトリックスとしての機能、および後述する濡れ性変化層の濡れ性を変化させる際の、エネルギーを遮蔽する機能を果たすものである。このため、本発明に用いられる遮光部の材料は、濡れ性変化層の濡れ性を変化させる際に、照射されるエネルギーに対し遮蔽性を有し、またカラーフィルタのブラックマトリックスとして用いることが可能であり、さらに上記形状が形成可能な材料であることが必要である。
【0032】
具体的には、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させたもの等が挙げられる。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の水性樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。
【0033】
また、スパッタリング法、真空蒸着法等により、厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングして形成したものであってもよい。
【0034】
本発明における逆テーパー状の遮光部の形成方法としては、例えばフォトリソグラフィー法により、上記樹脂材料を用いてネガ型の感光性材料とし、適正より少なめに露光後、現像を行うことにより逆テーパー形状とすることができる。
【0035】
また、例えば、ポジ型のフォトレジストを用いてリフトオフ加工を行うことによっても形成してもよい。この方法ではまず、目的とするパターンの逆パターンを、まず透明基材上にポジ型フォトレジスト等で形成し、続いて蒸着法等により遮光部を形成する。その後、不要部分であるポジ型フォトレジストを除去することにより、逆テーパー状の遮光部が形成することができるのである。
【0036】
2.濡れ性変化層
次に、本発明に用いられる濡れ性変化層について説明する。本発明に用いられる濡れ性変化層は、上記透明基材および上記遮光部を覆うように形成され、かつエネルギー照射により濡れ性が変化する層である。本発明に用いられる濡れ性変化層は、エネルギーの照射により、その濡れ性変化層表面における液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であることが好ましい。これにより、容易に液体との接触角の小さい親液性領域のパターンを形成することが可能となり、インクジェット法等により、着色層用塗布液等を用いて着色層を形成する際に、撥液性領域には着色層用塗布液が付着せず、親液性領域のみに着色層を形成することができるからである。
【0037】
ここで、本発明においては、親液性領域とは、着色層を形成する着色層用塗布液との接触角が小さい領域をいい、撥液性領域とは、上記着色層用塗布液との接触角が大きい領域をいう。
【0038】
なお、本発明においては、その領域の液体との接触角が、隣接する領域の液体との接触角より1°以上小さければ親液性領域ということとし、逆にその領域が隣接する領域の液体との接触角より1°以上大きければ撥液性領域とすることとする。
【0039】
上記濡れ性変化層は、露光していない部分、すなわち撥液性領域においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上の濡れ性を示すことが好ましい。これは、露光していない部分は、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、上記着色層用塗布液が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0040】
また、上記濡れ性変化層は、露光すると液体との接触角が低下して、表面張力40mN/mの液体との接触角が9°以下、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるような層であることが好ましい。露光した部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、この部分での着色層用塗布液の広がりが劣る可能性があり、着色層における白抜け等の問題が生じる可能性があるからである。
【0041】
また、水との接触角としては、エネルギー照射していない部分、すなわち撥液性領域において、水との接触角が50°以上、好ましくは70°以上、特に好ましくは90°以上の濡れ性を示すことが好ましい。これは、エネルギー照射していない部分が、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が上記範囲より小さい場合は、撥液性が十分でなく、高精細な着色層の形成が困難となり、好ましくないからである。
【0042】
また、上記濡れ性変化層は、エネルギー照射すると液体との接触角が低下して、水との接触角が20°以下、好ましくは10°以下、特に好ましくは5°以下となるような親液性領域となる層であることが好ましい。エネルギー照射した部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が上記範囲より高いと、この部分での着色層用塗布液の広がりが劣る可能性があり、白抜けや色むら等の問題が生じる可能性があるからである。
【0043】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから水滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。
【0044】
本発明においては、このような濡れ性変化層の濡れ性の変化したパターンは、透明基材側からエネルギーが照射されることにより、形成されることが好ましい。この際、照射されるエネルギーが、例えば200nm以下の光である等、強いエネルギーを有するものであれば、濡れ性変化層中に、特に光触媒等を含有する必要はないが、本発明においては、濡れ性変化層が、光触媒の作用により濡れ性が変化する層であることが好ましい。これにより、光触媒の作用を用いて効果的に濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができるからである。
【0045】
上記濡れ性変化層が光触媒を含有する場合、濡れ性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有濡れ性変化層である場合(第1の態様)と、濡れ性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、その光触媒処理層上に形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化用層とからなる層である場合(第2の態様)との2つの態様がある。以下、それぞれの態様について説明する。
【0046】
a.第1の態様
まず、本発明に用いられる濡れ性変化層の第1の態様について説明する。本発明に用いられる濡れ性変化層の第1の態様は、濡れ性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有濡れ性変化層である場合である。
【0047】
本態様に用いられる光触媒含有濡れ性変化層は、上述したように、エネルギー照射により液体との接触角が低下する層であることが好ましい。このような層としては、この光触媒含有濡れ性変化層中に、例えばフッ素が含有され、さらにこの光触媒含有濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、エネルギーを照射した際に、光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように形成されていてもよく、またエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むように形成されていてもよい。
【0048】
上述したような光触媒含有濡れ性変化層における、後述するような二酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本態様においては、このキャリアが光触媒含有濡れ性変化層内のバインダ化合物に作用を及ぼし、その表面の濡れ性を変化させるものであると考えられる。
【0049】
本態様においては、光触媒により、バインダの一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、光照射部の濡れ性を変化させて、非光照射部との濡れ性に大きな差を生じさせ、着色層用塗布液との濡れ性を高めることによってカラーフィルタを得ることができるのである。
【0050】
以下、このような光触媒含有濡れ性変化層を構成する、光触媒、バインダ、およびその他の成分について説明する。
【0051】
(i)光触媒
まず、本態様に用いられる光触媒について説明する。本態様に用いられる光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
本態様においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0053】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0054】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。また、光触媒の粒径が小さいほど、形成された光触媒含有濡れ性変化層の表面粗さが小さくなるので好ましく、具体的には表面粗さが10nm以下であることが好ましい。これは、光触媒含有濡れ性変化層の表面粗さが10nmを超えると、光触媒含有濡れ性変化層のエネルギー未照射部における撥水性や、エネルギー照射部の濡れ性の変化が不十分となるからである。
【0055】
本態様に用いられる光触媒含有濡れ性変化層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有濡れ性変化層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0056】
(ii)バインダ
次に、本態様に用いられるバインダについて説明する。本態様においては、光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性の変化をバインダ自体に光触媒が作用することにより行う場合(第1の形態)と、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有濡れ性変化層に含有させることにより変化させる場合(第2の形態)と、これらを組み合わせることにより行う場合(第3の形態)の三つ形態に分けることができる。上記第1の形態および第3の形態において用いられるバインダは、光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる機能を有する必要があり、上記第2の形態では、このような機能は特に必要ない。
【0057】
以下、まず第2の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダについて説明し、次に第1の形態および第3の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を有するバインダについて説明する。
【0058】
上記第2の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダとしては、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、有機置換基を有しない、もしくは多少有機置換基を有するポリシロキサンを挙げることができ、これらはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解、重縮合することにより得ることができる。
【0059】
このようなバインダを用いた場合は、添加剤としてエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有濡れ性変化層中に含有させることが必須となる。
【0060】
次に、上記第1の形態および第3の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能を必要とするバインダについて説明する。このようなバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0061】
上記の(1)の場合、一般式:
YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内である、アルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、またはエポキシ基であることが好ましい。また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基またはアセチル基であることが好ましい。
【0062】
具体的には、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−へキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−へキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;および、それらの部分加水分解物;および、それらの混合物を使用することができる。
【0063】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有濡れ性変化層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、着色層を形成する着色層用塗布液の付着を妨げる機能を発現する。
【0064】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0065】
【化1】
【0066】
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0067】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
【0068】
(iii)分解物質
上記第2の形態および第3の形態においては、さらにエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有濡れ性変化層に含有させる必要がある。すなわち、バインダ自体に光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性を変化させる機能が無い場合、およびそのような機能が不足している場合に、上述したような分解物質を添加して、上記光触媒含有濡れ性変化層上の濡れ性の変化を起こさせる、もしくはそのような変化を補助させるようにするのである。
【0069】
このような分解物質としては、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOLBL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0070】
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
【0071】
(iv)フッ素の含有
また、本態様においては、光触媒含有濡れ性変化層がフッ素を含有し、さらにこの光触媒含有濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、光触媒含有濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有濡れ性変化層が形成されていることが好ましい。
【0072】
このような特徴を有する光触媒含有濡れ性変化層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、後述するように容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0073】
したがって、このような光触媒含有濡れ性変化層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、例えばインクジェット法等により、着色層用塗布液を塗布した場合に、高精細な着色層を形成することが可能となるからである。
【0074】
上述したような、フッ素を含む光触媒含有濡れ性変化層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下である。
【0075】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との親液性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような光触媒含有濡れ性変化層に、例えば着色層用塗布液を付着させることにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に着色層を形成することが可能となり、精度の良いカラーフィルタを得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0076】
このような光触媒含有濡れ性変化層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0077】
また、本態様においては、光触媒として上述したように二酸化チタンが好適に用いられるが、このように二酸化チタンを用いた場合の、光触媒含有濡れ性変化層中に含まれるフッ素の含有量としては、X線光電子分光法で分析して定量化すると、チタン(Ti)元素を100とした場合に、フッ素(F)元素が500以上、このましくは800以上、特に好ましくは1200以上となる比率でフッ素(F)元素が光触媒含有濡れ性変化層表面に含まれていることが好ましい。
【0078】
フッ素(F)が光触媒含有濡れ性変化層にこの程度含まれることにより、光触媒含有濡れ性変化層上における臨界表面張力を十分低くすることが可能となることから表面における撥液性を確保でき、これによりエネルギーをパターン照射してフッ素含有量を減少させたパターン部分における表面の親液性領域との濡れ性の差異を大きくすることができ、最終的に得られるカラーフィルタの精度を向上させることができるからである。
【0079】
さらに、このようなカラーフィルタにおいては、エネルギーをパターン照射して形成される親液領域におけるフッ素含有量が、チタン(Ti)元素を100とした場合にフッ素(F)元素が50以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となる比率で含まれていることが好ましい。
【0080】
光触媒含有濡れ性変化層中のフッ素の含有率をこの程度低減することができれば、カラーフィルタを形成するためには十分な親液性を得ることができ、上記エネルギーが未照射である部分の撥液性との濡れ性の差異により、カラーフィルタを精度良く形成することが可能となり、利用価値の高いカラーフィルタを得ることができる。
【0081】
b.第二の態様
次に、本発明に用いられる濡れ性変化層における第二の態様について説明する。本発明に用いられる濡れ性変化層における第二の態様は、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、上記光触媒処理層上に形成されたエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、濡れ性が変化する層である濡れ性変化用層とからなる層である場合である。
【0082】
本態様においては、光触媒処理層上にエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化用層が形成されていることから、エネルギー照射によって、光触媒処理層中の光触媒が濡れ性変化用層に作用し、濡れ性変化用層上のエネルギー照射された部分の濡れ性を変化させることが可能となるのである。ここで、本態様の濡れ性変化用層においては、上述したように、液体との接触角が低下するように濡れ性が変化することが好ましく、本態様においては、濡れ性変化用層の液体との接触角が低下するように変化することが好ましい。
【0083】
以下、本態様に用いられる光触媒処理層および濡れ性変化用層について説明する。
【0084】
(i)光触媒処理層
本態様に用いられる光触媒処理層は、少なくとも光触媒を含有するものであり、光触媒処理層がバインダを有する場合は、上記第一の態様で説明した光触媒含有層と同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、本態様においては、光触媒処理層上の濡れ性は特に変化する必要がないことから、バインダ自体に光触媒が作用することによる濡れ性の変化が生じない場合であっても、第一の態様のように分解物質を光触媒処理層に含有させる必要がない。また、バインダを有する場合の光触媒処理層の製造方法は、上述した第一の態様と同様であるので、これについての説明も省略する。
【0085】
一方、バインダを有さない場合の光触媒処理層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒処理層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒処理層とすることが可能であり、これにより濡れ性変化用層上の濡れ性を均一に変化させることが可能であり、かつ光触媒のみからなることから、バインダを用いる場合と比較して効率的に濡れ性変化用層上の濡れ性を変化させることが可能となる。
【0086】
また、光触媒のみからなる光触媒処理層の他の形成方法としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0087】
(ii)濡れ性変化用層
次に、本態様に用いられる濡れ性変化用層について説明する。
【0088】
本態様に用いられる濡れ性変化用層は、上記光触媒処理層の作用により濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではないが、上述した第一の態様の光触媒含有層中のバインダと同様の材料で形成することが好ましい。なお、このように上記第一の態様の光触媒含有層中のバインダと同様の材料で形成した場合の濡れ性変化用層の材料および形成方法に関しては、上記第一の態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
本態様において、この濡れ性変化用層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0090】
本態様において上述した成分の濡れ性変化用層を用いることにより、隣接する光触媒処理層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、エネルギー照射部分の濡れ性を変化させて親液性とし、エネルギー未照射部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。
【0091】
なお、この濡れ性変化用層には、上記第一の態様における光触媒含有層の説明中「フッ素の含有」の項で記載したものと同様にして同様のフッ素を含有させることができる。
【0092】
また、本態様においては、濡れ性変化用層中に光触媒を含有する必要がなく、この場合には、経時的に着色層が光触媒の影響を受ける可能性を少なくすることが可能である。
【0093】
3.透明基材
次に、本発明に用いられる透明基材について説明する。本発明に用いられる透明基材は、上記遮光部および上記濡れ性変化層が形成可能であれば、通常カラーフィルタに用いられる材料等を用いることが可能であり、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等を用いることができる。この中で特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルタに適している。
【0094】
なお、透明基材表面と上記遮光部や濡れ性変化層等との密着性を向上させるために、透明基材上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0095】
4.着色層
次に、本発明に用いられる着色層について説明する。本発明に用いられる着色層は、上記濡れ性変化層の濡れ性が変化したパターンに沿って形成されたことを特徴とするものである。本発明においては、上記濡れ性変化層は、エネルギー照射により、例えばエネルギー照射された領域が親液性領域、エネルギー照射されていない部分が撥液性領域となっている。これにより、例えばインクジェット法等により、着色層を形成する着色層用塗布液等を濡れ性変化層上に塗布することにより、親液性領域のみに着色層用塗布液が付着し、着色層を形成することができるのである。
【0096】
本発明に用いられる着色層は、上記濡れ性変化層の濡れ性が変化した領域に、形成可能であれば、その形成方法等は特に限定されるものではないが、本発明においては、インクジェット法により形成されることが好ましい。これにより、複数色の着色層の塗りわけ等を容易に行うことが可能であり、また高精細な着色層を形成することが可能となるからである。
【0097】
通常、着色層を形成するインクジェット方式のインクとしては、大きく水性、油性に分類されるが、本発明においてはいずれのインクであっても用いることができる。
【0098】
本発明で用いられる水性インクとしては、溶媒として、水単独または水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒を用いることがきる。一方、油性インクにはインクジェット装置のヘッドのつまり等を防ぐために高沸点の溶媒をベースとしたものが好ましく用いられる。このようなインクジェット方式のインクに用いられる着色剤は、公知の顔料、染料を用いることができる。
【0099】
また、本発明においては、分散性、定着性向上のために溶媒に可溶・不溶の樹脂類を含有させてもよい。その他、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤;防腐剤;防黴剤;pH調整剤;消泡剤;紫外線吸収剤;粘度調整剤:表面張力調整剤などを必要に応じて添加しても良い。
【0100】
また、通常のインクジェット方式のインクは適性粘度が低いためバインダ樹脂を多く含有できないが、インク中の着色剤粒子を樹脂で包むかたちで造粒させることにより着色剤自身に定着能を持たせることができる。このようなインクも本発明においては用いることができる。さらに、所謂ホットメルトインクやUV硬化性インクや熱硬化性インクを用いることもできる。
【0101】
本発明においては、中でもUV硬化性インクを用いることが好ましい。UV硬化性インクを用いることにより、インクジェット方式により着色して画素部を形成後、UVを照射することにより、素早くインクを硬化させることができ、すぐに次の工程に送ることができる。したがって、効率よくカラーフィルタを製造することができるからである。
【0102】
このようなUV硬化性インクは、プレポリマー、モノマー、光開始剤及び着色剤を主成分とするものである。プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、シリコンアクリレート等のプレポリマーのいずれかを特に限定することなく用いることができる。
【0103】
モノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル等のビニルモノマー;n−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー;ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピペリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能アクリルモノマーを用いることができる。上記プレポリマー及びモノマーは単独で用いても良いし、2種以上混含しても良い。
【0104】
光重合開始剤は、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−l,2−プロパジオン−2−オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノン、ハロゲン置換アルキル−アリルケトン等の中から所望の硬化特性、記録特性が得られるものを選択して用いることができる。その他必要に応じて脂肪族アミン、芳香族アミン等の光開始助剤;チオキサンソン等の光鋭感剤等を添加しても良い。
【0105】
また、本発明においては、着色層を構成する着色層の形状は、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知のいずれの配列とすることも可能である。
【0106】
5.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、上記透明基材と、その透明基材上に、上記遮光部が形成され、その透明基材と遮光部とを覆うように濡れ性変化層が形成され、さらにその濡れ性変化層の濡れ性が変化したパターンに沿って着色層が形成されたものであれば、特に限定されるものではなく、例えば保護層や他の必要な機能層等が形成されたものであってもよい。
【0107】
B.カラーフィルタの製造方法
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法は、透明基材上に、逆テーパー状に遮光部を形成する遮光部形成工程と、上記透明基材および上記遮光部を覆うように、エネルギー照射により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、上記透明基材側からエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、上記濡れ性変化パターン上に、着色層を形成する着色層形成工程とを有することを特徴とする方法である。
【0108】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、例えば図2に示すように、透明基材1上に、逆テーパー状に遮光部2を形成し(遮光部形成工程(図2(a))、次に、その遮光部2と、透明基材1とを覆うように濡れ性変化層3を形成する(濡れ性変化層形成工程(図2(b))。次に、透明基材1側からエネルギー5を照射することにより(図2(c))、濡れ性変化層3の濡れ性が変化した濡れ性変化パターン6を形成する(濡れ性変化パターン形成工程(図2(d))。続いて、この濡れ性変化パターン6上に、例えばインクジェット装置等により、着色層4を形成する方法である。
【0109】
本発明によれば、上記遮光部および濡れ性変化層が形成されることにより、濡れ性変化パターン形成工程において、透明基材側からエネルギーを照射することにより、フォトマスク等を用いることなく、パターン状に濡れ性変化層の濡れ性を変化させることが可能となる。また、このエネルギー照射の際、上記遮光部が逆テーパー状に形成されていることから、上記遮光部の側面に形成された濡れ性変化層の濡れ性も変化させることが可能である。これにより、着色層形成工程において、遮光部に近接する部分にも、着色層を形成する着色層用塗布液が濡れ広がることができ、白抜け等のなく、高精細な着色層が形成されたカラーフィルタとすることができるのである。以下、本発明のカラーフィルタの製造方法における各工程について説明する。
【0110】
1.遮光部形成工程
まず、本発明のカラーフィルタの製造方法における遮光部形成工程について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法における遮光部形成工程は、透明基材上に、遮光部を形成する工程である。
【0111】
本工程は、透明基材上に、逆テーパー状、すなわち、透明基材と接触している遮光部の底面の面積が、頂面の面積より小さくなるように、横断面が逆台形状に形成することが可能であれば、特にその遮光部の形成方法等は特に限定されるものではない。
【0112】
本発明においては、例えばフォトリソグラフィー法により、ネガ型の感光性材料を用いて、露光を適正より少なめに行い、現像を行うことや、ポジ型のフォトレジストを用いてリフトオフ加工を行うことによっても形成することができる。
【0113】
ここで、本工程に用いられる遮光部の形状や材料、および形成方法、さらには透明基材等については、上述した「A.カラーフィルタ」の項で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0114】
2.濡れ性変化層形成工程
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法における濡れ性変化層形成工程について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法における濡れ性変化層形成工程は、上記透明基材および上記遮光部を覆うように、エネルギー照射により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する工程である。
【0115】
ここで、本工程において形成される濡れ性変化層は、例えば少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒濡れ性変化層等の1層であってもよく、また少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、その光触媒処理層上に形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化層とからなる層等の2層であってもよい。
【0116】
本工程においてこのような濡れ性変化層は、上述した「A.カラーフィルタ」における濡れ性変化層の項で説明した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散したものを、例えばスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、スリットコート、ビードコート等により、上記透明基材および遮光部上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層を形成することができる。
【0117】
3.濡れ性変化パターン形成工程
次に、本発明における濡れ性変化パターン形成工程について説明する。上述した濡れ性変化層形成工程後、上記透明基材側からエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程が行われる。
【0118】
本発明においては、透明基材側からエネルギーを全面に照射することにより、フォトマスク等を用いることなく、上記遮光部が形成されていない部分および遮光部の側面に形成されている濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができ、また上記遮光部によりエネルギーが遮蔽された、遮光部の頂面上の濡れ性変化層の濡れ性を変化しないものとすることができる。これにより、後述する着色層形成工程において、濡れ性の変化した領域のみに着色層を形成することができ、さらに遮光部に近接する部分や遮光部側面においても、着色層を形成する着色層用塗布液を濡れ広がらせることができるのである。ここで、透明基材側とは、上記透明基材における上記遮光部および上記濡れ性変化層が形成されていない面側のことをいう。
【0119】
また、本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、濡れ性変化層表面の濡れ性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0120】
本発明においては、エネルギー照射に用いる光の波長は、上記濡れ性変化層が、光触媒を含有している場合には、用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように濡れ性変化層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0121】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
【0122】
また、上述した濡れ性変化層中に光触媒が含有されていない場合には、200nm以下、中でも100nm〜200nmの範囲内を用いて、エネルギー照射を行ってもよい。これにより、上記光触媒を用いない場合であっても、上記濡れ性変化層の濡れ性を変化させることができるからである。
【0123】
このような光の照射に用いることができる光源としては、具体的には、アルゴン、クリプトン、キセノン等の紫外エキシマランプ、または低圧水銀ランプ等を挙げることができる。
【0124】
ここで、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、濡れ性変化層表面の濡れ性の変化が行われるのに必要な照射量とする。
【0125】
またこの際、濡れ性変化層を加熱しながらエネルギー照射することにより、感度を上昇させることが可能となり、効率的な濡れ性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0126】
4.着色層形成工程
次に、本発明においては、上記濡れ性変化パターン上に、着色層を形成する着色層形成工程が行われる。本工程においては、上述した濡れ性変化パターン形成工程により形成された濡れ性変化パターンの濡れ性の差を利用して、着色層を形成するのである。
【0127】
本工程において、上記濡れ性変化パターンに沿って形成可能であれば、特にその着色層の形成方法等は特に限定されるものではないが、吐出法が好ましく、中でもインクジェット法を用いることが好ましい。これにより、上記濡れ性変化パターンにおける親液性領域に、高精細に着色層が形成可能であり、また複数色の着色層の塗りわけ等が容易となるからである。
【0128】
また、本発明に用いられるインクジェット装置としては、特に限定されるものではないが、帯電したインクを連続的に噴射し磁場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の各種の方法を用いたインクジェット装置を用いることができる。
【0129】
なお、本工程に用いられる着色層用塗布液は、上述した「A.カラーフィルタ」の着色層の項で説明したものと同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。
【0130】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0131】
【実施例】
以下、本発明について、実施例を通じてさらに詳述する。
【0132】
[実施例1]
(ブラックマトリクスの形成)
370×470×0.7mmのガラス基板(NHテクノガラス製NA35)上に、カーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鉄化学製V−259BKレジスト)を塗布し、露光を不足気味に行った後、現像、ポストベーク処理を行って、膜厚1.2μm、幅20μm、開口部80μm×280μm、断面が逆テーパー形状の遮光部パターンを作製した。この際、ガラス基板表面と、遮光部パターンの側面との角度は、85°であった。
【0133】
(濡れ性変化層の形成)
イソプロピルアルコール30gとフルオロアルキルシランが主成分であるMF−160E(トーケムプロダクツ(株)製)0.4gとテトラメトキシシラン(GE東芝シリコーン製TSL8114)3gと、光触媒である酸化チタン水分散体であるST−K01(石原産業(株)製)20gとを混合し、100℃で20分間撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより3倍に希釈し濡れ性変化層用組成物とした。
【0134】
上記組成物を上記遮光部パターンが形成されたガラス基板上に遮光部を覆うようにスピンコーターにより塗布し、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明な濡れ性変化層(厚み0.2μm)を形成した。
【0135】
(裏面露光)
この濡れ性変化層に超高圧水銀灯(波長365nm)によって、40mW/cm2の照度で100秒間遮光部が形成されていない側(裏面)から露光を行い、親液性部位を形成した。非露光部及び親液性部位と水との接触角を測定したところ、非露光部においては、105°であり、親液性部位は10°以下であった。また、41mN/mの濡れ指数標準液(純正化学製)にて測定したところ、それぞれ非露光部は70°、親液性部位は10°以下であった。
【0136】
(画素部の形成)
次に、ピエゾ駆動タイプのインクジェット装置を用いて、顔料5重量部、溶剤20重量部、重合開始剤5重量部、UV硬化樹脂70重量部を含むRGB各色のUV硬化型多官能アクリレートモノマーインク(着色インク)を、親液性部位に付着させ着色し、これにUV処理を行い硬化させた。ここで、赤色、緑色、および青色の各インクについて、溶剤としてはポリエチレングリコールモノメチルエチルアセテート、重合開始剤としてはイルガキュア369(商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)、UV硬化樹脂としてはDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)を用いた。また、顔料としては、赤色インクについてはC. I. Pigment Red 177、緑色インクについてはC. I. Pigment Green 36、青色インクについてはC. I. Pigment Blue 15+ C. I. Pigment Violet 23をそれぞれ用いた。
(白ぬけ評価)
上記カラーフィルタを光学顕微鏡で観察したところ、白ぬけは観測されなかった。また、顕微分光光度計にて25μmスポットで色度を評価したところ、赤、緑、青ともに着色層中央部位と遮光部付近の色差が3以下であった。
【0137】
[比較例1]
ブラックマトリクス形成工程において適正露光を行い、断面が順テーパー形状のブラックマトリクスを形成した以外は実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
【0138】
(白ぬけ評価)
上記カラーフィルタを光学顕微鏡で観察したところ、白ぬけが観測された。また、顕微分光光度計にて25μmスポットで色度を評価したところ、赤、緑、青ともに着色層中央部位と遮光部付近の色差が10以上であった。
【0139】
【発明の効果】
本発明によれば、上記濡れ性変化層および上記遮光部が形成されていることから、フォトマスク等を用いることなく、透明基材側から全面にエネルギー照射を行うことにより、容易に濡れ性の変化したパターンを形成することができる。この濡れ性が変化したパターンの濡れ性の差を利用して、例えばインクジェット法等により、簡易な工程で効率よく、着色層を形成することができるのである。ここで、本発明においては、上記遮光部が、逆テーパー状に形成されていることから、透明基材側からエネルギー照射を行い、濡れ性が変化したパターンを形成すれば、遮光部の側面に形成されている濡れ性変化層の濡れ性も変化させることができる。これにより、着色層を形成する際に、遮光部に近接する部分にも、着色層を形成する着色層用塗布液が濡れ広がることができ、白抜け等がなく、画素部が均一に形成されたカラーフィルタとすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】従来のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【図4】従来のカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
1 … 透明基材
2 … 遮光部
3 … 濡れ性変化層
4 … 着色層
5 … エネルギー
6 … 濡れ性変化パターン
Claims (6)
- 透明基材と、前記透明基材上に形成された逆テーパー状の遮光部と、前記透明基材および前記遮光部を覆うように形成され、かつエネルギー照射により濡れ性が変化する濡れ性変化層と、前記濡れ性変化層上に形成され、かつ前記濡れ性変化層の濡れ性が変化したパターンに沿って形成された着色層とを有することを特徴とするカラーフィルタ。
- 前記透明基材表面と、前記遮光部の側面との角度が45°以上90°未満の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
- 前記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒およびバインダを含有する光触媒含有濡れ性変化層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタ。
- 前記濡れ性変化層が、少なくとも光触媒を含有する光触媒処理層と、前記光触媒処理層上に形成され、かつエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化する濡れ性変化用層とからなる層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタ。
- 透明基材上に、逆テーパー状に遮光部を形成する遮光部形成工程と、
前記透明基材および前記遮光部を覆うように、エネルギー照射により濡れ性が変化する濡れ性変化層を形成する濡れ性変化層形成工程と、
前記透明基材側からエネルギーを照射することにより、濡れ性変化層の濡れ性が変化した濡れ性変化パターンを形成する濡れ性変化パターン形成工程と、
前記濡れ性変化パターン上に、着色層を形成する着色層形成工程と
を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。 - 前記着色層形成工程が、インクジェット法を用いて着色層を形成する方法で行なわれることを特徴とする請求項5に記載のカラーフィルタの製造方法。
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