JP2004244258A - 炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維およびその製造方法 Download PDF

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Yoshibumi Nakayama
義文 中山
Masahiro Yamauchi
雅浩 山内
Masanobu Kobayashi
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Abstract

【課題】本発明は、引張強度の優れた炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維、およびその製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の炭素繊維は、表面の算術平均粗さ(Ra)が、1nm以上20nm以下であって、クリプトンガス吸着から求めたBET法比表面積が0.5m/g以上1.5m/g以下で、かつX線光電子分光法によって求められる炭素繊維表面の酸素濃度比O/Cが0.01以上0.13未満であることを特徴とするものである。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、高強度な炭素繊維強化炭素複合材料が得られる炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維束およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭素繊維強化炭素複合材料(以下C/C複合材料と記載)は、一般に、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系又はレーヨン系等を出発原料とした長繊維もしくは短繊維の炭素繊維にフェノール樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂、ピッチなどの熱可塑性樹脂等のバインダーを含浸または混合して、加熱成型したものを不活性ガス等の非酸化性雰囲気において炭素化・黒鉛化する方法、あるいは化学気相蒸着法により炭素繊維間に熱分解炭素を充填する方法で製造されており、金属等では到達できない耐熱性、比強度及び軽量性を有することから構造材、摩擦材、導電材として注目されている。
【0003】
C/C複合材料は、強化材である炭素繊維とマトリックス炭素が強固に結合しているとマトリックス炭素内部に生じたクラックが炭素繊維を切断して直線的に進行し、脆性的な破壊を導き、低強度のC/C複合材料となる。これに対し、炭素繊維と炭素マトリックスの結合が弱い場合には、炭素マトリックス内部に生じたクラックは、炭素繊維との界面で方向を変え、炭素繊維の引き抜けが生じ、結果的に高強度のC/C複合材料が得られることが知られている。
【0004】
高強度なC/C複合材料を得る手法として、従来、炭素繊維に表面処理を施さない方法および表面処理を施した後に不活性ガス中で1500℃以上に加熱処理する方法が開示されている(例えば特許文献1、2参照)。これらは、炭素繊維表面に存在するマトリックス炭素との接着に有効な官能基を排除することで、マトリックス炭素と炭素繊維の界面の結合力を弱くし、滑りやすくするとともに、炭化処理工程において炭素繊維・マトリックス炭素間に発生する熱応力を界面の部分的な剥離によって緩和させることで、界面での致命的な大きなクラックを防止し、引張強度を向上するものである。しかし、表面処理を行わない場合、表面形態が平滑な炭素繊維においては、バインダーとの濡れ性が著しく悪くなるため、界面にボイド等の空隙ができやすく、それが致命的な欠陥となり、高強度なC/C複合材料が得られない場合がある。また、表面処理を施した後に不活性ガス中で1500℃以上に加熱処理した場合、高温であることから、炭素繊維表面が劣化し、炭素繊維自体の強度低下の懸念がある。
【0005】
即ち、表面平滑性が良好な炭素繊維を使用した場合、高強度なC/C複合材料を得るには、官能基を取り除くことだけでは不十分であり、炭素繊維とバインダーとの濡れ性を向上させるために、積極的に炭素繊維表面に凹凸をつける必要があり、上記従来の方法においては、脱官能基と表面凹凸を最適にコントロールした炭素繊維は得られていないのが現状であった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−157139号公報(第3頁)
【0007】
【特許文献2】特開昭59−107913号公報(第2頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、高強度のC/C複合材料を得られるC/C複合材料用炭素繊維により、耐疲労性などが優れたC/C構造材、摩擦材、導電材などを提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、炭素繊維束中の単繊維の表面の算術平均粗さ(Ra)が、1nm以上20nm以下、クリプトンガス吸着から求めたBET法比表面積が0.5m/g以上1.5m/g以下で、かつX線光電子分光法によって求められる炭素繊維表面の酸素濃度比O/Cが0.01以上0.13未満である炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維である。
【0010】
また、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、電気伝導度が15mS/cm以上100mS/cm以下の電解液中で、炭素繊維を陽極として、炭素繊維の単位重量あたりの電流値が0.5A以上100A以下、かつ処理時間が0.5秒以上20秒以下に通電して電解酸化処理を施した後、該炭素繊維を水洗、乾燥した後、不活性雰囲気中で温度250℃以上1000℃以下で1分以上5時間以下で加熱処理する炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、表面の算術平均粗さ(Ra)が、1nm以上20nm以下、クリプトンガス吸着から求めたBET法比表面積が0.5m/g以上1.5m/g以下で、かつX線光電子分光法によって求められる炭素繊維表面の酸素濃度比O/Cが0.01以上0.13未満にした炭素繊維をC/C複合材料に使用したところ、かかる課題を、一挙に解決することを究明したものである。
【0012】
本発明のC/C複合材料用炭素繊維は、表面の算術平均粗さ(Ra)が1nm以上20nm以下であることが必要である。この範囲のものは、C/C構造材で高い引張強度が発現し易く、C/C複合材料に好適である。20nmを越える算術平均粗さの表面を有する炭素繊維は表面の凹凸が著しいため、C/C複合材料に使用するとアンカー効果と呼ばれる物理接着が高くなり引張強度を低下させる場合がある。また、1nmより小さい算術平均粗さの表面を有する炭素繊維は表面が平滑であるため層間剪断強度が低下する場合がある。より好ましくは1nm以上15nm以下、さらに好ましくは1nm以上10nm以下である。
【0013】
ここで、表面の算術平均粗さ(Ra)とは、炭素繊維表面の凹凸の指標であり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定する600nm×600nmの3次元表面形状の像について、繊維の丸みを3次曲面で近似したものを平均線とし、得られた3次元表面形状の像を対象として、算出した算術平均粗さ(Ra)である。
【0014】
本発明のC/C複合材料用炭素繊維は、炭素繊維のクリプトンガス吸着から求めたBET法比表面積が0.5m/g以上1.5m/g以下、さらに好ましくは0.5m/g以上1.2m/g以下で、かつX線光電子分光法によって求められる炭素繊維表面の酸素濃度比O/Cが0.01以上0.13未満、さらに好ましくは、0.03以上0.10以下の範囲になるように制御する。このように制御した場合、高い引張強度を有するC/C複合材料が得られる。この理由は明確ではないが、炭素繊維表面の官能基を減少させることで、マトリックス炭素との結合力が弱くなり、界面での引き抜けを生じさせ、高い引張強度を有するC/C複合材料を得ることができる。また、炭素繊維表面に微少な凹凸をつけることでバインダーとの濡れ性を向上させ、界面に緻密な層が形成できることから、接着特性の低下を抑止して高い引張強度が得られたと推定している。比表面積が1.5m/gより大きいと、炭素繊維表面の欠陥が多く炭素繊維自体の強度低下を生じ、0.5m/g未満だと、マトリックス炭素と炭素繊維の濡れ性が悪く、界面の緻密化ができないことから高い引張強度を有するC/C複合材料を得ることができない。また、炭素繊維表面の酸素濃度比O/Cが0.01未満だと炭素繊維とマトリックス炭素となるバインダーとの親和性がほとんどなくなることから、バインダーの含浸が困難となり、酸素濃度比O/Cが0.13以上では、炭素繊維とマトリックス炭素の結合力が大きくなり、マトリックス炭素内部に生じたクラックが炭素繊維を切断して直線的に進行し、脆性的な破壊を導き、低強度のC/C複合材料となる。
【0015】
ここで、本発明でいう炭素繊維表面の酸素濃度比O/Cは次の手法にて、X線光電子分光法により得ることができる。
【0016】
測定する炭素繊維束にサイジング剤等の後処理剤が付着している場合は、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノールなどの溶媒で洗浄し、蒸留水で洗い流し、必要に応じて超音波洗浄するなどしてサイジング剤などを除去後、適当な長さにカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、下記条件にて測定できるものである。
【0017】
また、バインダーなどと混合されている炭素繊維束について測定する場合は、塩化メチレン、メチルエチルケトン、アセトン、エタノールなどの溶媒で樹脂を除去して炭素繊維束を取り出し同様の方法で測定できるものである。
【0018】
・X線源:AlKα1,2あるいはMgKα1,2
尚、測定時の帯電に伴うピークの補正は、C1Sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせることで実施できる。
【0019】
次いで、C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1sピーク面積[O1s]は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
【0020】
表面酸素/炭素比(O/C)は、上記O1sピーク面積[O1s]、C1sピーク面積[C1s]の比、及び装置固有の感度補正値より、次式により求めることができる。
【0021】
O/C=([O1s]/[C1s])/(感度補正値)
さらに、本発明のC/C複合材料用炭素繊維は、前記炭素繊維が束状になった束状の炭素繊維でもよく、好ましくは1000〜100000本、より好ましくは3000〜70000本、更に好ましくは10000〜50000本、特に好ましくは12000〜24000本の単繊維が束になった束状の炭素繊維であることが取扱性の観点などから好ましい。またかかる束状の炭素繊維は、そのストランド強度が4GPa以上7GPa以下、好ましくは4.5GPa以上6.5GPaの範囲にあることが、C/Cコンポジット自体の強度が高くでき、特に構造材に好適である。かかるストランド強度は炭素繊維束に下記組成の樹脂を含浸させ、130℃で35分間硬化させた後、JIS R7601に基づいて行う引張試験により求めることができる。
【0022】
Figure 2004244258
また、かかる束状の炭素繊維は、そのストランド弾性率が200GPa以上400GPa以下であることが、高強度、高接着なC/C複合材料を得るという点で好適である。ここでいうストランド弾性率は、上記ストランド強度測定方法と同様の方法で引張試験を行い、荷重−伸び曲線の傾きから求めることができる。
【0023】
次に、本発明のC/C複合材料用炭素繊維の製造方法について説明する。
【0024】
本発明のC/C複合材料用炭素繊維は、レーヨン、ポリアクリロニトリル、ピッチなどの繊維を炭素化した繊維、或いはそれらをさらに高温で熱処理した黒鉛化繊維が主として用いられる。高強度なC/C複合材料を得るには、高強度な炭素繊維が得られやすいアクリロニトリル繊維を用いるのが好ましい。
【0025】
前述したクリプトンガス吸着から求めたBET法比表面積、X線光電子分光法によって求められる表面酸素濃度比O/Cを有するC/C複合材料用炭素繊維は、電解酸化処理を施した後、水洗及び乾燥を行った後、さらに不活性雰囲気中において、250℃以上1000℃以下、好ましくは400℃以上750℃以下、処理時間は1分以上5時間以下の範囲で加熱処理をおこなうことで得ることができる。電解酸化処理は、処理ムラを制御し、かつ短時間で炭素繊維表層深く酸化処理ができるため、比表面積および表面酸素濃度を制御し易い。かかる電解酸化処理に使用される電解液は、酸性、アルカリ性のいずれでもよい。また、加熱処理は電解酸化処理により炭素繊維表面に導入された官能基を除去し、既定の表面酸素濃度比O/Cになるように制御する。
【0026】
具体的には、電解液の電気伝導度が15mS/cm以上100mS/cm以下に調整された電解液槽中で、炭素繊維の単位重量あたりの電流値が0.5A以上100A以下、好ましくは2A以上80A以下、かつ処理時間が0.5秒以上20秒以下、好ましくは1秒以上10秒以下に制御することにより、前述したクリプトンガス吸着から求めたBET法比表面積を制御できる。電解液の電気伝導度が15mS/cm未満であると、電流が流れにくく電流値の制御が困難であり、100mS/cmを超えると、高濃度であるため、後の水洗工程での電解質の除去が不十分になる場合がある。好ましくは15mS/cm以上30mS/cm以下である。また、炭素繊維の単位重量あたりの電流値が0.5A未満であると、電流値が小さいため処理斑が生じ、100Aを超えると、炭素繊維表面の過剰な酸化処理により糸自体の強度が低下する場合がある。さらに処理時間が20秒より長いと、炭素繊維表面の酸化処理がゆっくり進行するため、表面凹凸ができにくく、0.5秒より短いと処理斑が生じ、均一なC/Cコンポジットを得られない場合がある。上記、電解酸化処理の際には、炭素繊維を陽極、白金板を陰極とし、かかる処理を行うことができる。
【0027】
電解酸化処理の後、水洗および乾燥を行った後の加熱処理は、炭素繊維のX線光電子分光法によって求められる炭素繊維表面の酸素濃度比O/Cが0.01以上0.13未満になる方法であれば特に制限されることはないが、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気中、好ましくは窒素雰囲気中で250℃以上1000℃以下、好ましくは400℃以上750℃以下、処理時間は1分以上5時間以下の範囲で処理する方法が好ましい。処理温度が250℃未満であると、官能基の除去が不十分となり、1000℃を越えると、繊維自体の強度が低下する可能性がある。また、処理時間が1分未満であると、処理時間が短いため官能基の除去が不十分となり、5時間より長いと糸自体の強度が低下する場合がある。より好ましくは1分以上30分以下の処理時間とするのが良い。
【0028】
加熱処理の後、さらに必要に応じて、炭素繊維にサイジング剤を付与することもできる。サイジング剤としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂や、コールタールピッチ、石油ピッチ等のピッチを用いることができる。
【0029】
上記、本発明のC/C複合材料用炭素繊維を適用することにより、力学特性とりわけ引張強度に優れたC/C複合材料を作製することができる。かかるC/C複合材料は強化繊維方向が実質的に一方向であるC/C複合材料とすることもできるし、強化繊維方向が90°、0°方向に交差したような二方向C/C複合材料、その他目的に応じて繊維方向を任意に設定することができる。
【0030】
かかる本発明のC/C複合材料は前記炭素繊維に各種バインダーを含浸せしめ、加熱硬化することで得ることができる。C/C複合材料の製造に用いるバインダーの種類については特に制限はなく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、あるいはコールタールピッチ、石油ピッチ等のピッチなどの任意のものを使用することができ、これらバインダーを炭素繊維に混合あるいは含浸させた後乾燥して炭素繊維とバインダーからなる組成物を得る。その際、バインダーはアルコール、アセトン、アントラセン油等の溶媒に溶解して適当な粘度に調整したものを使用することができる。また、加熱硬化する温度や時間はバインダーの種類によって適宜設定することができるが、例えば、フェノール樹脂を用いた場合、120〜150℃、5〜10MPaにて加圧加熱成形した後、空気中で170〜250℃まで加熱処理して後硬化を行った後、さらに窒素中500〜2000℃にて炭素化処理、2000〜3000℃にて黒鉛化処理を行う。また、C/C複合材料中の繊維体積含有率としては30〜70%が好ましく、40〜60%が好ましい。かかる範囲の炭素繊維繊維含有量とすることにより、引張強度に優れたC/C複合材料とすることができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが制限されるものではない。
【0032】
尚、本実施例で用いた特性の測定方法は以下の通りである。
<算術平均粗さ(Ra)の測定>
表面の算術平均粗さ(Ra)は次のようにして測定した。測定試料としては、炭素繊維を長さ数mm程度にカットしたものを使用した。銀ペーストを用いて基板(シリコンウエハ)上に固定し、原子間力顕微鏡(AFM)によって各単繊維の中央部において、3次元表面形状の像を得た。原子間力顕微鏡としてはDigital Instuments社製 NanoScope IIIaにおいてDimension 3000ステージシステムを使用した。観測条件は下記条件とした。
【0033】
・走査モード:タッピングモード
・探針:シリコンカンチレバー
・走査範囲:0.6μm×0.6μm
・走査速度:0.3Hz
・ピクセル数:512×512
・測定環境:室温、大気中
各試料について、単繊維1本から1箇所ずつ観察して得られた像について、繊維断面の丸みを3次曲面で近似し、得られた像全体を対象として、算術平均粗さ(Ra)を算出した。単繊維5本について、算術平均粗さ(Ra)を求め平均した。
<炭素繊維のBET法比表面積の測定>
炭素繊維のBET法比表面積は次のようにして測定した。試料としては炭素繊維を長さ数十cm程度にカットしたものを使用した。試料を精秤後、試験管に封入し、クリプトンガスの吸着によりBET法比表面積を測定した。ガス吸着に際しては、日本ベル(株)製 高精度全自動ガス吸着装置「BELSORP 36」を使用し、測定条件は下記の通りとした。
【0034】
・吸着ガス:Kr
・死容積:He
・吸着温度:液体窒素温度(77K)
・測定前処理:200℃
・測定モード:等温での吸着
・測定範囲:相対圧(P/P0)=0.01〜0.4
P:測定圧
P0:吸着ガスの飽和蒸気圧
・平衡時間:各平衡相対圧につき180sec
比表面積の計算法はBET理論を適用した。同理論式に従ってBETプロットの約0.05〜0.3の相対圧域を解析して比表面積を算出した。
<ストランド引張強度および弾性率の測定>
束状の炭素繊維に下記組成の樹脂を含浸させ、130℃で35分間硬化させた後、JIS R7601に基づいて引張試験を行った。
【0035】
Figure 2004244258
<炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)>
表面酸素濃度比O/Cは、次の手順に従ってX線光電子分光法により求めた。試料となる炭素繊維束は、適当な長さにカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた。光電子脱出角度を90゜とし、X線源としてMgKα1,2を用い、試料チャンバー内を1×10−8Torrの真空度に保った。測定時の帯電に伴うピークの補正として、C1Sの主ピークの結合エネルギー値を284.6eVに合わせた。C1Sピーク面積は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、O1Sピーク面積は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。表面酸素濃度O/Cは、上記C1sピーク面積に対するO1Sピーク面積の比を、装置固有の感度補正値で割ることにより算出した原子数比で表した。なお、本実施例ではX線光電子分光測定装置として島津製作所(株)製ESCA−750を用い、かかる装置固有の感度補正値は2.85であった。
<C/C複合材料の引張強度>
一方向C/C複合材料の平板を切断し、繊維軸方向に長さ50±1mm、繊維軸方向に幅10±1mm、厚さ2.0±0.2mmからなる試験片を作製した。試験片の中央部10mmを残して両端の両側に厚さ1mmのアルミ製タブを接着して、引張強度用の試験片とした。試験速度は0.5mm/分とした。試験数は5つとし、その平均を引張強度とした。尚、試験機には、荷重測定誤差が±1%を超えない、クロスヘッド移動速度を一定に保てる形式の適当な材料試験機を用いるが、本実施例においては、試験機としてインストロン(登録商標)試験機4208を用いた。C/C複合材料の切断にはダイヤモンドカッターを用いた。
<C/C複合材料の層間剪断強度>
一方向C/C複合材料の平板を切断し、繊維軸方向に長さ14±1mm、繊維軸方向に幅10±0.2mm、厚さ2±0.2mmの試験片を作製した。加圧くさび(上部圧子)の曲率半径を10mmとし、支点(下部圧子)の曲率半径を4mmとし、支持スパンを試験片の厚みの5倍とし、試験速度1mm/分として、JIS K7078に規定する試験方法に従って測定した。本実施例においては、試験機としてインストロン(登録商標)試験機4208を用いた。
【0036】
(実施例1)
ストランド強度が4.9GPa、ストランド弾性率が240GPaのポリアクリロニトリル系炭素繊維束(単繊維直径6.9μm、フィラメント数12000本/束)を陽極とし、白金を陰極として、電気伝導度が15mS/cmになるように調整された硫酸水溶液中で、炭素繊維1g当たりの電流80Aで1秒間電解処理した後、水洗、260℃の加熱空気中で乾燥した。さらに650℃の窒素雰囲気中で1時間加熱処理した。得られた炭素繊維束の表面の算術平均粗さRa6.1nm、比表面積0.94m/g、表面酸素濃度比0.06であった。
【0037】
この炭素繊維束を金型中に置いた後、レゾール系フェノール樹脂(住友ベークライト社製スミライトレジン(登録商標)PR−50087)を含浸して、150℃で9.8MPa(100kgf/cm)にて加圧加熱成形して、厚さ2.0mmの成形板を得た。さらにこの成形板を空気中で昇温速度3℃/hrにて250℃まで加熱処理して後硬化を行った後、窒素中にて15℃/hrで1000℃まで加熱して炭素化処理を行った。さらに15℃/hrで2000℃まで加熱して24時間保持し、黒鉛化処理を行った。このC/C複合材料の繊維体積含有率は40%、引張強度は612MPa、層間剪断強度は12.5MPaで、高い引張強度が得られた。
【0038】
(比較例1)
前記実施例1において、電解処理をしない以外は実施例1と同じ製造方法により束状の炭素繊維および一方向C/C複合材料を製造した。得られた炭素繊維の表面の算術平均粗さRa2.5nm、比表面積0.40m/g、表面酸素濃度比0.06であった。また、C/C複合材料の繊維体積含有率は40%、引張強度は560MPa、層間剪断強度は9.9MPaであった。
【0039】
(実施例2)
前記実施例1において、10A、4秒で電解処理した後、650℃の窒素雰囲気中で3時間加熱処理しした以外は実施例1と同じ製造方法により束状の炭素繊維および一方向C/C複合材料を製造した。得られた炭素繊維の表面の算術平均粗さRa5.0nm、比表面積0.63m/g、表面酸素濃度比0.05であった。また、C/C複合材料の繊維体積含有率は40%、引張強度は622MPa、層間剪断強度は12.4MPaであり、高い引張強度が得られた。
【0040】
(比較例2)
前記実施例2において、加熱処理をしない以外は実施例2と同じ製造方法により一方向C/C複合材料を製造した。得られた炭素繊維の表面の算術平均粗さRa5.0nm、比表面積0.63m/g、表面酸素濃度比0.30であった。また、C/C複合材料の繊維体積含有率は40%、引張強度は481MPa、層間剪断強度は12.0MPaであった。
【0041】
(実施例3)
前記実施例1において、800℃の窒素雰囲気中で2時間加熱処理しした以外は実施例1と同じ製造方法により束状の炭素繊維および一方向C/C複合材料を製造した。得られた炭素繊維の表面の算術平均粗さRa6.0nm、比表面積0.93m/g、表面酸素濃度比0.02であった。また、C/C複合材料の繊維体積含有率は40%、引張強度は595MPa、層間剪断強度は12.2MPaであり、高い引張強度が得られた。
【0042】
(実施例4)
前記実施例1において、100A、5秒で電解処理した以外は実施例1と同じ製造方法により束状の炭素繊維および一方向C/C複合材料を製造した。得られた炭素繊維の表面の算術平均粗さRa11.0nm、比表面積1.30m/g、表面酸素濃度比0.06であった。また、C/C複合材料の繊維体積含有率は40%、引張強度は592MPa、層間剪断強度は12.0MPaであり、高い引張強度が得られた。
【0043】
(実施例5)
前記実施例1において、300℃の窒素雰囲気中で0.05時間加熱処理した以外は実施例1と同じ製造方法により束状の炭素繊維および一方向C/C複合材料を製造した。得られた炭素繊維の表面の算術平均粗さRa6.1nm、比表面積0.95m/g、表面酸素濃度比0.12であった。また、C/C複合材料の繊維体積含有率は40%、引張強度は598MPa、層間剪断強度は12.5MPaであり、高い引張強度が得られた。
【0044】
実施例1〜5、比較例1〜2の結果を表1にまとめて示す。
【0045】
【表1】
Figure 2004244258
【0046】
表1から明らかなように、実施例1〜5のものは、比較例1〜2のものに比して、C/C複合材料の引張強度が著しく優れていることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、引張強度を向上させたC/C複合材料およびその製造方法、更にはかかるC/C複合材料用の炭素繊維、およびその製造方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. 表面の算術平均粗さ(Ra)が、1nm以上20nm以下、クリプトンガス吸着から求めたBET法比表面積が0.5m/g以上1.5m/g以下で、かつX線光電子分光法によって求められる炭素繊維表面の酸素濃度比O/Cが0.01以上0.13未満である炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維。
  2. 4GPa以上7GPa以下のストランド強度を有する束状である請求項1記載の炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維。
  3. 200GPa以上400GPa以下のストランド弾性率を有する束状である請求項1または2記載の炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維。
  4. 電気伝導度が15mS/cm以上100mS/cm以下の電解液中で、炭素繊維を陽極として、炭素繊維の単位重量あたりの電流値が0.5A以上100A以下、かつ処理時間が0.5秒以上20秒以下に通電して電解酸化処理を施した後、該炭素繊維を水洗、乾燥した後、不活性雰囲気中で温度250℃以上1000℃以下で1分以上5時間以下で加熱処理する炭素繊維強化炭素複合材料用炭素繊維の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維を含む炭素繊維強化炭素複合材料。
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