JP2004243975A - 車両用シート装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両のフロア7に形成された凹部10の前側にシート4を着座可能な上向き状態で配置した状態から、シート4を、その背部4bを前側に倒し座部4cと重ね合わせた折り畳み状態で座部4cの後部の支軸22を中心に後側に回動させる格納動作により凹部10に収納するもので、シート4の上向き状態における下側にボード27を設け、ボード27とシート4とをリンク機構64で連結させるとともに、シート4の格納動作時に該シート4の座部4cの上向き状態における後部Kをボード27の後部下側に潜り込ませることにより該ボード27を座部4cの裏面4Aと凹部前方のフロア32とに掛け渡す。
【選択図】 図12
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用シート装置に関し、特に、収納時においては荷室として適した剛性を有し、かつ、いわゆるフルフラット化が可能な車両用シート装置に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両フロアに凹部を形成し、この凹部にシートを格納できるようにした車両用シート装置が知られている。車両フロアの凹部の前部に配置されたシートは、背部を前側に倒し前記座部と重ね合わせた状態で座部後部に設けた支軸を中心にして後側に回動する格納動作により前記凹部に収納されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−63421号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においては、シートを回動しフロアの凹部にフラットな状態で格納することで、凹部前方のフロアと格納されたシートの座部の裏面とで平坦な荷室底面を確保することはできるが、格納されたシートの座部裏面の前部と凹部の前端との間に空間部が形成されてしまう場合には、この空間部において荷室底壁の剛性が低下するという問題がある。従って、シート乗員の頭部とルーフとのクリアランスを確保するためシートを下方に下げるとさらに空間部が広がり、設計自由度が減少する。
【0005】
また、上記空間部が生じないように、凹部やシートの位置を変更することも考えられるが、多くの制約の中で車室内レイアウトを行っている現状を考えると、凹部の位置やシートの位置に更なる制限が加えられてしまうと車室内備品の配置が更に困難となるという問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、シートを容易に収納することができると共に、シートが格納された状態でフラットで剛性のある荷室底壁を形成することができる車両用シート装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、車両のフロア(例えば実施形態における第3フロア7)に形成された凹部(例えば実施形態における凹部10)の前側にシート(例えば実施形態における3列目シート4)を着席可能な上向き状態で配置し、該シートを、その背部(例えば実施形態における背部4b)を前側に倒し座部(例えば実施形態における座部4c)と重ね合わせた折り畳み状態で該座部の後部の支軸(例えば実施形態における支軸22)を中心に後側に回動させる格納動作により前記凹部に収納する車両用シート装置であって、前記シートの前記上向き状態における下側にボード(例えば実施形態におけるボード27)を設け、該ボードと前記シートとを回転連結機構(例えば実施形態におけるリンク機構64)で連結させるとともに、前記シートの前記格納動作時に該シートの前記座部の前記上向き状態における後部(例えば実施形態における後端部K)を前記ボードの後部下側に潜り込ませることにより該ボードを前記座部の裏面(例えば実施形態における裏面4A)と前記凹部前方のフロア(例えば実施形態におけるボードブラケット32(その他、クロスメンバ30など車体ボディ構成部品でも良い))とに掛け渡すことを特徴としている。
【0008】
これにより、シートを背部を前側に倒し座部と重ね合わせた折り畳み状態で座部の後部の支軸を中心に後側に回動させる格納動作を行うと、シートの座部の上向き状態における後部がシートの下側のボードの後部下側に潜り込んでボードを座部の裏面と凹部前方のフロアとに掛け渡すことになり、両者間の空間部をボードで閉塞できる。
また、ボードは凹部に格納されたシートの座部の裏面と凹部前方のフロアとに掛け渡されるため、両者間に形成された空間部を閉塞できるボードを用いるだけで容易にフロアのフラット化を実現できる。
さらに、ボードとシートとを回転連結機構で連結させているため、シートが格納動作を行いその座部がボードの後部下側に潜り込む際に、ボードの作動を安定させることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記回転連結機構は、リンク機構であって、前記ボードの後部に設けられたボード側係合部(例えば実施形態におけるボード側係合部材53)と、前記座部の前記上向き状態における後部に設けられた座部側係合部(例えば実施形態における座部側係合部材60)と、これらボード側係合部および座部側係合部のそれぞれに回動可能に連結されるリンク部材(例えば実施形態におけるリンク部材63)とを有することを特徴としている。
【0010】
これにより、シートを折り畳み状態で座部の後部の支軸を中心に後側に回動させる格納動作を行う際に、シートの座部の上向き状態における後部がボードの後部下側に潜り込む際に、ボードを前方に押したり傾斜させたり持ち上げたりしても、ボードの後部に設けられたボード側係合部が、座部の上向き状態における後部に設けられた座部側係合部にリンク部材で連結されているため、ボードの作動を安定させることができる。また、リンク部材を設けることにより、シートが上向き状態にあるときのシート下とボードとの間にシート状部材を介在させる空間を設定できる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記座部の前記上向き状態における後部の裏側には、前記格納動作後に前記ボードを載置させる載置面(例えば実施形態における載置面57B)が裏側の端面(例えば実施形態における端面57A)よりも座面(例えば実施形態における座面4B)側に凹んで形成されていることを特徴としている。
【0012】
これにより、格納動作後にボードを座部の載置面に載置させると、座部の載置面が裏側の端面よりも座面側に凹んで形成されているため、ボードが座部の裏側の端面に対し突出することを防止でき、平坦な荷室底壁を形成できる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記ボードの上面から前記座部の裏面に渡って可撓性のあるシート状部材(例えば実施形態におけるシート状部材S)を設けたことを特徴としている。
【0014】
このように構成することで、シート格納時にボード上面からシートの座部裏面に渡る部位をシート状部材で覆うことができ、荷室底壁の見栄えが向上し、シート材質を選択すれば使い勝手性も向上する。例えば、雨水で塗れた荷物等を搭載することに対応してゴムシートを選択する等ができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態の車両用シート装置を図面と共に説明する。
図1、図2において1は2ボックスタイプの車両を示している。この車両1はフロアF上に前方から後方に向けて3列に渡って1列目シート2、2列目シート3及び3列目シート4が配置されたシート配置構造となっている。なお、本実施形態の車両用シート装置は、具体的には上記3列目シート4に適用されている。
【0016】
1列目シート2が載置された第1フロア5は、段差d1だけ高い位置の第2フロア6に接続され、この第2フロア6に2列目シート3が載置されている。また、第2フロア6は段差d2だけ高い位置の第3フロア7に接続され、この第3フロア7に3列目シート4が載置されている。これにより、3列目シート4はその前方に形成された段差d2により、着座姿勢にある乗員の膝高さを確保できることとなるため、快適な着座感を与えることができる。尚、第3フロア7は両脇部分が高い位置に形成されている。そして、第1フロア5の前縁はダッシュロア8の下縁に接続され、第3フロア7の立ち上がり面に前方から後方に深くなるように、キャビン後部に下方に向かって落とし込み形成されたスペアタイヤ9等を収納するための凹部10が形成されている。
【0017】
第3フロア7の前部上面、具体的には第3フロア7の両脇部分から落とし込まれた第3フロア7の高さの低い前部には断面台形状のクロスメンバ30が車幅方向に取り付けられている。また、第3フロア7のこの前部の下面には、断面L字形状のクロスメンバ50が車幅方向に取り付けられており、第3フロア7の後部には、断面台形状をなして下方に凹む凹部51が車幅方向に形成されていて、この凹部51の開口側を覆うように補強板52が車幅方向に取り付けられている。これらクロスメンバ30,50および凹部51の上方にクロスメンバ30から凹部10の前部に向けて3列目シート4が配置されている。
【0018】
したがって、前記フロアFは各列のシート毎に前方から後方に立ち上がるようにして第1フロア5、第2フロア6、第3フロア7と階段状に形成されることとなる。なお、Pはヒップポイントを示す。
【0019】
ここで車両1の前部にはエンジン11が配置され、エンジン11に連結されたプロペラシャフト12の後部のデファレンシャルギヤ13が第3フロア7の下の空間部14に配置されている。また、第2フロア6下の空間部15には燃料タンク16が配置されている。これら燃料タンク16、デファレンシャルギヤ13及びスペアタイヤ9の凹部10の下部は略同一位置に設定されている。
したがって、燃料タンク16とデファレンシャルギヤ13と凹部10の下部により決定される最低地上高Hを確保できると共に第1フロア5からの車室内スペース(高さh1)と第2フロア6からの車室内スペース(高さh2)を十分に確保できる。
【0020】
各列シート2,3,4は、図3に示すように基本的に、各々座部2c,3c,4cと起倒可能に支持された背部2b,3b,4bとを備えたものであり、1列目シート2と2列目シート3は左右が独立したシートで、3列目シート4は左右が一体のいわゆるベンチシートとなっている。なお、各列シート2,3,4の背部2b,3b,4bには各々ヘッドレスト2r,3r,4rが取り付けられている。
【0021】
2列目シート3は座部3cと背部3bとで構成され、座部3cは前側に立ち上げ可能で、かつ、背部3bを前方に倒し込み水平状態保持可能な折り畳みシートで構成されている。
具体的には図5〜図7に示すように、第2フロア6には前後方向に一対のスライドレール17が取り付けられている。スライドレール17にはリンク18の基端がブラケット20を介して前後方向にスライド可能、かつ、回動可能に支持され、リンク18の回動端に座部3cの前部下面がブラケット21を介して回動可能に支持されている。
【0022】
そして、背部3bはその下端がスライドレール17の後部にヒンジブラケット19を介して前倒可能に支持され、座部3bの上端に設けたヘッドレスト3rは前側に屈曲可能に支持されている。ここで、27Aはバックボードを示し、このバックボード27Aは2列目シート3の背部3bの背面下部にバックボードブラケット31を介して回動可能に取り付けられ、後述するボードブラケット32上面に掛け渡されるのに十分な長さを有している。尚、バックボード27Aの材質は樹脂であるが金属で成形してもよい。
【0023】
したがって、座部3cを前方にスライドさせて(図5の矢印(1))、更にリンク18を介して前側に立ち上がる状態まで回動させ(図6の矢印(2))、ヘッドレスト3rを前倒させた(図6の矢印(3))状態で、背部3bをヒンジブラケット19を介して前側に回動させ(図7の矢印(4))、バックボード27Aをバックボードブラケット31を中心にして後側に回動させて前記ボードブラケット32上面に回動端を載置すると、背部3bのヘッドレスト3rは一対のリンク18,18の間に収まり背部3bの背面が第3フロア7の高側の面と面一になった状態で折り畳まれる。
【0024】
また、この状態で2列目シート3の背部3bの背面と後方のボードブラケット32の上面との間はバックボード27Aにより平坦な状態となる。なお、ヘッドレスト3rの先端部は第2フロア6の面よりも下に突出するが、第1フロア5と第2フロア6との間に形成された段差d1に収まるため、背部3bの折り畳み機能に悪影響を与えることはない。
【0025】
3列目シート4は、図8に示すように、座部4cと背部4bとで構成され、前記凹部10の前側に着席可能な上向き状態で配置されており、具体的には、凹部10の前側に位置するクロスメンバ30の上方に座部4cの前部を位置させ、座部4cの後部を前記凹部10に落と込むように傾斜して配置されている。この3列目シート4は、背部4bを前側に倒し座部4cの座面4Bと重ね合わせた折り畳み状態とすることが可能な折り畳みシートであり、この折り畳み状態で、後部を中心として後方への回動させられる格納動作により、フロアF下に位置する前記スペアタイヤ9用の凹部10の上側に収納されて水平状態に保持される。
【0026】
具体的には、図8〜図13に示すように、3列目シート4の座部4cには、その側壁の後部に水平方向に突出する支軸22が設けられ、この支軸22を中心にして凹部10の側方の車体部材に回動可能に支持されている。
つまり、3列目シート4の座部4cに支軸22が貫通して設けられ、この支軸22は凹部10の側壁を貫通し、車体側部に前後方向に沿って設けられたサイドフレーム35,35に軸受けブラケット36を介して回転可能に支持されている。
【0027】
また、座部4cの側壁の前部には下方に開放された係止ブラケット23が取り付けられ、この係止ブラケット23の係止部24に図示しない車体側壁から突出する係止ピン25を係止させることで3列目シート4の前側への回動を規制している。
【0028】
このように後部が支軸22で支持され、前部が係止ブラケット23を介して係止ピン25に支持された上向き状態で、3列目シート4は、前記凹部10の前側に位置するクロスメンバ30の上方に座部4cの前部を位置させ、座部4cの後部を前記凹部10に落とし込むように傾斜して配置されることになり、上記のように直接的に支軸22をサイドフレーム35,35に支持している。
【0029】
3列目シート4の背部4bはその下端が座部4cの後部にヒンジブラケット28を介して前倒可能に支持され、背部4bの上端に設けたヘッドレスト4rも前倒可能に支持されている。
【0030】
ここで、前記凹部10の底壁にはスペアタイヤ9及び図示しない工具類が収納され、このスペアタイヤ9の上部を覆うように凹部10にフロアシート26が落とし込まれて開閉可能に配置されている。
【0031】
一方、前記クロスメンバ30の前部傾斜面30Aには、金属製や樹脂製のボードブラケット32が固定されている。このボードブラケット32はクロスメンバ30の上部を覆うようにして配置された部材で、凹部10に落とし込まれたフロアシート26が凹部10の前壁10aに沿って上に延出し凹部10から出た後、斜め上方に傾斜しつつ前方に延出して、ボードブラケット32を覆い、さらにクロスメンバ30の前部傾斜面30Aに沿って下がりつつ前方に延出している。
【0032】
ボードブラケット32の上側には、フロアシート26を介して平坦な形状のボード27がその前端部において載置(支持)されており、このボード27の後端部は上向き状態にある3列目シート4の座部4cの後部に吊り下げられている。
【0033】
ボード27は、上向き状態にある3列目シート4の座部4cの上向きの座面4Bに対し逆側つまり下向きの裏面4Aに沿い、その前部から後部に向かい支軸22の近傍まで延出する金属製や樹脂製の板状部材である。つまり、ボード27は、3列目シート4の上向き状態における下側に設けられている。このボード27の後端部には、図14に示すように、車幅方向に沿うワイヤ等のボード側係合部材(ボード側係合部)53が、複数車幅方向に所定のピッチで配置されている。ここで、このボード27には、後端縁部のボード側係合部材53が設けられる位置に凹状に切り欠かれた切欠部54が形成されており、この切欠部54内でボード27の端縁位置に位置するようにボード側係合部材53が固定されている。具体的に、ボード27は端縁部が、図15に示すように、略円筒状に丸められながら折り返された形状の折返部55で構成されており、この略円筒状の折返部55内にボード側係合部材53を囲むようにして固定している。
【0034】
3列目シート4の座部4cの裏面4A側には、座部フレーム57が設けられており、この座部フレーム57は、図8〜図13に示すように、その大部分が座部4cの裏面4A側の端面57Aを形成しており、上向き状態における後部に前記端面57Aよりも座面4B側にボード27の厚み分だけ凹んだ載置面57Bを形成する段付形状をなしている。なお、載置面57Bは端面57Aと平行をなしている。また、端面57Aおよび載置面57Bは、ともに座部4cにおいて裏側に向く裏面4Aを構成している。
【0035】
座部フレーム57の端面57Aと載置面57Bとの境界部分近傍に、図16,図17に示すように、車幅方向に沿うワイヤ等の座部側係合部材(座部側係合部)60が、複数車幅方向に所定のピッチで配置されている。ここで、この座部フレーム57には、座部側係合部材60が設けられる位置に矩形状の穴部61が形成されており、この穴部61を横切るように配置されて座部側係合部材60が溶接等で固定されている。
【0036】
そして、図18および図19に示すように、ボード27の後部に設けられたボード側係合部材53と、座部4cの上向き状態における後部に設けられた座部側係合部材60とがリンク部材63で連結されてリンク機構(回転連結機構)64を構成している。
【0037】
ここで、リンク部材63は、ボード側係合部材53および座部側係合部材60のそれぞれに回動可能に連結されている。このリンク部材63は、両端にボード側係合部材53および座部側係合部材60にそれぞれ回動可能かつ着脱不可に係合するフック部65,66が形成されており、これらフック部65,66同士を平板状の板部67で連結させた形状をなしている。ここで、リンク部材63とボード側係合部材53とボード27とがヒンジ結合とされており、リンク部材63と座部側係合部材60と座部フレーム57とがヒンジ結合とされていて、いわゆるダブルヒンジの構造をなしている。
【0038】
以上により、ボードブラケット32の上側にフロアシート26を介して載置されたボード27の後端部は上向き状態にある3列目シート4の座部4cにリンク部材63を介して吊り下げられている。
【0039】
一方、ボード27の上面には可撓性のある樹脂などで形成されたシート状部材Sがほぼ全面にわたって貼り付けられており、このシート状部材Sはボード27の後部側で上側に折り返されて上向き状態にある3列目シート4の座部4cの裏側の端面57Aに貼り付けられている。
【0040】
ここで、ボード27の後端部は3列目シート4の座部4cの上向き状態における後端部Kの回動軌跡に干渉する位置に配置され、3列目シート4の格納動作に連動して3列目シート4の上側に変位し、3列目シート4の収納状態で、3列目シート4とボードブラケット32とに掛け渡され、3列目シート4の背部4bの背面、周囲の第3フロア7及びボードブラケット32上面とで、平坦で、剛性のある荷室底壁を構成する。つまり、3列目シート4の格納動作時に3列目シート4の座部4cの上向き状態における後端部Kをボード27の後部下側に潜り込ませることによりボード27を座部4cの裏面4Aの載置面57Bと凹部10の前方のフロアであるボードブラケット32とに掛け渡す。尚、ボードブラケット32を廃止して前記クロスメンバ30の上面に直接的にボード27の前部を支持してもよい。
【0041】
したがって、図8および図9に示す上向き状態にある3列目シート4の背部4bをヒンジブラケット28を中心に前方に倒し込み(図8の矢印(5))、ヘッドレスト4rを前倒させた状態(図10の状態)で、座部4cの係止ブラケット23の係止部24から車体側の係止ピン25の係合を解除して座部4cと背部4bとを前記支軸22回りに後方に回動させる3列目シート4の格納動作の際に(図10の矢印(6))、図10および図11に示すようにボード27の後端に3列目シート4の座部4cの後端部Kが載置面57Bで当接して、図12および図13に示すように、ボード27の後部下側に潜り込む。このとき、ボード27の後端が3列目シート4の上側に持ち上げられて(図10の矢印(7))、3列目シート4の下に位置していたボード27が3列目シート4の上側に載った状態となる。この格納動作においては、まず、図10および図11に示すように、座部フレーム57にリンク機構64のリンク部材63を介して吊り下げられた状態にあったボード27が座部4cの載置面57Bで前方に押圧されることになるが、座部4cの回転でリンク機構64の座部側係合部材60が支軸22を中心に旋回上昇することによって、これにリンク部材63を介して連結されたボード27の後部が引き上げられるため、ボード27は良好に座部4cの後端部Kの載置面57Bに載り上げ、その結果、座部4cの後端部Kが良好にボード27の後部下側に潜り込むことになる。
【0042】
そして、更に3列目シート4を回動させ、起立状態からは更に自重も加わって3列目シート4が回動すると(図12の矢印(6))、図12および図13に示すように第3フロア7の面と面一になるように3列目シート4が折り畳まれて凹部10のスペアタイヤ9より上側に収納されると共に、凹部10の前側の空間部はボード27で違和感なく閉塞されることとなる。このとき、ボード27の後部は、リンク部材63を介して連結されることで座部4cに対する距離が一定に維持されるため、座部4cの端面57Aからボード27の厚み分凹んだ載置面57B内の所定位置に載置されることになり、その結果、ボード27と座部4cの裏面4Aとが面一になる。そして、シート状部材Sにより、ボードブラケット32に敷設されたフロアシート26の上面、ボード27の上面、3列目シート4の座部4cの裏面4Aが段差、継ぎ目なく覆われる。
【0043】
上記したように、3列目シート4に対し上記のように格納動作を行うと、3列目シート4の座部4cの後端部Kがボード27の後部下側に潜り込む際に、上記のようにボード27を前方に押したり傾斜させたり持ち上げたりすることになるが、ボード27の後部に設けられたボード側係合部材53が、座部4cの後端部Kに設けられた座部側係合部材60にリンク部材63で連結されているため、ボード27の作動を安定させることができ、格納動作終了時にボード27が3列目シート4の座部4cに対してずれることを規制できる。その結果、シート状部材Sに皺を発生させたり、ボード27が座部4cの載置面57Bを超えて端面57Aに載り上げたりすることがなくなる。
【0044】
ここで、座部4cと背部4bとの折り畳み厚さ寸法は、フロアシート26の底部から第3フロア7上に取り付けたバックボードブラケット32上面の高さまでの深さ寸法Dとほぼ等しい寸法に設定されている。よって、ボード27と、ボード27の両脇の第3フロア7と、3列目シート4の座部4cの裏面4Aとで平坦な荷室底壁が形成されることとなる。尚、図8,図10,図12において29は車体後部開口部を開閉するテイルゲートを示す。
【0045】
上記実施形態によれば、3列目シート4をその背部4bを前側に倒し座部4cと重ね合わせた折り畳み状態で座部4cの後部の支軸22を中心に後側に回動させる格納動作を行うと、3列目シート4の座部4cの上向き状態における後端部Kが3列目シート4の下側に設けられたボード27の後部下側に潜り込んでこのボード27を座部4cの裏面4Aと凹部10の前方の第3フロア7を構成するバックボードブラケット32とに掛け渡すことになり、両者間の空間部Aをボード27で閉塞できる。したがって、凹部10の前側の第3フロア7を構成するバックボードブラケット32とボード27と3列目シート4の座部4cの裏面4Aとで、平坦、かつ、剛性のある荷室底壁を形成することができる。
【0046】
また、ボード27は凹部10に格納された3列目シート4の座部4cの裏面4Aと凹部10の前方の第3フロア7を構成するバックボードブラケット32とに掛け渡されるため、両者間に形成された空間部Aを閉塞できるボード27を用いるだけで容易にフロアFのフラット化を実現できる。したがって、車室内レイアウトに制約を与えず、特定車種に限定されず、汎用性を高めることができる。
【0047】
さらに、ボード27と3列目シート4とをリンク機構64で連結させているため、3列目シート4が格納動作を行いその座部4cがボード27の後部下側に潜り込む際に、ボード27の作動を安定させることができる。
【0048】
つまり、3列目シート4を折り畳み状態でその座部4cの後部の支軸22を中心に後側に回動させる格納動作を行うと、3列目シート4の座部4cの後端部Kがボード27の後部下側に潜り込む際に、ボード27を前方に押したり傾斜させたり持ち上げたりするが、このようにしても、ボード27の後部に設けられたボード側係合部53が、座部4cの後端部Kに設けられた座部側係合部60にリンク部材63で連結されているため、ボード27の作動を安定させることができる。したがって、簡素な構成で格納動作時のボード27の作動を安定させることができる。また、リンク部材63を設けることにより、3列目シート4が上向き状態にあるときのシート下とボード27との間にシート状部材Sを介在させる空間を設定できる。
【0049】
さらに、格納動作によってボード27を座部4cの載置面57Bに載置させると、座部4cの載置面57Bが裏側の端面57Aよりも座面4B側に凹んで形成されているため、ボード27が座部4cの裏側の端面57Aに対し突出することを防止できる。したがって、ボード27と座部4cとの段差を無くすことができ、平坦な荷室底壁を形成できる。
【0050】
しかも、3列目シート4が格納された状態でボード27の前側は、バックボードブラケット32の上にフロアシート26を介して載置されているのみであり、後部もリンク機構64を介して3列目シート4に対し揺動可能とされているため、ボード27の下に物を落とした場合に、容易にボード27を開閉させて物を取り出すことができる。
【0051】
加えて、3列目シート4の格納時にボード27の上面から3列目シート4の座部4cの裏面4Aに渡る部位をシート状部材Sで覆うことができる。したがって、シート格納状態でシート状部材Sに覆われた切れ目のない荷室底壁を得ることができ、荷室底壁の見栄えが向上し、シート材質を選択すれば使い勝手性も向上する。例えば、雨水で塗れた荷物等を搭載することに対応してゴムシートを選択する等ができる。加えて、上記のように、ボード27と3列目シート4とをリンク機構64で連結させているため、これらにわたって設けられたシート状部材Sに無理な力が加わることがなく、耐久性を向上させることができる。
【0052】
さらに、3列目シート4を凹部10の前部に配置したことにより、3列目シート4自体を傾斜した形状に細工したり、シート脚部に細工をすることなく簡単な構造で3列目シート4の座面を傾斜させることができ、第3フロア7の立ち上がり部分で十分に乗員の膝高さを確保できる。
【0053】
加えて、格納動作の際に回動する3列目シート4の回動力を利用して、それまで3列目シート4の下側に位置していたボード27を前記3列目シート4上側に持ち上げ、凹部10に格納された3列目シート4の座部4cの裏面4Aと前記凹部10の前方のボードブラケット32との間の空間部Aを閉塞することができるので、ボード27を意識せず3列目シート4の格納動作によりボード27を配置できる。
【0054】
また、3列目シート4を格納のために回動させると、支軸22を中心にして回動する3列目シート4の座部4cの裏面4Aはボード27に引っ掛かることなく3列目シート4のスムーズな回動を確保し、3列目シート4の座部4cの後端部Kがボード27の後端部に当接してからは、3列目シート4の自重も加わった回動に伴いボード27の後端部を上側に変位させることができるため、3列目シート4の回動動作の初期から終期に渡って、3列目シート4の格納動作に悪影響を与えずスムーズにボード27を姿勢変更できる。
【0055】
加えて、図2、図4に示すように2列目シート3は、折り畳まれた状態では背部3bの背面とバックボード27Aにより第3フロア7の面とほぼ面一になった状態で折り畳まれることになり、これと併せて、3列目シート4をスペアタイヤ9の凹部10のフロアシート26内に収納した状態では、3列目シート4の座部4cの裏面4Aが第3フロア7の面と面一になった水平状態で保持される。さらに、それまで3列目シート4下に隠れていて目に付かなかったボード27の前端と後端とがボードブラケット32と3列目シート4の座部4cの裏面に重なり合うようにして載置され、ボードの両脇の第3フロア7と共に違和感なく平坦面が形成され、凹部10を閉塞できる。
【0056】
その結果、図4に示すように1列目シート2の後方から3列目シート4の水平保持状態の後端に渡り平坦な底壁を有する荷室空間が形成され、広く平坦なフルフラットフロアを可能とできる。したがって、荷積みスペースとしてのみならず多目的な車室内空間として有効使用でき利便性を高めることができる。
【0057】
そして、フロアFが後方に立ち上がるように階段状に形成されているため、第3フロア7が地上から高くなり、図示しない後輪の懸架装置、前記燃料タンク16、図示しない排気管の配置自由度が高まるため、複雑な懸架装置、大きな燃料タンク、大きなサイレンサーを設置することができる。
【0058】
また、3列目シート4の使用時には、乗員の視界を確保しつつ乗員を低い位置に着座させることができるのでその分だけ乗員のヘッドクリアランスを大きく確保できると共に3列目シート4を凹部10に収納した状態では、十分な広さで平坦な荷室スペースを確保することができる。
【0059】
よって、3列目シート4に乗員を視界を確保して着座させる関係で乗員を高い位置に着座させるために車両全高を大きくせざるを得なかった従来に比較して、車両全高を低く抑えることができ、造形上の自由度を高めることができる。
【0060】
前後2列シートが配置された車両の後列シートに、この実施形態の3列目シート4及びボード27を適用できることは勿論である。また、リンク機構64に換えてヒンジ機構でシートとボードとを連結することも可能である。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に係る発明によれば、シートを背部を前側に倒し座部と重ね合わせた折り畳み状態で座部の後部の支軸を中心に後側に回動させる格納動作を行うと、シートの座部の上向き状態における後部がシートの下側のボードの後部下側に潜り込んでボードを座部の裏面と凹部前方のフロアとに掛け渡すことになり、両者間の空間部をボードで閉塞できる。したがって、凹部の前側のフロアとボードとシートの座部の裏面とで、平坦、かつ、剛性のある荷室底壁を形成することができる。
また、ボードは凹部に格納されたシートの座部の裏面と凹部前方のフロアとに掛け渡されるため、両者間に形成された空間部を閉塞できるボードを用いるだけで容易にフロアのフラット化を実現できる。したがって、車室内レイアウトに制約を与えず、特定車種に限定されず、汎用性を高めることができる。
さらに、ボードとシートとを回転連結機構で連結させているため、シートが格納動作を行いその座部がボードの後部下側に潜り込む際に、ボードの作動を安定させることができる。
【0062】
請求項2に係る発明によれば、シートを折り畳み状態で座部の後部の支軸を中心に後側に回動させる格納動作を行う際に、シートの座部の上向き状態における後部がボードの後部下側に潜り込む際に、ボードを前方に押したり傾斜させたり持ち上げたりしても、ボードの後部に設けられたボード側係合部が、座部の上向き状態における後部に設けられた座部側係合部にリンク部材で連結されているため、ボードの作動を安定させることができる。したがって、簡素な構成で格納動作時のボードの作動を安定させることができる。また、リンク部材を設けることにより、シートが上向き状態にあるときのシート下とボードとの間にシート状部材を介在させる空間を設定できる。
【0063】
請求項3に係る発明によれば、格納動作後にボードを座部の載置面に載置させると、座部の載置面が裏側の端面よりも座面側に凹んで形成されているため、ボードが座部の裏側の端面に対し突出することを防止できる。したがって、ボードと座部との段差を小さくし、または無くすことができ、平坦な荷室底壁を形成できる。
【0064】
請求項4に係る発明によれば、シート格納時にボード上面からシートの座部裏面に渡る部位をシート状部材で覆うことができる。したがって、シート格納状態でシート状部材に覆われた切れ目のない荷室底壁を得ることができ、荷室底壁の見栄えが向上し、シート材質を選択すれば使い勝手性も向上する。例えば、雨水で塗れた荷物等を搭載することに対応してゴムシートを選択する等ができる。加えて、上記のように、ボードとシートとを回転機構で連結させているため、これらにわたって設けられたシート状部材に無理な力が加わることがなく、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の車両用シート構造が適用された車両におけるシート非収納状態を示す側面図である。
【図2】同車両におけるシート収納状態を示す側面図である。
【図3】同車両における図1に示す状態を車室内前部から見た斜視図である。
【図4】同車両における図2に示す状態を車室内後部から見た斜視図である。
【図5】同車両における2列目シートの側面図である。
【図6】同2列目シートの折り畳み経過を示す側面図である。
【図7】同2列目シートの折り畳み状況を示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態の車両用シート構造の側面図である。
【図9】図8の要部拡大断面図である。
【図10】本発明の一実施形態の車両用シート構造の折り畳み状況を示す側面図である。
【図11】図10の要部拡大断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の車両用シート構造の折り畳み状況を示す側面図である。
【図13】図12の要部拡大断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の車両用シート構造におけるボード側係合部材等を示す斜視図である。
【図15】本発明の一実施形態の車両用シート構造におけるボード側係合部材等を示す断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の車両用シート構造における座部側係合部材等を示す斜視図である。
【図17】本発明の一実施形態の車両用シート構造における座部側係合部材等を示す断面図である。
【図18】本発明の一実施形態の車両用シート構造におけるリンク機構等を示す斜視図である。
【図19】本発明の一実施形態の車両用シート構造におけるリンク機構等を示す断面図である。
【符号の説明】
4 3列目シート(シート)
4b 背部
4c 座部
4A 裏面
4B 座面
7 第3フロア(フロア)
10 凹部
22 支軸
27 ボード
32 ボードブラケット(凹部前方のフロア)
53 ボード側係合部材(ボード側係合部)
57A 端面
57B 載置面
60 座部側係合部材(座部側係合部)
63 リンク部材
64 リンク機構
K 後端部(後部)
S シート状部材
Claims (4)
- 車両のフロアに形成された凹部の前側にシートを着席可能な上向き状態で配置し、該シートを、その背部を前側に倒し座部と重ね合わせた折り畳み状態で該座部の後部の支軸を中心に後側に回動させる格納動作により前記凹部に収納する車両用シート装置であって、
前記シートの前記上向き状態における下側にボードを設け、該ボードと前記シートとを回転連結機構で連結させるとともに、前記シートの前記格納動作時に該シートの前記座部の前記上向き状態における後部を前記ボードの後部下側に潜り込ませることにより該ボードを前記座部の裏面と前記凹部前方のフロアとに掛け渡すことを特徴とする車両用シート装置。 - 前記回転連結機構は、リンク機構であって、前記ボードの後部に設けられたボード側係合部と、前記座部の前記上向き状態における後部に設けられた座部側係合部と、これらボード側係合部および座部側係合部のそれぞれに回動可能に連結されるリンク部材とを有することを特徴とする請求項1記載の車両用シート装置。
- 前記座部の前記上向き状態における後部の裏側には、前記格納動作後に前記ボードを載置させる載置面が裏側の端面よりも座面側に凹んで形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用シート装置。
- 前記ボードの上面から前記座部の裏面に渡って可撓性のあるシート状部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用シート装置。
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