JP2004242430A - ベクトル制御インバータ装置および洗濯機 - Google Patents
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Abstract
【課題】モータ負荷の慣性モーメントを検出できるセンサレスのベクトル制御インバータ装置、それを用いて洗濯物の重量を検出する洗濯機を提供する。
【解決手段】角速度制御により定速回転させた後、該定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)に所定の電流値(ΔIq)を加えた一定の電流値(Iq2)をトルク軸(q軸)電流指令値(Iqr)として与えることにより磁束軸(d軸)の角速度推定値(ω)を上昇させる。該上昇時の前記モータの角加速度(dω/dt)を磁束軸(d軸)の角速度推定値(ω)の時間変化より求める。求めた角加速度(dω/dt)と、前記定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)と、前記トルク軸(q軸)電流指令値(Iq2)とを用いて前記モータの運動方程式を解くことにより慣性モーメントを算出する。その値より洗濯物の重量を算出する。
【選択図】 図1
【解決手段】角速度制御により定速回転させた後、該定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)に所定の電流値(ΔIq)を加えた一定の電流値(Iq2)をトルク軸(q軸)電流指令値(Iqr)として与えることにより磁束軸(d軸)の角速度推定値(ω)を上昇させる。該上昇時の前記モータの角加速度(dω/dt)を磁束軸(d軸)の角速度推定値(ω)の時間変化より求める。求めた角加速度(dω/dt)と、前記定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)と、前記トルク軸(q軸)電流指令値(Iq2)とを用いて前記モータの運動方程式を解くことにより慣性モーメントを算出する。その値より洗濯物の重量を算出する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、負荷であるモータの慣性モーメントを検出可能なベクトル制御インバータ装置およびそのインバータ装置を使用した洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の洗濯機は自動化が進み、洗濯する衣類の布質や形状などの最小限の条件を設定しただけでスタート釦を押すと、後は洗濯機が投入された洗濯物の重量を自動測定して、その値に基づいて給水量、洗剤投入量、洗い時間、すすぎ時間、すすぎ回数、脱水時間、脱水回数、更には乾燥時間をも自動決定し、全自動で乾燥まで終了してくれるものも出現している。このような完全自動の洗濯機でなくとも、洗濯する衣類の種類に最も適した洗濯を可能とし、更には洗濯時間の短縮、省エネ等を図る上で、投入された洗濯物の重量を測定することは、洗濯機の制御上、極めて重要な要件である。
【0003】
洗濯物の重量を測定する方法としては、従来より種々の方法が提案されている。その一つとして洗濯機の槽体を吊持する支持棒、あるいは槽体を支える脚部に重量センサを取り付けて測定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では4個の重量センサを必要とする上、センサの構造も複雑でコスト高になりやすい欠点がある。
【0004】
また別の方法として、所定の回転数まで洗濯槽の回転を上げた後、モータの電力を遮断し、慣性力により洗濯槽の回転数が低下する様子を監視してその様子から洗濯物の重量を測定する方法がある(例えば、特許文献2、3参照)。しかし、この方法にも測定所要時間、測定精度の点で問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平05−269293号報
【0006】
【特許文献2】
特開2001−321591号報
【0007】
【特許文献3】
特開平8−107990号報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、短時間で精度良くモータ負荷の慣性モーメントを検出することができるベクトル制御インバータ装置、およびそのインバータ装置を使用して洗濯物の重量検出を行なう洗濯機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置は、永久磁石を回転子に設けた永久磁石モータに流れる電流を、永久磁石による誘起電圧の磁束軸方向成分推定値(Ed)をゼロとする演算により推定した磁束軸(d軸)方向成分(Id)と、これに直交するトルク軸(q軸)方向成分(Iq)とに分離し、それらの成分がそれぞれの指令値(Idr、Iqr)に一致するように独立に制御するセンサレスのベクトル制御インバータ装置であって、前記モータの角速度制御時の制御と、慣性モーメントの検出時の制御および慣性モーメントの検出とを次のようにして行なうことを特徴とするものである。
【0010】
(1)前記モータの角速度制御時には、角速度指令値(ωref)と、前記磁束軸(d軸)の角速度推定値(ω)との偏差(Δω)を比例積分した値をトルク軸(q軸)電流指令値(Iqr)として与えるクローズドループ制御にて角速度制御を行なう。
【0011】
(2)前記モータの慣性モーメントの検出時には、前記角速度制御により定速回転させた後、該定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)に所定の電流値(ΔIq)を加えた電流値(Iq2)をトルク軸(q軸)電流指令値(Iqr)としてステップ状に与えることにより前記角速度推定値(ω)を上昇させ、該上昇時の角加速度(dω/dt)を前記角速度推定値(ω)の時間変化より求める。求めた角加速度(dω/dt)と、前記定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)と、前記トルク軸(q軸)電流指令値(Iq2)とを用いて前記モータの運動方程式を解くことにより慣性モーメントを検出する。
【0012】
このような構成によれば、モータ回転子を含む負荷の慣性モーメントをモータ駆動中の合間に短時間で検出することができる。また、モータ回転子自体の慣性モーメント、負荷の形状が予め判明していれば、その値から負荷の質量、重量を検出できる効果がある。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求めてその値より洗濯物の重量を算出し、該算出した重量を考慮してその後の各洗濯工程の運転条件を決定することを特徴とする洗濯機である。
【0014】
洗濯物の洗い工程における洗浄率、脱水工程における脱水率、乾燥工程における脱水率は洗濯物の重量に影響される。本発明の洗濯機によれば、特別の重量センサを用いることなく洗濯物の重量を検出でき、その値を考慮してその後の各工程の運転条件を決定することで、最適な洗濯が可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておく。そして脱水工程においては、同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率とその時点の洗濯物重量とを考慮に入れて次回重量算出までの洗濯機モータの回転速度をその都度決定することを特徴とする洗濯機である。
【0016】
このような洗濯機によれば、脱水の進行につれて減少していく洗濯物重量および含水率に対応した最適なモータ回転速度を決定することができるので、脱水運転の最適化を図ることが可能となる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、脱水工程の途中において洗濯物の重量を1回または複数回測定し、測定した重量を基に脱水工程の終了までの時間を調整することを特徴とする洗濯機である。
【0018】
このような洗濯機によれば、脱水工程の終了時期が、重量測定時点における洗濯物の重量により自動調整されるため、脱水不足、あるいは長すぎる脱水時間による時間延長や消費電力の無駄を避けられる効果がある。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておく。そして脱水工程においては、同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率が所定値以下になった時に脱水工程の終了と判断することを特徴とする洗濯機である。
【0020】
このような洗濯機によれば、脱水工程の終了時期が、検出した洗濯物の含水率により自動判定されるため、脱水不足、あるいは長すぎる脱水時間による時間延長や消費電力の無駄を避けられる効果がある。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておく。そして、乾燥燥工程においては同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率とその時点の洗濯物重量とを考慮に入れて次回重量算出までの洗濯機モータの回転速度をその都度決定することを特徴とする洗濯機である。
【0022】
このような洗濯機によれば、乾燥が進むにつれて減少していく洗濯物重量および含水率に対応した最適なモータ回転速度を決定することができるので、乾燥運転の最適化を図ることが可能となる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておく。そして、乾燥工程においては同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率が所定値以下になった時点から更に所定時間経過した時点を乾燥工程の終了と判断することを特徴とする洗濯機である。
【0024】
このような洗濯機によれば、乾燥工程の終了時期が、検出した洗濯物の含水率により自動判定されるため、乾燥不足、あるいは長すぎる乾燥時間による時間延長や消費電力の無駄を避けられる効果がある。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のベクトル制御インバータ装置、およびそのインバータ装置を洗濯機に適用した一実施形態について図面を参照しながら説明する。最初に本発明の特徴であるインバータ装置の構成、その速度制御動作、負荷モータの慣性モーメント検出方法、それに洗濯機のモータ制御に適用して洗濯物の重量を検出する検出動作について、図1、図2を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明のインバータ装置の電気的構成を示す。本インバータ装置1は、永久磁石を回転子に、電機子巻線を固定子に設けた永久磁石モータ6を、ブラシを用いることなく、また回転子位置検出用のセンサを用いることもなく、その回転数を制御する位置センサレスのベクトル制御インバータ装置と呼ばれるものである。このインバータ装置1は、電流制御回路2、回転子の回転位置推定回路3、角速度制御回路4、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5を備える。
【0027】
電流制御回路2は、加算器21a、21b、比例積分器22a、22b、座標変換器23、PWM形成器24、PWMインバータ回路25、電流検出回路26を備える。電流検出回路26は、電流検出器26a、26b、3相/2相変換器26c、ベクトル回転器26dにより構成される。回転位置推定回路3は、誘起電圧推定回路31、比例積分器32、積分器33により構成される。また、角速度制御回路4は、加算器41と比例積分器42とを備える。
【0028】
PWMインバータ回路25と永久磁石モータ6との配線途中に取り付けられた電流検出器26a、26bにより検出された3相電流、Iu、Iv、Iw(IwはIu、Ivより計算される)は、3相/2相変換器26cにより、これと等価な2相電流Iα、Iβに変換される。変換された2相電流Iα、Iβは、ベクトル回転器26dにより更に変換されてd軸、q軸成分の電流Id、Iqが求められる。この変換演算の際、後述する回転位置推定値θが用いられる。ここでd軸、q軸は、回転子の永久磁石が作る磁束方向をd軸、これと直交する方向をq軸とする回転座標軸である。
【0029】
電流Id、Iqは、加算器21a、21bに導かれ、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5から出力されたそれぞれの電流指令値Idr、Iqrとの偏差ΔId、ΔIqが求められる。そして、比例積分器22a、22bを介することで出力電圧指令値Vd、Vqが算出される。出力電圧指令値Vd、Vqは、座標変換器23にて固定2軸座標系の値に変換され、その値を基にPWM形成器24にて3相のパルス幅変調信号が形成される。この座標変換器23における変換演算にも、後述する回転位置推定値θが用いられる。形成されたパルス幅変調信号は、PWMインバータ回路25に与えられモータ6の電機子にパルス幅変調された電圧が印加される。このようにして電流制御回路2によりモータ6に対して給電が行なわれるが、モータ6に流れる電流Id、Iqの値は、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5から出力された電流指令値Idr、Iqrにそれぞれ独立に依存する。
【0030】
誘起電圧推定回路31には、電流Id、Iq、及びd軸の出力電圧指令値Vd、回転子の角速度推定値ωが入力される。更に、誘起電圧推定回路31には、モータ6の回路定数である電機子コイルのインダクタンスLd、Lq、抵抗Rが記憶されている。誘起電圧推定回路31は、これらの入力値と回路定数を用いて、永久磁石の作る磁束によって電機子コイル内に発生する誘起電圧のd軸方向推定値(インバータ装置1が認識しているd軸方向の成分)Edを次式により計算する。
Ed =Vd −R・Id −Ld・p ・Id+ω・Lq・Iq (1)式
ここで、pは微分演算子である。
【0031】
求められた誘起電圧推定値Edは、比例積分器32に入力され、次式で計算される値が、回転子の角速度推定値ω(インバータ装置1が認識しているd軸の角速度推定値)として出力される。
ω =−G1・Ed −G2・∫Ed・dt (2)式
ここでG1、G2は、ゲイン定数である。
【0032】
こうして算出された角速度推定値ωは、積分器33に入力される。積分器33は、角速度推定値ωを次の(3)式に従って積分し、回転子の回転位置推定値θ(インバータ装置1が認識しているd軸位置推定値)を算出する。
θ=∫ω・dt (3)式
算出された回転位置推定値θは、ベクトル回転器26d、座標変換器23における演算に使用される。
【0033】
(1)式で計算される誘起電圧推定値Edを基に、比例積分器32が(2)式に従った調節動作を行なうことで、誘起電圧推定値Edは短時間で“ゼロ ”に収束する。d軸誘起電圧推定値Edがゼロに収束した時点では、インバータ装置1が認識(推定)したd軸は、回転子の永久磁石が作る磁束方向と一致し、回転位置推定値θは、モータ6の実際の回転子位置に等しく、角速度推定値ωは回転子の実際の角速度に等しくなる。このようにして、本インバータ装置1によれば、位置センサを用いることなく回転子の回転位置と角速度が検出される。
【0034】
このようにして回転子の回転位置と角速度が検出されるが、モータ6に流れる電流Id、Iqの値は、前述したように電流指令形成/慣性モーメント演算回路5から出力されるそれぞれの電流指令値Idr、Iqrに依存する。電流指令形成/慣性モーメント演算回路5には、電流指令値Idr及びIqrを形成するために必要な信号として、角速度推定値ωと、角速度制御回路4の出力信号である角速度制御信号Iqr0が入力される。また、後述する慣性モーメント演算に必要な信号として、回転位置推定値θも入力される。
【0035】
角速度制御回路4は、モータ6の角速度推定値ωを角速度指令値ωrefに一致させるための調節回路であって、加算器41と比例積分器42とで構成され、出力として角速度制御信号Iqr0を生成する。加算器41は、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5から出力された角速度指令値ωrefと角速度推定値ωとの偏差Δωを求める。偏差Δωは、比例積分器42にて比例積分演算され、その出力が角速度制御信号Iqr0として電流指令形成/慣性モーメント演算回路5に入力される。
【0036】
ここで、角速度指令値ωrefは、後述する洗濯機50の制御装置85から電流指令形成/慣性モーメント演算回路5に送られてくる信号である。モータ6を角速度指令値ωrefで回転させるために、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、その値ωrefを加算器41に与える。そして、角速度制御回路4の出力である角速度制御信号Iqr0を受け取り、その値を基に電流指令値Idr及びIqrを形成して出力する。
【0037】
ところで、モータ6に流れる電流Idは励磁電流と呼ばれ、磁束を作る成分であってトルク発生には寄与しない。一方、電流Iqはトルク電流と呼ばれ、モータ6のトルク発生に寄与する成分である。従って、モータ6を高効率で運転するために、通常、電流指令値Idrとしては Idr=0 が出力される。一方、電流指令値Iqrとしては、角速度制御回路4の出力である角速度制御信号Iqr0がそのまま出力される。
【0038】
このように電流指令値Idr及びIqrが形成され出力されると、d軸電流Idは加算器21aと比例積分器22aの調節動作によって電流指令値Idr(=0)に、q軸電流Iqは加算器21bと比例積分器22bの調節動作によって電流指令値Iqr(=Iqr0)に一致させられる。同時に、角速度推定値ωは、加算器41と比例積分器42の調節動作によって角速度指令値ωrefに一致させられる。このような調節動作の結果として、モータ6は、洗濯機50の制御回路85が指令した角速度指令値ωrefで回転するようになる。
【0039】
以上の説明は、インバータ装置1が、洗濯機50の制御装置85から送られてきた角速度指令値ωrefに一致するようにモータ6を速度制御する動作の説明であった。次に、本インバータ装置1の特徴である、モータ6のモータ軸の全慣性モーメントJを検出する場合の制御動作について、図2を参照しながら説明する。図2中の(a)は、慣性モーメントJ検出動作中におけるq軸電流指令値Iqrの時間変化を、また(b)はそれに対応したモータ6の角速度推定値ωの時間変化を表した図である。
【0040】
まず、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、モータ6を定速回転させるために角速度指令値ωrefを出力し、前述した速度制御動作によりモータ6を角速度指令値ωrefで定速回転させる(図2中の(1)の「一定速運転制御」部分参照)。この場合の角速度指令値ωrefの値は、低速過ぎず、また高速過ぎず、モータ6の定格回転速度の20〜80%の範囲に入る値が適当である。d軸電流指令値Idrはゼロにしておく。
【0041】
電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、モータ6の角速度推定値ωが、角速度指令値ωrefに一致した時点で、その時のq軸電流指令値Iqr(=Iqr0)の値Iq1を記憶しておき、時刻t1で速度制御をOFFにする。速度制御をOFFにするとは、角速度制御回路4の出力である角速度制御信号Iqr0の値をq軸電流指令値Iqrとして出力しないことを指す。こうすることで速度制御ループが切断され、以後、モータ6はオープンループで速度制御されることになる。但し、電流Id、電流Iqの値をそれぞれの電流指令値Idr、Iqrに一致させる制御動作は継続される。また、角速度推定値ω、回転位置推定値θを推定する動作も継続される。
【0042】
時刻t1において速度制御をOFFすると同時に、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、q軸の電流指令値Iqrの値を、それまでのIq1からΔqだけ高いIq2にステップ状に変化させる。d軸の電流指令値Idrはゼロのままとする。電流Iqは前述したように、モータ6のトルク発生に寄与する成分である。電流IqがΔqだけ増したことにより発生トルクもそれに比例して増加し、モータ6は一定の加速度でもって角速度推定値ωが増加する(図2中の(2)の「慣性モーメント検出制御」部分参照)。
【0043】
電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、この角速度推定値ωの上昇カーブより角加速度 dω/dt を求める。角加速度 dω/dt は、図2の(2)に示すように、角速度推定値ωの値が一定速運転制御の時の角速度指令値ωrefより僅かに高いω1に達した時刻t2から、内部タイマーにより時間を測り始め、角速度ωがΔωだけ高いω2に達する時刻t3までの時間差Δtを計測する。電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、Δω/Δtを計算することにより角加速度 dω/dt の値を算出する。時間差Δtの計測を時刻t1から開始しないのは、電流Iqrをステップ状に変化させた直後の急激な過渡応答期間を避けて、角加速度 dω/dt の値を精度良く検出するためである。
【0044】
角加速度 dω/dt は、このように角速度推定値ωの値がω1から一定角速度Δωだけ高いω2に上昇するまでの時間Δtを計測することによっても求まるが、逆に角速度推定値ωの値がω1に達してから一定時間Δt後の角速度推定値ω2を計測し、ω2とω1の差ΔωをΔtで割ることによって求めてもよい。
【0045】
更に別の方法として、回転子が1回転又は数回転、即ち回転位置推定値θが2πラジアン又は2πラジアンの整数倍増加する間の時間Δtと、その間における角速度推定値ωの増加量Δωとを計測し、求めたΔωをΔtで割ることによって求めてもよい。この方法の場合は、回転子が整数回転する間の測定値で角加速度dω/dtを求めるため、回転槽内における洗濯物の偏りによる回転むらの影響を排除できる効果がある。
【0046】
何れの測定方法を用いるにせよ、この角加速度 dω/dt の値は、インバータ装置1の応答性(角速度推定値ω、回転位置推定値θの推定計算の収束性、電流Id、Iqの電流指令値Idr、Iqrへの収束性)が良いため1秒以下の短時間で求めることができる。
【0047】
角加速度 dω/dt(=d2θ/dt2) の値をΔω/Δtで求めた後、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、次のモータ6の運動方程式よりモータ軸の全慣性モーメントJを検出する演算に移る。
J・d2θ/dt2+ D・dθ/dt+K・θ+T1=T (4)式
ここでDは制動係数で 、D・dθ/dtは風損のようにモータ速度に比例した反力を表す。Kは剛性係数で、K・θはぜんまい負荷のように基準位置からのずれに比例した反力を表す。T1は固体摩擦のように、速度によらない一定の反力を表す。Tはモータ6の発生するトルクである。
【0048】
ここで、第2項のD・dθ/dt、第3項のK・θの値は、他の項の値と比べて小さいと考えられるので、本実施形態では、D=K=0 として以後の計算を行なう。また、モータ6の発生トルクTは、d軸電流Idがゼロであるので、回転子の永久磁石の作る磁束と電機子コイルとの鎖交磁束数Ψと、q軸電流Iq との積に比例する。従って(4)式は次のようになる。
J・d2θ/dt2+T1=Pn・Ψ・Iq (5)式
ここでPnはモータ6の極対数である。この式に図2における時刻t1直前における定速状態の条件と、時刻t3における加速中の条件を当てはめると次の2式が成立する。
この2式より、モータ6の全慣性モーメントJは次のように求まる。
【0049】
回転子の永久磁石の作る磁束と電機子コイルとの鎖交磁束数Ψは、モータ6の構造から計算で求めることができる数値である。従って、その数値を(8)式に代入することによりモータ6の全慣性モーメントJを算出できる。すなわち、本インバータ装置1は、以上のような測定と計算により、駆動するモータ6の全慣性モーメントJを検出することができる。
【0050】
本インバータ装置1を、後述する洗濯機50の駆動モータ6に適用する場合には、予め洗濯機50に洗濯物が入っていない空の状態の全慣性モーメントJ0を先の方法で求めておく。次に、洗濯物を投入した状態で全慣性モーメントJ1を求めると、その差(J1−J0)は洗濯物の慣性モーメントである。その値より、洗濯物がドラムの内周面に張り付いているとすると洗濯物の質量が求まる。洗濯物の質量が求まれば、洗濯物の重量(布量)も求まる。すなわち、本インバータ装置1によれば、洗濯機50の洗濯物の重量を容易に検出することができる。
【0051】
以上、説明してきたようなインバータ装置1の制御演算は、PWMインバータ回路25を除き、例えばDSP(Digital Signal Processor)などの演算器により周期的に処理される。演算順序は、例えば3相/2相変換器26c、ベクトル回転器26d、誘起電圧推定回路31、比例積分器32、積分器33、加算器41、比例積分器42、電流指令/慣性モーメント演算回路5、加算器21a、21b、比例積分器22a、22b、座標変換器23、PWM形成器24の順番で実行される。
【0052】
次に、本発明のベクトル制御インバータ装置1を、一例としてドラム式洗濯機に適用した実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、図3にそのドラム式洗濯機50の縦断面図を示す。図3において、直方体状の外箱51の内部には、水槽52が、例えば左右で1組の弾性支持装置53により弾性支持されて配設されている。この水槽52は、後ろ下がりの斜め軸状態に配設されており、ほぼ円筒状をなしている。この水槽52の内部には、これと同軸状態(後ろ下がりの斜め軸状態)でドラム54が回転可能に配設されている。このドラム54は、周側壁に通風孔を兼ねる脱水孔54aを多数有するものであり、洗濯槽、脱水槽及び乾燥槽としても機能するものである。
【0053】
上記外箱51、水槽52及びドラム54は、いずれも図中右側の前面部に洗濯物出し入れ用の開口部55、56及び57をそれぞれ有しており、そのうちの開口部55と開口部56とは、弾性変形可能なべロー58によって水密に連通接続されている。また、外箱1の開口部55には、これを開閉する扉59が設けられている。
【0054】
前記ドラム54は、背面板54bに回転軸60を有しており、この回転軸60が、水槽52の背面板52aに設けられたハウジング61に軸受62を介して回転自在に挿通支持されている。さらに上記ハウジング61の外周には洗濯機モータ63のステータ64が取付けられており、上記回転軸60には洗濯機モータ63のアウタロータ65が取付けられている。この洗濯機モータ63が前記インバータ装置1により回転駆動させられることによりドラム54が回転するようになっている。
【0055】
前記水槽2の最下部には、水加熱用ヒータ66を収容する凹陥部67が形成されており、この凹陥部67の底部には排水口67aが形成され、この排水口67aには排水弁68及び配水管69が接続されている。
【0056】
前記水槽52の後部、上部および前側上部にかけて乾燥装置70が設けられている。すなわち、水槽52の後部にはダクト状の除湿器71が設けられており、その下部には水出口を兼用する通気口(図示せず)が形成されており、その通気口は水槽52において開口し、この水槽2内を経て前記排水口67aに連通している。またこの除湿器71の上部の通気口70bはファン装置72のケーシング72aの吸入口に連通されている。このファン装置72はそのケーシング72a内に遠心ファン72bを有し、この遠心ファン72bはファンモータ72cによって回転駆動される。
【0057】
上記ケーシング72aの吐出口(図示せず)にはダクト73が接続されており、このダクト73の先端である温風吐出口73aは前記べロー58を貫通して水槽52の開口56に連通している。このダクト73の内部には温風生成用ヒータ74が配設されている。しかして、上記乾燥装置70は乾燥行程時に運転されるものである。
【0058】
一方、外箱51の内部上部には、入水口が水道に接続される給水弁75が設けられており、この給水弁75は二つの出水口を有している。その一方の出水口は配管75aを介して注水器76に接続され、他方の出水口は配管75bを介して除湿器71に接続されている。この給水弁75は、洗い及びすすぎの各行程時に一方の出水口を開口して前記注水器76に水を供給し、この注水器76を経て水槽52内へ水を供給し、また、乾燥行程時には他方の出水口を開口して既述したように除湿器71へ少量の水を注入させるものである。前記注水器76は内部に洗剤投入器等を備えており、給水された水と共に洗剤を水槽52内に投入するようになっている。インバータ装置1を含む制御部分は、前面上部内面の制御箱77内に収納されている。
【0059】
次に図4により本ドラム式洗濯機50の電気的構成を説明する。図4に示すように本ドラム式洗濯機50は、給水弁75、排水弁68、ファンモータ72c、温風生成用ヒータ74、それらを駆動する駆動回路80、ドラム用洗濯機モータ63とそれを制御するインバータ装置1、マンマシンインターフェイス81としての入力部82と表示部83、水位センサなどの各種センサ84、制御装置85とを備えて構成される。この他、図示しない電源装置も備え、インバータ装置1、制御装置85等に給電されている。
【0060】
制御装置85は、マイクロコンピュータを用いて構成されており、入力部82からの指示に従い洗い工程、すすぎ工程、脱水工程および乾燥工程全般の制御を行なう。最初に、入力部82より洗濯する衣類の種類、洗濯についてのオプション条件、例えば使用洗剤の種類、静音運転等の条件が設定された後、スタート釦が押されると運転が開始される。
【0061】
制御装置85は、まずインバータ装置1に洗濯物の重量検出を指示する。重量検出を指示されたインバータ装置1は、先に説明した方法に従い洗濯物の重量(乾燥重量W0)を検出して制御装置85に知らせる。制御装置85は、検出された洗濯物の乾燥重量W0、および先に入力された衣類の種類等の情報を考慮して、給水量、洗剤投入量、洗い時間、洗い強度(モータ回転速度)、すすぎ回数、すすぎ時間、標準脱水時間、それに標準の乾燥時間等を、予め記憶していたプログラムにより算出する。
【0062】
制御装置85は、給水弁75を操作して算出された量の給水を行い、その過程で算出された量の洗剤投入を行なう。次いで、算出された洗い強度(モータ回転速度)で算出された時間だけの洗い運転を行なう。その間、制御装置85からは、算出されたモータ回転速度に相当する角速度指令値ωrefがインバータ装置1の電流指令/慣性モーメント演算回路5を経由して角速度制御回路4に指令値として与えられる。そして、先に説明した制御動作によって、洗濯機モータ63の角速度推定値ωが角速度指令値ωrefに一致するように速度制御される。洗い工程が終了すると、すすぎ工程に移り、先に算出されたすすぎ回数とすすぎ時間に従ってすすぎ運転が行なわれる。
【0063】
すすぎ工程が終了すると、脱水工程に移る。脱水工程における脱水時間、モータ回転速度あるいはモータ回転トルクは、従来の洗濯機では、洗濯物の乾燥重量、衣類の種類等を基に計算するか、あるいは入力部82からの設定値に従って決定されていた。しかし、本実施形態の洗濯機50の場合は、インバータ装置1が洗濯機モータ6の全慣性モーメントを短時間で検出できることを利用して、次のような制御を行なう。
【0064】
図5にその制御フローを示す。この脱水工程の制御では、インバータ装置1が周期的に洗濯物の重量検出を行い、その結果に基づいてその後のモータ回転速度を決定すると共に、更に脱水完了の自動判定も行なう。このような制御を行なうことができるのは、先に説明したように、本発明のインバータ装置1が短時間で洗濯機モータ63の全慣性モーメントを検出できることによる。
【0065】
まず、排水弁76を開いた後(ステップS1)、洗濯機モータ63を比較的低速度で定速回転させる(ステップS2)。次に、先に説明した方法でインバータ装置1が洗濯機モータ63の全慣性モーメントを検出し、ドラム54内の洗濯物の重量W1を算出する(ステップS3)。続いて、算出した洗濯物の重量W1と最初に検出しておいた洗濯物の乾燥重量W0とから、次式に従って、その時点における洗濯物の含水率P%を算出する(ステップS4)。
P=100・(W1−W0)/W0 (9)式
【0066】
次に、求めた含水率Pと、衣類の種類によって決められた脱水完了時の含水率Paとの大小を比較する(ステップS5)。含水率Pの値がPa以下であれば、脱水完了と判定し、洗濯機モータ63を停止して(ステップS9)脱水工程を終了する(ステップS10)。含水率Pの値がPaを越えていれば、脱水継続が必要と判断してステップS6に移る。
【0067】
ステップS6では、その時点の洗濯物重量W1、含水率Pを考慮して、新たに洗濯機モータ63の回転速度指令値(角速度指令値ωref)を決定する。通常、洗濯物重量W1が軽い程、また含水率Pの値が小さい程、高い角速度指令値ωrefが決定される。
【0068】
次にステップS7に移り、決定した角速度指令値ωrefになるように、洗濯機モータ63をクローズドループで速度制御する。この状態をta時間継続した後(ステップS8)、再びステップS3の重量検出に戻る。このように、taの時間間隔で洗濯物の重量測定を繰り返し行い、その結果から脱水工程の終了判定、角速度指令値ωrefの決定とそれに従った速度制御の動作を繰り返し行なう。
【0069】
このようにして脱水工程の制御を行なえば、脱水の進行につれて減少していく洗濯物重量および含水率に対応した最適なモータ回転速度を決定でき、それに従った脱水運転を行なうことが可能となる。また、脱水工程の終了時期は、検出した含水率より自動判定されるため、脱水不足、あるいは長すぎる脱水時間による時間延長や消費電力の無駄が避けられる効果が得られる。
【0070】
脱水工程が終了すると、乾燥工程に移る。乾燥工程における乾燥時間、モータ回転速度あるいはモータ回転トルクも、従来の洗濯機においては、洗濯物の乾燥重量、衣類の種類等から計算するか、あるいは入力部82から設定された値に従って決定されていた。しかし、本実施形態の洗濯機50では、インバータ装置1が洗濯機モータ63の全慣性モーメントを短時間で検出できることを利用して、脱水工程のフローに類似の図6に示すフローにより制御を行なう。
【0071】
まず、ファンモータ77と温風生成用ヒータ78をONする(ステップS11)。次に、洗濯機モータ63を比較的低速度で定速回転させ(ステップS12)、先に説明した方法でインバータ装置1により洗濯機モータ63の全慣性モーメントを検出し、ドラム54内の洗濯物の重量W1を算出する(ステップS13)。続いて、算出した洗濯物の重量W1と最初に検出しておいた洗濯物の乾燥重量W0とから、前述の(9)式によりその時点の洗濯物の含水率P%を算出する(ステップS14)。
【0072】
次に、求めた含水率Pと、衣類の種類によって決められた乾燥完了時の含水率Pbとの大小を比較する(ステップS15)。含水率Pの値が乾燥完了と思われる所定の含水率Pbを越えていれば、乾燥継続が必要と判断してステップS16に移る。ステップS16では、その時点の洗濯物重量W1、含水率Pを考慮して、新たに洗濯機モータ63の回転速度指令値(角速度指令値ωref)を決定する。 次いで、ステップS17に移り、決定した角速度指令値ωrefになるように、洗濯機モータ63を速度制御する。この状態をtb時間継続した後(ステップS18)、再びステップS13の重量検出に戻る。このように、tbの時間間隔で洗濯物の重量測定を繰り返し行う。
【0073】
ステップS15にて含水率Pの値が乾燥完了と思われる所定の含水率Pb以下と判定された場合にはステップS19に移り、ステップS16と同様にしてモータ角速度指令値ωrefを計算し、その角速度指令値ωrefで洗濯機モータ63を回転させる(ステップS20)。この状態を所定のtc時間継続した後(ステップS21)、乾燥完了と判断してファンモータ77と温風生成用ヒータ78をOFFし(ステップS22)、乾燥工程を終了する(ステップS23)。なお、ステップS15にて含水率Pが所定の含水率Pb以下になったと判断された後も、更にステップS21にてtc時間だけ乾燥運転を継続するのは、洗濯物の重量の検出誤差、それに基づく含水率のPの検出誤差を考慮したものである。
【0074】
このようにして乾燥工程の制御を行なえば、乾燥が進むにつれて減少していく洗濯物重量および含水率に対応した最適なモータ回転速度を決定することができ、それに従った乾燥運転を行なうことが可能となる。また、乾燥工程の終了時期も、検出した含水率を考慮して自動判定されるため、乾燥不足、あるいは長すぎる乾燥時間による時間延長や消費電力の無駄を避けられる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のベクトル制御インバータ装置の一実施形態を示す電気的構成図である。
【図2】モータの慣性モーメント検出方法を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態であるドラム式洗濯機の縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態である洗濯機の電気的ブロック図である。
【図5】脱水工程のシーケンスフロー図である。
【図6】乾燥工程のシーケンスフロー図である。
【符号の説明】
図中、1はセンサレスのベクトル制御インバータ装置、2は電流制御回路、3は回転位置推定回路、4は角速度制御回路、5は電流指令形成/慣性モーメント演算回路、6はモータ(洗濯機モータ)、31は誘起電圧推定回路、50は洗濯機(ドラム式洗濯機)、85は洗濯機の制御装置、Edは誘起電圧の磁束軸方向成分推定値、Idrはd軸電流指令値、Iqrはq軸電流指令値、ωは角速度推定値、ωrefは角速度指令値、Δωは角速度偏差、θは回転位置推定値を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、負荷であるモータの慣性モーメントを検出可能なベクトル制御インバータ装置およびそのインバータ装置を使用した洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の洗濯機は自動化が進み、洗濯する衣類の布質や形状などの最小限の条件を設定しただけでスタート釦を押すと、後は洗濯機が投入された洗濯物の重量を自動測定して、その値に基づいて給水量、洗剤投入量、洗い時間、すすぎ時間、すすぎ回数、脱水時間、脱水回数、更には乾燥時間をも自動決定し、全自動で乾燥まで終了してくれるものも出現している。このような完全自動の洗濯機でなくとも、洗濯する衣類の種類に最も適した洗濯を可能とし、更には洗濯時間の短縮、省エネ等を図る上で、投入された洗濯物の重量を測定することは、洗濯機の制御上、極めて重要な要件である。
【0003】
洗濯物の重量を測定する方法としては、従来より種々の方法が提案されている。その一つとして洗濯機の槽体を吊持する支持棒、あるいは槽体を支える脚部に重量センサを取り付けて測定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では4個の重量センサを必要とする上、センサの構造も複雑でコスト高になりやすい欠点がある。
【0004】
また別の方法として、所定の回転数まで洗濯槽の回転を上げた後、モータの電力を遮断し、慣性力により洗濯槽の回転数が低下する様子を監視してその様子から洗濯物の重量を測定する方法がある(例えば、特許文献2、3参照)。しかし、この方法にも測定所要時間、測定精度の点で問題がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平05−269293号報
【0006】
【特許文献2】
特開2001−321591号報
【0007】
【特許文献3】
特開平8−107990号報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、短時間で精度良くモータ負荷の慣性モーメントを検出することができるベクトル制御インバータ装置、およびそのインバータ装置を使用して洗濯物の重量検出を行なう洗濯機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置は、永久磁石を回転子に設けた永久磁石モータに流れる電流を、永久磁石による誘起電圧の磁束軸方向成分推定値(Ed)をゼロとする演算により推定した磁束軸(d軸)方向成分(Id)と、これに直交するトルク軸(q軸)方向成分(Iq)とに分離し、それらの成分がそれぞれの指令値(Idr、Iqr)に一致するように独立に制御するセンサレスのベクトル制御インバータ装置であって、前記モータの角速度制御時の制御と、慣性モーメントの検出時の制御および慣性モーメントの検出とを次のようにして行なうことを特徴とするものである。
【0010】
(1)前記モータの角速度制御時には、角速度指令値(ωref)と、前記磁束軸(d軸)の角速度推定値(ω)との偏差(Δω)を比例積分した値をトルク軸(q軸)電流指令値(Iqr)として与えるクローズドループ制御にて角速度制御を行なう。
【0011】
(2)前記モータの慣性モーメントの検出時には、前記角速度制御により定速回転させた後、該定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)に所定の電流値(ΔIq)を加えた電流値(Iq2)をトルク軸(q軸)電流指令値(Iqr)としてステップ状に与えることにより前記角速度推定値(ω)を上昇させ、該上昇時の角加速度(dω/dt)を前記角速度推定値(ω)の時間変化より求める。求めた角加速度(dω/dt)と、前記定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)と、前記トルク軸(q軸)電流指令値(Iq2)とを用いて前記モータの運動方程式を解くことにより慣性モーメントを検出する。
【0012】
このような構成によれば、モータ回転子を含む負荷の慣性モーメントをモータ駆動中の合間に短時間で検出することができる。また、モータ回転子自体の慣性モーメント、負荷の形状が予め判明していれば、その値から負荷の質量、重量を検出できる効果がある。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求めてその値より洗濯物の重量を算出し、該算出した重量を考慮してその後の各洗濯工程の運転条件を決定することを特徴とする洗濯機である。
【0014】
洗濯物の洗い工程における洗浄率、脱水工程における脱水率、乾燥工程における脱水率は洗濯物の重量に影響される。本発明の洗濯機によれば、特別の重量センサを用いることなく洗濯物の重量を検出でき、その値を考慮してその後の各工程の運転条件を決定することで、最適な洗濯が可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておく。そして脱水工程においては、同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率とその時点の洗濯物重量とを考慮に入れて次回重量算出までの洗濯機モータの回転速度をその都度決定することを特徴とする洗濯機である。
【0016】
このような洗濯機によれば、脱水の進行につれて減少していく洗濯物重量および含水率に対応した最適なモータ回転速度を決定することができるので、脱水運転の最適化を図ることが可能となる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、脱水工程の途中において洗濯物の重量を1回または複数回測定し、測定した重量を基に脱水工程の終了までの時間を調整することを特徴とする洗濯機である。
【0018】
このような洗濯機によれば、脱水工程の終了時期が、重量測定時点における洗濯物の重量により自動調整されるため、脱水不足、あるいは長すぎる脱水時間による時間延長や消費電力の無駄を避けられる効果がある。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておく。そして脱水工程においては、同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率が所定値以下になった時に脱水工程の終了と判断することを特徴とする洗濯機である。
【0020】
このような洗濯機によれば、脱水工程の終了時期が、検出した洗濯物の含水率により自動判定されるため、脱水不足、あるいは長すぎる脱水時間による時間延長や消費電力の無駄を避けられる効果がある。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておく。そして、乾燥燥工程においては同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率とその時点の洗濯物重量とを考慮に入れて次回重量算出までの洗濯機モータの回転速度をその都度決定することを特徴とする洗濯機である。
【0022】
このような洗濯機によれば、乾燥が進むにつれて減少していく洗濯物重量および含水率に対応した最適なモータ回転速度を決定することができるので、乾燥運転の最適化を図ることが可能となる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておく。そして、乾燥工程においては同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率が所定値以下になった時点から更に所定時間経過した時点を乾燥工程の終了と判断することを特徴とする洗濯機である。
【0024】
このような洗濯機によれば、乾燥工程の終了時期が、検出した洗濯物の含水率により自動判定されるため、乾燥不足、あるいは長すぎる乾燥時間による時間延長や消費電力の無駄を避けられる効果がある。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のベクトル制御インバータ装置、およびそのインバータ装置を洗濯機に適用した一実施形態について図面を参照しながら説明する。最初に本発明の特徴であるインバータ装置の構成、その速度制御動作、負荷モータの慣性モーメント検出方法、それに洗濯機のモータ制御に適用して洗濯物の重量を検出する検出動作について、図1、図2を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明のインバータ装置の電気的構成を示す。本インバータ装置1は、永久磁石を回転子に、電機子巻線を固定子に設けた永久磁石モータ6を、ブラシを用いることなく、また回転子位置検出用のセンサを用いることもなく、その回転数を制御する位置センサレスのベクトル制御インバータ装置と呼ばれるものである。このインバータ装置1は、電流制御回路2、回転子の回転位置推定回路3、角速度制御回路4、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5を備える。
【0027】
電流制御回路2は、加算器21a、21b、比例積分器22a、22b、座標変換器23、PWM形成器24、PWMインバータ回路25、電流検出回路26を備える。電流検出回路26は、電流検出器26a、26b、3相/2相変換器26c、ベクトル回転器26dにより構成される。回転位置推定回路3は、誘起電圧推定回路31、比例積分器32、積分器33により構成される。また、角速度制御回路4は、加算器41と比例積分器42とを備える。
【0028】
PWMインバータ回路25と永久磁石モータ6との配線途中に取り付けられた電流検出器26a、26bにより検出された3相電流、Iu、Iv、Iw(IwはIu、Ivより計算される)は、3相/2相変換器26cにより、これと等価な2相電流Iα、Iβに変換される。変換された2相電流Iα、Iβは、ベクトル回転器26dにより更に変換されてd軸、q軸成分の電流Id、Iqが求められる。この変換演算の際、後述する回転位置推定値θが用いられる。ここでd軸、q軸は、回転子の永久磁石が作る磁束方向をd軸、これと直交する方向をq軸とする回転座標軸である。
【0029】
電流Id、Iqは、加算器21a、21bに導かれ、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5から出力されたそれぞれの電流指令値Idr、Iqrとの偏差ΔId、ΔIqが求められる。そして、比例積分器22a、22bを介することで出力電圧指令値Vd、Vqが算出される。出力電圧指令値Vd、Vqは、座標変換器23にて固定2軸座標系の値に変換され、その値を基にPWM形成器24にて3相のパルス幅変調信号が形成される。この座標変換器23における変換演算にも、後述する回転位置推定値θが用いられる。形成されたパルス幅変調信号は、PWMインバータ回路25に与えられモータ6の電機子にパルス幅変調された電圧が印加される。このようにして電流制御回路2によりモータ6に対して給電が行なわれるが、モータ6に流れる電流Id、Iqの値は、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5から出力された電流指令値Idr、Iqrにそれぞれ独立に依存する。
【0030】
誘起電圧推定回路31には、電流Id、Iq、及びd軸の出力電圧指令値Vd、回転子の角速度推定値ωが入力される。更に、誘起電圧推定回路31には、モータ6の回路定数である電機子コイルのインダクタンスLd、Lq、抵抗Rが記憶されている。誘起電圧推定回路31は、これらの入力値と回路定数を用いて、永久磁石の作る磁束によって電機子コイル内に発生する誘起電圧のd軸方向推定値(インバータ装置1が認識しているd軸方向の成分)Edを次式により計算する。
Ed =Vd −R・Id −Ld・p ・Id+ω・Lq・Iq (1)式
ここで、pは微分演算子である。
【0031】
求められた誘起電圧推定値Edは、比例積分器32に入力され、次式で計算される値が、回転子の角速度推定値ω(インバータ装置1が認識しているd軸の角速度推定値)として出力される。
ω =−G1・Ed −G2・∫Ed・dt (2)式
ここでG1、G2は、ゲイン定数である。
【0032】
こうして算出された角速度推定値ωは、積分器33に入力される。積分器33は、角速度推定値ωを次の(3)式に従って積分し、回転子の回転位置推定値θ(インバータ装置1が認識しているd軸位置推定値)を算出する。
θ=∫ω・dt (3)式
算出された回転位置推定値θは、ベクトル回転器26d、座標変換器23における演算に使用される。
【0033】
(1)式で計算される誘起電圧推定値Edを基に、比例積分器32が(2)式に従った調節動作を行なうことで、誘起電圧推定値Edは短時間で“ゼロ ”に収束する。d軸誘起電圧推定値Edがゼロに収束した時点では、インバータ装置1が認識(推定)したd軸は、回転子の永久磁石が作る磁束方向と一致し、回転位置推定値θは、モータ6の実際の回転子位置に等しく、角速度推定値ωは回転子の実際の角速度に等しくなる。このようにして、本インバータ装置1によれば、位置センサを用いることなく回転子の回転位置と角速度が検出される。
【0034】
このようにして回転子の回転位置と角速度が検出されるが、モータ6に流れる電流Id、Iqの値は、前述したように電流指令形成/慣性モーメント演算回路5から出力されるそれぞれの電流指令値Idr、Iqrに依存する。電流指令形成/慣性モーメント演算回路5には、電流指令値Idr及びIqrを形成するために必要な信号として、角速度推定値ωと、角速度制御回路4の出力信号である角速度制御信号Iqr0が入力される。また、後述する慣性モーメント演算に必要な信号として、回転位置推定値θも入力される。
【0035】
角速度制御回路4は、モータ6の角速度推定値ωを角速度指令値ωrefに一致させるための調節回路であって、加算器41と比例積分器42とで構成され、出力として角速度制御信号Iqr0を生成する。加算器41は、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5から出力された角速度指令値ωrefと角速度推定値ωとの偏差Δωを求める。偏差Δωは、比例積分器42にて比例積分演算され、その出力が角速度制御信号Iqr0として電流指令形成/慣性モーメント演算回路5に入力される。
【0036】
ここで、角速度指令値ωrefは、後述する洗濯機50の制御装置85から電流指令形成/慣性モーメント演算回路5に送られてくる信号である。モータ6を角速度指令値ωrefで回転させるために、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、その値ωrefを加算器41に与える。そして、角速度制御回路4の出力である角速度制御信号Iqr0を受け取り、その値を基に電流指令値Idr及びIqrを形成して出力する。
【0037】
ところで、モータ6に流れる電流Idは励磁電流と呼ばれ、磁束を作る成分であってトルク発生には寄与しない。一方、電流Iqはトルク電流と呼ばれ、モータ6のトルク発生に寄与する成分である。従って、モータ6を高効率で運転するために、通常、電流指令値Idrとしては Idr=0 が出力される。一方、電流指令値Iqrとしては、角速度制御回路4の出力である角速度制御信号Iqr0がそのまま出力される。
【0038】
このように電流指令値Idr及びIqrが形成され出力されると、d軸電流Idは加算器21aと比例積分器22aの調節動作によって電流指令値Idr(=0)に、q軸電流Iqは加算器21bと比例積分器22bの調節動作によって電流指令値Iqr(=Iqr0)に一致させられる。同時に、角速度推定値ωは、加算器41と比例積分器42の調節動作によって角速度指令値ωrefに一致させられる。このような調節動作の結果として、モータ6は、洗濯機50の制御回路85が指令した角速度指令値ωrefで回転するようになる。
【0039】
以上の説明は、インバータ装置1が、洗濯機50の制御装置85から送られてきた角速度指令値ωrefに一致するようにモータ6を速度制御する動作の説明であった。次に、本インバータ装置1の特徴である、モータ6のモータ軸の全慣性モーメントJを検出する場合の制御動作について、図2を参照しながら説明する。図2中の(a)は、慣性モーメントJ検出動作中におけるq軸電流指令値Iqrの時間変化を、また(b)はそれに対応したモータ6の角速度推定値ωの時間変化を表した図である。
【0040】
まず、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、モータ6を定速回転させるために角速度指令値ωrefを出力し、前述した速度制御動作によりモータ6を角速度指令値ωrefで定速回転させる(図2中の(1)の「一定速運転制御」部分参照)。この場合の角速度指令値ωrefの値は、低速過ぎず、また高速過ぎず、モータ6の定格回転速度の20〜80%の範囲に入る値が適当である。d軸電流指令値Idrはゼロにしておく。
【0041】
電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、モータ6の角速度推定値ωが、角速度指令値ωrefに一致した時点で、その時のq軸電流指令値Iqr(=Iqr0)の値Iq1を記憶しておき、時刻t1で速度制御をOFFにする。速度制御をOFFにするとは、角速度制御回路4の出力である角速度制御信号Iqr0の値をq軸電流指令値Iqrとして出力しないことを指す。こうすることで速度制御ループが切断され、以後、モータ6はオープンループで速度制御されることになる。但し、電流Id、電流Iqの値をそれぞれの電流指令値Idr、Iqrに一致させる制御動作は継続される。また、角速度推定値ω、回転位置推定値θを推定する動作も継続される。
【0042】
時刻t1において速度制御をOFFすると同時に、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、q軸の電流指令値Iqrの値を、それまでのIq1からΔqだけ高いIq2にステップ状に変化させる。d軸の電流指令値Idrはゼロのままとする。電流Iqは前述したように、モータ6のトルク発生に寄与する成分である。電流IqがΔqだけ増したことにより発生トルクもそれに比例して増加し、モータ6は一定の加速度でもって角速度推定値ωが増加する(図2中の(2)の「慣性モーメント検出制御」部分参照)。
【0043】
電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、この角速度推定値ωの上昇カーブより角加速度 dω/dt を求める。角加速度 dω/dt は、図2の(2)に示すように、角速度推定値ωの値が一定速運転制御の時の角速度指令値ωrefより僅かに高いω1に達した時刻t2から、内部タイマーにより時間を測り始め、角速度ωがΔωだけ高いω2に達する時刻t3までの時間差Δtを計測する。電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、Δω/Δtを計算することにより角加速度 dω/dt の値を算出する。時間差Δtの計測を時刻t1から開始しないのは、電流Iqrをステップ状に変化させた直後の急激な過渡応答期間を避けて、角加速度 dω/dt の値を精度良く検出するためである。
【0044】
角加速度 dω/dt は、このように角速度推定値ωの値がω1から一定角速度Δωだけ高いω2に上昇するまでの時間Δtを計測することによっても求まるが、逆に角速度推定値ωの値がω1に達してから一定時間Δt後の角速度推定値ω2を計測し、ω2とω1の差ΔωをΔtで割ることによって求めてもよい。
【0045】
更に別の方法として、回転子が1回転又は数回転、即ち回転位置推定値θが2πラジアン又は2πラジアンの整数倍増加する間の時間Δtと、その間における角速度推定値ωの増加量Δωとを計測し、求めたΔωをΔtで割ることによって求めてもよい。この方法の場合は、回転子が整数回転する間の測定値で角加速度dω/dtを求めるため、回転槽内における洗濯物の偏りによる回転むらの影響を排除できる効果がある。
【0046】
何れの測定方法を用いるにせよ、この角加速度 dω/dt の値は、インバータ装置1の応答性(角速度推定値ω、回転位置推定値θの推定計算の収束性、電流Id、Iqの電流指令値Idr、Iqrへの収束性)が良いため1秒以下の短時間で求めることができる。
【0047】
角加速度 dω/dt(=d2θ/dt2) の値をΔω/Δtで求めた後、電流指令形成/慣性モーメント演算回路5は、次のモータ6の運動方程式よりモータ軸の全慣性モーメントJを検出する演算に移る。
J・d2θ/dt2+ D・dθ/dt+K・θ+T1=T (4)式
ここでDは制動係数で 、D・dθ/dtは風損のようにモータ速度に比例した反力を表す。Kは剛性係数で、K・θはぜんまい負荷のように基準位置からのずれに比例した反力を表す。T1は固体摩擦のように、速度によらない一定の反力を表す。Tはモータ6の発生するトルクである。
【0048】
ここで、第2項のD・dθ/dt、第3項のK・θの値は、他の項の値と比べて小さいと考えられるので、本実施形態では、D=K=0 として以後の計算を行なう。また、モータ6の発生トルクTは、d軸電流Idがゼロであるので、回転子の永久磁石の作る磁束と電機子コイルとの鎖交磁束数Ψと、q軸電流Iq との積に比例する。従って(4)式は次のようになる。
J・d2θ/dt2+T1=Pn・Ψ・Iq (5)式
ここでPnはモータ6の極対数である。この式に図2における時刻t1直前における定速状態の条件と、時刻t3における加速中の条件を当てはめると次の2式が成立する。
この2式より、モータ6の全慣性モーメントJは次のように求まる。
【0049】
回転子の永久磁石の作る磁束と電機子コイルとの鎖交磁束数Ψは、モータ6の構造から計算で求めることができる数値である。従って、その数値を(8)式に代入することによりモータ6の全慣性モーメントJを算出できる。すなわち、本インバータ装置1は、以上のような測定と計算により、駆動するモータ6の全慣性モーメントJを検出することができる。
【0050】
本インバータ装置1を、後述する洗濯機50の駆動モータ6に適用する場合には、予め洗濯機50に洗濯物が入っていない空の状態の全慣性モーメントJ0を先の方法で求めておく。次に、洗濯物を投入した状態で全慣性モーメントJ1を求めると、その差(J1−J0)は洗濯物の慣性モーメントである。その値より、洗濯物がドラムの内周面に張り付いているとすると洗濯物の質量が求まる。洗濯物の質量が求まれば、洗濯物の重量(布量)も求まる。すなわち、本インバータ装置1によれば、洗濯機50の洗濯物の重量を容易に検出することができる。
【0051】
以上、説明してきたようなインバータ装置1の制御演算は、PWMインバータ回路25を除き、例えばDSP(Digital Signal Processor)などの演算器により周期的に処理される。演算順序は、例えば3相/2相変換器26c、ベクトル回転器26d、誘起電圧推定回路31、比例積分器32、積分器33、加算器41、比例積分器42、電流指令/慣性モーメント演算回路5、加算器21a、21b、比例積分器22a、22b、座標変換器23、PWM形成器24の順番で実行される。
【0052】
次に、本発明のベクトル制御インバータ装置1を、一例としてドラム式洗濯機に適用した実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、図3にそのドラム式洗濯機50の縦断面図を示す。図3において、直方体状の外箱51の内部には、水槽52が、例えば左右で1組の弾性支持装置53により弾性支持されて配設されている。この水槽52は、後ろ下がりの斜め軸状態に配設されており、ほぼ円筒状をなしている。この水槽52の内部には、これと同軸状態(後ろ下がりの斜め軸状態)でドラム54が回転可能に配設されている。このドラム54は、周側壁に通風孔を兼ねる脱水孔54aを多数有するものであり、洗濯槽、脱水槽及び乾燥槽としても機能するものである。
【0053】
上記外箱51、水槽52及びドラム54は、いずれも図中右側の前面部に洗濯物出し入れ用の開口部55、56及び57をそれぞれ有しており、そのうちの開口部55と開口部56とは、弾性変形可能なべロー58によって水密に連通接続されている。また、外箱1の開口部55には、これを開閉する扉59が設けられている。
【0054】
前記ドラム54は、背面板54bに回転軸60を有しており、この回転軸60が、水槽52の背面板52aに設けられたハウジング61に軸受62を介して回転自在に挿通支持されている。さらに上記ハウジング61の外周には洗濯機モータ63のステータ64が取付けられており、上記回転軸60には洗濯機モータ63のアウタロータ65が取付けられている。この洗濯機モータ63が前記インバータ装置1により回転駆動させられることによりドラム54が回転するようになっている。
【0055】
前記水槽2の最下部には、水加熱用ヒータ66を収容する凹陥部67が形成されており、この凹陥部67の底部には排水口67aが形成され、この排水口67aには排水弁68及び配水管69が接続されている。
【0056】
前記水槽52の後部、上部および前側上部にかけて乾燥装置70が設けられている。すなわち、水槽52の後部にはダクト状の除湿器71が設けられており、その下部には水出口を兼用する通気口(図示せず)が形成されており、その通気口は水槽52において開口し、この水槽2内を経て前記排水口67aに連通している。またこの除湿器71の上部の通気口70bはファン装置72のケーシング72aの吸入口に連通されている。このファン装置72はそのケーシング72a内に遠心ファン72bを有し、この遠心ファン72bはファンモータ72cによって回転駆動される。
【0057】
上記ケーシング72aの吐出口(図示せず)にはダクト73が接続されており、このダクト73の先端である温風吐出口73aは前記べロー58を貫通して水槽52の開口56に連通している。このダクト73の内部には温風生成用ヒータ74が配設されている。しかして、上記乾燥装置70は乾燥行程時に運転されるものである。
【0058】
一方、外箱51の内部上部には、入水口が水道に接続される給水弁75が設けられており、この給水弁75は二つの出水口を有している。その一方の出水口は配管75aを介して注水器76に接続され、他方の出水口は配管75bを介して除湿器71に接続されている。この給水弁75は、洗い及びすすぎの各行程時に一方の出水口を開口して前記注水器76に水を供給し、この注水器76を経て水槽52内へ水を供給し、また、乾燥行程時には他方の出水口を開口して既述したように除湿器71へ少量の水を注入させるものである。前記注水器76は内部に洗剤投入器等を備えており、給水された水と共に洗剤を水槽52内に投入するようになっている。インバータ装置1を含む制御部分は、前面上部内面の制御箱77内に収納されている。
【0059】
次に図4により本ドラム式洗濯機50の電気的構成を説明する。図4に示すように本ドラム式洗濯機50は、給水弁75、排水弁68、ファンモータ72c、温風生成用ヒータ74、それらを駆動する駆動回路80、ドラム用洗濯機モータ63とそれを制御するインバータ装置1、マンマシンインターフェイス81としての入力部82と表示部83、水位センサなどの各種センサ84、制御装置85とを備えて構成される。この他、図示しない電源装置も備え、インバータ装置1、制御装置85等に給電されている。
【0060】
制御装置85は、マイクロコンピュータを用いて構成されており、入力部82からの指示に従い洗い工程、すすぎ工程、脱水工程および乾燥工程全般の制御を行なう。最初に、入力部82より洗濯する衣類の種類、洗濯についてのオプション条件、例えば使用洗剤の種類、静音運転等の条件が設定された後、スタート釦が押されると運転が開始される。
【0061】
制御装置85は、まずインバータ装置1に洗濯物の重量検出を指示する。重量検出を指示されたインバータ装置1は、先に説明した方法に従い洗濯物の重量(乾燥重量W0)を検出して制御装置85に知らせる。制御装置85は、検出された洗濯物の乾燥重量W0、および先に入力された衣類の種類等の情報を考慮して、給水量、洗剤投入量、洗い時間、洗い強度(モータ回転速度)、すすぎ回数、すすぎ時間、標準脱水時間、それに標準の乾燥時間等を、予め記憶していたプログラムにより算出する。
【0062】
制御装置85は、給水弁75を操作して算出された量の給水を行い、その過程で算出された量の洗剤投入を行なう。次いで、算出された洗い強度(モータ回転速度)で算出された時間だけの洗い運転を行なう。その間、制御装置85からは、算出されたモータ回転速度に相当する角速度指令値ωrefがインバータ装置1の電流指令/慣性モーメント演算回路5を経由して角速度制御回路4に指令値として与えられる。そして、先に説明した制御動作によって、洗濯機モータ63の角速度推定値ωが角速度指令値ωrefに一致するように速度制御される。洗い工程が終了すると、すすぎ工程に移り、先に算出されたすすぎ回数とすすぎ時間に従ってすすぎ運転が行なわれる。
【0063】
すすぎ工程が終了すると、脱水工程に移る。脱水工程における脱水時間、モータ回転速度あるいはモータ回転トルクは、従来の洗濯機では、洗濯物の乾燥重量、衣類の種類等を基に計算するか、あるいは入力部82からの設定値に従って決定されていた。しかし、本実施形態の洗濯機50の場合は、インバータ装置1が洗濯機モータ6の全慣性モーメントを短時間で検出できることを利用して、次のような制御を行なう。
【0064】
図5にその制御フローを示す。この脱水工程の制御では、インバータ装置1が周期的に洗濯物の重量検出を行い、その結果に基づいてその後のモータ回転速度を決定すると共に、更に脱水完了の自動判定も行なう。このような制御を行なうことができるのは、先に説明したように、本発明のインバータ装置1が短時間で洗濯機モータ63の全慣性モーメントを検出できることによる。
【0065】
まず、排水弁76を開いた後(ステップS1)、洗濯機モータ63を比較的低速度で定速回転させる(ステップS2)。次に、先に説明した方法でインバータ装置1が洗濯機モータ63の全慣性モーメントを検出し、ドラム54内の洗濯物の重量W1を算出する(ステップS3)。続いて、算出した洗濯物の重量W1と最初に検出しておいた洗濯物の乾燥重量W0とから、次式に従って、その時点における洗濯物の含水率P%を算出する(ステップS4)。
P=100・(W1−W0)/W0 (9)式
【0066】
次に、求めた含水率Pと、衣類の種類によって決められた脱水完了時の含水率Paとの大小を比較する(ステップS5)。含水率Pの値がPa以下であれば、脱水完了と判定し、洗濯機モータ63を停止して(ステップS9)脱水工程を終了する(ステップS10)。含水率Pの値がPaを越えていれば、脱水継続が必要と判断してステップS6に移る。
【0067】
ステップS6では、その時点の洗濯物重量W1、含水率Pを考慮して、新たに洗濯機モータ63の回転速度指令値(角速度指令値ωref)を決定する。通常、洗濯物重量W1が軽い程、また含水率Pの値が小さい程、高い角速度指令値ωrefが決定される。
【0068】
次にステップS7に移り、決定した角速度指令値ωrefになるように、洗濯機モータ63をクローズドループで速度制御する。この状態をta時間継続した後(ステップS8)、再びステップS3の重量検出に戻る。このように、taの時間間隔で洗濯物の重量測定を繰り返し行い、その結果から脱水工程の終了判定、角速度指令値ωrefの決定とそれに従った速度制御の動作を繰り返し行なう。
【0069】
このようにして脱水工程の制御を行なえば、脱水の進行につれて減少していく洗濯物重量および含水率に対応した最適なモータ回転速度を決定でき、それに従った脱水運転を行なうことが可能となる。また、脱水工程の終了時期は、検出した含水率より自動判定されるため、脱水不足、あるいは長すぎる脱水時間による時間延長や消費電力の無駄が避けられる効果が得られる。
【0070】
脱水工程が終了すると、乾燥工程に移る。乾燥工程における乾燥時間、モータ回転速度あるいはモータ回転トルクも、従来の洗濯機においては、洗濯物の乾燥重量、衣類の種類等から計算するか、あるいは入力部82から設定された値に従って決定されていた。しかし、本実施形態の洗濯機50では、インバータ装置1が洗濯機モータ63の全慣性モーメントを短時間で検出できることを利用して、脱水工程のフローに類似の図6に示すフローにより制御を行なう。
【0071】
まず、ファンモータ77と温風生成用ヒータ78をONする(ステップS11)。次に、洗濯機モータ63を比較的低速度で定速回転させ(ステップS12)、先に説明した方法でインバータ装置1により洗濯機モータ63の全慣性モーメントを検出し、ドラム54内の洗濯物の重量W1を算出する(ステップS13)。続いて、算出した洗濯物の重量W1と最初に検出しておいた洗濯物の乾燥重量W0とから、前述の(9)式によりその時点の洗濯物の含水率P%を算出する(ステップS14)。
【0072】
次に、求めた含水率Pと、衣類の種類によって決められた乾燥完了時の含水率Pbとの大小を比較する(ステップS15)。含水率Pの値が乾燥完了と思われる所定の含水率Pbを越えていれば、乾燥継続が必要と判断してステップS16に移る。ステップS16では、その時点の洗濯物重量W1、含水率Pを考慮して、新たに洗濯機モータ63の回転速度指令値(角速度指令値ωref)を決定する。 次いで、ステップS17に移り、決定した角速度指令値ωrefになるように、洗濯機モータ63を速度制御する。この状態をtb時間継続した後(ステップS18)、再びステップS13の重量検出に戻る。このように、tbの時間間隔で洗濯物の重量測定を繰り返し行う。
【0073】
ステップS15にて含水率Pの値が乾燥完了と思われる所定の含水率Pb以下と判定された場合にはステップS19に移り、ステップS16と同様にしてモータ角速度指令値ωrefを計算し、その角速度指令値ωrefで洗濯機モータ63を回転させる(ステップS20)。この状態を所定のtc時間継続した後(ステップS21)、乾燥完了と判断してファンモータ77と温風生成用ヒータ78をOFFし(ステップS22)、乾燥工程を終了する(ステップS23)。なお、ステップS15にて含水率Pが所定の含水率Pb以下になったと判断された後も、更にステップS21にてtc時間だけ乾燥運転を継続するのは、洗濯物の重量の検出誤差、それに基づく含水率のPの検出誤差を考慮したものである。
【0074】
このようにして乾燥工程の制御を行なえば、乾燥が進むにつれて減少していく洗濯物重量および含水率に対応した最適なモータ回転速度を決定することができ、それに従った乾燥運転を行なうことが可能となる。また、乾燥工程の終了時期も、検出した含水率を考慮して自動判定されるため、乾燥不足、あるいは長すぎる乾燥時間による時間延長や消費電力の無駄を避けられる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のベクトル制御インバータ装置の一実施形態を示す電気的構成図である。
【図2】モータの慣性モーメント検出方法を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態であるドラム式洗濯機の縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態である洗濯機の電気的ブロック図である。
【図5】脱水工程のシーケンスフロー図である。
【図6】乾燥工程のシーケンスフロー図である。
【符号の説明】
図中、1はセンサレスのベクトル制御インバータ装置、2は電流制御回路、3は回転位置推定回路、4は角速度制御回路、5は電流指令形成/慣性モーメント演算回路、6はモータ(洗濯機モータ)、31は誘起電圧推定回路、50は洗濯機(ドラム式洗濯機)、85は洗濯機の制御装置、Edは誘起電圧の磁束軸方向成分推定値、Idrはd軸電流指令値、Iqrはq軸電流指令値、ωは角速度推定値、ωrefは角速度指令値、Δωは角速度偏差、θは回転位置推定値を示す。
Claims (7)
- 永久磁石を回転子に設けた永久磁石モータに流れる電流を、永久磁石による誘起電圧の磁束軸方向成分推定値(Ed)をゼロとする演算により推定した磁束軸(d軸)方向成分(Id)と、これに直交するトルク軸(q軸)方向成分(Iq)とに分離し、それらの成分がそれぞれの指令値(Idr、Iqr)に一致するように独立に制御するセンサレスのベクトル制御インバータ装置であって、前記モータの角速度制御時の制御と、慣性モーメントの検出時の制御および慣性モーメントの検出とを次のようにして行なうことを特徴とするもの。
(1)前記モータの角速度制御時には、角速度指令値(ωref)と、前記磁束軸(d軸)の角速度推定値(ω)との偏差(Δω)を比例積分した値をトルク軸(q軸)電流指令値(Iqr)として与えるクローズドループ制御にて角速度制御を行なう。
(2)前記モータの慣性モーメントの検出時には、前記角速度制御により定速回転させた後、該定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)に所定の電流値(ΔIq)を加えた電流値(Iq2)をトルク軸(q軸)電流指令値(Iqr)としてステップ状に与えることにより前記角速度推定値(ω)を上昇させ、該上昇時の角加速度(dω/dt)を前記角速度推定値(ω)の時間変化より求める。求めた角加速度(dω/dt)と、前記定速時のトルク軸(q軸)電流指令値(Iq1)と、前記トルク軸(q軸)電流指令値(Iq2)とを用いて前記モータの運動方程式を解くことにより慣性モーメントを検出する。 - 請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求めてその値より洗濯物の重量を算出し、該算出した重量を考慮してその後の各洗濯工程の運転条件を決定することを特徴とする洗濯機。
- 請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておき、脱水工程においては同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率とその時点の洗濯物重量とを考慮に入れて次回重量算出までの洗濯機モータの回転速度をその都度決定することを特徴とする洗濯機。
- 脱水工程の途中において洗濯物の重量を1回または複数回測定し、測定した重量を基に脱水工程の終了までの時間を調整することを特徴とする洗濯機。
- 請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておき、脱水工程においては同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率が所定値以下になった時に脱水工程の終了と判断することを特徴とする洗濯機。
- 請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておき、乾燥工程においては同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率とその時点の洗濯物重量とを考慮に入れて次回重量算出までの洗濯機モータの回転速度をその都度決定することを特徴とする洗濯機。
- 請求項1に記載のベクトル制御インバータ装置を洗濯機モータの駆動用に使用した洗濯機であって、注水前に該モータの負荷を含む全慣性モーメントを前記検出手順により求め、その値より洗濯物の重量を算出して記憶しておき、乾燥工程においては同じ検出手順と同じ算出法により周期的に洗濯物の重量を算出すると共に、算出した重量と前記記憶しておいた注水前の洗濯物重量とから洗濯物の含水率をその都度算出し、算出した含水率が所定値以下になった時点から更に所定時間経過した時点を乾燥工程の終了と判断することを特徴とする洗濯機。
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