JP2004231086A - 入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを個別に組付けることができて組付け性がよい入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置を提供する。
【解決手段】ブースタをダイヤフラムにより定圧室と変圧室とに区画し、変圧室と定圧室または大気との連通を切換える弁機構をダイヤフラムに固定したピストンに内蔵したブレーキブースタ装置と、シリンダボディに穿設されたマスタシリンダにマスタピストンが嵌合され、該マスタピストンに連結されたピストンロッドが車室内方向に引っ張られるとマスタシリンダからブレーキ液圧を送出するマスタシリンダ装置とを備え、フロントシェルがシリンダボディの後端面に当接されてブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とが結合され、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとが連結手段により連結される。
【選択図】 図1
【解決手段】ブースタをダイヤフラムにより定圧室と変圧室とに区画し、変圧室と定圧室または大気との連通を切換える弁機構をダイヤフラムに固定したピストンに内蔵したブレーキブースタ装置と、シリンダボディに穿設されたマスタシリンダにマスタピストンが嵌合され、該マスタピストンに連結されたピストンロッドが車室内方向に引っ張られるとマスタシリンダからブレーキ液圧を送出するマスタシリンダ装置とを備え、フロントシェルがシリンダボディの後端面に当接されてブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とが結合され、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとが連結手段により連結される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力ロッドを引っ張ることによりブレーキ液圧を発生するブレーキ倍力装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両衝突時にブレーキペダルが運転手側に跳ね上がることを防止するために、入力ロッドを引っ張ることによりブレーキ液圧を発生する入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置が特開2001−294138号公報に記載されている。この入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置は、エンジンルームと車室内とを仕切るダッシュパネルのエンジンルーム側にブレーキブースタ装置が取付けられ、マスタシリンダ装置のマスタシリンダの前側には第1マスタピストンが嵌合され、該第1マスタピストンから離れた後側には第2マスタピストンが嵌合され、第1マスタピストンに連結されたピストンロッドが第2マスタピストンを貫通してマスタシリンダの後端壁から突出し、ブレーキブースタ装置により作動されるようになっている。ダッシュパネルの車室側に固定されたペダルブラケットにはブレーキペダルアームが中間部分で回動可能に枢支され、ブレーキペダルアームの先端部にブレーキブースタ装置の弁機構に連結されたプルロッドが回動可能に連結され、下端部にペダル踏面が設けられている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−294138号公報(第3頁、図1,2)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置においては、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置を結合すると、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとが装置内部に隠れてしまい結合が困難となるので、出力ロッドとピストンロッドとを一体にしていると考えられる。しかしながら、出力ロッドとピストンロッドとを一体にすると、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを夫々個別に組付けることができず組付け性が悪くなる問題がある。また、ブレーキブースタ装置の出力ロッドの揺れにより第1マスタピストンがマスタシリンダに対してこじれ、マスタピストンがスムーズに摺動できず摺動抵抗が大きくなる不具合が生じる。
【0005】
本発明は、係る従来の不具合を解消するためになされたもので、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを個別に組付けることができて組付け性がよい入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、フロントシェルとリアシェルとの間にダイヤフラムを挟着して定圧室と変圧室とに区画し、該ダイヤフラムにピストンを連結し、前記変圧室と前記定圧室または大気との連通を切換える弁機構と前記ピストンの移動を反力部材を介して出力ロッドに伝達するとともに前記弁機構にフィードバックする反力機構とを前記ピストンに内蔵し、ブレーキペダルにより入力ロッドが車室内方向に移動されると前記弁機構が大気を前記変圧室に導入して前記ピストンを前記ダイヤフラムにより後退させるブレーキブースタ装置と、シリンダボディに穿設されたマスタシリンダにマスタピストンが嵌合され、該マスタピストンに連結されたピストンロッドが前記車室内方向に引っ張られると前記マスタシリンダからブレーキ液圧を送出するマスタシリンダ装置とを備え、前記フロントシェルが前記シリンダボディの後端面に当接されて前記ブレーキブースタ装置と前記マスタシリンダ装置とが結合され、前記ブレーキブースタ装置の前記出力ロッドと前記マスタシリンダ装置の前記ピストンロッドとが連結手段により連結されたことである。
【0007】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記ピストンロッドは後端部を前記シリンダボディの前記後端面より後方に位置した状態で前記連結手段により前記出力ロッドに連結され、連結後に前記フロントシェルが前記シリンダボディの後端面に当接されて前記ブレーキブースタ装置と前記マスタシリンダ装置とが結合されたことである。
【0008】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記マスタピストンを後方に押動して前記ピストンロッドの後端部を前記シリンダボディの後端面より後方に位置するために前記シリンダボディの前端部に開閉可能な開口が設けられたことである。
【0009】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記連結手段は前記フロントシェルが前記シリンダボディの後端面に当接されると前記出力ロッドと前記ピストンロッドとを自動的に連結することである。
【0010】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記連結手段は前記ブレーキブースタ装置の前記出力ロッドと前記マスタシリンダ装置の前記ピストンロッドとを屈曲自在に連結することである。
【0011】
【発明の作用・効果】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、ブレーキペダルが操作されて入力ロッドが車室内側に引っ張られると、ブレーキブースタ装置のダイヤフラムに取付けられたピストンに内蔵された弁機構が作動される。この弁機構の作動により大気が変圧室に導入され、定圧室と変圧室との圧力差によってダイヤフラムが作動されてピストンが後退される。このピストンの後退が反力機構を介して出力ロッドに伝達されるとともに弁機構にフィードバックされる。マスタシリンダ装置のマスタピストンに連結されたピストンロッドが出力ロッドにより車室内方向に引っ張られるとマスタシリンダからブレーキ液圧が送出される。フロントシェルをシリンダボディの後端面に当接してブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを結合するとともに、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとを連結手段により連結しているので、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置を個別に組付けることができ、組付け性が良好で安価な入力ロッド引張り式マスタシリンダを提供することができる。
【0012】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、ピストンロッドは後端部がシリンダボディの後端面より後方に位置した状態で出力ロッドと連結手段により連結される。その後にフロントシェルがシリンダボディの後端面に当接されてブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とが結合される。これにより、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを個別に組付けてから出力ロッドとピストンロッドとを連結することができる。
【0013】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、シリンダボディの前端部に開閉可能に設けられた開口からマスタピストンを後方に押動し、ピストンロッドの後端部をシリンダボディの後端面より後方に押出して出力ロッドと連結する。その後に開口を閉鎖し、フロントシェルをシリンダボディの後端面に当接してブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを結合する。このように開口からマスタピストンを押してピストンロッドの後端部をシリンダボディの後端面より後方に押出すので、マスタピストンと出力ロッドとを容易に連結することができる。
【0014】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、フロントシェルをシリンダボディの後端面に当接させてブレーキブースタ装置とマスタシリンダとを結合すると、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとが自動的に連結される。これにより、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置を結合すると装置内部に隠れる出力ロッドとピストンロッドとの連結を極めて容易に行うことができる
【0015】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとが屈曲自在に連結されるので、出力ロッドの揺動がピストンロッドに伝達することを防止でき、マスタピストンがマスタシリンダに対してこじれることなくスムーズに進退することができる。
【0016】
【実施の形態】
以下、本発明に係るブレーキ倍力装置の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1において、1はブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3とを結合して構成された入力ロッド引張り式倍力装置で、エンジンルームと車室内とを仕切る車輌のダッシュボード4に固定される。ダッシュボード4の車室側に固定されたペダルブラケット7にはブレーキペダルアーム8が中間部分で枢支ピン9によって回動可能に枢支され、ブレーキペダルアーム8の先端部には入力ロッド10が連結ピン11により回動可能に連結され、下端部にはブレーキペダル12が設けられている。
【0017】
ブレーキブースタ装置2は、ブースタ4を形成するフロントシェル13及びリアシェル14を有し、両シェル13,14はフレキシブルなダイヤフラム16を外周縁のビードで気密的に挟着し部分的なカシメにより一体化され、このダイヤフラム16によりブースタ4の内部を定圧室17と変圧室18とに区画されている。ダイヤフラム16には円盤状のプレート19が定圧室17側で重ねられ、ダイヤフラム16及びプレート19に形成された中心孔にはピストン20が先端部外周面で気密的に嵌着固定され、ピストン20の前側部は変圧室18に露出している。リアシェル14の後面中心部にはダッシュボード1に設けた開口を貫通して後方に突出する円筒状の突出部14aが形成され、その突出端は車室内に開口されている。突出部14aにはピストン20の後端部がシール部材21を介して摺動可能に支持され、定圧室17を大気から遮断している。リアシェル14には負圧導入管22が取付けられ、定圧室17は負圧導入管22を介してエンジンの吸気マニホールドに連通されて負圧に維持されている。
【0018】
ピストン20は、ダイヤフラム16の中心孔に嵌着された第1ピストン部57と、リアシェル14に摺動可能に支持された第2ピストン部58によって構成され、第2ピストン部58の一端は第1ピストン部57の一端外周に嵌合され、カシメにより一体に結合されている。第2ピストン部58の第1ピストン部57との接合部には内周方向に突出する凸部が形成され、この凸部の第1ピストン部57側の端面に第1弁座59が形成されている。また、第2ピストン部58の第1ピストン部57との結合部近傍には半径方向穴60が円周上複数穿設され、この半径方向穴60を介して第2ピストン部58内の一部分が定圧室17に連通されている。
【0019】
第1ピストン部57の軸方向中央部の外周には鍔部57aが形成され、鍔部57aとリアシェル14に当接するスプリング受け29との間にはリターンスプリング61が介在されてピストン20を前方に付勢している。第1ピストン部57の内周にはカップ状の連結部材62が摺動可能に嵌装され、第1ピストン部57の連結部材62との嵌合面には変圧室18に開口する連通溝57bが形成されている。連結部材62の中心部には大気弁体63が結合され、大気弁体63は両ピストン部57、58の結合部を挿通して第2ピストン部58内に延在され、入力ロッド10の一端に連結されている。
【0020】
大気弁体63の外周には外周方向に突出する凸部が形成され、この凸部に第1ピストン部57側に向けて第2弁座65が形成されている。第2ピストン部58に形成された第1弁座59と大気弁体63に形成された第2弁座65は半径方向に隙間を存して隔てられ、かつ軸方向に対応するように位置されている。
【0021】
70は変圧室18を大気と定圧室17とに切換えて連通する制御弁体で、この制御弁体70の基部が第2ピストン部58の内周に抑え金具72によって固定されている。制御弁体70の先端には軸線方向に伸縮自在な可撓部73を介して基部に接続された弁部74が設けられている。弁部74は第1弁座59と第2弁座65との間の隙間を挿通して第1ピストン部57内に突入され、圧縮スプリング75の付勢力により両弁座59、65に接離可能に当接するようになっている。制御弁体70によってピストン20内が定圧室側と大気側とに区画され、制御弁体70の第1、第2弁座59,65との接離によって定圧室17側と大気側とのいずれか一方が連通溝57bを介して変圧室18に連通する。
【0022】
連結部材62内には、カップ状の出力部材77が所定量相対摺動可能に嵌装され、出力部材77の底部には出力ロッド78がピストン20より前方に突出されている。出力部材77のカップの底面と第1ピストン部57の反力端面57cとの間には環状の反力室80が形成され、この反力室80内に弾性材料で形成された環状帯の反力部材81が収納されている。連結部材62には出力部材77のカップの底面との間で反力部材81を挟み込むように環状リング82が係合されている。
【0023】
上記した第1、第2弁座59,65、制御弁体70、および圧縮スプリング75等によって変圧室18と定圧室17または大気との連通を切換える弁機構83が構成されている。出力部材77、第1ピストン部57、反力室80内に収納された反力部材81、環状リング82および連結部材62等によってピストン20の移動を反力部材81を介して出力ロッド78に伝達するとともに弁機構83にフィードバックする反力機構84が構成されている。これら弁機構83および反力機構81はピストン20に内蔵されている。
【0024】
フロントシェル13とリアシェル14とは、両シェルで構成されるブースタ4の軸線と平行に延在する円周上2本のタイロッド26で結合されている。タイロッド26は、大径の取付座26aで変圧室18内でフロントシェル13の内面に気密的に当接し、フロントシェル13を貫通して後方に延在する後端部26bの基部をカシメられてフロントシェル13に固定されている。タイロッド26はダイヤフラム16を気密的に貫通して後方に延在し、後端部はリアシェル14を気密的に貫通して後方に延在している。
【0025】
マスタシリンダ装置3は、シリンダボディ25にマスタシリンダ25a、装着孔25b、開口孔25cが断付状に同軸に貫通して形成され、前方のマスタシリンダ25aに第1、第2マスタピストン35,38が摺動自在に嵌合され、中央の装着孔25bに閉塞部材31の先端部がOリング32によりシールされて嵌合されている。閉塞部材31は装着孔30の肩部との間にリング体33とシール部材34を介在してシリンダボディ25の中央部に螺着されている。閉塞部材31の内径はマスタシリンダ25aの内径と同径とされ、また、閉塞部材30の後端部は開口孔25cに露出している。マスタシリンダ25aの前方開口端はキャップ86により液密的に閉塞されている。
【0026】
マスタシリンダ25aの底部側には第1マスタピストン35が摺動可能に嵌合され、第1マスタピストン35に形成された凹溝に嵌め込まれたシール部材36により第1マスタピストン35の外周とマスタシリンダ25aとの間をシールしている。第1マスタピストン35の後端より突出されたピストンロッド37は閉塞部材31を貫通して開口孔25c内まで延在されている。マスタシリンダ25aには第1マスタピストン35と閉塞部材31との間に第2マスタピストン38が摺動可能に嵌合され、第2マスタピストン38に形成された凹溝に嵌め込まれたシール部材39により第2マスタピストン38の外周とマスタシリンダ25aとの間をシールしている。第2マスタピストン38にはピストンロッド37がシール部材40を介して摺動可能に貫通しており、第2マスタピストン38によってマスタシリンダ25aを第1シリンダ室42と第2シリンダ室43に液密的に区画している。第1シリンダ室42はポート45を介して第1ブレーキ系統に連通され、第2シリンダ室43はポート46を介して第2ブレーキ系統に連通されている。第1マスタピストン35と第2マスタピストン38との間及び第2マスタピストン38と閉塞部材31との間には、それぞれ圧縮スプリング48、49が介挿され、第2マスタピストン38を非作動時に中立位置にバランスして停止させている。
【0027】
シリンダボディ25の上端にはリザーバ47がピン50で結合して載置固定されている。リザーバ47の下面に穿設された第1、第2出口51、52が、シリンダボディ25の上端に穿設されて第1、第2シリンダ室42、43に作動液を補給する第1、第2補給口53、54に連通されている。第1補給口53は、非作動位置に位置する第1マスタピストン35の肩部に開口され、第1マスタピストン35の摺動によりシール部材36によって閉塞される。第1マスタピストン35とマスタシリンダ25aの底部の間はシリンダボディ25に穿設された孔55によりリザーバ47に開放されている。第2補給口54は、リング体33のシール部材34との当接面に半径方向に刻設された溝に連通し、この溝は非作動位置に位置する第2マスタピストン38の環状部に半径方向に穿設された補給孔56に連通し、第2マスタピストン38の摺動によってその連通が遮断される。
【0028】
ブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3とを結合する前にブレーキブースタ装置2の出力ロッド78とシリンダ装置3のピストンロッド37とを連結手段87により連結するために、マスタシリンダ装置3のキャップ86が外され、第1マスタピストン35がマスタシリンダ25aの開口端から後方に押動されてピストンロッド37の後端部がシリンダボディ25の後端面より後方に押出される。この状態で、ピン88により連結された第1、第2リンク89,90が出力ロッド78の前端面およびピストンロッド37の後端面に夫々螺着されて出力ロッド78とピストンロッド37とが連結手段87により屈曲自在に連結される。
【0029】
ブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3との結合は、フロントシェル13の前端面13aがシリンダボディ25のフランジ部25dの後端面に当接され、前端面13aから前方に突出した円筒部13bがシール85を介在して開口孔25cに嵌合され、タイロッド26の雄ねじ部26bがフランジ部25dに設けられた結合穴を挿通され、雄ねじ部26bにナット27が螺着されて行われる。マスタシリンダ25aの開口端はキャップ89によって閉塞される。
【0030】
次に、上記第1の実施形態に係るブレーキ倍力装置の作動について説明する。ブレーキペダル12が踏まれて、入力ロッド10が図1の右方に引っ張られると、連結部材62に係合された環状リング82が反力部材81を圧縮しつつ圧縮スプリング75、76のばね力に抗して右方に移動され、制御弁体70の弁体74が大気弁体63の第2弁座65より開離される。これにより、車室内の大気が第2弁座65、連通溝57bを通って変圧室18に流入し、変圧室18と定圧室17との両室内の圧力差によりダイヤフラム16、プレート19及びピストン20がリターンスプリング61のばね力に抗して後退移動される。
【0031】
ピストン20の後退移動により、出力ロッド78が反力部材81を介して後退され、ピストンロッド37が連結手段87を介して出力ロッド78により引っ張られ、マスタシリンダ25a内の第1マスタピストン35がピストンロッド37とともに後方に移動され、第1補給口53がシール部材36により遮断される。第1補給口53が遮断された後、第1マスタピストン35の後方移動により、第1シリンダ室42内の作動液の液圧が上昇し、この液圧がポート45を介して第1ブレーキ系統に供給される。
【0032】
出力ロッド78とピストンロッド37とはピン87により回動可能に連結された第1、第2リンク89,90により連結されているので、ピストン20が後退移動するときに出力ロッド78が揺動しても、この揺動がピストンロッド37に伝達することを防止できて第1マスタピストン35はマスタシリンダ25に対してこじれることなくスムーズに進退することができる。なお、第1、第2リンク89,90とピン87との嵌合部には若干の遊びがあるので、第1、第2リンク89,90はピン87の軸線方向にも若干屈曲することができる。
【0033】
第1マスタピストン35の後方移動により、第1シリンダ室42内の液圧が上昇するために、第2マスタピストン38も圧縮スプリング49を圧縮しながら後方移動され、補給孔56がシール部材34により遮断され、第2補給口54との連通が遮断される。第2補給口54との連通が遮断された後、第2マスタピストン38の後方移動により、第2シリンダ室43内の作動液の液圧が上昇し、この液圧がポート46を介して第2ブレーキ系統に供給される。第2マスタピストン38は第1、第2シリンダ室42、43が同圧となる位置にバランスされる。
【0034】
ピストン20はダイヤフラム16に作用する両室内の圧力差に応じた作動力で、反力部材81を弾性変形しながら出力ロッド78を介して第1マスタピストン35を後退移動するとともに、制御弁体70の弁体74が大気弁体63に対して後退されるため、ブレーキペダル12の踏力に見合った作動力でピストン20が出力ロッド78を引っ張ると、制御弁体70の弁体74が第2弁座65に当接して大気と変圧室18との連通を遮断し、所望のブレーキ油圧を保持する。このとき、ブレーキペダル12を踏む力は、入力ロッド10を介して連結部材62の環状リング82から反力部材81に伝達され、反力部材81が踏力に応じて弾性変形するので、運転者は反力を感じることができる。
【0035】
ブレーキペダル12が開放されると、反力部材81の弾性復帰作用により、連結部材62がピストン20に対して前方に移動されるため、制御弁体70の弁部74が第1弁座59より開離する。これにより定圧室17内の負圧が半径方向穴60、第1弁座59、連通溝57bを通って変圧室18に導入され、変圧室18と定圧室17との両室内の圧力差が無くなり、ピストン20、プレート19及びダイヤフラム16がリターンスプリング61のばね力により前方に移動されて原位置に復帰する。一方、ピストン20の前方への移動により、マスタシリンダ25の第1マスタピストン35が原位置に復帰されるとともに、第2マスタピストン38が原位置に復帰され、マスタシリンダ25の各シリンダ室42、43内がリザーバ47に開放される。
【0036】
次に、図2に示す第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、マスタシリンダ装置3のピストンロッド37の後端部がシリンダボディ25の後端面より前方に位置していたのに対し、第2の実施形態では、ブレーキブースタ装置2の出力ロッド78の前端部がフロントシェル13の前端面13aより前方に位置している。このために、ブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3とを結合する前に、出力ロッド78をフロントシェル13の前端面13aより前方に引っ張り出され、その状態で出力ロッド78とピストンロッド37とが連結手段87により連結される。連結後に、フロントシェル13の前端面13aがシリンダボディ25のフランジ部25dの後端面にシール部材94を介在して当接され、タイロッド26の雄ねじ部26bがフランジ部25dに設けられた結合穴を挿通され、雄ねじ部26bにナット27が螺着されてブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3とが結合される。
【0037】
また、第1、第2マスタピストン35,38間に介挿された圧縮スプリング48は、テレスコープ機構91により離間距離が規制された互いに接近可能な一対のばね受け間に予備圧縮されて介挿されている。この圧縮スプリング48の予備圧縮力が第2マスタピストン38と閉塞部材31との間に介挿された圧縮スプリング49の予備圧縮力より大きく設定され、第2マスタピストン38が非作動時に中立位置に停止されるようになっている。上述以外の他の構成については第1の実施の形態と同一であるので、同一の構成要素に同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0038】
第1の実施形態においては、マスタピストン35をマスタシリンダ25aの開口から後方に押動してピストンロッド37の後端部をシリンダボディ25の後端面より後方に押出しているが、マスタシリンダ25aを有底穴とし、ピストンロッド37を後端部がシリンダボディ25の後端面より後方に位置するように後方から引張り出し、その状態で出力ロッド78とピストンロッド37とを連結手段87により連結してもよい。
【0039】
出力ロッド78とピストンロッド37とを連結する連結手段87の他の実施形態としては、図3(a)に示すように、出力ロッド78の端面から連結穴78aを穿設し、連結穴78a内周面に環状溝78bを刻設し、ピストンロッド37の後端部にテーパ部37a、環状溝37bを形成し、環状溝37bに弾性を有するCワッシャ92を嵌めた構成としてもよい。ブレーキブースタ装置2とマスタブレーキ装置3とを結合するために、フロントシェル13の前端面13aをシリンダボディ25のフランジ部25dの後端面に当接すると、ピストンロッド37の後端部がテーパ部37aにガイドされて連結穴78aに嵌入され、Cワッシャ92が連結穴78aに入口のテーパ面により拘縮されて入れられ、環状溝78bに整列して拡張し、環状溝78b,37bの両側壁に係合して出力ロッド78とピストンロッド37とを自動的に連結する。
【0040】
また、図3(b)のように出力ロッド78とピストンロッド37の各端面に螺着された第1、第2リンク89,90を互いに90度の角度をなすピン93,94により第3リンク95に連結して自在継手としたものでもよい。さらに、図3(c)に示すように出力ロッド78の前端に連結突起96a,96bを二股状に突設し、各連結突起96a,96bにL字状の連結溝97a,97bを互いに反対側の側面に開口し且つ前方に屈曲するように形成し、ピストンロッド37の後端部に半径方向両側に突設した係合部98a,98bを連結突起96a,96b間に挿入した後に図3(d)のように90度回転して連結溝97a,97bの前方屈曲部に係入させるようにしてもよい。また、図3(e)のように、出力ロッド78の前端面から穿設した軸穴に雌ねじを刻設し、ピストンロッド37の後端部に雄ねじを刻設して出力ロッド78とピストンロッド37とをねじ結合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置の縦断面図。
【図2】第2の実施形態の入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置の一部断面図。
【図3】連結手段の他の実施形態を示す図。
【符号の説明】
1…入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置、2…ブレーキブースタ装置、3…マスタシリンダ装置、4…ブースタ、10…入力ロッド、12…ブレーキペダル、13…フロントシェル、14…リアシェル、16…ダイヤフラム、17…定圧室、18…変圧室、20…ピストン、25…シリンダボディ、25a…マスタシリンダ、35,38…第1、第2マスタピストン、37…ピストンロッド、57…第1ピストン部、58…第2ピストン部、59…第1弁座、63…大気弁体、65…第2弁座、70…制御弁体、78…出力ロッド、81…反力部材、83…弁機構、84…反力機構、86…キャップ、87…連結手段。
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力ロッドを引っ張ることによりブレーキ液圧を発生するブレーキ倍力装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両衝突時にブレーキペダルが運転手側に跳ね上がることを防止するために、入力ロッドを引っ張ることによりブレーキ液圧を発生する入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置が特開2001−294138号公報に記載されている。この入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置は、エンジンルームと車室内とを仕切るダッシュパネルのエンジンルーム側にブレーキブースタ装置が取付けられ、マスタシリンダ装置のマスタシリンダの前側には第1マスタピストンが嵌合され、該第1マスタピストンから離れた後側には第2マスタピストンが嵌合され、第1マスタピストンに連結されたピストンロッドが第2マスタピストンを貫通してマスタシリンダの後端壁から突出し、ブレーキブースタ装置により作動されるようになっている。ダッシュパネルの車室側に固定されたペダルブラケットにはブレーキペダルアームが中間部分で回動可能に枢支され、ブレーキペダルアームの先端部にブレーキブースタ装置の弁機構に連結されたプルロッドが回動可能に連結され、下端部にペダル踏面が設けられている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−294138号公報(第3頁、図1,2)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置においては、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置を結合すると、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとが装置内部に隠れてしまい結合が困難となるので、出力ロッドとピストンロッドとを一体にしていると考えられる。しかしながら、出力ロッドとピストンロッドとを一体にすると、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを夫々個別に組付けることができず組付け性が悪くなる問題がある。また、ブレーキブースタ装置の出力ロッドの揺れにより第1マスタピストンがマスタシリンダに対してこじれ、マスタピストンがスムーズに摺動できず摺動抵抗が大きくなる不具合が生じる。
【0005】
本発明は、係る従来の不具合を解消するためになされたもので、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを個別に組付けることができて組付け性がよい入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、フロントシェルとリアシェルとの間にダイヤフラムを挟着して定圧室と変圧室とに区画し、該ダイヤフラムにピストンを連結し、前記変圧室と前記定圧室または大気との連通を切換える弁機構と前記ピストンの移動を反力部材を介して出力ロッドに伝達するとともに前記弁機構にフィードバックする反力機構とを前記ピストンに内蔵し、ブレーキペダルにより入力ロッドが車室内方向に移動されると前記弁機構が大気を前記変圧室に導入して前記ピストンを前記ダイヤフラムにより後退させるブレーキブースタ装置と、シリンダボディに穿設されたマスタシリンダにマスタピストンが嵌合され、該マスタピストンに連結されたピストンロッドが前記車室内方向に引っ張られると前記マスタシリンダからブレーキ液圧を送出するマスタシリンダ装置とを備え、前記フロントシェルが前記シリンダボディの後端面に当接されて前記ブレーキブースタ装置と前記マスタシリンダ装置とが結合され、前記ブレーキブースタ装置の前記出力ロッドと前記マスタシリンダ装置の前記ピストンロッドとが連結手段により連結されたことである。
【0007】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記ピストンロッドは後端部を前記シリンダボディの前記後端面より後方に位置した状態で前記連結手段により前記出力ロッドに連結され、連結後に前記フロントシェルが前記シリンダボディの後端面に当接されて前記ブレーキブースタ装置と前記マスタシリンダ装置とが結合されたことである。
【0008】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記マスタピストンを後方に押動して前記ピストンロッドの後端部を前記シリンダボディの後端面より後方に位置するために前記シリンダボディの前端部に開閉可能な開口が設けられたことである。
【0009】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記連結手段は前記フロントシェルが前記シリンダボディの後端面に当接されると前記出力ロッドと前記ピストンロッドとを自動的に連結することである。
【0010】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記連結手段は前記ブレーキブースタ装置の前記出力ロッドと前記マスタシリンダ装置の前記ピストンロッドとを屈曲自在に連結することである。
【0011】
【発明の作用・効果】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、ブレーキペダルが操作されて入力ロッドが車室内側に引っ張られると、ブレーキブースタ装置のダイヤフラムに取付けられたピストンに内蔵された弁機構が作動される。この弁機構の作動により大気が変圧室に導入され、定圧室と変圧室との圧力差によってダイヤフラムが作動されてピストンが後退される。このピストンの後退が反力機構を介して出力ロッドに伝達されるとともに弁機構にフィードバックされる。マスタシリンダ装置のマスタピストンに連結されたピストンロッドが出力ロッドにより車室内方向に引っ張られるとマスタシリンダからブレーキ液圧が送出される。フロントシェルをシリンダボディの後端面に当接してブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを結合するとともに、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとを連結手段により連結しているので、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置を個別に組付けることができ、組付け性が良好で安価な入力ロッド引張り式マスタシリンダを提供することができる。
【0012】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、ピストンロッドは後端部がシリンダボディの後端面より後方に位置した状態で出力ロッドと連結手段により連結される。その後にフロントシェルがシリンダボディの後端面に当接されてブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とが結合される。これにより、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを個別に組付けてから出力ロッドとピストンロッドとを連結することができる。
【0013】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、シリンダボディの前端部に開閉可能に設けられた開口からマスタピストンを後方に押動し、ピストンロッドの後端部をシリンダボディの後端面より後方に押出して出力ロッドと連結する。その後に開口を閉鎖し、フロントシェルをシリンダボディの後端面に当接してブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置とを結合する。このように開口からマスタピストンを押してピストンロッドの後端部をシリンダボディの後端面より後方に押出すので、マスタピストンと出力ロッドとを容易に連結することができる。
【0014】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、フロントシェルをシリンダボディの後端面に当接させてブレーキブースタ装置とマスタシリンダとを結合すると、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとが自動的に連結される。これにより、ブレーキブースタ装置とマスタシリンダ装置を結合すると装置内部に隠れる出力ロッドとピストンロッドとの連結を極めて容易に行うことができる
【0015】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、ブレーキブースタ装置の出力ロッドとマスタシリンダ装置のピストンロッドとが屈曲自在に連結されるので、出力ロッドの揺動がピストンロッドに伝達することを防止でき、マスタピストンがマスタシリンダに対してこじれることなくスムーズに進退することができる。
【0016】
【実施の形態】
以下、本発明に係るブレーキ倍力装置の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1において、1はブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3とを結合して構成された入力ロッド引張り式倍力装置で、エンジンルームと車室内とを仕切る車輌のダッシュボード4に固定される。ダッシュボード4の車室側に固定されたペダルブラケット7にはブレーキペダルアーム8が中間部分で枢支ピン9によって回動可能に枢支され、ブレーキペダルアーム8の先端部には入力ロッド10が連結ピン11により回動可能に連結され、下端部にはブレーキペダル12が設けられている。
【0017】
ブレーキブースタ装置2は、ブースタ4を形成するフロントシェル13及びリアシェル14を有し、両シェル13,14はフレキシブルなダイヤフラム16を外周縁のビードで気密的に挟着し部分的なカシメにより一体化され、このダイヤフラム16によりブースタ4の内部を定圧室17と変圧室18とに区画されている。ダイヤフラム16には円盤状のプレート19が定圧室17側で重ねられ、ダイヤフラム16及びプレート19に形成された中心孔にはピストン20が先端部外周面で気密的に嵌着固定され、ピストン20の前側部は変圧室18に露出している。リアシェル14の後面中心部にはダッシュボード1に設けた開口を貫通して後方に突出する円筒状の突出部14aが形成され、その突出端は車室内に開口されている。突出部14aにはピストン20の後端部がシール部材21を介して摺動可能に支持され、定圧室17を大気から遮断している。リアシェル14には負圧導入管22が取付けられ、定圧室17は負圧導入管22を介してエンジンの吸気マニホールドに連通されて負圧に維持されている。
【0018】
ピストン20は、ダイヤフラム16の中心孔に嵌着された第1ピストン部57と、リアシェル14に摺動可能に支持された第2ピストン部58によって構成され、第2ピストン部58の一端は第1ピストン部57の一端外周に嵌合され、カシメにより一体に結合されている。第2ピストン部58の第1ピストン部57との接合部には内周方向に突出する凸部が形成され、この凸部の第1ピストン部57側の端面に第1弁座59が形成されている。また、第2ピストン部58の第1ピストン部57との結合部近傍には半径方向穴60が円周上複数穿設され、この半径方向穴60を介して第2ピストン部58内の一部分が定圧室17に連通されている。
【0019】
第1ピストン部57の軸方向中央部の外周には鍔部57aが形成され、鍔部57aとリアシェル14に当接するスプリング受け29との間にはリターンスプリング61が介在されてピストン20を前方に付勢している。第1ピストン部57の内周にはカップ状の連結部材62が摺動可能に嵌装され、第1ピストン部57の連結部材62との嵌合面には変圧室18に開口する連通溝57bが形成されている。連結部材62の中心部には大気弁体63が結合され、大気弁体63は両ピストン部57、58の結合部を挿通して第2ピストン部58内に延在され、入力ロッド10の一端に連結されている。
【0020】
大気弁体63の外周には外周方向に突出する凸部が形成され、この凸部に第1ピストン部57側に向けて第2弁座65が形成されている。第2ピストン部58に形成された第1弁座59と大気弁体63に形成された第2弁座65は半径方向に隙間を存して隔てられ、かつ軸方向に対応するように位置されている。
【0021】
70は変圧室18を大気と定圧室17とに切換えて連通する制御弁体で、この制御弁体70の基部が第2ピストン部58の内周に抑え金具72によって固定されている。制御弁体70の先端には軸線方向に伸縮自在な可撓部73を介して基部に接続された弁部74が設けられている。弁部74は第1弁座59と第2弁座65との間の隙間を挿通して第1ピストン部57内に突入され、圧縮スプリング75の付勢力により両弁座59、65に接離可能に当接するようになっている。制御弁体70によってピストン20内が定圧室側と大気側とに区画され、制御弁体70の第1、第2弁座59,65との接離によって定圧室17側と大気側とのいずれか一方が連通溝57bを介して変圧室18に連通する。
【0022】
連結部材62内には、カップ状の出力部材77が所定量相対摺動可能に嵌装され、出力部材77の底部には出力ロッド78がピストン20より前方に突出されている。出力部材77のカップの底面と第1ピストン部57の反力端面57cとの間には環状の反力室80が形成され、この反力室80内に弾性材料で形成された環状帯の反力部材81が収納されている。連結部材62には出力部材77のカップの底面との間で反力部材81を挟み込むように環状リング82が係合されている。
【0023】
上記した第1、第2弁座59,65、制御弁体70、および圧縮スプリング75等によって変圧室18と定圧室17または大気との連通を切換える弁機構83が構成されている。出力部材77、第1ピストン部57、反力室80内に収納された反力部材81、環状リング82および連結部材62等によってピストン20の移動を反力部材81を介して出力ロッド78に伝達するとともに弁機構83にフィードバックする反力機構84が構成されている。これら弁機構83および反力機構81はピストン20に内蔵されている。
【0024】
フロントシェル13とリアシェル14とは、両シェルで構成されるブースタ4の軸線と平行に延在する円周上2本のタイロッド26で結合されている。タイロッド26は、大径の取付座26aで変圧室18内でフロントシェル13の内面に気密的に当接し、フロントシェル13を貫通して後方に延在する後端部26bの基部をカシメられてフロントシェル13に固定されている。タイロッド26はダイヤフラム16を気密的に貫通して後方に延在し、後端部はリアシェル14を気密的に貫通して後方に延在している。
【0025】
マスタシリンダ装置3は、シリンダボディ25にマスタシリンダ25a、装着孔25b、開口孔25cが断付状に同軸に貫通して形成され、前方のマスタシリンダ25aに第1、第2マスタピストン35,38が摺動自在に嵌合され、中央の装着孔25bに閉塞部材31の先端部がOリング32によりシールされて嵌合されている。閉塞部材31は装着孔30の肩部との間にリング体33とシール部材34を介在してシリンダボディ25の中央部に螺着されている。閉塞部材31の内径はマスタシリンダ25aの内径と同径とされ、また、閉塞部材30の後端部は開口孔25cに露出している。マスタシリンダ25aの前方開口端はキャップ86により液密的に閉塞されている。
【0026】
マスタシリンダ25aの底部側には第1マスタピストン35が摺動可能に嵌合され、第1マスタピストン35に形成された凹溝に嵌め込まれたシール部材36により第1マスタピストン35の外周とマスタシリンダ25aとの間をシールしている。第1マスタピストン35の後端より突出されたピストンロッド37は閉塞部材31を貫通して開口孔25c内まで延在されている。マスタシリンダ25aには第1マスタピストン35と閉塞部材31との間に第2マスタピストン38が摺動可能に嵌合され、第2マスタピストン38に形成された凹溝に嵌め込まれたシール部材39により第2マスタピストン38の外周とマスタシリンダ25aとの間をシールしている。第2マスタピストン38にはピストンロッド37がシール部材40を介して摺動可能に貫通しており、第2マスタピストン38によってマスタシリンダ25aを第1シリンダ室42と第2シリンダ室43に液密的に区画している。第1シリンダ室42はポート45を介して第1ブレーキ系統に連通され、第2シリンダ室43はポート46を介して第2ブレーキ系統に連通されている。第1マスタピストン35と第2マスタピストン38との間及び第2マスタピストン38と閉塞部材31との間には、それぞれ圧縮スプリング48、49が介挿され、第2マスタピストン38を非作動時に中立位置にバランスして停止させている。
【0027】
シリンダボディ25の上端にはリザーバ47がピン50で結合して載置固定されている。リザーバ47の下面に穿設された第1、第2出口51、52が、シリンダボディ25の上端に穿設されて第1、第2シリンダ室42、43に作動液を補給する第1、第2補給口53、54に連通されている。第1補給口53は、非作動位置に位置する第1マスタピストン35の肩部に開口され、第1マスタピストン35の摺動によりシール部材36によって閉塞される。第1マスタピストン35とマスタシリンダ25aの底部の間はシリンダボディ25に穿設された孔55によりリザーバ47に開放されている。第2補給口54は、リング体33のシール部材34との当接面に半径方向に刻設された溝に連通し、この溝は非作動位置に位置する第2マスタピストン38の環状部に半径方向に穿設された補給孔56に連通し、第2マスタピストン38の摺動によってその連通が遮断される。
【0028】
ブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3とを結合する前にブレーキブースタ装置2の出力ロッド78とシリンダ装置3のピストンロッド37とを連結手段87により連結するために、マスタシリンダ装置3のキャップ86が外され、第1マスタピストン35がマスタシリンダ25aの開口端から後方に押動されてピストンロッド37の後端部がシリンダボディ25の後端面より後方に押出される。この状態で、ピン88により連結された第1、第2リンク89,90が出力ロッド78の前端面およびピストンロッド37の後端面に夫々螺着されて出力ロッド78とピストンロッド37とが連結手段87により屈曲自在に連結される。
【0029】
ブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3との結合は、フロントシェル13の前端面13aがシリンダボディ25のフランジ部25dの後端面に当接され、前端面13aから前方に突出した円筒部13bがシール85を介在して開口孔25cに嵌合され、タイロッド26の雄ねじ部26bがフランジ部25dに設けられた結合穴を挿通され、雄ねじ部26bにナット27が螺着されて行われる。マスタシリンダ25aの開口端はキャップ89によって閉塞される。
【0030】
次に、上記第1の実施形態に係るブレーキ倍力装置の作動について説明する。ブレーキペダル12が踏まれて、入力ロッド10が図1の右方に引っ張られると、連結部材62に係合された環状リング82が反力部材81を圧縮しつつ圧縮スプリング75、76のばね力に抗して右方に移動され、制御弁体70の弁体74が大気弁体63の第2弁座65より開離される。これにより、車室内の大気が第2弁座65、連通溝57bを通って変圧室18に流入し、変圧室18と定圧室17との両室内の圧力差によりダイヤフラム16、プレート19及びピストン20がリターンスプリング61のばね力に抗して後退移動される。
【0031】
ピストン20の後退移動により、出力ロッド78が反力部材81を介して後退され、ピストンロッド37が連結手段87を介して出力ロッド78により引っ張られ、マスタシリンダ25a内の第1マスタピストン35がピストンロッド37とともに後方に移動され、第1補給口53がシール部材36により遮断される。第1補給口53が遮断された後、第1マスタピストン35の後方移動により、第1シリンダ室42内の作動液の液圧が上昇し、この液圧がポート45を介して第1ブレーキ系統に供給される。
【0032】
出力ロッド78とピストンロッド37とはピン87により回動可能に連結された第1、第2リンク89,90により連結されているので、ピストン20が後退移動するときに出力ロッド78が揺動しても、この揺動がピストンロッド37に伝達することを防止できて第1マスタピストン35はマスタシリンダ25に対してこじれることなくスムーズに進退することができる。なお、第1、第2リンク89,90とピン87との嵌合部には若干の遊びがあるので、第1、第2リンク89,90はピン87の軸線方向にも若干屈曲することができる。
【0033】
第1マスタピストン35の後方移動により、第1シリンダ室42内の液圧が上昇するために、第2マスタピストン38も圧縮スプリング49を圧縮しながら後方移動され、補給孔56がシール部材34により遮断され、第2補給口54との連通が遮断される。第2補給口54との連通が遮断された後、第2マスタピストン38の後方移動により、第2シリンダ室43内の作動液の液圧が上昇し、この液圧がポート46を介して第2ブレーキ系統に供給される。第2マスタピストン38は第1、第2シリンダ室42、43が同圧となる位置にバランスされる。
【0034】
ピストン20はダイヤフラム16に作用する両室内の圧力差に応じた作動力で、反力部材81を弾性変形しながら出力ロッド78を介して第1マスタピストン35を後退移動するとともに、制御弁体70の弁体74が大気弁体63に対して後退されるため、ブレーキペダル12の踏力に見合った作動力でピストン20が出力ロッド78を引っ張ると、制御弁体70の弁体74が第2弁座65に当接して大気と変圧室18との連通を遮断し、所望のブレーキ油圧を保持する。このとき、ブレーキペダル12を踏む力は、入力ロッド10を介して連結部材62の環状リング82から反力部材81に伝達され、反力部材81が踏力に応じて弾性変形するので、運転者は反力を感じることができる。
【0035】
ブレーキペダル12が開放されると、反力部材81の弾性復帰作用により、連結部材62がピストン20に対して前方に移動されるため、制御弁体70の弁部74が第1弁座59より開離する。これにより定圧室17内の負圧が半径方向穴60、第1弁座59、連通溝57bを通って変圧室18に導入され、変圧室18と定圧室17との両室内の圧力差が無くなり、ピストン20、プレート19及びダイヤフラム16がリターンスプリング61のばね力により前方に移動されて原位置に復帰する。一方、ピストン20の前方への移動により、マスタシリンダ25の第1マスタピストン35が原位置に復帰されるとともに、第2マスタピストン38が原位置に復帰され、マスタシリンダ25の各シリンダ室42、43内がリザーバ47に開放される。
【0036】
次に、図2に示す第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、マスタシリンダ装置3のピストンロッド37の後端部がシリンダボディ25の後端面より前方に位置していたのに対し、第2の実施形態では、ブレーキブースタ装置2の出力ロッド78の前端部がフロントシェル13の前端面13aより前方に位置している。このために、ブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3とを結合する前に、出力ロッド78をフロントシェル13の前端面13aより前方に引っ張り出され、その状態で出力ロッド78とピストンロッド37とが連結手段87により連結される。連結後に、フロントシェル13の前端面13aがシリンダボディ25のフランジ部25dの後端面にシール部材94を介在して当接され、タイロッド26の雄ねじ部26bがフランジ部25dに設けられた結合穴を挿通され、雄ねじ部26bにナット27が螺着されてブレーキブースタ装置2とマスタシリンダ装置3とが結合される。
【0037】
また、第1、第2マスタピストン35,38間に介挿された圧縮スプリング48は、テレスコープ機構91により離間距離が規制された互いに接近可能な一対のばね受け間に予備圧縮されて介挿されている。この圧縮スプリング48の予備圧縮力が第2マスタピストン38と閉塞部材31との間に介挿された圧縮スプリング49の予備圧縮力より大きく設定され、第2マスタピストン38が非作動時に中立位置に停止されるようになっている。上述以外の他の構成については第1の実施の形態と同一であるので、同一の構成要素に同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0038】
第1の実施形態においては、マスタピストン35をマスタシリンダ25aの開口から後方に押動してピストンロッド37の後端部をシリンダボディ25の後端面より後方に押出しているが、マスタシリンダ25aを有底穴とし、ピストンロッド37を後端部がシリンダボディ25の後端面より後方に位置するように後方から引張り出し、その状態で出力ロッド78とピストンロッド37とを連結手段87により連結してもよい。
【0039】
出力ロッド78とピストンロッド37とを連結する連結手段87の他の実施形態としては、図3(a)に示すように、出力ロッド78の端面から連結穴78aを穿設し、連結穴78a内周面に環状溝78bを刻設し、ピストンロッド37の後端部にテーパ部37a、環状溝37bを形成し、環状溝37bに弾性を有するCワッシャ92を嵌めた構成としてもよい。ブレーキブースタ装置2とマスタブレーキ装置3とを結合するために、フロントシェル13の前端面13aをシリンダボディ25のフランジ部25dの後端面に当接すると、ピストンロッド37の後端部がテーパ部37aにガイドされて連結穴78aに嵌入され、Cワッシャ92が連結穴78aに入口のテーパ面により拘縮されて入れられ、環状溝78bに整列して拡張し、環状溝78b,37bの両側壁に係合して出力ロッド78とピストンロッド37とを自動的に連結する。
【0040】
また、図3(b)のように出力ロッド78とピストンロッド37の各端面に螺着された第1、第2リンク89,90を互いに90度の角度をなすピン93,94により第3リンク95に連結して自在継手としたものでもよい。さらに、図3(c)に示すように出力ロッド78の前端に連結突起96a,96bを二股状に突設し、各連結突起96a,96bにL字状の連結溝97a,97bを互いに反対側の側面に開口し且つ前方に屈曲するように形成し、ピストンロッド37の後端部に半径方向両側に突設した係合部98a,98bを連結突起96a,96b間に挿入した後に図3(d)のように90度回転して連結溝97a,97bの前方屈曲部に係入させるようにしてもよい。また、図3(e)のように、出力ロッド78の前端面から穿設した軸穴に雌ねじを刻設し、ピストンロッド37の後端部に雄ねじを刻設して出力ロッド78とピストンロッド37とをねじ結合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置の縦断面図。
【図2】第2の実施形態の入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置の一部断面図。
【図3】連結手段の他の実施形態を示す図。
【符号の説明】
1…入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置、2…ブレーキブースタ装置、3…マスタシリンダ装置、4…ブースタ、10…入力ロッド、12…ブレーキペダル、13…フロントシェル、14…リアシェル、16…ダイヤフラム、17…定圧室、18…変圧室、20…ピストン、25…シリンダボディ、25a…マスタシリンダ、35,38…第1、第2マスタピストン、37…ピストンロッド、57…第1ピストン部、58…第2ピストン部、59…第1弁座、63…大気弁体、65…第2弁座、70…制御弁体、78…出力ロッド、81…反力部材、83…弁機構、84…反力機構、86…キャップ、87…連結手段。
Claims (5)
- フロントシェルとリアシェルとの間にダイヤフラムを挟着して定圧室と変圧室とに区画し、該ダイヤフラムにピストンを連結し、前記変圧室と前記定圧室または大気との連通を切換える弁機構と前記ピストンの移動を反力部材を介して出力ロッドに伝達するとともに前記弁機構にフィードバックする反力機構とを前記ピストンに内蔵し、ブレーキペダルにより入力ロッドが車室内方向に移動されると前記弁機構が大気を前記変圧室に導入して前記ピストンを前記ダイヤフラムにより後退させるブレーキブースタ装置と、シリンダボディに穿設されたマスタシリンダにマスタピストンが嵌合され、該マスタピストンに連結されたピストンロッドが前記車室内方向に引っ張られると前記マスタシリンダからブレーキ液圧を送出するマスタシリンダ装置とを備え、前記フロントシェルが前記シリンダボディの後端面に当接されて前記ブレーキブースタ装置と前記マスタシリンダ装置とが結合され、前記ブレーキブースタ装置の前記出力ロッドと前記マスタシリンダ装置の前記ピストンロッドとが連結手段により連結されたことを特徴とする入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置。
- 請求項1において、前記ピストンロッドは後端部を前記シリンダボディの前記後端面より後方に位置した状態で前記連結手段により前記出力ロッドに連結され、連結後に前記フロントシェルが前記シリンダボディの後端面に当接されて前記ブレーキブースタ装置と前記マスタシリンダ装置とが結合されたことを特徴とする入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置。
- 請求項2において、前記マスタピストンを後方に押動して前記ピストンロッドの後端部を前記シリンダボディの後端面より後方に位置するために前記シリンダボディの前端部に開閉可能な開口が設けられたことを特徴とする入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置。
- 請求項1において、前記連結手段は前記フロントシェルが前記シリンダボディの後端面に当接されると前記出力ロッドと前記ピストンロッドとを自動的に連結することを特徴とする入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置。
- 請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記連結手段は前記ブレーキブースタ装置の前記出力ロッドと前記マスタシリンダ装置の前記ピストンロッドとを屈曲自在に連結することを特徴入力ロッド引張り式ブレーキ倍力装置。
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