JP2004219338A - 車両の操縦安定性評価装置及び車両の操縦安定性評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両運転時の視線移動開始の早さに加えて運転者の無意識の操作を加味した、的確な操縦安定性評価を行う手法の提供。
【解決手段】車両評価のため所定コースを走行する際に、運転者の視線方向のデータ及びステアリング操作を示す筋電位のデータが、評価コースにおける車両位置に対する変化として複数組取得される。各データは、(A)視線方向データを車両位置を揃えて加算平均する、(B)視線方向データに共通する特徴に対応する車両位置を特定し該車両位置を揃えて筋電位データを加算平均する、という2種の平均化が行われる。平均化処理(A)によりコース内での位置と運転者の視線方向との関連という点から操縦安定性が評価出来る。平均化処理(B)により運転者の視線方向とステアリング操作との関連という点から操縦安定性が評価出来る。それらを組合わせれば、より的確で定量的に操縦安定性を評価出来る。
【選択図】 図6
【解決手段】車両評価のため所定コースを走行する際に、運転者の視線方向のデータ及びステアリング操作を示す筋電位のデータが、評価コースにおける車両位置に対する変化として複数組取得される。各データは、(A)視線方向データを車両位置を揃えて加算平均する、(B)視線方向データに共通する特徴に対応する車両位置を特定し該車両位置を揃えて筋電位データを加算平均する、という2種の平均化が行われる。平均化処理(A)によりコース内での位置と運転者の視線方向との関連という点から操縦安定性が評価出来る。平均化処理(B)により運転者の視線方向とステアリング操作との関連という点から操縦安定性が評価出来る。それらを組合わせれば、より的確で定量的に操縦安定性を評価出来る。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、運転者の視線方向及び車両操縦状態並びに車両走行位置を用いて車両の操縦安定性を評価するための、車両の操縦安定性評価装置及び車両の操縦安定性評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の限界の横G値やロール角度、振動値、ハンドルに対する位相遅れ等の各数値を評価指標として、車両の操縦安定性を評価することが試みられている。しかしながら、この評価指標を用いて複数の車両の操縦安定性を相対的に評価する場合、車高、重量、タイヤ等の諸元が車両毎に異なるため、各車両の評価指標も異なる数値となる。よって、上述した評価指標を用いて車両間における操縦安定性を相対的に評価するのは困難である。即ち、車両の限界の横G値がA車に比べてB車の方が小さい値であるためB車の方か操縦安定性が悪いとか、又は、A車の方がB車よりもロール角度が小さいのでA車の方が操縦安定性が良いとは、一概に言えないのである。上述した諸元等の影響から、同じ数値であっても、運転者が感じる度合い(操縦安定性)が異なるためである。このため、車両全体として操縦安定性を評価するにあたっては、車両の実走行における人の官能評価に頼らざるを得ないのが実状であった。しかしながら、この様な人の官能評価に依存する評価手法では、評価結果の客観性が充分とは言えず、特に車両間の操縦安定性の相対的評価を適切に行うのが困難であり、操縦安定性を車両毎に定量的に評価できる手法が望まれていた。
【0003】
この様なニーズを背景に、本発明者らは、車両の操縦安定性の相対評価指標として、運転中の運転者の視線挙動計測技術(例えば、下記特許文献1に記載の技術)により算出可能な運転者の視線挙動を用いることで、上述した諸元の異なる種々の車両の総合的な操縦安定性を定量的に評価できることを見出した。具体的には、操縦安定性の良い車両は、少なくとも車両の挙動が運転者の運転操作に忠実でかつ車両が安定していることが必須の条件であるため、例えば、障害物の回避を行なう場合、操縦安定性の良い車両では、運転者は早い時期に次なる障害物へ早めに視線を移動させる傾向にあることを見出したのである。これは、操縦安定性の良い車両では、運転者の運転操作に応答して的確に挙動し意図した走行軌跡を描くので、運転操作に必要な道路上のポイントを素早く視認できると共に次の視認すべきポイントに早めに移動することができるためである。かかる知見に基づき、本発明者らは、車両の操縦安定性評価装置、車両の操縦安定性評価方法、及び、車両の操縦安定性評価用プログラムを発案し、特許出願を行っている(特願2002−194105号)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−146408号公報
【0005】
しかしながら、本発明者らは、運転者の視線挙動のみを計測するのでは、操縦安定性の評価には不十分であることを見出した。具体的には、例えば次の視認すべきポイントへの視線の移動開始は早い時点で行われているにもかかわらず、従来の人による官能評価によればさほど好ましい操縦安定性ではない、と評価される場合があるという問題が明らかとなったのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、車両の操縦安定性の評価にあたり、運転者の視線移動開始の早さという観点に加え、別の観点からの評価も定量的に行えるようにすることにより、より的確な操縦安定性の評価を行う手法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の構成は、所定の走行路に沿って車両を走行させるに際し、当該車両の運転者の所定の運転操作に関する操作量を測定することにより、当該車両の操縦安定性を評価する車両の操縦安定性評価装置であって、上記走行路に沿って車両を走行させる際の該車両の位置を、時間経過と対応付けて測定する車両位置測定手段と、上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の視線の方向を、時間経過と対応付けて測定する視線方向測定手段と、上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の上記所定の運転操作に関する操作量を、時間経過と対応付けて測定する運転操作量測定手段と、上記車両位置測定手段により測定された車両位置、上記視線方向測定手段により測定された視線方向、及び上記運転操作量測定手段により測定された運転操作量、の各データを一回の上記車両の走行毎に一組として複数組取得して、車両位置座標に対する視線方向の変化を示す視線方向データ及び車両位置座標に対する運転操作量の変化を示す運転操作量データを上記各複数のデータ組について求めるとともに、上記複数のデータ組について求められた各視線方向データ又は各運転操作量データを所定の条件に従って加算平均した平均化データを生成可能な平均化手段と、上記所定の条件を変更可能な平均化条件変更手段と、上記平均化データを表示する表示手段と、を有するものである。
【0008】
上記の構成によれば、運転者が所定の走行路に沿って評価対象車両を運転するに際しての運転者の視線の移動を表す視線方向データを、平均化の条件として当該車両の位置を基準に平均化した平均化データを得ることにより、運転者の視線移動と車両位置との関係という観点から車両の操縦安定性の評価を定量的に行うことが出来るのに加え、平均化の条件を変更して条件の異なる平均化データを得ることにより、別の観点からの操縦安定性の評価を定量的に行うことが出来る。従って、運転者の視線移動の車両位置との関係に加え、その様な観点からの評価のみでは把握できなかった、例えば車両運転中の運転者の運転操作における特徴などをも見出すことが出来、より的確な車両の操縦安定性の評価を行うことが出来る。
【0009】
上記の、操縦安定性評価における別の観点に関しては、本発明者らの研究によれば、先に本発明者らによって発案された特願2002−194105号に記載の評価手法における上記の問題(つまり、次の視認すべきポイントへの視線の移動開始は早い時点で行われているにもかかわらず、従来の人による官能評価によればさほど好ましい操縦安定性ではない、と評価される場合があるという問題)が、運転者の評価対象車両への慣れなどに起因して、次の視認すべきポイントを認識しながら運転者が無意識に当て舵などの付加的な車両操作を行っていることに起因することが見出された。つまり、運転者が評価対象車両に慣れている様な場合には、走行路の形状や障害物の位置などを運転者が把握してしまっていることが原因で、運転者は障害物よりもかなり前の位置から前方の障害物を視界に入れつつ付加的なステアリング操作を行って車両の走行を維持することが出来るため、このような付加的な操作を必要とする車両は操縦安定性が低いと判断されるべきであるにもかかわらず、結果として測定される視線方向データが早い時点から視線移動を行っていることを示すのである。このことが、先の評価手法における問題の原因となっている、ということである。
【0010】
また、本発明者らの研究によれば、運転者が実際に障害物回避のためのステアリング操作を行うに際しては、車両の進行方向への視線移動を完了してから、実際の、つまり意識的なステアリング操作を行うこと、そして、上記の様な運転者による無意識の付加的操作は、次の視認すべきポイント(障害物)に視線を移動させている間(この時点では視線移動が完了していない)に、言い換えれば次の視認すべきポイントへの視線移動を完了する直前に、行われているという行動学的知見が得られた。つまり、運転者が車両に慣れているか否かに関わらず、実際に障害物を回避する前には視線方向データに障害物への視線移動完了を示す特徴が現れるため、この時点より前でステアリング操作が行われていれば、その操作は運転者の評価対象車両への慣れによるものと推定することが出来ることになる。
【0011】
更に、上記の様な付加的なステアリング操作を見出すにあたり、車両位置座標に対するステアリング操作量の変化を示すステアリング操作量データを車両位置座標の原点を揃えて平均化したのでは、車両の各走行における走行条件の変化などに起因して車両位置に対するステアリング操作の変化が各走行について異なることから、ステアリング操作を示すデータにおける特徴部分が各データ間で相殺されてしまうことが明らかとなった。そのため、付加的なステアリング操作の特徴を明確に見出すには、次に視認すべきポイントへの視線移動完了時点に対応する車両位置座標を揃えてステアリング操作量データを平均化する必要がある。
【0012】
上記の点に鑑み、本発明の第2の構成は、運転者の上記運転操作が、上記車両のステアリング操作であり、上記走行路中の所定位置に、上記車両の走行中に上記運転者に上記車両のステアリング操作を行わせるべく障害物が設けられており、上記平均化手段が、上記複数のデータ組における各視線方向データを、平均化の条件として、車両位置座標の原点を揃えて加算平均した第1の平均化データと、上記複数のデータ組における各ステアリング操作量データを、平均化の条件として、対応する視線方向データにおいて上記障害物回避のために上記運転者が視線を上記障害物に移動させたことを示す視線移動完了位置の座標を揃えて加算平均した第2の平均化データと、を生成可能であり、上記表示手段が、上記第1及び第2の平均化データを、同時に又は一方づつ表示可能であるものである。
【0013】
上記の構成によれば、第1の平均化データが、走行路上にある障害物への運転者の視線移動が、障害物からいかに遠い位置から行われているかを示すものとなるため、第1の平均化データを用いれば、車両の操縦安定性の評価を、運転者の視線移動の車両位置との関係という観点から定量的に行うことが出来る。それに加え、第2の平均化データが、走行路中の障害物回避のために運転者が視線を障害物に移動させる時点前後での運転者のステアリング操作量を示すものとなるため、第2の平均化データを用いれば、車両の操縦安定性の評価を、障害物回避のために運転者が視線を障害物に移動させる時点より前に行われる運転者によるステアリング操作の有無及びその量という観点から定量的に行うことが出来る。すなわち、走行路上にある障害物への運転者の視線移動が障害物からいかに遠い位置から行われているかという観点からの評価に加え、上記の知見に鑑みて見出された様な、運転者が評価対象車両に慣れている場合に見られる運転者による無意識のステアリング操作をも考慮して、車両の操縦安定性を定量的かつ的確に評価することが出来る。なお、視線移動完了時点という用語は、運転者の視線が完全に障害物への方向に移動しきった時点に限らず、障害物回避のために障害物をある程度確実に運転者が障害物を認識したと判断される時点を含む。
【0014】
本発明の第3の構成は、上記平均化手段が上記複数のデータ組を車両毎に分類して取得するとともに、当該車両毎に第2の平均化データを生成するものであり、上記表示手段が、上記車両毎に生成された上記各第2の平均化データを、上記視線移動完了位置の座標を揃えて対比表示するものである。
【0015】
上記の構成によれば、複数の車両における第2の平均化データ、すなわち運転者が走行路中の障害物に視線を完全に移動させる時点前後での運転者のステアリング操作量の変化が、複数の車両についての第2の平均化データの間で障害物回避のために運転者が視線を障害物に移した時点に対応する視線移動完了位置の座標を揃えた状態で対比表示されるため、異なる車両についての第2の平均化データを容易に比較でき、車両の操縦安定性の相対的かつ定量的な評価が容易に行える。
【0016】
本発明の第4の構成は、上記表示手段が、異なる車両についての上記第2の平均化データを、重畳させて表示するものである。
【0017】
上記の構成によれば、異なる車両についての第2の平均化データをより容易に比較でき、車両の操縦安定性の相対的かつ定量的な評価が一層容易に行える。
【0018】
本発明の第5の構成は、上記車両毎に生成された上記第2の平均化データを、加算平均における上記上記視線移動完了位置の座標を揃えた状態で比較することにより上記車両毎の第2の平均化データ間の偏差を求めるとともに、上記第2の平均化データにおいて該偏差が所定値より大きい部分を上記表示手段に強調表示させる表示制御手段を有するものである。
【0019】
上記の構成によれば、異なる車両についての第2の平均化データにおける差異が視覚的に分かりやすいものとなるため、車両の操縦安定性の相対的かつ定量的な評価がより一層容易に行える。
【0020】
本発明の第6の構成は、所定の走行路に沿って車両を走行させるに際し、当該車両の運転者の所定の運転操作に関する操作量を測定することにより、当該車両の操縦安定性を評価する車両の操縦安定性評価方法であって、上記走行路に沿って車両を走行させる際の該車両の位置を、時間経過と対応付けて測定するステップAと、上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の視線の方向を、時間経過と対応付けて測定するステップBと、上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の上記所定の運転操作に関する操作量を、時間経過と対応付けて測定するステップCと、上記ステップAにおいて測定された車両位置データ、上記ステップBにおいて測定された視線方向データ、及び上記ステップCにおいて測定された運転操作量データを、一回の上記車両の走行毎に一組として複数組取得して、車両位置座標に対する視線方向の変化を示す視線方向データ及び車両位置座標に対する運転操作量の変化を示す運転操作量データを上記各複数のデータ組について求めるステップDと、上記ステップDにて上記複数のデータ組について求められた各視線方向データ又は各運転操作量データを所定の条件に従って加算平均した平均化データを生成するステップEと、上記所定の条件を変更するステップFと、上記ステップFにて変更された所定の条件に従って、上記ステップDにて上記複数のデータ組について求められた各視線方向データ又は各運転操作量データを加算平均した新たな平均化データを生成するステップHと、上記2種の平均化データを、同時に又は一方づつ表示するステップIと、を有するものである。
【0021】
上記の構成によれば、運転者が所定の走行路に沿って評価対象車両を運転するに際しての運転者の視線の移動を表す視線方向データを当該車両の位置を基準に平均化して平均化データを得ることにより、運転者の視線移動と車両位置との関係という観点から車両の操縦安定性の評価を定量的に行うことが出来るのに加え、平均化の条件を変更して条件の異なる別の平均化データを得ることにより、別の観点からの操縦安定性の評価を定量的に行うことが出来る。従って、運転者の視線移動の車両位置との関係に加え、その様な観点からの評価のみでは把握できなかった、例えば車両運転中の運転者の運転操作における特徴などをも見出すことが出来、より的確な車両の操縦安定性の評価を行うことが出来る評価方法が提供される。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、次の視認すべきポイントへの視線移動開始の早さという観点に加えて、別の観点、例えば運転者の無意識の付加的操作をも加味した、より的確な操縦安定性の定量的評価を行う手法が提供される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態による車両の操縦安定性評価装置を示す全体構成図である。図2は本発明の実施形態による車両の操縦安定性評価装置を示すブロック図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両の操縦安定性評価装置1は、グローバルポジショニングシステム(以下、GPSと称する)を利用して走行中の車両の位置や車両姿勢の変化を求め、これらの車両位置や車両姿勢と、運転者の視線方向、運転者の筋電位変化から検出されるステアリング操作、及びスロットル操作を、時間的に関連付けて測定するようにしたものである。また、従来から行なわれているジャイロセンサ、加速センサ、車高センサ等により車体2の姿勢変化を測定することも併用している。
【0025】
GPSは、人工衛星Sから送信される搬送波(電波)の位相を利用して、受信位置の経度、緯度及び高さの情報を得るものであり、本実施形態では、車体2の所定箇所に4つのGPSアンテナ4を配置している。これらの4つのGPSアンテナ4は、静止状態の車体2に対して地面とほぼ水平になる基準面上に配置されており、それぞれ、4つの人工衛星Sからの電波を受信して、座標位置(X,Y,Z)、即ち、東西方向と南北方向(車両位置に相当)、上下方向(車高に相当)についての位置信号を車両位置姿勢演算ユニット6に接続ケーブルを介して出力するようになっている。ここで、本実施形態では、車両走行位置のみ検出すれば良い場合には、1つのGPSアンテナ4で足り、車両姿勢を検出する場合でも、少なくとも2つのGPSアンテナ4があれば足りる。
【0026】
また、走行評価コース内には、GPSの基地局8が設けられており、この基地局8は、車体2に設けられたGPSアンテナ4と同期して、人工衛星Sからの電波を受信し、その電波から求められる位置と基地局8の実際の位置との間の誤差を較正する補正信号を送信機10により、車体2に設けられた補正信号受信機12に送信する。補正信号受信機12は、この受信した補正信号を車両位置姿勢演算ユニット6に送信し、この演算ユニット6は、GPSアンテナ4からの位置信号を補正信号に基づいて較正するようになっている。
【0027】
さらに、本実施形態では、車体2には、車体の姿勢の変化を検出するためのジャイロセンサ14、加速度センサ16、車高センサ18が設けられており、これらの各センサからの車両姿勢に関連する信号が、車両位置姿勢演算ユニット6に出力されるようになっている。これらの従来からのセンサ14、16、18からの信号とGPSアンテナ4からの位置信号とを併用することにより、車両位置及び車両姿勢の検出をより正確に行なうことが出来る。
【0028】
本実施形態は、さらに、運転者の視線方向を検出する視線検出センサ20、運転者の頭部移動量を検出する頭部移動検出センサ22、運転者のステアリング操作を検出する筋電位センサ28、運転者のスロットル操作を検出するスロットルセンサ30、走行中の車両の位置や車両姿勢の変化を運転者の視線方向と時間的に関連付けて車両位置における運転者の視線方向を算出するとともに、走行中の車両の位置や車両姿勢の変化を運転者の筋電位変化と時間的に関連付けて車両位置における運転者の筋電位(すなわち運転者のステアリング操作量)を算出し、算出された視線方向及び筋電位を記憶する視線方向/筋電位記憶ユニット24、及び、記憶された運転者の視線方向及び筋電位に基づき車両の操縦安定性を評価する評価ユニット26を備えている。
【0029】
本実施形態では、視線検出センサ20として、EOG法(Electrooculogram法、電気眼球図法)を使用している。このEOG法は、図3に示すように、眼球aの角膜側bが(+)、網膜側cが(−)に帯電していることを利用した眼球運動測定法のひとつであり、電極dを左右のこめかみに貼り、両眼が右に向くと右側の電極に(+)、左側の電極に(−)の電位を検出する。この電位は眼球aの変位角に比例するために、増幅して記録するとその電位から眼球運動を測定することができる。また、電極dを貼る位置によって水平方向だけでなく、上下方向の眼球運動も測定できる。
【0030】
図4はEOG法により測定された運転者の視線移動(左に3度)における眼球の電位変化を示す線図である。このようにして、本実施形態では、このEOG法により、運転者の水平方向の視線方向を検出するようにしている。また、同時に、電極をこめかみの別の位置に貼り、運転者の上下方向の視線方向も検出できるようになっている。
【0031】
なお、本実施形態では、運転者の視線方向を検出するためにEOG法を使用しているが、これに限らない。例えば、光電素子式EOG(P−EOG)法、角膜反射法、第1・第4プルキンエ像検出法、コンタクトレンズ法、サーチコイル法、赤外線眼底カメラ法等を使用するようにしても良い。
【0032】
頭部移動検出センサ22は、CCDカメラ等(図示せず)を利用して、運転者の頭部の移動を検出し、この頭部移動量の信号を注視点算出ユニット24に出力する。視線方向/筋電位記憶ユニット24が、この頭部移動量に基づいて、運転者の視線方向を補正することにより、運転者の視線方向を検出する際、頭部の移動の影響を受けないようになっている。
【0033】
筋電位センサ28は、運転者の上腕二頭筋の筋電位を計測するものである。ステアリング操作においては上腕二頭筋の収縮が影響することが知られており、この筋肉の筋電位を計測することで、運転者によるステアリングの操作力を検出することが出来る。ステアリング操作は車両の制御等の目的で車両に装備されるステアリング舵角センサを用いて検出することも出来るが、上腕二頭筋の筋電位を測定することでより正確に運転者のステアリング操作を検出することが出来る。この筋電位センサ28は、人間工学の研究や医療技術の分野等において用いられている一般的なものを使用することが出来るため、詳細な説明は省略する。
【0034】
それで、車両の操縦安定性を実際に評価するに際しては、上述した視線検出センサ20及び筋電位センサ28等を装着した車両運転者が評価対象車両を所定の、好ましくは車両のステアリング操作を伴う走行評価コースを所定の条件、例えば所定の速度を維持しながら走行させることにより、その走行に伴う視線検出センサ20により検出される視線方向の変化データ、筋電位センサ28により検出される筋電位の変化データ、GPSアンテナ4により特定される車両位置データの3種類のデータを取得する。そして、それらの3種類のデータが一組として視線方向/筋電位記憶ユニット24に入力される。これら3種類のデータは、走行評価コースの1回の走行における時間経過に対する変化として測定されたもので、視線方向/筋電位記憶ユニット24は、視線方向の変化データと車両位置データとを時間について対応づけることにより、車両進行方向座標に対する視線方向データを得る。また、同様に、視線方向/筋電位記憶ユニット24は、筋電位の変化データと車両位置データとを時間について対応づけることにより、車両進行方向座標に対する筋電位データを得る。そして、それらのデータ組が、視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶される。
【0035】
視線方向/筋電位記憶ユニット24は、特定の車両に対して上記のデータを複数組、記憶することが出来る。また、視線方向/筋電位記憶ユニット24は、評価対象車両が複数存在する場合、それらのデータ組を評価対象車両毎に分類して記憶することが可能に構成されている。
【0036】
図5は、走行評価コースの概略及び視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶されるデータの一例を示すものである。図5(a)は障害物であるパイロンP1〜P10により左右に湾曲したカーブ部を含むように設定された走行評価コースを示し、図5(b)は車両がその走行評価コースを走行する際の視線検出センサ20により検出された運転者の視線移動角(視線方向)の車両進行方向座標に対する変化を示し、図5(c)は同じく車両がその走行評価コースを走行する際の筋電位センサ28により検出された筋電位の車両進行方向座標に対する変化を示し、図5(d)はGPSアンテナ4からの位置信号に基づく車両走行位置データから得られた車体の進行方向及び横方向の座標を示している。図5(b)、(c)及び(d)の横軸により示される車両位置は、パイロンP2の位置を原点として表示している。
【0037】
ここで、それらのデータを参照しながら、走行評価コースを走行する際の運転者の視線方向変化及び筋電位変化について具体的に説明する。まず、図5(b)を参照しながら、図5(a)に示す走行評価コースを走行する際の、運転者の視線方向の変化について説明する。
【0038】
図5(b)のグラフ中におけるAの部分の略矩形状の波形は、パイロンP1とP2の間からパイロンP3とP4との間にかけてスムーズに車両を通過させるために、パイロンP1とP2、及びパイロンP3とP4を交互に視認している状態を示している。すなわち、運転者は、パイロン間を通過するために、左右に交互に視線を移動させていることが分かる。
【0039】
図5(b)のグラフ中におけるBの部分(グラフが一様に右上がりとなっている部分の立ち上がり部分)は、運転者が車線を変更するために、つまり運転者に対して右にオフセットした、次に通過すべきコースとなるパイロンP5とP6の間を通過するために、それらのパイロンの方向に視線の移動を開始した状態を示している。後で具体的に説明する運転者の評価対象車両への慣れという要素を無視できる場合には、この立ち上がり位置がグラフ上で左に位置しているほど、つまりその立ち上がり位置に対応する車両位置がパイロンP5及びP6から遠いほど、車両の挙動が安定していることになる。これは、操縦安定性の良い車両では、運転者の運転操作に応答して的確に挙動し意図した走行軌跡を描くので、運転操作に必要な道路上のポイントを素早く視認できると共に次の視認すべきポイントに早めに移動することができるためである。
【0040】
図5(b)のグラフ中におけるCの部分(グラフが一様に右上がりとなった後でその傾きが頭打ちになった部分)は、運転者が次に通過すべきコースとなるパイロンP5とP6の間を通過するためのステアリング操作に備えて、パイロンP5とP6の方向に視線を完全に移動させた状態を示している。すなわち、運転者は、実際にステアリング操作を行うために次に車両を走行させるべき方向を注視していることになる(この点は、図5(c)に示す筋電位データからも裏付けられる。詳細は後述する)。
【0041】
次に、図5(c)を参照しながら、図5(a)に示す走行評価コースを走行する際の、運転者の筋電位の変化について説明する。
【0042】
図5(c)のグラフ中におけるDの部分、つまりグラフが急激に立ち上がっている部分では、運転者がパイロンP5とP6の間を通過するために車線を変更するべく、ステアリング操作を開始したことを示す。この部分Dに対応する車両位置は、本発明者らによって視線方向位置データにおけるCに対応する車両位置と密接な関係があることが明らかとされている。具体的には、車両が異なっても、或いは同一車両で走行条件が異なっても、運転者は視線を次に進むべき方向に完全に移動させてから実際のステアリング操作に入ると考えられ、一回の走行において得られる視線位置データと筋電位データの組において、Cの位置とDの位置がほぼ一致(グラフ中において一点鎖線にて示す)することが見出されている。この点は、本発明者らによって新たに見出された行動学的知見である。
【0043】
また、運転者が評価対象車両の運転に慣れている場合には、筋電位データにおけるDの位置の直前に、筋電位データの高い値が現れることも明らかとされた。これは、運転者が次に進むべき方向への視線方向を完了させる前に運転者がパイロンP5とP6の方向を視界に入れながら、無意識と考えられるステアリング操作を行うことによって、パイロンP1とP2の間及びパイロンP3とP4の間の走行を維持しているためと考えられる。本発明によれば、その様な運転者の慣れに起因すると思われる、車線変更前の付加的なステアリング操作の有無を特定することが出来る。この点については、評価ユニット26の構成とともに、後で詳述する。
【0044】
以上説明した様に、視線検出センサ20により検出された運転者の視線方向は、図5(b)に示す様に車両進行方向座標を横軸としたグラフとして視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶される。また、同様に筋電位センサ28により検出された筋電位は、図5(c)に示す様に車両進行方向座標を横軸としたグラフとして視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶される。また、再度述べるが、それらのデータ組は特定の車両に対して複数組、視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶させることも出来るとともに、それらのデータ組を、評価対象車両毎に分類して記憶することも可能に構成されている。
【0045】
次に、評価ユニット26について説明する。評価ユニット26は、視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶された複数組のデータを視線方向/筋電位記憶ユニット24から取得するとともに、それらを後述する様に平均化処理する演算部261と、平均化処理を行うにあたっての条件を評価者が選択するのに使用されるキーボードなどの操作部262と、上記平均化処理の結果を表示するディスプレイ263から構成されている。
【0046】
それで、演算部261は、上記の様な走行評価コースを走行した場合の運転者の視線方向データ及び筋電位データを視線方向/筋電位記憶部24から取得し、評価者により操作部262を介して入力された平均化処理条件に従って平均化処理する(平均化処理条件については後述する)。そして、平均化処理された各データをディスプレイ263に表示させる。具体的には、図5に示す走行評価コースの走行毎に得られた複数のデータ組について、以下の様な、基準の異なる3種類の平均化処理が可能に構成されている。また、この様な平均化処理は、上記データ組が異なる車両毎に得られている場合には、その車両毎に行われる。
【0047】
(1)視線方向データを、その横軸(車両位置データ)の原点を揃えて平均化する。
(2)筋電位データを、その横軸(車両位置データ)の原点を揃えて平均化する。
(3)視線方向データに共通して見られる特徴点に対応する車両位置データを特定し、その車両位置座標を揃えて、筋電位データを平均化する。
【0048】
平均化処理(1)は、各走行にて得られた視線方向データを、その横軸すなわち車両位置をそれぞれ一致させて、つまり図5(b)に示すデータにおいてはパイロンP2の位置で示される原点を揃えて、加算平均するものである。車両を評価するに際しては、各走行における走行条件の違い(路面温度の変化やタイヤの摩耗、運転者の疲労など)を相殺するために、複数回の走行を行ってそれらを平均化するのが好ましい。すなわち、平均化処理(1)を行うことによって、車両位置に対応する運転者の視線方向を精度良く測定することが出来る。従って、走行評価コースを車両が走行する際の、車両位置に応じた運転者の視線方向の変化状態を得ることが出来、運転者の視線方向の車両進行方向座標に対する変化という観点から定量的な操縦安定性の評価を行うことが出来る。
【0049】
平均化処理(2)は、各走行にて得られた筋電位データを、その横軸すなわち車両位置をそれぞれ一致させて、つまり図5(c)に示すデータにおいてはパイロンP2の位置で示される原点を揃えて、加算平均するものである。上記平均化処理(1)の場合と同様、車両を評価するに際しては、各走行における走行条件の違いを相殺するために、複数回の走行を行ってそれらを平均化するのが好ましい。すなわち、平均化処理(2)を行うことによって、車両位置に対応する運転者の筋電位を精度良く測定することが出来、運転者の筋電位変化つまりステアリング操作状態の車両進行方向座標に対する変化という観点から定量的な操縦安定性の評価を行うことが出来る。
【0050】
平均化処理(3)は、各走行にて得られた図5(b)に示す視線方向データにおいて、共通して見られる特徴が現れる車両位置、つまり図5に示すデータにおいてはCの部分の車両位置座標を各データについて求めるとともに、図5(c)に示す筋電位データを、上記特徴点Cが現れる車両位置座標を揃えて加算平均するものである。すなわち、図6に示すように、一回の走行毎に(a)、(b)、…(x)のデータ組(視線方向の車両位置に対するグラフと、筋電位の車両位置に対するグラフの組)が得られている場合、それぞれの視線方向データにおいて見られる特徴点C(本実施形態においては運転者の視線方向が完全に次のパイロンに移ったと判断される点)の車両位置座標を特定するとともに、各筋電位データをその車両位置座標を揃えて加算平均する。つまり、平均化処理(1)及び平均化処理(2)においては、その絶対的な車両位置を一致させた状態で各データが加算平均されるが、平均化処理(3)においては、各データ毎に異なった車両位置に現れる視線方向データの特徴点を特定し、当該特徴点の現れる車両位置を一致させた状態で筋電位データが加算平均されることになる。なお、視線移動完了時点としてのこの特徴点Cは、グラフの傾きが頭打ちになった部分に限らず、立ち上がり開始位置の値と立ち上がりが頭打ちになった位置の値の平均値が現れる部分、或いはグラフの傾きが所定値以上となった部分、などとしても良い。
【0051】
上記平均化処理(3)により得られる加算平均後のデータは、運転者の視線方向の変化と筋電位変化との関連、特に運転者が次に視認すべきポイントに視線を完全に移動させた時点(つまり特徴点Cに対応する車両位置)の前後におけるステアリング操作状態を示していることになる。従って、平均化処理(3)を行うことで、運転者がコースを走行するに際して視線移動を完了させるタイミングと、そのタイミングを基準とした運転者の筋電位すなわちステアリング操作状態との関係を評価出来ることになる。
【0052】
加算平均後のデータは、上述の様に、ディスプレイ263に表示される。具体的には、異なる車両毎に視線方向データと筋電位データが取得されている場合、上記の様に平均化条件が設定されて平均化された車両毎のデータについて、平均化処理において各データについて揃えた基準点(グラフの原点)の位置を揃えて上下に並べて表示される。図7(a)は、図5(b)及び(c)に示すデータについて車両毎に上記平均化処理(3)に従って筋電位データを平均化処理した場合の表示形態を示す。図7(a)の横軸の原点は、図5(b)に示す視線方向データにおける特徴点Cの位置であり、この表示によれば、運転者が視線移動を完了する時点より前において、A車よりもB車の方が運転者のステアリング操作量が多いことが分かる。
【0053】
また、異なる車両についての平均化処理結果を上下に並べて表示するのではなく、図7(b)に示す様に、基準点(グラフの原点)の位置を揃えて車両毎に色彩や線の形態を異ならせるなどして重畳表示するようにしても良い(図7(b)のデータは、図7(a)のデータと同じものであり、A車のデータとB車のデータを同じ実線にて表示している)。またこの様に重畳表示を行う場合、車両毎の平均化データ間の偏差を求め、その偏差が所定値を超える部分があればその部分を色彩を異ならせるなどして強調表示させるのが好ましい。そのようにすれば、車両間の比較評価を行いやすいものとなる。また、更に、単一の車両のみでも平均化処理結果を表示可能であることは言うまでも無い。また、平均化処理(1)、(2)、及び(3)の結果を選択的に切替表示する、或いはそれらのうち2つ又はすべてを一画面に表示するようにしても良い。
【0054】
以上説明したような評価装置及び評価手法による利点を、再度図7のデータを参照しながら説明する。本発明によれば、特に平均化処理(3)を行って運転者の視線方向と筋電位とを関連付けることにより、視線方向移動に運転者の評価対象車両への慣れという要素を加味して、車両の操縦安定性を評価することが出来る。
【0055】
上述した様に、本発明者らは、視線方向の移動完了時点と実際のステアリング操作開始時点とがほぼ一致することを見出した。また、これは評価対象車両が異なっても、また同一車両で運転条件が異なる場合でも当てはまるという知見を得た。この様な知見に基づき、本発明による評価装置及び評価手法は、視線方向データに共通して見られる特徴点である、上記の様な走行評価コースを走行する際に見られるパイロンP5及びP6の方向への視線の移動完了時点を基準として、つまり視線移動完了時点に対応する車両位置座標を揃えて各筋電位データの加算平均処理を行うことにより、視線の移動完了前後のステアリング操作の有無を検出可能としている。すなわち、運転者が実際に(つまり意識的に)ステアリング操作を行う直前には必ずその方向への視線の移動を完了してその方向を注視しているという知見に基づき、視線移動完了前後の運転者の無意識の操作を検出することが出来る。
【0056】
図7に示すデータを参照すると、B車のデータにおいてはA車に比べ、グラフの原点、つまり特徴点より前の時点における筋電位が高く計測されていることが分かる。すなわち、運転者は、A車よりもB車への慣れが大きいと推測される。このことが、B車の操縦安定性がA車よりも悪いということを示すとは必ずしも言えない場合もあるが(なぜなら、筋電位により表されるステアリング操作が、車両への慣れによるものではなかったり、多くの運転者にとって許容できるようなものである場合もあるため)、少なくともB車の操縦安定性を向上させるべくチューニングを行うのに、筋電位として測定される運転者による無意識の当て舵量を小さくするという方向性が得られることになる。また、この方向性でのB車のチューニングは、上記平均化処理(1)により明らかとなる運転者の次に視認すべきポイントへの視線移動開始タイミングの早さを維持して、あるいは更に早いタイミングとなる様に行うべきであることは言うまでも無い。
【0057】
すなわち、本発明によれば、少なくとも平均化処理(1)と平均化処理(3)を行い、それらを加味して車両の操縦安定性を評価することが出来るため、より的確な操縦安定性の定量的評価を行うことが出来る。
【0058】
なお、筋電位の測定に加え、スロットル操作の車両進行方向座標に対する変化も計測して、視線方向データや筋電位データの特徴点を基準として、すなわちその特徴点が現れる車両位置座標を揃えて平均化処理を行うことで、運転者のスロットル操作と、視線方向移動或いはステアリング操作との関連を評価することも出来る。すなわち、各データにおいて共通して見られる特徴点が有れば、それらを基準に他のデータの平均化処理を行うことで、運転者の視線方向、ステアリング操作、スロットル操作の関係について新たな関連性が見出せる可能性も考えられる。本発明によれば、それらの関連性が、平均化処理後のグラフという形で定量的に示されるため、その様なデータを基に車両の操縦安定性の向上の余地を容易に見出すことが出来ることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による車両の操縦安定性評価装置を示す全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態による車両の操縦安定性評価装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に用いられるEOG法を説明するための構成図である。
【図4】図3に示すEOG法により測定された運転者の眼球の電位変化を示す線図である。
【図5】図5(a)はパイロンにより設定された走行評価コースを示す概略図、図5(b)は運転者の視線移動角(視線方向)を示す検出データ、図5(c)は運転者の筋電位を示す検出データ、図5(d)は車体の進行方向及び横方向の座標を示す検出データである。
【図6】視線方向データの特徴点Cを基準に筋電位データを平均化処理(3)により平均化する場合の手法を示す概略図である。
【図7】視線方向データの特徴点Cを基準に筋電位データを平均化処理(3)により平均化した場合の処理結果データ、及びそのデータのディスプレイにおける表示形態を示す図である。
【符号の説明】
2 車体(車両)
4 GPSアンテナ(車両位置測定手段)
20 視線検出センサ(視線方向測定手段)
28 筋電位センサ(運転操作量測定手段)
30 スロットルセンサ(運転操作量測定手段)
24 視線方向/筋電位記憶ユニット(平均化手段)
261 演算部(平均化手段、表示制御手段)
262 操作部(平均化条件変更手段)
263 ディスプレイ(表示手段)
P1〜P10 パイロン(障害物)
【発明の属する技術分野】
本発明は、運転者の視線方向及び車両操縦状態並びに車両走行位置を用いて車両の操縦安定性を評価するための、車両の操縦安定性評価装置及び車両の操縦安定性評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の限界の横G値やロール角度、振動値、ハンドルに対する位相遅れ等の各数値を評価指標として、車両の操縦安定性を評価することが試みられている。しかしながら、この評価指標を用いて複数の車両の操縦安定性を相対的に評価する場合、車高、重量、タイヤ等の諸元が車両毎に異なるため、各車両の評価指標も異なる数値となる。よって、上述した評価指標を用いて車両間における操縦安定性を相対的に評価するのは困難である。即ち、車両の限界の横G値がA車に比べてB車の方が小さい値であるためB車の方か操縦安定性が悪いとか、又は、A車の方がB車よりもロール角度が小さいのでA車の方が操縦安定性が良いとは、一概に言えないのである。上述した諸元等の影響から、同じ数値であっても、運転者が感じる度合い(操縦安定性)が異なるためである。このため、車両全体として操縦安定性を評価するにあたっては、車両の実走行における人の官能評価に頼らざるを得ないのが実状であった。しかしながら、この様な人の官能評価に依存する評価手法では、評価結果の客観性が充分とは言えず、特に車両間の操縦安定性の相対的評価を適切に行うのが困難であり、操縦安定性を車両毎に定量的に評価できる手法が望まれていた。
【0003】
この様なニーズを背景に、本発明者らは、車両の操縦安定性の相対評価指標として、運転中の運転者の視線挙動計測技術(例えば、下記特許文献1に記載の技術)により算出可能な運転者の視線挙動を用いることで、上述した諸元の異なる種々の車両の総合的な操縦安定性を定量的に評価できることを見出した。具体的には、操縦安定性の良い車両は、少なくとも車両の挙動が運転者の運転操作に忠実でかつ車両が安定していることが必須の条件であるため、例えば、障害物の回避を行なう場合、操縦安定性の良い車両では、運転者は早い時期に次なる障害物へ早めに視線を移動させる傾向にあることを見出したのである。これは、操縦安定性の良い車両では、運転者の運転操作に応答して的確に挙動し意図した走行軌跡を描くので、運転操作に必要な道路上のポイントを素早く視認できると共に次の視認すべきポイントに早めに移動することができるためである。かかる知見に基づき、本発明者らは、車両の操縦安定性評価装置、車両の操縦安定性評価方法、及び、車両の操縦安定性評価用プログラムを発案し、特許出願を行っている(特願2002−194105号)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−146408号公報
【0005】
しかしながら、本発明者らは、運転者の視線挙動のみを計測するのでは、操縦安定性の評価には不十分であることを見出した。具体的には、例えば次の視認すべきポイントへの視線の移動開始は早い時点で行われているにもかかわらず、従来の人による官能評価によればさほど好ましい操縦安定性ではない、と評価される場合があるという問題が明らかとなったのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、車両の操縦安定性の評価にあたり、運転者の視線移動開始の早さという観点に加え、別の観点からの評価も定量的に行えるようにすることにより、より的確な操縦安定性の評価を行う手法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の構成は、所定の走行路に沿って車両を走行させるに際し、当該車両の運転者の所定の運転操作に関する操作量を測定することにより、当該車両の操縦安定性を評価する車両の操縦安定性評価装置であって、上記走行路に沿って車両を走行させる際の該車両の位置を、時間経過と対応付けて測定する車両位置測定手段と、上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の視線の方向を、時間経過と対応付けて測定する視線方向測定手段と、上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の上記所定の運転操作に関する操作量を、時間経過と対応付けて測定する運転操作量測定手段と、上記車両位置測定手段により測定された車両位置、上記視線方向測定手段により測定された視線方向、及び上記運転操作量測定手段により測定された運転操作量、の各データを一回の上記車両の走行毎に一組として複数組取得して、車両位置座標に対する視線方向の変化を示す視線方向データ及び車両位置座標に対する運転操作量の変化を示す運転操作量データを上記各複数のデータ組について求めるとともに、上記複数のデータ組について求められた各視線方向データ又は各運転操作量データを所定の条件に従って加算平均した平均化データを生成可能な平均化手段と、上記所定の条件を変更可能な平均化条件変更手段と、上記平均化データを表示する表示手段と、を有するものである。
【0008】
上記の構成によれば、運転者が所定の走行路に沿って評価対象車両を運転するに際しての運転者の視線の移動を表す視線方向データを、平均化の条件として当該車両の位置を基準に平均化した平均化データを得ることにより、運転者の視線移動と車両位置との関係という観点から車両の操縦安定性の評価を定量的に行うことが出来るのに加え、平均化の条件を変更して条件の異なる平均化データを得ることにより、別の観点からの操縦安定性の評価を定量的に行うことが出来る。従って、運転者の視線移動の車両位置との関係に加え、その様な観点からの評価のみでは把握できなかった、例えば車両運転中の運転者の運転操作における特徴などをも見出すことが出来、より的確な車両の操縦安定性の評価を行うことが出来る。
【0009】
上記の、操縦安定性評価における別の観点に関しては、本発明者らの研究によれば、先に本発明者らによって発案された特願2002−194105号に記載の評価手法における上記の問題(つまり、次の視認すべきポイントへの視線の移動開始は早い時点で行われているにもかかわらず、従来の人による官能評価によればさほど好ましい操縦安定性ではない、と評価される場合があるという問題)が、運転者の評価対象車両への慣れなどに起因して、次の視認すべきポイントを認識しながら運転者が無意識に当て舵などの付加的な車両操作を行っていることに起因することが見出された。つまり、運転者が評価対象車両に慣れている様な場合には、走行路の形状や障害物の位置などを運転者が把握してしまっていることが原因で、運転者は障害物よりもかなり前の位置から前方の障害物を視界に入れつつ付加的なステアリング操作を行って車両の走行を維持することが出来るため、このような付加的な操作を必要とする車両は操縦安定性が低いと判断されるべきであるにもかかわらず、結果として測定される視線方向データが早い時点から視線移動を行っていることを示すのである。このことが、先の評価手法における問題の原因となっている、ということである。
【0010】
また、本発明者らの研究によれば、運転者が実際に障害物回避のためのステアリング操作を行うに際しては、車両の進行方向への視線移動を完了してから、実際の、つまり意識的なステアリング操作を行うこと、そして、上記の様な運転者による無意識の付加的操作は、次の視認すべきポイント(障害物)に視線を移動させている間(この時点では視線移動が完了していない)に、言い換えれば次の視認すべきポイントへの視線移動を完了する直前に、行われているという行動学的知見が得られた。つまり、運転者が車両に慣れているか否かに関わらず、実際に障害物を回避する前には視線方向データに障害物への視線移動完了を示す特徴が現れるため、この時点より前でステアリング操作が行われていれば、その操作は運転者の評価対象車両への慣れによるものと推定することが出来ることになる。
【0011】
更に、上記の様な付加的なステアリング操作を見出すにあたり、車両位置座標に対するステアリング操作量の変化を示すステアリング操作量データを車両位置座標の原点を揃えて平均化したのでは、車両の各走行における走行条件の変化などに起因して車両位置に対するステアリング操作の変化が各走行について異なることから、ステアリング操作を示すデータにおける特徴部分が各データ間で相殺されてしまうことが明らかとなった。そのため、付加的なステアリング操作の特徴を明確に見出すには、次に視認すべきポイントへの視線移動完了時点に対応する車両位置座標を揃えてステアリング操作量データを平均化する必要がある。
【0012】
上記の点に鑑み、本発明の第2の構成は、運転者の上記運転操作が、上記車両のステアリング操作であり、上記走行路中の所定位置に、上記車両の走行中に上記運転者に上記車両のステアリング操作を行わせるべく障害物が設けられており、上記平均化手段が、上記複数のデータ組における各視線方向データを、平均化の条件として、車両位置座標の原点を揃えて加算平均した第1の平均化データと、上記複数のデータ組における各ステアリング操作量データを、平均化の条件として、対応する視線方向データにおいて上記障害物回避のために上記運転者が視線を上記障害物に移動させたことを示す視線移動完了位置の座標を揃えて加算平均した第2の平均化データと、を生成可能であり、上記表示手段が、上記第1及び第2の平均化データを、同時に又は一方づつ表示可能であるものである。
【0013】
上記の構成によれば、第1の平均化データが、走行路上にある障害物への運転者の視線移動が、障害物からいかに遠い位置から行われているかを示すものとなるため、第1の平均化データを用いれば、車両の操縦安定性の評価を、運転者の視線移動の車両位置との関係という観点から定量的に行うことが出来る。それに加え、第2の平均化データが、走行路中の障害物回避のために運転者が視線を障害物に移動させる時点前後での運転者のステアリング操作量を示すものとなるため、第2の平均化データを用いれば、車両の操縦安定性の評価を、障害物回避のために運転者が視線を障害物に移動させる時点より前に行われる運転者によるステアリング操作の有無及びその量という観点から定量的に行うことが出来る。すなわち、走行路上にある障害物への運転者の視線移動が障害物からいかに遠い位置から行われているかという観点からの評価に加え、上記の知見に鑑みて見出された様な、運転者が評価対象車両に慣れている場合に見られる運転者による無意識のステアリング操作をも考慮して、車両の操縦安定性を定量的かつ的確に評価することが出来る。なお、視線移動完了時点という用語は、運転者の視線が完全に障害物への方向に移動しきった時点に限らず、障害物回避のために障害物をある程度確実に運転者が障害物を認識したと判断される時点を含む。
【0014】
本発明の第3の構成は、上記平均化手段が上記複数のデータ組を車両毎に分類して取得するとともに、当該車両毎に第2の平均化データを生成するものであり、上記表示手段が、上記車両毎に生成された上記各第2の平均化データを、上記視線移動完了位置の座標を揃えて対比表示するものである。
【0015】
上記の構成によれば、複数の車両における第2の平均化データ、すなわち運転者が走行路中の障害物に視線を完全に移動させる時点前後での運転者のステアリング操作量の変化が、複数の車両についての第2の平均化データの間で障害物回避のために運転者が視線を障害物に移した時点に対応する視線移動完了位置の座標を揃えた状態で対比表示されるため、異なる車両についての第2の平均化データを容易に比較でき、車両の操縦安定性の相対的かつ定量的な評価が容易に行える。
【0016】
本発明の第4の構成は、上記表示手段が、異なる車両についての上記第2の平均化データを、重畳させて表示するものである。
【0017】
上記の構成によれば、異なる車両についての第2の平均化データをより容易に比較でき、車両の操縦安定性の相対的かつ定量的な評価が一層容易に行える。
【0018】
本発明の第5の構成は、上記車両毎に生成された上記第2の平均化データを、加算平均における上記上記視線移動完了位置の座標を揃えた状態で比較することにより上記車両毎の第2の平均化データ間の偏差を求めるとともに、上記第2の平均化データにおいて該偏差が所定値より大きい部分を上記表示手段に強調表示させる表示制御手段を有するものである。
【0019】
上記の構成によれば、異なる車両についての第2の平均化データにおける差異が視覚的に分かりやすいものとなるため、車両の操縦安定性の相対的かつ定量的な評価がより一層容易に行える。
【0020】
本発明の第6の構成は、所定の走行路に沿って車両を走行させるに際し、当該車両の運転者の所定の運転操作に関する操作量を測定することにより、当該車両の操縦安定性を評価する車両の操縦安定性評価方法であって、上記走行路に沿って車両を走行させる際の該車両の位置を、時間経過と対応付けて測定するステップAと、上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の視線の方向を、時間経過と対応付けて測定するステップBと、上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の上記所定の運転操作に関する操作量を、時間経過と対応付けて測定するステップCと、上記ステップAにおいて測定された車両位置データ、上記ステップBにおいて測定された視線方向データ、及び上記ステップCにおいて測定された運転操作量データを、一回の上記車両の走行毎に一組として複数組取得して、車両位置座標に対する視線方向の変化を示す視線方向データ及び車両位置座標に対する運転操作量の変化を示す運転操作量データを上記各複数のデータ組について求めるステップDと、上記ステップDにて上記複数のデータ組について求められた各視線方向データ又は各運転操作量データを所定の条件に従って加算平均した平均化データを生成するステップEと、上記所定の条件を変更するステップFと、上記ステップFにて変更された所定の条件に従って、上記ステップDにて上記複数のデータ組について求められた各視線方向データ又は各運転操作量データを加算平均した新たな平均化データを生成するステップHと、上記2種の平均化データを、同時に又は一方づつ表示するステップIと、を有するものである。
【0021】
上記の構成によれば、運転者が所定の走行路に沿って評価対象車両を運転するに際しての運転者の視線の移動を表す視線方向データを当該車両の位置を基準に平均化して平均化データを得ることにより、運転者の視線移動と車両位置との関係という観点から車両の操縦安定性の評価を定量的に行うことが出来るのに加え、平均化の条件を変更して条件の異なる別の平均化データを得ることにより、別の観点からの操縦安定性の評価を定量的に行うことが出来る。従って、運転者の視線移動の車両位置との関係に加え、その様な観点からの評価のみでは把握できなかった、例えば車両運転中の運転者の運転操作における特徴などをも見出すことが出来、より的確な車両の操縦安定性の評価を行うことが出来る評価方法が提供される。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、次の視認すべきポイントへの視線移動開始の早さという観点に加えて、別の観点、例えば運転者の無意識の付加的操作をも加味した、より的確な操縦安定性の定量的評価を行う手法が提供される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態による車両の操縦安定性評価装置を示す全体構成図である。図2は本発明の実施形態による車両の操縦安定性評価装置を示すブロック図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両の操縦安定性評価装置1は、グローバルポジショニングシステム(以下、GPSと称する)を利用して走行中の車両の位置や車両姿勢の変化を求め、これらの車両位置や車両姿勢と、運転者の視線方向、運転者の筋電位変化から検出されるステアリング操作、及びスロットル操作を、時間的に関連付けて測定するようにしたものである。また、従来から行なわれているジャイロセンサ、加速センサ、車高センサ等により車体2の姿勢変化を測定することも併用している。
【0025】
GPSは、人工衛星Sから送信される搬送波(電波)の位相を利用して、受信位置の経度、緯度及び高さの情報を得るものであり、本実施形態では、車体2の所定箇所に4つのGPSアンテナ4を配置している。これらの4つのGPSアンテナ4は、静止状態の車体2に対して地面とほぼ水平になる基準面上に配置されており、それぞれ、4つの人工衛星Sからの電波を受信して、座標位置(X,Y,Z)、即ち、東西方向と南北方向(車両位置に相当)、上下方向(車高に相当)についての位置信号を車両位置姿勢演算ユニット6に接続ケーブルを介して出力するようになっている。ここで、本実施形態では、車両走行位置のみ検出すれば良い場合には、1つのGPSアンテナ4で足り、車両姿勢を検出する場合でも、少なくとも2つのGPSアンテナ4があれば足りる。
【0026】
また、走行評価コース内には、GPSの基地局8が設けられており、この基地局8は、車体2に設けられたGPSアンテナ4と同期して、人工衛星Sからの電波を受信し、その電波から求められる位置と基地局8の実際の位置との間の誤差を較正する補正信号を送信機10により、車体2に設けられた補正信号受信機12に送信する。補正信号受信機12は、この受信した補正信号を車両位置姿勢演算ユニット6に送信し、この演算ユニット6は、GPSアンテナ4からの位置信号を補正信号に基づいて較正するようになっている。
【0027】
さらに、本実施形態では、車体2には、車体の姿勢の変化を検出するためのジャイロセンサ14、加速度センサ16、車高センサ18が設けられており、これらの各センサからの車両姿勢に関連する信号が、車両位置姿勢演算ユニット6に出力されるようになっている。これらの従来からのセンサ14、16、18からの信号とGPSアンテナ4からの位置信号とを併用することにより、車両位置及び車両姿勢の検出をより正確に行なうことが出来る。
【0028】
本実施形態は、さらに、運転者の視線方向を検出する視線検出センサ20、運転者の頭部移動量を検出する頭部移動検出センサ22、運転者のステアリング操作を検出する筋電位センサ28、運転者のスロットル操作を検出するスロットルセンサ30、走行中の車両の位置や車両姿勢の変化を運転者の視線方向と時間的に関連付けて車両位置における運転者の視線方向を算出するとともに、走行中の車両の位置や車両姿勢の変化を運転者の筋電位変化と時間的に関連付けて車両位置における運転者の筋電位(すなわち運転者のステアリング操作量)を算出し、算出された視線方向及び筋電位を記憶する視線方向/筋電位記憶ユニット24、及び、記憶された運転者の視線方向及び筋電位に基づき車両の操縦安定性を評価する評価ユニット26を備えている。
【0029】
本実施形態では、視線検出センサ20として、EOG法(Electrooculogram法、電気眼球図法)を使用している。このEOG法は、図3に示すように、眼球aの角膜側bが(+)、網膜側cが(−)に帯電していることを利用した眼球運動測定法のひとつであり、電極dを左右のこめかみに貼り、両眼が右に向くと右側の電極に(+)、左側の電極に(−)の電位を検出する。この電位は眼球aの変位角に比例するために、増幅して記録するとその電位から眼球運動を測定することができる。また、電極dを貼る位置によって水平方向だけでなく、上下方向の眼球運動も測定できる。
【0030】
図4はEOG法により測定された運転者の視線移動(左に3度)における眼球の電位変化を示す線図である。このようにして、本実施形態では、このEOG法により、運転者の水平方向の視線方向を検出するようにしている。また、同時に、電極をこめかみの別の位置に貼り、運転者の上下方向の視線方向も検出できるようになっている。
【0031】
なお、本実施形態では、運転者の視線方向を検出するためにEOG法を使用しているが、これに限らない。例えば、光電素子式EOG(P−EOG)法、角膜反射法、第1・第4プルキンエ像検出法、コンタクトレンズ法、サーチコイル法、赤外線眼底カメラ法等を使用するようにしても良い。
【0032】
頭部移動検出センサ22は、CCDカメラ等(図示せず)を利用して、運転者の頭部の移動を検出し、この頭部移動量の信号を注視点算出ユニット24に出力する。視線方向/筋電位記憶ユニット24が、この頭部移動量に基づいて、運転者の視線方向を補正することにより、運転者の視線方向を検出する際、頭部の移動の影響を受けないようになっている。
【0033】
筋電位センサ28は、運転者の上腕二頭筋の筋電位を計測するものである。ステアリング操作においては上腕二頭筋の収縮が影響することが知られており、この筋肉の筋電位を計測することで、運転者によるステアリングの操作力を検出することが出来る。ステアリング操作は車両の制御等の目的で車両に装備されるステアリング舵角センサを用いて検出することも出来るが、上腕二頭筋の筋電位を測定することでより正確に運転者のステアリング操作を検出することが出来る。この筋電位センサ28は、人間工学の研究や医療技術の分野等において用いられている一般的なものを使用することが出来るため、詳細な説明は省略する。
【0034】
それで、車両の操縦安定性を実際に評価するに際しては、上述した視線検出センサ20及び筋電位センサ28等を装着した車両運転者が評価対象車両を所定の、好ましくは車両のステアリング操作を伴う走行評価コースを所定の条件、例えば所定の速度を維持しながら走行させることにより、その走行に伴う視線検出センサ20により検出される視線方向の変化データ、筋電位センサ28により検出される筋電位の変化データ、GPSアンテナ4により特定される車両位置データの3種類のデータを取得する。そして、それらの3種類のデータが一組として視線方向/筋電位記憶ユニット24に入力される。これら3種類のデータは、走行評価コースの1回の走行における時間経過に対する変化として測定されたもので、視線方向/筋電位記憶ユニット24は、視線方向の変化データと車両位置データとを時間について対応づけることにより、車両進行方向座標に対する視線方向データを得る。また、同様に、視線方向/筋電位記憶ユニット24は、筋電位の変化データと車両位置データとを時間について対応づけることにより、車両進行方向座標に対する筋電位データを得る。そして、それらのデータ組が、視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶される。
【0035】
視線方向/筋電位記憶ユニット24は、特定の車両に対して上記のデータを複数組、記憶することが出来る。また、視線方向/筋電位記憶ユニット24は、評価対象車両が複数存在する場合、それらのデータ組を評価対象車両毎に分類して記憶することが可能に構成されている。
【0036】
図5は、走行評価コースの概略及び視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶されるデータの一例を示すものである。図5(a)は障害物であるパイロンP1〜P10により左右に湾曲したカーブ部を含むように設定された走行評価コースを示し、図5(b)は車両がその走行評価コースを走行する際の視線検出センサ20により検出された運転者の視線移動角(視線方向)の車両進行方向座標に対する変化を示し、図5(c)は同じく車両がその走行評価コースを走行する際の筋電位センサ28により検出された筋電位の車両進行方向座標に対する変化を示し、図5(d)はGPSアンテナ4からの位置信号に基づく車両走行位置データから得られた車体の進行方向及び横方向の座標を示している。図5(b)、(c)及び(d)の横軸により示される車両位置は、パイロンP2の位置を原点として表示している。
【0037】
ここで、それらのデータを参照しながら、走行評価コースを走行する際の運転者の視線方向変化及び筋電位変化について具体的に説明する。まず、図5(b)を参照しながら、図5(a)に示す走行評価コースを走行する際の、運転者の視線方向の変化について説明する。
【0038】
図5(b)のグラフ中におけるAの部分の略矩形状の波形は、パイロンP1とP2の間からパイロンP3とP4との間にかけてスムーズに車両を通過させるために、パイロンP1とP2、及びパイロンP3とP4を交互に視認している状態を示している。すなわち、運転者は、パイロン間を通過するために、左右に交互に視線を移動させていることが分かる。
【0039】
図5(b)のグラフ中におけるBの部分(グラフが一様に右上がりとなっている部分の立ち上がり部分)は、運転者が車線を変更するために、つまり運転者に対して右にオフセットした、次に通過すべきコースとなるパイロンP5とP6の間を通過するために、それらのパイロンの方向に視線の移動を開始した状態を示している。後で具体的に説明する運転者の評価対象車両への慣れという要素を無視できる場合には、この立ち上がり位置がグラフ上で左に位置しているほど、つまりその立ち上がり位置に対応する車両位置がパイロンP5及びP6から遠いほど、車両の挙動が安定していることになる。これは、操縦安定性の良い車両では、運転者の運転操作に応答して的確に挙動し意図した走行軌跡を描くので、運転操作に必要な道路上のポイントを素早く視認できると共に次の視認すべきポイントに早めに移動することができるためである。
【0040】
図5(b)のグラフ中におけるCの部分(グラフが一様に右上がりとなった後でその傾きが頭打ちになった部分)は、運転者が次に通過すべきコースとなるパイロンP5とP6の間を通過するためのステアリング操作に備えて、パイロンP5とP6の方向に視線を完全に移動させた状態を示している。すなわち、運転者は、実際にステアリング操作を行うために次に車両を走行させるべき方向を注視していることになる(この点は、図5(c)に示す筋電位データからも裏付けられる。詳細は後述する)。
【0041】
次に、図5(c)を参照しながら、図5(a)に示す走行評価コースを走行する際の、運転者の筋電位の変化について説明する。
【0042】
図5(c)のグラフ中におけるDの部分、つまりグラフが急激に立ち上がっている部分では、運転者がパイロンP5とP6の間を通過するために車線を変更するべく、ステアリング操作を開始したことを示す。この部分Dに対応する車両位置は、本発明者らによって視線方向位置データにおけるCに対応する車両位置と密接な関係があることが明らかとされている。具体的には、車両が異なっても、或いは同一車両で走行条件が異なっても、運転者は視線を次に進むべき方向に完全に移動させてから実際のステアリング操作に入ると考えられ、一回の走行において得られる視線位置データと筋電位データの組において、Cの位置とDの位置がほぼ一致(グラフ中において一点鎖線にて示す)することが見出されている。この点は、本発明者らによって新たに見出された行動学的知見である。
【0043】
また、運転者が評価対象車両の運転に慣れている場合には、筋電位データにおけるDの位置の直前に、筋電位データの高い値が現れることも明らかとされた。これは、運転者が次に進むべき方向への視線方向を完了させる前に運転者がパイロンP5とP6の方向を視界に入れながら、無意識と考えられるステアリング操作を行うことによって、パイロンP1とP2の間及びパイロンP3とP4の間の走行を維持しているためと考えられる。本発明によれば、その様な運転者の慣れに起因すると思われる、車線変更前の付加的なステアリング操作の有無を特定することが出来る。この点については、評価ユニット26の構成とともに、後で詳述する。
【0044】
以上説明した様に、視線検出センサ20により検出された運転者の視線方向は、図5(b)に示す様に車両進行方向座標を横軸としたグラフとして視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶される。また、同様に筋電位センサ28により検出された筋電位は、図5(c)に示す様に車両進行方向座標を横軸としたグラフとして視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶される。また、再度述べるが、それらのデータ組は特定の車両に対して複数組、視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶させることも出来るとともに、それらのデータ組を、評価対象車両毎に分類して記憶することも可能に構成されている。
【0045】
次に、評価ユニット26について説明する。評価ユニット26は、視線方向/筋電位記憶ユニット24に記憶された複数組のデータを視線方向/筋電位記憶ユニット24から取得するとともに、それらを後述する様に平均化処理する演算部261と、平均化処理を行うにあたっての条件を評価者が選択するのに使用されるキーボードなどの操作部262と、上記平均化処理の結果を表示するディスプレイ263から構成されている。
【0046】
それで、演算部261は、上記の様な走行評価コースを走行した場合の運転者の視線方向データ及び筋電位データを視線方向/筋電位記憶部24から取得し、評価者により操作部262を介して入力された平均化処理条件に従って平均化処理する(平均化処理条件については後述する)。そして、平均化処理された各データをディスプレイ263に表示させる。具体的には、図5に示す走行評価コースの走行毎に得られた複数のデータ組について、以下の様な、基準の異なる3種類の平均化処理が可能に構成されている。また、この様な平均化処理は、上記データ組が異なる車両毎に得られている場合には、その車両毎に行われる。
【0047】
(1)視線方向データを、その横軸(車両位置データ)の原点を揃えて平均化する。
(2)筋電位データを、その横軸(車両位置データ)の原点を揃えて平均化する。
(3)視線方向データに共通して見られる特徴点に対応する車両位置データを特定し、その車両位置座標を揃えて、筋電位データを平均化する。
【0048】
平均化処理(1)は、各走行にて得られた視線方向データを、その横軸すなわち車両位置をそれぞれ一致させて、つまり図5(b)に示すデータにおいてはパイロンP2の位置で示される原点を揃えて、加算平均するものである。車両を評価するに際しては、各走行における走行条件の違い(路面温度の変化やタイヤの摩耗、運転者の疲労など)を相殺するために、複数回の走行を行ってそれらを平均化するのが好ましい。すなわち、平均化処理(1)を行うことによって、車両位置に対応する運転者の視線方向を精度良く測定することが出来る。従って、走行評価コースを車両が走行する際の、車両位置に応じた運転者の視線方向の変化状態を得ることが出来、運転者の視線方向の車両進行方向座標に対する変化という観点から定量的な操縦安定性の評価を行うことが出来る。
【0049】
平均化処理(2)は、各走行にて得られた筋電位データを、その横軸すなわち車両位置をそれぞれ一致させて、つまり図5(c)に示すデータにおいてはパイロンP2の位置で示される原点を揃えて、加算平均するものである。上記平均化処理(1)の場合と同様、車両を評価するに際しては、各走行における走行条件の違いを相殺するために、複数回の走行を行ってそれらを平均化するのが好ましい。すなわち、平均化処理(2)を行うことによって、車両位置に対応する運転者の筋電位を精度良く測定することが出来、運転者の筋電位変化つまりステアリング操作状態の車両進行方向座標に対する変化という観点から定量的な操縦安定性の評価を行うことが出来る。
【0050】
平均化処理(3)は、各走行にて得られた図5(b)に示す視線方向データにおいて、共通して見られる特徴が現れる車両位置、つまり図5に示すデータにおいてはCの部分の車両位置座標を各データについて求めるとともに、図5(c)に示す筋電位データを、上記特徴点Cが現れる車両位置座標を揃えて加算平均するものである。すなわち、図6に示すように、一回の走行毎に(a)、(b)、…(x)のデータ組(視線方向の車両位置に対するグラフと、筋電位の車両位置に対するグラフの組)が得られている場合、それぞれの視線方向データにおいて見られる特徴点C(本実施形態においては運転者の視線方向が完全に次のパイロンに移ったと判断される点)の車両位置座標を特定するとともに、各筋電位データをその車両位置座標を揃えて加算平均する。つまり、平均化処理(1)及び平均化処理(2)においては、その絶対的な車両位置を一致させた状態で各データが加算平均されるが、平均化処理(3)においては、各データ毎に異なった車両位置に現れる視線方向データの特徴点を特定し、当該特徴点の現れる車両位置を一致させた状態で筋電位データが加算平均されることになる。なお、視線移動完了時点としてのこの特徴点Cは、グラフの傾きが頭打ちになった部分に限らず、立ち上がり開始位置の値と立ち上がりが頭打ちになった位置の値の平均値が現れる部分、或いはグラフの傾きが所定値以上となった部分、などとしても良い。
【0051】
上記平均化処理(3)により得られる加算平均後のデータは、運転者の視線方向の変化と筋電位変化との関連、特に運転者が次に視認すべきポイントに視線を完全に移動させた時点(つまり特徴点Cに対応する車両位置)の前後におけるステアリング操作状態を示していることになる。従って、平均化処理(3)を行うことで、運転者がコースを走行するに際して視線移動を完了させるタイミングと、そのタイミングを基準とした運転者の筋電位すなわちステアリング操作状態との関係を評価出来ることになる。
【0052】
加算平均後のデータは、上述の様に、ディスプレイ263に表示される。具体的には、異なる車両毎に視線方向データと筋電位データが取得されている場合、上記の様に平均化条件が設定されて平均化された車両毎のデータについて、平均化処理において各データについて揃えた基準点(グラフの原点)の位置を揃えて上下に並べて表示される。図7(a)は、図5(b)及び(c)に示すデータについて車両毎に上記平均化処理(3)に従って筋電位データを平均化処理した場合の表示形態を示す。図7(a)の横軸の原点は、図5(b)に示す視線方向データにおける特徴点Cの位置であり、この表示によれば、運転者が視線移動を完了する時点より前において、A車よりもB車の方が運転者のステアリング操作量が多いことが分かる。
【0053】
また、異なる車両についての平均化処理結果を上下に並べて表示するのではなく、図7(b)に示す様に、基準点(グラフの原点)の位置を揃えて車両毎に色彩や線の形態を異ならせるなどして重畳表示するようにしても良い(図7(b)のデータは、図7(a)のデータと同じものであり、A車のデータとB車のデータを同じ実線にて表示している)。またこの様に重畳表示を行う場合、車両毎の平均化データ間の偏差を求め、その偏差が所定値を超える部分があればその部分を色彩を異ならせるなどして強調表示させるのが好ましい。そのようにすれば、車両間の比較評価を行いやすいものとなる。また、更に、単一の車両のみでも平均化処理結果を表示可能であることは言うまでも無い。また、平均化処理(1)、(2)、及び(3)の結果を選択的に切替表示する、或いはそれらのうち2つ又はすべてを一画面に表示するようにしても良い。
【0054】
以上説明したような評価装置及び評価手法による利点を、再度図7のデータを参照しながら説明する。本発明によれば、特に平均化処理(3)を行って運転者の視線方向と筋電位とを関連付けることにより、視線方向移動に運転者の評価対象車両への慣れという要素を加味して、車両の操縦安定性を評価することが出来る。
【0055】
上述した様に、本発明者らは、視線方向の移動完了時点と実際のステアリング操作開始時点とがほぼ一致することを見出した。また、これは評価対象車両が異なっても、また同一車両で運転条件が異なる場合でも当てはまるという知見を得た。この様な知見に基づき、本発明による評価装置及び評価手法は、視線方向データに共通して見られる特徴点である、上記の様な走行評価コースを走行する際に見られるパイロンP5及びP6の方向への視線の移動完了時点を基準として、つまり視線移動完了時点に対応する車両位置座標を揃えて各筋電位データの加算平均処理を行うことにより、視線の移動完了前後のステアリング操作の有無を検出可能としている。すなわち、運転者が実際に(つまり意識的に)ステアリング操作を行う直前には必ずその方向への視線の移動を完了してその方向を注視しているという知見に基づき、視線移動完了前後の運転者の無意識の操作を検出することが出来る。
【0056】
図7に示すデータを参照すると、B車のデータにおいてはA車に比べ、グラフの原点、つまり特徴点より前の時点における筋電位が高く計測されていることが分かる。すなわち、運転者は、A車よりもB車への慣れが大きいと推測される。このことが、B車の操縦安定性がA車よりも悪いということを示すとは必ずしも言えない場合もあるが(なぜなら、筋電位により表されるステアリング操作が、車両への慣れによるものではなかったり、多くの運転者にとって許容できるようなものである場合もあるため)、少なくともB車の操縦安定性を向上させるべくチューニングを行うのに、筋電位として測定される運転者による無意識の当て舵量を小さくするという方向性が得られることになる。また、この方向性でのB車のチューニングは、上記平均化処理(1)により明らかとなる運転者の次に視認すべきポイントへの視線移動開始タイミングの早さを維持して、あるいは更に早いタイミングとなる様に行うべきであることは言うまでも無い。
【0057】
すなわち、本発明によれば、少なくとも平均化処理(1)と平均化処理(3)を行い、それらを加味して車両の操縦安定性を評価することが出来るため、より的確な操縦安定性の定量的評価を行うことが出来る。
【0058】
なお、筋電位の測定に加え、スロットル操作の車両進行方向座標に対する変化も計測して、視線方向データや筋電位データの特徴点を基準として、すなわちその特徴点が現れる車両位置座標を揃えて平均化処理を行うことで、運転者のスロットル操作と、視線方向移動或いはステアリング操作との関連を評価することも出来る。すなわち、各データにおいて共通して見られる特徴点が有れば、それらを基準に他のデータの平均化処理を行うことで、運転者の視線方向、ステアリング操作、スロットル操作の関係について新たな関連性が見出せる可能性も考えられる。本発明によれば、それらの関連性が、平均化処理後のグラフという形で定量的に示されるため、その様なデータを基に車両の操縦安定性の向上の余地を容易に見出すことが出来ることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による車両の操縦安定性評価装置を示す全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態による車両の操縦安定性評価装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に用いられるEOG法を説明するための構成図である。
【図4】図3に示すEOG法により測定された運転者の眼球の電位変化を示す線図である。
【図5】図5(a)はパイロンにより設定された走行評価コースを示す概略図、図5(b)は運転者の視線移動角(視線方向)を示す検出データ、図5(c)は運転者の筋電位を示す検出データ、図5(d)は車体の進行方向及び横方向の座標を示す検出データである。
【図6】視線方向データの特徴点Cを基準に筋電位データを平均化処理(3)により平均化する場合の手法を示す概略図である。
【図7】視線方向データの特徴点Cを基準に筋電位データを平均化処理(3)により平均化した場合の処理結果データ、及びそのデータのディスプレイにおける表示形態を示す図である。
【符号の説明】
2 車体(車両)
4 GPSアンテナ(車両位置測定手段)
20 視線検出センサ(視線方向測定手段)
28 筋電位センサ(運転操作量測定手段)
30 スロットルセンサ(運転操作量測定手段)
24 視線方向/筋電位記憶ユニット(平均化手段)
261 演算部(平均化手段、表示制御手段)
262 操作部(平均化条件変更手段)
263 ディスプレイ(表示手段)
P1〜P10 パイロン(障害物)
Claims (6)
- 所定の走行路に沿って車両を走行させるに際し、当該車両の運転者の所定の運転操作に関する操作量を測定することにより、当該車両の操縦安定性を評価する車両の操縦安定性評価装置であって、
上記走行路に沿って車両を走行させる際の該車両の位置を、時間経過と対応付けて測定する車両位置測定手段と、
上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の視線の方向を、時間経過と対応付けて測定する視線方向測定手段と、
上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の上記所定の運転操作に関する操作量を、時間経過と対応付けて測定する運転操作量測定手段と、
上記車両位置測定手段により測定された車両位置、上記視線方向測定手段により測定された視線方向、及び上記運転操作量測定手段により測定された運転操作量、の各データを一回の上記車両の走行毎に一組として複数組取得して、車両位置座標に対する視線方向の変化を示す視線方向データ及び車両位置座標に対する運転操作量の変化を示す運転操作量データを上記各複数のデータ組について求めるとともに、上記複数のデータ組について求められた各視線方向データ又は各運転操作量データを所定の条件に従って加算平均した平均化データを生成可能な平均化手段と、
上記所定の条件を変更可能な平均化条件変更手段と、
上記平均化データを表示する表示手段と、を有することを特徴とする車両の操縦安定性評価装置。 - 運転者の上記運転操作が、上記車両のステアリング操作であり、
上記走行路中の所定位置に、上記車両の走行中に上記運転者に上記車両のステアリング操作を行わせるべく障害物が設けられており、
上記平均化手段が、
上記複数のデータ組における各視線方向データを、平均化の条件として、車両位置座標の原点を揃えて加算平均した第1の平均化データと、
上記複数のデータ組における各ステアリング操作量データを、平均化の条件として、対応する視線方向データにおいて上記障害物回避のために上記運転者が視線を上記障害物に移動させたことを示す視線移動完了位置の座標を揃えて加算平均した第2の平均化データと、を生成可能であり、
上記表示手段が、上記第1及び第2の平均化データを、同時に又は一方づつ表示可能であるものである、請求項1に記載の車両の操縦安定性評価装置。 - 上記平均化手段が上記複数のデータ組を車両毎に分類して取得するとともに、当該車両毎に第2の平均化データを生成するものであり、
上記表示手段が、上記車両毎に生成された上記各第2の平均化データを、上記視線移動完了位置の座標を揃えて対比表示するものである、請求項2に記載の車両の操縦安定性評価装置。 - 上記表示手段が、異なる車両についての上記第2の平均化データを、重畳させて表示するものである、請求項3に記載の車両の操縦安定性評価装置。
- 上記車両毎に生成された上記第2の平均化データを、加算平均における上記上記視線移動完了位置の座標を揃えた状態で比較することにより上記車両毎の第2の平均化データ間の偏差を求めるとともに、上記第2の平均化データにおいて該偏差が所定値より大きい部分を上記表示手段に強調表示させる表示制御手段を有するものである、請求項3又は4のいずれかに記載の車両の操縦安定性評価装置。
- 所定の走行路に沿って車両を走行させるに際し、当該車両の運転者の所定の運転操作に関する操作量を測定することにより、当該車両の操縦安定性を評価する車両の操縦安定性評価方法であって、
上記走行路に沿って車両を走行させる際の該車両の位置を、時間経過と対応付けて測定するステップAと、
上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の視線の方向を、時間経過と対応付けて測定するステップBと、
上記走行路に沿って車両を走行させる際の当該車両の運転者の上記所定の運転操作に関する操作量を、時間経過と対応付けて測定するステップCと、
上記ステップAにおいて測定された車両位置データ、上記ステップBにおいて測定された視線方向データ、及び上記ステップCにおいて測定された運転操作量データを、一回の上記車両の走行毎に一組として複数組取得して、車両位置座標に対する視線方向の変化を示す視線方向データ及び車両位置座標に対する運転操作量の変化を示す運転操作量データを上記各複数のデータ組について求めるステップDと、
上記ステップDにて上記複数のデータ組について求められた各視線方向データ又は各運転操作量データを所定の条件に従って加算平均した平均化データを生成するステップEと、
上記所定の条件を変更するステップFと、
上記ステップFにて変更された所定の条件に従って、上記ステップDにて上記複数のデータ組について求められた各視線方向データ又は各運転操作量データを加算平均した新たな平均化データを生成するステップHと、
上記2種の平均化データを、同時に又は一方づつ表示するステップIと、を有することを特徴とする車両の操縦安定性評価方法。
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