JP2004215693A - 吸水材およびおむつ類 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、水分吸収量、濡れ感、再利用性に優れ、かつ、消臭性能を耐久性よく有する吸水材およびそれを用いたおむつ類を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の吸水材は、消臭性能を有する布帛状吸水材であって、該布帛状吸水材の100cm2 あたりの空隙量が10cc以上で、厚さが1mm〜20mmの範囲にあり、該布帛状吸水材を構成する主たる繊維は、単繊維繊度が0.01〜2dtexの範囲にある合成繊維であることを特徴とするものである。
また、本発明のおむつ類は、通気性のトップシートと液不透過性のバックシートとらなるおむつ類において、これら両シートの間にかかる吸水材が配置されてなることを特徴とするものである。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の吸水材は、消臭性能を有する布帛状吸水材であって、該布帛状吸水材の100cm2 あたりの空隙量が10cc以上で、厚さが1mm〜20mmの範囲にあり、該布帛状吸水材を構成する主たる繊維は、単繊維繊度が0.01〜2dtexの範囲にある合成繊維であることを特徴とするものである。
また、本発明のおむつ類は、通気性のトップシートと液不透過性のバックシートとらなるおむつ類において、これら両シートの間にかかる吸水材が配置されてなることを特徴とするものである。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、病院や家庭で使用され洗濯などで繰り返し使用できる耐久性に優れた吸水材およびそれを用いてなるおむつ類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より使用されている吸水材は、アクリル系高分子吸収体を主体としたものであり、水分の吸収量は多いのであるが、使用後は再利用ができず産業廃棄物として扱われていた。
【0003】
また、再利用のできる布帛からなる吸収体は水分吸収量が少なく、表面が濡れた状態となり不快感を与えるものであった。
【0004】
また、病院や特別養護老人ホームなどの介護施設などでは、従来から再利用できる吸収体として木綿の織物や不織布などを利用したおむつを使用している。これらは吸収体としての水分吸収量が少なく、また肌に密着すると表面が塗れた状態となり不快感を与えることとなった。
【0005】
このような課題を解消するために、吸水材として極細の合成繊維からなる不織布を用いた技術が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、本技術は繰り返し行われる工業洗濯および乾燥による形態安定性を維持することおよび尿の吸収性の損なわないことを念頭に置き、使用中に発生する糞尿臭への対応は不十分で広く使用させることはなかった。すなわち糞尿臭は本人および周囲の人々さらには使用済みおむつを回収して洗濯する業者にとって悩みの種で、いかに臭いを軽減するか大きな課題となっている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−245952号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来の問題を解決し、水分吸収量、濡れ感、再利用性に優れ、かつ、消臭性能を耐久性よく有する吸水材およびそれを用いたおむつ類を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0010】
すなわち、本発明の吸水材は、消臭性能を有する布帛状吸水材であって、該布帛状吸水材の100cm2 あたりの空隙量が10cc以上で、厚さが1mm〜20mmの範囲にあり、該布帛状吸水材を構成する主たる繊維は、単繊維繊度が0.01〜2dtexの範囲にある合成繊維であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のおむつ類は、通気性のトップシートと液不透過性のバックシートとらなるおむつ類において、これら両シートの間にかかる吸水材が配置されてなることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり水分吸収量、濡れ感、再利用性に優れ、かつ、消臭性能を耐久性よく有する吸水材について、鋭意検討し、消臭性能を有する布帛状吸水材を、特定な太さの繊維からなる特定空隙量と厚さのもので構成してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0013】
本発明に用いられる吸水材は、繊維よりなる布帛状のもので構成されている。
【0014】
該布帛状とは、不織布状、織物、編み物等のシート形状を呈しているものをいい、これら形態を呈するものであれば使用することができる。中でも、不織布状のものが、厚さ、空隙量などを容易に変更し、かつ、制御することができる上、価格的にも有利であるので好ましく使用される。
【0015】
かかる布帛は、繊維と空隙により構成されるが、吸水性を良くするためには、空隙と単繊維の表面積を多くして、毛細管現象によって、水分を保持するようにすることが必要である。
【0016】
すなわち、本発明の布帛状吸水材は、100cm2 あたりの空隙量が10cc以上であることが必要である。かかる空隙量は、布帛の容積から繊維の占める容積を差し引いた値で示される。すなわち、毛細管現象により水分が吸収された量となるわけで、多ければ多いほど良い。経験的に、100cm2 あたりの空隙量が10cc未満であれば、空隙量が少なく、吸水する状態とならず、例えば、おむつ用とした場合は、液体の漏れが生じるので使用することができない。1回あたりの尿量は150ccから200ccであり、通常おむつに使用する吸水材は300〜1000cm2 程度であり、100cm2 あたりの空隙量が放尿2回分以上に当たる最大空隙量は500ccまであれば吸水効果としては十分である。かかる空隙量の上限は特に限定されるものではないが、500ccを超えるような空間が多すぎるような場合は、毛細管現象がなくなり、また押さえたときに圧縮量が大きいため、含んだ水分を押し出すこととなる傾向が出てくるので好ましくない。
【0017】
かかる空隙量の測定方法について、以下説明する。すなわち、布帛100cm2 あたりの容積布帛は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上、サイズはタテ・ヨコ10cm以上をサンプルとし、始めに皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さ、タテ・ヨコのサイズを測定し、重ねた枚数で割りかえし算出する。
【0018】
なお、吸水材が複数層で構成されている場合は、その該当層数に割りかえして算出する。また、100cm2 あたりの布帛を構成する繊維の容積は、布帛の重量と容積を測定し、所定の繊維の比重から算出するものである。なお、サンプルがこの面積をとることができない場合は、同等の測定を行った上で換算し直して算出してもよい。
【0019】
かかる布帛状吸水材の厚さは、1mm〜20mm、好ましくは3mm〜15mmの範囲であることが必要であるが、扱い性からは薄いほど良いが、空隙量からは厚い方がよい。1mm未満では、空隙量が少なく、従って吸水量が少なく使用することはできない。また20mmを超えては、空隙量は大きく、吸水量も多くなるが、扱い性、着用時の違和感、価格の面から使用できない。
【0020】
かかる布帛状吸水材の厚さは、JIS−L−1913「一般短繊維不織布試験法」のB法に基づいて測定される。
【0021】
かかる布帛状吸水材を構成する繊維の単繊維繊度は重要で、細い方が同一重量あたりの繊維表面積が多くなり、また繊維間に生じる空間が小さくなるため毛細管現象が有効に利用することができ、水分の保持が良くなるので、0.01dtexから2dtexであることが必要である。これより細いと、水分の保持が良すぎ、洗濯性、乾燥性が悪くなり、また、単繊維に剛性がなくなるので、空隙の保持性が悪くなるので、使用することはできない。また、2dtexを超える太い繊維の場合は、繊維相互が生じる空間が大きくなり、水分の保持性が悪くなると同時に、使用中水分の移動が起こりやすくなり、水分のしみ出しが生じやすくなる。
【0022】
また、本発明の吸水材は消臭性能を有する必要がある。ここでいう「消臭性能を有する」とは、臭いを物理的、化学的などいかなる方法でもよいが、臭いを消す作用のある性能をいう。
【0023】
本発明の布帛状吸水材は、主として構成するのは合成繊維であることが必要である。天然繊維の場合は、繊維自身が吸水するため、繊維自身に濡れ感が生じ、使用時に不快を覚え、また、繰り返し使用する際に洗濯による劣化が早い。
【0024】
また、アクリル系高分子吸水体は、洗濯ができないため、使い捨てとなるので産業廃棄物の問題が生じるから好ましくない。
【0025】
本発明の布帛状吸水材の密度は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.07〜0.5g/cm3 の範囲である。0.07g/cm3 未満では空隙量は多くなるが、毛細管現象による水分の保持性および圧縮率が多くなることによる押さえたときの水分のしみ出しが多くなるので好ましくない場合がある。また、0.5g/cm3 を超えると、逆に繊維占有率がが多くなりすぎ、水分保有量が少なくなり、重く、硬く、高価となるので好ましくない場合がある。最も好ましい範囲は0.1〜0.4g/cm3 である。
【0026】
本発明の布帛状吸水材は、その圧縮率が30容積%以下であることが好ましい。30容積%を超える場合では、布帛が水分を含んだときに、指などで押さえると凹んで空隙量が少なくなり、その分、水分がしみ出ることとなり、おむつの使用目的にそぐわないものとなる場合がある。また、全く圧縮しないものは、硬すぎて使用上問題となる場合があり、好ましくは2〜30容積%の範囲である。
【0027】
かかる布帛状吸水材の圧縮率の測定は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重下で予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT1とし、その後10g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT2として次の式にて算出する。
【0028】
圧縮率(容積%)=(T1−T2)×100/T1
本発明の布帛状吸水材を構成する繊維の断面は、中実、中空、T型、扁平、涙型やY型、十字型、*字型、米字型などの多葉型など、いかなる断面形状のものでも使用することができる。特に繊維表面積が大きくなる断面形状のものが好ましく、T型、H型、π型、涙型やY型、十字型、*字型、米字型などの多葉型など複雑な断面形状のものは、水分の保持がよいので特に好ましい。
【0029】
本発明の布帛状吸水材の構造は、不織布、織物、編物等いずれでも良いが、価格、扱いやすさ、均一な空隙量を得るためには、不織布が好ましい。かかる不織布は、ニードルパンチ、ウオータージェットパンチ、熱固定、接着剤などいずれの結合方法で作られたものも使用することができる。
【0030】
かかる不織布において、その単繊維繊度は、前記したように0.01〜2dtexの範囲にあることが重要であるが、1dtex以下の細い繊度の繊維からなる不織布を得る手段としては、メルトブロー、スパンボンド、海島繊維を利用した海部分を薬液溶出して得る繊維、複合繊維を高圧水流により繊維を分割して得る繊維などいずれの手段によって形成されたものでも使用することができる。
【0031】
好ましくは非相溶の2種のポリマからなる分割型複合繊維の短繊維ウエブ状にし、高圧水流により分割する手段で不織布を製造する方法によるものである。かかる手段によれば、安定した不織布構造物と、複合繊維を複数に分割する作業が一度に完了するので、低価格で布帛を得ることができる。単純に細い繊維をそのまま不織布とする方法は、加工上、特にカード機通過に問題が出やすいので好ましくないことがある。
【0032】
また、長繊維不織布であるメルトブローは、細繊度を得ることができるが、吸水材として好ましい素材であるポリエステルとかナイロンで不織布をつくる場合は、複雑な技術が必要となり、また洗濯耐久性の点で好ましくないことがある。さらに海島複合繊維による海溶出方式で不織布をつくる場合では、細い繊維を得ることはできるのであるが、加工工程が複雑で高価となるので好ましくないことがある。かかる水流分割複合繊維は、できるだけ低い水圧で分割、交絡できることが好ましいが、50kg/cm2 以上は必要で、50kg/cm2 未満では、低水圧で分割することができる繊維が必要となり、繊維をカード機で開繊シート状とする際とか、原綿作成時延伸行程で、分割が起こり、製品と成すことはできない。最大250kg/cm2 程度で、これ以上は布帛が締まりすぎて空隙量が少なくなるので好ましくない。
【0033】
本発明の布帛状吸水材は、吸水剤が布帛状吸水材の構成繊維の表面に付着していて、JIS L−1096で規定するバイレック法による吸水性が50mm以上であることが好ましい。吸水剤は、吸水性を付与することができるものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは洗濯などに対する耐久性が優れたものである。具体的には、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、あるいはウレタン系などの吸水剤、カチオン系、アニオン系、非イオン系などの吸水剤、低分子系、高分子系などの吸水剤などであって、たとえば特殊非イオン系のラノゲンKRN−6(高松油脂株式会社製)やポリエステル樹脂系のTO−SR−1(高松油脂株式会社製)の吸水剤を繊維表面に付与する。吸水性は50mm未満では水分の拡散が悪く、吸水性が悪くなり、水分の漏れが生じやすくなる。
【0034】
また、本発明に用いられる吸水材は、吸水量が100%以上であることが好ましく、100%未満の場合、十分な吸水性能があるとは言えず好ましくない場合がある。さらに好ましくは250%以上であり、吸水性の優れたおむつとなる。
【0035】
かかる吸水量は、JIS L−1912「医療用不織布試験方法」に基づいて測定される。
【0036】
本発明の布帛状吸水材において、消臭性能を付与する消臭剤としては特に限定するものではないが、好ましくは、消臭性能が布帛状吸水材の一部に多孔質物質とカルボン酸化合物および金属から選ばれた少なくとも1種の消臭剤を含んでなる物質を組み合わせるものであり、かかる組み合わせを選択することによって、優れた消臭性能と抗菌性能とを持ち、しかもヒスタミン由来による刺激や痒みを緩和、軽減することができる。
【0037】
上記多孔質物質としては、アルミノケイ酸塩化合物、各種シリカゲル系化合物、活性炭類、アルミナ系化合物、白土類、天然ケイ素質系、各種合成ケイ酸塩など種々のものが使用可能であるが、なかでも比表面積が100m2 /g以上、細孔容積が0.2mL/g以上であるアルミノケイ酸塩化合物が好ましく使用される。
【0038】
本かかるアルミノケイ酸塩化合物は、シリカ、アルミナ、金属酸化物からなるシリカの4面体およびそれと頂点を共有している連結するアルミナ8面体層とが層状に組み合わせた構造を有する多孔質のケイ酸塩鉱物であって、ベントナイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウムなどを好ましく使用することができるが、これらは1種のものに限定されず、多数の種類のものを組み合わせて用いることももちろん可能である。
【0039】
かかる多孔質物質は、その細孔に分子などを容易に吸着する性能を有することが知られており、また層間に分子が入り込むことで層間が押し広げられ、単独では層間に挿入されにくい物質の吸着も期待することができる。
【0040】
かかる多孔質物質の比表面積の好ましい範囲としては30m2 /g以上であり、より好ましくは40m2 /g以上、5000m2 /g以下である。同じく細孔容積の好ましい範囲は0.2mL/g以上であり、より好ましくは0.3mL/g以上、1.0mL/g未満である。
【0041】
なお、上記多孔質物質の比表面積は、比表面積測定方法に従って測定した値であり、細孔容積は多点BET法にしたがって測定した値である。
【0042】
本発明で使用するカルボン酸化合物は、カルボキシル基を含有している化合物で有れば特に限定しないが、なかでも脂肪族ポリカルボン酸化合物あるいはアミノポリカルボン酸化合物が消臭機能、コストおよび安全性の面で優れており、好ましく使用される。
【0043】
上記の脂肪族ポリカルボン酸化合物では、さらに下記の化学式で示される脂肪族ポリカルボン酸化合物が優れており、分子量は1000以上100000未満が好ましいが、さらに好ましくは2000以上50000未満である。
【0044】
【化2】
【0045】
(ただし、式中のRは水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルキレン基、水酸基のいずれかであり、nは1以上500未満の正数を示す。)
また、アミノポリカルボン酸は、アルキルアミン骨格を持ち少なくとも1つ以上の窒素原子を有する多価アミノポリカルボン酸化合物であって、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸あるいは各種アミノ酸化合物などをあげることができるが、一種のみの使用には限定されず、数種類を組み合わせて用いることができる。
【0046】
これらアミノポリカルボン酸によれば、塩基性悪臭物質の消臭については、分子内カルボン酸による化学中和反応によって、極めて強力かつ即効性を有するという利点が得られる。
【0047】
さらに、アミノポリカルボン酸を含む場合には、カルボキシル基の酸性雰囲気による抗菌性効果をも期待することができる。しかし、実際に使用する際にアンモニア臭と前記多価カルボン酸化合物のカルボキシル基が中和反応を起こしてしまうことにより、上記のような酸性雰囲気の抗菌性が減少してしまう可能性がある。そこで、アミノポリカルボン酸の分子中の窒素原子を四級化させることによって、抗菌性を作用させることが可能となる。この場合には、アンモニア消臭により、減少方向にある酸性雰囲気の抗菌性に頼ることなく菌や微生物などの増殖を抑制することができ、その代謝サイクルで発生する悪臭の発生も抑制できるというメリットがある。この点については、アミノ基を含まないカルボン酸化合物を場合には期待できない作用であるといえる。
【0048】
本発明で使用する多孔質物質とアミノポリカルボン酸の併用割合は、重量比で1:0.1〜1:1の範囲であることが好ましい。アミノポリカルボン酸の使用量を上記の範囲よりも多くしても、消臭効果のさらなる向上は認められず、またカルボン酸の絶対量が増えることによる皮膚などへの悪影響が想起されるため、好ましくない。
【0049】
また、本発明の布帛状吸水材に用いる薬剤は、メチルメルカプタン臭、ジメチルジサルファイド臭およびジメチルトリサルファイド臭など硫黄系の悪臭を消臭させるために、上記多孔質物質およびアミノポリカルボン酸と共に、金属を添加することが好ましい。ここで金属とは金属元素、金属化合物、金属イオンを含む総称である。この金属としては、Ag、Cu、Zn、Si、Ti、Fe、AlおよびZrから選ばれた少なくとも一種が好ましく、たとえば金属酸化物、カルボン酸塩、上記アミノポリカルボン酸の一部を金属塩としたものおよび包接体などの形で添加することができる。なお、これらの金属は、イオンの形態でアミノポリカルボン酸中に存在することがさらに好ましい。また、これらの金属は多孔質物質を構成する元素として存在させることもできる。従って、多孔質物質が金属を含む化合物の場合には、さらに金属を加えないことも可能である。
【0050】
これらの金属を併用することによって、上記多孔質物質およびアミノポリカルボン酸の持つ消臭力に加えて、金属による触媒効果および錯体形成による消臭作用をさらに期待することができる。
【0051】
本発明で使用する多孔質物質と金属の併用割合は、重量比で1:0.1〜1:1の範囲であることが好ましい。金属の使用量を上記の範囲より多くしても、消臭効果のさらなる向上は認められず、また金属等の析出や加工液の安定性が低下することが多くなるため好ましくない。
【0052】
ここで、上記多孔質物質単独では、その細孔によって悪臭物質の吸着を行い消臭効果が発揮されるが、アンモニアをはじめとする塩基性悪臭の消臭力は不十分であるといわざるを得ない。
【0053】
同様に、上記アミノポリカルボン酸単独では、酸性物質や中性付近の悪臭の除去が十分でなく、スカトール類および含硫黄化合物についてはほとんど消臭することができない。
【0054】
また、本発明で使用する金属は、これを従来法でもちいる場合には、そのほとんどが環境中で酸化などの化学変化を受けやすく、消臭剤としての実用に供したときに、変色や変質をきたし、恒常的な効果を得ることが難しい。
【0055】
しかしながら、本発明の多孔質物質、アミノポリカルボン酸および金属を組み合わせた布帛状の吸水材においては、それぞれの成分の持つ物理的吸着作用、化学的吸着作用、化学的中和作用および金属による触媒作用、錯体化が相乗的に発現するため、これまでの消臭剤では除去できなかったスカトール類や含硫黄化合物、アンモニアなどの***物に含まれる悪臭に対して極めて優れた消臭性能を発揮することとなり、これを本発明に用いる布帛状吸水材に作用させることにより非常に優れた性能を示すことになる。
【0056】
本発明の吸水材は、複数層で構成されていることが好ましい。本発明において、布帛状吸水材は単独層で使われる場合もあるものであるが、ここでいう複数層とは、同種類の層を重ね合わせたり、また、構成する繊維の太さを変えた層と組み合わせたりすることをいうものである。布帛状吸水材が複数層で構成されていると、製品の要求吸水量に応じ積層層数の調整ができるので、容易に所望とする吸水量への対応ができるために好ましい。さらに複数層を重ね合わせることにより、屈曲変形に対し層間でのずれが起こるためか曲げやすくなり吸水材として柔らかくなるという効果が期待できる。層数は、特に限定されるものではないが、細かく対応できるように2層から20層などが好ましく採用できる。また、これら複数層で構成された布帛状吸水材は、その一部が、縫製されていてもニードルパンチなどで接合されていてもよい。
【0057】
表面層を構成する合成繊維は、他の層より太い繊維で構成されていることが好ましい。吸水した際、水分は毛細管現象により太い繊維で構成された層を素早く通過し、単繊維表面積の大きい細い繊維で構成された層に吸収される。布帛が単一層の場合は水分が飽和状態となると表面が濡れた状態となり、たとえばおむつ用途等は不快感となる。さらに表面層に太い繊維を配置することにより濡れ感は少なくなるので好ましい。かかる表面層を構成する繊維の太さは他の層よりも2倍以上の太さがあれば有効となる。かかる複数層の結合は積層し、ニードルとか水流によるパンチ、接着剤での接着、縫製による結合などいずれの結合法でも利用できる。
【0058】
ここで、本発明に用いられるのに好ましい非相溶の2種のポリマからなる分割型複合繊維について説明する。
【0059】
非相溶の2種のポリマとは、水流など外的刺激により分割できるポリマの組み合わせであればよく、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリエステル系とナイロン系、ポリエステル系とポリオレフィン系、ポリエステル系とポリスチレン系など一般的に分割型複合繊維として用いられているポリマを使用することができる。
【0060】
当然、ポリエステル系のポリマであれば、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸もしくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類とアルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールなどのジオール化合物から合成されるホモポリエステルないしは共重合ポリエステルであり、これらの共重合ポリエステルはパラオキシ安息香酸、5−ナトリウムスルフォイソフタル酸、ポリアルキルグリコール、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAなどが添加されていてもよい。
【0061】
また、ナイロン系のポリマであれば、ナイロン−4、ナイロン−46、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12やポリメタキシレンアジパミド(MXD−6)、ポリアラキシレンデカンアミド(PXD−12)、ポリビスシクロヘキシルメタンデカンアミド(PCM−12)またはこれらのモノマーを構成単位とする共重合ポリアミドでもよい。
【0062】
ポリオレフィン系のポリマであれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどでもよい。
【0063】
これらのポリマの中で、より好ましくはポリエステル系ポリマとして5−ナトリウムスルフォイスフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかを用い、ナイロン系ポリマとしてナイロン−6を用いた組み合わせの分割型複合繊維で両ポリマの界面で適度な接着性を有するためか、短繊維状でカードなどでは剥離せずにその後のウオータージェットパンチで剥離するという性能を付与することができる。さらに、ポリエステル系ポリマとポリプロピレンやポリエチレンなどを組み合わせた分割型複合繊維も好ましい。
【0064】
図3、図4、図5は、本発明に用いられる吸水材に用いられる複合繊維の断面例を示す概念図であり、分割型複合繊維が相溶性のない2種のポリマ7とポリマ8とが配されてなることを示す。なお、複合繊維の形状についてはこれらに限定されるものではなく、適宜のタイプのものを使用可能である。
【0065】
なお、上記ポリマーには、本発明の効果が損なわれない範囲で、つや消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、親水剤などの任意の添加剤が添加されてもよい。
【0066】
本発明の吸水材で用いる衛生剤組成物を吸水材に付与加工する場合は、アミノポリカルボン酸が被膜性を有することから、バインダーとしても使用可能である。さらに、洗濯耐久性を向上させるため、他の樹脂をバインダーとして併用してもよい。この際バインダーとしては被膜性が強いものであれば特に限定するものではないが、シリコーン系バインダー、アクリル系バインダーおよびポリウレタン系バインダーが洗濯耐久性および安全性の観点から好ましい。シリコーン系バインダーの中でもアミノ変性シリコーン系バインダーやポリエチレングリコール付加型シリコーン系バインダーは吸水性を有するため、本発明の吸水材およびそれを用いたおむつ類としては好ましく使用できる。具体的には日華化学株式会社のナイスポールPR−99(R)が挙げられる。
【0067】
さらに本発明のおいてはこれまで述べてきた吸水材を用いておむつ類としたものである。つまり、本発明のおむつは、通気性のトップシートと液不透過性のバックシートとこれら両シート間に吸水材を配してなるものである。
【0068】
トップシートとは、陰部や臀部など肌に直接触れている側のシートであり、排出された糞尿がまずふれるシートである。バックシートとは、一般的におむつカバーやその他下着などに触れるサイドのシートであり、排出された糞尿がおむつカバーや下着などに漏れないようにするシートである。
【0069】
図1は、本発明に係るおむつ類の一例構造を示す概略断面モデル図であり、一部を切り取り、中身をわかりやすく図示したものであって、通気性のあるトップシート1と液不透過性のバックシート2とこれらのシート1、2間に配置されている吸水材3で構成され、それらが縫い糸4で部分的に結合されていることを示す。
【0070】
本発明のおむつは、濡れ不快感をなくするために直接肌にふれる部分に通気性のトップシートを配置するものであるが、通気性を有することにより排出した小水を吸水材に吸水させた後の濡れ不快感を減少させることができる。
【0071】
この通気性のトップシートは吸水布帛とは全く異なった布帛を吸水布帛と重ねて構成することが可能で、例えば、濡れ感防止の機能を有するものなどが好適なものである。かかるトップシートは、織物、編み物、不織布などのうちいずれの形態でも使用でき、フイルム状は不適当である。
【0072】
特に編み物が柔らかさの点で好ましく使用できる。素材は天然繊維のような吸水性があるものは洗濯後の乾燥に時間がかかり、また濡れ感が残るため好ましくなく、ポリエステル、ポリプロピレンなど合成繊維の方が好ましい。また、吸水布帛層が水分を早く吸収できるようにトップシートは液透過性が良好なものが好ましく、一つの指標として、JIS L−1096「一般織物試験方法」のA法に基づいて測定される通気量が、300cc/cm2 /sec以上あることが好ましく、300cc/cm2 /sec以下では水分の透過が阻害されるので良くない場合がある。多い方が良いがあまり多いと吸水布帛層が人体と接触し濡れ不快感となるので、5000cc/cm2 /sec程度までがよい。
【0073】
また、トップシートは、濡れ不快感をさらに少なくするため、皮膚に接触する表面層と他の層が異なる繊維または構造になっていることがさらに好ましい。たとえば表面層が水分の透過をさせやすいように太い繊維で構成されて粗な構造とし、他の層は細い繊維で構成して密な構造とし、表面層に接触した水分は表面層を早く通過し、他の層はこれを吸収拡散するので濡れ感は改善すると同時に水分移行が早く行われるからである。
【0074】
また、他の濡れ感回避手段として、布帛状吸水材と人体が接触しないようにメッシュ状布帛を介在させることが好ましい。
【0075】
かかるトップシートは、布帛状吸水材の片面に部分的に結合されているが、反対面である裏面に結合され、サンドイッチ状となっていても良い。
【0076】
本発明のおむつに用いるバックシートは排出した尿を吸水する吸水材からさらに尿が漏れないようにするため液不透過性能を有することが好ましい。
【0077】
かかるバックシートは、織物、編み物、不織布、フィルム等のうちいずれの形態でも使用でき、かつこれらの積層体であってもよい。すなわち織物、編み物、不織布だけでは、液不透過性能を満足することが困難な場合があるため、これらの素材にゴム系、ポリオレフィン系、フッ素系やシリコーン系のフイルム状の素材を張り合わせたり、あるいはゴム系、ポリオレフィン系、フッ素系やシリコーン系の樹脂、好ましくは発泡樹脂をコーティングしたりすることにより達成できる。また、これらの構成にすることにより撥水性のも付与することができる。
【0078】
その際、排尿を受け止めることによる蒸れを改善するため、JIS Z−0208「防湿包装材料の透湿度試験方法」に基づいて測定されるバックシートの透湿度が4000g/m2 ・24hr以上であることが好ましい。
【0079】
さらにその際、膜としての耐久性が必要となり、液不透過性のバックシートのJIS−L−1092「繊維製品の防水性試験」に基づいて測定される耐水圧は5.0kPa以上であることが好ましい。これらの達成技術としては、織物、編み物、不織布などの基布に、たとえばエントラント(東レ(株)、(R))に代表される多孔質ポリウレタンをコーティングしたりゴアテックス(ゴアテックス社(R))に代表される多孔質フッ素フィルムなどを接着させたりすることを用いることができる。
【0080】
このトップシートと吸水材とバックシートは部分的に結合されていることが好ましく、縫製などの方法で周辺部または周辺部の一部、さらには内面の一部をキルテイングなどの方法で縫製するのがよい。
【0081】
かかる縫い糸も水分を吸収しやすく、非吸水層と同様濡れ不快感の対象となるので表面に位置することとなる糸もパラフィン系、シリコーン系やフッ素系など撥水剤で撥水加工されていることが好ましい。
【0082】
さらに、本発明のおむつは、ヨコ漏れ防止構造を付与していることが好ましい。通常ベッドなどでヨコになっているとき、おむつの中に配している吸水材に尿などが吸水される速度以上に排出されたとき、おむつと肌との間から漏れてしまう機会を低減させることができるからである。具体的にはおむつの周囲にゴムのような伸縮性のある素材を配しおむつの端と肌がより密着しやすいようにすることである。
【0083】
また、本発明のおむつは、バックシートの裏に滑り止め機能を付与していることが好ましい。このような機能を付与することによりバックシートとその周囲にある寝間着などの布帛の適度の摩擦が生じ、つるつる滑ることがなくなるからである。
【0084】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0085】
なお、本発明に用いる評価方法について説明する。ここで説明しない評価方法については基本的にJISで定められている方法に準ずる。
(1)通気量:
JIS−L−1096「一般織物試験方法」のA法による。
(2)透湿度:
JIS−Z−0208「防湿包装材料の透湿度試験方法」による。
(3)分割後の短繊維の繊度:
繊維の断面のSEM写真を撮影し断面面積から算出した。
(4)吸水性:
JIS−L−1096「一般織物試験方法」のA法(バイレック法)による。
(5)吸水量:
JIS−L−1912「医療用不織布試験方法」による。
(6)透湿度:
JIS−L−1099「繊維製品の透湿度試験方法」のA−1法による。
(7)耐水圧:
JIS−L−1092「繊維製品の防水性試験」による。
(8)布帛状吸水材の空隙量:
布帛状吸水材の布帛100cm2 あたり空隙量とは、次の式で表わされるものである。
【0086】
布帛100cm2 あたりの空隙量=布帛100cm2 あたりの容積−100cm2 の布帛を構成する繊維の容積
布帛100cm2 あたりの容積布帛は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上、サイズはタテ・ヨコ10cm以上をサンプルとし、始めに皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さ、タテ・ヨコのサイズを測定し、重ねた枚数で割りかえし算出する。
【0087】
なお、吸水材が複数層で構成されている場合は、その該当層数に割りかえして算出する。また、100cm2 あたりの布帛を構成する繊維の容積は、布帛の重量と容積を測定し、所定の繊維の比重から算出するものである。なお、サンプルがこの面積をとることができない場合は、同等の測定を行った上で換算し直して算出してもよい。
(9)布帛状吸水材の圧縮率:
布帛状吸水材の圧縮率の測定は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重下で予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT1とし、その後10g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT2として次の式にて算出する。
【0088】
圧縮率(容積%)=(T1−T2)×100/T1
(10)布帛状吸水材の厚さ:
JIS−L−1913「一般短繊維不織布試験法」のB法による。
(11)検知管法による消臭性評価
サンプルを3g入れた500mLの容器に初期濃度が200ppmになるようにアンモニアガスをいれて密閉し、30分間放置した後、ガス検知管で残留アンモニア濃度を測定した。そして次の式に従い消臭率(%)として算出した。
【0089】
消臭率(%)=(1−(ガス検知管測定濃度)−(初期濃度))×100
同様な方法でメチルメルカプタン(MMP)40ppm、2時間後の残留ガス濃度を測定し、消臭率(%)を算出した。
(12)スカトール、インドールの官能評価
0.01重量%スカトール溶液、0.1重量%インドール溶液をそれぞれ調整し、これを悪臭溶液とする。
【0090】
衛生剤組成物を加工したサンプルを10cm角にカットし、内容積500mLのすり合わせ活栓付きの三角フラスコに、各悪臭溶液をマイクロシリンジにて25μL注入して、悪臭溶液と接触しないようにサンプルをフラスコ内の上部に懸垂する。
【0091】
次に室温で放置し、30分ごとに官能試験を行い、臭気の強さを次に示す6段階で評価した。
【0092】
0:無臭
1:やっと感知できる臭い
2:何の臭いかわかる弱い臭い
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
(13)抗菌性能:
繊維製品新機能評価協議会規定に従った。
【0093】
制菌基準:C≦A、ただしC≠0であること
殺菌活性値(制菌性能)=log C−log A
接種菌数:1±0.3×105 /ml 、log (B/A)>1.5
A:無加工品(綿あるいは生地)の接種直後に回収した菌数
B:無加工品(綿あるいは生地)の18時間培養直後に回収した菌数
C:制菌加工品(綿あるいは生地)の18時間培養直後に回収した菌数
対象菌種:黄色ブドウ状球菌(MSSA)
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
(14)痒み試験:
痒み試験の評価については加工した生地(1cm×5cm)を折り畳んで水で濡らし、鳥居薬品株式会社製パッチテスト用絆創膏にて1日間二の腕の内側に添付した後、官能判断により痒いか痒くないかで比較した。
【0094】
繊維構造体の洗濯方法は、JIS L 0217 103法で洗濯回数は10回とした。
【0095】
実施例1
ポリブチレンテレフタレートとナイロン6のポリマからなり、図4に示すような断面を有する複合繊維でポリマ8はポリブチレンタレフタレートであり、ポリマ7はナイロン6でポリマ7の部分は6領域に分割されて配している。この複合繊維は、複合状態で1.8dtexで平均繊維長は38mmである。この複合繊維をカード機にかけ開繊してシートを作成し、かかるシートを複数枚積層した上でウオータージェットパンチ機によりプレパンチとして水圧20kg/cm2 で絡合させた後、次いで水圧120kg/cm2 で表裏表の計3回水流を通過させ不織布を作成した。この不織布は目付が180g/m2 であり、不織布の断面をSEM写真で観察したところ複合繊維の大部分ががポリブチレンテレフタテートとナイロン6の界面から分割されていた。分割後の単繊維の繊度はナイロン6部分が0.2dtex、ポリブチレンテレフタレート部分が0.6dtexであった。
【0096】
この不織布をケイ酸アルミニウム(比表面積:104.5m2 /g、細孔容積:0.349mL/g):1.0重量%、ジエチレントリアミン五酢酸:1.0重量%、酸化チタン分散液:5.0重量%および水:93.0重量%からなる加工液に含浸させた。含浸後、ピックアップが80〜100%になるようにマングルロールで絞り、ドライ−キュアの工程を経て160℃で固定することにより加工不織布を得た。
【0097】
加工不織布は厚さは1.0mm、目付は200g/m2 、不織布100cm2 あたりの空隙量は50.2cc、圧縮率は11%の不織布で、バイレック法による吸水量は125mm、吸水量は300%であった。
【0098】
実施例2
実施例1において、ケイ酸アルミニウムに代えて、ベントナイト(比表面積:40.9m2 /g、細孔容積:0.425mL/g)を用いた以外は同様にして加工不織布を得た。
【0099】
実施例3
実施例1において、ジエチレントリアミン五酢酸に代えて、エチレンジアミン四酢酸を用いた以外は同様にして加工不織布を得た。
【0100】
実施例4
実施例1と同様の不織布をケイ酸アルミニウム:1.0重量%、ジエチレントリアミン五酢酸:1.0重量%および水:98.0重量%からなる加工液に含浸させた後、実施例1と同様に固定することにより加工不織布を得た。
【0101】
比較例1
実施例1と同様の不織布をケイ酸アルミニウム:1.0重量%、および水:99.0重量%からなる加工液に含浸させた後、実施例1と同様に固定することにより加工不織布を得た。
【0102】
比較例2
実施例1と同様の不織布をジエチレントリアミン五酢酸:1.0重量%および水:99.0重量%からなる加工液に含浸させた後、実施例1と同様に固定することにより加工不織布を得た。
【0103】
比較例3
実施例1と同様の不織布をケイ酸アルミニウム:5.0重量%および水:99.0重量%からなる加工液に含浸させた後、実施例1と同様に固定することにより加工不織布を得た。
【0104】
実施例5
実施例1で用いた未加工の不織布を脂肪族ポリカルボン酸(帝国化学産業株式会社SZ−2B(商品名)未中和品):3.0重量%、銀:0.5重量%、多孔質物質(富士シリシア株式会社サイリシア#550、表面積500m2/g、平均1次粒子径2.7μm)1.0重量%および水:96.5重量%からなる加工液に含浸させた。含浸後、ピックアップが80〜100%になるようにマングルロールで絞り、ドライ−キュアの工程を経て160℃で固定することにより加工不織布を得た。
【0105】
上記の実施例1〜5および比較例1〜3で得た加工不織布について消臭性、抗菌性試験を評価した結果を表1示す。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例6
実施例1で得た加工不織布を6枚重ね、幅25cm、長さ60cmに裁断して本発明のおむつの吸水材とした。吸水材の厚さは6mmだった。
【0108】
トップシートとしてポリエステル糸55dtex、12フィラメントと55dtex、46フィラメントの2種類の糸を使い、トリコット編み機にて前者が裏面、後者が表面に来るよう編み立てを行った編み物を用意した。
【0109】
バックシートとして、ポリウレタンシートをポリエステル糸を用いた天竺の生地に接着させた防水シートを用意した。
【0110】
かかるトップシートとバックシートを略ひょうたん型に裁断した。股下にあわせるひょうたん型の首に相当する部分の幅は30cm、長さ60cmに裁断して、この間に本発明の吸水材を積層し、まずトップシートと吸水材を周辺をポリエステルマルチフィラメント糸20綿番手に、フッ素系撥水剤を0.5%付与した縫い糸を使って部分的に接合しさらにトップシートとバックシートを先に用いた縫い糸を用いて四周辺を縫製し一体化して本発明のおむつを作成した。
【0111】
吸水材の厚さは5mmで柔らかで、はき心地も良好であった。また200cm3 の水分を吸収させ、5分後に濡れた面を手で押したところ、手の表面に水分が付着が少なくさらさらしていた。
【0112】
また、おしめとして実用した結果、本発明品は濡れ感を全く覚えず、濡れたまま着座しても水分のシミ出しがなく使用できた。また大便をした際も悪臭が軽減されていた。
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた吸収性を示し、かつ濡れ感も少なく、洗濯耐久性に優れ、消臭、防臭性能を有する優れたおむつ類を提供することができる上に、さらに介護現場で悩まされ続けたアンモニア臭、インドール臭およびスカトール臭などの***物質臭に対し優れた消臭性能を付与することができ、また繰り返し洗濯もできるため経済的なむつ類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材の一例構造を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材の一例構造を示すものでヨコ漏れ防止機能と滑り止め機能を付与したものの概略図である。
【図3】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材に用いる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の一例を示す概略図である。
【図4】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材に用いる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の一例を示す概略図である。
【図5】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材に用いる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:トップシート
2:バックシート
3:吸水材
4:縫い糸
5:ヨコ漏れ防止機能部材
6:滑り止め機能部材
7:ポリマ
8:ポリマ
【発明の属する技術分野】
本発明は、病院や家庭で使用され洗濯などで繰り返し使用できる耐久性に優れた吸水材およびそれを用いてなるおむつ類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より使用されている吸水材は、アクリル系高分子吸収体を主体としたものであり、水分の吸収量は多いのであるが、使用後は再利用ができず産業廃棄物として扱われていた。
【0003】
また、再利用のできる布帛からなる吸収体は水分吸収量が少なく、表面が濡れた状態となり不快感を与えるものであった。
【0004】
また、病院や特別養護老人ホームなどの介護施設などでは、従来から再利用できる吸収体として木綿の織物や不織布などを利用したおむつを使用している。これらは吸収体としての水分吸収量が少なく、また肌に密着すると表面が塗れた状態となり不快感を与えることとなった。
【0005】
このような課題を解消するために、吸水材として極細の合成繊維からなる不織布を用いた技術が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、本技術は繰り返し行われる工業洗濯および乾燥による形態安定性を維持することおよび尿の吸収性の損なわないことを念頭に置き、使用中に発生する糞尿臭への対応は不十分で広く使用させることはなかった。すなわち糞尿臭は本人および周囲の人々さらには使用済みおむつを回収して洗濯する業者にとって悩みの種で、いかに臭いを軽減するか大きな課題となっている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−245952号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来の問題を解決し、水分吸収量、濡れ感、再利用性に優れ、かつ、消臭性能を耐久性よく有する吸水材およびそれを用いたおむつ類を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0010】
すなわち、本発明の吸水材は、消臭性能を有する布帛状吸水材であって、該布帛状吸水材の100cm2 あたりの空隙量が10cc以上で、厚さが1mm〜20mmの範囲にあり、該布帛状吸水材を構成する主たる繊維は、単繊維繊度が0.01〜2dtexの範囲にある合成繊維であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のおむつ類は、通気性のトップシートと液不透過性のバックシートとらなるおむつ類において、これら両シートの間にかかる吸水材が配置されてなることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり水分吸収量、濡れ感、再利用性に優れ、かつ、消臭性能を耐久性よく有する吸水材について、鋭意検討し、消臭性能を有する布帛状吸水材を、特定な太さの繊維からなる特定空隙量と厚さのもので構成してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0013】
本発明に用いられる吸水材は、繊維よりなる布帛状のもので構成されている。
【0014】
該布帛状とは、不織布状、織物、編み物等のシート形状を呈しているものをいい、これら形態を呈するものであれば使用することができる。中でも、不織布状のものが、厚さ、空隙量などを容易に変更し、かつ、制御することができる上、価格的にも有利であるので好ましく使用される。
【0015】
かかる布帛は、繊維と空隙により構成されるが、吸水性を良くするためには、空隙と単繊維の表面積を多くして、毛細管現象によって、水分を保持するようにすることが必要である。
【0016】
すなわち、本発明の布帛状吸水材は、100cm2 あたりの空隙量が10cc以上であることが必要である。かかる空隙量は、布帛の容積から繊維の占める容積を差し引いた値で示される。すなわち、毛細管現象により水分が吸収された量となるわけで、多ければ多いほど良い。経験的に、100cm2 あたりの空隙量が10cc未満であれば、空隙量が少なく、吸水する状態とならず、例えば、おむつ用とした場合は、液体の漏れが生じるので使用することができない。1回あたりの尿量は150ccから200ccであり、通常おむつに使用する吸水材は300〜1000cm2 程度であり、100cm2 あたりの空隙量が放尿2回分以上に当たる最大空隙量は500ccまであれば吸水効果としては十分である。かかる空隙量の上限は特に限定されるものではないが、500ccを超えるような空間が多すぎるような場合は、毛細管現象がなくなり、また押さえたときに圧縮量が大きいため、含んだ水分を押し出すこととなる傾向が出てくるので好ましくない。
【0017】
かかる空隙量の測定方法について、以下説明する。すなわち、布帛100cm2 あたりの容積布帛は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上、サイズはタテ・ヨコ10cm以上をサンプルとし、始めに皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さ、タテ・ヨコのサイズを測定し、重ねた枚数で割りかえし算出する。
【0018】
なお、吸水材が複数層で構成されている場合は、その該当層数に割りかえして算出する。また、100cm2 あたりの布帛を構成する繊維の容積は、布帛の重量と容積を測定し、所定の繊維の比重から算出するものである。なお、サンプルがこの面積をとることができない場合は、同等の測定を行った上で換算し直して算出してもよい。
【0019】
かかる布帛状吸水材の厚さは、1mm〜20mm、好ましくは3mm〜15mmの範囲であることが必要であるが、扱い性からは薄いほど良いが、空隙量からは厚い方がよい。1mm未満では、空隙量が少なく、従って吸水量が少なく使用することはできない。また20mmを超えては、空隙量は大きく、吸水量も多くなるが、扱い性、着用時の違和感、価格の面から使用できない。
【0020】
かかる布帛状吸水材の厚さは、JIS−L−1913「一般短繊維不織布試験法」のB法に基づいて測定される。
【0021】
かかる布帛状吸水材を構成する繊維の単繊維繊度は重要で、細い方が同一重量あたりの繊維表面積が多くなり、また繊維間に生じる空間が小さくなるため毛細管現象が有効に利用することができ、水分の保持が良くなるので、0.01dtexから2dtexであることが必要である。これより細いと、水分の保持が良すぎ、洗濯性、乾燥性が悪くなり、また、単繊維に剛性がなくなるので、空隙の保持性が悪くなるので、使用することはできない。また、2dtexを超える太い繊維の場合は、繊維相互が生じる空間が大きくなり、水分の保持性が悪くなると同時に、使用中水分の移動が起こりやすくなり、水分のしみ出しが生じやすくなる。
【0022】
また、本発明の吸水材は消臭性能を有する必要がある。ここでいう「消臭性能を有する」とは、臭いを物理的、化学的などいかなる方法でもよいが、臭いを消す作用のある性能をいう。
【0023】
本発明の布帛状吸水材は、主として構成するのは合成繊維であることが必要である。天然繊維の場合は、繊維自身が吸水するため、繊維自身に濡れ感が生じ、使用時に不快を覚え、また、繰り返し使用する際に洗濯による劣化が早い。
【0024】
また、アクリル系高分子吸水体は、洗濯ができないため、使い捨てとなるので産業廃棄物の問題が生じるから好ましくない。
【0025】
本発明の布帛状吸水材の密度は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.07〜0.5g/cm3 の範囲である。0.07g/cm3 未満では空隙量は多くなるが、毛細管現象による水分の保持性および圧縮率が多くなることによる押さえたときの水分のしみ出しが多くなるので好ましくない場合がある。また、0.5g/cm3 を超えると、逆に繊維占有率がが多くなりすぎ、水分保有量が少なくなり、重く、硬く、高価となるので好ましくない場合がある。最も好ましい範囲は0.1〜0.4g/cm3 である。
【0026】
本発明の布帛状吸水材は、その圧縮率が30容積%以下であることが好ましい。30容積%を超える場合では、布帛が水分を含んだときに、指などで押さえると凹んで空隙量が少なくなり、その分、水分がしみ出ることとなり、おむつの使用目的にそぐわないものとなる場合がある。また、全く圧縮しないものは、硬すぎて使用上問題となる場合があり、好ましくは2〜30容積%の範囲である。
【0027】
かかる布帛状吸水材の圧縮率の測定は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重下で予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT1とし、その後10g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT2として次の式にて算出する。
【0028】
圧縮率(容積%)=(T1−T2)×100/T1
本発明の布帛状吸水材を構成する繊維の断面は、中実、中空、T型、扁平、涙型やY型、十字型、*字型、米字型などの多葉型など、いかなる断面形状のものでも使用することができる。特に繊維表面積が大きくなる断面形状のものが好ましく、T型、H型、π型、涙型やY型、十字型、*字型、米字型などの多葉型など複雑な断面形状のものは、水分の保持がよいので特に好ましい。
【0029】
本発明の布帛状吸水材の構造は、不織布、織物、編物等いずれでも良いが、価格、扱いやすさ、均一な空隙量を得るためには、不織布が好ましい。かかる不織布は、ニードルパンチ、ウオータージェットパンチ、熱固定、接着剤などいずれの結合方法で作られたものも使用することができる。
【0030】
かかる不織布において、その単繊維繊度は、前記したように0.01〜2dtexの範囲にあることが重要であるが、1dtex以下の細い繊度の繊維からなる不織布を得る手段としては、メルトブロー、スパンボンド、海島繊維を利用した海部分を薬液溶出して得る繊維、複合繊維を高圧水流により繊維を分割して得る繊維などいずれの手段によって形成されたものでも使用することができる。
【0031】
好ましくは非相溶の2種のポリマからなる分割型複合繊維の短繊維ウエブ状にし、高圧水流により分割する手段で不織布を製造する方法によるものである。かかる手段によれば、安定した不織布構造物と、複合繊維を複数に分割する作業が一度に完了するので、低価格で布帛を得ることができる。単純に細い繊維をそのまま不織布とする方法は、加工上、特にカード機通過に問題が出やすいので好ましくないことがある。
【0032】
また、長繊維不織布であるメルトブローは、細繊度を得ることができるが、吸水材として好ましい素材であるポリエステルとかナイロンで不織布をつくる場合は、複雑な技術が必要となり、また洗濯耐久性の点で好ましくないことがある。さらに海島複合繊維による海溶出方式で不織布をつくる場合では、細い繊維を得ることはできるのであるが、加工工程が複雑で高価となるので好ましくないことがある。かかる水流分割複合繊維は、できるだけ低い水圧で分割、交絡できることが好ましいが、50kg/cm2 以上は必要で、50kg/cm2 未満では、低水圧で分割することができる繊維が必要となり、繊維をカード機で開繊シート状とする際とか、原綿作成時延伸行程で、分割が起こり、製品と成すことはできない。最大250kg/cm2 程度で、これ以上は布帛が締まりすぎて空隙量が少なくなるので好ましくない。
【0033】
本発明の布帛状吸水材は、吸水剤が布帛状吸水材の構成繊維の表面に付着していて、JIS L−1096で規定するバイレック法による吸水性が50mm以上であることが好ましい。吸水剤は、吸水性を付与することができるものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは洗濯などに対する耐久性が優れたものである。具体的には、シリコーン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、あるいはウレタン系などの吸水剤、カチオン系、アニオン系、非イオン系などの吸水剤、低分子系、高分子系などの吸水剤などであって、たとえば特殊非イオン系のラノゲンKRN−6(高松油脂株式会社製)やポリエステル樹脂系のTO−SR−1(高松油脂株式会社製)の吸水剤を繊維表面に付与する。吸水性は50mm未満では水分の拡散が悪く、吸水性が悪くなり、水分の漏れが生じやすくなる。
【0034】
また、本発明に用いられる吸水材は、吸水量が100%以上であることが好ましく、100%未満の場合、十分な吸水性能があるとは言えず好ましくない場合がある。さらに好ましくは250%以上であり、吸水性の優れたおむつとなる。
【0035】
かかる吸水量は、JIS L−1912「医療用不織布試験方法」に基づいて測定される。
【0036】
本発明の布帛状吸水材において、消臭性能を付与する消臭剤としては特に限定するものではないが、好ましくは、消臭性能が布帛状吸水材の一部に多孔質物質とカルボン酸化合物および金属から選ばれた少なくとも1種の消臭剤を含んでなる物質を組み合わせるものであり、かかる組み合わせを選択することによって、優れた消臭性能と抗菌性能とを持ち、しかもヒスタミン由来による刺激や痒みを緩和、軽減することができる。
【0037】
上記多孔質物質としては、アルミノケイ酸塩化合物、各種シリカゲル系化合物、活性炭類、アルミナ系化合物、白土類、天然ケイ素質系、各種合成ケイ酸塩など種々のものが使用可能であるが、なかでも比表面積が100m2 /g以上、細孔容積が0.2mL/g以上であるアルミノケイ酸塩化合物が好ましく使用される。
【0038】
本かかるアルミノケイ酸塩化合物は、シリカ、アルミナ、金属酸化物からなるシリカの4面体およびそれと頂点を共有している連結するアルミナ8面体層とが層状に組み合わせた構造を有する多孔質のケイ酸塩鉱物であって、ベントナイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウムなどを好ましく使用することができるが、これらは1種のものに限定されず、多数の種類のものを組み合わせて用いることももちろん可能である。
【0039】
かかる多孔質物質は、その細孔に分子などを容易に吸着する性能を有することが知られており、また層間に分子が入り込むことで層間が押し広げられ、単独では層間に挿入されにくい物質の吸着も期待することができる。
【0040】
かかる多孔質物質の比表面積の好ましい範囲としては30m2 /g以上であり、より好ましくは40m2 /g以上、5000m2 /g以下である。同じく細孔容積の好ましい範囲は0.2mL/g以上であり、より好ましくは0.3mL/g以上、1.0mL/g未満である。
【0041】
なお、上記多孔質物質の比表面積は、比表面積測定方法に従って測定した値であり、細孔容積は多点BET法にしたがって測定した値である。
【0042】
本発明で使用するカルボン酸化合物は、カルボキシル基を含有している化合物で有れば特に限定しないが、なかでも脂肪族ポリカルボン酸化合物あるいはアミノポリカルボン酸化合物が消臭機能、コストおよび安全性の面で優れており、好ましく使用される。
【0043】
上記の脂肪族ポリカルボン酸化合物では、さらに下記の化学式で示される脂肪族ポリカルボン酸化合物が優れており、分子量は1000以上100000未満が好ましいが、さらに好ましくは2000以上50000未満である。
【0044】
【化2】
【0045】
(ただし、式中のRは水素、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルキレン基、水酸基のいずれかであり、nは1以上500未満の正数を示す。)
また、アミノポリカルボン酸は、アルキルアミン骨格を持ち少なくとも1つ以上の窒素原子を有する多価アミノポリカルボン酸化合物であって、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸あるいは各種アミノ酸化合物などをあげることができるが、一種のみの使用には限定されず、数種類を組み合わせて用いることができる。
【0046】
これらアミノポリカルボン酸によれば、塩基性悪臭物質の消臭については、分子内カルボン酸による化学中和反応によって、極めて強力かつ即効性を有するという利点が得られる。
【0047】
さらに、アミノポリカルボン酸を含む場合には、カルボキシル基の酸性雰囲気による抗菌性効果をも期待することができる。しかし、実際に使用する際にアンモニア臭と前記多価カルボン酸化合物のカルボキシル基が中和反応を起こしてしまうことにより、上記のような酸性雰囲気の抗菌性が減少してしまう可能性がある。そこで、アミノポリカルボン酸の分子中の窒素原子を四級化させることによって、抗菌性を作用させることが可能となる。この場合には、アンモニア消臭により、減少方向にある酸性雰囲気の抗菌性に頼ることなく菌や微生物などの増殖を抑制することができ、その代謝サイクルで発生する悪臭の発生も抑制できるというメリットがある。この点については、アミノ基を含まないカルボン酸化合物を場合には期待できない作用であるといえる。
【0048】
本発明で使用する多孔質物質とアミノポリカルボン酸の併用割合は、重量比で1:0.1〜1:1の範囲であることが好ましい。アミノポリカルボン酸の使用量を上記の範囲よりも多くしても、消臭効果のさらなる向上は認められず、またカルボン酸の絶対量が増えることによる皮膚などへの悪影響が想起されるため、好ましくない。
【0049】
また、本発明の布帛状吸水材に用いる薬剤は、メチルメルカプタン臭、ジメチルジサルファイド臭およびジメチルトリサルファイド臭など硫黄系の悪臭を消臭させるために、上記多孔質物質およびアミノポリカルボン酸と共に、金属を添加することが好ましい。ここで金属とは金属元素、金属化合物、金属イオンを含む総称である。この金属としては、Ag、Cu、Zn、Si、Ti、Fe、AlおよびZrから選ばれた少なくとも一種が好ましく、たとえば金属酸化物、カルボン酸塩、上記アミノポリカルボン酸の一部を金属塩としたものおよび包接体などの形で添加することができる。なお、これらの金属は、イオンの形態でアミノポリカルボン酸中に存在することがさらに好ましい。また、これらの金属は多孔質物質を構成する元素として存在させることもできる。従って、多孔質物質が金属を含む化合物の場合には、さらに金属を加えないことも可能である。
【0050】
これらの金属を併用することによって、上記多孔質物質およびアミノポリカルボン酸の持つ消臭力に加えて、金属による触媒効果および錯体形成による消臭作用をさらに期待することができる。
【0051】
本発明で使用する多孔質物質と金属の併用割合は、重量比で1:0.1〜1:1の範囲であることが好ましい。金属の使用量を上記の範囲より多くしても、消臭効果のさらなる向上は認められず、また金属等の析出や加工液の安定性が低下することが多くなるため好ましくない。
【0052】
ここで、上記多孔質物質単独では、その細孔によって悪臭物質の吸着を行い消臭効果が発揮されるが、アンモニアをはじめとする塩基性悪臭の消臭力は不十分であるといわざるを得ない。
【0053】
同様に、上記アミノポリカルボン酸単独では、酸性物質や中性付近の悪臭の除去が十分でなく、スカトール類および含硫黄化合物についてはほとんど消臭することができない。
【0054】
また、本発明で使用する金属は、これを従来法でもちいる場合には、そのほとんどが環境中で酸化などの化学変化を受けやすく、消臭剤としての実用に供したときに、変色や変質をきたし、恒常的な効果を得ることが難しい。
【0055】
しかしながら、本発明の多孔質物質、アミノポリカルボン酸および金属を組み合わせた布帛状の吸水材においては、それぞれの成分の持つ物理的吸着作用、化学的吸着作用、化学的中和作用および金属による触媒作用、錯体化が相乗的に発現するため、これまでの消臭剤では除去できなかったスカトール類や含硫黄化合物、アンモニアなどの***物に含まれる悪臭に対して極めて優れた消臭性能を発揮することとなり、これを本発明に用いる布帛状吸水材に作用させることにより非常に優れた性能を示すことになる。
【0056】
本発明の吸水材は、複数層で構成されていることが好ましい。本発明において、布帛状吸水材は単独層で使われる場合もあるものであるが、ここでいう複数層とは、同種類の層を重ね合わせたり、また、構成する繊維の太さを変えた層と組み合わせたりすることをいうものである。布帛状吸水材が複数層で構成されていると、製品の要求吸水量に応じ積層層数の調整ができるので、容易に所望とする吸水量への対応ができるために好ましい。さらに複数層を重ね合わせることにより、屈曲変形に対し層間でのずれが起こるためか曲げやすくなり吸水材として柔らかくなるという効果が期待できる。層数は、特に限定されるものではないが、細かく対応できるように2層から20層などが好ましく採用できる。また、これら複数層で構成された布帛状吸水材は、その一部が、縫製されていてもニードルパンチなどで接合されていてもよい。
【0057】
表面層を構成する合成繊維は、他の層より太い繊維で構成されていることが好ましい。吸水した際、水分は毛細管現象により太い繊維で構成された層を素早く通過し、単繊維表面積の大きい細い繊維で構成された層に吸収される。布帛が単一層の場合は水分が飽和状態となると表面が濡れた状態となり、たとえばおむつ用途等は不快感となる。さらに表面層に太い繊維を配置することにより濡れ感は少なくなるので好ましい。かかる表面層を構成する繊維の太さは他の層よりも2倍以上の太さがあれば有効となる。かかる複数層の結合は積層し、ニードルとか水流によるパンチ、接着剤での接着、縫製による結合などいずれの結合法でも利用できる。
【0058】
ここで、本発明に用いられるのに好ましい非相溶の2種のポリマからなる分割型複合繊維について説明する。
【0059】
非相溶の2種のポリマとは、水流など外的刺激により分割できるポリマの組み合わせであればよく、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリエステル系とナイロン系、ポリエステル系とポリオレフィン系、ポリエステル系とポリスチレン系など一般的に分割型複合繊維として用いられているポリマを使用することができる。
【0060】
当然、ポリエステル系のポリマであれば、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸もしくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類とアルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールなどのジオール化合物から合成されるホモポリエステルないしは共重合ポリエステルであり、これらの共重合ポリエステルはパラオキシ安息香酸、5−ナトリウムスルフォイソフタル酸、ポリアルキルグリコール、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAなどが添加されていてもよい。
【0061】
また、ナイロン系のポリマであれば、ナイロン−4、ナイロン−46、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12やポリメタキシレンアジパミド(MXD−6)、ポリアラキシレンデカンアミド(PXD−12)、ポリビスシクロヘキシルメタンデカンアミド(PCM−12)またはこれらのモノマーを構成単位とする共重合ポリアミドでもよい。
【0062】
ポリオレフィン系のポリマであれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどでもよい。
【0063】
これらのポリマの中で、より好ましくはポリエステル系ポリマとして5−ナトリウムスルフォイスフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかを用い、ナイロン系ポリマとしてナイロン−6を用いた組み合わせの分割型複合繊維で両ポリマの界面で適度な接着性を有するためか、短繊維状でカードなどでは剥離せずにその後のウオータージェットパンチで剥離するという性能を付与することができる。さらに、ポリエステル系ポリマとポリプロピレンやポリエチレンなどを組み合わせた分割型複合繊維も好ましい。
【0064】
図3、図4、図5は、本発明に用いられる吸水材に用いられる複合繊維の断面例を示す概念図であり、分割型複合繊維が相溶性のない2種のポリマ7とポリマ8とが配されてなることを示す。なお、複合繊維の形状についてはこれらに限定されるものではなく、適宜のタイプのものを使用可能である。
【0065】
なお、上記ポリマーには、本発明の効果が損なわれない範囲で、つや消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、親水剤などの任意の添加剤が添加されてもよい。
【0066】
本発明の吸水材で用いる衛生剤組成物を吸水材に付与加工する場合は、アミノポリカルボン酸が被膜性を有することから、バインダーとしても使用可能である。さらに、洗濯耐久性を向上させるため、他の樹脂をバインダーとして併用してもよい。この際バインダーとしては被膜性が強いものであれば特に限定するものではないが、シリコーン系バインダー、アクリル系バインダーおよびポリウレタン系バインダーが洗濯耐久性および安全性の観点から好ましい。シリコーン系バインダーの中でもアミノ変性シリコーン系バインダーやポリエチレングリコール付加型シリコーン系バインダーは吸水性を有するため、本発明の吸水材およびそれを用いたおむつ類としては好ましく使用できる。具体的には日華化学株式会社のナイスポールPR−99(R)が挙げられる。
【0067】
さらに本発明のおいてはこれまで述べてきた吸水材を用いておむつ類としたものである。つまり、本発明のおむつは、通気性のトップシートと液不透過性のバックシートとこれら両シート間に吸水材を配してなるものである。
【0068】
トップシートとは、陰部や臀部など肌に直接触れている側のシートであり、排出された糞尿がまずふれるシートである。バックシートとは、一般的におむつカバーやその他下着などに触れるサイドのシートであり、排出された糞尿がおむつカバーや下着などに漏れないようにするシートである。
【0069】
図1は、本発明に係るおむつ類の一例構造を示す概略断面モデル図であり、一部を切り取り、中身をわかりやすく図示したものであって、通気性のあるトップシート1と液不透過性のバックシート2とこれらのシート1、2間に配置されている吸水材3で構成され、それらが縫い糸4で部分的に結合されていることを示す。
【0070】
本発明のおむつは、濡れ不快感をなくするために直接肌にふれる部分に通気性のトップシートを配置するものであるが、通気性を有することにより排出した小水を吸水材に吸水させた後の濡れ不快感を減少させることができる。
【0071】
この通気性のトップシートは吸水布帛とは全く異なった布帛を吸水布帛と重ねて構成することが可能で、例えば、濡れ感防止の機能を有するものなどが好適なものである。かかるトップシートは、織物、編み物、不織布などのうちいずれの形態でも使用でき、フイルム状は不適当である。
【0072】
特に編み物が柔らかさの点で好ましく使用できる。素材は天然繊維のような吸水性があるものは洗濯後の乾燥に時間がかかり、また濡れ感が残るため好ましくなく、ポリエステル、ポリプロピレンなど合成繊維の方が好ましい。また、吸水布帛層が水分を早く吸収できるようにトップシートは液透過性が良好なものが好ましく、一つの指標として、JIS L−1096「一般織物試験方法」のA法に基づいて測定される通気量が、300cc/cm2 /sec以上あることが好ましく、300cc/cm2 /sec以下では水分の透過が阻害されるので良くない場合がある。多い方が良いがあまり多いと吸水布帛層が人体と接触し濡れ不快感となるので、5000cc/cm2 /sec程度までがよい。
【0073】
また、トップシートは、濡れ不快感をさらに少なくするため、皮膚に接触する表面層と他の層が異なる繊維または構造になっていることがさらに好ましい。たとえば表面層が水分の透過をさせやすいように太い繊維で構成されて粗な構造とし、他の層は細い繊維で構成して密な構造とし、表面層に接触した水分は表面層を早く通過し、他の層はこれを吸収拡散するので濡れ感は改善すると同時に水分移行が早く行われるからである。
【0074】
また、他の濡れ感回避手段として、布帛状吸水材と人体が接触しないようにメッシュ状布帛を介在させることが好ましい。
【0075】
かかるトップシートは、布帛状吸水材の片面に部分的に結合されているが、反対面である裏面に結合され、サンドイッチ状となっていても良い。
【0076】
本発明のおむつに用いるバックシートは排出した尿を吸水する吸水材からさらに尿が漏れないようにするため液不透過性能を有することが好ましい。
【0077】
かかるバックシートは、織物、編み物、不織布、フィルム等のうちいずれの形態でも使用でき、かつこれらの積層体であってもよい。すなわち織物、編み物、不織布だけでは、液不透過性能を満足することが困難な場合があるため、これらの素材にゴム系、ポリオレフィン系、フッ素系やシリコーン系のフイルム状の素材を張り合わせたり、あるいはゴム系、ポリオレフィン系、フッ素系やシリコーン系の樹脂、好ましくは発泡樹脂をコーティングしたりすることにより達成できる。また、これらの構成にすることにより撥水性のも付与することができる。
【0078】
その際、排尿を受け止めることによる蒸れを改善するため、JIS Z−0208「防湿包装材料の透湿度試験方法」に基づいて測定されるバックシートの透湿度が4000g/m2 ・24hr以上であることが好ましい。
【0079】
さらにその際、膜としての耐久性が必要となり、液不透過性のバックシートのJIS−L−1092「繊維製品の防水性試験」に基づいて測定される耐水圧は5.0kPa以上であることが好ましい。これらの達成技術としては、織物、編み物、不織布などの基布に、たとえばエントラント(東レ(株)、(R))に代表される多孔質ポリウレタンをコーティングしたりゴアテックス(ゴアテックス社(R))に代表される多孔質フッ素フィルムなどを接着させたりすることを用いることができる。
【0080】
このトップシートと吸水材とバックシートは部分的に結合されていることが好ましく、縫製などの方法で周辺部または周辺部の一部、さらには内面の一部をキルテイングなどの方法で縫製するのがよい。
【0081】
かかる縫い糸も水分を吸収しやすく、非吸水層と同様濡れ不快感の対象となるので表面に位置することとなる糸もパラフィン系、シリコーン系やフッ素系など撥水剤で撥水加工されていることが好ましい。
【0082】
さらに、本発明のおむつは、ヨコ漏れ防止構造を付与していることが好ましい。通常ベッドなどでヨコになっているとき、おむつの中に配している吸水材に尿などが吸水される速度以上に排出されたとき、おむつと肌との間から漏れてしまう機会を低減させることができるからである。具体的にはおむつの周囲にゴムのような伸縮性のある素材を配しおむつの端と肌がより密着しやすいようにすることである。
【0083】
また、本発明のおむつは、バックシートの裏に滑り止め機能を付与していることが好ましい。このような機能を付与することによりバックシートとその周囲にある寝間着などの布帛の適度の摩擦が生じ、つるつる滑ることがなくなるからである。
【0084】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0085】
なお、本発明に用いる評価方法について説明する。ここで説明しない評価方法については基本的にJISで定められている方法に準ずる。
(1)通気量:
JIS−L−1096「一般織物試験方法」のA法による。
(2)透湿度:
JIS−Z−0208「防湿包装材料の透湿度試験方法」による。
(3)分割後の短繊維の繊度:
繊維の断面のSEM写真を撮影し断面面積から算出した。
(4)吸水性:
JIS−L−1096「一般織物試験方法」のA法(バイレック法)による。
(5)吸水量:
JIS−L−1912「医療用不織布試験方法」による。
(6)透湿度:
JIS−L−1099「繊維製品の透湿度試験方法」のA−1法による。
(7)耐水圧:
JIS−L−1092「繊維製品の防水性試験」による。
(8)布帛状吸水材の空隙量:
布帛状吸水材の布帛100cm2 あたり空隙量とは、次の式で表わされるものである。
【0086】
布帛100cm2 あたりの空隙量=布帛100cm2 あたりの容積−100cm2 の布帛を構成する繊維の容積
布帛100cm2 あたりの容積布帛は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上、サイズはタテ・ヨコ10cm以上をサンプルとし、始めに皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重を加えて予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重を加えて厚さ、タテ・ヨコのサイズを測定し、重ねた枚数で割りかえし算出する。
【0087】
なお、吸水材が複数層で構成されている場合は、その該当層数に割りかえして算出する。また、100cm2 あたりの布帛を構成する繊維の容積は、布帛の重量と容積を測定し、所定の繊維の比重から算出するものである。なお、サンプルがこの面積をとることができない場合は、同等の測定を行った上で換算し直して算出してもよい。
(9)布帛状吸水材の圧縮率:
布帛状吸水材の圧縮率の測定は、布帛状吸水材を重ねて厚さ5cm以上をサンプルとし、初め皺などの余分な空隙を除くため10g/cm2 の荷重下で予備圧縮した後、0.5g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT1とし、その後10g/cm2 の荷重下で厚さを測定しT2として次の式にて算出する。
【0088】
圧縮率(容積%)=(T1−T2)×100/T1
(10)布帛状吸水材の厚さ:
JIS−L−1913「一般短繊維不織布試験法」のB法による。
(11)検知管法による消臭性評価
サンプルを3g入れた500mLの容器に初期濃度が200ppmになるようにアンモニアガスをいれて密閉し、30分間放置した後、ガス検知管で残留アンモニア濃度を測定した。そして次の式に従い消臭率(%)として算出した。
【0089】
消臭率(%)=(1−(ガス検知管測定濃度)−(初期濃度))×100
同様な方法でメチルメルカプタン(MMP)40ppm、2時間後の残留ガス濃度を測定し、消臭率(%)を算出した。
(12)スカトール、インドールの官能評価
0.01重量%スカトール溶液、0.1重量%インドール溶液をそれぞれ調整し、これを悪臭溶液とする。
【0090】
衛生剤組成物を加工したサンプルを10cm角にカットし、内容積500mLのすり合わせ活栓付きの三角フラスコに、各悪臭溶液をマイクロシリンジにて25μL注入して、悪臭溶液と接触しないようにサンプルをフラスコ内の上部に懸垂する。
【0091】
次に室温で放置し、30分ごとに官能試験を行い、臭気の強さを次に示す6段階で評価した。
【0092】
0:無臭
1:やっと感知できる臭い
2:何の臭いかわかる弱い臭い
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
(13)抗菌性能:
繊維製品新機能評価協議会規定に従った。
【0093】
制菌基準:C≦A、ただしC≠0であること
殺菌活性値(制菌性能)=log C−log A
接種菌数:1±0.3×105 /ml 、log (B/A)>1.5
A:無加工品(綿あるいは生地)の接種直後に回収した菌数
B:無加工品(綿あるいは生地)の18時間培養直後に回収した菌数
C:制菌加工品(綿あるいは生地)の18時間培養直後に回収した菌数
対象菌種:黄色ブドウ状球菌(MSSA)
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
(14)痒み試験:
痒み試験の評価については加工した生地(1cm×5cm)を折り畳んで水で濡らし、鳥居薬品株式会社製パッチテスト用絆創膏にて1日間二の腕の内側に添付した後、官能判断により痒いか痒くないかで比較した。
【0094】
繊維構造体の洗濯方法は、JIS L 0217 103法で洗濯回数は10回とした。
【0095】
実施例1
ポリブチレンテレフタレートとナイロン6のポリマからなり、図4に示すような断面を有する複合繊維でポリマ8はポリブチレンタレフタレートであり、ポリマ7はナイロン6でポリマ7の部分は6領域に分割されて配している。この複合繊維は、複合状態で1.8dtexで平均繊維長は38mmである。この複合繊維をカード機にかけ開繊してシートを作成し、かかるシートを複数枚積層した上でウオータージェットパンチ機によりプレパンチとして水圧20kg/cm2 で絡合させた後、次いで水圧120kg/cm2 で表裏表の計3回水流を通過させ不織布を作成した。この不織布は目付が180g/m2 であり、不織布の断面をSEM写真で観察したところ複合繊維の大部分ががポリブチレンテレフタテートとナイロン6の界面から分割されていた。分割後の単繊維の繊度はナイロン6部分が0.2dtex、ポリブチレンテレフタレート部分が0.6dtexであった。
【0096】
この不織布をケイ酸アルミニウム(比表面積:104.5m2 /g、細孔容積:0.349mL/g):1.0重量%、ジエチレントリアミン五酢酸:1.0重量%、酸化チタン分散液:5.0重量%および水:93.0重量%からなる加工液に含浸させた。含浸後、ピックアップが80〜100%になるようにマングルロールで絞り、ドライ−キュアの工程を経て160℃で固定することにより加工不織布を得た。
【0097】
加工不織布は厚さは1.0mm、目付は200g/m2 、不織布100cm2 あたりの空隙量は50.2cc、圧縮率は11%の不織布で、バイレック法による吸水量は125mm、吸水量は300%であった。
【0098】
実施例2
実施例1において、ケイ酸アルミニウムに代えて、ベントナイト(比表面積:40.9m2 /g、細孔容積:0.425mL/g)を用いた以外は同様にして加工不織布を得た。
【0099】
実施例3
実施例1において、ジエチレントリアミン五酢酸に代えて、エチレンジアミン四酢酸を用いた以外は同様にして加工不織布を得た。
【0100】
実施例4
実施例1と同様の不織布をケイ酸アルミニウム:1.0重量%、ジエチレントリアミン五酢酸:1.0重量%および水:98.0重量%からなる加工液に含浸させた後、実施例1と同様に固定することにより加工不織布を得た。
【0101】
比較例1
実施例1と同様の不織布をケイ酸アルミニウム:1.0重量%、および水:99.0重量%からなる加工液に含浸させた後、実施例1と同様に固定することにより加工不織布を得た。
【0102】
比較例2
実施例1と同様の不織布をジエチレントリアミン五酢酸:1.0重量%および水:99.0重量%からなる加工液に含浸させた後、実施例1と同様に固定することにより加工不織布を得た。
【0103】
比較例3
実施例1と同様の不織布をケイ酸アルミニウム:5.0重量%および水:99.0重量%からなる加工液に含浸させた後、実施例1と同様に固定することにより加工不織布を得た。
【0104】
実施例5
実施例1で用いた未加工の不織布を脂肪族ポリカルボン酸(帝国化学産業株式会社SZ−2B(商品名)未中和品):3.0重量%、銀:0.5重量%、多孔質物質(富士シリシア株式会社サイリシア#550、表面積500m2/g、平均1次粒子径2.7μm)1.0重量%および水:96.5重量%からなる加工液に含浸させた。含浸後、ピックアップが80〜100%になるようにマングルロールで絞り、ドライ−キュアの工程を経て160℃で固定することにより加工不織布を得た。
【0105】
上記の実施例1〜5および比較例1〜3で得た加工不織布について消臭性、抗菌性試験を評価した結果を表1示す。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例6
実施例1で得た加工不織布を6枚重ね、幅25cm、長さ60cmに裁断して本発明のおむつの吸水材とした。吸水材の厚さは6mmだった。
【0108】
トップシートとしてポリエステル糸55dtex、12フィラメントと55dtex、46フィラメントの2種類の糸を使い、トリコット編み機にて前者が裏面、後者が表面に来るよう編み立てを行った編み物を用意した。
【0109】
バックシートとして、ポリウレタンシートをポリエステル糸を用いた天竺の生地に接着させた防水シートを用意した。
【0110】
かかるトップシートとバックシートを略ひょうたん型に裁断した。股下にあわせるひょうたん型の首に相当する部分の幅は30cm、長さ60cmに裁断して、この間に本発明の吸水材を積層し、まずトップシートと吸水材を周辺をポリエステルマルチフィラメント糸20綿番手に、フッ素系撥水剤を0.5%付与した縫い糸を使って部分的に接合しさらにトップシートとバックシートを先に用いた縫い糸を用いて四周辺を縫製し一体化して本発明のおむつを作成した。
【0111】
吸水材の厚さは5mmで柔らかで、はき心地も良好であった。また200cm3 の水分を吸収させ、5分後に濡れた面を手で押したところ、手の表面に水分が付着が少なくさらさらしていた。
【0112】
また、おしめとして実用した結果、本発明品は濡れ感を全く覚えず、濡れたまま着座しても水分のシミ出しがなく使用できた。また大便をした際も悪臭が軽減されていた。
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた吸収性を示し、かつ濡れ感も少なく、洗濯耐久性に優れ、消臭、防臭性能を有する優れたおむつ類を提供することができる上に、さらに介護現場で悩まされ続けたアンモニア臭、インドール臭およびスカトール臭などの***物質臭に対し優れた消臭性能を付与することができ、また繰り返し洗濯もできるため経済的なむつ類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材の一例構造を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材の一例構造を示すものでヨコ漏れ防止機能と滑り止め機能を付与したものの概略図である。
【図3】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材に用いる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の一例を示す概略図である。
【図4】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材に用いる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の一例を示す概略図である。
【図5】本発明に係るおむつに用いられる布帛状吸水材に用いる分割型複合繊維(原綿)の断面形状の他の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:トップシート
2:バックシート
3:吸水材
4:縫い糸
5:ヨコ漏れ防止機能部材
6:滑り止め機能部材
7:ポリマ
8:ポリマ
Claims (19)
- 消臭性能を有する布帛状吸水材であって、本文で定義する該布帛状吸水材の100cm2 あたりの空隙量が10cc以上で、厚さが1mm〜20mmの範囲にあり、該布帛状吸水材を構成する主たる繊維は、単繊維繊度が0.01〜2dtexの範囲にある合成繊維であることを特徴とする吸水材。
- 該布帛状吸水材が、表面に吸水剤を付着してなる繊維で構成されており、かつ、該布帛状吸水材のバイレック法による吸水性が50mm以上であることを特徴とする請求項1記載の吸水材。
- 本文で定義する該布帛状吸水材の吸水量が、100%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の吸水材。
- 該布帛状吸水材が、不織布で構成されており、かつ、本文で定義する該不織布の圧縮率が30容積%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸水材。
- 該布帛状吸水材を構成する繊維が、複合繊維を出発原料とするものであり、かつ、50kg/cm2 以上の水圧処理により複数の繊維に分割されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸水材。
- 該布帛状吸水材が、複数層重ね合されてなる積層シートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸水材。
- 該消臭性能が、該布帛状吸水材の一部に、多孔質物質、カルボン酸化合物および金属から選ばれた少なくとも1種の消臭剤を含んでなることによりもたらされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の吸水材。
- 該カルボン酸化合物が、アミノポリカルボン酸および脂肪族カルボン酸から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の吸水材。
- 該脂肪族ポリカルボン酸の分子量が1000以上10000未満であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の吸水材。
- 該アミノポリカルボン酸が、少なくとも1つ以上の窒素原子を有する多価カルボン酸であることを特徴とする請求項8記載の吸水材。
- 該多孔質物質は、比表面積が100m2 /g以上であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の吸水材。
- 該多孔質物質が、シリカ、活性炭およびアルミノケイ酸塩化剤から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項7記載の吸水材。
- 該金属が、Ag、Cu、Zn、Si、Ti、Fe、AlおよびZnから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の吸水材。
- 通気性のトップシートと液不透過性のバックシートとからなるおむつ類において、これら両シートの間に請求項1〜14のいずれかに記載の吸水材が配置されてなることを特徴とするおむつ類。
- 該通気性のトップシートが、本文で定義する通気量が300cc/cm2 /sec以上のものであることを特徴とする請求項15に記載のおむつ類。
- 該液不透過性のバックシートが、本文で定義する透湿度が4000g/m2 ・24hr以上のものであることを特徴とする請求項15または16に記載のおむつ類。
- 該液不透過性のバックシートが、本文で定義する耐水圧が5.0kPa以上のものであることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載のおむつ類。
- 該通気性のトップシートと該液不透過性のバックシートとこれら両シート間に配置される該吸水材が、縫製手段によって結合されていて、該縫製に用いられる縫い糸が撥水加工されているものであることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載のおむつ類。
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2003
- 2003-01-09 JP JP2003003086A patent/JP2004215693A/ja not_active Withdrawn
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