JP2004214044A - 電子線装置及び電子線装置を用いた半導体デバイス製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、2次光学系の2次電子の透過率を大きく、更に、ビームのボケを少なくした電子線装置、及び、検出される画像を低収差にすることができ、精度の高い検査を行うことができるデバイス製造方法を提供する事を目的とする。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決すべく検査対象である試料34の試料面34aに電子銃12より放出された1次電子線を入射させ、その試料34から出てくる2次電子線により形成される電子像を拡大して検出する電子線装置10に於いて、前記1次電子線と前記2次電子線とに共通する経路上にNA開口40を設け、前記試料面34aの近くに電子レンズ32を設け、前記1次電子線に関し、前記電子銃12が作るクロスオーバと前記電子レンズ32と前記NA開口40とが、それぞれ共役関係にあることを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明は、上記課題を解決すべく検査対象である試料34の試料面34aに電子銃12より放出された1次電子線を入射させ、その試料34から出てくる2次電子線により形成される電子像を拡大して検出する電子線装置10に於いて、前記1次電子線と前記2次電子線とに共通する経路上にNA開口40を設け、前記試料面34aの近くに電子レンズ32を設け、前記1次電子線に関し、前記電子銃12が作るクロスオーバと前記電子レンズ32と前記NA開口40とが、それぞれ共役関係にあることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、最小線幅0.1μm以下のパターンを有する試料の評価を高スループット且つ高信頼性で行う電子線装置に関するものであり、更に、そのような装置を用いるデバイス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ステンシルマスクなどの各種マスクの欠陥検査工程やフォトマスク工程において、1次電子線を試料に入射させ、試料から放出される2次電子を像として拡大して、その像をCCD検出器あるいはTDI検出器で検出して検査(光方式検査)が行われていた。また、そのような電子線装置も公知である。先行する特許出願としては次のものが上げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平11−132975
【特許文献2】特開平 7−249393
【特許文献3】特願2000−193104
【特許文献4】特願2000−229101
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電子線装置では、2次光学系の2次電子の透過率が小さく、必要なS/N比の像を得るためには1次電子線を多量に入射させる必要があり、そのため試料面が帯電する問題点があった。更に、透過率を向上させるとするとビームのボケが大きくなり、像のコントラストが低下してしまう問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、次の特徴を備える電子線装置である。
「1」(図2:共役関係:電子銃12が作るクロスオーバ−NA開口40−対物レンズ32の主面)
本発明は、検査対象である試料の試料面に電子銃より放出された1次電子線を入射させ、その試料から放出される2次電子線により形成される電子像を拡大して検出する電子線装置に於いて、前記1次電子線と前記2次電子線とに共通する経路上にNA開口を設け、前記試料面の近くに電子レンズを設け、前記1次電子線に関し、前記電子銃が作るクロスオーバと前記電子レンズの主面と前記NA開口とが、それぞれ共役関係にあることを特徴とする。
【0006】
「2」 望ましくは、前記電子レンズの主面もしくは主面近傍に、前記NA開口の前記電子レンズ側に配置された電子レンズ(38)によりNA開口像を形成することを特徴とする。
【0007】
「3」 更に、前記1次電子線の経路上に成形開口を設け、
前記成形開口と前記試料面を共役面とし、前記1次電子線による電子銃のクロスオーバ像をNA開口と対物レンズ主面とに形成することを特徴とする。これにより、低収差となるので同じ収差ではNA開口を大きくできるので2次電子の透過率が高く、少量の1次電子線であっても、充分なS/N比の像を得ることが可能となる。
【0008】
本発明によれば、クロスオーバ像、NA開口、対物レンズ主面が共役となり、成形開口と成形開口像と試料面が共役となっている。
【0009】
「4・5」(ビーム形状、その強度)
上記したように本発明は、NA開口の像を上記試料面の近くに配した電子レンズの主面近くに形成される様にした。その構成を図2に示す。上記電子レンズを図2中、符号32とし、以下対物レンズ32とする。上記構成により、試料面34aからNA開口40を通る2次電子のみが2次光学系に受け入れられ検出される。その様子を図3に示す。
【0010】
試料からの2次電子は符号43で示す余弦法則に従って放出される。即ち、放出点Oから任意角度方向へ放出される2次電子の強度は放出点Oと符号43で示す円周との交点迄の距離に比例する。従って、試料の視野の中央から放出された2次電子の内、2次光学系に受け入れられる量は符号41で示す角錐と余弦法則による球状(その一断面を円周43と示す)で囲まれた体積に比例する。一方、視野の右端から放出される2次電子のうち、2次光学系に受け入れられるものは符号42で示す角錐の範囲内である。
【0011】
角錐41と角錐42とは、その頂点の角度αが同じであるにも関わらず、その体積は角錐41のほうが大きい。角錐41は円弧ABを含み、角錐42は円弧CDを含む。両角錐(41、42)の比較により、右端から放出される2次電子は、試料34の中央(光軸11上)から放出される2次電子より少ない。従って、光軸11上は明るく、光軸11から離れた位置の2次電子線は暗くなる傾向となる。
【0012】
そこで、本発明は、1次電子線を試料面に照射し、試料から放出される2次電子を像として拡大し検出する電子線装置に於いて、試料面に入射させる1次電子線のビーム形状を光軸近くで強度が小さく、光軸から離れた場所では強度が大きい分布を有することを特徴とする。同様に、本発明は、上記電子線装置において、試料面に入射させる1次電子線のビーム形状を光軸近くで強度が小さく、光軸から離れた場所では強度が大きい分布を有することを特徴とする。これにより、2次光学系に受け入れられる2次電子は光軸からの距離に依存せず、一定になるので、検出信号強度も光軸からの距離に依存せず一定となる。
【0013】
「6・7」(E×B分離器の位置)
また本発明は、検出される像の歪収差を小さくするために、1次電子線をE×B分離器を用いて試料面に垂直に入射させ、前記試料面から放出される2次電子を少なくとも2段の電子レンズで像として拡大させ、検出する電子線装置において、前記2次電子線の経路において最も下流に位置する電子レンズと検出器との間に前記E×B分離器を配置することを特徴とする。同様に、本発明は、上記電子線装置において、2次電子の経路上に少なくとも2段の電子レンズを配し、前記E×B分離器を前記2段の電子レンズのうち下流に位置する電子レンズと検出器との間に配置することを特徴とする。
【0014】
「8・9」(偏向量、電場の2倍)
E×B分離器は通過する電子線を任意の方向に偏向させる機能を備える。しかし、上記偏向させる程度は、電子線のエネルギによって微妙に異なっている。一般に、エネルギの小さな電子線ほど大きく偏向される。
【0015】
そこで、本発明は、1次電子線をE×B分離器を用いて試料面に垂直に入射させ、試料から放出される2次電子を像として拡大して検出する電子線装置に於いて、前記E×B分離器は、磁場による2次電子の偏向量が電場によるものの2倍程度であることを特徴とする。同様に、上記電子線装置に於いて、前記E×B分離器は、磁場による2次電子の偏向量が電場によるものの2倍程度であることを特徴とする。これにより、通過する電子線のエネルギにバラツキがあったとしても、近似できる程度、同じ方向に偏向される。その結果、検出器はより解像度の良い2次電子線を得ることができる。
【0016】
「10」上記発明の具体的構成の一つは、上記電子線装置において、前記E×B分離器は、4000ev程度の2次電子を偏向させるよう設定され、かつ、2次電子線の光軸に対して2次電子線を7°〜15°偏向させるよう設定されていることを特徴とする。
【0017】
「11」(図6:共役関係 電子銃212が作るクロスオーバ−対物レンズ232−NA開口240)
また、本発明は、マスクの検査に用いられる電子線装置としても実施可能である。本発明は、検査対象である試料に、電子銃より放出された1次電子線を透過させ、その透過した透過電子線により形成される電子像を拡大して検出する電子線装置に於いて、前記透過電子線の経路上にNA開口を設け、前記試料の近くに電子レンズを設け、前記1次電子線及び前記透過電子線に関し、前記電子銃が作るクロスオーバと前記電子レンズと前記NA開口とが、それぞれ共役関係にあることを特徴とする。
【0018】
「12」望ましくは、上記電子線装置において、前記電子レンズの主面もしくは主面近傍に、前記透過電子線による電子銃のクロスオーバ像を形成することを特徴とする。
【0019】
「13」(もう一つの共役関係:成形開口216−試料234)
更に、本発明は、上記電子線装置において、前記1次電子線の経路上に成形開口を設け、前記1次電子線に対して、前記成形開口と前記試料を共役関係となるように配置し、前記1次光学系による成形開口の像を、前記試料面に形成することを特徴とする。これにより、必要十分な領域のみを電子線照射できるので、試料の温度上昇、放射線損傷等を最小限に保てる。少量の1次電子線であっても、充分なS/N比の像を得ることが可能となる。
【0020】
「14・15」(拡大像を2段目レンズ前に形成)
また、本発明は、試料面から放出される2次電子あるいは試料から透過した電子像を少なくとも2段の電子レンズで拡大して検出する電子線装置に於いて、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を2段目の電子レンズより上流の特定の位置に合せることによって歪収差あるいは倍率色収差を小さくすることを特徴とする。同様に、上記電子線装置において、前記透過電子線の経路上に少なくとも2段の電子レンズを設け、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を2段目の電子レンズより上流の特定の位置に合せることを特徴とする。これにより、検出される像の歪収差をより小さくすることができる。
【0021】
「16・17」(補正パラメータ最適化)
1次電子線を試料に照射し、試料から放出された2次電子像、あるいは、試料を透過する透過電子像を拡大して像として検出する電子線装置もしくは上記電子線装置に於いて、像の歪収差をシュミレーション計算し、歪収差の3次の絶対値と5次の絶対値との差を求め、前記差が最小となるか、もしくは5次の絶対値が3次の絶対値より5〜15%程度大きくなる様に、補正パラメータを最適化し、前記最適化された補正パラメータに応じて、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を設定することを特徴とする。
【0022】
「18・19」(拡大率の調整、試料位置移動)
ステンシルマスクとして現在2種類が考えられる。一つはマスクの1/4の像をウェーハに縮小する転写装置に使われるマスクと、他の一つは1:1の転写装置に使われるマスクである。前者は分解能はそれ程必要ないが、マスク面積が25mm×40mm×16=16000mm2と大きい。一方、後者はマスク面積は25mm×40mm=1000 mm2と小さいが、高解像度が要求される。
【0023】
この様な2種類のステンシルマスクを検査するため、ステンシルマスクを透過した透過電子像の倍率を可変にすることが重要になる。収差を悪くしないで倍率を変えるには、ステンシルマスク28と対物レンズ29としての拡大レンズ間の距離、即ち、ワーキングディスタンス31を変えるのがよいことがシミュレーションの結果明らかになった。
【0024】
そこで、本発明は、試料を透過した電子を前記試料に近接して配置された電子レンズで透過電子像として拡大し、CCD又はTDI又はEBCCDのいずれかで検出する電子線装置に於いて、前記透過電子像を拡大する拡大率を変えるとき、前記試料と前記対物レンズとの間の距離を変化させることを特徴とする。同様に、上記電子線装置において、一つの試料を解像度の異なる他の試料に変更する際に、前記試料に近接して配置された電子レンズと前記試料との距離の調節手段を設けたことを特徴とする。これにより、収差を悪くすること無く透過電子像の倍率を可変にすることが可能となる。
【0025】
「20」(従属項:磁気レンズ、ギャップが試料側)
二次電子や透過電子の拡大像を作る場合、倍率色収差が十分補正されると、軸上色収差が収差を決める。特に2次電子の透過率を向上させるには軸上色収差を低減させることが重要になる。そこで、本発明は、上記電子線装置に於いて、前記試料面の近くに設けた電子レンズは、コアのギャップが試料側にある電磁レンズを含んでいることを特徴とする。これにより、軸上磁場分布はギャップ位置より試料65側に最大値を形成できるので、軸上色収差係数を小さくすることができる。
【0026】
「21」(従属項:半導体デバイス製造方法:ウェーハのチェック)
本発明は、上記記載の電子線装置を用いて、前記被検査試料であるところの半導体ウェーハの欠陥を検査することを特徴とする半導体のデバイス製造方法である。
【0027】
具体的一例は、以下の各ステップを備える半導体デバイスの製造方法である。
・ ウェーハを製造するウェーハ製造工程(またはウェーハを準備するウェーハ準備工程)
・ 露光に使用するマスクを製作するマスク製造工程(またはマスクを準備するマスク準備工程)
・ ウェーハ上に形成されたチップを一個ずつ切り出し、動作可能にするチップ工程
・ 前記電子線装置を用いて完成したチップを検査する検査工程
【0028】
「22」(従属項:半導体デバイス製造方法:マスクのチェック)
発明は、上記記載の電子線装置を用いて欠陥検査を行ったマスクを使うことを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。
【0029】
具体的一例は、以下の各ステップを備える半導体デバイスの製造方法である。
・ マスクを製造する工程
・ 製造された前記マスクを前記電子線装置を用いて検査を行う工程
・ 検査を終えた前記マスクを用いて、各種チップを製造する工程
また、前記電子線装置は、ウエハプロセッシング工程におけるリソグラフィ工程に用いることもできる。この場合、薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するために前記電子線装置によって検査されたマスクを用いてレジストパターンを形成する。
【0030】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明における電子線装置及びこの電子線装置を用いた検査装置であり、図左側に電子線装置10を、図右側に制御部100を示す。図2は電子線装置10の詳細な構成を示す。
【0031】
(電子線装置10)
電子線装置10は、その略構成として、電子ビームを放出する電子銃12、その下流側に電子ビームを任意の矩形に成形する成形開口16、一次電子線と二次電子線とを分離するE×B分離器20、結像された電子ビームを拡大する機能を備えた電子レンズ(拡大レンズ38)、試料34とその試料34を支える試料台36と、上記試料の試料面34aの近くに設けられた電子レンズ(対物レンズ32)を備える。また、1次経路上及び2次経路上にNA開口40を設け、2次経路上に検出器70を設ける。
【0032】
電子銃12は、電子放出材12aを加熱することにより電子を放出する熱電子線源タイプが用いられている。カソードとしての電子放出材(エミッタ)は、ランタンヘキサボライド(LaB6)が用いられている。高融点(高温での蒸気圧が低い)で仕事関数の小さい材料であれば、他の材料を使用することが可能である。本実施形態においては、電子銃12は、先端曲率半径30μmRと小さい単結晶LaB6カソード12aを有し、空間電荷制限条件で動作させる事により、高輝度でしかもショット雑音の小さい電子線を放出することができるようになっている。また、ウェーネルト12bとアノード12c間の距離を8mm以上に大きくし、電子銃電流を高輝度になる条件を探せば輝度をラングミュア制限より大きい値にすることもできる。
【0033】
このように、本実施形態における電子銃12は、熱電子カソード12aを有し、空間電荷制限条件にて動作するものが望ましい。また、電子銃12には、FE(フィールドエミッタ)、TFE(サーマルフィールドエミッタ)、ショットキーカソードを有する光源像の小さな電子銃を用いてもよい。なお、上記「空間電荷制限条件」とは、カソードの温度をある一定以上に高めて、電子線の放出量がカソードの温度に影響されにくい条件をいう。
【0034】
電子銃12の放出方向に向けて(図中右斜下)、第1の電子レンズが設けられ、これをコンデンサレンズ14とする。更に1次電子線の経路上の下流には、成形開口16と第2の電子レンズを設ける。この第2の電子レンズを照射レンズ18とする。電子銃12から放出された1次電子線は、コンデンサレンズ14で収束され、成形開口16を照明する。成形開口16を通ることにより所望の形状に成形された成形ビームとなり、偏向器(図中省略)で任意に偏向されることで試料34の被検査領域のある瞬間での領域を照射する。
【0035】
この実施形態においては、成形開口を光路に沿って2枚配置し、その間に偏向器を入れ偏向器を調節することにより、可変成形ビームにすることにより、照射領域を調節することも可能であるが、成形開口16を寸法の異なる複数の開口で代用させ、機械的に照射領域を調整する方式は鏡筒長を短くできるメリットがある。
【0036】
この実施形態は、一つもしくは複数の偏向器により、1次電子ビームを偏向させ、これとステージの移動とで試料全体を走査するものであるが、上記各レンズ(14、18)いずれかの焦点距離を変えることにより小径のクロスオーバ像を、試料面34a上に形成、走査するようにしてもよい。また、成形開口を複数設け、その重なりを小さくして小径の電子線を形成し、この電子線を走査させレジストレーションに利用するようにしてもよい。
【0037】
成形開口16を通過し、試料34を照射する電子線の照射領域は、長辺と短辺とを有する長方形々状が望ましい。そして、上記照射領域の長辺方向の画像形成は同時に行い、上記試料台36を短辺方向に移動させることで、上記照射領域の短辺方向の連続移動を行う。試料台36を連続移動させながら検査を行うので、主視野の幅が小さくても高スループットで検査が行える。
【0038】
上記照射レンズ18の下流には、E×B分離器を設ける。試料面34aに対して斜めに照射された電子ビームは、E×B偏向器20により、偏向され、試料面34aに対して垂直方向となる。偏向させる角度は適宜に決定すればよく、この実施形態では5°〜30°の範囲内とする。
【0039】
E×B分離器20より下流には、2次光学系の収差を小さくする役割を備えたNA開口40とダブレットレンズ(ダブルの電子レンズ)を設ける。ダブレットレンズにおいて、便宜上、試料34に近いものを一段目とし、対物レンズ32とする。E×B分離器20に近いものを二段目とし、拡大レンズ38とする。E×B分離器と試料34との間は、NA開口40、拡大レンズ38、対物レンズ32、試料34の順で配置する。
【0040】
電子ビームが試料面34aに照射されると2次電子線が放出され、この2次電子線は上記ダブレットレンズ(32、38)とNA開口40を通過する。NA開口40により2次電子の収差は小さくなる。その後、2次電子線はE×B偏向器20で所定角度偏向される。この実施形態では5°〜20°の範囲内とする(図では、電子銃12の反対側に10°傾ける)。偏向された2次電子線の向きに対して、垂直となるよう検出器70を配する。2次電子線は検出器70を垂直に照射する。
【0041】
(検出器70)
検出器70は、像質を落とさないで電子を増倍するMCP(マルチチャンネルプレート)と、FOP(ファイバオプティカルプレート)とを備えていてもよい。電子線が照射される方向に沿って、MCP及びFOPの順で設けられている。検出器70は、更に、真空窓と、リレー光学系としての光学レンズ、複数の画素を有する検出センサとしてのTDI検出器とを備えている。
【0042】
なお、この検出器70の構成は、上記構成に限ることはなく、MCPを用いない形態のほか、電子ビームに反応する素子を用いたCCD(EBCCD)を用いて構成されてもよい。
【0043】
(制御部100)
制御部100は、図1に例示されたように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体101と、制御部本体101の処理結果を表示するCRT103と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部105と、を備える。もちろん、上記構成は、検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御部100を構成してもよい。
【0044】
制御部本体101は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器70から受信した電気信号即ち試料34から放出された2次電子線による画像のデジタル画像データを記憶するための電子画像記憶領域107が割り当てられている。また、ハードディスク上には、予め欠陥の存在しない試料の基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部109が存在する。更に、ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域107から電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従って試料34の欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム111が格納されている。この欠陥検出プログラム111は、基準画像記憶部109から読み出した基準画像と、実際に検出された電子線画像とをマッチングして、欠陥部分を自動的に検出し、欠陥有りと判定した場合、オペレータに警告表示する機能を備える。また、隣のチップの同一場所の検出された電子画像同志、あるいは同一チップ内の異なる場所の同一セルでの検出画像同志をマッチングすることもできる。このとき、CRT103の表示部に電子画像103aを表示するようにしてもよい。
【0045】
(本実施形態の特徴)
(1)NA開口像の結像
本実施形態に係る電子線装置においては、1次電子線と2次電子線とに共通する経路上にNA開口40が設けられている。更に、対物レンズ32は試料34の近くに配置する。そして、1次電子線に関し、電子銃12が作るクロスオーバと対物レンズ32の主面とNA開口40とが、それぞれ共役関係となるように配置する。これにより、電子銃12が作る光源像はNA開口40において結像され、更に、NA開口40の像は、対物レンズ32の主面もしくは主面近傍に結像される。これにより、1次電子線が、対物レンズ32の主面もしくは主面近傍において光軸付近に集中し、光束を小さくでき、これによって、収差を小さくすることができる。
【0046】
また、この実施形態では、成形開口16と試料面34aを共役面とする。また、電子銃12のクロスオーバ像をNA開口40に形成する。この実施形態では、以上の構成により、光源像がNA開口40に結像し、成形開口16の開口像が試料面に結像する条件が満たされ、ケーラ照明条件をも充足する。以上の構成により、NA開口の像が対物レンズに結像されるので対物レンズでの光束が小さく低収差にすることができる。
【0047】
また、この実施形態では、1次電子線はケーラー照明条件を満たし、また、二段の電子レンズ(対物レンズ32、拡大レンズ38)を構成する。これにより、光路長の短い1次光学系ができる。
【0048】
上記したように本実施形態においては、NA開口による像を試料面の近くに配した電子レンズとしての対物レンズ32の主面もしくはその近くに形成される様にした。かかる構成により、2次電子は、試料の視野の中央ないしはその端から放出されたものも対物レンズ32の中央方向へ向かうもののみが2次光学系で受け入れられるので、対物レンズでの光束が小さく低収差となる。
【0049】
2次電子の強度分布が不均一になる理由を図3に示す余弦法則に基づいて説明する。
【0050】
試料からの2次電子は符号43で示す余弦法則に従って放出される。即ち、放出点Oから任意角度方向へ放出される2次電子の強度は放出点Oと符号43で示す円周との交点迄の距離に比例する。従って、試料の視野の中央から放出された2次電子の内、2次光学系に受け入れられる量は、符号41で示す角錐と余弦法則による球状(その一断面を円周43と示す)で囲まれた体積に比例する。一方、視野の右端から放出される2次電子のうち、2次光学系に受け入れられるものは、符号42で示す角錐の範囲内である。
【0051】
角錐41と角錐42とは、その頂点の角度αが同じであるにも関わらず、その体積は角錐41のほうが大きい。角錐41は円弧ABを含み、角錐42は円弧CDを含む。両角錐(41、42)の比較により、右端から放出される2次電子は、試料34の中央(光軸11上)から放出される2次電子より少ない。従って、光軸11上は明るく、光軸11から離れた位置の2次電子線は暗くなる傾向となる。
【0052】
この実施形態に係る電子線装置は、レンズなどの配置がテレセントリックにはなっていない(テレセントリックにおいては、光軸でも光軸から離れた箇所でも、1次電子線が試料面に対して垂直に照射される)。そのため、1次電子線は、光軸もしくはその近傍において、試料面に対して垂直に照射されるが、光軸から離れれば離れるほど傾斜して試料面に対して照射され、試料面上での光軸から離れた端の部分における1次電子線の強度が弱くなり、放出される2次電子線の強度も弱くなることになる。したがって、成形開口を図4に示すようにな形状にして、成形開口の端を通る1次電子線の量を大きくし、これによって、試料面上での光軸から離れた端の部分における1次電子線の強度を強くし、試料面の端に対して傾斜して照射されても、放出される2次電子線の強度を結果として、試料面上での光軸部分と同程度となるようにした。
【0053】
すなわち、本実施形態においては、1次電子線を試料面に照射し、試料から放出される2次電子を像として拡大し検出する電子線装置に於いて、試料面に入射させる1次電子線のビーム形状を光軸近くで強度が小さく、光軸から離れた場所では強度が大きい分布を有するようにすることにより、2次光学系に受け入れられる2次電子は光軸からの距離に依存せず、一定になるようにし、検出信号強度も光軸からの距離に依存せず一定となるようにした。
この点について、以下にさらに詳細に説明する。
【0054】
(2)成形開口像
上述したように、対物レンズ32の主面、もしくは、主面近傍に、NA開口像が結像する。この場合、放出される2次電子の量は光軸近くで大きく、光軸から離れると小さくなる問題が生ずる。この問題を解決するために、本実施形態における成形開口16の形状を図4(a)に示すようにした。この図は、成形開口16の開口を光軸11の上流側から下流側に向けて示すものである。図中、符号16a(開口形状)で囲まれる領域の内側は、開口部16bであって、1次電子が通過する領域である。符号16aの外側は、開口枠16cであって1次電子を遮断する。
【0055】
図に示すように、開口部16bの中央付近(光軸11付近)の開口幅W1は、一定とする。中央付近から所定距離分両端方向に離れると、開口幅を徐々に拡大させ、両端では、その幅を開口幅W2とする。開口部W2の幅は1次光学系のビームボケより狭くする。開口幅W1と開口幅W2との比率は、2次電子線の強度が光軸11付近とその他の部分で同程度となるようにする。本実施形態では開口幅W1に対して開口幅W2を1.5ないし4倍程度とする。
【0056】
成形開口の開口部16bを通過し、試料面34aに到達した1次電子線の照射強度を図4(b)に示す。開口部16bを通過した1次電子線は、光軸からの距離に依存して増加する。図4(b)に示すように、開口部16bを通過し、レンズ38と32とで試料上34aに結像された1次電子線の外形17aは、略長方形々状となる。
【0057】
外形17aの内側に示される曲線は、1次電子線の大きさを示す等高線17b〜17eである。等高線17bから等高線17eに向けて、その量は大きくなっている。量が両端に向けて大きくなるのは、開口部16bの形状が、両端に向けて大きくなっているため、両端側の方が、開口部16bを通過する電子ビームが多いからである(開口幅W2>開口幅W1)。
【0058】
照射強度がもっとも大きいのは、図4(b)の中でA−A断面であり、その強度分布を図5に符号Aと示す。図5は、横軸に照射幅を、縦軸に照射強度を示すものである。B−B断面における強度分布を符号Bと、C−C断面(中央)における強度分布を符号Cと示す。図5に示すように、上記各断面の横軸方向の幅はすべて等しい。一方、その高さが異なることから、同じ幅を有する電子線であっても、その強度は光軸11からの距離に応じて異なっていることが分かる。照射強度はA−A断面が最も大きく、B−B断面及びC−C断面の順で小さくなる。このような強度分布を有する1次電子線で試料面34aを照射すれば、2次電子系に受け入れられる2次電子は光軸11からの距離に依存せず、一定となる。また、開口形状16aを適宜に調整することにより、2次電子の強度を一様にすることができる。本実施形態は、上述したように、テレセントリック照明ではない。
【0059】
(3)(E×B分離器20)
次にE×B分離器20の機能について述べる。図2に示すようにE×B分離器20は電磁偏向器22と静電偏向器24から構成されている。静電偏向器24は電磁偏向器22の内側に配置される。静電偏向器24と電磁偏向器22との偏向量が1:2になるように構成されている。試料面34aから放出される2次電子の光軸方向を基準線60と示す。静電偏向器24と電磁偏向器22との偏向量が1:2になるように構成したので、2次電子が二段目の拡大レンズ38からE×B分離器20に入射すると電磁偏向器22で基準線60から右へ20度偏向され、同時に、静電偏向器24で左へ10度偏向される。これにより、基準線60に対して2次電子の光軸は、差し引き右へ10度偏向される。検出器70は、基準線60から10度右へ傾いた軸200に直角となるよう配置される。検出器70はE×B分離器20から所定の距離だけ離して配置する。上記したように、この実施形態は、2次電子を電場と磁場の双方により偏向させる。そして、その偏向感度は、磁場による偏向を右に20°とし、電場による偏向を左に10°とするように、磁場による偏向を電場によるものの反対方向とし、かつ、2倍とする。
【0060】
4502eVのエネルギの2次電子を電磁偏向器22で右に20°偏向させるよう設定され、静電偏向器24において左に10°偏向させるよう設定されたE×B分離器20において、4501eVの2次電子線の偏向角は次の通りである。
【0061】
まず、電磁偏向器22による偏向角は(4502/4501)1/2×20°右へ偏向される。次に、静電偏向器24での偏向角は(4502/4501)×10°左へ偏向される。そして、その差を求めると、
【0062】
【数1】
【0063】
となる。このように静電偏向器24と電磁偏向器22との偏向の差は約−10°となり、4501eVの電子線も4502eVの電子線と同様に右に10°偏向することが分かる。即ち、この実施形態により、異なるエネルギの2次電子であっても、E×B分離器20で同じ角度偏向される。これにより、偏向色収差量を小さくすることができる。偏向させる角度としては、7°〜15°程度が望ましい。また、対象とする電子線のエネルギも4500eVに限定する必要はなく、4500eV程度、もしくは、4000eV〜5000eV程度で実施は可能である。
【0064】
更に、本発明は、2次電子の経路上に二段のレンズを配置し(対物レンズ32と拡大レンズ38)、そして、E×B分離器20は、2次電子線経路において最も下流に配置された拡大レンズ38より下流側、すなわち、拡大レンズ38と検出器70との間に配置する。更に、本実施形態では、E×B分離器20の位置を拡大レンズ38に対して検出器70側とする。
【0065】
これにより、静電偏向器24と電磁偏向器22との偏向感度が1:2からわずかに狂っていても、E×B分離器20と検出器70との間の距離が短いため、偏向色収差があっても、検出器70上ではサブミクロンの収差量となる。更に、検出器70上においてピクセル寸法は拡大されている(例えば、50nmピクセルで640倍とすれば32μmピクセルサイズとなる)ので、半導体デバイスの検査精度において、上記収差量は全く問題とならない。特に、この実施形態は、E×B分離器20の位置を拡大レンズ38より検出器70側とすることで、その収差量を更に小さくすることができる。
【0066】
2次電子線を偏向させるためのE×B偏向器20の構成としては、電磁偏向器22のコイルの巻数を増減したり、加える電圧や電流を増減してもよい。更に、静電偏向器24の電極間、ギャップを調整し、所定角度だけ、2次電子を偏向させる形態であってもよい。さらに2次電子線は2次電子に限定されるのではなく、後方散乱電子であってもよい。
【0067】
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態に係る電子線装置を図6に示す。図6は、ステンシルマスクを試料とし、このステンシルマスクの検査を行う電子線装置である。この実施形態は、LaB6カソードを有する電子銃212から放出された電子線(1次電子線)をコンデンサレンズ214、及び、長方形の開口を備えた成形開口216に照射させ、成形開口216を通った電子線を照射レンズ218を通過させ、試料であるステンシルマスク234を照射させる。
【0068】
ステンシルマスク234の下流側には、拡大レンズとして、第1の電子レンズ(対物レンズ232)と、更に下流に、第2の電子レンズ(拡大レンズ238)を設ける。ステンシルマスク234を透過した電子線(透過電子線)は、対物レンズ232と拡大レンズ238で二段に拡大され、検出器270に拡大像を作る。上記2段レンズの下流であって透過電子線の経路上にNA開口240を設ける。NA開口240は拡大レンズ238の近傍で検出器側とする。NA開口240の下流には、検出器70を設ける。この実施形態において、検出器270には電子ビームを感知する素子を用いたEBCCDを用いる。検出器で検出された画像は、図1に示す電子線装置10と同様に制御部100に送られ、所定の解析、検査工程が実施される。
【0069】
この実施形態では、電子銃212が作るクロスオーバと対物レンズ232とNA開口240をそれぞれ共役関係とする。更に、1次電子線の経路上に成形開口216を設け、この成形開口216と試料234(試料面)とが共役関係となるように配置する。これにより成形開口216による像は試料234(試料面)に形成される。また、電子銃212が作るクロスオーバ像は対物レンズ232の主面、若しくは、主面近傍に形成される。 以上の構成により開口像に寄与する電子線は対物レンズ232付近では光軸205近くを通るので、検出される像を低収差にすることができる。また、ケーラー照明条件が満たされることとなる。
【0070】
(拡大像の位置)
1段目の電子レンズとしての対物レンズ232によるステンシルマスク234の像(拡大像)を2段目の拡大レンズ(2段目の電子レンズに対応)238の手前、すなわち、上流側にある特定の位置231に結像させたときに検出される像の歪収差が最小になることがシミュレーションで明らかになった。そこで、以下、この拡大像を設ける位置について説明する。なお、このシミュレーションにおける補正パラメータとして、図6に示す拡大像231と拡大レンズ238の距離Lのほか、光軸205からの距離の3乗に比例する3次の歪と、光軸205からの距離の5乗に比例する5次の歪を評価する。
【0071】
拡大像231を設ける位置と拡大レンズ238との距離Lを変化させたときの歪を図7に示す。図中の横軸は上記距離Lを示し、縦軸は計算により求まった歪の大きを示す。そして、図中、左側の曲線が3次の歪S3であり、右側の曲線が5次の歪S5を示す。なお、歪S3が正の値であるのに対して、歪S5は負の値であるので、この図7は両値の絶対値を示す。
【0072】
図に示すように、シミュレーションの結果、両歪(S3,S5)が0になるときの距離Lは一致しないことが判明した。3次の歪S3が0になるのは、距離L3のときであり、5次の歪S5が0になるのは距離L5のときである。即ち3次と5次の歪を同時に0とすることはできない。そこで、この発明では、両者の絶対値がほぼ等しくなる距離L1を適切な距離L1として採用する。この距離L1は、3次と5次の歪収差の絶対値が最小となる値である。
【0073】
上記距離L1としたときの、3次の歪S3と5次の歪S5の歪を図8に示す。図8は、横軸に光軸205からの距離をとり、縦軸に歪をとったものである。歪は光軸205に対して左右対称であるので、図8では右側だけの歪を示す。図中、上に向いた曲線は3次の歪S31、下に向いた曲線は5次の歪S51である。そして、両者の差を符号S71として示す。図に示すように、補正パラメータを最適化することにより、歪を約20%小さくすることができた。これにより、検出される像の歪収差及び倍率色収差を更に小さくすることができる。
【0074】
更に、本発明は、3次と5次の歪収差の絶対値が最小となる距離だけでなく、5次の歪(歪収差)の絶対値が3次の歪(歪収差)の絶対値より5%〜15%大きくなるように距離Lを設定してもよい。5次の歪S5が3次の歪S3より10%大きくなる距離Lを距離L2とする(図7参照)。この距離L2としたときの、3次の歪と5次の歪を求め、その差を図8に符号S72として示す。歪の差S72は、歪の差S71より更に小さくなり、13%となる。
【0075】
この補正パラメータに応じて、一段目の電子レンズ(対物レンズ232、実施形態1であれば対物レンズ32)が作る拡大像の位置を設定するシミュレーションの構成を、実施形態1に用いた図1を参照して説明する。シミュレーションによって、歪収差の3次と5次の値を算出し、それらの絶対値を求めるプログラム113を備える。更に、プログラム113により算出されたそれらの和の絶対値が最小となるか、もしくは、5次の歪の絶対値が3次の歪のそれより5〜15%程度大きくなるように一段目の電子レンズ(拡大レンズ)が作る拡大像の位置を設定するプログラム115とを備える。拡大像の位置は、対物レンズ232における電界の強度を調節することで行う。
【0076】
(試料のZ位置の移動)
ステンシルマスクとして現在2種類が考えられる。一つはマスクの1/4の像をウェーハに縮小する転写装置に使われるマスクと、他の一つは1:1の転写装置(LEEPL)に使われるマスクである。前者は分解能はそれ程必要ないが、マスク面積が25mm×40mm×16=16000mm2と大きく高いスループットが要求される。一方、後者はマスク面積は25mm×40mm=1000 mm2と小さいが、高解像度が要求される。
【0077】
この様な2種類のステンシルマスクを検査するため、ステンシルマスクを透過した透過電子像の倍率を可変にすることが重要になる。収差を悪くしないで倍率を変えるには、ステンシルマスク28と対物レンズ29としての拡大レンズ間の距離、即ち、ワーキングディスタンス31を変えるのがよいことがシミュレーションの結果明らかになった。
【0078】
そこで、本実施形態においては、透過電子像を拡大する拡大率を変えるとき、試料としてのステンシルマスク234と対物レンズ232との間の距離を変化させるようにした。これにより、収差を悪くすること無く透過電子像の倍率を可変にすることが可能となる。
【0079】
ステンシルマスク234を透過した透過電子像の倍率を可変にするため、この実施形態では、ステンシルマスク234の位置を光軸205方向に移動可能とする。図6では、移動後のステンシルマスク234の位置を符号234’と示す。符号234の位置で拡大率が640倍のところ、符号234’に移動させることで、すなわち、対物レンズ232から離すことによって320倍の拡大率となる。このように、この発明は、試料234と対物レンズ232との距離を可変可能とする。
【0080】
この場合の1次電子線は、NA開口240によるクロスオーバの結像条件はそのままとし、成形開口216によるマスク像の結像条件はボケを許容すれば足りる。そこで、望ましい実施形態として、成形開口216には、形状の異なる開口部を複数設ける。図6では、それらを符号216a〜cと示す。上記透過電子像の倍率を変えたとき、成形開口216の寸法を符号216a〜cのいずれかに交換することによって照明領域を変えるのが望ましい。
【0081】
ステンシルマスク234の位置を移動させる手段、言い換えると、試料(ステンシルマスク234)と近接して配置された電子レンズ(対物レンズ232)との距離を調節する手段としては、ステンシルマスク234に何からのアクチュエータを連動させ、移動させる形態で実施可能である。また、ステンシルマスク234を保持するカセットと、そのカセットを受け入れるホルダー部とを設け、カセットごとにステンシルマスク234を保持する位置を変化させ、試料を変更する際には、カセットごと取り替えることで、上記試料と対物レンズとの距離を変更させる形態であってもよい。
【0082】
(対物レンズ301の構造)
2次電子もしくは透過電子の拡大像を作る場合、倍率色収差が十分補正されると、軸上色収差が収差を決める。特に2次電子等の透過率を向上させるには軸上色収差を低減させることが重要になる。図9は大きい開口角で軸上色収差を小さくするための対物レンズ300の構造を示したものである。この対物レンズ300は、図1に示した対物レンズ32あるいは図6に示した対物レンズ29として用いることができる。図9は、対物レンズ300の光軸299に沿った縦断面である。図中の符号299は光軸を示している。対物レンズ300としての電磁レンズは、環状構造をしており、その中心に電子線を通すための経路が形成されている。電磁レンズ300は、その試料側に、環状のレンズギャップ305が試料303側に向いて形成されている。この実施形態においてレンズギャップ305の位置は、光軸299を中心に対称の位置とする。レンズギャップ305の幅は、電磁レンズ300の設計に応じて適宜に設定可能である。
【0083】
このレンズギャップ305を設けた場合の軸上磁場分布が、図中、B1として示されている。従来の構成である光軸側299にレンズギャップ307を設けたときの軸上磁場分布をB2として示す。軸上磁場分布B1において、最大値のZ位置をP1、軸上磁場分布B2において最大値のZ位置をP2とすると、位置P2より位置P1の方が試料303に近い。このように、レンズギャップ305を試料303側に設けることで、最大値を示すZ位置を試料側に形成することができる。これにより、軸上色収差係数を小さくすることができる。
【0084】
更に、電磁レンズ300と試料303との間には2枚の静電レンズ用電極を設けることが望ましい。この実施形態では、電磁レンズ300と試料303との間に静電レンズとしての電極309と、311とを設ける。そして、電極309に正の高電圧を印加し、電極311と電磁レンズ磁極301とを接地することによってこれらの構成はユニポテンシャルレンズとして機能する。また、試料303に負の高圧を印加することによっても、減速電界レンズとして機能させることができ、軸上色収差をさらに小さくできる。
【0085】
電磁レンズ300のレンズギャップ305と光軸299との間の距離L10を変えることによって、軸上磁場分布のピークを、二枚の静電レンズ(309、311)のうち、電極309の位置に合せることによって収差を小さくすることもできる。図中、その位置を符号P3と示す。なお、電極309は電磁レンズ300側に配置された電極である。
【0086】
(実施形態3)
本発明の第3の実施形態は、本発明の電子線装置をデバイス製造に適用した実施形態である。図10は、デバイス製造工程を示すフローチャート、図11は、図10のウェーハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィ工程を示すフローチャートである。図10及び図11を参照して、デバイス製造工程を説明する。
【0087】
デバイス製造工程は、以下の各主工程を含んでいる。
(1) ウェーハを製造するウェーハ製造工程(又はウェーハを準備するウェーハ準備工程)。(ステップ10)
(2) 露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)。(ステップ11)
(3) ウェーハに必要な加工処理を行うウェーハプロセッシング工程。(ステップ12)。
(4) ウェーハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にするチップ工程(チック組み立て工程)。(ステップ13)
(5) 完成したチップを検査するチップ検査工程。(ステップ14)
尚、これら主工程には更にいくつかのサブ工程からなっている。
【0088】
これら主工程の中で、デバイスの性能に影響を及ぼす主工程は、ウェーハプロセッシング工程(ステップ12)である。このウェーハプロセッシング工程では、設計された回路パターンをウェーハ上に順次積層し、チップを多数形成する。
【0089】
このウェーハプロセッシング工程(ステップ12)は、以下のサブ工程を含んでいる。
(A)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)。
(B)この薄膜層やウェーハ基板を酸化する酸化工程。
(C)薄膜層やウェーハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストのパターンを形成するリソグラフィー工程。
(D)レジストのパターンに従って薄膜層やウェーハ基板を加工するエッチング工程(ドライエッチング等)。
(E)イオン・不純物注入拡散工程。
(F)レジスト剥離工程。
(G)加工されたウェーハを検査する検査工程。
尚、ウェーハプロセッシング工程(ステップ12)は、多層ウェーハの場合には層数だけ繰り返し行い、デバイスを製造する。
【0090】
図11を参照して、上記(C)リソグラフィー工程を説明する。
リソグラフィー工程は、以下の各工程を含んでいる。
(C1)回路パターンが形成されたウェーハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程。(ステップ20)
(C2)レジストを露光する露光工程。(ステップ21)
(C3)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程。(ステップ22)
(C4)現像されたレジストパターンを安定化させる為のアニール工程。(ステップ23)
以上のデバイス製造工程、ウェーハプロセッシング工程、リソグラフィー工程については、周知であるのでこれ以上の説明は省略する。
【0091】
上記(G)加工されたウェーハを検査する検査工程に、本発明の電子線装置、検査装置を用いることによって、検出される画像を低収差にすることができ、精度の高い検査を行うことができる。
【0092】
(実施形態4)
本発明の第4の実施形態は、上記電子線装置を用いてステンシルマスクの検査工程を行うことを特徴とするデバイス製造方法である。このデバイスの製造方法も実施形態3とほぼ同様である。図10の参照して、デバイス製造工程を説明する。
【0093】
このデバイス製造工程は、以下の各主工程を含んでいる。
(1) ウェーハを製造するウェーハ製造工程(又はウェーハを準備するウェーハ準備工程)。(ステップ10)
(2) 露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)。(ステップ11)
(2’) 製造したマスクの検査工程(ここで、上記電子線装置を利用した検査装置を用いる)。(ステップ11a)
(3) ウェーハに必要な加工処理を行うウェーハプロセッシング工程。(ステップ12)。
(4) 検査を終えた前記マスクを用いて、各種チップを製造する工程。具体的に、ウェーハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にするチップ工程(チック組み立て工程)。(ステップ13)
(5) 完成したチップを検査するチップ検査工程。(ステップ14)
また、前記電子線装置は、ウエハプロセッシング工程におけるリソグラフィ工程に用いることもできる。この場合、薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するために前記電子線装置によって検査されたマスクを用いてレジストパターンを形成する。
【0094】
上記(2’)の検査工程に本発明に係る欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有するステンシルマスクでも、スループット良く検査できるので、欠陥製品の製造防止が可能となる。
【0095】
【発明の効果】
1.本発明では、対物レンズの主面近くに開口あるいは開口像を設けるので、パターン像に寄与する電子線は対物レンズ付近では光軸近くを通るので、低収差にできる。更に、成形開口の形状を調整することで2次電子の強度を一様にできる。
2.E×B分離器を最終の電子レンズと検出器の間に配置したので多少偏向収差があっても、ピクセルサイズに比べて小さい収差に押さえられる。
3.電磁偏向量を静電偏向量の2倍にすることで、エネルギの異なる電子線もほぼ同程度偏向させることができ、その結果、偏向色収差量を小さくできる。
4.第2の実施形態では二段レンズで倍率色収差を低減して歪も小さい値にできるので、ステンシルマスクを高精度で検査できる。更に、試料であるステンシルマスク位置を光軸上で変化させることによって収差を増さないで倍率を変えることができる。
5.レンズギャップを試料側に設けることで軸上色収差の小さいレンズ構造ができる。更に、電磁レンズと静電レンズを組み合わせることで、更に、軸上色収差を小さくすることができる。
6.1次電子線はケーラー照明条件を満たし、また、二段の電子レンズを構成することで、光路長の短い1次光学系ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の電子線装置の全体図。
【図2】本発明の第1の実施形態の電子線装置の一部の詳細図。
【図3】余弦法則の説明図。
【図4】図4(a)は成形開口の平面図、図4(b)は成形開口を通って試料面上に照射される1次電子線の像の強度分布図。
【図5】図4(b)の各断面における1次電子線の強度分布図。
【図6】本発明の第2の実施形態の電子線装置の一部の詳細図。
【図7】拡大像を設ける位置と拡大レンズとの距離Lを変化させたときの歪の説明図。
【図8】3次と5次の歪の説明図。
【図9】対物レンズ(電磁レンズ)の概略断面図又は端面図。
【図10】デバイス製造工程を示すフローチャート。
【図11】リソグラフィ工程を示すフローチャート。
【符号の説明】
10 電子線装置
12、212 電子銃
16、216 成形開口
20 E×B分離器
26 共役面
32、232 対物レンズ
34、234 試料
34a、234a 試料面
38、238 拡大レンズ
40、240 NA開口
70、270 検出器
100 制御部
231 拡大像
【発明の属する技術分野】
本発明は、最小線幅0.1μm以下のパターンを有する試料の評価を高スループット且つ高信頼性で行う電子線装置に関するものであり、更に、そのような装置を用いるデバイス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ステンシルマスクなどの各種マスクの欠陥検査工程やフォトマスク工程において、1次電子線を試料に入射させ、試料から放出される2次電子を像として拡大して、その像をCCD検出器あるいはTDI検出器で検出して検査(光方式検査)が行われていた。また、そのような電子線装置も公知である。先行する特許出願としては次のものが上げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平11−132975
【特許文献2】特開平 7−249393
【特許文献3】特願2000−193104
【特許文献4】特願2000−229101
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の電子線装置では、2次光学系の2次電子の透過率が小さく、必要なS/N比の像を得るためには1次電子線を多量に入射させる必要があり、そのため試料面が帯電する問題点があった。更に、透過率を向上させるとするとビームのボケが大きくなり、像のコントラストが低下してしまう問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、次の特徴を備える電子線装置である。
「1」(図2:共役関係:電子銃12が作るクロスオーバ−NA開口40−対物レンズ32の主面)
本発明は、検査対象である試料の試料面に電子銃より放出された1次電子線を入射させ、その試料から放出される2次電子線により形成される電子像を拡大して検出する電子線装置に於いて、前記1次電子線と前記2次電子線とに共通する経路上にNA開口を設け、前記試料面の近くに電子レンズを設け、前記1次電子線に関し、前記電子銃が作るクロスオーバと前記電子レンズの主面と前記NA開口とが、それぞれ共役関係にあることを特徴とする。
【0006】
「2」 望ましくは、前記電子レンズの主面もしくは主面近傍に、前記NA開口の前記電子レンズ側に配置された電子レンズ(38)によりNA開口像を形成することを特徴とする。
【0007】
「3」 更に、前記1次電子線の経路上に成形開口を設け、
前記成形開口と前記試料面を共役面とし、前記1次電子線による電子銃のクロスオーバ像をNA開口と対物レンズ主面とに形成することを特徴とする。これにより、低収差となるので同じ収差ではNA開口を大きくできるので2次電子の透過率が高く、少量の1次電子線であっても、充分なS/N比の像を得ることが可能となる。
【0008】
本発明によれば、クロスオーバ像、NA開口、対物レンズ主面が共役となり、成形開口と成形開口像と試料面が共役となっている。
【0009】
「4・5」(ビーム形状、その強度)
上記したように本発明は、NA開口の像を上記試料面の近くに配した電子レンズの主面近くに形成される様にした。その構成を図2に示す。上記電子レンズを図2中、符号32とし、以下対物レンズ32とする。上記構成により、試料面34aからNA開口40を通る2次電子のみが2次光学系に受け入れられ検出される。その様子を図3に示す。
【0010】
試料からの2次電子は符号43で示す余弦法則に従って放出される。即ち、放出点Oから任意角度方向へ放出される2次電子の強度は放出点Oと符号43で示す円周との交点迄の距離に比例する。従って、試料の視野の中央から放出された2次電子の内、2次光学系に受け入れられる量は符号41で示す角錐と余弦法則による球状(その一断面を円周43と示す)で囲まれた体積に比例する。一方、視野の右端から放出される2次電子のうち、2次光学系に受け入れられるものは符号42で示す角錐の範囲内である。
【0011】
角錐41と角錐42とは、その頂点の角度αが同じであるにも関わらず、その体積は角錐41のほうが大きい。角錐41は円弧ABを含み、角錐42は円弧CDを含む。両角錐(41、42)の比較により、右端から放出される2次電子は、試料34の中央(光軸11上)から放出される2次電子より少ない。従って、光軸11上は明るく、光軸11から離れた位置の2次電子線は暗くなる傾向となる。
【0012】
そこで、本発明は、1次電子線を試料面に照射し、試料から放出される2次電子を像として拡大し検出する電子線装置に於いて、試料面に入射させる1次電子線のビーム形状を光軸近くで強度が小さく、光軸から離れた場所では強度が大きい分布を有することを特徴とする。同様に、本発明は、上記電子線装置において、試料面に入射させる1次電子線のビーム形状を光軸近くで強度が小さく、光軸から離れた場所では強度が大きい分布を有することを特徴とする。これにより、2次光学系に受け入れられる2次電子は光軸からの距離に依存せず、一定になるので、検出信号強度も光軸からの距離に依存せず一定となる。
【0013】
「6・7」(E×B分離器の位置)
また本発明は、検出される像の歪収差を小さくするために、1次電子線をE×B分離器を用いて試料面に垂直に入射させ、前記試料面から放出される2次電子を少なくとも2段の電子レンズで像として拡大させ、検出する電子線装置において、前記2次電子線の経路において最も下流に位置する電子レンズと検出器との間に前記E×B分離器を配置することを特徴とする。同様に、本発明は、上記電子線装置において、2次電子の経路上に少なくとも2段の電子レンズを配し、前記E×B分離器を前記2段の電子レンズのうち下流に位置する電子レンズと検出器との間に配置することを特徴とする。
【0014】
「8・9」(偏向量、電場の2倍)
E×B分離器は通過する電子線を任意の方向に偏向させる機能を備える。しかし、上記偏向させる程度は、電子線のエネルギによって微妙に異なっている。一般に、エネルギの小さな電子線ほど大きく偏向される。
【0015】
そこで、本発明は、1次電子線をE×B分離器を用いて試料面に垂直に入射させ、試料から放出される2次電子を像として拡大して検出する電子線装置に於いて、前記E×B分離器は、磁場による2次電子の偏向量が電場によるものの2倍程度であることを特徴とする。同様に、上記電子線装置に於いて、前記E×B分離器は、磁場による2次電子の偏向量が電場によるものの2倍程度であることを特徴とする。これにより、通過する電子線のエネルギにバラツキがあったとしても、近似できる程度、同じ方向に偏向される。その結果、検出器はより解像度の良い2次電子線を得ることができる。
【0016】
「10」上記発明の具体的構成の一つは、上記電子線装置において、前記E×B分離器は、4000ev程度の2次電子を偏向させるよう設定され、かつ、2次電子線の光軸に対して2次電子線を7°〜15°偏向させるよう設定されていることを特徴とする。
【0017】
「11」(図6:共役関係 電子銃212が作るクロスオーバ−対物レンズ232−NA開口240)
また、本発明は、マスクの検査に用いられる電子線装置としても実施可能である。本発明は、検査対象である試料に、電子銃より放出された1次電子線を透過させ、その透過した透過電子線により形成される電子像を拡大して検出する電子線装置に於いて、前記透過電子線の経路上にNA開口を設け、前記試料の近くに電子レンズを設け、前記1次電子線及び前記透過電子線に関し、前記電子銃が作るクロスオーバと前記電子レンズと前記NA開口とが、それぞれ共役関係にあることを特徴とする。
【0018】
「12」望ましくは、上記電子線装置において、前記電子レンズの主面もしくは主面近傍に、前記透過電子線による電子銃のクロスオーバ像を形成することを特徴とする。
【0019】
「13」(もう一つの共役関係:成形開口216−試料234)
更に、本発明は、上記電子線装置において、前記1次電子線の経路上に成形開口を設け、前記1次電子線に対して、前記成形開口と前記試料を共役関係となるように配置し、前記1次光学系による成形開口の像を、前記試料面に形成することを特徴とする。これにより、必要十分な領域のみを電子線照射できるので、試料の温度上昇、放射線損傷等を最小限に保てる。少量の1次電子線であっても、充分なS/N比の像を得ることが可能となる。
【0020】
「14・15」(拡大像を2段目レンズ前に形成)
また、本発明は、試料面から放出される2次電子あるいは試料から透過した電子像を少なくとも2段の電子レンズで拡大して検出する電子線装置に於いて、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を2段目の電子レンズより上流の特定の位置に合せることによって歪収差あるいは倍率色収差を小さくすることを特徴とする。同様に、上記電子線装置において、前記透過電子線の経路上に少なくとも2段の電子レンズを設け、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を2段目の電子レンズより上流の特定の位置に合せることを特徴とする。これにより、検出される像の歪収差をより小さくすることができる。
【0021】
「16・17」(補正パラメータ最適化)
1次電子線を試料に照射し、試料から放出された2次電子像、あるいは、試料を透過する透過電子像を拡大して像として検出する電子線装置もしくは上記電子線装置に於いて、像の歪収差をシュミレーション計算し、歪収差の3次の絶対値と5次の絶対値との差を求め、前記差が最小となるか、もしくは5次の絶対値が3次の絶対値より5〜15%程度大きくなる様に、補正パラメータを最適化し、前記最適化された補正パラメータに応じて、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を設定することを特徴とする。
【0022】
「18・19」(拡大率の調整、試料位置移動)
ステンシルマスクとして現在2種類が考えられる。一つはマスクの1/4の像をウェーハに縮小する転写装置に使われるマスクと、他の一つは1:1の転写装置に使われるマスクである。前者は分解能はそれ程必要ないが、マスク面積が25mm×40mm×16=16000mm2と大きい。一方、後者はマスク面積は25mm×40mm=1000 mm2と小さいが、高解像度が要求される。
【0023】
この様な2種類のステンシルマスクを検査するため、ステンシルマスクを透過した透過電子像の倍率を可変にすることが重要になる。収差を悪くしないで倍率を変えるには、ステンシルマスク28と対物レンズ29としての拡大レンズ間の距離、即ち、ワーキングディスタンス31を変えるのがよいことがシミュレーションの結果明らかになった。
【0024】
そこで、本発明は、試料を透過した電子を前記試料に近接して配置された電子レンズで透過電子像として拡大し、CCD又はTDI又はEBCCDのいずれかで検出する電子線装置に於いて、前記透過電子像を拡大する拡大率を変えるとき、前記試料と前記対物レンズとの間の距離を変化させることを特徴とする。同様に、上記電子線装置において、一つの試料を解像度の異なる他の試料に変更する際に、前記試料に近接して配置された電子レンズと前記試料との距離の調節手段を設けたことを特徴とする。これにより、収差を悪くすること無く透過電子像の倍率を可変にすることが可能となる。
【0025】
「20」(従属項:磁気レンズ、ギャップが試料側)
二次電子や透過電子の拡大像を作る場合、倍率色収差が十分補正されると、軸上色収差が収差を決める。特に2次電子の透過率を向上させるには軸上色収差を低減させることが重要になる。そこで、本発明は、上記電子線装置に於いて、前記試料面の近くに設けた電子レンズは、コアのギャップが試料側にある電磁レンズを含んでいることを特徴とする。これにより、軸上磁場分布はギャップ位置より試料65側に最大値を形成できるので、軸上色収差係数を小さくすることができる。
【0026】
「21」(従属項:半導体デバイス製造方法:ウェーハのチェック)
本発明は、上記記載の電子線装置を用いて、前記被検査試料であるところの半導体ウェーハの欠陥を検査することを特徴とする半導体のデバイス製造方法である。
【0027】
具体的一例は、以下の各ステップを備える半導体デバイスの製造方法である。
・ ウェーハを製造するウェーハ製造工程(またはウェーハを準備するウェーハ準備工程)
・ 露光に使用するマスクを製作するマスク製造工程(またはマスクを準備するマスク準備工程)
・ ウェーハ上に形成されたチップを一個ずつ切り出し、動作可能にするチップ工程
・ 前記電子線装置を用いて完成したチップを検査する検査工程
【0028】
「22」(従属項:半導体デバイス製造方法:マスクのチェック)
発明は、上記記載の電子線装置を用いて欠陥検査を行ったマスクを使うことを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。
【0029】
具体的一例は、以下の各ステップを備える半導体デバイスの製造方法である。
・ マスクを製造する工程
・ 製造された前記マスクを前記電子線装置を用いて検査を行う工程
・ 検査を終えた前記マスクを用いて、各種チップを製造する工程
また、前記電子線装置は、ウエハプロセッシング工程におけるリソグラフィ工程に用いることもできる。この場合、薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するために前記電子線装置によって検査されたマスクを用いてレジストパターンを形成する。
【0030】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明における電子線装置及びこの電子線装置を用いた検査装置であり、図左側に電子線装置10を、図右側に制御部100を示す。図2は電子線装置10の詳細な構成を示す。
【0031】
(電子線装置10)
電子線装置10は、その略構成として、電子ビームを放出する電子銃12、その下流側に電子ビームを任意の矩形に成形する成形開口16、一次電子線と二次電子線とを分離するE×B分離器20、結像された電子ビームを拡大する機能を備えた電子レンズ(拡大レンズ38)、試料34とその試料34を支える試料台36と、上記試料の試料面34aの近くに設けられた電子レンズ(対物レンズ32)を備える。また、1次経路上及び2次経路上にNA開口40を設け、2次経路上に検出器70を設ける。
【0032】
電子銃12は、電子放出材12aを加熱することにより電子を放出する熱電子線源タイプが用いられている。カソードとしての電子放出材(エミッタ)は、ランタンヘキサボライド(LaB6)が用いられている。高融点(高温での蒸気圧が低い)で仕事関数の小さい材料であれば、他の材料を使用することが可能である。本実施形態においては、電子銃12は、先端曲率半径30μmRと小さい単結晶LaB6カソード12aを有し、空間電荷制限条件で動作させる事により、高輝度でしかもショット雑音の小さい電子線を放出することができるようになっている。また、ウェーネルト12bとアノード12c間の距離を8mm以上に大きくし、電子銃電流を高輝度になる条件を探せば輝度をラングミュア制限より大きい値にすることもできる。
【0033】
このように、本実施形態における電子銃12は、熱電子カソード12aを有し、空間電荷制限条件にて動作するものが望ましい。また、電子銃12には、FE(フィールドエミッタ)、TFE(サーマルフィールドエミッタ)、ショットキーカソードを有する光源像の小さな電子銃を用いてもよい。なお、上記「空間電荷制限条件」とは、カソードの温度をある一定以上に高めて、電子線の放出量がカソードの温度に影響されにくい条件をいう。
【0034】
電子銃12の放出方向に向けて(図中右斜下)、第1の電子レンズが設けられ、これをコンデンサレンズ14とする。更に1次電子線の経路上の下流には、成形開口16と第2の電子レンズを設ける。この第2の電子レンズを照射レンズ18とする。電子銃12から放出された1次電子線は、コンデンサレンズ14で収束され、成形開口16を照明する。成形開口16を通ることにより所望の形状に成形された成形ビームとなり、偏向器(図中省略)で任意に偏向されることで試料34の被検査領域のある瞬間での領域を照射する。
【0035】
この実施形態においては、成形開口を光路に沿って2枚配置し、その間に偏向器を入れ偏向器を調節することにより、可変成形ビームにすることにより、照射領域を調節することも可能であるが、成形開口16を寸法の異なる複数の開口で代用させ、機械的に照射領域を調整する方式は鏡筒長を短くできるメリットがある。
【0036】
この実施形態は、一つもしくは複数の偏向器により、1次電子ビームを偏向させ、これとステージの移動とで試料全体を走査するものであるが、上記各レンズ(14、18)いずれかの焦点距離を変えることにより小径のクロスオーバ像を、試料面34a上に形成、走査するようにしてもよい。また、成形開口を複数設け、その重なりを小さくして小径の電子線を形成し、この電子線を走査させレジストレーションに利用するようにしてもよい。
【0037】
成形開口16を通過し、試料34を照射する電子線の照射領域は、長辺と短辺とを有する長方形々状が望ましい。そして、上記照射領域の長辺方向の画像形成は同時に行い、上記試料台36を短辺方向に移動させることで、上記照射領域の短辺方向の連続移動を行う。試料台36を連続移動させながら検査を行うので、主視野の幅が小さくても高スループットで検査が行える。
【0038】
上記照射レンズ18の下流には、E×B分離器を設ける。試料面34aに対して斜めに照射された電子ビームは、E×B偏向器20により、偏向され、試料面34aに対して垂直方向となる。偏向させる角度は適宜に決定すればよく、この実施形態では5°〜30°の範囲内とする。
【0039】
E×B分離器20より下流には、2次光学系の収差を小さくする役割を備えたNA開口40とダブレットレンズ(ダブルの電子レンズ)を設ける。ダブレットレンズにおいて、便宜上、試料34に近いものを一段目とし、対物レンズ32とする。E×B分離器20に近いものを二段目とし、拡大レンズ38とする。E×B分離器と試料34との間は、NA開口40、拡大レンズ38、対物レンズ32、試料34の順で配置する。
【0040】
電子ビームが試料面34aに照射されると2次電子線が放出され、この2次電子線は上記ダブレットレンズ(32、38)とNA開口40を通過する。NA開口40により2次電子の収差は小さくなる。その後、2次電子線はE×B偏向器20で所定角度偏向される。この実施形態では5°〜20°の範囲内とする(図では、電子銃12の反対側に10°傾ける)。偏向された2次電子線の向きに対して、垂直となるよう検出器70を配する。2次電子線は検出器70を垂直に照射する。
【0041】
(検出器70)
検出器70は、像質を落とさないで電子を増倍するMCP(マルチチャンネルプレート)と、FOP(ファイバオプティカルプレート)とを備えていてもよい。電子線が照射される方向に沿って、MCP及びFOPの順で設けられている。検出器70は、更に、真空窓と、リレー光学系としての光学レンズ、複数の画素を有する検出センサとしてのTDI検出器とを備えている。
【0042】
なお、この検出器70の構成は、上記構成に限ることはなく、MCPを用いない形態のほか、電子ビームに反応する素子を用いたCCD(EBCCD)を用いて構成されてもよい。
【0043】
(制御部100)
制御部100は、図1に例示されたように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体101と、制御部本体101の処理結果を表示するCRT103と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部105と、を備える。もちろん、上記構成は、検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御部100を構成してもよい。
【0044】
制御部本体101は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器70から受信した電気信号即ち試料34から放出された2次電子線による画像のデジタル画像データを記憶するための電子画像記憶領域107が割り当てられている。また、ハードディスク上には、予め欠陥の存在しない試料の基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部109が存在する。更に、ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域107から電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従って試料34の欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム111が格納されている。この欠陥検出プログラム111は、基準画像記憶部109から読み出した基準画像と、実際に検出された電子線画像とをマッチングして、欠陥部分を自動的に検出し、欠陥有りと判定した場合、オペレータに警告表示する機能を備える。また、隣のチップの同一場所の検出された電子画像同志、あるいは同一チップ内の異なる場所の同一セルでの検出画像同志をマッチングすることもできる。このとき、CRT103の表示部に電子画像103aを表示するようにしてもよい。
【0045】
(本実施形態の特徴)
(1)NA開口像の結像
本実施形態に係る電子線装置においては、1次電子線と2次電子線とに共通する経路上にNA開口40が設けられている。更に、対物レンズ32は試料34の近くに配置する。そして、1次電子線に関し、電子銃12が作るクロスオーバと対物レンズ32の主面とNA開口40とが、それぞれ共役関係となるように配置する。これにより、電子銃12が作る光源像はNA開口40において結像され、更に、NA開口40の像は、対物レンズ32の主面もしくは主面近傍に結像される。これにより、1次電子線が、対物レンズ32の主面もしくは主面近傍において光軸付近に集中し、光束を小さくでき、これによって、収差を小さくすることができる。
【0046】
また、この実施形態では、成形開口16と試料面34aを共役面とする。また、電子銃12のクロスオーバ像をNA開口40に形成する。この実施形態では、以上の構成により、光源像がNA開口40に結像し、成形開口16の開口像が試料面に結像する条件が満たされ、ケーラ照明条件をも充足する。以上の構成により、NA開口の像が対物レンズに結像されるので対物レンズでの光束が小さく低収差にすることができる。
【0047】
また、この実施形態では、1次電子線はケーラー照明条件を満たし、また、二段の電子レンズ(対物レンズ32、拡大レンズ38)を構成する。これにより、光路長の短い1次光学系ができる。
【0048】
上記したように本実施形態においては、NA開口による像を試料面の近くに配した電子レンズとしての対物レンズ32の主面もしくはその近くに形成される様にした。かかる構成により、2次電子は、試料の視野の中央ないしはその端から放出されたものも対物レンズ32の中央方向へ向かうもののみが2次光学系で受け入れられるので、対物レンズでの光束が小さく低収差となる。
【0049】
2次電子の強度分布が不均一になる理由を図3に示す余弦法則に基づいて説明する。
【0050】
試料からの2次電子は符号43で示す余弦法則に従って放出される。即ち、放出点Oから任意角度方向へ放出される2次電子の強度は放出点Oと符号43で示す円周との交点迄の距離に比例する。従って、試料の視野の中央から放出された2次電子の内、2次光学系に受け入れられる量は、符号41で示す角錐と余弦法則による球状(その一断面を円周43と示す)で囲まれた体積に比例する。一方、視野の右端から放出される2次電子のうち、2次光学系に受け入れられるものは、符号42で示す角錐の範囲内である。
【0051】
角錐41と角錐42とは、その頂点の角度αが同じであるにも関わらず、その体積は角錐41のほうが大きい。角錐41は円弧ABを含み、角錐42は円弧CDを含む。両角錐(41、42)の比較により、右端から放出される2次電子は、試料34の中央(光軸11上)から放出される2次電子より少ない。従って、光軸11上は明るく、光軸11から離れた位置の2次電子線は暗くなる傾向となる。
【0052】
この実施形態に係る電子線装置は、レンズなどの配置がテレセントリックにはなっていない(テレセントリックにおいては、光軸でも光軸から離れた箇所でも、1次電子線が試料面に対して垂直に照射される)。そのため、1次電子線は、光軸もしくはその近傍において、試料面に対して垂直に照射されるが、光軸から離れれば離れるほど傾斜して試料面に対して照射され、試料面上での光軸から離れた端の部分における1次電子線の強度が弱くなり、放出される2次電子線の強度も弱くなることになる。したがって、成形開口を図4に示すようにな形状にして、成形開口の端を通る1次電子線の量を大きくし、これによって、試料面上での光軸から離れた端の部分における1次電子線の強度を強くし、試料面の端に対して傾斜して照射されても、放出される2次電子線の強度を結果として、試料面上での光軸部分と同程度となるようにした。
【0053】
すなわち、本実施形態においては、1次電子線を試料面に照射し、試料から放出される2次電子を像として拡大し検出する電子線装置に於いて、試料面に入射させる1次電子線のビーム形状を光軸近くで強度が小さく、光軸から離れた場所では強度が大きい分布を有するようにすることにより、2次光学系に受け入れられる2次電子は光軸からの距離に依存せず、一定になるようにし、検出信号強度も光軸からの距離に依存せず一定となるようにした。
この点について、以下にさらに詳細に説明する。
【0054】
(2)成形開口像
上述したように、対物レンズ32の主面、もしくは、主面近傍に、NA開口像が結像する。この場合、放出される2次電子の量は光軸近くで大きく、光軸から離れると小さくなる問題が生ずる。この問題を解決するために、本実施形態における成形開口16の形状を図4(a)に示すようにした。この図は、成形開口16の開口を光軸11の上流側から下流側に向けて示すものである。図中、符号16a(開口形状)で囲まれる領域の内側は、開口部16bであって、1次電子が通過する領域である。符号16aの外側は、開口枠16cであって1次電子を遮断する。
【0055】
図に示すように、開口部16bの中央付近(光軸11付近)の開口幅W1は、一定とする。中央付近から所定距離分両端方向に離れると、開口幅を徐々に拡大させ、両端では、その幅を開口幅W2とする。開口部W2の幅は1次光学系のビームボケより狭くする。開口幅W1と開口幅W2との比率は、2次電子線の強度が光軸11付近とその他の部分で同程度となるようにする。本実施形態では開口幅W1に対して開口幅W2を1.5ないし4倍程度とする。
【0056】
成形開口の開口部16bを通過し、試料面34aに到達した1次電子線の照射強度を図4(b)に示す。開口部16bを通過した1次電子線は、光軸からの距離に依存して増加する。図4(b)に示すように、開口部16bを通過し、レンズ38と32とで試料上34aに結像された1次電子線の外形17aは、略長方形々状となる。
【0057】
外形17aの内側に示される曲線は、1次電子線の大きさを示す等高線17b〜17eである。等高線17bから等高線17eに向けて、その量は大きくなっている。量が両端に向けて大きくなるのは、開口部16bの形状が、両端に向けて大きくなっているため、両端側の方が、開口部16bを通過する電子ビームが多いからである(開口幅W2>開口幅W1)。
【0058】
照射強度がもっとも大きいのは、図4(b)の中でA−A断面であり、その強度分布を図5に符号Aと示す。図5は、横軸に照射幅を、縦軸に照射強度を示すものである。B−B断面における強度分布を符号Bと、C−C断面(中央)における強度分布を符号Cと示す。図5に示すように、上記各断面の横軸方向の幅はすべて等しい。一方、その高さが異なることから、同じ幅を有する電子線であっても、その強度は光軸11からの距離に応じて異なっていることが分かる。照射強度はA−A断面が最も大きく、B−B断面及びC−C断面の順で小さくなる。このような強度分布を有する1次電子線で試料面34aを照射すれば、2次電子系に受け入れられる2次電子は光軸11からの距離に依存せず、一定となる。また、開口形状16aを適宜に調整することにより、2次電子の強度を一様にすることができる。本実施形態は、上述したように、テレセントリック照明ではない。
【0059】
(3)(E×B分離器20)
次にE×B分離器20の機能について述べる。図2に示すようにE×B分離器20は電磁偏向器22と静電偏向器24から構成されている。静電偏向器24は電磁偏向器22の内側に配置される。静電偏向器24と電磁偏向器22との偏向量が1:2になるように構成されている。試料面34aから放出される2次電子の光軸方向を基準線60と示す。静電偏向器24と電磁偏向器22との偏向量が1:2になるように構成したので、2次電子が二段目の拡大レンズ38からE×B分離器20に入射すると電磁偏向器22で基準線60から右へ20度偏向され、同時に、静電偏向器24で左へ10度偏向される。これにより、基準線60に対して2次電子の光軸は、差し引き右へ10度偏向される。検出器70は、基準線60から10度右へ傾いた軸200に直角となるよう配置される。検出器70はE×B分離器20から所定の距離だけ離して配置する。上記したように、この実施形態は、2次電子を電場と磁場の双方により偏向させる。そして、その偏向感度は、磁場による偏向を右に20°とし、電場による偏向を左に10°とするように、磁場による偏向を電場によるものの反対方向とし、かつ、2倍とする。
【0060】
4502eVのエネルギの2次電子を電磁偏向器22で右に20°偏向させるよう設定され、静電偏向器24において左に10°偏向させるよう設定されたE×B分離器20において、4501eVの2次電子線の偏向角は次の通りである。
【0061】
まず、電磁偏向器22による偏向角は(4502/4501)1/2×20°右へ偏向される。次に、静電偏向器24での偏向角は(4502/4501)×10°左へ偏向される。そして、その差を求めると、
【0062】
【数1】
【0063】
となる。このように静電偏向器24と電磁偏向器22との偏向の差は約−10°となり、4501eVの電子線も4502eVの電子線と同様に右に10°偏向することが分かる。即ち、この実施形態により、異なるエネルギの2次電子であっても、E×B分離器20で同じ角度偏向される。これにより、偏向色収差量を小さくすることができる。偏向させる角度としては、7°〜15°程度が望ましい。また、対象とする電子線のエネルギも4500eVに限定する必要はなく、4500eV程度、もしくは、4000eV〜5000eV程度で実施は可能である。
【0064】
更に、本発明は、2次電子の経路上に二段のレンズを配置し(対物レンズ32と拡大レンズ38)、そして、E×B分離器20は、2次電子線経路において最も下流に配置された拡大レンズ38より下流側、すなわち、拡大レンズ38と検出器70との間に配置する。更に、本実施形態では、E×B分離器20の位置を拡大レンズ38に対して検出器70側とする。
【0065】
これにより、静電偏向器24と電磁偏向器22との偏向感度が1:2からわずかに狂っていても、E×B分離器20と検出器70との間の距離が短いため、偏向色収差があっても、検出器70上ではサブミクロンの収差量となる。更に、検出器70上においてピクセル寸法は拡大されている(例えば、50nmピクセルで640倍とすれば32μmピクセルサイズとなる)ので、半導体デバイスの検査精度において、上記収差量は全く問題とならない。特に、この実施形態は、E×B分離器20の位置を拡大レンズ38より検出器70側とすることで、その収差量を更に小さくすることができる。
【0066】
2次電子線を偏向させるためのE×B偏向器20の構成としては、電磁偏向器22のコイルの巻数を増減したり、加える電圧や電流を増減してもよい。更に、静電偏向器24の電極間、ギャップを調整し、所定角度だけ、2次電子を偏向させる形態であってもよい。さらに2次電子線は2次電子に限定されるのではなく、後方散乱電子であってもよい。
【0067】
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態に係る電子線装置を図6に示す。図6は、ステンシルマスクを試料とし、このステンシルマスクの検査を行う電子線装置である。この実施形態は、LaB6カソードを有する電子銃212から放出された電子線(1次電子線)をコンデンサレンズ214、及び、長方形の開口を備えた成形開口216に照射させ、成形開口216を通った電子線を照射レンズ218を通過させ、試料であるステンシルマスク234を照射させる。
【0068】
ステンシルマスク234の下流側には、拡大レンズとして、第1の電子レンズ(対物レンズ232)と、更に下流に、第2の電子レンズ(拡大レンズ238)を設ける。ステンシルマスク234を透過した電子線(透過電子線)は、対物レンズ232と拡大レンズ238で二段に拡大され、検出器270に拡大像を作る。上記2段レンズの下流であって透過電子線の経路上にNA開口240を設ける。NA開口240は拡大レンズ238の近傍で検出器側とする。NA開口240の下流には、検出器70を設ける。この実施形態において、検出器270には電子ビームを感知する素子を用いたEBCCDを用いる。検出器で検出された画像は、図1に示す電子線装置10と同様に制御部100に送られ、所定の解析、検査工程が実施される。
【0069】
この実施形態では、電子銃212が作るクロスオーバと対物レンズ232とNA開口240をそれぞれ共役関係とする。更に、1次電子線の経路上に成形開口216を設け、この成形開口216と試料234(試料面)とが共役関係となるように配置する。これにより成形開口216による像は試料234(試料面)に形成される。また、電子銃212が作るクロスオーバ像は対物レンズ232の主面、若しくは、主面近傍に形成される。 以上の構成により開口像に寄与する電子線は対物レンズ232付近では光軸205近くを通るので、検出される像を低収差にすることができる。また、ケーラー照明条件が満たされることとなる。
【0070】
(拡大像の位置)
1段目の電子レンズとしての対物レンズ232によるステンシルマスク234の像(拡大像)を2段目の拡大レンズ(2段目の電子レンズに対応)238の手前、すなわち、上流側にある特定の位置231に結像させたときに検出される像の歪収差が最小になることがシミュレーションで明らかになった。そこで、以下、この拡大像を設ける位置について説明する。なお、このシミュレーションにおける補正パラメータとして、図6に示す拡大像231と拡大レンズ238の距離Lのほか、光軸205からの距離の3乗に比例する3次の歪と、光軸205からの距離の5乗に比例する5次の歪を評価する。
【0071】
拡大像231を設ける位置と拡大レンズ238との距離Lを変化させたときの歪を図7に示す。図中の横軸は上記距離Lを示し、縦軸は計算により求まった歪の大きを示す。そして、図中、左側の曲線が3次の歪S3であり、右側の曲線が5次の歪S5を示す。なお、歪S3が正の値であるのに対して、歪S5は負の値であるので、この図7は両値の絶対値を示す。
【0072】
図に示すように、シミュレーションの結果、両歪(S3,S5)が0になるときの距離Lは一致しないことが判明した。3次の歪S3が0になるのは、距離L3のときであり、5次の歪S5が0になるのは距離L5のときである。即ち3次と5次の歪を同時に0とすることはできない。そこで、この発明では、両者の絶対値がほぼ等しくなる距離L1を適切な距離L1として採用する。この距離L1は、3次と5次の歪収差の絶対値が最小となる値である。
【0073】
上記距離L1としたときの、3次の歪S3と5次の歪S5の歪を図8に示す。図8は、横軸に光軸205からの距離をとり、縦軸に歪をとったものである。歪は光軸205に対して左右対称であるので、図8では右側だけの歪を示す。図中、上に向いた曲線は3次の歪S31、下に向いた曲線は5次の歪S51である。そして、両者の差を符号S71として示す。図に示すように、補正パラメータを最適化することにより、歪を約20%小さくすることができた。これにより、検出される像の歪収差及び倍率色収差を更に小さくすることができる。
【0074】
更に、本発明は、3次と5次の歪収差の絶対値が最小となる距離だけでなく、5次の歪(歪収差)の絶対値が3次の歪(歪収差)の絶対値より5%〜15%大きくなるように距離Lを設定してもよい。5次の歪S5が3次の歪S3より10%大きくなる距離Lを距離L2とする(図7参照)。この距離L2としたときの、3次の歪と5次の歪を求め、その差を図8に符号S72として示す。歪の差S72は、歪の差S71より更に小さくなり、13%となる。
【0075】
この補正パラメータに応じて、一段目の電子レンズ(対物レンズ232、実施形態1であれば対物レンズ32)が作る拡大像の位置を設定するシミュレーションの構成を、実施形態1に用いた図1を参照して説明する。シミュレーションによって、歪収差の3次と5次の値を算出し、それらの絶対値を求めるプログラム113を備える。更に、プログラム113により算出されたそれらの和の絶対値が最小となるか、もしくは、5次の歪の絶対値が3次の歪のそれより5〜15%程度大きくなるように一段目の電子レンズ(拡大レンズ)が作る拡大像の位置を設定するプログラム115とを備える。拡大像の位置は、対物レンズ232における電界の強度を調節することで行う。
【0076】
(試料のZ位置の移動)
ステンシルマスクとして現在2種類が考えられる。一つはマスクの1/4の像をウェーハに縮小する転写装置に使われるマスクと、他の一つは1:1の転写装置(LEEPL)に使われるマスクである。前者は分解能はそれ程必要ないが、マスク面積が25mm×40mm×16=16000mm2と大きく高いスループットが要求される。一方、後者はマスク面積は25mm×40mm=1000 mm2と小さいが、高解像度が要求される。
【0077】
この様な2種類のステンシルマスクを検査するため、ステンシルマスクを透過した透過電子像の倍率を可変にすることが重要になる。収差を悪くしないで倍率を変えるには、ステンシルマスク28と対物レンズ29としての拡大レンズ間の距離、即ち、ワーキングディスタンス31を変えるのがよいことがシミュレーションの結果明らかになった。
【0078】
そこで、本実施形態においては、透過電子像を拡大する拡大率を変えるとき、試料としてのステンシルマスク234と対物レンズ232との間の距離を変化させるようにした。これにより、収差を悪くすること無く透過電子像の倍率を可変にすることが可能となる。
【0079】
ステンシルマスク234を透過した透過電子像の倍率を可変にするため、この実施形態では、ステンシルマスク234の位置を光軸205方向に移動可能とする。図6では、移動後のステンシルマスク234の位置を符号234’と示す。符号234の位置で拡大率が640倍のところ、符号234’に移動させることで、すなわち、対物レンズ232から離すことによって320倍の拡大率となる。このように、この発明は、試料234と対物レンズ232との距離を可変可能とする。
【0080】
この場合の1次電子線は、NA開口240によるクロスオーバの結像条件はそのままとし、成形開口216によるマスク像の結像条件はボケを許容すれば足りる。そこで、望ましい実施形態として、成形開口216には、形状の異なる開口部を複数設ける。図6では、それらを符号216a〜cと示す。上記透過電子像の倍率を変えたとき、成形開口216の寸法を符号216a〜cのいずれかに交換することによって照明領域を変えるのが望ましい。
【0081】
ステンシルマスク234の位置を移動させる手段、言い換えると、試料(ステンシルマスク234)と近接して配置された電子レンズ(対物レンズ232)との距離を調節する手段としては、ステンシルマスク234に何からのアクチュエータを連動させ、移動させる形態で実施可能である。また、ステンシルマスク234を保持するカセットと、そのカセットを受け入れるホルダー部とを設け、カセットごとにステンシルマスク234を保持する位置を変化させ、試料を変更する際には、カセットごと取り替えることで、上記試料と対物レンズとの距離を変更させる形態であってもよい。
【0082】
(対物レンズ301の構造)
2次電子もしくは透過電子の拡大像を作る場合、倍率色収差が十分補正されると、軸上色収差が収差を決める。特に2次電子等の透過率を向上させるには軸上色収差を低減させることが重要になる。図9は大きい開口角で軸上色収差を小さくするための対物レンズ300の構造を示したものである。この対物レンズ300は、図1に示した対物レンズ32あるいは図6に示した対物レンズ29として用いることができる。図9は、対物レンズ300の光軸299に沿った縦断面である。図中の符号299は光軸を示している。対物レンズ300としての電磁レンズは、環状構造をしており、その中心に電子線を通すための経路が形成されている。電磁レンズ300は、その試料側に、環状のレンズギャップ305が試料303側に向いて形成されている。この実施形態においてレンズギャップ305の位置は、光軸299を中心に対称の位置とする。レンズギャップ305の幅は、電磁レンズ300の設計に応じて適宜に設定可能である。
【0083】
このレンズギャップ305を設けた場合の軸上磁場分布が、図中、B1として示されている。従来の構成である光軸側299にレンズギャップ307を設けたときの軸上磁場分布をB2として示す。軸上磁場分布B1において、最大値のZ位置をP1、軸上磁場分布B2において最大値のZ位置をP2とすると、位置P2より位置P1の方が試料303に近い。このように、レンズギャップ305を試料303側に設けることで、最大値を示すZ位置を試料側に形成することができる。これにより、軸上色収差係数を小さくすることができる。
【0084】
更に、電磁レンズ300と試料303との間には2枚の静電レンズ用電極を設けることが望ましい。この実施形態では、電磁レンズ300と試料303との間に静電レンズとしての電極309と、311とを設ける。そして、電極309に正の高電圧を印加し、電極311と電磁レンズ磁極301とを接地することによってこれらの構成はユニポテンシャルレンズとして機能する。また、試料303に負の高圧を印加することによっても、減速電界レンズとして機能させることができ、軸上色収差をさらに小さくできる。
【0085】
電磁レンズ300のレンズギャップ305と光軸299との間の距離L10を変えることによって、軸上磁場分布のピークを、二枚の静電レンズ(309、311)のうち、電極309の位置に合せることによって収差を小さくすることもできる。図中、その位置を符号P3と示す。なお、電極309は電磁レンズ300側に配置された電極である。
【0086】
(実施形態3)
本発明の第3の実施形態は、本発明の電子線装置をデバイス製造に適用した実施形態である。図10は、デバイス製造工程を示すフローチャート、図11は、図10のウェーハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィ工程を示すフローチャートである。図10及び図11を参照して、デバイス製造工程を説明する。
【0087】
デバイス製造工程は、以下の各主工程を含んでいる。
(1) ウェーハを製造するウェーハ製造工程(又はウェーハを準備するウェーハ準備工程)。(ステップ10)
(2) 露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)。(ステップ11)
(3) ウェーハに必要な加工処理を行うウェーハプロセッシング工程。(ステップ12)。
(4) ウェーハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にするチップ工程(チック組み立て工程)。(ステップ13)
(5) 完成したチップを検査するチップ検査工程。(ステップ14)
尚、これら主工程には更にいくつかのサブ工程からなっている。
【0088】
これら主工程の中で、デバイスの性能に影響を及ぼす主工程は、ウェーハプロセッシング工程(ステップ12)である。このウェーハプロセッシング工程では、設計された回路パターンをウェーハ上に順次積層し、チップを多数形成する。
【0089】
このウェーハプロセッシング工程(ステップ12)は、以下のサブ工程を含んでいる。
(A)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)。
(B)この薄膜層やウェーハ基板を酸化する酸化工程。
(C)薄膜層やウェーハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストのパターンを形成するリソグラフィー工程。
(D)レジストのパターンに従って薄膜層やウェーハ基板を加工するエッチング工程(ドライエッチング等)。
(E)イオン・不純物注入拡散工程。
(F)レジスト剥離工程。
(G)加工されたウェーハを検査する検査工程。
尚、ウェーハプロセッシング工程(ステップ12)は、多層ウェーハの場合には層数だけ繰り返し行い、デバイスを製造する。
【0090】
図11を参照して、上記(C)リソグラフィー工程を説明する。
リソグラフィー工程は、以下の各工程を含んでいる。
(C1)回路パターンが形成されたウェーハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程。(ステップ20)
(C2)レジストを露光する露光工程。(ステップ21)
(C3)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程。(ステップ22)
(C4)現像されたレジストパターンを安定化させる為のアニール工程。(ステップ23)
以上のデバイス製造工程、ウェーハプロセッシング工程、リソグラフィー工程については、周知であるのでこれ以上の説明は省略する。
【0091】
上記(G)加工されたウェーハを検査する検査工程に、本発明の電子線装置、検査装置を用いることによって、検出される画像を低収差にすることができ、精度の高い検査を行うことができる。
【0092】
(実施形態4)
本発明の第4の実施形態は、上記電子線装置を用いてステンシルマスクの検査工程を行うことを特徴とするデバイス製造方法である。このデバイスの製造方法も実施形態3とほぼ同様である。図10の参照して、デバイス製造工程を説明する。
【0093】
このデバイス製造工程は、以下の各主工程を含んでいる。
(1) ウェーハを製造するウェーハ製造工程(又はウェーハを準備するウェーハ準備工程)。(ステップ10)
(2) 露光に使用するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)。(ステップ11)
(2’) 製造したマスクの検査工程(ここで、上記電子線装置を利用した検査装置を用いる)。(ステップ11a)
(3) ウェーハに必要な加工処理を行うウェーハプロセッシング工程。(ステップ12)。
(4) 検査を終えた前記マスクを用いて、各種チップを製造する工程。具体的に、ウェーハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にするチップ工程(チック組み立て工程)。(ステップ13)
(5) 完成したチップを検査するチップ検査工程。(ステップ14)
また、前記電子線装置は、ウエハプロセッシング工程におけるリソグラフィ工程に用いることもできる。この場合、薄膜層やウエハ基板等を選択的に加工するために前記電子線装置によって検査されたマスクを用いてレジストパターンを形成する。
【0094】
上記(2’)の検査工程に本発明に係る欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有するステンシルマスクでも、スループット良く検査できるので、欠陥製品の製造防止が可能となる。
【0095】
【発明の効果】
1.本発明では、対物レンズの主面近くに開口あるいは開口像を設けるので、パターン像に寄与する電子線は対物レンズ付近では光軸近くを通るので、低収差にできる。更に、成形開口の形状を調整することで2次電子の強度を一様にできる。
2.E×B分離器を最終の電子レンズと検出器の間に配置したので多少偏向収差があっても、ピクセルサイズに比べて小さい収差に押さえられる。
3.電磁偏向量を静電偏向量の2倍にすることで、エネルギの異なる電子線もほぼ同程度偏向させることができ、その結果、偏向色収差量を小さくできる。
4.第2の実施形態では二段レンズで倍率色収差を低減して歪も小さい値にできるので、ステンシルマスクを高精度で検査できる。更に、試料であるステンシルマスク位置を光軸上で変化させることによって収差を増さないで倍率を変えることができる。
5.レンズギャップを試料側に設けることで軸上色収差の小さいレンズ構造ができる。更に、電磁レンズと静電レンズを組み合わせることで、更に、軸上色収差を小さくすることができる。
6.1次電子線はケーラー照明条件を満たし、また、二段の電子レンズを構成することで、光路長の短い1次光学系ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の電子線装置の全体図。
【図2】本発明の第1の実施形態の電子線装置の一部の詳細図。
【図3】余弦法則の説明図。
【図4】図4(a)は成形開口の平面図、図4(b)は成形開口を通って試料面上に照射される1次電子線の像の強度分布図。
【図5】図4(b)の各断面における1次電子線の強度分布図。
【図6】本発明の第2の実施形態の電子線装置の一部の詳細図。
【図7】拡大像を設ける位置と拡大レンズとの距離Lを変化させたときの歪の説明図。
【図8】3次と5次の歪の説明図。
【図9】対物レンズ(電磁レンズ)の概略断面図又は端面図。
【図10】デバイス製造工程を示すフローチャート。
【図11】リソグラフィ工程を示すフローチャート。
【符号の説明】
10 電子線装置
12、212 電子銃
16、216 成形開口
20 E×B分離器
26 共役面
32、232 対物レンズ
34、234 試料
34a、234a 試料面
38、238 拡大レンズ
40、240 NA開口
70、270 検出器
100 制御部
231 拡大像
Claims (22)
- 検査対象である試料の試料面に電子銃より放出された1次電子線を入射させ、その試料から放出される2次電子線により形成される電子像を拡大して検出する電子線装置に於いて、
前記1次電子線と前記2次電子線とに共通する光路上にNA開口を設け、前記試料面の近くに電子レンズを設け、
前記電子銃が作るクロスオーバと前記電子レンズと前記NA開口とが、それぞれ共役関係にあることを特徴とする電子線装置。 - 請求項1に記載の電子線装置において、前記電子レンズの主面もしくは主面近傍に、前記NA開口像を形成することを特徴とする電子線装置。
- 請求項2に記載の電子線装置において、
前記1次電子線の経路上に成形開口を設け、
前記成形開口と前記試料とを共役面とすることを特徴とする電子線装置。 - 1次電子線を試料面に照射し、試料から放出される2次電子を像として拡大し検出する電子線装置に於いて、試料面に入射させる1次電子線のビーム形状を光軸近くで強度が小さく、光軸から離れた場所では強度が大きい分布を有することを特徴とする電子線装置。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子線装置において、
試料面に入射させる1次電子線のビーム形状を光軸近くで強度が小さく、光軸から離れた場所では強度が大きい分布を有することを特徴とする電子線装置。 - 1次電子線をE×B分離器を用いて試料面に垂直に入射させ、前記試料面から放出される2次電子又は後方散乱電子を少なくとも2段の電子レンズで像として拡大させ、検出する電子線装置において、前記電子線の経路において最も下流に位置する電子レンズと検出器との間に前記E×B分離器を配置することを特徴とする電子線装置。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子線装置において、2次電子又は後方散乱電子の経路上に少なくとも2段の電子レンズを配し、前記E×B分離器を前記2段の電子レンズのうち下流に位置する電子レンズと検出器との間に配置することを特徴とする電子線装置。
- 1次電子線をE×B分離器を用いて試料面に垂直に入射させ、試料から放出される2次電子又は後方散乱電子を像として拡大して検出する電子線装置に於いて、
前記E×B分離器は、磁場による2次電子の偏向角が電場によるものの2倍程度であることを特徴とする電子線装置。 - 請求項6または請求項7に記載の電子線装置に於いて、
前記E×B分離器は、磁場による2次電子の偏向角が電場によるものの2倍程度であることを特徴とする電子線装置。 - 請求項8または請求項9に記載の電子線装置において、
前記E×B分離器は、4500ev程度の2次電子又は後方散乱電子を偏向させるよう設定され、かつ、2次電子線の光軸に対して2次電子線を7°〜15°偏向させるよう設定されていることを特徴とする電子線装置。 - 検査対象である試料に、電子銃より放出された1次電子線を照射し、その透過した透過電子線により形成される電子像を拡大して検出する電子線装置に於いて、
前記透過電子線の経路上にNA開口を設け、前記試料の近くに電子レンズを設け、
前記電子銃が作るクロスオーバと前記電子レンズと前記NA開口とが、それぞれ共役関係にあることを特徴とする電子線装置。 - 請求項11に記載の電子線装置において、前記電子レンズの主面もしくは主面近傍に、前記透過電子線による電子銃のクロスオーバ像を形成することを特徴とする電子線装置。
- 請求項12に記載の電子線装置において、
前記1次電子線の経路上に成形開口を設け、
前記成形開口と前記試料を共役関係となるように配置することを特徴とする電子線装置。 - 試料面から放出される2次電子、後方散乱電子あるいは試料を透過した電子像を少なくとも2段の電子レンズで拡大して検出する電子線装置に於いて、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を2段目の電子レンズより上流の特定の位置に合せることによって歪収差あるいは倍率色収差を小さくすることを特徴とする電子線装置。
- 請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の電子線装置において、
前記透過電子線の経路上に少なくとも2段の電子レンズを設け、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を2段目の電子レンズより上流の特定の位置に合せることを特徴とする電子線装置。 - 1次電子線を試料に照射し、試料から放出された2次電子像、後方散乱電子像あるいは、試料を透過する透過電子像を拡大して像として検出する電子線装置に於いて、
検出した像の歪収差をシュミレーション計算し、歪収差の3次の絶対値と5次の絶対値との差を求め、前記差が最小となるか、もしくは5次の絶対値が3次の絶対値より5〜15%程度大きくなる様に、補正パラメータを最適化し、前記最適化された補正パラメータに応じて、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を設定することを特徴とする電子線装置。 - 請求項14または請求項15に記載の電子線装置において、
検出した像の歪収差をシュミレーション計算し、歪収差の3次の絶対値と5次の絶対値との差を求め、前記差が最小となるか、もしくは5次の絶対値が3次の絶対値より5〜15%程度大きくなる様に、補正パラメータを最適化し、
前記補正パラメータは、前記2段目の電子レンズと拡大像との距離であり、前記最適化された補正パラメータに応じて、1段目の電子レンズが作る拡大像の位置を設定することを特徴とする電子線装置。 - 試料を透過した電子を前記試料に近接して配置された電子レンズで透過電子像として拡大し、CCD又はTDI又はEBCCDのいずれかで検出する電子線装置に於いて、前記透過電子像を拡大する拡大率を変えるとき、前記試料と前記対物レンズとの間の距離を変化させることを特徴とする電子線装置。
- 請求項11ないし請求項17のいずれかに記載の電子線装置において、
一つの試料を他の試料に変更する際に、前記試料に近接して配置された電子レンズと前記試料との距離の調節手段を設けたことを特徴とする電子線装置。 - 請求項1ないし請求項19のいずれかに記載の電子線装置に於いて、前記試料面の近くに設けた電子レンズは、ギャップが試料側に形成された電磁レンズを備えていることを特徴とする電子線装置。
- 請求項1ないし請求項10、請求項14、請求項16または請求項17、請求項20のいずれかに記載の電子線装置を用いて、前記被検査試料であるところの半導体ウェーハの欠陥を検査することを特徴とする半導体のデバイス製造方法。
- 請求項11ないし請求項20のいずれかに記載の電子線装置を用いて欠陥検査を行ったマスクを使うことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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