JP2004201639A - クロロフィル含有食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】できるだけ少ない亜鉛の含有量で食品におけるクロロフィルの退色を効率的に防止することができるクロロフィル含有食品を提供することである。
【解決手段】クロロフィルが含まれている食品と、亜鉛イオンが含まれている溶液とを混合し、加熱処理を行うことにより得られることを特徴とするクロロフィル含有食品である。
【選択図】なし
【解決手段】クロロフィルが含まれている食品と、亜鉛イオンが含まれている溶液とを混合し、加熱処理を行うことにより得られることを特徴とするクロロフィル含有食品である。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変性による退色が抑制されたクロロフィル含有食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物に含まれるクロロフィルは、緑色を呈しておりその色彩を利用した商品が様々な分野において多く存在する。食品分野における最も有名な利用法として日本茶が知られており、これは老若男女を問わずに広く愛飲されている。しかしながら、この緑色は、様々な因子により劣化、退色してしまい、商品価値が著しく損なわれてしまう。
【0003】
例えば、日本茶について特記すると、茶葉を家庭で熟湯抽出して飲用する従来のスタイルから、近年飲用スタイルが変化し、既に抽出した日本茶を缶容器やペットボトルに入れた飲料が広く流通している。缶容器は、中身が見えないため比較的問題が少ないが、ペットボトルは、中身が見えるため、お茶の色は、製品価値を決める重要な要素となっている。ペットボトルに入っている日本茶は、一般的にUHT殺菌を行い、冷却後に無菌充填しているが、このUHT殺菌において日本茶中のクロロフィルが退色して黄褐色に変化してしまうという問題がある。
【0004】
同様に、嚥下困難者のための水分補給等の目的からお茶ゼリーが市販されている。このお茶ゼリーは、チィアパックやアルミパウチ、カップなどに詰めた後、レトルト殺菌されているが、これも同様にクロロフィルが退色して黄褐色に変化してしまい、製品の付加価値を下げてしまうという問題がある。
【0005】
このため、緑色劣化又は退色の対処方法として様々な方法が試行錯誤されている。クロロフィルの退色を抑止する方法として、クロロフィルに熱を加える際に塩を加えて退色を防ぐ方法、環状デキストリンを添加して退色を防ぐ方法などが知られているが、緑色を十分に維持できるほどの効果が得られていないのが現状である。また、クロロフィルの活性中心をマグネシウムから銅に置換された銅クロロフィリンが合成されているが、銅の過剰摂取による人体への影響が懸念されている。
【0006】
一方、亜鉛イオンを含む溶液に退色した植物を接触させて、亜鉛イオンの作用により植物の緑色を復元し、あるいは緑色を保持する方法が従来から知られている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−14530号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の緑色を復元、又は保持する方法は、母乳代替食品以外の食品への使用が禁止されている硫酸亜鉛を使用しており、食品に対する実用的な使用を前提としておらず、あくまでも植物の退色保持方法を示しているに過ぎない。また、特許文献1に記載の緑色を復元、又は保持する方法は、低温で処理されているため、効率的に亜鉛を作用させておらず、過剰に取り過ぎることは、貧血、悪心、発熱が生じる虞があるので、望ましくない。
【0009】
そこで、本発明は、できるだけ少ない亜鉛の含有量で食品におけるクロロフィルの退色を効率的に防止することができるクロロフィル含有食品を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、クロロフィルが含まれている食品と亜鉛イオンが含まれている溶液とを混合し、加熱処理することにより、できるだけ少ない亜鉛を効率よく含有させることによって食品用のクロロフィルの退色を効率的に防止することを見出した。すなわち、本発明は、クロロフィルが含まれている食品と亜鉛イオンが含まれている溶液を混合し、加熱処理することにより得られることを特徴とするクロロフィル含有食品である。本発明に係るクロロフィル含有食品としては、お茶、抹茶菓子など抹茶が含まれた食品の他、昆布、ほうれん草などの加工品といった植物由来の緑色を呈する食品は全て該当する。
【0011】
本発明に係るクロロフィル含有食品は、クロロフィルと亜鉛イオンが含まれている溶液に加熱処理を施すことにより、効率よくクロロフィルの活性中心をマグネシウムから亜鉛に置換することができ、これによりできるだけ少ない亜鉛で食品におけるクロロフィルの退色を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係るクロロフィル含有食品は、クロロフィルの活性中心がマグネシウムから亜鉛に置換されているので、人体に有用な亜鉛を摂取することができる。すなわち、亜鉛は第6次改定日本人の栄養所要量において摂取量を成人9〜15mg/日、小児4〜8mg/日前後とされている。亜鉛は、生体内においてこれを含んだ200以上の金属酵素として存在しており、亜鉛の欠乏により成長障害、食思不振、皮疹、創傷治癒障害、味覚障害、精神障害(うつ病)、免疫能低下、催奇形性、生殖能異常などを引き起こす。特に、高齢者において創傷治癒の遅延や免疫能の低下が亜鉛不足に関連していると考えられており、亜鉛の摂取は、高齢者社会を迎えた現在においては極めて重要である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係るクロロフィル含有食品において、亜鉛イオンは、イオン化されていればどのようなものでも良く、例えば、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、亜鉛含有ビール酵母などがある。特に食品分野においては亜鉛強化食品に一般的に使用されている亜鉛含有ビール酵母が好ましい。
【0014】
また、本発明に係るクロロフィル含有食品において、前記亜鉛イオンの含有量は、10ppmから1%であることが好ましく、特に100ppm〜5000ppmであることが好ましい。この亜鉛量以下では退色防止効果が弱く、またこの亜鉛量以上においては、使用量が高く、人体に対して十分な安全性が得られない。
【0015】
さらに、本発明に係るクロロフィル含有食品において、前記加熱処理は、80〜150℃で行われることが好ましく、特に100〜120℃で行われることが好ましい。この温度以下ではクロロフィルに亜鉛を十分に作用させることができず、またこの温度以上ではクロロフィル本来の風味が損なわれてしまう。また、本発明に係るクロロフィル含有食品において、前記加熱処理は、通常、UHT、レトルト殺菌機、ジュール加熱機、オートクレーブなどによって行われるが、羊羹などのように製造過程で100℃以上に加熱する必要がある食品においては、どのような方法によって行われても良い。
【0016】
【実施例】
次に、本発明に係るクロロフィル含有食品の実施例について説明する。
実施例1乃至4
表1に示す割合で粉末抹茶((株)あいや製)を冷水に分散した溶液に亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)を添加した後に、レトルト殺菌機を用いてこの溶液を121℃で20分間殺菌することによって、実施例1乃至4に係るクロロフィル含有食品である抹茶溶液を得た。
【0017】
【表1】
【0018】
また、表1に示す割合で粉末抹茶((株)あいや製)を冷水に分散することによって比較例1に係るクロロフィル含有食品である抹茶溶液を得た。さらに、表1に示す割合で粉末抹茶((株)あいや製)を冷水に分散した後にレトルト殺菌機を用いてこの溶液を121℃で20分間殺菌することによって、比較例2に係るクロロフィル含有食品である抹茶溶液を得た。
【0019】
次に、実施例1乃至4、並びに比較例1及び2に係るクロロフィル含有食品それぞれを5倍に希釈して色差計(日本電色工業(株)製:ZE−2000)を用いて明度指数(L)、クロマティクネス指数(a、b)の値を測定した。Lの値は、値が大きいと明るく、小さいと暗い傾向を示し、aの値は、値が大きいと赤色、小さいと緑色を示し、bの値は、値が大きいと黄色、小さいと青色を示す。その測定結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
表2から明らかなように、緑色から赤色傾向の指標であるaの値において、比較例2に係るクロロフィル含有食品は、レトルト殺菌を行ったことにより比較例1に係るクロロフィル含有食品に比し大きくなっており、緑色から赤色傾向へ変色していることが分かる。また、実施例1乃至4に係るクロロフィル含有食品のaの値は、比較例1に係るクロロフィル含有食品と同等又はそれよりも小さな値を示しており、緑色傾向が強いことが分かる。特に実施例2乃至4に係るクロロフィル含有食品は、比較例1に係るクロロフィル含有食品よりも小さな値を示しており、緑色傾向が特に強いことが分かる。
【0022】
次に、実施例1乃至4、並びに比較例1に係るクロロフィル含有食品を2000ルクスの光へ25℃、1週間曝露したものそれぞれを5倍に希釈して色差計(日本電色工業(株)製ZE−2000)を用いてL、a、bの値を測定した。その結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
【0024】
表2及び3に示すように、緑色から赤色傾向への指標であるaの値において、比較例1に係るクロロフィル含有食品は、約30%まで退色したのに対して、実施例1乃至4に係るクロロフィル含有食品は、約60%ほどの退色にとどまったことが分かる。
【0025】
次に、実施例4及び比較例1に係るクロロフィル含有食品についての耐pH性の実験を行うため、表4に示すようにクエン酸又は炭酸ナトリウムを用いてpHを4、6又は8に調整し、それらを85℃で30分間低温殺菌することにより試験物A、B、C、D、E、Fを得た。
【0026】
【表4】
【0027】
次に、これら試験物A、B、C、D、E、Fそれぞれを5倍に希釈して色差計(日本電色工業(株)製:ZE−2000)を用いてL、a、bの値を測定した。その結果を表5に示す。
【0028】
【表5】
【0029】
表5に示すように塩基性域では赤色傾向に向かうものの、試験物A、B、Cは、試験物D、E、Fよりも緑色傾向が強いこと、すなわち実施例4に係るクロロフィル含有食品は、比較例1に係るクロロフィル含有食品に比し耐pH性に優れていることが分かる。
【0030】
実施例5乃至8
抹茶粉末1%((株)あいや社製)を冷水に分散した溶液に亜鉛含有量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)を150ppm添加し、次いで60℃、80℃、100℃及び120℃で20分間加熱することにより実施例5乃至8に係るクロロフィル含有食品である抹茶溶液を得た。
【0031】
次に、実施例5乃至8に係るクロロフィル含有食品を5倍に希釈して色素計(日本電色工業(株)製:ZE−2000)を用いて明度指数(L)、クロマティクネス指数(a、b)の値を測定した。その結果を表6に示す。
【0032】
【表6】
【0033】
表6に示すように緑色から赤色傾向への指標であるaの値において実施例5及び6に係るクロロフィル含有食品は、比較的高い値を示し、赤色傾向が強いことが分かる。高温で効率的に処理された実施例8に係るクロロフィル含有食品は、比較例1に係るクロロフィル含有食品よりも若干高い値であるが、同等の値を示し、緑色傾向が強いことが分かる。
【0034】
実施例9
次に、表7に示す配合で手亡練餡、寒天、砂糖、塩、粉末抹茶((株)あいや製)、亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)及び水を加熱し練り上げて、その後冷却することによって実施例9に係る抹茶水羊羹を得た。また、実施例9からビール酵母を除いたものを表7に示す配合で加熱し練り上げて、その後冷却することによって比較例2に係る抹茶水羊羹を得た。
【0035】
【表7】
【0036】
これら実施例9及び比較例2に係る抹茶水羊羹について容器に充填後、121℃で20分間レトルト殺菌し、その後の色彩の変化を比較した。その結果、比較例2に係る抹茶水羊羹は、明らかに緑色が退色していたの対し、実施例9に係る抹茶水羊羹は、本来の抹茶の緑色を保持していた。
【0037】
実施例10
次に、表8に示す配合で手亡練餡、寒天、砂糖、粉末抹茶((株)あいや製)、亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)及び水を加熱し練り上げて、その後冷却することによって実施例10に係る抹茶羊羹を得た。また、実施例10からビール酵母を除いたものを表8に示す配合で加熱し練り上げて、その後冷却することによって比較例3に係る抹茶羊羹を得た。
【0038】
【表8】
【0039】
これら実施例10及び比較例3に係る抹茶羊羹について容器に充填して冷却し、その後の色彩の変化を比較した。その結果、比較例3に係る抹茶羊羹は、明らかに緑色が退色していたの対し、実施例10に係る抹茶羊羹は、本来の抹茶の緑色を保持していた。
【0040】
実施例11
次に、熱水抽出した煎茶液1000gに寒天(伊那食品工業(株)製、介護食用ソフト寒天)9gと亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)0.2gを加えて加熱溶解した後、容器に詰めることによって、実施例11に係るお茶ゼリーを得た。また、実施例11からビール酵母を除いたものを加熱溶解した後、容器に詰めることによって、比較例4に係るお茶ゼリーを得た。これら実施例11及び比較例4に係るお茶ゼリーをレトルト殺菌(121℃15分間)し、殺菌後の色彩の変化を比較した。その結果、比較例4に係るお茶ゼリーは、明らかに緑色が退色していたの対し、実施例11に係るお茶ゼリーは、本来の抹茶の緑色を保持しているため、視覚的に優れており、また嚥下困難者の摂食が容易で、高齢者が必要とする亜鉛を摂取することもできる。
【0041】
実施例12
熱水抽出した煎茶液1000gに亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)0.2gを加え、UHT殺菌(130℃、30秒)を行い、無菌状態でペットボトルに入れることによって、実施例12に係る日本茶飲料を得た。また、同様にビール酵母を入れないものとして比較例5に係る日本茶飲料を得た。これら実施例12及び比較例5に係る日本茶飲料の色彩を比較したところ、実施例12に係る日本茶飲料の方が、明らかに退色がなく、本体の日本茶の色調を保持していた。
【0042】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、クロロフィルと亜鉛イオンが含まれている溶液に加熱処理を行うことにより、できるだけ少ない亜鉛の含有量で食品におけるクロロフィルの退色を効率的に防止することができるクロロフィル含有食品を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、変性による退色が抑制されたクロロフィル含有食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物に含まれるクロロフィルは、緑色を呈しておりその色彩を利用した商品が様々な分野において多く存在する。食品分野における最も有名な利用法として日本茶が知られており、これは老若男女を問わずに広く愛飲されている。しかしながら、この緑色は、様々な因子により劣化、退色してしまい、商品価値が著しく損なわれてしまう。
【0003】
例えば、日本茶について特記すると、茶葉を家庭で熟湯抽出して飲用する従来のスタイルから、近年飲用スタイルが変化し、既に抽出した日本茶を缶容器やペットボトルに入れた飲料が広く流通している。缶容器は、中身が見えないため比較的問題が少ないが、ペットボトルは、中身が見えるため、お茶の色は、製品価値を決める重要な要素となっている。ペットボトルに入っている日本茶は、一般的にUHT殺菌を行い、冷却後に無菌充填しているが、このUHT殺菌において日本茶中のクロロフィルが退色して黄褐色に変化してしまうという問題がある。
【0004】
同様に、嚥下困難者のための水分補給等の目的からお茶ゼリーが市販されている。このお茶ゼリーは、チィアパックやアルミパウチ、カップなどに詰めた後、レトルト殺菌されているが、これも同様にクロロフィルが退色して黄褐色に変化してしまい、製品の付加価値を下げてしまうという問題がある。
【0005】
このため、緑色劣化又は退色の対処方法として様々な方法が試行錯誤されている。クロロフィルの退色を抑止する方法として、クロロフィルに熱を加える際に塩を加えて退色を防ぐ方法、環状デキストリンを添加して退色を防ぐ方法などが知られているが、緑色を十分に維持できるほどの効果が得られていないのが現状である。また、クロロフィルの活性中心をマグネシウムから銅に置換された銅クロロフィリンが合成されているが、銅の過剰摂取による人体への影響が懸念されている。
【0006】
一方、亜鉛イオンを含む溶液に退色した植物を接触させて、亜鉛イオンの作用により植物の緑色を復元し、あるいは緑色を保持する方法が従来から知られている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−14530号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の緑色を復元、又は保持する方法は、母乳代替食品以外の食品への使用が禁止されている硫酸亜鉛を使用しており、食品に対する実用的な使用を前提としておらず、あくまでも植物の退色保持方法を示しているに過ぎない。また、特許文献1に記載の緑色を復元、又は保持する方法は、低温で処理されているため、効率的に亜鉛を作用させておらず、過剰に取り過ぎることは、貧血、悪心、発熱が生じる虞があるので、望ましくない。
【0009】
そこで、本発明は、できるだけ少ない亜鉛の含有量で食品におけるクロロフィルの退色を効率的に防止することができるクロロフィル含有食品を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、クロロフィルが含まれている食品と亜鉛イオンが含まれている溶液とを混合し、加熱処理することにより、できるだけ少ない亜鉛を効率よく含有させることによって食品用のクロロフィルの退色を効率的に防止することを見出した。すなわち、本発明は、クロロフィルが含まれている食品と亜鉛イオンが含まれている溶液を混合し、加熱処理することにより得られることを特徴とするクロロフィル含有食品である。本発明に係るクロロフィル含有食品としては、お茶、抹茶菓子など抹茶が含まれた食品の他、昆布、ほうれん草などの加工品といった植物由来の緑色を呈する食品は全て該当する。
【0011】
本発明に係るクロロフィル含有食品は、クロロフィルと亜鉛イオンが含まれている溶液に加熱処理を施すことにより、効率よくクロロフィルの活性中心をマグネシウムから亜鉛に置換することができ、これによりできるだけ少ない亜鉛で食品におけるクロロフィルの退色を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係るクロロフィル含有食品は、クロロフィルの活性中心がマグネシウムから亜鉛に置換されているので、人体に有用な亜鉛を摂取することができる。すなわち、亜鉛は第6次改定日本人の栄養所要量において摂取量を成人9〜15mg/日、小児4〜8mg/日前後とされている。亜鉛は、生体内においてこれを含んだ200以上の金属酵素として存在しており、亜鉛の欠乏により成長障害、食思不振、皮疹、創傷治癒障害、味覚障害、精神障害(うつ病)、免疫能低下、催奇形性、生殖能異常などを引き起こす。特に、高齢者において創傷治癒の遅延や免疫能の低下が亜鉛不足に関連していると考えられており、亜鉛の摂取は、高齢者社会を迎えた現在においては極めて重要である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係るクロロフィル含有食品において、亜鉛イオンは、イオン化されていればどのようなものでも良く、例えば、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、亜鉛含有ビール酵母などがある。特に食品分野においては亜鉛強化食品に一般的に使用されている亜鉛含有ビール酵母が好ましい。
【0014】
また、本発明に係るクロロフィル含有食品において、前記亜鉛イオンの含有量は、10ppmから1%であることが好ましく、特に100ppm〜5000ppmであることが好ましい。この亜鉛量以下では退色防止効果が弱く、またこの亜鉛量以上においては、使用量が高く、人体に対して十分な安全性が得られない。
【0015】
さらに、本発明に係るクロロフィル含有食品において、前記加熱処理は、80〜150℃で行われることが好ましく、特に100〜120℃で行われることが好ましい。この温度以下ではクロロフィルに亜鉛を十分に作用させることができず、またこの温度以上ではクロロフィル本来の風味が損なわれてしまう。また、本発明に係るクロロフィル含有食品において、前記加熱処理は、通常、UHT、レトルト殺菌機、ジュール加熱機、オートクレーブなどによって行われるが、羊羹などのように製造過程で100℃以上に加熱する必要がある食品においては、どのような方法によって行われても良い。
【0016】
【実施例】
次に、本発明に係るクロロフィル含有食品の実施例について説明する。
実施例1乃至4
表1に示す割合で粉末抹茶((株)あいや製)を冷水に分散した溶液に亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)を添加した後に、レトルト殺菌機を用いてこの溶液を121℃で20分間殺菌することによって、実施例1乃至4に係るクロロフィル含有食品である抹茶溶液を得た。
【0017】
【表1】
【0018】
また、表1に示す割合で粉末抹茶((株)あいや製)を冷水に分散することによって比較例1に係るクロロフィル含有食品である抹茶溶液を得た。さらに、表1に示す割合で粉末抹茶((株)あいや製)を冷水に分散した後にレトルト殺菌機を用いてこの溶液を121℃で20分間殺菌することによって、比較例2に係るクロロフィル含有食品である抹茶溶液を得た。
【0019】
次に、実施例1乃至4、並びに比較例1及び2に係るクロロフィル含有食品それぞれを5倍に希釈して色差計(日本電色工業(株)製:ZE−2000)を用いて明度指数(L)、クロマティクネス指数(a、b)の値を測定した。Lの値は、値が大きいと明るく、小さいと暗い傾向を示し、aの値は、値が大きいと赤色、小さいと緑色を示し、bの値は、値が大きいと黄色、小さいと青色を示す。その測定結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
【0021】
表2から明らかなように、緑色から赤色傾向の指標であるaの値において、比較例2に係るクロロフィル含有食品は、レトルト殺菌を行ったことにより比較例1に係るクロロフィル含有食品に比し大きくなっており、緑色から赤色傾向へ変色していることが分かる。また、実施例1乃至4に係るクロロフィル含有食品のaの値は、比較例1に係るクロロフィル含有食品と同等又はそれよりも小さな値を示しており、緑色傾向が強いことが分かる。特に実施例2乃至4に係るクロロフィル含有食品は、比較例1に係るクロロフィル含有食品よりも小さな値を示しており、緑色傾向が特に強いことが分かる。
【0022】
次に、実施例1乃至4、並びに比較例1に係るクロロフィル含有食品を2000ルクスの光へ25℃、1週間曝露したものそれぞれを5倍に希釈して色差計(日本電色工業(株)製ZE−2000)を用いてL、a、bの値を測定した。その結果を表3に示す。
【0023】
【表3】
【0024】
表2及び3に示すように、緑色から赤色傾向への指標であるaの値において、比較例1に係るクロロフィル含有食品は、約30%まで退色したのに対して、実施例1乃至4に係るクロロフィル含有食品は、約60%ほどの退色にとどまったことが分かる。
【0025】
次に、実施例4及び比較例1に係るクロロフィル含有食品についての耐pH性の実験を行うため、表4に示すようにクエン酸又は炭酸ナトリウムを用いてpHを4、6又は8に調整し、それらを85℃で30分間低温殺菌することにより試験物A、B、C、D、E、Fを得た。
【0026】
【表4】
【0027】
次に、これら試験物A、B、C、D、E、Fそれぞれを5倍に希釈して色差計(日本電色工業(株)製:ZE−2000)を用いてL、a、bの値を測定した。その結果を表5に示す。
【0028】
【表5】
【0029】
表5に示すように塩基性域では赤色傾向に向かうものの、試験物A、B、Cは、試験物D、E、Fよりも緑色傾向が強いこと、すなわち実施例4に係るクロロフィル含有食品は、比較例1に係るクロロフィル含有食品に比し耐pH性に優れていることが分かる。
【0030】
実施例5乃至8
抹茶粉末1%((株)あいや社製)を冷水に分散した溶液に亜鉛含有量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)を150ppm添加し、次いで60℃、80℃、100℃及び120℃で20分間加熱することにより実施例5乃至8に係るクロロフィル含有食品である抹茶溶液を得た。
【0031】
次に、実施例5乃至8に係るクロロフィル含有食品を5倍に希釈して色素計(日本電色工業(株)製:ZE−2000)を用いて明度指数(L)、クロマティクネス指数(a、b)の値を測定した。その結果を表6に示す。
【0032】
【表6】
【0033】
表6に示すように緑色から赤色傾向への指標であるaの値において実施例5及び6に係るクロロフィル含有食品は、比較的高い値を示し、赤色傾向が強いことが分かる。高温で効率的に処理された実施例8に係るクロロフィル含有食品は、比較例1に係るクロロフィル含有食品よりも若干高い値であるが、同等の値を示し、緑色傾向が強いことが分かる。
【0034】
実施例9
次に、表7に示す配合で手亡練餡、寒天、砂糖、塩、粉末抹茶((株)あいや製)、亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)及び水を加熱し練り上げて、その後冷却することによって実施例9に係る抹茶水羊羹を得た。また、実施例9からビール酵母を除いたものを表7に示す配合で加熱し練り上げて、その後冷却することによって比較例2に係る抹茶水羊羹を得た。
【0035】
【表7】
【0036】
これら実施例9及び比較例2に係る抹茶水羊羹について容器に充填後、121℃で20分間レトルト殺菌し、その後の色彩の変化を比較した。その結果、比較例2に係る抹茶水羊羹は、明らかに緑色が退色していたの対し、実施例9に係る抹茶水羊羹は、本来の抹茶の緑色を保持していた。
【0037】
実施例10
次に、表8に示す配合で手亡練餡、寒天、砂糖、粉末抹茶((株)あいや製)、亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)及び水を加熱し練り上げて、その後冷却することによって実施例10に係る抹茶羊羹を得た。また、実施例10からビール酵母を除いたものを表8に示す配合で加熱し練り上げて、その後冷却することによって比較例3に係る抹茶羊羹を得た。
【0038】
【表8】
【0039】
これら実施例10及び比較例3に係る抹茶羊羹について容器に充填して冷却し、その後の色彩の変化を比較した。その結果、比較例3に係る抹茶羊羹は、明らかに緑色が退色していたの対し、実施例10に係る抹茶羊羹は、本来の抹茶の緑色を保持していた。
【0040】
実施例11
次に、熱水抽出した煎茶液1000gに寒天(伊那食品工業(株)製、介護食用ソフト寒天)9gと亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)0.2gを加えて加熱溶解した後、容器に詰めることによって、実施例11に係るお茶ゼリーを得た。また、実施例11からビール酵母を除いたものを加熱溶解した後、容器に詰めることによって、比較例4に係るお茶ゼリーを得た。これら実施例11及び比較例4に係るお茶ゼリーをレトルト殺菌(121℃15分間)し、殺菌後の色彩の変化を比較した。その結果、比較例4に係るお茶ゼリーは、明らかに緑色が退色していたの対し、実施例11に係るお茶ゼリーは、本来の抹茶の緑色を保持しているため、視覚的に優れており、また嚥下困難者の摂食が容易で、高齢者が必要とする亜鉛を摂取することもできる。
【0041】
実施例12
熱水抽出した煎茶液1000gに亜鉛含量10%のビール酵母(ケムコインダストリーズインク社製)0.2gを加え、UHT殺菌(130℃、30秒)を行い、無菌状態でペットボトルに入れることによって、実施例12に係る日本茶飲料を得た。また、同様にビール酵母を入れないものとして比較例5に係る日本茶飲料を得た。これら実施例12及び比較例5に係る日本茶飲料の色彩を比較したところ、実施例12に係る日本茶飲料の方が、明らかに退色がなく、本体の日本茶の色調を保持していた。
【0042】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、クロロフィルと亜鉛イオンが含まれている溶液に加熱処理を行うことにより、できるだけ少ない亜鉛の含有量で食品におけるクロロフィルの退色を効率的に防止することができるクロロフィル含有食品を提供することができる。
Claims (3)
- クロロフィルが含まれている食品と亜鉛イオンが含まれている溶液とを混合し、加熱処理することにより得られることを特徴とするクロロフィル含有食品。
- 前記亜鉛イオンの含有量が10ppmから1%であることを特徴とする請求項1記載のクロロフィル含有食品。
- 前記加熱処理は、80〜150℃で行われることを特徴とする請求項1又は2記載のクロロフィル含有食品。
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