JP2004191341A - 分子認識素子、これを用いたバイオセンサ、及びその製造方法 - Google Patents

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Yoshinori Ogawa
美紀 小川
Hirokatsu Miyata
浩克 宮田
Kazuhiko Fukutani
和彦 福谷
Hiroshi Okura
央 大倉
Akira Kuriyama
朗 栗山
Albrecht Otto
オットー・アルブレヒト
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Abstract

【課題】分子認識材料を高濃度で固定又は担持し、かつ特定物質が分子認識材料に短時間で円滑、均一に接触、反応することを可能とする。
【解決手段】バイオセンサで用いる分子認識素子49は、基板41上に形成された多孔質膜45の柱状の細孔44内に材料(金等)を導入した後に多孔質膜45を除去して得られた3次元柱状構造体47と、この3次元柱状構造体47に固定又は担持された分子認識材料48とから構成される。多孔質膜45は、第一の成分(例えば、アルミニウム)を含み構成される柱状物質42が、第一の成分と共晶を形成し得る第二の成分(例えば、シリコン、ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムとシリコンの混合物)を含み構成される他成分のマトリクス43中に分散している構造体から、柱状物質42を除去して形成されている。分子認識材料48には、生体物質、例えば蛋白質(酵素、抗原、抗体等)や遺伝子等が使用される。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分子認識材料(分子認識能を有する成分)が固定化、もしくは担持された分子認識素子、これを用いたバイオセンサ、及びその製造方法に関し、より詳しくは、特定成分の存在/非存在、存在量又は存在濃度を検知するセンサ、及びその製造方法に関する。本発明のセンサは、特に生体由来の物質又はその類似物質を分子認識材料として利用したいわゆるバイオセンサに好適に応用できる。
【0002】
【従来の技術】
バイオセンサは生体や生体分子の持つ優れた分子認識能を活用した計測デバイスであり、近年、医療分野のみならず、環境や食料品等への幅広い応用が期待されている。
【0003】
一般的に、バイオセンサは測定対象とする化学物質(以下、特定物質)を認識する分子認識素子、及びその時発生する物理的、化学的な変化を検知し電気信号、光信号等の検出可能な信号へ変換する検知素子から構成される。生体内には、互いに親和性のある物質の組み合わせとして例えば酵素-基質、抗原-抗体、DNA-DNA等があり、バイオセンサはこれらの組み合わせの一方を基材に固定化もしくは担持し分子認識材料として用いることによって、もう一方の物質を選択的に計測できるという原理を利用している。また、検知素子としては、酸素電極、過酸化水素電極、イオン電極、ISFET、光ファイバ、サーミスタなど様々な形式のものが提案されており、最近ではナノグラムオーダー程度の質量変化が検知できる水晶振動子やSAW素子、表面プラズモン共鳴素子などが使われる場合もある。
【0004】
近年では、このような化学分析システムを数センチ四方のガラスやプラスチックのような基板上に集積する研究、つまりマイクロ分析システムの研究が盛んになっている。例えば、チップ内部に反応物質を含む液体を流すために、内径100μm程度のごく細い溝、つまり微小空間を作りこんだチップが研究されている。この微小空間のもつ利点には、(1)空間が狭く、物質拡散に要する時間を短縮できる、(2)試料体積に対して比表面積が大きく界面を利用した化学プロセスを迅速に行える、(3)熱容量が小さく急速な温度切り替えが可能になる、(4)分析に要する試料量、エネルギー量等が低減でき、システムの小型化も期待できる、といったことが上げられ、スケールを小さくすることで測定の短時間化、高精度化を図る試みがなされている。
【0005】
バイオセンサにおいても、あらゆる場所に設置あるいは持ち運び可能な小型の装置で高性能な分析を短時間でできるものが期待されており、マイクロ分析システム化は重要な課題となっている。特に、分子認識素子においては前述の微小空間の利用は重要であり、これらの効果は大きい。つまり分子認識材料を基材に高濃度に固定又は担持し、この分子認識材料と特定物質の接触、認識を円滑に行うことのできる微小空間を分子認識素子に適用できれば、さらに高感度、高精度なバイオセンサが実現できると考えられているのである。
【0006】
そして近年では、この数百μmのオーダーの微小空間に対して、さらに小さな数十μm以下のオーダーの微小空間を適用しようという試みもなされている。
【0007】
例えばこのような目的のために、基材として、ニトロセルロース膜、ナイロン膜などのミクロフィルター、紙、不織布、糸等の多孔質体を使用する方法が知られている。これらの多孔質体は、実質表面積がみかけの表面積より非常に大きく、表面に多くの分子認識材料を固定化、又は担持することで感度を上げることが出来る。
【0008】
例えば、特許文献1には、平均孔径が0.1〜10μmで凝集粒子状、もしくは網目状の構造を有する多孔質層に分子認識材料を固定化又は担持する方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、直径約20μm程度のビーズに酵素を固定化し、微小流路内にこのビーズを充填して反応器を作製する方法が開示されている。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−2705平号公報
【特許文献2】
特開2000−230916号公報
【特許文献3】
特開平7−260790号公報
【非特許文献1】
Science, 262, 1706 (1993)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの多孔質体の孔径はミクロンからサブミクロンオーダー程度であり、酵素や抗原、抗体等バイオセンサに用いる分子認識材料や特定物質の多くは、遥かに小さいサイズを有している。よって、さらに微細な構造、つまり超微小空間を持った基材を用いることができればさらに実質表面積を拡大し検出感度をさらに上げられる可能性があるのである。
【0012】
また、前記特許文献1や特許文献2に示された基材には、その構造上、特定物質が到達できない閉塞した空間も多く存在していると思われる。これは基材の体積に対して反応に寄与できない無駄な空間となり、その分感度を低下させていることになる。
【0013】
さらに、前記特許文献1では多孔質体における孔径の均一性が低いため、空間が狭い領域と広い領域が混在している。また、前記特許文献2においても、ビーズを完全に最密充填させることは難しく、空間のサイズに偏りが発生してしまう。そして、これらの構造上の偏りは基材中への反応物質の円滑な浸入、分散を妨げる可能性がある。このため、測定の初期の状態では、特定物質の濃度も基材中でムラとなり、位置によって反応を起こす時間にズレが生じ、本来の特定物質の濃度に応じた物理的、化学的な変化の発生(例えば酵素反応であればそれに応じて電極間に流れる電流量)が定常状態になるのに時間がかるという問題があった。さらには定量に対する精度も落ちるという問題も生じていた。
【0014】
また、前記特許文献2では微小流路に長時間もしくは多量に検査溶液を注入して圧力をかけた場合、ビーズ自体も移動し、目詰まりを起こしてしまうという問題があった。
【0015】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、分子認識材料を高濃度で固定又は担持し、かつ特定物質が分子認識材料に短時間で円滑、均一に接触、反応することを可能とする高感度の分子認識素子、該分子認識素子を用いたバイオセンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る分子認識素子の製造方法は、柱状の部材と該柱状の部材を取り囲む領域を含む構造体を用意する工程、該構造体から該柱状の部材を除去して多孔質体を形成する工程、該多孔質体に充填材料を導入する工程、及び該領域を除去する工程、該充填材料に分子認識材料を固定または担持させる工程を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る分子認識素子は、柱状の部材とそれを取り囲む領域を含み構成される構造体から、該柱状の部材を除去して得られる多孔質体に充填材料を導入した後、該領域を除去して得られる該充填材料に分子認識材料が固定または担持されていることを特徴とする。
ここで前記構造体は、第1の材料を含み構成される前記柱状の部材が、第2の材料を含み構成される前記領域に取り囲まれており、且つ該構造体には該第2の材料が、該第1の材料と第2の材料の全量に対して20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれているのがよい。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る分子認識素子は、柱状構造体と、該柱状構造体に固定又は担持された分子認識能を有する分子認識材料とを有する分子認識素子であって、該柱状構造体は、第一の成分を含み構成される柱状物質が該第一の成分と共晶を形成し得る第二の成分を含み構成される部材中に分散している構造体から該柱状物質を除去して形成された柱状の空孔を有する多孔体を用いて該空孔内に材料を導入した後に該多孔体を除去して得られた該材料から構成される柱状の構造を有することを特徴とする。
【0019】
前記構造体は薄膜状であることが望ましい。
【0020】
前記多孔体に化学的処理を施した後、前記空孔内に前記材料を導入してもよく、該化学的処理は酸化処理が有用である。
【0021】
前記柱状物質はアルミニウムであり、前記部材がシリコンであって、且つ前記構造体におけるシリコンの割合が20atomic%以上70atomic%以下の範囲にあること、もしくは前記柱状物質がアルミニウムであり、前記部材がゲルマニウムであって、且つ前記構造体におけるゲルマニウムの割合が20atomic%以上70atomic%以下であることが好ましい。
【0022】
また、前記多孔体の主成分はシリコン、もしくはゲルマニウムであることが好ましい。
【0023】
前記柱状構造体の柱状部分の直径は0.5nm以上15nm未満であること、また、前記柱状構造体の柱状部分と隣合う柱状部分との間隔が5nm以上20nm未満であることが望ましい。
【0024】
前記柱状物質は結晶性物質であり、前記部材は非晶質物質であることが望ましい。
【0025】
前記分子認識材料は生体物質であることが望ましい。この生体物質は、蛋白質、特に酵素や抗原、抗体であること、もしくは遺伝子であることが望ましい。
【0026】
本発明に係るバイオセンサは、前記分子認識素子を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る分子認識素子の製造方法は、第一の成分を含み構成される柱状物質が、第一の成分と共晶を形成し得る第二の成分を含み構成される部材中に分散している構造体を用意する工程、該柱状物質を除去する除去工程、及び該除去工程により得られる柱状の空孔を有する多孔体の該空孔内に材料を導入する導入工程、前記部材を除去し柱状構造体を用意する工程、前記柱状構造体に分子認識能を有する分子認識材料を固定又は担持する工程を有することを特徴とする。前記多孔体に化学的処理を施した後、前記空孔内に前記材料を導入してもよく、該化学的処理は酸化処理が有用である。 前記除去工程は、エッチングであることが望ましい。
【0028】
前記導入工程は、電着、もしくは無電解析出であり、さらには、前記空孔の底部に触媒を形成した後に、触媒反応によって行う工程でも構わない。
【0029】
以下、上記多孔体の母材となる構造体について説明を加える。
【0030】
本発明で適用される構造体は、第1の成分と第2の成分を含み構成される構造体であって、該第1の成分を含み構成される柱状物質が、該第2の成分を含み構成される部材に取り囲まれているものである。この構成では、該構造体には該第2の成分が、該第1の成分と第2の成分の全量に対して20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれていることが望ましい。
【0031】
上記割合は、前記構造体を構成する前記第1の成分と第2の成分の全量に対する前記第2の成分の割合のことであり、好ましくは25atomic%以上65atomic%以下、より好ましくは30atomic%以上60atomic%以下である。
【0032】
なお、前記柱状物質は、実質的に柱状形状が実現していればよく、例えば柱状物質の成分として第2の成分が含まれていてもよいし、前記部材に第1の成分が含まれていてもよい。また、前記柱状物質やその周囲の部材に酸素、アルゴン、窒素、水素などが少量含まれていてもよい。
【0033】
上記割合は、例えば誘導結合型プラズマ発光分析法で定量分析することにより得られる。
【0034】
前記第1及び第2の成分としては、両者の成分系相平衡図において、共晶点を有する材料(いわゆる共晶系の材料)であることが好ましい。特に共晶点が300℃以上好ましくは400℃以上であるのがよい。なお、第1の成分と第2の成分として好ましい組み合わせとしては、第1の成分としてAlを用い、第2の成分としてSiを用いる形態、第1の成分としてAlを用い、第2の成分としてGeを用いる形態、あるいは第1の成分としてAlを用い、第2の成分としてSixGe1-x(0<x<1)を用いるのが好ましい。
【0035】
前記柱状物質の平面形状は、円形あるいは楕円形状である。前記構造体には、前記第2の成分を含み構成されるマトリックス中に複数の前記柱状物質が分散していることになる。柱状物質の径(平面形状が円の場合は直径)は、主として前記構造体の組成(即ち、前記第2の成分の割合)に応じて制御可能であるが、その平均径は、0.5nm以上50nm以下、好ましくは0.5nm以上20nm以下、さらに好ましくは0.5nm以上15nm以下である。楕円等の場合は、最も長い外径部が、上記範囲内であればよい。ここで平均径とは、例えば、実際のSEM写真(約100nm×70nmの範囲)で観察される柱状の部分を、その写真から直接、あるいはコンピュータで画像処理して、導出される値である。平均径の下限としては1nm以上、あるいは数nm以上であることが実用的な下限値である。
【0036】
また、複数の柱状物質間の中心間距離2Rは、2nm以上30nm以下、好ましくは5nm以上20nm以下、更に好ましくは5nm以上15nm以下である。勿論、中心間距離の下限として上記2Rは、柱状物質どうしが接触しない間隔は最低限備えている必要がある。
【0037】
前記構造体は、膜状の構造体であることが好ましく、かかる場合、前記柱状の部材は膜の面内方向に対して略垂直になるように前記第2の成分を含み構成されるマトリックス中に分散していることになる。膜状構造体の膜厚としては、特に限定されるものではないが、1nm〜100μmの範囲で適用できる。プロセス時間等を考慮してより現実的な膜厚としては、1nm〜1μm程度である。特に300nm以上の膜厚でも柱状構造が維持されていることが好ましい。
【0038】
前記構造体は膜状の構造体であることが好ましく、基板上に当該構造体が設けられていてもよい。基板としては、特に限定されるものではないが、石英ガラスなどの絶縁性基板、シリコン基板、ガリウム砒素、あるいはインジウム燐などの半導体基板、アルミニウムなどの金属基板あるいは支持部材としての基板上に上記構造体が形成できるのであれば、フレキシブル基板(例えばポリイミド樹脂など)も用いることができる。
【0039】
前記構造体は、非平衡状態で成膜する方法を利用して作製することができる。当該成膜方法としては、スパッタリング法が好ましいが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)、イオンプレーティング法をはじめとする任意の非平衡状態で物質を形成する成膜法が適用可能である。スパッタリング法で行う場合には、マグネトロンスパッタリング、RFスパッタリング、ECRスパッタリング、DCスパッタリング法を用いることができる。スパッタリング法で行う場合は、アルゴンガス雰囲気中で反応装置内の圧力を0.2Paから1Pa程度にして成膜を行う。スパッタリングの際には、ターゲット原料として前記第1の材料と第2の材料をそれぞれ別途用意しても良いが、予め所望の割合で第1の材料と第2の材料が焼成されたターゲット材料を用いてもよい。
【0040】
基板上に形成される前記構造体は、基板温度を20℃以上300℃以下、好ましくは20℃以上200℃以下で形成されることが好ましい。
【0041】
前記構造体から前記柱状物質を除去(ウェットエッチングあるいはドライエッチングなど)することにより複数の柱状の孔を有する多孔体(多孔質体)が形成される。エッチングには、柱状の部材を選択的に除去できればよく、エッチング液としては例えば、燐酸、硫酸、塩酸、硝酸などの酸が好適である。当該除去により形成される多孔体の孔は、互いに連結せず独立していることが好適である。
【0042】
上記構造体から多孔体を作製する方法として、第1の成分と第2の成分を含み構成される構造体であって、該第1の成分を含み構成される柱状の部材が、該第2の成分を含み構成される領域に取り囲まれており、且つ該構造体には該第2の成分が、該第1の成分と第2の成分の全量に対して20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれている該構造体を用意する工程、及び該構造体から該柱状の部材を除去する工程を有することが望ましい。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る分子認識素子、これを用いたバイオセンサ、及びその製造方法の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0044】
本実施形態は、従来の多孔質体と比較して、細孔径、及び、細孔の配列間隔が非常に微小で、かつ基板に垂直でストレートな細孔を有する新規の多孔質体を用いて、図1に示すように基板12上に超微細構造を持つ3次元柱状構造体11を作製し、該3次元柱状構造体11の表面に分子認識材料(後述参照)を固定、又は担持することで高感度分子認識素子を作製したものである。
【0045】
まず、本実施形態による多孔質膜について説明する。
【0046】
基板上に、例えばスパッタリング等の方法で、互いに共晶系にある複数の物質の膜を形成した場合、各々の成分は、膜中において混合することなく独立に存在する。そして、特定の材料系について、成膜条件と物質の組成が最適化された場合、図2に示すように、ある成分が微細な径をもつ柱状の形態、すなわち柱状物質22となって、他成分のマトリックス23中に分散して存在した構造が形成される。この構造は、本発明者らによって発見された新規な構造体であり、柱状物質22は、基板21との界面から膜表面まで貫通して存在する。形成される柱状物質22の1本の柱の径は、0.5nmから15nmの範囲である。また、柱状物質22の中心間間隔は、5nmから20nmの範囲にある。
【0047】
具体例を用いて説明すると、スパッタリングでアルミニウムとシリコンの混合膜を基板上に作製した場合、条件が最適化されると、非晶質なシリコンのマトリクス中に結晶性の柱状アルミニウムが形成される。形成される柱状アルミニウムの1本の柱の径は、0.5nmから15nmの範囲である。アルミニウムは、膜中において、基板界面から膜表面に至るまで、単一の柱として存在していることが走査型電子顕微鏡の観察によって示されている。同様の構造は、スパッタリングで作製したアルミニウムとゲルマニウムの混合膜に関しても、形成が確認されている。膜厚は、スパッタリング時間を調整することで制御することが可能であり、スパッタリングを中断しない限り、膜厚を厚くしても柱状構造が途切れることはない。
【0048】
本実施形態は、図3に示すように、上記の柱状物質を含む膜から柱状物質を除去したものを多孔質膜33として用い、その細孔32に3次元柱状構造体の材料となる物質を導入し、該多孔質膜を除去することによって前述の図1の示す3次元柱状構造体11を得て、さらに、その3次元柱状構造体11に分子認識材料(後述参照)を固定、または担持することで高感度分子認識素子を作製し得たものである。
【0049】
次に、本実施形態の製造方法について説明する。
【0050】
以下の工程(A)〜工程(C)により、図1のような非常に微細な構造を持った3次元柱状構造体に分子認識材料を固定または担持した分子認識素子を作製することができる。図4は、本実施形態による分子認識素子の製造方法を示した断面模式図である。
工程(A):多孔質膜の作製
まず、基板上に多孔質膜(図4(c)参照)を形成する工程を説明する。
【0051】
図4(a)に示すように、基板41を用意する。この基板41は、基本的に材質や厚さを限定されるものではなく、バイオセンサおける検知素子の方式にあわせて適宜決定すればよい。具体的にはガラス、金属、セラミックス、半導体、有機物等種々のものが使用可能である。ただし、後に説明する多孔質膜の空孔内に目的の3次元柱状構造体を形成する材料を導入する工程(B)において、導入する方法として電着法を用いる場合は導電性基板であるほうが望ましい。非導電性の基板で電着法を用いたい場合は、基板表面に導電性薄膜を形成すれば可能である。
【0052】
次に、図4(b)に示すように、互いに共晶径を形成する材料を適当な比率で含むターゲットを用いて、スパッタリング法等を用いて、柱状形態の第一の成分である柱状物質42が他成分のマトリクス43中に分散されている構造の薄膜を、基板41上に作製する。この場合、使用するターゲットは、2つの成分の混合体に限定されるものではなく、一方の物質の上にもう一方の物質が置かれているようなものでも良く、また、2つの物質が所望の面積比を与えるように貼りあわせられているような構成のものでも良い。例示すると、アルミニウムターゲット上にシリコンウエハーを適当な量置いた状態でスパッタリングを行うことで上記構造の膜を基板上に作製することができる。
【0053】
膜形成は、スパッタリングを例にとって説明するが、同様の構造が形成できる成膜法であれば、本発明に適用することができる。
【0054】
形成される柱状物質42の柱一本の平均径2rは、0.5nmから15nmの範囲であり、また柱状物質の平均中心間間隔2Rは、5nmから20nmの範囲にある(図4(b)参照)。
【0055】
次に、図4(c)に示すように、作製した構造体から、柱状物質を除去して、細孔44を有する多孔質膜45を形成する。柱状物質の選択除去には、ウェットエッチングが好ましく用いられる。例えば、非晶質なシリコンのマトリクス中に形成された結晶性の柱状アルミニウムの場合には、リン酸や硫酸でエッチングすることによって、シリコンの形状を変化させることなく、アルミニウムのみを除去し細孔44を形成することが可能である。
【0056】
またここでは、その後のプロセスを簡便に行うため、形成された多孔質膜に対して化学処理を施し、多孔質膜の性質を変化させる工程を行うこともある。この場合の化学処理とは、具体的には酸化処理等を示す。
工程(B):3次元柱状構造体の作製
図4(d)に示すように、上記工程(A)によって作製した多孔質膜45の細孔44内に目的の3次元柱状構造体を形成する材料46を導入する。この3次元柱状構造体形成材料46には、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、鉄、チタン、シリコン等金属類の単体、あるいは合金や酸化シリコン、窒化シリコンなどの半導体、ポリアニリン等の高分子材料を用いることが出来るが、本発明はこれらに限るものではない。すなわち、後に説明する工程(C)において分子認識材料の固定化、又は担持を行うことが可能な材料であればよい。例えば、金はチオール基を介することで、またシリコンはシラノール基を介することで、種々の分子を担持、又は固定化することが可能であり、金等の貴金属類やシリコン、酸化シリコンは3次元柱状構造体材料に好適である。
【0057】
導入方法については、基板が導電性を有していれば、電着プロセスによって金属等は簡単に導入することができる。また、電着プロセス等で空孔の底に触媒となる物質を形成し、その触媒の作用によって目的の材料を形成しても良い。また、細孔底部の触媒は、多孔質膜を形成する前に基板表面に蒸着等の方法によって形成しておいても良い。
【0058】
この操作によって、図4(d)に示すように、最初の膜において柱状物質を取り囲んでいたマトリクス中に、目的の3次元柱状構造体形成材料で構成される構造体が形成される。
【0059】
次に、図4(e)に示すように、3次元柱状構造体形成材料46の周囲のマトリクス43成分を除去する。この操作により、マトリクス43成分のみを選択的に除去し、周りを何も取り囲まれていない3次元柱状構造体47が基板41上に配列した構造である3次元柱状構造体47が形成される。
【0060】
選択的にマトリクス成分を除去する方法としては、例えばエッチング等のプロセスを適用することが可能である。例えば、シリコンが最初の多孔質材料であり、工程(A)において化学処理を施し酸化ケイ素に変化した場合には、希フッ酸によるエッチングが良好に適用可能である。
【0061】
以上の工程により、図1に示すような3次元柱状構造体が基板上に形成される。また、形成される3次元柱状構造体の柱の平均径2r´は、0.5nmから15nmであり、その平均中心間隔2R´は5nmから20nmの範囲にある(図4(e)参照)。このサイズは、特に生体由来の物質又はその類似物質の担持、及び固定化に好適であり、バイオセンサ用の分子認識素子として非常に有用である。
工程(C):3次元柱状構造体への分子認識材料の担持
本実施形態で使用する分子認識材料は、測定溶液中の特定成分の選択に係わる物質であり、例えば、測定溶液中の特定成分と選択的に直接反応する物質(いわゆるレセプター)、特定すべき成分の反応に係わる物質(例えば、特定成分の反応に選択的に触媒作用をもたらす物質)、測定溶液中の特定成分以外の物質を不活性化する物質等である。また、この分子認識材料は、検出の有無や程度の表示に係わる機能、例えば、レセプターが放出する物質や残余の物質と反応し発色する能等を兼ねるものであってもよい。
【0062】
本実施形態に使用される分子認識材料には、特に制約はないが、例えば、酵素、糖鎖、触媒、抗体、抗原、遺伝子、呈色試薬、などが挙げられるが、本発明はこれに限るものではない。
【0063】
これらの分子認識材料は、例えば、共有結合、イオン結合、吸着などによって、3次元柱状構造体に固定又は担持されるが、分子認識材料が良好に固定又は担持されれば、方法はこれに限らない。
【0064】
結合による方式では、3次元柱状構造体表面に直接作用できる反応基を持った分子認識材料を直接反応させて結合させてもよいし、3次元柱状構造体表面に直接作用出来る架橋材料を反応させて、さらに該架橋材料に分子認識材料を反応させることで結合させても構わない。
【0065】
吸着による方式では、分子認識機材料と、3次元柱状構造体の素材との組み合わせにおいて、適当な親和性を有する組み合わせを選択すればよい。また、3次元柱状構造体表面をいったん表面修飾することで、適当な親和性を有する表面を形成し、分子認識材料を固定化することも可能である。
【0066】
以上のような操作で、図4(f)に示すように、3次元柱状構造体表面に分子認識材料48を固定化して分子認識素子49を形成することができる。
【0067】
以上の工程(A)〜工程(C)によって、非常に微細な構造を持った3次元柱状構造体に分子認識材料を固定または担持した分子認識素子を作製することができる。
【0068】
該分子認識素子は、基板上に形成した該多孔質膜を利用して作製した3次元柱状構造体を用いるものである。よって、該多孔質膜を基板上にパターニングすることにより、該分子認識素子も基板上に容易にパターニングすることが出来る。また、3次元柱状構造体の高さも均一に揃えることが可能で、かつこの高さをナノメートルオーダーまで微細にすることも出来る。センサのマイクロ分析システム化においては、基板上に素子を高密度に集積することが重要であり、この形態は非常に有利である。
【0069】
次に、該分子認識素子を用いたセンサ、特にバイオセンサについて説明する。
【0070】
前述のように、一般的に、バイオセンサは分子認識素子と検知素子から構成される。
【0071】
検知素子は、分子認識素子が特定しようとする物質を認識したときに起こる反応を電流、電圧、光量、質量、熱量等の変化として捉えて表示する。現在でも、検知素子として酸素電極、過酸化水素電極、ISFET、光ファイバ、SAW、サーミスタ等数多くの検知素子が提案されているが、本発明のバイオセンサは高感度、高精度の分子認識素子を用いることが特徴であり、組み合わせる検知方式はこれらに限定されるものではない。
【0072】
また、前記分子認識材料は、複合して使用することも可能であり、例えば、複合酵素センサ、抗体−酵素センサ、酵素−微生物ハイブリッドセンサ、などを構成することも可能である。
【0073】
本発明のバイオセンサの測定対象は、直接分子認識材料が反応する特定物質である必要はなく、間接的に測定できるものでもよい。例えば、測定対象に特異的に存在する特定物質を検出することで測定が可能となる。よって、測定対象は、生体物質に限るものではなく、またそのサイズも限定されるものではない。ただし、特定物質は糖、蛋白質、アミノ酸、抗体、抗原や疑似抗原、ビタミン、遺伝子などの生物に含有される生体物質、及び、その関連物質や人工的に合成された擬似生体物質であることが望ましい。
【0074】
以上説明した本発明の要旨は、互いに共晶系にある複数の物質の膜を最適条件で形成し、第一の成分を含む微細な径の柱状物質が、第二の成分を含む部材中に分散して存在した構造体を作製し、該柱状物質を除去して柱状の空孔を有する多孔質膜を形成し、該多孔質膜の空孔内に材料を導入した後に該多孔質膜を除去して得られた3次元柱状構造体に分子認識能を有する成分を高濃度で固定又は担持して分子認識素子を作製するというものである。
【0075】
さらに該分子認識素子と検知素子を組み合わせる事で高感度、高精度、短時間測定可能なバイオセンサを提供するというものである。
【0076】
【実施例】
(実施例1:第1の材料Al、第2の材料Si)
本実施例では、多孔質膜として、シリコンに周囲を囲まれたアルミニウム構造体部分が円柱状構造であり、その径2rが3nmであり、間隔2Rが7nm、長さLが200nmであるアルミニウム細線を得た。
【0077】
まず、アルミニウム細線の作製方法を説明する。
【0078】
ガラス基板上に、RFマグネトロンスパッタリング法を用いて、シリコンをアルミニウムとシリコンの全量に対して55atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約200nm形成する。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ13を8枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWとした。また、基板温度は室温とした。
【0079】
なお、ここではターゲットとして、アルミニウムターゲット上にシリコンチップを8枚置いたものを用いたが、シリコンチップの枚数はこれに限定されるものではなく、スパッタ条件により変化し、アルミニウムシリコン混合膜の組成が約55atomic%近辺になれば良い。また、ターゲットはアルミニウムターゲット上にシリコンチップを置いたものに限定したものではなく、シリコンターゲット上にアルミニウムチップを置いたものでも良いし、シリコンとアルミニウムの粉末を焼結したターゲットを用いても良い。
【0080】
次に、このようにして得られたアルミニウムシリコン混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量は約55atomic%であった。なお、ここでは測定の都合上、基板として、カーボン基板上に堆積したアルミニウムシリコン混合膜を用いた。
【0081】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、アルミニウムシリコン混合膜を観察した。基板真上方向から見た表面の形状は、シリコンに囲まれた円形のアルミニウムナノ構造体が二次元的に配列していた。アルミニウムナノ構造体部分の孔径は3nmであり、その平均中心間間隔は7nmであった。また、断面をFE−SEMにて観察した所、高さは200nmであり、それぞれのアルミニウムナノ構造体部分はお互いに独立していた。
【0082】
また、X線回折法でこの試料を観察した所、結晶性を示すシリコンのピークは確認できず、シリコンは非晶質であった。
【0083】
従って、シリコンに周囲を囲まれた間隔2Rが7nm、径2rが3nm、高さLが200nmのアルミニウム細線を含んだアルミニウムシリコンナノ構造体を作製することができた。
【0084】
(比較例)
上記実施例の比較試料Aとして、ガラス基板上に、スパッタ法を用いて、シリコンをアルミニウムとシリコンの全量に対して15atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約200nm形成した。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ13を2枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWとした。また、基板温度は室温とした。
【0085】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、比較試料Aを観察した。基板真上方向から見た表面の形状は、アルミニウム部分は円形状にはなっておらず、縄状になっていた。即ち、アルミニウムの柱状構造体がシリコン領域内に均質に分散した微細構造体となっていなかった。さらに、その大きさは10nmを遥かに超えていた。また、断面をFE−SEMにて観察した所、アルミニウム部分の幅は15nmを超えていた。なお、このようにして得られたアルミニウムシリコン混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量は約15atomic%であった。
【0086】
さらに、比較試料Bとして、ガラス基板上に、スパッタ法を用いて、シリコンをアルミニウムとシリコンの全量に対して75atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約200nm形成した。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ13を14枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWとした。また、基板温度は室温とした。
【0087】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、比較試料Bを観察した。基板真上方向から見た試料表面には、アルミニウム部分を観察することができなかった。また、断面をFE−SEMにて観察しても、明確にアルミニウム部分を観察することができなかった。なお、このようにして得られたアルミニウムシリコン混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量(atomic%)を分析した。その結果、シリコンのアルミニウムとシリコンの全量に対する分量は約75atomic%であった。
【0088】
また、比較試料Aを作製した場合と、シリコンチップの枚数の条件のみを変え、アルミニウムシリコン混合体の全量に対するシリコンの割合が、20atomic%、35atomic%、50atomic%、60atomic%、70atomic%である試料を作製した。アルミニウムの柱状構造体がシリコン領域内に均質に分散した微細構造体となっている場合を○、なっていない場合を×としたものを以下に示す。
【0089】
【表1】
Figure 2004191341
このように、アルミニウムとシリコンの全量に対するシリコン含有量を、20atomic%以上70atomic%以下に調整することで、作製されたアルミニウムナノ構造体の孔径の制御が可能であり、また、直線性に優れたアルミニウム細線の作製が可能になる。なお、構造の確認には、SEMの他にもTEM(透過型電子顕微鏡)等を利用するのがよい。なお、上記含有量に関しては上記シリコンに代えてゲルマニウム、あるいはシリコンとゲルマニウムの混合物を用いても同様であった。
【0090】
さらに、比較試料Cとして、ガラス基板上に、スパッタ法を用いて、シリコンをアルミニウムとシリコンの全量に対して55atomic%含んだアルミニウムシリコン混合膜を約200nm形成した。ターゲットには、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップ13を8枚おいたものを用いた。スパッタ条件は、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWとした。また、基板温度は250℃とした。
【0091】
FE−SEM(電界放出走査型電子顕微鏡)にて、比較試料Cを観察した。基板真上方向から見た試料表面には、アルミニウムとシリコンの明瞭な境界を確認することができなかった。つまり、アルミニウムナノ構造体を確認することができなかった。即ち、基板温度が高すぎると、より安定な状態に変化してしまうため、このようなアルミニウムナノ構造体を形成する膜成長ができていないと思われる。
【0092】
なお、柱状の部材が分散した構造体を得る為に、ターゲットの組成をAl:Si=55:45などに設定することも好ましい形態である。
【0093】
以下、実施例を用いてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、材料、反応条件等は、同様な構造の分子認識素子、及びバイオセンサが得られる範囲で自由に変えることが可能である。
【0094】
以下、実施例2、3、4に分子認識素子を作製した例、実施例5、6、7、8に該分子認識素子を用いてバイオセンサを作製した例を示す。
(実施例2)
本実施例は、共晶を形成する物質としてアルミニウムとシリコンを用い酸化シリコンの多孔質膜を作製し、該多孔質膜を用いて金の3次元柱状構造体を作製し、分子認識材料としてグルコースオキシターゼを3次元柱状構造体に固定して分子認識素子を作製した例である。なお、グルコースオキシターゼは、グルコースの酸化反応に対する触媒能を持った酵素であり、グルコースに対する代表的な分子認識材料である。
【0095】
まず、シリコン多孔質膜の作製方法について説明する。
【0096】
RFマグネトロンスパッタリング法によって、タングステンを20nm堆積したシリコン基板上に200nmのアルミニウム−シリコン混合膜を成膜した。ターゲットは、4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のシリコンチップを6枚おいたものである。スパッタは、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:300Wの条件で行った。また、基板温度は室温とした。
【0097】
ここではターゲットとして、アルミニウムターゲット上にシリコンチップを6枚置いたものを用いたが、シリコンチップの枚数はスパッタ条件により変化するため、これに限定されるものではなく、後述するような、柱状のアルミウムがシリコン中に分散した所望の構造が形成できるものであればよい。また、ターゲットは、アルミニウムターゲット上にシリコンチップを置いたものに限定したものではなく、シリコンターゲット上にアルミニウムチップを置いたものでも良いし、シリコンとアルミニウムの粉末を焼結したターゲットを用いても良い。
【0098】
さらに、ここではスパッタリング法としてRFスパッタリング法を用いたが、これに限定されるものではなく、ECRスパッタリング法、DCスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法でもよい。さらに、スパッタリング条件は装置に依存しており、これに限定されるものではない。また、スパッタ法以外の蒸着法であっても、所望の構造体が形成できる方法であれば、本発明に適用可能である。
【0099】
次に、このようにして得られたアルミニウム−シリコン混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、アルミニウムとシリコンの全量に対する該シリコンの分量(atomic%)を分析した。その結果、アルミニウムとシリコンの全量に対する該シリコンの分量は約37atomic%であった。
【0100】
電界放出走査型電子顕微鏡(FE−SEM)にて、以上の様に作製されたアルミニウム−シリコン混合膜を観察したところ、シリコン部材に囲まれたほぼ円形の微細な柱状アルミニウムが二次元的に配列していた。柱状アルミニウム部分の画像処理より求めた平均径は2rは5nmであり、その平均中心間隔2Rは10nmであった。また、断面をFE−SEMにて観察したところ、膜の高さLは、200nmであり、それぞれの柱状アルミニウムの部分は互いに独立していた。
【0101】
また、X線回折法でこの薄膜試料を分析したところ、シリコンの回折線は確認できず、シリコンは非晶質であることがわかった。一方、複数のアルミニウムの回折線が確認できたことより、アルミニウムは多結晶であることが分かった。
【0102】
以上のことから、非晶質シリコンに周囲を囲まれ、平均径5nm、平均高さ200nmの結晶性の柱状アルミニウムが平均間隔10nmで配列されたアルミニウム−シリコン構造体の作製が確認できた。
【0103】
このアルミニウム−シリコン構造体98%硫酸中にて24時間浸し、アルミニウム柱状構造部分のみを選択的にエッチングして細孔を形成した。エッチング後の膜をFE−SEMで観察した結果、柱状のアルミニウムのみが除去され、多孔質膜になっていることが確認された。シリコン部の形状は、アルミニウム除去前と比較して実質的に変化していないことがわかった。この場合も断面をFE−SEMで観察したところ、アルミニウムは基板界面まで完全に除去されていることが明らかとなった。
【0104】
以上の工程によって、基板上に基板に対して垂直な貫通孔を有するシリコンの多孔質膜を作製した。
【0105】
最後に、作製されたシリコン多孔質膜を酸素雰囲気中で加熱した。ここでは、大気圧で酸素を50sccm流しながら、800℃で2時間加熱した。この結果、酸化ケイ素多孔質膜が作製された。酸化ケイ素の形成は、広域電子エネルギー損失構造解析(EELS)により確認された。酸化処理を行った後の多孔質膜をFE−SEMで観察した結果、細孔径にはほとんど変化が認められなかった。
【0106】
次に、作製した多孔質膜の細孔に3次元柱状構造体形成材料を導入し、3次元柱状構造体を作製する方法について説明する。
【0107】
まず、上記の工程で作製したシリコン多孔質膜を市販の電気メッキ液(高純度化学研究所製金用電気メッキ液、商品コードK−24E)中に入れ、40℃に保持した酸性浴(pH=4.5)中において、0.5A/dm2の電流密度で電着を行った。
【0108】
金の電着を行った後の膜は、純水で洗浄した後、FE−SEMで、表面及び断面の観察を行った。その結果、金が細孔中に均一に導入され、柱状構造を形成していることが確認された。
【0109】
この膜をさらに2%のフッ化水素酸中に浸漬し、金の周囲に存在する酸化ケイ素の除去を行った。酸化ケイ素の除去後のシリコン基板をFE−SEMで観察した結果、表面に微細な柱状構造の金が高密度で配列された3次元柱状構造体が形成されていることが確認された。画像処理より求めた柱状の金の平均径2r´は4nmであり、その平均中心間隔2Rは10nmであった。
【0110】
次に、作製した金の3次元柱状構造体に分子認識材料としてグルコースオキシターゼを固定化して分子認識素子を作製する方法について説明する。
【0111】
本実施例では、グルコースオキシターゼをアルカンチオール分子を介して金の3次元柱状構造体表面に固定化した。
【0112】
チオール分子は、貴金属類と自発的に結合することが知られているが、さらにチオール分子にアルキル基が導入されているとチオール分子が貴金属表面で規則的に配列するようになる。よって、該チオール分子を介することで、グルコースオキシターゼの規則的な配位を可能とし、グルコースオキシターゼを密に、また、多量に固定化することが可能となる。
【0113】
また、本実施例では、チオール分子を3次元柱状構造体表面に結合させた後に架橋材料をチオール分子に結合させて、該架橋分子にグルコースオキシターゼを結合させた。該方法は、操作数は増えるが架橋分子を使うことで様々な分子認識材料を固定化することが可能となる。
【0114】
図5は、金の3次元柱状構造体表面におけるグルコースオキシターゼの固定化を模式的に示した図である。
【0115】
5mMのメルカプトアルキルカルボン酸(図5(a)中の符号52参照)、25パーセントエタノール、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中に30分間、金の3次元柱状構造体51を浸漬する(図5(a)から図5(b)に示す3次元柱状構造体51の表面変化参照)。
【0116】
次に、10mM1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(図5(b)中の符号53参照)、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中に30分間、金の3次元柱状構造体51を浸漬し、引き続き、10mM N−ヒドロキシスルホフォコハク酸イミドナトリウム(図5(b)中の符号54参照)、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中に30分間、金の3次元柱状構造体51を浸漬する(図5(b)から図5(c)に示す3次元柱状構造体51の表面変化参照)。
【0117】
最後に、予め50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で透析したグルコースオキシターゼ(図5(c)中の符号55参照)の溶液中に、金の3次柱状元構造体51を浸漬する(図5(c)から図5(d)に示す3次元柱状構造体51の表面変化参照)。
【0118】
なお、各工程後、緩衝溶液により基板洗浄を行い、未反応物等は除去した。
【0119】
以上の方法により、本実施例では、金の3次元柱状構造体表面にグルコースオキシターゼを固定化し、分子認識材料を高濃度に固定化した分子認識素子を作製した。
(実施例3)
本実施例は、共晶を形成する物質としてアルミニウムとゲルマニウムを用いゲルマニウムの多孔質膜を作製し、該多孔質膜を用いて金の3次元柱状構造体を作製し、分子認識材料としてビオチンを金の3次元柱状構造体に固定して分子認識素子を作製した例である。
【0120】
なお、ビオチンはアビジンと特異的に結合する補酵素であり、この強い結合を利用して多くの物質や構造を標識することが可能であり、有用な分子認識材料である。
【0121】
まず、ゲルマニウム多孔質膜の作製方法について説明する。
【0122】
RFマグネトロンスパッタリング法によって、タングステンを20nm堆積したシリコン基板上に200nmのアルミニウム−ゲルマニウム混合膜を成膜した。ターゲットは4インチのアルミニウムターゲット上に15mm角のゲルマニウムチップを4枚おいたものである。スパッタは、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:1kWの条件で行った。また、基板温度は室温とした。
【0123】
ここではターゲットとして、アルミニウムターゲット上にゲルマニウムチップを4枚置いたものを用いたが、ゲルマニウムチップの枚数はスパッタ条件により変化するため、これに限定されるものではなく、後述するような、柱状のアルミウムがゲルマニウム中に分散した所望の構造が形成できるものであればよい。また、ターゲットはアルミニウムターゲット上にゲルマニウムチップを置いたものに限定したものではなく、ゲルマニウムターゲット上にアルミニウムチップを置いたものでも良いし、ゲルマニウムとアルミニウムの粉末を焼結したターゲットを用いても良い。
【0124】
さらに、ここではスパッタリング法としてRFスパッタリング法を用いたが、これに限定されるものではなく、ECRスパッタリング法、DCスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法でよい。さらに、スパッタリング条件は装置に依存しており、これに限定されるものではない。また、スパッタ法以外の蒸着法であっても、所望の構造体が形成できる方法であれば、本発明に適用可能である。
【0125】
次に、このようにして得られたアルミニウム−ゲルマニウム混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、アルミニウムとゲルマニウムの全量に対する該ゲルマニウムの分量(atomic%)を分析した。その結果、アルミニウムとゲルマニウムの全量に対する該ゲルマニウムの分量は約37atomic%であった。
【0126】
電界放出走査型電子顕微鏡(FE−SEM)にて、以上の様に作製されたアルミニウム−ゲルマニウム混合膜を観察したところ、ゲルマニウム部材に囲まれたほぼ円形の微細な柱状アルミニウムが二次元的に配列していた。柱状アルミニウム部分の画像処理より求めた平均径は2rは10nmであり、その平均中心間隔2Rは15nmであった。また、断面をFE−SEMにて観察した所、膜の高さLは200nmであり、それぞれの柱状アルミニウムの部分はお互いに独立していた。
【0127】
また、X線回折法でこの薄膜試料を分析したところ、ゲルマニウムの回折線は確認できず、ゲルマニウムは非晶質であることがわかった。一方、複数のアルミニウムの回折線が確認できたことより、アルミニウムは多結晶であることが分かった。
【0128】
以上のことから、非晶質シゲルマニウムに周囲を囲まれた間隔2Rが15nm、径2rが10nm、高さLが200nmの結晶性の柱状アルミニウムを含んだアルミニウム−ゲルマニウム構造体の作製が確認できた。
【0129】
このアルミニウム−ゲルマニウム構造体を98%硫酸中にて24時間浸し、アルミニウム柱状構造部分のみを選択的にエッチングして細孔を形成した。エッチング後の膜をFE−SEMで観察した結果、柱状のアルミニウムのみが除去され、多孔質膜になっていることが確認された。ゲルマニウム部の形状は、アルミニウム除去前と比較して実質的に変化していないことがわかった。この場合も断面をFE−SEMで観察したところ、アルミニウムは基板界面まで完全に除去されていることが明らかとなった。以上の工程によって、基板上に基板に対して垂直な貫通孔を有するゲルマニウムの多孔質膜を作製できた。
【0130】
次に、作製した多孔質膜の細孔に3次元柱状構造体形成材料を導入し、3次元柱状構造体を作製する方法について説明する。
【0131】
まず、上記の工程で作製したゲルマニウム多孔質膜を市販の電気メッキ液(高純度化学研究所製金用電気メッキ液、商品コードK−24E)中に入れ、40℃に保持した酸性浴(pH=4.5)中において、0.5A/dm2の電流密度で電着を行った。
【0132】
金の電着を行った後の膜は、純水で洗浄した後、FE−SEMで、表面及び断面の観察を行った。その結果、金が細孔中に均一に導入され、柱状構造を形成していることが確認された。
【0133】
この膜をさらに50%の硝酸中に浸漬し、金の周囲に存在するゲルマニウムの除去を行った。ゲルマニウムの除去後のシリコン基板をFE−SEMで観察した結果、表面に微細な柱状構造の金が高密度で配列された3次元柱状構造体が形成されていることが確認された。画像処理より求めた柱状の金の平均径2r´は9nmであり、その平均中心間隔2Rは15nmであった。
【0134】
次に、作製した金の3次元柱状構造体に分子認識材料としてビオチンを固定化して分子認識素子を作製する方法について説明する。
【0135】
試薬には、非特許文献1に紹介されているようなビオチンチオールを用いた。該ビオチンチオールはビオチンにチオール基が結合されている物質であり、一度の浸漬操作で貴金属表面に、目的の分子認識材料、つまりビオチンを固定化することができ簡便である。類似な物質として、特許文献3にはビオチンシランが開示されており、該ビオチンシランも3次元柱状構造体が金属や金属酸化物である場合は有用である。
【0136】
該ビオチンチオールを0.5mMの濃度でエタノールに溶解し、30分間金の3次元柱状構造体が形成された基板を浸漬した。その後、エタノールで基板を3回洗浄し、乾燥した。
【0137】
以上の方法により、本実施例では、金の3次元柱状構造体表面にビオチンを固定化し、分子認識材料を高濃度に固定化した分子認識素子を作製した。
(実施例4)
本実施例は、共晶を形成する物質としてアルミニウムとシリコンを用い酸化シリコンの多孔質膜を作製し、該多孔質膜を用いてシリコンの3次元柱状 構造体を作製し、分子認識材料としてDNAをシリコンの3次元柱状構造体に固定して分子認識素子を作製した例である。
【0138】
尚、標的核酸と特異的に結合し得る物質として核酸プローブを用いた遺伝子センサは現在盛んに開発が行われており、プローブDNAは代表的な分子認識材料のひとつである。
【0139】
まず、酸化シリコン多孔質膜の作製方法について説明する。
【0140】
RFマグネトロンスパッタリング法によって、タングステンを20nm堆積したシリコン基板上に200nmのアルミニウム−シリコン混合膜を成膜した。ターゲットは、4インチのアルミニウムターゲット上に実施例1のゲルマニウムチップのかわりに、15mm角のシリコンチップを6枚おいたものである。スパッタは、RF電源を用いて、Ar流量:50sccm、放電圧力:0.7Pa、投入電力:300Wの条件で行った。また、基板温度は室温とした。
【0141】
ここではターゲットとして、アルミニウムターゲット上にシリコンチップを6枚置いたものを用いたが、シリコンチップの枚数はスパッタ条件により変化するため、これに限定されるものではなく、後述するような、柱状のアルミウムがシリコン中に分散した所望の構造が形成できるものであればよい。また、ターゲットはアルミニウムターゲット上にシリコンチップを置いたものに限定したものではなく、シリコンターゲット上にアルミニウムチップを置いたものでも良いし、シリコンとアルミニウムの粉末を焼結したターゲットを用いても良い。
【0142】
さらに、ここではスパッタリング法としてRFスパッタリング法を用いたが、これに限定されるものではなく、ECRスパッタリング法、DCスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法でよい。さらに、スパッタリング条件は装置に依存しており、これに限定されるものではない。また、スパッタ法以外の蒸着法であっても、所望の構造体が形成できる方法であれば、本発明に適用可能である。
【0143】
次に、このようにして得られたアルミニウム−シリコン混合膜をICP(誘導結合型プラズマ発光分析)にて、アルミニウムとシリコンの全量に対する該シリコンの分量(atomic%)を分析した。その結果、アルミニウムとシリコンの全量に対する該シリコンの分量は約37atomic%であった。
【0144】
電界放出走査型電子顕微鏡(FE−SEM)にて、以上のように作製されたアルミニウム−シリコン混合膜を観察したところ、シリコンに囲まれたほぼ円形の微細な柱状アルミニウムが二次元的に配列していた。柱状アルミニウム部分の画像処理より求めた平均孔径2rは5nmであり、その平均中心間隔2Rは10nmであった。また、断面をFE−SEMにて観察した所、膜の高さは200nmであり、それぞれの柱状アルミニウムの部分はお互いに独立していた。
【0145】
また、X線回折法でこの薄膜試料を分析したところ、シリコンの回折線は確認できず、シリコンは非晶質であることがわかった。一方、複数のアルミニウムの回折線が確認できたことより、アルミニウムは多結晶であることが分かった。
【0146】
以上のことから、非晶質シリコンに周囲を囲まれた間隔2Rが10nm、径2rが5nm、高さLが200nmの結晶性の柱状アルミニウムを含んだアルミニウム−シリコン構造体薄膜の作製が確認できた。
【0147】
このアルミニウム−シリコン構造体薄膜を98%硫酸中にて24時間浸し、アルミニウム柱状構造部分のみを選択的にエッチングして細孔を形成した。エッチング後の膜をFE−SEMで観察した結果、柱状のアルミニウムのみが除去され、多孔質の膜になっていることが確認された。シリコン部の形状は、アルミニウム除去前と比較して実質的に変化していないことがわかった。この場合も断面をFE−SEMで観察したところ、アルミニウムは基板界面まで完全に除去されていることが明らかとなった。以上の工程によって、基板上に基板に対して垂直な貫通孔を有するシリコンの多孔質膜を作製できた。
【0148】
最後に、作製されたシリコン多孔質膜を酸素雰囲気中で加熱した。ここでは、大気圧で酸素を50sccm流しながら、800℃で2時間加熱した。この結果、酸化シリコン多孔質膜が作製された。酸化シリコンの形成は、広域電子エネルギー損失構造解析(EELS)により確認された。酸化処理を行った後の多孔質膜をFE−SEMで観察した結果、細孔径にはほとんど変化が認められなかった。
【0149】
次に、作製した多孔質膜の細孔に3次元柱状構造体形成材料を導入し、3次元柱状構造体を作製する方法について説明する。
【0150】
まず、酸化シリコン多孔質膜の細孔底部に、電着(電気メッキ)で金を導入した。電着は実施例1と同じメッキ液を用いて、0.3A/dm2の電流密度で5秒間電着を行った。電着後の基板は、純水でよく洗浄した後、乾燥させた。
【0151】
続いて、細孔底部に金を担持したこの酸化シリコン膜の形成されたシリコン基板を石英管中に保持し、13.3Pa以下まで減圧した後に、Ar気流中で440℃に加熱した。続いて、ヘリウムガスにシランガス10%混合した混合ガスを50sccmの流量で60秒間供給した。試料基板は、シランガス供給を止めた後、室温まで徐冷した後に取り出した。
【0152】
以上の工程を行った後の試料薄膜の断面をFE−SEMで評価した。その結果、細孔中にはシリコンの微細な柱状構造体が形成されていることが明らかとなった。X線回折分析等によって、このシリコンは高度に結晶化していることが確認された。この場合、細孔底部の金が触媒となって、VLS(Vapor-Liquid-Solid)メカニズムによって、結晶性のシリコンが形成されたと考えられる。以上の工程によって、多孔質酸化シリコン中に結晶性のシリコンの柱状構造体を形成することができた。
【0153】
細孔内にシリコン形成を行った上記基板をさらに2%のフッ化水素酸中に浸漬し、シリコンの周囲に存在する酸化ケイ素の除去を行った。酸化ケイ素の除去後のシリコン基板をFE−SEMで観察した結果、表面に微細な柱状構造のシリコンが高密度で配列された3次元柱状構造体が形成されていることが確認された。画像処理より求めた柱状のシリコンの平均径2r´は4nmであり、その平均中心間隔2Rは10nmであった。
【0154】
次に、作製したシリコンの3次元柱状構造体に分子認識材料としてプローブDNAを固定化して分子認識素子を作製する方法について説明する。
【0155】
プローブDNAの合成にはDNA自動合成機を用いて配列番号1の一本鎖核酸を合成した。なお配列番号1の一本鎖DNA末端にはDNA自動合成機での合成時にチオールモディファイア(Thiol-Modifier)を用いる事によってチオール基を導入した。続いて通常の脱保護を行いDNAを回収し、高速液体クロマトグラフィーにて精製し、以下の実験に用いた。
【0156】
配列番号:1 5'HS-(CH2)6-O-PO2-O-ACTGGCCGTCGTTTTACA3'
まず、アミノ基を結合したシラン化合物(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)[(CH3O)3SiC3H6NHC2H4NH2]を含むシランカップリング剤の1wt%水溶液を室温下で2時間攪拌し、上記シラン化合物の分子内のメトキシ基を加水分解した。
【0157】
次いで、この溶液に、3次元柱状構造体が形成された基板を室温(25℃)で20分間浸した後、引き上げて、乾燥させた。次に、基板を120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークしてシランカップリング処理を完結させ、3次元柱状構造体表面にアミノ基を導入した。
【0158】
次いで、N−マレイミドカプロイロキシスクシンイミド(以降EMCSと略)を2.7mg秤量し、ジメチルスルホキシド(DMSO)/エタノールの1:1溶液に最終濃度が0.3mg/mlとなる様に溶解したEMCS溶液を用意した。シランカップリング処理を行った3次元柱状構造体をこのEMCS溶液に室温で2時間浸して、シランカップリング処理によって3次元柱状構造体表面に担持されているアミノ基とEMCS溶液のカルボキシル基を反応させた。この状態で3次元柱状構造体表面にはEMCS由来のマレイミド基が表面に存在することになる。EMCS溶液から引き上げた3次元柱状構造体は、DMSO及びエタノールの混合溶媒及びエタノールで順次洗浄した後、窒素ガス雰囲気下で乾燥させた。
【0159】
上記配列番号1の一本鎖DNAを最終濃度が約400mg/mlになるようにTE溶液(10mM Tris−HCl(pH8)/1mM EDTA水溶液)に溶解し、一本鎖DNA溶液を調製した。
【0160】
次に、上記DNA溶液蒸留水を加え、一本鎖DNAの最終濃度が8μMとなるように調整し、前記3次元柱状構造体を形成した基板を30分間該溶液に浸漬して、マレイミド基と核酸プローブ末端のチオール基とを反応させた。
【0161】
以上の方法により、本実施例では、シリコンの3次元柱状構造体表面にプローブDNAを固定化し、分子認識材料を高濃度に固定化した分子認識素子を作製した。
(実施例5)
本実施例では、実施例2で作製したグルコースオキシターゼが固定化された分子認識素子を用いて作製したバイオセンサについて説明する。
【0162】
本実施例は、分子認識反応を電気的に検出するバイオセンサの一例である。
【0163】
図6は、本実施例におけるバイオセンサの断面を示す模式図である。
【0164】
図6に示すバイオセンサにおいて、実施例2で作製した分子認識素子604、及び、作用電極607、参照電極608、対向電極609を基板606上に配置した。各電極607〜609の配置はこれに限らないが、分子認識素子604上での反応により生成する過酸化水素を電極で検出するため、特に測定溶液をフロー系で流す場合は、各電極607〜609は分子認識素子604より測定溶液排出管610側に配置されることが好ましい。また、各電極607〜609の下地にはそれぞれの電極607〜609の短絡を防ぐために絶縁膜612を形成したが、基板606に絶縁基板を用いた構成でもよく、電極間の短絡を防げればこれに限らない。次に、この基板606上にスペーサー602を介して第二基板603を配置し、測定溶液601が導入される溶液用空間611を形成した。前記電極607〜609はこの第二基板603に形成しても構わない。この場合、下地やスペーサー等に絶縁材料を用いることで短絡を防げばよい。さらに、この溶液用空間611には、測定溶液601を導入、排出する細管、すなわち測定溶液導入管605、測定溶液排出管610が配置されている。電極607〜609は、図示しない電圧印加回路と電流測定回路に接続されている。
【0165】
次に、図6に示すバイオセンサを用いた測定方法について説明する。
【0166】
まず、0.1Mの濃度の塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝溶液を流速4μl/minで測定溶液導入管605から溶液用空間611に導入し、図示しない電圧印加回路から電極607〜609を通して、0.7Vの電位を印加しベースラインを得る。次に、10μMの濃度のグルコースを含む測定溶液601を導入すると、分子認識素子604のグルコースオキシターゼと測定溶液601中のグルコースとの反応により過酸化水素が生成され、その過酸化水素を媒介にしてその生成量に応じて各電極607〜609を通じ酸化電流が流れ始め、図示しない電流測定回路により、10秒後には50nAの酸化電流が観測された。
【0167】
これに対し、比較例として、みかけ上の面積が同一で3次元構造が形成されていない平滑な金表面に実施例2と同様にグルコースオキシターゼが固定化された素子を用いて、同様のバイオセンサを作製し同様の測定を行ったところ、2nA程度の酸化電流しか観測できず、また安定して観測されるまでの時間も長かった。
【0168】
以上の結果から、本実施例では、上記分子認識素子を用いることで、高感度な検出が短時間で行えるバイオセンサの作製が可能となることが確認された。
(実施例6)
本実施例では、実施例2で作製したグルコースオキシターゼが固定化された分子認識素子を用いて作製したバイオセンサの別の構成について説明する。
【0169】
本実施例は、分子認識反応を電気的に検出するバイオセンサの一例である。
【0170】
図7は本実施例におけるバイオセンサの断面を示す模式図である。
【0171】
図7に示すように、本実施例におけるバイオセンサは、実施例2で作製した分子認識素子が作用電極を兼ねて分子認識素子電極704として機能し、さらに参照電極708、対向電極709が溶液用空間711内に形成されたものである。実施例4と同様に各電極704、708、709が短絡しないように絶縁膜712が形成され、また、スペーサー702や第二基板703にも絶縁材料が使われている。ただし、電極間の短絡が防げれば絶縁膜712の配置や、基板706、第二基板703やスペーサー702の材料等はこれに限らない。電極704、708、709は、図示しない電圧印加回路と電流測定回路に接続されている。さらに、この溶液用空間711には、測定溶液701を導入、排出する細管、すなわち測定溶液導入管705、測定溶液排出管710が配置されている。
【0172】
本実施例では、分子認識素子を構成している3次元柱状構造体が金であり、また下地として基板706上に導電性薄膜(タングステン薄膜)707を形成しているため、図示ししない外部回路(電圧印加回路や電流印加回路)と導通させることが可能であり、分子認識素子と作用電極とを兼ねることが可能である。
【0173】
次に、図7に示すバイオセンサを用いた測定方法について説明する。
【0174】
実施例1と同様に、まず、0.1Mの濃度の塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝溶液を流速4μl/minで測定溶液導入管705から溶液用空間711に導入し、図示しない電圧印加回路から電極704、708、709を通して、0.7Vの電位を印加しベースラインを得る。次に、10μMの濃度のグルコースを含む測定溶液701を導入すると、分子認識素子電極704のグルコースオキシターゼと測定溶液701中のグルコースとの反応により過酸化水素が生成され、その過酸化水素の生成量に応じて各電極704、708、709を通じ酸化電流が流れ始め、図示しない電流測定回路により、10秒後には40nAの酸化電流が観測された。
【0175】
これに対し、比較例として、みかけ上の面積が同一で3次元構造が形成されていない平滑な金表面に実施例2と同様にグルコースオキシターゼが固定化された素子を用いて、同様のバイオセンサを作製し同様の測定を行ったところ、2nA程度の酸化電流しか観測できず、また安定して観測されるまでの時間も長かった。
【0176】
本実施例におけるバイオセンサの構成では作用電極と分子認識素子を兼ねるため、実効電極面積を規定することは難しいが、センサ構成が簡素化され、小型化が可能になる。
【0177】
以上の結果から、本実施例では、上記分子認識素子を用いることで、小型であり、高感度な検出が短時間で行えるバイオセンサの作製が可能となることが確認された。
(実施例7)
本実施例では、実施例3で作製したビオチンが固定化された分子認識素子を用いて作製したバイオセンサについて説明する。本実施例は、分子認識反応を質量変化として検出するバイオセンサの一例である。
【0178】
図8は、本実施例におけるバイオセンサの断面を示す模式図である。
【0179】
図8に示すバイオセンサは、上記実施例3のビオチンが固定化された分子認識素子を水晶振動子電極上に形成したものである。具体的には、水晶振動子83を挟んでその両面に一対の電極(プラス側電極とマイナス側電極)82が配置され、その両電極82間に所定電圧を印加しその水晶振動子82を特定の周波数で発振させる発振器84(外部回路86)が接続された構成において、電極82上に、実施例3と同様な方法で作製されたビオチンを固定化した分子認識素子81が形成されたものである。
【0180】
本実施例に用いる水晶振動子83は、特定の周波数に対して電気的インピーダンスが低下する。この特定の周波数は共振周波数とも呼ばれ、水晶振動子の密度や厚さによって以下の式:
Δf = Δm/(A・ρ・t) ・f (1)
[△f:共振周波数の変化(Hz)、△m:電極表面の重量変化(g)、f:基本共振周波数(Hz)、A:電極の面積(cm2)、ρ:水晶の密度(g/cm3)、t:水晶の厚さ(cm)]の関係を満たす。
【0181】
ここで、f/(A・ρ・t) = K = 一定
とおくと、式(1)は
△f=K・△m (2)
と表される。
【0182】
従って、電極表面に分子認識材料を固定化すれば、検出すべき特定物質との結合により重量が増加し、これが共振周波数の変化となって現れる。本バイオセンサはこの変化量を測定し、ビオチンと特異的に結合するアビジンを検出するものである。
【0183】
次に、図8に示すバイオセンサを用いた測定方法について説明する。
【0184】
まず、20mMリン酸緩衝液(pH7.4)10ml中に、上記ビチオンが固定された分子認識素子81と電極82が配置された水晶振動子83を浸漬する。この溶液中に100μlの1mg/mlアビジン溶液を注入すると、ビオチンとアビジンは特異的に結合し、電極表面の重量が変化する。その質量変化に伴う水晶振動子83の共振周波数の変化を測定した。
【0185】
これに対し、比較例として、みかけ上の面積が同一で3次元柱状構造体が形成されていない平滑な金表面に実施例3と同様な方法でビオチンの固定化処理を行い、これを電極として配置した水晶振動子に対しても同様に浸漬し共振周波数の変化を測定した。
【0186】
その結果、図9の水晶振動子の周波数変化を示すグラフ(横軸:時間、縦軸:周波数変化量)に示すように、本実施例の3次元構造を取り入れたバイオセンサ(図中の実線で示す変化曲線参照)のほうが比較例の平滑構造のバイオセンサ(図中の破線で示す変化曲線参照)よりも、アビジン溶液を注入前後での周波数の変化量が大きく、また定常化するまでの時間も短かった。
【0187】
以上の結果から、本実施例では、上記分子認識素子を用いることで、高感度な検出が短時間で行えるバイオセンサの作製が可能となることが確認された。
(実施例7)
本実施例では、実施例4で作製したDNAが固定化された分子認識素子101を用いて作製したバイオセンサについて説明する。
【0188】
本実施例は分子認識反応を光学的に検出するバイオセンサの一例である。
【0189】
図10(a)及び(b)は、本実施例におけるバイオセンサの断面を示す模式図である。図10(a)及び(b)に示すバイオセンサでは、いずれも分子認識素子101としてDNAが固定された3次元柱状構造体が基板102上に形成されている。
【0190】
このうち、図10(a)に示すバイオセンサは、基板102上の分子認識素子101を挟む両端に液留め103を形成し、その基板102上の分子認識素子101に向けて滴下し使用する場合の構成例である。
【0191】
これに対し、図10(b)に示すバイオセンサは、前述の図6及び図7と同様に、フロー系使用する場合の構成例である。すなわち、このバイオセンサでは、分子認識素子101が形成された基板102と、第二基板104との間にスペーサー105を介して溶液用空間を形成し、その上流側に測定溶液導入管107、その下流側に測定溶液排出管108を設け、測定溶液導入管107から溶液用空間内に測定溶液106を導入し、基板102上の分子認識素子101を通して測定溶液排出管108から排出するようになっている。ただし、測定は、図示しない蛍光測定器で行うため、第二基板104には、蛍光発光の観察を阻害しない基板を用いている。
【0192】
次に、図10(a)に示す構成のバイオセンサを用いた測定方法について説明する。
【0193】
まず、配列番号1のDNAと相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAをDNA自動合成機で合成し、5’末端にローダミンを結合させて標識化した一本鎖DNAを得た。この標識化一本鎖DNAを1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に最終濃度1μMとなるように溶解した。この溶液を測定溶液とし、図10(a)の分子認識素子101上に滴下して、室温(25℃)で3時間反応を行った。その後、1M NaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液で洗浄して未反応の一本鎖DNAを洗い流した。
【0194】
次に、該分子認識素子101上の蛍光発光を、ローダミンBに適するフィルターセットを装着した倒立型蛍光顕微鏡を用いて観察したところ、強い蛍光が確認された。
【0195】
これに対し、比較例として、みかけ上の面積が同一で3次元柱状構造体が形成されていない平滑なシリコン表面に実施例4と同様にDNAの固定化処理を行った素子を用いて同様のセンサを作製し同様の測定を行ったところ、弱い蛍光しか観察されなかった。
【0196】
以上の結果から、本実施例では、上記分子認識素子を用いることで、測定溶液が小量の場合でも高感度な検出が行えるバイオセンサの作製が可能となったことが確認された。
【0197】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、超微細構造を持った多孔質膜を形成し、該多孔質膜から超微小空間を有する3次元柱状構造体を形成して分子認識材料を固定する基材として用いることで、分子認識材料を高濃度に固定又は担持し、また、分子認識材料と特定物質の接触、認識を円滑に行うことのできる分子認識素子を作製することが可能となる。また、該分子認識素子を用いることにより、少量の測定溶液に対しても高感度、高精度で測定ができ、さらに測定の短時間化を可能とするバイオセンサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る3次元柱状構造体の構造を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る柱状物質が形成された膜の構造を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る多孔質膜の構造を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る分子認識素子の作製工程を示す断面模式図である。
【図5】実施例2の分子認識材料の3次元柱状構造体への固定化を説明する模式図である。
【図6】実施例5のバイオセンサの断面を示す模式図である。
【図7】実施例6のバイオセンサの断面を示す模式図である。
【図8】実施例7のバイオセンサの断面を示す模式図である。
【図9】実施例7のバイオセンサを用いた測定結果を示す模式図である。
【図10】実施例8のバイオセンサの断面を示す模式図である。
【符号の説明】
11 3次元柱状構造体
12 基板
21 基板
22 柱状物質
23 他成分のマトリックス
31 基板
32 細孔
33 多孔質膜
41 基板
42 柱状物質
43 他成分のマトリクス
44 細孔
45 多孔質膜
46 3次元柱状構造体形成材料47 3次元柱状構造体
48 分子認識材料
49 分子認識素子
51 金の3次元柱状構造体
52 メルカプトアルキルカルボン酸
53 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩
54 N−ヒドロキシスルホフォコハク酸イミドナトリウム
55 グルコースオキシターゼ
601 測定溶液
602 スペーサ
603 第二基板
604 分子認識素子
605 測定溶液導入管
606 基板
607 作用電極
608 参照極
609 対向電極
610 測定溶液排出管
611 溶液用空間
612 絶縁膜
701 測定溶液
702 スペーサ
703 第二基板
704 分子認識素子電極
705 測定溶液導入管
706 基板
707 下地となった導電性薄膜
708 参照極
709 対向電極
710 測定溶液排出管
711 溶液用空間
712 絶縁膜
81 分子認識素子
82 電極
83 水晶振動子
84 発振器
85 発振周波数測定器
101 分子認識素子
102 基板
103 液留め
104 第二基板
105 スペーサー
106 測定溶液
107 測定溶液導入管
108 測定溶液排出管

Claims (29)

  1. 柱状の部材と該柱状の部材を取り囲む領域を含む構造体を用意する工程、該構造体から該柱状の部材を除去して多孔質体を形成する工程、該多孔質体に充填材料を導入する工程、及び該領域を除去する工程、該充填材料に分子認識材料を固定または担持させる工程を有することを特徴とする分子認識素子の製造方法。
  2. 前記構造体は、第1の材料を含み構成される前記柱状の部材が、第2の材料を含み構成される前記領域に取り囲まれており、且つ該構造体には該第2の材料が、該第1の材料と第2の材料の全量に対して20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれている請求項1記載の分子認識素子の製造方法。
  3. 柱状の部材とそれを取り囲む領域を含み構成される構造体から、該柱状の部材を除去して得られる多孔質体に充填材料を導入した後、該領域を除去して得られる該充填材料に分子認識材料が固定または担持されていることを特徴とする分子認識素子。
  4. 前記構造体は、第1の材料を含み構成される前記柱状の部材が、第2の材料を含み構成される前記領域に取り囲まれており、且つ該構造体には該第2の材料が、該第1の材料と第2の材料の全量に対して20atomic%以上70atomic%以下の割合で含まれている請求項3記載の分子認識素子。
  5. 柱状構造体と、該柱状構造体に固定又は担持された分子認識能を有する分子認識材料とを有する分子認識素子であって、
    該柱状構造体は、第一の成分を含み構成される柱状物質が該第一の成分と共晶を形成し得る第二の成分を含み構成される部材中に分散している構造体から該柱状物質を除去して形成された柱状の空孔を有する多孔体を用いて該空孔内に材料を導入した後に該多孔体を除去して得られた該材料から構成される柱状の構造を有することを特徴とする分子認識素子。
  6. 前記構造体が薄膜状である請求項5に記載の分子認識素子。
  7. 前記柱状構造体は、前記多孔体に化学的処理を施した後、前記空孔内に前記材料を導入して得られる請求項5又は6に記載の分子認識素子。
  8. 前記化学的処理が酸化処理である請求項7に記載の分子認識素子。
  9. 前記柱状物質がアルミニウムであり、前記部材がシリコンであって、且つ前記構造体におけるシリコンの割合が20atomicic%以上70atomic%以下の範囲にある請求項5乃至8のいずれか1項に記載の分子認識素子。
  10. 前記柱状物質がアルミニウムであり、前記部材がゲルマニウムであって、且つ前記構造体におけるゲルマニウムの割合が20atomic%以上70atomic%以下の範囲にある請求項5乃至8のいずれか1項に記載の分子認識素子。
  11. 前記多孔体の主成分がシリコンである請求項5乃至8のいずれか1項に記載の分子認識素子。
  12. 前記多孔体の主成分がゲルマニウムである請求項5乃至8のいずれか1項に記載の分子認識素子。
  13. 前記柱状構造体の柱状部分の直径が0.5nm以上15nm以下である請求項5乃至12のいずれか1項に記載の分子認識素子。
  14. 前記柱状構造体の柱状部分と隣合う柱状部分との間隔が5nm以上20nm以下である請求項5乃至13のいずれか1項に記載の分子認識素子。
  15. 前記柱状物質は結晶性物質であり、前記部材は非晶質物質である請求項5乃至14のいずれか1項に記載の分子認識素子。
  16. 前記分子認識材料が生体物質であることを特徴とする請求項5乃至15のいずれか1項に記載の分子認識素子。
  17. 前記分子認識材料が蛋白質であることを特徴とする請求項5乃至16のいずれか1項に記載の分子認識素子。
  18. 前記蛋白質が酵素であることを特徴とする請求項17に記載の分子認識素子。
  19. 前記蛋白質が抗原、あるいは抗体であることを特徴とする請求項17に記載の分子認識素子。
  20. 前記生体物質が遺伝子であることを特徴とする請求項17に記載の分子認識素子。
  21. 請求項5乃至20に記載の分子認識素子を備えることを特徴とするバイオセンサ。
  22. 第一の成分を含み構成される柱状物質が、第一の成分と共晶を形成し得る第二の成分を含み構成される部材中に分散している構造体を用意する工程、該柱状物質を除去する除去工程、及び該除去工程により得られる柱状の空孔を有する多孔体の該空孔内に材料を導入する導入工程、前記部材を除去し柱状構造体を用意する工程、前記柱状構造体に分子認識能を有する分子認識材料を固定又は担持する工程を有することを特徴とする分子認識素子の製造方法。
  23. 前記第一の成分を含み構成される柱状物質を除去する工程後、前記多孔体に化学的処理を施す工程を有する請求項22に記載の分子認識素子の製造方法。
  24. 前記化学的処理は、酸化処理である請求項23に記載の分子認識素子の作製方法。
  25. 前記第一の成分を含み構成される柱状物質を除去する工程が、エッチングである請求項22乃至24のいずれか1項に記載の分子認識素子の製造方法。
  26. 前記部材を除去し前記柱状構造体を用意する工程において、該部材を除去する工程がエッチングである請求項22乃至25のいずれか1項に記載の分子認識素子の製造方法。
  27. 前記空孔内に材料を導入する工程が、電着である請求項22乃至26のいずれか1項に記載の分子認識素子の製造方法。
  28. 前記空孔内に材料を導入する工程が、無電解析出である請求項22乃至26のいずれか1項に記載の分子認識素子の製造方法。
  29. 前記空孔内に材料を導入する工程は、前記空孔の底部に触媒を形成した後に、触媒反応によって行う工程である請求項22乃至26のいずれか1項に記載の分子認識素子の製造方法。
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