JP2004190058A - イリジウムの分離精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記水溶液に還元剤として標準単極電位(標準水素電極規準)0〜0.5Vの金属を添加して接触反応させ、生成される沈澱を除去する還元沈殿工程、および得られた母液を酸化処理した後、アルカリ塩を添加してイリジウムを結晶性沈殿として分離する結晶化精製工程を含むことを特徴とするイリジウムの分離精製方法などによって提供。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イリジウムの分離精製方法に関し、さらに詳しくは、イリジウムと随伴元素を含有する水溶液からイリジウムを分離精製する際に、いずれの白金族元素やその他の随伴する元素が共存していても、イリジウムのみを選択的かつ確実に分離し、精製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イリジウムは、自動車等の廃棄ガスを分解するための貴金属触媒、白金族元素酸化物を含む被覆層を有する不溶性金属電極、半導体集積回路用のスパッタリングターゲット材および高融点物の溶融用ルツボなどに使用されている貴重な白金族元素の工業用材料である。
【0003】
白金族元素は、資源的に希少な元素で、白金族元素を高品位で含有する白金鉱石のような天然鉱物での産出は少なく、工業的に生産される白金族元素の原料は、銅、ニッケル、コバルトなどの非鉄製錬からの副産物、自動車排ガス処理触媒など各種の使用済み廃触媒などからが大部分を占めている。
【0004】
この非鉄金属製錬からの副産物は、製錬原料の中にごく微量含有されているイリジウムを始め、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びオスミウムなどの白金族元素が、その化学的性質から主金属である銅、ニッケルなどの硫化濃縮物及び粗金属の中に濃縮され、さらに電解精製など主金属回収工程で残滓等として白金族元素を含む貴金属濃縮物で分離されるものである。この濃縮物には、主金属である銅、ニッケルなどと共に、他の構成元素である金、銀等の貴金属、セレン、テルル等のVI族元素、ヒ素などV族元素が、白金族元素に比べて高含有量で共存するのが通常である。その後、金、銀の回収を経て、白金族元素の回収が行われるが、通常は一旦液中に浸出してから溶媒抽出、イオン交換法などで精製分離して白金族元素の濃縮物として回収される。
【0005】
また、他の白金族元素の濃縮物は、上記自動車等の廃棄ガスを分解するための貴金属触媒、白金族元素酸化物を含む被覆層を有する不溶性金属電極、半導体集積回路用のスパッタリングターゲット材、および高融点物の溶融用ルツボなど工業用材料として使用された白金族元素の含有物を、リサイクルする過程で発生する。
【0006】
これらの白金族元素の濃縮物が、イリジウム等の白金族元素の製造の主要な原料である。
白金族元素はその化学的性質が相互に非常によく似ていることから、天然においても白金族元素は共存した状態で存在し、その分離、精製は困難で、特に、イリジウムについては、一般的に金属の分離精製に使用される沈澱法、溶媒抽出、イオン交換法を単純に適用するだけでは、分離することができない。
【0007】
この解決策として、溶媒抽出剤、吸着剤等を用いた方法が提案されている。
溶媒抽出剤を用いた相互分離法としては、イリジウムを含む溶液をイリジウムが四価で存在可能な高い電位まで酸化後、溶媒抽出剤としてトリブチルフォスフェイト(以後、TBPと記載)と接触混合して、イリジウムを抽出する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
また、吸着剤を用いた相互分離法としては、溶液中のイリジウムを三価に還元し溶液の酸度を調整した後、イミノ2酢酸を官能基とするキトサンを加えてイリジウムを吸着させる方法(例えば、特許文献1参照)、還元された供給原料の溶液を、グリコールメタクリレートクロマトグラフ媒体を通す方法(例えば、特許文献2参照)、液電位をイリジウムが四価で存在可能な高い電位まで酸化後、グリコールメタクリレートクロマトグラフ媒体を用いて吸着し、還元剤で溶離する方法(例えば、特許文献3参照)がある。
【0009】
これらの方法は、共存する白金族元素が限られているとき、あるいはイリジウムの含有量が他の元素に比べて圧倒的に多いときには有効な場合もあるが、通常の白金族元素の濃縮物には共存する白金族元素及び他の随伴元素が多いので適用には問題がある。すなわち、TBPを用いた溶媒抽出法では、事前に白金、ルテニウム、オスミウム、パラジウムが完全に分離されている事が大前提になっており、これらが残存した場合には、TBPと共に抽出、逆抽出され、最終的な結晶化でも分離することができない。そこで、TBP抽出前の白金、ルテニウム、オスミウム、パラジウムの残存量を厳しく管理しないと、製品化可能なイリジウムを得ることが困難である。
【0010】
また、キトサンを用いた方法では、大量のキトサンの使用が必要であるとともに白金族元素との相互分離が不十分である。また、グリコールメタクリレートクロマトグラフ媒体ではイリジウム、ロジウム、ルテニウムの三元素の混合物としてしか分離されないため、酸化還元電位の調整が不可欠である。酸化還元電位の調整を実施した場合も、TBPによる溶媒抽出同様に、白金、ルテニウム、オスミウム、パラジウムが前工程で完全に分離されていないと製品化可能なイリジウム化合物を得る事は出来ない。
【0011】
【非特許文献1】
デ・エス・フレッツ(D.S.Flet),「インターナショナル・プレシャス・メタルス・インステチュウト・セミナー(International Precious Metals Institute Seminar)」,(英国),1982年,p.145−168
【特許文献1】
特許第2941073号公報(第1頁)
【特許文献2】
特開2002−303614号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献3】
特開2001−98335号公報(第1頁、第2頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、イリジウムと随伴元素を含有する水溶液からイリジウムを分離精製する方法において、いずれの白金族元素やその他の随伴する元素が共存しても、イリジウムのみを選択的かつ確実に分離し、精製する方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、イリジウムを分離精製する方法について、鋭意研究を重ねた結果、イリジウムと随伴元素を含有する水溶液に対して、特定の還元沈殿工程と結晶化精製工程とを組合せて適用したところ、イリジウムのみを選択的かつ確実に分離できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、イリジウムと随伴元素を含有する水溶液からイリジウムを分離精製する方法において、前記水溶液に還元剤として標準単極電位(標準水素電極規準)0〜0.5Vの金属を添加して接触反応させ、生成される沈澱を除去する還元沈殿工程、および得られた母液を酸化処理した後、アルカリ塩を添加してイリジウムを結晶性沈殿として分離する結晶化精製工程を含むことを特徴とするイリジウムの分離精製方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、還元沈殿工程において添加する還元剤がビスマスであることを特徴とするイリジウムの分離精製方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、還元沈殿工程における前記水溶液の塩素イオン濃度が1mol/l以上であることを特徴とするイリジウムの分離精製方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、さらに、還元沈殿工程に先立って、金属以外の還元剤を添加して予め還元処理することを特徴とするイリジウムの分離精製方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、結晶化精製工程の酸化処理における酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を700mV以上とすることを特徴とするイリジウムの分離精製方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、結晶化精製工程の酸化処理が硝酸の添加によるものであることを特徴とするイリジウムの分離精製方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、結晶化精製工程で添加するアルカリ塩が、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、フランシウムイオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、アミン塩、又はヒドラジニウムイオンから選ばれる少なくとも1種を含む水溶性化合物であることを特徴とするイリジウムの分離精製方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、前記水溶性化合物が、塩化カリウム又は塩化アンモニウムであることを特徴とするイリジウムの分離精製方法が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のイリジウムの分離精製方法を詳細に説明する。
本発明のイリジウムの分離精製方法は、イリジウムと随伴元素を含有する水溶液に、還元剤として標準単極電位(標準水素電極規準)0〜0.5Vの金属を添加して接触反応させ、生成される沈澱を除去する還元沈殿工程、および得られた母液を酸化処理した後、アルカリ塩を添加してイリジウムを結晶性沈殿として分離する結晶化精製工程を含む。
【0023】
(1)イリジウムと随伴元素を含有する水溶液
本発明に用いるイリジウムと随伴元素を含有する水溶液としては、特に限定されるものではなく、例えば、上記非鉄金属精錬工程、又は工業材料のリサイクルでの白金族元素の濃縮物を鉱酸によって溶解した液が用いられる。通常は、塩酸と、塩素等のハロゲン系及び硝酸等の酸化剤を用いて溶解した水溶液である。さらに、これら水溶液を事前に溶媒抽出法、吸着法等の分離方法で処理して得られる、より高濃度にイリジウムが濃縮された水溶液が用いられる。
【0024】
ここで、白金族元素としては、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びオスミウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が随伴してイリジウムと共存する。また、他の随伴元素としては、特に限定されるものではなく、例えば、白金族元素の濃縮物の原料源により異なるが、非鉄金属精錬の濃縮物からの場合には、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、金、銀、スズ、鉛等のIV族元素、ヒ素、アンチモン、ビスマスなどV族元素、セレン、テルル等のVI族元素等が挙げられる。
【0025】
(2)還元沈殿工程
本発明の還元沈殿工程は、イリジウムと随伴元素を含有する水溶液に、還元剤として、標準単極電位(標準水素電極規準)0〜0.5Vの金属を添加して接触反応させ、随伴元素の一部を金属状態に還元して沈澱分離する工程である。
これは、白金族元素の中でも特にイリジウムのみが金属状態への還元抵抗性が非常に高いため、適切な還元作用を有する還元剤を用いた緩和な還元沈殿反応、例えば置換沈殿(セメンテーション)反応によって、イリジウム以外の白金族元素、金、及び銀を含む貴金属元素など還元剤(置換剤)よりも貴な金属イオンを一括還元し置換沈殿分離するものである。
【0026】
ここで、標準単極電位とは、25℃で純金属と平衡にある溶液中のイオンの活量が1である状態での酸化還元電位(平衡電位)であり、標準水素電極を規準にした値を用いる。例えば、金+1.5V、白金+1.2V、銀+0.80V、銅+0.34V、ヒ素+0.3V、ビスマス+0.23V、アンチモン+0.2V、水素0Vの値である。
【0027】
本発明の還元剤としては、標準単極電位(標準水素電極規準)が0〜0.5Vの金属を使用する。即ち、標準単極電位(標準水素電極規準)が0V未満(マイナス)の金属、例えば、鉄、ニッケルなどを使用すると、イリジウムまでも置換沈殿されて損失となる。逆に、標準単極電位(標準水素電極規準)が0.5Vを超える金属、例えば、テルル、銀などを使用すると、白金族元素のうち、比較的還元されにくいルテニウムの置換沈殿が殆どできず、また、他の白金族元素の置換沈殿も不完全になる。
【0028】
本発明の標準単極電位(標準水素電極規準)が0〜0.5Vの金属としては、アンチモン、銅、ビスマスが使用できる。このうち、アンチモンは酸濃度低下により容易に加水分解しやすい。また銅は塩酸濃度が高いときには、反応終了時における液の酸化還元電位が0V未満に低下するために、イリジウムまで還元されることがある。したがって、アンチモンよりも加水分解されにくく、またイリジウムの還元の恐れがないビスマスが最も好ましい。ビスマスを用いた場合、還元時の酸化還元電位は、銀/塩化銀電極に対して50〜350mV付近で平衡に達する。置換沈殿物は、ビスマス表面から容易に剥離するため、この粉末は別途溶解して白金族元素、金、銀等の貴金属の回収原料として使用することができる。
【0029】
しかし、ビスマスも水溶液中の塩化物濃度が低いときは加水分解するため、水溶液中に塩化物を含有しない場合は、塩酸等の塩化物を添加して1mol/l以上の塩素イオン濃度にすることが好ましい。
【0030】
また、本発明において、還元剤として金属を使用することに特に限定されるものではなく、この範囲の還元条件を維持することができれば、金属以外の還元剤を使用できる。特に金属の還元剤を使用するのは、金属による置換沈殿反応により、この範囲の微妙な還元条件を維持する事が容易になり、かつ最も再現性が高いからである。
【0031】
なお、液中に酸化剤が共存する場合は、事前にイリジウムを金属まで還元する恐れのない弱い還元剤で予備還元することが好ましい。この弱い還元剤としては、金属以外の還元剤が好ましく、例えば水溶液中に亜硫酸イオンを供給できる亜硫酸塩の添加によって予備還元することができる。これにより、置換剤の金属の消費量を少なくできるので、コスト上好ましい。
【0032】
(3)結晶化精製工程
本発明の結晶化精製工程は、還元沈殿工程から得られる、イリジウム以外の貴金属等を分離した後の濾液(母液)を酸化処理した後、アルカリ塩を添加してイリジウムを結晶性沈殿として分離する工程である。これは、あらゆる元素の中で、四価の白金族元素を含むヘキサクロロ錯体のみが、特定のアルカリ塩と反応して水に難溶性の塩を形成するため、随伴する不純物などの元素共存下においても随伴元素を溶液中に残しイリジウムのみを選択的に結晶性沈殿として分離するものである。
【0033】
本発明における母液の酸化処理は、イリジウムの酸化数を四価に上昇させることにある。この酸化処理後の水溶液の酸化還元電位としては、銀/塩化銀電極に対して、700mV以上、より好ましくは800mV以上である。即ち、700mV未満では、イリジウムのかなりの部分が三価で存在するため、所定のアルカリ塩化物を添加しても結晶化が困難で収率が低い。また、この酸化還元電位の上限は特にないが、1000mVを超えると鉛のごく一部が四価になり、イリジウムと同形の結晶を作って混入することがある。
【0034】
この酸化処理の酸化剤としては、特に限定されるものではなく、酸化還元電位を所定値に維持できればどのような種類でも使用可能であるが、例えば塩素、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、硝酸が用いられるが、この中でも、特に、白金族元素のクロロ錯体形成を促進する触媒となる硝酸が好ましい。また、薬品を使用せず、電解法での陽極酸化も行える。
【0035】
本発明の結晶性沈殿の生成に用いるアルカリ塩としては、共通イオン効果によりイリジウムのクロロ錯塩の溶解度を下げることができるものであれば、特に限定されるものではないが、これらの中で、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、フランシウムイオンのような原子番号が19以上のアルカリ金属イオン、同様の陽イオン半径を持つアンモニウムイオン、ジエチルアミンなどのポリエチルポリアミン類の陽イオン、又はヒドラジニウムイオンから選ばれる少なくとも1種を含む水溶性化合物が特に好ましく、例えばこれらの塩化物および塩酸塩が好ましい。なお、液中に既に十分な濃度の塩化物イオンが共存する場合には、塩化物以外のアルカリ塩を使用することもできる。
これらの中で、価格、廃液の処理しやすさなど工業的には、塩化カリウム、及び塩化アンモニウムが特に好ましい。
【0036】
上記アルカリ塩の添加量は、特に限定されない。即ち、アルカリ塩の濃度が高いほど共通イオン効果によりイリジウムのクロロ錯塩の溶解度を下げる事ができる。
【0037】
以上の本発明の方法により、概ね99.9重量%レベルの純度のイリジウム結晶(K2IrCl6)を得ることが出来る。さらに、この結晶を中和、加熱乾燥することによりイリジウム酸化物IrO2が得られる。また、この酸化物を水素気流中で700℃前後に加熱することにより金属イリジウムが得られる。
【0038】
さらに、水溶液を事前に溶媒抽出法、吸着法等の分離方法で処理して、より高濃度にイリジウムが濃縮された水溶液を用いて本発明の方法を実施出来る。例えば、既知のイリジウムの精製法であるTBPを用いた溶媒抽出法の逆抽出生成液を使用する場合、TBPによる溶媒抽出前のイリジウム以外の白金族元素の濃度が高かったとしても、本発明の方法でこれらからのイリジウムの分離精製が確実に出来る。
【0039】
一方、原料のイリジウム濃度が低い場合、ロジウム、その他の随伴金属が特に大過剰に存在する場合には、TBPを用いた溶媒抽出法と本発明の方法を組合せて、溶媒抽出法の逆抽出での相比(有機相/水相)を調整してイリジウムを高度に濃縮した逆抽出生成液を得て、この水溶液を本発明の方法に用いると、還元沈殿工程以降の設備の容量が縮小され、またロジウムがTBPで抽出残液として分離されるので早期回収され、さらに白金族元素の負荷低減による還元剤消費量が大幅削減されるなど効果が大きい
【0040】
【実施例】
以下に、本発明の実施例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例の分析方法は、ICP発光分析法で行った。
【0041】
(実施例1)
原料として、表1に示す水酸化物形態の白金族元素の濃縮物を使用した。
【0042】
【表1】
【0043】
(1)原液の調製
濃縮物1150gを、35重量%塩酸4000mlと63重量%硝酸200mlにて溶解した後、80℃まで加熱して原液を調製した。。
【0044】
(2)還元沈殿工程
ついで、この溶液の温度(80℃)を維持して、亜硫酸ナトリウムを添加して予備還元を行なった。亜硫酸ナトリウムは632g消費され、そのとき酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準、以後省略)は、1050mVから585mVまで低下した。さらに、溶液の温度(80℃)を維持したまま、粒状ビスマス(直径約2mm)600gを投入し、溶液の酸化還元電位が一定値になるまで混合して還元沈殿した。このとき酸化還元電位は、最終的に241mVまで低下した。なお、液量は4000mlに減量されていた。還元沈殿後の液組成を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2より、液中のイリジウム以外の白金族元素は、1mg/l以下まで低下しており、置換沈殿されたことが分かる。なお、イリジウムの還元沈殿による損失は認められなかった。
【0047】
(3)結晶化精製工程
前記の還元沈殿後の液に、35重量%塩酸3000mlおよび63重量%硝酸350mlを添加し、80〜90℃で3時間加熱して酸化処理を行った。この後、この液に塩化カリウムを1050g添加し、液を冷却して結晶性沈殿を得た。濾過後、この結晶性沈殿を、15重量%塩酸、次いで、KCl飽和溶液で洗浄した。洗浄後の結晶の重量は、297gであった。得られた結晶の品位を表3に示す。なお、原料の濃縮物中の分析で検出できなかった元素も分析した。
【0048】
【表3】
【0049】
表3より、本発明の方法によって、白金族元素、及び他の不純物の含有量が少ない、イリジウムの高純度結晶(結晶純度99.92重量%以上)が得られることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のイリジウムの分離精製方法は、イリジウム以外のいずれの白金族元素、並びに他の随伴する元素が共存しても、イリジウムのみを選択的に分離し、精製することが出来るので、その工業的価値は大きい。
Claims (8)
- イリジウムと随伴元素を含有する水溶液からイリジウムを分離精製する方法において、前記水溶液に還元剤として標準単極電位(標準水素電極規準)0〜0.5Vの金属を添加して接触反応させ、生成される沈澱を除去する還元沈殿工程、および得られた母液を酸化処理した後、アルカリ塩を添加してイリジウムを結晶性沈殿として分離する結晶化精製工程を含むことを特徴とするイリジウムの分離精製方法。
- 還元沈殿工程において添加する還元剤がビスマスであることを特徴とする請求項1記載のイリジウムの分離精製方法。
- 還元沈殿工程における前記水溶液の塩素イオン濃度が1mol/l以上であることを特徴とする請求項1記載のイリジウムの分離精製方法。
- さらに、還元沈殿工程に先立って、金属以外の還元剤を添加して予め還元処理することを特徴とする請求項1記載のイリジウムの分離精製方法。
- 結晶化精製工程の酸化処理における酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を700mV以上とすることを特徴とする請求項1記載のイリジウムの分離精製方法。
- 結晶化精製工程の酸化処理が硝酸の添加によるものであることを特徴とする請求項1記載のイリジウムの分離精製方法。
- 結晶化精製工程で添加するアルカリ塩が、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、フランシウムイオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、アミン塩、又はヒドラジニウムイオンから選ばれる少なくとも1種を含む水溶性化合物であることを特徴とする請求項1記載のイリジウムの分離精製方法。
- 前記水溶性化合物が、塩化カリウム又は塩化アンモニウムであることを特徴とする請求項7記載のイリジウムの分離精製方法。
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