JP2004170778A - ポリイミド樹脂ベルトおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリイミド樹脂ベルトおよびその製造方法に関し、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトおよび、それを高い寸法精度で簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。また、イミド転化したポリイミド層の外層にゴム弾性層とフッ素樹脂離型層を有することが好適である。特に、前記フッ素樹脂離型層がPFAであることやメルトフロレート10g/10分以下であること、またベルトの内径精度が変動係数で1%以下であること、ベルトの破断強度が130N以上、弾性率4000Mpa以上であることが好適である。
【選択図】 なし
【解決手段】脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。また、イミド転化したポリイミド層の外層にゴム弾性層とフッ素樹脂離型層を有することが好適である。特に、前記フッ素樹脂離型層がPFAであることやメルトフロレート10g/10分以下であること、またベルトの内径精度が変動係数で1%以下であること、ベルトの破断強度が130N以上、弾性率4000Mpa以上であることが好適である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトおよびその製造方法に関するもので、例えば、複写機等の電子写真画像形成装置の定着ベルトのように、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトおよび、それを高い寸法精度で簡便に製造する方法として特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリイミド樹脂材料は、その高い機械的強度、耐熱性等の理由から宇宙航空分野から電気電子材料まで幅広い分野において実用化されている。その中でもポリイミド樹脂製シームレス状管状体は、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の電子写真画像形成装置の定着ベルト、転写ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト、感光体ベルト等の機能性ベルト及びこれらの基材として使用されている。特に、定着ベルトでは未定着のトナー像を加圧加熱しながら転写体を搬送するため、ロール間の張設に耐えうる強度、ロールの加熱温度に耐えうる耐熱性、ベルト端部で寄りを制御する際、座屈を起こさないような剛性、過剰トナーを分離させるために必要なフレキブル性の要求が強くなっている。これらを解決する方法として、昨今、円筒状金型をポリアミド酸溶液中に浸漬塗布し、次いで円筒状金型に対し所定の内径を有する外金型を自重落下させて塗布した後、ポリイミド半硬化管状物を形成し、そのまま金型から外さずに、プライマー及びフッ素樹脂をコーティングし、イミド転化とフッ素樹脂の焼成処理を行うための加熱処理を行い、最後に金型からポリイミドシームレス複合管物を抜き取る方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、ポリイミド前駆体溶液に3級アミン化合物を混合し、これを乾燥、イミド化することでポリイミドベルトの靭性を向上させる方法の提案もある(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−186162号公報
【特許文献2】
特開2002−127165号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、外金型による浸漬塗布では、遠心力による塗布膜の脱泡やレベリングができないために、薄い膜しか形成できないという問題だけでなく、外金型の線膨張率とポリイミドシームレス複合管物の線膨張率の差で生じるクリアランスを利用して抜き取る方法では、複合管物の組成、厚さによっては、線膨張率が外金型より大きくなり抜けにくくなり、作業性が悪化し、更には、外径精度が低下するという問題が生じる。
【0005】
また、ポリイミド前駆体溶液に3級アミン化合物を混合したポリイミドベルトでは、引裂強度が向上し、破断や割れに対しては強くなるものの、ベルト駆動上重要なファクターである座屈に対しては、弱いものとなっていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記のような問題点を解決し、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトおよび、それを高い寸法精度で簡便に製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、ポリイミド樹脂製のベルトについて鋭意研究したところ、以下の性状のベルトおよびその製造方法が好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトであって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。水分の存在は、ポリアミド酸を加水分解して低分子量化したり、イミド化反応を阻害し、機械特性特に弾性率を低下させてしまうので、こうしたベルトによって、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトを提供することが可能となる。
【0009】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトであって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にゴム弾性層とフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。上記のような高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性といった優れた特性に加え、弾性率の更に高い機能性ベルトを提供することが可能となる。
【0010】
また、上記ポリイミド樹脂ベルトにおいて、フッ素樹脂離型層がテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)であることが好適である。高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性といった特性を有するフッ素樹脂離型層とポリイミド樹脂の融合体において、さらに、PFAの耐磨耗性、トナーとの離型性、耐熱性といった優れた特性を活かすことができる。
【0011】
さらに、上記フッ素樹脂離型層がメルトフロレート10g/10分(ASTM:D3307)以下であることが好適である。耐摩耗性とともに、一定の溶融性を確保することで、平滑な表面状態を担保することができる。
【0012】
また、ベルトの内径精度が変動係数で1%以下であることが好適である。ベルトの寸法精度は、実際の装置に装着し稼動させたときの動きに厳密に反映されるため、精度を所定の範囲内に制御することで、駆動時の片寄りによって生じる座屈を防止することができる。
【0013】
さらに、破断強度が130N以上、弾性率4000Mpa以上であることが好適である。このように所定の特性を確保することで、ベルトの「裂け」を防止し、駆動時の座屈を防止することができる。
【0014】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトの製造方法であって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層を積層融着することを特徴とする。ベルトの特性に影響を与えるポリアミド酸溶液中の水分量を制御するとともに、フッ素樹脂離型層を積層融着することによって、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【0015】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトの製造方法であって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層とゴム弾性層を積層融着することを特徴とする。上記のような高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性といった優れた特性に加え、弾性率の更に高い機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【0016】
ここで、円筒状金型内面にゴム弾性層の劣化温度より高い融点を有するフッ素樹脂離型層を積層した後に、ゴム弾性層とポリイミド層を積層形成することが好適である。こうした製造方法を適用することで、ゴム弾性層の熱劣化を防止するとともに、より堅牢かつ弾性率の更に高い機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に関し、詳細に説明する。
【0018】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトであって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。ポリアミド酸溶液中の水分の存在を所定量以下にするとともに、こうしたポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を有する構成によって、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトが得られることを発明者が見出したものである。なお、ここでいう水分率は、後述するように、試料を所定の温度に加熱し、カールフィッシャー法や加熱気化法を用いて測定した値から算出したものを基準とする。
【0019】
ポリイミド樹脂の形成において、ポリアミド酸溶液中の水の存在は、ポリアミド酸を加水分解して低分子量化したり、イミド化反応を阻害し、機械特性特に弾性率を低下させてしまうので、ポリアミド酸の合成、保存は無水環境下で行うのが好ましい。重合中は、窒素雰囲気水分率5wt%以下であることが好ましい。
【0020】
ベルトの厚さは、50〜200μmとなるように設定するのが好ましい。ベルトの厚さが50μmより薄いと、寄り制御で掛かる負荷にベルト端部の剛性が負けてベルトが座屈しやすくなり、200μmを超えると張設するロールの1つである分離ロールでベルトの曲率半径が大きくなることで、ベルト上のトナーが十分離形されず好ましくない。また、ポリイミド樹脂層の外層に離型層を設けるに当たっては、層間のズレなどによる強度低下を防止すべく、一般的にプライマーを下地としフッ素樹脂を塗布することが好ましい。このときの離型層の厚みは5〜100μmが好適であり、プライマーの厚みは0.5〜10μmが好適である。離型層の厚みが5μm未満の場合には層の剥離や破損のおそれがあり、100μmを超える場合にはベルトの曲率半径の拡大を必要とするおそれがある。また、プライマーの厚みが0.5μm未満の場合には離型層の剥離や破損のおそれがあり、10μmを超える場合にはベルトの曲率半径の拡大のみならず離型層の剥離や破損のおそれがある。具体的な製造方法や材料関係については後述するが、フッ素樹脂離型層によって表面抵抗が少なく滑りやすくなる上、オフセットが防止できるので好ましい。
【0021】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトであって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にゴム弾性層とフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。ベルトの用途によっては、ポリイミド樹脂の諸特性に加え弾性を必要とすることから、ポリイミド樹脂層と離型層との間にゴム弾性層を設けることで、対応することが可能となる。具体的に、ゴム弾性層を設けるに当たっては、弾性層を形成する素材とポリイミド樹脂との密着性が高いことが好適であり、また、上記同様一般的にプライマーを下地としフッ素樹脂を塗布することが好ましい。また、このときのゴム弾性層の厚みは5〜500μmが好適である。ゴム弾性層の厚みが5μm未満の場合には弾性効果が十分にえられないおそれがあり、500μmを超える場合にはベルトの曲率半径の拡大とともにベルトに必要な硬度が得られなくなり座屈や破損が生じるおそれがある。具体的な製造方法については後述するが、ゴム弾性層としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。またこれらゴムにはポリイミド同様、シリカ、ベンガラ等の充填剤を添加することができる。
【0022】
また、上記ポリイミド樹脂ベルトにおいて、フッ素樹脂離型層の材料としては、分子内にフッ素原子を含むものであればよく特に限定されるものではない。具体的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とその変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−へキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(TFE/VdF)、テトラフルオロエチレン−へキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、クロロトリフルオロエチレンフッ化ビニリデン共重合体(CTFE/VdF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニル(PVF)などが挙げられる。耐摩耗性、トナーとの離型性、耐熱性の点からPTFE、PFAおよびこれらの混合系が好ましい。さらには、PFAが好適である。
【0023】
さらに、上記フッ素樹脂のメルトフロレートは10g/10min(ASTM:D3307)以下であることが好適である。特に1〜10g/10minが好ましく、より好ましくは1.5〜5g/10minである。1g/10min未満だと塗布後、融点以上で加熱しても溶融しにくいため、脆く、荒い皮膜となり、10g/10minを越えると加熱時、溶融しやすいので平滑な表面を得ることができるが、耐摩耗性に劣るので好ましくない。
【0024】
また、ベルトの内径精度が変動係数で1%以下であることが好適である。1%を超えるとベルト駆動中、片側に寄りやすく、結果、座屈し好ましくない。なお、ベルトの寸法精度は、金型の寸法精度にも起因するので、金型内径精度の変動係数が制限される。
【0025】
さらに、ベルトの破断強度が130N以上、弾性率4000Mpa以上であることが好適である。破断強度130Nより小さいと、ベルト駆動時に裂けやすく、また弾性率4000Mpaより小さいと座屈しやすく好ましくない。加熱ロール、分離ロール、搬送ロール等で張設され、更に150℃を超える加熱ロールに常時接した状態でベルトが駆動するため、上記引張強度以下では、ベルトが破断しやすく好ましくない。
【0026】
次に、本発明に係るポリイミド樹脂ベルトの製造方法について説明する。
【0027】
脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層を積層融着することを特徴とする。ベルトの用途によっては、ポリイミド樹脂の諸特性に加え弾性を必要とすることから、こうした対応を可能とするポリイミド樹脂ベルトの製造方法を提供するものである。既述のように、ポリアミド酸溶液中の水分の存在を所定量以下にするとともに、こうしたポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を配する製造方法によって、機能性ベルトの優れた製造方法が可能となる。このときのポリイミド樹脂ベルトの製造工程の一例を具体的に説明する。
【0028】
(1)脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を作製し、
(2)回転する円筒状金型がディスペンサーの供給部の軸方向に移動することにより、該ポリアミド酸溶液を円筒状金型の内表面に塗布し、
(3)遠心法でレベリング及び脱泡し、
(4)次いで金型を回転させながら、段階的に加熱し、イミド転化の促進と溶媒の除去を行い、
(5)これにプライマーを所定の厚みとなるようにスプレー塗布し、
(6)その上に、PFAの分散液を所定の厚みとなるようにスプレー塗布し、
(7)ベルト基材をアルミパイプに挿し替え所定時間加熱シンターし、
(8)ベルト基材をアルミパイプから抜き取り、ポリイミド樹脂ベルトが完成する。
【0029】
尚、ポリアミド酸溶液の塗布に関しては、脱水剤及び3級アミンは塗布の直前にポリアミド酸溶液に混合させることが好ましい。また塗布の環境温度も0〜25℃、更には5〜15℃が好ましい。0℃より低いと粘度が高くなり塗布ムラが生じやすくなり好ましくない。25℃を超えるとポットライフが短くなり、配管中でゲル化が進行し好ましくない。レベリング及び脱泡された膜は、その後膜厚精度を維持させるために、加熱乾燥や真空乾燥によってイミド転化を促進させることが好ましい。加熱温度は、添加成分の沸点以上であれば良いが、ポリイミドの熱劣化を考慮すると400℃以下が好ましい。脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液の粘度は10〜10000ポイズ、好ましくは50〜5000ポイズ(B 型粘度計、23℃)程度が好ましい。粘度が10ポイズ未満であるといわゆるタレや塗布層のハジキが生じ易くなり、塗膜厚の均一性が得られ難くなるため好ましくない。一方、10000ポイズを超えると、吐出の際に高い圧力をかける必要があり、また遠心成形によるレベリング効果が出にくいので好ましくない。
【0030】
金型内面にフッ素樹脂離型層及びポリイミド層を積層する方法は、スプレーコート、浸漬、ディスペンサー塗布等が挙げられるが、上記では、ディスペンサーを用いた塗布の例を示した。
【0031】
また、遠心成形前のポリアミド酸溶液の均一塗布は、寸法精度上好ましい。例えば、スパイラル状に塗布された塗布層は、隣接部分で一定のラッピング部分を持たせるように塗布すると、塗膜面が均一になりやすいため好ましい。しかし、ラップ量が大きすぎると遠心成形によるレベリングに時間がかかり、また膜厚ムラの原因となるため好ましくない。一方、ラップさせない場合は、泡の噛み込みが発生しやすく、遠心成形による脱泡に時間がかかり好ましくない。
【0032】
また、これらの工程で得られるベルトの寸法精度は、金型の寸法精度に起因するので、金型は剛性の高い金属を用いるのが好ましい。具体的には、金型内径精度とベルト内径精度は変動係数で1%以下が好ましい。1%を超えるとベルト駆動中、片側に寄りやすく、結果、座屈し好ましくない。また、金型内面に当節するフッ素樹脂層、もしくはポリイミド層の表面形状は、これに規制されるので、平滑面を得たい時には、クロムメッキ等で内面を鏡面に仕上げるのが好ましい。更に、フッ素樹脂層、もしくはポリイミド層を金型内面から容易に剥離するために、シリカ等の離型処理を浸漬等のウエット法、蒸着等のドライ法を用いて、金型内面に被覆しても良い。
【0033】
遠心成形するために行う金型回転の回転数は、金型の直径にもよるが、500rpm以上5000rpm以下が好ましい。500rpm未満だと、遠心力による塗布膜のレベリング効果、脱泡効果が得られにくく、5000rpmを超えると機械的に負荷が大きくなり振動による金型の偏芯が起こり、金型長手方向の塗布厚が不均一となり好ましくない。
【0034】
また、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層を積層融着した後のベルトの内径収縮率が1%以下となることが好ましい。1%を超えると加熱融着したベルトを冷却後、支持体であるアルミパイプ等から抜けにくくなったり、また所望の外径が得られにくく好ましくない。
【0035】
本発明の他の実施の態様としては、ポリイミド樹脂ベルトの製造方法であって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層とゴム弾性層を積層融着することを特徴とする。ここで、円筒状金型内面にゴム弾性層の劣化温度より高い融点を有するフッ素樹脂離型層を積層した後に、ゴム弾性層とポリイミド層を積層形成することがより好適である。積層工程において、融点が高いフッ素樹脂離型層を先に成形した後、内側にゴム弾性層、ポリイミド層を重ねていく方が、ゴム弾性層の熱劣化を防止でき好ましいためである。むろんゴム弾性層がない場合は、積層の順番は特に限定されず、また、ゴム弾性層があっても熱劣化が生じにくい材料であれば、順番に拘る必要はない。
【0036】
本発明のポリイミド樹脂ベルトの製造工程の一例として、最初にフッ素樹脂離型層を積層する場合について具体的に説明する。
【0037】
(1)円筒状金型内面に実施例1のPFAを塗布し、
(2)所定時間加熱シンターし、
(3)これにプライマーを所定の厚みとなるようにスプレー塗布し、
(4)次にシリコーンゴムを所定の厚みとなるようにスプレー塗布し、
(5)所定温度でプライマー及びシリコーンゴムを乾燥処理し、
(6)脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を作製し、
(7)更にこの内面に、作製したポリアミド酸溶液を塗布し、
(8)遠心法でレベリング及び脱泡し、
(9)次いで金型を回転させながら、段階的に加熱し、イミド転化の促進と溶媒の除去を行い、
(10)その後更に、高温で所定時間加熱し、完全イミド化を行い、
(11)このベルトを金型から取り出し、ポリイミド樹脂ベルトが完成する。
金型内面にゴム弾性層を積層する方法は、上記同様、スプレーコート、浸漬、ディスペンサー塗布等が挙げられる。
【0038】
脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層とゴム弾性層を積層融着した後のベルトの内径収縮率が1%以下となることが好ましい。1%を超えると加熱融着したベルトを冷却後、支持体であるアルミパイプ等から抜けにくくなったり、また所望の外径が得られにくく好ましくない。
【0039】
次に、本発明の基材となる芳香族ポリイミド樹脂およびその製造方法について説明する。
【0040】
ポリアミド酸溶液は、公知のものを使用することができ、酸二無水物とジアミンを溶媒中で重合反応させてなるポリアミド酸溶液が使用される。
【0041】
特に、芳香族ポリイミド樹脂であると、得られるベルトの機械的強度や耐熱性が好適なものが得られる。好適な酸二無水物の例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。一方、ジアミンの例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p −フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン等が挙げられる。これらの酸無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては適宜なものを用いうるが、溶解性等の点から極性溶媒が好ましく用いられ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルフォン、ジメチルテトラメチレンスルフォン等が考えられる。これらは単独で用いても構わないし、併せて用いても差し支えない。さらに、上記有機極性溶媒にクレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を単独もしくは併せて混合することもできる。
【0042】
上記の酸無水物(a)とジアミン(b)とを有機極性溶媒中で反応させることによりポリアミド酸溶液が得られる。その際のモノマー濃度(溶媒中における(a)+(b)の濃度)は、種々の条件に応じて設定されるが、5〜30wt%が好ましい。また、反応温度は80℃以下に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜50℃であり、反応時間は0.5〜10時間が好ましい。
【0043】
脱水剤は、例えば、有機カルボン酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、及びチオニルハロゲン化物が挙げられ、これらのなかで、有機カルボン酸無水物が好ましい。
【0044】
有機カルボン酸無水物として、例示すると、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、及びこれらの分子間無水物、有機カルボン酸無水物の混合物を含む。また、芳香族モノカルボン酸例えば安息香酸、ナフトエ酸等の無水物、これらの混合物および有機カルボン酸無水物の混合物、及び炭酸及び蟻酸並びに脂肪族ケテン類(ケテン、及びジメチルケテン)の無水物、これらの混合物および有機カルボン酸無水物などが挙げられる。これらのなかで、無水酢酸が好ましい。
【0045】
脱水剤の量は、最終的に塗布されるポリアミド酸溶液のポリアミド1モルに対して0.5モル以上4モル以下が好ましく、特には1〜3モルであることが好ましい。脱水剤の量が最終的に塗布されるポリアミド酸溶液のポリアミド1モルに対して0.5モルより少ない場合には、イミド化反応が十分に進行せず、得られるポリイミドベルトの機械物性が大きく低下する。一方、脱水剤の量が4モルより多い場合には、余分な脱水剤を蒸発させるためにベルト温度を上げる必要があるため、結果として得られるポリイミドフィルムの機械物性が大きく低下する。
【0046】
また、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ルチジン等が挙げられ、さらに好ましくは、ピリジン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリンが挙げられる。3級アミンの量は、最終的に塗布されるポリアミド酸溶液のポリアミド1モルに対してモル比で0.1モル以上2モル以下、さらに好ましくは0.2〜1モルである。3級アミンの量がポリアミド酸溶液のポリアミド1モルに対してモル比で0.1モルより少ない場合には、得られるポリイミドベルトの機械物性が大きく低下する。2.0モルを超える量ではフィルム中に3級アミンが残留し、ベルト工程ラインを汚染したり、余分なイミド化触媒を蒸発させるためにベルト温度を上げる必要があるため2.0モル以下が好ましい。
【0047】
本発明ではポリイミドベルトに熱伝導性、導電性、帯電防止性、半導電性、耐磨耗性等所望の機能を付与するために、適宜無機粒子、無機酸化物、金属酸化物、界面活性剤等充填材を混入することが可能である。充填材の添加量は、種々の条件に応じて設定されるが、1〜60wt%、好ましくは5〜50wt%である。上記充填量より少ないと目的とする特性を発揮させることが難しく、一方多いと脆性のため機械的強度がベルトとして不足するので好ましくない。
【0048】
また、充填剤の種類、添加量によっては、成形されたポリイミドベルト表面の濡れ性を低下させてしまうので、ベルト表面の水との接触角が90°以下となるように選定するのが好ましい。90°を超えるとポリイミド層にゴム弾性層を積層する際に、中間に施す接着剤であるプライマーのはじき、斑が発生しやすく、ゴム弾性層との接着強度が低下し好ましくない。
【0049】
また、フッ素樹脂離型剤の中に充填剤を添加する場合、その量は0.1〜50wt%が好ましい。0.1wt%未満だと、充填剤の持つ機能が十分発揮されず、50wt%を超えると増動性、離型性等のフッ素に起因する効果が十分発揮できない。
【0050】
以上は、本発明の実施の態様の一部について述べたが、場合によってはベルト材に限らず、優れた機械的強度や弾性といった特性を活かせるポリイミド樹脂を使用した各種部材についても適用されるものであり、さらに広い用途にも利用することができる。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0052】
【0053】
ここで、外径測定は、図1のようなレーザー式外径測定器を用い、ベルト1の長手方向に端部から30、130、185、240、340mmの位置を周方向2分割し測定する。アルミパイプ2が挿入されたベルト1にレーザー発光部3からのレーザーを照射し、レーザー受光部4からの信号量により、ベルト1の外径を0.01mmレベルまで測定可能である。
【0054】
また、総厚測定は、図2のような接触式膜厚測定器を用い、長手方向に端部から30、130、185、240、340mmの位置を周方向8分割し測定する。基準バー5に置かれたベルト1の上部からリニアゲージ6をベルト表面に当接させることで、ベルト1の厚みを測定することができる。
【0055】
<実施例1>
(1)酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、アミン成分としてp −フェニレンジアミンの略当モルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解(モノマー濃度20wt%)し、
(2)窒素雰囲気中において室温で撹拌しながら反応させ、
(3)次いで70℃に加温しつつ撹拌して23℃におけるB 型粘度計による粘度が2000ポイズのポリアミド酸溶液を作製した。
(4)上記ポリアミド酸溶液にポリアミド1モルに対して無水酢酸2モル及び、イソキノリン0.2モルを混合した。尚、ポリアミド酸溶液の含水率は3wt%であった。
(5)次いで、長方形状のダイス型ディスペンサーを固定しつつ、長さ900mm、直径30mmφの円筒状金型を回転させながら上記ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面の一方端から他方端まで供給しつつ移動させ円筒状金型内面にスパイラル状に乾燥後80μmとなるように塗布(ラップ量1mm、ギャップ量0.7mm)し、
(6)そのまま金型を3000rpmで3分間回転させながら塗膜面のラッピング部分の凹凸をレベリングし、均一な塗膜面を得た。
(7)次いで金型を60rpmで回転させながら、220℃まで段階的に加熱し、イミド転化の促進と溶媒の除去を行った。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は97.5%、内径は30.40mmφであった。
(8)これにポリイミド系プライマー(三井デュポン社製、K001−02)を乾燥後1μmとなるようにスプレー塗布し、
(9)その上に、メルトフロレートが1.7g/10min(ASTM:D3307)を有するPFAを水に分散させた35%ディスパージョン液(三井デュポン社製、511CL)を乾燥後厚さ30μmとなるようにスプレー塗布し、
(10)外径29.90mmφアルミパイプに挿し替え400℃60minシンターした(11)ベルト基材をアルミパイプから抜き取る。そのベルト基材の内径は30.31mmφとPFA成形前後の内径収縮率は0.3%となった。尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから指2本で容易に抜き取ることができ、内径精度は変動係数で0.3%となった。
(12)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃140N、弾性率5500Mpaとなった。また、PFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(13)次に、このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるように加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。図3は、このベルト1の実用評価試験を行うための定着部の概略を表すもので、ベルト1はアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロール10及び分離ロール11という2つの支持体によって搬送され、トナー7が付着した試験紙8を加圧ロール9との間で加圧し、トナー7の定着を行った。
(14)速度20ppmで、10万枚を通紙したがオフセット、裂け、座屈は見られなかった。
【0056】
<実施例2>
(1)実施例1のイミド転化の促進と溶媒の除去の温度を220℃から130℃に変更した。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は90%、内径は30.15mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、プライマー及びPFAを塗布し、シンターを行った。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は29.95mmφとPFA成形前後の内径収縮率は0.6%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから片手で容易に抜き取ることができた。内径精度は変動係数で0.5%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃135N、弾性率5600Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(5)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロ一ルの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(6)速度20ppmで、10万枚を通紙したが、オフセット、裂け、座屈は見られなかった。
【0057】
<実施例3>
(1)酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、アミン成分としてp−フェニレンジアミンの略当モルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解(モノマー濃度20wt%)し、
(2)窒素雰囲気中において室温で撹拌しながら反応させ、次いで70℃に加温しつつ撹拌して23℃におけるB型粘度計による粘度が2000ポイズのポリアミド酸溶液を作製した。
(3)上記ポリアミド酸溶液にポリアミド1モルに対して無水酢酸2モル及び、イソキノリン0.2モルを混合した。尚、ポリアミド酸溶液の含水率は3wt%であった。
(4)次いで、長方形状のダイス型ディスペンサーを固定しつつ、長さ900mm、直径68mmφの円筒状金型を回転させながら上記ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面の一方端から他方端まで供給しつつ移動させ円筒状金型内面にスパイラル状に乾燥後80μmとなるように塗布(ラップ量1mm、ギャップ量0.7mm)し、
(5)そのまま金型を3000rpmで3分間回転させながら塗膜面のラッピング部分の凹凸をレベリングし、均一な塗膜面を得た。
(6)次いで金型を60rpmで回転させながら、220℃まで段階的に加熱し、イミド転化の促進と溶媒の除去を行った。
(7)円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は97.5%、内径は68.58mmφであった。
(8)次に、このベルトに弾性層であるメチルシリコーンゴム(東レダウコーニング、DX35−2083)をスプレーコートした後、300℃で加熱し、
(9)更に、このシリコーンゴム上にプライマー(三井デュポンフロロケミカル社製、PRM−027−3)及び離型層であるFEP分散塗料(三井デュポンフロロケミカル社製、120−J、メルトフロレート7g/10min)をスプレーコートし、
(10)67.95mmφのアルミパイプに挿し、300℃で加熱処理を行った。
(11)各層の厚さは、弾性層100μm、プライマー10μm、FEP20μmとなった。
(12)アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は68.40mmφと弾性層、雛型層成形前後の内径収縮率は0.3%となった。尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから指2本で容易に抜き取ることができ、内径精度は変動係数で0.7%となった。
(13)更に、このポリイミドベルトの引張持性を評価したところ、強度25℃150N、弾性率5000Mpaとなった。またFEP表面粗さはRa0.05μmであった。
(14)この定着ベルトを図1の直径40mmφシリコーンゴムで被覆したアルミニウム製加熱ロールと直径20mmφPFAで被覆したアルミニウム製分離ロールで張設させ、加熱ロールに当節する定着ベルト部に反対側から直径40mmφシリコーンゴムで被覆したアルミニウム製加圧ロールを圧力0.2Mpaかけることにより、ニップ幅を10mmに設定した。加熱ロール温度170℃、定着ベルトの線速120mm/secとし、定着ベルト面にトナーが来るように記録紙を流した。
(15)その結果、トナー定着後、剥離オフセットを起こさなかった。
(16)また10万枚印刷した後も、ベルトの裂け、座屈、層間剥離及びオフセットは見られなかった。
【0058】
<実施例4>
(1)円筒状金型内面に実施例1のPFAを塗布した後、400℃でシンターを行った。
(2)次いで実施例3のプライマー及びシリコーンゴムを塗布した後、200℃で乾燥処理した。
(3)更にこの内面に実施例3同様、ポリアミド酸溶液にポリアミド1モルに対して無水酢酸2モル及び、イソキノリン0.2モルを混合した液を塗布、イミド転化と溶剤除去を行った。
(4)その後更に、360℃で20min加熱し、完全イミド化を行った。
(5)このベルトを金型から取り出し、ベルトを評価したところ、弾性層100μm、プライマー10μm、PFA20μm、ポリイミド層80μm、内径68.32mmφとなった。また、内径精度は変動係数で0.4%となった。
(6)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃150N弾性率5200Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.03μmであった。
(7)この定着ベルトを図1の直径40mmφシリコーンゴムで被覆したアルミニウム製加熱ロールと直径20mmφPFAで被覆したアルミニウム製分離ロールで張設させ、加熱ロールに当節する定着ベルト部に反対側から直径40mmφシリコーンゴムで被覆したアルミニウム製加圧ロールを圧力0.2Mpaかけることにより、ニップ幅を10mmに設定した。加熱ロール温度170℃、定着ベルトの線速120mm/secとし、定着ベルト面にトナーが来るように記録紙を流した。
(8)その結果、トナー定着後、剥離オフセットを起こさなかった。
(9)また10万枚印刷した後も、ベルトの裂け、座屈、層間剥離及びオフセットは見られなかった。
【0059】
<比較例1>
(1)実施例1のポリアミド酸溶液に脱水剤と3級アミンを加えないこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は95%、内径は30.30mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、プライマー及びPFAを塗布し、シンターを行った。
(3)アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は29.92mmφとPFA成形前後の内径収縮率は1.6%となった。
(4)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから容易に抜き取ることができなかった。また内径精度は変動係数で1.5%となった。
(5)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃120N、弾性率5400Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(6)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(7)速度20ppmで、8万枚を通紙したがオフセット、座属は見られなかったが、裂けが生じた。
【0060】
<比較例2>
(1)実施例1のPFAをメルトフロレート32g/10min(ダイキン社製、AD−20R)に、プライマーをPFA粒子を含有したアミドイミド系(ダイキン社製、EK−1900)に変えたこと以外は同様とした。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は30.31mmφとPFA成形前後の内径収縮率は0.3%となった。
(2)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから指2本で容易に抜き取ることができた。また内径精度は変動係数で0.3%となった。
(3)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃140N、弾性率5400Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.2μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(4)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(5)速度20ppmで、8万枚を通紙した結果、裂け、座属は見られなかったが、オフセットが発生した。このベルトを観察したところ紙のエッジに相当する部分のPFAが摩滅し、下地ポリイミドが露出していた。
<比較例3>
(1)実施例3のポリアミド酸溶液に脱水剤と3級アミンを加えないこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は95%、内径は68.42mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、シリコーンゴム、プライマー及びFEPを塗布し、加熱処理を行った。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は67.43mmφとFEP成形前後の内径収縮率は1.5%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから容易に抜き取ることができなかった。また内径精度は変動係数で2%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張持性を評価したところ、強度25℃125N、弾性率5100Mpaとなった。またFEP表面粗さはRa0.05μmであった。
(5)8万枚印刷した後、ベルトの座屈、層間剥離は見られなかったが、ベルトの裂けが生じた。
【0061】
<比較例4>
(1)実施例3のポリアミド酸溶液に脱水剤と3級アミンを加えないこととFEPをPFAに代え400℃で処理したこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は95%、内径は68.42mmφであった。
(2)次に、上記ベルト基材をアルミパイプに挿し、実施例4同様のシリコーンゴム、プライマー及びPFAを塗布し、加熱処理を行った。加熱温度は、シリコーンゴム、プライマーを300℃で、PFAを400℃で処理した。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は67.14mmφとPFA成形前後の内径収縮率は1.9%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから容易に抜き取ることができなかった。また内径精度は変動係数で2.3%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃120N、弾性率5300Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。
(5)6万枚印刷した後、ベルトの裂け、座屈、オフセットはなかったが、ベルトの層間剥離が生じた。
【0062】
<比較例5>
(1)実施例1のポリアミド酸溶液にイソキノリンだけを加え、無水酢酸を加えないこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は95%、内径は30.30mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、プライマー及びPFAを塗布し、シンターを行った。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は29.92mmφとPFA成形前後の内径収縮率は1.6%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから容易に抜き取ることができなかった。また内径精度は変動係数で1.5%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃135N、弾性率3000Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(5)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(6)速度20ppmで、8万枚を通紙したがオフセット、裂けは見られなかったが、座屈が生じた。
【0063】
<比較例6>
(1)実施例1のポリアミド酸溶液の含水率6%にしたこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は97%、内径は30.35mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、プライマー及びPFAを塗布し、シンターを行った。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は30.26mmφとPFA成形前後の内径収縮率は0.3%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから指2本で容易に抜くことができた。また内径精度は変動係数で0.4%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃123N、弾性率3800Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(5)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(6)速度20ppmで、8万枚を通紙したがオフセット、座屈は見られなかったが、裂けが生じた。
【0064】
<評価結果>
以上の実施例および比較例の評価結果をまとめると、表1および表2のようになる。
【0065】
【表1】
【表2】
【0066】
【発明の効果】
以上のように、本発明にかかるポリイミド樹脂ベルトについては、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性といった優れた機能性を有することが可能となる。
【0067】
また、ポリイミド層の外層にゴム弾性層とフッ素樹脂離型層を有することによって、上記のような優れた特性に加え、弾性率の高い機能性ベルトを提供することが可能となる。
【0068】
特に、フッ素樹脂離型層がPFAである場合には、さらにPFAの耐磨耗性、トナーとの離型性、耐熱性といった優れた特性を活かすことができる。
【0069】
さらに、上記フッ素樹脂離型層がメルトフロレート10g/10分以下である場合には、耐摩耗性とともに、一定の溶融性を確保することで、平滑な表面状態を担保することができる。
【0070】
また、ベルトの内径精度が変動係数で1%以下に制御することで、駆動時の片寄りによって生じる座屈を防止することができる。
【0071】
さらに、破断強度が130N以上、弾性率4000Mpa以上の特性を確保することで、ベルトの「裂け」を防止し、駆動時の座屈を防止することができる。
【0072】
本発明に係るポリイミド樹脂ベルトの製造方法であっては、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【0073】
また、ポリイミドベルトの内面に対してフッ素樹脂離型層とゴム弾性層を積層融着した場合には、上記のような優れた特性に加え、弾性率の更に高い機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。特に、フッ素樹脂離型層を積層した後にゴム弾性層とポリイミド層を積層形成することで、ゴム弾性層の熱劣化を防止するとともに、より堅牢かつ弾性率の更に高い機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るポリイミド樹脂ベルトの外径の測定方法を例示する説明図
【図2】本発明に係るポリイミド樹脂ベルトの総厚の測定方法を例示する説明図
【図3】本発明に係るポリイミド樹脂ベルトを評価試験用の定着部の概略を例示する説明図
【符号の説明】
1 ポリイミド樹脂ベルト
2 アルミパイプ
3 レーザー発光部
4 レーザー受光部
5 基準レバー
6 リニアゲージ
7 トナー
8 試験紙
9 加圧ロール
10 加熱ロール
11 分離ロール
【発明の属する技術】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトおよびその製造方法に関するもので、例えば、複写機等の電子写真画像形成装置の定着ベルトのように、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトおよび、それを高い寸法精度で簡便に製造する方法として特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリイミド樹脂材料は、その高い機械的強度、耐熱性等の理由から宇宙航空分野から電気電子材料まで幅広い分野において実用化されている。その中でもポリイミド樹脂製シームレス状管状体は、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の電子写真画像形成装置の定着ベルト、転写ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト、感光体ベルト等の機能性ベルト及びこれらの基材として使用されている。特に、定着ベルトでは未定着のトナー像を加圧加熱しながら転写体を搬送するため、ロール間の張設に耐えうる強度、ロールの加熱温度に耐えうる耐熱性、ベルト端部で寄りを制御する際、座屈を起こさないような剛性、過剰トナーを分離させるために必要なフレキブル性の要求が強くなっている。これらを解決する方法として、昨今、円筒状金型をポリアミド酸溶液中に浸漬塗布し、次いで円筒状金型に対し所定の内径を有する外金型を自重落下させて塗布した後、ポリイミド半硬化管状物を形成し、そのまま金型から外さずに、プライマー及びフッ素樹脂をコーティングし、イミド転化とフッ素樹脂の焼成処理を行うための加熱処理を行い、最後に金型からポリイミドシームレス複合管物を抜き取る方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、ポリイミド前駆体溶液に3級アミン化合物を混合し、これを乾燥、イミド化することでポリイミドベルトの靭性を向上させる方法の提案もある(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−186162号公報
【特許文献2】
特開2002−127165号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、外金型による浸漬塗布では、遠心力による塗布膜の脱泡やレベリングができないために、薄い膜しか形成できないという問題だけでなく、外金型の線膨張率とポリイミドシームレス複合管物の線膨張率の差で生じるクリアランスを利用して抜き取る方法では、複合管物の組成、厚さによっては、線膨張率が外金型より大きくなり抜けにくくなり、作業性が悪化し、更には、外径精度が低下するという問題が生じる。
【0005】
また、ポリイミド前駆体溶液に3級アミン化合物を混合したポリイミドベルトでは、引裂強度が向上し、破断や割れに対しては強くなるものの、ベルト駆動上重要なファクターである座屈に対しては、弱いものとなっていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記のような問題点を解決し、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトおよび、それを高い寸法精度で簡便に製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、ポリイミド樹脂製のベルトについて鋭意研究したところ、以下の性状のベルトおよびその製造方法が好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトであって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。水分の存在は、ポリアミド酸を加水分解して低分子量化したり、イミド化反応を阻害し、機械特性特に弾性率を低下させてしまうので、こうしたベルトによって、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトを提供することが可能となる。
【0009】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトであって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にゴム弾性層とフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。上記のような高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性といった優れた特性に加え、弾性率の更に高い機能性ベルトを提供することが可能となる。
【0010】
また、上記ポリイミド樹脂ベルトにおいて、フッ素樹脂離型層がテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)であることが好適である。高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性といった特性を有するフッ素樹脂離型層とポリイミド樹脂の融合体において、さらに、PFAの耐磨耗性、トナーとの離型性、耐熱性といった優れた特性を活かすことができる。
【0011】
さらに、上記フッ素樹脂離型層がメルトフロレート10g/10分(ASTM:D3307)以下であることが好適である。耐摩耗性とともに、一定の溶融性を確保することで、平滑な表面状態を担保することができる。
【0012】
また、ベルトの内径精度が変動係数で1%以下であることが好適である。ベルトの寸法精度は、実際の装置に装着し稼動させたときの動きに厳密に反映されるため、精度を所定の範囲内に制御することで、駆動時の片寄りによって生じる座屈を防止することができる。
【0013】
さらに、破断強度が130N以上、弾性率4000Mpa以上であることが好適である。このように所定の特性を確保することで、ベルトの「裂け」を防止し、駆動時の座屈を防止することができる。
【0014】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトの製造方法であって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層を積層融着することを特徴とする。ベルトの特性に影響を与えるポリアミド酸溶液中の水分量を制御するとともに、フッ素樹脂離型層を積層融着することによって、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【0015】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトの製造方法であって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層とゴム弾性層を積層融着することを特徴とする。上記のような高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性といった優れた特性に加え、弾性率の更に高い機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【0016】
ここで、円筒状金型内面にゴム弾性層の劣化温度より高い融点を有するフッ素樹脂離型層を積層した後に、ゴム弾性層とポリイミド層を積層形成することが好適である。こうした製造方法を適用することで、ゴム弾性層の熱劣化を防止するとともに、より堅牢かつ弾性率の更に高い機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に関し、詳細に説明する。
【0018】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトであって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。ポリアミド酸溶液中の水分の存在を所定量以下にするとともに、こうしたポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を有する構成によって、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトが得られることを発明者が見出したものである。なお、ここでいう水分率は、後述するように、試料を所定の温度に加熱し、カールフィッシャー法や加熱気化法を用いて測定した値から算出したものを基準とする。
【0019】
ポリイミド樹脂の形成において、ポリアミド酸溶液中の水の存在は、ポリアミド酸を加水分解して低分子量化したり、イミド化反応を阻害し、機械特性特に弾性率を低下させてしまうので、ポリアミド酸の合成、保存は無水環境下で行うのが好ましい。重合中は、窒素雰囲気水分率5wt%以下であることが好ましい。
【0020】
ベルトの厚さは、50〜200μmとなるように設定するのが好ましい。ベルトの厚さが50μmより薄いと、寄り制御で掛かる負荷にベルト端部の剛性が負けてベルトが座屈しやすくなり、200μmを超えると張設するロールの1つである分離ロールでベルトの曲率半径が大きくなることで、ベルト上のトナーが十分離形されず好ましくない。また、ポリイミド樹脂層の外層に離型層を設けるに当たっては、層間のズレなどによる強度低下を防止すべく、一般的にプライマーを下地としフッ素樹脂を塗布することが好ましい。このときの離型層の厚みは5〜100μmが好適であり、プライマーの厚みは0.5〜10μmが好適である。離型層の厚みが5μm未満の場合には層の剥離や破損のおそれがあり、100μmを超える場合にはベルトの曲率半径の拡大を必要とするおそれがある。また、プライマーの厚みが0.5μm未満の場合には離型層の剥離や破損のおそれがあり、10μmを超える場合にはベルトの曲率半径の拡大のみならず離型層の剥離や破損のおそれがある。具体的な製造方法や材料関係については後述するが、フッ素樹脂離型層によって表面抵抗が少なく滑りやすくなる上、オフセットが防止できるので好ましい。
【0021】
本発明は、ポリイミド樹脂ベルトであって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にゴム弾性層とフッ素樹脂離型層を有することを特徴とする。ベルトの用途によっては、ポリイミド樹脂の諸特性に加え弾性を必要とすることから、ポリイミド樹脂層と離型層との間にゴム弾性層を設けることで、対応することが可能となる。具体的に、ゴム弾性層を設けるに当たっては、弾性層を形成する素材とポリイミド樹脂との密着性が高いことが好適であり、また、上記同様一般的にプライマーを下地としフッ素樹脂を塗布することが好ましい。また、このときのゴム弾性層の厚みは5〜500μmが好適である。ゴム弾性層の厚みが5μm未満の場合には弾性効果が十分にえられないおそれがあり、500μmを超える場合にはベルトの曲率半径の拡大とともにベルトに必要な硬度が得られなくなり座屈や破損が生じるおそれがある。具体的な製造方法については後述するが、ゴム弾性層としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。またこれらゴムにはポリイミド同様、シリカ、ベンガラ等の充填剤を添加することができる。
【0022】
また、上記ポリイミド樹脂ベルトにおいて、フッ素樹脂離型層の材料としては、分子内にフッ素原子を含むものであればよく特に限定されるものではない。具体的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とその変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−へキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(TFE/VdF)、テトラフルオロエチレン−へキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、クロロトリフルオロエチレンフッ化ビニリデン共重合体(CTFE/VdF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニル(PVF)などが挙げられる。耐摩耗性、トナーとの離型性、耐熱性の点からPTFE、PFAおよびこれらの混合系が好ましい。さらには、PFAが好適である。
【0023】
さらに、上記フッ素樹脂のメルトフロレートは10g/10min(ASTM:D3307)以下であることが好適である。特に1〜10g/10minが好ましく、より好ましくは1.5〜5g/10minである。1g/10min未満だと塗布後、融点以上で加熱しても溶融しにくいため、脆く、荒い皮膜となり、10g/10minを越えると加熱時、溶融しやすいので平滑な表面を得ることができるが、耐摩耗性に劣るので好ましくない。
【0024】
また、ベルトの内径精度が変動係数で1%以下であることが好適である。1%を超えるとベルト駆動中、片側に寄りやすく、結果、座屈し好ましくない。なお、ベルトの寸法精度は、金型の寸法精度にも起因するので、金型内径精度の変動係数が制限される。
【0025】
さらに、ベルトの破断強度が130N以上、弾性率4000Mpa以上であることが好適である。破断強度130Nより小さいと、ベルト駆動時に裂けやすく、また弾性率4000Mpaより小さいと座屈しやすく好ましくない。加熱ロール、分離ロール、搬送ロール等で張設され、更に150℃を超える加熱ロールに常時接した状態でベルトが駆動するため、上記引張強度以下では、ベルトが破断しやすく好ましくない。
【0026】
次に、本発明に係るポリイミド樹脂ベルトの製造方法について説明する。
【0027】
脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層を積層融着することを特徴とする。ベルトの用途によっては、ポリイミド樹脂の諸特性に加え弾性を必要とすることから、こうした対応を可能とするポリイミド樹脂ベルトの製造方法を提供するものである。既述のように、ポリアミド酸溶液中の水分の存在を所定量以下にするとともに、こうしたポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を配する製造方法によって、機能性ベルトの優れた製造方法が可能となる。このときのポリイミド樹脂ベルトの製造工程の一例を具体的に説明する。
【0028】
(1)脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を作製し、
(2)回転する円筒状金型がディスペンサーの供給部の軸方向に移動することにより、該ポリアミド酸溶液を円筒状金型の内表面に塗布し、
(3)遠心法でレベリング及び脱泡し、
(4)次いで金型を回転させながら、段階的に加熱し、イミド転化の促進と溶媒の除去を行い、
(5)これにプライマーを所定の厚みとなるようにスプレー塗布し、
(6)その上に、PFAの分散液を所定の厚みとなるようにスプレー塗布し、
(7)ベルト基材をアルミパイプに挿し替え所定時間加熱シンターし、
(8)ベルト基材をアルミパイプから抜き取り、ポリイミド樹脂ベルトが完成する。
【0029】
尚、ポリアミド酸溶液の塗布に関しては、脱水剤及び3級アミンは塗布の直前にポリアミド酸溶液に混合させることが好ましい。また塗布の環境温度も0〜25℃、更には5〜15℃が好ましい。0℃より低いと粘度が高くなり塗布ムラが生じやすくなり好ましくない。25℃を超えるとポットライフが短くなり、配管中でゲル化が進行し好ましくない。レベリング及び脱泡された膜は、その後膜厚精度を維持させるために、加熱乾燥や真空乾燥によってイミド転化を促進させることが好ましい。加熱温度は、添加成分の沸点以上であれば良いが、ポリイミドの熱劣化を考慮すると400℃以下が好ましい。脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液の粘度は10〜10000ポイズ、好ましくは50〜5000ポイズ(B 型粘度計、23℃)程度が好ましい。粘度が10ポイズ未満であるといわゆるタレや塗布層のハジキが生じ易くなり、塗膜厚の均一性が得られ難くなるため好ましくない。一方、10000ポイズを超えると、吐出の際に高い圧力をかける必要があり、また遠心成形によるレベリング効果が出にくいので好ましくない。
【0030】
金型内面にフッ素樹脂離型層及びポリイミド層を積層する方法は、スプレーコート、浸漬、ディスペンサー塗布等が挙げられるが、上記では、ディスペンサーを用いた塗布の例を示した。
【0031】
また、遠心成形前のポリアミド酸溶液の均一塗布は、寸法精度上好ましい。例えば、スパイラル状に塗布された塗布層は、隣接部分で一定のラッピング部分を持たせるように塗布すると、塗膜面が均一になりやすいため好ましい。しかし、ラップ量が大きすぎると遠心成形によるレベリングに時間がかかり、また膜厚ムラの原因となるため好ましくない。一方、ラップさせない場合は、泡の噛み込みが発生しやすく、遠心成形による脱泡に時間がかかり好ましくない。
【0032】
また、これらの工程で得られるベルトの寸法精度は、金型の寸法精度に起因するので、金型は剛性の高い金属を用いるのが好ましい。具体的には、金型内径精度とベルト内径精度は変動係数で1%以下が好ましい。1%を超えるとベルト駆動中、片側に寄りやすく、結果、座屈し好ましくない。また、金型内面に当節するフッ素樹脂層、もしくはポリイミド層の表面形状は、これに規制されるので、平滑面を得たい時には、クロムメッキ等で内面を鏡面に仕上げるのが好ましい。更に、フッ素樹脂層、もしくはポリイミド層を金型内面から容易に剥離するために、シリカ等の離型処理を浸漬等のウエット法、蒸着等のドライ法を用いて、金型内面に被覆しても良い。
【0033】
遠心成形するために行う金型回転の回転数は、金型の直径にもよるが、500rpm以上5000rpm以下が好ましい。500rpm未満だと、遠心力による塗布膜のレベリング効果、脱泡効果が得られにくく、5000rpmを超えると機械的に負荷が大きくなり振動による金型の偏芯が起こり、金型長手方向の塗布厚が不均一となり好ましくない。
【0034】
また、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層を積層融着した後のベルトの内径収縮率が1%以下となることが好ましい。1%を超えると加熱融着したベルトを冷却後、支持体であるアルミパイプ等から抜けにくくなったり、また所望の外径が得られにくく好ましくない。
【0035】
本発明の他の実施の態様としては、ポリイミド樹脂ベルトの製造方法であって、脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層とゴム弾性層を積層融着することを特徴とする。ここで、円筒状金型内面にゴム弾性層の劣化温度より高い融点を有するフッ素樹脂離型層を積層した後に、ゴム弾性層とポリイミド層を積層形成することがより好適である。積層工程において、融点が高いフッ素樹脂離型層を先に成形した後、内側にゴム弾性層、ポリイミド層を重ねていく方が、ゴム弾性層の熱劣化を防止でき好ましいためである。むろんゴム弾性層がない場合は、積層の順番は特に限定されず、また、ゴム弾性層があっても熱劣化が生じにくい材料であれば、順番に拘る必要はない。
【0036】
本発明のポリイミド樹脂ベルトの製造工程の一例として、最初にフッ素樹脂離型層を積層する場合について具体的に説明する。
【0037】
(1)円筒状金型内面に実施例1のPFAを塗布し、
(2)所定時間加熱シンターし、
(3)これにプライマーを所定の厚みとなるようにスプレー塗布し、
(4)次にシリコーンゴムを所定の厚みとなるようにスプレー塗布し、
(5)所定温度でプライマー及びシリコーンゴムを乾燥処理し、
(6)脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を作製し、
(7)更にこの内面に、作製したポリアミド酸溶液を塗布し、
(8)遠心法でレベリング及び脱泡し、
(9)次いで金型を回転させながら、段階的に加熱し、イミド転化の促進と溶媒の除去を行い、
(10)その後更に、高温で所定時間加熱し、完全イミド化を行い、
(11)このベルトを金型から取り出し、ポリイミド樹脂ベルトが完成する。
金型内面にゴム弾性層を積層する方法は、上記同様、スプレーコート、浸漬、ディスペンサー塗布等が挙げられる。
【0038】
脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層とゴム弾性層を積層融着した後のベルトの内径収縮率が1%以下となることが好ましい。1%を超えると加熱融着したベルトを冷却後、支持体であるアルミパイプ等から抜けにくくなったり、また所望の外径が得られにくく好ましくない。
【0039】
次に、本発明の基材となる芳香族ポリイミド樹脂およびその製造方法について説明する。
【0040】
ポリアミド酸溶液は、公知のものを使用することができ、酸二無水物とジアミンを溶媒中で重合反応させてなるポリアミド酸溶液が使用される。
【0041】
特に、芳香族ポリイミド樹脂であると、得られるベルトの機械的強度や耐熱性が好適なものが得られる。好適な酸二無水物の例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。一方、ジアミンの例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p −フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン等が挙げられる。これらの酸無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては適宜なものを用いうるが、溶解性等の点から極性溶媒が好ましく用いられ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルフォン、ジメチルテトラメチレンスルフォン等が考えられる。これらは単独で用いても構わないし、併せて用いても差し支えない。さらに、上記有機極性溶媒にクレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を単独もしくは併せて混合することもできる。
【0042】
上記の酸無水物(a)とジアミン(b)とを有機極性溶媒中で反応させることによりポリアミド酸溶液が得られる。その際のモノマー濃度(溶媒中における(a)+(b)の濃度)は、種々の条件に応じて設定されるが、5〜30wt%が好ましい。また、反応温度は80℃以下に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜50℃であり、反応時間は0.5〜10時間が好ましい。
【0043】
脱水剤は、例えば、有機カルボン酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、及びチオニルハロゲン化物が挙げられ、これらのなかで、有機カルボン酸無水物が好ましい。
【0044】
有機カルボン酸無水物として、例示すると、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、及びこれらの分子間無水物、有機カルボン酸無水物の混合物を含む。また、芳香族モノカルボン酸例えば安息香酸、ナフトエ酸等の無水物、これらの混合物および有機カルボン酸無水物の混合物、及び炭酸及び蟻酸並びに脂肪族ケテン類(ケテン、及びジメチルケテン)の無水物、これらの混合物および有機カルボン酸無水物などが挙げられる。これらのなかで、無水酢酸が好ましい。
【0045】
脱水剤の量は、最終的に塗布されるポリアミド酸溶液のポリアミド1モルに対して0.5モル以上4モル以下が好ましく、特には1〜3モルであることが好ましい。脱水剤の量が最終的に塗布されるポリアミド酸溶液のポリアミド1モルに対して0.5モルより少ない場合には、イミド化反応が十分に進行せず、得られるポリイミドベルトの機械物性が大きく低下する。一方、脱水剤の量が4モルより多い場合には、余分な脱水剤を蒸発させるためにベルト温度を上げる必要があるため、結果として得られるポリイミドフィルムの機械物性が大きく低下する。
【0046】
また、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ルチジン等が挙げられ、さらに好ましくは、ピリジン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリンが挙げられる。3級アミンの量は、最終的に塗布されるポリアミド酸溶液のポリアミド1モルに対してモル比で0.1モル以上2モル以下、さらに好ましくは0.2〜1モルである。3級アミンの量がポリアミド酸溶液のポリアミド1モルに対してモル比で0.1モルより少ない場合には、得られるポリイミドベルトの機械物性が大きく低下する。2.0モルを超える量ではフィルム中に3級アミンが残留し、ベルト工程ラインを汚染したり、余分なイミド化触媒を蒸発させるためにベルト温度を上げる必要があるため2.0モル以下が好ましい。
【0047】
本発明ではポリイミドベルトに熱伝導性、導電性、帯電防止性、半導電性、耐磨耗性等所望の機能を付与するために、適宜無機粒子、無機酸化物、金属酸化物、界面活性剤等充填材を混入することが可能である。充填材の添加量は、種々の条件に応じて設定されるが、1〜60wt%、好ましくは5〜50wt%である。上記充填量より少ないと目的とする特性を発揮させることが難しく、一方多いと脆性のため機械的強度がベルトとして不足するので好ましくない。
【0048】
また、充填剤の種類、添加量によっては、成形されたポリイミドベルト表面の濡れ性を低下させてしまうので、ベルト表面の水との接触角が90°以下となるように選定するのが好ましい。90°を超えるとポリイミド層にゴム弾性層を積層する際に、中間に施す接着剤であるプライマーのはじき、斑が発生しやすく、ゴム弾性層との接着強度が低下し好ましくない。
【0049】
また、フッ素樹脂離型剤の中に充填剤を添加する場合、その量は0.1〜50wt%が好ましい。0.1wt%未満だと、充填剤の持つ機能が十分発揮されず、50wt%を超えると増動性、離型性等のフッ素に起因する効果が十分発揮できない。
【0050】
以上は、本発明の実施の態様の一部について述べたが、場合によってはベルト材に限らず、優れた機械的強度や弾性といった特性を活かせるポリイミド樹脂を使用した各種部材についても適用されるものであり、さらに広い用途にも利用することができる。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0052】
【0053】
ここで、外径測定は、図1のようなレーザー式外径測定器を用い、ベルト1の長手方向に端部から30、130、185、240、340mmの位置を周方向2分割し測定する。アルミパイプ2が挿入されたベルト1にレーザー発光部3からのレーザーを照射し、レーザー受光部4からの信号量により、ベルト1の外径を0.01mmレベルまで測定可能である。
【0054】
また、総厚測定は、図2のような接触式膜厚測定器を用い、長手方向に端部から30、130、185、240、340mmの位置を周方向8分割し測定する。基準バー5に置かれたベルト1の上部からリニアゲージ6をベルト表面に当接させることで、ベルト1の厚みを測定することができる。
【0055】
<実施例1>
(1)酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、アミン成分としてp −フェニレンジアミンの略当モルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解(モノマー濃度20wt%)し、
(2)窒素雰囲気中において室温で撹拌しながら反応させ、
(3)次いで70℃に加温しつつ撹拌して23℃におけるB 型粘度計による粘度が2000ポイズのポリアミド酸溶液を作製した。
(4)上記ポリアミド酸溶液にポリアミド1モルに対して無水酢酸2モル及び、イソキノリン0.2モルを混合した。尚、ポリアミド酸溶液の含水率は3wt%であった。
(5)次いで、長方形状のダイス型ディスペンサーを固定しつつ、長さ900mm、直径30mmφの円筒状金型を回転させながら上記ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面の一方端から他方端まで供給しつつ移動させ円筒状金型内面にスパイラル状に乾燥後80μmとなるように塗布(ラップ量1mm、ギャップ量0.7mm)し、
(6)そのまま金型を3000rpmで3分間回転させながら塗膜面のラッピング部分の凹凸をレベリングし、均一な塗膜面を得た。
(7)次いで金型を60rpmで回転させながら、220℃まで段階的に加熱し、イミド転化の促進と溶媒の除去を行った。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は97.5%、内径は30.40mmφであった。
(8)これにポリイミド系プライマー(三井デュポン社製、K001−02)を乾燥後1μmとなるようにスプレー塗布し、
(9)その上に、メルトフロレートが1.7g/10min(ASTM:D3307)を有するPFAを水に分散させた35%ディスパージョン液(三井デュポン社製、511CL)を乾燥後厚さ30μmとなるようにスプレー塗布し、
(10)外径29.90mmφアルミパイプに挿し替え400℃60minシンターした(11)ベルト基材をアルミパイプから抜き取る。そのベルト基材の内径は30.31mmφとPFA成形前後の内径収縮率は0.3%となった。尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから指2本で容易に抜き取ることができ、内径精度は変動係数で0.3%となった。
(12)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃140N、弾性率5500Mpaとなった。また、PFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(13)次に、このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるように加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。図3は、このベルト1の実用評価試験を行うための定着部の概略を表すもので、ベルト1はアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロール10及び分離ロール11という2つの支持体によって搬送され、トナー7が付着した試験紙8を加圧ロール9との間で加圧し、トナー7の定着を行った。
(14)速度20ppmで、10万枚を通紙したがオフセット、裂け、座屈は見られなかった。
【0056】
<実施例2>
(1)実施例1のイミド転化の促進と溶媒の除去の温度を220℃から130℃に変更した。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は90%、内径は30.15mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、プライマー及びPFAを塗布し、シンターを行った。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は29.95mmφとPFA成形前後の内径収縮率は0.6%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから片手で容易に抜き取ることができた。内径精度は変動係数で0.5%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃135N、弾性率5600Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(5)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロ一ルの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(6)速度20ppmで、10万枚を通紙したが、オフセット、裂け、座屈は見られなかった。
【0057】
<実施例3>
(1)酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、アミン成分としてp−フェニレンジアミンの略当モルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解(モノマー濃度20wt%)し、
(2)窒素雰囲気中において室温で撹拌しながら反応させ、次いで70℃に加温しつつ撹拌して23℃におけるB型粘度計による粘度が2000ポイズのポリアミド酸溶液を作製した。
(3)上記ポリアミド酸溶液にポリアミド1モルに対して無水酢酸2モル及び、イソキノリン0.2モルを混合した。尚、ポリアミド酸溶液の含水率は3wt%であった。
(4)次いで、長方形状のダイス型ディスペンサーを固定しつつ、長さ900mm、直径68mmφの円筒状金型を回転させながら上記ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面の一方端から他方端まで供給しつつ移動させ円筒状金型内面にスパイラル状に乾燥後80μmとなるように塗布(ラップ量1mm、ギャップ量0.7mm)し、
(5)そのまま金型を3000rpmで3分間回転させながら塗膜面のラッピング部分の凹凸をレベリングし、均一な塗膜面を得た。
(6)次いで金型を60rpmで回転させながら、220℃まで段階的に加熱し、イミド転化の促進と溶媒の除去を行った。
(7)円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は97.5%、内径は68.58mmφであった。
(8)次に、このベルトに弾性層であるメチルシリコーンゴム(東レダウコーニング、DX35−2083)をスプレーコートした後、300℃で加熱し、
(9)更に、このシリコーンゴム上にプライマー(三井デュポンフロロケミカル社製、PRM−027−3)及び離型層であるFEP分散塗料(三井デュポンフロロケミカル社製、120−J、メルトフロレート7g/10min)をスプレーコートし、
(10)67.95mmφのアルミパイプに挿し、300℃で加熱処理を行った。
(11)各層の厚さは、弾性層100μm、プライマー10μm、FEP20μmとなった。
(12)アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は68.40mmφと弾性層、雛型層成形前後の内径収縮率は0.3%となった。尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから指2本で容易に抜き取ることができ、内径精度は変動係数で0.7%となった。
(13)更に、このポリイミドベルトの引張持性を評価したところ、強度25℃150N、弾性率5000Mpaとなった。またFEP表面粗さはRa0.05μmであった。
(14)この定着ベルトを図1の直径40mmφシリコーンゴムで被覆したアルミニウム製加熱ロールと直径20mmφPFAで被覆したアルミニウム製分離ロールで張設させ、加熱ロールに当節する定着ベルト部に反対側から直径40mmφシリコーンゴムで被覆したアルミニウム製加圧ロールを圧力0.2Mpaかけることにより、ニップ幅を10mmに設定した。加熱ロール温度170℃、定着ベルトの線速120mm/secとし、定着ベルト面にトナーが来るように記録紙を流した。
(15)その結果、トナー定着後、剥離オフセットを起こさなかった。
(16)また10万枚印刷した後も、ベルトの裂け、座屈、層間剥離及びオフセットは見られなかった。
【0058】
<実施例4>
(1)円筒状金型内面に実施例1のPFAを塗布した後、400℃でシンターを行った。
(2)次いで実施例3のプライマー及びシリコーンゴムを塗布した後、200℃で乾燥処理した。
(3)更にこの内面に実施例3同様、ポリアミド酸溶液にポリアミド1モルに対して無水酢酸2モル及び、イソキノリン0.2モルを混合した液を塗布、イミド転化と溶剤除去を行った。
(4)その後更に、360℃で20min加熱し、完全イミド化を行った。
(5)このベルトを金型から取り出し、ベルトを評価したところ、弾性層100μm、プライマー10μm、PFA20μm、ポリイミド層80μm、内径68.32mmφとなった。また、内径精度は変動係数で0.4%となった。
(6)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃150N弾性率5200Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.03μmであった。
(7)この定着ベルトを図1の直径40mmφシリコーンゴムで被覆したアルミニウム製加熱ロールと直径20mmφPFAで被覆したアルミニウム製分離ロールで張設させ、加熱ロールに当節する定着ベルト部に反対側から直径40mmφシリコーンゴムで被覆したアルミニウム製加圧ロールを圧力0.2Mpaかけることにより、ニップ幅を10mmに設定した。加熱ロール温度170℃、定着ベルトの線速120mm/secとし、定着ベルト面にトナーが来るように記録紙を流した。
(8)その結果、トナー定着後、剥離オフセットを起こさなかった。
(9)また10万枚印刷した後も、ベルトの裂け、座屈、層間剥離及びオフセットは見られなかった。
【0059】
<比較例1>
(1)実施例1のポリアミド酸溶液に脱水剤と3級アミンを加えないこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は95%、内径は30.30mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、プライマー及びPFAを塗布し、シンターを行った。
(3)アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は29.92mmφとPFA成形前後の内径収縮率は1.6%となった。
(4)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから容易に抜き取ることができなかった。また内径精度は変動係数で1.5%となった。
(5)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃120N、弾性率5400Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(6)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(7)速度20ppmで、8万枚を通紙したがオフセット、座属は見られなかったが、裂けが生じた。
【0060】
<比較例2>
(1)実施例1のPFAをメルトフロレート32g/10min(ダイキン社製、AD−20R)に、プライマーをPFA粒子を含有したアミドイミド系(ダイキン社製、EK−1900)に変えたこと以外は同様とした。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は30.31mmφとPFA成形前後の内径収縮率は0.3%となった。
(2)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから指2本で容易に抜き取ることができた。また内径精度は変動係数で0.3%となった。
(3)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃140N、弾性率5400Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.2μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(4)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(5)速度20ppmで、8万枚を通紙した結果、裂け、座属は見られなかったが、オフセットが発生した。このベルトを観察したところ紙のエッジに相当する部分のPFAが摩滅し、下地ポリイミドが露出していた。
<比較例3>
(1)実施例3のポリアミド酸溶液に脱水剤と3級アミンを加えないこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は95%、内径は68.42mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、シリコーンゴム、プライマー及びFEPを塗布し、加熱処理を行った。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は67.43mmφとFEP成形前後の内径収縮率は1.5%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから容易に抜き取ることができなかった。また内径精度は変動係数で2%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張持性を評価したところ、強度25℃125N、弾性率5100Mpaとなった。またFEP表面粗さはRa0.05μmであった。
(5)8万枚印刷した後、ベルトの座屈、層間剥離は見られなかったが、ベルトの裂けが生じた。
【0061】
<比較例4>
(1)実施例3のポリアミド酸溶液に脱水剤と3級アミンを加えないこととFEPをPFAに代え400℃で処理したこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は95%、内径は68.42mmφであった。
(2)次に、上記ベルト基材をアルミパイプに挿し、実施例4同様のシリコーンゴム、プライマー及びPFAを塗布し、加熱処理を行った。加熱温度は、シリコーンゴム、プライマーを300℃で、PFAを400℃で処理した。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は67.14mmφとPFA成形前後の内径収縮率は1.9%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから容易に抜き取ることができなかった。また内径精度は変動係数で2.3%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃120N、弾性率5300Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。
(5)6万枚印刷した後、ベルトの裂け、座屈、オフセットはなかったが、ベルトの層間剥離が生じた。
【0062】
<比較例5>
(1)実施例1のポリアミド酸溶液にイソキノリンだけを加え、無水酢酸を加えないこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は95%、内径は30.30mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、プライマー及びPFAを塗布し、シンターを行った。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は29.92mmφとPFA成形前後の内径収縮率は1.6%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから容易に抜き取ることができなかった。また内径精度は変動係数で1.5%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃135N、弾性率3000Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(5)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(6)速度20ppmで、8万枚を通紙したがオフセット、裂けは見られなかったが、座屈が生じた。
【0063】
<比較例6>
(1)実施例1のポリアミド酸溶液の含水率6%にしたこと以外は、同様とした。円筒状金型から離型したベルト基材の溶媒蒸発率は97%、内径は30.35mmφであった。
(2)次に、同様にアルミパイプに挿し、プライマー及びPFAを塗布し、シンターを行った。アルミパイプから抜き取った後のベルト基材の内径は30.26mmφとPFA成形前後の内径収縮率は0.3%となった。
(3)尚、シンター後のベルト基材はアルミパイプから指2本で容易に抜くことができた。また内径精度は変動係数で0.4%となった。
(4)更に、このポリイミドベルトの引張特性を評価したところ、強度25℃123N、弾性率3800Mpaとなった。またPFA表面粗さはRa0.1μmであった。PFAの結着力は鉛筆硬度で5H(23℃)となった。
(5)このベルトの内部に滑りシートを有する支持体を設置し、このベルトと平行となるようにアルミロールの上にシリコーンゴムを施した加熱ロールを加圧し、トナーの定着を行なった。
(6)速度20ppmで、8万枚を通紙したがオフセット、座屈は見られなかったが、裂けが生じた。
【0064】
<評価結果>
以上の実施例および比較例の評価結果をまとめると、表1および表2のようになる。
【0065】
【表1】
【表2】
【0066】
【発明の効果】
以上のように、本発明にかかるポリイミド樹脂ベルトについては、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性といった優れた機能性を有することが可能となる。
【0067】
また、ポリイミド層の外層にゴム弾性層とフッ素樹脂離型層を有することによって、上記のような優れた特性に加え、弾性率の高い機能性ベルトを提供することが可能となる。
【0068】
特に、フッ素樹脂離型層がPFAである場合には、さらにPFAの耐磨耗性、トナーとの離型性、耐熱性といった優れた特性を活かすことができる。
【0069】
さらに、上記フッ素樹脂離型層がメルトフロレート10g/10分以下である場合には、耐摩耗性とともに、一定の溶融性を確保することで、平滑な表面状態を担保することができる。
【0070】
また、ベルトの内径精度が変動係数で1%以下に制御することで、駆動時の片寄りによって生じる座屈を防止することができる。
【0071】
さらに、破断強度が130N以上、弾性率4000Mpa以上の特性を確保することで、ベルトの「裂け」を防止し、駆動時の座屈を防止することができる。
【0072】
本発明に係るポリイミド樹脂ベルトの製造方法であっては、高強度かつ表面離型性、及び表面耐久性に優れた機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【0073】
また、ポリイミドベルトの内面に対してフッ素樹脂離型層とゴム弾性層を積層融着した場合には、上記のような優れた特性に加え、弾性率の更に高い機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。特に、フッ素樹脂離型層を積層した後にゴム弾性層とポリイミド層を積層形成することで、ゴム弾性層の熱劣化を防止するとともに、より堅牢かつ弾性率の更に高い機能性ベルトの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るポリイミド樹脂ベルトの外径の測定方法を例示する説明図
【図2】本発明に係るポリイミド樹脂ベルトの総厚の測定方法を例示する説明図
【図3】本発明に係るポリイミド樹脂ベルトを評価試験用の定着部の概略を例示する説明図
【符号の説明】
1 ポリイミド樹脂ベルト
2 アルミパイプ
3 レーザー発光部
4 レーザー受光部
5 基準レバー
6 リニアゲージ
7 トナー
8 試験紙
9 加圧ロール
10 加熱ロール
11 分離ロール
Claims (9)
- 脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にフッ素樹脂離型層を有することを特徴とするポリイミド樹脂ベルト。
- 脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液をイミド転化したポリイミド層の外層にゴム弾性層とフッ素樹脂離型層を有することを特徴とするポリイミド樹脂ベルト。
- 前記フッ素樹脂離型層がテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド樹脂ベルト。
- 前記フッ素樹脂離型層がメルトフロレート10g/10分(ASTM:D3307)以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド樹脂ベルト。
- ベルトの内径精度が変動係数で1%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド樹脂ベルト。
- 破断強度が130N以上、弾性率4000Mpa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミド樹脂ベルト。
- 脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層を積層融着することを特徴とするポリイミド樹脂ベルトの製造方法。
- 脱水剤と3級アミンを含んだ水分率5wt%以下のポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、イミド転化したポリイミドベルトの内面側に対し、フッ素樹脂離型層とゴム弾性層を積層融着することを特徴とするポリイミド樹脂ベルトの製造方法。
- 円筒状金型内面にゴム弾性層の劣化温度より高い融点を有するフッ素樹脂離型層を積層した後に、ゴム弾性層とポリイミド層を積層形成することを特徴とする請求項8のポリイミド樹脂ベルトの製造方法。
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JP2005179652A (ja) * | 2003-11-26 | 2005-07-07 | Tokai Rubber Ind Ltd | 半導電性シームレスベルト |
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2002
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