JP2004156919A - タイヤサイド部凹凸状態の検出方法及びその装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タイヤサイド部の凹凸部を検出する検出手段の出力波形を予め設定した間隔毎の離散的な位置データf(i)に変換するとともに、指定した位置(i)の平滑微分値F(i)を算出し、上記平滑微分値F(i)の絶対値が予め設定された閾値Kを超えた場合には、上記位置データをタイヤサイド部に刻印された標識のデータと判定するとともに、波形の凸部の立ち上りの位置データと立ち下がりの位置データとがともに上記標識に起因する位置データである場合には、上記凸部を構成する全ての位置データを上記凸部の立ち上りの位置データに置換する操作を繰り返して、上記波形から上記標識に起因する凹凸を排除するようにした。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤサイド部の凹凸を検出する方法とその装置に関するもので、特に、検出されたタイヤサイド部の凹凸の波形から文字等の標識に起因する凹凸を分離する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、タイヤサイド部の凹凸状態を検査する方法としては、タイヤサイド部に静電容量式センサ、接触式センサ、レーザセンサなどの、距離センサまたは変位センサを近接あるいは接触させ、検査するタイヤを回転させながら、上記タイヤサイド部の変位量を一周に亘って測定し、得られた波形中に予め設定された所定の大きさの凹凸があるかどうかを検査する方法が行われている。
ところで、自動車用タイヤのサイド部には、通常、タイヤ構造記号,断面幅,リム径呼び,偏平率などを表わす文字や数字から成るタイヤ表示や、模様などの標識が刻印されているため、通常、タイヤサイド部凹凸の検査を行う際には、上記文字や模様を本当の凹凸である誤検出(αミス)しないようにするため、できるだけ上記文字や模様を避けて測定するようにしている。
しかしながら、近年、高インチ化、高偏平化に伴い、上記文字や模様を避けて測定することが困難になってきている。
そこで、移動平均法やFFTによる周波数分析法、あるいは、メディアンフィルターの使用等により、検出されたタイヤサイド部凹凸の波形から高周波成分を除去して上記文字や模様を分離する方法が提案されている。
【0003】
図6は、従来の外形状計測装置の構成を示す図で、検査タイヤTをタイヤ回転機構51に装着してこれを縦軸周りに回転させるとともに、上記タイヤTのタイヤサイド部上,下に、レーザ等の光学式変位センサ52,52を設置し、この光学式変位センサ52,52で検出されたタイヤサイド部の波形を演算処理装置54に読み込んで波形処理してタイヤサイド部の外形を計測して出力する。具体的には、図7のフローチャートに示すように、まず、光学式変位センサ52の出力(アナログデータ)をA/D変換器53でデジタルデータに変換し、これをサンプリングデータとして演算処理装置54に読み込み(ステップS1)、信号補正部54Aにて、上記サンプリングデータをFFTに入力して周波数変換し(ステップS2)、上記データ中の高周波成分を除去する(ステップS3)。次に、これを逆FFTにて時間波形に戻し(ステップS4)、これを元データと比較し(ステップS5)、上記戻された波形の振幅値が元データの振幅値を超えている場合には、当該箇所の振幅値を近接する直前のデータと置き換える(ステップS6)ことにより信号波形を補正し、計測部54Bにて、この補正された波形からタイヤサイド部の凹凸波形を計測して、出力部54Cから出力する。
これにより、タイヤサイド部の凹凸波形に文字等のデコレーションに起因する凹凸があった場合でも、これを除去することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−215530号公報(第2頁、第9図〜第11図)
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記FFTを用いた従来の方法では、凹凸に周期性のない文字や模様の成分を完全に除去することが困難であった。また、移動平均法やメディアンフィルターを用いる方法も、文字幅が大きい場合などには、上記文字部分を凸部として誤検出する可能性が非常に高く、また、仮に文字や模様の成分を消してしまった場合、本当の凹凸も消えてしまうといった問題点があった。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、タイヤサイド部の凹凸状態を検出する際に、検出された波形から文字等の標識に起因する凹凸を確実に分離して、タイヤサイド部の凹凸状態を正確に検出する方法とその装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、タイヤサイド部の凹凸部を検出する検出手段の出力波形を処理してタイヤサイド部の凹凸状態を検出するタイヤサイド部凹凸状態の検出方法であって、上記波形を予め設定した間隔毎の離散的な位置データに変換した後、各位置毎に、隣接する前,後の位置データの振幅差を算出し、上記振幅差が予め設定された閾値を超えた場合には、上記位置データをタイヤサイド部に刻印された標識に起因するデータと判定するとともに、凸部の立ち上りの位置データと立ち下がりの位置データとがともに上記標識に起因する位置データである場合には、上記凸部を構成する全ての位置データを上記凸部の立ち上りの位置データに置換する操作を繰り返して、上記波形から上記標識に起因する凹凸を排除するようにしたことを特徴とする。これにより、文字等の標識に起因する凹凸を取除いた検出波形を確実に得ることができるので、タイヤサイド部の凹凸状態を正確に検出することが可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤサイド部凹凸状態の検出方法において、位置データがf(i)である検出波形の位置(i)における、下記に示した平滑微分値F(i)の絶対値が予め設定された閾値を超えた場合には、上記位置(i)の位置データf(i)をタイヤサイド部に刻印された標識に起因するデータと判定するようにしたもので、これにより、文字等の標識に起因する凹凸を更に精度よく分離することが可能となる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、回転装置に装着された試験タイヤのタイヤサイド部の凹凸を検出する凹凸検出手段と、この凹凸検出手段からの出力を波形処理して、上記波形中に含まれる文字や模様の成分を除去してタイヤサイド部の凹凸状態を検出するタイヤサイド部凹凸状態の検出装置であって、上記凹凸検出手段の出力を予め設定した間隔毎の離散的な位置データf(i)に変換するA/D変換器と、上記A/D変換された波形の各位置(i)毎に、下記の式を用いて平滑微分値F(i)を算出する平滑微分値算出手段と、上記F(i)の絶対値と予め設定された閾値とを比較し、上記F(i)の絶対値が閾値を超えた場合には、当該位置(i)における位置データf(i)をタイヤサイド部に刻印された標識に起因するデータと判定する位置データ判定手段と、波形の凸部の立ち上りの位置データと立ち下がりの位置データとがともに上記標識に起因する位置データf(i)である場合には、上記凸部を構成する全ての位置データを上記凸部の立ち上りの位置データに置換して出力するデータ変換手段とを備えたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るタイヤサイド部凹凸状態の検査装置を示す図で、10は回転装置11と気体充填装置12とに連結されたタイヤ装着用リム13を備えた試験タイヤ回転装置、14A,14Bは上記タイヤ装着用リム13に装着された試験タイヤTのタイヤサイド部の、上側と下側のそれぞれの凹凸状態(変位量)を検出する上側センサ及び下側センサで、本例では、測定精度を向上させるため、上記センサ14A,14Bとして、高速応答型のレーザ変位計を使用している。また、15A,15Bは上記上側センサ14A及び下側センサ14Bの出力をそれぞれ増幅して出力する増幅器である。また、20は上記増幅器15A,15Bから出力されるタイヤサイド部凹凸状態を示す波形を波形処理して、上記波形中に含まれる文字や模様の成分を除去してタイヤサイド部の凹凸状態を検出するとともに、この検出された文字や模様の成分が除去された波形の凹凸状態を調べて当該タイヤのタイヤサイドの外観検査を行う凹凸状態検査手段であり、コンピュータまたはPLCにより構成される。
【0010】
上記凹凸状態検査手段20は、増幅器15A,15Bから出力されるタイヤサイド部凹凸状態を示すアナログ信号を、予め設定した間隔毎の離散的な位置データf(i)に変換するA/D変換器21と、上記A/D変換された波形の各位置
(i)毎に、下記の
【数1】に示した中心差分の線形和である平滑微分値F(i)を算出する平滑微分値算出手段22と、上記F(i)の絶対値と予め設定された閾値Kとを比較し、上記F(i)の絶対値が閾値Kを超えた場合には、当該位置(i)における位置データf(i)をタイヤサイド部に刻印された標識のデータと判定する位置データ判定手段23と、波形の凸部の立ち上りの位置データと立ち下がりの位置データとがともに上記標識に起因する位置データf(i)である場合には、上記凸部を構成する全ての位置データを上記凸部の立ち上りの位置データに置換して出力するデータ変換手段24と、このデータ変換手段24の出力波形に予め設定された所定の大きさの凹凸が検出された場合には、当該タイヤをタイヤサイド部凹凸不良と判定する凹凸状態判定手段25とを備えている。
【0011】
【数1】
【0012】
次に、タイヤサイド部凹凸状態の検査方法について、図2のフローチャートを参照して説明する。
まず、上側センサ及び下側センサ14A,14Bにより、試験タイヤ回転装置10に装着され、所定の内圧に保持された試験タイヤTを回転させながら、上記タイヤTのタイヤサイド部の凹凸を検出する(ステップS10)。そして、上記センサ14A,14Bの出力増幅器15A,15Bで増幅してこれを凹凸状態検査手段20のA/D変換器21に出力し、上記検出されたタイヤサイド部の凹凸の波形を予め設定した間隔毎の離散的な位置データf(i)に変換する(ステップS11)。上記波形の分割数(サンプリング数)は、一般にタイヤの大きさ等により異なるが、本例では上記サンプリング数をN=4000とした。
次に、処理回数Mをカウント(ステップS12)した後、波形の各位置(i)毎に、下記の式に示した中心差分の線形和である平滑微分値F(i)を算出する(ステップS13)。
そして、上記F(i)の絶対値と予め設定された閾値Kと比較し、上記F(i)の絶対値が閾値Kを超えた場合には、当該位置(i)における位置データf(i)をタイヤサイド部に刻印された標識のデータと判定することにより、上記位置データf(i)をタイヤデータと標識データとに区別する(ステップS14)。この作業を全てのポイントNについて行った(ステップS15)後、波形の凸部の立ち上りの位置データと立ち下がりの位置データとがともに上記標識に起因する位置データf(i)である場合には、上記凸部を構成する全ての位置データを上記凸部の立ち上りの位置データに置換して、上記凸部を上記立ち上りの位置までシフトすることにより、上記波形から標識に起因する凸部のデータを分離して消去する(ステップS16,S17)。
そして、上記処理を所定回数であるZ回行い(ステップS18)、上記波形から標識データを消去して波形を出力し、この標識データが消去された波形の凹凸状態を調べて当該タイヤの凹凸状態を検査する(ステップS19)。
【0013】
例えば、センサ14Aまたはセンサ14Bが文字A,E,Hなどの中心部をスキャンした場合には、図3(a)に示すような、ステップ状の凸部を有する波形が検出される。ここで、説明を簡単にするため、上記式において、n=1とすると、平滑微分値F(i)は、F(i)=f(i−1)−f(i+1)となる。このF(i)の絶対値が、位置(i)に隣接する前,後の位置データの振幅差に相当する。同図において、平滑微分値F(i)の絶対値|F(i)|が、|F(i)|>Kとなるのは、同図の黒丸で示した、上記凸部の直前と上記凸部の立ち上がり部、及び、上記凸部の立ち下がり部と上記凸部の直後の位置データである。したがって、上記4つの黒丸で囲まれたステップ状の凸部を構成するデータは、全て、同図の二重丸で示した立ち上がり部の位置データに置換されるので、図3(b)に示すように、上記凸部を確実に消去することができる。
なお、上記平滑微分値F(i)を算出する際、上記式において、nの値をn=4あるいはn=5とするなど、適宜設定することにより、少ない繰返し数Zで標識データを消去することができる。
【0014】
また、センサ14Aまたはセンサ14Bが文字O,U,Vなどの中心部をスキャンした場合には、図4(a)に示すような、2つの山と1つの谷とを有する波形が検出される。同図においても、|F(i)|>Kとなる同図の黒丸で示した位置データが標識に起因するデータとなるので、図4(b)に示すように、上記2つの山を構成する位置データを同図の二重丸で示した立ち上がり部の位置データに置換することにより、上記波形を、図4(c)に示すような、ステップ状の凸部を有する波形に変換する。次に、このステップ状の凸部を有する波形を、上記図3と同様の方法により消去することにより、図4(d)に示すように、上記波形を確実に消去することができる。
したがって、図5(a)に示すような、標識データに起因する凹凸を含む波形を波形処理しても、誤検出(αミス)することがないので、図5(b)に示すような、タイヤサイド部凹凸のみの波形を確実に得ることができる。
最後に、この標識に起因する凹凸を消去した波形を用いてタイヤサイド部凹凸を検査する。このときの検査基準は、タイヤの種類により適宜決定されるものであるが、本例では、凹凸状態判定手段25により、図5(b)に示すように、プロットした波形の波の高さ(深さ)Hが0.5mm以上で、かつ、立ち上がりからの距離が20mm以上の大きさの凹凸が検出された場合には、当該タイヤをタイヤサイド部凹凸不良と判定している。
【0015】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、タイヤサイド部の凹凸部を検出する検出手段の出力波形を予め設定した間隔毎の離散的な位置データに変換するとともに、指定した位置に隣接する前,後の位置データの振幅差を算出し、上記振幅差が予め設定された閾値を超えた場合には、上記位置データをタイヤサイド部に刻印された標識のデータと判定判定するとともに、波形の凸部の立ち上りの位置データと立ち下がりの位置データとがともに上記標識に起因する位置データである場合には、上記凸部を構成する全ての位置データを上記凸部の立ち上りの位置データに置換する操作を繰り返して、上記波形から上記標識に起因する凹凸を排除するようにしたので、文字等の標識に起因する凹凸を取除いた検出波形を確実に得ることができ、タイヤサイド部の凹凸状態を正確に検出することができる。
したがって、検査工程での生産性の向上を図ることができるとともに、サイド凹凸の社外クレームを未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るタイヤサイド部凹凸状態の検査装置を示す図である。
【図2】本実施の形態に係るタイヤサイド部凹凸状態の検査方法を示すフローチャートである。
【図3】文字に起因する凹凸データの除去方法の一例を示す図である。
【図4】文字に起因する凹凸データの除去方法の他の例を示す図である。
【図5】タイヤサイド部の凹凸波形の一例を示す模式図である。
【図6】従来のタイヤサイド部凹凸の検査方法を示す図である。
【図7】従来のタイヤサイド部の凹凸波形から文字等のデコレーションに起因する凹凸データを除去する方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 試験タイヤ回転装置、11 回転装置、12 気体充填装置、
13 タイヤ装着用リム、14A,14B センサ、15A,15B 増幅器、
20 凹凸状態検査手段、21 A/D変換器、22 平滑微分値算出手段、
23 位置データ判定手段、24 データ変換手段、25 凹凸状態判定手段、
T 試験タイヤ。
Claims (3)
- タイヤサイド部の凹凸部を検出する検出手段の出力波形を処理してタイヤサイド部の凹凸状態を検出する際に、上記波形を予め設定した間隔毎の離散的な位置データに変換した後、各位置毎に、隣接する前,後の位置データの振幅差を算出し、上記振幅差が予め設定された閾値を超えた場合には、上記位置データをタイヤサイド部に刻印された標識に起因するデータと判定するとともに、凸部の立ち上りの位置データと立ち下がりの位置データとがともに上記標識に起因する位置データである場合には、上記凸部を構成する全ての位置データを上記凸部の立ち上りの位置データに置換する操作を繰り返して、上記波形から上記標識に起因する凹凸を排除するようにしたことを特徴とするタイヤサイド部凹凸状態の検出方法。
- 回転装置に装着された試験タイヤのタイヤサイド部の凹凸を検出する凹凸検出手段と、この凹凸検出手段からの出力を波形処理して、上記波形中に含まれる文字や模様の成分を除去してタイヤサイド部の凹凸状態を検出するタイヤサイド部凹凸状態の検出装置であって、上記凹凸検出手段の出力を予め設定した間隔毎の離散的な位置データf(i)に変換するA/D変換器と、上記A/D変換された波形の各位置(i)毎に、下記の式を用いて平滑微分値F(i)を算出する平滑微分値算出手段と、上記F(i)の絶対値と予め設定された閾値と比較し、上記F(i)の絶対値が閾値を超えた場合には、当該位置(i)における位置データf(i)をタイヤサイド部に刻印された標識に起因するデータと判定する位置データ判定手段と、波形の凸部の立ち上りの位置データと立ち下がりの位置データとがともに上記標識に起因する位置データf(i)である場合には、上記凸部を構成する全ての位置データを上記凸部の立ち上りの位置データに置換して出力するデータ変換手段とを備えたことを特徴とするタイヤサイド部凹凸状態の検出装置。
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