JP2004154135A - ノックアウト非ヒト動物 - Google Patents

ノックアウト非ヒト動物 Download PDF

Info

Publication number
JP2004154135A
JP2004154135A JP2003357443A JP2003357443A JP2004154135A JP 2004154135 A JP2004154135 A JP 2004154135A JP 2003357443 A JP2003357443 A JP 2003357443A JP 2003357443 A JP2003357443 A JP 2003357443A JP 2004154135 A JP2004154135 A JP 2004154135A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
human animal
amino acid
dna
acid sequence
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003357443A
Other languages
English (en)
Inventor
Nobuya Yamanaka
伸弥 山中
Kae Hiramine
加恵 平峯
Masako Nishizawa
雅子 西澤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Chemical Co Ltd filed Critical Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority to JP2003357443A priority Critical patent/JP2004154135A/ja
Publication of JP2004154135A publication Critical patent/JP2004154135A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子を一部又は全て破壊し、当該脂肪蓄積促進蛋白質の血中レベル及び/又は発現レベル自体を変化させた、あるいは、当該脂肪蓄積促進蛋白質を消失させたノックアウト非ヒト動物を簡便且迅速に作出するための相同的組換え方法の開発、及び当該相同的組換え方法を用いて作出したノックアウト非ヒト動物を提供する。
【解決手段】ノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部であって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とする非ヒト動物又はその一部、及び当該非ヒト動物又はその一部を用いる糖脂質代謝制御能力の評価方法等が提供可能になった。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ノックアウト非ヒト動物等に関する。さらに詳しくは、本発明は、ノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部であって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とする非ヒト動物又はその一部、当該非ヒト動物又はその一部の作成に不可欠なES細胞等の分化全能性細胞、及びそれらの利用等に関するものである。本発明は、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患等に対する医薬品開発等の分野において有用である。
同じ特許出願人は、特開2000−356637号公報の明細書において分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質、特に配列番号1で示されるアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA等を開示した。当該開示は、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質、特に配列番号1で示されるアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質、を用いた脂肪細胞における蓄積脂肪量の分析方法等に関しており、当該脂肪蓄積促進蛋白質の利用や分子レベルでの解析等を容易にするものである(特許文献1及び2を参照)。しかしながら、哺乳類の個体レベルにおける当該脂肪蓄積促進蛋白質の利用や生理学的意義を詳細に解析できるような実験動物は十分に確立されているとは必ずしも言えない。
さらに詳しくは、これまでに分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質、特に配列番号1で示されるアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質の血液中濃度が、腹部横断面の腹腔内脂肪組織面積値と正の相関関係にあり、当該脂肪蓄積促進蛋白質の濃度から腹腔内脂肪組織量を求めることができることが見出されている。分子レベル・細胞レベル等での実験から当該脂肪蓄積促進蛋白質は内臓脂肪(蓄積)症候群に関わる因子のひとつであると考えられている。
哺乳類の個体レベルにおける他の脂肪蓄積促進蛋白質の利用や生理学的意義を詳細に解析できるような実験動物としては、DGAT遺伝子破壊マウスや11β-HSD1遺伝子破壊マウス等が知られており、これらの実験動物では、まず、遺伝子改変をおこなう動物のES細胞等の分化全能性細胞の染色体上の目的とする遺伝子をポジネガ法(例えば、染色体上の目的遺伝子の一部が選択マーカー遺伝子のプロモーター領域を有するターゲティングベクター(選択マーカー遺伝子プロモーター含有組換えベクター)を用いて、染色体上の目的遺伝子の一部をターゲティングベクターに置き換える相同的組換え法)等の特定な方法により破壊し、これを親動物の胚盤胞に混入させた後、胚分化を継続させて出産させた仔であるキメラ原始マウスを作出することにより、生体内における当該脂肪蓄積促進蛋白質の濃度を低下又は消失させることに成功している。
一方、PEPCK(phosphoenolpyruvae carboxykinase)、G6P(G6Pase;glucose-6-phosphatase)、UCP1(uncoupling protein 1)、FAS(fatty acid synthase)及びACO(acylCoA oxidase)は、いずれも糖脂質代謝に関連する蛋白質として公知である(以下本明細書ではまとめて糖脂質代謝関連因子と称する場合がある。)。
具体的には、PEPCK(phosphoenolpyruvae carboxykinase)及びG6P(G6Pase;glucose-6-phosphatase)は、肝臓細胞においてピルビン酸からグルコースを産生する糖新生の2段階の反応をそれぞれ触媒する酵素であることが知られている。UCP1(uncoupling protein 1)は、遊離脂肪酸からのATP産生を促進する蛋白質であることが知られている。FAS(fatty acid synthase)は、脂肪酸生合成であることが知られている。ACO(acylCoA oxidase)は、脂肪酸代謝酵素であることが知られている。
しかしながら、糖脂質代謝又はこれらの糖脂質代謝関連因子と、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質との関係は知られていなかった。
特開2000−356637号公報 国際公開パンフレット第02/10772号
このような状況下、個体レベルでの当該脂肪蓄積促進蛋白質の詳細な機能解析(即ち、ノックアウト非ヒト動物と野生型非ヒト動物とを比較することによって、当該脂肪蓄積促進蛋白質が哺乳動物に及ぼす生理作用に関する詳細な解析等)は特に重要なものになりつつある。そこで、当該脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子を相同的組換え法によって一部又は全て破壊し、当該脂肪蓄積促進蛋白質の血中レベル及び/又は発現レベル自体を変化させた、あるいは、当該脂肪蓄積促進蛋白質を消失させたノックアウト非ヒト動物の作出を試みた。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、上記のようなノックアウト非ヒト動物を提供すること、及び、当該ノックアウト非ヒト動物を簡便かつ迅速に作出するための、当該脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の一部又は全ての破壊を目的とした相同的組換え方法の開発等を課題としている。
本発明者らは、かかる状況のもと鋭意検討した結果、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子改変においては、当該ゲノム遺伝子改変をおこなう動物のES細胞等の分化全能性細胞の染色体上の目的とする遺伝子をプロモータトラップ法(例えば、選択マーカー遺伝子のプロモーター領域を取り除いたターゲティングベクター(選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクター))を用いて、染色体上の目的遺伝子の一部をターゲティングベクターに置き換える相同的組換え法)により破壊し、これを親動物の胚盤胞に混入させた後、胚分化を継続させて出産させた仔であるキメラ原始マウスを作出することが可能になり効果的であることを見出した。
更に、前記キメラ原始マウスを繁殖させて作出した子孫(以下本明細書において、前記キメラ原始マウス及びその子孫を本発明ノックアウトマウスと称する場合がある。)を用いて鋭意検討した結果、本発明ノックアウトマウスでは、野生型マウスに比べて空腹時の血糖値が上昇しており、さらに耐糖能低下が見られている、すなわちインシュリン感受性が低下することがわかった。また、本発明ノックアウトマウスでは、高脂肪・高蔗糖食摂取時の肝臓におけるトリグリセライド量も有意に増加することから、本動物は糖脂質代謝制御異常に類した病態を表すモデルマウスとなり得ることを見出した。
更に、本発明ノックアウトマウス由来組織を用いて、糖脂質代謝関連因子:PEPCK遺伝子、G6P遺伝子、UCP1遺伝子、FAS遺伝子又はACO遺伝子などの発現について種々検討した結果、(1)肝臓細胞において糖新生を促進する酵素であるPEPCK及びG6Pの発現が上昇し;(2)脂肪(褐色または白色)細胞においてエネルギー(ATP)産生を亢進するUCP1の発現及び脂肪酸生合成酵素であるFAS、さらに脂肪酸代謝酵素であるACOの発現が上昇したことから、糖脂質代謝において重要な働きを担っている肝臓細胞や脂肪細胞において、本発明の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質がこれらの糖脂質代謝関連因子の発現制御に関わる作用を有することがわかった。従って、これらの遺伝子の発現は、本発明のノックアウト非ヒト動物又はその一部をモデル動物として用いた場合に、糖脂質代謝制御能力を有する物質をスクリーニングするために有用な指標となることを見出した。
本発明は上記の知見を元に完成するに至ったものである。
即ち、本発明は、
〔1〕 ノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部であって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とする非ヒト動物又はその一部;
〔2〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が、下記のいずれかのアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質であることを特徴とする〔1〕記載の非ヒト動物又はその一部;
<アミノ酸配列>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、そのアミノ末端から26個のアミノ酸が欠失してなる部分アミノ酸配列、
(d)前記(c)のアミノ酸配列において、そのアミノ末端にメチオニンが付加されてなるアミノ酸配列、
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列、
(g)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列、
(h)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列と相補性を有する塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列
(i)配列番号2で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列;
〔3〕 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とするノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部;
〔4〕 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質のゲノム遺伝子が、配列番号2で示される塩基配列上の塩基番号57及び58の間(エクソン1と2の間)、塩基番号232及び233の間(エクソン2と3の間)、塩基番号318及び319の間(エクソン3と4の間)、塩基番号447及び448の間(エクソン4と5の間)、塩基番号506及び507の間(エクソン5と6の間)に対応する箇所にイントロンを含有するものであることを特徴とする〔3〕記載の非ヒト動物又はその一部;
〔5〕 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質のゲノム遺伝子が、当該遺伝子の構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAの置換、欠失及び/又は付加によって破壊されてなることを特徴とする〔3〕記載の非ヒト動物又はその一部;
〔6〕 構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAがエクソン3及び4領域内の塩基であって、当該塩基が欠失によって破壊されてなることを特徴とする〔5〕記載の非ヒト動物又はその一部;
〔7〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子がその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子がその機能を欠失するように破壊される方法が、プロモーター領域が取り除かれている選択マーカー遺伝子を有する遺伝子カセットを含有し、かつ、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNAの一部に相同な塩基配列を有する選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクターを用いて、当該ベクターの一部又は全部でありかつ前記遺伝子カセットを含有するDNAに、前記ゲノム遺伝子の構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAが置換されてなる方法であることを特徴とする〔1〕記載の非ヒト動物又はその一部;
〔8〕 遺伝子カセットが、マウスEN2由来のSA(splicing accepter)、 encephalomyocarditis Virus由来のIRES(internal ribosome entry site)、β-galactocidase及びneomycin耐性遺伝子を融合させてなるβgeoにSV40由来のpA(polyadenylation signal)を平滑末端化処理してなるDNA(SA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセット)であることを特徴とする〔7〕記載の非ヒト動物又はその一部;
〔9〕 構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAがエクソン3及び4領域内の塩基であることを特徴とする〔7〕又は〔8〕記載の非ヒト動物又はその一部;
〔10〕 ノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部であって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質遺伝子の発現量が同種の野生型非ヒト動物での同遺伝子の発現量よりも低減されてなることを特徴とする非ヒト動物又はその一部;
〔11〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が、下記のいずれかのアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質であることを特徴とする〔10〕記載の非ヒト動物又はその一部;
<アミノ酸配列>
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、そのアミノ末端から26個のアミノ酸が欠失してなる部分アミノ酸配列、
(d)前記(c)のアミノ酸配列において、そのアミノ末端にメチオニンが付加されてなるアミノ酸配列、
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列、
(g)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列、
(h)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列と相補性を有する塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列
(i)配列番号2で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列;
〔12〕 以下の(a)〜(e)の群より選択される1又は複数の性質を表現することを特徴とする〔1〕〜〔11〕のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部;
(a)通常飼育もしくは高カロリー食餌での飼育により野生型非ヒト動物と比較して高血糖値を示す
(b)標準食又は高カロリー食餌での飼育により、野生型非ヒト動物と比較して、耐糖能が低下する
(c)高カロリー食餌での飼育により野生型非ヒト動物と比較して高血中コレステロール量を示す
(d)高カロリー食餌での飼育により野生型非ヒト動物と比較して肝臓において高トリグリセライド量を示す
(e)野生型非ヒト動物と比較して、糖脂質代謝関連因子の発現量が変動する
〔13〕 非ヒト動物がマウスであることを特徴とする〔1〕〜〔12〕のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部;
〔14〕 非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部における非ヒト動物の一部が、非ヒト動物由来の組織又は細胞であることを特徴とする〔1〕〜〔13〕のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部;
〔15〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とする分化全能性細胞;
〔16〕 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質のゲノム遺伝子がその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子がその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とする〔15〕記載の分化全能性細胞;
〔17〕 〔1〕〜〔14〕記載の非ヒト動物からなる、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患のモデル動物;
〔18〕 〔1〕〜〔14〕に記載の非ヒト動物又はその一部について、胎生期から致死までの期間における、発育分化、発達、生活行動の観察、病理組織学的検査又は生化学的検査を行うことを特徴とする、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が関与する疾患の病態解析方法;
〔19〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が関与する疾患が糖脂質代謝機能異常を伴う疾患である、〔18〕に記載の病態解析方法;
〔20〕 糖脂質代謝制御能力の評価方法であって、
(1)請求項1〜14のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部に被験物質を接触させる第一工程、
(2)前記被験物質を接触させた非ヒト動物又はその一部における分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値を測定し、対照と比較する第二工程、
(3)(2)の比較結果に基づき、被験物質の糖脂質代謝制御能力を評価する第三工程
を有することを特徴とする評価方法;
〔21〕 糖脂質代謝制御能力がコレステロール産生制御能力である、〔20〕に記載の評価方法;
〔22〕 糖脂質代謝制御能力が脂肪酸合成及び/又は脂肪酸代謝制御能力である、〔20〕に記載の評価方法;
〔23〕 糖脂質代謝制御能力が糖代謝制御能力である、〔20〕に記載の評価方法;
〔24〕 糖脂質代謝制御能力が糖脂質代謝関連因子発現制御能力である、〔20〕に記載の評価方法;
〔25〕 糖脂質代謝関連因子がPEPCK、G6P、UCP1、FAS及びACOからなる群より選択される1又は複数の因子である、〔24〕記載の評価方法;
〔26〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が、糖脂質代謝関連因子の発現量である、〔20〕〜〔25〕のいずれか記載の評価方法;
〔27〕 糖脂質代謝関連因子がPEPCK、G6P、UCP1、FAS及びACOからなる群より選択される1又は複数の因子である、〔26〕に記載の評価方法;
〔28〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が血糖値である、〔20〕〜〔25〕のいずれか記載の評価方法;
〔29〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が耐糖能である、〔20〕〜〔25〕のいずれか記載の評価方法;
〔30〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が、血中コレステロール量である、〔20〕〜〔25〕のいずれか記載の評価方法;
〔31〕 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が、トリグリセライド(中性脂肪)量である、〔20〕〜〔25〕のいずれか記載の評価方法;
〔32〕 〔20〕〜〔31〕のいずれか記載の評価方法により評価された糖脂質代謝制御能力に基づき、糖脂質代謝制御能力を有する被験物質を選抜することを特徴とする糖脂質代謝制御物質のスクリーニング方法;
〔33〕 〔32〕に記載のスクリーニング方法により得られる糖脂質代謝機能異常を伴う疾患の治療剤又は予防剤;
〔34〕 糖脂質代謝機能異常を伴う疾患が、耐糖能低下、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞又は心血管障害である〔33〕記載の治療剤又は予防剤;
〔35〕 〔1〕〜〔14〕のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部、或いは、〔15〕又は〔16〕記載の分化全能性細胞を作成するための、プロモーター領域が取り除かれている選択マーカー遺伝子を有するDNA(遺伝子カセット)を含有し、かつ、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNAの一部に相同な塩基配列を有する選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクター;
〔36〕 〔1〕〜〔14〕のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部、或いは、〔15〕又は〔16〕記載の分化全能性細胞を作成するための、マウスEN2由来のSA(splicing accepter)、 encephalomyocarditis Virus由来のIRES(internal ribosome entry site)、β-galactocidase及びneomycin耐性遺伝子を融合させてなるβgeoにSV40由来のpA(polyadenylation signal)を平滑末端化処理してなるDNA(SA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセット)を含有し、かつ、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNAの一部に相同な塩基配列を有する選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクター;
等を提供するものである。
本発明により、ノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部であって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とする非ヒト動物又はその一部、当該非ヒト動物又はその一部の作成に不可欠なES細胞等の分化全能性細胞、及びそれらの利用を提供可能にした。また、耐糖能低下、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞又は心血管障害等の糖脂質代謝に関連する疾患の治療剤又は予防剤として有用な、糖脂質代謝制御能力を有する物質をスクリーニングする方法を提供することが可能になった。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明におけるノックアウト非ヒト動物とは、生殖系列細胞を含む、非ヒト動物の生体内の細胞の中に存在するひとつの遺伝子座にあるアリル(対立遺伝子)の全部又は一方がその本来の機能を発揮しないような状態に破壊されている非ヒト動物を意味する。本発明が提供するノックアウト非ヒト動物は、非ヒト動物生体を構成する細胞内の染色体上のひとつの遺伝子座にある分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の全部又は一方のアリルが活性ある分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質を発現しないように破壊されてなるものである。
本発明における分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子は、上記の定義にしたがって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するmRNAに対応する、イントロンを含むことのある非ヒト動物染色体上の領域であり、特定の構造、例えば、特定の塩基配列やイントロン−エクソン構造に限定されるものではない。
本発明における分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質としては、例えば、(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質、(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質、(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、そのアミノ末端から26個のアミノ酸を欠失させた部分アミノ酸配列からなる蛋白質(即ち、配列番号1で示されるアミノ酸配列における第27番目から第491番目までのアミノ酸で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質)、(d)前記(c)のアミノ酸配列において、そのアミノ末端にメチオニンが付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質(即ち、配列番号1で示されるアミノ酸配列における第27番目から第491番目までのアミノ酸で示されるアミノ酸配列のアミノ末端にメチオニンが付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質)、(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質、(f)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質、(g)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質、(h)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列と相補性を有する塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質、(i)配列番号2で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質等を挙げることができる。
ここで、前記(b)にある「アミノ酸の欠失、付加もしくは置換」や前記(e)及び(g)にある「80%以上の配列同一性」には、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する蛋白質が細胞内で受けるプロセシング、該蛋白質が由来する生物の種差、個体差、組織間の差異等により天然に生じる変異や、人為的なアミノ酸の変異等が含まれる。
前記(b)にある「アミノ酸の欠失、付加もしくは置換」(以下、総じてアミノ酸の改変と記すこともある。)を人為的に行う場合の手法としては、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードするDNAに対して慣用の部位特異的変異導入を施し、その後このDNAを常法により発現させる手法が挙げられる。ここで部位特異的変異導入法としては、例えば、アンバー変異を利用する方法(ギャップド・デュプレックス法、Nucleic Acids Res.,12,9441-9456(1984))、変異導入用プライマーを用いたPCR法による方法等が挙げられる。
前記で改変されるアミノ酸の数については、少なくとも1残基、具体的には1若しくは数個、又はそれ以上である。かかる改変の数は、脂肪蓄積促進活性を見出すことのできる範囲であれば良い。
また前記欠失、付加又は置換のうち、特にアミノ酸の置換に係る改変が好ましい。当該置換は、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴等の類似した性質を有するアミノ酸への置換がより好ましい。このような置換としては、例えば、i)グリシン、アラニン;ii)バリン、イソロイシン、ロイシン;iii)アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、iv)セリン、スレオニン;v)リジン、アルギニン、ヒスチジン;vi)フェニルアラニン、チロシンのグループ内での置換が挙げられる。
本発明において「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つの蛋白質間の配列の同一性及び相同性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又は蛋白質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673-4680(1994)を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYX-MACや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
本発明における配列同一性は、80%以上であればよいが、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
前記(h)にある「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載される通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)、50%フォルムアミドを含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)等を挙げることができる。洗浄ステップにおける塩濃度は、例えば、2×SSCで50℃の条件(低ストリンジェンシーな条件)から0.2×SSCで50℃までの条件(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。洗浄ステップにおける温度は、例えば、室温(低ストリンジェンシーな条件)から65℃(高ストリンジェンシーな条件)から選択することができる。また、塩濃度と温度の両方を変えることもできる。
分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質は、細胞膜外へ分泌される蛋白質であることが好ましい。また、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質は、分子量約6千以上である腹腔内脂肪蓄積促進蛋白質であることが好ましい。
本発明における分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のより詳細な具体例としては、例えば、(I)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列、(II)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、そのアミノ末端から26個のアミノ酸を欠失させた部分アミノ酸配列をコードする塩基配列(即ち、配列番号1で示されるアミノ酸配列における第27番目から第491番目までのアミノ酸で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列)、(III)前記(II)のアミノ酸配列において、そのアミノ末端にメチオニンが付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列、(IV)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列、(V)配列番号2で示される塩基配列、(VI)配列番号2で示される塩基配列における第79番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列、(VII)前記(VI)の塩基配列において、その5'末端にATGが付加された塩基配列等の塩基配列を有する遺伝子を、含有するものが挙げられる。尚、これらの遺伝子は、通常の遺伝子工学的方法(例えば、Sambrook J., Frisch E. F., Maniatis T.著、モレキュラークローニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行(Cold Spring Harbor Laboratory press)等に記載されている方法)に準じて取得すればよい。
配列番号2で示される塩基配列は、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するmRNAに対応するcDNAの塩基配列であって、5′末端及び3′末端に非翻訳領域の塩基配列を含んでいる。本発明における分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子は、通常、配列番号2の塩基配列を含有し、かつ、この塩基配列がイントロンにより分断された構造、即ち、イントロン−エクソン構造を有している。
イントロン−エクソン構造のより詳細な具体例としては、配列番号2で示される塩基配列上の塩基番号57及び58の間(エクソン1と2の間)、塩基番号232及び233の間(エクソン2と3の間)、塩基番号318及び319の間(エクソン3と4の間)、塩基番号447及び448の間(エクソン4と5の間)、塩基番号506及び507の間(エクソン5と6の間)に対応する箇所にイントロンを含有する構造が挙げられる
本明細書において、「脂肪蓄積促進活性」とは、脂肪細胞における脂肪蓄積促進活性を表す。ここで用いられる脂肪細胞は哺乳動物の腹腔内脂肪細胞であり、以下の方法で調製できる。すなわち、動物から腹腔内脂肪組織を摘出、細断した後、これをコラゲナーゼ等の組織分解性酵素で消化して細胞懸濁液を調製する。得られた細胞懸濁液をShillabeer G et al., International Journal of Obesity 20, S77-S83等に記載される方法に準じて、遠心分離等により分画し沈殿を回収することにより、前駆脂肪細胞に富む画分を調製する。これをコンフレントになるように培養した後、プロスタグランジンJ2活性を有する分化誘導物質を加え、成熟脂肪細胞へと分化させ、脂肪蓄積促進活性の測定に用いることができる。該成熟脂肪細胞に測定対象の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質を添加し、数日間培養した後、イソプロパノールでトリグリセライドを抽出して定量し、該蛋白質非存在下でのトリグリセライド量と比較することにより脂肪蓄積促進活性を測定することができる。
具体的には、国際公開パンフレット第02/10772号中の実施例4もしくは5に記載された方法で測定することができる。すなわち、脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質としては脂肪蓄積促進率110%以上の蛋白質が挙げられ、好ましくは脂肪蓄積促進率120%以上の蛋白質が挙げられる。
本発明における非ヒト動物としては、例えば、非ヒト哺乳動物(例、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、サル等)等が用いられ、なかでもマウス、ラット、モルモット等の齧歯目(Rodentia)の哺乳動物が好ましく、とりわけマウス、ラットが好適である。
本発明における非ヒト動物の一部とは、当該動物由来の組織又は細胞であれば特に制限は無く、例えば、精巣周囲脂肪組織、後腹膜脂肪組織、腸間膜脂肪組織、皮下脂肪組織、褐色脂肪組織等の各種の脂肪組織、さらには心臓、肺、腎臓、胆嚢、肝臓、膵臓、脾臓、腸、精巣(睾丸)、卵巣、子宮、胎盤、筋肉、血管、脳、髄、甲状腺、胸腺、乳腺等の他の組織等の体の一部が挙げられる。また、当該動物由来の血液、リンパ液もしくは尿等の体液も本発明における非ヒト動物の一部に含まれる。
更に、上記組織、臓器又は体液に含まれる細胞を単離・培養して得られる培養細胞(採取した一代目の初代細胞及び該初代細胞を株化した細胞を含む)や抽出物、のみならず胎生期胚における発生段階の各器官、または不随する細胞の培養物およびES細胞についても分化・増殖能の有無に関わらず非ヒト動物の一部に含まれる。
本発明の第一の態様は、ノックアウト非ヒト動物の個体、その子孫動物又はそれらの一部に関する。
本発明非ヒト動物は、体細胞染色体の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されているか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されているヘテロ接合体、又はホモ接合体として提供される。
本発明非ヒト動物は、公知の標的遺伝子組換え法(ジーンターゲティング法:例えば、村松正實、山本雅編集、『実験医学別冊 新訂 遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版』(1999年、羊土社発行)、239頁〜256頁、Science 244:1288-1292, 1989)等の通常の方法に準じて、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子改変をおこなう非ヒト動物のES(embryonic stem)細胞の染色体上の目的とするゲノム遺伝子(即ち、当該脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子)の二倍体における全部又は一方のアリルを、例えば、選択マーカー遺伝子のプロモーター領域を取り除いたターゲティングベクター(選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクター)を用いて、染色体上の目的遺伝子の一部がターゲティングベクターに置き換える相同的組換え法(即ち、プロモータートラップ法)により破壊し、これを親動物の胚盤胞に混入させた後、胚分化を継続させて出産させた仔であるキメラ原始マウスを作出することが効果的である。この方法では、ES細胞等を分化全能性細胞として使用する。分化全能性細胞としては、マウス(Nature 292:154-156, 1981)、ラット(Dev. Biol. 163(1): 288-292, 1994)、サル(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(17):7844-7848, 1995)、ウサギ(Mol. Reprod. Dev. 45(4):439-443, 1996)についてはES細胞等が確立している。また、ブタについてはEG(embryonic germ)細胞が確立している(Biol. Reprod 57(5):1089-1095, 1997)。従って本発明非ヒト動物は、これらの動物種を対象に作製することが好ましいが、特にノックアウト動物の作製に関して技術が整っているマウスが最適である。
本発明非ヒト動物の作製の具体的手続を以下に説明する。まず、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNA断片を単離し、そのDNA断片を試験管内にて遺伝子操作し、当該ゲノム遺伝子がその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子がその機能を欠失するように破壊されるような変異DNA断片を作製する。当該ゲノム遺伝子のDNAの単離は、例えば、公知のヒト由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のcDNA塩基配列等に基づいて合成されたオリゴヌクレオチドプローブを用いてマウス等の非ヒト動物ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより得られる。また、このcDNAの一部又は両端に相当する合成オリゴヌクレオチドをプライマーとするPCR法によっても目的とするゲノム遺伝子のDNAを得ることができる。尚、マウス以外の非ヒト動物を対象とする場合にも、前記のcDNA塩基配列に基づいて合成されたオリゴヌクレオチドをプローブ又はプライマーとする前記の方法により、各種非ヒト動物由来の当該遺伝子のDNAを単離することができる。またさらに前記のcDNAの塩基配列に基づいて、当該ゲノム遺伝子の構造を詳細に解析し、当該ゲノム遺伝子におけるイントロン−エクソン構造並びに、イントロンの塩基配列を解明する。解明された情報に基づいて、例えば、当該ゲノム遺伝子のDNA断片を含み、当該遺伝子の構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAの塩基配列とは異なるように置換、欠失及び/又は付加によって改変すれば、当該ゲノム遺伝子がその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子がその機能を欠失するように破壊されるような変異DNA断片を作製することができる。
このようにして単離された分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNA断片の一部を改変して作製された変異DNA断片を用いて、ES細胞等の分化全能性細胞が有する分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子に変異を導入するためのターゲティングベクターを、公知の方法(例えば、Science 244:1288-1292, 1989)に準じて作製する。ここで「ターゲティングベクター」とは、相同的組換えによって目的の遺伝子を破壊するためのDNA分子のことであり、ES細胞等の分化全能性細胞の選択をより容易にするために、選択マーカー遺伝子の塩基配列を通常含んでいる。陽性選択マーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子等を、陰性選択マーカー遺伝子としては単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素Aフラグメント遺伝子等をあげることができる。尚、ターゲティングベクターを構築する際に、ターゲティングベクター構築用として市販されているプラスミドベクターを利用することもできる。
本発明において好ましく用いられるターゲティングベクターを作製する方法としては、例えば、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNA[尚、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質である場合には、当該ゲノム遺伝子の構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAがエクソン3及び4領域内の塩基(ここで「エクソン3及び4領域内の塩基」とは、例えば、エクソン3及び4領域内の全塩基であってもよいし、エクソン3及び4領域内の一部の塩基であってもよい。)であることが好ましく、エクソン3領域内の全塩基及びエクソン4領域内の一部の塩基であることがより好ましく、エクソン3及び4領域内の全塩基であることが特に好ましい。但し、ここでのエクソン選択において、エクソン3の先頭からの領域の塩基数が2+3n(nはエクソン3の先頭からの領域のアミノ酸数)になる場合には、エクソン2から後に続く翻訳フレームが分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の構造蛋白質コード領域の下流遺伝子と一致してしまい、下流領域を融合した蛋白質が産生される恐れがあるので好ましくない。]を、プロモーター領域が取り除かれている選択マーカー遺伝子を有する遺伝子カセット(より具体的には、マウスEN2由来のSA(splicing accepter)、 encephalomyocarditis Virus由来のIRES(internal ribosome entry site)、β-galactocidase及びneomycin耐性遺伝子を融合させてなるβgeoにSV40由来のpA(polyadenylation signal)(Mountford P.,et al.,PNAS 91 :4303-4307,1994)を平滑末端化処理してなるDNA等)を含有し、かつ、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNAの一部に相同な塩基配列を有する選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクターを用いて、当該ベクターの一部又は全部でありかつ前記遺伝子カセットを含有するDNAに置換することにより、又は、当該ベクターの一部又は全部でありかつ前記遺伝子カセットを含有するDNAを前記ゲノム遺伝子の構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAに挿入することにより、プロモーター領域が取り除かれている選択マーカー遺伝子を有する遺伝子カセットを含有し、かつ、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNAの一部に相同な塩基配列を前記遺伝子カセットの両端に有するような選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクターを作製する方法をあげることができる。この場合、上記のように置換又は挿入される前のDNA断片が予め組み込まれたターゲティングベクター構築用プラスミドベクターに対して、当該置換又は挿入を実施してもよいし、また上記のように置換又は挿入されてなるDNA断片をターゲティングベクター構築用プラスミドベクターに組み込んでもよい。
勿論、前記遺伝子カセットは、プロモーター領域が取り除かれた選択マーカー遺伝子の前後領域にゲノム遺伝子のDNAの塩基配列に対して相同な塩基配列の一部を有していてもよい。
ここで「相同な塩基配列」とは、比較対象のDNAの塩基配列に対して同一性又は相同性を有する塩基配列であって、相同的組換え法を実施する際にトラブルを生じないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、3塩基以上連続して異ならない90%以上の配列同一性を有する塩基配列、好ましくは、比較対象のDNAの塩基配列に対して95%以上の配列同一性を有する塩基配列、より好ましくは100%の配列同一性を有する塩基配列があげられる。
上記ターゲティングベクターでは、プロモーター領域が取り除かれている選択マーカー遺伝子(例えば、G418等の細胞毒に対する耐性遺伝子、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)を有する遺伝子カセットを含有し、かつ、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNAの一部に相同な塩基配列を有することが重要であって、それ以外の要素は相同的組換え法を実施する際にトラブルを生じないものであれば特に制限されるものではない。尚、本願では、このようなターゲティングベクターを、前述及び後述のように、選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクターと記すこともある。
次に、上記ターゲティングベクターを、公知の方法に準じてマウス等の非ヒト動物由来のES細胞等の分化全能性細胞に導入する。このような遺伝子導入法としては、公知の電気パルス法、リポソーム法、リン酸カルシウム法等をあげることができるが、導入遺伝子の相同的組換えの効率を勘案した場合には、ES細胞等の分化全能性細胞への電気パルス法が好ましい。
このようにして遺伝子導入されたES細胞等の分化全能性細胞のDNAを抽出し、抽出されたDNAをサザンブロット分析やPCR分析等により、染色体上に存在する分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の野生型ゲノム遺伝子(具体的には、当該ゲノム遺伝子の構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNA)と、上記ターゲティングベクターのDNAの一部でありかつ前記遺伝子カセットを含有するDNAの間で正しく相同的組換えが起こり、染色体上の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の野生型ゲノム遺伝子に当該変異が移った細胞を選択する。選択されたES細胞と野生型ES細胞について、PCRリアルタイム定量(RT-PCR法:Absolute Quantification Real-Time Analysis)などを実施してその結果を比較することによって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の遺伝子発現量の増減を調べることができる。
因みに、上述のような方法では、ES細胞等の分化全能性細胞内の染色体に相同的組換えが起こった後、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のプロモーターを利用でき、かつES細胞内で発現している場合のみ、選択マーカー遺伝子が発現し、細胞毒に対する耐性機能等の選択マーカーとしての性質が付与される。分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子を対象とする場合には、当該方法を用いることにより、目的の位置で相同的組換えが起こって遺伝子破壊されているクローンの出現効率が他のゲノム遺伝子を対象とする場合に比較して飛躍的に高まるためと考えられる。
このようにして得られた変異型ゲノム遺伝子を持つES細胞等の分化全能性細胞を慣用のマイクロインジェクション法や凝集法に従って擬妊娠状態にある野生型雌性マウス等の野生型雌性非ヒト動物のブラストシスト(胚盤胞)に注入・混入し、次いでこのキメラ胚を仮親の子宮に移植する。胚分化を継続させると、例えば、非ヒト動物がマウスである場合には約21日後に、仔である候補キメラ非ヒト動物として出産される。出生した候補キメラ非ヒト動物を里親につけて飼育させた後、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の変異型ゲノム遺伝子が生殖系細胞に入ったキメラ非ヒト動物(F0)を選別する。
選別は毛色の違い(生まれたキメラ非ヒト動物の体毛色)を観察することにより実施すればよい。(この場合には、変異型ゲノム遺伝子が導入された組換えES細胞等の分化全能性細胞の占める割合の高いキメラ非ヒト動物の選択が容易となり結果として、変異型ゲノム遺伝子が生殖系細胞に入ったキメラ非ヒト動物の獲得効率を高めることができる。)
他の選別は、体の一部(例えば尾部先端)からDNAを抽出し、サザンブロット分析やPCR分析等により実施してもよい。
分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の変異型ゲノム遺伝子が生殖系細胞に入ったキメラ非ヒト動物と同動物種である野生型非ヒト動物の交配により得られる子孫(F1)について、さらに体の一部(例えば尾部先端)からの抽出DNAを材料とした、サザンブロット分析やPCR分析等を行うことにより、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の変異型ゲノム遺伝子が導入されたヘテロ接合体(二倍体における一方のアリルが破壊された分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子を有する非ヒト動物)を同定する。また、例えば、精巣周囲脂肪組織、後腹膜脂肪組織、腸間膜脂肪組織、皮下脂肪組織、褐色脂肪組織等の各種の脂肪組織、さらには心臓、肺、腎臓、胆嚢、肝臓、膵臓、脾臓、腸、精巣(睾丸)、卵巣、子宮、胎盤、筋肉、血管、脳、髄、甲状腺、胸腺、乳腺等の他の組織一部または胎生期胚からのRNA抽出物を材料とした、PCRリアルタイム定量解析又はノザンブロット分析を実施してその結果を比較することによって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質遺伝子の発現量の増減を調べることができる。さらに、前記体の一部(磨り潰したもの、切片等)又は体液(血液、尿等)を材料としたELAISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay)法を実施してその結果を比較することによって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質量の増減を調べることができる。
作出された分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の変異型ゲノム遺伝子を保有するヘテロ接合体は生殖細胞及び体細胞のすべてに安定的に分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の変異型ゲノム遺伝子を保有しており、交配等により、効率よくその変異を子孫動物に伝達することができる。よってそれらF1以降の子孫動物についても同様に、上述のヘテロ接合体同定や遺伝子の発現量又は当該遺伝子の発現産物である蛋白質の量の増減を調べることができる。
尚、一般的には、破壊された遺伝子が胎生期個体の発生や分化に影響して胎生致死を導かない場合には、F1以降の個体ではホモ接合体(二倍体における全部のアリルが破壊された分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子を有する非ヒト動物)・ヘテロ接合体・野生型の遺伝子型がメンデルの法則に則った確率で作出されるが、これに対して、用いた非ヒト動物の胎生期の発生・分化に必須な蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる遺伝子を破壊した場合には、ヘテロ接合体若しくはホモ接合体の非ヒト動物の生存及び出生は困難となり、胎生致死となる。またこれは、ヘテロ接合体が得られる場合においても、実際の出生率と予測される形質出現の確率とを比較することにより推測することができる。
このようにして作製された非ヒト動物又はその子孫動物(即ち、ノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物)において、普通食、高脂肪食、高蔗糖食又はこれらを組み合わせた食餌負荷飼育(例えば本明細書実施例の高脂肪高蔗糖(HH)食等が例示される。)を実施した後、OGTT(糖負荷試験:一定量の糖を負荷した後の血糖値やインスリン値の変動を見る)/ ITT(インスリン負荷試験:一定量のインスリンを負荷した後の血糖値やインスリン値の変動を見る)、各種血液/尿検査(糖や脂肪の代謝パラメータの解析)、各種病理組織分析(各種脂肪組織、肝臓、腎臓、膵臓、筋肉、血管などの重量変化、またこれらの組織切片を染色し、脂肪細胞、肝臓細胞又はランゲルハンスβ細胞の状態のほか、インスリン量やグリコーゲン量などを観察する)等を実施し、本発明のノックアウトマウスと野生型マウスの生理作用の違いを調べた。因みに、OGTT、ITTはともに血糖調節能力(耐糖能)を客観的に評価することができ、インスリン(分泌・代謝)異常や膵臓β細胞機能を評価する際の指標となる代表的な試験である。
その結果、本明細書実施例に示すとおり、本発明のノックアウト非ヒト動物は、野生型非ヒト動物と比べて、空腹時血糖値上昇、及び耐糖能低下を示した。また、高カロリー食餌での飼育により肝臓におけるトリグリセリセライド量や血中コレステロール量が上昇する所見を示した。これらの所見から本発明のノックアウト非ヒト動物は糖脂質代謝系の機能に異常を呈するという特徴を有することがわかった。
上記の結果から、本発明のノックアウト非ヒト動物又はその一部と野生型非ヒト動物又はその一部を比較し、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患(耐糖能低下、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化等の代謝性疾患や、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞、心血管障害等の疾患等を含む概念である。)の発症状態の違いを知ることができる。
更に、本発明の非ヒト動物又はその一部の胎生期から致死までの期間における、発育分化、発達、生活行動の観察、病理組織学的検査又は生化学的検査を行うことによって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が関与する疾患についても病態解析を行うこともできる。
すなわち、本発明の第2の態様は、上記本発明のノックアウト非ヒト動物からなる、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患(例えば、耐糖能低下、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化等の代謝性疾患や、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞、心血管障害等の疾患等疾患が挙げられる)のモデル動物に関する。
本発明のノックアウト非ヒト動物は、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量が野生型に比べて有意に低下しており、当該蛋白質が関与する疾患を表現することができる。すなわち前述のとおり、糖脂質代謝機能の異常により、具体的には以下の所見:
(a)標準食又は高カロリー食餌での飼育により、野生型非ヒト動物と比較して、空腹時血糖値が上昇する
(b)標準食又は高カロリー食餌での飼育により、野生型非ヒト動物と比較して、耐糖能が低下する
(c)高カロリー食餌での飼育により、野生型非ヒト動物と比較して、血中コレステロール量が上昇する
(d)高カロリー食餌での飼育により、野生型非ヒト動物と比較して、肝臓トリグリセライド量が上昇する
を示す。
従って、本発明のノックアウト非ヒト動物は、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患のモデル動物として、1)糖脂質代謝機能異常を伴う疾患等の病態解析を行うため、2)医薬品又は医薬品候補物質などの糖脂質代謝制御能力を評価するために用いることができる。
本明細書において病態解析とは、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患により生ずる生体内のあらゆる変化を解析することを意味する。
すなわち、標準食餌条件もしくは食餌性肥満誘導条件(食餌負荷試験)において飼育された本発明のノックアウト非ヒト動物と野生型非ヒト動物を比較し、胎生期から致死までの期間における、発育分化、発達、生活行動の観察、病理組織学的検査又は生化学的検査を行うことにより実施することができる。これらの病態解析における観察及び検査については、当業者が通常用いる方法に従えばよく、「トランスジェニック動物」山村研一他 編(共立出版株式会社)」等を参照することができる。
例えば、本発明のノックアウト非ヒト動物の組織から抽出されるトータルRNAをPCRリアルタイム定量解析又はノザンブロット解析等の方法で分析し、野性型非ヒト動物における値と比較することにより、当該組織において発現が誘導もしくは抑制されている遺伝子を同定することができる。その結果から、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患において発現が変動するマーカー遺伝子を探索することができ、延いては疾患の原因因子解明の指標とすることもできる。
実際に、本発明実施例に示すとおり、本発明のノックアウト非ヒト動物では、糖脂質代謝関連因子の発現量が変動していることがわかった。すなわち、肝臓におけるPEPCK及びG6P、褐色脂肪細胞におけるUCP1及びFAS、白色脂肪細胞におけるACOの発現がそれぞれ上昇しており、これらの発現を指標として糖脂質代謝機能異常を伴う疾患モデル動物における、罹患の有無を判断できることがわかる。
一方、医薬品又は医薬品候補物質などの糖脂質代謝制御能力を評価する方法については、以下に詳細に説明する。
本発明の第3の態様は、本発明のノックアウト非ヒト動物又はその一部を用いる、被験物質における糖脂質代謝制御能力の評価方法に関する。
作製された非ヒト動物又はその子孫動物或いはその一部(即ち、ノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部)は、糖脂質代謝に関連する疾患等に対する医薬品開発等の分野において有用である。また当該非ヒト動物又はその子孫動物或いはその一部は、糖脂質代謝制御物質を評価するために使用することができる。
本発明の評価方法は、
(1)本発明のノックアウト非ヒト動物又はその一部に被験物質を接触させる第一工程、
(2)前記被験物質を接触させた非ヒト動物又はその一部における分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値を測定し、対照と比較する第二工程、
(3)(2)の比較結果に基づき、被験物質の糖脂質代謝制御能力を評価する第三工程からなる。
本明細書において糖脂質代謝制御物質とは、糖脂質代謝制御能力を有する物質を表す。
「糖脂質代謝制御能力」とは、筋肉、肝臓もしくは脂肪組織において解糖や糖新生および糖取り込みを制御する能力(糖代謝制御能力)、又は脂質合成もしくは脂質分解を制御する能力(脂肪酸合成及び/又は脂肪酸代謝制御能力)を表す。さらには、前記脂肪酸を原料にしたコレステロール合成代謝(コレステロール産生制御能力)、エネルギー(ATP)の産生消費、生体のインスリン感受性を制御する能力もまた、糖脂質代謝制御能力の概念に含まれる。
本明細書において、被験物質としては特に限定は無く、核酸、ペプチド、タンパク質(本発明タンパク質に対する抗体を含む)、有機化合物、無機化合物などであり、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子有機化合物、合成ペプチド、合成核酸、天然化合物などが挙げられる。
上記評価方法において、本発明のノックアウト非ヒト動物を用いる場合、当該非ヒト動物は、標準的な食餌による通常の飼育条件又は高カロリー食餌を与える飼育条件により飼育される。食餌の摂食方法については特に限定は無く、自由摂食させるか、又は一定量を一定時間に摂食させる。ここで標準的な食餌としては、各々の動物種に応じて適宜当業者に汎用されている食餌を用いればよい。
本明細書において、「高カロリー食餌」とは、高脂肪食、高蔗糖食又はこれらを組み合わせた高脂肪高蔗糖(HH)食を表すが、その組成や摂食の条件をコントロールすることで、より効果的に食餌性の糖脂質代謝異常疾患の発症を誘導することが可能である。具体的には単位食餌成分の脂肪分を10-60kcal%(標準食約35kcal%)の幅で選択し、さらに植物性脂質に比して動物性脂質を0.5−10倍に調整できる。また、単位食餌成分の炭水化物成分から蔗糖を0-35kcal%の幅で選択することができる。
本明細書において、「高カロリー食摂取(負荷飼育)時」とは、一定期間の調整食条件下の飼育期間中の任意の時点を示し、胎生期から致死までの期間において時期および期間、回数や量を限定するものではなく、また、期間中に一時的に2-24時間程度の絶食を実施し、生化学的検査を実施することで病態の変化を観察することができる。さらに好ましくは、食餌条件の異なる動物群にわけて飼育を実施し、常に生活行動や糖脂質代謝異常に伴う病態に関わるパラメータ(体重、運動量、血圧、摂食状態、生化学的検査)について各群を経時的に比較観察した上で病理組織学的検査を行う。生化学的検査における項目としては、血糖値、コレステロール量、リン脂質量、トリグリセライド量、遊離脂肪酸、インスリン値、レプチン値及び糖脂質代謝関連因子の発現量等が例示されるが、これに限定されるものではない。
本明細書において「本発明のノックアウト非ヒト動物又はその一部に被験物質を接触させる」とは、被験物質を当該非ヒト動物に投与すること、又は被験物質を当該非ヒト動物の一部に接触させることを表し、当業者に汎用されている方法で実施することができる。被験物質を当該非ヒト動物に投与する場合、その投与方法には特に限定はなく、経口的もしくは非経口的に投与すればよい。非経口的投与方法としては、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与(ip)、直腸内投与、経皮投与(塗布)等を挙げることができる。
被験物質の形態に特に限定は無く、固体、液体、基剤との混合物、縣濁液又は溶液等として用いることができる。縣濁液もしくは溶液とする場合、水、pH緩衝液、メチルセルロース溶液、生理食塩水、有機溶媒水溶液(有機溶媒としては通常エタノールやジメチルスルホキシドが用いられる。)等を用いる。基剤としてはグリセリン、スクワラン等の油等が挙げられ主に塗布用の被験物質を調製するために用いられる。
「分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量」の測定方法としては、該蛋白質のRNA量を検出・測定する方法及び、該蛋白質量を検出・測定する方法が挙げられ、後述する糖脂質代謝関連因子の発現量の測定方法、又は実施例に記載の方法と同様に行えばよい。
前記評価方法の第二工程における「分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値」としては、
(a)通常飼育もしくは高カロリー食餌での飼育における空腹時の血糖値、
(b)通常飼育もしくは高カロリー食餌での飼育における耐糖能、
(c)高カロリー食餌での飼育時の血中コレステロール量、
(d)高カロリー食餌での飼育時の肝臓トリグリセリセライド量、
(e)糖脂質代謝関連因子の発現量
を挙げることができる。
血糖値の測定方法としては、当業者に良く知られた、GOD(Glucose oxidase)固定化酵素電極による最大反応加速方法(Glucoroder-NX株式会社A&T製造)や本明細書実施例に記載の方法などを用いることができる。
耐糖能の測定方法としては、OGTT(糖負荷試験)又はITT(インスリン負荷試験)等が挙げられ、好ましくは、これらの結果から曲線下面積値(AUC:area under the curve)を算出し、その増加をもって耐糖能低下の指標とすることができ、具体的には本明細書実施例に記載された方法を用いることができる。
血中コレステロール量の測定方法としては、当業者に良く知られた酵素的免疫吸着分析法キット(Roche Dianostics)による方法などを用いることができる。
又は肝臓トリグリセリセライド量の測定方法としては、当業者に良く知られた、アセチルアセトン法(Fletcher,M.J.:Clin. Chim. Acta,22,339-397(1968)およびSardesai,V.M.:Clin. Chim. Acta,14,156-161(1968))に記載された方法や本明細書実施例に記載の方法などを用いることができる。
その他本発明のノックアウト非ヒト動物の生化学的解析手法については、当業者に良く知られた方法又は「 The Journal of Clinical Investigation ,April2002,vol.109,no.8(Robert V. Farese Jr.ら著)」又は「Nature Genetics, vol.25, may 2000(Robert V. Farese Jr.ら著」等に記載された方法が挙げられる。
本明細書において糖脂質代謝関連因子とは、解糖や糖新生、及び糖取り込みに関わる酵素、脂質の代謝もしくは生合成等の制御に関わる因子、また、これを原料にしたコレステロール合成代謝、エネルギーの産生消費についての制御にもかわる因子、さらに生体のインスリン感受性に関与する因子であり、具体的にはPEPCK、G6P、UCP1、FAS及びACOなどから選択される1又は複数の因子が挙げられる。該糖脂質代謝関連因子の発現量の測定を行う場合、測定対象としてRNAを用いる方法及び測定対象として蛋白質を用いる方法が挙げられる。以下それぞれについて詳細に述べる。
1)測定対象としてRNAを用いる場合
生体試料としてRNAを利用する場合は、該糖脂質代謝関連因子の発現量は、生体試料に含まれるトータルRNA単位量当りのPEPCK遺伝子、G6P遺伝子、UCP1遺伝子、FAS遺伝子又はACO遺伝子の発現レベルを検出し、測定することによって実施される。
糖脂質代謝関連因子遺伝子の由来動物種は特に限定は無いが、通常は本発明非ヒト動物と同一種由来の遺伝子を用いる。
本明細書において、PEPCK遺伝子は特に言及しない限り、マウス由来のPEPCK遺伝子(Genbank Accession No.AF009605又は配列番号26)や、そのホモログを包含する趣旨で用いられる。ホモログとしてはアイソフォームやオルソログ[例えばヒト由来のPEPCK遺伝子(Genbank Accession No.AI635748,BC023978,BM768055)]等が挙げられる。
本明細書において、G6P遺伝子は特に言及しない限り、マウス由来のG6P遺伝子(Genbank Accession No.BC013448又は配列番号28)や、そのホモログを包含する趣旨で用いられる。ホモログとしてはアイソフォームやオルソログ[例えばヒト由来のG6P遺伝子(Genbank Accession No.U01120)等が挙げられる。
本明細書において、UCP1遺伝子は特に言及しない限り、マウス由来のUCP1遺伝子(Genbank Accession No.BC012701又は配列番号30)や、そのホモログを包含する趣旨で用いられる。ホモログとしてはアイソフォームやオルソログ[例えばヒト由来のUCP1遺伝子(Genbank Accession No.U28480,X51952)等が挙げられる。

本明細書において、FAS遺伝子は特に言及しない限り、マウス由来のFAS遺伝子(Genbank Accession No. AF127033又は配列番号32)や、ヒト由来のFAS遺伝子(Genbank Accession No. U29344,U52428)等が挙げられる。
本明細書において、ACO遺伝子は特に言及しない限り、マウス由来のACO遺伝子(Genbank Accession No. AF006688又は配列番号34)や、ヒト由来のACO遺伝子(Genbank Accession No. AH000843,BC008767)等が挙げられる。
本発明の非ヒト動物、その子孫もしくはそれらの一部において、上記糖脂質代謝関連因子遺伝子(あるいは遺伝子産物)の発現の有無又はその程度を検出することによって、当該遺伝子発現の有無又はその程度を測定することができる。すなわち、食餌負荷飼育を実施した後の各種組織から抽出されたRNAを材料としたPCRリアルタイム定量解析又はノザンブロット解析を実施することによって、糖脂質代謝関連因子遺伝子の発現量の増減又はこれに連動する他の遺伝子の発現量の動向を調べることにより、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患の発症状態を知ることができ、延いては疾患の原因因子解明の指標とすることもできる。
すなわち、本発明の非ヒト動物由来の生体試料と糖脂質代謝関連因子遺伝子由来のプライマーもしくはプローブとを接触させ、該プライマーもしくはプローブと結合するRNA量を、ノーザンブロット法、RT-PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション解析法などの公知の方法で測定することができる。該プライマーもしくはプローブとしては、糖脂質代謝関連因子遺伝子の塩基配列において連続する少なくとも15塩基を有するポリヌクレオチド及び/又はその相補的なポリヌクレオチドが挙げられる。プライマーとして用いる場合には、通常15bp〜100bp、好ましくは15bp〜50bp、より好ましくは15bp〜35bpの塩基長を有するものが例示できる。また検出プローブとして用いる場合には、通常15bp〜全配列の塩基数、好ましくは15bp〜1kb、より好ましくは100bp〜1kbの塩基長を有するものが例示できる。
ノーザンブロット法を利用する場合は、具体的には、前記プローブを放射性同位元素(32P、33Pなど:RI)や蛍光物質などで標識し、それを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした被験者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせた後、形成された糖脂質代謝関連因子由来のプライマー(DNA又はRNA)と生体試料由来の全RNAとの二重鎖を、前記プライマーの標識物(RI若しくは蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS-1800II、富士フィルム社製)又は蛍光検出器で検出、測定する方法を例示することができる。また、AlkPhos Direct Labelling and Detection System (Amersham PharamciaBiotech社製)を用いて、該プロトコールに従ってプローブDNAを標識し、生体試料由来のRNAとハイブリダイズさせた後、プローブの標識物に由来するシグナルをマルチバイオイメージャーSTORM860(Amersham Pharmacia Biotech社製)で検出、測定する方法を使用することもできる。
RT-PCR法を利用する場合は、生体試料由来のRNAと前記プライマーをハイブリダイズさせ、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、増幅された二本鎖DNAの検出は、上記PCRを予めRIや蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーさせて、標識した疾患マーカーをプローブとして使用してこれとハイブリダイズさせて検出する方法などを用いることができる。なお、生成された標識二本鎖DNA産物はアジレント2100バイオアナライザ(横河アナリティカルシステムズ社製)などで測定することができる。また、SYBR Green RT-PCR Reagents (Applied Biosystems 社製)で該プロトコールに従ってRT-PCR反応液を調製し、ABI PRIME 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems 社製)で反応させて、該反応物を検出することもできる。
また、DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の前記プライマーもしくはプローブをDNAプローブ(1本鎖又は2本鎖)として貼り付けたDNAチップを用意し、これに生体組織由来のRNAから常法によって調製されたcRNAとハイブリダイズさせて、形成されたDNAとcRNAとの二本鎖を、本発明の前記プライマーもしくはプローブから調製される標識プローブと結合させて検出する方法を挙げることができる。また、上記DNAチップとして、PEPCK遺伝子、G6P遺伝子、UCP1遺伝子、ACO遺伝子又はFAS遺伝子の遺伝子発現レベルの検出、測定が可能なDNAチップを用いることもできる。
2)測定対象として蛋白質を用いる場合
生体試料として蛋白質を含む溶液を利用する場合は、生体試料に含まれる糖脂質代謝関連因子量を該糖脂質代謝関連因子を認識し得る抗体と反応させることによって、該抗体と結合し得る糖脂質代謝関連因子量を検出し、測定することによって実施される。
糖脂質代謝関連因子を認識し得る抗体の由来動物種は特に限定は無いが、通常は本発明非ヒト動物と同一種由来の抗体を用いる。
糖脂質代謝関連因子として具体的にはPEPCK、G6P、UCP1、FAS又はACO、が挙げられ、そのアミノ酸配列としては、それぞれ上述の糖脂質代謝関連因子遺伝子によってコードされる蛋白質を挙げることができる。
前記糖脂質代謝関連因子の抗体は、その形態に特に制限はなく、前記糖脂質関連因子を免疫抗原とするポリクローナル抗体であっても、またそのモノクローナル抗体であってもよく、さらには当該糖脂質関連因子を構成するアミノ酸配列のうち少なくとも連続する3アミノ酸、通常8アミノ酸、好ましくは15アミノ酸程度からなるポリペプチドに対して抗原結合性を有する抗体が、本発明の抗体に含まれる。
これらの抗体の製造方法は、すでに周知であり、本発明の抗体もこれらの常法に従って製造することができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製したPEPCK、G6P、UCP1、FAS又はACOを用いて、あるいは常法に従って当該いずれかの本発明タンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。一方、モノクローナル抗体の場合には、常法に従って大腸菌等で発現し精製したPEPCK、G6P、UCP1、FAS又はACO、あるいはこれらタンパク質の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞の中から得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
また、抗体の作製に使用されるタンパク質は、本発明により提供される糖脂質代謝関連因子の遺伝子の配列情報(配列番号27,29,31,33又は35)に基づいて、DNAクローニング、各プラスミドの構築、宿主へのトランスフェクション、形質転換体の培養及び培養物からのタンパク質の回収の操作により得ることができる。これらの操作は、当業者に既知の方法、あるいは文献記載の方法(Molecular Cloning, T.Maniatis et al., CSH Laboratory (1983), DNA Cloning, DM. Glover, IRL PRESS (1985))などに準じて行うことができる。具体的には糖脂質代謝関連因子をコードする遺伝子が所望の宿主細胞中で発現できる組み換えDNA(発現ベクター)を作成し、これを宿主細胞に導入して形質転換し、該形質転換体を培養して、得られる培養物から、目的タンパク質を回収することによって実施することができる。また、これら糖脂質代謝関連因子は、本発明により提供されるアミノ酸配列の情報(配列番号27,29,31,33又は35)に従って、一般的な化学合成法(ペプチド合成)によって製造することもできる。具体的には、「ペプチド合成の基礎と実験」(泉屋信夫ら著、丸善、1987年発行)に記載された液相合成法や固相合成法を用いることができる。
なお、本発明の糖脂質代謝関連因子には、配列番号27,29,31,33又は35に示すタンパク質のみならず、その相同物も包含される。該相同物としては、上記配列番号で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ上記配列番号で示されるタンパク質の機能と同等の生物学的機能を有するか、及び/又は免疫学的活性において同等の活性を有するタンパク質を挙げることができる。ここで免疫学的活性において同等とは、糖脂質代謝関連因子に対する抗体と特異的に結合能力を有する蛋白質を挙げることができる。
本発明評価方法の第二工程における「対照」は、例えば、
(a)当該評価方法で使用される本発明非ヒト動物と同動物種である野生型非ヒト動物を対象として第一工程及び第二工程と同様な工程を実施した場合、又は
(b)被験物質の代わりに対照物質(ポジティブコントロール、ネガティブコントロール)を用いて第一工程及び第二工程と同様な工程を実施した場合等を意味する。
前記(a)の場合、本発明の非ヒト動物における糖脂質代謝制御能力が野生型非ヒト動物における被験物質の糖脂質代謝制御能力と同等以上であれば、当該被験物質は糖脂質代謝制御能力を有すると評価することができる。一方、本発明の非ヒト動物における糖脂質代謝制御能力が野生型非ヒト動物における被験物質の糖脂質代謝制御能力よりも小さければ、当該被験物質は分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質に起因する糖脂質代謝制御能力を有さないと評価することができる。
前記(b)の場合、対照物質としては、ポジティブコントロール又はネガティブコントロールが挙げられる。ポジティブコントロールとは、糖脂質代謝制御能力を有する任意の物質を表し、具体的にはインシュリン等が例示される。また、ネガティブコントロールとしては、被験物質に含まれる溶媒、バックグランドとなる試験系溶液等が上げられる。
対照物質をネガティブコントロールとする場合、被験物質の糖脂質代謝制御能力が対照物質の糖脂質代謝制御能力よりも大きければ、当該被験物質は糖脂質代謝制御能力を有すると評価することができる。一方、被験物質の糖脂質代謝制御能力が対照物質の糖脂質代謝制御能力と同程度もしくは小さければ、当該被験物質は糖脂質代謝制御能力を有さないと評価することができる。
また、対照物質をポジティブコントロールとする場合、被験物質の糖脂質代謝制御能力と対照物質の糖脂質代謝制御能力を比較することによって、被験物質の糖脂質代謝制御能力の程度を評価することができる。
本発明評価方法により得られる被験物質の糖脂質代謝制御能力に基づき、選択される物質(糖脂質代謝制御物質)は、糖脂質代謝制御能力を有するので、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患(耐糖能低下、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞又は心血管障害)等に対する治療及び予防に効果のある医薬品として使用することができる。さらに、本発明スクリーニング方法により得られる物質から誘導される化合物も同様に用いることができる。
本発明スクリーニング方法により得られた物質は塩を形成していてもよく、当該物質の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)又は塩(例、アルカリ金属)等との塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩等が用いられる。本発明スクリーニング方法により得られた物質は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等として経口的に、或いは水若しくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤等の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、当該物質を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等とともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。錠剤、カプセル剤等に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン,コーンスターチ,トラガント,アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ,ゼラチン,アルギン酸等のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖,乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント,アカモノ油又はチェリーのような香味剤等が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油等のような天然産出植物油等を溶解又は懸濁させる等の通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水,ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール,D−マンニトール,塩化ナトリウム等)等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール,ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM,HCO−50)等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油,大豆油等が用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル,ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、上記の治療・予防剤には、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム,塩酸プロカイン等)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン,ポリエチレングリコール等)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール,フェノール等)、酸化防止剤等を配合してもよい。調製された注射液等の医薬組成物は、通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)に対して投与することができる。当該物質の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルート等により差異はあるが、例えば、当該化合物を経口投与する場合には、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき当該物質を約0.1〜100mg、好ましくは約1〜50mg、より好ましくは約1〜20mg投与する。非経口的に投与する場合には、当該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患等によっても異なるが、例えば、当該物質を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき当該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の非ヒト動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(本遺伝子の単離及び構造解析)
本実施例において対象とされたマウス由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、GenBank AF234625(mRNA、2664bp)等に記載されている。当該ゲノム遺伝子のDNA断片を含むクローンを取得するために、マウス由来の染色体遺伝子ライブラリー(CITB Mouse BAC(bacterial artifical chromosome Library)Cell line DJ7(129SV)DNA pools (Research Genetics 社製)を対象にしたPCR法によるスクリーニングを実施した。この際に用いたPCR法は、プライマーGE-U7(配列番号3:GGC CAC AAA TTC CAG AGA ACA G)とGE-L7(配列番号4:CCA AAT GAG CAG ATG CCC CTA T)との一対のプライマーを用いる標準的なTaq polymerase (Toyobo, Japan)反応法であった。尚、当該PCRのプログラムは、DNA変性(94℃、1分間)に続き、40サイクルの変性(94℃、1分間)−アニ−リング(55℃、30秒間)−伸長(72℃、2分間)、さらに最終伸長(72℃、1分間)であった。その結果、マウス由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNA断片のうち、エクソン5からエクソン6までの領域に相当する塩基配列を有するDNA断片(850bp)を増幅する1個の陽性クローンを得た。
(ターゲティングベクターの構築)
実施例1で得られたクローン(BACクローン)から、マウス由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNA断片のうち、エクソン2からエクソン6までの領域に相当する塩基配列を有するDNA断片(約9kbp)単離し、これをベクターpCR-XL(Invitrogen社製)にクローニングすることによりpCR-085を調製した。この際に用いたPCR法は、プライマーU8ClaI-2(配列番号5:ATC GAT TCC TAC TTT GAA TGC CGT GAA)と、プライマーL15SalI(配列番号6:GCT GTC GAC TGG AAC AGA ATA GCC TGG AA)との一対のプライマーを用いる、baffer1を使用したExpand Long Template PCR system (Loche)反応法であった。尚、当該PCRのプログラムは、DNA変性(94℃、10秒間)に続き、36サイクルの変性(94℃、5秒間)−アニ−リング(60℃、5秒間)−伸長(68℃、10分間)、さらに最終伸長(68℃、20分間)であった。
次に、pGT1.8IresBgeoベクター(Grossler, A.,Joyner, A.L.,Rossant, J., Skarnes,W.C.:Science,244,443-465(1989), Peter S. Nountford and Austin G. Smith:TIG May 1995, Vol.11 No.5等に記載される公知なベクター)からSalIで切り出されたSA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセット(マウスEN2由来のSA(splicing accepter)、 encephalomyocarditis Virus由来のIRES(internal ribosome entry site)、β-galactocidase及びneomycin耐性遺伝子を融合させてなるβgeoにSV40由来のpA(polyadenylation signal)を平滑末端化処理してなるDNA)を用いて、pCR-085からMunIで切り出されるマウス由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNA断片のうち、エクソン3からエクソン4までの領域に相当する塩基配列を有するDNA断片を入れ替えることによりターゲティングベクターを構築した。このようにして構築されたターゲティングベクターを用いてES細胞内の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子を相同的組換えする。このような相同的組換えにより、当該ゲノム遺伝子が本来有する独自のプロモーターの下流で、前記ターゲティングベクターが有する、エクソン2−前記SA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセット−エクソン6からなるDNAに置換され、結果的にエクソン3からエクソン4の一部までの領域に相当する構造蛋白質コード領域が欠失する。また同時に、当該遺伝子カセットの下流に続くエクソン4以降ではフレームシフトが生じ、結果的に当該ゲノム遺伝子の翻訳産物が誤って産生されることはない。さらにまた、当該ゲノム遺伝子が本来有する独自のプロモーターの下流に挿入された当該遺伝子カセットでは、当該遺伝子カセットが有する選択マーカー遺伝子のプロモーター領域が取り除かれているために、細胞本来の前記ゲノム遺伝子における発現制御と同様な発現制御を受けることになり、ノックアウト非ヒト動物又はその一部において、例えば、β-geoにより付与されるG418等の細胞毒に対する耐性能力や、X-Gal染色による発色によって、簡単に当該ゲノム遺伝子からの発現を調べることができる。
〈ターゲティングベクターのES細胞への導入と相同的組換え〉
実施例2で構築されたターゲティングベクターを、XhoIで切断、直線化してからエレクトロポレーション(0.25kV、0.5μF×1000)法を用いて、トリプシン処理したRF8 ES細胞(Meiner VL et al., Proc Natl Acad Sci USA.93:14041,1996等に記載される129Sv/Jaeマウス由来細胞:Robertson, E.J., Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cell: A Practical Approach (1987)等に記載される方法により調製可能)へ導入した。
ターゲティングベクターが導入されたRF8 ES細胞を、シャーレの底一面に培養された支持細胞であるSNL細胞(線維芽細胞(STO細胞)にネオマイシン耐性遺伝子と白血病阻害因子(LIF)の発現ベクターとを組み込んだもの:McMahon AP and Bradley A, Cell 62:1073,1990)上で37℃、24時間培養した後、さらにネオマイシン含有培地(G418:250μg/ml含有)にて37℃、7〜15日間培養した。培養後、コロニーが形成されたG418耐性のクローンを選抜した。このように選抜されたクローン(ES細胞)を分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子上での相同的組換えが起こったES細胞とし、これを拡大培養した後、得られたES細胞の一部については前記ゲノム遺伝子に関するPCR法によるDNA解析に供し、他の一部については冷凍保存(-80℃)に供した。この際に用いた上記DNA解析は、エクソン2に位置する正向きプライマーSU-screening3(配列番号7:AAC AAT ACC CAC CCA ACA CAA GCA)と、βgeo遺伝子カセット内のSAに位置する逆向きプライマーSA-screening AS2(配列番号8:CGC ACG CCA TAC AGT CCT CTT CAC)との一対のプライマーを用いる、Expand Long Template PCR systemの反応法であった。尚、当該PCRのプログラムは、DNA変性(94℃、5秒間)に続き、36サイクルの変性(94℃、2秒間)−アニ−リング(60℃、2秒間)−伸長(68℃、2分間)、さらに最終伸長(68℃、3分間)であった。
このようにして、上記ES細胞の目的位置において正確に相同的組換えが起こっていること(即ち、約1.3kbpのDNA断片の増幅があること)を確認した。
尚、一般的なゲノム遺伝子を標的としたポジネガ法を採用した場合には、ポジ選択されたES細胞等の分化全能性細胞のうち、通常、約10〜50%の割合で相同的組換えが確認されるES細胞等の分化全能性細胞が存在するにもかかわらず、本実施例において対象とされた分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子を標的にした場合には、約1200のES細胞をスクリーニングしたが、当該ゲノム遺伝子が相同的組換えされたES細胞は得られなかった。これに対して、上記のようなプロモータートラップ法を採用した場合には、選抜されたクローンのうち1割程度が目的とする相同的組換えES細胞であった。
(相同的組換えES細胞が有するゲノム遺伝子のサザンブロッティング分析)
実施例3で得られた相同的組換えES細胞の染色体DNAをEcoRVで制限酵素消化した。制限酵素消化された染色体DNA断片を、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、分離された染色体DNA断片をナイロンメンブレン(アマシャム社製、ハイボンドN)へターボブロッター(Schneider&Shunel社製ターボブロッターシステム)を用いて転写した。
分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のイントロン6(即ち、エクソン6とエクソン7との間に位置するイントロン)に由来するプローブを取得するために、エクソン6からエクソン8までのまでの領域に相当する塩基配列を有するDNA断片を増幅する、エクソン6に位置する正向きプライマーGE-U12 (配列番号9:GGG CAT CTG CTC ATT TGG TTA)と、エクソン8に位置する逆向きプライマーGE-L12(配列番号10:CTC TTG TAA AGT ATT GAT ATC CAC G)を用い、かつ鋳型として前記BACクローンを用いてExpand Long Template PCR system 反応を実施した。尚、当該PCRのプログラムは、DNA変性(94℃、5秒間)に続き、36サイクルの変性(94℃、2秒間)−アニ−リング(60℃、2秒間)−伸長(68℃、4分間)、さらに最終伸長(68℃、5分間)であった。
増幅されたDNA断片(3.5kbp)をpCR2.1(Invitrogen)にクローニングした後、当該プラスミドからEcoRVでDNA断片(1.6kbp)を切り出し、これをゲル精製に供した。
このようにして得られたDNA断片をプローブとして用いて、上記の分離された染色体DNA断片(即ち、相同的組換えES細胞が有するゲノム遺伝子由来のDNA断片)のサザンブロッティング分析を実施した。尚、相同的組換えES細胞の場合には10kbpのDNA断片を、非相同的組換えES細胞(野生型ES細胞)の場合には16kbpのDNA断片を検出することができる。
その結果を図2に示した。図から明らかなように、本実施例において対象とされたマウス由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子における相同的組換えが確認できるクローン2個が見出された。
(ヘテロ接合性ノックアウト非ヒト動物(マウス)の作製)
このようにして確認された相同的組換えES細胞(即ち、変異型ゲノム遺伝子を持つES細胞)を、A.L. Joyner、「Gene Targeting - A Practical Approach」2nd edition 、Oxford UNIV等に記載される方法に準じて擬妊娠状態にある野生型雌性マウス57BL/6J(日本クレア社製)のブラストシスト(胚盤胞)に注入し、次いでこのキメラ胚を仮親の子宮に移植した。胚分化を継続させると、約21日後に、候補キメラマウスが出産された。出生した候補キメラマウスを里親につけて飼育させた後、本実施例において対象とされた分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の変異型ゲノム遺伝子が生殖系細胞に入ったキメラマウス(F0)を選別した。選別は毛色の違いを観察する方法を利用し、アグーチの毛色からキメラ率約90%以上のキメラマウスをF0マウスとして4個体を選択した。
選択されたキメラマウスと同動物種(即ち、C57BL/6Jマウス)である野生型マウスを交配し、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の変異型ゲノム遺伝子が導入されたヘテロ接合体F1マウス(二倍体における一方のアリルが破壊された分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子を有するマウス)38個体を作出した。さらに、これらのF1マウス同士を交配することによりヘテロ接合体F2マウスを作製した。一部の、ヘテロ接合体F1マウスについては、当該ヘテロ接合体F1マウスと同動物種(即ち、C57BL/6Jマウス)である野生型マウスとのかけ戻し交配を実施した。
(ノックアウト非ヒト動物(マウス)の遺伝子型解析)
キメラマウスの遺伝子型解析には、マウス尾部先端からの抽出DNAを鋳型とし、かつ、下記の3種類のプライマー[(1)イントロン2に位置する野生型及び相同的組換え型に共通の正向きプライマーSumi-S6(配列番号11:TAA TGG TGG GTT GTT TGT TTG TCA AGG C)、(2)野生型のイントロン2のみに相補する逆向きプライマーSumi-AS2(配列番号12:GCA GTA CTC TAA AGT AGG CAA CCA ATG T )、及び(3)βgeo遺伝子カセット内のIRISに位置しかつ相同的組換え型のみに相補する逆向きプライマーβgeo-screening AS2(配列番号13:GAC CTT GCA TTC CTT TGG CGA GAG )]を用いる、baffer1を使用したExpand Long Template PCR system (Loche)反応法を用いた。尚、当該PCRのプログラムは、DNA変性(94℃、5秒間)に続き、40サイクルの変性(94℃、2秒間)−アニ−リング(55℃、2秒間)−伸長(68℃、2分間)、さらに最終伸長(68℃、5分間)であった。尚、相同的組換えES細胞の染色体を鋳型とする場合には2kbpのDNA断片を、非相同的組換えES細胞(野生型ES細胞)の染色体を鋳型とする場合には0.5kbpのDNA断片の増幅を検出することができる。
このようにしてキメラマウスの遺伝子型解析を実施した結果、本実施例において対象とされたマウス由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子が破壊されたF1マウス以降の個体の遺伝子型は、ヘテロ接合体(0.5kbpのDNA断片と2kbpのDNA断片との両者の増幅有り)又は野生型マウス(0.5kbp断片のみ増幅有り)であった。尚、ヘテロ接合体の出現率は予測される確率の半数程度であった。
(mRNA抽出並びにPCR法又はRT-PCR分析法による、ES細胞における分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質遺伝子の発現確認)
野生型のマウスES細胞、及び、実施例3で冷凍保存されたマウスES細胞(分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子上での相同的組換えが起こったES細胞)を、各々別々に、TRIzol RNA reagent(GIBCO-BRL社製)中でホモジナイズし、同社の標準的な方法に従って全RNAを抽出した。抽出された全RNA(溶解物)をUVスペクトロメータ(260nm、280nm)で吸光度測定することにより定量した。
逆転写反応はAMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit(LIFE SCIENCES社製)を使用して実施され、得られたcDNAを鋳型として、含まれる分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質遺伝子の発現量に反映してDNA断片の増幅が認められる条件でPCR法、またはRT−PCR法を行うことにより、各々のES細胞における当該遺伝子の発現の有無及びその発現量を確認した。
この際に用いたPCR法は、プライマーGE-U7(配列番号14:GGC CAC AAA TTC CAG AGA ACA G)とプライマーGE-L7(配列番号15:CCA AAT GAG CAG ATG CCC CTA T)との一対のプライマーを用いる、KODプラス (Toyobo社製, Japan)反応法であった。尚、当該PCRのプログラムは、DNA変性(94℃、1分間)に続き、30サイクルの変性(94℃、10秒間)−アニ−リング(55℃、30秒間)−伸長(68℃、1分間)、さらに最終伸長(68℃、5分間)であった。その結果、各々のES細胞において前記遺伝子の発現が確認された。
一方、RT−PCR法は、同プライマーを用いるSYBR Green PCR Master MIX(ABI社製)を使用して実施され、試験結果をPRISM 7900HT Sequence Detection System 2.0 (ABI社製)を用いて解析した。その結果、前記ゲノム遺伝子のヘテロ接合型ES細胞においては野生型ES細胞に比して、前記遺伝子の発現量が約半分に減少していることが確認された。
(RT-PCR分析法による、各組織における分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質遺伝子の発現量の確認)
野生型のマウス組織、及び、ヘテロ接合型のマウス組織(分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子上での相同的組換えが起こったES細胞から創製したF1以降の子孫動物の個体(約18週齢)から採取した組織)を、各々別々に、TRIzol RNA reagent(GIBCO-BRL社製)中でホモジナイズし、同社の標準的な方法に従って全RNAを抽出した。抽出された全RNA(溶解物)を用いて、実施例7に記載した方法に従ってRT−PCR法を行うことにより、各種組織における当該遺伝子の発現量を確認した。
その結果、ヘテロ接合型マウス個体の各種の脂肪組織(精巣周囲脂肪組織、後腹膜脂肪組織、腸間膜脂肪組織、皮下脂肪組織、褐色脂肪組織)及びその他の組織(血管、肝臓、筋肉組織)では、野生型マウス個体の同組織に比して、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質遺伝子の発現量が減少していることが確認された(表1参照)。尚、表1中の各種組織における当該遺伝子の発現量は、マウス36B4遺伝子(acidic ribosomal phosphoprotein PO (Arbp))の発現量を基準として補正された値である。
Figure 2004154135
(DIO(食餌性肥満誘導)試験条件下における病態観察と解析)
1) ES細胞から創製したF1以降の子孫動物の雄のヘテロ接合型マウス個体、および野生型マウス個体について、それぞれを体重平均値が同程度になるように普通食群(Std食群)と高脂肪・高蔗糖食群(HH食群)に分け、約8週齢以降からは約30週間、普通食(D12328(Research Diets社製))若しくは、高脂肪食(D12331(Research Diets社製))を自由に摂取させた。
2) マウスを飼育し、状態観察および剖検(採材)を行った。飼育する際の環境条件は室温20〜26℃、湿度40〜70%、明暗各12時間(照明:午前6時〜午後6時)、換気回数12回/時に維持された飼育室にてステンレス製六連ケージ(W:750×D:100×H:100mm)内での個別飼育を実施した。表2に各条件のマウスの群わけを示した。
Figure 2004154135
3) 病態観察試験方法及び結果を以下に示す。
(1) 体重測定について食餌負荷期間中は、2週間に1回実施した。
(2) 血糖値測定について食餌負荷期間中は、5時間絶食後の測定を2週間に1度実施した。また、食餌負荷前(8週齢)および27週間食餌負荷後(37週齢)については、24時間絶食後の測定を実施した。採血日に摂水下にて絶食した動物の眼窩静脈叢からヘパリン加キャピラリーを用いて、約50μL血液を採取し、アントセンスII(ダイキン工業株式会社)を用いて酸素電極法にて全血の血糖値を測定した。
(結果)
以上の結果、ヘテロ接合型マウス群は野生型マウス群に比して、食餌性肥満誘導の有無に因らず、血糖値が高い傾向があり、特にHH食群の24時間絶食条件においては有意な高血糖であった(図3)。
4) 耐糖能試験については以下の方法で行った。
(1)糖負荷試験(OGTT):長期間食餌負荷を実施した後(約25週間)、前日から摂水下で18〜24時間絶食した動物にグルコース溶液(1g/kg、10mL/kg)を経口投与(ディスポーザブル金属性ゾンデを装着したポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒)した。グルコース投与前、グルコース投与後20、60および120分後に上記(2)の方法にて全血の血糖値を測定した。なお、各測定時間における血糖値から曲線下面積値(AUC(area under the curve))を算出した。
(2)インスリン負荷試験(ipITT):上記OGTTを実施後、2週間程度間隔をおいて実施した。前日から摂水下で18〜24時間絶食した動物にインスリン溶液(0.35U/kg、10mL/kg)を腹腔内投与(注射針を装着したポリプロピレン製ディスポーザブル注射筒)した。インスリン負荷直前、30、60および120分後に上記-1)の方法にて血糖値を測定した。なお、各測定時間における血糖値から曲線下面積値(AUC(area under the curve))を算出した。
(結果)
OGTTではヘテロ接合型マウス群は野生型マウス群に比して、Std食飼育群のグルコース投与60分後、またHH食飼育群のグルコース投与120分後に有意な高血糖であった(表3)。また、ipITTを実施し同様に比較したところ、Std食飼育群のグルコース投与30、120分後に高血糖が認められた(表4)。これらの結果から食餌性肥満誘導の有無に因らず、ヘテロ接合型マウス群はインスリン感受性(耐糖能)が低下していた。
Figure 2004154135
Figure 2004154135
5)剖検:上記4)-1)及び2)を実施した後、2週間程度間隔をおいて剖検を実施した。摂水下で約5時間絶食後、ペントバルビタール(30mg/mL、2mL/kg)麻酔下にて、腹部大動脈から全採血(約0.6〜0.8mL)行った。採取した血液(全血)を用いて3)(2)の方法にて血糖値を測定し、残りの血液は採血後30分以内に遠心分離(14〜20℃、3000rpm、15分間)して血清と血餅を分離した後、血清部分を氷冷チューブに分注・凍結(-80℃)保存した。採血後、肝臓、腎臓、腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪、皮下脂肪、背部褐色脂肪、胸部大動脈、右側大腿部筋肉、精巣もしくは卵巣・子宮および膵臓を摘出した。摘出後の操作については以下に記載する。
肝臓、腸間膜脂肪および背部褐色脂肪は重量測定後、一部を液体窒素にて凍結、残りを10%中性緩衝ホルマリンで固定した。精巣周囲脂肪、皮下脂肪および腎臓は重量測定後、同様に凍結した。胸部大動脈および生殖器は同様に凍結した。大腿部筋肉は一部を同様に凍結し、残りをホルマリンで固定した。膵臓はホルマリンで固定した。
6)血清パラメータの解析: 前記5)で野生型マウス、及び、ヘテロ接合型マウスから採取し冷凍保存した血清はグルコース濃度(Glu(mg/100ml))、総コレステロール濃度(T-Cho(mg/100ml))、HDLコレステロール(HDL-Cho(mg/100ml))、リン脂質(PL(mg/100ml)の測定に供した。その結果、Std食、HH食条件に関わらず、ヘテロ接合型マウス群は野生型マウス群に比して血中コレステロール(T-Cho,HDL-Cho)量、およびリン脂質値が上昇していた(図4、図5および図6)。
7)RT-PCR分析法による、各組織 (2μg単位あたり)における配列番号1で表される脂肪蓄積促進蛋白質遺伝子の発現量の確認は、4)で採材し冷凍保存した、Std食またはHH食負荷条件下で長期飼育した 約38週齢の野生型マウス群、及び、ヘテロ接合型マウス群の組織を用いて、実施例8と同じ方法で実施した。
その結果、配列番号1で表される脂肪蓄積促進因子の遺伝子発現は褐色脂肪組織で最も高く、かつ遺伝子型を反映していた、すなわち野生型と比較して、発現量がほぼ半分であった。一方、肝臓における発現量は顕著に低く、褐色脂肪組織における発現量の約1/30-50倍であり、かつ遺伝子型を反映しないものであった。また、HH食負荷によって野生型マウス群の腸間膜脂肪組織と肝臓では有意な発現増加が認められた。褐色脂肪には食餌負荷による影響は無かった(表5)。
Figure 2004154135
(肝臓中の中性脂肪蓄積量測定)
肝臓組織からの中性脂肪抽出については、実施例9の5)で野生型マウス、及び、ヘテロ接合型マウスから採材し、冷凍保存した肝臓の約0.2g(実測値をXgとする)を切り取り1.5mlのPBS(phosphate buffered saline,GIBCO社)内で、各々別々にポリトロン(KINEMATICA社製PT10/35型)を用いてホモジナイズ(出力メモリ7、10秒間)し、これに10mlのクロロホルム・メタノール(2:1)を添加して激しく攪拌した。さらに4℃にて2時間以上放置した後、遠心分離(2500rpm、10分間)を実施して、浮き上がった固形層を除去した。これに4mMのMgCl2を3ml添加して攪拌し、室温にて30分間放置後、遠心分離(2500rpm、10分間)を実施したものの下層液の容量を読み取り(実測値をYmlとする)、このうち0.1mlをエッペンに分取した。分取した下層液の溶媒をスピードバックにて揮発させ、残った溶質に0.2mlのイソプロパノールを加えて溶解し、これを中性脂肪抽出液とした。
中性脂肪抽出液に含まれる中性脂肪量の測定については、トリグリセライド−テストワコー(和光純薬社製)を用い、同社の標準的な方法に従って実施したが、肝臓からの抽出液を検体とする場合の容量と中性脂肪量の概算方法を以下に記す。
中性脂肪抽出液0.2mlに耳掻き1杯程度の吸着剤を添加、5秒間攪拌後、5分間静置する操作を3回繰り返した後、遠心分離(室温、10,000rpm、5分間)した上清の0.1mlを新しいエッペンに分取した。分取した中性脂肪抽出液と検量線作成用基準液希釈列(0‐200mg/dl,各0.1ml)に5%KOHを45μl添加し、5秒間攪拌後、37℃にて15分間静置、次いで緩衝液0.1mlと酸化剤0.01mlの混合液を添加し、5秒間攪拌後、37℃にて15分間静置、さらに発色試薬を0.2ml添加し、5秒間攪拌後、37℃にて40分間静置した後、3分間冷却して発色反応を止めた。発色反応後のサンプルの内0.2mlをコースター96穴プレート(黒)に分取し、405nmの吸光度を測定した(実測値をOD405nmとする)。反応後の基準液希釈列サンプルの吸光度(OD405nm)から検量線を作成して、中性脂肪抽出液における中性脂肪量を換算した(換算値をZmg/dlとする)。上記X、Y、Zの実測値から、それぞれの肝臓組織に含まれていた中性脂肪量(mg/g組織)=2YZ/100Xを換算することができた。ただし、著しく中性脂肪が多いサンプルについては中性脂肪抽出液の段階で約16倍程度まで希釈することによって、本系に対応するように調整して測定を実施した。
その結果、野生型マウス群についてはStd食飼育に比してHH食飼育条件下では肝臓中の中性脂肪量が約2倍に増加し、ヘテロ接合型マウス群については約3倍に増加した(図7)。
すなわち、食事性肥満誘導条件下において、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のヘテロ接合型マウスは野生型に比して、肝臓中性脂肪の蓄積が有意に1.6倍増加しており、脂肪肝様病態の亢進が認められた。
(RT-PCR分析法による、各組織における病態関連因子の発現レベル解析)
各組織 (2μg単位あたり)における病態関連因子の発現レベル解析は実施例10‐7)と同じ方法で実施した。PCR用のプライマーとしては、表6に記載されたものを用いた。
Figure 2004154135
(結果)
腸間膜脂肪組織ではStd食およびHH食飼育野生型マウス群に比しヘテロ接合型マウス群ではACO(acyl-CoA oxidase)の有意な発現亢進が認められた(図8)。これは分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の遺伝子型と相反するものであった。精巣周囲脂肪における発現も同様のパターン(図9)を示した。
また、肝臓においてはヘテロ接合型マウス群では、食餌条件に関わらず 肝臓のPEPCK(phosphoenolpyruvate carboxykinase)の発現亢進が認められた(図10)。またStd食飼育条件下ではG6P( glucose-6-phosphatase)の発現亢進が認められた(図10)。
さらに褐色脂肪組織でも食餌条件に関わらずUCP1(uncoupling protein 1)とFAS( fatty acid synthase)に有意な発現亢進が認められた(図11)。これらは分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の遺伝子型と相反するものであった。
〔統計学的方法〕
上記各実施例において、統計的解析は群ごとに平均値±標準誤差を算出し、有意差検定は、市販の統計プログラムを用いて、Std食またはHH食についてヘテロ接合型マウス群と野生型群の2群間で行い、t検定の値は10%未満(P<0.10)についてのみ併記した。
図1は、ターゲティングベクターの構築及びマウス由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNA断片のうち、エクソン3からエクソン4までの領域に相当する塩基配列を有するDNA断片を入れ替える相同的組換え方法(即ち、前記ターゲティングベクターが有する、エクソン2−SA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセット−エクソン6からなるDNAが置換される相同的組換え方法)の形態(即ち、pCR2.1にエクソン2−6をクローニングしてpCR-085とし、Munlサイトで切り出されるエクソン3−4をpGT1.8IresBgeo由来のβ-geoカセットと入換えたTargeting Vector)を示した図である。最上部の、マウス由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子を表す太線上にある5個の小型ボックスはエクソンを示している。中段部の、ターゲティングベクターを表す太線上にある3個の小型ボックスはエクソンを示しており、また中央部にある横長ボックスはSA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセット(ここでは、マウスEN2由来のSA(splicing accepter)、 encephalomyocarditis Virus由来のIRES(internal ribosome entry site)、β-galactocidase及びneomycin耐性遺伝子を融合させてなるβgeoにSV40由来のpA(polyadenylation signal)を平滑末端化処理してなるDNA(SA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセットを意味する。)を示している。最下部の、相同的組換えホモ接合体のゲノム遺伝子を表す太線上にある3個の小型ボックスはエクソンを示しており、また中央部にある横長ボックスはSA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセットを示している。このような相同的組換えにより、当該ゲノム遺伝子が本来有する独自のプロモーターの下流で、前記ターゲティングベクターが有する、エクソン2−前記SA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセット−エクソン6からなるDNAが置換され、結果的にエクソン3からエクソン4の一部までの領域に相当する構造蛋白質コード領域が欠失する。このときエクソン2のコドンは続く構造遺伝子(遺伝子カセット又はエクソン4)のアミノ酸残基フレームと一致しないため、産生される蛋白質はマウス由来の分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質との融合体を形成することはない。 相同的組換えES細胞が有するゲノム遺伝子のサザンブロッティング分析の結果を示した図である。レーン1ではサイズマーカー(10, 8, 6, 4, 3, 2, 1.5 kb)の検出バンド、レーン2、3、4及び6は野生型(16kbpのみ)の検出バンド、レーン5ではヘテロ接合型(10kbpと16kbp)の検出(2種類)バンドが確認できる。 血糖値を示す図である。図中、Std_Hは普通食を与えたヘテロ接合型マウスを表し、Std_Wは普通食を与えた野生型マウスを表し、HH_HはHH食を与えたヘテロ接合型マウスを表し、HH_WはHH食を与えた野生型マウスを表す。血糖値は食餌負荷後24時間絶食させた後に測定した。 血清中の全コレステロール量を示す図である。グラフ中の凡例の意味は図3と同じである。 血清中のHDLコレステロール量を示す図である。グラフ中の凡例の意味は図3と同じである。 血清中のリン脂質量を示す図である。グラフ中の凡例の意味は図3と同じである。 肝臓組織におけるトリグリセリセライド(TG)量を示す図である。グラフ中の凡例の意味は図3と同じである。 腸間膜脂肪組織における糖脂質代謝関連因子、ACOの発現量を示す図である。グラフ中のX軸の意味は図3と同じである。 精巣周囲脂肪組織における糖脂質代謝関連因子、ACOの発現量を示す図である。グラフ中のX軸の意味は図3と同じである。 肝臓組織における糖脂質代謝関連因子、PEPCK及びG6Pの発現量を示す図である。グラフ中のX軸の意味は図3と同じである。 褐色脂肪組織における糖脂質代謝関連因子、FAS及びUCP1の発現量を示す図である。グラフ中のX軸の意味は図3と同じである。
配列番号3
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号4
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号5
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号6
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号7
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号8
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号9
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号10
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号11
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号12
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号13
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号14
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号15
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号16
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号17
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号18
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号19
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号20
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号21
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号22
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号23
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号24
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド
配列番号25
PCRのために設計されたプライマーであるオリゴヌクレトチド

Claims (36)

  1. ノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部であって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とする非ヒト動物又はその一部。
  2. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が、下記のいずれかのアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質であることを特徴とする請求項1記載の非ヒト動物又はその一部。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、そのアミノ末端から26個のアミノ酸が欠失してなる部分アミノ酸配列、
    (d)前記(c)のアミノ酸配列において、そのアミノ末端にメチオニンが付加されてなるアミノ酸配列、
    (e)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、
    (f)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列、
    (g)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列、
    (h)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列と相補性を有する塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列
    (i)配列番号2で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列;
  3. 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とするノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部。
  4. 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質のゲノム遺伝子が、配列番号2で示される塩基配列上の塩基番号57及び58の間(エクソン1と2の間)、塩基番号232及び233の間(エクソン2と3の間)、塩基番号318及び319の間(エクソン3と4の間)、塩基番号447及び448の間(エクソン4と5の間)、塩基番号506及び507の間(エクソン5と6の間)に対応する箇所にイントロンを含有するものであることを特徴とする請求項3記載の非ヒト動物又はその一部。
  5. 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質のゲノム遺伝子が、当該遺伝子の構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAの置換、欠失及び/又は付加によって破壊されてなることを特徴とする請求項3記載の非ヒト動物又はその一部。
  6. 構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAがエクソン3及び4領域内の塩基であって、当該塩基が欠失によって破壊されてなることを特徴とする請求項5記載の非ヒト動物又はその一部。
  7. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子がその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子がその機能を欠失するように破壊される方法が、プロモーター領域が取り除かれている選択マーカー遺伝子を有する遺伝子カセットを含有し、かつ、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNAの一部に相同な塩基配列を有する選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクターを用いて、当該ベクターの一部又は全部でありかつ前記遺伝子カセットを含有するDNAに、前記ゲノム遺伝子の構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAが置換されてなる方法であることを特徴とする請求項1記載の非ヒト動物又はその一部。
  8. 遺伝子カセットが、マウスEN2由来のSA(splicing accepter)、 encephalomyocarditis Virus由来のIRES(internal ribosome entry site)、β-galactocidase及びneomycin耐性遺伝子を融合させてなるβgeoにSV40由来のpA(polyadenylation signal)を平滑末端化処理してなるDNA(SA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセット)であることを特徴とする請求項7記載の非ヒト動物又はその一部。
  9. 構造蛋白質コード領域内の少なくとも一部のDNAがエクソン3及び4領域内の塩基であることを特徴とする請求項7又は8記載の非ヒト動物又はその一部。
  10. ノックアウト非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部であって、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質遺伝子の発現量が同種の野生型非ヒト動物での同遺伝子の発現量よりも低減されてなることを特徴とする非ヒト動物又はその一部。
  11. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が、下記のいずれかのアミノ酸配列からなり、かつ脂肪蓄積促進活性を有する蛋白質であることを特徴とする請求項10記載の非ヒト動物又はその一部。
    <アミノ酸配列>
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列、
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、付加もしくは置換されたアミノ酸配列、
    (c)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、そのアミノ末端から26個のアミノ酸が欠失してなる部分アミノ酸配列、
    (d)前記(c)のアミノ酸配列において、そのアミノ末端にメチオニンが付加されてなるアミノ酸配列、
    (e)配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、
    (f)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列、
    (g)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列を有するDNAと80%以上の配列同一性を有する塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列、
    (h)配列番号2で示される塩基配列における第1番目のヌクレオチドから第1476番目までのヌクレオチドで示される塩基配列と相補性を有する塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされるアミノ酸配列
    (i)配列番号2で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるアミノ酸配列;
  12. 以下の(a)〜(e)の群より選択される1又は複数の性質を表現することを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部。
    (a)通常飼育もしくは高カロリー食餌での飼育により、野生型非ヒト動物と比較して高血糖値を示す
    (b)通常飼育もしくは高カロリー食餌での飼育により、野生型非ヒト動物と比較して耐糖能低下を示す
    (c)高カロリー食餌での飼育により野生型非ヒト動物と比較して高血中コレステロール量を示す
    (d)高カロリー食餌での飼育により野生型非ヒト動物と比較して肝臓において高トリグリセライド量を示す
    (e)野生型非ヒト動物と比較して、糖脂質代謝関連因子の発現量が変動する
  13. 非ヒト動物がマウスであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部。
  14. 非ヒト動物の個体又はその子孫動物或いはそれらの一部における非ヒト動物の一部が、非ヒト動物由来の組織又は細胞であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部。
  15. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能欠失型変異遺伝子に置換されか又は前記ゲノム遺伝子の二倍体における全部又は一方のアリルがその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とする分化全能性細胞。
  16. 配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質のゲノム遺伝子がその機能欠失型変異遺伝子に置換されるか又は前記ゲノム遺伝子がその機能を欠失するように破壊されてなることを特徴とする請求項15記載の分化全能性細胞。
  17. 請求項1〜14記載の非ヒト動物からなる、糖脂質代謝機能異常を伴う疾患のモデル動物。
  18. 請求項1〜14に記載の非ヒト動物又はその一部について、胎生期から致死までの期間における、発育分化、発達、生活行動の観察、病理組織学的検査又は生化学的検査を行うことを特徴とする、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が関与する疾患の病態解析方法。
  19. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質が関与する疾患が糖脂質代謝機能異常を伴う疾患である、請求項18に記載の病態解析方法。
  20. 糖脂質代謝制御能力の評価方法であって、
    (1)請求項1〜14のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部に被験物質を接触させる第一工程、
    (2)前記被験物質を接触させた非ヒト動物又はその一部における分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量又は当該量に相関関係を有する指標値を測定し、対照と比較する第二工程、
    (3)(2)の比較結果に基づき、被験物質の糖脂質代謝制御能力を評価する第三工程
    を有することを特徴とする評価方法。
  21. 糖脂質代謝制御能力がコレステロール産生制御能力である、請求項20に記載の評価方法。
  22. 糖脂質代謝制御能力が脂肪酸合成及び/又は脂肪酸代謝制御能力である、請求項20に記載の評価方法。
  23. 糖脂質代謝制御能力が糖代謝制御能力である、請求項20に記載の評価方法。
  24. 糖脂質代謝制御能力が糖脂質代謝関連因子発現制御能力である、請求項20に記載の評価方法。
  25. 糖脂質代謝関連因子がPEPCK、G6P、UCP1、FAS及びACOからなる群より選択される1又は複数の因子である、請求項24記載の評価方法。
  26. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が、糖脂質代謝関連因子の発現量である、請求項20〜25のいずれか記載の評価方法。
  27. 糖脂質代謝関連因子がPEPCK、G6P、UCP1、FAS及びACOからなる群より選択される1又は複数の因子である、請求項26に記載の評価方法。
  28. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が血糖値である、請求項20〜25のいずれか記載の評価方法。
  29. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が耐糖能である、請求項20〜25のいずれか記載の評価方法。
  30. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が、血中コレステロール量である、請求項20〜25のいずれか記載の評価方法。
  31. 分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質の発現量に相関関係を有する指標値が、トリグリセライド(中性脂肪)量である、請求項20〜25のいずれか記載の評価方法。
  32. 請求項20〜31のいずれか記載の評価方法により評価された糖脂質代謝制御能力に基づき、糖脂質代謝制御能力を有する被験物質を選抜することを特徴とする糖脂質代謝制御物質のスクリーニング方法。
  33. 請求項32に記載のスクリーニング方法により得られる糖脂質代謝機能異常を伴う疾患の治療剤又は予防剤。
  34. 糖脂質代謝機能異常を伴う疾患が、耐糖能低下、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞又は心血管障害である請求項33記載の治療剤又は予防剤。
  35. 請求項1〜14のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部、或いは、請求項15又は16記載の分化全能性細胞を作成するための、プロモーター領域が取り除かれている選択マーカー遺伝子を有するDNA(遺伝子カセット)を含有し、かつ、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNAの一部に相同な塩基配列を有する選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクター。
  36. 請求項1〜14のいずれか記載の非ヒト動物又はその一部、或いは、請求項15又は16記載の分化全能性細胞を作成するための、マウスEN2由来のSA(splicing accepter)、 encephalomyocarditis Virus由来のIRES(internal ribosome entry site)、β-galactocidase及びneomycin耐性遺伝子を融合させてなるβgeoにSV40由来のpA(polyadenylation signal)を平滑末端化処理してなるDNA(SA−IRIS−βgeo−pA遺伝子カセット)を含有し、かつ、分子量約6千以上である脂肪蓄積促進蛋白質のゲノム遺伝子のDNAの一部に相同な塩基配列を有する選択マーカー遺伝子プロモーターレス組換えベクター。
JP2003357443A 2002-10-18 2003-10-17 ノックアウト非ヒト動物 Pending JP2004154135A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003357443A JP2004154135A (ja) 2002-10-18 2003-10-17 ノックアウト非ヒト動物

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002304112 2002-10-18
JP2003357443A JP2004154135A (ja) 2002-10-18 2003-10-17 ノックアウト非ヒト動物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004154135A true JP2004154135A (ja) 2004-06-03

Family

ID=32827985

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003357443A Pending JP2004154135A (ja) 2002-10-18 2003-10-17 ノックアウト非ヒト動物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004154135A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007124983A (ja) * 2005-11-07 2007-05-24 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 遺伝子発現量を規格化するための標準遺伝子
JP2013015479A (ja) * 2011-07-06 2013-01-24 Kao Corp 脂肪組織評価方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007124983A (ja) * 2005-11-07 2007-05-24 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 遺伝子発現量を規格化するための標準遺伝子
JP2013015479A (ja) * 2011-07-06 2013-01-24 Kao Corp 脂肪組織評価方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4292401B2 (ja) 体重または摂食量の調節に関与するヒスタミン受容体h3遺伝子の利用
JP4613824B2 (ja) トランスジェニック非ヒト哺乳動物
US8232447B2 (en) Animal having modification in MGAT2 gene
JP5954800B2 (ja) 男性不妊症の原因因子検出方法及び男性不妊症モデル動物
US20130237441A1 (en) Mig-6 Knockout Mice and Elucidation of Association of Mig-6 With Early Onset Degenerative Joint Disease and Role As A Tumor Suppressor
JP2004154135A (ja) ノックアウト非ヒト動物
US20030167488A1 (en) Mice heterozygous for WFS1 gene as mouse models for depression
US6172278B1 (en) Ikaros transgenic cells and mice
JP5939487B2 (ja) Epo欠損GFP貧血マウス
US20080032926A1 (en) Knockout Non-Human Animal
WO2005115135A2 (en) Mouse model of crohn’s disease and a method to develop specific therapeutics
US20110173706A1 (en) Novel gpr101 transgenic mice and methods of use thereof
JP2008131918A (ja) AMPKの脱リン酸化酵素作用を持つプロテインホスファターゼ2Cε(PP2Cε)の使用。
US7586021B2 (en) Nucleic acid construct, metabolic disordered non-human animal and use thereof
JP4484708B2 (ja) 自己免疫疾患を治療する方法および自己免疫疾患の治療化合物をスクリーニングする方法
JP3817638B2 (ja) トランスジェニック非ヒト哺乳動物
JP2001017028A (ja) アポeヒト化哺乳動物
JP2003158954A (ja) 新規非ヒト動物
JP2006075157A (ja) ノックアウト非ヒト動物
US20050144662A1 (en) Knockout mouse
JP2004166596A (ja) Zaq遺伝子改変動物
JP2006340711A (ja) 核酸構築物、代謝異常非ヒト動物及びそれらの利用
JP2004305111A (ja) IgA腎症発症モデル非ヒト動物
JP2001299141A (ja) ノックイン非ヒト哺乳動物
JPWO2003028445A1 (ja) Tsa2306遺伝子欠損非ヒト動物

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20040323

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20040323

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040323

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20051026