JP2004148519A - 樹脂成形品の製造方法、型用金属構造体の製造方法及び樹脂成形品 - Google Patents
樹脂成形品の製造方法、型用金属構造体の製造方法及び樹脂成形品 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】本発明にかかる樹脂成形品の製造方法では、まず、基板1上にめっき種層5aを付着する。その上に、第1のレジストパターン4aを形成する。めっき処理によって露出した種層5a上にNi金属層6aを形成する。その上に、第2のレジストパターン4bを形成する。基板上にめっき種層5bを付着させ、基板をめっき処理する。めっき種層5b上にNi金属層6bが形成され、型用金属構造体6が完成する。この型用金属構造体6を使用して射出成形により、樹脂チップを形成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の造形深さを有する樹脂成形品の製造方法、それらにより得られる樹脂成形品、及び樹脂成形品の製造に使用される金型の製造方法に関する。特に、本発明の方法は、臨床検査分野、遺伝子処理分野、コンビナトリアルケミストリー分野の、診断、反応、分離、計測等に使用される樹脂成形品の製造法として有用である。
【0002】
【従来の技術】
今日、社会の成熟にしたがい、医療・健康に対する価値観は、狭い範囲の基本的健康から、「ゆたかですこやかな生活」を求めるよう変化しつつある。このような価値観の変化の背景で、医療費が増大し、また健康と疾病の境界領域にある人々が増加している。この背景から、また治療に比べて予防のほうが低負担であるため、今後の社会においては、個人の意識は、治療医学よりも予防医学を重視する方向に変化していくものと考えられている。このような個人意識の変化にともない、医療分野、なかでも臨床検査分野において、患者の近く、例えば手術室、ベッドサイド、あるいは在宅等で、より迅速な検査・診断を行うことが可能となる無拘束な検査システム、血液などの検体量がより少量ですむ無侵襲、または低侵襲である検査システムが望まれている。また、前記のような迅速な検査・診断を行うことが可能となる無拘束な検査システムを実現するためには、検査・診断の際に使用される基板の小型化によって、例えば装置に携帯性を付与させることが必要である。
【0003】
近年、化学分析装置に携帯性を付与させる新たなアプローチとして、マイクロマシン技術による小型化が注目されている。例えば、生化学分析等で主流の比色分析の自動化装置では、ダイナミックな対流を発生させて2液を混合させるものと、最初から2液を交互に分散させた状況を作り出し、分子拡散により混合させるものに大別される。現在の主流になりつつあるのは、迅速な混合が可能、微量化、小型化に適している点で、分子拡散による方式である。
【0004】
マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が1mmから0.1mmに微細化が可能となれば、サンプルの微量化だけでなく、混合に要する時間を10分の1以下に短縮させることができる。さらに、マイクロマシン技術により流露の直径を微細化できれば、装置に携帯性を付与させると同時に、従来の大型装置と同じ機能を果たすことが期待されている。また、流路の微細化により、同一基板上に複数配することもでき、並列処理も期待されている。特に、臨床検査分野においては、血液などの検体量がより少量ですむ無侵襲、または低侵襲な検査システムを実現するためにも、検査・診断の際に使用される容器の微細化が期待されている。
【0005】
さらに近年、世界的なヒト・ゲノム解析計画の進展により、現在DNA診断が可能な疾患の種類や数は増加の一途をたどり、従来は生化学的分析により間接的に診断されてきた疾患の多くが、DNAレベルで疾患の原因あるいは発生機序にまで迫る確定的な診断ができるようになった。
【0006】
2000年6月26日、アメリカホワイトハウスにて、われわれ人類にとって非常に意義深い研究報告がなされた。それは「人間の設計図」とも言われるヒト遺伝子を構成する約30憶の遺伝暗号の80%以上が決定されたというものであった。人間の設計図であるヒト遺伝子の全解読は人類科学の最も輝かしい成果の1つとなると考えられている。
【0007】
約32憶個の塩基対の解析は、2003年に終了すると予定されている。ヒト遺伝子の全配列決定後、研究のターゲットは形質マッピングと、それを元にしたゲノム創薬、オーダーメイド医療である。形質マッピングとは、ヒト遺伝子配列のどこに形質(疾患のあるなし、薬物に対する固体の反応)が関係しているかを一つ一つ明らかにしていくことである。それにより、疾患治療のターゲット分子を効率的に捜索することが可能であり、また、そのデータをもとに、個人に適した薬物治療が行えるようになると期待されている。
【0008】
従来では生化学的分析により間接的に診断されてきた疾患の多くが、DNAレベルで疾患の原因あるいは発生機序にまで迫る確定的な診断ができるようになった結果、将来はオーダーメイド医療といわれる個人に適した副作用のない薬物治療のための診断、個人別の特定疾患のあるなし診断に使用する基板が町の診療所レベルに普及することが予測されており、精密で安価な基板が期待されている。
【0009】
遺伝子関連用途でよく利用される方法には、キャピラリー電気泳動法、マイクロアレイ方式、微量なゲノムサンプルを10万倍以上に増幅した高感度で検出できる遺伝子増幅(PCR:Polymerase Chain Reaction)法等がある。キャピラリー電気泳動法は、直径100〜200μmのキャピラリーに試料を導入、電気泳動により分離するものである。このキャピラリー径の微細化が可能となれば、更に診断時間の高速化が期待されている。キャピラリー径の微細化により、同一基板上に複数配することもでき、並列処理も期待されている。
【0010】
マイクロアレイ方式は、ガラス、シリコン、金属、プラスチック等の表面グリッドにバイオモレキュラーが固定化されており、検出は高感度、特異性を考慮して蛍光装置やラベル化が進められている。その際、マイクロマシン技術を用いてマイクロアレイが形成される。このマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析の概要は、比較したい2つのサンプル(例えば細胞Aと細胞B)から抽出したmRNAをそれぞれ異なる蛍光色素(Cy5、赤;Cy3、緑)でラベルした後、それらを混合して、スライドガラス上に固定された数千から数万種類の遺伝子と結合(ハイブリダイゼーション)させる。そして、各スポットの蛍光強度を蛍光スキャナーで検出することにより、各遺伝子の発現量比を知ることができる。例えば、赤いスポットはCy5(赤)でラベルされたものの方がCy3(緑)でラベルされたものより多いということがわかり、すなわち、細胞Bに比べ細胞Aで発現が高いことを示している。同様に、緑のスポットは細胞Aに比べ細胞Bで発現が高いことを示している。また、黄色のスポットはCy5(赤)とCy3(緑)でラベルされたものの量が等しく、すなわち、細胞Aと細胞Bで同程度に発現していることを示している。このように、一度に数千から数万の単位での遺伝子発現情報が得られると、それらの情報をデータベース化することにより、将来、オーダーメイド医療をはじめ、さまざまな応用が期待される。
【0011】
マイクロアレイの作製方法には、基板上で遺伝子合成を行うタイプと、遺伝子をスライドガラスにスポットするタイプがある。基板上で遺伝子合成を行うタイプは、フォトリソグラフィックマスクによる遮光により、光照射された特定のセルのみが活性化され、ヌレオクチドの化学的なカップリング反応を行わせる。そして、あらかじめデザインしたマスクを順次用いることにより、アレイ上の決められた位置に各種のオリゴヌクレオチドプローブを合成し、高密度アレイを構築する。また、遺伝子をスライドガラスにスポットするタイプは、例えば、384ウェルプレートに各遺伝子由来のcDNAあるいは合成DNA溶液を分注しておき、アレイヤー(スポッター)を用いてスライドガラスにスポットしていく。
【0012】
一般に、蛍光強度を蛍光スキャナーで検出する際、検出感度、および再現性が高くなければ、正確な遺伝子発現情報を取得することができない。また、基板上で遺伝子合成を行うマイクロアレイでは、基板上のアレイ密度を低くすることなく、検出感度、および再現性を高めるために1個のアレイ面積を広くすることが試みられている。しかしながら、平面基板上で拡大可能な面積には限界があり、基板上のアレイ密度を低くすること無く、検出感度と再現性を高めるのに限界が生じる。
【0013】
そこで、微細な容器を有する基板が可能になれば、1個のアレイ面積、および容積を飛躍的に増大させることが可能となり、検出感度、および再現性を高めることが期待されている。遺伝子をスライドガラスにスポットするマイクロアレイでは、微細な容器を有する基板によって、各遺伝子由来のcDNAあるいは合成DNA溶液のサンプル量を少なくし、かつスポット数を増大させることで解析速度を加速させることが期待されている。
【0014】
PCR法は、ポリメラーゼを使うことにより、目的とするDNAを短時間で10万倍以上に増幅するものである。PCR法では、例えば、96穴ウェルプレート型の容器が使用されており、容量2.5〜10.0μlの試料を導入、熱変性により増幅する。この容器の小型化が可能となれば、高速化・高効率化とともに、高価な抗体や基質の使用量を低減できるといった低コスト化も期待されている。さらに、バイオテクノロジー分野においては、微細化により、同一基板上に複数の流路、複数の混合部、複数の容器を配することができれば、キャピラリー電気泳動法とPCR法とを同一基板上で行うことも期待されている。
【0015】
また近年、コンビナトリアルケミストリーの分野において、著しい進歩が見られている。コンビナトリアルケミストリー(Combinatorial Chemistry)とは、いろいろなビルディングブロック(化合物を合成する際に、最終的にその目的化合物の幹や枝葉になっていく単位ともいうべき化合物)を一度にまたは段階的に合成し、ライブラリー(いろいろな化合物群)を構築していく技術である。
【0016】
これまでに行われてきた通常の合成と、コンビナトリアルケミストリーを比較してみると、通常の合成ではAとBから単一の化合物のABしか得られないのに対して、コンビナトリアルケミストリーでは、A1からAnとB1からBnのすべての組み合わせを一度に反応させて、A1B1〜AnBnの化合物を得ることができる。
【0017】
例えば、A1からAnまで100個、B1からBnまで同じく100個の化合物があるとすると、100×100=10,000種類の化合物群(ライブラリー)を一度に合成できる。
【0018】
このように、コンビナトリアルケミストリーでは、組み合わせを利用して、多くの化合物群(ライブラリー)を効率的に合成し、それらの化合物をさまざまな目的に応じて活用することが可能である。そして、コンビナトリアルケミストリーによる技術を用いる目的の一つに医薬品開発があげられる。そして、多数の化合物を合成し、そのなかから目的とする化合物を見いだしていく手法は、医薬品開発に限らず、化学品の合成・分析、工業生産を含めて広く利用できる科学技術としてとらえることができる。コンビナトリアルケミストリー分野、なかでも製薬開発分野においても微細化が期待されている。
【0019】
コンビナトリアルケミストリーのように、数多くの化合物を一度にまたは段階的に合成し、ライブラリーを構築していく技術には、パラレル合成法とスプリット法がある。パラレル合成は、個々の化合物を混合物でなく単一の化合物として別の容器で合成するものである。基本的には物理的に仕切られた空間があればよいわけで、例えば、96穴のウェルプレートを用いて、反応はそれぞれの穴(くぼみ)でロボットを用いて自動的に行い、そのまま活性をテストするようなシステムも開発されている。
【0020】
スプリット合成はほとんど固相で行われるのに対して、パラレル合成は、液相でも行うことができる。スプリット合成の例を、3つの化合物A1〜A3、B1〜B3、C1〜C3を順次反応させていく簡単な系で示す。
【0021】
まず樹脂に担持したA1、A2、A3を均一に混合した後、これを3等分し、それぞれにB1、B2、B3を作用させる。ここで反応後、B1と反応させた容器には末端にB1を含む3種類の樹脂が含まれており、同様にB2と反応させた容器には末端にB2を含む3種類の樹脂が、B3と反応させた容器には末端にB3を含む3種類の樹脂が含まれている。
【0022】
したがって、この段階で合計9種類の樹脂が合成されたことになる。ここで再びこれらの樹脂を均一に混合した後、これを3等分し、それぞれにC1、C2、C3を作用させる。今度は9種類ずつ、合計27種類の樹脂が合成される。この方法によれば、膨大な数の化合物を含むライブラリーを迅速に構築することが可能で、例えば、天然型のアミノ酸20種類を3回反応させると8,000(20×20×20)、4回反応させると16万、5回反応させると320万(20×20×20×20×20)のペプチドが合成できることになる。
【0023】
1960年代以降、ランダムスクリーニングにより天然物の抽出液から生理活性物質が数多く発見されており、その時期には、スクリーニングする化合物・抽出液は数百から数千で、試験管レベルで行えるものであった。1980年代には、スクリーニングする合成化合物や天然物の抽出液は一つの研究所で数万から10万を超える場合があり、また分子生物学の進展に伴い医薬・動物薬・農薬の標的も急速に増加したため、試験管レベルでは処理できなくなってきた。
【0024】
そこで、これに対応する技術としてハイスループットスクリーニング(HTS、High Throughput Screening)が開発された。ハイスループットスクリーニングとは、コンビナトリアル合成したものから、例えば、リード化合物(創薬のための先導化合物、スクリーニングで見いだされた化合物)を見いだしたり、最適化したりする際に化合物を高速でふるいわける技術のことである。また、ハイスループットスクリーニングでは、スクリーニング用のアッセイロボット(生物学的な活性を見る試験を自動的に行う機械)を用いたりする。
【0025】
現在、ハイスループットスクリーニングを可能にした要因として、微量のサンプルを測定できる技術が発展したこと、コンピュータやロボットの発達、試験管にかわって24あるいは96個のサンプルを一度に処理できるプレートが普及してきたことがあげられる。今後、構造的に多様性のある化合物はさらに蓄積され、スクリーニングの標的はさらに増加すると予測され、96穴プレートから384穴プレート(反応液の微量化)へ移行することにより創薬開発の加速(迅速化)、微量化(コストダウン)が期待されている。
【0026】
現在、製薬開発の分野において、ハイスループットスクリーニング等の用途に使用されている96穴プレート、384穴プレートは、複数のサンプルを同時にスクリーニングすることができ、例えば、自動分注装置との組み合わせによって創薬開発の加速に貢献している。
【0027】
マイクロマシン技術により、例えば、容器の幅または直径が10mmから0.4mm、深さが10mmから0.3mmに微細化が可能になれば、同一基板上に1,000個〜5,000個のマイクロ容器を有することができ、創薬開発の飛躍的な加速が期待できる。特に近年、半導体デバイスの実現がエレクトロニクスに画期的な進歩と情報革命をもたらしたことと同様な技術革命がコンビナトリアルケミストリー分野、なかでも化学技術や化学産業分野にも微細化が期待されている。
【0028】
実験室レベルで使用される混合、反応のための容器サイズが大きい場合、混合、反応に時間を要し、目的とする分析結果を得るのに数日間かかってしまう。しかし、マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が深さ1mmから0.1mmに微細化が可能になれば、混合に要する時間を10分の1以下に短縮させることができ、数日間かかっていた分析を数10分で完了することが期待されている。また、流路の微細化により、同一基板上に複数配したり、基板を重ね合わせたりすることで更なる効率の向上も期待できる。
【0029】
マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が深さ1mmから0.1mmに微細化が可能になれば、混合、反応に使用する薬液量の大幅な低減、ひいては廃液量の大幅な低減が期待でき、環境負荷の低減に大きな効果を生むことになる。一般に反応容器をスケールアップした場合、物質や熱の移動はそれに比例して変化するわけではないので、反応特性は変わってしまう。そのため従来の化学プラント建設においては、実験室レベルから段階的に大きな反応装置を組み、その都度問題点を洗い出すというコストのかかる過程が必要だった。マイクロマシン技術により、例えば、流路の直径が深さ1mmから0.1mmに微細化が可能になれば、同一基板上に複数配したり、基板を重ね合わせたりすることでスケールアップが可能となるため、この問題を解決できることが期待できる。
【0030】
従来の樹脂成形品は、鋳型または切削法による金属製金型を用いて、射出成形、ブロー成形あるいはプレス成形することにより、形成していた。しかしながら、鋳型から金属製金型を作成する場合には、鋳型の精度に限界があるため、それを用いた金属製金型への造形範囲に制約がある。また、切削法により金属製金型を作製する場合も、切削バイトの切削精度に限界があるため、いずれの加工法を用いても精密、かつ微細な形状を有する樹脂成形品は実現されていないのが実情である。
【0031】
このように、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、いずれの加工法においても精密、かつ微細な形状を有する樹脂成形品は実現されていないのが現状である。そのため、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも血液検査用途等に供する場合、流路、容器の精度、小型化には限界があり、血液等の検体量が多くなるという問題があった。ひいては、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、検査・診断装置の携帯性を付与することができないといった欠点を有していた。
【0032】
同様に、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも、生化学分析用途等に供する場合、流路、容器の精度、微細化には限界があり、混合に要する時間(診断に要する時間)を短縮できず、ひいては装置に携帯性を付与することができないといった欠点を有していた。また同様に、得られた樹脂成形品を臨床検査分野、なかでも免疫測定用途等に供する場合、チャンバーの精度、小型化には限界があり、高価な抗体や基質の使用量を低減できないといった欠点を有していた。
【0033】
さらに、鋳型や切削法による金属製金型を用いて得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野の遺伝子解析、なかでもキャピラリー電気泳動法による解析用途等に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、試料の導入、分離に要する時間(診断に要する時間)を短縮できないといった欠点を有していた。ひいては、鋳型や切削法による金属製金型を用いる場合、基板を小型化することができないといった問題点も有していた。
【0034】
同様に、得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野の遺伝子解析、なかでもマイクロアレイ方式による解析用途等に供する場合、容器の精度、小型化には限界があり、検出感度、再現性を高めることができない、サンプル量を少なくできない、解析速度を高めることができない、ひいては基板を小型化することができないといった欠点を有していた。
【0035】
また同様に、得られた樹脂成形品を遺伝子関連分野の遺伝子増幅(PCR)法による増幅用途に供する場合、容器の精度、小型化には限界があり、高速化・高効率化とともにサンプル量を少なくできない、ひいては基板を小型化することができないといった欠点を有していた。さらにまた、鋳型や切削法による金属製金型を用いて得られた樹脂成形品をコンビナトリアルケミストリー関連用途、なかでも製薬開発用途のハイスループットスクリーニング用途に供する場合、容器の微細化には限界があり、創薬開発の飛躍的な加速(迅速化)、微量化(コストダウン)ができない欠点を有していた。
【0036】
同様に、得られた樹脂成形品をコンビナトリアルケミストリー関連用途、なかでも化学産業分野の化学合成・分析用途に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、化学合成・分析時間を短縮できない、混合、反応に使用する薬品量の低減、廃液量の低減、環境負荷の低減ができない欠点を有していた。
【0037】
また同様に、化学合成用途に供する場合、流路の精度、微細化には限界があり、同一基板上に複数配したり、ひいては基板を重ね合わせたりすることでスケールアップすることができないため、従来の化学プラント建設におけるスケールアップの問題点を解決することができないといった欠点を有していた。
【0038】
このような、鋳型または切削法による金属製金型を用いる場合の係る問題を解決する加工法として、半導体微細加工技術を応用したガラスまたはシリコン基板へのウェットエッチング加工、またはドライエッチング加工により微細加工を施す技術が知られている。しかしながら、ウェットエッチングでは、マスキング材料下部のアンダーエッチングの進行により、造形深さが0.5mmよりも深くなると幅(または直径)精度が得られにくくなるため、精密な加工法とはいえなかった。
【0039】
ウェットエッチングに対して、ドライエッチングはSi半導体のパターン形成プロセスから発展した技術であり、各種プラズマ源種による各種電子部品、化合物半導体への応用が研究されている。しかしながら、この方法は、優れた微細加工性を有する反面、エッチング速度が500〜2,000nm/分と遅いため、例えば造形深さが0.1mmの加工を行う場合、50分以上の加工時間が必要となり、生産性に優れた安価な加工法とはいえなかった。
【0040】
また、ドライエッチングの加工時間が1時間以上になると、装置電極が熱を持つようになり、基板の変形、または装置の損傷が懸念されるため、装置電極が60℃を超えるような場合は装置を一時停止させ、再び加工を開始するなどの処置が必要となり生産性は更に低下する。
【0041】
そして、鋳型または切削法による金属製金型を用いる場合の係る問題を解決する他の加工法として、リソグラフィー法が知られている。このリソグラフィー法では、まず、基板上にレジスト塗布を行い、該レジスト層の露光を実施した後、現像によりレジストパターンを形成する。そして、前記レジストパターンにしたがって、前記基板上に金属構造体を電気メッキにより堆積させた後、前記金属構造体を型として、樹脂成形品を形成する。
【0042】
この方法による商品としてレーザーディスク、CD−ROM、ミニディスクが代表例としてあげられるように、1枚の金属構造体から、例えば約5万枚以上の成形品を得ることが可能である。さらに、リソグラフィー法は、精密で極めて安価に製造できる点で、生産性に優れた方法といえる。また、扱える材料がシリコンとは異なる点においても、材料単価が安いことなど、今後の用途展開への大きいことが期待されている。
【0043】
しかしながら、リソグラフィーによる方法は、商品としてレーザーディスク、CD−ROM、ミニディスクが代表例としてあげられるように、造形深さは1〜3ミクロンが中心である。したがって、流路、容器といった例えば100ミクロンの造形深さを有する例は実現されていないのが実情である。
【0044】
その一つの理由は、厚すぎるレジスト層を塗布すると、レジスト層表面の十分な平面度を維持することが難しいことである。他のより重要な理由は、光源として使用される紫外線ランプや紫外線レーザからの紫外線は、厚いレジスト層を適切に露光処理することができないことである。例えば、典型的な紫外線ランプにより露光深度は、およそ30μmである。
【0045】
すなわち、従来の樹脂成形品の製造方法において、リソグラフィー処理を使用する場合、基板平面上に単層のレジスト層を形成し、そのレジスト層をパターニングして金属型を形成する。そのため、レジストの厚みが増してくると、例えばUV露光装置を使用する場合、1回の露光では十分な焦点深度が得られない。さらに、レジストの厚みが増してくると、現像工程において、レジスト底部の幅(または直径)よりも表面の幅(または直径)が広くなることが懸念されている。したがって、必要とされる造形深さを達成することができない、あるいは、ある程度の造形深さを達成したとしても生産設備を含めた生産性の点における問題が生じる。
【0046】
このような問題を解決する方法として、リソグラフィー法により100μm以上の造型深さを実現する方法として、露光処理の光源としてシンクロトロン放射光を使用する製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。シンクロトロン放射光のもつ高い指向性はレーザ光に匹敵し、レーザで実現できない短波長の光は、微細加工でネックとなる回折限界をクリアすることができる。したがって、シンクロトロン放射光を露光光源に用いた場合、より厚いレジスト層を露光処理することができるので、従来の光源と比較してより微細かつ深い造形深さを得ることが可能である。
【0047】
しかしながら、シンクロトロン放射光を使用した露光処理であっても、その露光深度は無限ではない。また、シンクロトロン放射設備は非常に大型の設備であり、その設備を建設・維持することは容易なことではない。特に、設備の建設及び維持に多大なコストがかかるため、射出成形によって得られた樹脂成形品のコストは、通常のUV光を用いたリソグラフィー法によって得られた樹脂成形品よりも20倍以上の高価格となることが予想される。
【0048】
【特許文献1】
特開2001−38738号公報
【0049】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の樹脂成形品の製造方法では、レジストの厚みが増すにつれて露光が難しくなるため、所望の造形深さを有する樹脂成形品を生産性良く製造することができないという問題点があった。
【0050】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、所望の造形深さを有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる樹脂成形品の製造方法及びその製造に使用される型用金属構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【0051】
また、本発明は、臨床検査分野、遺伝子処理分野あるいはコンビナトリケミストリ分野における使用に好適な造形深さを有する樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0052】
【課題を解決するための手段】
本発明の一つの態様は、金属構造体を形成するステップと、金属構造体を型として樹脂成形品を形成する樹脂成形品形成ステップと、を有する樹脂成形品の製造方法であって、金属構造体を形成するステップは、(a)基板上に種層を形成する、ステップと、(b)種層が形成された基板上に、第1のレジスト層を形成する、ステップと、(c)第1のレジスト層をリソグラフィ処理して第1のレジスト・パターンを形成し、種層を露出させる、ステップと、(d)露出した種層上に、めっき処理によって、第1の金属層を堆積させる、ステップと、(e)第1の金属層が堆積された基板上に、第2レジスト層を形成するステップと、(f)第2のレジスト層をリソグラフィ処理して第2のレジスト・パターンを形成する、ステップと、(g)第2のレジスト・パターンが形成された基板上に、めっき処理によって、第2の金属層を堆積させる、ステップと、を備えたものである。この構成を有することにより、造形深さの大きい樹脂成形品を生産性良く、製造することができる。尚、特定の部材上に他の部材を形成することは、限定的記載のない限り、特定の部材上に直接形成すること、あるいは、ささらに他の部材を介して形成することを含む。この点は以下の解決手段の記載において同様である。
【0053】
ステップ(e)、(f)及び(g)及びを複数回繰り返すことができる。これにより、さらに樹脂成形品の造形深さを大きくすることができ、所望の樹脂成形品を得ることができる。
ステップ(g)は、さらに、前記第2のレジスト・パターンを形成された基板上に種層を付着するステップを備え、種層を付着された基板をめっき処理し、第2の金属層を堆積させることができる。
ステップ(c)及び(f)は、紫外線ランプもしくはレーザー光によってリソグラフィ処理を行うことができる。露光深度が大きくない、紫外線ランプもしくはレーザー光を使用した製造方法において、本発明は特に有用である。
ステップ(c)は、(1)第1のレジスト層をマスクパターンに従って露光処理するステップと、(2)露光処理された第1のレジスト層上に、第3のレジスト層を形成するステップと、(3)第3のレジスト層をマスクパターンに従って、露光処理するステップと、(4)露光処理された第1及び第3のレジスト層を現像処理し、金属種層を露出させるステップと、を有することができる。これにより、構造体の凹凸面の造形深さを、より大きくすることができる。
【0054】
本発明の他の態様は、金属構造体を形成するステップと、金属構造体を型として樹脂成形品を形成する樹脂成形品形成ステップと、を有する樹脂成形品の製造方法であって、金属構造体を形成するステップは、(a)基板上に種層を形成する、ステップと、(b)種層が形成された基板上に、第1のレジスト層を形成する、ステップと、(c)基板表面に形成されている第1のレジスト層をリソグラフィ処理して第1のレジスト・パターンを形成し、種層を露出させる、ステップと、(d)露出した種層表面上に、めっき処理によって、第1の金属層を堆積させる、ステップと、(e)第1の金属層表面と第1のレジスト層表面上に、第2レジスト層を形成するステップと、(f)基板表面に形成されている第2のレジスト層をリソグラフィ処理して第2のレジスト・パターンを形成し、第1の金属層を露出させる、ステップと、(g)露出された第1の金属層上に、めっき処理によって、第2の金属層を堆積させる、ステップと、を備えたものである。この構成を有することにより、造形深さの大きい樹脂成形品を生産性良く、製造することができる。
【0055】
ステップ(e)、(f)、(g)を複数回繰り返すことができる。これにより、さらに樹脂成形品の造形深さを大きくすることができ、所望の樹脂成形品を得ることができる。
複数回繰り返されたステップ(g)の最後のステップは、基板上に種層を付着するステップをさらに備え、種層上に、めっき処理によって金属層を形成することができる。
【0056】
樹脂成形品形成ステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、20乃至500μmであることが好ましい。樹脂成形品形成ステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、50乃至300μmであることが、さらに好ましい。
【0057】
本発明の他の態様は、樹脂成形品の成形に使用される型用金属構造体を製造する方法であって、(a)基板上に、金属種層を形成する、ステップと、(b)金属種層が形成された基板上に、第1のレジスト層を形成する、ステップと、(c)第1のレジスト層をリソグラフィ処理して第1のレジスト・パターンを形成し、金属種層を露出させる、ステップと、(d)露出した金属種層上に、めっき処理によって、第1の金属層を堆積させる、ステップと、(e)第1の金属層が堆積された基板上に、第2レジスト層を形成するステップと、(f)第2のレジスト層をリソグラフィ処理して第2のレジスト・パターンを形成し、第1の金属層を露出させる、ステップと、(g)露出した金属層上に、めっき処理によって、第2の金属層を堆積させる、ステップと、を備えたものである。この構成を有することにより、造形深さの大きい樹脂成形品を生産性良く、製造することができる。
【0058】
本発明の他の態様は、樹脂成形品の成形に使用される型用金属構造体を製造する方法であって、(a)基板上に、種層を形成する、ステップと、(b)種層が形成された基板上に、第1のレジスト層を形成する、ステップと、(c)基板表面に形成されている第1のレジスト層をリソグラフィ処理して第1のレジスト・パターンを形成し、種層を露出させる、ステップと、(d)露出した種層表面上に、めっき処理によって、第1の金属層を堆積させる、ステップと、(e)第1の金属層表面と第1のレジスト層表面の上に、第2レジスト層を形成するステップと、(f)基板表面に形成されている第2のレジスト層をリソグラフィ処理して第2のレジスト・パターンを形成し、第1の金属層を露出させる、ステップと、(g)露出された第1の金属層上に、めっき処理によって、第2の金属層を堆積させる、ステップと、を備えたものである。この構成を有することにより、造形深さの大きい樹脂成形品を生産性良く、製造することができる。
【0059】
本発明の他の態様は、上記態様にかかる発明によって製造された、樹脂成形品である。特に、臨床検査に用いられる成形品チップ、遺伝子関連に用いられる成形品チップ、もしくは、コンビナトリアルケミストリーの処理に用いられる成形品チップ、である。成形品の凹凸面上には、流路パターン、混合部パターン、容器パターンからなる群から選択された、少なくとも一つのパターンが形成されることができる。又、電極、ヒータ、温度センサの中から少なくとも一つのパターンを有することができる。臨床検査用チップは、特に、血液検査用チップ、尿検査用チップ又は生化学検査用チップを含む。コンビナトリアルケミストリーの処理に用いられる成形品チップは、特に、医薬開発チップ又は化学合成・分析用チップを含む。遺伝子関連に用いられる成形品チップは、特に、遺伝子増幅用チップを含む。
【0060】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態以下に図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものを実質的に同様の内容を示している。
【0061】
実施の形態1.
本実施の形態に説明される樹脂成形品の製造方法は、以下の基本的処理を行う(図2のフローチャート参照)。まず、基板上にめっき用の金属種層を形成する(S2−1)。金属種層表面上にレジスト層を形成する(S2−2)。形成されたレジスト層を所定のマスクパターンを使用して露光処理した後、(S2−3)、レジスト層の現像処理を行い(S2−4)、レジストパターンを形成し、金属種層を露出させる。めっき処理により、金属種層表面上に第1金属層を形成する(S2−5)。
【0062】
基板上に第2のレジスト層を形成し(S2−6)、第2のレジスト層露光処理(S2−7)及び現像処理(S2−8)を行う。現像処理により第2のレジストパターンが形成され、第1金属層が露出される。金属種層を第1金属層と第2のレジストパターン表面上に形成し(S2−9)、金属種層表面上に、めっき処理により第2の金属層を形成する(S2−10)。これにより、金属型が完成する。この型を使用して、樹脂成形品を形成する(S2−11)。
【0063】
図1は、本実施の形態における樹脂成形品の製造工程を示している。本実施の形態を実現するために使用される製造装置は広く知られたものであり、ここでは説明を省略する。図1を参照して、本実施の形態における製造方法を説明する。
【0064】
基板上への種層付着工程
金属の付着は、めっき処理を利用することができる。金属を付着するめっき方法は特に限定されないが、電解めっき、無電解めっきなどを利用することができる。図1(a)を参照して、まず基板1上に、蒸着、またはスパッタリングを行い、めっき種層として銀によって導電膜を形成する。この工程において、他に白金、金、銅などを堆積させることができる。無電解めっき処理利用する場合においては、まず、対象物表面に、めっき種層として、無電解めっきの核となる触媒金属(例えば、Pd−Sn錯体)が吸着される。基板1は、例えば、ガラス基板を利用することができる。
【0065】
樹脂成形品としてのチップの平面度は、基板上へレジストを塗布する工程に大きく影響される。すなわち、基板上にレジスト層を形成した時点の平面度が金属構造体、ひいては最終工程で形成した樹脂成形品チップの平面度に反映される。この平面度が保たれていない場合、例えば、流路を有する成形品チップに検体、試薬を送るために基板を張り合わせるなどしても漏洩が生じるため、正しい測定結果が得られないことが懸念される。
【0066】
基板上へのレジスト層形成工程
図1(b)を参照して、基板1上に、有機材料(例えば、クラリアントジャパン製「AZP4400」)をベースとする1回目のレジスト塗布を行いレジスト層2aを形成する。各種処理用チップの平面度を保つため、レジストパターン形成ステップで、適切なレジスト種類(ネガ型、ポジ型)を選択する。
【0067】
基板上にレジストを形成する方法の一つとして、スピンコート方式があげられる。スピンコート方式とは、回転している基板上にレジストを塗布する方法であり、直径300mmを超える基板にレジストを塗布する場合にも高い平面度が得られる利点がある。スピンコート方式で所定のレジストの厚さを得る場合、レジスト粘度を高める方法も効果的である。しかし、塗布面積が大きくなると平面度が低下することが懸念されるため、実際使用上で要求される平面度に応じてレジスト粘度を調整することが望ましい。
【0068】
1回のレジスト塗布で可能なレジスト厚さは、高い平面度を保持することを考慮し、10〜100μm、好ましくは20〜50μmの範囲内であることが望ましい。スピンコート法以外のレジスト層形成の方法としては、ディッピング方式、ロール方式、ドライフィルムレジストの貼り合わせ等があげられる。しかし、高い平面度を実現できる観点から、スピンコート方式が好ましく用いられる。
【0069】
レジスト層露光工程
図1(b)を参照して、レジスト層2aを形成した後、所望のマスクパターンに加工したマスク3を用いて、UV露光装置により、レジスト層2aをUV光により露光を行う。UV露光装置は、例えば、光源としてUVランプを有し、波長365nm、照度20mV/cm2の露光装置を利用することができる。上記レジスト層の露光について説明する。レジストにはポジ型レジスト、ネガ型レジストの2種類がある。いずれも、露光条件により、レジストへの焦点深度が変わるため、例えばUV露光装置を使用した場合、露光時間、UV出力値をレジストの厚さ、感度に応じて種類を選択するのが望ましい。露光装置は、UVレーザを利用したものを使用することもできる。UVレーザはUVランプよりも深い深度を達成する。
【0070】
リソグラフィー法を用いてレジストにパターンを形成する工程では、使用するマスクによって流路の幅、深さ、容器間隔、および容器幅(または直径)、深さの寸法、および精度が左右される。そして、その寸法、および精度は、成形品チップにも反映される。したがって、樹脂を成形した成形品チップの各寸法、および精度を所定のものとするためには、まず初めに、マスクの寸法および精度を規定する必要がある。使用するマスクは何ら限定されないが、エマルジョンマスク、クロムマスク等を挙げることが出来る。
【0071】
レジストにパターンを形成するために使用するマスクの精度を高めるには、例えば、マスクのパターン形成に使用するレーザ光源をより波長の短いものに変えることが考えられるが、設備費用が高額であり、マスク製作費が高額となるため、要求される精度に応じて適宜選択するのが望ましい。
【0072】
また、使用するレジストがポジ型レジスト、またはネガ型レジストによって、造形深さ方向の矩形パターンが台形状、または垂直形状を選択することも可能である。要求される形状、精度、射出成形でプラスチックを成形する際の離型性を考慮して適宜選択するのが望ましい。
【0073】
レジスト層現像工程
次に図1(c)に示すように、前記レジスト層2aを有する基板1を種層5aが露出するまで現像し、種層5a上にレジストパターン4aを形成する。現像液は、例えば、クラリアントジャパン製の「AZ400Kデベロッパー」を使用することができる。
【0074】
リソグラフィー法を用いてレジストパターンを形成する際には、アルカリ液である現像液の濃度、現像時間も考慮することが必要な場合がある。特に種層面まで現像しようとする際には、レジスト底部の幅(または直径)よりも表面の幅(または直径)が広くなることが懸念されるため、例えば、現像液の希釈倍率をあげることにより現像速度を低下させ、現像時間を最適化することによって、現像を制御することができる。
【0075】
また、使用するレジストがポジ型レジストか、またはネガ型レジストかによって、造形深さ方向の矩形パターンが台形状、または垂直形状を選択することも可能である。要求される形状、精度、射出成形でプラスチックを成形する際の離型性を考慮して適宜選択するのが望ましい。
【0076】
リソグラフィー法を用いてレジストにパターンを形成する工程では、露光条件によっても流路の幅、深さ、容器間隔、および容器幅(または直径)、深さ等の樹脂成形品の寸法、および精度が影響される。レジストにはポジ型レジスト、ネガ型レジストの2種類があり、いずれも露光条件によりレジストへの焦点深度が変わるため、例えばUV露光装置を使用した場合、露光時間、UV出力値をレジストの厚さ、感度に応じて選択するのが望ましい。
【0077】
リソグラフィー法を用いてレジストにパターンを形成する工程では、現像条件によっても流路の幅、深さ、容器間隔、および容器幅(または直径)、深さ等の樹脂成形品の寸法、および精度が影響される。露光したレジストを現像する際、必要な深さを得るために現像時間を長くしすぎると、容器間隔、および容器幅(または直径)が所定の寸法よりも大きくなってしまう。このため、現像条件(現像液組成、現像時間等)は、レジスト厚さ、露光光源、露光条件を考慮したうえで、適宜選択するのが望ましい。
【0078】
第1のNi金属層形成工程
そして、図1(d)に示すように、前記レジストパターン4を有する基板1をめっき液に浸け、Niの電気メッキを行い、金属種層表面上に第1の金属層であるNi金属層6aを堆積させる。この工程において、他に銅、金などを堆積させることができる。無電解めっきを行う場合は、種層として、無電解めっきの核となる触媒金属(例えば、Pd−Sn錯体)が吸着された基板のスズ塩を溶解させ、酸化還元反応によって金属パラジウムを生成する。基板がNiめっき液に挿入されると、種層上にニッケル層が形成される。本形態は、基板上へレジスト層形成前に種層を形成する。これにより、レジストパターンを形成した後に種層を付着することなく金属層をめっき処理によって形成することができる。従って、レジストパターンの凹部のみに金属層を形成することができる。
【0079】
第2のレジストパターン形成工程
レジストパターン4aの凹部にNi層6aが付着された後、基板1上にレジストパターン4bを形成する(図1(f))。レジストパターン4bは、レジストパターン4aと同様の方法により形成することができる。図1(e)に示すように、基板上に、有機材料をベースとする2回目のレジスト塗布を行い、レジスト層2bを形成する。その後、マスク位置が1回目の露光におけるマスクパターンと同じ位置になるよう位置合わせを実施し、マスク3を用いて、UV露光装置により、前記レジスト層2bをUV光により2回目の露光を行う。これにより、Ni層6a上に相当する部分が露光される。
【0080】
マスクの位置合わせついて説明する。マスクの位置合わせは、1層目のレジスト層に露光したマスクパターンと、2層目のレジスト層に露光するマスクパターン位置を同じ位置とするために行う。マスクの位置合わせにおいて、1層目のレジスト層に露光したマスクパターンと、2層目のレジスト層に露光するマスクパターン位置に位置ずれが生じると、樹脂成形品の造形精度に大きく影響するため、位置合わせは誤差範囲±2μmの範囲内であることが好ましく、±1μmの範囲内であることがより好ましい。マスクの位置合わせ精度を高める方法はなんら限定されないが、例えば、露光、未露光部分の光の回折差を利用したオフセット調節などがある。あるいは、他に、例えば、基板上、及びマスクの指定位置にレーザ光により記号を描画しておき、光学顕微鏡等を用いてお互いの位置決めを行うことで精度を高める方法があげられる。
【0081】
2回目の露光について説明する。1回目の露光と同様、露光条件により、レジストへの焦点深度が変わるため、例えばUV露光装置を使用した場合、露光時間、UV出力値はレジストの厚さ、感度に応じて選択するのが望ましい。尚、逆特性のレジストを使用する場合は、マスクパターンが第1の露光処理と第2の露光処理で逆になる。
【0082】
図1(f)を参照して、露光処理された基板を現像液を使用して現像する。現像処理により、Ni6a層上のレジスト層がNi6a層の表面が露出するまで除去され、レジストパターン4a上にレジスト層4bが積層される。
【0083】
第2のNi金属層成工程
図1(g)を参照して、現像処理によってレジストパターン4bが形成された基板上に、めっき処理のため、銀などの材料を使用して、金属種層5bを蒸着もしくはスパッタリングによって付着する。種層5bは、Ni金属層6a表面上とレジストパターン4b表面上に形成される。種層5bによって、凹部に形成された金属層をつなぐ金属構造体の本体部を形成することができ、金属構造体を完成することができる。図1(h)に示すように、金属種層5bを付着された基板1をめっき液に浸け、Niの電気メッキを行い、金属種層5b表面上に、第2の金属層であるNi金属層6bを堆積させる。Ni金属層6bは、Ni金属層6a上とレジストパターン4b上に形成される。図1(i)を参照して、Ni層6aと6bから構成される金属構造体6を基板から取り外し、成形用の型が得られる。
【0084】
成形工程
樹脂成形品の形成方法は、射出成形、プレス成形、モノマーキャスト成形、溶剤キャスト成形、押出成形によるロール転写法などを利用することができる。生産性、型転写性の観点から射出成形が好ましく用いられる。所定の寸法を選択した金属構造体を型として射出成形で樹脂成形品を形成する場合、金属構造体の形状を高い転写率で樹脂成形品に再現することができる。図1(j)を参照して、得られた金属構造体6を金型として、例えば、射出成形でプラスチック材をNi構造体6に充填し、成形品チップを得る。射出成形で成形品チップを形成するのに使用するプラスチック材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、スチレン系樹脂、アクリル・スチレン系共重合樹脂(MS樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合樹脂、塩化ビニル系樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は必要に応じて、滑剤、光安定剤、熱安定剤、防曇剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの、1種もしくは2種以上を含有することができる。
【0085】
レジストの厚みが増してくると、例えばUV露光装置を使用する場合、1回の露光では十分な焦点深度が得られないことが懸念される。又、レジストの厚みが増してくると、現像工程において、レジスト底部の幅(または直径)よりも表面の幅(または直径)が広くなることが懸念される。また、所定のレジスト厚さを得るために、複数回の露光を繰り返すと、レジスト表面が滑らかでなくなり、このレジスト表面形状が金属構造体、ひいては最終工程である射出成形で形成した成形品チップに反映される。本実施の形態における方法は、基板上で金属構造体を形成するにおいて、1回の露光で露光可能なレジスト厚みのみを、形成、露光及び現像処理し、そのレジストパターンに従って、金属層を付着する。その後、さらにレジスト層の形成及び、露光・現像処理を行う。本形態は、各レジスト層の形成、露光及び現像処理を1回ずつ行うので、上記の問題を避けることができる。
【0086】
尚、流路や混合部、容器などの深さが均一な成形品チップを得る方法として、例えば、金属構造体の表面を研磨する方法などがあげられる。金属構造体を研磨する場合、汚れが造形物に付着することが懸念されるため、研磨後、超音波洗浄を実施することが好ましい。又、金属の表面状態を改善するため、剥離剤などで表面を処理してもよい。さらにまた、大型の設備であるシンクロトロン放射設備とは異なり、従来の一般的なリソグラフィー設備を用いるため、型用金属構造体の生産コストが上昇するのを防止することができる。これにより、樹脂成形品の生産コストの上昇を防ぐことができ、安価な樹脂成形品を実現することができる。
【0087】
実施の形態2.
本実施の形態は、第1のNi金属層6aを形成する前に、複数のレジスト層を形成する。本形態における、材料層形成及びフォトリソグラフィ処理は、実施の形態1において説明された方法を使用することができる。そのため、詳細な説明は行わない。図3は、実施の形態1におけるレジストパターン4aとNi金属層6aを形成する工程の、変形例を示している。又、図4は、図3の工程を説明するフローチャートである。Ni金属層6aを形成した後は、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。以下、図3と図4を参照して説明する。
【0088】
図3(a)を参照して、基板1上にめっき種層5aとして、銀をスパッタリングによって付着する(S4−1)。図3(b)を参照して、種層5a上にスピンコートによってレジスト層2aを付着する(S4−2)。レジスト層2aは、実施の形態1と同じマスクパターン3を使用して露光処理される(S4−3)。図3(c)を参照して、レジスト層2aを現像処理する前に、第2のレジスト層2cをレジスト層2a上にスピンコートによって形成する(S4−4)。レジスト層2cを、レジスト層2aの露光処理に使用したものと同一のマスクパターンを使用して露光処理する(S4−5)。
【0089】
図3(d)を参照して、現像液により、レジスト層2cとレジスト層2aを同時に現像処理し、積層されたレジスト層のレジストパターン4を形成する(S4−6)。レジストパターン4が形成され、金属種層が露出した基板をめっき処理し、レジストパターンの凹部内に金属層6aを形成する(S4−7)。本実施形態は、金属層6aを形成する前に、複数層のレジスト層を形成、パターニングするので、金属層6aの凹凸面の深さをより大きくすることができる。
【0090】
実施の形態3.
本実施の形態は、実施の形態1における特定の工程を複数回繰り返す。基本的には、図1に示された処理工程(e)、(f)、(g)、もしくは、図2のステップ2−6、2−7、2−8及び2−10を複数回繰り返す。金属構造体の本体部を形成する前に、金属構造体の凹凸構造部を順次積層する。これら工程を繰り返すことにより、構造体6の造形深さを所望の大きさにすることができ、所望の造形深さを有する樹脂成形品を得ることができる。
【0091】
図5は、本形態において説明される処理工程を示している。図6は、図5の処理工程を説明するフローチャートである。図5に示されていない、前工程及び後工程は実施の形態1と同様であり、説明を省略する。又、各工程において使用される材料層付着、フォトリソグラフィ処理は、実施の形態1に説明された方法を使用するので、詳細な説明を行わない。
【0092】
具体的に説明する。図5(a)は、図1(f)に相当する。基板1上には、めっき種層5a、その上にレジストパターン4a、レジストパターン4aの凹部内に第1Ni金属層6a、及び、レジストパターン4a上にレジストパターン4bが形成されている。図5(b)を参照して、この基板をめっき処理し、Ni金属層6a上にNi金属層6bを付着する(S6−1)。レジストパターン6b上には金属層は付着されない。次に、基板上にレジスト層をスピンコートによって付着し(S6−2)、前工程におけるマスクと同一のマスクパターンを有するマスクを使用して露光処理を行う(S6−3)。
【0093】
露光処理されたレジスト層は現像処理され、図5(c)に示すように、レジストパターン4b上にレジストパターン4cが形成される(S6−4)。Ni金属層6b上のレジスト層は現像処理によって除去され、Ni金属層6bが露出される。次に、図5(d)に示すように、基板上に蒸着もしくはスパッタリングによってめっき種層として銀層5bを付着する(S6−5)。種層5bは、レジストパタンーン4cとNi金属層6bの表面上に付着される。
【0094】
図5(e)を参照して、種層5bが付着された基板をめっき処理し、種層5b表面上にNi金属層6cを形成する(S6−6)。本形態は、レジスト層のパターニング及その後の金属層付着の工程を複数回繰り返すので、さらに大きい造形深さを有する金属型を得ることができる。尚、図5(d)において種層を付着することなく、図5の(c)、(d)、(e)もしくは、ステップ6−2、3及び5の処理を繰り返すことによって、さらに造形深さを大きくすることができる。
【0095】
実施の形態4.
樹脂成形品の構造に関する説明
【0096】
以下に、上記実施の形態における製造方法によって形成されうる、樹脂成形品について説明する。リソグラフィー法を用いて作製した金属構造体を型として、射出成形でプラスチックを成形する方法は、精密で安価な基板を形成するうえで有用な製造方法である。所定の寸法を選択した金属構造体を型として射出成形で成形品チップを形成する場合、金属構造体の形状を高い転写率で成形品チップに再現することが可能である。転写率を確認する方法としては、光学顕微鏡、レーザ顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等を使用して行うことができる。
【0097】
金属構造体を型として、例えば射出成形で成形品チップを形成する場合、1枚の金属構造体で1万枚〜5万枚、場合によっては20万枚もの基板を得ることができ、金属構造体の製作にかかる費用負担を大幅に解消することが可能である。また、射出成形1サイクルに必要な時間は5秒〜30秒と短く、生産性の面で極めて効率的である。射出成形1サイクルで同時に複数個の成形品チップを形成可能な成形金型を使用すれば、更に生産性を向上することが可能となる。
【0098】
以下に具合的な樹脂成形品のいくつかの例を説明する。樹脂成形品として形成されるチップは、流路、混合部、容器等の構造部を有している。これらの各寸法は、以下の範囲内であることが好ましい。
【0099】
流路の幅の最小値は、マスクの加工精度に由来しており、工業技術的にはX線、レーザなど波長の短いレーザ光を使用することでより微細化は可能であると推測される。しかし、本実施の形態では精密で安価な成形品チップを多くの分野に提供すること、特に、臨床検査分野、遺伝子関連分野、コンビナトリアルケミストリー分野へ提供することが目的であり、工業的に再現し易い観点から幅が5μm以上、であることが好ましい。また、規格化されていない多品種小ロットの用途においても、精密で安価な容器として提供していく観点から幅が5μm以上であることが好ましい。流路の幅の最大値は、特に制限されないが、微細化による診断時間の短縮、複数処理を可能にし装置に携帯性を付与させるために、300μm以下であることが好ましい。
【0100】
流路の深さの最小値は、流路としての機能を有するためには、20μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは、50μm以上である。流路の深さの最大値は、特に制限されないが、サンプル量を少なくでき、診断時間の短縮を可能にする利点を損なわないためには、500m以下であることが好ましい。さらに好ましくは、300μm以下である。流路の長さの最小値は、試料の導入、分離(解析)の機能を有するためには5mm以上であることが好ましい。流路の長さの最大値は、特に制限されないが、流路の長さを短くすることで診断時間の短縮、複数処理を可能にし、装置に携帯性を付与させるといった利点を損なわないためには、300mm以下であることが好ましい。
【0101】
容器間隔の最小値は、マスクの加工精度に由来しており、工業技術的にはX線、レーザなど波長の短いレーザ光を使用することでより微細化は可能であると推測される。しかし、本実施の形態では、精密で安価な容器を特に、臨床検査分野、遺伝子解析分野、コンビナトリアルケミストリー分野へ提供することが目的であり、工業的に再現し易い観点から容器間隔が5μm以上であることが好ましい。
【0102】
容器間隔の最小値は、例えば、検査装置の位置決め精度によって決定される場合も想定されることから、装置の仕様に応じて適宜選択することが好ましい。また、規格化されていない多品種小ロットの用途においても、精密で安価な容器として提供していく観点から5μm以上であることが好ましい。容器間隔の最大値は、特に制限されないが、容器の小型化により複数処理を可能にし、装置に携帯性を付与させるためには、10,000μm以下であることが好ましい。このような理由により、成形品チップの容器幅(または直径)においても、最小値5μm以上、最大値10,000μm以下であることが好ましい。
【0103】
容器深さの最小値は、特に制限されないが、容器としての機能を有するためには、20μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは、50μm以上である。容器深さの最大値は、例えば、複数回のレジスト塗布、十分な焦点深度を得るために露光光源をX線ビーム等のレーザを使用する等によって、より深い造形を得ることは可能であると推測される。しかし、本実施の形態では、精密で安価な容器を臨床検査分野、遺伝子解析分野、創薬開発分野、コンビナトリアルケミストリー分野へ提供することが目的であり、工業的に再現し易い観点から深さが500μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、300μm以下である。平面度の最小値は、工業的に再現し易い観点から1μm以上であることが好ましい。平面度の最大値は、例えば、該成形品を他の基板と貼り合わせて使用する際に支障とならない観点から200μm以下であることが好ましい。
【0104】
流路の幅(または直径)、深さの寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。また、間隔、容器幅(または直径)、深さの寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。成形品チップの厚さに対する寸法精度は、工業的に再現し易い観点から±0.05〜10%の範囲内であることが好ましい。樹脂成形品の厚さは特に規定されないが、射出成形での取り出し時の破損、取り扱い時の破損、変形、歪みを考慮し、0.2〜10mmの範囲内であることが好ましい。樹脂成形品の寸法は特に規定されないが、リソグラフィー法でレジストパターンを形成する際、例えば、レジスト塗布をスピンコートにて行う場合、直径400mmの範囲の中から採取できるよう用途に応じて適宜選択することが好ましい。
【0105】
本実施の形態における樹脂成形品の用途としては、特に、血液検査用チップ、尿検査用チップ、生化学検査用チップなどの臨床検査用途、DNA診断などの遺伝子解析用途、混合・反応、化学分析用などのコンビナトリアルケミストリー用途、が重要である。
【0106】
臨床検査用途、なかでも抗血栓性(抗血小板付着)や細胞毒性試験における有害性の排除といった生体適合性を必要とする用途には、抗血栓性の効果が知られている材料を用いたり、表面処理を施したりする場合がある。表面処理により生体適合性を向上する方法として、例えば、射出成形で樹脂成形品を形成した後、スパッタリングによりSiO2膜を堆積させた後、熱酸化によりSiO2膜を成長させることで生体適合性を付与する方法があげられる。
【0107】
樹脂成形品を形成した後、臨床検査分野、遺伝子解析分野、コンビナトリアルケミストリー分野等に使用する場合、樹脂成形品上で加温、反応、信号検出等の処理を必要とする場合がある。樹脂成形品上で加温、または反応処理を行う方法として、例えば、スパッタリング、蒸着にて電極パターンを形成し、装置から電圧を印加する方法や、ヒータを配置することが考えられる。また、加温、または反応処理を行う際、温度制御が必要となる場合は、例えば、温度センサを配置することも考えられる。信号検出を行う場合、例えば、フォトダイオードを配置することが考えられる。
【0108】
医療分野、なかでも臨床検査分野において使用する場合、流路の微細化によって診断に要する時間を短縮することが期待されている成形品は、本実施の形態における成形品を使用することによって達成される。さらに、手術室、ベッドサイド、在宅、あるいは町の診療所等、産業上大量使用される用途において特に効果的である。本実施の形態における樹脂成形品は、精密で安価なことが特徴であり、該成形品を繰り返し使用することも可能であるが、基板表面の汚れ、変形等の欠陥が生じた場合、コスト高が極力抑えられるため廃棄して新品を使用しても、労力の解消、処理時間の短縮といった作業効率が重要である用途において特に効果的である。本実施の形態における樹脂成形品は、精密で安価であり、特に、臨床検査分野、遺伝子処理分野、コンビナトリアルケミストリー分野において応用が期待できる。特に検体量の微少化は、コンビナトリアルケミストリー分野においては同時に廃棄の際の廃液量を大幅に削減することができ、環境保全の観点からも特に効果的である。
【0109】
成形品チップ
[流路を有する成形品チップ]
図7は、例えば血液検査に使用される、チップの一例を示している。血液検査用チップは、横60mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、幅100μm、深さ30μmの流路を有する。図7に示すような成形品チップは、臨床検査分野では血液検査用チップ、尿検査用チップ、生化学検査用チップとして用いることができ、コンビナトリアルケミストリー分野では創薬開発用チップや化学合成・分析用チップとしても用いることができる。
【0110】
[流路、および混合部を有する成形品チップ1]
図8は、流路、および複数の流路が交わる混合部を有するチップの一例を示している。混合部は流路の一端に接続される。チップは、横50mm×縦70mm、厚さ1.5mmの基板に、幅100μm、深さ30μmの流路、および混合部を有する。図8に示すような成形品チップは、例えば、臨床検査分野では血液検査用チップ、尿検査用チップ、生化学検査用チップとして用いることができ、コンビナトリアルケミストリー分野では創薬開発用チップや化学合成・分析用チップとしても用いることができる。図8の成形品チップにおいては流路の深さが30μmであるが、30μmに限らず、60μmというようにより深く形成してもよい。
【0111】
[流路、および混合部を有する成形品チップ2]
図9は、流路、および混合部を有する成形品チップの他の例を示している。図9の成形品チップは、横70mm×縦90mm、厚さ1.5mmの基板に、幅100μm、深さ60μmの流路、および混合部を有する。成形品チップは、2つの混合部を有しており、その一つは流路の一端に接続され、他方は流路の途中に接続されて図9の成形品チップにおいては流路の深さが60μmであるが、60μmに限らず、30μmというようにより浅く形成してもよい。
【0112】
[流路、および混合部を有する成形品チップ3]
図10は、複数の流路を有する成形品チップを示している。各流路は流路本線部と支線部が交差する交差部を有し、各流路の端部には、液体を貯めることができる容器が形成されている。図10に示す成形品チップは、横60mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板に、幅100μm、深さ25μmの流路を有する。図10に示すような成形品チップは、例えば、遺伝子分析分野では遺伝子分析用チップや遺伝子増幅用チップとして用いることができる。図10の成形品チップにおいては流路の深さが25μmであるが、25μmに限らず、50μmというようにより深く形成してもよい。
【0113】
[電極、ヒータ、温度センサ、流路、および混合部を有する成形品チップ]
図11は、装置から電圧を印加する電極、ヒータ、温度センサ、流路、および混合部を有する成形品チップの一例を示している。ヒータ及び温度センサは流路上に配置されている。電極もしくはヒータなどの金属部は、スパッタリングや蒸着にて形成することができる。加温、または反応処理を行うために必要とされる温度制御のため、温度センサが配置されている。図11に示す成形品チップは、横50mm×縦70mm、厚さ1.5mmの基板に、幅100μm、深さ60μmの流路、および混合部を形成した後、電極、ヒータ、温度センサを形成される。図11に示すような成形品チップは、例えば、臨床検査分野では血液検査用チップ、尿検査用チップ、生化学検査用チップとして用いることができる。図11の成形品チップにおいては流路の深さが60μmであるが、60μmに限らず、30μmというようにより浅く形成してもよい。
【0114】
[容器を有する成形品チップ]
図12は、複数の容器を有する成形品チップの一例を示している。図12に示す成形品チップは、横60mm×縦40mm、厚さ1.5mmの基板に、容器幅200μm、深さ120μmの複数の容器をマトリックス状に配置して有する。図12に示すような成形品チップは、例えば、臨床検査分野では血液検査用チップ、尿検査用チップ、生化学検査用チップとして用いることができ、遺伝子解析分野では遺伝子解析用チップ、遺伝子増幅用チップとして、コンビナトリアルケミストリー分野では創薬開発用チップや化学合成・分析用チップとしても用いることができる。図12の成形品チップにおいては流路の深さが120μmであるが、120μmに限らず、60μmというようにより浅く形成してもよい。図12に示す成形品チップの流路の深さは、80μm、320μmというように、その用途に合わせて種々の深さとすることができる。
【0115】
[電極、および容器を有する成形品チップ1]
図13は、電極、および容器を有する成形品チップの一例を示している。チップの上には、全ての容器を覆うように、Al膜から構成される電極が形成されている。図13の成形品チップは、横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板を有し、基板上には、直径400μm、間隔400μm、深さ120μmのマトリックス状に配置された複数の容器を有している。容器が形成された基板上には、Al膜から構成される電極が形成されている。
【0116】
図13に示す成形品チップは、遺伝子解析分野では遺伝子解析用チップや遺伝子増幅用チップとして用いることができ、コンビナトリアルケミストリー分野では創薬開発用チップや化学合成・分析用チップとしても用いることができる。図13の成形品チップにおいては流路の深さが120μmであるが、120μmに限らず、320μmというようにより深く形成してもよい。
【0117】
[電極、および容器を有する成形品チップ2]
図14は、電極、および容器を有する成形品チップの他の例を示している。横70mm×縦50mm、厚さ1.5mmの基板には、容器の直径400μm、容器の間隔400μm、容器の深さ120μmの、複数の容器がマトリックス状に形成されている。容器の各行の上には、電極が形成されている。各行の上に2つの電極が形成され、電極それぞれは、各容器の一部を覆っている。各容器の一部の上には、電極がっ形成されていない。図14に示す成形品チップは、例えば、遺伝子解析分野では遺伝子解析用チップや遺伝子増幅用チップとして用いることができ、コンビナトリアルケミストリー分野では創薬開発用チップや化学合成・分析用チップとしても用いることができる。図14の成形品チップにおいては流路の深さが120μmであるが、120μmに限らず、320μmというようにより深く形成してもよい。
【0118】
本実施の形態における成形品チップは、その成形品の微細構造により、測定時間の短縮、少サンプル化、並列処理が可能であり、医療分野、例えば、病院の臨床検査科、ベッドサイド、手術室、町の診療所、在宅等の用途に使用できる成形品チップを提供することができる。又、本発明により得られる遺伝子解析用途に使用されるチップは、その微細構造により、測定時間の短縮、少サンプル化、並列処理が可能であることから、例えば、病院での遺伝子解析用途に使用することができ、将来は町の個人病院、診療所レベルにて解析データをもとに、オーダーメイド治療といわれる個人に適した薬物投薬治療が行うことができるなど産業上大量使用される用途において特に効果的である。
【0119】
本実施の形態における成形品を、コンビナトリアルケミストリー分野、なかでも創薬開発用途において使用する場合、容器の小型化によって創薬開発の加速(迅速化)、微量化(コストダウン)が期待されている成形品は、本発明により得られる樹脂成形品を使用することによって達成される。コンビナトリアルケミストリー分野、なかでも化学合成・分析用途において使用する場合、流路の微細化によって合成・分析に要する時間を短縮させることができ、薬品量の大幅な低減、廃液の大幅な低減が期待されている成形品は、本発明により得られる樹脂成形品を使用することによって達成される。本発明により得られる樹脂成形品は、精密で安価なことが特徴であり、合成・分析時間の短縮、少サンプル化、廃液の削減が可能であることから、例えば、創薬開発におけるハイスループットスクリーニング用途、化学品の化学合成・分析、工業生産用途等、産業上大量使用される用途において特に効果的である。
【0120】
以上のように、実施の形態1や実施の形態2に示す製造方法を用いることにより、生産性良く成形品チップを製造することができる。さらに、本実施の形態における方法により得られる成形品チップは、型用金属構造体が精度良く形成されるため、従来の樹脂成形品と対比して高い寸法精度などを発揮することができる。また、型用金属構造体の生産コストを押さえることができるので、当該成形品チップは精密であると同時に安価に形成することができる。このように、本実施形態において得られた成形品チップは、高精度を必要とされるとともに製造コストを極力抑えられる利点を発揮できるような産業上大量に使用される用途において特に効果的である。
【0121】
【発明の効果】
本発明によれば、所望の造形深さを有する樹脂成形品を生産性良く製造することができる樹脂成形品の製造方法及びその製造に使用される型用金属構造体の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、臨床検査分野、遺伝子関連分野あるいはコンビナトリケミストリ分野における使用に好適な造形深さを有する樹脂成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における成形品チップを形成する工程を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1における成形品チップを形成する工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2における成形品チップを形成する工程を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2における成形品チップを形成する工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態3における成形品チップを形成する工程を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3における成形品チップを形成する工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態3における成形品チップの一例を示す正面図および側面図である。
【図8】本発明の実施の形態3における成形品チップの一例を示す正面図および側面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における成形品チップの一例を示す正面図および側面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における成形品チップの一例を示す正面図および側面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における成形品チップの一例を示す正面図および側面図である。
【図12】本発明の実施の形態3における成形品チップの一例を示す正面図および側面図である。
【図13】本発明の実施の形態3における成形品チップの一例を示す正面図および側面図である。
【図14】本発明の実施の形態3における成形品チップの一例を示す正面図および側面図である。
【符号の説明】
1 基板、2 レジスト層、3 マスク、4 レジストパターン、5a,5b 種層、6 Ni構造体、 6a Ni金属層、6b Ni金属層、6c Ni金属層、7 樹脂成形品
Claims (21)
- 金属構造体を形成するステップと、前記金属構造体を型として樹脂成形品を形成する樹脂成形品形成ステップと、を有する樹脂成形品の製造方法であって、前記金属構造体を形成するステップは、
(a)基板上に種層を形成する、ステップと、
(b)前記種層が形成された基板上に、第1のレジスト層を形成する、ステップと、
(c)前記第1のレジスト層をリソグラフィ処理して第1のレジスト・パターンを形成し、前記種層を露出させる、ステップと、
(d)前記露出した種層上に、めっき処理によって、第1の金属層を堆積させる、ステップと、
(e)前記第1の金属層が堆積された基板上に、第2レジスト層を形成するステップと、
(f)前記第2のレジスト層をリソグラフィ処理して第2のレジスト・パターンを形成する、ステップと、
(g)前記第2のレジスト・パターンが形成された基板上に、めっき処理によって、前記第2の金属層を堆積させる、ステップと、
を備えた樹脂成形品の製造方法。 - 前記ステップ(e)、(f)及び(g)及びを複数回繰り返す、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記ステップ(g)は、さらに、前記第2のレジスト・パターンを形成された基板上に種層を付着するステップを備え、
前記種層を付着された基板をめっき処理し、前記第2の金属層を堆積させる、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。 - 前記ステップ(c)及び(f)は、紫外線ランプもしくはレーザー光によってリソグラフィ処理が行われる、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記ステップ(c)は、
(1)前記第1のレジスト層をマスクパターンに従って露光処理するステップと、
(2)前記露光処理された第1のレジスト層上に、第3のレジスト層を形成するステップと、
(3)前記第3のレジスト層をマスクパターンに従って、露光処理するステップと、
(4)前記露光処理された第1及び第3のレジスト層を現像処理し、前記金属種層を露出させるステップと、
を有する、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。 - 金属構造体を形成するステップと、前記金属構造体を型として樹脂成形品を形成する樹脂成形品形成ステップと、を有する樹脂成形品の製造方法であって、前記金属構造体を形成するステップは、
(a)基板上に種層を形成する、ステップと、
(b)前記種層が形成された基板上に、第1のレジスト層を形成する、ステップと、
(c)前記基板表面に形成されている第1のレジスト層をリソグラフィ処理して第1のレジスト・パターンを形成し、前記種層を露出させる、ステップと、
(d)前記露出した種層表面上に、めっき処理によって、第1の金属層を堆積させる、ステップと、
(e)前記第1の金属層表面と前記第1のレジスト層表面上に、第2レジスト層を形成するステップと、
(f)前記基板表面に形成されている第2のレジスト層をリソグラフィ処理して第2のレジスト・パターンを形成し、前記第1の金属層を露出させる、ステップと、
(g)前記露出された第1の金属層上に、めっき処理によって、前記第2の金属層を堆積させる、ステップと、
を備えた樹脂成形品の製造方法。 - 前記ステップ(e)、(f)、(g)を複数回繰り返す、請求項7に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記複数回繰り返されたステップ(g)の最後のステップは、基板上に種層を付着するステップをさらに備え、
前記種層上に、めっき処理によって金属層を形成する、請求項7に記載の樹脂成形品の製造方法。 - 前記樹脂成形品形成ステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、20乃至500μmである、請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 前記樹脂成形品形成ステップにより形成される樹脂成形品の凹部の深さは、50乃至300μmである、請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
- 樹脂成形品の成形に使用される型用金属構造体を製造する方法であって、
(a)基板上に、金属種層を形成する、ステップと、
(b)前記金属種層が形成された基板上に、第1のレジスト層を形成する、ステップと、
(c)前記第1のレジスト層をリソグラフィ処理して第1のレジスト・パターンを形成し、前記金属種層を露出させる、ステップと、
(d)前記露出した金属種層上に、めっき処理によって、第1の金属層を堆積させる、ステップと、
(e)前記第1の金属層が堆積された基板上に、第2レジスト層を形成するステップと、
(f)前記第2のレジスト層をリソグラフィ処理して第2のレジスト・パターンを形成し、前記第1の金属層を露出させる、ステップと、
(g)前記露出した金属層上に、めっき処理によって、前記第2の金属層を堆積させる、ステップと、
を備えた型用金属構造体の製造方法。 - 樹脂成形品の成形に使用される型用金属構造体を製造する方法であって、
(a)基板上に、種層を形成する、ステップと、
(b)前記種層が形成された基板上に、第1のレジスト層を形成する、ステップと、
(c)前記基板表面上に形成されている第1のレジスト層をリソグラフィ処理して第1のレジスト・パターンを形成し、前記種層を露出させる、ステップと、
(d)前記露出した種層表面上に、めっき処理によって、第1の金属層を堆積させる、ステップと、
(e)前記第1の金属層表面と前記第1のレジスト層表面の上に、第2レジスト層を形成するステップと、
(f)前記基板表面上に形成されている第2のレジスト層をリソグラフィ処理して第2のレジスト・パターンを形成し、前記第1の金属層を露出させる、ステップと、
(g)前記露出した金属層上に、めっき処理によって、前記第2の金属層を堆積させる、ステップと、
を備えた型用金属構造体を製造する方法。 - 請求項1乃到10のいずれか記載の方法によって製造された、樹脂成形品。
- 流路パターン、混合部パターン、容器パターンの中から少なくとも一つのパターンを有する、請求項13に記載の樹脂成形品。
- 電極、ヒータ、温度センサの中から少なくとも一つのパターンを有する請求項13もしくは14に記載の樹脂成形品。
- 請求項1乃到10のいずれか記載の方法によって製造された、臨床検査に用いられるチップ。
- 血液検査用チップ、尿検査用チップ又は生化学検査用チップのいずれか一つである、請求項16に記載の臨床検査に用いられるチップ。
- 請求項1乃到10のいずれか記載の方法によって製造された、コンビナトリアルケミストリに用いられるチップ。
- 医薬開発チップ又は化学合成・分析用チップである、請求項18に記載のコンビナトリアルケミストリに用いられるチップ。
- 請求項1乃到10のいずれか記載の方法によって製造された、遺伝子関連に用いられるチップ。
- 遺伝子増幅用チップである、請求項20に記載の遺伝子関連に用いられるチップ。
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