JP2004143641A - 皮革様シート材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリウレタン樹脂の水性分散体を繊維材料基体に付与し感熱凝固させてなる皮革様シート材料において、マイグレーションの防止が十分でなく、得られる皮革様シート状物の風合いが十分に改良されているとは言い難いという問題点があった。
【解決手段】ポリウレタン樹脂がポリウレタン樹脂の重量に基づいて0.3〜6重量%のカルボキシレート基(−COO−)及び/又はスルホン酸アニオン基(−SO3−)を含有するアニオン性ポリウレタン樹脂からなり、該水性分散体が10〜18のHLBを有する2種のノニオン性界面活性剤及び無機塩を含有する皮革様シート材料を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリウレタン樹脂がポリウレタン樹脂の重量に基づいて0.3〜6重量%のカルボキシレート基(−COO−)及び/又はスルホン酸アニオン基(−SO3−)を含有するアニオン性ポリウレタン樹脂からなり、該水性分散体が10〜18のHLBを有する2種のノニオン性界面活性剤及び無機塩を含有する皮革様シート材料を用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】発明は、皮革様シート材料に関する。更に詳しくは、アニオン性ポリウレタン樹脂水性分散体を繊維材料基体に含浸又は塗布して感熱凝固させてなる皮革様シート材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機溶媒を使用しない、ポリウレタン樹脂水性分散体の人工皮革分野への応用が検討されてきた。水系ウレタン樹脂を繊維材料基体に含浸し加熱乾燥した場合、水が繊維材料基体の表面より蒸発し、水の移動に引き連られて水系ウレタン樹脂が繊維材料基体の表面に移行するマイグレーションを起こすことが挙げられる。このマイグレーションによって、ウレタン樹脂は繊維材料基体の表面に移行し内部にほとんど付着していない状態となるため、硬い風合いの皮革様シート状物となる。そのため、このマイグレーションを抑制するため種々の検討がなされてきた。
【0003】
例えば、自己乳化型ポリウレタン樹脂と、一定の温度を境界にして親水性と疎水性が可逆的に変化して加熱によりゲル化に至るビニル重合体とからなる水性樹脂分散体組成物を繊維材料基体に付与し、該ビニル重合体の転移温度以上かつ熱軟化点以下の温度で加熱する方法(例えば特許文献1参照);あるいは、ノニオン性界面活性剤を用いて強制乳化したポリウレタン樹脂の水性分散体に感熱凝固剤としてノニオン性界面活性剤と無機塩を添加した感熱凝固性ポリウレタン樹脂水性分散体組成液を繊維質基体に含浸させて加熱して凝固させ、乾燥して多孔性シート材料を得る方法(例えば特許文献2参照)などの方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−17034号公報(第12頁)
【特許文献2】
特開2000−345026号公報(第9頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような水性分散体組成物では、マイグレーションの抑制が十分でなく、得られる皮革様シート状物の風合いが十分に改良されているとは言い難い。
【0006】
【解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決する皮革様シート材料について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至ったものである。
即ち本発明は、ポリウレタン樹脂の水性分散体を繊維材料基体に付与し感熱凝固させてなる皮革様シート材料であって、ポリウレタン樹脂がポリウレタン樹脂の重量に基づいて0.3重量%以上6重量%未満のカルボキシレート基及び/又はスルホン酸アニオン基を有するアニオン性ポリウレタン樹脂(A)を用い、該水性分散体が14以上18以下の親水性親油性バランス(HLB)を有するノニオン性界面活性剤(B1)をポリウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1重量%以上10重量%以下、10以上14未満のHLBを有するノニオン性界面活性剤(B2)を1重量%以上10重量%以下、及び及び無機塩(C)を含有することを特徴とする、皮革様シート材料及びその製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の皮革様シート材料を構成するポリウレタン樹脂は、カルボキシレート基及び/又はスルホン酸アニオン基を、該ポリウレタン樹脂の重量に基づいて通常0.3重量%以上、好ましくは0.4重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上含有し、通常6重量%未満、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下含有する。カルボキシレート基及び/又はスルホン酸アニオン基の含有量が0.3重量%未満では安定な水性分散体が得られず、6重量%以上では形成樹脂皮膜の耐水性が低下する傾向となる。
【0008】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を構成するノニオン性界面活性剤(B1)のHLBは通常14以上、好ましくは14.2以上、さらにこのましくは14.4以上であり、通常18以下、好ましくは17.8以下、さらに好ましくは17.6以下である。
(B1)のHLBが14未満では、水性分散体を長期に保存した場合に、凝固物が発生するなどの保存安定性に問題を生じる。一方HLBが18を越えると、ポリウレタン樹脂の水に対する親和性が大きくなりすぎるため、水性分散体が感熱凝固しにくくなる。
また、(B1)の含有量はポリウレタン樹脂の重量に基づいて、通常1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは9.5重量%以下、更に好ましくは9重量%以下である。(B1)の含有量がポリウレタン樹脂の重量に対して10重量%より多くなると、感熱凝固の感度が不足し、加熱しても凝固に要する時間が長くなり、含有量が1重量%未満では、水性分散体を長期に保存した場合、相分離が発生し、保存安定性に問題が生じる。
【0009】
また、ノニオン界面活性剤(B2)のHLBは通常10以上、好ましくは10.2以上、さらに好ましくは10.4以上であり、通常14以下、好ましくは13.8以下、さらに好ましくは13.6以下である。(B2)のHLBが10より小さいと室温下で凝固が起こり、該水性分散体を使用した皮革様シートの加工が不可となる。一方、HLBが14より大きいと凝固の感度が不足するため、速やかな感熱凝固を達成できない。
また、(B2)の含有量はポリウレタン樹脂の重量に基づいて、通常1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは9.5重量%以下、更に好ましくは9重量%以下である。(B2)の含有量がポリウレタン樹脂の重量に対して10重量%より多くなると、室温下で凝固が起こり、該水性分散体を使用した皮革様シートの加工が不可となり、1重量%未満では水性分散体の凝固の感度が不足し、速やかな感熱凝固を達成できない。
本発明におけるHLB値は、藤本武彦著、新・界面活性剤入門、三洋化成工業株式会社発行(1992年)、P128記載の下記のグリフィンの方法により算出される値である。
HLB=(親水基の重量%)×(1/5)
【0010】
(B1)及び(B2)は、親水基として水中でイオン解離しないポリエーテル単位を有している界面活性剤であり、特に下記一般式(1)で表されるノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
R−O−(CH2−CH2−O−)x−H (1)
但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、直鎖状のものであっても、枝分かれ構造のものでもよい。具体的には、メチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、セチル基、オレイル基などを挙げることができる。これらの中で好ましいものはラウリル基、セチル基、オレイル基である。xは5〜40の整数を表す。
【0011】
(B1)及び(B2)のHLBは一般式(1)においてRで示されるアルキル基の疎水性とエチレンオキシド単位の繰り返し数であるxにより決まり、xが大きいほどHLBは大きくなる。
(B1)及び(B2)の例としては、(B1)では、Rは通常メチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、セチル基、オレイル基などが挙げられる。これらの中で好ましいものはラウリル基、セチル基、オレイル基である。xは5〜40の整数であり、好ましくは7〜30の整数である。具体的にはポリオキシエチレンセチルエーテル(x=18、HLB=15.0)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(x=24、HLB=16.1)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(x=11、HLB=14.4)などが挙げられる。
(B2)では、Rは(B1)と同様のものが挙げられる。好ましいものも同様である。xは5〜40の整数であり、好ましくは6〜20の整数である。具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル(x=7、HLB=12.4)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(x=9、HLB=13.6)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(x=7、HLB=10.8)などが挙げられる。
【0012】
無機塩(C)としては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の、無機塩又はハロゲン化物が挙げられる。
アルカリ金属の無機塩又はハロゲン化物としては、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウムが挙げられ、アルカリ土類金属の無機塩又はハロゲン化物としては、塩化カルシウム、硫酸カルシウムが挙げられる。
【0013】
(C)の含有量は、樹脂自体の保存安定性の観点から、ポリウレタン樹脂(A)の重量に基づいて0.5〜5重量%が好ましく、更に好ましくは1〜4重量%である。
【0014】
ポリウレタン樹脂(A)は、例えば、有機ジイソシアネート(a1)、高分子ポリオール(a2)、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)および必要により鎖伸長剤(a4)から形成されるカルボキシル基及び/又はスルホン酸基含有ポリウレタン樹脂(A’)を3級アミン(a5)で中和してなるものである。以下、各成分について説明する。
【0015】
有機ジイソシアネート(a1)としては、従来からポリウレタン製造に使用されているものが使用できる。このような有機ジイソシアネートには、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性体(カーボジイミド変性体、ウレタン変性体、ウレトジオン変性体など)およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0016】
上記芳香族ジイソシアネートの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(以下TDIと略記)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略記)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0017】
上記脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0018】
上記脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0019】
上記芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0020】
これらのうち好ましいものは芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものはMDI、TDI、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである。
【0021】
高分子ジオール(a2)としては、例えば、ポリアルキレンエーテルジオール(a2−1)、ポリエステルジオール(a2−2)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
高分子ジオール(a2)の数平均分子量は、500〜20,000が好ましく、さらに好ましくは500〜10,000、特に好ましくは1,000〜3,000である。
(a2)の数平均分子量は水酸基価より求める。水酸基価は、JIS K 0070−1992(電位差滴定方法)に規定された方法で測定する。
【0022】
ポリアルキレンエ−テルジオ−ル(a2−1)としては、活性水素原子含有多官能化合物(a6)にアルキレンオキサイド(以下AOと略記)が付加した構造の化合物およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記(a6)としては、2価アルコ―ル、2価フェノ―ル類、ジカルボン酸などが挙げられる。
【0023】
2価アルコールとしては、エチレングリコ―ル、プロピレングリコ―ル、1,3−ブチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ―ル、1,6−ヘキサンジオ―ル、ジエチレングリコ―ル、ネオペンチルグリコ―ル、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼンなどの2価アルコ―ルなどが挙げられる。
2価フェノ―ル類としては、カテコール、ヒドロキノンなどの2価フェノ―ルのほかビスフェノ―ルA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノ―ル類などが挙げられる。
ジカルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸があげられる。
上述した(a6)は2種以上使用することもできる。
【0024】
(a6)に付加するAOとしては、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、1,2−、2,3−もしくは1,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(THF)、スチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド、エピクロルヒドリンなどがあげられる。
AOは単独でも2種以上併用してもよく、後者の場合はブロック付加でもランダム付加でも両者の混合系でもよい。
これらのAOのうちで好ましいものはEO単独、PO単独、THF単独、POおよびEOの併用、POおよび/またはEOとTHFの併用(併用の場合、ランダム、ブロックおよび両者の混合系)である。
活性水素原子含有化合物(a6)へのAOの付加は、通常の方法で行うことができ、無触媒でまたは触媒(アルカリ触媒、アミン系触媒、酸性触媒)の存在下行なわれる。
【0025】
ポリエステルジオール(a2−2)には、低分子ジオ―ルおよび/または分子量1000以下のポリアルキレンエ−テルジオ―ルとジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオ―ル、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオ―ル、低分子ジオール及びその混合物と低級アルコール(メタノールなど)の炭酸ジエステルとを反応させて得られるポリカーボネートジオール及びその共重合体などが含まれる。
【0026】
上記低分子ジオ―ルとしては、エチレングリコ―ル、ジエチレングリコ―ル、プロピレングリコ―ル、ジプロピレングリコ―ル、1,4−、1,3−ブタンジオ―ル、ネオペンチルグリコ―ル、1,6−ヘキサンジオ―ル;環状基を有する低分子ジオ―ル類[たとえば特公昭45−1474号公報記載のもの:ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビスフェノ―ルAのエチレンオキサイド付加物等]、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
また、分子量1,000以下のポリアルキレンエ−テルジオ―ルとしては、ポリテトラメチレンエ−テルグリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0027】
また、ジカルボン酸としては脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸など)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸など)、これらのジカルボン酸のエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステルなど]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられ;ラクトンとしてはε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
ポリエステル化は、通常の方法、たとえば低分子ジオ―ルおよび/または分子量1000以下のポリエ−テルジオ―ルを、ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体[たとえば無水物(無水マレイン酸、無水フタル酸など)、低級エステル(アジピン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチルなど)、ハライド等]と、またはその無水物およびアルキレンオキサイド(たとえばエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド)とを反応(縮合)させる、あるいは開始剤(低分子ジオ―ルおよび/または分子量1,000以下のポリエ−テルジオ―ル)にラクトンを付加させることにより製造することができる。
【0029】
これらのポリエステルジオール(a2−2)の具体例としては、ポリエチレンアジペ−トジオール、ポリブチレンアジペ−トジオール、ポリヘキサメチレンアジペ−トジオール、ポリネオペンチルアジペ−トジオール、ポリエチレンプロピレンアジペ−トジオール、ポリエチレンブチレンアジペ−トジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペ−トジオール、ポリジエチレンアジペ−トジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエ−テル)アジペ−トジオール、ポリエチレンアゼレ−トジオール、ポリエチレンセバケ−トジオール、ポリブチレンアゼレ−トジオール、ポリブチレンセバケ−トジオール、ポリカプロラクトンジオ―ル、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0030】
これらの高分子ジオール(a2)の中で好ましいものは、低分子ジオ―ルとジカルボン酸との縮合ポリエステルジオ―ル、ポリカーボネートジオールである。
【0031】
カルボキシル基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)は、ポリウレタン樹脂の分散安定性を保つことを目的として、アニオン性の親水基導入のために使用される成分である。(a3)の具体例としては、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸、α,α−ジメチロール酢酸、α,α−ジメチロールプロピオン酸、α,α−ジメチロール酪酸等のジヒドロキシカルボン酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノー2−トルエンスルホン酸等のジアミノスルホン酸などが挙げられる。これらのうち好ましいものはジヒドロキシカルボン酸であり、特に好ましいものはα,α−ジメチロールプロピオン酸およびα,α−ジメチロール酪酸である。
【0032】
(A)の構成成分として、必要により鎖伸長剤および/または鎖停止剤を用いることができる。
該鎖伸長剤としては炭素数2〜10のジアミン類(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミンなど);ポリアミン類(例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど);ヒドラジンもしくはその誘導体(二塩基酸ジヒドラジドたとえばアジピン酸ジヒドラジドなど);炭素数2〜15の多価アルコール類[2価アルコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールなど)、3価アルコール(例えばグリセリン、トリメチロールプロパンなど)、これらの多価アルコールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド)低モル付加物(分子量500未満)]などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、エチレンジアミン、イソホロンジアミンである。
該鎖停止剤としては炭素数1〜8のモノアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、セロソルブ類、カービトール類など)、炭素数1〜10のモノアミン類(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、モノオクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなど)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、モノエチルアミン、モノブチルアミンである。
【0033】
ポリウレタンのカルボキシル基及び/又はスルホン酸基の中和に用いられる3級アミン(a5)としては、炭素数3〜12またはそれ以上の3級モノアミン、例えば▲1▼脂肪族3級モノアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等);▲2▼複素環式3級モノアミン(N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン等);▲3▼不飽和環式3級モノアミン(N−メチルピリジン、N−メチルキノリン等);▲4▼芳香環含有脂肪族3級モノアミン(ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン等);▲5▼芳香族3級モノアミン(N−ジメチルアニリン等)およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これらのうち好ましいものは脂肪族3級モノアミンであり、特に好ましいものはトリエチルアミンである。
【0034】
カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を含有するカルボン酸及び/又はスルホン酸3級アンモニウム塩の基において、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基は上記(a3)から由来するものであり、カルボキシル基とスルホン酸基の合計モル数と3級アミノ基のモル数の比は、好ましくは1.01以上、さらに好ましくは1.05以上であり、好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0035】
本発明におけるポリウレタン樹脂(A)の製造法は通常の方法でよく、特に限定されないが、たとえば下記の方法が例示できる。
▲1▼分子内に活性水素含有基を含まない有機溶剤(アセトン、メチルエチケトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等)の存在下または非存在下で、前記有機ジイソシアネート(a1)と、高分子ジオール(a2)およびカルボキシレート基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)からなる活性水素成分とを、(NCO/水酸基)当量比が、通常1.05〜2.0、好ましくは1.1〜1.6の範囲でワンショット法または多段法により、通常20℃〜150℃、好ましくは60℃〜110℃で反応させて、末端NCO基含有ウレタンプレポリマーとし、該プレポリマーを3級アミン(a5)で中和後または中和しながら、通常10℃〜60℃、好ましくは20℃〜40℃で、必要により鎖伸長剤(a4)および/または鎖停止剤を含む水と混合して、NCO基がなくなるまで乳化・鎖伸長反応を行い、必要により有機溶剤を溜去する方法。
▲2▼有機溶剤の存在下または不存在下に、有機ジイソシアネート(a1)と高分子ジオール(a2)カルボキシレート基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)とからなる活性水素成分とを、(NCO/水酸基)当量比が、0.5〜0.99の範囲でワンショット法または多段法で反応させ、末端NCO基を含まないウレタンポリマーとし、これを3級アミン(a5)で中和後または中和しながら水と混合後、必要により有機溶剤を溜去する方法。
▲3▼有機溶剤の存在下または不存在下に、有機ジイソシアネート(a1)と高分子ジオール(a2)からなる活性水素成分とを、(NCO/水酸基)当量比が2.0〜1.3の範囲でワンショット法または多段法で反応させ、末端NCO基を含むウレタンポリマーとし、これにカルボキシレート基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)を3級アミン(a5)で中和したものを(NCO/水酸基)当量比が1.5〜1.0の範囲で反応させた後、水と混合後、必要により有機溶剤を溜去する方法。
上記の方法のうち▲1▼の方法が好ましい。
【0036】
ポリウレタン樹脂の水性分散体の製造法は通常の方法でよく、例えば、ポリウレタン樹脂(A)に(B1)、(B2)および(C)の水溶液を加え、攪拌混合することにより製造することができる。
【0037】
本発明の感熱凝固温度は、以下のように測定する。
試験管(内径18mm)に固形分が20%となるように希釈した水性分散体を10g秤取し、90℃の熱水浴中で無攪拌の状態で10℃/分の速度で昇温し、該水性分散体が流動性を失いゲル状物となったときの、該水性分散体の温度を感熱凝固温度とする。
ポリウレタン樹脂(A)水性分散体の感熱凝固温度は、樹脂自体の保存安定性の観点から40℃以上が好ましく、マイグレーションの観点から80℃以下が好ましい。さらに好ましくは50〜70℃である。
本発明において、固形分とは、水性分散体に基づいて、該水性分散体中のポリウレタン樹脂(A)および必要により加えられたその他の添加剤(揮発性物質は除く)の合計含有率を示す。
本発明の水性分散体の固形分は、好ましくは5%〜40%、さらに好ましくは10〜30%である。
【0038】
本発明の平均分散粒子径は、以下のように測定する。
電気泳動光散乱光度計(例えば大塚電子株式会社製、ELS−800型)を用い、分散媒を水として平均粒子径を測定する。
ポリウレタン樹脂(A)水性分散体の平均分散粒子径はマイグレーションの観点から0.1μm以上が好ましく、樹脂自体の安定性の観点から2μm以下が好ましい。さらに好ましくは0.2μm〜1μmである。
【0039】
本発明のポリウレタン樹脂には必要により酸化チタンなどの着色剤、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)や酸化防止剤[4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−1−ブチルフェノール)などのヒンダートフェノール;トリフェニルホスファイト、トリクロルエチルホスファイトなどの有機ホスファイトなど]などの各種安定剤、架橋剤(ポリエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物など)、無機充填剤(炭酸カルシウムなど)および公知の凝固調整剤[高級アルコール(特公昭42−22719号公報)、結晶性有機化合物(特公昭56−41652号公報)、疎水性ノニオン系界面活性剤(特公昭45−39634号および特公昭45−39635号公報)]などを添加させることができる。これら各添加剤の合計量はポリウレタン樹脂100重量部に対して5重量部以下が好ましい。
【0040】
本発明の皮革様シート材料の製造において使用される繊維材料基体としては、従来から繊維材料基体の製造に用いられている不織布や編織布が全て特に制限無く用いられる。不織布としては、補強用等の目的で編織布等が内部または表面に積層されたものでも良い。
構成繊維としては、天然繊維、化学繊維のいずれでも良く、天然繊維としては綿、羊毛、絹、石綿等、化学繊維としてはレーヨン、テンセルなどの再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリルなどの合成繊維が挙げられる。またこれらを混合使用した繊維を適宜用いることも可能である。
【0041】
本発明のポリウレタン樹脂(A)水性分散体の繊維材料基体への付与は、含浸または塗布により行われ、通常行われる方法であればいずれでも良い。例えば繊維材料基体に水性分散体を含浸し、マングル等で搾ってピックアップを調製する方法、ナイフコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング等が挙げられる。
該水性分散体を付与された繊維材料基体は、必要により、水洗等の処理が施される。
【0042】
ポリウレタン樹脂(A)水性分散体の凝固の方法としては、例えば、
(1)ポリウレタン樹脂(A)水性分散体を付与した繊維材料基体に、加熱水蒸気を吹き付けて凝固する方法、
(2)ポリウレタン樹脂(A)水性分散体を付与した繊維材料基体を、乾燥装置中にそのまま導入して加熱凝固すると共に乾燥する方法などを挙げることができる。
【0043】
本発明で使用されるポリウレタン樹脂(A)水性分散体を凝固させる温度は、ポリウレタン樹脂の凝固を速やかに完了させることでマイグレーションを防止できる点から50〜150℃が好ましく、さらに好ましくは60〜140℃である。上記(1)の凝固方法を用いた場合は、ポリウレタン樹脂(A)水性分散体の加熱凝固後に、加熱乾燥または風乾を行って、皮革様シート状物中に含まれる水分を除去することが好ましい。
乾燥後の繊維材料基体への付着重量は、好ましくは繊維材料基体100重量部に対し3〜150重量部、さらに好ましくは20〜120重量部である。
【0044】
本発明の皮革様シート材料は、適度な柔軟性を有し天然皮革に近似した良好な風合いを有しているので、シート材料として極めて有用である。
本発明の皮革様シート材料は、種々の用途、例えば、マットレス、鞄内張り材料、衣料、靴用芯材、クッション地、自動車内装材、壁材などに好適に使用することができる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、「部」は重量部を示す。
【0046】
製造例1
温度計および攪拌機を備えた密閉反応槽に、ポリブチレンアジペートジオール(数平均分子量2000)330部、α,α−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)19.7部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート102部およびアセトン450部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で6時間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマーを得た。 得られた該アセトン溶液を40℃に冷却してトリエチルアミン15.6部を加えた。次にエチレンジアミン1.0部を水30部に溶解したものを該アセトン溶液に加え、乳化・鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、固形分40%のウレタン樹脂の水性分散体を得た。
得られたポリウレタン樹脂中のカルボキシレート基の含有量は該ポリウレタン樹脂に基づいて1.5重量%であった。
次いで該ポリウレタン樹脂100部に対してポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB=16.1、エチレンオキサイドの重合度=24)が5部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=12.4、エチレンオキサイドの重合度=7)が5部、硫酸ナトリウムが3部配合されるよう予め添加した水で希釈し、固形分が20%となるよう調整した水性分散体(以下、水性分散体(1)と称する)を得た。水性分散体(1)の感熱凝固温度は65℃、平均分散粒子径は0.18μmであった。
【0047】
製造例2
温度計および攪拌機を備えた密閉反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(数平均分子量2000)330部、DMPA10.5部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート80部およびアセトン450部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で6時間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマーを得た。
得られた該アセトン溶液を40℃に冷却してトリエチルアミン7.99部を加えた。次にエチレンジアミン1.0部を水30部に溶解したものを該アセトン溶液に加え、乳化・鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、固形分40%のウレタン樹脂の水性分散体を得た。
得られたポリウレタン樹脂中のカルボキシレート基の含有量は該ポリウレタン樹脂に基づいて0.8重量%であった。次いで該ポリウレタン樹脂100部に対してポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=14.4、エチレンオキサイドの重合度=11)が8部、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB=10.8、エチレンオキサイドの重合度=7)が4部、塩化カルシウムが2部配合されるよう予め添加した水で希釈し、固形分が20%となるよう調整した水性分散体(以下、水性分散体(2)と称する)を得た。水性分散体(2)の感熱凝固温度は47℃、平均分散粒子径は0.37μmであった。
【0048】
製造例3
温度計および攪拌機を備えた密閉反応槽に、ポリヘキサメチレンアジペ−トジオール(数平均分子量2000)216部、DMPA35.5部、TDI81部、およびアセトン230部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で6時間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマーを得た。
得られた該アセトン溶液を40℃に冷却してトリエチルアミン27.3部を加えた。次にエチレンジアミン1.3部を水30部に溶解したものを該アセトン溶液に加え、乳化・鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、固形分40%のウレタン樹脂の水性分散体を得た。
得られたポリウレタン樹脂中のカルボキシレート基の含有量は該ポリウレタン樹脂に基づいて3.2重量%であった。次いで該ウレタン樹脂100部に対してポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB=15.0、エチレンオキサイドの重合度=18)が8部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=13.6、エチレンオキサイドの重合度=9)が6部、塩化カルシウムが1部配合されるよう予め添加した水で希釈し、固形分が20%となるよう調整した水性分散体(以下、水性分散体(3)と称する)を得た。水性分散体(3)の感熱凝固温度は50℃、平均分散粒子径は0.12μmであった。
【0049】
比較製造例1
温度計および攪拌機を備えた密閉反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(数平均分子量2000)330部、DMPA2.5部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート60部およびアセトン450部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で6時間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマーを得た。
得られた該アセトン溶液を40℃に冷却してトリエチルアミン2.0部を加えた。次にエチレンジアミン1.0部を水30部に溶解したものを該アセトン溶液に加え、乳化・鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、固形分40%のウレタン樹脂の水性分散体を得た。
得られたポリウレタン樹脂中のカルボキシレート基の含有量は該ポリウレタン樹脂に基づいて0.2重量%であった。次いで該ポリウレタン樹脂100部に対してポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB=15.1、エチレンオキサイドの重合度=18)が3部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=12.4、エチレンオキサイドの重合度=7)が5部、塩化カルシウムが1部配合されるよう予め添加した水で希釈し、固形分が20%となるよう調整した水性分散体(以下、水性分散体(4)と称する)を得た。水性分散体(4)の感熱凝固温度は38℃であり、室温で放置しておくと、ゲル状物となっており、以後の皮革様シートの作製はできなかった。
【0050】
比較製造例2
ノニオン性界面活性剤、無機塩類の代わりに感温ゲル化剤として、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド、数平均分子量20万)をポリウレタン樹脂に対して2部使用すること以外は、製造例3と同様に調整した水性分散体を得た。(以下、水性分散体(5)と称する)水性分散体(5)の感熱凝固温度は85℃、平均分散粒子径は1.21μmであった。
【0051】
比較製造例3
ノニオン性界面活性剤(B1)として、HLBが18.5のポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレンオキサイドの重合度=60)を使用すること以外は製造例1と同様に調整した水性分散体を得た。(以下、水性分散体(6)と称する)水性分散体(6)は90℃まで加熱したが、全くゲル状物はなかった。
【0052】
比較製造例4
ノニオン界面活性剤(B2)として、HLBが9.0のポリエオキシチレンオレイルエーテル(エチレンオキサイドの重合度=5)を使用すること以外は製造例2と同様に調整した水性分散体を得た。(以下、水性分散体(7)と称する)水性分散体(7)は配合直後に室温下で凝固物が発生し、以後の皮革様シートの作製はできなかった。
【0053】
比較製造例5
塩化カルシウムを加えないこと以外は製造例2と同様に調整した水性分散体を得た。(以下、水性分散体(8)と称する)水性分散体(8)は90℃まで加熱したが、全くゲル状物はなかった。
【0054】
<不織布の製造>
ポリエチレンテレフタレート短繊維から積層シートを作り、このシートを280本/cm2の打込数となるようにニードルパンチした後乾燥し、重量380g/m2、見掛密度0.18g/cm2の不織布を得た。
【0055】
実施例1〜3、比較例1〜5
上記不織布に水性分散体(1)〜(8)を含浸し[水性分散体(4)及び(7)は不可]、樹脂の付着率が不織布重量に対して約50重量%となるようにマングルで絞った後、100℃の飽和水蒸気中で2分感熱凝固させ、更に100℃の熱風乾燥機で20分乾燥することによりシートを得た。
【0056】
<性能試験>
実施例1〜3および比較例1〜5で製造した皮革様シートについて、下記試験方法により樹脂の付着率、マイグレーションの有無、風合い、通気性を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
[樹脂の付着率]
乾燥後の皮革様シートにおいて次式により算出した。
100×[(皮革様シートの重量)−(繊維材料基体の重量)]/(繊維材料基体の重量)(単位重量%)
[マイグレーションの有無]
シートの断面を電子顕微鏡(日立製作所製、S−800)で観察し、表面部分と中央部分のポリウレタン樹脂の基体への付着状態を調べ、ポリウレタン樹脂が繊維材料基体中に均一に分布しており、マイグレーションが発生していないものを「○」、ポリウレタン樹脂が繊維材料基体表面部分に偏在しており、マイグレーションが発生しているものを「×」と判定した。
[風合い]
シートが天然皮革様の風合いを有するものである場合を「○」と判定し、天然皮革に比べて柔軟性がやや劣るものを「△」、柔軟性不足のためシートが天然皮革様の風合いを呈さない場合を「×」と判定した。判定は手の触感による官能試験で行った。
[通気性]
ガーレのデンソメータを使用して、JIS P8117の方法に準じて、50mlの空気が本発明の皮革様シートを通過するに要する時間(秒)を測定した。
[多孔性]
シートの断面の電子顕微鏡写真により充填されたウレタン樹脂の表面が多孔質を形成しているか否かを目視観察し、多孔質を形成しているものを「○」、多孔質を形成していないものを「×」とした。
【0059】
【発明の効果】本発明の皮革様シート材料は、水性分散体を繊維材料基体に付与し感熱凝固する際、速やかな感熱凝固性を有しているため、マイグレーションが無く、ウレタン樹脂層が多孔質を形成しているため、適度な柔軟性を有し天然皮革に近似した良好な風合いを有している。本発明の皮革様シート材料は、上記効果を奏することから、種々の用途、例えば、マットレス、鞄内張り材料、衣料、靴用芯材、クッション地、自動車内装材、壁材などに有用である。
【発明の属する技術分野】発明は、皮革様シート材料に関する。更に詳しくは、アニオン性ポリウレタン樹脂水性分散体を繊維材料基体に含浸又は塗布して感熱凝固させてなる皮革様シート材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機溶媒を使用しない、ポリウレタン樹脂水性分散体の人工皮革分野への応用が検討されてきた。水系ウレタン樹脂を繊維材料基体に含浸し加熱乾燥した場合、水が繊維材料基体の表面より蒸発し、水の移動に引き連られて水系ウレタン樹脂が繊維材料基体の表面に移行するマイグレーションを起こすことが挙げられる。このマイグレーションによって、ウレタン樹脂は繊維材料基体の表面に移行し内部にほとんど付着していない状態となるため、硬い風合いの皮革様シート状物となる。そのため、このマイグレーションを抑制するため種々の検討がなされてきた。
【0003】
例えば、自己乳化型ポリウレタン樹脂と、一定の温度を境界にして親水性と疎水性が可逆的に変化して加熱によりゲル化に至るビニル重合体とからなる水性樹脂分散体組成物を繊維材料基体に付与し、該ビニル重合体の転移温度以上かつ熱軟化点以下の温度で加熱する方法(例えば特許文献1参照);あるいは、ノニオン性界面活性剤を用いて強制乳化したポリウレタン樹脂の水性分散体に感熱凝固剤としてノニオン性界面活性剤と無機塩を添加した感熱凝固性ポリウレタン樹脂水性分散体組成液を繊維質基体に含浸させて加熱して凝固させ、乾燥して多孔性シート材料を得る方法(例えば特許文献2参照)などの方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−17034号公報(第12頁)
【特許文献2】
特開2000−345026号公報(第9頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような水性分散体組成物では、マイグレーションの抑制が十分でなく、得られる皮革様シート状物の風合いが十分に改良されているとは言い難い。
【0006】
【解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決する皮革様シート材料について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至ったものである。
即ち本発明は、ポリウレタン樹脂の水性分散体を繊維材料基体に付与し感熱凝固させてなる皮革様シート材料であって、ポリウレタン樹脂がポリウレタン樹脂の重量に基づいて0.3重量%以上6重量%未満のカルボキシレート基及び/又はスルホン酸アニオン基を有するアニオン性ポリウレタン樹脂(A)を用い、該水性分散体が14以上18以下の親水性親油性バランス(HLB)を有するノニオン性界面活性剤(B1)をポリウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1重量%以上10重量%以下、10以上14未満のHLBを有するノニオン性界面活性剤(B2)を1重量%以上10重量%以下、及び及び無機塩(C)を含有することを特徴とする、皮革様シート材料及びその製造方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の皮革様シート材料を構成するポリウレタン樹脂は、カルボキシレート基及び/又はスルホン酸アニオン基を、該ポリウレタン樹脂の重量に基づいて通常0.3重量%以上、好ましくは0.4重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上含有し、通常6重量%未満、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下含有する。カルボキシレート基及び/又はスルホン酸アニオン基の含有量が0.3重量%未満では安定な水性分散体が得られず、6重量%以上では形成樹脂皮膜の耐水性が低下する傾向となる。
【0008】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を構成するノニオン性界面活性剤(B1)のHLBは通常14以上、好ましくは14.2以上、さらにこのましくは14.4以上であり、通常18以下、好ましくは17.8以下、さらに好ましくは17.6以下である。
(B1)のHLBが14未満では、水性分散体を長期に保存した場合に、凝固物が発生するなどの保存安定性に問題を生じる。一方HLBが18を越えると、ポリウレタン樹脂の水に対する親和性が大きくなりすぎるため、水性分散体が感熱凝固しにくくなる。
また、(B1)の含有量はポリウレタン樹脂の重量に基づいて、通常1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは9.5重量%以下、更に好ましくは9重量%以下である。(B1)の含有量がポリウレタン樹脂の重量に対して10重量%より多くなると、感熱凝固の感度が不足し、加熱しても凝固に要する時間が長くなり、含有量が1重量%未満では、水性分散体を長期に保存した場合、相分離が発生し、保存安定性に問題が生じる。
【0009】
また、ノニオン界面活性剤(B2)のHLBは通常10以上、好ましくは10.2以上、さらに好ましくは10.4以上であり、通常14以下、好ましくは13.8以下、さらに好ましくは13.6以下である。(B2)のHLBが10より小さいと室温下で凝固が起こり、該水性分散体を使用した皮革様シートの加工が不可となる。一方、HLBが14より大きいと凝固の感度が不足するため、速やかな感熱凝固を達成できない。
また、(B2)の含有量はポリウレタン樹脂の重量に基づいて、通常1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは9.5重量%以下、更に好ましくは9重量%以下である。(B2)の含有量がポリウレタン樹脂の重量に対して10重量%より多くなると、室温下で凝固が起こり、該水性分散体を使用した皮革様シートの加工が不可となり、1重量%未満では水性分散体の凝固の感度が不足し、速やかな感熱凝固を達成できない。
本発明におけるHLB値は、藤本武彦著、新・界面活性剤入門、三洋化成工業株式会社発行(1992年)、P128記載の下記のグリフィンの方法により算出される値である。
HLB=(親水基の重量%)×(1/5)
【0010】
(B1)及び(B2)は、親水基として水中でイオン解離しないポリエーテル単位を有している界面活性剤であり、特に下記一般式(1)で表されるノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
R−O−(CH2−CH2−O−)x−H (1)
但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、直鎖状のものであっても、枝分かれ構造のものでもよい。具体的には、メチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、セチル基、オレイル基などを挙げることができる。これらの中で好ましいものはラウリル基、セチル基、オレイル基である。xは5〜40の整数を表す。
【0011】
(B1)及び(B2)のHLBは一般式(1)においてRで示されるアルキル基の疎水性とエチレンオキシド単位の繰り返し数であるxにより決まり、xが大きいほどHLBは大きくなる。
(B1)及び(B2)の例としては、(B1)では、Rは通常メチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、セチル基、オレイル基などが挙げられる。これらの中で好ましいものはラウリル基、セチル基、オレイル基である。xは5〜40の整数であり、好ましくは7〜30の整数である。具体的にはポリオキシエチレンセチルエーテル(x=18、HLB=15.0)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(x=24、HLB=16.1)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(x=11、HLB=14.4)などが挙げられる。
(B2)では、Rは(B1)と同様のものが挙げられる。好ましいものも同様である。xは5〜40の整数であり、好ましくは6〜20の整数である。具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル(x=7、HLB=12.4)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(x=9、HLB=13.6)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(x=7、HLB=10.8)などが挙げられる。
【0012】
無機塩(C)としては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の、無機塩又はハロゲン化物が挙げられる。
アルカリ金属の無機塩又はハロゲン化物としては、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウムが挙げられ、アルカリ土類金属の無機塩又はハロゲン化物としては、塩化カルシウム、硫酸カルシウムが挙げられる。
【0013】
(C)の含有量は、樹脂自体の保存安定性の観点から、ポリウレタン樹脂(A)の重量に基づいて0.5〜5重量%が好ましく、更に好ましくは1〜4重量%である。
【0014】
ポリウレタン樹脂(A)は、例えば、有機ジイソシアネート(a1)、高分子ポリオール(a2)、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)および必要により鎖伸長剤(a4)から形成されるカルボキシル基及び/又はスルホン酸基含有ポリウレタン樹脂(A’)を3級アミン(a5)で中和してなるものである。以下、各成分について説明する。
【0015】
有機ジイソシアネート(a1)としては、従来からポリウレタン製造に使用されているものが使用できる。このような有機ジイソシアネートには、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性体(カーボジイミド変性体、ウレタン変性体、ウレトジオン変性体など)およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0016】
上記芳香族ジイソシアネートの具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(以下TDIと略記)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略記)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0017】
上記脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0018】
上記脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0019】
上記芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0020】
これらのうち好ましいものは芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものはMDI、TDI、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである。
【0021】
高分子ジオール(a2)としては、例えば、ポリアルキレンエーテルジオール(a2−1)、ポリエステルジオール(a2−2)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
高分子ジオール(a2)の数平均分子量は、500〜20,000が好ましく、さらに好ましくは500〜10,000、特に好ましくは1,000〜3,000である。
(a2)の数平均分子量は水酸基価より求める。水酸基価は、JIS K 0070−1992(電位差滴定方法)に規定された方法で測定する。
【0022】
ポリアルキレンエ−テルジオ−ル(a2−1)としては、活性水素原子含有多官能化合物(a6)にアルキレンオキサイド(以下AOと略記)が付加した構造の化合物およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記(a6)としては、2価アルコ―ル、2価フェノ―ル類、ジカルボン酸などが挙げられる。
【0023】
2価アルコールとしては、エチレングリコ―ル、プロピレングリコ―ル、1,3−ブチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ―ル、1,6−ヘキサンジオ―ル、ジエチレングリコ―ル、ネオペンチルグリコ―ル、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼンなどの2価アルコ―ルなどが挙げられる。
2価フェノ―ル類としては、カテコール、ヒドロキノンなどの2価フェノ―ルのほかビスフェノ―ルA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノ―ル類などが挙げられる。
ジカルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸があげられる。
上述した(a6)は2種以上使用することもできる。
【0024】
(a6)に付加するAOとしては、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、1,2−、2,3−もしくは1,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(THF)、スチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド、エピクロルヒドリンなどがあげられる。
AOは単独でも2種以上併用してもよく、後者の場合はブロック付加でもランダム付加でも両者の混合系でもよい。
これらのAOのうちで好ましいものはEO単独、PO単独、THF単独、POおよびEOの併用、POおよび/またはEOとTHFの併用(併用の場合、ランダム、ブロックおよび両者の混合系)である。
活性水素原子含有化合物(a6)へのAOの付加は、通常の方法で行うことができ、無触媒でまたは触媒(アルカリ触媒、アミン系触媒、酸性触媒)の存在下行なわれる。
【0025】
ポリエステルジオール(a2−2)には、低分子ジオ―ルおよび/または分子量1000以下のポリアルキレンエ−テルジオ―ルとジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオ―ル、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオ―ル、低分子ジオール及びその混合物と低級アルコール(メタノールなど)の炭酸ジエステルとを反応させて得られるポリカーボネートジオール及びその共重合体などが含まれる。
【0026】
上記低分子ジオ―ルとしては、エチレングリコ―ル、ジエチレングリコ―ル、プロピレングリコ―ル、ジプロピレングリコ―ル、1,4−、1,3−ブタンジオ―ル、ネオペンチルグリコ―ル、1,6−ヘキサンジオ―ル;環状基を有する低分子ジオ―ル類[たとえば特公昭45−1474号公報記載のもの:ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビスフェノ―ルAのエチレンオキサイド付加物等]、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
また、分子量1,000以下のポリアルキレンエ−テルジオ―ルとしては、ポリテトラメチレンエ−テルグリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0027】
また、ジカルボン酸としては脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸など)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸など)、これらのジカルボン酸のエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステルなど]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられ;ラクトンとしてはε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
ポリエステル化は、通常の方法、たとえば低分子ジオ―ルおよび/または分子量1000以下のポリエ−テルジオ―ルを、ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体[たとえば無水物(無水マレイン酸、無水フタル酸など)、低級エステル(アジピン酸ジメチル、テレフタル酸ジメチルなど)、ハライド等]と、またはその無水物およびアルキレンオキサイド(たとえばエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド)とを反応(縮合)させる、あるいは開始剤(低分子ジオ―ルおよび/または分子量1,000以下のポリエ−テルジオ―ル)にラクトンを付加させることにより製造することができる。
【0029】
これらのポリエステルジオール(a2−2)の具体例としては、ポリエチレンアジペ−トジオール、ポリブチレンアジペ−トジオール、ポリヘキサメチレンアジペ−トジオール、ポリネオペンチルアジペ−トジオール、ポリエチレンプロピレンアジペ−トジオール、ポリエチレンブチレンアジペ−トジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペ−トジオール、ポリジエチレンアジペ−トジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエ−テル)アジペ−トジオール、ポリエチレンアゼレ−トジオール、ポリエチレンセバケ−トジオール、ポリブチレンアゼレ−トジオール、ポリブチレンセバケ−トジオール、ポリカプロラクトンジオ―ル、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0030】
これらの高分子ジオール(a2)の中で好ましいものは、低分子ジオ―ルとジカルボン酸との縮合ポリエステルジオ―ル、ポリカーボネートジオールである。
【0031】
カルボキシル基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)は、ポリウレタン樹脂の分散安定性を保つことを目的として、アニオン性の親水基導入のために使用される成分である。(a3)の具体例としては、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸、α,α−ジメチロール酢酸、α,α−ジメチロールプロピオン酸、α,α−ジメチロール酪酸等のジヒドロキシカルボン酸、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノー2−トルエンスルホン酸等のジアミノスルホン酸などが挙げられる。これらのうち好ましいものはジヒドロキシカルボン酸であり、特に好ましいものはα,α−ジメチロールプロピオン酸およびα,α−ジメチロール酪酸である。
【0032】
(A)の構成成分として、必要により鎖伸長剤および/または鎖停止剤を用いることができる。
該鎖伸長剤としては炭素数2〜10のジアミン類(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミンなど);ポリアミン類(例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど);ヒドラジンもしくはその誘導体(二塩基酸ジヒドラジドたとえばアジピン酸ジヒドラジドなど);炭素数2〜15の多価アルコール類[2価アルコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールなど)、3価アルコール(例えばグリセリン、トリメチロールプロパンなど)、これらの多価アルコールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド)低モル付加物(分子量500未満)]などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、エチレンジアミン、イソホロンジアミンである。
該鎖停止剤としては炭素数1〜8のモノアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、セロソルブ類、カービトール類など)、炭素数1〜10のモノアミン類(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、モノオクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなど)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、モノエチルアミン、モノブチルアミンである。
【0033】
ポリウレタンのカルボキシル基及び/又はスルホン酸基の中和に用いられる3級アミン(a5)としては、炭素数3〜12またはそれ以上の3級モノアミン、例えば▲1▼脂肪族3級モノアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等);▲2▼複素環式3級モノアミン(N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン等);▲3▼不飽和環式3級モノアミン(N−メチルピリジン、N−メチルキノリン等);▲4▼芳香環含有脂肪族3級モノアミン(ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン等);▲5▼芳香族3級モノアミン(N−ジメチルアニリン等)およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これらのうち好ましいものは脂肪族3級モノアミンであり、特に好ましいものはトリエチルアミンである。
【0034】
カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を含有するカルボン酸及び/又はスルホン酸3級アンモニウム塩の基において、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基は上記(a3)から由来するものであり、カルボキシル基とスルホン酸基の合計モル数と3級アミノ基のモル数の比は、好ましくは1.01以上、さらに好ましくは1.05以上であり、好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0035】
本発明におけるポリウレタン樹脂(A)の製造法は通常の方法でよく、特に限定されないが、たとえば下記の方法が例示できる。
▲1▼分子内に活性水素含有基を含まない有機溶剤(アセトン、メチルエチケトン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等)の存在下または非存在下で、前記有機ジイソシアネート(a1)と、高分子ジオール(a2)およびカルボキシレート基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)からなる活性水素成分とを、(NCO/水酸基)当量比が、通常1.05〜2.0、好ましくは1.1〜1.6の範囲でワンショット法または多段法により、通常20℃〜150℃、好ましくは60℃〜110℃で反応させて、末端NCO基含有ウレタンプレポリマーとし、該プレポリマーを3級アミン(a5)で中和後または中和しながら、通常10℃〜60℃、好ましくは20℃〜40℃で、必要により鎖伸長剤(a4)および/または鎖停止剤を含む水と混合して、NCO基がなくなるまで乳化・鎖伸長反応を行い、必要により有機溶剤を溜去する方法。
▲2▼有機溶剤の存在下または不存在下に、有機ジイソシアネート(a1)と高分子ジオール(a2)カルボキシレート基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)とからなる活性水素成分とを、(NCO/水酸基)当量比が、0.5〜0.99の範囲でワンショット法または多段法で反応させ、末端NCO基を含まないウレタンポリマーとし、これを3級アミン(a5)で中和後または中和しながら水と混合後、必要により有機溶剤を溜去する方法。
▲3▼有機溶剤の存在下または不存在下に、有機ジイソシアネート(a1)と高分子ジオール(a2)からなる活性水素成分とを、(NCO/水酸基)当量比が2.0〜1.3の範囲でワンショット法または多段法で反応させ、末端NCO基を含むウレタンポリマーとし、これにカルボキシレート基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)を3級アミン(a5)で中和したものを(NCO/水酸基)当量比が1.5〜1.0の範囲で反応させた後、水と混合後、必要により有機溶剤を溜去する方法。
上記の方法のうち▲1▼の方法が好ましい。
【0036】
ポリウレタン樹脂の水性分散体の製造法は通常の方法でよく、例えば、ポリウレタン樹脂(A)に(B1)、(B2)および(C)の水溶液を加え、攪拌混合することにより製造することができる。
【0037】
本発明の感熱凝固温度は、以下のように測定する。
試験管(内径18mm)に固形分が20%となるように希釈した水性分散体を10g秤取し、90℃の熱水浴中で無攪拌の状態で10℃/分の速度で昇温し、該水性分散体が流動性を失いゲル状物となったときの、該水性分散体の温度を感熱凝固温度とする。
ポリウレタン樹脂(A)水性分散体の感熱凝固温度は、樹脂自体の保存安定性の観点から40℃以上が好ましく、マイグレーションの観点から80℃以下が好ましい。さらに好ましくは50〜70℃である。
本発明において、固形分とは、水性分散体に基づいて、該水性分散体中のポリウレタン樹脂(A)および必要により加えられたその他の添加剤(揮発性物質は除く)の合計含有率を示す。
本発明の水性分散体の固形分は、好ましくは5%〜40%、さらに好ましくは10〜30%である。
【0038】
本発明の平均分散粒子径は、以下のように測定する。
電気泳動光散乱光度計(例えば大塚電子株式会社製、ELS−800型)を用い、分散媒を水として平均粒子径を測定する。
ポリウレタン樹脂(A)水性分散体の平均分散粒子径はマイグレーションの観点から0.1μm以上が好ましく、樹脂自体の安定性の観点から2μm以下が好ましい。さらに好ましくは0.2μm〜1μmである。
【0039】
本発明のポリウレタン樹脂には必要により酸化チタンなどの着色剤、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)や酸化防止剤[4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−1−ブチルフェノール)などのヒンダートフェノール;トリフェニルホスファイト、トリクロルエチルホスファイトなどの有機ホスファイトなど]などの各種安定剤、架橋剤(ポリエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物など)、無機充填剤(炭酸カルシウムなど)および公知の凝固調整剤[高級アルコール(特公昭42−22719号公報)、結晶性有機化合物(特公昭56−41652号公報)、疎水性ノニオン系界面活性剤(特公昭45−39634号および特公昭45−39635号公報)]などを添加させることができる。これら各添加剤の合計量はポリウレタン樹脂100重量部に対して5重量部以下が好ましい。
【0040】
本発明の皮革様シート材料の製造において使用される繊維材料基体としては、従来から繊維材料基体の製造に用いられている不織布や編織布が全て特に制限無く用いられる。不織布としては、補強用等の目的で編織布等が内部または表面に積層されたものでも良い。
構成繊維としては、天然繊維、化学繊維のいずれでも良く、天然繊維としては綿、羊毛、絹、石綿等、化学繊維としてはレーヨン、テンセルなどの再生繊維、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリルなどの合成繊維が挙げられる。またこれらを混合使用した繊維を適宜用いることも可能である。
【0041】
本発明のポリウレタン樹脂(A)水性分散体の繊維材料基体への付与は、含浸または塗布により行われ、通常行われる方法であればいずれでも良い。例えば繊維材料基体に水性分散体を含浸し、マングル等で搾ってピックアップを調製する方法、ナイフコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング等が挙げられる。
該水性分散体を付与された繊維材料基体は、必要により、水洗等の処理が施される。
【0042】
ポリウレタン樹脂(A)水性分散体の凝固の方法としては、例えば、
(1)ポリウレタン樹脂(A)水性分散体を付与した繊維材料基体に、加熱水蒸気を吹き付けて凝固する方法、
(2)ポリウレタン樹脂(A)水性分散体を付与した繊維材料基体を、乾燥装置中にそのまま導入して加熱凝固すると共に乾燥する方法などを挙げることができる。
【0043】
本発明で使用されるポリウレタン樹脂(A)水性分散体を凝固させる温度は、ポリウレタン樹脂の凝固を速やかに完了させることでマイグレーションを防止できる点から50〜150℃が好ましく、さらに好ましくは60〜140℃である。上記(1)の凝固方法を用いた場合は、ポリウレタン樹脂(A)水性分散体の加熱凝固後に、加熱乾燥または風乾を行って、皮革様シート状物中に含まれる水分を除去することが好ましい。
乾燥後の繊維材料基体への付着重量は、好ましくは繊維材料基体100重量部に対し3〜150重量部、さらに好ましくは20〜120重量部である。
【0044】
本発明の皮革様シート材料は、適度な柔軟性を有し天然皮革に近似した良好な風合いを有しているので、シート材料として極めて有用である。
本発明の皮革様シート材料は、種々の用途、例えば、マットレス、鞄内張り材料、衣料、靴用芯材、クッション地、自動車内装材、壁材などに好適に使用することができる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、「部」は重量部を示す。
【0046】
製造例1
温度計および攪拌機を備えた密閉反応槽に、ポリブチレンアジペートジオール(数平均分子量2000)330部、α,α−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)19.7部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート102部およびアセトン450部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で6時間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマーを得た。 得られた該アセトン溶液を40℃に冷却してトリエチルアミン15.6部を加えた。次にエチレンジアミン1.0部を水30部に溶解したものを該アセトン溶液に加え、乳化・鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、固形分40%のウレタン樹脂の水性分散体を得た。
得られたポリウレタン樹脂中のカルボキシレート基の含有量は該ポリウレタン樹脂に基づいて1.5重量%であった。
次いで該ポリウレタン樹脂100部に対してポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB=16.1、エチレンオキサイドの重合度=24)が5部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=12.4、エチレンオキサイドの重合度=7)が5部、硫酸ナトリウムが3部配合されるよう予め添加した水で希釈し、固形分が20%となるよう調整した水性分散体(以下、水性分散体(1)と称する)を得た。水性分散体(1)の感熱凝固温度は65℃、平均分散粒子径は0.18μmであった。
【0047】
製造例2
温度計および攪拌機を備えた密閉反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(数平均分子量2000)330部、DMPA10.5部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート80部およびアセトン450部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で6時間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマーを得た。
得られた該アセトン溶液を40℃に冷却してトリエチルアミン7.99部を加えた。次にエチレンジアミン1.0部を水30部に溶解したものを該アセトン溶液に加え、乳化・鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、固形分40%のウレタン樹脂の水性分散体を得た。
得られたポリウレタン樹脂中のカルボキシレート基の含有量は該ポリウレタン樹脂に基づいて0.8重量%であった。次いで該ポリウレタン樹脂100部に対してポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=14.4、エチレンオキサイドの重合度=11)が8部、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB=10.8、エチレンオキサイドの重合度=7)が4部、塩化カルシウムが2部配合されるよう予め添加した水で希釈し、固形分が20%となるよう調整した水性分散体(以下、水性分散体(2)と称する)を得た。水性分散体(2)の感熱凝固温度は47℃、平均分散粒子径は0.37μmであった。
【0048】
製造例3
温度計および攪拌機を備えた密閉反応槽に、ポリヘキサメチレンアジペ−トジオール(数平均分子量2000)216部、DMPA35.5部、TDI81部、およびアセトン230部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で6時間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマーを得た。
得られた該アセトン溶液を40℃に冷却してトリエチルアミン27.3部を加えた。次にエチレンジアミン1.3部を水30部に溶解したものを該アセトン溶液に加え、乳化・鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、固形分40%のウレタン樹脂の水性分散体を得た。
得られたポリウレタン樹脂中のカルボキシレート基の含有量は該ポリウレタン樹脂に基づいて3.2重量%であった。次いで該ウレタン樹脂100部に対してポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB=15.0、エチレンオキサイドの重合度=18)が8部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=13.6、エチレンオキサイドの重合度=9)が6部、塩化カルシウムが1部配合されるよう予め添加した水で希釈し、固形分が20%となるよう調整した水性分散体(以下、水性分散体(3)と称する)を得た。水性分散体(3)の感熱凝固温度は50℃、平均分散粒子径は0.12μmであった。
【0049】
比較製造例1
温度計および攪拌機を備えた密閉反応槽に、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(数平均分子量2000)330部、DMPA2.5部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート60部およびアセトン450部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で6時間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマーを得た。
得られた該アセトン溶液を40℃に冷却してトリエチルアミン2.0部を加えた。次にエチレンジアミン1.0部を水30部に溶解したものを該アセトン溶液に加え、乳化・鎖伸長反応をさせた後、減圧下でアセトンを留去し、水で濃度調整して、固形分40%のウレタン樹脂の水性分散体を得た。
得られたポリウレタン樹脂中のカルボキシレート基の含有量は該ポリウレタン樹脂に基づいて0.2重量%であった。次いで該ポリウレタン樹脂100部に対してポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB=15.1、エチレンオキサイドの重合度=18)が3部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB=12.4、エチレンオキサイドの重合度=7)が5部、塩化カルシウムが1部配合されるよう予め添加した水で希釈し、固形分が20%となるよう調整した水性分散体(以下、水性分散体(4)と称する)を得た。水性分散体(4)の感熱凝固温度は38℃であり、室温で放置しておくと、ゲル状物となっており、以後の皮革様シートの作製はできなかった。
【0050】
比較製造例2
ノニオン性界面活性剤、無機塩類の代わりに感温ゲル化剤として、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド、数平均分子量20万)をポリウレタン樹脂に対して2部使用すること以外は、製造例3と同様に調整した水性分散体を得た。(以下、水性分散体(5)と称する)水性分散体(5)の感熱凝固温度は85℃、平均分散粒子径は1.21μmであった。
【0051】
比較製造例3
ノニオン性界面活性剤(B1)として、HLBが18.5のポリオキシエチレンセチルエーテル(エチレンオキサイドの重合度=60)を使用すること以外は製造例1と同様に調整した水性分散体を得た。(以下、水性分散体(6)と称する)水性分散体(6)は90℃まで加熱したが、全くゲル状物はなかった。
【0052】
比較製造例4
ノニオン界面活性剤(B2)として、HLBが9.0のポリエオキシチレンオレイルエーテル(エチレンオキサイドの重合度=5)を使用すること以外は製造例2と同様に調整した水性分散体を得た。(以下、水性分散体(7)と称する)水性分散体(7)は配合直後に室温下で凝固物が発生し、以後の皮革様シートの作製はできなかった。
【0053】
比較製造例5
塩化カルシウムを加えないこと以外は製造例2と同様に調整した水性分散体を得た。(以下、水性分散体(8)と称する)水性分散体(8)は90℃まで加熱したが、全くゲル状物はなかった。
【0054】
<不織布の製造>
ポリエチレンテレフタレート短繊維から積層シートを作り、このシートを280本/cm2の打込数となるようにニードルパンチした後乾燥し、重量380g/m2、見掛密度0.18g/cm2の不織布を得た。
【0055】
実施例1〜3、比較例1〜5
上記不織布に水性分散体(1)〜(8)を含浸し[水性分散体(4)及び(7)は不可]、樹脂の付着率が不織布重量に対して約50重量%となるようにマングルで絞った後、100℃の飽和水蒸気中で2分感熱凝固させ、更に100℃の熱風乾燥機で20分乾燥することによりシートを得た。
【0056】
<性能試験>
実施例1〜3および比較例1〜5で製造した皮革様シートについて、下記試験方法により樹脂の付着率、マイグレーションの有無、風合い、通気性を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
[樹脂の付着率]
乾燥後の皮革様シートにおいて次式により算出した。
100×[(皮革様シートの重量)−(繊維材料基体の重量)]/(繊維材料基体の重量)(単位重量%)
[マイグレーションの有無]
シートの断面を電子顕微鏡(日立製作所製、S−800)で観察し、表面部分と中央部分のポリウレタン樹脂の基体への付着状態を調べ、ポリウレタン樹脂が繊維材料基体中に均一に分布しており、マイグレーションが発生していないものを「○」、ポリウレタン樹脂が繊維材料基体表面部分に偏在しており、マイグレーションが発生しているものを「×」と判定した。
[風合い]
シートが天然皮革様の風合いを有するものである場合を「○」と判定し、天然皮革に比べて柔軟性がやや劣るものを「△」、柔軟性不足のためシートが天然皮革様の風合いを呈さない場合を「×」と判定した。判定は手の触感による官能試験で行った。
[通気性]
ガーレのデンソメータを使用して、JIS P8117の方法に準じて、50mlの空気が本発明の皮革様シートを通過するに要する時間(秒)を測定した。
[多孔性]
シートの断面の電子顕微鏡写真により充填されたウレタン樹脂の表面が多孔質を形成しているか否かを目視観察し、多孔質を形成しているものを「○」、多孔質を形成していないものを「×」とした。
【0059】
【発明の効果】本発明の皮革様シート材料は、水性分散体を繊維材料基体に付与し感熱凝固する際、速やかな感熱凝固性を有しているため、マイグレーションが無く、ウレタン樹脂層が多孔質を形成しているため、適度な柔軟性を有し天然皮革に近似した良好な風合いを有している。本発明の皮革様シート材料は、上記効果を奏することから、種々の用途、例えば、マットレス、鞄内張り材料、衣料、靴用芯材、クッション地、自動車内装材、壁材などに有用である。
Claims (8)
- ポリウレタン樹脂の水性分散体を繊維材料基体に付与し感熱凝固させてなる皮革様シート材料であって、ポリウレタン樹脂がカルボキシレート基(−COO−)及び/又はスルホン酸アニオン基(−SO3 −)をポリウレタン樹脂の重量に基づいて0.3重量%以上6重量%以下含有するアニオン性ポリウレタン樹脂(A)からなり、該水性分散体が14以上18以下の親水性親油性バランス(HLB)を有するノニオン性界面活性剤(B1)をポリウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1重量%以上10重量%以下、10以上14未満のHLBを有するノニオン性界面活性剤(B2)を1重量%以上10重量%以下、及び無機塩(C)を含有してなることを特徴とする皮革様シート材料。
- ポリウレタン樹脂(A)が、有機ジイソシアネート(a1)、高分子ジオール(a2)、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)から形成されるアニオン性ポリウレタン樹脂(A’)を3級アミン(a5)で中和してなる請求項1記載のシート材料。
- ポリウレタン樹脂(A)が、有機ジイソシアネート(a1)、高分子ジオール(a2)、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基含有活性水素化合物(a3)およびさらに鎖伸長剤(a4)から形成されるアニオン性ポリウレタン樹脂(A’’)を3級アミン(a5)で中和してなる、請求項1又は2記載のシート材料。
- (C)が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の無機塩又はハロゲン化物である請求項1〜3いずれか記載のシート材料。
- 該水性分散体が40℃以上80℃以下の感熱凝固温度を有する請求項1〜4いずれか記載のシート材料。
- 該水性分散体が0.1μm以上2μm以下の平均分散粒子径を有する請求項1〜5いずれか記載のシート材料。
- ポリウレタン樹脂の水性分散体を繊維材料基体に付与し感熱凝固させて皮革様シート材料を製造する方法において、ポリウレタン樹脂としてポリウレタン樹脂の重量に基づいて0.3重量%以上6重量%未満のカルボキシレート基及び/又はスルホン酸アニオン基を有するアニオン性ポリウレタン樹脂(A)を用いて水中で自己乳化させ、、該水性分散体中に14以上18以下の親水性親油性バランス(HLB)を有するノニオン性界面活性剤(B1)をポリウレタン樹脂(A)の重量に基づいて1重量%以上10重量%以下、10以上14未満のHLBを有するノニオン性界面活性剤(B2)を1重量%以上10重量%以下、及び無機塩(C)を加えて感熱凝固させることを特徴とする、皮革様シート材料の製造方法。
- 感熱凝固を50℃以上150℃以下の温度で行う請求項7記載の製造方法。
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