JP2004141910A - 鉛フリーはんだ合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、Sb0.01〜1質量%、Ni0.01〜0.5質量%、残部Snからなる鉛フリーはんだ合金であり、さらに該合金にAgおよび/またはCuを添加したり、これらにP、Ge、Ga、Coを添加したりした鉛フリーはんだである。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛を含まないはんだ合金、特にはんだバンプのように微小なはんだ付け部を形成するに適した鉛フリーはんだ合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にBGA(Ball Grid Arrey)、CSP(Chip Size Package)、TAB(Tape AutomatedBonding)、MCM(Multi Chip Module)等の多機能部品(以下、BGA等という)をプリント基板に実装するには、はんだバンプではんだ付けすることにより行っている。つまりBGA等では予め電極にはんだバンプを形成しておき、プリント基板への実装時、該はんだバンプをプリント基板のはんだ付け部に当設してからリフロー炉のような加熱装置で加熱してはんだバンプを溶融させる。するとBGA等に形成されたはんだバンプがBGA等の電極とプリント基板はんだ付け部の両者間をはんだ付けして導通させるようになる。
【0003】
またQFP、SOIC等のウエハーを搭載した電子部品では、ウエハーの電極とウエハーを搭載するワークの電極間を極細の金線で接続するというワイヤーボンディングを行っている。現在のワイヤーボンディング技術は接続作業が非常に高速であり、一箇所の接続が0.1秒以下という短時間で行えるようになっている。しかしながらワイヤーボンディングは如何に高速作業が行えるといえども、電極一箇所毎に金線の接続を行うため、電極が多数設置された電子部品では全ての電極を接続するのに多少の時間を必要としていた。また金線は貴金属であるため材料自体が高価であるばかりでなく、数十μmの極細線に加工することから、その加工に多大な手間ががかかって、さらに高価となるものであった。そしてまたワイヤーボンディングは、電極がワークの中央部に多数設置されたものに対しては金線同士が接触してしまうため接続が不可能であった。
【0004】
そこで近時では、ウエハーとワークとの導通を金線を使わずに互いの電極同士を直接接続するというDCA(Direct Chip Attachment)方式が採り入れられるようになってきた。このDCA方式とは、ウエハーの電極に予めはんだバンプを形成しておき、ウエハーをワークに実装するときに、ワークの電極にはんだバンプを当設して、該はんだバンプを溶融させることにより両者間で導通を取るようにしたものである。DCA方式は、金線を使わないため安価に製造でき、しかも一度の作業で全ての電極の接続ができるため生産性にも優れている。従って、最近ではDCA方式での電極の接続に、はんだバンプによる接続が多く採用されるようになってきた。このはんだバンプによる接続は、電極がワークの中央部に多数設置されていても、ワークと搭載物の電極を向かい合わせにして、この間をはんだバンプで接続するため、ワイヤーボンディングのように接続物同士が接触することは決して起こらない。
【0005】
BGA等やウエハーに、はんだバンプを形成する方法としては、はんだボールやソルダペーストを使用するのが一般的である。
【0006】
ところで従来のバンプ形成用はんだ合金は、Pb−Sn系のはんだ合金であり、Pb−Sn系はんだ合金は前述BGA等やウエハーのはんだバンプ用としてのはんだボール、或いはソルダペーストに多く使用されていた。このPb−Sn系はんだ合金は、はんだ付け性に優れているためワークとプリント基板のはんだ付けを行ったときに、はんだ付け不良の発生が少ないという信頼性に優れたはんだ付けが行えるものである。
【0007】
ところでPb−Sn系はんだ合金ではんだ付けされた電子機器が古くなって使い勝手が悪くなったり故障したりした場合、性能のアップや修理等をせず、ほとんどが廃棄処分されていた。廃棄処分される電子機器の構成材料のうちフレームの金属、ケースのプラスチック、ディスプレーのガラス等は回収して再使用されるが、プリント基板は再使用ができないため埋め立て処分されていた。なぜならばプリント基板は、樹脂と銅箔が接着されており、また銅箔にははんだが金属的に接合されていて、それぞれを分離することができないからである。この埋め立て処分されたプリント基板に地中に染み込んだ酸性雨が接触すると、はんだ中のPbが酸性雨により溶け出し、Pb成分を含んだ酸性雨がさらに地中に染み込んで地下水に混入する。このPb成分を含んだ地下水を人や家畜が長年月にわたって飲用すると体内にPbが蓄積され、ついにはPb中毒を起こすとされている。そのため世界規模でPbの使用が規制されるようになってきており、Pbの含まない所謂「鉛フリーはんだ」が使用されるようになってきた。
【0008】
鉛フリーはんだとは、Snを主成分として、それにAg、Cu、Bi、In、Zn、Ni、Cr、P、Ge、Ga等を適宜添加したものである。
【0009】
従来から鉛フリーはんだとしてはSn主成分のSn−Cu、Sn−Sb、Sn−Bi、Sn−Zn、Sn−Ag等の二元合金や該二元合金に他の元素を添加した多元系の鉛フリーはんだがある。一般にSn主成分の鉛フリーはんだは、はんだ付け性が従来のPb−Snはんだに比べて劣るが、特に二元および多元系のSn−Cu系とSn−Sb系は、さらに劣っている。またSn−Bi系は、はんだが脆くなることから、はんだ付け部に衝撃が加わると剥離しやすいばかりでなく、リードのメッキから少量のPbが混入するとリフトオフが発生することがある。そしてSn−Zn系はZnが卑(ベース)な金属であることからソルダペーストにしたときに経時変化が起って印刷塗布ができなくなったり、はんだ付け後にはんだ付け部との間で電気的な腐食を起こしたりする問題がある。Sn主成分の鉛フリーはんだとしてはSn−Ag系が他の二元系鉛フリーはんだに比べて、はんだ付け性、脆さ、経時変化、等に優れている。
【0010】
ところで携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラなどの所謂モバイル電子機器では、電子機器内部の電子部品を接合したはんだ付け部に耐衝撃性が求められるようになってきた。つまりモバイル電子機器は、衝撃を受けることが多く、この衝撃ではんだ付け部の電子機器が剥離し、電子機器としての機能を果たせなくなってしまうからである。例えば携帯電話では、ワイシャツのポケットに入れておいたものが、前屈みになったときにポケットから滑り落ちてしまったり、最近のメール機能が備わった携帯電話では、片手での操作中に落としたりする。またノート型パソコンは、鞄の中に入れて運ぶときに鞄を不注意で勢いよく机等に置いたり、ビデオカメラやデジタルカメラは、使用中に落としたりすることが多い。そのためモバイル電子機器に使用するはんだは、優れた耐衝撃性を有するものが要求されるようになってきている。
【0011】
また電子機器では、使用時に回路に電気を通すと、コイル、パワートランジスター、抵抗等の部品から熱を発し、電子機器のケース内が昇温する。そして電子機器の使用を止めるために通電を切ると、部品からの発熱がなくなってケース内は室温に戻る。このように電子機器の使用・不使用を行うたびに、ケース内が昇温と降温を繰り返すというヒートサイクルが起こる。このヒートサイクルは、当然はんだ付け部にもおよび、はんだと電子部品及びプリント基板は熱膨張・収縮を起こす。ところが、プリント基板と電子部品では熱膨張率に差異があるため、ヒートサイクルに曝された場合、はんだ付け部に熱応力が加わる。このため、はんだ付け部が金属疲労を起こして、ついにはヒビ割れや破壊が生じる。そこで電子機器に使用するはんだは、前述の耐衝撃性ばかりでなく耐ヒートサイクル性も有していなければならない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらSn−Ag系鉛フリーはんだは、耐衝撃性、特にはんだ付け面積の小さいはんだ付け部での耐衝撃性が充分に強いとはいえなかった。つまり最近の電子機器は高性能・小型化されてきているから、それに組み込まれる電子部品も小型で高機能化されたきており、BGA等は電極数が増えているにもかかわらず、全体の大きさは逆に小さくなっている。このように小さくなった電子部品の電極に形成するはんだバンプも小さくなっているが、小さなはんだ付け部のはんだが耐衝撃性に弱いと、電子機器が落下のような衝撃を受けたときに、はんだ付け部が簡単に剥離して、電子機器としての機能が果たせなくなってしまう。
【0013】
従来のSn−Ag系鉛フリーはんだは、従来のSn−Pb系はんだ合金よりも耐ヒートサイクル性に優れているが、前述のように微小バンプのようなはんだ付け部においては、十分とはいえなかった。本発明は、微小なはんだ付け部においても、十分な耐衝撃性と耐ヒートサイクル性を有した鉛フリーはんだ合金を提供することにある。
【0014】
本発明者らは、微小なはんだ付け部に対して、Sn主成分の鉛フリーはんだに耐衝撃と耐ヒートサイクルを向上させることについて鋭意研究を重ねた結果、それぞれに効果のある成分を見いだし、本発明を完成させた。
【0015】
本発明は、Sb0.01〜1質量%、Ni0.01〜0.5質量%、残部Snからなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金であり、さらにこれにAgが0.01〜5質量%および/またはCuが0.01〜2質量%添加されており、さらにまたこれらにP、Ge、Ga、Coから選ばれた少なくとも1種が0.0005〜0.1質量%添加されていることを特徴とする鉛フリーはんだ合金である。
【0016】
【発明の実施の形態】
Sn主成分の鉛フリーはんだにおいて、Sbは耐衝撃性に効果があり、その添加量が0.001質量%よりも少ないと、耐衝撃性改善の効果は現れず、しかるに1質量%を超えて添加すると、硬くなって却って耐衝撃性を損なうようになる。
【0017】
Niは、耐ヒートサイクル性に効果があり、Niの添加量が0.01質量%よりも少ないと耐ヒートサイクル性向上の効果がなく、0.5質量%よりも多くなると、融点が高くなりすぎて、はんだ付け性に影響が出てくる。
【0018】
Sn−Sb−Ni鉛フリーはんだにおいて、さらにCuを添加すると、耐衝撃性をより向上させることができる。Sn−Sb−Ni鉛フリーはんだに添加するCuは、0.01〜2質量%であり、0.01質量%より少ないと耐衝撃性向上の効果が現れず、2質量%よりも多くなると、液相線温度が急激に高くなって、はんだ付け性を害するようになる。
【0019】
またSn−Sb−Ni鉛フリーはんだにおいて、さらにAgを添加すると、耐ヒートサイクル性をより向上させることができる。Sn−Sb−Ni鉛フリーはんだに添加するAgは、0.01〜5質量%であり、0.01質量%より少ないと耐ヒートサイクル性向上の効果が現れず、5質量%よりも多くなっても、それ以上の効果は期待できないばかりでなく、高価なAgの大量添加は経済的に好ましいものではない。
【0020】
Sn−Sb−Ni鉛フリーはんだ、Sn−Sb−Ni鉛フリーはんだにCuおよび/またはAgを添加したものにP、Ge、Ga、Coから選ばれた少なくとも1種を0.0005〜0.1質量%添加することもできる。これらの元素は、鉛フリーはんだの黄変防止に効果がある。この黄変は、鉛フリーはんだを用いたBGA等の電子部品に対して高温放置試験を行ったときに発生する。BGA等の高温放置試験とは、BGA等を組み込んだ電子機器が使用中に高温雰囲気中に置かれた場合でも、BGA等が熱影響で機能劣化しないことを確認する試験である。この高温放置試験は、電子部品メーカーや電子機器のセットメーカーによって条件が異なるが、通常125℃の高温雰囲気中に12時間放置する。この高温放置試験で、はんだバンプ表面が黄変すると、はんだバンプの検査を画像処理によって行うときに、正確な検査ができず、エラーの原因となるものである。P、Ge、Ga、Coは黄変防止に効果があり、黄変防止にはこれらの少なくとも1種を0.0005質量%添加する必要があり、0.1質量%よりも多く添加すると、はんだ付け性を悪くしたり、融点を上昇させて、はんだ付け時に電子部品に熱影響を与えたりする。
【0021】
なお、本発明は、微小はんだ付け部における耐衝撃性の向上と耐ヒートサイクル性の向上を目的としたものであり、この目的に適した用途としてははんだバンプであるが、一般のはんだ付けに使用しても耐衝撃性と耐ヒートサイクル性向上に効果を発揮する。はんだバンプ形成には、はんだボールやソルダペーストとして使用することが多い。即ちBGA等には、はんだボールをBGA等の基板に搭載し、該はんだボールを溶融させることによりはんだバンプを形成し、ウエハーには、ソルダペーストをウエハー上に塗布し、該ソルダペーストを溶融させることによりはんだバンプを形成するものである。
【0022】
【実施例】
本発明の鉛フリーはんだ合金の実施例と比較例を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1の特性試験の説明
耐衝撃:はんだバンプではんだ付けしたCSP基板とプリント基板間に落下による衝撃を与えて、はんだ付け部が剥離するまでの落下回数を測定する。
(衝撃試験の工程は以下のとおりである)
▲1▼大きさ10×10mm、電極150個のCSP用基板に、ソルダペーストを印刷し、
直径0.3mmのはんだボールを載置する。
▲2▼はんだボールが載置されたCSP用基板をリフロー炉で加熱して電極にはんだバンプを形成する。
▲3▼はんだバンプが形成されたCSP用基板を30×120mmのガラエポのプリント基板の中央に搭載し、リフロー炉で加熱してCSP用基板をプリント基板にはんだ付けする。
▲4▼CSP用基板がはんだ付けされたプリント基板の両端を、外形40×200×80mmのステンレス製で下部中央に三角形の衝突部が設けられた枠状治具上に治具と間隔をあけて固定する。
▲5▼治具を500mmの高さから落下させてプリント基板に衝撃を与える。このとき両端を治具に固定されたプリント基板は、中央部が振動し、プリント基板とCSP用基板のはんだ付け部は、この振動による衝撃を受ける。この落下試験でCSP用基板が剥離するまでの落下回数を測定する。
【0025】
耐ヒートサイクル:電子部品を実装したプリント基板にヒートサイクルをかけて、はんだ付け部の破壊が発生するまでの回数を測定する。
(ヒートサイクル試験の工程は以下のとおりである)
▲1▼大きさ10×10mm、電極150個のCSP用基板に、ソルダペーストを印刷し、直径0.3mmのはんだボールを載置する。
▲2▼はんだボールが載置されたCSP用基板をリフロー炉で加熱して電極にはんだバンプを形成する。
▲3▼はんだバンプが形成されたCSP用基板を120×140mmのガラエポのプリント基板に搭載し、リフロー炉で加熱してCSP用基板をプリント基板にはんだ付けする。
▲4▼CSP用基板がはんだ付けされたプリント基板を、−40℃に10分間、+125℃に10分間それぞれ曝すというヒートサイクルをかけて、はんだ付け部にヒビ割れや破壊が発生するまでの回数を測定する。
【0026】
変色試験(黄変):高温加熱後のはんだ表面の黄変を目視で観察する。
(黄変試験の工程は以下のとおりである)
▲1▼CSP用基板に直径0.3mmのはんだボールを載置する。
▲2▼CSP用基板に載置したはんだボールをリフロー炉で溶融してはんだバンプを形成する。
▲3▼はんだバンプが形成されたCSP用基板を150℃の恒温槽中に24時間放置後、目視にて黄変状態を観察する。黄変がほんとんどないものを無、黄変が顕著なものを有とする。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の鉛フリーはんだ合金は、バンプ形成後の耐衝撃性や耐ヒートサイクル性が従来のSn−Ag系鉛フリーはんだ合金よりも優れているため、電子機器の使用中や搬送中に誤って落としてもはんだ付け部が剥離しにくく、また長期間に渡って電子機器の使用・不使用を繰り返しても、ヒートサイクルではんだ付け部が剥離しにくいという信頼性に富むものである。また本発明の鉛フリーはんだ合金は、はんだバンプ形成後、高温試験を行っても黄変しないことから、はんだバンプの画像検査時にエラーが発生せず、検査性においても優れた効果を奏するものである。
Claims (3)
- Sb0.01〜1質量%、Ni0.01〜0.5質量%、残部Snからなることを特徴とする鉛フリーはんだ合金。
- さらにAgが0.01〜5質量%および/またはCuが0.01〜2質量%添加されていることを特徴とする請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
- さらにP、Ge、Ga、Coから選ばれた少なくとも1種が0.0005〜0.1質量%添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鉛フリーはんだ合金。
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