JP2004123424A - 自動車フロント合わせガラス用中間膜および自動車フロント合わせガラス - Google Patents
自動車フロント合わせガラス用中間膜および自動車フロント合わせガラス Download PDFInfo
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Abstract
【課題】優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現する下辺部を有し、自動車のフロントガラス用の合わせガラスとされた際に、路面からの照り返しによる眩しさを防止したり、ダッシュボードの光劣化、熱劣化、フロントガラスへの映り込み等を防止したり、車内に置かれた物体を隠蔽したり、車内に置かれた物体の光劣化や熱劣化を防止したり、乗員からワイパーを見えにくくすることが可能であって、かつ、デザイン性や意匠性も向上した合わせガラスを得ることができる自動車フロント合わせガラス用中間膜、および、この中間膜を用いた自動車フロント合わせガラスを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有している自動車フロント合わせガラス用中間膜、熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール系樹脂である上記中間膜、および、少なくとも一対のガラス板の間に上記中間膜を介在させ一体化させてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有している自動車フロント合わせガラス。
【選択図】 なし
【解決手段】熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有している自動車フロント合わせガラス用中間膜、熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール系樹脂である上記中間膜、および、少なくとも一対のガラス板の間に上記中間膜を介在させ一体化させてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有している自動車フロント合わせガラス。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車フロント合わせガラス用中間膜およびその自動車フロント合わせガラス用中間膜を用いた自動車フロント合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車などの車両や建築物等の窓ガラス用として広く使用されている。このような合わせガラスとしては、例えば、可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルアセタール系樹脂のような熱可塑性樹脂が製膜されてなる合わせガラス用中間膜を少なくとも一対のガラス板の間に介在させ、一体化させてなるものが挙げられる。
【0003】
熱可塑性樹脂、とりわけ可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルアセタール系樹脂からなる合わせガラス用中間膜は、優れた透明性、優れた耐候性、強靱な強度およびガラス板に対する適正な接着力等を兼備しており、このような合わせガラス用中間膜を用いて作製される合わせガラスは、特に自動車などの車両用や建築物用の窓ガラスとして好適である。
【0004】
自動車などの車両用や建築物用の窓ガラスに用いられる合わせガラスには、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能に優れていることが要求される。
【0005】
また、自動車などの車両用の窓ガラス、特にフロントガラスに用いられる合わせガラスには、太陽光線や屋外照明等により運転中のドライバーの目が眩しくなるのを防止するために、優れた防眩性を有していることが要求される。
【0006】
上記防眩性を有する合わせガラスとして、従来より、上辺部に可視光線透過率が40%以下程度の着色帯を有する合わせガラス用中間膜、いわゆるShadedFilm(SDF)を用いて作製した、上辺部に可視光線透過率が40%以下程度の着色帯を有する合わせガラスが、自動車などの車両の窓ガラス用、特にフロントガラス用として用いられている。
【0007】
ところが、従来のSDFを用いて作製した合わせガラスは、可視光線透過率が40%以下程度の着色帯を上辺部にのみしか有していないため、太陽光線や屋外照明等により運転中のドライバーの目が眩しくなるのを防止することは可能であるものの、例えば、路面からの照り返しによる眩しさを防止することは難しいという問題点や、ダッシュボードの光劣化、熱劣化、フロントガラスへの映り込み等を防止したり、車内に置かれた物体を隠蔽(目隠し)したり、車内に置かれた物体の光劣化や熱劣化を防止したりすることは難しいという問題点がある。また、乗員からワイパーが見えてしまうという美観上の問題点もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現する下辺部を有し、したがって自動車のフロントガラス用の合わせガラスとされた際に、路面からの照り返しによる眩しさを防止したり、ダッシュボードの光劣化、熱劣化、フロントガラスへの映り込み等を防止したり、車内に置かれた物体を隠蔽したり、車内に置かれた物体の光劣化や熱劣化を防止したり、乗員からワイパーを見えにくくすることが可能であって、かつ、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の自動車フロント合わせガラスとして必要な諸性能に優れ、しかもデザイン性や意匠性も向上した自動車フロント合わせガラスを得ることができる自動車フロント合わせガラス用中間膜、および、この自動車フロント合わせガラス用中間膜を用いた自動車フロント合わせガラスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)による自動車フロント合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明による自動車フロント合わせガラス用中間膜は、上記請求項1に記載の自動車フロント合わせガラス用中間膜において、熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール系樹脂であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明(本発明)による自動車フロント合わせガラスは、少なくとも一対のガラス板の間に上記請求項1または請求項2に記載の自動車フロント合わせガラス用中間膜を介在させ一体化させてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の自動車フロント合わせガラス用中間膜(以下、単に「中間膜」と略記する)は、熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有している。なお、本発明で言う可視光線とは、波長範囲が380〜780nmの光線を意味する。また、本発明で言う可視光線透過率とは、JIS R−3212「自動車用安全ガラス試験方法」に準拠して測定される可視光線透過率を意味する。
【0013】
上記着色帯の可視光線透過率が30%を超えると、得られる自動車フロント合わせガラス(以下、単に「合わせガラス」と略記する)の防眩性、遮光性および遮熱性が不十分となって、本発明の課題を達成することができなくなる。
【0014】
上記着色帯を形成するために用いられる着色顔料としては、プラスチック用として使用できるものであって、上記着色帯の可視光線透過率が30%以下となるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、アンスラキノン系、イソインドリノ系などの有機着色顔料や、酸化物、水酸化物、硫化物、クロム酸、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、砒酸塩、フェロシアン化物、炭素、金属粉などの無機着色顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0015】
上記着色顔料の添加量は、上記着色帯の可視光線透過率が30%以下となるものであるかぎり、目的の色調に合わせて任意で良く、特に限定されるものではないが、一般的に着色顔料は後述する可塑剤中に分散させた状態で添加するので、可塑剤量の0.4〜10重量%であることが好ましい。
【0016】
上記着色帯の色調は、可視光線透過率が30%以下となるものであれば良く、特に限定されるものではないが、なかでも、様々な内装色や外装色と合うことから、グレー系やブルー系であることが好ましい。また、上記着色帯は、透明であっても良いし、不透明であっても良く、透明部分と不透明部分とが混在していても良い。
【0017】
本発明の中間膜は、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているが、本発明の課題達成を阻害しないかぎり、下辺部のみならず、上辺部や片側辺部または両側辺部にも透明もしくは不透明な着色帯を有していて良い。上記上辺部や側辺部の着色帯の可視光線透過率は、特に限定されるものではないが、一般的には40%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の中間膜に用いられる熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、(可塑化)飽和ポリエステル系樹脂、(可塑化)ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体系樹脂等の従来から中間膜用として用いられている熱可塑性樹脂が挙げられ、なかでも、優れた透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の諸性能のバランスに優れる中間膜を得られることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0019】
上記可塑化ポリビニルアセタール系樹脂とは、可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルアセタール系樹脂のことである。
【0020】
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と記す)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール樹脂、PVAとn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、「PVB」と記す)等が挙げられ、なかでも、優れた透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の諸性能のバランスにより優れる中間膜を得られることから、PVBが好適に用いられる。これらのポリビニルアセタール系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0021】
上記ポリビニルアセタール系樹脂の合成に用いられるPVAは、特に限定されるものではないが、平均重合度が200〜5000のものが好ましく、より好ましくは500〜3000のものである。PVAの平均重合度が200未満であると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を用いた中間膜の強度が弱くなりすぎて、この中間膜を用いて合わせガラスとしたときの耐貫通性や衝撃エネルギー吸収性が不十分となることがあり、逆にPVAの平均重合度が5000を超えると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を成形(製膜)する際に不具合が生じることがある。
【0022】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、特に限定されるものではないが、アセタール化度が40〜85モル%であるものが好ましく、より好ましくは50〜75モル%のものである。アセタール化度が40モル%未満もしくは85モル%を超えるポリビニルアセタール系樹脂は、反応機構上、合成するのが困難となることがある。
【0023】
また、上記ポリビニルアセタール系樹脂は、特に限定されるものではないが、残存アセチル基量が30モル%以下であるものが好ましく、より好ましくは0.5〜24モル%のものである。残存アセチル基量が30モル%を超えるポリビニルアセタール系樹脂を合成しようとすると、PVAとアルデヒドとの反応率が著しく低下することがある。
【0024】
ポリビニルアセタール系樹脂がPVBである場合、上記アセタール化度(ブチラール化度)および残存アセチル基量は、JIS K−6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定することができる。
【0025】
また、ポリビニルアセタール系樹脂がPVB以外のポリビニルアセタール系樹脂である場合、そのアセタール化度は、JIS K−6729「ポリビニルホルマール試験方法」に準拠して、残存アセチル基量とビニルアルコール量とを測定し、100から上記両成分量を差し引くことにより算出することができる。
【0026】
上記熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂を可塑化するために用いられる可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、一塩基性有機酸エステル系、多塩基性有機酸エステル系などの有機酸エステル系可塑剤や、有機リン酸系、有機亜リン酸系などのリン酸系可塑剤等が挙げられる。
【0027】
一塩基性有機酸エステル系可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールと酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、2−エチルヘキシル酸などの一塩基性有機酸との反応によって得られるグリコール系エステル等が挙げられる。
【0028】
多塩基性有機酸エステル系可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数4〜8の直鎖状もしくは分岐状アルコールとアジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸などの多塩基性有機酸との反応によって得られるエステル等が挙げられる。
【0029】
リン酸系可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0030】
上記各種可塑剤のなかでも、例えば、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジn−ヘプタノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジn−オクタノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジn−ヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジベンジルフタレート等が好適に用いられ、なかでも、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジn−ヘプタノエート等が特に好適に用いられる。これらの可塑剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0031】
熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂に対する可塑剤の添加量は、熱可塑性樹脂の平均重合度や、ポリビニルアセタール系樹脂の平均重合度やアセタール化度および残存アセチル基量等によっても異なり、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂100重量部に対し、可塑剤10〜80重量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂100重量部に対する可塑剤の添加量が10重量部未満であると、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂の可塑化が不十分となって、成形(製膜)が困難となることがあり、逆に熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂100重量部に対する可塑剤の添加量が80重量部を超えると、得られる中間膜の強度が不十分となることがある。
【0032】
本発明の中間膜には、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂、可塑剤および上記着色顔料に加えるに、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0033】
本発明の中間膜の厚みは、特に限定されるものではないが、通常の中間膜同様、0.3〜1.6mmであることが好ましい。中間膜の厚みが0.3mm未満であると、中間膜自体の強度が不十分となることがあり、逆に中間膜の厚みが1.6mmを超えると、後述する合わせガラス作製時のオートクレーブによる本接着(本圧着)工程においてガラス板のずれが生じる現象、いわゆる板ずれ現象が発生することがある。
【0034】
本発明の中間膜の成形(製膜)方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂と可塑剤とからなる無着色樹脂組成物と、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂と可塑剤および着色顔料とからなる着色樹脂組成物を予め調製し、上記無着色樹脂組成物と上記着色樹脂組成物とを例えばシート成形ダイ内にて合流させ、下辺部に所定形状の着色帯が形成されるように両樹脂組成物を接合しつつシート状に成形(製膜)することにより、所望の中間膜を得ることができる。
【0035】
次に、本発明の合わせガラスは、少なくとも一対のガラス板の間に上述した本発明の中間膜を介在させ一体化させてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有している。
【0036】
上記着色帯の可視光線透過率が30%を超えると、合わせガラスの防眩性、遮光性および遮熱性が不十分となって、本発明の課題を達成することができなくなる。
【0037】
本発明の合わせガラスに用いられるガラス板には、通常の無機透明ガラス板のみならず、例えばポリカーボネート板やポリメチルメタクリレート板などのような有機透明ガラス板も包含される。
【0038】
上記ガラス板の種類としては、自動車のフロントガラス用として使用できるものであればどのようなガラス板でも良く、特に限定されるものではないが、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、平板ガラス、曲板ガラス、並板ガラス、型板ガラス、金網入り型板ガラス、着色されたガラス板などの各種無機ガラス板や有機ガラス板等が挙げられ、これらの1種類もしくは2種類以上が好適に用いられる。また、上記ガラス板の厚みは、適宜選択されれば良く、特に限定されるものではない。
【0039】
本発明の合わせガラスの作製方法は、特別なものではなく、通常の合わせガラスの場合と同様の作製方法で良い。すなわち、例えば、2枚の透明なガラス板の間に本発明の中間膜を挟み、この合わせガラス構成体を例えばゴムバッグのような真空バッグの中に入れ、この真空バッグを排気系に接続して、真空バッグ内の圧力が約−65〜−100kPaの減圧度(絶対圧力約36〜1kPa)となるように減圧吸引(脱気)しながら温度約70〜110℃で予備接着(予備圧着)を行った後、この予備接着された合わせガラス構成体をオートクレーブの中に入れ、温度約120〜150℃、圧力約0.98〜1.47MPaの条件で加熱加圧して本接着(本圧着)を行うことにより、所望の合わせガラスを得ることができる。
【0040】
【作用】
本発明の中間膜は、熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているので、優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現する下辺部を有し、かつ、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能に優れ、しかもデザイン性や意匠性も向上した合わせガラスを得ることができる。
【0041】
また、本発明の中間膜は、上記熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール系樹脂を用いることにより、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能により優れる合わせガラスを得ることができる。
【0042】
本発明の合わせガラスは、上記本発明の中間膜を用いて作製され、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているので、下辺部は優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現し、かつ、優れた透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能を兼備し、しかもデザイン性や意匠性も向上した高品質のものである。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
(実施例)
熱可塑性樹脂として可塑化PVBを用い、JIS R−3212に準拠して測定した可視光線透過率が15%の着色帯を下辺部に有する中間膜を成形(製膜)した後、この中間膜を用いて、上記可視光線透過率が5%の着色帯を下辺部に有する合わせガラスを作製した。
【0045】
(比較例)
熱可塑性樹脂として可塑化PVBを用い、JIS R−3212に準拠して測定した可視光線透過率が50%の着色帯を下辺部に有する中間膜を成形(製膜)した後、この中間膜を用いて、上記可視光線透過率が40%の着色帯を下辺部に有する合わせガラスを作製した。
【0046】
実施例および比較例で得られた合わせガラスの性能(▲1▼車外からの目隠し性、▲2▼車内の意匠性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0047】
▲1▼車外からの目隠し性
上記合わせガラスをフロントガラスとして装着した自動車を用意し、ダッシュボードに15cm角の白い紙を置いて、下記判定基準により、車外前方より紙の有無を判別する目隠し性を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥車外前方よりダッシュボード上の紙が見えた。
×‥‥車外前方よりダッシュボード上の紙が見えなかった。
▲2▼車内の意匠性
上記自動車の運転席よりワイパーが見えるかどうかを目視で観察し、下記判定基準により、車内の意匠性を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥ワイパーはほぼ見えず、気にならなかった。
×‥‥明らかにワイパーが見えた。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、本発明による実施例の中間膜を用いて作製した合わせガラスは、優れた車外からの目隠し性および車内の意匠性を発現した。これに対し、着色帯の可視光線透過率が30%を超えていた比較例の中間膜を用いて作製した合わせガラスは、車外からの目隠し性および車内の意匠性のいずれもが悪かった。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の中間膜は、熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているので、優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現する下辺部を有し、したがって自動車のフロントガラス用の合わせガラスとされた際に、路面からの照り返しによる眩しさを防止したり、ダッシュボードの光劣化、熱劣化、フロントガラスへの映り込み等を防止したり、車内に置かれた物体を隠蔽したり、車内に置かれた物体の光劣化や熱劣化を防止したり、乗員からワイパーを見えにくくしたりすることが可能であって、かつ、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能に優れ、しかもデザイン性や意匠性も向上した合わせガラスを得ることができるものであり、特に下辺部の防眩性、遮光性および遮熱性に優れる合わせガラス用として好適に用いられる。
【0051】
また、本発明の合わせガラスは、上記本発明の中間膜を用いて作製され、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているので、下辺部は優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現し、かつ、優れた透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能を兼備し、しかもデザイン性や意匠性も向上した高品質のものであり、自動車のフロントガラス用として好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車フロント合わせガラス用中間膜およびその自動車フロント合わせガラス用中間膜を用いた自動車フロント合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車などの車両や建築物等の窓ガラス用として広く使用されている。このような合わせガラスとしては、例えば、可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルアセタール系樹脂のような熱可塑性樹脂が製膜されてなる合わせガラス用中間膜を少なくとも一対のガラス板の間に介在させ、一体化させてなるものが挙げられる。
【0003】
熱可塑性樹脂、とりわけ可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルアセタール系樹脂からなる合わせガラス用中間膜は、優れた透明性、優れた耐候性、強靱な強度およびガラス板に対する適正な接着力等を兼備しており、このような合わせガラス用中間膜を用いて作製される合わせガラスは、特に自動車などの車両用や建築物用の窓ガラスとして好適である。
【0004】
自動車などの車両用や建築物用の窓ガラスに用いられる合わせガラスには、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能に優れていることが要求される。
【0005】
また、自動車などの車両用の窓ガラス、特にフロントガラスに用いられる合わせガラスには、太陽光線や屋外照明等により運転中のドライバーの目が眩しくなるのを防止するために、優れた防眩性を有していることが要求される。
【0006】
上記防眩性を有する合わせガラスとして、従来より、上辺部に可視光線透過率が40%以下程度の着色帯を有する合わせガラス用中間膜、いわゆるShadedFilm(SDF)を用いて作製した、上辺部に可視光線透過率が40%以下程度の着色帯を有する合わせガラスが、自動車などの車両の窓ガラス用、特にフロントガラス用として用いられている。
【0007】
ところが、従来のSDFを用いて作製した合わせガラスは、可視光線透過率が40%以下程度の着色帯を上辺部にのみしか有していないため、太陽光線や屋外照明等により運転中のドライバーの目が眩しくなるのを防止することは可能であるものの、例えば、路面からの照り返しによる眩しさを防止することは難しいという問題点や、ダッシュボードの光劣化、熱劣化、フロントガラスへの映り込み等を防止したり、車内に置かれた物体を隠蔽(目隠し)したり、車内に置かれた物体の光劣化や熱劣化を防止したりすることは難しいという問題点がある。また、乗員からワイパーが見えてしまうという美観上の問題点もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現する下辺部を有し、したがって自動車のフロントガラス用の合わせガラスとされた際に、路面からの照り返しによる眩しさを防止したり、ダッシュボードの光劣化、熱劣化、フロントガラスへの映り込み等を防止したり、車内に置かれた物体を隠蔽したり、車内に置かれた物体の光劣化や熱劣化を防止したり、乗員からワイパーを見えにくくすることが可能であって、かつ、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の自動車フロント合わせガラスとして必要な諸性能に優れ、しかもデザイン性や意匠性も向上した自動車フロント合わせガラスを得ることができる自動車フロント合わせガラス用中間膜、および、この自動車フロント合わせガラス用中間膜を用いた自動車フロント合わせガラスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)による自動車フロント合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明による自動車フロント合わせガラス用中間膜は、上記請求項1に記載の自動車フロント合わせガラス用中間膜において、熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール系樹脂であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明(本発明)による自動車フロント合わせガラスは、少なくとも一対のガラス板の間に上記請求項1または請求項2に記載の自動車フロント合わせガラス用中間膜を介在させ一体化させてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の自動車フロント合わせガラス用中間膜(以下、単に「中間膜」と略記する)は、熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有している。なお、本発明で言う可視光線とは、波長範囲が380〜780nmの光線を意味する。また、本発明で言う可視光線透過率とは、JIS R−3212「自動車用安全ガラス試験方法」に準拠して測定される可視光線透過率を意味する。
【0013】
上記着色帯の可視光線透過率が30%を超えると、得られる自動車フロント合わせガラス(以下、単に「合わせガラス」と略記する)の防眩性、遮光性および遮熱性が不十分となって、本発明の課題を達成することができなくなる。
【0014】
上記着色帯を形成するために用いられる着色顔料としては、プラスチック用として使用できるものであって、上記着色帯の可視光線透過率が30%以下となるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、アンスラキノン系、イソインドリノ系などの有機着色顔料や、酸化物、水酸化物、硫化物、クロム酸、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、砒酸塩、フェロシアン化物、炭素、金属粉などの無機着色顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0015】
上記着色顔料の添加量は、上記着色帯の可視光線透過率が30%以下となるものであるかぎり、目的の色調に合わせて任意で良く、特に限定されるものではないが、一般的に着色顔料は後述する可塑剤中に分散させた状態で添加するので、可塑剤量の0.4〜10重量%であることが好ましい。
【0016】
上記着色帯の色調は、可視光線透過率が30%以下となるものであれば良く、特に限定されるものではないが、なかでも、様々な内装色や外装色と合うことから、グレー系やブルー系であることが好ましい。また、上記着色帯は、透明であっても良いし、不透明であっても良く、透明部分と不透明部分とが混在していても良い。
【0017】
本発明の中間膜は、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているが、本発明の課題達成を阻害しないかぎり、下辺部のみならず、上辺部や片側辺部または両側辺部にも透明もしくは不透明な着色帯を有していて良い。上記上辺部や側辺部の着色帯の可視光線透過率は、特に限定されるものではないが、一般的には40%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の中間膜に用いられる熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、(可塑化)飽和ポリエステル系樹脂、(可塑化)ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体系樹脂等の従来から中間膜用として用いられている熱可塑性樹脂が挙げられ、なかでも、優れた透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の諸性能のバランスに優れる中間膜を得られることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0019】
上記可塑化ポリビニルアセタール系樹脂とは、可塑剤の添加により可塑化されたポリビニルアセタール系樹脂のことである。
【0020】
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と記す)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール樹脂、PVAとn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、「PVB」と記す)等が挙げられ、なかでも、優れた透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の諸性能のバランスにより優れる中間膜を得られることから、PVBが好適に用いられる。これらのポリビニルアセタール系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0021】
上記ポリビニルアセタール系樹脂の合成に用いられるPVAは、特に限定されるものではないが、平均重合度が200〜5000のものが好ましく、より好ましくは500〜3000のものである。PVAの平均重合度が200未満であると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を用いた中間膜の強度が弱くなりすぎて、この中間膜を用いて合わせガラスとしたときの耐貫通性や衝撃エネルギー吸収性が不十分となることがあり、逆にPVAの平均重合度が5000を超えると、得られるポリビニルアセタール系樹脂を成形(製膜)する際に不具合が生じることがある。
【0022】
上記ポリビニルアセタール系樹脂は、特に限定されるものではないが、アセタール化度が40〜85モル%であるものが好ましく、より好ましくは50〜75モル%のものである。アセタール化度が40モル%未満もしくは85モル%を超えるポリビニルアセタール系樹脂は、反応機構上、合成するのが困難となることがある。
【0023】
また、上記ポリビニルアセタール系樹脂は、特に限定されるものではないが、残存アセチル基量が30モル%以下であるものが好ましく、より好ましくは0.5〜24モル%のものである。残存アセチル基量が30モル%を超えるポリビニルアセタール系樹脂を合成しようとすると、PVAとアルデヒドとの反応率が著しく低下することがある。
【0024】
ポリビニルアセタール系樹脂がPVBである場合、上記アセタール化度(ブチラール化度)および残存アセチル基量は、JIS K−6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定することができる。
【0025】
また、ポリビニルアセタール系樹脂がPVB以外のポリビニルアセタール系樹脂である場合、そのアセタール化度は、JIS K−6729「ポリビニルホルマール試験方法」に準拠して、残存アセチル基量とビニルアルコール量とを測定し、100から上記両成分量を差し引くことにより算出することができる。
【0026】
上記熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂を可塑化するために用いられる可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、一塩基性有機酸エステル系、多塩基性有機酸エステル系などの有機酸エステル系可塑剤や、有機リン酸系、有機亜リン酸系などのリン酸系可塑剤等が挙げられる。
【0027】
一塩基性有機酸エステル系可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールと酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、2−エチルヘキシル酸などの一塩基性有機酸との反応によって得られるグリコール系エステル等が挙げられる。
【0028】
多塩基性有機酸エステル系可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数4〜8の直鎖状もしくは分岐状アルコールとアジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸などの多塩基性有機酸との反応によって得られるエステル等が挙げられる。
【0029】
リン酸系可塑剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0030】
上記各種可塑剤のなかでも、例えば、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジn−ヘプタノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジn−オクタノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジn−ヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジベンジルフタレート等が好適に用いられ、なかでも、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジn−ヘプタノエート等が特に好適に用いられる。これらの可塑剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0031】
熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂に対する可塑剤の添加量は、熱可塑性樹脂の平均重合度や、ポリビニルアセタール系樹脂の平均重合度やアセタール化度および残存アセチル基量等によっても異なり、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂100重量部に対し、可塑剤10〜80重量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂100重量部に対する可塑剤の添加量が10重量部未満であると、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂の可塑化が不十分となって、成形(製膜)が困難となることがあり、逆に熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂100重量部に対する可塑剤の添加量が80重量部を超えると、得られる中間膜の強度が不十分となることがある。
【0032】
本発明の中間膜には、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂、可塑剤および上記着色顔料に加えるに、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0033】
本発明の中間膜の厚みは、特に限定されるものではないが、通常の中間膜同様、0.3〜1.6mmであることが好ましい。中間膜の厚みが0.3mm未満であると、中間膜自体の強度が不十分となることがあり、逆に中間膜の厚みが1.6mmを超えると、後述する合わせガラス作製時のオートクレーブによる本接着(本圧着)工程においてガラス板のずれが生じる現象、いわゆる板ずれ現象が発生することがある。
【0034】
本発明の中間膜の成形(製膜)方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂と可塑剤とからなる無着色樹脂組成物と、熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルアセタール系樹脂と可塑剤および着色顔料とからなる着色樹脂組成物を予め調製し、上記無着色樹脂組成物と上記着色樹脂組成物とを例えばシート成形ダイ内にて合流させ、下辺部に所定形状の着色帯が形成されるように両樹脂組成物を接合しつつシート状に成形(製膜)することにより、所望の中間膜を得ることができる。
【0035】
次に、本発明の合わせガラスは、少なくとも一対のガラス板の間に上述した本発明の中間膜を介在させ一体化させてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有している。
【0036】
上記着色帯の可視光線透過率が30%を超えると、合わせガラスの防眩性、遮光性および遮熱性が不十分となって、本発明の課題を達成することができなくなる。
【0037】
本発明の合わせガラスに用いられるガラス板には、通常の無機透明ガラス板のみならず、例えばポリカーボネート板やポリメチルメタクリレート板などのような有機透明ガラス板も包含される。
【0038】
上記ガラス板の種類としては、自動車のフロントガラス用として使用できるものであればどのようなガラス板でも良く、特に限定されるものではないが、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、平板ガラス、曲板ガラス、並板ガラス、型板ガラス、金網入り型板ガラス、着色されたガラス板などの各種無機ガラス板や有機ガラス板等が挙げられ、これらの1種類もしくは2種類以上が好適に用いられる。また、上記ガラス板の厚みは、適宜選択されれば良く、特に限定されるものではない。
【0039】
本発明の合わせガラスの作製方法は、特別なものではなく、通常の合わせガラスの場合と同様の作製方法で良い。すなわち、例えば、2枚の透明なガラス板の間に本発明の中間膜を挟み、この合わせガラス構成体を例えばゴムバッグのような真空バッグの中に入れ、この真空バッグを排気系に接続して、真空バッグ内の圧力が約−65〜−100kPaの減圧度(絶対圧力約36〜1kPa)となるように減圧吸引(脱気)しながら温度約70〜110℃で予備接着(予備圧着)を行った後、この予備接着された合わせガラス構成体をオートクレーブの中に入れ、温度約120〜150℃、圧力約0.98〜1.47MPaの条件で加熱加圧して本接着(本圧着)を行うことにより、所望の合わせガラスを得ることができる。
【0040】
【作用】
本発明の中間膜は、熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているので、優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現する下辺部を有し、かつ、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能に優れ、しかもデザイン性や意匠性も向上した合わせガラスを得ることができる。
【0041】
また、本発明の中間膜は、上記熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール系樹脂を用いることにより、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能により優れる合わせガラスを得ることができる。
【0042】
本発明の合わせガラスは、上記本発明の中間膜を用いて作製され、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているので、下辺部は優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現し、かつ、優れた透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能を兼備し、しかもデザイン性や意匠性も向上した高品質のものである。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
(実施例)
熱可塑性樹脂として可塑化PVBを用い、JIS R−3212に準拠して測定した可視光線透過率が15%の着色帯を下辺部に有する中間膜を成形(製膜)した後、この中間膜を用いて、上記可視光線透過率が5%の着色帯を下辺部に有する合わせガラスを作製した。
【0045】
(比較例)
熱可塑性樹脂として可塑化PVBを用い、JIS R−3212に準拠して測定した可視光線透過率が50%の着色帯を下辺部に有する中間膜を成形(製膜)した後、この中間膜を用いて、上記可視光線透過率が40%の着色帯を下辺部に有する合わせガラスを作製した。
【0046】
実施例および比較例で得られた合わせガラスの性能(▲1▼車外からの目隠し性、▲2▼車内の意匠性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。
【0047】
▲1▼車外からの目隠し性
上記合わせガラスをフロントガラスとして装着した自動車を用意し、ダッシュボードに15cm角の白い紙を置いて、下記判定基準により、車外前方より紙の有無を判別する目隠し性を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥車外前方よりダッシュボード上の紙が見えた。
×‥‥車外前方よりダッシュボード上の紙が見えなかった。
▲2▼車内の意匠性
上記自動車の運転席よりワイパーが見えるかどうかを目視で観察し、下記判定基準により、車内の意匠性を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥ワイパーはほぼ見えず、気にならなかった。
×‥‥明らかにワイパーが見えた。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、本発明による実施例の中間膜を用いて作製した合わせガラスは、優れた車外からの目隠し性および車内の意匠性を発現した。これに対し、着色帯の可視光線透過率が30%を超えていた比較例の中間膜を用いて作製した合わせガラスは、車外からの目隠し性および車内の意匠性のいずれもが悪かった。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の中間膜は、熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているので、優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現する下辺部を有し、したがって自動車のフロントガラス用の合わせガラスとされた際に、路面からの照り返しによる眩しさを防止したり、ダッシュボードの光劣化、熱劣化、フロントガラスへの映り込み等を防止したり、車内に置かれた物体を隠蔽したり、車内に置かれた物体の光劣化や熱劣化を防止したり、乗員からワイパーを見えにくくしたりすることが可能であって、かつ、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能に優れ、しかもデザイン性や意匠性も向上した合わせガラスを得ることができるものであり、特に下辺部の防眩性、遮光性および遮熱性に優れる合わせガラス用として好適に用いられる。
【0051】
また、本発明の合わせガラスは、上記本発明の中間膜を用いて作製され、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有しているので、下辺部は優れた防眩性、遮光性および遮熱性を発現し、かつ、優れた透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の合わせガラスとして必要な諸性能を兼備し、しかもデザイン性や意匠性も向上した高品質のものであり、自動車のフロントガラス用として好適に用いられる。
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂が製膜されてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有していることを特徴とする自動車フロント合わせガラス用中間膜。
- 熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の自動車フロント合わせガラス用中間膜。
- 少なくとも一対のガラス板の間に請求項1または請求項2に記載の自動車フロント合わせガラス用中間膜を介在させ一体化させてなり、下辺部に可視光線透過率が30%以下の透明もしくは不透明な着色帯を有していることを特徴とする自動車フロント合わせガラス。
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