JP2004122710A - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】断裁時の粉落ちがなく、また塗布巻取り時にインク受容層表面に擦り傷の発生しないインクジェット記録用紙を提供する。
【解決手段】支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、該記録用紙のインク受容層の破断伸びが2〜5%であり、かつ該支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度が0.4〜3.0mN・mであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、該記録用紙のインク受容層の破断伸びが2〜5%であり、かつ該支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度が0.4〜3.0mN・mであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録は急速に画質が向上してきており、写真画質に迫りつつある。特に最終的なプリント品質については、記録用紙の重要性が非常に高まっている。このような高画質の記録用紙の例として、支持体上に親水性バインダーを主として構成される膨潤型インク受容層を有するインクジェット記録用紙があり、このような記録用紙は記録後に写真に近い風合いを与える。しかしながら、一方でインクジェット記録方法の高速化が進み、記録用紙には高インク吸収性や速乾燥性も求められているが、膨潤型インク受容層を有するインクジェット記録用紙は、インク吸収速度が遅く、高速記録した場合にインク液滴同士の合体などにより画像がマダラ状のムラが起こりやすくなるという問題点があった。上記のような問題点を克服するため、少量の親水性バインダーと架橋剤、および多量の無機微粒子で構成される多孔質な空隙層からなるインク受容層を設けることにより、インクの吸収速度を速めたインクジェット記録用紙(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
しかしながら、上記のような空隙型の記録用紙は、そのインク受容層が脆弱であり、断裁時の粉落ちが多いという問題があった。また、塗布巻取り時に巻き芯部でインク受容層表面に擦り傷が発生することがあった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−81064号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、断裁時の粉落ちがなく、また塗布巻取り時にインク受容層表面に擦り傷の発生しないインクジェット記録用紙を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0007】
1.支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、該記録用紙のインク受容層の破断伸びが2〜5%であり、かつ該支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度が0.4〜3.0mN・mであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0008】
2.無機微粒子の一次平均粒径が、3〜100nmであることを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録用紙。
【0009】
3.無機微粒子が、シリカ微粒子であることを特徴とする前記1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
【0010】
4.無機微粒子が、気相法シリカであることを特徴とする前記3に記載のインクジェット記録用紙。
【0011】
5.親水性バインダーが、ポリビニルアルコールであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0012】
6.インク受容層が、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0013】
7.第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーが、側鎖に該第4級アンモニウム塩基を有することを特徴とする前記6に記載のインクジェット記録用紙。
【0014】
8.側鎖に該第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが、前記一般式(1)で示される単量体及び少なくともアクリル酸類から選ばれる一種以上の単量体との共重合体であることを特徴とする前記7に記載のインクジェット記録用紙。
【0015】
9.インク受容層が、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を含有することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0016】
10.水酸基を有する高分子分散剤が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする前記9に記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
11.エマルジョン樹脂のTgが、20℃以下であることを特徴とする前記9又は10に記載のインクジェット記録用紙。
【0018】
12.支持体が、厚さ140μm以上300μm以下であることを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0019】
本発明を更に詳しく説明する。インク受容層の破断伸びは10mm幅の記録用紙を23℃20%の環境に24時間放置した後、長さ100mmとなるように両側を固定して、引き延ばしたときに記録用紙のインク受容層表面にヒビが入ったときの長さをxmmとして(x−100)(%)とする。
【0020】
本発明のインクジェット記録用紙において、記録用紙のインク受容層の破断伸びが2〜5%であり、支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度が0.4〜3.0mN・mであると、断裁時の粉落ちがなく、また塗布巻取り時にインク受容層表面に擦り傷の発生しないインクジェット記録用紙を得ることが出来る理由は、次のように考えている。
【0021】
記録用紙を断裁する際に、インク受容層が脆く、しかも支持体のいわゆる腰が弱いと、断裁で受ける力に抗しきれず、受容層ならびに支持体の破断面で粉落ちが生じる。また、塗布巻取り時にもやはり、インク受容層が脆く、しかも支持体の腰が弱いことで、巻取り張力に抗しきれずにインク受容層の表面に擦り傷が発生する。巻取り張力は巻の中心ほど高くなるので特に巻き芯部に擦り傷が発生しやすい。しかし、記録用紙のインク受容層の破断伸びが2〜5%であり、かつ支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度が0.4〜3.0mN・mであれば、インク受容層が応力を緩和しやすく、支持体の腰も強いため上記のような問題が起こりづらくなるものと考えている。
【0022】
インク受容層の破断伸びを2〜5%にする方法としては例えば▲1▼Tg20℃以下のエマルジョンをインク受容層に添加する(特にポリビニルアルコールで分散されたTg20℃以下のエマルジョンが好ましい)、▲2▼カチオンポリマーとして芳香族含有モノマー(特に一般式(1)で表される化合物が好ましい)と脂肪族含有モノマーを併用する、▲3▼ポリビニルアルコールの可塑剤、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ブタンジオール、ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、エタノールアセトアミド、尿素及びその誘導体、ソルビトール等の単糖類等をインク受容層に添加する、▲4▼ホウ酸、ホウ砂の添加量を減らすこと等で達成されるが、▲1▼と▲2▼の方法の併用、▲1▼の方法、▲2▼の方法、▲3▼と▲4▼の方法の併用が好ましい。しかし、これらの方法に限定されるものではない。
【0023】
支持体のMD方向のテーバー剛度を0.4〜3.0mN・mにする方法としては、支持体に用いる原紙中のセルロースパルプの種類を変更する、叩解を弱くする、填料の添加量の調整をする、紙力増強剤等の接着剤の量を増やす、表面サイズの実施、表面サイズ剤の塗布量を増加する、マシンカレンダー処理を軽度にする、紙の坪量、厚みを増加させること等で達成できるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0024】
本発明のインクジェット記録用紙には、記録後の保存による画像のにじみを防止する目的でカチオン性ポリマーが好ましく用いられる。
【0025】
カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。
【0026】
本発明において、カチオン性ポリマーが、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、質量平均分子量が2万以上のカチオン性ポリマーであることが好ましい。
【0027】
前記一般式(1)において、R4で表されるアルキル基としては、メチル基が好ましい。R1、R2及びR3で表されるアルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、またはベンジル基である。Jで表される2価の有機基としては、好ましくは−CON(R′)−を表す。R′は水素原子またはアルキル基を表す。R5で表される置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
【0028】
Xで表されるアニオン基は、例えば、ハロゲンイオン、酢酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0029】
好ましいカチオン性ポリマーは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるホモポリマーであってもよく、他の共重合可能な単量体との共重合であってもよい。共重合可能な繰り返し単位としては、前記一般式(1)以外のカチオン性単量体および、カチオン性基を有しない単量体を挙げることができる。
【0030】
また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0031】
次に、本発明に係る多孔質のインク受容層について説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、非吸水性支持体上に多孔質のインク受容層が設けられたものであり、この多孔質のインク受容層の形成方法としては、従来、数多くの方法が知られているが、本発明では無機微粒子と少量の親水性バインダーから空隙層が形成されているものが好ましい。
【0032】
本発明で用いることのできる無機微粒子としては、より高い画像濃度を与えるという観点において、より小粒径の微粒子が好ましい。そのような無機微粒子の例としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料を挙げることができる。
【0033】
上記無機微粒子の形状は、本発明では特に制約を受けず、球状、棒状、針状、平板状、数珠状のいずれの形状であってもよい。
【0034】
無機微粒子は、1次粒子のままで親水性バインダー中に均一に分散された状態で用いられることも、あるいは、2次凝集粒子を形成して親水性バインダー中に分散された状態で用いられても良いが、高い光沢性と速いインク吸収性を達成するという観点からは、後者がより好ましい。また、同様の観点から、皮膜中で、平均粒径が3〜200nmとなる無機微粒子を使用することが好ましい。200nm以下であれば、記録用紙の光沢性は良好であり、表面での乱反射も起こりにくいので、最高濃度が高く、鮮明な画像が得られる点で好ましい。また、本発明においては、平均粒径の下限は特に限定はされないが、無機微粒子製造上の観点から、概ね3nm以上、特に6nm以上が好ましい。これらの観点において、特に好ましい無機微粒子は、その平均粒径が20〜100nmである。
【0035】
本発明で云う無機微粒子の平均粒径は、微粒子自身や、あるいは空隙型インク受容層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、多数個の任意の微粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。本発明で云う個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0036】
無機微粒子として、無機微粒子と少量の有機物(低分子化合物でも、高分子化合物でもよい。)とからなる複合粒子でも、本発明では実質的に無機微粒子とみなす。この場合も、上記方法により測定される乾燥被膜中の最高次粒子の粒径をもって、その無機微粒子の粒径とする。
【0037】
上記無機微粒子と少量の有機物との複合粒子において、有機物/無機微粒子の質量比は、概ね1/100〜1/4である。
【0038】
本発明においては、低コストであることや高い反射濃度が得られる低屈折率の微粒子であること等から、表面がアニオン性の無機微粒子としては、気相法で合成されたシリカ又はコロイダルシリカが好ましい。又、表面がカチオン性である無機微粒子としては、カチオン表面処理された気相法シリカ、カチオン表面処理されたコロイダルシリカ、及びアルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等も用いることが出来る。
【0039】
多孔質層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙量の空隙率、無機微粒子の種類、親水性バインダーの種類に大きく依存するが、一般には記録用紙1m2当たり、通常3〜30g、好ましくは5〜25gである。空隙型インク受容層に用いられる無機微粒子と親水性バインダーとの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。無機微粒子の添加量を増やすに従いインク吸収容量も増加するが、反面、カールやひび割れ等が悪化しやすいため、空隙率のコントロールによりインク吸収容量を増加させる方法が好ましい。インク吸収容量、カール、ひび割れ等の観点から、好ましい空隙率は40〜75%である。空隙率は、選択する無機微粒子、親水性バインダーの種類によって、あるいはそれらの混合比によって、またはその他の添加剤の量を適宜調整することにより、所望の値に設定することができる。本発明でいう空隙率とは、空隙層の体積における空隙の総体積の比率であり、その層の構成物の総体積と層の厚さから計算で求めることができる。また、空隙の総体積は、ブリストー測定による飽和転移量、吸水量測定などによっても簡易に求めることができる。
【0040】
次に、本発明のインクジェット記録用紙に用いることのできる親水性バインダーについて説明する。
【0041】
本発明でいう親水性であるとは、単に水で可溶である場合の他に、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒と水との混合溶媒に可溶なポリマーも含まれる。この場合、水混和性の有機溶媒の量は、溶媒全量に対して通常50質量%以下のものをいう。
【0042】
また、親水性であるとは、上記溶媒に、バインダーが室温で通常1質量%以上溶解するものをいい、より好ましくは3質量%以上溶解するものである。
【0043】
本発明で用いる親水性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の親水性ポリマーが挙げられる。これらの親水性ポリマーは、2種以上併用することも可能である。
【0044】
本発明で好ましく用いられる親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられ、更に、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0045】
本発明において、インク受容層に使用されるバインダーは、水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を含むことが好ましい。
【0046】
ここで言うエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を使って乳化重合させた樹脂である。
【0047】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子の分散剤が挙げられる。
【0048】
本発明に係るエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0049】
水酸基を含む高分子分散剤とは、平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0050】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク受容層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0051】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0052】
これらエマルジョン樹脂は、空隙層形成時に柔軟性を付与するものであり、室温でも柔軟な性質を持つものが適しており、より好ましくは室温で融着して当該層を形成するものであって、このときエマルジョン樹脂をフィルム化した場合のTgが20℃以下であることが好ましく、−40〜10℃であることがより好ましい。
【0053】
本発明に係る水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂の平均粒径は0.01〜2μmが好ましいが、インク受容層を構成する材料で平均粒径が大きいものが含まれると、インク受容層中における光の散乱により透明性が低下し、印字濃度の低下が起きてしまう。したがって、より好ましい態様は、無機微粒子の平均粒径が5〜100nmであり、バインダーが水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合された0.05〜1.0μmのエマルジョン樹脂を含んで構成され、無機微粒子とバインダーの質量比が2:1〜10:1である。さらにエマルジョン樹脂は平均粒径が0.05〜0.5μmであることが特に好ましい。
【0054】
本発明の水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂の製造法は特に制限はなく、公知の乳化重合法で製造される。
【0055】
このようなエマルジョン樹脂で市販されているものとしては、例えば大同化学工業社製のビニゾール480やビニゾール2023等の酢酸ビニル系エマルジョン、日信化学工業社製のビニブラン1108W、ビニブラン1084W等の酢酸ビニル系エマルジョンや、ビニブラン2597、ビニブラン2561等のアクリル系エマルジョン、住友化学工業社製ののスミカフレックスS−400、スミカフレックスS−405等の酢酸ビニル−エチレン系エマルジョンなどが挙げられる。
【0056】
本発明において、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を使用することで、それ以外のエマルジョン樹脂の使用により製造時に発生するインク受容層のしわやクラックを減少させることができる。
【0057】
その機構は明らかではないが、無機微粒子とエマルジョン樹脂の相互作用により、しわやクラックの発生が抑制されているものと考えられる。すなわち、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂は、その表面に高分子分散剤由来の水酸基が存在し、それが無機微粒子表面にある水酸基と水素結合することにより、エマルジョン樹脂と無機微粒子との接着性が向上すると考えられる。更に、有機化合物であるエマルジョン樹脂は、同じ有機化合物であるバインダーともなじみが良く、結果として無機微粒子とエマルジョン樹脂、バインダーの三者が強固に結合するようになり、インク受容層の脆弱性が改善され、クラックが無い、柔軟なインク受容層が形成されるものと思われる。
【0058】
本発明のインクジェット記録用紙には、インク受容層の物理強度を調整する目的、または塗布乾燥時の塗工皮膜のひび割れを防止する目的で硬膜剤を用いることが好ましい。
【0059】
硬膜剤は、一般的には前記親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物或いは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0060】
硬膜剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ほう酸及びその塩、ほう砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0061】
特に好ましい親水性バインダーとしてポリビニルアルコール及びまたはカチオン変性ポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸及びその塩、及びエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。最も好ましいのは、ほう酸及びその塩から選ばれる硬膜剤である。
【0062】
ほう酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、八ほう酸及びそれらの塩が含まれる。
【0063】
上記硬膜剤の使用量は親水性バインダーの種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、通常親水性バインダ1g当たり5mg〜500mg、好ましくは10mg〜300mgである。
【0064】
本発明のインクジェト記録用紙のインク受容層及び必要に応じて設けられるその他の層には、前記以外に各種の添加剤を添加することが出来る。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、紫外線吸収剤、退色防止剤、蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0065】
本発明のインクジェット記録用紙に係る支持体について説明する。
本発明に用いる支持体は従来インクジェット記録用紙用として公知のものを適宜使用でき、吸水性支持体であってもよいが、非吸水性支持体であることが好ましい。
【0066】
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば一般の紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。又、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0067】
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0068】
紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。又、必要に応じて抄紙段階または抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0069】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、透明支持体または不透明支持体がある。透明支持体としてはポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、100μm〜200μmが好ましい。
【0070】
又不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0071】
前記各種支持体とインク受容層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明のインクジェット記録用紙は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0072】
本発明のインクジェット記録用紙では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0073】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及びまたはLDPの比率は10質量%〜70質量%が好ましい。
【0074】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0075】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0076】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0077】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは80〜250μmが好ましい。
【0078】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7〜1.2g/m3(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0079】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0080】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0081】
特にインク受容層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3質量%〜20質量%、好ましくは4質量%〜13質量%である。
【0082】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、又、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0083】
上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3質量%〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
【0084】
本発明の記録用紙の空隙層及び下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種のインク受容層を支持体上に塗布する方法は公知の方法から適宜選択して行うことが出来る。好ましい方法は、各層を構成する塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダー層を1回の塗布で済ませる同時塗布が好ましい。
【0085】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法或いは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0086】
【実施例】
実施例1
〈記録用紙101〜120の作製〉
「支持体の作製」
支持体に用いる紙のマシンカレンダー処理強度、紙の厚みを変化させて作製した原紙の裏面に押し出し塗布法により密度が0.92の低密度ポリエチレンを30μmの厚さで塗布した。ついで表側にアナターゼ型チタン5.5質量%含有する密度が0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで押し出し塗布法で塗布して両面をポリエチレンで被覆した表1に示すようなMD方向のテーバー剛度の支持体を作製した。
【0087】
「エマルジョン(1)の作製」
5%ポリビニルアルコール水溶液(重合度1700、けん化度88.5モル%)400kgをpH3.5に調整し、攪拌しながらメタクリル酸メチル50kgとアクリル酸ブチル50kgを加えて60℃に昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10kgを添加して重合を開始した。30分後、メタクリル酸メチル100kgとアクリル酸ブチル100kgを3時間かけて徐々に添加し、8時間後、重合率が99.9%となったところで冷却した。これをpH7.0に中和し、エマルジョン(1)を作製した。このエマルジョンを真空乾燥器にて60℃で乾燥し、示差走査熱量計によりTgを測定したところ、5℃であった。
【0088】
「塗布液の作製」
硝酸でpH2.5に調整した純水に、微粒子の気相法シリカ(トクヤマ製:レオロシールQS−20)を分散して20%のシリカ分散液を400kg調製した。これにpH2.5に調整したカチオン性ポリマー(1)(n:m=70:30)の20%水溶液80kg、ホウ酸2.1kgおよびホウ砂1.5kgを溶解した水溶液60Lを添加し、高圧ホモジナイザーで分散した。得られた分散液を40℃で攪拌しながら、エマルジョン(1)の添加量を変えて、表1に示すインク受容層の破断伸びとなるように加え、ポリビニルアルコール(クラレ製:PVA235)の10%水溶液80Lを加え、全体の液が1000Lになるように純水を加えて半透明状の塗布液を得た。
【0089】
【化2】
【0090】
次に、支持体上の記録面側に、上記の塗布液を塗布幅1mで湿潤膜厚が180μmになるように3000m塗布し、8℃で10秒間冷却した後、20〜40℃の風で乾燥させて巻取り、表1に示すような破断伸びのインクジェット記録用紙を得た。なお、記録用紙の支持体の厚さは表1に示した。
【0091】
「粉落ち」
記録用紙400枚をギロチンカッターにて断裁し、目視にて粉落ちを評価した
○:粉落ちはなく、製品として問題のないレベル
△:若干粉落ちは発生するものの、製品としてやや問題のレベル
×:粉落ちが多く、製品として問題のレベル。
【0092】
「擦り傷」
塗布乾燥後に巻取ったロールの巻芯部の擦り傷を観察し、巻芯から擦り傷の発生しなくなるまでの塗布長により下記のように評価した。
○:巻芯部に擦り傷の発生がなく、製造上、問題のないレベル
△:巻芯部から塗布長20m部分まで擦り傷があり、製造上、やや問題のレベル
×:巻芯部から塗布長100m部分まで擦り傷があり、製造上、問題のレベル。
【0093】
【表1】
【0094】
表1から、記録用紙の支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度を0.4〜3.0mN・mとし、Tg20℃以下のエマルジョンをインク受容層に添加し、カチオンポリマーとして芳香族含有モノマー(一般式(1)で表される化合物)と脂肪族含有モノマーのコポリマーを併用し、記録用紙のインク受容層の破断伸びを2〜5%にする(本発明の記録用紙)ことで、比較の記録用紙とは異なり、記録用紙をロールで使用する場合でも、粉落ち、擦り傷の生じないインクジェット記録用紙を提供することができることが判る。
【0095】
実施例2
〈記録用紙201〜204の作製〉
実施例1の塗布液の作製において、カチオン性ポリマー(1)をカチオン性ポリマー(2)に変えた以外は、実施例1と同様に塗布液を作製した。尚、実施例1と同様に、エマルジョン(1)の添加量を変えて、表2に示すインク受容層の破断伸びとなるようにした。なお、記録用紙の支持体の厚さは表2に示した。
【0096】
【化3】
【0097】
〈記録用紙205の作製〉
カチオン性ポリマー(3)の20%水溶液(pH=2.5)50gに微粒子シリカ(日本アエロジル製:アエロジル200)の20%水分散液を500g、ついでホウ酸1.5g、ホウ砂1.5gを添加し、高速ホモジナイザーで分散した。次にこの水分散液中に、ポリビニルアルコール(クラレ製:PVA235)の6%水溶液270mlを添加し、エマルジョン(1)18.2g、退色防止剤カヤフィックスM(日本化薬製)2.4g、退色防止剤(1)2.7g、最後に液全体の体積が1000mlになるように純水を加えて半透明状の塗布液(A)を得た。
【0098】
【化4】
【0099】
カチオン性ポリマー(2)の20%水溶液(pH=2.5)55gに微粒子シリカ(日本アエロジル製:アエロジル200)の20%水分散液を500g、ついでホウ酸2g、ホウ砂1.5gを添加し、高速ホモジナイザーで分散した。次にこの水分散液中に、ポリビニルアルコール(クラレ製:PVA235)の6%水溶液270mlを添加し、エマルジョン(1)18.2g、退色防止剤カヤフィックスM(日本化薬製)2.4g、退色防止剤(1)2.7g、最後に液全体の体積が1000mlになるように純水を加えて半透明状の塗布液(B)を得た。
【0100】
実施例1で用いた厚さ170μmの支持体上に、塗布液(A)の湿潤膜厚が80μm、その上に塗布液(B)の湿潤膜厚が80μmになるように3000m塗布し、8℃で10秒間冷却した後、20〜40℃の風で乾燥させて巻取り、表2に示すような破断伸びのインクジェット記録用紙205を得た。
【0101】
〈記録用紙206の作製〉
記録用紙205の作製でカヤフィックスMの添加量を0.5g、退色防止剤(1)の添加量を4.2gに変えた以外は記録用紙205の作製と同様にして、表2に示すような破断伸びのインクジェット記録用紙206を得た。
【0102】
【表2】
【0103】
表2から、カチオン性ポリマーを変えても本発明の記録用紙は、粉落ち、擦り傷の生じないインクジェット記録用紙であることが判る。
【0104】
実施例3
〈記録用紙301〜304の作製〉
実施例1の塗布液の作製において、エマルジョン(1)を添加せず、カチオン性ポリマー(1)の組成比が表3に示すものに変えた以外は、実施例1と同様に塗布液を作製した。尚、カチオン性ポリマー(1)の添加量を調整して、表3に示すインク受容層の破断伸びとなるようにした。また、記録用紙の支持体の厚さは表3に示した。
【0105】
【表3】
【0106】
表3から、エマルジョン(1)を添加しなくても本発明の記録用紙は、粉落ち、擦り傷の生じないインクジェット記録用紙であることが判る。
【0107】
実施例4
〈記録用紙401〜404の作製〉
硝酸でpH2.5に調整した純水に、微粒子の気相法シリカ(トクヤマ製:レオロシールQS−20)を分散して20%のシリカ分散液を400kg調製した。これにpH2.5に調整したカチオン性ポリマー(2)の20%水溶液80kg、ホウ酸1.05kgおよびホウ砂0.75kgを溶解した水溶液60Lを添加し高圧ホモジナイザーで分散した。得られた分散液を40℃で攪拌しながら、ポリビニルアルコール(クラレ製:PVA235)の10%水溶液80Lを添加し、グリセリンを表4に示すインク受容層の破断伸びとなるように添加し、水を加え全体の液が1000Lになるように純水を加えて半透明状の塗布液を得た。
【0108】
次に、支持体上の記録面側に、上記の塗布液を湿潤膜厚が180μmになるように塗布し、8℃で10秒間冷却した後、20〜40℃の風で乾燥させて表4に示すような破断伸びのインクジェット記録用紙を得た。記録用紙の支持体の厚さは表4に示した。
【0109】
【表4】
【0110】
表4から、記録用紙の支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度を0.4〜3.0mN・mとし、グリセリンをインク受容層に添加しその添加量を加減することにより、記録用紙のインク受容層の破断伸びを2〜5%にすると、記録用紙をロールで使用する場合でも、粉落ち、擦り傷の生じないインクジェット記録用紙を提供することができることが判る。
【0111】
【発明の効果】
本発明により、断裁時の粉落ちがなく、また塗布巻取り時にインク受容層表面に擦り傷の発生しないインクジェット記録用紙を提供することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録は急速に画質が向上してきており、写真画質に迫りつつある。特に最終的なプリント品質については、記録用紙の重要性が非常に高まっている。このような高画質の記録用紙の例として、支持体上に親水性バインダーを主として構成される膨潤型インク受容層を有するインクジェット記録用紙があり、このような記録用紙は記録後に写真に近い風合いを与える。しかしながら、一方でインクジェット記録方法の高速化が進み、記録用紙には高インク吸収性や速乾燥性も求められているが、膨潤型インク受容層を有するインクジェット記録用紙は、インク吸収速度が遅く、高速記録した場合にインク液滴同士の合体などにより画像がマダラ状のムラが起こりやすくなるという問題点があった。上記のような問題点を克服するため、少量の親水性バインダーと架橋剤、および多量の無機微粒子で構成される多孔質な空隙層からなるインク受容層を設けることにより、インクの吸収速度を速めたインクジェット記録用紙(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
しかしながら、上記のような空隙型の記録用紙は、そのインク受容層が脆弱であり、断裁時の粉落ちが多いという問題があった。また、塗布巻取り時に巻き芯部でインク受容層表面に擦り傷が発生することがあった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−81064号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、断裁時の粉落ちがなく、また塗布巻取り時にインク受容層表面に擦り傷の発生しないインクジェット記録用紙を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0007】
1.支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、該記録用紙のインク受容層の破断伸びが2〜5%であり、かつ該支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度が0.4〜3.0mN・mであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0008】
2.無機微粒子の一次平均粒径が、3〜100nmであることを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録用紙。
【0009】
3.無機微粒子が、シリカ微粒子であることを特徴とする前記1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
【0010】
4.無機微粒子が、気相法シリカであることを特徴とする前記3に記載のインクジェット記録用紙。
【0011】
5.親水性バインダーが、ポリビニルアルコールであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0012】
6.インク受容層が、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0013】
7.第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーが、側鎖に該第4級アンモニウム塩基を有することを特徴とする前記6に記載のインクジェット記録用紙。
【0014】
8.側鎖に該第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが、前記一般式(1)で示される単量体及び少なくともアクリル酸類から選ばれる一種以上の単量体との共重合体であることを特徴とする前記7に記載のインクジェット記録用紙。
【0015】
9.インク受容層が、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を含有することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0016】
10.水酸基を有する高分子分散剤が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする前記9に記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
11.エマルジョン樹脂のTgが、20℃以下であることを特徴とする前記9又は10に記載のインクジェット記録用紙。
【0018】
12.支持体が、厚さ140μm以上300μm以下であることを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0019】
本発明を更に詳しく説明する。インク受容層の破断伸びは10mm幅の記録用紙を23℃20%の環境に24時間放置した後、長さ100mmとなるように両側を固定して、引き延ばしたときに記録用紙のインク受容層表面にヒビが入ったときの長さをxmmとして(x−100)(%)とする。
【0020】
本発明のインクジェット記録用紙において、記録用紙のインク受容層の破断伸びが2〜5%であり、支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度が0.4〜3.0mN・mであると、断裁時の粉落ちがなく、また塗布巻取り時にインク受容層表面に擦り傷の発生しないインクジェット記録用紙を得ることが出来る理由は、次のように考えている。
【0021】
記録用紙を断裁する際に、インク受容層が脆く、しかも支持体のいわゆる腰が弱いと、断裁で受ける力に抗しきれず、受容層ならびに支持体の破断面で粉落ちが生じる。また、塗布巻取り時にもやはり、インク受容層が脆く、しかも支持体の腰が弱いことで、巻取り張力に抗しきれずにインク受容層の表面に擦り傷が発生する。巻取り張力は巻の中心ほど高くなるので特に巻き芯部に擦り傷が発生しやすい。しかし、記録用紙のインク受容層の破断伸びが2〜5%であり、かつ支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度が0.4〜3.0mN・mであれば、インク受容層が応力を緩和しやすく、支持体の腰も強いため上記のような問題が起こりづらくなるものと考えている。
【0022】
インク受容層の破断伸びを2〜5%にする方法としては例えば▲1▼Tg20℃以下のエマルジョンをインク受容層に添加する(特にポリビニルアルコールで分散されたTg20℃以下のエマルジョンが好ましい)、▲2▼カチオンポリマーとして芳香族含有モノマー(特に一般式(1)で表される化合物が好ましい)と脂肪族含有モノマーを併用する、▲3▼ポリビニルアルコールの可塑剤、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ブタンジオール、ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、エタノールアセトアミド、尿素及びその誘導体、ソルビトール等の単糖類等をインク受容層に添加する、▲4▼ホウ酸、ホウ砂の添加量を減らすこと等で達成されるが、▲1▼と▲2▼の方法の併用、▲1▼の方法、▲2▼の方法、▲3▼と▲4▼の方法の併用が好ましい。しかし、これらの方法に限定されるものではない。
【0023】
支持体のMD方向のテーバー剛度を0.4〜3.0mN・mにする方法としては、支持体に用いる原紙中のセルロースパルプの種類を変更する、叩解を弱くする、填料の添加量の調整をする、紙力増強剤等の接着剤の量を増やす、表面サイズの実施、表面サイズ剤の塗布量を増加する、マシンカレンダー処理を軽度にする、紙の坪量、厚みを増加させること等で達成できるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0024】
本発明のインクジェット記録用紙には、記録後の保存による画像のにじみを防止する目的でカチオン性ポリマーが好ましく用いられる。
【0025】
カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。
【0026】
本発明において、カチオン性ポリマーが、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む、質量平均分子量が2万以上のカチオン性ポリマーであることが好ましい。
【0027】
前記一般式(1)において、R4で表されるアルキル基としては、メチル基が好ましい。R1、R2及びR3で表されるアルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、またはベンジル基である。Jで表される2価の有機基としては、好ましくは−CON(R′)−を表す。R′は水素原子またはアルキル基を表す。R5で表される置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
【0028】
Xで表されるアニオン基は、例えば、ハロゲンイオン、酢酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0029】
好ましいカチオン性ポリマーは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるホモポリマーであってもよく、他の共重合可能な単量体との共重合であってもよい。共重合可能な繰り返し単位としては、前記一般式(1)以外のカチオン性単量体および、カチオン性基を有しない単量体を挙げることができる。
【0030】
また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0031】
次に、本発明に係る多孔質のインク受容層について説明する。
本発明のインクジェット記録用紙は、非吸水性支持体上に多孔質のインク受容層が設けられたものであり、この多孔質のインク受容層の形成方法としては、従来、数多くの方法が知られているが、本発明では無機微粒子と少量の親水性バインダーから空隙層が形成されているものが好ましい。
【0032】
本発明で用いることのできる無機微粒子としては、より高い画像濃度を与えるという観点において、より小粒径の微粒子が好ましい。そのような無機微粒子の例としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料を挙げることができる。
【0033】
上記無機微粒子の形状は、本発明では特に制約を受けず、球状、棒状、針状、平板状、数珠状のいずれの形状であってもよい。
【0034】
無機微粒子は、1次粒子のままで親水性バインダー中に均一に分散された状態で用いられることも、あるいは、2次凝集粒子を形成して親水性バインダー中に分散された状態で用いられても良いが、高い光沢性と速いインク吸収性を達成するという観点からは、後者がより好ましい。また、同様の観点から、皮膜中で、平均粒径が3〜200nmとなる無機微粒子を使用することが好ましい。200nm以下であれば、記録用紙の光沢性は良好であり、表面での乱反射も起こりにくいので、最高濃度が高く、鮮明な画像が得られる点で好ましい。また、本発明においては、平均粒径の下限は特に限定はされないが、無機微粒子製造上の観点から、概ね3nm以上、特に6nm以上が好ましい。これらの観点において、特に好ましい無機微粒子は、その平均粒径が20〜100nmである。
【0035】
本発明で云う無機微粒子の平均粒径は、微粒子自身や、あるいは空隙型インク受容層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、多数個の任意の微粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。本発明で云う個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0036】
無機微粒子として、無機微粒子と少量の有機物(低分子化合物でも、高分子化合物でもよい。)とからなる複合粒子でも、本発明では実質的に無機微粒子とみなす。この場合も、上記方法により測定される乾燥被膜中の最高次粒子の粒径をもって、その無機微粒子の粒径とする。
【0037】
上記無機微粒子と少量の有機物との複合粒子において、有機物/無機微粒子の質量比は、概ね1/100〜1/4である。
【0038】
本発明においては、低コストであることや高い反射濃度が得られる低屈折率の微粒子であること等から、表面がアニオン性の無機微粒子としては、気相法で合成されたシリカ又はコロイダルシリカが好ましい。又、表面がカチオン性である無機微粒子としては、カチオン表面処理された気相法シリカ、カチオン表面処理されたコロイダルシリカ、及びアルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等も用いることが出来る。
【0039】
多孔質層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙量の空隙率、無機微粒子の種類、親水性バインダーの種類に大きく依存するが、一般には記録用紙1m2当たり、通常3〜30g、好ましくは5〜25gである。空隙型インク受容層に用いられる無機微粒子と親水性バインダーとの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。無機微粒子の添加量を増やすに従いインク吸収容量も増加するが、反面、カールやひび割れ等が悪化しやすいため、空隙率のコントロールによりインク吸収容量を増加させる方法が好ましい。インク吸収容量、カール、ひび割れ等の観点から、好ましい空隙率は40〜75%である。空隙率は、選択する無機微粒子、親水性バインダーの種類によって、あるいはそれらの混合比によって、またはその他の添加剤の量を適宜調整することにより、所望の値に設定することができる。本発明でいう空隙率とは、空隙層の体積における空隙の総体積の比率であり、その層の構成物の総体積と層の厚さから計算で求めることができる。また、空隙の総体積は、ブリストー測定による飽和転移量、吸水量測定などによっても簡易に求めることができる。
【0040】
次に、本発明のインクジェット記録用紙に用いることのできる親水性バインダーについて説明する。
【0041】
本発明でいう親水性であるとは、単に水で可溶である場合の他に、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒と水との混合溶媒に可溶なポリマーも含まれる。この場合、水混和性の有機溶媒の量は、溶媒全量に対して通常50質量%以下のものをいう。
【0042】
また、親水性であるとは、上記溶媒に、バインダーが室温で通常1質量%以上溶解するものをいい、より好ましくは3質量%以上溶解するものである。
【0043】
本発明で用いる親水性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の親水性ポリマーが挙げられる。これらの親水性ポリマーは、2種以上併用することも可能である。
【0044】
本発明で好ましく用いられる親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられ、更に、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0045】
本発明において、インク受容層に使用されるバインダーは、水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を含むことが好ましい。
【0046】
ここで言うエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を使って乳化重合させた樹脂である。
【0047】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子の分散剤が挙げられる。
【0048】
本発明に係るエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0049】
水酸基を含む高分子分散剤とは、平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0050】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク受容層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0051】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0052】
これらエマルジョン樹脂は、空隙層形成時に柔軟性を付与するものであり、室温でも柔軟な性質を持つものが適しており、より好ましくは室温で融着して当該層を形成するものであって、このときエマルジョン樹脂をフィルム化した場合のTgが20℃以下であることが好ましく、−40〜10℃であることがより好ましい。
【0053】
本発明に係る水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂の平均粒径は0.01〜2μmが好ましいが、インク受容層を構成する材料で平均粒径が大きいものが含まれると、インク受容層中における光の散乱により透明性が低下し、印字濃度の低下が起きてしまう。したがって、より好ましい態様は、無機微粒子の平均粒径が5〜100nmであり、バインダーが水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合された0.05〜1.0μmのエマルジョン樹脂を含んで構成され、無機微粒子とバインダーの質量比が2:1〜10:1である。さらにエマルジョン樹脂は平均粒径が0.05〜0.5μmであることが特に好ましい。
【0054】
本発明の水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂の製造法は特に制限はなく、公知の乳化重合法で製造される。
【0055】
このようなエマルジョン樹脂で市販されているものとしては、例えば大同化学工業社製のビニゾール480やビニゾール2023等の酢酸ビニル系エマルジョン、日信化学工業社製のビニブラン1108W、ビニブラン1084W等の酢酸ビニル系エマルジョンや、ビニブラン2597、ビニブラン2561等のアクリル系エマルジョン、住友化学工業社製ののスミカフレックスS−400、スミカフレックスS−405等の酢酸ビニル−エチレン系エマルジョンなどが挙げられる。
【0056】
本発明において、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を使用することで、それ以外のエマルジョン樹脂の使用により製造時に発生するインク受容層のしわやクラックを減少させることができる。
【0057】
その機構は明らかではないが、無機微粒子とエマルジョン樹脂の相互作用により、しわやクラックの発生が抑制されているものと考えられる。すなわち、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂は、その表面に高分子分散剤由来の水酸基が存在し、それが無機微粒子表面にある水酸基と水素結合することにより、エマルジョン樹脂と無機微粒子との接着性が向上すると考えられる。更に、有機化合物であるエマルジョン樹脂は、同じ有機化合物であるバインダーともなじみが良く、結果として無機微粒子とエマルジョン樹脂、バインダーの三者が強固に結合するようになり、インク受容層の脆弱性が改善され、クラックが無い、柔軟なインク受容層が形成されるものと思われる。
【0058】
本発明のインクジェット記録用紙には、インク受容層の物理強度を調整する目的、または塗布乾燥時の塗工皮膜のひび割れを防止する目的で硬膜剤を用いることが好ましい。
【0059】
硬膜剤は、一般的には前記親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物或いは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0060】
硬膜剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ほう酸及びその塩、ほう砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0061】
特に好ましい親水性バインダーとしてポリビニルアルコール及びまたはカチオン変性ポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸及びその塩、及びエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。最も好ましいのは、ほう酸及びその塩から選ばれる硬膜剤である。
【0062】
ほう酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、八ほう酸及びそれらの塩が含まれる。
【0063】
上記硬膜剤の使用量は親水性バインダーの種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、通常親水性バインダ1g当たり5mg〜500mg、好ましくは10mg〜300mgである。
【0064】
本発明のインクジェト記録用紙のインク受容層及び必要に応じて設けられるその他の層には、前記以外に各種の添加剤を添加することが出来る。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、紫外線吸収剤、退色防止剤、蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0065】
本発明のインクジェット記録用紙に係る支持体について説明する。
本発明に用いる支持体は従来インクジェット記録用紙用として公知のものを適宜使用でき、吸水性支持体であってもよいが、非吸水性支持体であることが好ましい。
【0066】
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば一般の紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。又、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0067】
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0068】
紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。又、必要に応じて抄紙段階または抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0069】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、透明支持体または不透明支持体がある。透明支持体としてはポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、100μm〜200μmが好ましい。
【0070】
又不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0071】
前記各種支持体とインク受容層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明のインクジェット記録用紙は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0072】
本発明のインクジェット記録用紙では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0073】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ或いはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及びまたはLDPの比率は10質量%〜70質量%が好ましい。
【0074】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0075】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0076】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70%が好ましい。尚、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0077】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは80〜250μmが好ましい。
【0078】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7〜1.2g/m3(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0079】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0080】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0081】
特にインク受容層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3質量%〜20質量%、好ましくは4質量%〜13質量%である。
【0082】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、又、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0083】
上記ポリエチレン被覆紙においては紙中の含水率を3質量%〜10質量%に保持するのが特に好ましい。
【0084】
本発明の記録用紙の空隙層及び下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種のインク受容層を支持体上に塗布する方法は公知の方法から適宜選択して行うことが出来る。好ましい方法は、各層を構成する塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダー層を1回の塗布で済ませる同時塗布が好ましい。
【0085】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法或いは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0086】
【実施例】
実施例1
〈記録用紙101〜120の作製〉
「支持体の作製」
支持体に用いる紙のマシンカレンダー処理強度、紙の厚みを変化させて作製した原紙の裏面に押し出し塗布法により密度が0.92の低密度ポリエチレンを30μmの厚さで塗布した。ついで表側にアナターゼ型チタン5.5質量%含有する密度が0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで押し出し塗布法で塗布して両面をポリエチレンで被覆した表1に示すようなMD方向のテーバー剛度の支持体を作製した。
【0087】
「エマルジョン(1)の作製」
5%ポリビニルアルコール水溶液(重合度1700、けん化度88.5モル%)400kgをpH3.5に調整し、攪拌しながらメタクリル酸メチル50kgとアクリル酸ブチル50kgを加えて60℃に昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10kgを添加して重合を開始した。30分後、メタクリル酸メチル100kgとアクリル酸ブチル100kgを3時間かけて徐々に添加し、8時間後、重合率が99.9%となったところで冷却した。これをpH7.0に中和し、エマルジョン(1)を作製した。このエマルジョンを真空乾燥器にて60℃で乾燥し、示差走査熱量計によりTgを測定したところ、5℃であった。
【0088】
「塗布液の作製」
硝酸でpH2.5に調整した純水に、微粒子の気相法シリカ(トクヤマ製:レオロシールQS−20)を分散して20%のシリカ分散液を400kg調製した。これにpH2.5に調整したカチオン性ポリマー(1)(n:m=70:30)の20%水溶液80kg、ホウ酸2.1kgおよびホウ砂1.5kgを溶解した水溶液60Lを添加し、高圧ホモジナイザーで分散した。得られた分散液を40℃で攪拌しながら、エマルジョン(1)の添加量を変えて、表1に示すインク受容層の破断伸びとなるように加え、ポリビニルアルコール(クラレ製:PVA235)の10%水溶液80Lを加え、全体の液が1000Lになるように純水を加えて半透明状の塗布液を得た。
【0089】
【化2】
【0090】
次に、支持体上の記録面側に、上記の塗布液を塗布幅1mで湿潤膜厚が180μmになるように3000m塗布し、8℃で10秒間冷却した後、20〜40℃の風で乾燥させて巻取り、表1に示すような破断伸びのインクジェット記録用紙を得た。なお、記録用紙の支持体の厚さは表1に示した。
【0091】
「粉落ち」
記録用紙400枚をギロチンカッターにて断裁し、目視にて粉落ちを評価した
○:粉落ちはなく、製品として問題のないレベル
△:若干粉落ちは発生するものの、製品としてやや問題のレベル
×:粉落ちが多く、製品として問題のレベル。
【0092】
「擦り傷」
塗布乾燥後に巻取ったロールの巻芯部の擦り傷を観察し、巻芯から擦り傷の発生しなくなるまでの塗布長により下記のように評価した。
○:巻芯部に擦り傷の発生がなく、製造上、問題のないレベル
△:巻芯部から塗布長20m部分まで擦り傷があり、製造上、やや問題のレベル
×:巻芯部から塗布長100m部分まで擦り傷があり、製造上、問題のレベル。
【0093】
【表1】
【0094】
表1から、記録用紙の支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度を0.4〜3.0mN・mとし、Tg20℃以下のエマルジョンをインク受容層に添加し、カチオンポリマーとして芳香族含有モノマー(一般式(1)で表される化合物)と脂肪族含有モノマーのコポリマーを併用し、記録用紙のインク受容層の破断伸びを2〜5%にする(本発明の記録用紙)ことで、比較の記録用紙とは異なり、記録用紙をロールで使用する場合でも、粉落ち、擦り傷の生じないインクジェット記録用紙を提供することができることが判る。
【0095】
実施例2
〈記録用紙201〜204の作製〉
実施例1の塗布液の作製において、カチオン性ポリマー(1)をカチオン性ポリマー(2)に変えた以外は、実施例1と同様に塗布液を作製した。尚、実施例1と同様に、エマルジョン(1)の添加量を変えて、表2に示すインク受容層の破断伸びとなるようにした。なお、記録用紙の支持体の厚さは表2に示した。
【0096】
【化3】
【0097】
〈記録用紙205の作製〉
カチオン性ポリマー(3)の20%水溶液(pH=2.5)50gに微粒子シリカ(日本アエロジル製:アエロジル200)の20%水分散液を500g、ついでホウ酸1.5g、ホウ砂1.5gを添加し、高速ホモジナイザーで分散した。次にこの水分散液中に、ポリビニルアルコール(クラレ製:PVA235)の6%水溶液270mlを添加し、エマルジョン(1)18.2g、退色防止剤カヤフィックスM(日本化薬製)2.4g、退色防止剤(1)2.7g、最後に液全体の体積が1000mlになるように純水を加えて半透明状の塗布液(A)を得た。
【0098】
【化4】
【0099】
カチオン性ポリマー(2)の20%水溶液(pH=2.5)55gに微粒子シリカ(日本アエロジル製:アエロジル200)の20%水分散液を500g、ついでホウ酸2g、ホウ砂1.5gを添加し、高速ホモジナイザーで分散した。次にこの水分散液中に、ポリビニルアルコール(クラレ製:PVA235)の6%水溶液270mlを添加し、エマルジョン(1)18.2g、退色防止剤カヤフィックスM(日本化薬製)2.4g、退色防止剤(1)2.7g、最後に液全体の体積が1000mlになるように純水を加えて半透明状の塗布液(B)を得た。
【0100】
実施例1で用いた厚さ170μmの支持体上に、塗布液(A)の湿潤膜厚が80μm、その上に塗布液(B)の湿潤膜厚が80μmになるように3000m塗布し、8℃で10秒間冷却した後、20〜40℃の風で乾燥させて巻取り、表2に示すような破断伸びのインクジェット記録用紙205を得た。
【0101】
〈記録用紙206の作製〉
記録用紙205の作製でカヤフィックスMの添加量を0.5g、退色防止剤(1)の添加量を4.2gに変えた以外は記録用紙205の作製と同様にして、表2に示すような破断伸びのインクジェット記録用紙206を得た。
【0102】
【表2】
【0103】
表2から、カチオン性ポリマーを変えても本発明の記録用紙は、粉落ち、擦り傷の生じないインクジェット記録用紙であることが判る。
【0104】
実施例3
〈記録用紙301〜304の作製〉
実施例1の塗布液の作製において、エマルジョン(1)を添加せず、カチオン性ポリマー(1)の組成比が表3に示すものに変えた以外は、実施例1と同様に塗布液を作製した。尚、カチオン性ポリマー(1)の添加量を調整して、表3に示すインク受容層の破断伸びとなるようにした。また、記録用紙の支持体の厚さは表3に示した。
【0105】
【表3】
【0106】
表3から、エマルジョン(1)を添加しなくても本発明の記録用紙は、粉落ち、擦り傷の生じないインクジェット記録用紙であることが判る。
【0107】
実施例4
〈記録用紙401〜404の作製〉
硝酸でpH2.5に調整した純水に、微粒子の気相法シリカ(トクヤマ製:レオロシールQS−20)を分散して20%のシリカ分散液を400kg調製した。これにpH2.5に調整したカチオン性ポリマー(2)の20%水溶液80kg、ホウ酸1.05kgおよびホウ砂0.75kgを溶解した水溶液60Lを添加し高圧ホモジナイザーで分散した。得られた分散液を40℃で攪拌しながら、ポリビニルアルコール(クラレ製:PVA235)の10%水溶液80Lを添加し、グリセリンを表4に示すインク受容層の破断伸びとなるように添加し、水を加え全体の液が1000Lになるように純水を加えて半透明状の塗布液を得た。
【0108】
次に、支持体上の記録面側に、上記の塗布液を湿潤膜厚が180μmになるように塗布し、8℃で10秒間冷却した後、20〜40℃の風で乾燥させて表4に示すような破断伸びのインクジェット記録用紙を得た。記録用紙の支持体の厚さは表4に示した。
【0109】
【表4】
【0110】
表4から、記録用紙の支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度を0.4〜3.0mN・mとし、グリセリンをインク受容層に添加しその添加量を加減することにより、記録用紙のインク受容層の破断伸びを2〜5%にすると、記録用紙をロールで使用する場合でも、粉落ち、擦り傷の生じないインクジェット記録用紙を提供することができることが判る。
【0111】
【発明の効果】
本発明により、断裁時の粉落ちがなく、また塗布巻取り時にインク受容層表面に擦り傷の発生しないインクジェット記録用紙を提供することができた。
Claims (12)
- 支持体上に無機微粒子と親水性バインダーを含有する多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録用紙において、該記録用紙のインク受容層の破断伸びが2〜5%であり、かつ該支持体のJIS P8125に基づくMD方向のテーバー剛度が0.4〜3.0mN・mであることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 無機微粒子の一次平均粒径が、3〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
- 無機微粒子が、シリカ微粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
- 無機微粒子が、気相法シリカであることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録用紙。
- 親水性バインダーが、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- インク受容層が、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーが、側鎖に該第4級アンモニウム塩基を有することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録用紙。
- インク受容層が、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
- 水酸基を有する高分子分散剤が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録用紙。
- エマルジョン樹脂のTgが、20℃以下であることを特徴とする請求項9又は10に記載のインクジェット記録用紙。
- 支持体が、厚さ140μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
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-
2002
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EP1705028A1 (en) | 2005-03-22 | 2006-09-27 | Seiko Epson Corporation | Ink jet recording material |
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