JP2004314321A - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】高いインク吸収性と光沢、滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙を製造時の負荷が少なく安価に提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも微粒子とバインダーを含有するインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、前記微粒子がBET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物を含み、前記バインダーが少なくとも水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を1種以上含んで構成されることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に少なくとも微粒子とバインダーを含有するインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、前記微粒子がBET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物を含み、前記バインダーが少なくとも水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を1種以上含んで構成されることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高いインク吸収性と光沢及びプリント濃度を有し、更に滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙とも言う)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録は急速に画質が向上してきており、写真画質に迫りつつある。この様な写真画質をインクジェット記録で達成する手段として、使用する記録用紙においても急速に技術改良が試みられており、高平滑性の支持体上に微小な空隙を有する層(以下、空隙層又は多孔質層とも言う)を設けた記録用紙は、インク吸収性及び乾燥性に優れていることから最も写真画質に近いものの一つになりつつある。特に、非吸収性支持体を使用した場合、吸水性支持体に見られるようなプリント後のコックリング(皺)がなく、高平滑な表面を維持できるので、より高品位な印字プリントを得ることができる。
【0003】
このような多孔質層は、主に親水性バインダーと微粒子で形成されており、微粒子としては無機又は有機の微粒子が知られているが、一般的には、より微細な無機微粒子が用いられる。そのような無機微粒子としては比較的安価な微粒子シリカがよく使用され、例えば気相法で合成された微粒子シリカやコロイダルシリカと少量の親水性バインダーの組合せで得られるインクジェット記録用紙が知られている。又、疑ベーマイトと有機バインダーから成る多孔質層を設けたインクジェット用記録用紙が湿度変化を受け難い技術が知られている(特許文献1)。
【0004】
又、インク吸収層に無機微粒子とカルボンアミド化合物を併用し、
これら微粒子シリカは表面がアニオン性であるため、インク定着性がなく、耐水性を付与したり、プリント保存後に起きる滲みを抑制する為に、一般的にカチオンポリマーや多価金属塩などのカチオン定着剤が必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなカチオン定着剤を使用しても、インク定着性は未だ不充分であり、しかも定着性を高めるためにカチオン定着剤を多量に添加すると、インク吸収を阻害したりコストが高いなどの問題点がある。
【0006】
微粒子表面がカチオン性の無機微粒子の一つとしてアルミナ微粒子がある。一般にインクジェット記録用紙に用いられるアルミナ微粒子は、その製造方法により分類され、一つは擬ベーマイト等のようなアルミン酸塩を加水分解するなどの方法で製造される、いわゆる湿式のアルミナ及びアルミナ水和物であり、もう一つは気相法により製造される気相法アルミナとがある。
【0007】
これらアルミナ及びアルミナ水和物は、シリカと比較してカチオン性であるので、カチオン定着剤を使用しなくてもインク定着性を有する、あるいは光沢が高いといった利点がある。又、アルミナ及びアルミナ水和物は、微粒子の質量に対するバインダーの質量の比がシリカより少なくても塗布・乾燥時に「ひび割れ」しない場合が多く、高い空隙率を維持してインク吸収性を高めるためにも、バインダーの使用量を成る可く少なくすることが多い。
【0008】
しかしながら、このようにして出来たインク吸収層はバインダー量が少ないため、インク吸収層が脆弱であり、空気が乾燥している状態でインクジェット記録用紙を丸めたり折ったりすると、インク吸収層が割れて「ひび」が入ることがあり、特に高光沢な記録用紙の場合は、折った時の「ひび割れ」が目立ってしまい、問題となることが判った。又、インク吸収層に無機微粒子とカルボンアミド類を併用することで記録用紙の耐水性を向上させることも提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
又、アルミナ又はアルミナ水和物を使用したインク吸収層でバインダー量が少ない場合、インクジェット記録用紙を作製する際の塗布・乾燥時において記録用紙がカールする(強く丸まってしまう)ことがあり、乾燥が困難になったり、乾燥後に丸まった記録用紙を平滑に矯正しなければならないといった生産時の問題があることが判った。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−297831号公報
【0011】
【特許文献2】
特開2000−141867号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、高いインク吸収性と光沢、滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙を製造時の負荷が少なく安価に提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記の構成により達成される。
【0014】
1)支持体上に少なくとも微粒子とバインダーを含有するインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、前記微粒子がBET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物を含み、前記バインダーが少なくとも水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を1種以上含んで構成されるインクジェット記録用紙。
【0015】
2)高分子分散剤がポリビニルアルコール又はその誘導体であり、それらの平均重合度が1500〜5000である1)記載のインクジェット記録用紙。
【0016】
3)エマルジョン樹脂のTg(硝子転移温度)が20℃以下である1)又は2)記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
4)バインダーが水溶性樹脂及び、ポリビニルアルコール又はその誘導体を分散剤として乳化重合されたエマルジョン樹脂を含んで構成される1)、2)又は3)記載のインクジェット記録用紙。
【0018】
5)水溶性樹脂がポリビニルアルコール又はその誘導体であり、その平均重合度が2000〜5000である4)記載のインクジェット記録用紙。
【0019】
6)アルミナが気相法により製造されたアルミナである1)〜5)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0020】
7)支持体が非吸水性支持体である1)〜6)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0021】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
記録用紙のインク吸収層には、アルミナ又はアルミナ水和物が用いられる。一般に、インクジェット記録用紙に使われるアルミナとしては、気体状の塩化アルミニウムを水素及び酸素とともに加熱燃焼させ高温で加水分解することにより得られる気相法アルミナと、アルミン酸塩を加水分解して焼成するなどの方法で製造される、いわゆる湿式のアルミナ及びアルミナ水和物が挙げられるが、これらのアルミナやアルミナ水和物の性質は、その比表面積及び構造と密接な関係がある。尚、微粒子の比表面積はBET法により測定される。
【0022】
アルミナ及びアルミナ水和物は、微粒子そのものにインク定着性があり、プリント時の斑やブロンジングの要因となるカチオン定着剤を添加する必要がなく、インク吸収性を高めることができる。この性質は、インクジェットのインクに使用される染料の殆どはアニオン性であるが、アルミナやアルミナ水和物の表面はカチオン性の性質を持ち、微粒子表面に染料が吸着されることにより発現する。そのため、アルミナやアルミナ水和物のインク定着性の強弱は、微粒子の比表面積に相関する。
【0023】
又、アルミナ及びアルミナ水和物は、その表面に反応性の水酸基を有しており、水酸基の水素結合によって微粒子間に相互作用が生じて三次元的な空隙を形成し、その空隙にインクの溶媒が吸収されることによってインクの吸収容量が増加し、インク吸収性が高まる。
【0024】
湿式のアルミナ及びアルミナ水和物は200〜400m2/gの比表面積を有するものが多いが、その製造過程から粒子内部に細孔が多数存在しており、内部表面積が大きい。このことは即ち、インクの染料が吸着する表面は多いが、多くの表面が粒子の内側を向いているため粒子間で水素結合ができる水酸基の数は少なく、空隙を形成しにくくなりインク吸収容量が少なくなると思われる。
【0025】
一方、気相法アルミナは内部に細孔が殆ど存在せず、その表面の殆どが粒子の外側を向いているため、湿式のアルミナやアルミナ水和物よりも粒子間水素結合をする水酸基の数が多く、空隙を作り易い。
【0026】
本発明で使用されるアルミナ又はアルミナ水和物としては、湿式のアルミナ又はアルミナ水和物、気相法アルミナの何れも使用できるが、インク吸収性の点で擬ベーマイト又は気相法アルミナが好ましく、より好ましくは気相法アルミナである。又、好ましい比表面積としては、インク定着性を高める点で100〜400m2/gである。
【0027】
更に本発明者らは、比表面積が120〜250m2/gの気相法アルミナを使用することにより、インクの吸収性、及び定着性、耐水性を同時に付与できることを見い出した。即ち、気相法アルミナ微粒子の比表面積が120m2/g以上ではインクの定着性が強く、耐水性、滲み耐性が満足され、比表面積が250m2/g以下の場合に気相法アルミナ微粒子間の相互作用をコントロールすることができ、粉体としての取扱いが容易であり、分散液の粘度も低く、又、安定性が高いので塗工の負荷が少ない。従って、最も好ましいアルミナ又はアルミナ水和物としては、比表面積が120〜250m2/gの気相法アルミナである。
【0028】
上記気相法アルミナを使用する場合、分散は分散液のpHが3〜5の範囲で行われることが好ましい。比表面積が120m2/g以上の気相法アルミナで分散液のpHが未調整の場合、粒子間相互作用が強まるため水に対する分散性が劣化して分散液が増粘してしまい、固形分で15質量%以上の濃度での分散が困難となる時がある。希釈して分散液の濃度を低くすれば分散可能となるが、生産時の塗布・乾燥工程に負荷が大きくなり好ましくない。又、停滞安定性も劣化する場合がある。分散液のpHを3〜5に調整すると粒子間相互作用がコントロールされて分散性が向上し、固形分濃度30質量%以上でも分散可能となり、停滞安定性にも優れ、しかも高いインク吸収性を維持することができる。
【0029】
本発明で使用されるアルミナ又はアルミナ水和物の分散液は、1次粒子が複数結合して2次粒子を形成している。インク吸収性や分散安定性、透明性、光沢性の点で、アルミナ又はアルミナ水和物の1次粒子の平均粒径は概ね5〜12nmが好ましく、7〜11nmが取扱いや分散性の点でより好ましい。2次粒子径は30〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。尚、アルミナの1次粒子及び2次粒子の平均粒径は空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径から求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0030】
アルミナ又はアルミナ水和物の分散には、高圧ホモジナイザー、高速攪拌分散機、サンドミル、超音波分散機などを用いることができるが、本発明においてはサンドミルが好ましい。サンドミルに用いるビーズは1.0mm以下のジルコニアビーズが好ましく、更に好ましくは0.5mm以下のジルコニアビーズである。アルミナ又はアルミナ水和物の使用量は、プリント時のインク定着性や光沢性を維持するために記録用紙1m2当たり概ね5〜40g、好ましくは7〜30gである。
【0031】
又、本発明に使用される微粒子として、上記アルミナ又はアルミナ水和物の他に様々な微粒子を併用することもできる。併用できる微粒子としては、例えば軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、トポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
本発明では、空隙を形成するためにアルミナ又はアルミナ微粒子とバインダーを使用するが、高い空隙率を維持してインク吸収性を高めるため、バインダーの使用量を成る可く少なくすることが好ましい。特にアルミナ及びアルミナ水和物は、他の微粒子、例えばシリカと比べて、微粒子の質量に対するバインダーの質量の比が少なくても塗布・乾燥時に「ひび割れ」しない場合が多く、この特性を生かして微粒子/バインダーの比を高くすることが多い。
【0033】
しかしながら、このようにして得られたアルミナ又はアルミナ水和物を使用した記録用紙は、空気が乾燥している状態で記録用紙を丸めたり折ったりすると、インク吸収層が割れて「ひび」が入ることがあり、特に高光沢なインクジェット記録用紙の場合は折った時の「ひび割れ」がよく目立って問題となる。又、記録用紙を作製する際の塗布・乾燥時において、上記のようなアルミナ又はアルミナ水和物を使用してバインダーの量が少ないインク吸収層の場合、シリカを使用した場合よりも塗布・乾燥時のカールが強く、乾燥が困難となったり、丸まった記録用紙を平滑に矯正しなければならないといった生産時の問題があった。
【0034】
これらの問題には次のような原因が考えられる。即ち、本発明のような多孔質の空隙層を形成するインク吸収層の場合、皮膜は硬い微粒子に対して柔らかいバインダー樹脂の量が少なく、インク吸収性は高いが硬くて脆い膜になると考えられる。特にバインダー樹脂として親水性の樹脂を使用した場合、親水性の樹脂は湿度の影響による柔軟性の変化が大きく、乾燥した状態では破断伸度が極端に小さくなり、伸びなくなるものが多い。このため、記録用紙を乾燥させると、バインダー樹脂の伸張が殆ど生じなくなり、柔軟性に乏しい脆弱な皮膜となり、曲げたり丸めるといった外部からの応力に対して折れて割れ易いものになると考えられる。又、記録用紙を製造する際の塗布・乾燥時において、インク吸収層は乾燥収縮しようとするが、柔軟性の高い皮膜の場合は乾燥収縮を緩和して記録用紙が丸まらないが、柔軟性に乏しく硬い皮膜の場合は、乾燥収縮を緩和することができずカールしてしまうと考えられる。
【0035】
更に、本発明のようにアルミナ微粒子を使用する場合、前述のようにシリカと比較して微粒子の質量に対するバインダーの質量の比を少なくすることが多く、シリカを使用した皮膜より柔軟性に乏しいものとなり、その結果上記の問題がシリカを使用した場合よりも極端に発現すると考えられる。
【0036】
又、支持体に非吸水性支持体を使用する場合、十分なインク吸収性を持たせるために比較的厚いインク吸収層が必要となるが、インク吸収層が厚くなった場合、塗布・乾燥時の乾燥収縮が大きく、上記問題が顕著になる。
【0037】
これら問題に対し、湿度の影響を受け難く、常に柔軟な疎水性の樹脂を添加することでインク吸収層の脆弱性や柔軟性が改良されると考え、これまで低分子の界面活性剤で分散、乳化重合したエマルジョン樹脂やラテックス粒子をインク吸収層に添加する方法を試みたが、これら樹脂は添加量が多くなるとインク吸収層に皺が生じたり、塗布・乾燥時に「ひび割れ」が発生し、添加量を増やすことができず、十分な改良ができなかった。
【0038】
これら課題に対し本発明者らが鋭意検討した結果、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を1種以上含んで構成することにより、アルミナ又はアルミナ水和物の質量に対するバインダーの質量比が少なくても、空気が乾燥している状態で記録用紙を丸めたり折ったりしてもインク吸収層が割れて「ひび」が入ることがなく、更にインクジェット記録用紙を作製する際の塗布・乾燥時に記録用紙が強くカールしないので乾燥が容易となり、又、丸まった記録用紙を平滑に矯正する必要もなくなることを見い出した。
【0039】
本発明に使用されるバインダーとしては、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を1種以上含んで構成されるが、ここで言うエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを、分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を使って乳化重合させた樹脂である。
【0040】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子の分散剤が挙げられる。
【0041】
本発明におけるエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって出来上がるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とは、エマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0042】
水酸基を含む高分子分散剤とは、平均分子量が10,000以上の高分子の分散剤で、側鎖又は末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子と2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられ、特にポリビニルアルコール(PVA)及びその誘導体が好ましい。
【0043】
高分子分散剤として使用されるPVA及びその誘導体としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVA、及びカチオン変性したPVAやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性PVA、シリル基を有するシリル変性PVA等の変性PVA等がある。
【0044】
PVA及びその誘導体は、平均重合度の高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5,000以内であるとエマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱い。従って、平均重合度は300〜5,000のものが好ましく、1,500〜5,000のものがより好ましく、3,000〜4,500のものが特に好ましい。PVAの鹸化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%がより好ましい。
【0045】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、又はブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体、又は共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0046】
これらエマルジョン樹脂は空隙層形成時に柔軟性を付与するものであり、室温でも柔軟な性質を持つものが適しており、エマルジョン樹脂をフィルム化した場合のTgが20℃以下であることが好ましく、−40〜10℃であることがより好ましい。
【0047】
水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂の平均粒径は0.01〜2μmが好ましいが、インク吸収層を構成する材料で平均粒径が大きいものが含まれると、インク吸収層中における光の散乱により透明性が低下し、印字濃度の低下が起きてしまう。従ってエマルジョン樹脂の平均粒径は、0.05〜0.5μmであることが特に好ましい。
【0048】
水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂の製造法は特に制限はなく、公知の乳化重合法で製造される。又、このようなエマルジョン樹脂で市販されているものとして、例えば大同化成工業社製のビニゾール480やビニゾール2023等の酢酸ビニル系エマルジョン、日信化学工業社製のビニブラン2597、ビニブラン2561等のアクリル系エマルジョン、住友化学工業社製のスミカフレックスS−400等の酢酸ビニル−エチレン系エマルジョン等が挙げられる。
【0049】
バインダーとして、上記エマルジョン樹脂の他に公知の各種バインダーを併用することもできるが、併用する場合は水溶性樹脂が好ましい。好ましく併用できる水溶性樹脂としては、ゼラチン、PVA、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、寒天、プルプラン、デキストリン、アクリル酸、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カゼイン、アルギン酸等が挙げられ、2種以上を併用することもできる。これらの中で特に好ましい水溶性樹脂はPVA及びその誘導体である。
【0050】
併用するPVAの誘導体としては、カチオン変性したPVAやアニオン性基を有するアニオン変性PVA、シリル基を置換したシリル変性PVA等変性PVA等が挙げられる。
【0051】
併用するPVA及びその誘導体は、平均重合度が300以上のものが好ましく、特に平均重合度が1,000〜5,000のものが好ましく、特に好ましくは2,000〜4,500である。又、鹸化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものが特に好ましい。
【0052】
カチオン変性PVAは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を鹸化することにより得られる。カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0053】
カチオン変性PVAのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。カチオン変性PVAの重合度は通常500〜4,000、好ましくは1,000〜4,000が好ましい。又、カチオン変性PVAの鹸化度は、通常、60〜100モル%、好ましくは70〜99モル%である。
【0054】
水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂と水溶性樹脂を併用する場合、バインダー中に含まれる水溶性樹脂に対するエマルジョン樹脂の割合は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上が特に好ましい。
【0055】
上記バインダーの使用量は、インク吸収層が空隙層になるようにするためにアルミナ又はアルミナ水和物に対して比較的少量使用され、皮膜が安定に形成され支持体との接着性が充分保てる範囲で出来るだけ少なく使用するのが好ましい。本発明において、好ましいバインダーの使用量は、バインダーに対するアルミナ又はアルミナ水和物の質量比で5〜20の範囲であることが好ましく、特に7〜15が好ましい。この範囲であれば、充分なインク吸収性と塗布・乾燥時の「ひび割れ耐性」を満足することが出来る。
【0056】
アルミナ又はアルミナ水和物の分散液のpH調整に使用されるpH調整剤は特に制約はなく、如何なるものも使用できるが、好ましくは塩酸、硝酸、酢酸、燐酸、枸櫞酸であり、特に硝酸が好ましい。又、バインダーにPVA及びその誘導体をエマルジョン樹脂と共に併用する場合には、硼酸を用いることがPVA及びその誘導体の架橋剤としての機能を付与できる点で好ましい。
【0057】
本発明の記録用紙は、高光沢性で高い空隙率を皮膜の脆弱性を劣化させずに得るために、前記バインダーが硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
【0058】
硬膜剤は、一般的には前記バインダーと反応し得る基を有する化合物、あるいはバインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0059】
硬膜剤の具体例としては、例えばエポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、硼酸及びその塩、硼砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0060】
特に好ましいバインダーとしてPVA及び又はカチオン変成PVAをエマルジョン樹脂と共に併用する場合には、硼酸及びその塩、及びエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。最も好ましいのは硼酸及びその塩から選ばれる硬膜剤である。硼酸又はその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことを示し、具体的にはオルト硼酸、二硼酸、メタ硼酸、四硼酸、五硼酸、及び八硼酸及びそれらの塩が含まれる。
【0061】
硬膜剤の使用量は、バインダーの種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類やバインダーに対する比率等により変化するが、概ね親水性バインダー1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜400mgである。
【0062】
硬膜剤は、空隙層を構成する塗布液を塗布する際に空隙層形成の塗布液中及び/又は空隙層に隣接するその他の層を形成する塗布液中に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、前記空隙層を形成する塗布液を塗布したり、更には空隙層を形成する硬膜剤非含有の塗布液を塗布・乾燥後に硬膜剤溶液をオーバーコートするなどして、空隙層に硬膜剤を供給することができるが、好ましくは、製造上の効率から空隙層を形成する塗布液又はこれに隣接する層の塗布液中に硬膜剤を添加して、空隙層を形成するのと同時に硬膜剤を供給するのが好ましい。
【0063】
インクジェット記録用紙のインク吸収層及び必要に応じて設けられるその他の層には、上述した以外の各種添加剤を使用することができる。例えば、印字記録後の耐水性、滲み耐性を向上させるためにカチオン定着剤を添加することもできる。
【0064】
カチオン定着剤としては、カチオン性ポリマー、あるいは水溶性の多価金属イオン等が挙げられ、カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物などが挙げられる。又、化学工業時報,平成10年8月15,25日に記載のカチオン性ポリマー、三洋化成工業社発行「高分子薬剤入門」に記載の高分子染料固着剤も例として挙げられる。
【0065】
プリント保存時の滲み耐性を向上する観点から、下記構造のカチオンポリマーが特に好ましい。
【0066】
【化1】
【0067】
又、水溶性の多価金属イオンとしては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、錫、鉛などの金属塩が挙げられる。中でもマグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛から成る化合物は無色なので好ましい。又、水溶性の多価金属イオンの塩として、ポリ塩化アルミニウムのような水溶性無機ポリマーを使用してもよい。
【0068】
カチオン定着剤は如何なる層に添加しても構わない。又、カチオン定着剤の使用量は、アルミナ又はアルミナ水和物に対する質量比で10%以下、より好ましくは8%以下であることがインク吸収性の劣化を抑制するので好ましい。
【0069】
カチオン定着剤の添加方法としては、塗布液に直接添加して塗布する方法の他、記録用紙の塗布・乾燥後にカチオン性の樹脂や水溶性の多価金属イオンの水溶液をオーバーコートして乾燥するといった方法でも構わない。
【0070】
その他の添加剤としては、例えばアニオン、カチオン、非イオン、両性の各界面活性剤;ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の水溶性ポリマー;イソシアネート系化合物等の架橋剤;特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤;特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載される退色防止剤;特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載される蛍光増白剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤;消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0071】
本発明の記録用紙のインク吸収層は、単層構成でも2層以上から構成されてもよく、この場合、それらのインク吸収層の構成は互いに同じでも異なってもよい。
【0072】
記録用紙の支持体としては、吸水性又は非吸水性の支持体を用いることができるが、非吸水性支持体の方がプリント後に皺の発生がなく、画像に平滑性の差が生ぜずに高品位のプリントが得られるため好ましい。
【0073】
吸水性支持体としては紙支持体が一般的であるが、布あるいは多孔質のフィルム支持体も含まれる。
【0074】
非吸水性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート(TAC)系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料から成るフィルム等、金属やガラス、更にはポリエチレン(PE)樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(所謂RCペーパー)、PETに白色顔料を添加したホワイトペット等が挙げられる。その中でも、原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られる為に特に好ましい。
【0075】
以下、特に好ましい支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。
【0076】
支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPの何れも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/又はLDPの比率は10〜70%が好ましい。
【0077】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0078】
紙中には、例えば高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0079】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%であることが好ましい。尚、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0080】
紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に、70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。
【0081】
紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度は、JIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、pH5〜9であることが好ましい。
【0082】
紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。
【0083】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ−i−ブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、PEが特に好ましい。
【0084】
以下、特に好ましいPEについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するPEは、主として低密度のPE(LDPE)及び/又は高密度のPE(HDPE)であるが、他のLLDPEやPP等も一部使用することができる。
【0085】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリオレフィンに対して概ね1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%である。
【0086】
ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い着色顔料や蛍光増白剤を添加することができる。着色顔料としては、例えば群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。
【0087】
蛍光増白剤としては、例えばジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0088】
紙の表裏のPEの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはPE層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のPEの比率はインク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のPEの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0089】
更に、上記PE被覆紙支持体は、以下(1)〜(7)の特性を有していることが好ましい。
【0090】
(1)引っ張り強さ:JIS P 8113で規定される強度で、縦方向が19.6〜294N、横方向が9.8〜196Nである。
【0091】
(2)引き裂き強度:JIS P 8116で規定される強度で、縦方向が0.20〜2.94N、横方向が0.098〜2.45Nである。
【0092】
(3)圧縮弾性率:9.8kN/cm2。
(4)不透明度:JIS P 8138に規定された方法で測定した時に80%以上、特に85〜98%である。
【0093】
(5)白さ:JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、それぞれL*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2である。
【0094】
(6)クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である。
【0095】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10%。
(8)インク受容層を設ける光沢度(75度鏡面光沢度)は10〜90%である。
【0096】
本発明におけるインク吸収層は2層以上の構成となるが、その製造方式としては、インク吸収層を含む各構成層を各々単独に複数回に分けて塗布・乾燥して製造することもでき、あるいは複数層を同時に塗布・乾燥して製造することもできるが、製造上のコストの点から同時重層塗布をすることが好ましい。
【0097】
塗布方式としては公知の方法から適宜選択して塗布することができる。例えばロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0098】
塗工液温度は、通常、25〜60℃であり、35〜50℃が好ましく、36〜48℃の液を使用するのが特に好ましい。冷却は、塗布後の膜面温度が20℃以下、好ましくは15℃以下になるようにして一定時間(好ましくは5秒間以上)冷却ゾーンを通過させる。この冷却時点では、余り強い風を吹き付けないことが「液寄り」の発生を抑えるという観点において好ましい。その後の乾燥は、20℃以上の風を吹き付けて行うのが均一な膜面を得る点から好ましい。特に20℃以上の風を吹き付けてから徐々に風の温度を上げるのが好ましい。乾燥時間は湿潤膜厚にもよるが、概ね10分以内、特に5分以内にするのが好ましい。
【0099】
尚、本発明の記録用紙は特に水溶性染料インクを用いたインクジェット記録において効果が大きく好ましいが、顔料インクを用いたインクジェット記録でも使用することが出来る。
【0100】
本発明の記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。この水性インクとは、下記着色剤及び液媒体、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【0101】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えばメチルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0102】
その他の水性インクの添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防黴剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤等が挙げられる。
【0103】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常、0.025〜0.06N/m、好ましくは0.03〜0.05N/mの範囲内の表面張力を有することが好ましい。インクのpHは好ましくは5〜10であり、特に好ましくは6〜9である。
【0104】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を示す。又、記録用紙作製時におけるバインダーとは、PVAとエマルジョン樹脂の総量を指す。
【0105】
〈エマルジョン樹脂溶液A−1〜A−8の作製〉
分散剤として4%PVA水溶液(重合度1700,鹸化度88.5モル%)450gをpH3.8に調整し、攪拌しながらメタクリル酸メチル50gとアクリル酸ブチル50gを加えて60℃に昇温し、4%過硫酸アンモニウム水溶液12gを添加して重合を開始した。20分後、メタクリル酸メチル100gとアクリル酸ブチル100gを4時間掛けて徐々に添加し、6時間後、重合率が99.9%となったところで冷却した。これをpH7.0に中和し、エマルジョン樹脂溶液A−1を合成した。このエマルジョンを真空乾燥器にて60℃で乾燥し、示差走査熱量計によりTgを測定したところ、5℃であった。
【0106】
同様の方法で、表1に示すエマルジョン樹脂溶液A−2〜A−8を作製した。
【0107】
【表1】
【0108】
〈微粒子分散液B−1〜B−4の作製〉
塩化アルミニウムを気化させ、酸素、水素の存在下、高温で処理して得た比表面積130m2/g(BET法により測定)の気相法アルミナ200gを得た。
これを、純水800ml中に硝酸でpH4.6に調整しながら高速攪拌分散機を用いて徐々に加えていき、最後に4%硼酸水溶液を60ml加えた後、硝酸によりpHを4.5に調整し、純水で1000mlに仕上げた。
【0109】
次いで、この液をサンドミルにより分散し、微粒子分散液B−1を得た。尚、表2に示す分散液中でのアルミナの平均2次粒子径は、分散液を50倍に希釈し動的光散乱方式粒子径測定装置ゼータサイザー1000HB(マルバーン社製)を用いて測定した値である(以下、B−2〜B−5についても同様)。
【0110】
同様の方法で比表面積100m2/gの気相法アルミナ、比表面積250m2/gの擬ベーマイト、及びアルミニウムアルコキシドを加水分解し、焼成して得られた比表面積50m2/gアルミナについても分散を行い、表2に示すB−2、B−3及びB−4の分散液を作製した。
【0111】
〈微粒子分散液B−5の作製〉
高速攪拌分散機を用いて、1%エタノール水溶液820ml中に比表面積200m2/gの気相法シリカを125g徐々に加えていき、純水を加えて1000mlに仕上げた。次いで、この液をサンドミルにより分散し、表2に示す分散液B−5を得た。尚、pH調整は、5%硼酸水溶液を50ml加えた後、硝酸により行った。
【0112】
【表2】
【0113】
(記録用紙1〜20の作製)
750mlの微粒子分散液B−1を40℃で攪拌しながら、エマルジョン樹脂溶液A−1を11.4g、重合度3,500のPVA(クラレ社製:PVA235)の8%水溶液146mlを加え、全体の液量が1000mlになるように純水を加えて塗布液を調製した。この時の全バインダー中に含まれるエマルジョン樹脂固形分の質量比〔エマルジョン樹脂固形分質量/(エマルジョン樹脂固形分質量+PVA質量)〕をE/B(%)、全バインダーに対する微粒子の質量比(微粒子の質量/(エマルジョン樹脂固形分質量+PVA質量))をP/B(%)とし、表3に示す。
【0114】
次に、A4サイズに断裁した坪量180g/m2の原紙両面をポリエチレンで被覆した支持体(厚さ250μm,記録面側のポリエチレン層中に6%のアナターゼ型チタン含有)の記録面側に、上記塗布液を微粒子の付量換算で16g/m2になる条件の湿潤膜厚でワイヤーバー塗布し、塗布後4℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥して記録用紙1を得た。
【0115】
同様にして、表3に示す微粒子分散液、エマルジョン樹脂溶液、PVAの組合せで、E/B、P/Bの質量比になるように塗布液を調製後、支持体に塗布・乾燥して記録用紙2〜20を得た。
【0116】
〈記録用紙の評価〉
以上のようにして得られた記録用紙1〜20について、以下の項目について評価した。
【0117】
《インク吸収性》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cでマゼンタのベタ印字を行い、印字直後の印字部分を指で擦って画像の乱れを目視評価した。評価は以下の4段階で行った。
【0118】
◎:指で擦っても全く画像が乱れない
○:指で擦ると僅かに画像が乱れる
△:やや画像が擦れて汚れる
×:画像が擦れて汚れてしまう
《滲み耐性》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cを用いてマゼンタのベタプリントを背景に幅約0.3mmのブラックのラインをプリントし、5分放置後、50℃・85%RH(相対湿度)で5日間保存し、保存前後での細線の滲みを以下の4段階で評価した。
【0119】
◎:滲みの発生がなく、美観を損なわない
○:僅かに滲みは発生しているが、美観を損なうことはない
△:やや滲みが発生しており、美観を損なう
×:滲みが発生しており、美観を損なう
《光沢度》
日本電色工業社製変角光沢度計(VGS−1001DP)を用いて75°光沢を測定し、4段階評価した。
【0120】
◎:光沢度が60%以上
○:光沢度が55%以上60%未満
△:光沢度が50%以上55%未満
×:光沢度が50%未満
《塗布・乾燥時のカール》
塗布直後の各記録用紙を水平な台の上に置き、4隅の持ち上がりの高さを測定した。その後、直ぐに記録用紙を冷却、乾燥させ、乾燥直後の4隅の持ち上がりの高さを測定した。乾燥前後の4隅の持ち上がりの高さの差の平均値(mm単位)をカールとし、以下の4段階で評価した。
【0121】
◎:10mm未満
○:10mm以上20mm未満
△:20mm以上30mm未満
×:30mm以上
《記録面柔軟性》
各記録用紙を23℃・20%RHで24時間調湿した後、直径が、それぞれ10mm、20mm、30mm、40mmの円筒状ステンレス棒に巻き付け、インク吸収層が折れて「ひび割れ」が生じる棒の直径を調べた。当該値が小さいもの程インク吸収層が柔軟であり、20mm以下のものは実用上問題ないが、40mmでは乾燥した室内等で丸めた時に記録面がひび割れる問題が生じる。尚、記録用紙18は、塗布・乾燥時に細かな「ひび割れ」が生じたため、ステンレス棒に巻き付けた時に発生する「ひび割れ」との判別ができず、評価不可能とした。
【0122】
以上の結果を纏めて表3に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
表3に示す結果の通り、本発明のインクジェット記録用紙は、高いインク吸収性と滲み耐性、及び光沢性を同時に満足し、しかも塗布・乾燥時のカールが小さく、インク吸収層が柔軟であることが判る。一方、比較の記録用紙は、インク吸収性が良くカールが小さくても滲み耐性や光沢性に劣っていたり、あるいは滲み耐性、光沢性が良好であってもカールが大きいなど、何れかの性能を欠くものであった。
【0125】
【発明の効果】
本発明により、高光沢で高いインク吸収性及び滲み耐性を満足し、しかも柔軟なインク吸収層を形成して、丸めたり折り曲げたりしても「ひび割れ」のないインクジェット記録用紙を提供することができた。更に、塗布・乾燥時のカールを小さくすることができるので、乾燥時の負荷や丸まった記録用紙を平滑に矯正しなければならないといった生産時の問題がなくなり、製造コストの削減も可能となった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高いインク吸収性と光沢及びプリント濃度を有し、更に滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙とも言う)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録は急速に画質が向上してきており、写真画質に迫りつつある。この様な写真画質をインクジェット記録で達成する手段として、使用する記録用紙においても急速に技術改良が試みられており、高平滑性の支持体上に微小な空隙を有する層(以下、空隙層又は多孔質層とも言う)を設けた記録用紙は、インク吸収性及び乾燥性に優れていることから最も写真画質に近いものの一つになりつつある。特に、非吸収性支持体を使用した場合、吸水性支持体に見られるようなプリント後のコックリング(皺)がなく、高平滑な表面を維持できるので、より高品位な印字プリントを得ることができる。
【0003】
このような多孔質層は、主に親水性バインダーと微粒子で形成されており、微粒子としては無機又は有機の微粒子が知られているが、一般的には、より微細な無機微粒子が用いられる。そのような無機微粒子としては比較的安価な微粒子シリカがよく使用され、例えば気相法で合成された微粒子シリカやコロイダルシリカと少量の親水性バインダーの組合せで得られるインクジェット記録用紙が知られている。又、疑ベーマイトと有機バインダーから成る多孔質層を設けたインクジェット用記録用紙が湿度変化を受け難い技術が知られている(特許文献1)。
【0004】
又、インク吸収層に無機微粒子とカルボンアミド化合物を併用し、
これら微粒子シリカは表面がアニオン性であるため、インク定着性がなく、耐水性を付与したり、プリント保存後に起きる滲みを抑制する為に、一般的にカチオンポリマーや多価金属塩などのカチオン定着剤が必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなカチオン定着剤を使用しても、インク定着性は未だ不充分であり、しかも定着性を高めるためにカチオン定着剤を多量に添加すると、インク吸収を阻害したりコストが高いなどの問題点がある。
【0006】
微粒子表面がカチオン性の無機微粒子の一つとしてアルミナ微粒子がある。一般にインクジェット記録用紙に用いられるアルミナ微粒子は、その製造方法により分類され、一つは擬ベーマイト等のようなアルミン酸塩を加水分解するなどの方法で製造される、いわゆる湿式のアルミナ及びアルミナ水和物であり、もう一つは気相法により製造される気相法アルミナとがある。
【0007】
これらアルミナ及びアルミナ水和物は、シリカと比較してカチオン性であるので、カチオン定着剤を使用しなくてもインク定着性を有する、あるいは光沢が高いといった利点がある。又、アルミナ及びアルミナ水和物は、微粒子の質量に対するバインダーの質量の比がシリカより少なくても塗布・乾燥時に「ひび割れ」しない場合が多く、高い空隙率を維持してインク吸収性を高めるためにも、バインダーの使用量を成る可く少なくすることが多い。
【0008】
しかしながら、このようにして出来たインク吸収層はバインダー量が少ないため、インク吸収層が脆弱であり、空気が乾燥している状態でインクジェット記録用紙を丸めたり折ったりすると、インク吸収層が割れて「ひび」が入ることがあり、特に高光沢な記録用紙の場合は、折った時の「ひび割れ」が目立ってしまい、問題となることが判った。又、インク吸収層に無機微粒子とカルボンアミド類を併用することで記録用紙の耐水性を向上させることも提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
又、アルミナ又はアルミナ水和物を使用したインク吸収層でバインダー量が少ない場合、インクジェット記録用紙を作製する際の塗布・乾燥時において記録用紙がカールする(強く丸まってしまう)ことがあり、乾燥が困難になったり、乾燥後に丸まった記録用紙を平滑に矯正しなければならないといった生産時の問題があることが判った。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−297831号公報
【0011】
【特許文献2】
特開2000−141867号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、高いインク吸収性と光沢、滲み耐性を併せ持つ高画質インクジェット記録用紙を製造時の負荷が少なく安価に提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記の構成により達成される。
【0014】
1)支持体上に少なくとも微粒子とバインダーを含有するインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、前記微粒子がBET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物を含み、前記バインダーが少なくとも水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を1種以上含んで構成されるインクジェット記録用紙。
【0015】
2)高分子分散剤がポリビニルアルコール又はその誘導体であり、それらの平均重合度が1500〜5000である1)記載のインクジェット記録用紙。
【0016】
3)エマルジョン樹脂のTg(硝子転移温度)が20℃以下である1)又は2)記載のインクジェット記録用紙。
【0017】
4)バインダーが水溶性樹脂及び、ポリビニルアルコール又はその誘導体を分散剤として乳化重合されたエマルジョン樹脂を含んで構成される1)、2)又は3)記載のインクジェット記録用紙。
【0018】
5)水溶性樹脂がポリビニルアルコール又はその誘導体であり、その平均重合度が2000〜5000である4)記載のインクジェット記録用紙。
【0019】
6)アルミナが気相法により製造されたアルミナである1)〜5)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0020】
7)支持体が非吸水性支持体である1)〜6)の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
【0021】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
記録用紙のインク吸収層には、アルミナ又はアルミナ水和物が用いられる。一般に、インクジェット記録用紙に使われるアルミナとしては、気体状の塩化アルミニウムを水素及び酸素とともに加熱燃焼させ高温で加水分解することにより得られる気相法アルミナと、アルミン酸塩を加水分解して焼成するなどの方法で製造される、いわゆる湿式のアルミナ及びアルミナ水和物が挙げられるが、これらのアルミナやアルミナ水和物の性質は、その比表面積及び構造と密接な関係がある。尚、微粒子の比表面積はBET法により測定される。
【0022】
アルミナ及びアルミナ水和物は、微粒子そのものにインク定着性があり、プリント時の斑やブロンジングの要因となるカチオン定着剤を添加する必要がなく、インク吸収性を高めることができる。この性質は、インクジェットのインクに使用される染料の殆どはアニオン性であるが、アルミナやアルミナ水和物の表面はカチオン性の性質を持ち、微粒子表面に染料が吸着されることにより発現する。そのため、アルミナやアルミナ水和物のインク定着性の強弱は、微粒子の比表面積に相関する。
【0023】
又、アルミナ及びアルミナ水和物は、その表面に反応性の水酸基を有しており、水酸基の水素結合によって微粒子間に相互作用が生じて三次元的な空隙を形成し、その空隙にインクの溶媒が吸収されることによってインクの吸収容量が増加し、インク吸収性が高まる。
【0024】
湿式のアルミナ及びアルミナ水和物は200〜400m2/gの比表面積を有するものが多いが、その製造過程から粒子内部に細孔が多数存在しており、内部表面積が大きい。このことは即ち、インクの染料が吸着する表面は多いが、多くの表面が粒子の内側を向いているため粒子間で水素結合ができる水酸基の数は少なく、空隙を形成しにくくなりインク吸収容量が少なくなると思われる。
【0025】
一方、気相法アルミナは内部に細孔が殆ど存在せず、その表面の殆どが粒子の外側を向いているため、湿式のアルミナやアルミナ水和物よりも粒子間水素結合をする水酸基の数が多く、空隙を作り易い。
【0026】
本発明で使用されるアルミナ又はアルミナ水和物としては、湿式のアルミナ又はアルミナ水和物、気相法アルミナの何れも使用できるが、インク吸収性の点で擬ベーマイト又は気相法アルミナが好ましく、より好ましくは気相法アルミナである。又、好ましい比表面積としては、インク定着性を高める点で100〜400m2/gである。
【0027】
更に本発明者らは、比表面積が120〜250m2/gの気相法アルミナを使用することにより、インクの吸収性、及び定着性、耐水性を同時に付与できることを見い出した。即ち、気相法アルミナ微粒子の比表面積が120m2/g以上ではインクの定着性が強く、耐水性、滲み耐性が満足され、比表面積が250m2/g以下の場合に気相法アルミナ微粒子間の相互作用をコントロールすることができ、粉体としての取扱いが容易であり、分散液の粘度も低く、又、安定性が高いので塗工の負荷が少ない。従って、最も好ましいアルミナ又はアルミナ水和物としては、比表面積が120〜250m2/gの気相法アルミナである。
【0028】
上記気相法アルミナを使用する場合、分散は分散液のpHが3〜5の範囲で行われることが好ましい。比表面積が120m2/g以上の気相法アルミナで分散液のpHが未調整の場合、粒子間相互作用が強まるため水に対する分散性が劣化して分散液が増粘してしまい、固形分で15質量%以上の濃度での分散が困難となる時がある。希釈して分散液の濃度を低くすれば分散可能となるが、生産時の塗布・乾燥工程に負荷が大きくなり好ましくない。又、停滞安定性も劣化する場合がある。分散液のpHを3〜5に調整すると粒子間相互作用がコントロールされて分散性が向上し、固形分濃度30質量%以上でも分散可能となり、停滞安定性にも優れ、しかも高いインク吸収性を維持することができる。
【0029】
本発明で使用されるアルミナ又はアルミナ水和物の分散液は、1次粒子が複数結合して2次粒子を形成している。インク吸収性や分散安定性、透明性、光沢性の点で、アルミナ又はアルミナ水和物の1次粒子の平均粒径は概ね5〜12nmが好ましく、7〜11nmが取扱いや分散性の点でより好ましい。2次粒子径は30〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましい。尚、アルミナの1次粒子及び2次粒子の平均粒径は空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径から求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0030】
アルミナ又はアルミナ水和物の分散には、高圧ホモジナイザー、高速攪拌分散機、サンドミル、超音波分散機などを用いることができるが、本発明においてはサンドミルが好ましい。サンドミルに用いるビーズは1.0mm以下のジルコニアビーズが好ましく、更に好ましくは0.5mm以下のジルコニアビーズである。アルミナ又はアルミナ水和物の使用量は、プリント時のインク定着性や光沢性を維持するために記録用紙1m2当たり概ね5〜40g、好ましくは7〜30gである。
【0031】
又、本発明に使用される微粒子として、上記アルミナ又はアルミナ水和物の他に様々な微粒子を併用することもできる。併用できる微粒子としては、例えば軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、トポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
本発明では、空隙を形成するためにアルミナ又はアルミナ微粒子とバインダーを使用するが、高い空隙率を維持してインク吸収性を高めるため、バインダーの使用量を成る可く少なくすることが好ましい。特にアルミナ及びアルミナ水和物は、他の微粒子、例えばシリカと比べて、微粒子の質量に対するバインダーの質量の比が少なくても塗布・乾燥時に「ひび割れ」しない場合が多く、この特性を生かして微粒子/バインダーの比を高くすることが多い。
【0033】
しかしながら、このようにして得られたアルミナ又はアルミナ水和物を使用した記録用紙は、空気が乾燥している状態で記録用紙を丸めたり折ったりすると、インク吸収層が割れて「ひび」が入ることがあり、特に高光沢なインクジェット記録用紙の場合は折った時の「ひび割れ」がよく目立って問題となる。又、記録用紙を作製する際の塗布・乾燥時において、上記のようなアルミナ又はアルミナ水和物を使用してバインダーの量が少ないインク吸収層の場合、シリカを使用した場合よりも塗布・乾燥時のカールが強く、乾燥が困難となったり、丸まった記録用紙を平滑に矯正しなければならないといった生産時の問題があった。
【0034】
これらの問題には次のような原因が考えられる。即ち、本発明のような多孔質の空隙層を形成するインク吸収層の場合、皮膜は硬い微粒子に対して柔らかいバインダー樹脂の量が少なく、インク吸収性は高いが硬くて脆い膜になると考えられる。特にバインダー樹脂として親水性の樹脂を使用した場合、親水性の樹脂は湿度の影響による柔軟性の変化が大きく、乾燥した状態では破断伸度が極端に小さくなり、伸びなくなるものが多い。このため、記録用紙を乾燥させると、バインダー樹脂の伸張が殆ど生じなくなり、柔軟性に乏しい脆弱な皮膜となり、曲げたり丸めるといった外部からの応力に対して折れて割れ易いものになると考えられる。又、記録用紙を製造する際の塗布・乾燥時において、インク吸収層は乾燥収縮しようとするが、柔軟性の高い皮膜の場合は乾燥収縮を緩和して記録用紙が丸まらないが、柔軟性に乏しく硬い皮膜の場合は、乾燥収縮を緩和することができずカールしてしまうと考えられる。
【0035】
更に、本発明のようにアルミナ微粒子を使用する場合、前述のようにシリカと比較して微粒子の質量に対するバインダーの質量の比を少なくすることが多く、シリカを使用した皮膜より柔軟性に乏しいものとなり、その結果上記の問題がシリカを使用した場合よりも極端に発現すると考えられる。
【0036】
又、支持体に非吸水性支持体を使用する場合、十分なインク吸収性を持たせるために比較的厚いインク吸収層が必要となるが、インク吸収層が厚くなった場合、塗布・乾燥時の乾燥収縮が大きく、上記問題が顕著になる。
【0037】
これら問題に対し、湿度の影響を受け難く、常に柔軟な疎水性の樹脂を添加することでインク吸収層の脆弱性や柔軟性が改良されると考え、これまで低分子の界面活性剤で分散、乳化重合したエマルジョン樹脂やラテックス粒子をインク吸収層に添加する方法を試みたが、これら樹脂は添加量が多くなるとインク吸収層に皺が生じたり、塗布・乾燥時に「ひび割れ」が発生し、添加量を増やすことができず、十分な改良ができなかった。
【0038】
これら課題に対し本発明者らが鋭意検討した結果、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を1種以上含んで構成することにより、アルミナ又はアルミナ水和物の質量に対するバインダーの質量比が少なくても、空気が乾燥している状態で記録用紙を丸めたり折ったりしてもインク吸収層が割れて「ひび」が入ることがなく、更にインクジェット記録用紙を作製する際の塗布・乾燥時に記録用紙が強くカールしないので乾燥が容易となり、又、丸まった記録用紙を平滑に矯正する必要もなくなることを見い出した。
【0039】
本発明に使用されるバインダーとしては、水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を1種以上含んで構成されるが、ここで言うエマルジョン樹脂とは、油溶性のモノマーを、分散剤を含む水溶液中でエマルジョン状態に保ち、重合開始剤を使って乳化重合させた樹脂である。
【0040】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子の分散剤が挙げられる。
【0041】
本発明におけるエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な(平均粒径0.01〜2μm)樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって出来上がるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とは、エマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0042】
水酸基を含む高分子分散剤とは、平均分子量が10,000以上の高分子の分散剤で、側鎖又は末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子と2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられ、特にポリビニルアルコール(PVA)及びその誘導体が好ましい。
【0043】
高分子分散剤として使用されるPVA及びその誘導体としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVA、及びカチオン変性したPVAやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性PVA、シリル基を有するシリル変性PVA等の変性PVA等がある。
【0044】
PVA及びその誘導体は、平均重合度の高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5,000以内であるとエマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱い。従って、平均重合度は300〜5,000のものが好ましく、1,500〜5,000のものがより好ましく、3,000〜4,500のものが特に好ましい。PVAの鹸化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%がより好ましい。
【0045】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、又はブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体、又は共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0046】
これらエマルジョン樹脂は空隙層形成時に柔軟性を付与するものであり、室温でも柔軟な性質を持つものが適しており、エマルジョン樹脂をフィルム化した場合のTgが20℃以下であることが好ましく、−40〜10℃であることがより好ましい。
【0047】
水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂の平均粒径は0.01〜2μmが好ましいが、インク吸収層を構成する材料で平均粒径が大きいものが含まれると、インク吸収層中における光の散乱により透明性が低下し、印字濃度の低下が起きてしまう。従ってエマルジョン樹脂の平均粒径は、0.05〜0.5μmであることが特に好ましい。
【0048】
水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂の製造法は特に制限はなく、公知の乳化重合法で製造される。又、このようなエマルジョン樹脂で市販されているものとして、例えば大同化成工業社製のビニゾール480やビニゾール2023等の酢酸ビニル系エマルジョン、日信化学工業社製のビニブラン2597、ビニブラン2561等のアクリル系エマルジョン、住友化学工業社製のスミカフレックスS−400等の酢酸ビニル−エチレン系エマルジョン等が挙げられる。
【0049】
バインダーとして、上記エマルジョン樹脂の他に公知の各種バインダーを併用することもできるが、併用する場合は水溶性樹脂が好ましい。好ましく併用できる水溶性樹脂としては、ゼラチン、PVA、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、寒天、プルプラン、デキストリン、アクリル酸、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カゼイン、アルギン酸等が挙げられ、2種以上を併用することもできる。これらの中で特に好ましい水溶性樹脂はPVA及びその誘導体である。
【0050】
併用するPVAの誘導体としては、カチオン変性したPVAやアニオン性基を有するアニオン変性PVA、シリル基を置換したシリル変性PVA等変性PVA等が挙げられる。
【0051】
併用するPVA及びその誘導体は、平均重合度が300以上のものが好ましく、特に平均重合度が1,000〜5,000のものが好ましく、特に好ましくは2,000〜4,500である。又、鹸化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものが特に好ましい。
【0052】
カチオン変性PVAは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を鹸化することにより得られる。カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0053】
カチオン変性PVAのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。カチオン変性PVAの重合度は通常500〜4,000、好ましくは1,000〜4,000が好ましい。又、カチオン変性PVAの鹸化度は、通常、60〜100モル%、好ましくは70〜99モル%である。
【0054】
水酸基を含む高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂と水溶性樹脂を併用する場合、バインダー中に含まれる水溶性樹脂に対するエマルジョン樹脂の割合は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上が特に好ましい。
【0055】
上記バインダーの使用量は、インク吸収層が空隙層になるようにするためにアルミナ又はアルミナ水和物に対して比較的少量使用され、皮膜が安定に形成され支持体との接着性が充分保てる範囲で出来るだけ少なく使用するのが好ましい。本発明において、好ましいバインダーの使用量は、バインダーに対するアルミナ又はアルミナ水和物の質量比で5〜20の範囲であることが好ましく、特に7〜15が好ましい。この範囲であれば、充分なインク吸収性と塗布・乾燥時の「ひび割れ耐性」を満足することが出来る。
【0056】
アルミナ又はアルミナ水和物の分散液のpH調整に使用されるpH調整剤は特に制約はなく、如何なるものも使用できるが、好ましくは塩酸、硝酸、酢酸、燐酸、枸櫞酸であり、特に硝酸が好ましい。又、バインダーにPVA及びその誘導体をエマルジョン樹脂と共に併用する場合には、硼酸を用いることがPVA及びその誘導体の架橋剤としての機能を付与できる点で好ましい。
【0057】
本発明の記録用紙は、高光沢性で高い空隙率を皮膜の脆弱性を劣化させずに得るために、前記バインダーが硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
【0058】
硬膜剤は、一般的には前記バインダーと反応し得る基を有する化合物、あるいはバインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0059】
硬膜剤の具体例としては、例えばエポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、硼酸及びその塩、硼砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0060】
特に好ましいバインダーとしてPVA及び又はカチオン変成PVAをエマルジョン樹脂と共に併用する場合には、硼酸及びその塩、及びエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。最も好ましいのは硼酸及びその塩から選ばれる硬膜剤である。硼酸又はその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことを示し、具体的にはオルト硼酸、二硼酸、メタ硼酸、四硼酸、五硼酸、及び八硼酸及びそれらの塩が含まれる。
【0061】
硬膜剤の使用量は、バインダーの種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類やバインダーに対する比率等により変化するが、概ね親水性バインダー1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜400mgである。
【0062】
硬膜剤は、空隙層を構成する塗布液を塗布する際に空隙層形成の塗布液中及び/又は空隙層に隣接するその他の層を形成する塗布液中に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、前記空隙層を形成する塗布液を塗布したり、更には空隙層を形成する硬膜剤非含有の塗布液を塗布・乾燥後に硬膜剤溶液をオーバーコートするなどして、空隙層に硬膜剤を供給することができるが、好ましくは、製造上の効率から空隙層を形成する塗布液又はこれに隣接する層の塗布液中に硬膜剤を添加して、空隙層を形成するのと同時に硬膜剤を供給するのが好ましい。
【0063】
インクジェット記録用紙のインク吸収層及び必要に応じて設けられるその他の層には、上述した以外の各種添加剤を使用することができる。例えば、印字記録後の耐水性、滲み耐性を向上させるためにカチオン定着剤を添加することもできる。
【0064】
カチオン定着剤としては、カチオン性ポリマー、あるいは水溶性の多価金属イオン等が挙げられ、カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物などが挙げられる。又、化学工業時報,平成10年8月15,25日に記載のカチオン性ポリマー、三洋化成工業社発行「高分子薬剤入門」に記載の高分子染料固着剤も例として挙げられる。
【0065】
プリント保存時の滲み耐性を向上する観点から、下記構造のカチオンポリマーが特に好ましい。
【0066】
【化1】
【0067】
又、水溶性の多価金属イオンとしては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ジルコニウム、錫、鉛などの金属塩が挙げられる。中でもマグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛から成る化合物は無色なので好ましい。又、水溶性の多価金属イオンの塩として、ポリ塩化アルミニウムのような水溶性無機ポリマーを使用してもよい。
【0068】
カチオン定着剤は如何なる層に添加しても構わない。又、カチオン定着剤の使用量は、アルミナ又はアルミナ水和物に対する質量比で10%以下、より好ましくは8%以下であることがインク吸収性の劣化を抑制するので好ましい。
【0069】
カチオン定着剤の添加方法としては、塗布液に直接添加して塗布する方法の他、記録用紙の塗布・乾燥後にカチオン性の樹脂や水溶性の多価金属イオンの水溶液をオーバーコートして乾燥するといった方法でも構わない。
【0070】
その他の添加剤としては、例えばアニオン、カチオン、非イオン、両性の各界面活性剤;ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の水溶性ポリマー;イソシアネート系化合物等の架橋剤;特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤;特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載される退色防止剤;特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載される蛍光増白剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤;消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0071】
本発明の記録用紙のインク吸収層は、単層構成でも2層以上から構成されてもよく、この場合、それらのインク吸収層の構成は互いに同じでも異なってもよい。
【0072】
記録用紙の支持体としては、吸水性又は非吸水性の支持体を用いることができるが、非吸水性支持体の方がプリント後に皺の発生がなく、画像に平滑性の差が生ぜずに高品位のプリントが得られるため好ましい。
【0073】
吸水性支持体としては紙支持体が一般的であるが、布あるいは多孔質のフィルム支持体も含まれる。
【0074】
非吸水性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート(TAC)系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料から成るフィルム等、金属やガラス、更にはポリエチレン(PE)樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(所謂RCペーパー)、PETに白色顔料を添加したホワイトペット等が挙げられる。その中でも、原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られる為に特に好ましい。
【0075】
以下、特に好ましい支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。
【0076】
支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPの何れも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/又はLDPの比率は10〜70%が好ましい。
【0077】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0078】
紙中には、例えば高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0079】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%であることが好ましい。尚、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0080】
紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に、70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。
【0081】
紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度は、JIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。紙のpHは、JIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、pH5〜9であることが好ましい。
【0082】
紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。
【0083】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ−i−ブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、PEが特に好ましい。
【0084】
以下、特に好ましいPEについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するPEは、主として低密度のPE(LDPE)及び/又は高密度のPE(HDPE)であるが、他のLLDPEやPP等も一部使用することができる。
【0085】
特に、塗布層側のポリオレフィン層は、ルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリオレフィンに対して概ね1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%である。
【0086】
ポリオレフィン層中には、白地の調整を行うための耐熱性の高い着色顔料や蛍光増白剤を添加することができる。着色顔料としては、例えば群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。
【0087】
蛍光増白剤としては、例えばジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0088】
紙の表裏のPEの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはPE層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のPEの比率はインク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のPEの比率は、厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0089】
更に、上記PE被覆紙支持体は、以下(1)〜(7)の特性を有していることが好ましい。
【0090】
(1)引っ張り強さ:JIS P 8113で規定される強度で、縦方向が19.6〜294N、横方向が9.8〜196Nである。
【0091】
(2)引き裂き強度:JIS P 8116で規定される強度で、縦方向が0.20〜2.94N、横方向が0.098〜2.45Nである。
【0092】
(3)圧縮弾性率:9.8kN/cm2。
(4)不透明度:JIS P 8138に規定された方法で測定した時に80%以上、特に85〜98%である。
【0093】
(5)白さ:JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、それぞれL*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2である。
【0094】
(6)クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である。
【0095】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10%。
(8)インク受容層を設ける光沢度(75度鏡面光沢度)は10〜90%である。
【0096】
本発明におけるインク吸収層は2層以上の構成となるが、その製造方式としては、インク吸収層を含む各構成層を各々単独に複数回に分けて塗布・乾燥して製造することもでき、あるいは複数層を同時に塗布・乾燥して製造することもできるが、製造上のコストの点から同時重層塗布をすることが好ましい。
【0097】
塗布方式としては公知の方法から適宜選択して塗布することができる。例えばロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0098】
塗工液温度は、通常、25〜60℃であり、35〜50℃が好ましく、36〜48℃の液を使用するのが特に好ましい。冷却は、塗布後の膜面温度が20℃以下、好ましくは15℃以下になるようにして一定時間(好ましくは5秒間以上)冷却ゾーンを通過させる。この冷却時点では、余り強い風を吹き付けないことが「液寄り」の発生を抑えるという観点において好ましい。その後の乾燥は、20℃以上の風を吹き付けて行うのが均一な膜面を得る点から好ましい。特に20℃以上の風を吹き付けてから徐々に風の温度を上げるのが好ましい。乾燥時間は湿潤膜厚にもよるが、概ね10分以内、特に5分以内にするのが好ましい。
【0099】
尚、本発明の記録用紙は特に水溶性染料インクを用いたインクジェット記録において効果が大きく好ましいが、顔料インクを用いたインクジェット記録でも使用することが出来る。
【0100】
本発明の記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。この水性インクとは、下記着色剤及び液媒体、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【0101】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えばメチルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0102】
その他の水性インクの添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防黴剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤等が挙げられる。
【0103】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常、0.025〜0.06N/m、好ましくは0.03〜0.05N/mの範囲内の表面張力を有することが好ましい。インクのpHは好ましくは5〜10であり、特に好ましくは6〜9である。
【0104】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を示す。又、記録用紙作製時におけるバインダーとは、PVAとエマルジョン樹脂の総量を指す。
【0105】
〈エマルジョン樹脂溶液A−1〜A−8の作製〉
分散剤として4%PVA水溶液(重合度1700,鹸化度88.5モル%)450gをpH3.8に調整し、攪拌しながらメタクリル酸メチル50gとアクリル酸ブチル50gを加えて60℃に昇温し、4%過硫酸アンモニウム水溶液12gを添加して重合を開始した。20分後、メタクリル酸メチル100gとアクリル酸ブチル100gを4時間掛けて徐々に添加し、6時間後、重合率が99.9%となったところで冷却した。これをpH7.0に中和し、エマルジョン樹脂溶液A−1を合成した。このエマルジョンを真空乾燥器にて60℃で乾燥し、示差走査熱量計によりTgを測定したところ、5℃であった。
【0106】
同様の方法で、表1に示すエマルジョン樹脂溶液A−2〜A−8を作製した。
【0107】
【表1】
【0108】
〈微粒子分散液B−1〜B−4の作製〉
塩化アルミニウムを気化させ、酸素、水素の存在下、高温で処理して得た比表面積130m2/g(BET法により測定)の気相法アルミナ200gを得た。
これを、純水800ml中に硝酸でpH4.6に調整しながら高速攪拌分散機を用いて徐々に加えていき、最後に4%硼酸水溶液を60ml加えた後、硝酸によりpHを4.5に調整し、純水で1000mlに仕上げた。
【0109】
次いで、この液をサンドミルにより分散し、微粒子分散液B−1を得た。尚、表2に示す分散液中でのアルミナの平均2次粒子径は、分散液を50倍に希釈し動的光散乱方式粒子径測定装置ゼータサイザー1000HB(マルバーン社製)を用いて測定した値である(以下、B−2〜B−5についても同様)。
【0110】
同様の方法で比表面積100m2/gの気相法アルミナ、比表面積250m2/gの擬ベーマイト、及びアルミニウムアルコキシドを加水分解し、焼成して得られた比表面積50m2/gアルミナについても分散を行い、表2に示すB−2、B−3及びB−4の分散液を作製した。
【0111】
〈微粒子分散液B−5の作製〉
高速攪拌分散機を用いて、1%エタノール水溶液820ml中に比表面積200m2/gの気相法シリカを125g徐々に加えていき、純水を加えて1000mlに仕上げた。次いで、この液をサンドミルにより分散し、表2に示す分散液B−5を得た。尚、pH調整は、5%硼酸水溶液を50ml加えた後、硝酸により行った。
【0112】
【表2】
【0113】
(記録用紙1〜20の作製)
750mlの微粒子分散液B−1を40℃で攪拌しながら、エマルジョン樹脂溶液A−1を11.4g、重合度3,500のPVA(クラレ社製:PVA235)の8%水溶液146mlを加え、全体の液量が1000mlになるように純水を加えて塗布液を調製した。この時の全バインダー中に含まれるエマルジョン樹脂固形分の質量比〔エマルジョン樹脂固形分質量/(エマルジョン樹脂固形分質量+PVA質量)〕をE/B(%)、全バインダーに対する微粒子の質量比(微粒子の質量/(エマルジョン樹脂固形分質量+PVA質量))をP/B(%)とし、表3に示す。
【0114】
次に、A4サイズに断裁した坪量180g/m2の原紙両面をポリエチレンで被覆した支持体(厚さ250μm,記録面側のポリエチレン層中に6%のアナターゼ型チタン含有)の記録面側に、上記塗布液を微粒子の付量換算で16g/m2になる条件の湿潤膜厚でワイヤーバー塗布し、塗布後4℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜65℃に段階的に温度を変化させた風で順次乾燥して記録用紙1を得た。
【0115】
同様にして、表3に示す微粒子分散液、エマルジョン樹脂溶液、PVAの組合せで、E/B、P/Bの質量比になるように塗布液を調製後、支持体に塗布・乾燥して記録用紙2〜20を得た。
【0116】
〈記録用紙の評価〉
以上のようにして得られた記録用紙1〜20について、以下の項目について評価した。
【0117】
《インク吸収性》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cでマゼンタのベタ印字を行い、印字直後の印字部分を指で擦って画像の乱れを目視評価した。評価は以下の4段階で行った。
【0118】
◎:指で擦っても全く画像が乱れない
○:指で擦ると僅かに画像が乱れる
△:やや画像が擦れて汚れる
×:画像が擦れて汚れてしまう
《滲み耐性》
各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−800Cを用いてマゼンタのベタプリントを背景に幅約0.3mmのブラックのラインをプリントし、5分放置後、50℃・85%RH(相対湿度)で5日間保存し、保存前後での細線の滲みを以下の4段階で評価した。
【0119】
◎:滲みの発生がなく、美観を損なわない
○:僅かに滲みは発生しているが、美観を損なうことはない
△:やや滲みが発生しており、美観を損なう
×:滲みが発生しており、美観を損なう
《光沢度》
日本電色工業社製変角光沢度計(VGS−1001DP)を用いて75°光沢を測定し、4段階評価した。
【0120】
◎:光沢度が60%以上
○:光沢度が55%以上60%未満
△:光沢度が50%以上55%未満
×:光沢度が50%未満
《塗布・乾燥時のカール》
塗布直後の各記録用紙を水平な台の上に置き、4隅の持ち上がりの高さを測定した。その後、直ぐに記録用紙を冷却、乾燥させ、乾燥直後の4隅の持ち上がりの高さを測定した。乾燥前後の4隅の持ち上がりの高さの差の平均値(mm単位)をカールとし、以下の4段階で評価した。
【0121】
◎:10mm未満
○:10mm以上20mm未満
△:20mm以上30mm未満
×:30mm以上
《記録面柔軟性》
各記録用紙を23℃・20%RHで24時間調湿した後、直径が、それぞれ10mm、20mm、30mm、40mmの円筒状ステンレス棒に巻き付け、インク吸収層が折れて「ひび割れ」が生じる棒の直径を調べた。当該値が小さいもの程インク吸収層が柔軟であり、20mm以下のものは実用上問題ないが、40mmでは乾燥した室内等で丸めた時に記録面がひび割れる問題が生じる。尚、記録用紙18は、塗布・乾燥時に細かな「ひび割れ」が生じたため、ステンレス棒に巻き付けた時に発生する「ひび割れ」との判別ができず、評価不可能とした。
【0122】
以上の結果を纏めて表3に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
表3に示す結果の通り、本発明のインクジェット記録用紙は、高いインク吸収性と滲み耐性、及び光沢性を同時に満足し、しかも塗布・乾燥時のカールが小さく、インク吸収層が柔軟であることが判る。一方、比較の記録用紙は、インク吸収性が良くカールが小さくても滲み耐性や光沢性に劣っていたり、あるいは滲み耐性、光沢性が良好であってもカールが大きいなど、何れかの性能を欠くものであった。
【0125】
【発明の効果】
本発明により、高光沢で高いインク吸収性及び滲み耐性を満足し、しかも柔軟なインク吸収層を形成して、丸めたり折り曲げたりしても「ひび割れ」のないインクジェット記録用紙を提供することができた。更に、塗布・乾燥時のカールを小さくすることができるので、乾燥時の負荷や丸まった記録用紙を平滑に矯正しなければならないといった生産時の問題がなくなり、製造コストの削減も可能となった。
Claims (7)
- 支持体上に少なくとも微粒子とバインダーを含有するインク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、前記微粒子がBET法により測定される比表面積が100〜400m2/gのアルミナ又はアルミナ水和物を含み、前記バインダーが少なくとも水酸基を有する高分子分散剤で乳化重合されたエマルジョン樹脂を1種以上含んで構成されることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 高分子分散剤がポリビニルアルコール又はその誘導体であり、それらの平均重合度が1500〜5000であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用紙。
- エマルジョン樹脂のTg(硝子転移温度)が20℃以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用紙。
- バインダーが水溶性樹脂及び、ポリビニルアルコール又はその誘導体を分散剤として乳化重合されたエマルジョン樹脂を含んで構成されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録用紙。
- 水溶性樹脂がポリビニルアルコール又はその誘導体であり、その平均重合度が2000〜5000であることを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録用紙。
- アルミナが気相法により製造されたアルミナであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
- 支持体が非吸水性支持体であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載のインクジェット記録用紙。
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