JP2004115902A - 電子部品の製造方法、及び電子部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前処理工程11、自己触媒Niめっき工程12、置換Auめっき工程13を経て、セラミック素体の表面に形成されたCu電極上にNi−P皮膜及びAu皮膜を順次形成する。そして後処理工程14では、Au皮膜の形成されたセラミック素体を被乾燥物とし、少なくとも13.3Pa以下に減圧された真空乾燥装置内に被乾燥物を供給し、真空乾燥処理を施し、Ni−P皮膜とAu皮膜との界面に残存している水分を除去する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子部品の製造方法、及び電子部品に関し、より詳しくはセラミック素体の表面に形成された導電部にめっき皮膜を形成する電子部品の製造方法、及び該製造方法により製造された多層基板にコンデンサパターンやインダクタパターンを内蔵してなるローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ等のLCフィルタやセラミックアンテナなどのセラミック多層基板を利用した電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子部品としてのセラミック多層基板では、一般に、セラミック素体に内部導体が埋設されると共に、該セラミック素体の表面に外部導体が形成され、外部導体と内部導体とが電気的に接続されている。そして、ボンディング性やはんだ付け性等を向上させる観点から、通常、外部導体の導電部にはNi皮膜が形成され、さらにNi皮膜の表面にはAu皮膜が形成されている。
【0003】
Ni皮膜やAu皮膜は、通常、めっき処理して形成されるが、周知のようにめっき方法には電解めっき法と無電解めっき法とがある。そして、セラミック多層基板のような微細で複雑な導電パターンが要求されるものについては、めっき用リード線を設ける必要がなく、また電流分布の影響を受けることがない無電解めっきが多用されている。
【0004】
また、前記無電解めっき法には、めっき液に還元剤を添加し該還元剤の酸化反応によって生ずる電子を金属の析出反応に利用する自己触媒型と、溶液中の金属イオンと素地金属間で生じる置換反応を利用した置換型とがあるが、Ni皮膜については、自己触媒型無電解めっき(以下、「自己触媒めっき」という)により形成し、Au皮膜については、置換型無電解めっき(以下、「置換めっき」という)により形成することが行われている。また、近年では、環境への配慮からシアンを含まないノンシアン系のAuめっき液を使用することが多い。
【0005】
ところで、この種の電子部品では、被めっき物に含まれる水分を除去する必要があることから、水分の除去方法について、従来より、種々の方法が提案されている。
【0006】
例えば、無電解めっき処理を行なってめっき皮膜を形成した後、洗浄槽で被めっき物を洗浄し、その後被めっき物を温純水槽に浸漬し、その後被めっき物を引き上げて乾燥するようにした技術が提案されている(特許文献1)。
【0007】
該特許文献1では、洗浄槽と温純水槽を設けることにより無電解めっきから洗浄、乾燥までを連続処理している。
【0008】
また、従来より、水性置換めっき組成物に金属表面を接触させて該金属表面に銀皮膜を形成し、その後銀で被覆した金属表面を洗浄し、乾燥する方法も提案されている(特許文献2)。
【0009】
該特許文献2では、乾燥は温風を用いるのが一般的であり、例えば、処理された金属を乾燥用オーブン内に通過させてもよい旨が記載されている。
【0010】
また、従来より、液晶ポリマー基材上に無電解Cuめっき又は無電解Niめっきを行い、次いで表面めっきを施し、その後水分除去のための熱処理を行う技術も提案されている(特許文献3)。
【0011】
該特許文献3では、130℃〜175℃に加熱された炉内で1〜2時間の熱処理を行なうことにより、液晶ポリマー基材内の水分を除去している。
【0012】
また、上記特許文献3には、表面めっき層と無電解Cuめっき層又は無電解Niめっき層との間に無電解Niめっき層を介装し、かつ50〜250℃程度に加熱されたオーブン内で1〜3時間、熱処理を行うことにより前記無電解Niめっき層を硬化させる手法も開示されている。
【0013】
さらに、従来より、セラミックと金属との複合材料上に第1及び第2のめっき皮膜を順次形成し、その後酸化性ガスが存在しない雰囲気下で乾燥熱処理を行う技術も提案されている(特許文献4)。
【0014】
該特許文献4では、SiC等のセラミック材料からなる多孔質焼結体の気孔にCu等の金属を含浸させてなるセラミック/金属複合材料において、酸化性ガスの存在しない100℃〜500℃の高温雰囲気下で熱乾燥処理を施すことにより、前記複合材料に含浸された溶液が滲み出るのを防止している。
【0015】
また、該特許文献4では、第2のめっき皮膜を形成した後に60〜90℃で5分間以上予備乾燥を行うことにより、複合材料表面のめっき液を蒸発揮散させることのできることが記載されている。
【0016】
また、その他の従来技術としては、銅合金素材に2層のNiめっき層を形成し、その上に金めっき層を形成した後、めっきの後処理後に乾燥させる技術も提案されている(特許文献5)。
【0017】
【特許文献1】
特開平6−65748号公報(請求項1、段落番号〔0014〕、〔0015〕)
【特許文献2】
特開平8−232072号公報(請求項1、請求項16、段落番号〔0063〕)
【特許文献3】
特開平10−168577号公報(請求項1〜3、段落番号〔0014〕、〔0016〕)
【特許文献4】
特開2000−192283号公報(請求項4〜6、10、段落番号〔0047〕〜〔0049〕、〔0059〕、〔0060〕)
【特許文献5】
特開平10−251860号公報(請求項2)
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記セラミック多層基板では、以前より、セラミック多層基板に搭載される外部電子部品(例えば、コンデンサ)を実装すべく複数回のリフロー加熱処理を施した場合、はんだ付け性が十分に得られないという問題があった。
【0019】
そして、本発明者らの検討結果により、上記問題の発生は、Ni皮膜と、該Ni皮膜上に置換めっきにより形成されたAu皮膜との界面に存在する水分に依るものであるということが判明した。
【0020】
すなわち、置換めっきによりNi皮膜上にAu皮膜を形成する場合、Ni皮膜の溶解を駆動力にしてAuがNi皮膜上に析出し、図7に示すように、導電部101上のNi皮膜102表面にAu皮膜103が形成される。すなわち、素地金属であるNiとAuとのイオン化傾向の差によって置換反応が進行し、Niは酸化されてNiイオンとなり、Auめっき液中に溶出する一方、めっき液中のAuイオンは還元されてAu(金属)となり、Ni皮膜102上に析出する。
【0021】
このとき、NiとAuとの置換反応は、Niの溶出箇所とAuの析出箇所とは無関係にNi皮膜102の表面で進行するため、Niの溶出によってNi皮膜102には多数の凹所104が形成され、該凹所104に水分105が浸入して残存する。
【0022】
すなわち、前記凹所104に水分105が残存しているため、セラミック多層基板に搭載される外部電子部品を実装すべく複数回のリフロー加熱処理を施した場合、Ni皮膜102が酸化し、はんだ付け性が低下していたのである。
【0023】
しかも、近年、環境問題を考慮してPbフリーのはんだ材の使用が要望されているが、Pbフリー化に伴いはんだ付け性の低下が更に顕在化するものと思われる。
【0024】
しかしながら、上記特許文献1〜5は、いずれも温風処理又は加熱処理により被乾燥物を乾燥させているため、Ni皮膜102の酸化が促進され、したがってはんだ付け性の低下を防止することができない。
【0025】
すなわち、上述のようなめっき皮膜間に残留している水分を確実に除去する技術が未だ存在しておらず、今日、Pbフリー化の要請に伴いNi皮膜102の酸化を防止する技術の開発が要請されている。
【0026】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、複数回のリフロー加熱処理を施した後においても、良好なはんだ付け性を有する電子部品の製造方法、及び該製造方法により製造された電子部品を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る電子部品の製造方法は、基板素体の表面に形成された導電部に第1の金属皮膜を被着した後、該第1の金属皮膜との間の置換反応によって第2の金属皮膜を前記第1の金属皮膜に被着し、その後、前記第1の金属皮膜と前記第2の金属皮膜との界面に残存する水分を除去する水分除去処理を施すことを特徴としている。
【0028】
上記製造方法によれば、第1の金属皮膜と第2の金属皮膜との界面に残存する水分を除去しているので、その後リフロー加熱処理を行なっても第1の金属皮膜が酸化されるのを回避することができ、はんだ付け性が低下するのを防止することができる。
【0029】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記水分除去処理を25℃以下の低温で行なうことを特徴としている。
【0030】
上記製造方法によれば、前記水分除去処理を25℃以下の低温で行なうので、被乾燥物が高温雰囲気に晒されることもなく、したがって第1の金属皮膜が酸化されるのを回避することができる。
【0031】
さらに、本発明の電子部品の製造方法は、前記水分除去処理が、真空乾燥処理であることを特徴としている。
【0032】
上記製造方法によれば、真空乾燥処理を行って前記界面に残存する水分を除去しているので、被乾燥物の処理温度を上昇させることなく水分を除去することができ、第1の金属皮膜が酸化するのを回避することができる。
【0033】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前記真空乾燥処理が、少なくとも13.3Pa以下に減圧して行なうことを特徴としている。
【0034】
上記製造方法によれば、少なくとも13.3Pa以下の高真空に減圧して真空乾燥処理を施すので、前記界面に残存する水分を容易に除去することができる。
【0035】
また、この種の電子部品では、耐熱性を向上させる観点から、通常、導電部上にはNi系皮膜が形成される。
【0036】
すなわち、本発明の電子部品の製造方法は、前記第1のめっき皮膜は、Ni及びNi合金のいずれかを主成分としていることを特徴としている。
【0037】
また、置換反応によって第2の金属皮膜を第1の金属皮膜上に形成するためには、第2の金属皮膜が第1の金属皮膜よりもイオン化傾向が小さいことが必要であり、したがって第2の金属皮膜はNiよりもイオン化傾向が小さい金属、具体的には、Au、Ag、Cu、Pd、及びPt、又はこれらの合金を使用することができる。
【0038】
すなわち、本発明の電子部品の製造方法は、前記第2の金属皮膜は、Au、Ag、Cu、Pd、及びPtの中から選択された少なくとも1種の金属を含むことを特徴としている。
【0039】
また、本発明に係る電子部品は、上記製造方法を使用して製造されたことを特徴としている。
【0040】
上記電子部品によれば、NiやNi合金からなる第1の金属皮膜の酸化を回避することができるので、複数回のリフロー加熱処理を繰り返してもはんだ付け性の低下が招来することのないセラミック多層基板等の電子部品を得ることができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳説する。
【0042】
図1は本発明の製造方法を使用して製造された電子部品としてのLCフィルタの一実施の形態を示す断面図であって、該LCフィルタはコンデンサパターンやインダクタパターンが多層基板としてのセラミック素体に内蔵されている。
【0043】
すなわち、該LCフィルタは、多数の内部電極2がセラミック素体1に並列状に埋設されると共に、該セラミック素体1の外周端部には多数の外部電極3が形成されている。
【0044】
内部電極2は、具体的には、上方に第1のグランド電極2a、2bが設けられると共に、略中央部には第2のグランド電極2c、2dが設けられ、さらに下方には第3のグランド電極2e、2fが設けられている。そして、第1のグランド電極2a、2bと第2のグランド電極2c、2dとの間にはコイル形状に形成されたインダクタンス電極2g、2hが設けられている。また、第2のグランド電極2c、2dと第3のグランド電極2e、2fとの間には第1のコンデンサ電極2i、2j及び第2のコンデンサ電極2k、2lが設けられ、さらに、第1のコンデンサ電極2i、2jと第2のコンデンサ電極2k、2lとの間には共通電極2mが設けられ、該共通電極2mは、全てのコンデンサ電極2i〜2lと対向状に形成されている。そして、各グランド電極2a〜2f、インダクタンス電極2g、2h、及びコンデンサ電極2i〜2lは、いずれも外部電極3と電気的に接続可能となるように形成されている。
【0045】
また、外部電極3は、図2に示すように、Cu等の導電部4の表面にNi−P皮膜(第1の金属皮膜)5が形成され、さらに、該Ni−P皮膜5の表面にはAu皮膜(第2の金属皮膜)6が形成されている。そして、本実施の形態では、Ni−P皮膜5は自己触媒めっきにより形成され、Au皮膜6は置換めっきにより形成されている。すなわち、Ni−P皮膜5中のNi成分が、Auめっき液中のAu源と反応してめっき液中に溶出し、Auが置換析出する一方で、NiとAuとの間の置換反応は、Niの溶出箇所とは無関係に進行するため、Ni−P皮膜5の表面はAuによって粗される結果となり、このためNi−P皮膜5には多数の凹所7が形成される。
【0046】
次に、上記LCフィルタの製造方法を説明する。
【0047】
まず、所定形状に成形されたセラミックシートに対し、導電性ペーストを使用してスクリーン印刷を施し、導電パターンを形成する。次いで、導電パターンの形成されたセラミックシートと導電パターンの形成されていないセラミックシートとを適宜積層し、所定温度で焼成処理し、内部電極2が埋設されたセラミック素体1を形成する。
【0048】
次に、セラミック素体1の両端部の適数箇所に導電性ペーストを塗布して焼付処理を行ない、導電部4を形成して被めっき物を作製し、該被めっき物に一連の前処理を行なった後、無電解めっき処理を施し、皮膜形成を行なう。
【0049】
図3は製造方法の処理手順を示す製造工程図である。
【0050】
まず、前処理工程11では、被めっき物から有機物質や無機物質による汚染を除去すると共に、めっき液と導電部4との濡れ性を向上させるべく、被めっき物に脱脂処理を施す、尚、脱脂処理はアセトン等の非水系溶液で実施することが望ましいが、pH4〜10のエマルジョン系脱脂液や水を使用してもよい。
【0051】
次いで、被めっき物を硫酸塩やクエン酸等の酸性水溶液に浸漬して導電部4の表面に固着している酸化物をエッチング除去し、さらに導電部4の表面に形成されたスマットを酸性処理液で除去する。
【0052】
次に、自己触媒Niめっき工程12では、被めっき物をPd触媒液に浸漬し、導電部4にPd触媒を付与する。そして、還元剤として、Niに対し優れた還元性を有するホスフィン酸塩を使用し、浴温60〜90℃の無電解Niめっき液に被めっき物を浸漬して無電解Niめっきを施し、導電部4上にNi−P皮膜5を形成する。
【0053】
尚、ホスフィン酸塩としては、ホスフィン酸ナトリウム(NaH2PO2)、ホスフィン酸カリウム(KH2PO2)、ホスフィン酸カルシウム(Ca(H2PO2)2)等の可溶性塩を使用することができる。
【0054】
また、無電解Niめっき液のNi2+の供給源としては、各種ニッケル塩を使用することができ、例えば水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、炭酸ニッケル(NiCO3)、硫酸ニッケル(NiSO4)、塩化ニッケル(NiCl2)、スルファミン酸ニッケル(Ni(NH2SO3)2)、硫酸ニッケルアンモニウム((NH4)2Ni(SO4)2・6H2O)等を使用することができ、また無電解Niめっき液には、クエン酸やグルタミン酸等の錯化剤、その他の添加剤が含有され、pHが4〜10に調製されている。
【0055】
次いで、置換Auめっき工程13では、Au+或いはAu3 +を含有した浴温55〜90℃のめっき液(Auめっき液)に被めっき物を浸漬してNi−P皮膜5上にAuめっきを施す。
【0056】
すなわち、Ni−P皮膜5が形成された被めっき物をAuめっき液に浸漬すると、電気化学的に卑な金属であるNiが溶出して電子(e−)を放出し、該放出された電子(e−)によって電気化学的に貴なAu+或いはAu3 +が還元され、AuがNi−P皮膜5上に析出し、これによりAu皮膜6が形成される。
【0057】
尚、Auめっき液のAu+或いはAu3 +の供給源としては、塩化金ナトリウムや亜硫酸金ナトリウムなどの金塩を使用することができ、またAuめっき液には、前記金塩の他、シアン化ナトリウムや亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸などの錯化剤、その他の添加剤が含有され、pHが5〜9に調製されている。
【0058】
そしてこの後、後処理工程14に進み、Au皮膜6の形成されたセラミック素体2を被乾燥物として真空乾燥処理を施す。
【0059】
すなわち、上述したように、NiとAuとの間の酸化還元反応は、Niの溶出箇所とAuの析出箇所とは無関係に進行するため、Niの溶出箇所にAuが析出するとは限らず、Ni−P皮膜5の表面はAuとの置換反応によって粗される。したがって、Niの溶出箇所が凹所7を形成し、該凹所7に水分が浸入して残存するため、その後のリフロー加熱処理でNi−P皮膜5が酸化し、はんだ付け性が低下する。
【0060】
そこで、本実施の形態では、加熱することなく水分除去することのできる真空乾燥処理を被乾燥物に施し、凹所7、すなわち、Ni−P皮膜5とAu皮膜6との界面に残存している水分を除去している。
【0061】
また、前記界面に残存している水分を除去するためには、真空度を高くする必要があり、このため、本実施の形態では、真空乾燥装置内の圧力を少なくとも13.3Pa以下、好ましくは1.33×10−4Pa以下の高真空となるように減圧して真空乾燥処理を施している。
【0062】
そしてこのようにして被乾燥物に真空乾燥処理を施した後、水洗し、次いでAu皮膜6の表面に付着している水分を乾燥させ、これによりLCフィルタを製造している。
【0063】
このように本実施の形態では、Ni−P皮膜5とAu皮膜6との界面(凹所7)に残存している水分を真空乾燥処理により除去しているので、被乾燥物の処理温度を上昇させることなく乾燥処理を行なうことができ、Ni−P皮膜5が酸化するのを防止することができる。したがって、その後、複数回のリフロー加熱処理を行ってもめっき皮膜は良好なはんだ付け性を保持することができ、これにより実装性に優れたLCフィルタを得ることができる。
【0064】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態では、置換AuめっきでAu皮膜6を形成した後、真空乾燥処理を施しているが、置換Auめっき終了後、真空乾燥処理前に自己触媒Auめっきを施し、所望の厚膜を有するAu膜を形成するようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、第1の金属皮膜としてNiを主成分としたNi−P皮膜4を形成しているが、Ni合金を主成分とした金属皮膜で第1の金属皮膜を形成してもよい。
【0066】
また、第2の金属皮膜はAu皮膜に限定されるものではなく、第1の金属皮膜との間で置換反応が生じるものであればよい。具体的には、第1の金属皮膜を形成するNi又はNi合金よりもイオン化傾向が小さい金属種、例えば、Ag、Cu、Pd、及びPt、或いはこれらの合金(Ag−Pd、Ag−Pd等)を第2の金属皮膜として使用することが可能である。
【0067】
また、水分の除去についても、被乾燥物の処理温度を上昇させることなく乾燥処理を行なうことができればよい。すなわち、25℃以下の低温で乾燥処理を行うことができるのであれば、真空乾燥処理に限定されることはなく、例えば、溶剤を使用した置換乾燥処理を行っても本発明の目的を達成することができる。
【0068】
さらに、上記実施の形態では、LCフィルタを例示して説明したが、その他のセラミック多層基板、例えばセラミックアンテナにも適用することができ、また、チップ型のコンデンサやインダクタのようなチップ型電子部品にも適用することができる。尚、チップ型電子部品の場合、第1の金属皮膜を電解めっき法で形成した場合であっても、上述した真空乾燥処理(水分除去処理)を行なうことができるのはいうまでもない。
【0069】
【実施例】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0070】
本発明者らは、まず、縦10mm、横30mm、板厚0.3mmの無酸素Cu板(以下、単に「Cu板」という)を水洗し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液に25℃で1分間浸漬しエッチング処理を施した後、水洗処理した。
【0071】
次いで、Pd触媒液に25℃で2分間浸漬し、Cu板上にPd触媒を付与し、下記のめっき組成を有する無電解Niめっき液に20分間浸漬し、膜厚4μmのNi−P皮膜を形成した。
【0072】
〔無電解Niめっき液の組成〕
塩化ニッケル:30kg/m3
ホスフィン酸ナトリウム:10kg/m3
クエン酸ナトリウム:15kg/m3
酢酸ナトリウム:5kg/m3
pH:4.5
浴温:85℃
次に、Ni−P皮膜が形成されたCu板を純水で洗浄した後、下記のめっき組成を有する無電解Auめっき液に10分間浸漬し、厚さ0.05μmのAu皮膜を形成し、被乾燥物を作製した。
【0073】
〔無電解Auめっき液の組成〕
亜硫酸金ナトリウム:2kg/m3
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム:10kg/m3
クエン酸ナトリウム:25kg/m3
pH:7.0
浴温:65℃
次に、被乾燥物を水洗した後、室温で約15sec間、窒素ガスを吹き付けてAu皮膜の表面に付着している水分を乾燥させ、その後、2.66×10−4Paに減圧された真空乾燥装置に被乾燥物を供給し、温度25℃の下、6時間、真空乾燥処理を施して実施例1の試験片を作製し、また、24時間、真空乾燥処理を施して実施例2の試験片を作製した。
【0074】
また、本発明者らは、真空乾燥処理を施さずに室温で約15sec間、窒素ガスを吹き付けたものを比較例の試験片とした。
【0075】
次に、本発明者らは、実施例1、2及び比較例について昇温脱離分析(Thermal Desertion Spectroscopy;TDS)を行い、残存水分を計測した。すなわち、500℃に達するまで昇温速度20℃/minで赤外線により間接加熱し、発生した水分ガス分圧を計測した。
【0076】
次に、本発明者らは、実施例1、2及び比較例について、大気雰囲気中、所定のヒートサイクルでもって4回のリフロー加熱処理を行った、
図4はリフロー加熱処理のヒートサイクルを示すプロファイルであって、最初の80秒で温度175℃まで昇温し、その後温度175℃で60秒間予熱し、次いで、30秒間で175℃から260℃まで昇温し、温度260℃で15秒間加熱した。尚、コンベアの搬送速度は0.7m/minとした。
【0077】
そしてこの後、SAT−5000(レスカ社製)を使用し、メニスコグラフ法によりはんだの引張力とはんだの排斥力とが等しくなるゼロクロス時間を測定した。すなわち、浸漬速度20mm/min、浸漬深さ5mm、浸漬時間15secで浴温235℃のはんだ溶融槽(60%Sn−40%Pb)に浸漬し、前記ゼロクロス時間を測定してはんだ濡れ性を評価した。
【0078】
表1は水分ガス分圧及びゼロクロス時間の測定結果を示している。
【0079】
【表1】
この表1から明らかなように、実施例1は比較例に比べて水分量が54.5%減少し、また実施例2は31.8%減少しており、真空乾燥処理を施すことにより水分量が大幅に低減できることが分かる。
【0080】
また、ゼロクロス時間も、実施例1は比較例に対し24.5%改善されており、また、実施例2は46.8%改善されており、水分を除去することにより、はんだ濡れ性を改善できることが分かった。
【0081】
次に、本発明者らは、実施例2及び比較例について、めっき皮膜(Ni−P皮膜及びAu皮膜)の深さ方向の組成分析を走査型オージェ電子顕微鏡(ScanningAuger electron Microscope:SAM)で行った。
【0082】
図5は実施例2の組成分析を示し、図6は比較例の組成分析を示している。横軸はスパッタ時間(min)であり、縦軸は原子濃度(atm%)である。
【0083】
また、二点鎖線はAuの原子濃度、破線はNiの原子濃度、一点鎖線はPの原子濃度を示し、実線は酸素の原子濃度を示している。
【0084】
図6(比較例)では、A部に示すように、Au皮膜とNi−P皮膜との界面近傍に酸素が検出されており、Ni−P皮膜が酸化しているものと考えられる。
【0085】
これに対して図5(実施例2)は、Au皮膜とNi−P皮膜との界面に酸素が検出されておらず、Ni−P皮膜が酸化していないことが分かった。
【0086】
このように真空乾燥処理を施してAu皮膜とNi−P皮膜との界面に残存している水分量を低減させることにより、Ni−P皮膜の酸化が阻止され、はんだ濡れ性を改善できることが確認された。
【0087】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係る電子部品の製造方法は、基板素体の表面に形成された導電部に第1の金属皮膜を被着した後、該第1の金属皮膜との間の置換反応によって第2の金属皮膜を前記第1の金属皮膜に被着し、その後、前記第1の金属皮膜と前記第2の金属皮膜との界面に残存する水分を除去する水分除去処理を施すので、第1の金属皮膜の酸化が阻止され、これによりはんだ付け性の改善を図ることができる。
【0088】
また、前記水分除去処理は、25℃以下の低温で行なうので、室温以下の低温で水分を除去することができ、被乾燥物を加熱しなくとも水分を除去することが可能となる。
【0089】
また、前記水分除去処理は、真空乾燥処理とすることにより、被乾燥物の処理温度を上昇させることなく水分を除去することができ、第1の金属皮膜の酸化が防止され、はんだ付け性を改善することができる。
【0090】
また、前記真空乾燥処理は、少なくとも13.3Pa以下に減圧して行なうことにより、最上層のめっき皮膜に付着している水分のみならず、前記界面に残留している水分を容易に除去することができる。
【0091】
また、本発明の製造方法は、前記第1の金属皮膜が、Ni及びNi合金のいずれかを主成分とし、前記第2の金属皮膜が、Au、Ag、Cu、Pd、及びPtの中から選択された少なくとも1種の金属を含むものに効果的である。
【0092】
また、本発明に係る電子部品は、上記製造方法を使用して製造されているので、第1の金属皮膜が酸化されることもなく、複数回のリフロー加熱処理を繰り返しても良好なはんだ付け性を保持することのできる各種電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を使用して製造された電子部品としてのLCフィルタの一実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】本発明に係る電子部品の製造方法の一実施の形態を示す製造工程図である。
【図4】本発明の実施例で行ったリフロー加熱処理のヒートサイクルを示すプロファイル図である。
【図5】実施例2の深さ方向の組成分析を示す図である。
【図6】比較例の深さ方向の組成分析を示す図である。
【図7】従来の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
1 セラミック素体(基板素体)
4 Cu電極(導電部)
5 Ni−P皮膜(第1の金属皮膜)
6 Au皮膜(第2の金属皮膜)
7 凹所(界面)
14 後処理工程(水分除去処理)
Claims (7)
- 基板素体の表面に形成された導電部に第1の金属皮膜を被着した後、該第1の金属皮膜との間の置換反応によって第2の金属皮膜を前記第1の金属皮膜に被着し、その後、前記第1の金属皮膜と前記第2の金属皮膜との界面に残存する水分を除去する水分除去処理を施すことを特徴とする電子部品の製造方法。
- 前記水分除去処理は、25℃以下の低温で行なうことを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
- 前記水分除去処理は、真空乾燥処理であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子部品の製造方法。
- 前記真空乾燥処理は、少なくとも13.3Pa以下に減圧して行なうことを特徴とする請求項3記載の電子部品の製造方法。
- 前記第1の金属皮膜は、Ni及びNi合金のいずれかを主成分としていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
- 前記第2の金属皮膜は、Au、Ag、Cu、Pd、及びPtの中から選択された少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の製造方法を使用して製造されたことを特徴とする電子部品。
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