JP2004107371A - 樹脂組成物及び光学用フィルム - Google Patents

樹脂組成物及び光学用フィルム Download PDF

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Minoru Shioda
潮田 実
Yutaka Konoo
高野尾 豊
Minoru Shimokawa
下川 稔
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Abstract

【課題】外観や透明性等光学特性に優れた光学用フィルムおよびおよびそのような光学用フィルムを製造するための加工熱安定性に優れた樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂、(B)側鎖に置換または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂、ならびに(C)ラクトン系安定剤およびフェノールアクリレート系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤と(D)フェノール系安定剤、リン系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤を含むことを特徴とするフィルム用樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性などの光学特性に優れ、かつ外観欠陥の少ない光学用フィルムおよびそのための樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器はますます小型化し、ノート型パソコン、ワードプロセッサ、携帯電話、携帯情報端末に代表されるように、軽量・コンパクトという特長を生かした液晶表示装置が多く用いられるようになってきている。これら液晶表示装置は、偏光フィルムに始まり、その表示品位を保つ為に各種フィルムが用いられている。また、携帯情報端末や携帯電話向けに液晶表示装置を更に軽量化する目的で、ガラス基板の代わりに樹脂フィルムを用いたプラスチック液晶表示装置も実用化されている。
【0003】
液晶表示装置のように、偏光を取り扱う場合、用いる樹脂フィルムは光学的に透明であることの他に、光学的に均質であること、着色や変色が少ないこと、点状のあるいはスジ状などの外観欠陥が少ないことなどが求められる。ガラス基板を樹脂フィルムに代えたプラスチック液晶表示装置用のフィルム基板の場合、複屈折と厚みの積で表される位相差が小さいことが要求される。さらに、外部の応力等によりフィルムの位相差が変化しにくいことが要求される。
【0004】
しかし、溶融押出法にてフィルムを製作する場合、押出機内にて樹脂が劣化し、フィルムが着色や変色する、あるいは、光学的に透明なフィルムが得られないといった問題がある。さらに、架橋生成物などに起因するゲルや、焼け樹脂に起因する褐色あるいは黒い点状の欠陥が発生したり、樹脂分解ガスに起因する気泡が発生したり、メヤニなどに起因するダイラインなどのスジ状欠陥が発生するなど外観不良が発生するといった問題がある。
【0005】
さらに、靭性に劣る樹脂組成物の場合にはフィルムとして実用に耐える強度を発現させる必要があり、そのためにはフィルムを延伸して強度を改善することが試みられる。しかしながら、延伸前のフィルムの靭性が低いと非常に小さな欠陥であっても延伸時にフィルムが破断してしまうという問題に繋がるので、靭性に劣る樹脂組成物を用いる場合は特に良好な外観が求められる。。
【0006】
一般には異物除去の目的で各種フィルターが使用されるが、上記のようなゲルや褐色の焼け樹脂あるいは非常に小さな異物はフィルターで完全に除去することは難しいという問題がある。
【0007】
また、使用する安定剤の種類によっては、例えば特許文献1に開示されている低複屈折の樹脂組成物を用いても、得られるフィルムに面内位相差が生じるといった問題がある。これに対して、例えば、安定剤を使用する方法が特許文献2および特許文献3で知られている。しかし、溶融押出法における安定剤の種類および含有量は記載されておらず、安定剤の種類および含有量とフィルムの透明性と光学特性との関係は、記載も示唆もされていない。
【0008】
フィルムの透明性などの光学特性は、フィルム材料中の添加剤の配合に大きく影響を受ける。一般に、フィルムの光学特性には、材料の均一性が高度に影響する。このため、微量の不純物が混合されると、光学特性が損なわれる場合が多い。また、通常の光学用途以外のフィルム一般に用いられる各種添加剤をそのまま、光学用フィルムに用いると、通常、光学特性が低下してしまって、光学用フィルムとして用いることが困難になる。光学特性が低下しない程度に、それらの添加剤の添加量を減らす場合には、その添加剤の添加効果が得られにくくなる。
【0009】
従って、光学用途のフィルムにおける適切な添加剤、例えば、安定剤を見出すことは極めて困難であった。言い換えれば、樹脂組成物の加工熱安定性やフィルムの外観と光学特性を両立させることは、当業者にとって極めて困難であった。
【0010】
【特許文献1】
国際公開WO01/37007号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平9−328523号公報
【0012】
【特許文献3】
特開2000−80240号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような課題を解決する為になされたものであり、外観や光学特性に優れた光学用フィルムおよびそのような光学用フィルムを製造するための加工熱安定性に優れた樹脂組成物を提供する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為、本発明者等は鋭意研究を行った。その結果、(A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂、(B)側鎖に置換または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂、ならびに(C)ラクトン系安定剤とフェノールアクリレート系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤と(D)フェノール系安定剤とリン系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤とを含む樹脂組成物により、好ましくは、ヘイズが2%以下、全光線透過率が85%以上であるフィルムが得られることを見出し、本発明に至った。
【0015】
即ち、本発明によれば、以下の組成物、フィルムおよび方法が提供される。
(1) フィルム製造用樹脂組成物であって、
(A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂
(B)側鎖に置換または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂
(C)ラクトン系安定剤およびフェノールアクリレート系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤
(D)フェノール系安定剤とリン系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤
を含む、組成物。
(2) 前記組成物中の安定剤(C)および(D)の含有量が0.01〜2重量%である、上記項(1)に記載の組成物。
(3) 前記熱可塑性樹脂(A)が、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位を有し、
ここで、式(1)の繰り返し単位の含有率が該熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として30〜80モル%であり、式(2)の繰り返し単位の含有率が該熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として70〜20モル%であり、
前記熱可塑性樹脂(B)が、式(3)で表される繰り返し単位および式(4)で表される繰り返し単位を有し、
ここで、該熱可塑性樹脂(B)の総繰り返し単位を基準として式(3)の繰り返し単位の含有率が20〜50重量%であり、式(4)の繰り返し単位の含有率が50〜80重量%であり、該熱可塑性樹脂(A)の量と該熱可塑性樹脂(B)の量との合計を基準として、前記樹脂組成物中における該熱可塑性樹脂(A)の含有率が50〜80重量%であり、かつ熱可塑性樹脂(B)の含有率が20〜50重量%である、上記項(1)に記載の組成物。
【0016】
【化3】
Figure 2004107371
【0017】
(式(1)において、R1 、RおよびR3 は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
(式(2)において、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。)
【0018】
【化4】
Figure 2004107371
【0019】
(式(3)において、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
(式(4)において、RおよびR7 は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、アルコキシ基、もしくはニトロ基を示す。)
(4) ヘイズが2%以下であり、全光線透過率が85%以上である上記項(1)〜(3)の何れか1項に記載の組成物から得られる、光学用フィルム。
(5) 溶融押出法により得られるフィルムである、上記項(4)に記載のフィルム。
(6) 二軸延伸されたフィルムである、上記項(4)または(5)に記載のフィルム。
(7) 面内位相差が10nm以下である、上記項(6)に記載のフィルム。
(8) 上記項(5)に記載のフィルムを製造する方法であって、上記項(1)〜(3)の何れか1項に記載の組成物を溶融押出しすることによりフィルムを製造する工程を包含する、方法。
(9) 上記項(9)に記載のフィルムを製造する方法であって、
上記項(1)〜(3)の何れか1項に記載の組成物から未延伸フィルムを製造する工程、および
該未延伸フィルムを二軸延伸する工程
を包含する、方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
(本発明の組成物の構成)
本発明の樹脂組成物は、(A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂、(B)側鎖に置換または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂、ならびに(C)ラクトン系安定剤およびフェノールアクリレート系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤、および(D)フェノール系安定剤、リン系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤とを含む。
【0022】
なお、本明細書中においては、上記熱可塑性樹脂(A)が共重合体樹脂である場合、この重合体を、「熱可塑性共重合体(A)」ともいう。また、本明細書中においては、上記熱可塑性樹脂(B)が共重合体樹脂である場合、この共重合体を、「熱可塑性共重合体(B)」ともいう。
【0023】
(熱可塑性樹脂A)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)は、側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂である。ここで、熱可塑性樹脂(A)の主鎖は、任意の熱可塑性樹脂の主鎖であり得る。例えば、炭素のみからなる主鎖であっても良く、または炭素以外の原子が炭素間に挿入される主鎖であっても良い。あるいは、炭素以外の原子からなる主鎖であっても良い。好ましくは、炭素のみからなる主鎖である。例えば、炭化水素またはその置換体であり得る。具体的には例えば、主鎖は、付加重合により得られる主鎖であり得る。具体的には例えば、ポリオレフィンまたはポリビニルである。
【0024】
また、主鎖は縮合重合により得られる主鎖であっても良い。例えば、エステル結合、アミド結合等で得られる主鎖であり得る。
【0025】
好ましくは、主鎖は、置換ビニルモノマーを重合させて得られるポリビニル骨格である。
【0026】
熱可塑性樹脂(A)に置換もしくは非置換イミド基を導入する方法としては、従来公知の任意の方法が可能である。例えば、置換もしくは非置換イミド基を有するモノマーを重合する事により、置換もしくは非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂を得ても良い。また、例えば、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、側鎖に置換もしくは非置換のイミド基を導入しても良い。例えば、置換もしくは非置換のイミド基を有する化合物を側鎖にグラフトさせても良い。
【0027】
イミド基が置換基で置換されている場合、当該置換基としては、イミド基の水素を置換し得る従来公知の置換基が使用可能である。具体的には、例えば、アルキル基等である。
【0028】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)は、好ましくは、少なくとも1種のオレフィン(アルケン)から誘導される繰り返し単位と少なくとも1種の置換あるいは非置換マレイミド構造を有する繰り返し単位とを含有する共重合体(二元もしくはそれ以上の多元共重合体)である。
【0029】
ここで、本明細書中でモノマーについて「単位」という場合には、当該モノマーが重合した後に残る残基のことをいう。具体的には、「マレイミド単位」とは、用いられた1つのマレイミド分子が重合した後に残る残基をいう。同様に「オレフィン単位」とは、用いられた1つのオレフィンモノマーが重合した後に残る残基をいう。
【0030】
特に好ましくは、熱可塑性樹脂(A)は、下記式(1)で表される繰り返し単位と下記式(2)で表される繰り返し単位を含有する。
【0031】
【化5】
Figure 2004107371
【0032】
(式(1)において、R1 、RおよびR3 は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示す。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは、1〜2である。)
(式(2)において、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは、1〜2である。シクロアルキル基の炭素数は、好ましくは3〜9であり、より好ましくは、4〜7である。)
ここで、式(1)の繰り返し単位の含有量は、好ましくは、該熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として、30〜80モル%である。より好ましくは、40〜60モル%である。さらに好ましくは、45〜55モル%である。式(2)の繰り返し単位の含有量は、該熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として、20〜70モル%である。より好ましくは、40〜60モル%である。さらに好ましくは、45〜55モル%である。一般式(2)の繰り返し単位の含有率が少なすぎるか、または多すぎる場合、得られる透明フィルムの耐熱性および機械的強度が低下しやすい。
【0033】
熱可塑性樹脂Aは、一般式(1)の繰り返し単位と一般式(2)の繰り返し単位とを主成分として含むことが特に好ましい。1つの実施態様では、一般式(1)の繰り返し単位と一般式(2)の繰り返し単位との合計が、熱可塑性樹脂A中の50モル%以上であり、好ましくは、70モル%以上である。より好ましくは、80モル%以上であり、さらに好ましくは、90モル%以上である。
【0034】
好ましい実施態様では、式(1)の繰り返し単位と式(2)の繰り返し単位との和は100%である。しかし、必要に応じて、後述する第3の繰り返し単位を用いても良い。
【0035】
第3の繰り返し単位を用いる場合、第3の繰り返し単位は、熱可塑性共重合体(A)の総繰り返し単位を基準として、好ましくは30モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下であり、さらに好ましくは15モル%以下であり、特に好ましくは10モル%以下である。第3の繰り返し単位が多すぎる場合には、上記一般式(1)で表される繰り返し単位および一般式(2)で表される繰り返し単位の性能が充分に得られにくい。
【0036】
また、第3の繰り返し単位を用いる場合、第3の繰り返し単位は、熱可塑性共重合体Aの総繰り返し単位を基準として、好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは2モル%以上であり、さらに好ましくは3モル%以上であり、特に好ましくは5モル%以上である。第3の繰り返し単位が少なすぎる場合には、組成物全体として、第3の繰り返し単位による性能が充分に得られにくい。なお、第3の繰り返し単位を用いる場合においても、式(1)の繰り返し単位と式(2)の繰り返し単位との比率は、第3の繰り返し単位が存在しない場合と同様の比率とする事が好ましい。
【0037】
式(1)の繰り返し単位(オレフィン単位)を提供するオレフィンは、下記式(5)で表される。
【0038】
【化6】
Figure 2004107371
【0039】
(ここで、R1 、RおよびR3 は、式(1)と同じである。)
そのようなオレフィンの好ましい例を挙げると、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、1−イソオクテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−エチル−2−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル−2−ヘキセン等である。これらオレフィンは、単独で、または2種以上組合せて用いる事ができる。
【0040】
上記式(2)の繰り返し単位(マレイミド単位)は、対応するマレイミド化合物から誘導する事ができる。そのようなマレイミド化合物は、下記式(6)で示される。
【0041】
【化7】
Figure 2004107371
【0042】
(ここで、Rは、式(2)に同じである。)
このようなマレイミド化合物の好ましい例を挙げると、マレイミド、並びに、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−ヘプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等のN−置換マレイミドである。N−メチルマレイミドが最も好ましい。
【0043】
これらマレイミド化合物は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いる事ができる。マレイミド化合物としては、N−置換マレイミドが好ましい。すなわち、一般式(6)において、Rが水素以外の基である化合物が特に好ましい。例えば、N−メチルマレイミドなどである。N−置換マレイミドにおいて、好ましいN置換基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ラウリル、ステアリル、シクロプロピル、シクロブチル、およびシクロヘキシル等である。
【0044】
(第3の繰り返し単位)
本発明に用いられる熱可塑性共重合体(A)は、上記オレフィン単位とマレイミド単位以外に、第3の繰り返し単位として、他の共重合性単量体を1種以上含有することができる。例えば、ビニル系単量体を含有することができる。そのような共重合性単量体には、アクリル酸メチルやアクリル酸ブチルのようなアクリル酸系単量体、メタクリル酸メチルやメタクリル酸シクロヘキシルのようなメタクリル酸系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル単量体、メチルビニルエーテルのようなビニルエーテル単量体等のビニル単量体、並びに無水マレイン酸のような不飽和二重結合を有する酸無水物、スチレン、α−メチルスチレン、またはp−メトキシスチレン等の置換または非置換スチレン系単量体等が含まれる。これら第3の繰り返し単位は、1種類の単量体であっても良く、2種以上の単量体を組み合わせて第3の繰り返し単位としても良い。第3の繰り返し単位を光学的特性を著しく損なわない程度に含有させる事により、熱可塑性共重合体(A)の耐熱性を向上させたり、機械的強度を増大させたりする事ができる。
【0045】
(熱可塑性樹脂Aの重合方法)
熱可塑性樹脂(A)は、上記オレフィンとマレイミド化合物とを既知の重合方法により重合させる事により製造する事ができる。この重合には、グラフト重合も含まれる。あるいは、熱可塑性樹脂(A)は、上記オレフィンとマレイン酸とを常法に従って重合させて前駆重合体を製造し、これにアミン化合物を反応させて前駆重合体のマレイン酸部位をイミド化させる事によっても製造する事ができる。その場合に使用するアミン化合物としては、上記式(2)のマレイミド単位におけるイミド部位に対応するアミンが含まれ、より具体的には、式R−NH2 (但し、Rは、式(2)に同じ。)で表されるアミン化合物、例えばメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミンやアンモニアの他、ジメチル尿素、ジエチル尿素等を好ましく例示する事ができる。この場合にも、上記式(1)の繰り返し単位と式(2)の繰り返し単位を有する共重合体が得られる。
【0046】
熱可塑性共重合体(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであっても良いが、交互共重合体である事が好ましい。熱可塑性共重合体(A)は、より好ましくは、マレイミド単位として、式(2)におけるRがメチル基、エチル基、イソプロピル基およびシクロヘキシル基から選ばれたアルキル基である少なくとも1種のマレイミド単位を含有し、オレフィン単位として、式(1)におけるR1 が水素であり、RおよびR3 がそれぞれメチル基である少なくとも1種のオレフィン単位を含有する共重合体である。
【0047】
さらに好ましくは、熱可塑性共重合体(A)は、マレイミド単位としてN−メチルマレイミド単位を含有し、オレフィン単位としてイソブチレン単位を含有する。熱可塑性共重合体(A)は、N−置換マレイミドとイソブテンとの交互共重合体である事が特に好ましい。
【0048】
本発明に用いられ得る熱可塑性共重合体(A)において、マレイミド単位の含有率は、30モル%以上80モル%未満である事が好ましい。マレイミド単位の含有率が多すぎるか、または少なすぎる場合、得られるフィルムの耐熱性や機械的強度が損なわれやすい。マレイミド単位の含有率は、より好ましくは、40モル%以上60モル%以下である。第3の繰り返し単位を添加する場合には、その含有率が、5モル%以上30モル%以下である事が好ましい。5モル%以上10モル%以下である事がより好ましい。熱可塑性共重合体(A)の残りは、好ましくはオレフィン単位である。熱可塑性共重合体(A)は、マレイミド単位とオレフィン単位とを主成分として含む事が特に好ましい。1つの実施態様では、マレイミド単位とオレフィン単位との合計が、熱可塑性共重合体(A)中の50モル%以上であり、好ましくは、70モル%以上である。より好ましくは、80モル%以上であり、さらに好ましくは、90モル%以上である。
【0049】
(分子量)
熱可塑性樹脂Aは、1×10以上の重量平均分子量を有することが好ましい。より好ましくは、1×10以上である。重量平均分子量が小さすぎると、フィルムの機械強度が低下しやすい。
【0050】
熱可塑性樹脂Aは、5×10以下の重量平均分子量を有することが好ましい。より好ましくは、5×10以下である。重量平均分子量が大きすぎると、フィルムの成形性が低下しやすい。
【0051】
熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度は、80℃以上であることが耐熱性の点で好ましい。より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは130℃以上である。
【0052】
熱可塑性共重合体(A)は、既知の方法で製造する事ができる。例えば特開平5−59193号公報、特開平5−195801号公報、特開平6−136058号公報および特開平9−328523号公報に記載されているように、オレフィンとマレイミド化合物とを直接共重合させたり、その一方の重合体に他方をグラフト共重合したり、あるいは前述した前駆重合体に対してアミン化合物を反応させてイミド結合を導入する事によって製造する事ができる。
【0053】
また、別の好ましい、側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂Aとして、グルタルイミド系熱可塑性樹脂を用いることができる。グルタルイミド系樹脂は、特開平2−153904号公報等に記載されているように、グルタルイミド構造単位とアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチル構造単位とを有する。
【0054】
下記一般式(7)で表される繰り返し単位を有するグルタルイミド系樹脂が、好ましく使用され得る。
【0055】
【化8】
Figure 2004107371
【0056】
(式中において、Rは水素またはメチルであり、R10は水素または炭素数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。Rは前記式(2)と同様である。)
上記グルタルイミド系樹脂中には必要に応じ第3の単量体が共重合されていてもかまわない。好ましい第3の単量体の例としては、ブチルアクリレートなどのアクリル系単量体、スチレン、置換スチレン、またはα−メチルスチレンなどのスチレン系単量体、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、あるいは、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体を用いることができる。また、これらの第3の単量体は、グルタルイミド系樹脂と直接共重合されても良い。また、グルタルイミド系樹脂とグラフト共重合されてもかまわない。
【0057】
好ましいイミド基の含有量は、イミド基を有する繰り返し単位の存在率として、グルタルイミド系樹脂中の繰り返し単位の総量のうちの40〜80モル%である。これらのグルタルイミド系樹脂の例は、例えば、米国特許4246374号などに開示されている。
【0058】
(熱可塑性樹脂B)
次に、本発明に用いられる熱可塑性樹脂(B)は、置換または非置換フェニル基とニトリル基とを側鎖に有する熱可塑性樹脂である。ここで、熱可塑性樹脂(B)の主鎖は、任意の熱可塑性樹脂の主鎖であり得る。例えば、炭素のみからなる主鎖であっても良く、または炭素以外の原子が炭素間に挿入される主鎖であっても良い。あるいは炭素以外の原子からなる主鎖であっても良い。好ましくは、炭素のみからなる主鎖である。例えば、炭化水素またはその置換体であり得る。具体的には例えば、主鎖は、付加重合により得られる主鎖であり得る。具体的には例えば、ポリオレフィンまたはポリビニルである。
【0059】
また、主鎖は縮合重合により得られる主鎖であっても良い。例えば、エステル結合、アミド結合などで得られる主鎖であり得る。
【0060】
好ましくは、主鎖は、置換ビニルモノマーを重合させて得られるポリビニル骨格である。
【0061】
熱可塑性樹脂(B)に置換または非置換フェニル基を導入する方法としては、従来公知の任意の方法が可能である。例えば、置換もしくは非置換フェニル基を有する熱可塑性樹脂を得ても良い。また、例えば、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、側鎖に置換もしくは非置換のフェニル基を導入しても良い。例えば、置換もしくは非置換のフェニル基を有する化合物を側鎖にグラフトさせても良い。
【0062】
フェニル基が置換基で置換されている場合、当該置換基としては、フェニル基の水素を置換し得る従来公知の置換基および置換位置が使用可能である。具体的には置換基は、例えば、アルキル基等である。
【0063】
熱可塑性樹脂(B)にニトリル基を導入する方法としては、従来公知の任意の方法が可能である。例えば、ニトリル基を有するモノマーを重合する事により、ニトリル基を有する熱可塑性樹脂を得ても良い。また、例えば、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、側鎖にニトリル基を導入しても良い。例えば、ニトリル基を有する化合物を側鎖にグラフトさせても良い。
【0064】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(B)は、好ましくは、不飽和ニトリル化合物から誘導される繰り返し単位(ニトリル単位)とスチレン系化合物から誘導される繰り返し単位(スチレン系単位)とを含む共重合体(二元もしくは三元以上の多元共重合体)である。従って、アクリロニトリル・スチレン系の共重合体を好ましく用いることができる。不飽和ニトリル化合物としては、シアノ基および反応性二重結合を有する任意の化合物が使用可能である。
【0065】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(B)は、不飽和ニトリル単位とスチレン系単位とを主成分として含む事が特に好ましい。不飽和ニトリル単位とスチレン系単位との合計が、熱可塑性樹脂(B)の70重量%以上である事が好ましい。より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%であり、特に好ましくは95重量%以上である。勿論、100重量%としても良い。
【0066】
上記の好ましい共重合体(B)を構成する不飽和ニトリル化合物の好ましい例を挙げると、アクリロニトリルやメタクリロニトリルのようなα−置換不飽和ニトリル、フマロニトリルのようなα,β−二置換オレフィン性不飽和結合を有するニトリル化合物である。より好ましくは、不飽和ニトリル化合物は、アクリロニトリルである。
【0067】
スチレン系化合物としては、フェニル基および反応性二重結合を有する任意の化合物が使用可能である。
【0068】
上記の好ましい共重合体(B)を構成するスチレン系化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレンまたはクロロスチレン等の非置換または置換スチレン系化合物や、α−メチルスチレン等のα−置換スチレン系化合物を用いる事ができる。
【0069】
好ましい実施態様では、熱可塑性樹脂(B)は、式(3)で表される繰り返し単位および式(4)で表される繰り返し単位を有する。
【0070】
【化9】
Figure 2004107371
【0071】
(式(3)において、RおよびR5 は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示す。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは、1〜2である。)
(式(4)において、R6 およびR7 は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、アルコキシ基、もしくはニトロ基を示す。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは、1〜2である。アルコキシ基の炭素数は、好ましくは、1〜20であり、より好ましくは、1〜8であり、さらに好ましくは、1〜4である。)
熱可塑性樹脂(B)中の総繰り返し単位を基準として、一般式(3)の繰り返し単位は、好ましくは、10〜70重量%であり、より好ましくは20〜60重量%であり、さらに好ましくは20〜50重量%である。いっそう好ましくは20〜40重量%である。なおさら好ましくは、20〜30重量%である。きわめて好ましくは20〜29重量%である。最も好ましくは、20〜28重量%である。
【0072】
熱可塑性樹脂(B)中の総繰り返し単位を基準として、式(4)の繰り返し単位は、好ましくは、30〜70重量%であり、より好ましくは40〜80重量%であり、さらに好ましくは50〜80重量%である。特に好ましくは60〜80重量%である。最も好ましくは、70〜80重量%である。
【0073】
1つの好ましい実施態様では、式(3)の繰り返し単位と式(4)の繰り返し単位との和は100%である。しかし、必要に応じて、後述する第3の繰り返し単位を用いても良い。
【0074】
本発明に用いられる熱可塑性共重合体(B)は、上記ニトリル単位とスチレン系単位以外に、第3成分として、他の共重合性単量体を含有していてもかまわない。そのような第3成分には、好ましくは、ブチルアクリレート等のアクリル系単量体、エチレンやプロピレン等のオレフィン系単量体が含まれ、これら単量体を1種または2種以上を共重合させる事により、得られたフィルムの可撓性を向上させる事ができる。また、第3成分としては、N−置換マレイミドを用いる事も出来、このN−置換マレイミド、特にフェニルマレイミドを共重合成分として用いる事により、当該共重合体の耐熱性を向上させる事ができる。
【0075】
第3の繰り返し単位を用いる場合、第3の繰り返し単位は、熱可塑性共重合体(B)の重量を基準として、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以下であり、特に好ましくは10重量%以下である。第3の繰り返し単位が多すぎる場合または少なすぎる場合には、上記式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し単位との性能が充分に得られにくい。また、第3の繰り返し単位を用いる場合、第3の繰り返し単位は、熱可塑性共重合体(B)の重量を基準として、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは2重量%以上であり、さらに好ましくは3重量%以上であり、特に好ましくは5重量%以上である。第3の繰り返し単位が多すぎる場合または少なすぎる場合には、組成物全体として、第3の繰り返し単位による性能が充分に得られにくい。なお、第3の繰り返し単位を用いる場合であっても、式(3)の繰り返し単位と式(4)の繰り返し単位との比率は、第3の繰り返し単位が存在しない場合と同様の比率にする事が好ましい。
【0076】
(熱可塑性樹脂Bの重合方法)
本発明に用いられる熱可塑性共重合体(B)は、これら単量体を直接共重合させる事により得られ得る。スチレン系化合物の重合体および不飽和ニトリル化合物の重合体の一方に、他方をグラフト共重合させても良い。また、ゴム弾性を有するアクリル系重合体にスチレン系化合物および不飽和ニトリル系化合物をグラフト重合させる事により好ましい共重合体を得る事ができる。特に好ましい熱可塑性共重合体は、不飽和ニトリル成分としてアクリロニトリルを含有し、スチレン系成分としてスチレンを含有する共重合体である。これら共重合体はAS樹脂やAAS樹脂として知られている。
【0077】
本発明に用いられる熱可塑性共重合体(B)中の不飽和ニトリル系繰り返し単位の含有量としては20〜60重量%が好ましく、スチレン系繰り返し単位の含有量は、40〜80重量%が好ましい。不飽和ニトリル単位とスチレン系単位の比率は、好ましくは、前者が20〜50重量%であり、後者が50〜80重量%であり、より好ましくは、前者が20〜40重量%であり、後者が60〜80重量%である。特に、前者が20〜30重量%で、後者が70〜80重量%の場合は更に好ましい結果を与える。スチレン系化合物やニトリル系化合物の成分が多すぎるかまたは少なすぎる場合、(A)の熱可塑性樹脂との相溶性が乏しくなり、光学材料等に用いる場合、透明性に優れたフィルムを得る事が出来ない恐れがある。
【0078】
本発明に用いられる熱可塑性共重合体(B)は、不飽和ニトリル単位とスチレン系単位とを主成分として含む事が特に好ましい。不飽和ニトリル単位とスチレン系単位との合計が、熱可塑性共重合体(B)の70重量%以上である事が好ましい。より好ましくは、80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。勿論、100重量%としても良い。
【0079】
本発明に用いられる熱可塑性共重合体(B)は、不飽和ニトリル単位とスチレン系単位とを主成分(好ましくは、不飽和ニトリル単位とスチレン系単位との合計が、熱可塑性共重合体(B)の70重量%以上)として含む事が特に好ましい。
【0080】
熱可塑性樹脂Bは、1×10以上の重量平均分子量を有することが好ましい。より好ましくは、1×10以上である。
【0081】
熱可塑性樹脂Bは、5×10以下の重量平均分子量を有することが好ましい。より好ましくは、5×10以下である。重量平均分子量が大きすぎると、フィルムの成形性が低下しやすい。
【0082】
(熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとの混合比)
本発明の組成物に用いる熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との比率は、熱可塑性樹脂(A)10〜90重量%に対して、熱可塑性樹脂(B)10〜90重量%の割合で配合する事が好ましい。熱可塑性樹脂(A)40〜85重量%に対して、熱可塑性樹脂(B)15〜60重量%の割合で配合する事がより好ましい。熱可塑性樹脂(A)50〜80重量%に対して、熱可塑性樹脂(B)20〜50重量%の割合で配合する事がさらに好ましく、熱可塑性樹脂(A)65〜75重量%に対して、熱可塑性樹脂(B)25〜35重量%の割合は特に好ましい。熱可塑性樹脂(B)が多すぎるかまたは少なすぎる場合、延伸フィルムにした際に、平面方向または厚み方向の位相差が大きくなる恐れがある。また、熱可塑性樹脂(B)の配合率が多すぎると、得られるフィルムの透明性が低下し易い。
【0083】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)および(B)を上記割合で配合する事により、フィルムの平面方向および厚み方向の両方において位相差が極めて小さい延伸フィルムとする事ができる。好ましい実施態様において、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との和は組成物中の樹脂の合計のうちの100重量%である。特に好ましい混合比は熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の種類に依存する。一般的には、使用する熱可塑性樹脂(B)および(A)に含まれるフェニル基モル数Pに対する熱可塑性樹脂(A)および(B)に含まれるイミド基モル数Iの比(I/P比)が0.7以上である事が好ましく、0.9以上である事がより好ましく、さらに好ましくは、1.0以上である。また、2.9以下である事が好ましく、2.6以下である事がより好ましく、さらに好ましくは2.4以下である。1つの実施態様では、I/P比を1.3〜2.0とする事が好ましく、1.5〜1.9とする事がより好ましい。N−メチルマレイミドとイソブテンの交互重合体を熱可塑性樹脂(A)として選択し、アクリロニトリルとスチレンの共重合体を熱可塑性樹脂(B)として選択した場合の熱可塑性樹脂(A):熱可塑性樹脂(B)の重量比は50:50〜80:20が好ましく、65:35〜75:25がより好ましい。熱可塑性樹脂(B)中のアクリロニトリル成分の量は20〜30重量%が好ましく、25〜29重量%がより好ましい。
【0084】
上述したような好ましい組成を適宣選択する事により、実質的に複屈折を示さない延伸フィルムを得る事ができる。例えば、好ましい実施態様では、フィルムの平面方向の位相差が10nm以下に制御する事が出来、さらに好ましい実施態様では、6nm以下に制御する事ができる。また、例えば、フィルム厚み方向の位相差が50nm以下に制御する事ができ、より好ましい実施態様では、20nm以下に制御する事ができる。特に好ましい実施態様では、10nm以下に制御する事ができる。フィルムの平面方向の位相差が10nm以下、かつフィルムの厚み方向の位相差が50nm以下である場合、一般的には実質的に複屈折がないと評価する事ができる。
【0085】
(安定剤)
本発明の組成物は、上述した(A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂、および(B)側鎖に置換または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂に加えて、(C)ラクトン系安定剤およびフェノールアクリレート系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤、および (D)フェノール系安定剤、リン系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤をさらに含む。好ましくは、ヘイズが2%以下、全光線透過率が85%以上であるフィルムを提供する組成物である。
【0086】
フィルム面内位相差は、上記安定剤を添加しても悪化しない。例えば、好ましい実施態様では、フィルムの平面方向の位相差が10nm以下に制御する事ができ、さらに好ましい実施態様では、6nm以下に制御する事ができる。また、例えば、フィルム厚み方向の位相差が50nm以下に制御する事ができ、より好ましい実施態様では、20nm以下に制御する事ができる。特に好ましい実施態様では、10nm以下に制御する事ができる。
【0087】
また、ヘイズが2%より大きい場合は、透明性が要求される光学材料用途では、その透明性が悪化しやすい。さらに、400nmにおける全光線透過率が85%以下の場合は、可視光領域の光が吸収されやすい。
【0088】
上記ラクトン系安定剤としては、例えば、3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−第三ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オンなどが挙げられる。
【0089】
上記フェノールアクリレート系安定剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0090】
上記フェノール系安定剤としては、例えば、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、および3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンなどが挙げられる。
【0091】
上記リン系安定剤としては、例えば、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0092】
本発明における(C)および(D)安定剤の添加量は、前記熱可塑性樹脂組を基準として、0.01〜2重量%である事が好ましい。より好ましくは、0.03〜1重量%である。安定剤の添加量が0.01重量%より少ない場合は、安定剤の効果が得られにくく、着色や変色が激しい、架橋生成物などに起因するゲルや焼けに起因する褐色あるいは黒い点状の欠陥が発生したり、樹脂分解ガスに起因する気泡が発生したり、メヤニなどに起因するダイラインなどのスジ状欠陥が発生するなど外観不良が発生する、さらに、このような欠陥のために、延伸するときにフィルムが破断するという課題がある。また、安定剤の添加量が2重量%より多い場合は、ヘイズが高くなり、透明性が悪化するという課題がある。
【0093】
上記好ましい組成を適宜選択することにより、前述した複屈折性能と同時に、ヘイズが低く、かつ、全光線透過率が高い未延伸フィルムおよび延伸フィルムを得る事ができる。具体的には、例えば、好ましい実施態様では、ヘイズが2%以下のフィルムが容易に得られ、より好ましい実施態様では、1.0%以下のフィルムが得られ、更に好ましい実施態様では0.5%以下のフィルムが得られる。さらに、全光線透過率が85%以上のフィルムが容易に得られ、より好ましい実施態様では、88%以上のフィルムが得られる。ヘイズが2%以下、かつ、全光線透過率が85%以上、であるフィルムであれば、各種光学用途の高性能フィルムとして使用する事ができる。
【0094】
(樹脂組成物の調製方法)
本発明に用いる樹脂組成物を得る方法としては、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)と安定剤(C)および(D)とを混合してフィルム成形機に投入し得る状態とする事ができる限り、公知の任意の方法が採用され得る。例えば、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)と安定剤(C)および(D)とを単に混合することにより樹脂組成物を得る方法や、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)と安定剤(C)および(D)とを熱溶融混練して樹脂組成物を得る方法などが挙げられる。
【0095】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤やフィラー等の公知の添加剤やその他の樹脂を含有しても良い。なお、本明細書中では、このような、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および安定剤(C)および(D)以外の成分を、「第5成分」ともいう。
【0096】
フィルムの機械的特性を向上させる為に可塑剤や可撓性を有する高分子等を樹脂組成物に添加しても良い。しかし、これらの材料を用いると、ガラス転移温度が低下して耐熱性が損なわれる恐れがあり、あるいは透明性が損なわれる等の恐れがある。この為、これらの可塑剤または可撓性高分子を用いる場合、その添加量は、フィルムの性能を妨げない量とするべきである。好ましくは、樹脂組成物中の20重量%以下である。より好ましくは、10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下である。熱可塑性樹脂(A)のイミド含有率が高い場合、具体的には、例えば、熱可塑性樹脂(A)のイミド含有率が40モル%以上であるような場合には、得られるフィルムは硬く脆くなる傾向にある為、少量の可塑剤を加えれば、フィルムの応力白化や裂けを防止する事ができるので有効である。このような可塑剤としては、従来公知の可塑剤が使用可能である。例えば、アジピン酸ジ−n−デシル等の脂肪族二塩基酸系可塑剤やリン酸トリブチル等のリン酸エステル系可塑剤等が例示され得る。
【0097】
上記第5成分とは、上記熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および安定剤(C)および(D)以外の成分をいう。第5成分として樹脂を用いる場合は熱可塑性樹脂であっても良く、熱硬化性樹脂であっても良い。好ましくは、熱可塑性樹脂である。また、その場合の第5成分は単独の樹脂であっても良く、または、複数種類の樹脂のブレンドであっても良い。第5成分として樹脂を用いる場合の使用量は、樹脂組成物中に使用される各成分の合計、即ち、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および安定剤(C)および(D)並びに第5成分の合計量の内の30重量%以下である事が好ましく、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。また、使用される各成分の合計量のうちの1重量%以上である事が好ましく、より好ましくは2重量%以上であり、さらに好ましくは3重量%以上である。第5成分が多すぎる場合には、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および安定剤(C)および(D)の性能が充分に発揮されにくい。また、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)および安定剤(C)および(D)との相溶性が低い第5成分を用いると、得られるフィルムの光学的性能が低下し易い。第5成分が少なすぎる場合には、第5成分の添加効果が得られにくい。
【0098】
なお、第5成分を用いる場合であっても、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)と安定剤(C)および(D)との配合比は、第5成分を用いない場合と同様に、前述した比率である事が好ましい。
【0099】
(フィラー)
必要に応じて、本発明のフィルムには、フィルムの滑り性を改善する目的で、または他の目的でフィラーを含有させても良い。フィラーとしては、フィルムに用いられる従来公知の任意のフィラーが使用可能である。フィラーは、無機の微粒子であってもよく、または有機の微粒子であってもよい。無機微粒子の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、および酸化ジルコニウムなどの金属酸化物微粒子、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、およびケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩微粒子、ならびに炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、およびリン酸カルシウムなどが挙げられる。有機微粒子の例としては、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、および架橋スチレン系樹脂などの樹脂微粒子を挙げることができる。
【0100】
フィラーは、フィルムの光学特性を著しく損なわない範囲で添加される。好ましくは、樹脂組成物中に10重量%以下である。
【0101】
(フィルムの成形方法)
本発明のフィルムを成形する方法としては、従来公知の任意の方法が可能である。例えば、溶液流延法や溶融押出法等が挙げられる。その何れをも採用する事ができるが、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、本発明の効果が顕著に表れやすく、また、製造コストの観点から好ましい。
【0102】
本明細書においては、上記溶融押出法で成形されたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で成形されたフィルムと区別する必要がある場合には、溶融押出フィルムと表現する。
【0103】
好ましい実施形態においては、フィルム化の前に、用いる熱可塑性樹脂を予備乾燥しておく。予備乾燥は、例えば、原料をペレット等の形態にして、熱風乾燥機等で行われる。予備乾燥は、押し出される樹脂の発泡を防ぐ事ができるので非常に有用である。次に、上記熱可塑性樹脂は押出機に供給される。押出機内で加熱溶融された熱可塑性樹脂は、ギヤポンプやフィルターを通して、Tダイに供給される。ギヤーポンプの使用は、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みムラを低減させる効果が高く、非常に有用である。また、フィルターの使用は、樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得るのに有用である。さらに好ましい実施態様においては、Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を2つの冷却ドラムで挟み込んで冷却し、光学用フィルムが成膜される。2つの冷却ドラムの内、一方が、表面が平滑な剛体性の金属ドラムであり、もう一方が、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルドラムであるのが特に好ましい。剛体性のドラムとフレキシブルなドラムとで、Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して成膜する事により、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面の平滑な、厚みむらが小さいフィルム(例えば、5μm以下)を得る事ができるので特に有用である。
【0104】
なお、冷却ドラムは、「タッチロール」あるいは「冷却ロール」と呼ばれる事があるが、本明細書中における用語「冷却ドラム」とは、これらのロールを包含する。Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を剛体性のドラムとフレキシブルなドラムとで挟み込みながら冷却し、フィルムを成形する場合、一方のドラムが弾性変形可能であったとしても、何れのドラム表面も金属である為に、薄いフィルムを成形する場合、ドラムの面同士が接触してドラム外面に傷がつき易い、あるいは、ドラムそのものが破損し易い。従って、成形するフィルムの厚みは10μm以上である事が好ましく、50μm以上である事がより好ましく、さらに好ましくは80μm以上であり、特に好ましくは100μm以上である。
【0105】
また、Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を剛体性のドラムとフレキシブルなドラムとで挟み込みながら冷却してフィルムを成形する場合、フィルムが厚いと、フィルムの冷却が不均一になり易く、光学的特性が不均一になり易い。従って、フィルムの厚みは200μm以下である事が好ましく、さらに好ましくは、170μm以下である。なお、これより薄いフィルムを製造する場合には、このような挟み込み成形で比較的厚みの厚い原料フィルムを得た後、一軸延伸あるいは二軸延伸して所定の厚みのフィルムを製造する事が好ましい。好ましい実施態様の一例を挙げれば、このような挟み込み成形で厚み150μmの原料フィルムを製造した後、縦横二軸延伸により、厚み40μmの光学用フィルムを製造する事ができる。
【0106】
(延伸方法)
本発明に係るフィルムは、前述した本発明の樹脂組成物を未延伸状態の原料フィルムに成形し、さらに必要に応じて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う事により得られる。
【0107】
本明細書中では、説明の便宜上、上記樹脂組成物をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルムを「原料フィルム」または未延伸フィルムと呼ぶ。
【0108】
本発明のフィルムは、原料フィルムの状態で、即ち、未延伸フィルムの状態で最終製品とする事ができる。また、一軸延伸フィルムの状態で最終製品とする事ができる。さらに、延伸工程を組み合わせて行って二軸延伸フィルムとしても良い。
【0109】
延伸を行う事により、機械的特性が向上する。従来のフィルムでは、延伸処理を行った場合に位相差の発生を避ける事が困難であった。しかし、本発明の特に好ましい樹脂組成物を用いて成形されたフィルムは、延伸処理を施しても位相差が実質的に発生しないという利点を有する。フィルムの延伸は、原料フィルムを成形した後、直ぐに連続的に行っても良い。
【0110】
ここで、上記「原料フィルム」の状態が瞬間的にしか存在しない場合があり得る。瞬間的にしか存在しない場合には、その瞬間的な、フィルムが形成された後延伸されるまでの状態を原料フィルムという。また、原料フィルムとは、その後延伸されるのに充分な程度にフィルム状になっていれば良く、完全なフィルムの状態である必要はなく、勿論、完成したフィルムとしての性能を有さなくても良い。また、必要に応じて、原料フィルムを成形した後、一旦フィルムを保管もしくは移動し,その後フィルムの延伸を行っても良い。
【0111】
原料フィルムを延伸する方法としては、従来公知の任意の延伸方法が採用され得る。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、およびこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等がある。また、縦と横を同時に延伸する同時二軸延伸方法も採用可能である。ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を採用しても良い。
【0112】
本発明においては、フィルムを延伸するにあたって、フィルムを一旦、延伸温度より0.5〜5℃高い温度まで予熱し、しかる後、延伸温度まで冷却して延伸する事が好ましい。さらに好ましくは、延伸温度より1〜3℃高い温度まで一旦予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸する事が好ましい。予熱温度が高すぎるとフィルムがロールに貼り付いたり、あるいは自重で弛む等の弊害が発生しやすい。また、予熱温度が延伸温度とあまり変わらないと延伸前のフィルムの厚み精度を維持しにくくなり、あるいは厚みムラが大きくなりやすく、厚み精度が低下しやすい。結晶性の熱可塑性樹脂の場合には、延伸に際してネッキング現象を利用する事ができるので、その場合には、延伸によって厚み精度が改善される。一方、本発明の樹脂組成物の場合には、延伸に際してネッキング現象が利用が困難であるので、厚み精度を維持あるいは改善する為にはこのような温度管理が特に重要である。
【0113】
フィルムの延伸温度および延伸倍率は、得られたフィルムの機械的強度および表面性、厚み精度を指標として適宜調整する事ができる。延伸温度の範囲は、DSC法によって求めたフィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは、Tg−30℃〜Tg+30℃の範囲である。より好ましくは、Tg−20℃〜Tg+20℃の範囲である。さらに好ましくは、Tg以上Tg+20℃以下の範囲である。延伸温度が高すぎる場合、得られたフィルムの厚みムラが大きくなり易い上に、伸び率や引裂伝播強度、耐揉疲労等の力学的性質の改善も不十分になり易い。また、フィルムがロールに粘着するトラブルが起こり易い。逆に、延伸温度が低すぎる場合、延伸フィルムのヘーズが大きくなり易く、また、極端な場合には、フィルムが裂ける、割れる等の工程上の問題を引き起こし易い。好ましい延伸倍率は、延伸温度にも依存するが、1.1倍から3倍の範囲で選択される。より好ましくは、1.3倍〜2.5倍である。さらに好ましくは、1.5倍〜2.3倍である。該熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)と安定剤(C)および(D)とを前述した好ましい混合範囲に調整し、適切な延伸条件を選択する事により、実質的に複屈折を生じさせる事なく、また、ヘーズの増大を実質的に伴わない、厚みムラの小さなフィルムを容易に得る事ができる。好ましくは、1.3倍以上、より好ましくは1.5倍以上延伸する事により、フィルムの伸び率、引裂伝播強度および耐揉疲労等の力学的性質が大幅に改善され、さらに、厚みムラが5μm以下であり、複屈折が実質的にゼロ、ヘイズが2%以下のフィルムを得る事ができる。
【0114】
本発明のフィルムの厚みは、好ましくは10μmから200μmであり、より好ましくは20μmから150μmであり、さらに好ましくは30μmから100μmである。厚すぎるフィルムを成形する場合、例えば、未延伸フィルムとして200μmを越すフィルムを成形する場合には、フィルムの冷却が不均一になりやすく、光学的均質性等が低下しやすい。薄すぎるフィルムを成形する場合には、延伸倍率が過大になりやすく、ヘイズが悪化しやすい。
【0115】
本発明のフィルムのガラス転移温度は80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。さらに好ましくは、130℃以上である。ガラス転移温度の上限は特にないが、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。過度の高ガラス転移温度を有するフィルムの延伸処理は困難になりやすく、あるいは延伸処理設備の高価格化の恐れがある。
【0116】
(フィルムの表面処理)
本発明の光学用フィルムは、必要によりフィルムの片面あるいは両面に表面処理を行う事ができる。表面処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射およびアルカリ処理等が挙げられる。特に、フィルム表面にコーティング加工等の表面加工が施される場合や、粘着剤により別のフィルムがラミネートされる場合には、相互の密着性を上げる為の手段として、フィルムの表面処理を行う事が好ましい。コロナ処理が特に好適な方法である。好ましい表面処理の程度は、50dyn/cm以上である。上限は特に定められないが、表面処理の為の設備等の点から、80dyn/cm以下である事がより好ましい。
【0117】
また、本発明の光学用フィルムの表面には、必要に応じハードコート層等のコーティング層を形成する事ができる。また、本発明の光学用フィルムは、コーティング層を介して、または、介さずに、スパッタリング法等によりインジウムスズ酸化物系等の透明導電層を形成する事が出来、プラスチック液晶表示装置の電極基板やタッチパネルの電極基板として用いる事もできる。
【0118】
(フィルムの用途)
本発明の光学用フィルムは、そのまま最終製品として各種用途に使用する事ができる。あるいは各種加工を行って、種々の用途に使用できる。特に優れた光学的均質性、透明性、低複屈折性等を利用して光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に好適に用いる事ができる。
【0119】
(偏光子保護フィルム)
本発明の光学用フィルムは、偏光子に貼り合わせて使用する事ができる。即ち、偏光子保護フィルムとして使用する事ができる。ここで、偏光子としては、従来公知の任意の偏光子が使用可能である。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて偏光子を得る事ができる。このような偏光子に本発明のフィルムを偏光子保護フィルムとして貼合して偏光板とする事ができる。
【0120】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0121】
フィルムの各物性値は以下のようにして測定した。
【0122】
(1)ヘイズ
JIS K7105−1981の6.4記載の方法により、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
【0123】
(2)全光線透過率
JIS K7105−1981の5.5記載の方法により、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
【0124】
(3)位相差
平面方向の位相差は、オーク製作所(株)顕微偏光分光光度計TFM−120AFTを用いて、測定波長514.5nmで測定した。また、厚み方向の位相差を求めるために、上記装置を用いて514.5nmの測定波長で位相差の角度依存性を測定し、nx、ny、nzを求めた。別途フィルム厚みdを測定し、下記式を用いて厚み方向の位相差を計算した。
【0125】
[厚み方向の位相差]= |(nx+ny)/2−nz|×d
(4)表面外観
フィルムの外観を目視で観察し、50μm以上の大きさの欠陥およびスジ状の欠陥を評価した。
【0126】
(5)流れ値
JIS K7210流れ試験(参考試験)に準拠して測定した。但し、温度270℃、荷重150Kg、予熱時間30分。
【0127】
(6)黄色度
JIS K7105−1981の6.3記載の方法により、日本電色工業(株)製分光式色差計SE−2000を用いて測定した。
【0128】
(実施例1)
イソブテンとN−メチルマレイミドから成る交互共重合体(N−メチルマレイミド含量50モル%、ガラス転移温度157℃)65重量部と、アクリルニトリルの含量が27重量%であるアクリルニトリル・スチレン共重合体35重量部と、
3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−第三ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オン0.05重量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.13重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.13重量部を押出機にてペレットにしたものを、100℃で5時間乾燥後、40mm単軸押出機と400mm幅のTダイを用いて270℃で押出し、シート状の溶融樹脂を冷却ドラムで冷却して幅約300mm、厚み150μmのフィルムを得た。
【0129】
(実施例2)
安定剤として、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル(メタ)アクリレート0.2重量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.13重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.13重量部を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0130】
(実施例3)
安定剤として、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル(メタ)アクリレート0.3重量部、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン0.13重量部、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト0.13重量部を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0131】
(実施例4)
実施例1で作成したフィルムを、縦延伸機の予熱ロールで145℃に予熱した後一旦143℃に冷却し、延伸ロールで1.8倍に延伸した。次いで、横延伸機の予熱ゾーンで147℃に予熱した後、145℃の延伸ゾーンで1.8倍に延伸して、逐次二軸延伸フィルムを得た。
【0132】
(実施例5)
実施例1で作成したフィルムを、縦延伸機の予熱ロールで143℃に予熱した後、同じ温度の延伸ロールで1.8倍に延伸した。次いで、横延伸機の予熱ゾーンで145℃に予熱した後、同じ温度の延伸ゾーンで1.8倍に延伸して、逐次二軸延伸フィルムを得た。
【0133】
(比較例1)
安定剤を使用しなかった事以外は実施例1と同様に実施した。
【0134】
(比較例2)
安定剤として3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−第三ブチル−3H−ベンゾフラン−2−オンを使用しなかった事以外は実施例1と同様に実施した。
【0135】
実施例1〜5、比較例1〜2の評価結果は表−1に示した。
【0136】
【表1】
Figure 2004107371
【0137】
【発明の効果】
本発明によれば、(A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂、(B)側鎖に置換または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂、ならびに(C)ラクトン系安定剤およびフェノールアクリレート系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤と(D)フェノール系安定剤、リン系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤を含む樹脂組成物を用いることにより、外観や光学特性に優れた光学用フィルムおよびそのような光学用フィルムを製造するための加工熱安定性に優れた樹脂組成物が得られる。

Claims (9)

  1. フィルム製造用樹脂組成物であって、
    (A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂
    (B)側鎖に置換または非置換フェニル基およびニトリル基を有する熱可塑性樹脂
    (C)ラクトン系安定剤とフェノールアクリレート系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤
    (D)フェノール系安定剤とリン系安定剤よりなる群から選択される1種類以上の安定剤
    を含む、組成物。
  2. 前記組成物中の安定剤(C)および(D)の含有量が0.01〜2重量%である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂(A)が、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位を有し、
    ここで、式(1)の繰り返し単位の含有率が該熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として30〜80モル%であり、式(2)の繰り返し単位の含有率が該熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として70〜20モル%であり、
    前記熱可塑性樹脂(B)が、式(3)で表される繰り返し単位および式(4)で表される繰り返し単位を有し、
    ここで、該熱可塑性樹脂(B)の総繰り返し単位を基準として式(3)の繰り返し単位の含有率が20〜50重量%であり、式(4)の繰り返し単位の含有率が50〜80重量%であり、該熱可塑性樹脂(A)の量と該熱可塑性樹脂(B)の量との合計を基準として、前記樹脂組成物中における該熱可塑性樹脂(A)の含有率が50〜80重量%であり、かつ熱可塑性樹脂(B)の含有率が20〜50重量%である、請求項1に記載の組成物。
    Figure 2004107371
    (式(1)において、R1 、RおよびR3 は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
    (式(2)において、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。)
    Figure 2004107371
    (式(3)において、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
    (式(4)において、RおよびR7 は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、水素、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、アルコキシ基、もしくはニトロ基を示す。)
  4. ヘイズが2%以下であり、全光線透過率が85%以上である請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物から得られる、光学用フィルム。
  5. 溶融押出法により得られるフィルムである、請求項4に記載のフィルム。
  6. 二軸延伸フィルムである、請求項4または5に記載のフィルム。
  7. 面内位相差が10nm以下である、請求項6に記載のフィルム。
  8. 請求項5に記載のフィルムを製造する方法であって、請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物を溶融押出しすることによりフィルムを成形する工程を包含する、方法。
  9. 請求項6に記載のフィルムを製造する方法であって、
    請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物から未延伸フィルムを製造する工程、および
    該未延伸フィルムを二軸延伸する工程
    を包含する、方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007030410A (ja) * 2005-07-28 2007-02-08 Sekisui Chem Co Ltd 光学フィルムの製造方法
WO2010058723A1 (ja) * 2008-11-21 2010-05-27 電気化学工業株式会社 光学フィルム用樹脂組成物及びその光学フィルム
CN104332416A (zh) * 2014-08-21 2015-02-04 京东方科技集团股份有限公司 一种柔性显示器的制备方法和柔性显示器
WO2022034898A1 (ja) * 2020-08-13 2022-02-17 三菱瓦斯化学株式会社 光学材料用の熱可塑性樹脂組成物、成形体、配合剤、熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び透過率向上方法

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