JP2004105637A - リクライニング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】スライドポール15が、一方側のベース部材(ハウジング)に対し、周方向への移動が規制され、かつ半径方向へは摺動できるように配置されている。前記スライドポール15を摺動させることで、その外歯15bを他方側のベース部材(ハウジング)に形成されているラチェット歯に噛み合わせることにより、両ベース部材の相対的な回転が規制される。このような形式のリクライニング装置において、前記外歯15bは、前記スライドポール15において前記ラチェット歯と対向する円弧状の縁に沿って形成されている。これらの外歯15bのうち、前記ラチェット歯に対応する歯面15b−1の接線Tが前記スライドポールの摺動線Lに対して平行に近づいた外歯が、正規の歯面と同形状で、かつ正規の歯厚より小さい歯厚に設定されている。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として車両用シートにおけるシートバックの傾き角度を調整するためのリクライニング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
リクライニング装置には、種々の形式のものがある。中でもラウンドタイプと称されるリクライニング装置は、車両用シートのシートクッション側とシートバック側とに対して円盤形状のベース部材、いわゆるハウジングがそれぞれ個別に固定され、これらのハウジング内にスライドポールが組み込まれている。このスライドポールは、一方のハウジングに対して径方向へのみ摺動でき、この摺動によって他方のハウジングに形成されているラチェットに噛み合うようになっている。この噛み合いにより、両ハウジングの相対的な回動を規制してリクライニング装置をロック状態にする。
【0003】
スライドポールには、ラチェットに噛み合わせるための複数の外歯が、円弧状の縁に沿って形成されている。そして、リクライニング装置のロック強度を高めるには、スライドポールの幅方向の寸法を大きく設定して外歯の歯数を増やし、外歯とラチェットとの噛み合い強度を高めるのが有効である。
【0004】
一方、外歯はスライドポールの円弧状の縁に沿って形成されているため、このスライドポールにおける幅方向の中央付近と端面付近とでは、スライドポールの摺動線を基準としたときの外歯の傾きに差が生じる。すなわち、各外歯における歯面の接線とスライドポールの摺動線とは、スライドポールにおける幅方向の中央付近では所定の角度をもっているが、端面に近づくに連れて角度が小さくなる。この現象は、スライドポールの幅方向の寸法が大きくなるほど顕著となり、スライドポールの端面付近に位置する外歯においては、その歯面の接線とスライドポールの摺動線とが平行に近くなる。
【0005】
なお、この種のリクライニング装置としては、例えば特許文献1に開示された技術が知られている。この技術では、スライドポールの摺動抵抗を小さくしてリクライニング装置の操作力を軽減させるために、このスライドポールにおける少なくとも一つの外歯と、これに噛み合うラチェットとの歯面間に所定の隙間が設けられている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−177083号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示されている技術も含め、リクライニング装置におけるスライドポールの幅方向の端面付近に位置する外歯は、先に述べたように、その歯面の接線がスライドポールの摺動線に対して平行に近づく。この結果、端面付近の外歯は、その歯面の寸法誤差がラチェットとの噛み合い精度に大きく影響し、端面付近では寸法誤差が恰も大きくなったかのような状態となり、外歯とラチェットとの噛み合い不良が生じる。
本発明は従来の課題を解決しようとするもので、その目的は、ラチェットに対するスライドポール外歯の円滑な噛み合いを維持しつつ、スライドポールの幅方向の寸法を大きくして外歯の歯数を増やし、リクライニング装置のロック強度を高めることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するためのもので、請求項1に記載の発明は、つぎのような形式のリクライニング装置である。すなわち、相対的に回動可能に組み付けられた固定側ベース部材と回動側ベース部材との間にスライドポールが収容されている。このスライドポールには外歯が形成されており、前記固定側ベース部材または前記回動側ベース部材の一方側に対し、周方向への移動が規制され、かつ半径方向へは摺動できるように配置されている。前記スライドポールを摺動させることで、前記固定側ベース部材または前記回動側ベース部材の他方側に形成されている円弧状のラチェット歯に噛み合わせ、あるいは噛み合いを解除することにより、前記両ベース部材の相対的な回動が規制され、あるいは規制が解除される。
このような形式のリクライニング装置において、前記外歯は、前記スライドポールにおいて前記ラチェット歯と対向する円弧状の縁に沿って形成されている。これらの外歯のうち、前記ラチェット歯に対応する歯面の接線が前記スライドポールの摺動線に対して平行に近づいた外歯が、正規の歯面と同形状で、かつ正規の歯厚より小さい歯厚に設定されている。
この構成によれば、歯面の接線がスライドポールの摺動線の直線に対して平行に近くなった外歯の基本的な歯形を変えることなく、その歯厚を正規の歯厚よりも小さくしている。これにより、歯面の寸法誤差がラチェットに対する噛み合いに大きく影響する外歯とラチェットとの噛み合い不良を解消できる。この結果、スライドポールの幅方向の寸法を大きくして外歯の歯数を増やすことで、外歯とラチェットとの噛み合いによるリクライニング装置のロック強度を高め、しかもラチェットに対するスライドポールの円滑な噛み合いを維持することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載されたリクライニング装置であって、正規の歯厚より小さい歯厚に設定されている外歯は、その歯面が所定の調整代だけ切除された形状に設定されている。
これにより、スライドポールにおける外歯の歯面形状を簡単に調整して、ラチェトに対する外歯の噛み合い精度を高めることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載されたリクライニング装置であって、正規の歯厚より小さい歯厚に設定されている外歯は、前記ラチェット歯に対応する歯面のうち、スライドポールにおける幅方向の端面に近い側の歯面が、所定の調整代だけ切除された形状に設定されている。
これにより、スライドポールの外歯とラチェットとの噛み合い不良への影響が大きい歯面のみを、効率よく調整することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は車両用シートのリクライニング装置の縦断面図である。図2はリクライニング装置を分解して表した斜視図である。図3は図1のA−A矢視方向の断面図である。本実施の形態におけるリクライニング装置10は、その外殻が個々に円盤形状をした固定側ベース部材となる固定側ハウジング11と回動側ベース部材となる回動側ハウジング12とによって構成されている。両ハウジング11,12は互いに対向して嵌め合わされ、かつ相互の外周部に回動側ハウジング12側から組み付けられるセットプレート22をカシメることにより、相対的な回動可能に結合されている。
【0012】
固定側ハウジング11は、車両用シート(図示外)のシートクッション側に取付けられ、回動側ハウジング12は、車両用シートのシートバック側に取付けられる。両ハウジング11,12の内部に構成された空間には、4個のスライドポール15、回転カム16、操作アーム17、作動プレート18、アンロックプレート19、およびスパイラルスプリング21が収容されている。そしてこれらの各構成部材は、その中央部を貫通する支持軸13に直接的に、または構成部材を介して間接的に支持される。また支持軸13の両端部は、両ハウジング11,12の外に出ており、一方の端部に操作レバー14が取付けられている(図1)。
【0013】
図2で示すように固定側ハウジング11は、その内側の凹部内において、十字状に交差して縦横に延びる組付溝11cを備えている。組付溝11cにおける交差部の四箇所の外側角部は、略三角形状を呈する受承壁部11dとなっている。固定側ハウジング11の凹部中央には、貫通孔11eが形成されている。一方、回動側ハウジング12は、その内側の凹部における外側の全周面に形成された環状のラチェット歯12cを備えている。回動側ハウジング12の凹部中央には、固定側ハウジング11の貫通孔11eと同軸線上で対向する貫通孔12dが形成されている。また回動側ハウジング12の凹部には、4個の係合突起部12eが形成されている。
【0014】
各スライドポール15は、その主要構成部は全て同一の形状をしているが、スライドポール15Aは特定の機能においてのみ、他の3個のスライドポールと相違する。そこで、以下の各スライドポール15の説明において、スライドポール15Aの特定の機能を説明する場合は、このスライドポール15Aは他の各スライドポールと区別して説明される。しかし、それ以外の場合においては、各スライドポールを総称してスライドポール15として説明される。
【0015】
スライドポール15は、図2,3で示すように略アーチ形状をしており、その頂部(組み付けた状態では径の外方側に位置する部分)に、回動側ハウジング12のラチェット歯12cに噛み合うことが可能な外歯15bを備えている。すなわち外歯15bは、スライドポール15に対し、ラチェット歯12cと対向する円弧状の縁に沿って形成されている。またスライドポール15は、その頂部とは反対側(組み付けた状態では径の内方側に位置する部分)に左右一対の脚部15c,15dを備えている。これらの脚部15c,15dの間の略中間部には、内側面部15fが形成されている。
【0016】
スライドポール15はカム突起15eを備えている。各スライドポール15のカム突起15eは、それぞれ略四角柱状に形成されているとともに、スライドポール15を組み付けた状態において作動プレート18側へ突出する。スライドポール15Aは、もう一つのカム突起15gを備えている。そして、スライドポール15Aの両カム突起15e,15gについては、他のスライドポール15のカム突起15eに比較して突出量が長く設定されている。後で説明するようにスライドポール15Aのカム突起15eは、他のスライドポール15のカム突起15eと同じ機能を有する。またスライドポール15Aの両カム突起15e,15gは、さらに別の機能を有する。
【0017】
回転カム16は、略円形状のプレートである。図2,3で示すように回転カム16は、その外周縁において受承カム部16b,16c,16dを一組とするカム部を、周方向に同一間隔で4組備えている。回転カム16の中央部には、操作アーム17と略同一形状で、この操作アーム17が嵌まり合う嵌合孔16eが形成されている。また、回転カム16の回転中心を中心とする円周上には、3個の係合突起部16fが一定の間隔をもって形成されている。これらの係合突起部16fは、回転カム16を組み付けた状態において作動プレート18側へ突出する。
【0018】
操作アーム17は、図2,3に示すように筒状部分17aと、その外周部から外方へ突出するアーム部分17bとを備えている。この操作アーム17は、回転カム16の嵌合孔16eと略同一形状をしており、すでに述べたようにこの嵌合孔16eに嵌まり合う。
【0019】
作動プレート18は円形状のプレートである。この作動プレート18は、図2で示すように中央部に円形状の貫通孔18bを備えている。作動プレート18の回転中心を中心とする円周上には、3個の係合孔18cが形成されている。また作動プレート18には、周方向に一定間隔をもって位置する4個のカム溝18dが形成されている。これらのカム溝18dは作動プレート18の両面に貫通した窓形状をしている。そして各カム溝18dのうち、一つのカム溝18d−aにおける外方側は略弓形状の弧をなしており、他のカム溝18dにおける外方側は互いに同一の円弧形状をなしている。一つのカム溝18d−aにおける弧の一部と、他のカム溝18dの弧とは同じ形状に設定されている。なおカム溝18d−aは、スライドポール15Aにおける一対のカム突起15e,15gに対向して位置している。
【0020】
アンロックプレート19は円形状のプレートである。このアンロックプレート19は、図2に示すように中央部に貫通孔19bを備えている。アンロックプレート19の外周寄りには、その外周縁に沿って延びる円弧状のカム溝19cが形成されている。このカム溝19cは、アンロックプレート19の両面に貫通した環状の開口部であって、大幅部分19c−1、小幅部分19c−2、大幅部分19c−3によって構成されている。両大幅部分19c−1,19c−3は小幅部分19c−2の両側に位置している。両大幅部分19c−1,19c−3の長さと幅は互いに等しい。小幅部分19c−2の外周側の径は、両大幅部分19c−1,19c−3の外周側の径よりも小さく形成されている。なおカム溝19cは、スライドポール15Aにおける一対のカム突起15e,15gに対向して位置している。またアンロックプレート19には4個の係合孔19dが形成されている。
【0021】
スパイラルスプリング21は、固定側ハウジング11の貫通孔11eの周囲に設けられた内側凹部に組み付けられ、その状態において固定側ハウジング11と操作アーム17との間でトーションバネとして機能する。図2で示すように、スパイラルスプリング21の内端部21aは方形状に巻かれ、外端部21bは外方へ突出させた格好に曲げられている。そして内端部21aは、操作アーム17における筒状部分17aの外周面(方形状)に嵌まり、外端部21bは固定側ハウジング11の内側に係合する。
【0022】
リクライニング装置10の組み付け状態において、各スライドポール15は、固定側ハウジング11の各組付溝11c内に位置している。これにより、各スライドポール15は、受承壁部11dにより周方向の移動を規制され、かつ径方向へは摺動できるように位置している。各スライドポール15において、それぞれの各脚部15c,15dは、回転カム16の各受承カム部16c,16bに当接している。また各スライドポール15の内側面部15fは、回転カム16の受承カム部16dに当接している。図3に示す各スライドポール15は、それぞれの外歯15bが回動側ハウジング12のラチェット歯12cの対向する各部位に噛み合っている。
【0023】
同じく組み付け状態において、作動プレート18は各スライドポール15を挟んで回転カム16に対向して位置しているとともに、回動側ハウジング12の円形凹所内に位置している。回転カム16の各係合突起部16fは作動プレート18の各係合孔18cに係合している。これにより、作動プレート18は回転カム16と連結され、回転カム16と一体的に回転する。スライドポール15Aにおける一対のカム突起15e,15gは、作動プレート18のカム溝18d−aに臨んでいる。また他のスライドポール15のカム突起15eは、個々に対応するカム溝18dに臨んでいる。これにより、各スライドポール15と作動プレート18との間においては、各スライドポール15をラチェット歯12cから後退させる方向へ移動させるカム機構が構成されている。
【0024】
同じく組み付け状態において、アンロックプレート19は、作動プレート18を挟んで各スライドポール15に対向して位置し、かつ回動側ハウジング12の内側凹部に位置している。この状態でのアンロックプレート19は、各係合孔19dが回動側ハウジング12の各係合突起部12eに係合している。したがってアンロックプレート19は回動側ハウジング12に連結されており、周方向へ一体的に回転する。またアンロックプレート19のカム溝19cには、スライドポール15Aの一対のカム突起15e,15gが、作動プレート18のカム溝18d−aを通じて臨んでいる。スライドポール15Aのカム突起15e,15gとアンロックプレート19のカム溝19cとにより、スライドポール15Aをラチェット歯12cから後退させる方向へ移動させるカム機構が構成されている。
【0025】
つづいてリクライニング装置10の作動について説明する。
リクライニング装置10において、図1で示す操作レバー14を操作していないときには、各スライドポール15の脚部15c,15dおよび内側面部15fは、回転カム16の各受承カム部16c,16b,16dに当接している。そして各スライドポール15の外歯15bは、ラチェット歯12cの対向する部位に噛合している。回転カム16には、操作アーム17を介してスパイラルスプリング21のバネ力が図3で反時計回り方向へ作用しており、この回転カム16は各スライドポール15に対して前記の当接状態を保つ角度に保持される。この結果、各スライドポール15の外歯15bとラチェット歯12cとの噛み合い状態が保持される。この噛み合いにより、先に述べたように固定側ハウジング11に対する回動側ハウジング12の相対的な回転が規制される。したがってリクライニング装置10としては、シート(図示外)のシートクッションに対するシートバックの前後方向への傾動を規制したロック状態に保持される。
【0026】
リクライニング装置10のロックを解除するために、操作レバー14を操作すると、支持軸13を介して操作アーム17が図3の時計回り方向へ回転し、回転カム16が同じ方向へ所定量だけ回転する。その結果、回転カム16の受承カム部16b,16c,16dと各スライドポール15の脚部15d,15cおよび内側面部15fとの当接がそれぞれ外れる。これにより、回転カム16の各スライドポール15に対する保持が解除され、各スライドポール15は径方向に関してフリー状態になる。そして作動プレート18は回転カム16と一体に回転するので、各カム溝18dの外径側の弧面により、各スライドポール15のカム突起15eと径内方へ押される。この結果、各スライドポール15はラチェット歯12cから退行し、このラチェット歯12cに対する外歯15bの噛み合いが解除される。
【0027】
ラチェット歯12cに対する各スライドポール15の外歯15bの噛み合いが解除された状態では、両ハウジング11,12は図3の時計回り方向および反時計回り方向へ回転自在である。すなわち、リクライニング装置10はロック解除の状態にあり、シートバックをシートクッションに対して前後方向へ傾動させることができる。このシートバックの傾動については、前方へシートクッション上に重なる状態まで倒したり、後方へ略水平状態になるまで倒すことができる。
【0028】
リクライニング装置10には、シートクッションに対してシートバックを起立位置とシートクッション上に重なった前倒し位置との間で前後に傾動させたときに、固定側ハウジング11に対して回動側ハウジング12を自由に回動させることが可能なフリーゾーンが設定されている。このフリーゾーンは、回動側ハウジング12と一体に回動するアンロックプレート19のカム溝19cと、スライドポール15Aのカム突起15e,15gとの機能によって得られる。この機能について以下に簡単に説明する。
【0029】
シートバックの傾動によって回動側ハウジング12と共にアンロックプレート19が回動し、例えばカム溝19cの小幅部分19c−2がスライドポール15Aにおける一方のカム突起15gに重なる位置まで移動したものとする。この状態においては、小幅部分19c−2の外径側の内周面によってカム突起15gはラチェット歯12c側への進行が妨げられ、スライドポール15Aはラチェット歯12cに対して退行した状態に保持される。
【0030】
この状態では、スライドポール15Aの脚部15c,15dが回転カム16の受承カム部16c,16bそれぞれに当接しているため、この回転カム16はスパイラルスプリング21のバネ力による回転が阻止されている。この回転カム16と共に作動プレート18も回転できない。この結果、作動プレート18の各カム溝18dにより径内方向へ押されている他のスライドポール15についても、ラチェット歯12cに対して退行した状態で保持される。この状態で操作レバー14の操作が解除されても、全てのスライドポール15はラチェット歯12cに対する外歯15bの噛み合いが解除された状態に保持されている。したがってリクライニング装置10は、ロックが解除されたフリー状態になる。
【0031】
なお、アンロックプレート19の回転によってカム溝19cの大幅部分19c−3がスライドポール15Aの両カム突起15e,15gに重なると、各スライドポール15はラチェット歯12cに対して進行が許容される。ここで、回転カム16および作動プレート18が、スパイラルスプリング21のバネ力によって回転復帰する。この結果、各スライドポール15はラチェット歯12cに対して進行し、ラチェット歯12cと外歯15bとが互いに噛み合う。これにより、両ハウジング11,12の相対的な回転が規制され、リクライニング装置10はロック状態になる。
【0032】
つぎに、スライドポール15における外歯15bの形状について詳細に説明する。
図4は一つのスライドポール15を表した平面図である。図5は図4において一点鎖線で囲まれた箇所の一部を拡大して表した平面図である。これらの図面においては、スライドポール15が固定側ハウジング11の組付溝11cに案内されて摺動するときの移動直線が、摺動線Lとして示されている。一方、各外歯15bは、スライドポール15においてラチェット歯12cと対向する円弧状の縁に沿って形成されている。このため、スライドポール15における幅方向(図面の左右方向)の中央付近と端面付近とでは、各外歯15bの摺動線Lに対する傾きに差がある。
【0033】
摺動線Lを基準とした外歯15bの傾きの変化を、スライドポール15における幅方向の中央部から左側についてみてみると、外歯15bはスライドポール15における左側の端面に近づくに連れて、摺動線Lに対する左方への傾きが大きくなる。このため、各外歯15bにおけるスライドポール15の左側端面に近い側の歯面15b−1については、その接線Tがスライドポール15の左側端面付近では摺動線Lと平行に近づくように傾く。例えば図5においてスライドポール15の中央に形成されている「1番歯」の接線Tと摺動線Lとの角度θ1に対し、最も左側に形成されている「14番歯」の接線Tと摺動線Lとの角度θ2は、半分程度になっている。
【0034】
各外歯15bにおける寸法誤差が仮に一定であったとしても、歯面15b−1の接線Tと摺動線Lとの角度の違いにより、ラチェット歯12cと外歯15bとの噛み合い精度に差がでてくる。このことが図6に模式的に示されている。図6では、接線Tと摺動線Lとの角度が(A)(B)(C)の順に小さくなっており、外歯の寸法誤差Eは一定である。しかしながら、摺動線Lに沿った方向の誤差は、
e1<e2<e3
となる。すなわち(A)(B)(C)の順に、寸法誤差Eが恰も大きくなったかのような状態となり、スライドポール15の左側端面に近い外歯15bほど、ラチェット歯12cに対する噛み合い精度が低下することとなる。
【0035】
そこで、スライドポール15における幅方向の中央部から左側については、各外歯15bにおける左側の歯面15b−1を、個々の調整代15b−2にしたがって切除している。実施の形態において実際に歯面15b−1が切除されるのは、図4に示す「2番歯」から「14番歯」までの外歯15bである。また調整代15b−2は、「2番歯」から「14番歯」にかけて漸増させており、例えば「2番歯」の調整代15b−2を0.005mmとすると、順に0.005mmずつ増やして「14番歯」の調整代15b−2を0.065mmとしている。しかも、調整代15b−2が切除された後の各外歯15bの歯面は、切除前の正規の歯面15b−1と同じ形状に設定されている。
なお、スライドポール15における幅方向の中央部から右側については、「2番歯」から「14番歯」までの外歯15bにおける右側の歯面を、上記と同様に個々の調整代にしたがって切除している。
【0036】
このようにスライドポール15の外歯15bは、個々の歯面の接線Tが摺動線Lと平行に近づくにつれて、正規の歯面と同形状で、かつ正規の歯厚より順に小さい歯厚に設定されている。したがって、先に説明したように歯面の寸法誤差によってラチェット歯12cに対する噛み合い精度の低下が懸念される外歯15bについても、その歯厚が薄くなったことで、ラチェット歯12cとの噛み合い不良が解消される。このことは、ラチェット歯12cと外歯15bとの噛み合いによるリクライニング装置10のロック強度を高めるために、スライドポール15の幅方向の寸法を大きくして外歯15bの歯数を増やした場合でも、各外歯15bとラチェット歯12cとの噛み合い精度が適正に維持される。
【0037】
なお、外歯15bの歯厚は、各外歯15bの周方向の厚みを例えばピッチ円上において測定した寸法である。本実施の形態では、既に説明したように、歯厚が調整される外歯15b(図4の「2番歯」から「14番歯」までの外歯15b)の歯面を、個々の調整代15b−2にしたがって均等な厚みで切除し、元の歯面と同形状に仕上げている。したがって、本実施の形態で言う歯厚については、外歯15bのどの部分の厚みを基準として測定しても、何ら差し支えない。
【0038】
以上は本発明の好ましい実施の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば、外歯15bの調整代15b−2について、本実施の形態では図4の「2番歯」から「14番歯」にかけて漸増させているが、これらの各外歯15bの調整代15b−2を「14番歯」における最大の調整代15b−2に合わせてもよい。また、同じく調整代15b−2は、スライドポール15における幅方向の端面に近い側の歯面15b−1に限らず、これに加えて反対側の歯面に実施しても差し支えない。なお、リクライニング装置10の形式は、回転カム16の代わりにスライドカムを使用した形式であってもよく、スライドポール15の個数についても4個に限るものではなく、2個あるいは3個の場合もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】リクライニング装置の縦断面図
【図2】リクライニング装置を分解して表した斜視図
【図3】図1のA−A矢視方向の断面図
【図4】一つのスライドポールを表した平面図
【図5】図4において一点鎖線で囲まれた箇所の一部を拡大して表した平面図
【図6】スライドポールの外歯の傾きと寸法誤差との関係を模式的に表した説明図
【符号の説明】
10 リクライニング装置
11 固定側ハウジング
12 回動側ハウジング
12c ラチェット歯
15 スライドポール
15A スライドポール
15b 外歯
15b−1 歯面
15b−2 調整代
L 摺動線
T 接線
Claims (3)
- 相対的に回動可能に組み付けられた固定側ベース部材と回動側ベース部材との間にスライドポールが収容され、このスライドポールには外歯が形成されており、前記固定側ベース部材または前記回動側ベース部材の一方側に対し、周方向への移動が規制され、かつ半径方向へは摺動できるように配置され、前記スライドポールを摺動させることで、前記固定側ベース部材または前記回動側ベース部材の他方側に形成されている円弧状のラチェット歯に噛み合わせ、あるいは噛み合いを解除することにより、前記両ベース部材の相対的な回動が規制され、あるいは規制が解除される形式のリクライニング装置であって、
前記外歯は、前記スライドポールにおいて前記ラチェット歯と対向する円弧状の縁に沿って形成されているとともに、これらの外歯のうち、前記ラチェット歯に対応する歯面の接線が前記スライドポールの摺動線に対して平行に近づいた外歯が、正規の歯面と同形状で、かつ正規の歯厚より小さい歯厚に設定されているリクライニング装置。 - 請求項1に記載されたリクライニング装置であって、
正規の歯厚より小さい歯厚に設定されている外歯は、その歯面が所定の調整代だけ切除された形状に設定されているリクライニング装置。 - 請求項2に記載されたリクライニング装置であって、
正規の歯厚より小さい歯厚に設定されている外歯は、前記ラチェット歯に対応する歯面のうち、スライドポールにおける幅方向の端面に近い側の歯面が、所定の調整代だけ切除された形状に設定されているリクライニング装置。
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