JP2004103405A - 炭素材用原料とこれを用いたケイ素含有炭素材、二次電池負極材、及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ケイ素を含有する炭素材料(A)と、ケイ素を含有しない炭素材料(B)とからなる炭素材用原料であって、前記ケイ素を含有する炭素材料(A)は、ケイ素含有粒子(P)の表面にカーボンブラック粒子(Q)が担持された複合導電性粒子(R)と、炭素前駆体(S)とを含有することを特徴とする炭素材用原料。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素材用原料、ケイ素含有炭素材およびそれを用いた二次電池負極材、リチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオカメラやノート型パソコンなどのポータブル機器の普及に伴い、移動用電源として小型高容量の二次電池に対する需要が高まり、リチウム二次電池の使用が拡大されてきた。
上記に示したリチウム二次電池の負極材用炭素材としては、黒鉛を使用しているものが挙げられる(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照。)。黒鉛は、サイクル性が非常によいことが特長であるが、理論充放電容量が372mAh/gであるため、これ以上の充放電容量は望めないという欠点がある。また、黒鉛材料以外では、ピッチコークスを使用した負極材が挙げられる(例えば、特許文献3、及び特許文献4参照。)。この材料は易黒鉛化炭素材であるが、焼成温度が2000℃を超える領域では黒鉛化が進行する。黒鉛になってしまうと充放電容量が決定されてしまう。また黒鉛化される前の温度域(1000〜1800℃)においては充放電容量の高い炭素材が得られている。しかしながら、サイクル性が乏しく、ピッチコークスは不純物を多く含んでおり、電池特性に悪影響を及ぼす。
【0003】
また、熱処理温度が500℃〜700℃程度の低温で処理された炭素負極は、次世代の高容量型炭素負極の有力候補の一つである。充電容量で850mAh/gと、重量あたりの容量で黒鉛をこえる。また、低温処理であるため、エネルギーメリットも高い。しかしながら、電位が高く、充放電での電位のヒステリシスが大きいのが難点である。
炭素以外のリチウムイオン負極材として注目されているのが、金属酸化物(例えば、特許文献5参照)、及び窒化物(例えば、特許文献6参照)である。しかしながら、これらの炭素材では充放電容量800mAh/gと非常に大容量ではあるが、瞬間放電量が非常に高いことからその制御が困難であるとされている。
【0004】
また、リチウムイオンのインターカレーション能が非常に高い材料としてケイ素元素があり、これを用いたケイ素含有炭素材が挙げられる(例えば、特許文献7、特許文献8、及び特許文献9参照。)。これらにおいて、有機ケイ素化合物、無機ケイ素化合物を使用している場合、ケイ素と結合している有機又は無機元素の影響を受けケイ素元素が持っている充放電容量が十分に活かされていない。また、ケイ素元素を使用している場合でも、易黒鉛化炭素前駆体,難黒鉛化炭素前駆体又は炭素材にケイ素元素を混合し炭化処理している。この場合、ケイ素の炭素材への分散性は良い。しかし、炭素材表面へのケイ素元素の露出により充放電容量は高いが、充放電効率が低い。あるいは、ケイ素元素の炭素材表面への露出は少ない場合でも、ケイ素元素へのリチウムイオンのインターカレーションによるケイ素元素の膨張による炭素材の破損を押える事が困難で、充放電効率を低下させる傾向にある。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−289967号公報
【特許文献2】
特開平7−73868号公報
【特許文献3】
特開平8−287911号公報
【特許文献4】
特開平8−298116号公報
【特許文献5】
特開平5−166536号公報
【特許文献6】
特開平6−290782号公報
【特許文献7】
特開平7−315822号公報
【特許文献8】
再表98/024135号公報
【特許文献9】
特開平8−231273号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高充放電容量を発揮することができる炭素材用原料、ケイ素含有炭素材、二次電池負極材およびリチウム二次電池を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1)ケイ素を含有する炭素材料(A)と、ケイ素を含有しない炭素材料(B)とからなる炭素材用原料であって、前記ケイ素を含有する炭素材料(A)は、ケイ素含有粒子(P)の表面にカーボンブラック粒子(Q)が担持された複合導電性粒子(R)と、炭素前駆体(S)とを含有することを特徴とする炭素材用原料。
(2)前記ケイ素含有粒子(P)が、ケイ素粒子である上記(1)に記載の炭素材用原料。
(3)前記カーボンブラック粒子(Q)が、ケッチェンブラック又はアセチレンブラックである上記(1)又は(2)に記載の炭素材用原料。
(4)前記炭素前駆体(S)が、ピッチである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の炭素材用原料。
(5)前記ケイ素を含有しない炭素材料(B)が、黒鉛である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の炭素材用原料。
(6)前記ケイ素含有粒子(P)の平均粒径が0.1〜5μmである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の炭素材用原料。
(7)前記カーボンブラック粒子(Q)の平均粒径が0.01〜0.5μmである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の炭素材用原料。
(8)前記複合導電性粒子(R)は、前記ケイ素含有粒子(P)と前記カーボンブラック粒子(Q)とを、体積比率(P:Q)=99:1〜15:85で配合して得られるものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の炭素材用原料。
(9)前記ケイ素を含有する炭素材料(A)全体に対して、前記複合導電性粒子(R)の含有量が15〜70重量%である請求項1ないし8のいずれかに記載の炭素材用原料。
(10)前記炭素材用原料全体に対して、前記ケイ素を含有する炭素材料(A)の含有量が20〜60重量%である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の炭素材用原料。
(11)上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の炭素材用原料を炭化処理してなることを特徴とするケイ素含有炭素材。
(12)上記(11)に記載のケイ素含有炭素材を含有することを特徴とする二次電池負極材。
(13)上記(12)に記載の二次電池負極材を用いることを特徴とするリチウム二次電池。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の炭素材用原料、ケイ素含有炭素材、二次電池負極材およびリチウム二次電池について、詳細に説明する。
本発明の炭素材用原料(以下、「炭素材用原料(C)」という)は、ケイ素を含有する炭素材料(A)と、ケイ素を含有しない炭素材料(B)とからなる炭素材用原料であって、前記ケイ素を含有する炭素材料(A)は、ケイ素含有粒子(P)の表面にカーボンブラック粒子(Q)が担持されている複合導電性粒子(R)と、炭素前駆体(S)とを含有することを特徴とする。
また、本発明のケイ素含有炭素材(以下、ケイ素含有炭素材(D)という)は、前記炭素材用原料(C)を炭素化処理したものである。
また、本発明の二次電池負極材は、前記ケイ素含有炭素材(D)を含むものである。
そして、本発明のリチウム二次電池は、前記二次電池負極材を用いたものである。
【0009】
まず、本発明の炭素材用原料(C)に用いられるケイ素を含有する炭素材料(A)について説明する。ケイ素を含有する炭素材料(A)には、ケイ素含有粒子(P)の表面にカーボンブラック粒子(Q)が担持された複合導電性粒子(R)が含有される。
【0010】
ここで、ケイ素含有粒子(P)の表面にカーボンブラック粒子(Q)が担持された状態とは、具体的には、ケイ素含有粒子(P)の表面にカーボンブラック粒子(Q)が単に付着している状態、ケイ素含有粒子(P)の表面にカーボンブラック粒子(Q)が圧着されている状態、ケイ素含有粒子(P)の表面からカーボンブラック粒子(Q)の一部が内側に侵入して複合化している状態、あるいは、ケイ素含有粒子(P)の表面からカーボンブラック粒子(Q)が内側に侵入して埋設されている状態、などをいう。これらの態様は一種類に限定されるものではなく、例えば同一の複合導電性粒子(R)内において、複数種の態様が混在していてもよい。
【0011】
複合導電性粒子(R)がこのような態様であることにより、ケイ素含有粒子(P)と炭素前駆体(S)、及び、ケイ素を含有する炭素材料(A)とケイ素を含有しない炭素材料(B)との間の導電性を良好にすることができ、電池材に用いた際に好ましい充放電特性、サイクル特性を発現することができる。
【0012】
上記のケイ素を含有する炭素材料(A)に用いられるケイ素含有粒子(P)としては特に限定されないが、例えば、ケイ素粒子、ケイ素化合物粒子などが挙げられる。ケイ素化合物粒子としては特に限定されないが、例えば、シロキサン、シラザン等の有機ケイ素化合物、ケイ素酸化物、ケイ素炭化物等の無機ケイ素化合物が挙げられる。これらの中でもケイ素粒子が好ましい。これにより、二次電池に用いた場合に高充放電容量を発揮することができる。
【0013】
ケイ素を含有する炭素材料(A)に用いられるカーボンブラック粒子(Q)としては特に限定されないが、例えば、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。
これらのカーボンブラック粒子の中でも、ケッチェンブラック、アセチレンブラックが好ましい。これらのカーボンブラック粒子は導電性に優れるため、二次電池に用いた場合に、ケイ素を含有する炭素材料(A)中のケイ素と、その周囲に存在するケイ素を含有しない炭素材料(B)との間の電子移動を容易にすることができ、充放電効率を向上させることができる。
【0014】
ケイ素含有粒子(P)の粒径は特に限定されないが、平均粒径が0.1〜5μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3μmである。また、カーボンブラック粒子(Q)の粒径は特に限定されないが、平均粒径が0.01〜0.5μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.3である。そして、ケイ素含有粒子(P)とカーボンブラック粒子(Q)の粒径の比率は特に限定されないが、平均粒径比(P:Q)で、1:0.01〜1:0.67であることが好ましい。
このような粒径及び粒径比を有するケイ素含有粒子(P)とカーボンブラック粒子(Q)とを用いることにより、複合導電性粒子(R)を好ましい態様に簡単に作製することができるとともに、複合導電性粒子(R)の粒径を好ましい大きさとすることができる。
【0015】
ケイ素含有粒子(P)の平均粒径が前記上限値より大きいと、ケイ素を含有しない炭素材料(B)の平均粒径と同等となり、リチウムとの反応が大きくなり充放電サイクル特性を低下させる。一方、前記下限値より小さいと、カーボンブラック粒子(Q)も平均粒径が小さい粒子を用いるため、複合導電性粒子(R)の作製時、粉舞等が発生し作業環境が悪化したり、複合導電性粒子(R)がかさ高くなり、取り扱いが難しくなったりすることがある。
また、カーボンブラック粒子(Q)の平均粒径が前記上限値より大きいと、ケイ素含有粒子(P)に担持し難くなる。一方、前記下限値より小さいと、ケイ素含有粒子(P)周りにかさ高くなり、ケイ素含有粒子(P)の特性を低下させる。
そして、ケイ素含有粒子(P)とカーボンブラック粒子(Q)との平均粒径比が前記上限値より大きいと、カーボンブラック粒子(Q)をケイ素含有粒子(P)に担持し難くなる。一方、前記下限値より小さいと、ケイ素含有粒子(P)周りにおいてかさ高くなり、複合導電性粒子(R)の特性を低下させる。
【0016】
複合導電性粒子(R)は特に限定されないが、ケイ素含有粒子(P)とカーボンブラック粒子(Q)とを、体積比率(P:Q)=99:1〜15:85で配合して得られるものであることが好ましい。
さらに好ましくは90:10〜30:70である。これにより、ケイ素含有粒子(P)表面に担持されるカーボンブラック粒子(Q)の量を適正にできるので、ケイ素含有粒子(P)中のケイ素と、その周囲に存在する炭素質との間の電子移動を容易にすることができる。また、複合導電性粒子(R)とケイ素を含有しない炭素材料(B)との間の密着性を向上させることができるので、二次電池に用いた場合に高充放電効率が得られ、さらに放電容量保持率低下を抑制することができる。体積比率が前記上限値より小さく、カーボンブラック粒子(Q)が相対的に少ないと、導電性の付与効果が充分でないことがある。一方、体積比率が前記上限値より大きく、カーボンブラック粒子(Q)が相対的に過剰であると、カーボンブラック粒子(Q)の吸油性により、重放電効率が低下することがある。
なお、本発明において前記体積比は、ケイ素含有粒子(P)は真密度、カーボンブラック粒子(Q)はかさ密度を基準にして算出したものである。
【0017】
複合導電性粒子(R)の製造方法としては特に限定されないが、例えば、ケイ素含有粒子(P)とカーボンブラック粒子(Q)とを所定量混合したのち、らいかい機、ボールミル、石臼型装置、あるいはメカノフュージョン装置であるホソカワミクロン製・オングミルなどを用い、材料にずり剪断力、摩砕力を作用させてメカノケミカル処理を行う方法、衝撃式粉砕装置により複合化処理を行う方法、あるいは、希薄粘結剤含有溶液中で混合することにより被覆する方法などが挙げられる。
これらの中でも、材料にずり剪断力、摩砕力を作用させてメカノケミカル処理を行う方法が好ましい。これにより、ケイ素含有粒子(P)にカーボンブラック粒子(Q)を強固に担持させることができる。また、二次凝集している材料を用いた場合でも、これを一次粒子に解砕しながら処理を行うことができるので、ケイ素含有粒子(P)にほぼ均等にカーボンブラック粒子(Q)を担持することができる。
【0018】
ケイ素を含有する炭素材料(A)は、以上に説明したような複合導電性粒子(R)のほかに、炭素前駆体(S)を含有することを特徴とする。
ここで炭素前駆体(S)としては特に限定されないが、例えば、石油ピッチ、石炭ピッチ等の易黒鉛化炭素前駆体、またはフェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂等の難黒鉛化炭素前駆体、あるいはこれらの易黒鉛化炭素前駆体と難黒鉛化炭素前駆体との混合物等が挙げられる。これらの中でも、ピッチ、あるいはピッチを含有する混合物が好ましい。これにより、酸素含有量を少なくし、炭素化率を上げることができるので、二次電池に用いた場合に放電容量保持率を向上させることができる。
【0019】
ケイ素を含有する炭素材料(A)は特に限定されないが、ケイ素を含有する炭素材料(A)全体に対して、複合導電性粒子(R)を15〜70重量%含有することが好ましく、20〜60重量%含有することがさらに好ましい。これにより、ケイ素の特性を損なうことなく、二次電池に用いた場合に高充放電容量を発揮することができる。複合導電性粒子(R)の配合量が前記下限値未満では、ケイ素の含有量が少ないため放電容量が小さくなりやすく、前記上限値を越えると充放電効率および放電容量保持率が低下する傾向がみられる。
【0020】
ケイ素を含有する炭素材料(A)の製造方法としては特に限定されないが、例えば、炭素前駆体(S)として固形のものを用いる場合は、複合導電性粒子(R)と炭素前駆体(S)とを所定量配合して、らいかい機等により処理することにより、複合導電性粒子(R)の表面が炭素前駆体(S)で被覆された、ケイ素を含有する炭素材料(A)を得ることができる。また、炭素前駆体(S)として液状もしくはこれに近い性状のものを用いる場合は、複合導電性粒子(R)と炭素前駆体(S)とを混合撹拌することにより、同様のものを得ることができる。
【0021】
本発明の炭素材用原料(C)は、前記ケイ素を含有する炭素材料(A)と、ケイ素を含有しない炭素材料(B)とを含有するものである。
ここで、ケイ素を含有しない炭素材料(B)としては特に限定されないが、例えば、ピッチ、コークス、塩化ビニル樹脂、木材類、フェノール樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、砂糖等の炭素前駆体や、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズなどの各種黒鉛、炭素などの炭素材などが挙げられる。そして、これらの炭素前駆体及び炭素材のうち、いずれも実質的にケイ素を含有しないものを用いることができる。これらの炭素前駆体及び炭素材は単独あるいは二種以上併用し使用してもよい。これらの炭素材料の中でも、特に黒鉛が好ましい。これにより、二次電池に用いた場合に充放電効率を向上させることができる。
【0022】
また、炭素材料原料(C)は特に限定されないが、炭素材料原料(C)全体に対して、ケイ素を含有する炭素材料(A)を20〜60重量%含有することが好ましく、30〜50重量%含有することがさらに好ましい。
これにより、上記効果に加え、二次電池に用いた場合充放電効率を維持しながら、高放電容量とすることができる。ケイ素を含有する炭素材料(A)の含有量が前記下限値未満では、充放電容量を高めるケイ素の量が少なくなるため、放電容量が低下するようになる。また、前記上限値を越えると、炭素材料原料(C)中のケイ素を含有する炭素材料(A)が多くなり、充放電効率及び放電容量保持率が低下することがある。
【0023】
炭素材料原料(C)の製造方法としては特に限定されないが、例えば、ケイ素を含有する炭素材料(A)とケイ素を含有しない炭素材料(B)とを、ニーダー、混練ロール等を用いて加熱しながら溶融混練する方法、ともに粉砕したものどうしを混合又はともに粉砕しながら混合する方法、あるいは炭素材料(B)を有機溶剤などに溶解させた後にケイ素を含有する炭素材料(A)と混合する方法、などにより得ることができる。
【0024】
次に、本発明のケイ素含有炭素材(D)について説明する。本発明のケイ素含有炭素材(D)は、前記炭素材料原料(C)を炭化処理してなることを特徴とする。
前記炭化処理条件としては特に限定されないが、例えば、炭素材料原料(C)を窒素雰囲気下で50〜200℃/時間で昇温して、400〜600℃で1〜5時間保持して一次炭化処理を行う。これを室温まで冷却して、通常100μm以下まで粉砕する。粉砕処理品を更に窒素雰囲気下で10〜150℃/時間で昇温し、800〜1200℃にて1〜10時間保持して二次炭化処理を行う。これを室温まで冷却して、ケイ素含有炭素材(D)を得ることができる。
【0025】
ケイ素含有炭素材(D)は特に限定されないが、平均粒径1〜50μmであることが好ましく、特に5〜30μmが好ましい。これにより、負極材作製時の取り扱い性が良く、また、作製後の負極材塗布面が平滑となる。粒径が前記下限値未満では粉体の粉舞が発生するとともに負極材作製の作業性が低下しやすく、前記上限値を越えると負極材塗布面が凹凸となりやすい。
【0026】
次に、本発明の二次電池負極材について説明する。本発明の二次電池負極材は、前記ケイ素含有炭素材(D)を含むことを特徴とする。
本発明の二次電池負極材は特に限定されないが、例えば、前記ケイ素含有炭素材(D)100重量部に対し、ポリエチレン、ポリプロピレン等を含むフッ素系高分子、ブチルゴム,ブタジエンゴム等のゴム状高分子等の有機高分子結着剤1〜30重量部、及びN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等の粘度調整用溶剤を適量添加して混練し、ペースト状にした混合物を圧縮成形、ロール成形等によりシート状、ペレット状等に成形して得ることができる。また、粘度調整用溶剤にてスラリー状にした混合物を銅箔、ニッケル箔等の集電体に塗布成形して得ることもできる。
【0027】
次に、本発明のリチウム二次電池について説明する。本発明のリチウム二次電池は、前記二次電池負極材を用いることを特徴とする。
本発明のリチウム二次電池に前記二次電池用負極材を適用する場合は特に限定されないが、例えば、前記二次電池用負極材はセパレータを介して正極材と対向して配置され、電解液を用いることによりリチウム二次電池が得られる。正極材としては特に限定されないが、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等の複合酸化物やポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子等を用いることができる。セパレータとしては特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の微多孔質フィルム、不織布等を用いることができる。電解液としては特に限定されないが、非水系溶媒に電解質となるリチウム塩を溶解したものを用いる。電解質としてはLiClO4,LiPF6等のリチウム金属塩、テトラアルキルアンモニウム塩等を用いることができる。非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、ジエチルカーボネート等の鎖状エステル類、ジメトキシエタン等のエーテル類等の混合物等を用いることができる。また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル等に混合された固体電解質を用いることもできる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
1.ケイ素含有炭素材(D)の製造
<実施例1>
(1)用いた原料
▲1▼ケイ素含有粒子(P):平均粒径1μmのケイ素粒子
▲2▼カーボンブラック粒子(Q):平均一次粒径0.035μmのケッチェンブラック(オイルファーネスブラック)
▲3▼炭素前駆体(S):軟化点120℃のピッチ
▲4▼ケイ素を含有しない炭素材料(B):KMFC(川崎製鉄(株)製・メソカーボンマイクロビーズ)
(2)複合導電性粒子(R)の作製
上記(P)と(Q)とを体積比率(P:Q)=64:36となるように配合し、予備混合後、らいかい機にて1時間処理を行い、複合導電性粒子(R)を作製した。
(3)ケイ素を含有する炭素材料(A)の作製
上記(S)をフラスコに入れ、195〜205℃で溶解した後、上記(R)を重量比率(R:S)=40:60となるように逐添した。その後さらに1時間攪拌した後、室温まで冷却・粗砕して、ケイ素を含有する炭素材料(A)を得た。
(4)炭素材用原料(C)の調製
上記(A)と(B)とを、重量比率(A:B)=40:60となるように配合し、3つ口フラスコを用いて210〜220℃で1時間溶融混合した後、室温まで冷却した。これを衝撃式粉砕装置により、1mmφの分級スクリーンを用いて100μm以下に粉砕し、炭素材用原料(C)を得た。
(5)ケイ素含有炭素材(D)の製造
上記(C)の粉砕品を、窒素雰囲気下で100℃/時間で550℃まで昇温して1.5時間保持した。その後、冷却して振動ボールミルを用いて45μm以下まで粉砕した。この粉砕品を100℃/時間で1000℃まで昇温して3時間保持した。その後、冷却して45μm篩で篩い、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0030】
<実施例2>
実施例1(1)において、
▲1▼ケイ素含有粒子(P):平均一次粒径2μmのケイ素粒子と、
▲2▼カーボンブラック粒子(Q):平均粒径0.040μmのケッチェンブラックとを用い、
実施例1(2)において、(P:Q)=40:60とし、
実施例1(3)において、(R:S)=50:50とし、
実施例1(4)において、(A:B)=50:50となるように配合した。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0031】
<実施例3>
実施例1(1)において、
▲2▼カーボンブラック粒子(Q):平均一次粒径0.035μmのアセチレンブラック を用い、
実施例1(2)において、(P:Q)=50:50とし、
実施例1(3)において、(R:S)=60:40とし、
実施例1(4)において、(A:B)=35:65となるように配合した。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0032】
<実施例4>
実施例1(2)において、(P:Q)=40:60とし
実施例1(3)において、(R:S)=65:35とし、
実施例1(4)において、(A:B)=25:75となるように配合した。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0033】
<実施例5>
実施例1(3)において、(R:S)=15:85とし、
実施例1(4)において、(A:B)=60:40となるように配合した。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0034】
<実施例6>
実施例1(2)において、(P:Q)=20:80とし
実施例1(3)において、(R:S)=50:50とし、
実施例1(4)において、(A:B)=50:50となるように配合した。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0035】
<実施例7>
実施例1(2)において、(P:Q)=95:5とし
実施例1(3)において、(R:S)=20:80とし、
実施例1(4)において、(A:B)=30:70となるように配合した。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0036】
<実施例8>
実施例1(1)において、
▲1▼ケイ素含有粒子(P):平均粒径0.1μmの一酸化ケイ素を用いた。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0037】
<実施例9>
実施例1(1)において、
▲3▼炭素前駆体(S):軟化点120℃のフェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・PR−50731)を用いた。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0038】
<実施例10>
実施例1(1)において、
▲4▼ケイ素を含有しない炭素材料(B):球状フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製・PR−ACS−7)を用いた。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0039】
<比較例1>
実施例1(1)において、
▲2▼カーボンブラック粒子(Q)を使用せず、複合導電性粒子(R)のかわりに、▲1▼ケイ素粒子をそのまま用いた。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0040】
<比較例2>
実施例1(1)において、
▲4▼ケイ素を含有しない炭素材料(B)を使用せず、炭素材用原料(C)のかわりに、ケイ素含有炭素材料(A)をそのまま用いた。
これ以外は、実施例1と同様に実施して、ケイ素含有炭素材(D)を得た。
【0041】
<比較例3>
二次電池用負極材用炭素材として、メソカーボンマイクロビーズであるKMFC(川崎製鉄(株)製)のみを用いた。
【0042】
2.二次電池負極材の製造
各実施例および比較例にて得られたケイ素含有炭素材(D)または炭素材に、これらに対して結合剤としてポリフッ化ビニリデン10重量%、アセチレンブラック3重量%を混合した合剤を、20mmφに圧縮成形して負極ペレットを得た。
【0043】
3.二次電池の製造
正極材料として、正極活物質としてLi0.5Co0.5V0.5O2.5を84重量部、導電剤としてアセチレンブラック10重量部、結合剤としてテトラフルオロエチレン6重量部の混合比で用いた。これらを混合した合剤を乾燥後、圧縮成形して正極ペレット(20mmφ)を得た。これを、上記で製造した負極とともに、電解液として体積比が1:1のエチレンカーボネートとジエチレンカーボネートの混合液に6フッ化リン酸リチウムを1モル/リットル溶解させたものを用い、セパレーターとして微孔性のポリプロピレン(厚さ25μm)を用いて、前記電解液を含浸させコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0044】
前記コイン型リチウムイオン二次電池を評価した結果を表1に示す。
【表1】
【0045】
<評価方法>
(1)2.5V放電容量、初回充放電効率および放電容量保持率:二次電池製造後に測定した。充電条件は、電流25mA/gの低電流で1mVになるまで保持し、その後、1.25mAh/g以下に電流が減衰するまでとした。また、放電条件のカットオフ電位は2.5Vとした。放電容量保持率は初回放電容量に対する300サイクル後の放電容量の保持率とした。
【0046】
表1に示したように、実施例1〜10は、本発明の炭素材用原料(C)を炭化処理したケイ素含有炭素材(D)を用いた電池材であり、放電容量、初回充放電効率、放電容量保持率のバランスが良好なものとなった。
一方、比較例1はカーボンブラック粒子(Q)を用いなかったため、初回充放電効率および放電容量保持率が不十分であった。比較例2はケイ素を含有しない炭素材料(B)を用いなかったため、初回充放電効率及び放電容量保持率が不十分であった。そして比較例3は、炭素材用原料として黒鉛のみを用いたものであり、放電容量が大きく低下したものとなった。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、ケイ素を含有する炭素材料(A)と、ケイ素を含有しない炭素材料(B)とからなる炭素材用原料であって、前記ケイ素を含有する炭素材料(A)は、ケイ素含有粒子(P)の表面にカーボンブラック粒子(Q)が担持された複合導電性粒子(R)と、炭素前駆体(S)とを含有することを特徴とする炭素材用原料であり、これを炭化処理して得られた炭素材を二次電池負極材に用いた場合には、高充放電容量及び高い初期効率を発揮することができる。
Claims (13)
- ケイ素を含有する炭素材料(A)と、ケイ素を含有しない炭素材料(B)とからなる炭素材用原料であって、前記ケイ素を含有する炭素材料(A)は、ケイ素含有粒子(P)の表面にカーボンブラック粒子(Q)が担持された複合導電性粒子(R)と、炭素前駆体(S)とを含有することを特徴とする炭素材用原料。
- 前記ケイ素含有粒子(P)が、ケイ素粒子である請求項1に記載の炭素材用原料。
- 前記カーボンブラック粒子(Q)が、ケッチェンブラック又はアセチレンブラックである請求項1又は2に記載の炭素材用原料。
- 前記炭素前駆体(S)が、ピッチである請求項1ないし3のいずれかに記載の炭素材用原料。
- 前記ケイ素を含有しない炭素材料(B)が、黒鉛である請求項1ないし4のいずれかに記載の炭素材用原料。
- 前記ケイ素含有粒子(P)の平均粒径が0.1〜5μmである請求項1ないし5のいずれかに記載の炭素材用原料。
- 前記カーボンブラック粒子(Q)の平均粒径が0.01〜0.5μmである請求項1ないし6のいずれかに記載の炭素材用原料。
- 前記複合導電性粒子(R)は、前記ケイ素含有粒子(P)と前記カーボンブラック粒子(Q)とを、体積比率(P:Q)=99:1〜15:85で配合して得られるものである請求項1ないし7のいずれかに記載の炭素材用原料。
- 前記ケイ素を含有する炭素材料(A)全体に対して、前記複合導電性粒子(R)の含有量が15〜70重量%である請求項1ないし8のいずれかに記載の炭素材用原料。
- 前記炭素材用原料全体に対して、前記ケイ素を含有する炭素材料(A)の含有量が20〜60重量%である請求項1ないし9のいずれかに記載の炭素材用原料。
- 請求項1ないし10のいずれかに記載の炭素材用原料を炭化処理してなることを特徴とするケイ素含有炭素材。
- 請求項11に記載のケイ素含有炭素材を含有することを特徴とする二次電池負極材。
- 請求項12に記載の二次電池負極材を用いることを特徴とするリチウム二次電池。
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