JP2004099381A - 高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜及びその製造方法、並びにそのメソポーラスシリカ薄膜を用いたクラスター包接薄膜及びその製造方法 - Google Patents

高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜及びその製造方法、並びにそのメソポーラスシリカ薄膜を用いたクラスター包接薄膜及びその製造方法 Download PDF

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Yoko Kumai
熊井 葉子
Kensho Sugimoto
杉本 憲昭
Koji Tsukada
塚田 浩司
Masaru Ichikawa
市川 勝
Atsushi Fukuoka
福岡 淳
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Abstract

【課題】十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れたメソポーラスシリカ薄膜及びその製造方法を提供し、さらにそのメソポーラスシリカ薄膜を用いたクラスター包接薄膜及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】膜厚が1μm以下であり、かつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜であって、
前記メソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定における(100)面を示すピークの初期強度(I)と、前記メソポーラスシリカ薄膜を酸性溶液に24時間含浸させる耐酸性試験後の前記ピークの強度(I)とが以下の関係式(1):
(1−(I/I))×100≦90      (1)
を満たすものであることを特徴とする高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜及びその製造方法、並びにそのメソポーラスシリカ薄膜を用いたクラスター包接薄膜及びその製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜及びその製造方法、並びにそのメソポーラスシリカ薄膜を用いたクラスター包接薄膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔質材料はその大きな比表面積のために吸着剤や分離剤等として様々な分野で利用されている。多孔質材料の中でも均一なミクロ孔(直径0.1〜1nmの細孔)を有する多孔質材料としてゼオライトが知られている。また、シリカ多孔体薄膜に関しては、テトラアルコキシシランを用いゾル−ゲルディップコーティングにより基板上にシリカ多孔体薄膜を形成させる方法(例えば、非特許文献1参照)、テトラアルコキシシランを気液界面で反応させシリカ多孔体薄膜を得る方法(例えば、非特許文献2参照)が知られている。
【0003】
このようなメソポーラスシリカ薄膜は、その細孔配列の均一性を利用して、スイッチングデバイス、センサー、LSI用低誘電率層間絶縁膜、量子ドット、量子細線形成のホスト材料、面状の触媒用担体、吸着剤、分離材等として使用することが可能である。
【0004】
一方、このようなメソポーラスシリカ薄膜に関しては、例えば、特開2001−130911号公報(特許文献1)においては、シリコンアルコキシド及び界面活性剤を過剰な酸の存在下においてpH3以下の酸性溶液中で反応させることにより、細孔配列の均一性の高いシリカメソ多孔体薄膜が得られることが開示されている。
【0005】
しかしながら、上記公報記載のようにシリコンアルコキシドに対して過剰の酸を用いる従来の方法を用いても、十分な耐酸性を有するメソポーラスシリカ薄膜を得ることは困難であり、また、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性(並び方の均一性)が十分ではなかった。そのため、量子細線(金属細線)を作製するために酸性である金属塩溶液にメソポーラスシリカ薄膜を含浸させると、薄膜が前記溶液中で加水分解することによりメソポーラスシリカ薄膜が壊れるため、均一な形状の量子細線を作製することが難しく、また細孔の配向性が一定でないために、量子細線の両端に電極をつけて使用する量子素子等への応用が困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−130911号公報
【非特許文献1】
Y. Lu et al., Nature, 389, 364−368, 1997
【非特許文献2】
H. Yang et al., Nature, 381, 589−592, 1996
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れたメソポーラスシリカ薄膜及びその製造方法を提供し、さらにそのメソポーラスシリカ薄膜を用いたクラスター包接薄膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、従来は過剰に存在せしめることが通常であったメソポーラスシリカ薄膜を製造する際に加える酸の量を減らして酸の量を所定の範囲内とすることにより、十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れた高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下であり、かつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜であって、
前記メソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定における(100)面を示すピークの初期強度(I)と、前記メソポーラスシリカ薄膜を酸性溶液(15wt%塩化白金酸(HPtCl)水溶液と水とエタノールを体積比1:2:2で混合したpH0.6である酸性溶液)に24時間含浸させる耐酸性試験後の前記ピークの強度(I)とが以下の関係式(1):
(1−(I/I))×100≦90      (1)
を満たすものであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、シリコンアルコキシドを酸性溶媒中で反応せしめシリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、
前記シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤溶液とを接触せしめ、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、
前記複合体を含む液体を薄膜化し、乾燥した後に300〜600℃で焼成することによりメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、
を含むメソポーラスシリカ薄膜の製造方法であって、
前記複合体形成工程における前記複合体を含む液体の酸の濃度が0.00057〜0.0086eq/lであり、かつ前記複合体を含む液体中の酸の含有量がシリコンアルコキシド0.1molに対して2.3×10−4〜3.8×10−4molであることを特徴とする方法である。
【0011】
上記本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の製造方法においては、前記薄膜形成工程において、前記複合体を薄膜化する際の相対湿度が50%以上であることが好ましい。
【0012】
また、本発明のクラスター包接薄膜は、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜と、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成されているクラスターと、を備えることを特徴とするものである。
【0013】
上記本発明のクラスター包接薄膜においては、前記クラスターを構成する原子が、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、銀、白金及び金からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のクラスター包接薄膜の第一の製造方法は、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、
前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を飽和蒸気圧の1/20〜1/3の蒸気圧を有する還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、
前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなるクラスターを形成せしめる光還元工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0015】
上記本発明のクラスター包接薄膜の第一の製造方法においては、(i)前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内の水分を真空排気する真空排気工程、(ii)前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に水蒸気を導入する水蒸気導入工程、(iii)前記金属イオン担持工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の表面に前記細孔内と外部とを結ぶ新たな貫通孔を設ける孔形成工程、のうちの少なくとも一つの工程を更に含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明のクラスター包接薄膜の第二の製造方法は、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、
前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜と還元剤の蒸気とを接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、
前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に熱を加えて前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなるクラスターを形成せしめる熱還元工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0017】
上記本発明のクラスター包接薄膜の第二の製造方法においては、(i)前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内の水分を真空排気する真空排気工程、(ii)前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に水蒸気を導入する水蒸気導入工程、(iii)前記金属イオン担持工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の表面に前記細孔内と外部とを結ぶ新たな貫通孔を設ける孔形成工程、のうちの少なくとも一つの工程を更に含むことが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
(高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜)
本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜は、膜厚が1μm以下であり、かつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜であって、前記メソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定における(100)面を示すピークの初期強度(I)と、前記メソポーラスシリカ薄膜を酸性溶液(15wt%塩化白金酸(HPtCl)水溶液と水とエタノールを体積比1:2:2で混合したpH0.6である酸性溶液)に24時間含浸させる耐酸性試験後の前記ピークの強度(I)とが以下の関係式(1):
(1−(I/I))×100≦90      (1)
を満たすものである。ここで、(1−(I/I))×100(%)は、耐酸性試験後の減少率(%)を示す。このような減少率としては、70%以下であることがより好ましく、40%以下であることが更に好ましい。このような減少率が90%を超えるメソポーラスシリカ薄膜は、耐酸性が不十分であり、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に劣るものであることから、量子細線等の作製に使用する際に耐久性、耐酸性、形状均一性、配向性が不十分となる傾向がある。
【0020】
また、前記耐酸性試験後の前記ピークの強度(I)としては、200000cps以上であることが好ましく、250000cps以上であることがより好ましい。このような前記ピークの強度(I)が前記下限値未満である場合は、メソポーラスシリカ薄膜の耐酸性が不十分となる傾向があり、量子細線(金属細線)等の作製が困難となる傾向がある。
【0021】
前記耐酸性試験とは、メソポーラスシリカ薄膜を十分に乾燥させた後に前記酸性溶液中に24時間含浸させる試験である。また、前記初期強度(I)はメソポーラスシリカ薄膜を十分に乾燥させた後に前記酸性溶液中に含浸させる前に測定し、前記ピークの強度(I)は耐酸性試験後の薄膜を十分に乾燥させた後に測定するものである。
【0022】
このような耐酸性試験の前及び後におけるメソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定は、下記の装置及び条件で測定し、メソポーラスシリカ薄膜の(100)面を示すピーク(ブラッグ角0.17°〜3.54°に存在)の強度を測定するものである。
X線回折装置:リガク社製、RINT−2000
線源:CuKα
X線管電圧:40kV
X線管電流:30mA。
【0023】
また、このような測定をする際には、入射スリットと受光スリットをDS:0.5、SS:0.5、RS:0.3とすることが好ましい。
【0024】
このような耐酸性試験の前及び後におけるIとIを比較することにより、メソポーラスシリカ薄膜の耐酸性を評価することが可能となる。すなわち、前記薄膜が酸に曝されることにより薄膜が溶解し崩壊する。この場合、薄膜の結晶構造に乱れが生じ、X線回折における強度(I)の測定値が減少する。この減少の度合い、つまり前記減少率が小さいほど耐酸性が高いといえる。
【0025】
また、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜は、X線回折測定における(100)面を示すピークの強度が50000cps以上であり、かつ前記ピークの半値幅が0.21°以下であるものであることが好ましい。また、前記ピークの強度はより好ましくは56000cps以上であり、前記ピークの半値幅はより好ましくは0.20°以下である。前記ピークの強度が50000cps未満である場合、または前記ピークの半値幅が0.21°を超えるメソポーラスシリカ薄膜は結晶性が不十分となる傾向があり、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に劣る傾向がある。
【0026】
このようなX線回折測定は、下記の装置及び条件で測定し、メソポーラスシリカ薄膜の(100)面を示すピーク(ブラッグ角0.17°〜3.54°に存在)の強度及び半値幅を測定するものである。
装置:リガク社製、RAD−B
線源:CuKα
X線管電圧:30kV
X線管電流:20mA。
【0027】
このような本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜は、前述のように十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れ、量子細線等を作製するための鋳型として好適である。なお、X線の回折現象は、周期的に並んだ原子の散乱によって起こるが、格子欠陥等によりそれらの周期性に乱れが生ずると回折現象に異常をきたす。本発明では、前記ピークの強度が格子欠陥や組成ずれを、前記ピークの半値幅が結晶の面間隔を示す尺度となることから、これらを測定することにより結晶性を評価した。また、耐酸性は前記耐酸性試験の前及び後における結晶性(前記ピークの強度)を比較することにより評価した。
【0028】
本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜が有する細孔は、粒子の表面のみならず内部にも形成される。かかる薄膜における細孔の配列状態(細孔配列構造)は特に制限されず、例えばヘキサゴナルの細孔配列構造を有するものであっても、キュービックやディスオーダの細孔配列構造を有するものであってもよい。ここで、薄膜がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、薄膜の細孔の配置が六方構造であることを意味する(S. Inagaki, et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 680, 1993; S. Inagaki, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 69, 1449; 1996、Q. Huo et al., Science, 268, 1324, 1995 参照)。また、薄膜がキュービックの細孔配列構造を有するとは、薄膜中の細孔の配置が立方構造であることを意味する(J. C. Vartuli et al., Chem. Mater., 6, 2317, 1994; Q. Huo et al., Nature, 368, 317, 1994 参照)。また、薄膜がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、細孔の配置が不規則であることを意味する(P. T. Tanev etal., Science, 267, 865, 1995; S. A. Bagshaw et al., Science, 269, 1242, 1995; R. Ryoo et al., J. Phys. Chem., 100, 17718, 1996 参照)。
【0029】
なお、薄膜がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造を有する場合は、細孔の全てがこれらの規則的細孔配列構造である必要はない。すなわち、薄膜は、ヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造とディスオーダの不規則的細孔配列構造の両方を有していてもよい。しかしながら、全ての細孔のうち80%以上がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造となっていることが好ましい。
【0030】
本発明におけるメソポーラスシリカ薄膜とは、メソ孔を有するシリカ多孔体であり、薄膜という場合は厚さ1μm以下であり、0.1〜0.5μmであることがより好ましく、表面積に対して厚さが無視できるような存在状態をいい、塊上の結晶・固体などの3次元的な広がりを持ちかさばった状態の物質とは異なる意味で用いられる。このようなメソポーラスシリカ薄膜の膜厚が1μmを超える場合、メソポーラスシリカ薄膜の細孔配列の均一性が悪くなり、また焼成時の膜収縮のひずみによりワレが発生する傾向にある。しかしながら、1μm以下の膜厚のメソポーラスシリカ薄膜を作製した後に、本発明の製造方法における複合体を含む液体を再度付着せしめ乾燥することにより、細孔配列の均一性の高いメソポーラスシリカ薄膜を積層し、積層した薄膜の合計の膜厚が1μm以上であるものを作製することができる。
【0031】
また、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜は後述するように界面活性剤を鋳型とし、シリコンアルコキシドをシリカ源として作製されるものである。また、かかる薄膜はケイ素酸化物からなり、ケイ素原子が酸素原子を介して結合した骨格−Si−O−を基本とし、高度に架橋した網目構造を有している。このようなケイ素酸化物においては、ケイ素原子の少なくとも一部が有機基の2箇所以上で炭素−ケイ素結合を形成しているものでもよい。このような有機基としては、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカン等の炭化水素から2以上の水素がとれて生じる2価以上の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、有機基は、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等を有したものであってもよい。
【0032】
また、前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径である。なお、細孔径分布曲線は、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、メソポーラスシリカ薄膜を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法等の計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜は、X線回折測定において1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。このようなX線回折ピークは、そのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0033】
(高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の製造方法)
本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の製造方法は、シリコンアルコキシドを酸性溶媒中で反応せしめシリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、前記シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤溶液とを接触せしめ、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、前記複合体を含む液体を薄膜化し、乾燥した後に300〜600℃で焼成することによりメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、を含むメソポーラスシリカ薄膜の製造方法であって、前記複合体形成工程における前記複合体を含む液体の酸の濃度が0.00057〜0.0086eq/lであり、かつ前記複合体を含む液体中の酸の含有量がシリコンアルコキシド0.1molに対して2.3×10−4〜3.8×10−4molであることを特徴とする方法である。
【0034】
先ず、部分重合工程について説明する。部分重合工程においては、シリコンアルコキシドを酸性溶媒中で反応せしめることにより、シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体が得られる。ここで、シリコンアルコキシドとは下記一般式(2)で表されるものである。
【0035】
(4−a)−Si−(O−R)   (2)
[式(2)中、Rは炭化水素基を表し、Aは水素原子、ハロゲン原子、水酸基又は炭化水素基を表し、aは1〜4の整数を表す。]
上記一般式(2)中、Rで表される炭化水素基としては、例えば、鎖式、環式、脂環式の炭化水素基を挙げることができる。このような炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜5の鎖式アルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基である。また、Aが炭化水素基である場合、その炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が1〜10のアルケニル基、フェニル基、置換フェニル基を挙げることができる。上記一般式(2)で表されるシリコンアルコキシドは1種のみ用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記一般式(2)で表されるシリコンアルコキシドとしては、結晶性の良好なメソポーラスシリカ薄膜を得ることができることから、Si(OCHで表されるテトラメトキシシラン(TMOS)、及びSi(OCで表されるテトラエトキシシラン(TEOS)を用いることが好ましい。
【0037】
上記シリコンアルコキシドが有するアルコキシル基(−O−R)は酸性条件下で加水分解を受け水酸基(−OH)となり、その水酸基部分が縮合して高分子量化する。なお、シリコンアルコキシドがアルコキシル基以外に水酸基やハロゲン原子を有している場合はこれらの官能基が加水分解反応に寄与する場合もありうる。したがって、シリコンアルコキシド部分重合体とは、加水分解反応および縮合反応によって得られる重合体であって、アルコキシル基(−O−R)及び/又は水酸基(−OH)の一部が未反応のまま残存している重合体を意味する。
【0038】
前記シリコンアルコキシド部分重合体は、シリコンアルコキシドを酸性溶媒(塩酸、硝酸等の水溶液又はアルコール溶液等)中で攪拌することにより得ることができる。なお、前記酸性溶媒に含まれる酸としては、上記の酸の他にホウ酸、臭素酸、フッ素酸、硫酸、リン酸が挙げられ、これらのうちの2種以上を混合して用いることもできる。シリコンアルコキシドのアルコキシル基の加水分解反応はpHが低い領域で起こりやすいことから、系のpHを低くすることにより部分重合を促進することができる。なお、部分重合工程における反応温度は、例えば、15〜25℃とすることができ、反応時間は30〜90分とすることができる。
【0039】
次に、複合体形成工程を説明する。複合体形成工程においては、前記部分重合工程により得られたシリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤とを接触せしめ、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる。
【0040】
このような界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム等の塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤、一級アルキルアミン等が挙げられる。
【0041】
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式C2n+1(OCHCHOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。
【0042】
また、本発明においては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いることもできる。
【0043】
さらに、本発明においては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)(PO)(EO)で表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0044】
上記のトリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)(PO)70(EO)、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社等から入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。上記のトリブロックコポリマーは1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーも使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)(PO)NCHCHN((PO)(EO)で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表す。
【0046】
このような界面活性剤の中では、結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜を得ることができることから、アルキルトリメチルアンモニウム[C2p+1N(CH]の塩(好ましくはハロゲン化物塩)を用いることが好ましい。また、その場合は、アルキルトリメチルアンモニム中のアルキル基の炭素数は8〜18であることが好ましい。このようなものとしては、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0047】
前記シリコンアルコキシド部分重合体と上記界面活性剤とを接触せしめる場合には、前記シリコンアルコキシド部分重合体を含む液体に界面活性剤をそのまま添加してもよく、また、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合物等に溶かして界面活性剤溶液とした後に添加してもよい。さらに、前記界面活性剤溶液には酸を加えて、好ましい酸性雰囲気としてもよい。このような酸は、上記酸性溶媒に用いられる酸と同様のものを用いることが可能であり、その酸の量は後述する前記複合体を含む液体中の酸の含有量の範囲を満たすように調整する。
【0048】
前記部分重合工程により得られた液体に前記界面活性剤または界面活性剤溶液を添加すると、溶液中で界面活性剤はミセルを形成する。このミセルが超分子鋳型となり、シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤ミセルとの複合体が形成される。このような界面活性剤ミセルの内部にはシリコンアルコキシド部分重合体が入り込まないため、ミセルの内部は最終生成物であるメソポーラスシリカ薄膜における細孔部分となる。したがって、界面活性剤の分子鎖長を変化させることにより、メソポーラスシリカ薄膜の細孔径を制御することができる。
【0049】
前記シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤のモル比は、結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜が得られることから、シリコンアルコキシド0.1molに対して界面活性剤は0.005〜0.02molであることが好ましい。また、前記複合体形成工程は、例えば、10〜30℃において30〜90分攪拌することにより行うことができる。また、このときの溶媒の量は、シリコンアルコキシド0.1molに対して0.2〜10molの割合で混合することが好ましく、溶媒中に水が最低0.2molあることがより好ましい。このような溶媒の量が、前記下限値未満であるとシリコンアルコキシドが鎖状に縮合することが困難となる傾向にあり、前記上限値を超えると前記複合体を含む液体中のシリコンアルコキシド濃度および溶液の粘度が低下し、前記複合体を含む液体を基板に付着せしめる際にハジキが見られ均一な薄膜が形成しにくくなる傾向にある。
【0050】
前記複合体形成工程における前記複合体を含む液体は、酸の濃度が0.00057〜0.0086eq/lであり、かつ前記複合体を含む液体の酸の含有量がシリコンアルコキシド0.1molに対して2.3×10−4〜3.8×10−4molであるものである。以下、特に断らない限り、酸の濃度とは前記複合体を含む液体中の酸の濃度であり、酸の含有量とは前記複合体を含む液体中のシリコンアルコキシド0.1molに対する酸の物質量とする。前記酸の濃度は0.00059〜0.0080eq/lであることがより好ましく、また前記酸の含有量は2.4×10−4〜3.5×10−4molであることがより好ましい。前記酸の含有量が前記下限値未満であると、加水分解速度、重縮合速度が遅くなり、メソポーラスシリカ薄膜の作製が困難となり、また、前記上限値を超えると、得られるメソポーラスシリカ薄膜における耐酸性、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性が不十分となる。
【0051】
なお、本発明の製造方法においては、従来のメソポーラスシリカ薄膜よりもシリコンアルコキシドが規則正しく周期的に配列するようになった理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、前記複合体を含む液体が酸性の場合は、シリコンアルコキシドの加水分解速度は速く、重縮合速度は遅くなる傾向があり、他方、中性の場合は酸の触媒としての作用が減じ、加水分解速度も重縮合速度も極端に遅くなる傾向がある。本発明の製造方法においては、酸の量を従来用いられていた量よりも減量することで、シリコンアルコキシドの加水分解および重縮合の速度がバランスよく調整されることにより薄膜の結晶性が向上し、十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れたメソポーラスシリカ薄膜が得られることとなったと本発明者らは推察する。
【0052】
また、このように従来のメソポーラスシリカ薄膜よりも細孔表面が平滑になったのは、上述のようにシリコンアルコキシドが規則正しく周期的に配列するようになったためと、本発明者らは推察する。更に、従来のメソポーラスシリカ薄膜は、円柱状に連なった界面活性剤を取り囲んだシリコンアルコキシド部分重合体が、安定な配向に揃う前に重縮合が始まっていたと考えられる。一方、本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、重縮合反応の速度が適度に遅くなったことから、円柱状に連なった界面活性剤を取り囲んだシリコンアルコキシド部分重合体が安定な配向に揃ったあとに重縮合するようになり細孔の配向性が高くなったと、本発明者らは推察する。
【0053】
このような条件で得られたメソポーラスシリカ薄膜は結晶性が向上し、メソポーラスシリカ薄膜における−Si−O−Si−結合が安定になり、かかる薄膜が酸に曝されても酸化されにくくなり、十分な耐酸性が得られることとなったと本発明者らは推察する。
【0054】
この結果、本発明の製造方法を用いて得られるメソポーラスシリカ薄膜は、前記X線回折測定における(100)面を示すピークの初期強度(I)と、前記メソポーラスシリカ薄膜を酸性溶液(15wt%塩化白金酸(HPtCl)水溶液と水とエタノールを体積比1:2:2で混合したpH0.6である酸性溶液)に24時間含浸させる耐酸性試験後の前記ピークの強度(I)とが以下の関係式(1):
(1−(I/I))×100≦90      (1)
を満たす十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れたものとなる。
【0055】
前記複合体を含む液体の粘度は、10Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以下であることが更に好ましい。前記複合体を含む液体の粘度が10Pa・sを超える場合は、薄膜化が困難になる傾向にあり、また、縮合反応が進行中であることが考えられるため、得られるメソポーラスシリカ薄膜の細孔配列の均一性に劣る傾向がある。
【0056】
また、前記複合体の組成により、得られるメソポーラスシリカ薄膜の結晶構造を制御することができる。例えば、シリコンアルコキシドとしてテトラメトキシシランを用い、界面活性剤として塩化アルキルトリメチルアンモニウムを用いた場合においては、テトラメトキシシランの物質量を1molとしたときに、塩化アルキルトリメチルアンモニウムの物質量を0.04〜0.15molとすることにより結晶構造をヘキサゴナルとすることが容易となる。一方で、テトラメトキシシランの物質量を1molとしたときに、塩化アルキルトリメチルアンモニウムの物質量を0.15〜0.19molとすることにより結晶構造をキュービックとすることが可能となる。
【0057】
次に、薄膜形成工程を説明する。薄膜形成工程においては、前記複合体を含む液体を薄膜化し、乾燥した後に300〜600℃で焼成することによりメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる。薄膜化の方法は特に制限はなく、例えば、前記複合体を含む液体を基板上に付着又は塗布せしめることによって厚さの均一な膜の形成が可能となる。このような基板としては、前記複合体を含む液体が付着又は塗布可能なものであれば、形状や材質は特に制限はなく、例えば、金属、樹脂等からなる板状成型物やフィルム等が挙げられる。基板の表面には、ある一定の周期性をもって溝や突起物などが形成されていてもよく、平坦であってもよい。
【0058】
複合体を含む液体を基板に塗布する場合は、その方法は特に制限されず、各種のコーティング方法が採用可能である。例えば、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等を用いて塗布することができる。また、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等も可能である。
【0059】
前記薄膜形成工程において、前記複合体を含む液体を薄膜化する際の相対湿度は特に制限はないが、50%以上であると耐酸性、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性がより向上し好ましい。このような相対湿度が50%未満であると、得られる薄膜の耐酸性、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性において、特に優れた効果が得られにくくなる傾向がある。このような条件においては、薄膜の乾燥速度が穏やかになり、液状でいる時間が長くなることから、円柱状に連なった界面活性剤をシリコンアルコキシド部分重合体が囲んで重縮合が開始するまでの時間が長くなり、シリコンアルコキシドがより安定な配列をとることができたと、本発明者らは推察する。
【0060】
前記複合体を含む液体を基板等に塗布する場合、その塗布厚は、その濃度により適宜選択可能である。熱収縮時のひずみによるワレを防止するために、また塗布後の加熱乾燥を効率的に行うために塗布厚は薄い方が好ましく、例えば、未乾燥状態(複合体を含む液体の状態)で10μm以下であることが好ましい。
【0061】
本発明の製造方法においては、薄膜形成工程の前に複合体を含む液体に溶媒を添加する溶媒添加工程を更に含むことが好ましい。溶媒を添加することにより、複合体を含む液体の粘度や固形分が低下するため、薄膜化したときに得られる膜厚をより薄くすることができる。また、薄膜化途中に液体の粘度変化を少なくすることができ、得られるメソポーラスシリカ薄膜の細孔配列の均一性を向上させることができる。溶媒添加工程において複合体を含む液体に添加する溶媒としては特に制限はないが、例えば、水やアルコールが挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を用いることができる。溶媒添加工程において複合体を含む液体に添加する溶媒の量は特に制限されないが、添加後の液体の粘度が10Pa・s以下になるような量であることが好ましく、5Pa・s以下となるような量であることが更に好ましい。
【0062】
このように基板に塗布する等の方法により薄膜化した後、得られた薄膜を風乾及び/又は加熱乾燥して前記複合体を反応させる。このような加熱乾燥時には、例えば、70〜150℃、より好ましくは100〜120℃の加熱を行い、シリコンアルコキシド部分重合体の縮合反応を進めて三次元的な架橋構造を形成させる。加熱乾燥の時間は、界面活性剤を含有したメソポーラスシリカ薄膜の結晶性を高めるため時間と経済的問題を鑑みて、例えば20〜80分とすることができる。
【0063】
本発明の製造方法においては、上記乾燥した薄膜を300〜600℃で焼成する。このような焼成は、350〜550℃で焼成することがより好ましく、375〜525℃で焼成することがより好ましい。このような温度で焼成を行うことによって、メソポーラスシリカ薄膜の十分な耐酸性の向上を図ることができる。このような理由としては、前記範囲の温度で焼成を行うと、メソポーラスシリカ薄膜の細孔内の界面活性剤が完全に酸化又は焼失されずにその界面活性剤の一部が細孔中に残り、また酸化途中のカルボニル基及び/又はベンゼン環を有する界面活性剤誘導体が生成すると、本発明者らは推察する。また、量子細線等を作製する際、このように界面活性剤及び/又は界面活性剤誘導体が薄膜の細孔中に存在することにより、薄膜が直接酸に曝され崩壊する割合が減少すると、本発明者らは推察する。このような焼成温度が前記下限値未満であると焼成が不十分となることから薄膜の結晶性が不十分となる傾向があり、他方、前記上限値を超えると耐酸性が低下する傾向にある。前記上限値を超えた場合に耐酸性が低下するのは、薄膜中の界面活性剤が焼成により完全に焼失し、量子細線等の作製の際に薄膜が酸に曝されることにより薄膜中の−Si−O−Si−結合が酸化され崩壊しやすくなるためであると、本発明者らは推察する。
【0064】
このような焼成時間は30分程度でもよいが、1時間以上加熱することが好ましい。上記焼成は空気中で行うことが可能であり、窒素等の不活性ガスを導入して行ってもよい。また、上記焼成は酸素濃度0.1%〜20%の酸素含有雰囲気で焼成することがより好ましい。このような条件で焼成を行うことによって、前記界面活性剤誘導体の生成量が更に増加し耐酸性がより向上すると、本発明者らは推察する。
【0065】
以上説明したように、本発明においては複合体形成工程における前記複合体を含む液体の酸の濃度及び酸の含有量を所定の範囲内とした結果、十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れたメソポーラスシリカ薄膜が得られた。したがって、本発明の製造方法により得られた高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜は様々な用途に利用可能である。例えば、界面活性剤が除去されたメソポーラスシリカ薄膜においては、その細孔配列の均一性を利用して、スイッチングデバイス、センサー、LSI用低誘電率層間絶縁膜形成のホスト材料、面状の触媒用担体、吸着剤、分離材等として使用でき、また、後述する量子ドット、量子細線形成のホスト材料として使用することができる。
【0066】
(クラスター包接薄膜)
本発明のクラスター包接薄膜は、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜と、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成されているクラスターと、を備えることを特徴とするものである。
【0067】
本発明においてクラスターとは、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔を鋳型として形成される原子集団であり、粒径の揃った粒子状クラスター(量子ドット)、直径の揃った細線状クラスター(量子細線、金属細線)がある。また、粒径の揃った粒子状クラスターが数珠状につながったクラスター(ネックレス状クラスター)を形成することもある。前記クラスターを構成する原子としては、金属原子であればよく、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、白金(Pt)及び金(Au)からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であることがより好ましく、貴金属原子であることが更に好ましい。
【0068】
本発明において、クラスターを形成させる際に用いる原料化合物としては特に制限されないが、例えば、上記の金属のクラスターを形成する場合には上記の金属の塩又は錯塩を用いることができる。より具体的には、白金のクラスターの原料化合物として、HPtCl、Pt(NO(NH、[Pt(NH]Cl、HPt(OH)、PtCl(NH、Pt(NHCl、Pt(NH(OH)、Pt(NH(OH)、KPtCl、PtCl、PtCl等が挙げられる。
【0069】
本発明の高結晶メソポーラスシリカ薄膜を用いたクラスター包接薄膜においては、大きさが均一でかつ配列が制御されたクラスターを得ることができる。特に、クラスターが原子数10〜100個の粒子状クラスター(量子箱)である場合には、1次元閉じ込めによる量子効果が良好に発揮されたクラスターとなる。また、直径1.3〜10nmである線状クラスター(量子細線)である場合には、2次元閉じ込めによる量子効果が良好に発揮されたクラスターとなる。
【0070】
(クラスター包接薄膜の製造方法)
本発明のクラスター包接薄膜の第一の製造方法は、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜を所定の金属塩を溶かした溶液に接触せしめ、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に所定の金属のイオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を飽和蒸気圧の1/20〜1/3の蒸気圧を有する還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなるクラスターを形成せしめる光還元工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0071】
先ず、金属イオン担持工程について説明する。メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に金属イオンを担持させる方法としては、上記のクラスターの原料化合物をメタノール、エタノール等のアルコール、水、ベンゼン等又はこれらの混合物に溶かし、その溶液(担持液)に本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜を含浸させるなどして、その溶液と薄膜とを接触させることにより、メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に所定の金属イオンを担持させることができる。また、金属イオンの細孔内への担持を促進させるために、薄膜を含浸させている溶液に超音波を印加することも可能である。また、このような方法の他に、固体状のクラスターの原料化合物と本発明のメソポーラスシリカ薄膜とを固相で混合し、密閉容器中で加熱した後、過剰の原料化合物を洗浄等により除去する方法、金属アルコキシド等の蒸気を発生するものや昇華しやすいものを原料に用い、それらの蒸気を本発明のメソポーラスシリカ薄膜と接触させることにより、その原料化合物をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入する方法も可能である。
【0072】
ここで金属イオンとは、原料化合物である金属の塩又は錯塩等が溶液中で解離したものであり、通常、電荷をもつ原子または原子の集団をいい、錯塩が解離すると錯イオンが生じる。また、通常、水溶液において金属イオンは、アクア錯体として存在する。また、担持液が薄膜に接触することにより薄膜の細孔内及び細孔外に付着し溶媒が蒸発又は揮発すると、金属イオンは原料化合物である金属の塩又は錯塩などの安定な状態で存在すると推察される。しかしながら、本発明の製造方法においては、それぞれの製造工程においてそれらの存在状態を明確に判断することが困難であるため、前記金属のイオン、錯イオン、塩及び錯塩などを総称して、金属イオンということとする。
【0073】
また、前記金属イオン担持工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の表面に前記細孔内と外部とを結ぶ新たな貫通孔を設ける孔形成工程、を更に含んでいてもよい。ここで貫通孔とは、細孔内と外部とを結ぶ穴又は切れ目等であればよく、その形状は特に制限されない。新たな貫通孔(開口部)を設ける方法としては特に制限はないが、例えば、メソポーラスシリカ薄膜の表面をカミソリ等で1mm又は0.5mm程度切れ目を入れるなどの方法が可能である。従来、金属塩を担持するメソポーラスシリカ(シリカ多孔体)は粉末状のものであり、その粒の表面が外部の空間に接する面積が大きく、シリカ多孔体の細孔が外部の空間に接する面積も広かった。しかし、本発明のメソポーラスシリカ薄膜は、その薄膜の一部が基板に接しているなど、細孔がその外部の空間に接する面積が小さい。このため、金属イオンを担持させる際に、前記金属イオンが細孔内に入りにくいことから、このように新たな貫通孔を設けることにより、多量の金属イオンを細孔内に担持させることが可能となる。
【0074】
更に、金属イオン担持工程の少なくとも前工程として、真空排気工程を設けることが好ましい。メソポーラスシリカ薄膜は、空気中に放置すると簡単に水を吸着する。特にヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ薄膜は極めて細長い孔を有しているので、一度水を物理吸着すると、細孔の奥にある水は簡単には外へ出られない。従って、薄膜の細孔内に水が吸着されている場合、金属イオン含有溶液が細孔内に入るのが困難となり、金属イオンが細孔内に担持されにくくなる傾向がある。
【0075】
次に、還元剤導入工程について説明する。本発明においては、還元剤の導入量をその還元剤の飽和蒸気圧の1/20〜1/3としたものであり、1/15〜1/5とすることがより好ましく、1/12〜1/8とすることが更に好ましい。このような還元剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールが挙げられ、この中では還元力が強いことからメタノールが好ましい。
【0076】
また、前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に水蒸気を導入する水蒸気導入工程、を更に含むことが好ましい。このような水蒸気導入工程を設けることにより、細孔外部にあった金属塩が水蒸気と共に細孔内部に導入されると本発明者らは推察する。このような水蒸気の導入量は、飽和蒸気圧まで導入すると細孔内部に導入された水蒸気が液体状になると考えられるため好ましくなく、飽和蒸気圧より低いことが好ましく、半分程度とすることがより好ましい。
【0077】
更に、還元剤導入工程の少なくとも前工程として、真空排気工程を設けることが好ましい。メソポーラスシリカ薄膜は、空気中に放置すると簡単に水を吸着する。特にヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカ薄膜は極めて細長い孔を有しているので、一度水を物理吸着すると、細孔の奥にある水は簡単には外へ出られない。このように細孔内に水が吸着され細孔内が濡れた状態になると、還元剤の導入量が減少し、後述の光還元工程において還元が不十分となる傾向がある。そこで、真空装置にメソポーラスシリカ薄膜を入れ真空排気することで、金属イオンの還元を確実に行うことが可能となる。
【0078】
上記還元剤および水の蒸気をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入する方法としては、まず、真空装置内にメソポーラスシリカ薄膜を入れ真空状態にする。そこに上記蒸気圧を有する還元剤および水の蒸気を液ため容器のニードルバルブで圧力をコントロールしながら導入することができる。このような真空装置としては、温度をコントロールできる装置がより好ましい。
【0079】
次に、光還元工程を説明する。光還元工程は、前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなるクラスターを形成せしめる工程である。光照射に用いる光は、特に限定されないが、紫外線であることが好ましい。このような光照射には、高圧水銀ランプ等を用いることができ、照射時間は金属イオンが還元されればよく、特に限定されない。
【0080】
以下、添付図面を参照しながら、クラスター形成の機構について説明する。図1(a)は基板上(2)に形成されたメソポーラスシリカ薄膜(3)の模式図であり、図1(b)、(c)、(d)は細孔(1)内で金属イオンが還元されクラスター(6)を形成する模式図である。例えば、前記金属塩として塩化白金酸を用いた場合、塩化白金酸の化学式はHPtClであり、水溶液中ではHと(PtCl2−のイオンに分かれている。この溶液にメソポーラスシリカ薄膜を含浸させる。その後、薄膜の細孔内にメタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコールを導入すると、カルボニル基が配位した中間体である金属カルボニル[Pt(CO) 2−となり、更に光照射によりカルボニル基がとれて、白金金属Pt(4)(5)に還元される。そして、先ず結晶の核(4)が発生し、続いて離散的な粒状のクラスター(5)が形成され、経時的に結晶が集合化して金属細線(6)の形状となる。このような還元のスピード及び集合化のスピードをコントロールすることにより、金属細線又は量子ドットに形状を制御することが可能である。
【0081】
本発明のクラスター包接薄膜の第二の製造方法は、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜と還元剤の蒸気とを接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤の蒸気を導入する還元剤導入工程と、前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に熱を加えて前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなるクラスターを形成せしめる熱還元工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0082】
本発明のクラスター包接薄膜の第二の製造方法における金属イオン担持工程は、前記第一の製造方法における金属イオン担持工程と同様の方法を用いることができる。
【0083】
次に、還元剤導入工程を説明する。このような還元剤導入工程は前記第一の製造方法における還元剤導入工程と同様の方法を用いることができる。ただし、還元剤の蒸気を導入する際の蒸気圧は、特に制限されず、任意の蒸気圧で行うことができる。しかしながら、前記第一の製造方法における還元剤導入工程と同様に、還元剤の導入量がその還元剤の飽和蒸気圧の1/20〜1/3とすることが好ましく、1/15〜1/5とすることがより好ましく、1/12〜1/8とすることがさらに好ましい。
【0084】
なお、本発明の第二製造方法の還元剤導入工程における還元剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド;ヒドラジン、ヒドロキシルアミン;ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアンモニウムなどのクエン酸塩、次亜りん酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、スルファニル酸塩;水素化硼素ナトリウム、水素化硼素カリウムなどのアルカリ金属硼化水素などから選ばれる少なくとも1種類以上の化合物が挙げられる。このような還元剤においては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールが好ましく、メタノールであることがより好ましい。
【0085】
このような還元剤において固体であるものは、メタノール、エタノール等のアルコール、水、ベンゼン等の有機溶媒又はこれらの混合物を溶媒として用いることにより溶液として用いることが可能であり、また、液体であるものはそのまま用いることも上記溶媒と混合して用いることも可能であり、このような還元剤の溶液の蒸気を還元剤蒸気として用いるものである。
【0086】
また、前記還元剤導入工程の少なくとも前工程として、更に前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内の水分を真空排気する真空排気工程を更に設けることが好ましい。このような真空排気工程を設ける趣旨は、前記第一の製造方法における真空排気工程と同様の趣旨である。
【0087】
また、前記還元剤導入工程の前には、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に水蒸気を導入する水蒸気導入工程を更に設けることが好ましい。このような水蒸気の導入量は、水蒸気の飽和蒸気圧であってもよく、また、第一の製造方法と同様の導入量であることが好ましい。このような還元剤および水の蒸気をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入する方法としては、前記第一の製造方法と同様に、真空装置を用いることが可能である。
【0088】
次に、熱還元工程を説明する。メソポーラスシリカ薄膜に熱を加える際の温度は、150〜800℃であり、200〜600℃であることが好ましい。このような温度が、前記下限値未満の場合は還元が不十分となる傾向があり、他方、前記上限値を超える場合は細孔が崩壊してきたり、いったん細孔内で形成された金属が細孔の外へでてきてしまう傾向がある。また、このような温度にするためには、還元剤導入工程で用いた真空装置をヒータ等により加熱することにより行うことができる。さらに、この熱還元工程においては、還元剤の導入を続けながら行うこともできる。このような場合は、温度の上昇に伴い飽和蒸気圧も上昇するので、前記真空ポンプで圧力をコントロールすることが好ましい。
【0089】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0090】
実施例1
(複合体を含む液体の調製)
テトラメトキシシラン(Si(OCH、以下「TMOS」という)15.22g(0.10mol)にHCl水溶液(a)4.1mlを静かに添加し、マグネチック・スターラ(回転速度200rpm/min)を用いて1時間攪拌することによりTMOS部分重合体を含む溶液を得た。次に、界面活性剤である塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム(以下、「C18TMACl」という)3.41g(0.010mol)及びHO10mlを、マグネチック・スターラで攪拌しながら50℃に加温し、C18TMAClを溶解させた。その後、室温まで自然に冷まし、HCl水溶液(b)100μlを更に加え、混合することにより界面活性剤溶液を得た。
【0091】
上記TMOS部分重合体を含む溶液に界面活性剤溶液を加えて20分間攪拌した。その後、HO/EtOH=20ml/20ml混合溶媒を加え、マグネチック・スターラの回転速度を300rpm/minに上昇させて20分間攪拌することにより、テトラメトキシシランと界面活性剤とからなる複合体を含む溶液(以下「TMOS複合体溶液」という)を調整した。なお、このときのTMOS複合体溶液に含まれる酸の含有量は、2.54×10−4molであり、また濃度は0.0030eq/lであった。また、HCl水溶液(a)はHO30mlに対して2規定のHCl水溶液を200μl加えることにより調製し、HCl水溶液(b)は2規定のHCl水溶液を用いた。
【0092】
(薄膜の形成)
基板引き上げ装置(SIGMA社製;SG SP 26−100)をビニールBOX内に設置し、ディップコーティング法で行った。前記装置を用いて基板をTMOS複合体溶液中へ20mm/minの速度で浸漬し、溶液内で30秒静置した後20mm/minの速度で引き上げた。基板には、希フッ酸(HF:HO=1:50)で表面処理を行ったシリコンウェハ(2cm×5cm)を用いた。なお、この薄膜形成工程の相対湿度は30%に固定して行った。次に、TMOS複合体溶液が付着した基板を室温で24時間風乾し、100℃で1時間乾燥した。その後、400℃、1リットル/min大気流通下で4時間焼成することにより、膜厚が0.4μmのメソポーラスシリカ薄膜を得た。
【0093】
(メソポーラスシリカ薄膜の結晶性の評価)
このようにして得られたメソポーラスシリカ薄膜の結晶性は、X線回折測定を用いてメソポーラスシリカ薄膜の(100)面を示すピークの強度及び半値幅を測定することにより評価した。なお、測定装置にリガク社製RAD−Bを用い、線源はCuKα、X線管電圧30kV、X線管電流20mA、DS 0.5、SS 0.5、RS 0.3の条件で測定した。その結果、(100)面、(200)面を示すピークが観察された。酸の含有量と(100)面を示すピークの強度、半値幅の関係を図2、3に示す。また、酸の濃度と(100)面を示すピークの強度、半値幅の関係を図4、5に示す。
【0094】
実施例2〜3及び比較例1〜6
実施例1において、HCl水溶液(a)のHO30mlに対して加える2規定のHCl水溶液の量((a)添加量)、TMOS複合体溶液に含まれる酸の含有量及びTMOS複合体溶液の酸の濃度をそれぞれ表1に示す量とした以外は、実施例1と同様の方法によりメソポーラスシリカ薄膜を得た。また、以上の方法により得られたメソポーラスシリカ薄膜の結晶性は、実施例1と同様に、X線回折測定を用いてメソポーラスシリカ薄膜の(100)面を示すピークの強度及び半値幅を測定することにより評価した。酸の含有量と(100)面のピーク強度、半値幅の関係を図2、3に示す。また、酸の濃度と(100)面のピーク強度、半値幅の関係を図4、5に示す。
【0095】
【表1】
Figure 2004099381
【0096】
比較例7
実施例1において、HCl水溶液(a)4.1mlを水4mlに2規定のHCl水溶液100μlを加えることにより調製した以外は、実施例1と同様の方法によりメソポーラスシリカ薄膜を得た。このときの酸の含有量は、シリコンアルコキシド0.1molに対して4.00×10−4molであった。このようにして得られたメソポーラスシリカ薄膜の結晶性は、実施例1と同様に、X線回折測定を用いてメソポーラスシリカ薄膜の(100)面を示すピークの強度及び半値幅を測定することにより評価した。その結果、この薄膜のピークの強度は約43000cpsであり、半値幅は0.23°であり、結晶性が不十分であることが確認された。
【0097】
図2及び3に示す結果から、(100)面のピークの強度は酸の含有量2.54×10−4mol付近を頂点とした上に凸の曲線を、半値幅は酸の含有量2.54×10−4mol付近を谷とした下に凸の曲線描いていることが確認された。また、図4及び5に示す結果から、(100)面のピークの強度は酸の濃度0.0030eq/l付近を頂点とした上に凸の曲線を、半値幅は酸の濃度0.0030eq/l付近を谷とした下に凸の曲線描いていることが確認された。
【0098】
この結果から、メソポーラスシリカ薄膜の製造方法の複合体形成工程において、複合体を含む液体の酸の濃度が0.0028〜0.0045eq/lであり、かつ酸の含有量が2.3×10−4〜3.8×10−4molであると(100)面を示すピークの強度が50000以上であり、半値幅が0.21°以下である十分な結晶性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れたメソポーラスシリカ薄膜が得られることが確認された。
【0099】
実施例4〜12
(薄膜形成工程における湿度の影響)
実施例1と同様の方法を用いて、TMOS複合体溶液の酸の含有量がシリコンアルコキシド0.1molに対して2.54×10−4molとなるように、TMOS複合体溶液を調製した。なお、このTMOS複合体溶液の濃度は、0.0030eq/lであった。その後、この溶液を用い、薄膜形成工程における引上げ時の相対湿度を表2に示す相対湿度に設定し、実施例4〜12のメソポーラスシリカ薄膜を作製した。このようにして得られたメソポーラスシリカ薄膜の結晶性は、実施例1と同様に、X線回折測定を用いてメソポーラスシリカ薄膜の(100)面を示すピークの強度及び半値幅を測定することにより評価した。薄膜形成工程における相対湿度と(100)面を示すピークの強度の関係を図6に示す。なお、測定装置にはリガク製RINT−2000を用い、線源はCuKα、X線管電圧25kV、X線管電流30mA、DS 0.5、SS 0.5、RS 0.3の条件で測定した。得られた結果は、図6に示す。
【0100】
【表2】
Figure 2004099381
【0101】
X線回折測定の結果、すべてのメソポーラスシリカ薄膜に(100)面及び(200)面を示すピークが観察された。図6に示す結果から、(100)面を示すピークの強度の値は相対湿度の上昇に伴い高くなり、50%以上ではほぼ同等であることが確認された。このときの半値幅は全て0.195°であった。以上の結果から、薄膜形成工程における相対湿度が50%以上の場合には、特に結晶性の高いメソポーラスシリカ薄膜が得られることが確認された。
【0102】
実施例13〜17及び比較例8〜10
(メソポーラスシリカ薄膜の細孔内における界面活性剤誘導体の残存評価)
実施例1と同様の方法を用いて、TMOS複合体溶液の酸の含有量がシリコンアルコキシド0.1molに対して2.54×10−4molとなるように、TMOS複合体溶液を調製した。なお、このTMOS複合体溶液の濃度は、0.0030eq/lであった。この溶液を用い、実施例1と同様の方法を用いて薄膜形成工程における引上げ時の相対湿度を70%に、焼成温度を表3に示す温度に設定し、実施例13〜17及び比較例8〜9のメソポーラスシリカ薄膜を得た。
【0103】
また、上記実施例13において、薄膜形成工程における引上げ時の相対湿度を70%に設定し基板にTMOS複合体溶液を付着せしめた後、室温で24時間風乾し、100℃で1時間乾燥し、焼成しなかった比較例10のメソポーラスシリカ薄膜も作製した。
【0104】
【表3】
Figure 2004099381
【0105】
得られた実施例13〜17及び比較例8〜10のメソポーラスシリカ薄膜を安全剃刀で掻き取り、粉末状とし、界面活性剤残存物量を調べるために、色の違いを観察した。また、焼成温度が400、550、700℃である実施例15〜16及び比較例9から得られた粉末及び焼成せずに乾燥しただけの比較例10から得られた粉末状のメソポーラスシリカ薄膜のIR測定をAvatar360(Thermo Nicolet社製)を用いて行った。
【0106】
IR測定の結果、比較例10からは界面活性剤由来の炭化水素に帰属するピークおよびアミンに帰属するピークが確認された。また、550℃以上で焼成した実施例16及び比較例9からはどちらのピークも確認されなかった。また、400℃で焼成した実施例15からはカルボニル基C=O(1750cm−1)、ベンゼン環(1600cm−1)に由来するピークが確認されたが、実施例16及び比較例9のメソポーラスシリカ薄膜からは確認されなかった。図7(a)、(b)、(c)に実施例15〜16及び比較例9のIRスペクトルから焼成せずに乾燥させただけの比較例10のIRスペクトルを引いた差スペクトルを示す。この結果から、図7(a)に示すように400℃で焼成した実施例15では、細孔内の界面活性剤が酸化しきれずに酸化途中の物質であるC=O及び/又はベンゼン環含有物質(界面活性剤誘導体)が生成していることが確認された。550℃以上で焼成した実施例16及び比較例9では、図7(b)、(c)に示すようにIR測定で検出されるほどの界面活性剤誘導体が残存していないと推察される。
【0107】
粉末の色は、比較例10は白色、実施例13〜17は茶褐色〜黄色(温度が上昇するのに従って黄色く淡色化)、比較例8〜9は白色であった。焼成を行ったメソポーラスシリカ薄膜のうち茶褐色〜黄色に着色して見えるのは、界面活性剤が完全焼失できずにC=O及び/又はベンゼン環含有物質等となった界面活性剤誘導体が残存しているためであり、白色であるものは界面活性剤が完全焼失したためであると本発明者らは推察する。以上の結果から、焼成温度が300〜600℃ではC=O及び/又はベンゼン環含有物質である界面活性剤誘導体を細孔内に残存していることが確認された。
【0108】
実施例18〜19及び比較例11
(メソポーラスシリカ薄膜の耐酸性の評価)
実施例1と同様の方法を用いて、TMOS複合体溶液の酸の含有量がシリコンアルコキシド0.1molに対して2.54×10−4molとなるように、TMOS複合体溶液を調製した。なお、このTMOS複合体溶液の濃度は、0.0030eq/lであった。次に、この溶液を用い、薄膜形成工程における相対湿度を表3に示す相対湿度に設定し、実施例1と同様の方法を用いて基板にTMOS複合体溶液を付着せしめた。次に、TMOS複合体溶液が付着した基板を室温で24時間風乾し、100℃で1時間乾燥した。その後、400℃で1リットル/min大気流通下、4時間焼成することにより、実施例18及び実施例19のメソポーラスシリカ薄膜を得た。
【0109】
また、比較例7と同様の方法を用いて、TMOS複合体溶液の酸の含有量がシリコンアルコキシド0.1molに対して4.0×10−4molとなるように、TMOS複合体溶液を調製した。その後、この溶液を用い、薄膜形成工程における引上げ時の相対湿度を表4に示す相対湿度に設定し、実施例18と同様の方法を用いて比較例11のメソポーラスシリカ薄膜を得た。
【0110】
(耐酸性試験)
先ず、得られたメソポーラスシリカ薄膜をX線回折測定により、メソポーラスシリカ薄膜の(100)面を示すピークの初期強度(I)を測定した。測定結果は表3に示す。測定装置にリガク製RINT−2000を用い、線源CuKα、電圧40kV、電流30mA、DS 0.5、SS 0.5、RS 0.3の条件で測定した。
【0111】
次に、X線回折測定を行ったメソポーラスシリカ薄膜の表面に安全剃刀で約0.5mm間隔の傷をつけることにより細孔に新たな貫通孔を設け、このメソポーラスシリカ薄膜を真空ポンプ(真空機工製;GVD−050A)を備えた真空装置に入れて室温で24時間真空乾燥させた。十分に乾燥したメソポーラスシリカ薄膜をPt溶液(酸性)中に含浸して超音波洗浄器(エスエヌディ製;US−1)中に10分間置くことで超音波を印加し、その後24時間Pt溶液に含浸させた。なお、Pt溶液とは、15wt%塩化白金酸(HPtCl)水溶液と水とエタノールを体積比1:2:2で混合したpH0.6の溶液である。その後、メソポーラスシリカ薄膜を真空装置に入れて室温で24時間真空乾燥させた。
【0112】
以上のように酸性溶液に含浸させたメソポーラスシリカ薄膜の(100)面のピークの強度(I)を含浸前のX線回折測定と同様の条件で行った。以上のX線回折測定のデータから減少率(1−(I/I)×100)を求めた。以上の結果を表4に示す。
【0113】
【表4】
Figure 2004099381
【0114】
表4に示す結果から、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の製造方法において、複合体形成工程における複合体を含む液体の酸の濃度が0.00057〜0.0086eq/lであり、かつ酸の含有量が2.3×10−4〜3.8×10−4molであり、更に薄膜形成工程における焼成温度が300℃〜600℃であると、前記初期強度(I)の測定値が高く、耐酸性試験後における強度の減少率が90%以下である十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れたメソポーラスシリカ薄膜が得られることが確認された。また、湿度を高くすると更に減少率が低下して効果が大きくなることが確認された。
【0115】
実施例20〜22及び比較例12〜13
(メソポーラスシリカ薄膜の耐酸性の評価)
実施例1と同様の方法を用いて、TMOS複合体溶液の酸の含有量がシリコンアルコキシド0.1molに対して2.54×10−4molとなるように、TMOS複合体溶液を調製した。なお、このTMOS複合体溶液の濃度は、0.0030eq/lであった。次に、この溶液を用い、薄膜形成工程における相対湿度を70%に設定し、実施例1と同様の方法を用いて基板にTMOS複合体溶液を付着せしめた。このTMOS複合体溶液が付着した基板を室温で24時間風乾し、100℃で1時間乾燥した。その後、表5に示す温度で1リットル/min大気流通下で4時間焼成することにより、実施例20〜22及び比較例12〜13のメソポーラスシリカ薄膜を得た。
【0116】
(耐酸性試験)
実施例18と同様の方法を用いて、得られたメソポーラスシリカ薄膜の耐酸性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0117】
【表5】
Figure 2004099381
【0118】
表5に示す結果から、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の製造方法において、複合体形成工程における複合体を含む液体の酸の濃度が0.00057〜0.0086eq/lであり、かつ酸の含有量が2.3×10−4〜3.8×10−4molであり、更に薄膜形成工程における焼成温度が300℃〜600℃であると、初期強度(I)の測定値が高く、耐酸性試験後における強度の減少率が90%以下である十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れた本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜が得られることが確認された。また、400℃で焼成を行ったメソポーラスシリカ薄膜においては、耐酸性に特に優れることが確認された。
【0119】
実施例23
(第一の製造方法を用いたクラスター包接薄膜の作製)
実施例1と同様の方法により得られたメソポーラスシリカ薄膜にフェザー安全カミソリを用いて配向面に対し斜めに1mm間隔程度で新たな貫通孔を設けた。その後温度を制御できる真空装置(実施例18における真空装置と同様の装置)にメソポーラスシリカ薄膜を入れ、24時間真空排気した。担持液として約1wt%HPtCl溶液を15wt%HPtCl5cc、水10cc、エタノール10ccを混合することにより調製し、この溶液に真空排気したメソポーラスシリカ薄膜を入れ、超音波洗浄機(実施例18における装置と同様の装置)中で超音波分散を10分間行い、そのまま24時間含浸させた。メソポーラスシリカ薄膜を引き上げ、再度真空装置に薄膜を入れ、24時間真空排気した。その後、温度を25℃に設定し、真空装置内に蒸気圧10Torr水蒸気を導入することにより、蒸気圧10Torr水蒸気に薄膜を10分間曝し、同様にして蒸気圧10Torrのメタノール(還元剤)の蒸気に薄膜を10分間曝すことにより、還元剤をメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に導入した。
【0120】
(光還元によるクラスターの形成)
還元剤が導入された薄膜に超高圧水銀ランプ(ウシオ電機製、品番UXM−500SX)を用いて、紫外線(波長365nm、光強度13mW/cm)を72時間照射しPt4+をPtの金属に還元した。なお、この超高圧水銀ランプは、水銀共鳴線の波長436nm、405nm、365nmの3波を強く放射し、特に365nmが強かった。入力は5kW(電流70A、電圧70V)、ランプより1mでの光の強度は1420μW/cm(波長:360−370nm)であり、レンズで集光して一方向へのみ光を取り出す絞り機構がある。光パワーメータでの測定では、波長360nmの絞り開放で13mW/cm、1段絞りで3.513mW/cm、2段絞りで0.813mW/cmであった。
【0121】
以上の結果、図8の透過型電子顕微鏡(TEM)写真に示すように、メソポーラスシリカ薄膜の周期構造(3nm)の細孔内に白金金属(平均直径3nm)が極めて高分散、高密度で存在しており、長さ100nmに達するドット状の粒子が数珠状につながった金属細線(ネックレス状クラスター)の形成が確認された。
【0122】
実施例24
実施例23において、メタノール(還元剤)の蒸気圧を33Torr(飽和蒸気圧の1/3)にしたこと以外は、実施例23と同様の方法によりクラスターを形成させた。その結果、図9のTEM写真に示すように、実施例23と同様にメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に白金金属(平均直径3nm)が極めて高分散、高密度で存在するドット状の粒子が数珠状につながった金属細線(ネックレス状クラスター)の形成が確認された。
【0123】
比較例14
実施例23において、メタノールの蒸気圧を100Torr(飽和蒸気圧)にしたこと以外は、実施例24と同様の方法によりクラスターを形成させた。その結果、図10のTEM写真のように、メソポーラスシリカ薄膜の細孔内にまばらにしか白金粒子が析出していないことが確認された。
【0124】
実施例25〜30
(第二の製造方法を用いたクラスター包接薄膜の作製)
実施例1と同様の方法により得られたメソポーラスシリカ薄膜に安全カミソリを用いて配向面に対し斜めに1mm間隔程度で新たな貫通孔を設けた。その後温度を制御できる真空装置(実施例18と同様の装置)にメソポーラスシリカ薄膜を入れ、24時間真空排気した。担持液は、表6に示す原料化合物及び溶媒を重量比(wt%)、体積比(Vol比)で混合することにより調製し、この溶液に真空排気したメソポーラスシリカ薄膜を入れ、実施例23と同様に超音波分散を10分間行い、そのまま24時間含浸させた。メソポーラスシリカ薄膜を引き上げ、再度真空装置に薄膜を入れ、24時間真空排気した。その後、温度を25℃に設定し、真空装置内に蒸気圧10Torr水蒸気を導入することにより、蒸気圧10Torr水蒸気に薄膜を10分間曝し、同様にして表6に示す蒸気圧のメタノール(還元剤)の蒸気に薄膜を10分間曝すことにより、還元剤を薄膜の細孔内に導入した。
【0125】
(熱還元によるクラスターの形成)
還元剤が導入されたメソポーラスシリカ薄膜が入っている真空装置をヒータをPIDコントローラで制御し表6に示す温度になるように2時間で昇温し、その温度で表6に示す時間だけ熱を加え、25℃まで2時間かけて真空装置を冷ました。このような方法により、実施例25〜30のクラスター包接薄膜を得た。また、これらのTEM写真を図11〜14に示した。
【0126】
図11は、金で構成されたクラスターを有する実施例25のTEM写真である。長さ200nm以上、平均直径6.5nmの滑らかな金属細線がメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成していることが確認された。図12、図13に関しても、実施例26、27の銀、ニッケルで構成された細線状クラスターが形成され、図11と同様の金属細線がメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成していることが確認された。
【0127】
図14は、銅で構成されたクラスターを有する実施例28のTEM写真である。長さ100nm以上、平均直径6.5nmの滑らかな金属細線が形成していることが確認された。また、実施例29、30の鉄、コバルトからなるドット状クラスターがメソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成していることも確認された。
【0128】
図15〜17に実施例25、26、28により得られたクラスター包接薄膜のX線回折スペクトルを示す。横軸が2θで、縦軸が強度である。それぞれのスペクトルに金、銀、銅の単結晶を示すピークが確認された。測定装置はリガク社製、RAD−Bを用い、線源CuKα、電圧30kV、電流20mA、DS 1.0、SS 1.0、RS 0.3の条件で測定した。
【0129】
【表6】
Figure 2004099381
【0130】
以上の結果より、本発明の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜を用いることにより、均一な太さの金属細線を同一方向にかつ等間隔に作製することができることが確認された。
【0131】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば十分な耐酸性を有し、細孔の表面の平滑性及び細孔の配向性に優れたメソポーラスシリカ薄膜が得られる。さらに、そのメソポーラスシリカ薄膜を用いてクラスター包接薄膜を作製すると、均一な太さの金属細線を同一方向にかつ等間隔に作製することができ、量子細線の両端に電極をつけることで使用する量子素子等への応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は基板上2に形成されたメソポーラスシリカ薄膜3の模式図であり、(b)、(c)、(d)はそれぞれ細孔1内で金属イオンが還元されクラスター6を形成する諸工程を示す模式図である。
【図2】実施例1〜3及び比較例1〜6で得られたメソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定における(100)面を示すピークの強度と酸の含有量との関係を示すグラフである。
【図3】実施例1〜3及び比較例1〜6で得られたメソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定における(100)面を示すピークの半値幅と酸の含有量との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1〜3及び比較例1〜6で得られたメソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定における(100)面を示すピークの強度と酸の濃度との関係を示すグラフである。
【図5】実施例1〜3及び比較例1〜6で得られたメソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定における(100)面を示すピークの半値幅と酸の濃度との関係を示すグラフである。
【図6】実施例4〜12で得られたメソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定における(100)面を示すピークの強度と相対湿度(湿度)との関係を示すグラフである。
【図7】実施例15〜16及び比較例9で得られたメソポーラスシリカ薄膜のIRの差スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例23で得られたクラスター包接薄膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率40万倍)を示す図である。
【図9】実施例24で得られたクラスター包接薄膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率25万倍)を示す図である。
【図10】比較例14で得られたクラスター包接薄膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を示す図である。
【図11】実施例25で得られたクラスター包接薄膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を示す図である。
【図12】実施例26で得られたクラスター包接薄膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率15万倍)を示す図である。
【図13】実施例27で得られたクラスター包接薄膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率7万3千倍)を示す図である。
【図14】実施例28で得られたクラスター包接薄膜の走査型電子顕微鏡写真(倍率7万3千倍)を示す図である。
【図15】実施例25で得られたクラスター包接薄膜のX線回折スペクトルを示す図である。
【図16】実施例26で得られたクラスター包接薄膜のX線回折スペクトルを示す図である。
【図17】実施例28で得られたクラスター包接薄膜のX線回折スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
1・・・細孔、2・・・基板、3・・・メソポーラスシリカ薄膜、4・・・結晶の核、5・・・粒状クラスター、6・・・金属細線

Claims (13)

  1. 膜厚が1μm以下であり、かつ中心細孔直径が1〜50nmであるメソポーラスシリカ薄膜であって、
    前記メソポーラスシリカ薄膜のX線回折測定における(100)面を示すピークの初期強度(I)と、前記メソポーラスシリカ薄膜を酸性溶液(15wt%塩化白金酸(HPtCl)水溶液と水とエタノールを体積比1:2:2で混合したpH0.6である酸性溶液)に24時間含浸させる耐酸性試験後の前記ピークの強度(I)とが以下の関係式(1):
    (1−(I/I))×100≦90      (1)
    を満たすものであることを特徴とする高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜。
  2. シリコンアルコキシドを酸性溶媒中で反応せしめシリコンアルコキシド部分重合体を含む液体を得る部分重合工程と、
    前記シリコンアルコキシド部分重合体と界面活性剤とを接触せしめ、前記シリコンアルコキシド部分重合体と前記界面活性剤とからなる複合体を形成せしめる複合体形成工程と、
    前記複合体を含む液体を薄膜化し、乾燥した後に300〜600℃で焼成することによりメソポーラスシリカ薄膜を形成せしめる薄膜形成工程と、
    を含むメソポーラスシリカ薄膜の製造方法であって、
    前記複合体形成工程における前記複合体を含む液体の酸の濃度が0.00057〜0.0086eq/lであり、かつ前記複合体を含む液体中の酸の含有量がシリコンアルコキシド0.1molに対して2.3×10−4〜3.8×10−4molであることを特徴とする高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の製造方法。
  3. 前記薄膜形成工程において、前記複合体を含む液体を薄膜化する際の相対湿度が50%以上であることを特徴とする、請求項2に記載の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の製造方法。
  4. 請求項1に記載の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜と、
    前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に形成されているクラスターと、を備えることを特徴とするクラスター包接薄膜。
  5. 前記クラスターを構成する原子が、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、銀、白金及び金からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属であることを特徴とする、請求項4に記載のクラスター包接薄膜。
  6. 請求項1に記載の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、
    前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜を飽和蒸気圧の1/20〜1/3の蒸気圧を有する還元剤の蒸気に接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、
    前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に光を照射して前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなるクラスターを形成せしめる光還元工程と、
    を含むことを特徴とするクラスター包接薄膜の製造方法。
  7. 前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内の水分を真空排気する真空排気工程、
    を更に含むことを特徴とする、請求項6に記載のクラスター包接薄膜の製造方法。
  8. 前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に水蒸気を導入する水蒸気導入工程、
    を更に含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載のクラスター包接薄膜の製造方法。
  9. 前記金属イオン担持工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の表面に前記細孔内と外部とを結ぶ新たな貫通孔を設ける孔形成工程、
    を更に含むことを特徴とする、請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載のクラスター包接薄膜の製造方法。
  10. 請求項1に記載の高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜と所定の金属のイオンを含有する溶液とを接触せしめ、前記高耐酸性メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属イオンを担持せしめる金属イオン担持工程と、
    前記金属イオン担持工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜と還元剤の蒸気とを接触せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記還元剤蒸気を導入する還元剤導入工程と、
    前記還元剤導入工程から得られたメソポーラスシリカ薄膜に熱を加えて前記金属イオンを還元せしめ、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に前記金属からなるクラスターを形成せしめる熱還元工程と、
    を含むことを特徴とするクラスター包接薄膜の製造方法。
  11. 前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内の水分を真空排気する真空排気工程、
    を更に含むことを特徴とする、請求項10に記載のクラスター包接薄膜の製造方法。
  12. 前記還元剤導入工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の細孔内に水蒸気を導入する水蒸気導入工程、
    を更に含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載のクラスター包接薄膜の製造方法。
  13. 前記金属イオン担持工程の前に、前記メソポーラスシリカ薄膜の表面に前記細孔内と外部とを結ぶ新たな貫通孔を設ける孔形成工程、
    を更に含むことを特徴とする、請求項10〜12のうちのいずれか一項に記載のクラスター包接薄膜の製造方法。
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JP2006257465A (ja) * 2005-03-15 2006-09-28 Ulvac Japan Ltd 金属微粒子及びその作製方法
JP2008150696A (ja) * 2006-12-20 2008-07-03 Toyota Central R&D Labs Inc 磁性材料及び磁性材料の製造方法
JP2013532054A (ja) * 2010-05-21 2013-08-15 ブロゼル,エイドリアン 自己集合界面活性剤構造

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