JP2004082775A - 空気入りタイヤ - Google Patents

Abstract

【課題】電磁波により通信する送信機などの電子装置を金属強化層よりタイヤ内側に備えた空気入りタイヤにおいて、耐久性を低下させることなく金属強化層による通信障害を改善することが可能な空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】サイドウォール部２に配設されたスチールコードを有するカーカス層４よりタイヤ内側に、電磁波により通信するアンテナ１２を有する送信機１１を配置した空気入りタイヤにおいて、カーカス層４よりタイヤ外側でかつアンテナ１１の近傍に、アンテナ１１から発信される電磁波を受信機に誘導するための誘導アンテナ２０を設置する。
【選択図】図１

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、耐久性を低下させることなく金属強化層による通信障害を改善するようにした空気入りタイヤに関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、車両の走行安全性を高めるため、空気入りタイヤの空気圧が減少した際にそれをドライバーに知らせる低空気圧警報装置が種々提案されている。これらの警報装置は、一般に、タイヤ内の空気圧低下を検出するセンサを空気入りタイヤの内面に取り付け、該センサによりタイヤ内の空気圧低下が検知されると、センサに接続されたタイヤ内の送信機が運転席に設置された受信機に検知信号を送信し、該受信機に接続された警報手段が警報を発してドライバーに知らせるようになっている。
【０００３】
しかしながら、上述した警報装置は、配列したスチールコードをゴム被覆してなるカーカス層や補強層などの金属強化層を有する空気入りタイヤに使用すると、金属強化層が障害となって、送信機のアンテナから送信された電磁波の強度が受信機での受信時に大きく低下する。また、受信周波数がしばしばシフトするため、受信機の受信周波数調整が必要になるという問題があった。
【０００４】
そこで、従来、上記対策として、タイヤ内に連通した耐圧ホースなどの配管類をタイヤ外側に引き出し、その配管の金属強化層の影響を受けない部分に送信機とセンサを収容するようにした技術が提案されている。このように送信機を金属強化層の影響を受けない部分に配置することで、金属強化層による通信障害を回避するようにしている。しかし、このような配管類をタイヤに取り付けると、その取り付け箇所における耐久性の低下が避けられない。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電磁波により通信する送信機などの電子装置を金属強化層よりタイヤ内側に備えた空気入りタイヤにおいて、耐久性を低下させることなく金属強化層による通信障害を改善することが可能な空気入りタイヤを提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、サイドウォール部に配設された金属強化層よりタイヤ内側に、電磁波により通信するアンテナを有する電子装置を配置した空気入りタイヤにおいて、前記金属強化層よりタイヤ外側でかつ前記電子装置のアンテナ近傍に、該アンテナから発信される電磁波を誘導する誘導アンテナを設置したことを特徴とする。
【０００７】
このように金属強化層よりタイヤ外側にアンテナに近接して誘導アンテナを配置するため、アンテナからの電磁波信号が誘導アンテナを中継して送信されるようになる。そのため、従来の誘導アンテナがない場合よりも、受信機で受け取る電磁波信号の強度を高くすることができ、かつ受信周波数のシフト防止も可能になるので受信機において受信周波数調整を行う必要がない。
【０００８】
また、誘導アンテナを設置するだけでよいため、従来の配管類をタイヤ外側に引き出す構成に起因する耐久性の悪化を招くようなことがない。従って、耐久性を低下させることなく、金属強化層による通信障害の改善が可能になる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【００１０】
図１は本発明の空気入りタイヤの一例で、トラックやバスなどの重荷重車両に使用される重荷重用空気入りタイヤを示しており、１はトレッド部、２はサイドウォール部、３はビード部、ＣＬはタイヤセンターラインである。
【００１１】
タイヤ内側に左右のビード部３間にカーカス層４が装架され、その両端部４ａがビードコア５の周りにビードフィラー６を挟み込むようにしてタイヤ内側から外側に折り返されている。カーカス層４は、タイヤ幅方向に延在するスチールコードを引き揃えてゴム被覆した構造になっている。トレッド部１のカーカス層４外周側には複数のベルト層７が配置され、カーカス層４の内側にはインナーライナー層８が設けられている。
【００１２】
サイドウォール部２のインナーライナー層８の内側面（タイヤ内面）８ａには、低空気圧警報装置１０が取り付けられている。低空気圧警報装置１０は、電磁波により通信するアンテナ１２を有する送信機１１、タイヤ内圧を検出するセンサ１３、及び送信機１１からの信号を受信する受信機（不図示）とランプなどの警報手段（不図示）を備えている。送信機１１が内側面８ａに固設され、センサ１３が送信機１１に取り付けられている。受信機及び警報手段は、運転席に設置されるようになっている。
【００１３】
アンテナ１２は、図２に示すように、コイル状に巻回した形状で、インナーライナー層（タイヤ構成部材）８の内側面８ａ上に導電性インクにより印刷形成してあり、コイル状の電界型アンテナになっている。センサ１３がタイヤ内の圧力が所定レベルより低くなったのを検知すると、送信機１１がオンになり、送信機１１に接続されたアンテナ１２から電磁波の信号が送信されるようになっている。
【００１４】
サイドウォール部２のカーカス層４よりタイヤ外側のゴム部（タイヤ構成部材）外側面（タイヤ外面）２ａには、アンテナ１２と対向する近傍位置に、アンテナ１２から発信された電磁波の信号を受信機に誘導するための誘導アンテナ２０が設けられている。この誘導アンテナ２０も、図２に示すように、コイル状に巻回した形状で、ゴム部外側面２ａ上に導電性インクにより印刷形成されており、アンテナ１２と同様に、コイル状の電界型アンテナにしてある。誘導アンテナ２０は、アンテナ１２と共振周波数及び巻き方向を同一にしてあり、アンテナ１２から発信された電磁波の信号を受信し、その信号を低空気圧警報装置１０の受信機に送信するようになっている。
【００１５】
上述した構成の空気入りタイヤによれば、タイヤの内圧が所定レベルより低くなったのをセンサ１３が検知すると、オンになった送信機１１のアンテナ１２に電流が流れ、それにより生じた誘導起電力により誘導アンテナ２０がアンテナ１２から電磁波の信号を受信する。誘導アンテナ２０は、その信号を受け取ると低空気圧警報装置１０の受信機に電磁波の信号を送信し、警報手段がドライバーに警報を出す。
【００１６】
スチールコードを配列したカーカス層４よりタイヤ外側でアンテナ１２の近傍に誘導アンテナ２０を設置し、アンテナ１２からの電磁波の信号を誘導アンテナ２０を中継して低空気圧警報装置１０の受信機に送信するため、従来のような直接送信する場合に比べて、受信機で受信する際の電磁波の強度を高めることができる。また、受信周波数のシフトを防ぐことができるので、受信機の受信周波数調整が不要になる。
【００１７】
しかも、誘導アンテナ２０を設置するだけでよいため、従来の配管類をタイヤ外側に引き出す構成を採用した際に起こる耐久性の問題が生じることもない。従って、耐久性を低下させることなく、スチールコードを用いたカーカス層４による通信障害を改善することができる。
【００１８】
図３は、本発明の空気入りタイヤの他の例を示す。この実施形態では、上述した低空気圧警報装置１０に代えて、サイドウォール部２のインナーライナー層８とカーカス層４との間にトランスポンダ３０を設置したものである。
【００１９】
トランスポンダ３０は、図４に示すように、フィルム基材３１上にタイヤ情報を格納する集積回路３２とこれに接続されたコイル状のアンテナ３３を有する構成になっており、アンテナ３３は導電性インクによりフィルム基材３１上に印刷形成されている。上述した誘導アンテナ２０が、上記と同様にして、アンテナ３３と対向する近傍位置で、カーカス層４のタイヤ外側なるタイヤ外面２ａに設けられている。
【００２０】
トランスポンダ３０の読取り／書込み器（不図示）により、アンテナ３３及び誘導アンテナ２０を介して、集積回路３２に格納されたタイヤ情報を読み取り、また集積回路３２に新たな情報を書き込みできるようになっている。このようなトランスポンダ３０をカーカス層４よりタイヤ内側に設けた場合にも、誘導アンテナ２０を設置することにより上記と同様の効果を得ることができる。なお、トランスポンダ３０は、コイル状に巻回したアンテナと情報を格納する集積回路とを円筒状のガラス保護容器内に収容したものを使用してもよい。
【００２１】
本発明において、アンテナ１２，２０，３３は、上述したようにコイル状に形成するのが好ましが、高い周波数の使用により通信可能であれば、直線状やコイル状以外のパターンをもつアンテナであってもよい。
【００２２】
誘導アンテナ２０は、上記実施形態では、サイドウォール部２のゴム部外側面２ａに設けたが、カーカス層４よりタイヤ外側であればよく、サイドウォール部２内に埋設配置することもできる。また、誘導アンテナ２０は、上述したようにタイヤ構成部材に直接導電性インクで印刷するのが誘導アンテナ２０の取り付けを容易に行うことができるので好ましいが、フィルム状の基材に導電性インクで印刷し、そのフィルム状の基材を配置するようにしてもよい。
【００２３】
上記実施形態では、サイドウォール部２に延在するスチールコードを用いたカーカス層４が通信障害となる金属強化層として作用する空気入りタイヤについて説明したが、本発明は、スチールコードで補強されたコード補強層などをサイドウォール部２に配置した空気入りタイヤにも好適に使用することができる。なお、本発明でいう金属強化層とは、上述したカーカス層やコード補強層などの金属コードを有する金属コード層に限定されず、金属材料で強化した通信障害となるタイヤ構成層であればいずれの層も含むものとする。
【００２４】
また、本発明は、上述した実施形態において、送信機１１やトランスポンダ３０をタイヤ内側に設けた例を示したが、サイドウォール部２に配設されたカーカス層４などの金属強化層よりタイヤ内側に、電磁波により通信するアンテナを有する電子装置を有する空気入りタイヤであれば、いずれのタイヤにも好ましく用いることができる。
【００２５】
【発明の効果】
上述したように本発明は、サイドウォール部に配設された金属強化層よりタイヤ内側に、電磁波により通信するアンテナを有する電子装置を有する空気入りタイヤにおいて、金属強化層よりタイヤ外側でかつ電子装置のアンテナ近傍に、該アンテナから発信される電磁波を誘導する誘導アンテナを設置したので、誘導アンテナを経由して電子装置のアンテナから発信された信号を受信機に送信できるため、タイヤの耐久性に悪影響を与えることなく金属強化層による通信障害を改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図である。
【図２】図１の送信機のアンテナと誘導アンテナの一例を示す拡大斜視図である。
【図３】本発明の空気入りタイヤの他の例を示すタイヤ子午線半断面図である。
【図４】図３のトランスポンダの平面図である。
【符号の説明】
１　トレッド部　　　　　　　　　２　サイドウォール部
２ａ　外側面　　　　　　　　　　３　ビード部
４　カーカス層（金属強化層）　　９　インナーライナー層
９ａ　内側面　　　　　　　　　　１０　低空気圧警報装置
１１　送信機（電子装置）　　　　１２　アンテナ
１３　センサ　　　　　　　　　　２０　誘導アンテナ
３０　トランスポンダ（電子装置）３１　フィルム基材
３２　アンテナ　　　　　　　　　３３　集積回路

Claims (10)

1. サイドウォール部に配設された金属強化層よりタイヤ内側に、電磁波により通信するアンテナを有する電子装置を配置した空気入りタイヤにおいて、前記金属強化層よりタイヤ外側でかつ前記電子装置のアンテナ近傍に、該アンテナから発信される電磁波を誘導する誘導アンテナを設置した空気入りタイヤ。
2. 前記電子装置のアンテナと前記誘導アンテナとを前記金属強化層を介して対向配置した請求項２に記載の空気入りタイヤ。
3. 前記電子装置のアンテナと前記誘導アンテナが、共振周波数を同一にした電界型アンテナからなる請求項１または２に記載の空気入りタイヤ。
4. 前記電子装置のアンテナと前記誘導アンテナが、巻き方向を同一にしたコイル状の電界型アンテナからなる請求項１，２または３に記載の空気入りタイヤ。
5. 前記電界型アンテナが導電性インクで印刷形成されたアンテナである請求項３または４に記載の空気入りタイヤ。
6. 前記電界型アンテナが導電性インクをタイヤ構成部材に印刷形成してなる請求項５に記載の空気入りタイヤ。
7. 前記金属強化層が金属コードを有する金属コード層である請求項１，２，３，４，５または６に記載の空気入りタイヤ。
8. 前記金属コード層が前記サイドウォール部に延在するスチールコードを有するカーカス層である請求項７に記載の空気入りタイヤ。
9. 前記電子装置が低空気圧警報装置の送信機である請求項１，２，３，４，５，６，７または８に記載の空気入りタイヤ。
10. 前記電子装置がタイヤ情報を格納する集積回路と該集積回路に接続されたアンテナとを有するトランスポンダからなる請求項１，２，３，４，５，６，７または８に記載の空気入りタイヤ。

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