JP2004066261A - 肉盛り用溶接材料および肉盛り工法 - Google Patents

肉盛り用溶接材料および肉盛り工法 Download PDF

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中出 英治
Moriyuki Matsubara
松原 守之
Kozo Yasui
安井 幸蔵
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Abstract

【課題】安価に肉盛り部を形成できる溶接材料およびその溶接材料を用いた肉盛り工法を提供すること。
【解決手段】本発明の肉盛り用溶接材料は、炭素、ケイ素、マンガン、クロム、ニッケル、モリブデンとバナジウム、不可避不純物と、残部が鉄(Fe)と、からなることを特徴とする。本発明の肉盛り用溶接材料は、鋳鉄の鋳肌面に直接肉盛り溶接することができる効果を有する。また、本発明の肉盛り工法は、鋳肌面に直接肉盛り溶接を行うことから、少ない加工工程数で加工を行うことができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、肉盛り用溶接材料およびそれを用いた肉盛り工法に関し、詳しくは、鋳鉄の鋳肌表面に直接肉盛り可能な溶接材料およびそれを用いた肉盛り工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プレス金型等の金型の加工部は、型で最も重要な部分であり、摩耗や変形が許されない部分である。加工部とは、プレス金型の切刃、曲刃、プレス製品を成形するための加圧部分、耐面圧性および耐摩耗性が要求される部分を示す。金型においては、加工部の硬度を部分的に高めることで、プレス製品の成形品質確保や型の耐久性等の向上が図れ、コストの低減が行われてきた。すなわち、硬度を高くすることはコストの上昇を招くため、型全体の硬度を高くすると、型のコストが大きく上昇する。このため、加工部のみを部分的に硬度を高くすることで、コストの上昇を抑えている。
【0003】
従来、部分的に硬度の高い金型は、いわゆる肉盛り溶接を用いて製造されている。たとえば、以下に示した製法により型の製造が行われている。
【0004】
まず、鋳造された鉄系金属を機械加工等により金型の加工部となる部分に凹部を形成する。そして、この凹部に、アーク溶接等を用いて金型を構成する材料よりも硬い材料を肉盛りする。その後、この肉盛り部に機械加工を施し、加工面を仕上げることで、所定の形状の加工部を有する金型を製造することができる。
【0005】
しかしながら、上述の方法では、金型の製造に多大なコストが要求されるという問題があった。従来の製造方法においては、肉盛りしない部位の形状を有する形状面を機械加工した後に、加工部となる肉盛り部分に凹部を機械加工で形成し、形成された凹部に肉盛りを行って肉盛り部を形成し、肉盛り部を機械加工、さらに手仕上げ加工するという工程を用いているため、多数の工程数により金型のコストが高くなっていた。また、金型の製造に長時間が必要となっていた。
【0006】
さらに、大量に肉盛りした結果、熱歪みで最初に機械加工した面にも悪影響が出て、再加工が必要となり、コスト高になるという問題があった。
【0007】
さらに、鋳造した後の鉄金属表面に肉盛りしたが、鋳鉄の鋳肌面に不純物が多量に含まれるためである。鋳肌面に直接肉盛り溶接を行っても、不純物により肉盛り部の溶接強度が十分に得られない事実があった。
【0008】
金型の製造に要するコストの低減を目的として、鋳肌面に直接肉盛り部を形成することが検討されている。すなわち、鋳造するときに肉盛り用の凹部を形成しておき、この肉盛り用凹部に直接肉盛り部を形成することで、機械加工による成形を一度に行うことができ、加工コストを低減することを目的としている。
【0009】
鋳肌面に直接肉盛り溶接できる溶接材料が特開平6−15481号に開示されている。
【0010】
特開平6−15481号には、溶着金属の基本成分組成が、C:0.50〜1.50%、Si:0.20〜2.00%、Mn:0.30〜6.00%、Cr:3.00〜10.00%、Co:0.30〜10.00%、残部:Feおよび不可避の不純物からなり、かつマルテンサイト変態開始温度が150℃以下である鋳鉄材への硬化肉盛り用溶接材料が開示されている。この溶接材料は、鋳鉄材の鋳肌面に直接肉盛り溶接できることが示されている。
【0011】
しかしながら、特開平6−15481号に記載の溶接材料は、肉盛り部が成形された後に0℃以下に過冷却することが要求されている。すなわち、冷却することで、肉盛り部のオーステナイト組織をマルテンサイト組織に変態させて、加工部として要求される硬度を得る。肉盛り部への過冷却の要求は、金型の製造に要するコストの上昇を引き起こすという問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、安価に肉盛り部を形成できる溶接材料およびその溶接材料を用いた肉盛り工法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者らは肉盛り用溶接材料について検討を重ねた結果、炭素と、ケイ素と、マンガンと、クロムと、ニッケルと、モリブデンとバナジウムと、不可避不純物と、残部が鉄からなる肉盛り用溶接材料とすることで上記課題を解決できることを見いだした。
【0014】
すなわち、本発明の肉盛り用溶接材料は、全体を100wt%としたときに、0.03〜0.20wt%のCと、0.15〜1.5wt%のSiと、0.20〜2.0wt%のMnと、10.0〜13.0wt%のCrと、0.20〜5.0wt%のNiと、合計量が3.0wt%以下のMoとVと、不可避不純物と、残部がFeと、からなることを特徴とする。
【0015】
本発明の肉盛り用溶接材料は、鋳鉄材の不純物が含まれる鋳肌面に直接肉盛り溶接することができる。すなわち、本発明の肉盛り用溶接材料は、鋳肌面に直接肉盛り溶接を行った後に機械加工を行うことができるため、たとえば金型の加工部のように部分的に高い硬度が要求される部材の製造において、加工工程数を少なくすることができる。本発明の肉盛り用溶接材料は、特に、鋳鉄よりなる金型の製造においてその効果を示す。
【0016】
また、本発明の肉盛り工法は、加工部となる部分に肉盛り用凹部が形成された鉄系金属よりなる基材を鋳造する鋳造工程と、基材の肉盛り用凹部に、肉盛り用溶接材料を肉盛り溶接する溶接工程と、肉盛り溶接が施された基材の表面に機械加工を施して成形する成形工程と、を有する肉盛り工法であって、肉盛り用溶接材料は、全体を100wt%としたときに、0.03〜0.20wt%のCと、0.15〜1.5wt%のSiと、0.20〜2.0wt%のMnと、10.0〜13.0wt%のCrと、0.20〜5.0wt%のNiと、合計量が3.0wt%以下のMoとVと、不可避不純物と、残部がFeと、からなることを特徴とする肉盛り工法。
【0017】
本発明の肉盛り工法は、鋳肌面に直接肉盛り溶接を行った後に機械加工を行う。この結果、本発明の肉盛り工法は、肉盛り加工における加工工程数を少なくすることができ、肉盛り加工におけるコストを低下させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(肉盛り用溶接材料)
本発明の肉盛り用溶接材料は、全体を100wt%としたときに、0.03〜0.20wt%のCと、0.15〜1.5wt%のSiと、0.20〜2.0wt%のMnと、10.0〜13.0wt%のCrと、0.20〜5.0wt%のNiと、合計量が3.0wt%以下のMoとVと、不可避不純物と、残部がFeと、からなる。
【0019】
Cは、炭化物形成元素であり、Cr、Mo、V等の元素と結合して高硬度の炭化物を析出させ、溶接材料が溶着した溶着金属の硬度を上昇させる。溶着金属の硬度が上昇することで、溶着金属の耐摩耗性が向上する。なお、溶接材料中のC量が0.03wt%未満となると硬度が低くなり、溶着金属の耐摩耗性が低下する。また、溶接材料中のC量が0.20wt%を超えると、溶着金属が鋳肌面との界面で剥離を生じる(溶接割れ)ようになる。
【0020】
Siは、脱酸性元素であり、低水素溶接材料においてブローホールの発生の防止と溶接作業の作業性を向上させる。なお、溶接材料中のSi量が0.15wt%未満ではブローホールが発生しやすくなるだけでなく、溶着時の作業性が低下するようになる。また、Si量が1.5wt%を超えても溶着時の作業性が低下する。
【0021】
Mnは、脱酸性元素であり、ブローホールの防止に有効である。さらに、Siによる脱酸性を防止する元素である。なお、溶接材料中のMn量が0.15wt%未満となるとブローホールが発生しやすくなるだけでなく、溶着時の作業性が低下するようになる。また、Mn量が2.0wt%を超えても溶着時の作業性が低下する。
【0022】
Crは、炭化物形成元素であり、Cとの間で高硬度のCr炭化物を形成して、溶着金属の耐摩耗性を向上させる。なお、溶接材料中のCr量が10.0wt%未満となると溶着金属の高度が低く、耐摩耗性が低下する。また、溶接材料中のCr量が13.0wt%を超えると、多層溶接を行っても溶着金属の硬度が低下する。このことは、Crがフェライト形成元素であり、Cr量が多くなることで溶着金属の結晶組織におけるフェライト組織の割合が増加し、溶着金属の硬度が低下するためである。
【0023】
Niは、靭性を向上させる元素である。なお、溶接材料中のNi量が0.20wt%未満ではNi添加の効果が見られない。また、Ni量が5.0wt%を超えると、高速加工中に溶着金属に割れが発生しやすくなる。
【0024】
MoおよびVは、高硬度の炭化物を生成して耐摩耗性を向上させる元素である。MoおよびVは、硬度調整および安定化を目的として単独あるいは複合して添加される。なお、MoおよびVの合計量が3wt%を超えると、添加量の増加に対する添加の効果の上昇が見られなくなる。
【0025】
鋳鉄材の鋳肌面に直接溶接されることが好ましい。本発明の肉盛り用溶接材料は、炭素等の不純物が多量に含まれる鋳肌面に直接溶接しても、溶接割れ等の不具合が発生しなくなっている。このため、本発明の肉盛り用溶接材料を用いて肉盛り溶接を行うと、溶接面を機械加工する工程を減らすことができ、コストを低下させることができる。
【0026】
さらに、本発明の肉盛り用溶接材料を用いて肉盛り溶接を行って形成された溶着金属は、過冷却等の特別な処理を必要としない。この結果、安価に肉盛りを行うことができる。
【0027】
本発明の肉盛り用溶接材料は、上記組成を有していればよく、その形態は限定されない。ずなわち、鉄芯の外周をその他の成分が被覆した形状の溶接棒であっても、各成分からなる合金の形態であってもよい。
【0028】
(肉盛り工法)
本発明の肉盛り工法は、加工部となる部分に肉盛り用凹部が形成された鉄系金属よりなる基材を鋳造する鋳造工程と、基材の肉盛り用凹部に、肉盛り用溶接材料を肉盛り溶接する溶接工程と、肉盛り溶接が施された基材の表面に機械加工を施して成形する成形工程と、を有する肉盛り工法であって、肉盛り用溶接材料は、全体を100wt%としたときに、0.03〜0.20wt%のCと、0.15〜1.5wt%のSiと、0.20〜2.0wt%のMnと、10.0〜13.0wt%のCrと、0.20〜5.0wt%のNiと、合計量が3.0wt%以下のMoとVと、不可避不純物と、残部がFeと、からなる。
【0029】
鋳造工程は、加工部となる部分に肉盛り用凹部が形成された鉄系金属よりなる基材を鋳造する工程である。鋳造工程において、肉盛り用凹部を有する基材を鋳造することで、本発明の肉盛り工法が施された部材の加工部を溶接金属が形成できる。
【0030】
また、基材が鉄系金属よりなることで、その後の工程において肉盛り用溶接材料を肉盛り溶接したときに溶着させることができる。本発明の肉盛り工法において、基材を形成する鉄系金属は、鉄を主成分とした金属であれば特に限定されるものではない。たとえば、純鉄、炭素鋼、合金鋼等をあげることができる。
【0031】
加工部となる部分とは、肉盛り工法を用いて製造された部材において部分的に高硬度が要求される部分を示す。
【0032】
また、肉盛り用凹部とは、肉盛り用溶接材料を肉盛り溶接するときに溶接された後に加工部を形成したときに加工部を溶接金属が形成できるように外周面となる部分より内部までえぐられている部分である。
【0033】
溶接工程は、基材の肉盛り用凹部に、肉盛り用溶接材料を肉盛り溶接する工程である。溶接工程において肉盛り用凹部に、肉盛り用溶接材料を肉盛り溶接することで加工部を高硬度の溶接金属により形成することができる。溶接工程における肉盛り溶接は、その方法が特に限定されるものではなく、従来の肉盛り溶接と同様の方法により行うことができる。
【0034】
成形工程は、肉盛り溶接が施された基材の表面に機械加工を施して成形する工程である。成形工程が肉盛り溶接の施された基材の表面を機械加工により成形することで、肉盛り工法が施された部材を製造できる。
【0035】
成形工程において機械加工を施すことで、不純物が多量に含まれた鋳肌面が除去される。すなわち、基材の表面が均質化された組織となる。
【0036】
成形工程において施される機械加工は特に限定されるものではなく、従来の機械加工と同様の加工を行うことができる。
【0037】
本発明の肉盛り工法における肉盛り用溶接材料は、全体を100wt%としたときに、0.03〜0.20wt%のCと、0.15〜1.5wt%のSiと、0.20〜2.0wt%のMnと、10.0〜13.0wt%のCrと、0.20〜5.0wt%のNiと、合計量が3.0wt%以下のMoとVと、不可避不純物と、残部がFeと、からなる。
【0038】
Cは、炭化物形成元素であり、Cr、Mo、V等の元素と結合して高硬度の炭化物を析出させ、溶接材料が溶着した溶着金属の硬度を上昇させる。溶着金属の硬度が上昇することで、溶着金属の耐摩耗性が向上する。なお、溶接材料中のC量が0.03wt%未満となると硬度が低くなり、溶着金属の耐摩耗性が低下する。また、溶接材料中のC量が0.20wt%を超えると、溶着金属が鋳肌面との界面で剥離を生じる(溶接割れ)ようになる。
【0039】
Siは、脱酸性元素であり、低水素溶接材料においてブローホールの発生の防止と溶接作業の作業性を向上させる。なお、溶接材料中のSi量が0.15wt%未満ではブローホールが発生しやすくなるだけでなく、溶着時の作業性が低下するようになる。また、Si量が1.5wt%を超えても溶着時の作業性が低下する。
【0040】
Mnは、脱酸性元素であり、ブローホールの防止に有効である。さらに、Siによる脱酸性を防止する元素である。なお、溶接材料中のMn量が0.15wt%未満となるとブローホールが発生しやすくなるだけでなく、溶着時の作業性が低下するようになる。また、Mn量が2.0wt%を超えても溶着時の作業性が低下する。
【0041】
Crは、炭化物形成元素であり、Cとの間で高硬度のCr炭化物を形成して、溶着金属の耐摩耗性を向上させる。なお、溶接材料中のCr量が10.0wt%未満となると溶着金属の高度が低く、耐摩耗性が低下する。また、溶接材料中のCr量が13.0wt%を超えると、多層溶接を行っても溶着金属の硬度が低下する。このことは、Crがフェライト形成元素であり、Cr量が多くなることで溶着金属の結晶組織におけるフェライト組織の割合が増加し、溶着金属の硬度が低下するためである。
【0042】
Niは、靭性を向上させる元素である。なお、溶接材料中のNi量が0.20wt%未満ではNi添加の効果が見られない。また、Ni量が5.0wt%を超えると、高速加工中に溶着金属に割れが発生しやすくなる。
【0043】
MoおよびVは、高硬度の炭化物を生成して耐摩耗性を向上させる元素である。MoおよびVは、硬度調整および安定化を目的として単独あるいは複合して添加される。なお、MoおよびVの合計量が3wt%を超えると、添加量の増加に対する添加の効果の上昇が見られなくなる。
【0044】
本発明の肉盛り工法は、鋳肌面に肉盛り溶接を行った後に機械加工を行う。すなわち、鋳造された状態の基材に機械加工を施さなくてもよく、加工に要する工程数を少なくすることができる。また、加工の工程数が少なくなることで、加工に要する時間を短縮できる。この結果、肉盛り工法を用いた部材を低コストで製造することができる。
【0045】
プレス型の製造に用いられることが好ましい。本発明の肉盛り工法は、肉盛り用溶接材料が鋳鉄の鋳肌面に肉盛りされても、溶接割れなどの不具合が生じない。このため、本発明の肉盛り工法を用いることで、プレス型を低コストで製造できる。
【0046】
プレス型の製造に本発明の肉盛り工法を用いることで、加工部のHRCが40〜50であり、その他の部分のHRCが15〜25のプレス型を製造することができる。
【0047】
さらに、プレス型が巨大である場合には、鋳造後の型の移動回数を減らすことで、コストの上昇を抑えることができる効果を有する。すなわち、鋳造された基材は、肉盛り工法が施された後に機械加工を施すため、加工装置のもとへと移動させられる。本発明の肉盛り工法はこの型の移動が1回ですむ効果がある。このことは、型が大きくなればなるほど重量が増すため、移動に要するコストが増加するためである。一方、従来の肉盛り工法では、鋳造後に加工装置のもとへ移動させられ、その後に加工装置から取り出し、肉盛り工法が施され、再度、機械加工が施されていた。すなわち、型の移動回数が多く、コストが高くなっていた。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0049】
(実施例)
本発明の実施例として表1に示された組成を有するφ4.0mmの溶接棒を製造した。
【0050】
【表1】
Figure 2004066261
【0051】
実施例の溶接棒は、以下の手段により製造された。まず、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Vの適量を含有した鉄製の心線を製造した。つづいて、C、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Vの適量を有する被覆剤を心線の表面上に被覆した。この被覆剤の被覆により、所定の元素比を有する溶接棒が製造された。
【0052】
(評価)
実施例において作製した溶接棒の評価として、実際に鋳鉄の鋳肌面に2層盛りの肉盛り溶接を行い、このときの溶接の作業性、溶着金属の耐割れ性および硬度の測定を行った。評価結果を表1にあわせて示した。
【0053】
すなわち、評価として、FCD540の黒皮材よりなり実際の型の形状に近い開先面を有する母材に肉盛り溶接を行った。
【0054】
作業性の評価は、実用に供し得るものを○とし、実用に供し得ないものを×とした。たとえば、溶接作業中に溶接棒がうまく溶解しなかった溶接棒が実用に供し得ないものと判定された。
【0055】
また、耐割れ性については、成形されて製品となる被成形体と肉盛りが行われた金型とが接したときに、成形された製品に割れがない場合が○とし、成形された製品に割れが生じたり、金型の肉盛りが施された部位にすりきず等が発生した場合を×とした。
【0056】
そして、硬度の測定は金型の出荷前に携帯型エコーチップ測定装置で金型の肉盛り部位を測定することで行われた。
【0057】
表1より、本発明の溶接材料である試料1は、作業性および耐割れ性が良好でありかつHRC硬度が44.4の溶着金属が得られた。
【0058】
試料2は、Cが0.02wt%と少ない溶接棒であり、溶着金属の硬度が38.8と低くなった。さらに、試料2においては、C量が少ないため、SiおよびMn量が規定の範囲内であっても作業性が低下した。
【0059】
試料3は、Cが0.26wt%と過剰に含まれた溶接棒であり、溶着金属の硬度が56.4と高くなった。しかし、硬度が高くなりすぎて、溶着金属の耐割れ性が低下している。
【0060】
試料4は、Siが1.64wt%、Mnが2.23wt%といずれも過剰に含まれた溶接棒であり、作業性および耐割れ性が低下している。
【0061】
試料5は、Crが13.43wt%と過剰に含まれかつNiが0.18と少ない溶接棒であり、作業性および耐割れ性は良好であったが、硬度が39.8と低下した。
【0062】
試料6は、Niが5.25wt%と過剰に含まれた溶接棒であり、作業性および硬度は良好であったが、耐割れ性が低下している。
【0063】
試料7は、MoとVの合計量が2.85wt%と本発明に規定された範囲内で多めに含まれた溶接棒である。試料7は、作業性、耐割れ性および硬度はいずれも良好な値を示した。
【0064】
以上のことから、本発明に規定された組成を有する溶接棒は、鋳鉄の鋳肌面に直接肉盛り溶接を行うだけで、溶着金属を溶着させることができることがわかる。すなわち、不純物が多量に析出した鋳肌面を切削したり、溶着金属に過冷却等の処理を施すことなく、十分な硬度の溶着金属が得られる。
【0065】
このことから、本発明に規定された組成を有する溶接棒を用いて、プレス型を製造することができる効果を示す。
【0066】
(プレス型の製造)
実施例の試料1の溶接棒を用いて、プレス型の製造を行った。図1〜5を用いて、プレス型の製造を説明する。なお、図1〜5において、加工部近傍の断面を示し、破線はプレス型の型表面の外周形状を示す。
【0067】
まず、プレス型の型表面の外周形状より若干大きな形状の発泡樹脂模型1を製造した(図1)。そして、プレス型において耐面圧性および耐摩耗性が要求される加工部となる部分に対応した発泡樹脂模型の部分に切削加工を施した(図2)。この切削加工により、肉盛り用の凹部が発泡樹脂模型に形成された。この肉盛り用の凹部は、切削された表面がプレス型の表面より内部にえぐられた形状に形成された。
【0068】
つづいて、この発泡樹脂模型を用いて鋳型を製造し、製造された鋳型を用いてプレス型を鋳造した。
【0069】
プレス型の鋳造は、まず、製造された鋳型内にFCD540溶湯を鋳込んで、プレス型の基材2を鋳造した(図3)。基材2は、発泡樹脂模型1の形状に鋳造されている。すなわち、基材2には、発泡樹脂模型の肉盛り用の凹部に対応した形状の肉盛り用の凹部20が形成されている。また、基材2は、その表面には不純物を含む鋳肌面が形成されていた。
【0070】
基材2が十分に冷却された後に、肉盛り用凹部20に試料1の溶接棒を肉盛り溶接して、肉盛り部3を形成した。肉盛り部3は、(図において破線で示された)プレス型の型表面より突出して形成された。
【0071】
そして、肉盛り溶接が行われた基材2の表面を機械加工により加工して、プレス型を成形した。この加工により、基材2の不純物が多量に含まれている鋳肌面が除去された(図4)。なお、切削は、荒研磨、仕上げ研磨と、多段階の研磨処理を施すことでなされた。さらに、肉盛り溶接部は、不純物に影響されない溶接棒が肉盛られており、加工後においても良品の形状が形成されている。
【0072】
以上の手順によりプレス型4を製造することができた(図5)。
【0073】
なお、製造されたプレス型4は、溶接棒を肉盛り溶接してなる加工部の硬度がHRC40〜50であり、それ以外の硬度がHRC15〜25であった。
【0074】
上述のプレス型は、加工部の硬度が部分的に高くなっており、プレス型として十分な特性を有していることがわかる。さらに、プレス型の製造に要する工程数が少ないため、安価にプレス型を製造できた。
【0075】
【発明の効果】
本発明の用溶接材料は、鋳鉄材の鋳肌面に肉盛り溶接することができる。すなわち、本発明の肉盛り用溶接材料は、鋳肌面に肉盛り溶接を行った後に機械加工を行うことができるため、たとえば金型の製造における加工工程数を少なくすることができる。この結果、本発明の肉盛り用溶接材料は、低コストで金型等の部材の製造を行うことができる効果を示す。
【0076】
また、本発明の肉盛り工法は、鋳肌面に直接肉盛り溶接を行った後に機械加工を行うことができる。この結果、本発明の肉盛り工法は、加工工程数を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プレス型を形成するための発泡樹脂模型を示した図である。
【図2】肉盛り用の凹部を形成しているときの発泡樹脂模型を示した図である。
【図3】鋳造された状態の基材を示した図である。
【図4】基材に肉盛り部が形成された後に機械加工を施している状態の基材を示した図である。
【図5】プレス型を示した図である。
【符号の説明】
1…発泡樹脂模型
2…基材      20…肉盛り用凹部
3…溶着金属     4…プレス型

Claims (4)

  1. 全体を100wt%としたときに、0.03〜0.20wt%の炭素(C)と、0.15〜1.5wt%のケイ素(Si)と、0.20〜2.0wt%のマンガン(Mn)と、10.0〜13.0wt%のクロム(Cr)と、0.20〜5.0wt%のニッケル(Ni)と、合計量が3.0wt%以下のモリブデン(Mo)とバナジウム(V)と、不可避不純物と、残部が鉄(Fe)と、からなることを特徴とする肉盛り用溶接材料。
  2. 鋳鉄材の鋳肌面に直接溶接される請求項1記載の肉盛り用溶接材料。
  3. 加工部となる部分に肉盛り用凹部が形成された鉄系金属よりなる基材を鋳造する鋳造工程と、
    該基材の該肉盛り用凹部に、肉盛り用溶接材料を肉盛り溶接する溶接工程と、肉盛り溶接が施された該基材の表面に機械加工を施して成形する成形工程と、を有する肉盛り工法であって、
    該肉盛り用溶接材料は、全体を100wt%としたときに、0.03〜0.20wt%の炭素(C)と、0.15〜1.5wt%のケイ素(Si)と、0.20〜2.0wt%のマンガン(Mn)と、10.0〜13.0wt%のクロム(Cr)と、0.20〜5.0wt%のニッケル(Ni)と、合計量が3.0wt%以下のモリブデン(Mo)とバナジウム(V)と、不可避不純物と、残部が鉄(Fe)と、からなることを特徴とする肉盛り工法。
  4. プレス型の製造に用いられる請求項3記載の肉盛り工法。
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