JP2004059408A - シリコン単結晶の引上げ装置及びその引上げ方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリコン単結晶の引上げ装置は、熱遮蔽部材36の下端に一端が固着された支持部材51と、支持部材51の他端に固着されてインゴット25とシリコン融液12との固液界面26より下方のシリコン融液12中にインゴット25の中心軸に対して放射状に設けられた複数の固定羽根52とを備え、複数の固定羽根52は石英るつぼ13の回転によりシリコン融液12に対流12a,12bを起こさせて固液界面26が上凸状になるように構成される。引上げ方法は、シリコン融液12からインゴット25を引上げる際に、石英るつぼ13を回転させて複数の固定羽根52によりシリコン融液12に対流12a,12bを起こさせ、固液界面26が上凸状になるように石英るつぼ13の回転速度を制御する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石英るつぼに貯留されたシリコン融液からシリコン単結晶のインゴットを引上げる装置及びその方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン単結晶の製造方法として、シリコン単結晶のインゴットをチョクラルスキー法(以下、CZ法という)により引上げる方法が知られている。このCZ法は、石英るつぼに貯留されたシリコン融液に種結晶を接触させ、石英るつぼ及び種結晶を回転させながら種結晶を引上げることにより、円柱状のシリコン単結晶のインゴットを製造する方法である。
一方、半導体集積回路を製造する工程において、歩留りを低下させる原因として酸化誘起積層欠陥(Oxidation−induced Stacking Fault、以下、OSFという。)の核となる酸素析出物の微小欠陥や、結晶に起因したパーティクル(Crystal Originated Particle、以下、COPという。)や、或いは侵入型転位(Interstitial−type Large Dislocation、以下、L/Dという。)の存在が挙げられている。OSFは、結晶成長時にその核となる微小欠陥が導入され、半導体デバイスを製造する際の熱酸化工程等で顕在化し、作製したデバイスのリーク電流の増加等の不良原因になる。またCOPは、鏡面研磨後のシリコンウェーハをアンモニアと過酸化水素の混合液で洗浄したときにウェーハ表面に出現する結晶に起因したピットである。このウェーハをパーティクルカウンタで測定すると、このピットも本来のパーティクルとともに光散乱欠陥として検出される。
【0003】
このCOPは電気的特性、例えば酸化膜の経時絶縁破壊特性(Time Dependentdielectric Breakdown、TDDB)、酸化膜耐圧特性(Time Zero Dielectric Breakdown、TZDB)等を劣化させる原因となる。またCOPがウェーハ表面に存在するとデバイスの配線工程において段差を生じ、断線の原因となり得る。そして素子分離部分においてもリーク等の原因となり、製品の歩留りを低くする。更にL/Dは、転位クラスタとも呼ばれたり、或いはこの欠陥を生じたシリコンウェーハをフッ酸を主成分とする選択エッチング液に浸漬するとピットを生じることから転位ピットとも呼ばれる。このL/Dも、電気的特性、例えばリーク特性、アイソレーション特性等を劣化させる原因となる。この結果、半導体集積回路を製造するために用いられるシリコンウェーハからOSF、COP及びL/Dを減少させることが必要となっている。
【0004】
このOSF、COP及びL/Dを有しない無欠陥のシリコンウェーハを切出すためのシリコン単結晶インゴットの製造方法が米国特許番号6,045,610号に対応する特開平11−1393号公報に開示されている。一般に、シリコン単結晶のインゴットを速い速度で引上げると、インゴット内部に空孔型点欠陥の凝集体が支配的に存在する領域[V]が形成され、インゴットを遅い速度で引上げると、インゴット内部に格子間シリコン型点欠陥の凝集体が支配的に存在する領域[I]が形成される。このため上記製造方法では、インゴットを最適な引上げ速度で引上げることにより、上記点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域[P]からなるシリコン単結晶を製造できるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の米国特許番号6,045,610号に対応する特開平11−1393号公報に示されたシリコン単結晶インゴットの製造方法では、シリコン単結晶のインゴットとシリコン融液との固液界面近傍での鉛直方向の温度勾配が均一になるように制御する必要があり、この制御はシリコン融液の残量の変化や対流の変化による影響を受けるため、インゴットの直胴部全長にわたって、無欠陥のシリコン単結晶を製造することは困難であった。
本発明の目的は、無欠陥のシリコン単結晶のインゴットを比較的容易に製造できる、シリコン単結晶の引上げ装置及びその方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1及び図2に示すように、チャンバ11内に回転可能に設けられシリコン融液12が貯留された石英るつぼ13と、石英るつぼ13の外周面を包囲しシリコン融液12を加熱するヒータ18と、シリコン融液12から引上げられるインゴット25の外周面を包囲しかつ下端がシリコン融液12表面から間隔をあけて上方に位置するように構成されヒータ18からの輻射熱を遮る円筒状の熱遮蔽部材36とを備えたシリコン単結晶の引上げ装置の改良である。
その特徴ある構成は、熱遮蔽部材36の下端に一端が固着された支持部材51と、支持部材51の他端に固着されてインゴット25とシリコン融液12との固液界面26より下方のシリコン融液12中にインゴット25の中心軸に対して放射状に設けられた複数の固定羽根52とを備え、複数の固定羽根52は石英るつぼ13の回転によりシリコン融液12に対流12a,12bを起こさせて固液界面26が上凸状になるように構成されたところにある。
【0007】
ここで、固定羽根52は、全てが単一の支持部材51により支持されたものであってもよく、固定羽根52の数に相当する複数の支持部材51により固定羽根52をそれぞれ支持するようにしても良い。単一の支持部材51により支持される場合の固定羽根52は、3ないし36枚であることが好ましく、複数の支持部材51により支持される場合の固定羽根52は、3ないし18枚であることが好ましい。また、固定羽根52は石英により作られ、支持部材51は黒鉛により作られてシリコン融液12に浸漬される部分の全部に石英が被覆されたものであることが好ましい。
【0008】
請求項7に係る発明は、シリコン融液12を貯留する石英るつぼ13を所定の回転速度で回転させ、シリコン融液12から引上げられるシリコン単結晶のインゴット25を包囲する筒状の熱遮蔽部材36を設け、インゴット25内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度でインゴット25を引上げるシリコン単結晶の引上げ方法の改良である。
その特徴ある点は、熱遮蔽部材36の下端に固着された支持部材51を介してインゴット25とシリコン融液12との固液界面より下方のシリコン融液12中に複数の固定羽根52をインゴット25の中心軸に対して放射状に設け、石英るつぼ13を回転させて複数の固定羽根52によりシリコン融液12に対流12a,12bを起こさせ固液界面26が上凸状になるように石英るつぼ13の回転速度を制御するところにある。
【0009】
この請求項1に記載されたシリコン単結晶の引上げ装置及び請求項7に記載されたシリコン単結晶の引上げ方法では、石英るつぼ13の回転速度を制御しながら、インゴット25を引上げると、複数の固定羽根52の存在によりシリコン融液12に所定の対流12a,12bが発生し、これらの対流12a,12bにより固液界面26形状が上側に凸状となる。この結果、固液界面の中心がシリコン融液12表面の延長面上より上方に位置するため、固液界面26の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくなり、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配と、固液界面の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。従って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結晶のインゴット25を比較的容易に製造できる。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明であって、図2に示すように、シリコン融液12から引上げられるインゴット25の直径をDとするとき、放射状に設けられた複数の固定羽根52の外径dが0.1D〜1.0Dであって、複数の固定羽根52の中心とシリコン融液12の表面との垂直距離Lが0.01D〜1.00Dになるように構成されたシリコン単結晶の引上げ装置である。
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明であって、図3及び図4に示すように、固定羽根52が平板部52aと石英るつぼ13の回転方向の平板部52aに連続して形成された湾曲部52bとを有し、湾曲部52bの曲率半径Rが0〜300mmであって、湾曲部52bの端部が平板部52aに対して180〜60度の角度αを有するシリコン単結晶の引上げ装置である。
この請求項5及び請求項6に記載されたシリコン単結晶の引上げ装置では、石英るつぼ13の回転速度を制御しながら、インゴット25を引上げると、複数の固定羽根52の存在によりシリコン融液12に所定の対流12a,12bを有効に発生させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に本発明のシリコン単結晶の引上げ装置10を示す。この引上げ装置10のチャンバ11内には、シリコン融液12を貯留する石英るつぼ13が設けられ、この石英るつぼ13の外周面は黒鉛サセプタ14により被覆される。石英るつぼ13の下面は上記黒鉛サセプタ14を介して支軸16の上端に固定され、この支軸16の下部はるつぼ駆動手段17に接続される。るつぼ駆動手段17は図示しないが石英るつぼ13を回転させる第1回転用モータと、石英るつぼ13を昇降させる昇降用モータとを有し、これらのモータにより石英るつぼ13が所定の方向に回転し得るとともに、上下方向に移動可能となっている。石英るつぼ13の外周面は石英るつぼ13から所定の間隔をあけてヒータ18により包囲され、このヒータ18は保温筒19により包囲される。ヒータ18は石英るつぼ13に投入された高純度のシリコン多結晶体を加熱・融解してシリコン融液12にする。
【0012】
またチャンバ11の上端には円筒状のケーシング21が接続される。このケーシング21には引上げ手段22が設けられる。引上げ手段22はケーシング21の上端部に水平状態で旋回可能に設けられた引上げヘッド(図示せず)と、このヘッドを回転させる第2回転用モータ(図示せず)と、ヘッドから石英るつぼ13の回転中心に向って垂下されたワイヤケーブル23と、上記ヘッド内に設けられワイヤケーブル23を巻取り又は繰出す引上げ用モータ(図示せず)とを有する。ワイヤケーブル23の下端にはシリコン融液12に浸してシリコン単結晶のインゴット25を引上げるための種結晶24が取付けられる。
更にチャンバ11にはこのチャンバ11のインゴット側に不活性ガスを供給しかつ上記不活性ガスをチャンバ11のるつぼ内周面側から排出するガス給排手段28が接続される。ガス給排手段28は一端がケーシング21の周壁に接続され他端が上記不活性ガスを貯留するタンク(図示せず)に接続された供給パイプ29と、一端がチャンバ11の下壁に接続され他端が真空ポンプ(図示せず)に接続された排出パイプ30とを有する。供給パイプ29及び排出パイプ30にはこれらのパイプ29,30を流れる不活性ガスの流量を調整する第1及び第2流量調整弁31,32がそれぞれ設けられる。
【0013】
一方、引上げ用モータの出力軸(図示せず)にはエンコーダ(図示せず)が設けられ、るつぼ駆動手段17には支軸16の昇降位置を検出するエンコーダ(図示せず)が設けられる。2つのエンコーダの各検出出力はコントローラ(図示せず)の制御入力に接続され、コントローラの制御出力は引上げ手段22の引上げ用モータ及びるつぼ駆動手段の昇降用モータにそれぞれ接続される。またコントローラにはメモリ(図示せず)が設けられ、このメモリにはエンコーダの検出出力に対するワイヤケーブル23の巻取り長さ、即ちインゴット25の引上げ長さが第1マップとして記憶される。また、メモリには、インゴット25の引上げ長さに対する石英るつぼ13内のシリコン融液12の液面レベルが第2マップとして記憶される。コントローラは、引上げ用モータにおけるエンコーダの検出出力に基づいて石英るつぼ13内のシリコン融液12の液面を常に一定のレベルに保つように、るつぼ駆動手段17の昇降用モータを制御するように構成される。
【0014】
インゴット25の外周面と石英るつぼ13の内周面との間にはインゴット25の外周面を包囲する熱遮蔽部材36が設けられる。この熱遮蔽部材36は円筒状に形成されヒータ18からの輻射熱を遮る筒部37と、この筒部37の上縁に連設され外方に略水平方向に張り出すフランジ部38とを有する。上記フランジ部38を保温筒19上に載置することにより、筒部37の下縁がシリコン融液12表面から所定の距離だけ上方に位置するように熱遮蔽部材36はチャンバ11内に固定される。この実施の形態における筒部37は同一直径の筒状体であり、この筒部37の下部には筒内の方向に膨出しかつ内部に断熱部材47を有する膨出部41が設けられる。この筒部37及び膨出部41はC(黒鉛)により、或いは表面にSiCがコーティングされた黒鉛等により作られる。
【0015】
この熱遮蔽部材36である筒部37の下端には支持部材51の一端が固着される。この支持部材51は黒鉛から成る棒材であり、その一端が筒部37の下端に接着される。支持部材51は他端がシリコン融液12にに浸漬されて石英るつぼ13の中央に向かうように湾曲して形成され、図示しないがシリコン融液に浸漬される部分の全部に石英が被覆される。支持部材51の他端には複数の固定羽根52、この実施の形態では3枚の固定羽根52が固着される。図1及び図3に示すように、3枚の固定羽根52は黒鉛からなる軸部材53に放射状に固着され、この軸部材53の下端中央が支持部材51の他端に固着される。これにより3枚の固定羽根52は、全てが単一の支持部材51により支持され、シリコン融液12とそのシリコン融液12から引上げられるインゴット25の固液界面26より下方のシリコン融液12中にインゴット25の中心軸に対して放射状に設けられる。
【0016】
図3及び図4に示すように、これらの固定羽根52のそれぞれは石英によりそれぞれ同形同大に形成される。1つの固定羽根52を代表して説明すると、この固定羽根52は平板部52aとその平板部52aの石英るつぼ13の回転方向に連続して形成された湾曲部52bとを有する。図4に詳しく示すように、湾曲部52bは曲率半径Rが0〜300mmの範囲で形成され、その湾曲部52bの石英るつぼ13の回転方向における端部が平板部52aに対してなす角度αが180〜60度になるように形成される。ここで、曲率半径Rの更に好ましい範囲は10〜100mmであり、角度αの更に好ましい範囲は120〜90度である。
【0017】
図2に示すように、シリコン融液12から引上げられるインゴット25の直径をDとするとき、放射状に設けられた複数の固定羽根52の描く外径dは0.1D〜1.0Dの範囲内になるように固定羽根52が作られて軸部材53に固着される。また、複数の固定羽根52の中心とシリコン融液12の表面との垂直距離Lが0.01D〜1.00Dになるように支持部材51が作られて、その支持部材51の他端に軸部材53の下端中央が固着される。ここで、固定羽根52の描く更に好ましい外径dは0.1D〜0.5Dの範囲内であり、垂直距離Lの更に好ましい範囲は0.1D〜0.8Dである。そして石英るつぼ13の回転によりシリコン融液12がその石英るつぼ13とともに回転すると、固定羽根52はその近傍を流れるシリコン融液をインゴット25に向けて上昇させ、シリコン融液12に二点鎖線で示すような対流を起こさせて固液界面26を上凸状にするように構成される。
【0018】
次に、本発明のシリコン単結晶の引上げ方法を説明する。この方法は、上述した装置10、即ち熱遮蔽部材36の下端に固着された支持部材51を介してインゴット25とシリコン融液12との固液界面26より下方のシリコン融液12中に複数の固定羽根52をインゴット25の中心軸に対して放射状に設けた装置10を用いて行われる。そして、シリコン融液12を貯留する石英るつぼ13を所定の回転速度で回転させ、そのシリコン融液12からシリコン単結晶から成るインゴット25を引上げる方法である。このインゴット25は、このインゴット内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度で引上げられる。即ち、インゴットは、CZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液12からボロンコフ(Voronkov)の理論に基づいた所定の引上げ速度プロファイルで引上げられる。
【0019】
一般的に、CZ法によりシリコン融液12からシリコン単結晶のインゴット25を引上げると、インゴット内には、点欠陥(point defect)と点欠陥の凝集体(agglomerates:三次元欠陥)が発生する。点欠陥は空孔型点欠陥と格子間シリコン型点欠陥という二つの一般的な形態がある。空孔型点欠陥は一つのシリコン原子がシリコン結晶格子で正常的な位置の一つから離脱したものである。このような空孔が空孔型点欠陥になる。一方、原子がシリコン結晶の格子点以外の位置(インタースチシャルサイト)で発見されるとこれが格子間シリコン点欠陥になる。
【0020】
点欠陥は一般的にシリコン融液12とインゴット25の間の接触面、即ち固液界面26で形成される。しかし、インゴット25を継続的に引上げることによって固液界面26であった部分は引上げとともに冷却し始める。冷却の間、空孔型点欠陥又は格子間シリコン型点欠陥は拡散により互いに合併して、空孔型点欠陥の凝集体(vacancy agglomerates)又は格子間シリコン型点欠陥の凝集体(interstitial agglomerates)が形成される。言い換えれば、凝集体は点欠陥の合併に起因して発生する三次元構造となる。
【0021】
空孔型点欠陥の凝集体は、前述したCOPの他に、LSTD(Laser Scattering Tomograph Defects)又はFPD(Flow Pattern Defects)と呼ばれる欠陥を含み、格子間シリコン型点欠陥の凝集体は前述したL/Dと呼ばれる欠陥を含む。FPDとは、インゴットをスライスして作製されたシリコンウェーハを30分間セコエッチング(Secco etching、HF:K2Cr2O7(0.15mol/l)=2:1の混合液によるエッチング)したときに現れる特異なフローパターンを呈する痕跡の源であり、LSTDとは、シリコン単結晶内に赤外線を照射したときにシリコンとは異なる屈折率を有し散乱光を発生する源である。
【0022】
ボロンコフの理論は、欠陥の数が少ない高純度インゴット25を成長させるために、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)、インゴットとシリコン融液12の界面26近傍のインゴット中の温度勾配をG(℃/mm)とするときに、V/G(mm2/分・℃)を制御することである。この理論では、図5に示すように、V/Gを横軸にとり、空孔型点欠陥濃度と格子間シリコン型点欠陥濃度を同一の縦軸にとって、V/Gと点欠陥濃度との関係を図式的に表現し、空孔領域と格子間シリコン領域の境界がV/Gによって決定されることを説明している。より詳しくは、V/G比が臨界点以上では空孔型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成される反面、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成される。図5において、[I]は格子間シリコン型点欠陥が支配的であって、格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在する領域((V/G)1以下)を示し、[V]はインゴット内での空孔型点欠陥が支配的であって、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域((V/G)2以上)を示し、[P]は空孔型点欠陥の凝集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域((V/G)1〜(V/G)2)を示す。領域[P]に隣接する領域[V]にはOSF核を形成する領域[OSF]((V/G)2〜(V/G)3)が存在する。
【0023】
このパーフェクト領域[P]は更に領域[PI]と領域[PV]に分類される。[PI]はV/G比が上記(V/G)1から臨界点までの領域であり、[PV]はV/G比が臨界点から上記(V/G)2までの領域である。即ち、[PI]は領域[I]に隣接し、かつ侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン型点欠陥濃度未満の格子間シリコン型点欠陥濃度を有する領域であり、[PV]は領域[V]に隣接し、かつOSFを形成し得る最低の空孔型点欠陥濃度未満の空孔型点欠陥濃度を有する領域である。なお、上記OSFは、結晶成長時にその核となる微小欠陥が導入され、半導体デバイスを製造する際の熱酸化工程等で顕在化し、作製したデバイスのリーク電流の増加等の不良原因になる。
【0024】
図1に戻って、シリコン融液12からインゴット25を引上げる際には、石英るつぼ13をシリコン融液12とともに回転させて複数の固定羽根52によりシリコン融液12に対流を起こさせる。即ち、シリコン融液12が固定羽根52における平板部52aから湾曲部52bに向かうように石英るつぼ13を図2の実線矢印で示すように回転させ、固定羽根52における平板部52aから湾曲部52bに向かうシリコン融液が湾曲部52bに案内されてインゴット25に向けて上昇するようにさせる。これにより、シリコン融液12には図2の二点鎖線で示すような対流が生じ、この対流により固液界面26を上凸状にさせる。一方、インゴット25は回転させながら引き上げることが好ましく、このインゴット25の回転方向は石英るつぼ13の回転方向と同方向に回転させることが好ましい。このインゴット25を回転させずに、又は石英るつぼ13の回転方向と逆方向に回転させながら引き上げることもできるけれども、インゴット25を石英るつぼ13の回転方向と逆方向に回転させながら引き上げる場合には、極力低速とすることが必要である。
【0025】
このように石英るつぼ13及びインゴット25の回転速度を制御しながら、シリコン単結晶のインゴット25を引上げると、石英るつぼ13の底部中央から固液界面26の中央に向って上昇した後に、固液界面26の外周縁近傍から石英るつぼ13の底部中央に流下する第1対流12aが発生し、石英るつぼ13の底部外周縁から周縁に沿って上昇した後に、上記第1対流12aに沿って流下する第2対流12bが発生する。上記第1対流12aは固液界面26を押上げるので、固液界面26形状は上側に凸状となる。このように固液界面26が上凸状になるように石英るつぼ13の回転速度を制御する。この結果、固液界面26の中心がシリコン融液12表面の延長面上より上方に位置するため、固液界面26の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくなり、固液界面26の中心における鉛直方向の温度勾配と、固液界面26の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。従って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結晶のインゴット25を比較的容易に製造できる。
【0026】
なお、上述した実施の形態では、3枚の固定羽根52が単一の支持部材51により支持された装置を示したが、固液界面26を上凸状にしうる限り、図6及び図7に示すように、固定羽根52の数に相当する複数の支持部材51により3枚の固定羽根52をそれぞれ支持するようにしても良い。図7における3枚の固定羽根52は、それぞれの下部における略中央部が3本の支持部材51の他端にそれぞれ固着される例を示す。また、固定羽根52の枚数は3枚に限らず、複数であれば、2枚でも、4枚でも5枚でも6枚以上であっても良い。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、熱遮蔽部材の下端に固着された支持部材を介してインゴットとシリコン融液との固液界面より下方のシリコン融液中に複数の固定羽根をインゴットの中心軸に対して放射状に設け、シリコン融液とインゴットとの固液界面形状が上側に凸状となるように、石英るつぼの回転速度を制御し、シリコン単結晶のインゴット内がパーフェクト領域となるような引上げ速度でインゴットを引上げるので、シリコン融液に所定の対流が発生し、これらの対流により固液界面形状が上側に凸状となる。この結果、固液界面の中心がシリコン融液表面の延長面上より上方に位置するという理由から、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくなるので、この温度勾配と、固液界面の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。従って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結晶のインゴットを比較的容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の引上げ装置を示す断面構成図。
【図2】本発明の方法によりシリコン単結晶のインゴットを引上げている状態を示す断面構成図。
【図3】その装置に用いられる固定羽根を上から見た図。
【図4】図3のA−A線断面図。
【図5】ボロンコフの理論を基づいた、V/G比が臨界点以上では空孔型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成され、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成されることを示す図。
【図6】複数の固定羽根が複数の支持部材により支持された別の引上げ装置を示す図1に対応する断面構成図。
【図7】その別の引上げ装置に用いられる固定羽根を上から見た図3に対応する図。
【符号の説明】
10 引上げ装置
11 チャンバ
12 シリコン融液
12a,12b 対流
13 石英るつぼ
18 ヒータ
25 インゴット
26 固液界面
36 熱遮蔽部材
51 支持部材
52 固定羽根
52a 平板部
52b 湾曲部
D インゴットの直径
d 複数の固定羽根の外径
L 固定羽根の中心とシリコン融液の表面との垂直距離
R 湾曲部の曲率半径
α 湾曲部の端部が平板部に対してなす角度
Claims (7)
- チャンバ(11)内に回転可能に設けられシリコン融液(12)が貯留された石英るつぼ(13)と、前記石英るつぼ(13)の外周面を包囲し前記シリコン融液(12)を加熱するヒータ(18)と、前記シリコン融液(12)から引上げられるインゴット(25)の外周面を包囲しかつ下端が前記シリコン融液(12)表面から間隔をあけて上方に位置するように構成され前記ヒータ(18)からの輻射熱を遮る円筒状の熱遮蔽部材(36)とを備えたシリコン単結晶の引上げ装置において、
前記熱遮蔽部材(36)の下端に一端が固着された支持部材(51)と、
前記支持部材(51)の他端に固着されて前記インゴット(25)と前記シリコン融液(12)との固液界面(26)より下方の前記シリコン融液(12)中に前記インゴット(25)の中心軸に対して放射状に設けられた複数の固定羽根(52)と
を備え、
前記複数の固定羽根(52)は前記石英るつぼ(13)の回転により前記シリコン融液(12)に対流(12a,12b)を起こさせて前記固液界面(26)が上凸状になるように構成された
ことを特徴とするシリコン単結晶の引上げ装置。 - 固定羽根(52)が3ないし36枚であって、前記固定羽根(52)の全てが単一の支持部材(51)により支持された請求項1記載のシリコン単結晶の引上げ装置。
- 固定羽根(52)が3ないし18枚であって、前記固定羽根(52)の数に相当する複数の支持部材(51)により前記固定羽根(52)がそれぞれ支持された請求項1記載のシリコン単結晶の引上げ装置。
- 固定羽根(52)が石英により作られ、支持部材(51)は黒鉛により作られてシリコン融液(12)に浸漬される部分の全部に石英が被覆された請求項1ないし3いずれか記載のシリコン単結晶の引上げ装置。
- シリコン融液(12)から引上げられるインゴット(25)の直径をDとするとき、放射状に設けられた複数の固定羽根(52)の外径dが0.1D〜1.0Dであって、前記複数の固定羽根(52)の中心と前記シリコン融液(12)の表面との垂直距離(L)が0.01D〜1.00Dになるように構成された請求項4記載のシリコン単結晶の引上げ装置。
- 固定羽根(52)が平板部(52a)と石英るつぼ(13)の回転方向の前記平板部(52a)に連続して形成された湾曲部(52b)とを有し、前記湾曲部(52b)の曲率半径(R)が0〜300mmであって、前記湾曲部(52b)の端部が前記平板部(52a)に対して180〜60度の角度(α)を有する請求項5記載のシリコン単結晶の引上げ装置。
- シリコン融液(12)を貯留する石英るつぼ(13)を所定の回転速度で回転させ、前記シリコン融液(12)から引上げられるシリコン単結晶のインゴット(25)を包囲する筒状の熱遮蔽部材(36)を設け、前記インゴット(25)内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上げ速度で前記インゴット(25)を引上げるシリコン単結晶の引上げ方法において、
前記熱遮蔽部材(36)の下端に固着された支持部材(51)を介して前記インゴット(25)と前記シリコン融液(12)との固液界面より下方の前記シリコン融液(12)中に複数の固定羽根(52)を前記インゴット(25)の中心軸に対して放射状に設け、
前記石英るつぼ(13)を回転させて前記複数の固定羽根(52)により前記シリコン融液(12)に対流(12a,12b)を起こさせ前記固液界面(26)が上凸状になるように前記石英るつぼ(13)の回転速度を制御する
ことを特徴とするシリコン単結晶の引上げ方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002223721A JP2004059408A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | シリコン単結晶の引上げ装置及びその引上げ方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004059408A true JP2004059408A (ja) | 2004-02-26 |
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ID=31943407
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JP2002223721A Pending JP2004059408A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | シリコン単結晶の引上げ装置及びその引上げ方法 |
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JP (1) | JP2004059408A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109930197A (zh) * | 2017-12-18 | 2019-06-25 | 上海新昇半导体科技有限公司 | 热屏及单晶硅生长炉结构 |
-
2002
- 2002-07-31 JP JP2002223721A patent/JP2004059408A/ja active Pending
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