JP2004052942A - 偏心スラスト軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望の負荷容量を容易に確保することができるとともに、軌道輪と保持器との接触を確実に阻止することができ、よってこれらの接触による摩擦及び表面損傷等の発生を防ぐことができる長寿命な偏心スラスト軸受を提供する。
【解決手段】第1軌道輪8と中間軌道輪12との間に配置される第1のころユニットA及び中間軌道輪12と第2軌道輪10との間に配置される第2のころユニットBにおいて、ころ13,15とともに転動可能なころ(転動体)14,16を設ける。さらに、これらのころ14,16と、これを収納する保持器9,11の第2ポケット9f,11fとを軸方向で接触させることにより、当該保持器9,11の軸方向への移動を規制する。
【選択図】 図3
【解決手段】第1軌道輪8と中間軌道輪12との間に配置される第1のころユニットA及び中間軌道輪12と第2軌道輪10との間に配置される第2のころユニットBにおいて、ころ13,15とともに転動可能なころ(転動体)14,16を設ける。さらに、これらのころ14,16と、これを収納する保持器9,11の第2ポケット9f,11fとを軸方向で接触させることにより、当該保持器9,11の軸方向への移動を規制する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクロール型圧縮機の旋回スクロール部材などの偏心旋回運動する旋回部材を支持する偏心スラスト軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば空気調和装置(エアコン)に組み込まれているスクロール型圧縮機は、そのケース内側に固定された螺旋状の隔壁と、この隔壁と互いに噛み合う螺旋状の隔壁を一面側に形成した旋回スクロール部材とを備えており、ケース内側及び旋回スクロール部材側の上記隔壁で囲んだ空間を圧縮室として形成するとともに、電動モータによって上記スクロール部材を旋回運動させることにより、上記圧縮室の容積を小さくし冷却媒体を圧縮している。また、上記旋回スクロール部材は、その他面(裏面)側に配置された偏心スラスト軸受によってスラスト方向に支持されており、当該スクロール部材の旋回運動が円滑に行えるようになっている。
【0003】
ところで、上記スクロール型圧縮機では、フロンガスからCO2ガス等への冷却媒体の変更に伴い、圧縮機から吐出される冷却媒体の圧力を高くすることが要求されており、上記モータの回転数を上げるなどの対処が求められている。また、その吐出圧力の高圧化により、上記偏心スラスト軸受が支持する旋回スクロール部材からの負荷もまた大きくなり、当該軸受の負荷容量を大きくすることが要求されている。
ところが、在来の偏心スラスト軸受では、通常、ボールが転動体として使用されており、上記冷却媒体の変更に伴う高負荷要求に応えることが困難であった。そこで、例えば特開2000−186680号公報に開示されているように、上記ボールに代えて円形状断面のころを用いることにより、転動体の軌道輪との接触面積を大きくし、軸受の負荷容量をも大きくすることが提案されている。また、この種の偏心スラスト軸受では、保持器ポケット内のころ収納数を増やすことにより、当該軸受の負荷容量をさらに大きくすることも提案されている(例えば特開2000−345982号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の偏心スラスト軸受では、図5(a)に示すように、例えば3個のころ60をポケット61a内に収納した保持器61が軌道輪63と接触した状態で、2つの軌道輪62,63の間に配置されていた。このため、摩擦が保持器61と軌道輪63との間に生じたり、表面損傷等の損傷が保持器61や軌道輪63に発生したりすることがあった。この結果、早期不具合が軸受に生じるという問題があった。
【0005】
また、上記特開2000−186680号公報では、図5(b)に示すように、上記旋回スクロール部材及び圧縮機側の不動部にそれぞれ取り付けられる両側の軌道輪66,67の間に中間軌道輪65を配置し、これらの軌道輪相互間に複数のころ60を備えている。当該ころ60は相互に離散するのを防止すべく、ピン64を介して中間軌道輪65に取り付けられた保持器61のポケットに収容されている。しかしながら、このポケットはころ60を1つずつ別個に離隔して収容するため、一定の大きさの保持器61に設けるポケット数、すなわちころ数が少なくなり、所望の負荷容量を確保し難いものであった。
【0006】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、所望の負荷容量を容易に確保することができるとともに、軌道輪と保持器との接触を確実に阻止することができ、よってこれらの接触による摩擦及び表面損傷等の発生を防ぐことができる長寿命な偏心スラスト軸受を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の偏心スラスト軸受は、偏心旋回運動する旋回部材を固定部材上に支持する偏心スラスト軸受であって、
前記固定部材及び前記旋回部材から離間して設けられるとともに、前記固定部材側に設けられた軌道面及び前記旋回部材側に設けられた軌道面にそれぞれ対向する第1軌道面及び第2軌道面が形成された軌道輪と、前記固定部材側の軌道面と前記第1軌道面との間で所定方向に転動する複数個のころ及びこれらのころを保持する保持器を有する第1のころユニットと、前記旋回部材側の軌道面と前記第2軌道面との間で前記第1のころユニットのころとは互いに異なる方向に転動する複数個のころ及びこれらのころを保持する保持器を有する第2のころユニットとを備え、
前記第1及び第2の各ころユニットに、対応するころとともに転動可能な複数個の転動体を設け、かつ前記第1及び第2のころユニットの各保持器に、対応するころを収納する複数の第1ポケットと、前記転動体を収納するとともに、その転動体と軸方向で接触することにより、当該保持器の軸方向への移動を規制する複数の第2ポケットとを設けていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
上記のように構成された偏心スラスト軸受の各ころユニットでは、上記転動体が第2ポケットと接触することにより、保持器の軸方向への移動を規制しているので、当該保持器を対応する軌道輪の間で浮かせた状態に維持することができる。また、上記転動体は第1ポケットに収納されたころとともに転動可能に構成されていることから、それらのころの転動を阻害することがなく、さらには当該転動体に軸受負荷を分担させることができる。
【0009】
また、上記偏心スラスト軸受(請求項1)において、前記転動体が、対応するころユニットのころにより構成されることが好ましい(請求項2)。
この場合、上記転動体ところとが兼用されることとなり、偏心スラスト軸受の部品点数を少なくすることができる。
【0010】
また、上記偏心スラスト軸受(請求項1または2)において、前記第1ポケットには、複数個の前記ころがその転動方向に隣接して収納され、かつ前記第2ポケットには、1個の前記転動体が収納されてもよい(請求項3)。
この場合、上記第1ポケットにまとめて収納した複数個のころにより、対応する軌道輪との接触面積を容易に大きくすることができる。また、上記複数の各第2ポケットにおいて、1個の転動体によって保持器の軸方向への移動を規制することにより、複数個の転動体で規制する場合に比べ安定した状態で保持器を浮かせて維持することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の偏心スラスト軸受の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、スクロール型圧縮機に適用した場合について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る偏心スラスト軸受を適用したスクロール圧縮機の主要部を示す断面図である。図2は上記偏心スラスト軸受の要部構成例を示す一部切裁平面図であり、図3はその軸受の要部断面図である。
図1において、本実施形態の圧縮機1は、ハウジング2と、このハウジング2の上部に取付・取外し可能に設けられた上蓋部3と、上記ハウジング2の軸孔2a内に配置され、図の下端部が当該圧縮機1の駆動源としての電動モータの出力軸(図示せず)に連結された回転軸4と、ラジアル軸受6を介して回転軸4の上端部に連結された旋回部材としての旋回スクロール部材5とを備えている。上記回転軸4の上端部は、図に示すように、クランク状に形成されており、当該回転軸4が、旋回スクロール部材5を上記出力軸に対して偏心させた状態で旋回運動を行わせる旋回軸として機能するようになっている。
【0013】
上記旋回スクロール部材5は、本発明の偏心スラスト軸受7により、スラスト方向に支持されており、固定部材としての上記ハウジング2の環状の軸方向端面2b上で偏心旋回運動する。また、この旋回スクロール部材5の上面5aには、螺旋状の隔壁5a1が形成されており、上記上蓋部3の内面に形成された螺旋状の隔壁3aと互いに噛み合うようになっている。これら隔壁5a1,3aにより冷却媒体を圧縮する圧縮室Pが上蓋部3の内面と旋回スクロール部材5の上面5aとの間に形成され、上記回転軸4によって旋回スクロール部材5が駆動されたときに、隔壁5a1が不動側の隔壁3aに対して旋回運動することで圧縮室Pの容積が変化し、当該室P内の冷却媒体を圧縮するようになっている。尚、圧縮室Pにて圧縮された冷却媒体は、上記上蓋部3に設けられた吐出口3bから圧縮機1の外部に供給されており、冷却媒体が圧縮、凝縮、膨脹、及び蒸発からなる冷凍または加熱サイクルを循環することで当該圧縮機1を内蔵した空気調和装置が所望の空調を行えるようになっている。
【0014】
上記偏心スラスト軸受7は、図2、図3(a)及び(b)も参照して、上記ハウジング2の軸方向端面2b及び旋回スクロール部材5の下面5b(図1)にそれぞれ取り付けられる円環状の第1軌道輪8及び第2軌道輪10と、これらの軌道輪8,10の間に介装された円環状の中間軌道輪12と、第1軌道輪8と中間軌道輪12との間に配置された第1のころユニットAと、中間軌道輪12と第2軌道輪10との間に配置された第2のころユニットBとを備えている。
上記第1、第2、及び中間軌道輪8,10,12は、軸受用鋼などの軌道輪として必要な強度及び耐久性を確保した金属板により構成されたものであり、各々互いに対向する表面には軌道面が形成されている。
【0015】
上記第1のころユニットAは、円環状の保持器9と、この保持器9により保持された状態で、第1軌道輪8の軌道面8aと中間軌道輪12の下側軌道面12bとの間で図2のY軸と平行な軸を回転軸として同図のX軸方向に転動する複数個(例えば24個)のころ13とを備えている。同様に、上記第2のころユニットBは、円環状の保持器11と、この保持器11により保持された状態で、中間軌道輪12の上側軌道面12aと第2軌道輪10の軌道面10aとの間で上記X軸と平行な軸を回転軸として上記Y軸方向に転動する複数個(例えば24個)のころ15とを備えている。
上記保持器9及び11には、それぞれ図4(a)及び(b)も参照して、X軸及びY軸方向に延ばされた長孔9a,9b及び11a,11bが設けられており、例えば第1及び第2軌道輪8及び10側から当該軸受7の軸方向に設けられた各々2本の自転防止用ピン17及び18が挿通されることにより、保持器9及び11のY軸及びX軸方向への移動がそれぞれ規制されて、当該保持器9及び11の自転を防止している。また、上記自転防止用ピン17及び18は、それぞれ長孔9a,9b及び11a,11bと軸方向で互いに重なり合う位置で上記中間軌道輪12に設けられた長孔にも挿通されており、中間軌道輪12のY軸及びX軸方向への移動を規制しその自転を防止している。尚、上記保持器9及び11は同一形状のものが用いられており、中心軸(図の0点を通りX,Y軸に垂直な軸)回りに相互に90゜位相をずらせて配置されている。
【0016】
また、上記各ころユニットA,Bには、対応するころ13,15とともに転動可能な転動体としての複数個(例えば4個)のころ14,16が設けられている。これらのころ14,16は、対応する保持器9,11の後述の第2ポケット9f,11fと軸方向で接触し当該保持器9,11の軸方向への移動を規制しつつ、上記X軸及びY軸方向にそれぞれ転動する。
上記ころ13〜16には、材質やころ直径などの寸法が全く同じである同一の例えば円筒ころが使用されており、その有効軌道部の両端部にはクラウニングが施されて当該両端部の軌道面との接触部での急峻な面圧ピーク(エッジロード)を抑えるようになっている。
【0017】
上記保持器9,11は、図3(a)及び(b)に示すように、それぞれ内外周端部が断面L字状に形成された例えば円環状の2枚の金属薄板9c,9d;11c,11dにより構成されている。詳細には、上記金属薄板9c,9d;11c,11dが各々一側面側の開口部を互いに閉塞するように組み合わせられた後、内外周端部がかしめられることによって対応する金属薄板9c,9d;11c,11d同士が一体化され、中空構造の保持器9,11が形成される。
また、上記金属薄板9c,9dには、長方形状の複数の開口が打抜き加工等で予め設けられており、保持器9を形成したときに上記ころ13,14をそれぞれ収納する第1ポケット9e及び上記第2ポケット9fが当該保持器9に形成されるようになっている。同様に、上記金属薄板11c,11dには、長方形状の複数の開口が予め設けられており、保持器11を形成したときに上記ころ15,16をそれぞれ収納する第1ポケット11e及び上記第2ポケット11fが当該保持器11に形成されるようになっている。
尚、上記説明以外に、1枚の金属板あるいは合成樹脂板により保持器9,11を構成してもよい。
【0018】
また、保持器9には、図4(a)に示すように、複数(例えば8つ)の上記第1ポケット9eが円周等配の位置に設けられ、複数(例えば4つ)の上記第2ポケット9fが2つの第1ポケット9eの間で円周等配の位置に設けられている。各第1ポケット9eは、上記軸受7の軸方向に開口したものであり、3個の上記ころ13をその転動方向に隣接させた状態で収納し、それらのころ13の転動位置のみを規制するようになっている。また、各第2ポケット9fは、上記軸方向に開口したものであり、1個の上記ころ14が収納されている。そして、この第2ポケット9fところ14とが軸方向で接触することにより、保持器9は第1軌道輪8と中間軌道輪12との間で浮いた状態に維持される(図2及び図3(a)も参照)。
【0019】
同様に、上記保持器11には、図4(b)に示すように、複数(例えば8つ)の上記第1ポケット11eが円周等配の位置に設けられ、複数(例えば4つ)の上記第2ポケット11fが2つの第1ポケット11eの間で円周等配の位置に設けられている。各第1ポケット11eは、上記軸方向に開口したものであり、3個の上記ころ15をその転動方向に隣接させた状態で収納し、それらのころ15の転動位置のみを規制するようになっている。また、各第2ポケット11fは、上記軸方向に開口したものであり、1個の上記ころ16が収納されている。そして、この第2ポケット11fところ16とが軸方向で接触することにより、保持器11は中間軌道輪12と第2軌道輪10との間で浮いた状態に維持される(図2及び図3(b)も参照)。
【0020】
以上のように、本実施形態の偏心スラスト軸受7では、上記第1及び第2の各ころユニットA,Bにおいて、ころ(転動体)14,16とこれを保持する保持器9,11の第2ポケット9f,11fとを軸方向で互いに接触させ、当該保持器9,11を第1軌道輪8と中間軌道輪12との間及び中間軌道輪12と第2軌道輪10との間で浮かせた状態に維持している。従って、各ころユニットA,Bのころ13,15の設置数を増やしたり、軌道面との接触面積が大きい長いころ長さを有するころを上記ころ13,15に用いたりするなどにより、当該軸受7の負荷容量を大きくしたときでも、保持器9,11と軌道輪8,10,12との接触を確実に阻止することができる。これにより、保持器9,11と軌道輪8,10,12との間に摩擦が生じるのを防ぐことができ、さらには保持器9,11及び軌道輪8,10,12に表面損傷等の損傷が発生するのを防止することができる。この結果、偏心スラスト軸受7の長寿命化を図ることができる。
【0021】
また、上記ころ14,16は、同じころユニットA,Bの各ころ13,15とともに転動可能に構成されているので、ころ13,15の各動作、ひいては軸受動作に支障が生じるのを防ぐことができ、しかも当該ころ14,16に軸受負荷を分担させることができる。それゆえ、複数個のころ13,15を用いた点とも相まって、所望の軸受負荷を容易に確保することができ、高負荷要求に対応した偏心スラスト軸受7を簡単に構成することができる。また、このように高負荷容量の偏心スラスト軸受7を簡単に構成することができることから、フロンガスの代わりにCO2ガスなどの冷却媒体を使用するスクロール型圧縮機に当該軸受7を適用することでオゾンホール発生などの環境破壊を防止できる空気調和装置などを容易に構成することができる。
【0022】
また、本実施形態では、上記転動体としてのころ14,16が上記各ころユニットA,Bに本来的に設けられたころ13,15と同一のころにより構成されているので、偏心スラスト軸受7の部品点数を少なくすることができる。この結果、当該軸受7の製造作業を簡単化することができ、さらには製造コストを抑えることができる。
【0023】
また、本実施形態では、各保持器9,11の第1ポケット9e,11eに3個のころ13,15をまとめて収納しているので、対応する軌道輪との接触面積を容易に大きくして、負荷容量の大きい軸受を簡単に構成することができる。また、上記各第2ポケット9f,11fにおいて、1個のころ14,16によって保持器9,11の軸方向への移動を規制しているので、複数個のころ14,16を1つの第2ポケット9f,11fに収納して上記移動を規制する場合に比べて、安定した状態で保持器9,11を浮かせて維持することができる。
【0024】
尚、上記の説明では、第1、第2、及び中間軌道輪8,12,10を設けて、スクロール型圧縮機1に適用した場合について説明したが、本発明の偏心スラスト軸受は偏心旋回運動する旋回部材を固定部材上に支持する軸受において、隣り合う2つの軌道輪間に配置された保持器が、ころとともに転動可能な転動体により、上記軌道輪間で浮かせた状態に維持されるものであればよく、軌道輪及びころユニットの設置数や形状などは上記のものに何等限定されない。具体的には、ハウジング2の軸方向端面2b及び旋回スクロール部材5の裏面5bに固定部材側及び旋回部材側の軌道面を設け、これらの軌道面にそれぞれ対向する第1及び第2軌道面としての下側及び上側軌道面12b,12aを備えた中間軌道輪12を上記固定部材及び旋回部材から離間して設けられた軌道輪として配置した構成でもよい。また、上記第1及び第2軌道輪8,10の間に複数の中間軌道輪12を軸方向に離間配置し、それら中間軌道輪12の各間に転動方向が異なるころを有するころユニットを介装する構成でもよい。このように構成した場合は、旋回スクロール部材5の旋回運動をX軸及びY軸方向の成分に分けて支持する上記実施形態に比べ、中間軌道輪12の各間に介装するころユニット数に応じて、上記旋回運動をより円滑に支持することができる。
【0025】
また、上記の説明では、第1及び第2のころユニットA,Bの各ころ13,15がそれぞれX軸及びY軸方向に転動する場合について説明したが、旋回部材の旋回運動を支持することができるものであればよく、ころ13,15の転動方向が一平面上で見たときに平行でなければよい。
また、上記の説明では、対応する保持器9,11の第2ポケット9f,11fと軸方向で接触することにより、当該保持器9,11の軸方向への移動を規制する転動体として、上記第1及び第2の各ころユニットA,Bのころ13,15と同一のものを用いた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、転動体は対応するころユニットA,Bに含まれたころ13,15とともに転動可能に構成されたものであればよく、例えばころ13,15の直径と実質的に同一寸法の直径からなるボールにより上記転動体を構成し、軌道輪間を転動させつつ、保持器の軸方向への移動を規制させてもよい。
【0026】
また、上記の説明では、各ころユニットA,Bにおいて、円周等配される4個のころ(転動体)14,16を用いた構成について説明したが、2つの軌道輪間に挟まれた保持器のそれら軌道輪との接触を防ぐことができるものであればよく、円周等配3箇所以上の位置に転動体を配置する構成であればよい。
また、上記の説明では、各保持器9,11において、長方形状の第1及び第2ポケット9e,9f;11e,11fを構成し、3つのころ13,15及び1つのころ14,16を収納する構成について説明したが、本発明の保持器ポケットはこれらのものに何等限定されるものではなく、必要な負荷能力や軸受寸法などによりころ数、直径、長さ等のころ形状を選択しその選択に応じて適宜ポケットを変更することができる。
また、上記ポケット9e,9f;11e,11fを円周等配の位置に設ける例を示したが、これらの位置は特に限定する必要はなく、保持器の強度を確保しつつ有効にスペースを活用するよう適宜設定すればよい。
【0027】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1の偏心スラスト軸受によれば、隣り合う2つの軌道輪間に配置された保持器が、ころとともに転動可能な転動体により、上記軌道輪間で浮かせた状態に維持されるので、当該保持器と軌道輪との接触を確実に阻止することができる。この結果、保持器と軌道輪との間の摩擦、並びに保持器及び軌道輪に表面損傷等の損傷が発生するのを防止することができ、軸受の長寿命化を図ることができる。また、上記転動体により保持器を浮かせた状態とし、かつその転動体に軸受負荷を分担させることができるので、複数個のころを用いた点とも相まって、所望の軸受負荷を容易に確保することができる。
【0028】
請求項2の偏心スラスト軸受によれば、上記転動体ところとを兼用することができるので、当該軸受の部品点数を少なくすることができ、軸受の製造作業を簡単化することができるとともに、軸受の製造コストを抑えることができる。
【0029】
請求項3の偏心スラスト軸受によれば、複数個のころを第1ポケットにまとめて収納しているので、対応する軌道輪との接触面積を容易に大きくして、負荷容量の大きい軸受を簡単に構成することができる。また、上記各第2ポケットに収納した1個の転動体により、保持器を安定した状態で浮かせて維持することができるので、保持器の軌道輪との接触をより確実に防ぐことができ、長寿命な軸受を簡単に構成することできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る偏心スラスト軸受を適用したスクロール圧縮機の主要部を示す断面図である。
【図2】上記偏心スラスト軸受の要部構成例を示す一部切裁平面図である。
【図3】上記偏心スラスト軸受の要部を示す断面図であり、(a)は保持器の第1ポケット近傍の断面図であり、(b)は同保持器の第2ポケット近傍の断面図である。
【図4】(a)及び(b)は、それぞれ図2に示した保持器9及び11の具体例を示す平面図である。
【図5】(a)は従来の偏心スラスト軸受の要部構成を示す断面図であり、(b)は別の従来の偏心スラスト軸受の要部構成を示す断面図である。
【符号の説明】
2 ハウジング(固定部材)
5 旋回スクロール部材(旋回部材)
7 偏心スラスト軸受
8 第1軌道輪
8a 軌道面(固定部材側の軌道面)
9,11 保持器
9e,11e 第1ポケット
9f,11f 第2ポケット
10 第2軌道輪
10a 軌道面(旋回部材側の軌道面)
12 中間軌道輪
12a 上側軌道面(第2軌道面)
12b 下側軌道面(第1軌道面)
13,15 ころ
14,16 ころ(転動体)
A 第1のころユニット
B 第2のころユニット
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクロール型圧縮機の旋回スクロール部材などの偏心旋回運動する旋回部材を支持する偏心スラスト軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば空気調和装置(エアコン)に組み込まれているスクロール型圧縮機は、そのケース内側に固定された螺旋状の隔壁と、この隔壁と互いに噛み合う螺旋状の隔壁を一面側に形成した旋回スクロール部材とを備えており、ケース内側及び旋回スクロール部材側の上記隔壁で囲んだ空間を圧縮室として形成するとともに、電動モータによって上記スクロール部材を旋回運動させることにより、上記圧縮室の容積を小さくし冷却媒体を圧縮している。また、上記旋回スクロール部材は、その他面(裏面)側に配置された偏心スラスト軸受によってスラスト方向に支持されており、当該スクロール部材の旋回運動が円滑に行えるようになっている。
【0003】
ところで、上記スクロール型圧縮機では、フロンガスからCO2ガス等への冷却媒体の変更に伴い、圧縮機から吐出される冷却媒体の圧力を高くすることが要求されており、上記モータの回転数を上げるなどの対処が求められている。また、その吐出圧力の高圧化により、上記偏心スラスト軸受が支持する旋回スクロール部材からの負荷もまた大きくなり、当該軸受の負荷容量を大きくすることが要求されている。
ところが、在来の偏心スラスト軸受では、通常、ボールが転動体として使用されており、上記冷却媒体の変更に伴う高負荷要求に応えることが困難であった。そこで、例えば特開2000−186680号公報に開示されているように、上記ボールに代えて円形状断面のころを用いることにより、転動体の軌道輪との接触面積を大きくし、軸受の負荷容量をも大きくすることが提案されている。また、この種の偏心スラスト軸受では、保持器ポケット内のころ収納数を増やすことにより、当該軸受の負荷容量をさらに大きくすることも提案されている(例えば特開2000−345982号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の偏心スラスト軸受では、図5(a)に示すように、例えば3個のころ60をポケット61a内に収納した保持器61が軌道輪63と接触した状態で、2つの軌道輪62,63の間に配置されていた。このため、摩擦が保持器61と軌道輪63との間に生じたり、表面損傷等の損傷が保持器61や軌道輪63に発生したりすることがあった。この結果、早期不具合が軸受に生じるという問題があった。
【0005】
また、上記特開2000−186680号公報では、図5(b)に示すように、上記旋回スクロール部材及び圧縮機側の不動部にそれぞれ取り付けられる両側の軌道輪66,67の間に中間軌道輪65を配置し、これらの軌道輪相互間に複数のころ60を備えている。当該ころ60は相互に離散するのを防止すべく、ピン64を介して中間軌道輪65に取り付けられた保持器61のポケットに収容されている。しかしながら、このポケットはころ60を1つずつ別個に離隔して収容するため、一定の大きさの保持器61に設けるポケット数、すなわちころ数が少なくなり、所望の負荷容量を確保し難いものであった。
【0006】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、所望の負荷容量を容易に確保することができるとともに、軌道輪と保持器との接触を確実に阻止することができ、よってこれらの接触による摩擦及び表面損傷等の発生を防ぐことができる長寿命な偏心スラスト軸受を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の偏心スラスト軸受は、偏心旋回運動する旋回部材を固定部材上に支持する偏心スラスト軸受であって、
前記固定部材及び前記旋回部材から離間して設けられるとともに、前記固定部材側に設けられた軌道面及び前記旋回部材側に設けられた軌道面にそれぞれ対向する第1軌道面及び第2軌道面が形成された軌道輪と、前記固定部材側の軌道面と前記第1軌道面との間で所定方向に転動する複数個のころ及びこれらのころを保持する保持器を有する第1のころユニットと、前記旋回部材側の軌道面と前記第2軌道面との間で前記第1のころユニットのころとは互いに異なる方向に転動する複数個のころ及びこれらのころを保持する保持器を有する第2のころユニットとを備え、
前記第1及び第2の各ころユニットに、対応するころとともに転動可能な複数個の転動体を設け、かつ前記第1及び第2のころユニットの各保持器に、対応するころを収納する複数の第1ポケットと、前記転動体を収納するとともに、その転動体と軸方向で接触することにより、当該保持器の軸方向への移動を規制する複数の第2ポケットとを設けていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
上記のように構成された偏心スラスト軸受の各ころユニットでは、上記転動体が第2ポケットと接触することにより、保持器の軸方向への移動を規制しているので、当該保持器を対応する軌道輪の間で浮かせた状態に維持することができる。また、上記転動体は第1ポケットに収納されたころとともに転動可能に構成されていることから、それらのころの転動を阻害することがなく、さらには当該転動体に軸受負荷を分担させることができる。
【0009】
また、上記偏心スラスト軸受(請求項1)において、前記転動体が、対応するころユニットのころにより構成されることが好ましい(請求項2)。
この場合、上記転動体ところとが兼用されることとなり、偏心スラスト軸受の部品点数を少なくすることができる。
【0010】
また、上記偏心スラスト軸受(請求項1または2)において、前記第1ポケットには、複数個の前記ころがその転動方向に隣接して収納され、かつ前記第2ポケットには、1個の前記転動体が収納されてもよい(請求項3)。
この場合、上記第1ポケットにまとめて収納した複数個のころにより、対応する軌道輪との接触面積を容易に大きくすることができる。また、上記複数の各第2ポケットにおいて、1個の転動体によって保持器の軸方向への移動を規制することにより、複数個の転動体で規制する場合に比べ安定した状態で保持器を浮かせて維持することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の偏心スラスト軸受の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、スクロール型圧縮機に適用した場合について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る偏心スラスト軸受を適用したスクロール圧縮機の主要部を示す断面図である。図2は上記偏心スラスト軸受の要部構成例を示す一部切裁平面図であり、図3はその軸受の要部断面図である。
図1において、本実施形態の圧縮機1は、ハウジング2と、このハウジング2の上部に取付・取外し可能に設けられた上蓋部3と、上記ハウジング2の軸孔2a内に配置され、図の下端部が当該圧縮機1の駆動源としての電動モータの出力軸(図示せず)に連結された回転軸4と、ラジアル軸受6を介して回転軸4の上端部に連結された旋回部材としての旋回スクロール部材5とを備えている。上記回転軸4の上端部は、図に示すように、クランク状に形成されており、当該回転軸4が、旋回スクロール部材5を上記出力軸に対して偏心させた状態で旋回運動を行わせる旋回軸として機能するようになっている。
【0013】
上記旋回スクロール部材5は、本発明の偏心スラスト軸受7により、スラスト方向に支持されており、固定部材としての上記ハウジング2の環状の軸方向端面2b上で偏心旋回運動する。また、この旋回スクロール部材5の上面5aには、螺旋状の隔壁5a1が形成されており、上記上蓋部3の内面に形成された螺旋状の隔壁3aと互いに噛み合うようになっている。これら隔壁5a1,3aにより冷却媒体を圧縮する圧縮室Pが上蓋部3の内面と旋回スクロール部材5の上面5aとの間に形成され、上記回転軸4によって旋回スクロール部材5が駆動されたときに、隔壁5a1が不動側の隔壁3aに対して旋回運動することで圧縮室Pの容積が変化し、当該室P内の冷却媒体を圧縮するようになっている。尚、圧縮室Pにて圧縮された冷却媒体は、上記上蓋部3に設けられた吐出口3bから圧縮機1の外部に供給されており、冷却媒体が圧縮、凝縮、膨脹、及び蒸発からなる冷凍または加熱サイクルを循環することで当該圧縮機1を内蔵した空気調和装置が所望の空調を行えるようになっている。
【0014】
上記偏心スラスト軸受7は、図2、図3(a)及び(b)も参照して、上記ハウジング2の軸方向端面2b及び旋回スクロール部材5の下面5b(図1)にそれぞれ取り付けられる円環状の第1軌道輪8及び第2軌道輪10と、これらの軌道輪8,10の間に介装された円環状の中間軌道輪12と、第1軌道輪8と中間軌道輪12との間に配置された第1のころユニットAと、中間軌道輪12と第2軌道輪10との間に配置された第2のころユニットBとを備えている。
上記第1、第2、及び中間軌道輪8,10,12は、軸受用鋼などの軌道輪として必要な強度及び耐久性を確保した金属板により構成されたものであり、各々互いに対向する表面には軌道面が形成されている。
【0015】
上記第1のころユニットAは、円環状の保持器9と、この保持器9により保持された状態で、第1軌道輪8の軌道面8aと中間軌道輪12の下側軌道面12bとの間で図2のY軸と平行な軸を回転軸として同図のX軸方向に転動する複数個(例えば24個)のころ13とを備えている。同様に、上記第2のころユニットBは、円環状の保持器11と、この保持器11により保持された状態で、中間軌道輪12の上側軌道面12aと第2軌道輪10の軌道面10aとの間で上記X軸と平行な軸を回転軸として上記Y軸方向に転動する複数個(例えば24個)のころ15とを備えている。
上記保持器9及び11には、それぞれ図4(a)及び(b)も参照して、X軸及びY軸方向に延ばされた長孔9a,9b及び11a,11bが設けられており、例えば第1及び第2軌道輪8及び10側から当該軸受7の軸方向に設けられた各々2本の自転防止用ピン17及び18が挿通されることにより、保持器9及び11のY軸及びX軸方向への移動がそれぞれ規制されて、当該保持器9及び11の自転を防止している。また、上記自転防止用ピン17及び18は、それぞれ長孔9a,9b及び11a,11bと軸方向で互いに重なり合う位置で上記中間軌道輪12に設けられた長孔にも挿通されており、中間軌道輪12のY軸及びX軸方向への移動を規制しその自転を防止している。尚、上記保持器9及び11は同一形状のものが用いられており、中心軸(図の0点を通りX,Y軸に垂直な軸)回りに相互に90゜位相をずらせて配置されている。
【0016】
また、上記各ころユニットA,Bには、対応するころ13,15とともに転動可能な転動体としての複数個(例えば4個)のころ14,16が設けられている。これらのころ14,16は、対応する保持器9,11の後述の第2ポケット9f,11fと軸方向で接触し当該保持器9,11の軸方向への移動を規制しつつ、上記X軸及びY軸方向にそれぞれ転動する。
上記ころ13〜16には、材質やころ直径などの寸法が全く同じである同一の例えば円筒ころが使用されており、その有効軌道部の両端部にはクラウニングが施されて当該両端部の軌道面との接触部での急峻な面圧ピーク(エッジロード)を抑えるようになっている。
【0017】
上記保持器9,11は、図3(a)及び(b)に示すように、それぞれ内外周端部が断面L字状に形成された例えば円環状の2枚の金属薄板9c,9d;11c,11dにより構成されている。詳細には、上記金属薄板9c,9d;11c,11dが各々一側面側の開口部を互いに閉塞するように組み合わせられた後、内外周端部がかしめられることによって対応する金属薄板9c,9d;11c,11d同士が一体化され、中空構造の保持器9,11が形成される。
また、上記金属薄板9c,9dには、長方形状の複数の開口が打抜き加工等で予め設けられており、保持器9を形成したときに上記ころ13,14をそれぞれ収納する第1ポケット9e及び上記第2ポケット9fが当該保持器9に形成されるようになっている。同様に、上記金属薄板11c,11dには、長方形状の複数の開口が予め設けられており、保持器11を形成したときに上記ころ15,16をそれぞれ収納する第1ポケット11e及び上記第2ポケット11fが当該保持器11に形成されるようになっている。
尚、上記説明以外に、1枚の金属板あるいは合成樹脂板により保持器9,11を構成してもよい。
【0018】
また、保持器9には、図4(a)に示すように、複数(例えば8つ)の上記第1ポケット9eが円周等配の位置に設けられ、複数(例えば4つ)の上記第2ポケット9fが2つの第1ポケット9eの間で円周等配の位置に設けられている。各第1ポケット9eは、上記軸受7の軸方向に開口したものであり、3個の上記ころ13をその転動方向に隣接させた状態で収納し、それらのころ13の転動位置のみを規制するようになっている。また、各第2ポケット9fは、上記軸方向に開口したものであり、1個の上記ころ14が収納されている。そして、この第2ポケット9fところ14とが軸方向で接触することにより、保持器9は第1軌道輪8と中間軌道輪12との間で浮いた状態に維持される(図2及び図3(a)も参照)。
【0019】
同様に、上記保持器11には、図4(b)に示すように、複数(例えば8つ)の上記第1ポケット11eが円周等配の位置に設けられ、複数(例えば4つ)の上記第2ポケット11fが2つの第1ポケット11eの間で円周等配の位置に設けられている。各第1ポケット11eは、上記軸方向に開口したものであり、3個の上記ころ15をその転動方向に隣接させた状態で収納し、それらのころ15の転動位置のみを規制するようになっている。また、各第2ポケット11fは、上記軸方向に開口したものであり、1個の上記ころ16が収納されている。そして、この第2ポケット11fところ16とが軸方向で接触することにより、保持器11は中間軌道輪12と第2軌道輪10との間で浮いた状態に維持される(図2及び図3(b)も参照)。
【0020】
以上のように、本実施形態の偏心スラスト軸受7では、上記第1及び第2の各ころユニットA,Bにおいて、ころ(転動体)14,16とこれを保持する保持器9,11の第2ポケット9f,11fとを軸方向で互いに接触させ、当該保持器9,11を第1軌道輪8と中間軌道輪12との間及び中間軌道輪12と第2軌道輪10との間で浮かせた状態に維持している。従って、各ころユニットA,Bのころ13,15の設置数を増やしたり、軌道面との接触面積が大きい長いころ長さを有するころを上記ころ13,15に用いたりするなどにより、当該軸受7の負荷容量を大きくしたときでも、保持器9,11と軌道輪8,10,12との接触を確実に阻止することができる。これにより、保持器9,11と軌道輪8,10,12との間に摩擦が生じるのを防ぐことができ、さらには保持器9,11及び軌道輪8,10,12に表面損傷等の損傷が発生するのを防止することができる。この結果、偏心スラスト軸受7の長寿命化を図ることができる。
【0021】
また、上記ころ14,16は、同じころユニットA,Bの各ころ13,15とともに転動可能に構成されているので、ころ13,15の各動作、ひいては軸受動作に支障が生じるのを防ぐことができ、しかも当該ころ14,16に軸受負荷を分担させることができる。それゆえ、複数個のころ13,15を用いた点とも相まって、所望の軸受負荷を容易に確保することができ、高負荷要求に対応した偏心スラスト軸受7を簡単に構成することができる。また、このように高負荷容量の偏心スラスト軸受7を簡単に構成することができることから、フロンガスの代わりにCO2ガスなどの冷却媒体を使用するスクロール型圧縮機に当該軸受7を適用することでオゾンホール発生などの環境破壊を防止できる空気調和装置などを容易に構成することができる。
【0022】
また、本実施形態では、上記転動体としてのころ14,16が上記各ころユニットA,Bに本来的に設けられたころ13,15と同一のころにより構成されているので、偏心スラスト軸受7の部品点数を少なくすることができる。この結果、当該軸受7の製造作業を簡単化することができ、さらには製造コストを抑えることができる。
【0023】
また、本実施形態では、各保持器9,11の第1ポケット9e,11eに3個のころ13,15をまとめて収納しているので、対応する軌道輪との接触面積を容易に大きくして、負荷容量の大きい軸受を簡単に構成することができる。また、上記各第2ポケット9f,11fにおいて、1個のころ14,16によって保持器9,11の軸方向への移動を規制しているので、複数個のころ14,16を1つの第2ポケット9f,11fに収納して上記移動を規制する場合に比べて、安定した状態で保持器9,11を浮かせて維持することができる。
【0024】
尚、上記の説明では、第1、第2、及び中間軌道輪8,12,10を設けて、スクロール型圧縮機1に適用した場合について説明したが、本発明の偏心スラスト軸受は偏心旋回運動する旋回部材を固定部材上に支持する軸受において、隣り合う2つの軌道輪間に配置された保持器が、ころとともに転動可能な転動体により、上記軌道輪間で浮かせた状態に維持されるものであればよく、軌道輪及びころユニットの設置数や形状などは上記のものに何等限定されない。具体的には、ハウジング2の軸方向端面2b及び旋回スクロール部材5の裏面5bに固定部材側及び旋回部材側の軌道面を設け、これらの軌道面にそれぞれ対向する第1及び第2軌道面としての下側及び上側軌道面12b,12aを備えた中間軌道輪12を上記固定部材及び旋回部材から離間して設けられた軌道輪として配置した構成でもよい。また、上記第1及び第2軌道輪8,10の間に複数の中間軌道輪12を軸方向に離間配置し、それら中間軌道輪12の各間に転動方向が異なるころを有するころユニットを介装する構成でもよい。このように構成した場合は、旋回スクロール部材5の旋回運動をX軸及びY軸方向の成分に分けて支持する上記実施形態に比べ、中間軌道輪12の各間に介装するころユニット数に応じて、上記旋回運動をより円滑に支持することができる。
【0025】
また、上記の説明では、第1及び第2のころユニットA,Bの各ころ13,15がそれぞれX軸及びY軸方向に転動する場合について説明したが、旋回部材の旋回運動を支持することができるものであればよく、ころ13,15の転動方向が一平面上で見たときに平行でなければよい。
また、上記の説明では、対応する保持器9,11の第2ポケット9f,11fと軸方向で接触することにより、当該保持器9,11の軸方向への移動を規制する転動体として、上記第1及び第2の各ころユニットA,Bのころ13,15と同一のものを用いた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、転動体は対応するころユニットA,Bに含まれたころ13,15とともに転動可能に構成されたものであればよく、例えばころ13,15の直径と実質的に同一寸法の直径からなるボールにより上記転動体を構成し、軌道輪間を転動させつつ、保持器の軸方向への移動を規制させてもよい。
【0026】
また、上記の説明では、各ころユニットA,Bにおいて、円周等配される4個のころ(転動体)14,16を用いた構成について説明したが、2つの軌道輪間に挟まれた保持器のそれら軌道輪との接触を防ぐことができるものであればよく、円周等配3箇所以上の位置に転動体を配置する構成であればよい。
また、上記の説明では、各保持器9,11において、長方形状の第1及び第2ポケット9e,9f;11e,11fを構成し、3つのころ13,15及び1つのころ14,16を収納する構成について説明したが、本発明の保持器ポケットはこれらのものに何等限定されるものではなく、必要な負荷能力や軸受寸法などによりころ数、直径、長さ等のころ形状を選択しその選択に応じて適宜ポケットを変更することができる。
また、上記ポケット9e,9f;11e,11fを円周等配の位置に設ける例を示したが、これらの位置は特に限定する必要はなく、保持器の強度を確保しつつ有効にスペースを活用するよう適宜設定すればよい。
【0027】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1の偏心スラスト軸受によれば、隣り合う2つの軌道輪間に配置された保持器が、ころとともに転動可能な転動体により、上記軌道輪間で浮かせた状態に維持されるので、当該保持器と軌道輪との接触を確実に阻止することができる。この結果、保持器と軌道輪との間の摩擦、並びに保持器及び軌道輪に表面損傷等の損傷が発生するのを防止することができ、軸受の長寿命化を図ることができる。また、上記転動体により保持器を浮かせた状態とし、かつその転動体に軸受負荷を分担させることができるので、複数個のころを用いた点とも相まって、所望の軸受負荷を容易に確保することができる。
【0028】
請求項2の偏心スラスト軸受によれば、上記転動体ところとを兼用することができるので、当該軸受の部品点数を少なくすることができ、軸受の製造作業を簡単化することができるとともに、軸受の製造コストを抑えることができる。
【0029】
請求項3の偏心スラスト軸受によれば、複数個のころを第1ポケットにまとめて収納しているので、対応する軌道輪との接触面積を容易に大きくして、負荷容量の大きい軸受を簡単に構成することができる。また、上記各第2ポケットに収納した1個の転動体により、保持器を安定した状態で浮かせて維持することができるので、保持器の軌道輪との接触をより確実に防ぐことができ、長寿命な軸受を簡単に構成することできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る偏心スラスト軸受を適用したスクロール圧縮機の主要部を示す断面図である。
【図2】上記偏心スラスト軸受の要部構成例を示す一部切裁平面図である。
【図3】上記偏心スラスト軸受の要部を示す断面図であり、(a)は保持器の第1ポケット近傍の断面図であり、(b)は同保持器の第2ポケット近傍の断面図である。
【図4】(a)及び(b)は、それぞれ図2に示した保持器9及び11の具体例を示す平面図である。
【図5】(a)は従来の偏心スラスト軸受の要部構成を示す断面図であり、(b)は別の従来の偏心スラスト軸受の要部構成を示す断面図である。
【符号の説明】
2 ハウジング(固定部材)
5 旋回スクロール部材(旋回部材)
7 偏心スラスト軸受
8 第1軌道輪
8a 軌道面(固定部材側の軌道面)
9,11 保持器
9e,11e 第1ポケット
9f,11f 第2ポケット
10 第2軌道輪
10a 軌道面(旋回部材側の軌道面)
12 中間軌道輪
12a 上側軌道面(第2軌道面)
12b 下側軌道面(第1軌道面)
13,15 ころ
14,16 ころ(転動体)
A 第1のころユニット
B 第2のころユニット
Claims (3)
- 偏心旋回運動する旋回部材を固定部材上に支持する偏心スラスト軸受であって、
前記固定部材及び前記旋回部材から離間して設けられるとともに、前記固定部材側に設けられた軌道面及び前記旋回部材側に設けられた軌道面にそれぞれ対向する第1軌道面及び第2軌道面が形成された軌道輪と、
前記固定部材側の軌道面と前記第1軌道面との間で所定方向に転動する複数個のころ及びこれらのころを保持する保持器を有する第1のころユニットと、
前記旋回部材側の軌道面と前記第2軌道面との間で前記第1のころユニットのころとは互いに異なる方向に転動する複数個のころ及びこれらのころを保持する保持器を有する第2のころユニットとを備え、
前記第1及び第2の各ころユニットに、対応するころとともに転動可能な複数個の転動体を設け、かつ
前記第1及び第2のころユニットの各保持器に、対応するころを収納する複数の第1ポケットと、前記転動体を収納するとともに、その転動体と軸方向で接触することにより、当該保持器の軸方向への移動を規制する複数の第2ポケットとを設けていることを特徴とする偏心スラスト軸受。 - 前記転動体が、対応するころユニットのころにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の偏心スラスト軸受。
- 前記第1ポケットには、複数個の前記ころがその転動方向に隣接して収納され、かつ
前記第2ポケットには、1個の前記転動体が収納されていることを特徴とする請求項1または2記載の偏心スラスト軸受。
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